以下では、図中の矢印に基づいて、前後方向、左右方向及び上下方向を定義して説明を行う。
まず、図1から図4までを用いて、本発明の実施の一形態に係る移乗支援装置1の概略について説明する。
移乗支援装置1は、被介護者(介護を受ける者)Pを乗せて移動することにより、当該被介護者Pの移乗(例えば、ベッドとトイレ間の移乗、ベッドと車椅子間の移乗や、移乗支援装置自体への移乗等)を支援するものである。移乗支援装置1は、主として台車部2、支持部3、上体保持部4、下腿駆動機構5、上体駆動機構6、保持部調整機構8及びサスペンション9を具備する。また、支持部3は、主として外側フレーム31、内側フレーム32及び着座部37を具備する。
台車部2は、地面(床面)上を移動することができる。台車部2の上部には、支持部3が設けられる。支持部3の上部には、上体保持部4が設けられる。上体保持部4は、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pの身体(特に上体)を保持することができる。
台車部2には、下腿駆動機構5によって、支持部3が前後に揺動可能に連結される。支持部3の外側フレーム31には、上体駆動機構6によって内側フレーム32が昇降可能に連結される。内側フレーム32には、保持部調整機構8によって、上体保持部4が略前後方向に移動可能に連結される。下腿駆動機構5、上体駆動機構6及び保持部調整機構8をそれぞれ任意に駆動させることで、上体保持部4の位置(高さ、傾き等)を細かく調節することができる。
また、支持部3には、着座部37が上下に揺動可能に連結される。着座部37を揺動させることで、着座部37を収納することができる。
次に、図1から図6までを用いて、移乗支援装置1の各部の構成について説明する。なお、図6においては、適宜部材の図示を省略している。
台車部2は、移乗支援装置1の最下部を形成するものであり、地面(床面)上を移動可能なものである。台車部2は、左右一対の前輪22及び後輪23と、補助輪24とから構成された5つの車輪を有している。台車部2の詳細な構成については、後述する。
支持部3は、台車部2の上部に設けられ、上体保持部4を支持すると共に、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pの身体を保持するものである。支持部3は、主として外側フレーム31、内側フレーム32、第一連結部33、第二連結部34、第三連結部35、膝受け部36、着座部37及び把手部38を具備する。
外側フレーム31は、支持部3の左部及び右部を形成する部分である。外側フレーム31は、板面を左右方向に向けた板状に形成される。外側フレーム31は、左側面視(図3参照)において、略L字形状を180°回転させたような形状に形成される。外側フレーム31は、左右に一対形成される。外側フレーム31は、後述する第一連結部33を介して台車部2に連結される。外側フレーム31には、係合孔31aが形成される。
図1及び図3に示す係合孔31aは、外側フレーム31を左右方向に貫通するように形成される孔である。係合孔31aは、長手方向を前後方向に向けた長孔状に形成される。係合孔31aは、外側フレーム31の前部に、且つ、被介護者Pの膝関節J2(図3参照)のやや下方に相当する高さに形成される。
内側フレーム32は、支持部3の左右中央部を形成する部分である。内側フレーム32は、板面を左右方向に、長手方向を前上方向(後下方向)に向けた板状に形成される。内側フレーム32は、左右一対の外側フレーム31の間(内側)に設けられる。内側フレーム32の外側の板面は、外側フレーム31の内側の板面に対向するように設けられる。内側フレーム32は、外側フレーム31の後上部に設けられる。内側フレーム32は、左右に一対形成される。
図1から図4に示す第一連結部33は、外側フレーム31と台車部2とを連結する部分である。第一連結部33は、板面を左右方向に、長手方向を略上下方向に向けた左右一対の板状部材が互いに上下中途部で連結されて形成される。第一連結部33は、左右一対の外側フレーム31の下部に設けられる。第一連結部33の上部は、外側フレーム31の下端部に固定される。第一連結部33の下部は、後述する揺動軸51を介して、台車部2(詳細には、後述する後中央フレーム27)と連結される。
図4に示す第二連結部34は、外側フレーム31と後述する下腿シリンダ52とを連結すると共に、後述する上体シリンダ61を支持する部分である。第二連結部34は、板面を左右方向に、長手方向を略前後方向(前上方向)に向けた左右一対の板状部材が互いに連結されて形成される。第二連結部34は、左右一対の外側フレーム31の間に、且つ、当該外側フレーム31の上下中途部に配置される。第二連結部34は、左右一対の外側フレーム31に固定される。
図2から図4及び図6に示す第三連結部35は、外側フレーム31と後述する着座部37とを連結する部分である。第三連結部35は、板面を左右方向に向けた左右一対の板状部材が互いに連結されて形成される。第三連結部35は、左右一対の外側フレーム31の間に、且つ、当該外側フレーム31の上下中途部に配置される。第三連結部35は、第二連結部34の後方に設けられる。第三連結部35は、左右一対の外側フレーム31に固定される。
図1から図3に示す膝受け部36は、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pの膝を受ける部分である。膝受け部36は、側面視において、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pの膝関節J2の近傍に、左右一対設けられる(図3参照)。膝受け部36は、膝受け部本体36a及び係合部36bを具備する。
膝受け部本体36aは、被介護者Pの膝を受ける部分を構成するものである。膝受け部本体36aは、被介護者Pの膝を受ける面を略後方に向けた略直方体状に形成される。膝受け部本体36aは、外側フレーム31の側方に、且つ、外側フレーム31の上下中途部に設けられる。
図1及び図3に示す係合部36bは、膝受け部36を支持する部分である。係合部36bは、膝受け部本体36aの前上部に固定され、当該前上部から前方に延びるように形成される。係合部36bは、その一部が外側フレーム31の係合孔31aに挿入及び係合されて、当該係合孔31aを前後方向にスライド可能に形成される。また、係合部36bは、係合孔31aにおいて段階的に位置を固定(調整)できるように形成されている。この構成により、被介護者Pの体格に応じて、膝受け部本体36aを、手動で任意の前後方向の位置に調整することができる。
着座部37は、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pが着座可能なものである。着座部37は、適宜被介護者Pが着座しやすい形状に形成される。着座部37は、側面視において、膝受け部36の後方に配置される。着座部37は、左右方向において、左右一対の膝受け部36の間に形成される。着座部37の前端は、揺動軸37aを介して、第三連結部35に連結される。
把手部38は、介助者が移乗支援装置1を移動させる際に掴む部分である。把手部38は、棒状の部材を適宜組み合わせて、介助者が掴み易い形状に形成される。具体的には、把手部38は主として、左右一対の略L字状の部分と、当該略L字状の部分の上端部に形成された略楕円環状の部分とにより形成される。把手部38は、外側フレーム31の前上部に固定される。介助者は、把手部38を掴むことで、移乗支援装置1を容易に移動させることができる。
上体保持部4は、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pの身体(上体)を保持する部分である。上体保持部4は、主として正面保持部41及び側面保持部42を具備する。
正面保持部41は、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pの胸部から腹部に亘る部分を保持する部分である。正面保持部41は、被介護者Pの上体を胸側から保持する上体保持面41aを後上方に向けた略直方体状に形成される。正面保持部41は、内側フレーム32の上方に設けられる。
側面保持部42は、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pを左右両側方から保持する部分である。側面保持部42は、長手方向を上体保持面41aに対して垂直方向に向けた略直方体状に形成される。側面保持部42は、左右方向において正面保持部41を挟むようにして左右一対設けられる。
下腿駆動機構5は、支持部3を台車部2に対して前後に揺動させるためのものである。下腿駆動機構5は、揺動軸51及び下腿シリンダ52を具備する。
図1から図4に示す揺動軸51は、台車部2と支持部3とを連結するものである。揺動軸51は、軸線を左右方向に向けた状態で配置される。揺動軸51は、台車部2(詳細には、後述する後中央フレーム27)に対して支持部3の第一連結部33(の下部)を前後回動可能に連結する。これによって、第一連結部33に固定された外側フレーム31を、ひいては支持部3を、揺動軸51を中心として台車部2に対して前後に揺動させることができる。
図1から図4に示す下腿シリンダ52は、支持部3(外側フレーム31)を台車部2に対して前後に揺動させるための駆動源である。下腿シリンダ52は、長手方向に伸縮可能なアクチュエータであって、本実施形態においては、電動シリンダが用いられる。下腿シリンダ52は、長手方向を前下方向(後上方向)に向けて配置される。下腿シリンダ52の下端部(前端部)は、台車部2の台車部本体21の前端部に前後回動可能に連結される。下腿シリンダ52の上端部(後端部)は、支持部3の第二連結部34に前後回動可能に連結される。
上体駆動機構6は、内側フレーム32を外側フレーム31に対してスライドさせるためのものである。上体駆動機構6は、上体シリンダ61及びスライドレール62を具備する。
図1及び図3から図6(特に図4及び図5)に示す上体シリンダ61は、内側フレーム32を外側フレーム31に対して昇降させるための駆動源である。上体シリンダ61は、長手方向に伸縮可能なアクチュエータであって、本実施形態においては、電動シリンダが用いられる。上体シリンダ61は、長手方向を略上下方向(前上方向)に向けて配置される。上体シリンダ61の下端部は、第二連結部34に前後回動可能に連結される(図4参照)。上体シリンダ61の上端部は、左右一対の内側フレーム32の前端部に前後回動可能に連結される(図4及び図5参照)。
図4から図6に示すスライドレール62は、内側フレーム32を外側フレーム31に対して略上下方向(前上方向)に直線的に往復移動させるものである。スライドレール62は、ガイド部62a及びスライド部62bを具備する。
ガイド部62aは、後述するスライド部62bをスライド可能とすると共に、スライド部62bのスライド方向を規制するものである。ガイド部62aは、長手方向を略上下方向(前上方向)に向けた棒状に形成される。ガイド部62aは、外側フレーム31の内側の板面に固定される。ガイド部62aは、外側フレーム31の上端部近傍から上下中途部まで延びるように形成される。
スライド部62bは、ガイド部62aに沿ってスライドするものである。スライド部62bは、内側フレーム32の外側の板面に固定され、ガイド部62aに沿って(ガイド部62aの長手方向に)スライド可能に形成される。つまり、スライド部62bは、ガイド部62aによって、ガイド部62aの長手方向にのみスライド可能となるように規制される。
このように構成される上体駆動機構6により、内側フレーム32を外側フレーム31に対してスライドさせることで、内側フレーム32により支持された上体保持部4を、被介護者Pから見て斜め前方に上昇させ、斜め後方に下降させることができる。
保持部調整機構8は、上体保持部4を支持部3(内側フレーム32)に対してスライドさせるためのものである。保持部調整機構8は、主としてスライド機構81及びスライド支持部82を具備する。
図1、図3、図4及び図6に示すスライド機構81は、上体保持部4を内側フレーム32に対して略前後方向(前上方向)に直線的に往復移動させるものである。スライド機構81は、ガイド部81a及びスライド部81bを具備する。
図6に示すガイド部81aは、後述するスライド部81bをスライド可能とすると共に、スライド部81bのスライド方向を規制するものである。ガイド部81aは、後述するスライド部81bを挿通すると共に、当該スライド部81bがスライドできるように適宜加工された貫通孔を有するブロック状の部材により形成される。ガイド部81aは、当該貫通孔の軸線方向を略前後方向に、且つ、上体保持面41aと平行な方向に向けて設けられる。ガイド部81aは、後述するスライド支持部82に載置される。
図6に示すスライド部81bは、ガイド部81aに沿ってスライドするものである。スライド部81bは、上体保持部4の正面保持部41の下部に固定される。スライド部81bは、軸線方向を略前後方向に向けた棒状部材により形成される。スライド部81bは、ガイド部81aの貫通孔に挿通されるように設けられる。これにより、スライド部81bは、ガイド部81aによって、ガイド部81aの長手方向にのみスライド可能となるように規制される。また、スライド部81bは、ガイド部81aの長手方向において任意の位置で固定(調整)できるように形成されている。
スライド支持部82は、スライド機構81を支持するものである。スライド支持部82は、板面を略前後方向(上体保持面41aと平行な方向)に向けた平板状の部材の左右両端部を上方に折り曲げて形成される。スライド支持部82は、左右一対の内側フレーム32の上端部に載置及び固定される。スライド支持部82には、ガイド部81aが載置される。
このように構成される保持部調整機構8において、ガイド部81aに対してスライド部81bを手動でスライドさせることにより、上体保持部4を、内側フレーム32に対して略前後方向における任意の位置に移動させることができる。ひいては、被介護者Pの体格に応じて上体保持部4の前後方向の位置を調整することができる。
以下では、図7から図9を用いて、台車部2及びサスペンション9の構成について説明する。なお、図8においては、ステップ25の図示を省略している。
台車部2は、移乗支援装置1の最下部を形成するものであり、地面(床面)上を移動可能なものである。台車部2は、主として台車部本体21、前輪22、後輪23、補助輪24、ステップ25、前中央フレーム26及び後中央フレーム27を具備する。
台車部本体21は、台車部2の主たる構造体を形成するものである。台車部本体21は、棒状の部材や板状の部材等を適宜組み合わせて形成される。台車部本体21は、底面視(平面視)略矩形状の範囲に亘るように形成される。台車部本体21の後部は、被介護者Pが座る便器等の一部が挿入できるように、移乗支援装置1の左右中央部には形成されておらず、移乗支援装置1の左右両端部に形成されている。
前輪22は、台車部2の前側の車輪である。前輪22は、台車部本体21の前端下部に、左右一対設けられる。前輪22は、自在輪であって、台車部本体21に対して、上下方向に延びる軸線回りに回転可能に(向きを変更可能に)支持される。
後輪23は、台車部2の後側の車輪である。後輪23は、台車部本体21の後端下部に、左右一対設けられる。後輪23は、自在輪であって、台車部本体21に対して、上下方向に延びる軸線回りに回転可能に(向きを変更可能に)支持される。
補助輪24は、台車部2の中央の車輪である。補助輪24は、台車部本体21の略中央下部に、1つ設けられる。補助輪24は、底面視において、前輪22及び後輪23を頂点とする略矩形の中心付近に設けられる。補助輪24は、後述するアーム部91等を介して、台車部本体21に連結される。補助輪24は、揺動軸51の前下方に設けられる。補助輪24は、固定輪であって、台車部本体21に対して、上下方向に延びる軸線回りに回転不能に(向きを変更不能に)支持される。
図7(及び図1から図4)に示すステップ25は、移乗支援装置1に搭乗する被介護者Pの足場を形成する平板状の部材である。ステップ25は、板面を上下方向に向けた状態で、台車部本体21の左右に一対形成される。ステップ25は、補助輪24を挟むように、当該補助輪24の左右にそれぞれ設けられる。
前中央フレーム26は、後述するアーム部91の前端部を収容するものである。前中央フレーム26は、板面を上下方向に向けた平板状の部材の左右両端部を下方に折り曲げて形成される。前中央フレーム26は、補助輪24の前方において、台車部本体21に固定される。
後中央フレーム27は、後述するアーム部91の後端部を収容するものである。後中央フレーム27は、板面を上下方向に向けた平板状の部材の左右両端部を下方に折り曲げて形成される。後中央フレーム27は、補助輪24の後方において、台車部本体21に固定される。後中央フレーム27の後部は、支持部3の第一連結部33の内側に挿入されて、揺動軸51を介して当該第一連結部33と連結される。
サスペンション9は、補助輪24を上下に揺動させるものである。サスペンション9は、アーム部91、ばね支持部92及びばね93を具備する。
アーム部91は、補助輪24を支持する部分である。アーム部91は、板面を上下方向に、且つ、長手方向を前後方向に向けた平板状の部材の左右両端部を下方に折り曲げて形成される。アーム部91は、その前後中途部の内側において、補助輪24を周方向に回転可能に支持する。アーム部91は、左右一対のステップ25の間に設けられる。アーム部91の前部は、前中央フレーム26の内側に挿入される。アーム部91の後部は、後中央フレーム27の内側に挿入されて、揺動軸51を介して当該後中央フレーム27に連結される。アーム部91は、後中央フレーム27に対して揺動軸51の軸線回りに上下に揺動可能に連結される。
つまり、揺動軸51は、後中央フレーム27に対して支持部3の第一連結部33を前後回動可能に連結するだけでなく、後中央フレーム27に対してアーム部91を上下に揺動可能に連結する。
ばね支持部92は、後述するばね93を支持する部分である。ばね支持部92は、ブロック状に形成される。ばね支持部92は、アーム部91の内側において、当該アーム部91の前下部に固定される。
ばね93は、ばね支持部92を下方へ付勢するものである。ばね93は、圧縮ばねである。ばね93は、収縮(伸長)方向を上下方向へ向けて、ばね支持部92と前中央フレーム26との間に設けられる。これにより、ばね93は、ばね支持部92を下方へ付勢する。
次に、図10から図13までを用いて、移乗支援装置1の各部が揺動又は移動する様子について説明する。
移乗支援装置1においては、下腿シリンダ52を伸縮させることで、支持部3を前後に揺動させることができる。下腿シリンダ52は、図示せぬリモコン等の操作具を操作することにより、任意に伸縮させることができる。
具体的には、図10に示すように、下腿シリンダ52を伸縮させることで、外側フレーム31を台車部2に対して前後に揺動させることができる。この場合、揺動軸51が外側フレーム31の揺動中心となる。内側フレーム32、第一連結部33、第二連結部34、第三連結部35、膝受け部36、着座部37及び把手部38は外側フレーム31に支持されているため、外側フレーム31が揺動すると、当該外側フレーム31と一体的に内側フレーム32等も揺動する。上体保持部4、上体駆動機構6及び保持部調整機構8もまた内側フレーム32等を介して外側フレーム31に支持されているため、外側フレーム31が揺動すると、当該外側フレーム31と一体的に上体保持部4等も揺動する。なお、下腿シリンダ52を最大限伸張させた状態では、上体保持部4の上体保持面41aの傾きが鉛直方向に対して約65°となる(図3及び図4参照)。
ここで、左側面視(図3参照)において揺動軸51は、被介護者Pの足関節J1(足首にある関節(内果点))の近傍に位置する。このように、揺動軸51を足関節J1の近傍に配置することで、外側フレーム31を揺動させる際に、被介護者Pの身体(足関節J1)を自然に曲げたり伸ばしたりすることができる。これによって、被介護者Pの身体にかかる負担を軽減することができる。
また、図11に示すように、上体シリンダ61を伸縮させることで、内側フレーム32を外側フレーム31及び台車部2に対して上下(前後)にスライドさせることができる。上体シリンダ61は、図示せぬリモコン等の操作具を操作することにより、任意に伸縮させることができる。上体保持部4は内側フレーム32に支持されているため、内側フレーム32が外側フレーム31に対してスライドすると、当該内側フレーム32と一体的に上体保持部4もスライドする。このスライドにより、上体保持部4を昇降させることができる。
このように、上体保持部4を昇降させることで、被介護者Pの身体(膝関節J2)を自然に曲げたり伸ばしたりすることができる。このとき、上体保持部4は、上体保持面41aの傾き角度を維持したまま昇降するので、被介護者Pの身体に加わる負担を軽減することができる。
また、図12に示すように、保持部調整機構8が構成されていることにより、内側フレーム32に対して、上体保持部4の前後(上下)の位置を、手動で容易に調整することができる。また、上体保持部4を上体保持面41aと平行な方向に移動させることができるので、被介護者Pにかかる負担を軽減することができる。
また、図13に示すように、外側フレーム31の係合孔31aに対して膝受け部36の係合部36bをスライドさせることで、外側フレーム31に対して膝受け部36の前後の位置を、手動で容易に調整することができる。
次に、図14から図17までを用いて、上述の如く構成された移乗支援装置1を用いた移乗作業の一例について具体的に説明する。なお、以下の説明では、便宜上、移乗支援装置1を操作する者(介助者)の図示は省略している。
まず、図14(a)に示すように、介助者は、着座部37を収納状態としておく。またこの際、介助者は、下腿シリンダ52を最大限伸長させておく。このとき、正面保持部41の上体保持面41aの鉛直方向に対する前方向への傾斜角度a1は、約65度となる。以下では、この状態の移乗支援装置1を、初期姿勢と称する。
次に、図14(b)に示すように、介助者は、移乗支援装置1を前方から被介護者Pに近づける。
次に、図15(a)に示すように、介助者は、被介護者Pの膝を膝受け部36で受けるようにしながら、被介護者Pの上体を正面保持部41にもたれ掛けさせる。この際、介助者は、側面保持部42を被介護者Pの脇の下に挿通する。このとき、正面保持部41は傾斜角度a1だけ前方向に傾斜しているため(図14(a)参照)、被介護者Pは正面保持部41に楽にもたれることができる。
次に、図15(b)に示すように、介助者は、下腿シリンダ52を収縮させ、外側フレーム31を台車部2に対して角度a2だけ前方に揺動させる。角度a2は、具体的には約25度になるように調節される。このように外側フレーム31を揺動させると、当該外側フレーム31と共に上体保持部4も一体的に揺動する。このため、被介護者Pの身体全体が前方に揺動する。これによって、被介護者Pの重心位置が前方(移乗支援装置1側)に移動し、当該被介護者Pは身体を完全に移乗支援装置1に預けることができる。なお、この状態では、正面保持部41の水平方向に対する傾斜角度a3は、0〜5度になる。
次に、図16(a)に示すように、介助者は、上体シリンダ61を伸長させ、内側フレーム32を外側フレーム31に対して上方(前方)にスライドさせる。これによって、被介護者Pの膝が伸ばされると共に、被介護者Pの臀部が持ち上げられる。なお、この際のスライド量は、後述するように着座部37を着座状態に戻す際(図16(b)参照)に、被介護者Pの臀部が当該着座部37と干渉しない程度のスライド量(例えば、約180mm)に調節される。このとき、正面保持部41の上体保持面41aの水平方向に対する傾斜角度a3は、0〜5度のままである。
次に、図16(b)に示すように、介助者は、着座部37を上向きに揺動させ、着座部37を被介護者Pが着座できる状態とする。
次に、図17(a)に示すように、介助者は、上体シリンダ61を収縮させて、内側フレーム32を外側フレーム31に対して下方(後方)にスライドさせる。これにより、上体保持部4は、内側フレーム32と一体的にスライドする。介助者は、内側フレーム32(上体保持部4)を、被介護者Pが着座部37に着座するまでスライドさせる。
次に、図17(b)に示すように、介助者は、下腿シリンダ52を最大限伸長させる。すなわち介助者は、角度a2(約25度)だけ、支持部3(外側フレーム31)を台車部2に対して後方に揺動させる。このようにして、介助者は移乗支援装置1を初期姿勢に戻す。初期姿勢に戻った移乗支援装置1を移動させることで、被介護者Pを任意の場所に容易に移動させることができる。
このように、移乗支援装置1を用いることで、力のない介助者でも容易に被介護者Pの移乗作業を行うことができる。また、大がかりな装置等も必要ないため、室内等の限られたスペースであっても移乗作業を行うことができる。
また、移乗支援装置1が図16に示す状態にある場合には、被介護者Pの膝が伸ばされて臀部がやや浮いた状態になっている。したがって、介助者は、この状態で被介護者Pのズボンの上げ下げを容易に行うこともできる。
また、上体保持部4は、図16(a)から図17(a)に示すように、上体駆動機構6により直線的に上昇する。これにより、自然と被介護者Pの膝が伸ばされて臀部が浮いた状態となる。このとき、上体保持部4は直線的に移動するだけなので、被介護者Pの上体の傾斜角度は概ね変わることがない。このため、被介護者Pの身体(上体)に無理な動きを強いることなく、被介護者Pの臀部を浮かすことができる。したがって、移乗支援装置1への移乗の際の被介護者Pの身体にかかる負担を軽減することができる。
また、上体保持部4は、図16(a)から図17(a)に示す状態において、上体駆動機構6(スライドレール62)により、上下方向(上下方向と前後方向との間の斜め方向)に沿ってスライドする。これにより、被介護者Pの上体が左右方向にぶれることなく、被介護者Pの臀部を浮かすことができる。したがって、容易に被介護者Pの移乗作業を行うことができる。
また、図14(b)に示すように、着座部37を収納させた状態で、移乗支援装置1を被介護者Pに接近させることができるので、被介護者Pは楽に移乗支援装置1に身体を預けることができる。また、まず被介護者Pの身体を移乗支援装置1に預けて、その後に被介護者Pを着座部37に着座させることができる(図17(a)参照)ので、介助者或いは被介護者P自身が、当該被介護者Pの身体を支える必要がない。したがって、容易に被介護者Pの移乗作業を行うことができる。
また、図16(b)に示すように、被介護者Pが上体保持部4及び膝受け部36に身体が保持された状態で、着座部37を回動させて着座位置とすることで、被介護者Pは、移乗支援装置1に身体を預けたまま着座部37に着座することができる(図17(a)参照)。また、着座部37は、被介護者Pの膝関節J2近傍に設けられた揺動軸37aを中心として回動するので、被介護者Pの臀部や上腿に沿わせ易くすることができる。
このように構成された移乗支援装置1においては、被介護者Pが移乗支援装置1に搭乗し、当該被介護者Pの重みによって台車部本体21の中央部に荷重がかかっても、当該台車部本体21の中央部は補助輪24により支持される。よって、荷重による台車部本体21の撓み(台車部本体21の中央部の下方への撓み)を低減することができる。これにより、台車部本体21の撓んだ部分がスロープの頂点や段差に乗り上げて動けなくなるという事態を回避することができる。
また、本実施形態に係る移乗支援装置1においては、被介護者Pが搭乗したとき、支持部3を支える揺動軸51に荷重が集中し易い。本実施形態において、補助輪24は、荷重が集中し易い揺動軸51の近傍に設けられているため、荷重を受け易くすることができる。
また、本実施形態に係る移乗支援装置1においては、支持部3及び当該支持部3に支持される構成要素(上体保持部4等)は、揺動軸51の前方において前後へ揺動される(図14から図17参照)。例えば、支持部3は、被介護者Pが上体保持部4に上体を預けた状態で前方に傾けられる(図15(b)参照)。このように、本実施形態に係る移乗支援装置1において、台車部2には揺動軸51の前方に大きな荷重がかかり易い。そこで、本実施形態において、補助輪24は、揺動軸51の近傍であって、且つ、揺動軸51の前下方に設けられているため、支持部3を前後へ揺動させているときであっても、補助輪24で被介護者P及び支持部3等の荷重をより受け易くすることができる。これにより、台車部本体21の撓みをより低減することができる。
また、本実施形態に係る移乗支援装置1において、揺動軸51は台車部本体21に対して後中央フレーム27等を介して設けられているため、台車部本体21に撓みが生じると、支持部3のスムーズな揺動が阻害されることとなる。しかしながら、本実施形態においては、補助輪24により台車部本体21の撓みが低減されているので、支持部3のスムーズな揺動を維持することができる。
また、補助輪24は、移乗支援装置1が方向転換する際の支点として機能する。これにより、移乗支援装置1の方向転換を容易に行うことができる。また、把手部38と補助輪24との間の距離は、把手部38と前輪22との間の距離よりも遠い。よって、把手部38を力点、補助輪24を支点とすると、介助者は、前輪22が支点となる場合と比べて、移乗支援装置1の方向転換を行う際の把手部38の操作に要する力を小さくすることができる。
次に、図18を用いて、補助輪24が上下に揺動する様子について具体的に説明する。
図18(a)に示すように、補助輪24は、ばね93により下方に付勢されている。より詳細には、アーム部91の前部に設けられたばね支持部92は、ばね93により下方に付勢されている。このため、アーム部91及び当該アーム部91に設けられた補助輪24は、揺動軸51を中心として、左側面視(図18(a)参照)において反時計回りに回転する方向に力が加えられている。これにより、補助輪24が地面から離れ易い状態(例えば、補助輪24が位置する地面が窪んでいるとき等)であっても、補助輪24が地面から浮いてしまうのを抑制することができる。したがって、補助輪24を常に接地し易い状態とすることができる。
また、図18(b)に示すように、補助輪24は、ばね93の付勢力に抗して、台車部本体21に対して上方に揺動させることができる。より詳細には、被介護者Pが移乗支援装置1に搭乗しているとき等、台車部本体21の中央部に大きな荷重がかかると、台車部本体21の中央部は下方に撓もうとする。このとき、補助輪24は、地面に押し付けられ、上向きの力を受けることとなる。そうすると、アーム部91及び当該アーム部91に設けられた補助輪24は、ばね93の付勢力に抗して当該ばね93を収縮させながら、揺動軸51の軸線回りに、左側面視(図18(b)参照)において時計回りに回転する。これにより、補助輪24に過剰な力がかかるのを防ぐことができる。また、補助輪24が過剰な力で接地して、前輪22及び後輪23が接地しなくなるのを防ぐことができる。
また、前述の如く、揺動軸51は、後中央フレーム27に対して支持部3の第一連結部33を前後回動可能に連結するだけでなく、後中央フレーム27に対してアーム部91を上下に揺動可能に連結する。このようにすることで、アーム部91の揺動軸を新たに設ける必要がなくなる。したがって、部品点数を減らすことができ、移乗支援装置1を簡易な構成とすることができる。
また、アーム部91は、左右一対のステップ25の間に設けられているため、被介護者Pが移乗支援装置1に搭乗した状態においても、当該被介護者Pの足に当たることなく、揺動可能とすることができる。
以上の如く、本実施形態に係る移乗支援装置1は、移動可能な台車部2と、搭乗した被介護者Pの上体を保持する上体保持部4(身体保持部)と、前記上体保持部4を前記台車部2に対して支持すると共に、側面視において、搭乗した前記被介護者Pの足関節J1の近傍に設けられた揺動軸51(支持部揺動軸)を中心として前記台車部2に対して前後に揺動可能に形成された支持部3と、を具備し、前記台車部2は、左右一対の前輪22及び後輪23と、前記揺動軸51の前方に設けられた補助輪24と、を具備するものである。
このように構成することにより、被介護者の上体を傾けることができ、且つ、操縦性に優れた移乗支援装置とすることができる。具体的には、台車部本体21がスロープの頂点や段差に乗り上げて動けなくなるという事態を回避することができる。また、移乗支援装置1の方向転換を容易に行うことができる。
また、本実施形態に係る移乗支援装置1は、前記補助輪24を上下に揺動させるサスペンション9(揺動機構)を具備するものである。
このように構成することにより、補助輪24の上下の位置を調整することができる。
また、前記サスペンション9は、前記補助輪24を支持すると共に、前記揺動軸51回りに上下に揺動可能に形成されたアーム部91を具備するものである。
このように構成することにより、1つの揺動軸51で支持部3とアーム部91とを揺動させることができるため、簡易な構成とすることができる。
また、前記台車部2は、搭乗した前記被介護者Pの足場を形成する左右一対のステップ25を具備し、前記アーム部91は、前記左右一対のステップ25の間に設けられているものである。
このように構成することにより、被介護者Pが搭乗した状態においても、当該被介護者Pの足に当たることなく、アーム部91を揺動可能とすることができる。
なお、本実施形態に係る上体保持部4は、本発明に係る身体保持部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る揺動軸51は、本発明に係る支持部揺動軸の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るサスペンション9は、本発明に係る揺動機構の実施の一形態である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態においては、補助輪24は揺動軸51の前下方に設けられるものとしたが、支持部3等が揺動軸51の後方で前後に揺動するように構成されている場合は、補助輪24は揺動軸51の後下方に設けることができる。これにより、補助輪24で被介護者P及び支持部3等の荷重をより受け易くすることができる。
また、本実施形態においては、補助輪24を上下に揺動させる揺動機構としてサスペンション9を用いたが、当該揺動機構の構成はこれに限定されるものではなく、任意の構成とすることができる。
また、本実施形態においては、サスペンション9は、補助輪24へかかる荷重の大きさに対応して当該補助輪24を自動的に上下に揺動するものとしたが、本発明に係る揺動機構はこれに限定されるものではなく、手動で補助輪24を揺動させて当該補助輪24の上下位置を調整するものであってもよい。