JP2020071932A - 電池用カーボンブラック合剤スラリーの製造方法とその利用 - Google Patents

電池用カーボンブラック合剤スラリーの製造方法とその利用 Download PDF

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Abstract

【課題】電極活物質を含まないカーボンブラック分散液調整後に電極活物質を添加し分散することで、金属異物が混入しても短絡等による性能低下しない電池性能に優れたリチウム二次電池を実現できることを見出し、本発明をなすに至ったものである。【解決手段】下記[1]及び[2]の工程を有することを特徴とする電池用カーボンブラック合剤スラリーの製造方法。[1] カーボンブラック、ノニオン分散剤、含窒素複素環を有する化合物、及び溶媒を含有してなる混合溶液を、混合、撹拌して、分散液全総量に対して、10ppb以上の金属を含むカーボンブラック分散液を調製する工程。[2] [1]で調製したカーボンブラック分散液に、正極または負極活物質を混合する工程。【選択図】なし

Description

本発明は、特定の構造の含窒素複素環を有する化合物をノニオン分散剤と共に添加することを特徴とする電池用カーボンブラック合剤スラリーの製造方法に関するものであり、詳しくは、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾロン、ベンゾイミダゾール、またはそれぞれの誘導体のいずれかの化合物を電池用カーボンブラック分散液調製時に添加することで、金属、特に銅異物が混入しても短絡等による性能低下しない、リチウム二次電池に関するものである。
近年、デジタルカメラや携帯電話のような小型携帯型電子機器が広く用いられるようになってきた。これらの電子機器には、容積を最小限にし、かつ質量を軽くすることが常に求められてきており、搭載される電池においても、小型、軽量かつ大容量の電池の実現が求められている。また、自動車搭載用などの大型二次電池においても、従来の鉛蓄電池に代えて、大型の非水電解質二次電池の実現が望まれている。
そのような要求に応えるため、リチウム二次電池の開発が活発に行われている。リチウム二次電池の電極としては、リチウムイオンを含む正極活物質と導電助剤と有機バインダーなどからなる電極合剤を金属箔の集電体の表面に固着させた正極、及び、リチウムイオンの脱挿入可能な負極活物質と導電助剤と有機バインダーなどからなる電極合剤を金属箔の集電体の表面に固着させた負極が使用されている。
一般的に、正極活物質としては、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウム遷移金属複合酸化物が用いられているが、これらは電子伝導性が低く、単独での使用では十分な電池性能が得られない。そこで、カーボンブラック(例えば、アセチレンブラック)やグラファイト(黒鉛)等の炭素材料を導電助剤として添加することで導電性を改善し、電極の内部抵抗を低減することが試みられている。
一方、負極活物質としては、通常黒鉛が用いられている。黒鉛はそれ自身が導電性を有しているものの、黒鉛と共に導電助剤としてアセチレンブラック等のカーボンブラックを添加すると充放電特性が改善されることが知られている。これは、一般に用いられる黒鉛粒子は大きいために、黒鉛単独で使用すると電極層に充填された時の隙間が多くなってしまうが、導電助剤としてカーボンブラックを併用した場合は、微細なカーボンブラック粒子が黒鉛粒子間の隙間を埋めることで接触面積が増え、抵抗が下がるためではないかと思われる。しかしながら、この場合も導電助剤の分散が不十分であると、導電効果が低減する。
この様に、とりわけ電極の内部抵抗を低減することは、大電流での放電を可能とすることや、充放電の効率を向上させる上で非常に重要な要素の一つとなっている。しかしながら、導電性に優れた炭素材料(導電助剤)は、ストラクチャーや比表面積が大きいため凝集力が強く、リチウム二次電池の電極合剤形成用スラリー中に均一混合・分散することが困難である。そして、導電助剤である炭素材料の分散性や粒度の制御が不十分な場合、均一な導電ネットワークが形成さないために電極の内部抵抗の低減が図れず、その結果、活物質であるリチウム遷移金属複合酸化物やグラファイトなどの性能を十分に引き出せないという問題が生じている。また、電極合剤中の導電助剤の分散が不十分であると、部分的凝集に起因して電極板上に抵抗分布が生じ、電池として使用した際に電流が集中し、部分的な発熱及び劣化が促進される等の不具合が生ずることがある。
さらに、リチウム二次電池においては、金属成分の負極上での還元・析出による電池性能劣化の問題や、短絡の発生による過剰発熱や発火といった安全性に関わる問題がある。金属成分による性能劣化や短絡の要因としては、(1)製造工程における、銅や鉄といった金属不純物の混入や、(2)正極、集電体、電池容器等に含まれる金属イオンが電解液中へ溶出した後に、負極上で還元・析出することや、また、(3)正極の劣化により、正極活物質から金属イオンが溶出し、負極上で還元・析出すること、等が考えられる。鉄のように磁性を有する金属に関しては、混入しても磁選工程等によりそれらの回収が可能であり、電池性能の低下や短絡を防ぐことができるが、銅のような磁選で回収し得ない金属については金属異物混入後の除去が難しい。
銅異物が混入したときの銅イオンの電解液への溶出、そして負極への異物析出を抑制するために、様々な添加剤が検討されている。特許文献1では、アルカリ電池の正極合剤にEDTAなどのキレート剤を配合したアルカリ電池を提案している。この発明では、正極合剤に対し、キレート剤を添加することにより、正極合剤中の二酸化マンガンから、重金属不純物である銅がイオン化した場合であっても、銅イオンを錯体化する試みがなされている。しかしながら、電解液を通じてキレート剤が拡散し、イオン化した活物質をキレート形成により捕捉するため、活物質の容量が減少するため、放電容量が低減してしまう。
また、特許文献2では、非水電池容器内にベンゾトリアゾールまたはその誘導体を存在させる非水電池を提案している。この発明では電解液だけでなく、電極(特に負極)に処理することで、非水電池の性能を向上させる試みがなされている。しかしながら、この発明に示される方法により電解液及び電極合剤に添加しても、特許文献1と同様に活物質に対して作用しこれらを捕捉・不活性化するため、活物質の容量が減少するため、放電容量が低減してしまう。また、添加剤が活物質に対して作用するため、系中に混入する銅異物の及ぼす電池性能低下は避けられない。
さらに、特許文献3では、導電助剤に金属イオンを捕捉する機能を付与する有機色素誘導体を含む電池用組成物を提案している。この発明では、有機色素誘導体の有する酸性官能基により電解液中の金属イオンの捕捉効果を発現する。しかしながら、有機色素誘導体の有する酸性官能基は、導電助剤である炭素材料の溶剤への濡れ性にも同時に大きく影響を与えるため、金属量によって分散液そのもの分散性や安定性のバランスが崩れてしまう。系中に残存しても電池性能に影響を与えず、さらに導電助剤の分散性を維持し得る添加剤が必要であり、この発明では不十分である。
特開2008−21497号公報 特開平6−349523号公報 国際公開2008/108360号パンフレット
以上の状況を鑑み、本発明では、銅などの金属異物が混入しても短絡等による電池性能低下せず優れた電池特性を達成することができる電池用カーボンブラック合剤スラリーの製造方法、およびその用途を提供することが課題である。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、電極活物質を含まないカーボンブラック分散液調整後に電極活物質を添加し分散することで、金属異物が混入しても短絡等による性能低下しない電池性能に優れた電池を実現できることを見出し、本発明をなすに至ったものである。
即ち、本発明の実施態様は、下記[1]及び[2]の工程を有することを特徴とする電池用カーボンブラック合剤スラリーの製造方法に関する。
[1] カーボンブラック、ノニオン分散剤、含窒素複素環を有する化合物、及び溶媒を含有してなる混合溶液を、混合、撹拌して、分散液全総量に対して、10ppb以上の金属を含むカーボンブラック分散液を調製する工程。
[2] [1]で調製した分散液に、正極または負極活物質を混合する工程。
また、本発明は、含窒素複素環を有する化合物が、下記一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール、下記一般式(2)で表されるベンゾイミダゾロン、及び下記一般式(3)で表されるベンゾイミダゾールからなる群より選ばれる少なくともひとつである上記電池用カーボンブラック合剤スラリーの製造方法に関する。
一般式(1)
Figure 2020071932
一般式(2)
Figure 2020071932
一般式(3)
Figure 2020071932
一般式(1)〜(3)中、X1〜X3はそれぞれ独立して水素、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアリール基、−OCORである。
1〜R12は、それぞれ独立して水素、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアリール基、−COOR、ハロゲン基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、である。
また、本発明は、カーボンブラックが、アセチレンブラックであることを特徴とする上記電池用カーボンブラック合剤スラリーの製造方法に関する。
また、本発明は、ノニオン分散剤が、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、及びセルロース系ポリマーからなる群より選ばれる少なくともひとつである上記電池用カーボンブラック合剤スラリーの製造方法に関する。
また、本発明は、溶媒が、N−メチル−2−ピロリドンである上記電池用カーボンブラック合剤スラリーの製造方法に関する。
また、本発明は、上記電池用カーボンブラック合剤スラリーの製造方法で製造されてなる合剤スラリーを塗布してなる工程を含む電池用カーボンブラック分散膜に関する。
また、本発明は、電極基材上に、上記電池用カーボンブラック分散膜を備えてなる電池用電極に関する。
また、本発明は、上記電池用電極を備えたリチウムイオン二次電池に関する。

以下、本発明の詳細を説明する。尚、本明細書では、「N−メチル−2−ピロリドン」を「NMP」、「正極活物質または負極活物質」を「電極活物質」または「活物質」、「活物質及びバインダーを含むカーボンブラック分散液」を「カーボンブラック合剤スラリー」、「合剤スラリー」または「合剤組成物」と略記することがある。
<カーボンブラック>
本発明に用いるカーボンブラックとしては、市販のアセチレンブラック、ファーネスブラック、中空カーボンブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラックなど各種のものを用いることができる。また、通常行われている酸化処理されたカーボンブラックや、黒鉛化処理されたカーボンブラック、カーボンナノチューブやカーボンナノファイバーなども使用できる。
カーボンブラックの酸化処理は、カーボンブラックを空気中で高温処理したり、硝酸や二酸化窒素、オゾン等で二次的に処理したりすることによって、例えばヒドロキシ基、キノン基、カルボキシ基、カルボニル基のような酸素含有極性官能基をカーボンブラック表面に直接導入(共有結合)する処理であり、カーボンブラックの分散性を向上させるために一般的に行われている。
カーボンブラックの物理的特性を表すその他の物性値としては、BET比表面積やpHが知られている。BET比表面積は、窒素吸着によりBET法で測定された比表面積(以下、単に比表面積と記載)を指し、この比表面積はカーボンブラックの表面積に対応しており、比表面積が大きいほど分散剤を必要とする量も多くなる。pHはカーボンブラック表面の官能基や含有不純物の影響を受けて変化する。
分散液、そして合剤スラリーの製造に用いるカーボンブラックの平均一次粒子径としては、一般的な分散液や塗料に用いられるカーボンブラックの平均一次粒子径範囲と同様に0.01〜1μmが好ましく、特に、0.01〜0.2μmが好ましく、0.01〜0.1μmがさらに好ましい。ここでいう平均一次粒子径とは、電子顕微鏡で測定された算術平均粒子径を示し、この物性値は一般にカーボンブラックの物理的特性を表すのに用いられている。
本発明で用いるカーボンブラックは、BET比表面積が20〜1500m2/gのものが好ましく、30〜1000m2/gのものがより好ましく、30〜500m2/gのものが特に好ましい。
市販のカーボンブラックとしては、例えば、トーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500等(東海カーボン社製、ファーネスブラック)、プリンテックスL等(デグサ社製、ファーネスブラック)、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRA等、Conductex SC ULTRA、Conductex 975 ULTRA等、PUER BLACK100、115、205等(コロンビヤン社製、ファーネスブラック)、#2350、#2400B、#2600B、#3050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400B等(三菱化学社製、ファーネスブラック)、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC−72R、BlackPearls2000等(キャボット社製、ファーネスブラック)、Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、SuperP−Li(TIMCAL社製)、ケッチェンブラックEC−300J、EC−600JD(ライオン社製)、デンカブラック、デンカブラックHS−100、FX−35(デンカ社製、アセチレンブラック)等、グラファイトとしては、例えば人造黒鉛や燐片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛などの天然黒鉛が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明で用いるカーボンブラックは、特に限定されるものではないが、アセチレンブラックやファーネスブラックなど、高い導電性を有し、かつ工業的に生産されるカーボンブラックが好適に用いられる。
<ノニオン分散剤>
本発明においてノニオン分散剤を用いる理由としては、(1)リチウムイオン二次電池内でのリチウムイオンの移動を阻害しないため、(2)金属異物が混入し酸化されて電解液に溶出した金属イオンに添加剤が作用するのを阻害しないため、の上記2つが挙げられる。ノニオン分散剤とは、イオン化しない親水性部分を有する分散剤であるが、本発明では、極性溶媒によってわずかにイオン性を示すもの、あるいは、溶媒に対する溶解性を向上させるために、官能基で修飾してわずかにイオン性をもたせるものであってもよい。具体的には、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリビニルアセタール系ポリマー、ポリビニルピロリドン系ポリマー、セルロース系ポリマー、ポリアルキレンオキサイド、ポリビニルエーテルが好ましい。より好ましくは、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、及びセルロース系ポリマーである。
ポリマー分散剤の平均重合度は、低すぎると分散質への吸着力が弱くなることがあり、高すぎると粘性が悪くなるだけでなく分散液中でうまく広がらず分散安定化効果が薄くなることがあるため、50〜3000のものが好ましく、100〜2000のものが特に好ましく、200〜1000のものがさらに好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂としては、分散質や分散溶剤、電解液と適度な親和性を持たせるために、ケン化度が60mol%以上のものが好ましく、70mol%以上のものがより好ましく、75mol%以上のものがさらに好ましい。
上記水酸基量の範囲に含まれる市販のポリビニルアルコール系樹脂としては、例えば、クラレポバール(クラレ社製ポリビニルアルコール樹脂)やゴーセノール、ゴーセネックス(日本合成化学工業社製ポリビニルアルコール樹脂)、デンカポバール(デンカ社製ポリビニルアルコール樹脂)、J−ポバール(日本酢ビ・ポバール社製ポリビニルアルコール樹脂)などの商品名で、種々のグレードを入手することが出来る。また、各種官能基を有する変性ポリビニルアルコールも同様に入手できる。
市販品を使用せず合成して用いる場合には、一般に、メタノール溶液中等で酢酸ビニルを所定の重合度まで重合し、得られたポリ酢酸ビニルに水酸化ナトリウム等のアルカリ触媒を加えてけん化反応させることで、水酸基量をコントロールしたポリビニルアルコールが得られることが知られている。
変性ポリビニルアルコールを合成して用いる場合には、一般に、メタノール溶液中等で酢酸ビニルと共に(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル系モノマーや、ビニルエステル系モノマー、α,β‐不飽和結合と官能基を有するモノマーなどを共重合させてから、けん化反応させることで、変性率をコントロールした変性ポリビニルアルコールが得られることが知られている。また、ポリビニルアルコール系樹脂に対して酸無水物を付加反応させたり、エステル化反応させる等して変性ポリビニルアルコール系樹脂を得ることもできる。
市販のポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、モビタール(クラレ社製ポリビニルブチラール樹脂)、エスレック(積水化学工業社製ポリビニルアセタール、またはポリビニルブチラール)などの商品名で、種々のグレードを入手することができるが、上記の好ましい水酸基量を得るために合成して用いてもよい。一般的な合成方法としては、ポリビニルアルコールにアルデヒドを反応させることで、所定のアセタール化度にコントロールしたポリビニルアセタール樹脂を得ることができる。また、アルデヒドの炭素数を変更すればアセタール基の炭素数を任意に選択することができる。
セルロース系樹脂としては、セルロースまたは、セルロースの水酸基の一部がアルキル基やヒドロキシアルキル基、カルボキシアルキル基に変性されたものやその塩を用いることができ、例えば、メトローズ(信越化学工業社製メチルセルロース、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、メセロース(巴工業社製水溶性セルロースエーテル、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、サンローズ(日本製紙社製カルボシメチルセルロースナトリウム)、エトセル(ダウケミカル社製エチルセルロース)、ダイセルCMC(ダイセルファインケム社製カルボシメチルセルロースナトリウム)などの商品名で、種々のグレードを入手することができる。特に、電解液への溶解性や膨潤性の観点から、メチルセルロースやエチルセルロースなどのアルキルセルロースが好ましい。
ポリビニルピロリドンとしては、例えば、BASFジャパン社製、商品名:ルビテック(Luvitec)K17(K値:15.0〜19.0)、K30(K値27.0 〜33.0)、K80(K値74.0〜82.0)、K85(K値84.0〜88.0) 、K90(K値88.0〜92.0)、K90HM(K値92.0〜96.0)、ISP社製、K15、K30、K90、K120などが挙げられる。尚、K値とは分子量と相関する粘性特性値である。粘度上昇防止の観点から、K値は150以下であることが好ましく、さらに100以下であることがより好ましい。
<含窒素複素環を有する化合物>
本発明の含窒素複素環を有する化合物は、下記一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール、下記一般式(2)で表されるベンゾイミダゾロン、及び下記一般式(3)で表されるベンゾイミダゾールからなる群より選ばれる少なくともひとつである。
一般式(1)
Figure 2020071932
一般式(2)
Figure 2020071932
一般式(3)
Figure 2020071932
一般式(1)〜(3)中、X1〜X3はそれぞれ独立して水素、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアリール基、−OCORである。
1〜R12は、それぞれ独立して水素、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアリール基、−COOR、ハロゲン基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、である。
下記一般式(1)で表されるベンゾトリアゾールまたはその誘導体としては、1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−カルボキシルー1H−ベンゾトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、1−(ホルムアミドメチル)−1H−ベンゾトリアゾール、1−メトキシメチルー1H−ベンゾトリアゾール、等が挙げられる。
下記一般式(2)で表されるベンゾイミダゾロンまたはその誘導体としては、ベンゾイミダゾロン、5−アミノベンゾイミダゾロン、5,6−ジアミノベンゾイミダゾール、等が挙げられる。
下記一般式(3)で表されるベンゾイミダゾールまたはその誘導体としては、ベンゾイミダゾール、2−アミノベンゾイミダゾール、5−アミノベンゾイミダゾール、5,6−ジメチルベンゾイミダゾール、2−メチルベンゾイミダゾール、ベンゾイミダゾール−5−カルボン酸メチル、2−ノニルベンゾイミダゾール、等が挙げられる。
本発明で用いる含窒素複素環を有する化合物を存在させるのは、正極または負極であり、ここで正極または負極に存在させる方法としては、銅など金属異物と共に分散工程により調製されるカーボンブラック分散液に添加することで、効果を発揮する。本発明では、特定構造の含窒素複素環を有する化合物を添加剤とし、ノニオン分散剤と併用し分散することにより、導電助剤として用いるカーボンブラックの凝集がよくほぐれた状態で、且つ良好な粘度の分散液中で銅など金属異物に添加剤が作用できるため、分散体中のカーボンブラック濃度が高い場合でも、効率良く銅など金属異物に作用でき、電池短絡の原因となる銅イオン溶出を抑制できる。
本発明では、含窒素複素環を有する化合物を、正極活物質または負極活物質を実質的に含まないカーボンブラック分散液の製造工程において、カーボンブラック、ノニオン分散剤と共に添加し分散する工程を有することを最大の特徴とする。含窒素複素環を有する化合物を、電解液への添加や電極合剤作製時で添加すると、正極活物質や負極活物質に含まれる遷移金属に含窒素複素環を有する化合物が作用してしまい、結果としてカーボンブラック分散液中に混入する銅など金属異物に十分に作用されないため、電池性能低下抑制効果が不十分である。
<金属、金属異物>
本発明の金属異物について説明する。金属異物の存在状態としては特に限定されず、金属、酸化金属、真鍮や青銅のような合金であっても良い。代表的な金属として銅が挙げられる。また、金属異物の混入経路も特に限定されない。例えば、カーボンブラック分散液を構成するカーボンブラックや分散剤等の各成分由来の混入、仕込みや分散等のカーボンブラック分散液を調製する工程での混入、が挙げられる。カーボンブラック、グラファイトおよび、炭素繊維等の炭素材料には、それらの製造工程由来(ラインコンタミや触媒として)の金属異物が含まれている場合が多い。
本発明は、カーボンブラック分散液の総量に対して10ppb以上の金属異物を含む場合に好ましく適用できる。すなわち、工程[1]の調整前の、カーボンブラック、ノニオン分散剤、含窒素複素環を有する化合物、及び溶媒を含有してなる混合溶液の総量に対して10ppb以上の金属異物を含むものに適用できる。金属異物の含有量は、効果の差はあるが、如何なる量であっても本発明の効果を享受できる。
<溶媒>
本発明のカーボンブラック分散液は、溶媒を含む。本発明に使用する溶剤としては、例えば、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、アミノアルコール類、アミン類、ケトン類、カルボン酸アミド類、リン酸アミド類、スルホキシド類、カルボン酸エステル類、リン酸エステル類、エーテル類、ニトリル類、水等が挙げられる。中でも、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を含むことが好ましい。NMPは、リチウムイオン二次電池の電極製造に用いられている。本発明では、分散剤の効果、電池性能を損なわない範囲で、他の溶媒を1種類以上併用しても良いが、本発明の想定する産業上の利用可能性から、NMPを単独で用いることが好ましい。
本発明において、カーボンブラック分散液に対する固形分の量は、カーボンブラック分散液100質量%に対して、1〜90質量%が好ましく、40〜85質量%がより好ましく、55〜85質量%がさらに好ましく、60〜85質量%が特に好ましい。
本発明のカーボンブラック分散液は、カーボンブラックの含有量が10〜30質量%であることが好ましく、ノニオン分散剤の添加量は特に限定されないが、カーボンブラック100質量%に対して、0.5質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。ノニオン分散剤量が多すぎると、合剤スラリーで作製した正極合剤層の抵抗値を高めることがあるため、好ましくない。他方、ノニオン分散剤量が少なすぎると、カーボンブラック分散液中でのカーボンブラックの分散性が十分に得られないことがあるため、好ましくない。カーボンブラック分散液における分散剤の添加量は、添加するカーボンブラックの比表面積やカーボンブラック粒子の分散後の平均粒子径、カーボンブラックへの吸着量等により決定される。
含窒素複素環を有する化合物の添加量は、特に限定されない。これは、含窒素複素環を有する化合物そのものが系中に残存しても電池性能に大きな影響を及ぼさないためである。中でも好ましくは、カーボンブラック100質量%に対して、0.001質量%以上、10質量%以下である。
<バインダー>
本発明のカーボンブラック分散液には、さらに、バインダーを含有させることができる。使用するバインダーとしては、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン等を構成単位として含む重合体または共重合体;ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂;スチレン−ブタジエンゴム、フッ素ゴムのようなゴム類;ポリアニリン、ポリアセチレンのような導電性樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂の変性体や混合物、及び共重合体でも良い。特に、耐性面から分子内にフッ素原子を有する高分子化合物、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン等の使用が好ましい。
また、バインダーとしてのこれらの樹脂類の重量平均分子量は、10,000〜2,000,000が好ましく、100,000〜1,000,000がより好ましく、200,000〜1,000,000が特に好ましい。分子量が小さいとバインダーの耐性や密着性が低下することがある。分子量が大きくなるとバインダーの耐性や密着性は向上するものの、バインダー自体の粘度が高くなり作業性が低下すると共に、凝集剤として働き、分散された粒子が著しく凝集してしまうことがある。
本発明の想定する産業上の利用可能性から、バインダーは、フッ素原子を有する高分子化合物を含むことが好ましく、フッ素原子を有する高分子化合物であることが好ましく、フッ化ビニリデン系共重合体であることがさらに好ましく、ポリフッ化ビニリデンであることが特に好ましい。
産業上は優れた耐性を得るためにこれらのバインダーが主に用いられているが、接着性の弱い樹脂であるために、塗膜にした際の基材に対する密着性が弱く塗工や加工が困難になる場合が多く、さらに、塩基性金属酸化物の存在下で粘性が大きく増大する場合があり、貯蔵安定性に問題が出る場合がある。そのため、フッ化ビニリデン系共重合体やポリフッ化ビニリデンをバインダーとして用いつつも、密着性や貯蔵安定性を良好に維持したカーボンブラック分散液が求められている。
バインダーは、本来的には、電極合剤層中において電極活物質粒子同士、或いは、電極活物質粒子と集電体とを良好に結合するための添加成分であるため、必ずしもカーボンブラック分散液に加える必要はなく、電極合剤層形成用の合剤スラリー調製時に結着剤として添加することがより好ましい。
<合剤スラリー>
本発明の分散液に、正極活物質または負極活物質を加えて混合することにより合剤スラリーを作製する。さらに、必要に応じて、結着剤を含むことが好ましい。
<電極活物質(正極活物質または負極活物質)>
リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、特に限定はされないが、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能な金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物、及び導電性高分子等を使用することができる。
例えば、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属の酸化物、リチウムとの複合酸化物、遷移金属硫化物等の無機化合物等が挙げられる。具体的には、MnO、V25、V613、TiO2等の遷移金属酸化物粉末、層状構造のニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、スピネル構造のマンガン酸リチウムなどのリチウムと遷移金属との複合酸化物粉末、オリビン構造のリン酸化合物であるリン酸鉄リチウム系材料、TiS2、FeSなどの遷移金属硫化物粉末等が挙げられる。また、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子を使用することもできる。また、上記の無機化合物や有機化合物を混合して用いてもよい。
リチウムイオン二次電池用の負極活物質としては、リチウムイオンをドーピングまたはインターカレーション可能なものであれば特に限定されない。例えば、金属Li、その合金であるスズ合金、シリコン合金、鉛合金等の合金系、LiXFe23、LiXFe34、LiXWO2、チタン酸リチウム、バナジウム酸リチウム、ケイ素酸リチウム等の金属酸化物系、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン等の導電性高分子系、ソフトカーボンやハードカーボンといった、アモルファス系炭素質材料や、高黒鉛化炭素材料等の人造黒鉛、あるいは天然黒鉛等の炭素質粉末、カーボンブラック、メソフェーズカーボンブラック、樹脂焼成炭素材料、気層成長炭素繊維、炭素繊維などの炭素系材料が挙げられる。これら負極活物質は、1種または複数を組み合わせて使用することもできる。
本発明で用いる電極活物質は、N−メチル−2−ピロリドン中で塩基性を示すことが好ましく、表面が炭素材料で被覆されていないことがより好ましい。
本発明で用いる正極活物質は、Al、Fe、Co、Ni、Mn等の遷移金属を含むリチウムとの複合酸化物であることが好ましく、Al、Co、Ni、Mnのうちいずれかを含むリチウムとの複合酸化物であることがより好ましく、Ni、及び/または、Mnを含むリチウムとの複合酸化物であることが特に好ましい。これらの活物質を用いたとき、特に良好な効果を得ることができる。
これらの電極活物質は、BET比表面積が0.1〜10m2/gのものが好ましく、0.2〜5m2/gのものがより好ましく、0.3〜3m2/gのものがさらに好ましい。
これらの電極活物質は、平均粒子径が0.05〜100μmの範囲内であることが好ましく、さらに好ましくは、0.1〜50μmの範囲内である。本明細書でいう電極活物質の平均粒子径とは電子顕微鏡で測定した粒子径の平均値である。
<結着剤(バインダー)>
本発明の合剤スラリーには、更に、結着剤としてバインダー成分を含有させることが好ましい。使用するバインダーとしては、カーボンブラック分散液に添加してもよいバインダーと同様に、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、マレイン酸、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルブチラール、ビニルアセタール、ビニルピロリドン等を構成単位として含む重合体または共重合体;ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ホルムアルデヒド樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂;カルボキシメチルセルロースのようなセルロース樹脂;スチレン−ブタジエンゴム、フッ素ゴムのようなゴム類;ポリアニリン、ポリアセチレンのような導電性樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂の変性体や混合物、および共重合体でも良い。特に、耐性面から分子内にフッ素原子を含む高分子化合物、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン等の使用が好ましい。
また、結着剤(バインダー)としてのこれら樹脂類の重量平均分子量は、10,000〜1,000,000が好ましい。分子量が小さいとバインダーの耐性が低下することがある。分子量が大きくなるとバインダーの耐性は向上するものの、バインダー自体の粘度が高くなり作業性が低下するとともに、凝集剤として働き、合剤成分が著しく凝集してしまうことがある。
合剤スラリー中の総固形分に占める活物質の割合は、80質量%以上、98.5質量%以下が好ましい。また、合剤スラリー中の総固形分に占める、バインダー成分の割合は、1質量%以上、10質量%以下が好ましい。また、合剤スラリーの適正粘度は、合剤スラリーの塗工方法によるが、一般には、100mPa・s以上、30,000mPa・s以下とするのが好ましい。
<製造方法>
<カーボンブラック分散液の調整方法、工程[1]>
本発明の分散液は、ノニオン分散剤と共にカーボンブラック、及び含窒素複素環を有する化合物を溶媒中に分散したものである。カーボンブラックは、ノニオン分散剤と同時、または順次添加し混合することで、分散剤をカーボンブラックに作用(吸着)させつつ分散する。ただし、分散剤を溶媒中に溶解、膨潤、または分散させ、その後、液中にカーボンブラックを添加し混合した方が、分散液の製造をより容易に行うことができる。また、分散剤がカーボンブラックにより均一に作用できるため、貯蔵安定性が増す。含窒素複素環を有する化合物も同様に、ノニオン分散剤と同時、または順次添加し、混合、分散することで銅など金属異物に作用する。カーボンブラックと共に含窒素複素環を有する化合物を分散することで、カーボンブラック中に含まれる銅など金属異物と含窒素複素環を有する化合物との接触頻度が増し、結果として金属異物のイオン溶出抑制効果を十分に発現させることができる。
分散を行う装置としては、顔料分散等に通常用いられている攪拌機、せん断型分散機もしくはメディア型分散機を使用する。せん断型分散機としては、ディスパー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等のミキサー類、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」、PRIMIX社「フィルミックス」、「ハイシェアミキサー」等、シルバーソン社製「アブラミックス」、「ミキサー」等)類、ロールミル、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、メディア型分散機としては、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、コロイドミル(PUC社製「PUCコロイドミル」、IKA社製「コロイドミルMK」)類、コーンミル(IKA社製「コーンミルMKO」等)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
<合剤スラリーの製造方法、工程[2]>
本発明のカーボンブラック分散液に、正極活物質または負極活物質、及び必要に応じて、結着剤を加えて合剤スラリーを作製する。合剤スラリーには、さらにNMPを加えても良い。また、電池の耐久性を向上させる目的で、主要成分以外の公知の物質を添加して用いても良い。
合剤スラリーを分散、混合する装置としては、カーボンブラックの分散度を維持するために、前述の「カーボンブラック分散液の製造方法」に記載のせん断型分散機を用いるのが好ましい。この際、カーボンブラック分散液と活物質粉末を混合、分散させても良いし、予め分散させた活物質をカーボンブラック分散液と混合しても良い。
カーボンブラック分散液と活物質の粉末を混合、分散させる場合は、分散液に活物質粉末を加えても、活物質粉末に分散液を加えても良いが、分散液に活物質粉末を撹拌しながら少しずつ加えるのが特に好ましい。特に分散によってダメージを受けやすい活物質の場合は、ディスパー等の弱い分散機を用いて分散液に活物質粉末を撹拌しながら少しずつ加えることで、活物質本来の特性を引き出すことができる。
予め分散させた活物質とカーボンブラック分散液を混合する場合は、どちらをどちらに加えても良いし、加えてから撹拌しても、撹拌しながら少しずつ加えても良い。2液の接触によっていずれかの分散状態が変化する場合には、撹拌しながら少しずつ加えるのが好ましい。また、活物質の分散に用いる分散機は、前述のせん断型分散機、メディア型分散機を用いることができるが、特に活物質同士の凝集や融着が激しい場合は、より強力なメディア型分散機を用いるのが好ましい。
結着剤は、いずれのタイミングで加えても良いが、比重の重い活物質の沈降を防ぐために、活物質を添加する前または同時に加えるのが好ましい。結着剤は粉末で添加してから溶解させても、予めNMPに溶解させてから用いても良い。
<電極>
本発明の合剤スラリーを電極基材上に、例えば、塗工・乾燥して電池用カーボンブラック分散膜を形成させることで、電極を得ることができる。
(電極基材、集電体)
電極に使用する電極基材の材質や形状は特に限定されず、各種二次電池にあったものを適宜選択することができる。例えば、集電体が挙げられる。集電体の材質としては、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、白金、又はステンレス等の金属や合金が挙げられる。また、形状としては、一般的には平板上の箔が用いられるが、表面を粗面化したものや、穴あき箔状のもの、及びメッシュ状の集電体も使用できる。また、集電体には導電性の下地層形成用組成物を用いた下地層を設けても良い。
集電体上に合剤スラリーや下地層形成用組成物を塗工する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができる。具体的には、ダイコーティング法、ディップコーティング法、ロールコーティング法、ドクターコーティング法、ナイフコーティング法、スプレーコーティング法、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法または静電塗装法等が挙げる事ができ、乾燥方法としては放置乾燥、送風乾燥機、温風乾燥機、赤外線加熱機、遠赤外線加熱機などが使用できるが、特にこれらに限定されるものではない。
また、塗布後に平版プレスやカレンダーロール等による圧延処理を行っても良い。電極合剤層の厚みは、一般的には1μm以上、500μm以下であり、好ましくは10μm以上、300μm以下である。
<二次電池>
正極もしくは負極の少なくとも一方に上記の電極を用い、リチウムイオン二次電池を得ることができる。このとき、リチウム二次電池において、従来から知られている電解液やセパレーター等を適宜用いることができる。また、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ、これらのハイブリッドキャパシタに用いても良い。
<電解液>
電解液としては、リチウムを含んだ電解質を非水系溶媒に溶解したものを用いる。電解質としては、LiBF4、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、LiC49SO3、Li(CF3SO23C、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF2、LiSCN、又はLiBPh4(ただし、Phはフェニル基を表す)等が挙げられるが、これらに限定されない。
非水系溶媒としては、特に限定はされないが、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、及びジエチルカーボネート等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、及びγ−オクタノイックラクトン等のラクトン類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,2−メトキシエタン、1,2−エトキシエタン、及び1,2−ジブトキシエタン等のグライム類;メチルフォルメート、メチルアセテート、及びメチルプロピオネート等のエステル類;ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド類;並びに、アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。これらの溶媒は、それぞれ単独で使用し ても良いが、2種以上を混合して使用しても良い。
(セパレーター)
セパレーターとしては、例えば、ポリエチレン不織布、ポリプロピレン不織布、ポリアミド不織布及びこれらに親水性処理を施したものが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
(電池構造・構成)
本発明の組成物を用いたリチウムイオン二次電池の構造については特に限定されないが、通常、正極及び負極と、必要に応じて設けられるセパレーターとから構成され、ペーパー型、円筒型、ボタン型、積層型等、使用する目的に応じた種々の形状とすることができる。
以下、実施例に基づき、本発明を詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。本実施例中、部は質量部を、%は質量%を、それぞれ表す。実施例及び比較例で使用したカーボンブラック(「CB」と略記することがある)、分散剤、電極活物質等を以下に示す。
また、本発明では、原料としてカーボンブラックのみ銅異物を含む場合の実施例を記載するが、カーボンブラック分散液へ銅異物を混入させる原料はカーボンブラックに限られない。さらに、原料に含まれる銅異物だけではなく、カーボンブラック分散液の製造工程中で混入する銅や酸化銅も本特許の効果対象となる。尚、詳細な結果は載せないが、銅以外の金属であるニッケル、スズでも同様の効果が確認された。
<カーボンブラック>
・LITX(登録商標)HP(CABOT社製):ファーネスブラック、比表面積100m2/g、以下LITXHPと略記する。
・デンカブラックHS−100(デンカ社製):アセチレンブラック、比表面積39m2/g、以下HS−100と略記する。
・デンカブラック粒状品(デンカ社製):アセチレンブラック、比表面積69m2/g、以下粒状品と略記する。
・デンカブラックFX−35(デンカ社製):アセチレンブラック、比表面積133m2/g、以下FX−35と略記する。
<含窒素複素環を有する化合物>
・1,2,3−ベンゾトリアゾール(B−1)
・5−メチルー1H−ベンゾトリアゾール(B−2)
・1−[N,N―ビス(2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール(B−3)
・ベンゾイミダゾロン(B−4)
・5−アミノベンゾイミダゾロン(B−5)
・ベンゾイミダゾール(B−6)
・2−ブチルベンゾイミダゾール(B−7)
<分散剤>
・クラレポバール PVA−505(クラレ社製):ポリビニルアルコール、けん化度73モル%、平均重合度500、以下PVA−1と略記する。
・クラレポバール PVA−405(クラレ社製):ポリビニルアルコール、けん化度82モル%、平均重合度500、以下PVA−2と略記する。
・PVP K30(日本触媒社製):ポリビニルピロリドン、重量平均分子量約4万、以下PVP−1と略記する。
・メトローズSM−15(信越化学社製):メチルセルロース、置換度1.8、20℃における2%水溶液の粘度約15mPa・s、重量平均分子量約7万、以下、MC−1と略記する。
<その他>
・銅粉末:富士フイルム和光純薬(株)、75μm、純度99.9%
・酸化銅:キシダ化学(株)、150μm(100mesh)
<バインダー>
・KFポリマーW7300(クレハ社製):ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、重量平均分子量約100万。以下、PVDFと略記する。
<電極活物質>
・LiNi1/3Mn1/3Co1/32:正極活物質、ニッケルマンガンコバルト酸リチウム(以下、NCMと略記する。)、電子顕微鏡で観察して求めた平均一次粒子径が5.5μm、窒素吸着量からS−BET式で求めた比表面積が0.62m2/g、
・人造黒鉛:負極活物質、平均粒子径12μm、以下、黒鉛と略記する。
<カーボンブラック分散液の評価>
合成例1〜25、比較合成例1〜5で得られたカーボンブラック分散液の評価は、(1)分散粒径測定、(2)分散液の濾過残渣を使用したLSV測定により行った。評価方法は以下の通りである。
(分散粒径測定)
平均粒子径は、カーボンブラック分散液をNMPにより適切な濃度に希釈した後に、超音波処理を施した液を測定サンプルとして用い、動的光散乱法方式の粒度分布計(マイクロトラック・ベル社製「ナノトラックUPA−EX」、光源波長780nm)を用いて平均粒子径(D50値)を測定することにより行った。各種測定条件は、上記方法によりNMP希釈した分散液のローディングインデックス値を0.7以上1.3以下に、粒子条件を、吸収性粒子、粒子形状非球形、密度1.80とし、溶媒条件を、溶媒屈折率1.47、液温20℃における溶媒粘度1.80mPa・s、液温25℃における溶媒粘度1.65mPa・sと設定し、得られたメジアン径をD50値として表記した。測定結果は、液温25℃のNMP溶剤についてバックグラウンド値を測定した後、上記方法にて調製した液温25℃のサンプルを測定容器に充填し、上記測定条件にて測定を行うことにより得た。同じカーボンブラックを使用して同じ分散処理をした場合、D50値が小さいほど分散性が良好であり、大きいほど分散性が不良であることを示す。
(分散液濾過残渣のリニアスイープボルタンメトリー測定)
含窒素複素環を有する化合物をカーボンブラック分散液に添加することによる、銅異物混入時の電池組成への溶出抑制効果は、HSフラットセル(Hohsen社製)を用いたリニアスイープボルタンメトリー測定(以下LSV測定)により評価した。評価方法を以下に示す。
(1)作製したカーボンブラック分散液を10μmメッシュで濾過し、銅異物含む残渣を回収し、それをNMPでリスラリーし40℃で減圧乾燥させる。
(2)(1)の残渣、導電助剤、バインダーとしてPVDF、そして有機溶剤としてNMPを含む構成の導電ペーストをアルミニウム箔の表面上に塗布し、NMPが完全に除去されるまで乾燥させ、アルミニウム箔の単位面積当たりの固形分量が2mg/cm2で、導電助剤:PVDF=8:2、さらに当該残渣を対導電助剤5%含む、評価試験用作用極を作製する。
(3)対極としてリチウム箔を使用し、リチウム箔を、セパレーターを介して(2)で作製した作用極と積層して得た電極体を、非水電解液と共に収容して二極密閉式金属セルを構築する。
(4)構築した試験用電池を用いて以下の条件でLSV測定する。
・掃引開始電位;3.0V(vsLi/Li+
・掃引終了電位;4.3V(vsLi/Li+
・掃引速度;10mV/min.
・測定温度;25℃
(5)銅の溶出しやすさの指標である銅の酸化還元開始電位は、電位掃引開始から、電流密度が20μA/cm2到達時点の電位とした。本測定における銅の酸化還元開始電位は、その電位が高いほど、銅の溶出が遅延していることを示すものである。また、掃引している間に短絡(ショート)するかどうかを確認した。短絡せずに測定できたものを○、途中で短絡したものを×、とした。
LSV測定とは、電極の電位を特定の範囲で掃引させ、それに応じて流れる反応電流を測定し電気化学的な各情報を解析する手法であり、この測定において、電流量より反応量を、傾きより反応速度をそれぞれ定量的に確認することができる。正極に銅が存在するとき、負極リチウム箔に対する銅の酸化還元電位は、標準電極電位から考えると約3.4Vとなり、これは、約3.4V以上の電圧において銅の溶出反応に伴う電子移動が起こることを意味する。LSV測定での反応電流の立ち上がりは反応開始電位を表し、反応電流量と傾きは銅の溶出しやすさを表す。添加剤が銅異物に作用し、銅イオン溶出を抑制することができる場合、銅の酸化還元電位が高くなるため、LSV測定での反応開始電位は高電圧側にシフトする。
合成例1を例に、より具体的な評価方法を示す。
まず、作製したカーボンブラック分散液D−1を10μmメッシュで濾過し、銅異物含む残渣を回収し、それをNMP洗浄し40℃で減圧乾燥させ、残渣固形物を0.05g得た。
導電助剤として粒状品(アセチレンブラック)、バインダーとしてPVDFをそれぞれ使用し、導電助剤:バインダーが8:2となるように秤量し、これにさらに対導電助剤1%の残渣固形物を加え、これらを溶媒NMPに分散させて導電ペーストを調製した。調製した導電ペーストを厚さ20μmのアルミニウム箔にドクターブレードを用いて塗布した後、減圧下120℃で加熱乾燥し、これを半径9mmに打ち抜き作用極とした。金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を対極として、作用極及び対極の間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレータ(厚さ20μm、空孔率50%)を挿入積層し、非水電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを容量比1:1で混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を満たして二極密閉式金属セル(宝泉社製HSフラットセル)を組み立てた。セルの組み立ては、アルゴンガス置換したグローブボックス内で行った。
(カーボンブラック分散液の調製)
<原料中の金属イオン・原子含有量測定方法>
実施例に使用するカーボンブラックを、日本工業規格JIS K 0116;2014に従い酸分解法にて前処理し、ICP発光分析法にて銅のイオン・原子の含有量測定を行った。これらのカーボンブラックを原料として使用することでカーボンブラック分散液中に銅異物が混入する。
・LITXHP:100ppb
・粒状品:100ppb
・HS−100:80ppb
・FX−35:85ppb
[合成例1]
ガラス瓶にNMP77.8部と分散剤PVA−1 2部を仕込み、充分に混合溶解、または混合分散した後、カーボンブラック粒状品20部とベンゾトリアゾール(B−1)0.2部を加え、せん断型分散機であるディスパーで十分に混合撹拌した。次いで、その混合液を、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントコンディショナーで分散し、カーボンブラック分散液D−1を得た。
[合成例2〜11、14〜21]
表1に示す組成に従い、合成例1と同様の方法でカーボンブラック分散液を作製し、カーボンブラック分散液D−2〜11、14〜21を得た。
[合成例12、13]
合成例1と同じ組成でカーボンブラック分散液を作製し、D−1より分散時間を長くすることで分散液のD50値がD−1の値より小さい、すなわち、より分散度が高いカーボンブラック分散液D−12を調製した。同様に、合成例4と同じ組成でD50値がより小さいカーボンブラック分散液(D−13)を調製した。D−12、13のD50値はそれぞれ0.25μm、0.28μmであった。
[比較合成例1、3]
ガラス瓶にNMP78部と分散剤PVA−1 2部を仕込み、充分に混合溶解、または混合分散した後、カーボンブラック粒状品20部を加え、ディスパーで十分に混合撹拌した。次いで、その混合液を、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントコンディショナーで分散し、カーボンブラック分散液D−22を得た。さらに同組成にてカーボンブラック分散液のD50値がより小さい、すなわち、より分散度が高いカーボンブラック分散液D−24も調製した。測定したD−22、24のD50値は、それぞれ0.55μm、0.28μmであった。
[比較合成例2]
ガラス瓶にNMP78部、カーボンブラック粒状品20部、ベンゾトリアゾール(B−1)0.2部を加え、ディスパーで十分に混合撹拌した。次いで、その混合液を、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントコンディショナーで分散した(カーボンブラック分散液D−23)。ノニオン分散剤添加なしでは粘度が高くなり、分散液の回収が困難であった。
[合成例22]
ガラス瓶にNMP77.8部と分散剤PVA−1 2部を仕込み、充分に混合溶解、または混合分散した後、カーボンブラック粒状品20部とベンゾトリアゾール(B−1)0.2部、さらに銅粉末がカーボンブラック分散液総量に対し250ppmになるように、さらに銅粉末を加え、ディスパーで十分に混合撹拌した。次いで、その混合液を、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントコンディショナーで分散し、カーボンブラック分散液D−25を得た。測定したD−25のD50値は、0.50μmであった。
[合成例23〜28]
表2に示す組成に従い、合成例22と同様の方法でカーボンブラック分散液を作製し、カーボンブラック分散液D−26〜31を得た。
[比較合成例4]
ガラス瓶にNMP78部と分散剤PVA−1 2部を仕込み、充分に混合溶解、または混合分散した後、カーボンブラック粒状品20部、さらに、銅粉末がカーボンブラック分散液総量に対し250ppmになるように、さらに銅粉末を加え、ディスパーで十分に混合撹拌した。次いで、その混合液を、ジルコニアビーズをメディアとしてペイントコンディショナーで分散し、カーボンブラック分散液D−32を得た。
[比較合成例5、6]
表2に示す組成に従い、比較合成例4と同様の方法でカーボンブラック分散液を作製し、カーボンブラック分散液D−33を得た。さらにD−32と同組成にてカーボンブラック分散液のD50値がより小さい、すなわち、より分散度が高いカーボンブラック分散液D−34も調製した。測定したD−33、34のD50値は、それぞれ0.50μm、0.27μmであった。
合成例1〜21で得られたカーボンブラック分散液(D−1〜21)は全て分散液粒度、LSV評価結果が良好であった。これより、特定構造を有する含窒素複素環を有する化合物の分散液分散時添加に効果があること、この効果は添加剤の量や、カーボンブラック種及び分散剤種によらないことが確認された。また、ノニオン分散剤未添加(比較合成例2)では、カーボンブラック分散液の仕上がり粘度が高すぎて分散液としてうまく得られず、LSV評価用の作用極が作製できなかった。合成例1〜7と比較合成例1との比較により、カーボンブラック分散液の分散粒度、すなわち分散度が同じでも、添加剤が存在することで、銅の電位反応が高くなり、LSV評価において短絡等の電池性能低下が改善されることが示された。また、合成例12、13と合成例1、4より、より分散されたときにLSV試験での反応電位が高くなり、分散の進行に伴って銅異物に作用することが示された。
また、合成例1と合成例22、26の比較により、カーボンブラック由来の銅異物だけでなく、故意に添加した銅異物に対しても同様に効果を示すことが確認された。これより、十分に含窒素複素環有する化合物が添加されている場合、分散時に銅異物の量が増えても効果は変わらず発揮することが示された。一方、比較合成例4〜6のように添加剤無しで銅異物をさらに混入しても比較合成例1同様に、LSV評価で電池性能低下(電池短絡)することが再確認された。
Figure 2020071932
Figure 2020071932
<合剤スラリーの調整>
本実施例および比較例では、銅異物混入時の電池耐性を評価するために、カーボンブラック分散液作製時に銅異物を添加して(銅異物量が一律となるように添加)、導電助剤や添加剤等と共に分散し使用した。添加した銅異物の種類及び添加量は上記の表2に示した。
<正極合剤スラリー>
[実施例1]
先に調製したカーボンブラック分散液D−25(カーボンブラック量が8部となるように)に対し、予めPVDFを固形分10%となるようにNMPに溶解させたバインダー溶液20部(すなわち、PVDF2部)、正極活物質としてLiNi1/3Mn1/3Co1/32(NCM)90部を仕込み、ホモミキサーにより充分に混合し、正極合剤スラリーBC−1を得た。
[実施例2〜7、比較例1〜3]
表3に示す組成に従い、実施例1と同様にして、正極合剤スラリーBC−2〜7、15〜17を得た。
[比較例4、5]
先に調製したカーボンブラック分散液D−32(カーボンブラック量が8部となるように)に対し、予めPVDFを固形分10%となるようにNMPに溶解させたバインダー溶液20部(すなわち、PVDF2部)、正極活物質としてNCM90部を仕込み、さらにベンゾトリアゾール(B−1)0.8部をホモミキサーにより充分に混合し、正極合剤スラリーBC−18を得た。
カーボンブラック分散液D−32をD−34に変更する以外は比較例4と同様にし、正極合剤スラリーBC−19(比較例5)を得た。
<負極合剤スラリー>
[実施例8]
先に調製したカーボンブラック分散液D−25(カーボンブラック量が8部となるように)に対し、予めPVDFを固形分10%となるようにNMPに溶解させたバインダー溶液20部(すなわち、PVDF2部)、負極活物質として黒鉛90部を仕込み、ホモミキサーにより充分に混合し、負極合剤スラリーBC−8を得た。
[実施例9〜14、比較例6〜8]
表3に示す組成に従い、実施例8と同様にして、負極合剤スラリーBC−9〜14、20〜22を得た。
[比較例9、10]
表3に示す組成に従い、比較例4、5と同様にして、負極合剤スラリーBC−23,4を得た。
Figure 2020071932
<二次電池用電極の作製>
上記の各実施例、比較例で得られた合剤スラリーを用いて電極を作製した。
正極合剤スラリーは厚さ20μmのアルミ箔上に、負極合剤スラリーは厚さ20μmの銅箔上にそれぞれドクターブレードを用いて塗工した後、減圧下120℃で30分間乾燥し、乾燥後膜厚100μmの電極を作製した。
<リチウムイオン二次電池評価用セルの組み立て>
先に作製した正極及び負極を半径9mmに打ち抜き作用極とし、金属リチウム箔(厚さ0.15mm)を対極として、作用極および対極の間に多孔質ポリプロピレンフィルムからなるセパレーター(厚さ20μm、空孔率50%)を挿入積層し、電解液(エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを容量比1:1で混合した混合溶媒にLiPF6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を満たして二極密閉式金属セル(宝泉社製HSフラットセル)を組み立てた。セルの組み立ては、アルゴンガス置換したグローブボックス内で行った。
<リチウムイオン二次電池評価用セルの評価>
作製した正極評価用セルを30℃で、充放電装置(北斗電工社製SM−8)を使用して、充電レート1.0Cの定電流定電圧充電(上限電圧4.2V)で満充電とし、充電時と同じレートの定電流で、放電下限電圧3.0Vまで放電を行う充放電を1サイクル(充放電間隔休止時間30分)とし、このサイクルを合計20サイクル行い、充放電を行った。アルゴンガス置換したグローブボックス内で評価後のセルを分解し、20サイクルの間に短絡(ショート)するかどうかを確認した。評価結果を表4に示した。
電池異常は、下記の2段階で評価した。
×;サイクル中に短絡
〇;20サイクル以上充放電可能
容量維持率は、1サイクル目の放電容量に対する20サイクル目の放電容量の百分率であり、数値が100%に近いものほど良好であることを示す。
◎(極めて良好);容量維持率が90%以上の場合
〇(良好);容量維持率が80%以上90%未満の場合
数値無し(−);集電体からの塗膜の剥離やショート等により正常な充放電曲線が得られず、容量が求められなかった場合
表4より、本発明の合剤スラリーで作製した電極を使用した実施例1〜14は、正極または負極に銅異物が混入しているにも関わらず、20サイクル後も短絡なく充放電でき、容量維持率についても良好な結果であった。
一方、比較例1〜3、6〜8は全て、正極で金属異物が酸化され、負極で還元されることで電圧不良を起こし、短絡した。比較例4〜5、9〜10のようにカーボンブラック分散液ではなく合剤スラリー中にベンゾトリアゾールを添加した場合も同様に、充放電に耐えられず短絡してしまった。これら評価結果より、カーボンブラック分散液調製時に特定の含窒素複素環を有する化合物を添加し分散することで、混入する銅異物による電池異常を抑制できることが示された。
Figure 2020071932

Claims (8)

  1. 下記[1]及び[2]の工程を有することを特徴とする電池用カーボンブラック合剤スラリーの製造方法。
    [1] カーボンブラック、ノニオン分散剤、含窒素複素環を有する化合物、及び溶媒を含有してなる混合溶液を、混合、撹拌して、分散液全総量に対して、10ppb以上の金属を含むカーボンブラック分散液を調製する工程。
    [2] [1]で調製したカーボンブラック分散液に、正極または負極活物質を混合する工程。
  2. 含窒素複素環を有する化合物が、下記一般式(1)で表されるベンゾトリアゾール、下記一般式(2)で表されるベンゾイミダゾロン、及び下記一般式(3)で表されるベンゾイミダゾールからなる群より選ばれる少なくともひとつである請求項1記載の電池用カーボンブラック合剤スラリーの製造方法。
    一般式(1)
    Figure 2020071932
    一般式(2)
    Figure 2020071932
    一般式(3)
    Figure 2020071932
    一般式(1)〜(3)中、X1〜X3はそれぞれ独立して水素、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアリール基、−OCORである。
    1〜R12は、それぞれ独立して水素、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアリール基、−COOR、ハロゲン基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、である。
  3. カーボンブラックが、アセチレンブラックであることを特徴とする請求項1または2に記載の電池用カーボンブラック合剤スラリーの製造方法。
  4. ノニオン分散剤が、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、及びセルロース系ポリマーからなる群より選ばれる少なくともひとつである請求項1〜3のいずれかに記載の電池用カーボンブラック合剤スラリーの製造方法。
  5. 溶媒が、N−メチル−2−ピロリドンである請求項1〜4のいずれかに記載の電池用カーボンブラック合剤スラリーの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の電池用カーボンブラック合剤スラリーの製造方法で製造されてなる合剤スラリーを塗布してなる電池用カーボンブラック分散膜。
  7. 電極基材上に、請求項6記載の電池用カーボンブラック分散膜を備えてなる電池用電極。
  8. 請求項7に記載の電池用電極を備えたリチウムイオン二次電池。
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