JP6709586B2 - カーボンブラック分散液およびその利用 - Google Patents

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Description

本発明は、分散性、貯蔵安定性、塗工性に優れたカーボンブラック分散液に関する。また、該分散液を使用した電池電極合材層およびリチウムイオン二次電池に関する。
電池分野において、カーボンブラックは、導電助剤として広く用いられているが、電池電極合材層を形成する際、生産プロセスを効率化して短縮するためには、カーボンブラックを溶剤中に、いかに高濃度かつ均一に分散して、容易に塗工可能とするかが重要である。
近年、特に環境や生産コストへの配慮から、従来よりも、より高濃度かつ均一に分散されたカーボンブラック分散液を作製することによって、溶剤使用量を低減することや乾燥時の使用エネルギーを低減することが求められている。
これらの要求は、溶剤のコストや乾燥時の使用エネルギーに大きな影響があることから、使用する溶剤が高価であるほど、または、使用する溶剤が高沸点であるほど重要になる。非水系二次電池で使用されるN−メチル−2−ピロリドンは、一般的な溶剤と比較して高価であり、さらに200℃以上と沸点が非常に高いため、溶剤を乾燥する際に多くのエネルギーを必要とすることから、分散液における溶剤使用量の低減が強く求められている。
多量のカーボンブラックを溶剤中に分散するためには、カーボンブラックの表面に分散剤を吸着処理して分散安定な状態にすることが、特に有効な方法であり、様々な分散剤を用いたカーボンブラック分散液が提案されている。
一般に、分散剤を使用してカーボンブラックを分散する場合、分散剤の量が極端に少なくなるとカーボンブラックの分散性は悪化し、逆に分散剤の量が非常に多くなると分散性は良好になるものの、電池用途で使用する場合には、抵抗値が高くなり導電性が悪化するといった電池特性に悪影響を及ぼすことが予想される。
例えば、特許文献1〜3には、カーボンブラック、未変性又は変性ポリビニルアルコール、架橋剤(有機酸)、及びN−メチル−2−ピロリドンを含有する塗工液が記載されており、また、特許文献1には、前記塗工液に正極活物質又は負極活物質を添加して、リチウムイオン二次電池の電極板を製造することが記載されている。しかしながら、これら特許文献1〜3におけるポリビニルアルコール類は、結着剤(樹脂バインダー)として使用するためには、それ単独では電解液に対する耐性が充分ではないために、有機酸を架橋剤として併用してバインダー間を架橋させた形態で用いる必要があり、ポリビニルアルコール類を分散剤として使用するという技術的思想はない。
一方、特許文献4では、けん化度が60〜85モル%のポリビニルアルコールを分散剤として用いた、N−メチル−2−ピロリドンを含有するカーボンブラック分散液が、また、特許文献5ではポリビニルアセタールを分散剤として用いたカーボンブラック分散液が、それぞれ記載されており、粘度を良好に維持しつつも高濃度なカーボンブラック分散液を得ることが記載されている。
しかしながら、このようなポリビニルアルコールやポリビニルアセタールを分散剤として用いて電池用カーボンブラック分散液を作製した場合、塗工が困難な粘性になる場合があること、高分子量のバインダーを用いた場合、および/または、比表面積が大きく、塩基性が強い、Al、NiやMn等を含有する電極活物質を用いた場合、時間の経過に伴って分散液の粘度が大幅に増大して塗工が困難になる場合があること、該分散液を用いて得た塗膜の、基材に対する密着性が充分ではなく、塗膜の生産工程や塗膜の均質さに懸念が出る場合があることを、発明者は見出した。
カーボンブラック分散液は、塗工が容易であること、貯蔵安定性が良好であること、塗膜が基材に対してより良好に密着することが求められており、従来よりもさらに優れたカーボンブラック分散液の開発が求められている。
一般に、分散液の示す粘性挙動は、分散液を構成する成分の種類や構成比率に大きく影響されることが知られており、分散剤として用いる材料の構造の一部を変更するだけ、あるいは極微量の添加剤を入れるだけで粘性挙動を制御することは困難であることが予想される。また、分散液の貯蔵安定性は使用する分散剤に大きく依存することが知られているが、使用する分散剤を変更することなく貯蔵安定性を大きく改善することは、一般に困難である。
また、分散剤の効果は、pH、イオン強度、含有される材料等、分散液のおかれる環境によって大きく変わる場合があることが知られており、酸や塩基、塩などを微量の添加剤として入れるだけで分散剤の機能や貯蔵安定性が悪化する場合がある。
微量の添加剤を使用することで、カーボンブラックの分散に対して悪影響を与えることなく貯蔵安定性を大きく改善すること、さらには、カーボンブラックと電極活物質のように性状の大きく異なる2種以上の粒子を含む分散液において、期待する効果のみを得る添加剤を選定することは、困難であることが予想される。
さらに、貯蔵により粘性が大きく増大した分散液を塗膜にした場合、塗膜が不均質になり密着性も悪化する場合がある。この密着性の悪化を補うために、バインダーをさらに増やすことも可能だが、他の構成成分の比率が低減されるために好ましくない。また、高分子型分散剤は、その高分子化合物自体がバインダーとしての機能を有する材料である場合もあるが、一般に分散剤として用いる場合には塗膜中に微量しか含まれないため、単純にその高分子型分散剤をバインダーとして機能させることで密着性を改善することは困難であることが予想され、問題の大元である貯蔵安定性を改善することが望まれている。
しかしながら、分散液の粘性挙動、貯蔵安定性や基材に対する密着性を改善できるカーボンブラック分散液を得るために、使用する高分子型分散剤の種類、その分子構造、分子を構成する各構造単位の比率、および、併せて用いる添加材料の種類やその比率についてまで詳細に検討された例は報告されておらず、分散剤として用いる材料や添加剤の種類、比率が粘性挙動や貯蔵安定性、密着性に対してどう影響するのかについては、何ら検討されていないのが実情であった。
国際公開第2009/147989号 国際公開第2011/024799号 特開第2013−48043号 特許第5454725号 特開第2011−184664号
以上の状況を鑑み、本発明では、従来公知の高分子型分散剤を単独で用いて得たカーボンブラック分散液と比較して、分散液の貯蔵安定性に優れた、N−メチル−2−ピロリドンを溶剤とする電池用カーボンブラック分散液を提供することが課題である。また、長期貯蔵後の分散液を用いても塗膜にした際の基材に対する密着性に優れ、均質で良好な塗膜物性が得られる、電池電極合材液および電池電極合材層を提供することが課題である。
本発明者らは、カーボンブラック、分散剤、添加剤、バインダー、電極活物質の物理的、化学的性質に着目し、それらの量的関係についてまで詳細に検討した結果、分散剤としてポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールからなる群より選ばれた1種以上のポリマーを、添加剤として酸性化合物をそれぞれ用いることで、電極活物質含有下でも貯蔵安定性が良好で、塗工性に優れ、塗膜にした際の基材に対する密着性も良好なカーボンラブック分散液を製造できることを見出し、本発明の完成に至った。
即ち、本発明の実施態様は、カーボンブラックと、バインダーと、酸性化合物と、分散剤と、Niおよび/またはMnを含むリチウムとの複合酸化物である正極活物質と、N−メチル−2−ピロリドンとを含むカーボンブラック分散液であって、バインダーが少なくともフッ素原子を有する高分子化合物を含み、分散剤が、下記一般式(A)で表される繰り返し単位を重合体鎖中に50〜95mol%含有するポリビニルアルコールであり、カーボンブラック100質量部に対する分散剤が0.2質量部以上、20質量部以下含有してなり、さらに、正極活物質100質量部に対する、前記分散剤と酸性化合物の合計量が、0.05質量部以上、2.5質量部以下であることを特徴とする、電池用カーボンブラック分散液であり、酸性化合物が、分子量が60以上200以下の、有機酸または1,3−ジケトンである電池用カーボンブラック分散液に関する。
一般式(A)
また、本発明の実施態様は、正極活物質100質量部に対する前記フッ素原子を有する高分子化合物が、0.5質量部以上、20質量部未満含有してなることを特徴とする、上記カーボンブラック分散液に関する。
また、本発明の実施態様は、正極活物質100質量部に対する前記分散剤が、0.04質量部以上、2質量部未満含有してなることを特徴とする、上記カーボンブラック分散液に関する。
また、本発明の実施態様は、正極活物質100質量部に対する前記酸性化合物が、0.01質量部以上、1質量部未満含有してなることを特徴とする、上記カーボンブラック分散液に関する。
また、本発明の実施態様は、上記酸性化合物が、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基およびチオール基からなる群より選ばれた1種以上の酸性官能基を有する有機酸または1,3−ジケトンであることを特徴とする、上記カーボンブラック分散液に関する。
また、本発明の実施態様は、上記酸性化合物が、分子中に酸性官能基を1または2個有することを特徴とする、上記カーボンブラック分散液に関する。
また、本発明の実施態様は、正極活物質100質量部に対する、前記分散剤と酸性化合物の合計量が、0.15質量部以上であることを特徴とする、上記電池用カーボンブラック分散液に関する。
また、本発明の実施態様は、上記電池用カーボンブラック分散液を塗布してなる電池電極合材層に関する。
また、本発明の実施態様は、集電体上に正極合材層を有する正極と、集電体上に負極合材層を有する負極と、リチウムを含む電解質とを具備するリチウムイオン二次電池であって、正極が、上記電池電極合材層を具備してなるリチウムイオン二次電池に関する。
本発明により、従来公知の高分子型分散剤を単独で用いた場合よりも、顕著に良好な貯蔵安定性を有し、塗工性に優れた電池用カーボンブラック分散液を得ることができ、その結果、長期貯蔵後でも良好な塗工適性を維持することが可能となる。
また、該分散液を用いて二次電池用電極合材層を調製した場合、基材に対する密着性に優れ、均質で良好な塗膜を得ることができ、その結果、従来より厳しい塗工条件下でも良好で安定した塗膜を得ることが可能となる。
以下、本発明の詳細を説明する。尚、本明細書では、「カーボンブラック分散液」、「電池用カーボンブラック分散液」を「分散液」、「N−メチル−2−ピロリドン」を「NMP」、「ポリビニルアセタールまたはポリビニルブチラール」を「ポリビニルアセタール類」、「正極活物質または負極活物質」を「電極活物質」と略記することがある。
<カーボンブラック>
本発明に用いるカーボンブラックとしては、市販のアセチレンブラック、ファーネスブラック、中空カーボンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラックなど各種のものを用いることができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、黒鉛化処理されたカーボンブラック、カーボンナノチューブやカーボンナノファイバーなども使用できる。
カーボンブラックの酸化処理は、カーボンブラックを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることによって、例えばフェノール基、キノン基、カルボキシル基、カルボニル基のような酸素含有極性官能基をカーボンブラック表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンブラックの分散性を向上させるために一般的に行われている。
分散液の製造に用いるカーボンブラックの平均一次粒子径としては、一般的な分散液や塗料に用いられるカーボンブラックの平均一次粒子径範囲と同様に0.01〜1μmが好ましく、特に、0.01〜0.2μmが好ましく、0.01〜0.1μmがさらに好ましい。ここでいう平均一次粒子径とは、電子顕微鏡で測定された算術平均粒子径を示し、この物性値は一般にカーボンブラックの物理的特性を表すのに用いられている。
カーボンブラックの物理的特性を表すその他の物性値としては、BET比表面積やpHが知られている。BET比表面積は、窒素吸着によりBET法で測定された比表面積(以下、単に比表面積と記載)を指し、この比表面積はカーボンブラックの表面積に対応しており、比表面積が大きいほど分散剤を必要とする量も多くなる。pHはカーボンブラック表面の官能基や含有不純物の影響を受けて変化する。
本発明で用いるカーボンブラックは、BET比表面積が20〜1500m2/gのものが好ましく、30〜1000m2/gのものがより好ましく、30〜500m2/gのものが特に好ましい。
本発明で用いるカーボンブラックは、特に限定されるものではないが、アセチレンブラックやファーネスブラックなど、高い導電性を有し、かつ工業的に生産されるカーボンブラックが好適に用いられる。
<分散剤>
本発明では、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールおよびポリビニルホルマールからなる群より選ばれた1種以上のポリマーが分散剤として用いられる。
<ポリビニルアルコール>
本発明では、分散剤の一態様としてポリビニルアルコールが用いられる。すなわちポリビニルアルコールをバインダーとしてではなく分散剤として使用する。本発明で用いるポリビニルアルコールの製造方法については特に制限はないが、以下、ポリ酢酸ビニルを原料とし、これをけん化することによって得られたポリビニルアルコールについて記述する。
一般に、ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルを重合させて得られたポリ酢酸ビニルを原料とし、このポリ酢酸ビニルをけん化して、アセチル基を水酸基に置換することによって得られる。この合成プロセスのために、ポリビニルアルコールはアセチル基と水酸基を有し、その比率はけん化度として表される。
なお、本発明におけるけん化度とは、ポリビニルアルコール中に含まれる一般式(A)で表される繰り返し単位の割合(モル%)を表す。例えば、ポリ酢酸ビニルをけん化することにより得たポリビニルアルコールの場合、ポリビニルアルコール中に含まれるビニルアルコール骨格に由来した水酸基数を、酢酸ビニル骨格に由来したアセチル基数とビニルアルコール骨格に由来した水酸基数の和で除した値を意味する。
本発明で使用するポリビニルアルコールは、ポリビニルエステル、特にポリ酢酸ビニルをけん化することによって得られるポリビニルアルコールが専ら使用されるが、これに限定されない。また、ポリビニルアルコール中に含まれる一般式(A)で表される繰り返し単位の割合は、40〜99mol%のものが好ましく、50〜95mol%のものがより好ましく、55〜92mol%のものがさらに好ましく、55〜85mol%のものがさらに好ましく、60〜85mol%のものが特に好ましく使用される。上記範囲内のポリビニルアルコールであれば、各種の市販品、合成品を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。
また、水酸基、アセチル基以外の官能基として、例えば、アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、イソシアネート基を導入されたものや、各種の塩によって変性されたもの、その他アニオンあるいはカチオン変性されたもの、不飽和変性されたもの、アルデヒド類によってアセタール変性(ブチラール変性、アセトアセタール変性、ホルマール変性等)されたもの、ジオール構造を導入されたものなども、本発明で使用するポリビニルアルコールの範囲に含まれ、これらは、単独もしくは2種類以上併せて使用することができる。
分散剤としてのポリビニルアルコールは、平均重合度が50〜3000のものが好ましく、100〜3000のものがより好ましく、100〜2000のものがさらに好ましく、100〜1500のものが特に好ましい。上記重合度のポリビニルアルコールであれば、各種の市販品、合成品を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができる。
上記ポリビニルアルコールに含まれる市販のポリビニルアルコールとしては、例えば、クラレポバール(クラレ社製ポリビニルアルコール)や、ゴーセノール(日本合成化学工業社製ポリビニルアルコール)、デンカポバール(電気化学工業社製)、J−ポバール(日本酢ビ・ポバール社製)などの商品名で、種々のグレードを市場より入手することが出来る。
より具体的には、クラレポバールPVA−403(けん化度78.5〜81.5mol%、平均重合度300、JIS K6726に準ずる液温20℃における4%水溶液粘度2.8〜3.3mPa・s)、クラレポバールPVA−505(けん化度72.5〜74.5mol%、平均重合度500、4%水溶液粘度4.2〜5.0mPa・s)、クラレポバールL−8、クラレポバールL−9、クラレポバールL−9−78、クラレポバールL−10、クラレポバールC−506、クラレポバールKL−506、ゴーセノールKL−03(同78.5〜82.0mol%、平均重合度500以下、4%水溶液粘度2.8〜3.4mPa・s)、KL−05(同78.5〜82.0mol%、平均重合度1000以下、4%水溶液粘度4.0〜5.0mPa・s)、NK−05R(同71.0〜75.0mol%、平均重合度1000以下、4%水溶液粘度4.5〜5.5mPa・s)、KP−08R(同71.0〜73.5mol%、平均重合度1000以下、4%水溶液粘度6.0〜8.0mPa・s)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
<ポリビニルアセタール類およびポリビニルホルマール>
本発明では、分散剤の他の一態様としてポリビニルアセタール類またはポリビニルホルマールが用いられる。すなわち、ポリビニルアセタール類またはポリビニルホルマールをバインダーとしてではなく分散剤として使用する。本発明で用いるポリビニルアセタール類またはポリビニルホルマールの製造方法については特に制限はないが、以下、ポリビニルアルコールを原料とし、これをアセタール化またはホルマール化することによって得られたポリビニルアセタール類またはポリビニルホルマールについて記述する。
一般に、ポリビニルアセタール類またはポリビニルホルマールは、ポリビニルアルコールをアルデヒドと反応させ、アセタール化またはホルマール化することによって得られる。この合成プロセスのために、ポリビニルアセタール類はアセチル基と水酸基とアセタール基とを有し、ポリビニルホルマールはアセチル基と水酸基とホルマール基とを有する。これらの高分子としての性質は、主として水酸基と、アセタール基またはホルマール基の比率によって特徴づけられる。
本発明で使用するポリビニルアセタール類およびポリビニルホルマールは、従来公知の合成法により合成されたものであり、各種の市販品、合成品を単独で、もしくは2種類以上併せて使用することができるが、これに限定されない。
水酸基、アセチル基、アセタール基またはホルマール基以外の官能基としては、例えば、アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アミノ基、イソシアネート基を導入されたものや、エーテル、エステル等の構造を有するもの、各種の塩によって変性されたもの、その他アニオンあるいはカチオン変性されたものも、本発明で使用するポリビニルアセタール類またはポリビニルホルマールの範囲に含まれ、これらは、単独、もしくは2種類以上併せて使用することができる。
ポリビニルアセタール類中に含まれる一般式(A)で表される繰り返し単位の割合は、15〜40mol%が好ましく、20〜36mol%がより好ましい。また、ポリビニルアセタール類中に含まれる、ポリビニルエステルに由来するビニルエステル基の割合は、15mol%以下が好ましく、10mol%以下がより好ましく、5mol%以下がさらに好ましい。
ポリビニルホルマール中に含まれる一般式(A)で表される繰り返し単位の割合は、5〜40mol%が好ましく、10〜30mol%がより好ましい。
分散剤としてのポリビニルアセタール類、ポリビニルホルマールは、平均計算分子量が5000〜200000のものが好ましく、10000〜150000のものが特に好ましく、15000〜150000のものがさらに好ましい。
市販のポリビニルアセタール類、ポリビニルホルマールとしては、例えば、エスレック(積水化学工業社製ポリビニルアセタール)、モビタール(クラレ社製ポリビニルブチラール)、ビニレック(JNC社製ポリビニルホルマール)などの商品名で、種々のグレードを市場より入手することが出来る。
より具体的には、例えば、エスレックBL−1、エスレックBL−10、エスレックBX−Lや、モビタールB16H、モビタール30T、モビタール30HH、モビタール60Tや、ビニレックK、ビニレックL、ビニレックH、ビニレックE、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明では、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールからなる群より選ばれた1種以上のポリマーが分散剤として用いられるが、分散剤はポリビニルアルコール、またはポリビニルブチラールであることが好ましく、ポリビニルアルコールであることが特に好ましい。
これらの分散剤を用いることで、カーボンブラックを良好に分散することができる。
<酸性化合物>
本発明には、酸性化合物を用いる。本発明で使用する酸性化合物について特に制限はなく、市販品、合成品に関わらず、単独もしくは2種類以上併せて使用することができる。なお、酸性化合物とは、使用する電極活物質に対して相対的に酸として振る舞う化合物を表す。
本発明で用いる酸性化合物は、有機酸または1,3−ジケトンであることが好ましく、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基およびチオール基からなる群より選ばれた1種以上の酸性官能基を有する有機酸または1,3−ジケトンであることがより好ましく、カルボキシル基およびスルホン酸基からなる群より選ばれた1種以上の酸性官能基を有する有機酸または1,3−ジケトンであることがより好ましく、カルボキシル基またはスルホン酸基を有する有機酸であることがさらに好ましく、スルホン酸基を有する有機酸であることが特に好ましい。
酸性化合物の酸解離定数(pKa)は、−5以上、10以下のものが好ましく、−3以上、9以下のものがより好ましく、−3以上、7以下のものがさらに好ましく、−3以上、5以下のものがさらに好ましく、−3以上、3以下のものがさらに好ましく、1以上、3以下のものが特に好ましい。酸解離定数の値は、25℃の水溶液中での値等として、化学便覧等から得られる。酸解離定数の値が大きすぎる場合は期待する効果が得られない場合があり、一方、小さすぎる場合は生産ラインの腐食や取り扱い上の注意が必要になる場合がある。
酸性化合物の分子量は、30以上、15000以下のものが好ましく、30以上、10000以下のものがより好ましく、30以上、1000以下のものがさらに好ましく、30以上、500以下のものがさらに好ましく、30以上300以下のものがさらに好ましく、60以上200以下のものが特に好ましい。分子量が大きすぎる場合、カーボンブラックや活物質粒子に対する凝集剤として機能し、分散液の粘性や貯蔵安定性が悪化する場合がある。
酸性化合物が分子量1000以下の低分子化合物である場合、1分子中に有する酸性基の数は、1以上3以下が好ましく、1以上2以下がより好ましい。
酸性化合物は、カーボンブラック分散液中に可溶であることが好ましく、大気圧下、0℃以上、40℃以下において、N−メチル−2−ピロリドン100質量部に対して、0.1質量部以上溶解することがより好ましい。
本発明で用いる酸性化合物としては、具体的には、酢酸、プロピオン酸、カプリル酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸、オレイン酸、ソルビン酸などの不飽和カルボン酸、酒石酸、クエン酸、グリセリン酸などのヒドロキシ酸、安息香酸、サリチル酸、フタル酸などの芳香族カルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸等のジカルボン酸、無水酢酸、無水安息香酸、無水フタル酸、無水マレイン酸等のカルボン酸無水物、ベンゼンスルホン酸やトルエンスルホン酸などのスルホン酸、アセチルアセトンなどの1,3−ジケトンその他オキソ酸化合物、チオール基を有する化合物、リン酸基を有する化合物、フェノール類、エノール類等や、これらの化合物の誘導体、高分子等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
<バインダー>
本発明のカーボンブラック分散液には、さらに、バインダーを含有させる。使用するバインダーとしては、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルピロリドン等を構成単位として含む重合体または共重合体;ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂;カルボキシメチルセルロースのようなセルロース樹脂;スチレン−ブタジエンゴム、フッ素ゴムのようなゴム類;ポリアニリン、ポリアセチレンのような導電性樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂の変性体や混合物、および共重合体でも良い。特に、耐性面から分子内にフッ素原子を有する高分子化合物、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン等の使用が好ましい。
また、バインダーとしてのこれらの樹脂類の重量平均分子量は、10,000〜2,000,000が好ましく、100,000〜1,000,000がより好ましく、200,000〜1,000,000が特に好ましい。分子量が小さいとバインダーの耐性や密着性が低下することがある。分子量が大きくなるとバインダーの耐性や密着性は向上するものの、バインダー自体の粘度が高くなり作業性が低下するとともに、凝集剤として働き、分散された粒子が著しく凝集してしまうことがある。
本発明の想定する産業上の利用可能性から、バインダーは、フッ素原子を有する高分子化合物を含むことが好ましく、フッ素原子を有する高分子化合物であることが好ましく、フッ化ビニリデン系共重合体であることがさらに好ましく、ポリフッ化ビニリデンであることが特に好ましい。
産業上は優れた耐性を得るためにこれらのバインダーが主に用いられているが、接着性の弱い樹脂であるために、塗膜にした際の基材に対する密着性が弱く塗工や加工が困難になる場合が多く、さらに、塩基性金属酸化物の存在下で粘性が大きく増大する場合があり、貯蔵安定性に問題が出る場合がある。そのため、フッ化ビニリデン系共重合体やポリフッ化ビニリデンをバインダーとして用いつつも、密着性や貯蔵安定性を良好に維持したカーボンブラック分散液が求められている。
<N−メチル−2−ピロリドン>
NMPは、リチウムイオン二次電池の電極製造に用いられている。本発明では、分散剤の効果、電池性能を損なわない範囲で、他の溶剤を1種類以上併用しても良いが、本発明の想定する産業上の利用可能性から、NMPを単独で用いることが好ましい。
<活物質>
本発明の電池用カーボンブラック分散液には、さらに、正極活物質または負極活物質を含有させる。
リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、および導電性高分子等を使用することができる。
例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられる。具体的には、MnO、V25、V613、TiO2等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料、TiS2、FeSなどの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。また、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子を使用することもできる。また、上記の無機化合物や有機化合物を混合して用いてもよい。
リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能なものであれば特に限定されない。例えば、金属Li、その合金であるスズ合金、シリコン合金、鉛合金等の合金系、LiXFe23、LiXFe34、LiXWO2、チタン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ケイ素酸リチウム等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン等の導電性高分子系、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素系材料が挙げられる。これら負極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することもできる。
本発明で用いる電極活物質は、N−メチル−2−ピロリドン中で塩基性を示すことが好ましく、表面が炭素材料で被覆されていないことがより好ましい。
本発明で用いる電極活物質は、リチウムおよびリチウム以外の金属元素を主要構成成分として含有する活物質であることが好ましく、正極活物質であることがより好ましい。
本発明で用いる正極活物質は、Al、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属を含むリチウムとの複合酸化物であることが好ましく、Al、Co、Ni、Mnのうちいずれかを含むリチウムとの複合酸化物であることがより好ましく、Ni、および/または、Mnを含むリチウムとの複合酸化物であることが特に好ましい。これらの活物質を用いたとき、特に良好な効果を得ることができる。
これらの活物質は、BET比表面積が0.1〜10m2/gのものが好ましく、0.2〜5m2/gのものがより好ましく、0.3〜3m2/gのものがさらに好ましい。
これらの活物質は、平均粒子径が0.05〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜50μmの範囲内である。本明細書でいう活物質の平均粒子径とは、活物質を電子顕微鏡で測定した粒子径の平均値である。
<カーボンブラック分散液の製造方法>
本発明の分散液は、分散剤としてポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールからなる群より選ばれた1種以上のポリマーを、添加剤として酸性化合物をそれぞれ用いてカーボンブラックをNMP中に分散したものである。この場合、分散剤とカーボンブラックを同時、または順次添加し、混合することで、分散剤をカーボンブラックに作用(吸着)させつつ分散する。但し、カーボンブラック分散液の製造をより容易に行うためには、分散剤をNMP中に溶解、膨潤、または分散させ、その後、液中にカーボンブラックを添加し、混合することで分散剤をカーボンブラックに作用(吸着)させることが、より好ましい。なお、酸性化合物を添加するタイミングは、カーボンブラックを分散処理する前であっても良いし、分散処理の後であっても良い。また、NMP中に分散剤および酸性化合物とカーボンブラックと電極活物質とを同時に仕込み分散処理を行っても良い。
分散装置としては、顔料分散等に通常用いられている分散機を使用することができる。例えば、ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」、PRIMIX社「フィルミックス」等、シルバーソン社製「アブラミックス」等)類、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、コロイドミル(PUC社製「PUCコロイドミル」、IKA社製「コロイドミルMK」)類、コーンミル(IKA社製「コーンミルMKO」等)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル等のメディア型分散機、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスPY」、スギノマシン社製「スターバースト」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等)、エム・テクニック社製「クレアSS−5」、奈良機械社製「MICROS」等のメディアレス分散機、その他ロールミル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
次に、乾式処理により、カーボンブラックを分散剤で表面処理した後、分散液を製造する場合について説明する。NMP中に、下記乾式処理により得たカーボンブラックと分散剤の混合物を添加、混合する事により、カーボンブラック分散液を得ることが出来る。分散剤により表面処理されたカーボンブラックを得る方法としては、乾式処理による方法が挙げられる。
本発明における乾式処理は、常温もしくは加熱下で乾式処理装置により、カーボンブラックおよび分散剤の混合、粉砕等を行いながら、カーボンブラック表面に分散剤を作用(吸着)させるものである。但し、カーボンブラック表面に分散剤が完全に吸着されている必要はなく、ある程度均質に混合出来ていれば、実用上は問題無い場合もある。使用する装置は、特に限定されるものではく、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、アトライター、振動ミル等のメディア型分散機、ニーダー、ローラーミル、石臼式ミル、プラネタリーミキサー、フェンシェルミキサー、ハイブリダイザー((株)奈良機械製作所)、メカノマイクロス((株)奈良機械製作所)、メカノフュージョンシステムAMS(ホソカワミクロン(株))等のメディアレス分散・混錬機が使用できるが、コンタミ等を考慮し、メディアレスの分散・混錬機を使用するのがより好ましい。
また、このとき処理物がゲル状にならない範囲で有機溶剤を添加してもよい。溶剤の添加による分散剤の濡れ、または(一部)溶解、およびカーボンブラックの分散剤に対する濡れが向上することで、カーボンブラックと分散剤間相互作用の促進が期待される。このとき用いる溶剤は特に限定されるものではないが、NMP以外を使用する場合は処理後に乾燥することが望ましい。また、有機溶剤の添加量は用いる材料により異なるが、分散剤の添加量に対して0.5〜100質量%である。さらに、必要に応じて窒素ガスなどを流すことで、乾式処理装置内部を脱酸素雰囲気として処理を行っても良い。
乾式処理時間は、用いる装置によって、また希望とする混練度に応じて任意に設定できる。これらの乾式処理を行うことにより、粉状もしくは塊状の処理物を得ることができる。得られた処理物については、その後さらに、乾燥、粉砕しても良い。
本発明において、電池用カーボンブラック分散液に対する固形分の量は、電池用カーボンブラック分散液100質量%に対して、1質量%〜90質量%が好ましく、40質量%〜85質量%がより好ましく、55質量%〜85質量%がさらに好ましく、60質量%〜85質量%が特に好ましい。
本発明において、カーボンブラックに対する分散剤としてのポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールの添加量は、カーボンブラック100質量部に対して、0.2質量部以上、50質量部以下が好ましく、0.2質量部以上、40質量部以下がより好ましく、0.2質量部以上、20質量部以下がより好ましく、0.2質量部以上、10質量部以下がさらに好ましく、0.2質量部以上、8質量部以下がさらに好ましく、0.3質量部以上、6質量部以下がさらに好ましく、1質量部以上、6質量部以下が特に好ましい。
本発明において、カーボンブラックに対する酸性化合物の添加量は、カーボンブラック100質量部に対して、0.1質量部以上、20質量部以下が好ましく、0.1質量部以上、10質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上、5質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上、3質量部以下がさらに好ましく、0.2質量部以上、2質量部以下がさらに好ましく、0.2質量部以上、1質量部以下が特に好ましい。
カーボンブラック分散液における分散剤や酸性化合物の添加量は、添加するカーボンブラックの比表面積やカーボンブラック粒子の分散後の平均粒子径、カーボンブラックへの吸着量等により決定される。
本発明において、バインダーの添加量は、電池用カーボンブラック分散液に含まれる正極活物質または負極活物質100質量部に対して、0.5質量部以上、20質量部未満が好ましく、1質量部以上、15質量部以下がより好ましく、1質量部以上、10質量部以下がさらに好ましく、2質量部以上、8質量部以下がさらに好ましく、2質量部以上、5質量部以下が特に好ましい。
本発明において、分散剤としてのポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールと、酸性化合物の合計量は、電池用カーボンブラック分散液に含まれる正極活物質または負極活物質100質量部に対して、0.05質量部以上、2.5質量部以下が好ましく、0.05質量部以上、2質量部以下がより好ましく、0.05質量部以上、1.5質量部以下がより好ましく、0.05質量部以上、1.25質量部以下がさらに好ましく、0.05質量部以上、1質量部以下がさらに好ましく、0.05質量部以上、0.5質量部以下が特に好ましい。
正極活物質または負極活物質に対する、分散剤および/または酸性化合物の量が多すぎると、活物質や導電剤が占める相対的な固形分比率が減小することになるだけではなく、分散剤または酸性化合物が電解液に対して溶出または膨潤し、電池電極合材層としての化学的安定性や物理的な形状の安定性が悪化する場合がある。
本発明において、分散剤としてのポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールの添加量は、電池用カーボンブラック分散液に含まれる正極活物質または負極活物質100質量部に対して、0.04質量部以上、2質量部未満が好ましく、0.04質量部以上、1.5質量部未満がより好ましく、0.04質量部以上、1.25質量部未満がさらに好ましく、0.04質量部以上、1質量部未満がさらに好ましく、0.04質量部以上、0.5質量部未満がさらに好ましく、0.04質量部以上、0.3質量部未満が特に好ましい。
本発明において、酸性化合物の添加量は、電池用カーボンブラック分散液に含まれる正極活物質または負極活物質100質量部に対して、0.01質量部以上、1質量部未満が好ましく、0.01質量部以上、0.75質量部未満がより好ましく、0.01質量部以上、0.5質量部未満がさらに好ましく、0.01質量部以上、0.25質量部未満がさらに好ましく、0.01質量部以上、0.15質量部未満がさらに好ましく、0.02質量部以上、0.1質量部未満が特に好ましい。
正極活物質または負極活物質に対する酸性化合物の添加量は、酸性化合物の官能基数や酸強度だけでなく、酸性化合物の活物質粒子に対する吸着量、活物質の粒子径、比表面積や粒子表面の塩基性の強さ、添加するバインダーの濃度や分子量、バインダーと活物質の反応性等により決定される。
正極活物質または負極活物質に対する酸性化合物の量が多すぎると、粒子の分散が悪化して分散液の粘度が大幅に増大し、塗工が困難になる場合がある。また、カーボンブラックに対する分散剤の機能を阻害する場合がある。さらに、たとえ塗工性が良好な分散液を得ることができたとしても、基材に対する塗膜の密着性が大幅に悪化して加工性が悪化する場合がある。
上記のような比率で配合することにより、本発明が解決しようとする課題である電池用カーボンブラック分散液の貯蔵安定性、塗工適性や基材に対する塗膜の密着性の向上が可能となり、分散性、貯蔵安定性、塗工適性、密着性に優れた分散液を得ることが容易となる。
<電極>
本発明の正極活物質または負極活物質を含有するカーボンブラック分散液を、集電体上に塗工・乾燥することで、電池電極合材層を形成し、電極を得ることができる。
(集電体)
電極に使用する集電体の材質や形状は特に限定されず、各種二次電池にあったものを適宜選択することができる。例えば、集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、又はステンレス等の金属や合金が挙げられる。また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状の集電体も使用できる。
集電体上に合材スラリーや下地層形成用組成物を塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
また、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。電極合材層の厚みは、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
<二次電池>
正極もしくは負極の少なくとも一方に上記の電極を用い、二次電池を得ることができる。二次電池としては、リチウムイオン二次電池の他、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウム二次電池、アルカリ二次電池、鉛蓄電池、ナトリウム硫黄二次電池、リチウム空気二次電池等が挙げられ、それぞれの二次電池において、従来から知られている電解液やセパレーター等を適宜用いることができる。
(電解液)
リチウムイオン二次電池の場合を例にとって説明する。電解液としては、リチウムを含んだ電解質を非水系の溶媒に溶解したものを用いる。電解質としては、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、LiC49SO3、Li(CF3SO23C、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF2、LiSCN、又はLiBPh4等が挙げられるが、これらに限定されない。
非水系の溶媒としては、特に限定はされないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、及びγ−オクタノイックラクトン等のラクトン類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、及び1,2−ジブトキシエタン等のグライム類;メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で使用しても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
(セパレーター)
セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布及びこれらに親水性処理を施したものが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
(電池構造・構成)
本発明の組成物を用いたリチウムイオン二次電池の構造については特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレーターとから構成され、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型等、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
本発明では、上記課題に支障を及ぼさない範囲で、塗膜物性等の調整等の目的で、従来公知の分散剤や樹脂、添加剤等を併用しても良い。
そのような分散剤としては、例えば、従来公知の色素誘導体や樹脂型分散剤、低分子量の界面活性剤等が挙げられる。また樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、スチレンブタジエンゴムなどの各種ゴム、リグニン、ペクチン、ゼラチン、キサンタンガム、ウェランガム、サクシノグリカン、セルロース系樹脂、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルエーテル、キチン類、キトサン類、デンプン等が挙げられる。また添加剤としては、リン化合物、硫黄化合物、アミン化合物やアミド化合物、有機エステル、各種シラン系やチタン系、アルミニウム系のカップリング剤等が挙げられる。これらの従来公知の分散剤や樹脂、添加剤等は、単独または2種類以上併用して用いることが出来る。
<電池用カーボンブラック分散液の用途>
本発明のカーボンブラック分散液の利用分野としては、リチウムイオン二次電池用電極、電気二重層キャパシタ用電極、リチウムイオンキャパシタ用電極などに好適に用いられる。
以下、実施例に基づき、本発明を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。本実施例中、部は質量部を、%は質量%を、それぞれ表す。
実施例及び比較例で使用したカーボンブラック(「CB」と略記することがある)、ポリビニルアルコール(「PVA」と略記することがある)、バインダー、電極活物質等を以下に示す。
<カーボンブラック>
・#30(三菱化学社製):ファーネスブラック、平均一次粒子径30nm、比表面積74m2/g、以下#30と略記する。
・#5(三菱化学社製):ファーネスブラック、平均一次粒子径76nm、比表面積29m2/g、以下#5と略記する。
・デンカブラックHS−100(電気化学工業社製):アセチレンブラック、平均一次粒子径48nm、比表面積39m2/g、以下HS−100と略記する。
・デンカブラック粒状品(電気化学工業社製):アセチレンブラック、平均一次粒子径35nm、比表面積69m2/g、以下粒状品と略記する。
・EC−300J(ライオン社製):ケッチェンブラック、平均一次粒子径40nm、比表面積800m2/g、以下300Jと略記する。
(カーボンブラックの平均一次粒子径の測定方法)
カーボンブラックの平均一次粒子径(MV)は、以下に示す方法により測定(算出)した。カーボンブラックの粉末にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを加え、樹脂型分散剤としてDisperbyk−161を少量添加し、超音波洗浄機の水浴中で1分間分散処理して測定用試料を調製した。この試料を測定用ターゲットに塗布、乾燥し、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製透過型電子顕微鏡H−7650)により、100個以上のカーボンブラックの一次粒子が観察出来る写真を撮影した。撮影された画像にて、カーボンブラック粒子の任意の100個を選び、その一次粒子の短軸径と長軸径の平均値を粒子径(d)とし、次いで個々のカーボンブラックを、求めた粒子径(d)を有する球とみなして、それぞれの粒子の体積(V)を求め、この作業を100個のカーボンブラック粒子について行い、そこから下記式(1)を用いて算出した。

式(1) MV=Σ(V・d)/Σ(V)
<分散剤>
<ポリビニルアルコール>
・クラレポバール PVA−405(クラレ社製): ポリビニルアルコール、けん化度82モル%、平均重合度500、以下PVA1と略記する。
・クラレポバール PVA−505(クラレ社製): ポリビニルアルコール、けん化度73モル%、平均重合度500、以下PVA2と略記する。
・PVA3: ポリビニルアルコール、けん化度92モル%、平均重合度約500。
・PVA4: ポリビニルアルコール、けん化度60モル%、平均重合度約500。
尚、上記PVA3およびPVA4は、業界公知の方法により、ポリ酢酸ビニルを水酸化ナトリウムでけん化することで得たものである。
<ポリビニルアセタール類>
・エスレックBH−3(積水化学工業社製): ポリビニルブチラール樹脂、水酸基34mol%、ブチラール化度65mol%、計算分子量110000。以下PVAcと略記する。
<酸性化合物>
・安息香酸: 和光純薬工業製。分子量122。
・アジピン酸: 和光純薬工業製。分子量146。
・コハク酸: 東京化成工業製。分子量118。
・o−フタル酸: 東京化成工業製。分子量166。
・ベンゼンスルホン酸: 和光純薬工業製。分子量158。以下、B1と略記する。
・サートマー1000: サートマー社製。スチレン/無水マレイン酸共重合体。スチレン/無水マレイン酸=1/1、分子量約5500。以下、S1と略記する。
・イソバン−10: クラレ社製。イソブチレン/無水マレイン酸共重合体。分子量約160000。以下、I1と略記する。
・クエン酸: 和光純薬工業製。分子量192。
<バインダー>
・KFポリマーW1100(クレハ社製):ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、重量平均分子量約280000。以下、#1100と略記する。
・KFポリマーW7300(クレハ社製):ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、重量平均分子量約1000000。以下、PVDFと略記する。
<活物質>
・正極活物質:三元系活物質(LiMn0.3Co0.2Ni 0.5 2)、平均粒子径4μm、
比表面積1.5m2/g、以下、MCNと略記する。
・負極活物質:人造黒鉛、平均粒子径12μm、以下、黒鉛と略記する。
<その他添加剤>
・キサンタンガム: 和光純薬工業製。以下、K1と略記する。
・ポリビニルピロリドン K−90: 東京化成工業製。粘度平均分子量630000。以下、K−90と略記する。
・サーフィノール420: 日信化学工業社製。ノニオン性界面活性剤。以下S420と略記する。
<電池用カーボンブラック分散液の評価>
実施例、比較例で得られた電池用カーボンブラック分散液の評価は、粘性を測定することにより行った。その良否の判断は、〇:チキソ性が充分高く、かつ容易に塗工可能な粘度のもの(良好)、△:容易に塗工可能な粘度だがチキソ性があまり高くないもの(可)、△△:チキソ性は充分高く塗工も可能だが、粘度が高いもの(可)、×:塗工可能な粘度だが、チキソ性が低いもの(不可)、××:チキソ性は充分高いが、塗工できないほど粘度が高いもの(不可)、とした。
なお、ここで言うチキソ性とは、撹拌することによって粘度が低下し、かつ静置することによって粘度が増大する性質を表し、下記式(2)の値が1.3以上の場合を「チキソ性が充分に高い」、1.1以上1.3未満の場合を「チキソ性があまり高くない」、1.1未満の場合を「チキソ性が低い」とした。また、せん断速度10s-1における粘度値が100Pa・s以上のものを「塗工できないほど粘度が高い」とし、50Pa・s以上100Pa・s未満のものを「塗工は可能だが粘度が高い」とした。撹拌による粘度の低下が大きいものは塗工しやすく、静置することによる粘度の増大が大きいものは、塗液の垂れ広がりや粒子の沈降が起こりにくいため、良好な塗膜が得られる。

式(2) せん断速度1s-1のときの粘度値/せん断速度10s-1のときの粘度値
粘性および粘度の測定は、分散液を25℃に保ち、ヘラで充分に撹拌した後、直ちに行った。具体的には、レオメータ(コーンプレート型、HAAKE社製RS−75)を用い、直径20mm、コーンアングル2°のコーンセンサーを使用して、速度制御モード、せん断速度0.1s-1から1000s-1までを3分間かけて測定を行った。
また、貯蔵安定性の評価は、カーボンブラック分散液を50℃にて7日間静置して保存した後の、液性状の変化から評価した。液性状の変化は、ヘラで撹拌した際の撹拌しやすさ、およびレオメータ測定結果から判断し、貯蔵安定性試験にかける前の粘性および粘度に対する変化の程度から、○:問題なし(良好)、△:粘度は上昇しているがゲル化はしていない(可)、×:ゲル化している(極めて不良)、××:粒子が凝集して分散液が2層に分離している(極めて不良)とした。
<電池用カーボンブラック分散液の調製>
[実施例1−1]
ガラス瓶に、NMPを54部、PVA1を0.25部、および安息香酸0.09部をそれぞれ仕込み、充分に混合溶解した。次いで、カーボンブラック5部、PVDF2.5部を仕込み、ホモジナイザーで30分間分散した。その後、MCN92.5部を仕込み、ディスパーにより充分混合、分散することで、電池用カーボンブラック分散液を得た。得られた分散液は、粘性および粘度が良好で、かつ、貯蔵安定性試験後も良好な状態を保っていた。
[実施例1−2〜実施例1−29]
表1に示す組成に従い、実施例1−1と同様の方法で電池用カーボンブラック分散液を作製した。得られた分散液は、粘性および粘度が良好で、かつ、貯蔵安定性試験後も良好な状態を保っていた。
実施例1−2、実施例1−20、実施例1−21、実施例1−28、実施例1−29は参考例である。
[比較例1−1〜比較例1−4]
表2に示す組成に従い、実施例1−1と同様の方法で電池用カーボンブラック分散液を作製した。得られた分散液は、作製直後は塗工可能な粘度であるもののチキソ性が低く、また、貯蔵安定性試験後は粘度が大きくなりすぎ、塗工困難な状態になっていた。
PVAを分散剤として単独で使用した場合や、酸性化合物の代わりにノニオン性界面活性剤や増粘剤を入れた場合についても、分散液の粘性や貯蔵安定性を改善することはできないことが明らかとなった。
[比較例1−5〜比較例1−6]
表2に示す組成に従い、実施例1−1と同様の方法で電池用カーボンブラック分散液を作製した。得られた分散液は、チキソ性は充分高いが塗工困難なほど粘度が高く、さらに、貯蔵安定性試験後は、粒子が一部凝集して分散液が2層に分離していた。
活物質100質量部に対する分散剤および酸性化合物の量が3質量部以上、かつ酸性化合物の量が3質量部以上の場合、良好な分散液が得られないことが明らかとなった。
[比較例1−7〜比較例1−8]
表2に示す組成に従い、実施例1−1と同様の方法で電池用カーボンブラック分散液を作製した。得られた分散液は、塗工可能な粘性および粘度で、かつ、貯蔵安定性試験後も塗工可能な粘性を保っていたものの、後述する電極合材層のサイクル試験の結果が著しく不良だった。
<電池電極合材層の作製>
上記の各実施例、比較例で得られた正極活物質または負極活物質を含む、貯蔵安定性試験後の電池用カーボンブラック分散液を電池電極合材液として、アルミ箔上にドクターブレードを用いて塗工した後、減圧下120℃で30分間乾燥し、乾燥後膜厚100μmの塗膜(電池電極合材層)を作製した。
得られた電池電極合材層の評価は、密着性(剥離強度試験)と塗膜外観により行った。塗膜外観は、目視で、○:問題なし(良好)、△:斑模様あり(可)、×:粗粒の筋引きあり(極めて不良)、とした。
なお、剥離強度の測定には卓上型引張試験機(東洋精機製作所製、ストログラフE3)を用い、180度剥離試験法により評価した。具体的には、100mm×20mmサイズの両面テープ(No.5000NS、ニトムズ(株)製)をアクリル板上に貼り付け、作製した電池電極合材層を両面テープのもう一方の面に密着させ、一定速度(50mm/分)で上方に引っ張り、剥離試験を行った。剥離強度試験の結果は、◎:問題なし(特に良好、剥離強度1N/cm以上)、○:問題なし(良好、剥離強度500mN/cm以上)、△:〇の場合よりは剥離強度が低いが問題なし(可、剥離強度300mN/cm以上)、△△:△の場合よりも剥離強度が低いが使用可能(可、剥離強度100mN/cm以上)、×:強度が弱く、剥がれやすい(極めて不良、剥離強度50mN/cm未満)、とした。
[実施例2−1〜実施例2−23、比較例2−1〜比較例2−8]
正極合材液として、実施例1−1〜実施例1−23、および比較例2−1〜比較例2−8で得た電池電極合材液を使用して、正極合材層(電池電極合材層)を作製した。評価結果を表3に示した。
実施例2−20、実施例2−21は参考例である。
表3より、実施例2−1〜実施例2−23の電池電極合材層は、比較例2−1〜比較例2−6の電池電極合材層と比較して塗膜外観が良好であり、さらに、塗膜の密着性が優れていることが明らかとなった。比較例2−1〜比較例2−6では、使用した電極合材液の粘度が高すぎるために塗工が困難であり、そのため塗膜外観や密着性について良好な結果を得ることはできなかった。
<リチウムイオン二次電池正極評価用セルの組み立て>
[実施例3−1〜実施例3−19、比較例3−1〜比較例3−4]
先に調製した電池電極合材液(実施例1−1〜実施例1−17、実施例1−22〜実施例1−23、および比較例1−5〜比較例1−8の正極合材液)を、集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧下120℃で加熱乾燥した後、ローラープレス機にて圧延処理し、厚さ100μmの正極合材層を作製した。これを直径9mmに打ち抜き作用極とし、金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を対極として、作用極および対極の間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレーター(セルガード社製#2400)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを容量比1:1で混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を満たして二極密閉式金属セル(宝泉社製HSフラットセル)を組み立てた。セルの組み立ては、アルゴンガス置換したグローブボックス内で行った。
<リチウムイオン二次電池正極特性評価>
作製した正極評価用セルを30℃で、充放電装置(北斗電工社製SM−8)を使用して、充電レート1.0Cの定電流定電圧充電(上限電圧4.2V)で満充電とし、充電時と同じレートの定電流で、放電下限電圧3.0Vまで放電を行う充放電を1サイクル(充放電間隔休止時間30分)とし、このサイクルを合計50サイクル行い、充放電を行った。アルゴンガス置換したグローブボックス内で評価後のセルを分解し、電極塗膜の外観(50サイクル後の塗膜外観)を目視にて確認した。塗膜外観の評価基準は、集電体からの剥がれが認められず外観に全く変化が無い場合を○(極めて良好)、剥がれてはいないが外観に変化が認められる場合を△(良好)、部分的に合材が集電体より剥がれが認められる場合を×(不良)とした。
また、容量維持率は、1サイクル目の放電容量に対する50サイクル目の放電容量の百分率であり、数値が100%に近いものほど良好であることを示す。容量維持率が95%以上の場合を◎(極めて良好)、容量維持率が90%以上95%未満の場合を〇(良好)、容量維持率が80%以上90%未満の場合を△(可)とし、集電体からの塗膜の剥離やショート等により正常な充放電曲線が得られず、容量が求められなかった場合は数値無し(−)とした。評価結果を表4に示した。
表4より、本発明の電極を使用した実施例3−1〜実施例3−19は、比較例3−1〜比較例3−4と比較して、50サイクル後の塗膜外観や容量維持率についても、良好な結果であった。一方、比較例3−1〜比較例3−2は、良好な塗膜を得ることが出来なかったため、正極特性を評価することが出来なかった。比較例3−3〜比較例3−4は、塗膜を得ることはできたが、サイクル試験の途中でPVAcまたはPVAが電解液へと溶解または大きく膨潤したため、正極特性を評価することが出来なかった。
活物質100質量部に対する分散剤の量が3質量部以上の場合や、フッ素含有高分子化合物をPVAやPVAcですべて代替した場合、良好な電池電極合材層が得られないことが明らかとなった。

Claims (9)

  1. カーボンブラックと、バインダーと、酸性化合物と、分散剤と、Niおよび/またはMnを含むリチウムとの複合酸化物である正極活物質と、N−メチル−2−ピロリドンとを含むカーボンブラック分散液であって、バインダーが少なくともフッ素原子を有する高分子化合物を含み、分散剤が、下記一般式(A)で表される繰り返し単位を重合体鎖中に50〜95mol%含有するポリビニルアルコールであり、カーボンブラック100質量部に対する分散剤が0.2質量部以上、20質量部以下含有してなり、さらに、正極活物質100質量部に対する、前記分散剤と酸性化合物の合計量が、0.05質量部以上、2.5質量部以下であることを特徴とする、電池用カーボンブラック分散液であり、酸性化合物が、分子量が60以上200以下の、有機酸または1,3−ジケトンである電池用カーボンブラック分散液。
    一般式(A)

  2. 正極活物質100質量部に対する前記フッ素原子を有する高分子化合物が、0.5質量部以上、20質量部未満含有してなることを特徴とする、請求項1記載の電池用カーボンブラック分散液。
  3. 正極活物質100質量部に対する分散剤が、0.04質量部以上、2質量部未満含有してなることを特徴とする、請求項1または2記載の電池用カーボンブラック分散液。
  4. 正極活物質100質量部に対する酸性化合物が、0.01質量部以上、1質量部未満含有してなることを特徴とする、請求項1〜3いずれか記載の電池用カーボンブラック分散液。
  5. 上記酸性化合物が、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基およびチオール基からなる群より選ばれた1種以上の酸性官能基を有する有機酸または1,3−ジケトンであることを特徴とする、請求項1〜4いずれか記載のカーボンブラック分散液。
  6. 酸性化合物が、分子中に酸性官能基を1または2個有することを特徴とする、請求項1〜5いずれか記載のカーボンブラック分散液。
  7. 正極活物質100質量部に対する、前記分散剤と酸性化合物の合計量が、0.15質量部以上であることを特徴とする、請求項1〜6いずれか記載の電池用カーボンブラック分散液。
  8. 請求項1〜7いずれか記載の電池用カーボンブラック分散液を塗布してなる電池電極合材層。
  9. 集電体上に正極合材層を有する正極と、集電体上に負極合材層を有する負極と、リチウムを含む電解質とを具備するリチウムイオン二次電池であって、正極が、請求項8記載の電池電極合材層を具備してなるリチウムイオン二次電池。
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