本発明の一実施形態に係る移乗支援装置の前方斜視図。
同じく、後方斜視図。
同じく、正面図。
被介護者が搭乗した状態の移乗支援装置を示した左側面図。
主にスライド機構を示した下方斜視図。
下腿シリンダを伸縮させる様子を示した移乗支援装置の左側面図。
大腿シリンダを伸縮させる様子を示した移乗支援装置の左側面図。
(a)着座部を取り外した移乗支援装置を示した左側面図。(b)移乗支援装置を被介護者に近づける様子を示した左側面図。
(a)被介護者を正面保持部にもたれ掛けさせる様子を示した左側面図。(b)被介護者の重心位置を前方に移動させる様子を示した左側面図。
(a)被介護者の膝を伸ばす様子を示した左側面図。(b)着座部を取り付ける様子を示した左側面図。
(a)被介護者を着座部に着座させる様子を示した左側面図。(b)下腿フレームを後方に揺動させる様子を示した左側面図。
以下では、図中の矢印に基づいて、前後方向、左右方向及び上下方向を定義して説明を行う。
まず、図1から図5までを用いて、本発明の実施の一形態に係る移乗支援装置1の概略について説明する。なお、図4は、上体保持部4が傾斜及びスライドする前の状態を示しており、一方、図1から図3及び図5は、上体保持部4が傾斜及びスライドした後の状態を示している。
移乗支援装置1は、被介護者(介護を受ける者)Pを乗せて移動することにより、当該被介護者Pの移乗(例えば、ベッドとトイレ間の移乗、ベッドと車椅子間の移乗や、移乗支援装置自体への移乗等)を支援するものである。移乗支援装置1は、主として台車部2、支持部3、上体保持部4及びスライド機構5を具備する。また、支持部3は、主として下腿駆動機構10及び上体駆動機構20を具備する。
台車部2は、地面(床面)上を移動することができる。台車部2の上部には、支持部3が設けられる。支持部3の上部には、上体保持部4が設けられる。上体保持部4は、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pの身体(特に上体)を保持することができる。
台車部2には、下腿駆動機構10の下腿フレーム11が前後に揺動可能に連結される。下腿フレーム11には、上体駆動機構20の上体フレーム21が前後に揺動可能に連結される。上体フレーム21には、上体保持部4が固定される。下腿駆動機構10及び上体駆動機構20をそれぞれ任意に駆動させることで、上体保持部4の位置(高さ、傾き等)を細かく調節することができる。
支持部3と上体保持部4との間には、スライド機構5が設けられる。スライド機構5は、支持部3に対して上体保持部4をスライドさせることができる。
次に、図1から図5までを用いて、移乗支援装置1の各部の構成について説明する。
台車部2は、移乗支援装置1の最下部を形成するものであり、地面(床面)上を移動可能なものである。台車部2は、主として台車部本体2a、車輪2b、ステップ2c及び中央フレーム2dを具備する。
台車部本体2aは、台車部2の主たる構造体を形成するものである。台車部本体2aは、棒状の部材や板状の部材等を適宜組み合わせて形成される。台車部本体2aは、平面視略矩形状の範囲に亘るように形成される。
車輪2bは、台車部本体2aの下部に複数設けられる。これによって、台車部本体2aは車輪2bを介して地面(床面)上を任意の方向に移動することができる。
ステップ2cは、移乗支援装置1に搭乗する被介護者Pの足場を形成する平板状の部材である。ステップ2cは、板面を上下方向に向けた状態で、台車部本体2aの上部の略中央に固定される。
中央フレーム2dは、略矩形断面を有する筒状の部材である。中央フレーム2dは、長手方向を略前後方向に向けた状態で、台車部本体2aの上部の左右中央(ステップ2cの左右中央)に固定される。
支持部3は、台車部2の上部に設けられ、上体保持部4を支持すると共に、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pの身体を保持するものである。支持部3は、主として下腿駆動機構10、上体駆動機構20、膝受け部30及び着座部40を具備する。
下腿駆動機構10は、支持部3の下部を形成するものである。下腿駆動機構10は、主として下腿フレーム11及び下腿シリンダ12を具備する。
下腿フレーム11は、台車部2に対して前後に揺動可能に設けられる部分である。下腿フレーム11は、主として下腿フレーム本体11a、下部連結部11b、揺動軸11c、中部連結部11d及び着座部連結部11eを具備する。
下腿フレーム本体11aは、下腿フレーム11の主たる構造体を形成するものである。下腿フレーム本体11aは、主に側面視略U字状に形成された左右一対の棒状の部材により形成される。下腿フレーム本体11aは、前記棒状の部材の前側上端部に、上方に延びる平面視略U字状に折り曲げられた板状の部材が固定されて形成される。
下部連結部11bは、下腿フレーム本体11aの下部に設けられる板状の部材である。下部連結部11bは、平板状の部材の左右両端部を下方に折り曲げて形成される。下部連結部11bは、下腿フレーム本体11aの下部に適宜固定される。
揺動軸11cは、下腿フレーム本体11aと台車部2とを連結するものである。揺動軸11cは、軸線を左右方向に向けた状態で配置される。揺動軸11cは、下部連結部11bの下端部と台車部2の略中央部とを前後回動可能に連結する。これによって、下腿フレーム本体11a(下腿フレーム11)は、揺動軸11cを中心として、台車部2に対して前後に揺動することができる。
中部連結部11dは、下腿フレーム本体11aの上下中途部に設けられる板状の部材である。中部連結部11dは、平板状の部材の左右両端部を略前方に折り曲げて形成される。中部連結部11dは、下腿フレーム本体11aの上下中途部に適宜固定される。
着座部連結部11eは、後述する着座部40が連結される部分である。着座部連結部11eは、平板状の部材の左右両端部を略前方に折り曲げて形成される。着座部連結部11eは、下腿フレーム本体11aの後部且つ上下中途部に適宜固定される。
下腿シリンダ12は、下腿フレーム11を台車部2に対して前後に揺動させるものである。下腿シリンダ12は、長手方向に伸縮可能なアクチュエータである。下腿シリンダ12の下端部(前端部)は、台車部2の中央フレーム2dの前端部に前後回動可能に連結される。下腿シリンダ12の上端部(後端部)は、下腿フレーム11の中部連結部11dに前後回動可能に連結される。
上体駆動機構20は、支持部3の上部を形成するものである。上体駆動機構20は、主として上体フレーム21、上体シリンダ支持部22、上体シリンダ23、補助スライダ24及び傾斜角度調節スライダ25を具備する。
上体フレーム21は、下腿駆動機構10(下腿フレーム11)に対して前後に揺動可能に設けられる部分である。上体フレーム21は、主として上体フレーム本体21a、上部連結部21b及び揺動軸21cを具備する。
上体フレーム本体21aは、上体フレーム21の主たる構造体を形成するものである。上体フレーム本体21aは、板状の部材を組み合わせることで、側面視において後方が開口した略V字状に形成される。
上部連結部21bは、上体フレーム本体21aと後述する上体シリンダ23とを連結するものである。上部連結部21bは、平板状の部材の左右両端部を略上方に折り曲げて形成される。
揺動軸21cは、上体フレーム本体21aと上部連結部21bとを連結するものである。揺動軸21cは、軸線を左右方向に向けた状態で配置される。揺動軸21cは、左側面視(図4参照)において、下腿フレーム11と台車部2とを連結する揺動軸11cの略上方に配置される。揺動軸21cは、上体フレーム本体21aの前側面の下部と、上部連結部21bの後部とを前後回動可能に連結する。
上体シリンダ支持部22は、筒状の部材と板状の部材とを適宜組み合わせて形成される。具体的には、上体シリンダ支持部22の後部は、略矩形断面を有する筒状の部材が略前後方向に延びるように形成される。上体シリンダ支持部22の後端は、下腿フレーム11の中部連結部11dに連結される。上体シリンダ支持部22の前部は、平板状の部材の左右両端部が略後方(後下方)に折り曲げて形成される。上体シリンダ支持部22の前端は、前下方に延びるように配置される。上体シリンダ支持部22は、下腿フレーム本体11aの上部において、左右の下腿フレーム本体11aの間に配置される。
上体シリンダ23は、上体フレーム21を下腿フレーム11に対して前後に揺動させるものである。上体シリンダ23は、長手方向に伸縮可能なアクチュエータである。上体シリンダ23の下端部は、上体シリンダ支持部22に連結される。上体シリンダ23の上端部は、上体フレーム21の上部連結部21bに前後回動可能に連結される。
補助スライダ24は、上体シリンダ23を補強するものである。補助スライダ24は、長手方向に伸縮自在に構成される。補助スライダ24は、上体シリンダ23と平行に(すなわち、前下方から後上方に向かって延びるように)配置される。補助スライダ24は、上体シリンダ23のすぐ後方に配置される。補助スライダ24の前下部は、上体シリンダ支持部22に固定される。補助スライダ24の後上端部は、上部連結部21bに回動不能に固定される。
傾斜角度調節スライダ25は、上体シリンダ23による上体保持部4の移動に応じて当該上体保持部4の傾斜角度を変更するものである。傾斜角度調節スライダ25は、長手方向に伸縮自在に構成される。傾斜角度調節スライダ25は、略上下方向に延びるように配置される。傾斜角度調節スライダ25の下部は、揺動軸25aを介して上体シリンダ支持部22の後部に前後回動可能に連結される。傾斜角度調節スライダ25の上端部は、上体フレーム本体21aの前部に回動不能に固定される。
このように構成される上体駆動機構20において、上体フレーム本体21a(上体フレーム21)は、補助スライダ24や上体シリンダ支持部22等を介して下腿フレーム11と連結されている。したがって、上体フレーム本体21a(上体フレーム21)は、揺動軸21cを中心として、下腿フレーム11に対して前後に揺動させることができる。
膝受け部30は、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pの膝を受ける部分である。膝受け部30は、板面を略前後方向に向けた略矩形板状に形成される。膝受け部30は、下腿フレーム本体11aの上下方向中途部に左右一対設けられる。膝受け部30は、下腿フレーム本体11aの前側に配置される。
着座部40は、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pが着座可能なものである。着座部40は、主として着座部本体41及び連結部42を具備する。
着座部本体41は、被介護者Pが着座する部分である。着座部本体41は、板面を略上下方向に向けた板状に形成される。着座部本体41は、適宜被介護者Pが着座しやすい形状に形成される。
連結部42は、着座部本体41を下腿フレーム11に連結するための部分である。連結部42は、平板状の部材を適宜折り曲げて形成される。連結部42は、着座部本体41の前下部に固定される。連結部42の前端部には、平板を下方に向かって折り曲げることによってフック部42aが形成される。フック部42aを下腿フレーム11の着座部連結部11eに係合させることで、着座部本体41(着座部40)を下腿フレーム11に取り付けることができる。また、フック部42aと着座部連結部11eとの係合を解除することで、着座部40を下腿フレーム11から取り外すことができる(図7参照)。
このように構成された着座部40は、下腿フレーム11に取り付けられると、左側面視(図4参照)において揺動軸11cの後上方、且つ膝受け部30の後方に配置されることになる。
上体保持部4は、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pの身体(上体)を保持する部分である。上体保持部4は、主として上体保持フレーム4a、正面保持部4b、側面保持部4c及び前部連結部4dを具備する。
上体保持フレーム4aは、上体保持部4の主たる構造体を形成するものである。上体保持フレーム4aは、棒状の部材や板状の部材等を適宜組み合わせて形成される。より詳細には、上体保持フレーム4aは、略矩形の板状の部材と、その左右両端部に設けられた棒状の部材とにより形成される。上体保持フレーム4aは、上体フレーム本体21a(上体フレーム21)の上方に、後述するスライド機構5を介して配置される。
正面保持部4bは、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pの胸部から腹部に亘る部分を保持する部分である。正面保持部4bは、板面を前下方及び後上方に向けた板状に形成される。正面保持部4bは、上体保持フレーム4a(の板状の部材)の後上方側の面に載置される。正面保持部4bの後上方側の面は、被介護者Pの上体を胸側から保持する。
側面保持部4cは、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pを左右両側方から保持する部分である。側面保持部4cは、板面を左右方向に向けた略矩形板状に形成される。側面保持部4cは、左右方向において正面保持部4bを挟むようにして左右一対設けられる。側面保持部4cは、上体保持フレーム4aから略後方に向かって延びるように配置される。
前部連結部4dは、板面を前下方及び後上方に向けた板状の部材により形成されるものである。前部連結部4dの前側の左右両端部は、前下方に延びるように形成される。前部連結部4dは、上体保持フレーム4aの前側面の上部に固定される。
このような上体保持部4において、正面保持部4bが被介護者Pの胸部から腹部に亘る部分を支持すると共に、左右の側面保持部4cが当該被介護者Pの脇の下を支持する。これによって、上体保持部4は、被介護者Pの上体(上半身)を安定して保持することができる。
スライド機構5は、上体フレーム21(上体フレーム本体21a)と上体保持部4との間に配置されるものである。スライド機構5は、上体フレーム21に対して上体保持部4をスライド可能に連結する。スライド機構5は、主としてスライドレール51及びリンク機構52を具備する。
スライドレール51は、上体保持部4を上体フレーム21に対して前後方向に直線的に往復移動させるものである。スライドレール51は、上体フレーム本体21aの後上方側に、左右一対載置される。スライドレール51は、ガイド部51a及びスライド部51bを具備する。
ガイド部51aは、後述するスライド部51bをスライド可能とすると共に、スライド部51bのスライド方向を規制するものである。ガイド部51aは、スライド部51bがスライドできるように適宜加工された板状の部材により形成される。ガイド部51aは、長手方向を前上方に向けた状態で、上体フレーム本体21aの後上方側の板面に沿って配置される。
スライド部51bは、ガイド部51aに沿ってスライドするものである。スライド部51bは、ガイド部51aの後上方側に長手方向を前上方に向けた状態で配置される。スライド部51bは、ガイド部51aに沿って、ガイド部51aの長手方向にスライド可能に形成される。つまり、スライド部51bは、ガイド部51aによって、ガイド部51aの長手方向にのみスライド可能となるように規制される。
リンク機構52は、下腿フレーム11(下腿フレーム本体11a)と上体保持部4とを連結するものである。リンク機構52は、リンク52a、揺動軸52b及び揺動軸52cを具備する。
リンク52aは、軸線方向を略上下方向に向けた棒状の部材により形成されるものである。リンク52aの下端部は、揺動軸52bを介して、下腿フレーム本体11aの上端部に前後回動可能に連結される。リンク52aの上端部は、揺動軸52cを介して、前部連結部4dの下端部に前後回動可能に連結される。
このように構成されたリンク機構52は、側面視において、リンク52aと上体保持部4(前部連結部4d)との連結部と、リンク52aと下腿フレーム11(下腿フレーム本体11a)との連結部との間の距離を規制している。つまり、リンク機構52は、側面視において、揺動軸52bの軸線と揺動軸52cの軸線との間の距離を規制している。
このように構成された移乗支援装置1には、図4に示すように、被介護者Pが着座部40に着座した状態で搭乗することができる。具体的には、被介護者Pは、着座部40に着座し、足を台車部2のステップ2cに乗せることで、移乗支援装置1に搭乗することができる。この際、上体保持部4によって被介護者Pの上体を保持することができる。また、膝受け部30によって被介護者Pの膝を受け、当該被介護者Pの姿勢を安定させることができる。
また図3に示すように、下腿フレーム11及び上体フレーム21の左右方向幅は、下腿フレーム11に取り付けられた着座部40の左右方向幅よりも狭くなるように形成されている。これによって、被介護者Pが当該下腿フレーム11及び上体フレーム21を容易に跨ぐことができ、当該被介護者Pが移乗支援装置1に搭乗する際の負担を軽減することができる。
また左右の膝受け部30は、当該左右の膝受け部30の間隔(左右方向の間隔)が、当該着座部40の左右方向幅と略同一となるように配置されている。これによって、着座部40に着座した被介護者Pの膝を適切に受けることができる。
次に、図4、図5及び図7を用いて、移乗支援装置1の各部が揺動又は移動する様子について説明する。
下腿シリンダ12を伸縮させることで、下腿フレーム11を前後に揺動させることができる。下腿シリンダ12は、図示せぬリモコン等の操作具を操作することにより、任意に伸縮させることができる。
具体的には、図6に示すように、下腿シリンダ12を伸縮させることで、下腿フレーム11を台車部2に対して前後に揺動させることができる。この場合、揺動軸11cが下腿フレーム11の揺動中心となる。上体駆動機構20、膝受け部30及び着座部40、並びに上体保持部4は下腿フレーム11に支持されているため、下腿フレーム11が揺動すると、当該下腿フレーム11と一体的に上体駆動機構20等も揺動する。なお、下腿シリンダ12を最大限伸張させた状態では、下腿フレーム本体11aは、その下端部が略鉛直方向(略上下方向)に延びる姿勢になる(図4参照)。
ここで、左側面視(図4参照)において下腿フレーム11の揺動軸11cは、被介護者Pの足関節J1(足首にある関節(内果点))の近傍(ステップ2cの近傍)に位置する。このように、揺動軸11cを足関節J1の近傍に配置することで、下腿フレーム11を揺動させる際に、被介護者Pの身体(足関節J1)を自然に曲げたり伸ばしたりすることができる。これによって、被介護者Pの身体にかかる負担を軽減することができる。
また、図7に示すように、上体シリンダ23を伸縮させることで、上体フレーム21を下腿フレーム11及び台車部2に対して前後に揺動させることができる。この場合、揺動軸21cが上体フレーム21の揺動中心となる。上体保持部4は上体フレーム21に支持されているため、上体フレーム21が揺動すると、当該上体フレーム21と一体的に上体保持部4も揺動する。
この際、上体シリンダ23は長手方向に伸縮するため、上体保持部4は上体シリンダ23の長手方向に沿って直線的に移動する。当該上体保持部4の移動に伴って、傾斜角度調節スライダ25も伸縮する。ここで、傾斜角度調節スライダ25の上端部は、上体フレーム21に対して回動不能に固定されている。このため上体フレーム21に固定された上体保持部4は、上体シリンダ23によって直線的に移動されると同時に、傾斜角度調節スライダ25によって傾斜角度が変更される。
具体的には、上体シリンダ23が収縮すると、上体保持部4は後上方から前下方に向かって直線的に移動する。これに伴って、上体保持部4の姿勢は前傾する。すなわち、上体保持部4の傾斜角度(正面保持部4bの垂直方向に対する前方向への傾斜角度A)は大きくなる。
また、上体シリンダ23が伸長すると、上体保持部4は前下方から後上方に向かって直線的に移動する。これに伴って、上体保持部4の姿勢は後傾する。すなわち、上体保持部4の傾斜角度Aは小さくなる。
このように上体駆動機構20により、上体保持部4を前後に揺動させることができる。上体シリンダ23の収縮により上体保持部4が揺動軸21cを中心に前方に揺動すると、上体保持部4の前部連結部4dと下腿フレーム本体11aの上端とが接近しようとする。しかし、上体保持部4の前部連結部4dと下腿フレーム本体11aの上端との間の距離は、リンク機構52により規制されている。したがって、上体保持部4の前部連結部4dには、リンク機構52により上方に押し上げようとする力が働く。これにより、上体保持部4は上体フレーム21に対して前上方にスライドする。
一方、上体シリンダ23の伸長により上体保持部4が揺動軸21cを中心に後方に揺動すると、上体保持部4の前部連結部4dと下腿フレーム本体11aの上端とが遠ざかろうとする。しかし、上体保持部4の前部連結部4dと下腿フレーム本体11aの上端との間の距離は、リンク機構52により規制されている。したがって、上体保持部4の前部連結部4dには、リンク機構52により下方に押し下げようとする力が働く。これにより、上体保持部4は上体フレーム21に対して後下方にスライドする。
したがって、上体フレーム21が揺動軸21c回りに前後に揺動すると、上体保持部4は、上体フレーム21と一体的に前後に揺動すると共に、スライド機構5により略前後方向へスライドさせることができる。
次に、図8から図11までを用いて、上述の如く構成された移乗支援装置1を用いた移乗作業の一例について具体的に説明する。なお、以下の説明では、便宜上、移乗支援装置1を操作する者(介助者)の図示は省略している。
まず、図8(a)に示すように、介助者は、着座部40を移乗支援装置1から取り外しておく。またこの際、介助者は、下腿シリンダ12を最大限伸長させておく。このとき、正面保持部4bの鉛直方向に対する前方向への傾斜角度a1は、約45度となる。以下では、この状態の移乗支援装置1を、初期姿勢と称する。
次に、図8(b)に示すように、介助者は、移乗支援装置1を前方から被介護者Pに近づける。
次に、図9(a)に示すように、介助者は、被介護者Pの上体を正面保持部4bにもたれ掛けさせる。この際、介助者は、側面保持部4cを被介護者Pの脇の下に挿通する。このとき、正面保持部4bは傾斜角度a1だけ前方向に傾斜しているため(図8(a)参照)、被介護者Pは正面保持部4bに楽にもたれることができる。
次に、図9(b)に示すように、介助者は、上体シリンダ23を収縮させ、上体フレーム21を下腿フレーム11に対して角度a2だけ前方に揺動させる。角度a2は、具体的には約15度になるように調節される。このように上体フレーム21を揺動させると、当該上体フレーム21と共に上体保持部4も一体的に揺動する。なお、この状態では、正面保持部4bの水平方向に対する傾斜角度a3は、約30度になる。
上体フレーム21は、前方に揺動すると、スライド機構50の働きにより前上方へスライドする。これに伴い、上体保持部4も、上体フレーム21と一体的に前上方へスライドする。このため、被介護者Pの身体全体が前方に揺動する。これによって、被介護者Pの重心位置が前方(移乗支援装置1側)に移動し、当該被介護者Pは身体を完全に移乗支援装置1に預けることができる。
次に、図10(a)に示すように、介助者は、下腿シリンダ12を収縮させ、下腿フレーム11を台車部2に対して角度a4だけ前方に揺動させる。角度a4は、具体的には約30度になるように調節される。このように下腿フレーム11を揺動させると、当該下腿フレーム11と共に上体駆動機構20及び上体保持部4も一体的に揺動する。このため、被介護者Pの身体全体がさらに前方に揺動する。これによって、被介護者Pの重心位置がさらに前方に移動し、被介護者Pの膝が伸ばされると共に、被介護者Pの臀部がさらに持ち上げられる。この場合、正面保持部4bの水平方向に対する傾斜角度は、約0度(略水平)である。
次に、図10(b)に示すように、介助者は、着座部40の連結部42を下腿フレーム11の着座部連結部11eに係合させ、当該着座部40を下腿フレーム11に取り付ける。
次に、図11(a)に示すように、介助者は、上体シリンダ23を伸長させて、被介護者Pが着座部40に着座するまで、上体フレーム21を後方へ揺動させる。このように上体フレーム21を揺動させると、当該上体フレーム21と共に上体保持部4も一体的に後方に揺動する。これにより、被介護者Pを着座部40に着座させることができる。
次に、図11(b)に示すように、介助者は、下腿シリンダ12を最大限伸長させる。すなわち介助者は、角度a4(約30度)だけ、下腿フレーム11を台車部2に対して後方に揺動させる。このようにして、介助者は移乗支援装置1を初期姿勢に戻す。初期姿勢に戻った移乗支援装置1を移動させることで、被介護者Pを任意の場所に容易に移動させることができる。
このように、移乗支援装置1を用いることで、力のない介助者でも容易に被介護者Pの移乗作業を行うことができる。また、大がかりな装置等も必要ないため、室内等の限られたスペースであっても移乗作業を行うことができる。
また、移乗支援装置1が図9(b)及び図10(a)に示す状態にある場合には、被介護者Pの膝が伸ばされて臀部が浮いた状態になっている。したがって、介助者は、この状態で被介護者Pのズボンの上げ下げを容易に行うこともできる。
また、移乗支援装置1が図9(b)に示す状態にある場合には、上体保持部4は、前方に揺動すると共に、前方へスライドする。したがって、被介護者Pの臀部をより浮かすことができ、ひいては介助者は、被介護者Pのズボン等の上げ下げをより容易に行うことができる。さらに、移乗支援装置1が図10に示す状態にある場合には、被介護者Pの臀部をさらに浮かすことができるので、被介護者Pのズボン等の上げ下げをさらに容易に行うことができる。
また、移乗支援装置1が図9(a)に示す状態から図9(b)に示す状態に変化する途中において、上体保持部4は、1つのアクチュエータ(上体シリンダ23)によって、揺動とスライドの両方の動きを行うことができる。したがって、移乗支援装置1の構成を簡素化することができる。
以上の如く、本実施形態に係る移乗支援装置1は、移動可能な台車部2と、搭乗した被介護者Pの身体を保持する上体保持部4(身体保持部)と、前記上体保持部4を前記台車部2に対して支持すると共に、前記台車部2に対して前後に揺動可能な支持部3と、前記上体保持部4を前記支持部3に対してスライド可能に連結すると共に、前記支持部3が前記台車部2に対して前後に揺動すると、これに伴い前記上体保持部4を前記支持部3に対してスライドさせるスライド機構5と、を具備するものである。
このように構成することにより、容易に被介護者Pの姿勢を細かく調整することができる。
また、前記スライド機構5は、前記支持部3が前記台車部2に対して前方に揺動すると、前記上体保持部4を上方へスライドさせ、前記支持部3が前記台車部2に対して後方に揺動すると、前記上体保持部4を下方へスライドさせるものである。
このように構成することにより、被介護者Pの移乗作業を容易とすることができる。
また、前記支持部3は、前記台車部2に連結される下腿フレーム11(第一部材)と、前記下腿フレーム11に対して前後に揺動可能に連結されることで前記台車部2に対して前後に揺動可能な上体フレーム21(第二部材)と、を具備し、前記スライド機構5は、前記上体保持部4を前記上体フレーム21に対してスライド可能に連結するスライドレール51(スライド手段)と、前記下腿フレーム11の第一連結部と前記上体保持部4の第二連結部とを側面視において前記上体フレーム21の揺動軸21c(揺動中心)を除く位置で連結すると共に、前記上体フレーム21が前記下腿フレーム11に対して前後に揺動すると、前記第一連結部と前記第二連結部との間の距離を規制することで前記上体保持部4を前記上体フレーム21に対してスライドさせるリンク機構52と、を具備するものである。
このように構成することにより、容易に被介護者Pの姿勢を細かく調整することができる。
また、移乗支援装置1は、前記上体フレーム21を前記下腿フレーム11に対して前後に揺動させる上体シリンダ23(第二部材駆動源)を具備するものである。
このように構成することにより、より容易に被介護者Pの姿勢を調整することができる。
また、前記下腿フレーム11は、側面視において、搭乗した前記被介護者Pの足関節J1の近傍に設けられた揺動軸11c(足関節揺動軸)を中心として前記台車部2に対して前後に揺動可能であり、前記移乗支援装置1は、前記下腿フレーム11を前記台車部2に対して前後に揺動させる下腿シリンダ12(第一部材駆動源)を具備するものである。
このように構成することにより、被介護者Pの姿勢をより細かく調整することができ、ひいては被介護者Pの移乗作業を容易とすることができる。
また、前記支持部3は、着脱可能に設けられ、前記被介護者Pが着座可能な着座部40を具備するものである。
このように構成することにより、移乗支援装置1に搭乗した被介護者Pを着座させることができ、当該被介護者Pの身体にかかる負担を軽減することができる。
なお、本実施形態に係る上体保持部4は、本発明に係る身体保持部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る下腿フレーム11は、本発明に係る第一部材の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る下腿シリンダ12は、本発明に係る第一部材駆動源の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る上体フレーム21は、本発明に係る第二部材の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る上体シリンダ23は、本発明に係る第二部材駆動源の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るスライドレール51は、本発明に係るスライド手段の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る下腿フレーム本体11aにおけるリンク52a(揺動軸52b)との連結部は、本発明に係る第一連結部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る前部連結部4dにおけるリンク52a(揺動軸52c)との連結部は、本発明に係る第二連結部の実施の一形態である。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、本発明に係る第一部材及び第二部材の構成(形状、大きさ等)は、本実施形態に係る下腿フレーム11及び上体フレーム21に限るものではなく、任意の形状等に適宜変更することが可能である。
また、本発明に係る第一部材駆動源及び第二部材駆動源の構成は、本実施形態に係る下腿シリンダ12及び上体シリンダ23に限るものではない。すなわち、本発明に係る第一部材駆動源及び第二部材駆動源は、第一部材及び第二部材をそれぞれ揺動させることができるものであれば、その構成を限定するものではない。例えば、第一部材駆動源及び第二部材駆動源として、各種シリンダ(電動シリンダ、空圧シリンダ、油圧シリンダ等)やモータ等を用いることも可能である。
また、本実施形態においては、上体保持部4は被介護者Pを前方及び左右両側方から保持するものとしたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、本発明に係る身体保持部は、被介護者Pの身体の少なくとも一部分を保持することができるものであれば、その構成(形状、大きさ、被介護者Pの保持方法等)を限定するものではない。
また、本実施形態においては、着座部40の連結部42を下腿フレーム11の着座部連結部11eに係合させることで、当該着座部40を下腿フレーム11に取り付ける構成としたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、本発明に係る着座部は、着脱を行うための構成を限定するものではない。
また、本実施形態においては、傾斜角度a1、角度a2、傾斜角度a3及び角度a4の値を具体的に例示して、移乗支援装置1を用いた移乗作業について説明したが、本発明はこれらの角度を限定するものではない。すなわち、これらの角度は、被介護者Pの体格や移乗作業の内容(場所や目的等)に応じて任意に調節することが可能である。
また、本実施形態において説明した移乗作業(図8から図11まで)の流れは一例であり、移乗支援装置1を用いた移乗作業は、介助者及び被介護者Pに応じて任意の方法で行うことが可能である。この際、本実施形態に係る移乗支援装置1は、下腿フレーム11及び上体フレーム21を独立して任意に移動させることができるため、上体保持部4の位置を細かく調整しながら移乗作業を行うことができる。