JP6708482B2 - 貯蔵槽用二相ステンレス鋼 - Google Patents

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Description

本発明は、貯水タンク、貯水パネルタンク、高圧力水用容器、配水池、温水器や給湯器などに代表される貯蔵槽に用いられる貯蔵槽用二相ステンレス鋼に関する。
ステンレス鋼は、その水環境における優れた耐食性から、水処理施設のタンク、配管、また水道水や工業用水の貯蔵槽に利用されている。貯蔵される水としては例えば、水道水、河川水、井戸水、温泉水等があり、温度は常温から100℃弱までと広範囲である。貯蔵する水の温度や用途によって貯水槽や貯湯槽と区別して呼ばれることが一般的であるが、本発明ではそれらを総称して貯蔵槽と呼ぶ。
貯蔵槽は、壁部によって区画された貯蔵部と、貯蔵部内部において壁部同士を連結する補強材とから構成される。壁部は、ステンレス鋼板から構成され、補強材は、ステンレス鋼板またはステンレス棒材やステンレス鋼管等から構成される。補強材は、貯蔵部に大量の水が貯蔵された際に、水圧によって壁部が変形しないように外壁部同士を固定して補強する構造材である。また、壁部も構造材として機能している。
貯蔵タンクにおいてはその設計上、貯蔵槽の内容積一杯まで貯蔵されることは想定されず、例えば内容積容量の80〜95%程度が貯蔵量の上限値とされている。従って、貯蔵槽が満水の場合であっても、貯蔵部には、水が存在する液相部と、液相部の水面上方にある気相部とが存在する。貯蔵槽の壁部及び補強部のうち、主に液相部と接触する箇所には、フェライト系ステンレス鋼やオーステナイト系ステンレス鋼が使用される。一方、主に気相部と接触する箇所には、孔食指数PREN(Cr+3.3Mo+16N)が比較的高いSUS329J4L(二相ステンレス鋼)が使用される。
気相部が接触する箇所において二相ステンレス鋼が用いられる理由は、気相部は液相部に比べて腐食環境が厳しいためである。例えば、水道水を貯蔵する場合において、気相部では、水面から消毒用塩素等の腐食成分が揮発し、この塩素が壁部内面や補強材表面に付着した結露水に溶け込み、結露水が外気温に影響により蒸発し、結露水中の腐食成分の濃度が高まり、この高濃度の腐食成分がステンレス鋼を腐食させる。この腐食を防止するために、耐食性に優れた二相ステンレス鋼が使用される。なお、ここでは水道水を例に挙げたが、他の水についても、気相部において水に含まれる腐食成分による腐食が懸念される。
一方、液相部は、水の貯蔵と排出とが繰り返し行われることから、乾湿繰返し腐食環境に晒される。そのため、液相部には、当該乾湿繰返し腐食環境での耐食性に優れ、且つ、上述したSUS329J4Lのよりも安価なフェライト系ステンレス鋼やオーステナイト系ステンレス鋼が選択される。
ところで、貯蔵槽は大量の水を貯蔵する必要があることから、貯蔵槽を構成する素材には、耐食性の他に0.2%耐力が高いことが求められる。二相ステンレス鋼は、フェライト系ステンレス鋼やオーステナイト系ステンレス鋼に比べて0.2%耐力が高い。従って、貯蔵槽を二相ステンレス鋼で構成することで、フェライト系ステンレス鋼やオーステナイト系ステンレス鋼の場合よりも板厚を低減でき、貯蔵槽の質量を低減し、貯蔵槽の基礎部分に対する負荷も軽減できるようになる。
更に、貯蔵槽においては水の貯蔵と排出が繰り返し行われることから、貯蔵槽を構成する素材には一定量の負荷が繰り返し印加される。そのため、貯蔵槽を構成する素材には、耐食性や0.2%耐力の他に、腐食疲労強度に優れることも要求される。腐食疲労とは、材料が水中などの腐食性環境下で繰返し応力を受けることで発生する疲労現象のことであり、大気中での試験のような繰返し応力のみが作用する場合と比較して大きな強度低下が発生することが知られている。また、大気中では、強度と疲労限との間に相関があり、強度が高ければ疲労限も高くなると期待できるが、水中などの腐食疲労環境下では疲労限自体が無くなることから、このような関係が成り立たず、強度が高いからと言って腐食疲労強度が高くなるとは限らない。二相ステンレス鋼の水中での腐食疲労特性は十分に明らかではないため、貯蔵槽の液相部における壁部や補強材のように水中で使用される構造材に適用出来る二相ステンレス鋼の条件は不明であった。
特許文献1には、製紙機用サクションロール胴部材の素材として、腐食疲労強度に優れた二相ステンレス鋼が開示されている。また、特許文献2には、熱間加工性に優れ、貯水槽用に使用可能な二相ステンレス鋼が開示されている。しかし、特許文献1が対象とするサクションロールとは腐食環境も付加される繰返し応力も異なるため、特許文献1の二相ステンレス鋼が貯蔵槽に適用出来るかどうかは不明である。また、特許文献2に記載の二相ステンレス鋼は、腐食疲労強度について何ら検討されてない。
特開平9−202943号公報 特開平4−88151号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、水中での腐食疲労強度に優れ、かつ耐食性にも優れた貯蔵槽用二相ステンレス鋼を提供することを課題とする。
(1) 質量%で、
C:0.080%以下、
Si:2.0%以下、
Mn:1.00〜7.00%、
Ni:0.50〜6.5%、
Cr:15.0〜25.0%、
Mo:0.05%以上4.0%以下、
Cu:0.05%以上3.0%以下、
N:0.05〜0.30%
を含有し、
更に、
Ti:0.001〜0.40%、
Nb:0.001〜0.40%、
V:0.01〜0.50%、
W:0.01〜1.0%、
Sn:0.001〜0.50%、
Sb:0.001〜0.50%、
Ga:0.001〜0.50%
のうちの1種または2種以上を含有し、
残部がFe及び不純物からなり、
下記式(1)で表されるPREN値が20.0以上36.0以下である、貯蔵槽用二相ステンレス鋼。
PREN値=Cr+3.3Mo+16N … (1)
ただし、式(1)中の元素記号は、当該元素の鋼中含有率(質量%)である。
(2) 質量%で、
C:0.080%以下、
Si:2.0%以下、
Mn:1.00〜7.00%、
Ni:0.50〜6.5%、
Cr:15.0〜25.0%、
Mo:0.05%以上4.0%以下、
Cu:0.05%以上3.0%以下、
N:0.05〜0.30%
を含有し、
更に、
B:0.0002〜0.0050%、
Ca:0.0002〜0.0050%、
Mg:0.0002〜0.0050%、
REM:0.001〜0.10%
のうちの1種または2種以上を含有し、
残部がFe及び不純物からなり、
下記式(1)で表されるPREN値が20.0以上36.0以下である、貯蔵槽用二相ステンレス鋼。
PREN値=Cr+3.3Mo+16N … (1)
ただし、式(1)中の元素記号は、当該元素の鋼中含有率(質量%)である。
(3) 質量%で、
C:0.080%以下、
Si:2.0%以下、
Mn:1.00〜7.00%、
Ni:0.50〜6.5%、
Cr:15.0〜25.0%、
Mo:0.05%以上4.0%以下、
Cu:0.05%以上3.0%以下、
N:0.05〜0.30%
を含有し、
更に、
Ti:0.001〜0.40%、Nb:0.001〜0.40%、V:0.01〜0.50%、W:0.01〜1.0%、Sn:0.001〜0.50%、Sb:0.001〜0.50%、Ga:0.001〜0.50%のうちの1種または2種以上と、
B:0.0002〜0.0050%、Ca:0.0002〜0.0050%、Mg:0.0002〜0.0050%、REM:0.001〜0.10%のうちの1種または2種以上と、を含有し、
残部がFe及び不純物からなり、
下記式(1)で表されるPREN値が20.0以上36.0以下である、貯蔵槽用二相ステンレス鋼。
PREN値=Cr+3.3Mo+16N … (1)
ただし、式(1)中の元素記号は、当該元素の鋼中含有率(質量%)である
(4) 質量%で、
C:0.080%以下、
Si:2.0%以下、
Mn:1.00〜7.00%、
Ni:0.50〜6.5%、
Cr:15.0〜25.0%、
Mo:0.05%以上4.0%以下、
Cu:0.05%以上3.0%以下、
N:0.05〜0.30%、
Zr:0.20%以下
を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
下記式(1)で表されるPREN値が20.0以上36.0以下である、貯蔵槽用二相ステンレス鋼。
PREN値=Cr+3.3Mo+16N … (1)
ただし、式(1)中の元素記号は、当該元素の鋼中含有率(質量%)である。
) 質量%で、
C:0.080%以下、
Si:2.0%以下、
Mn:1.00〜7.00%、
Ni:0.50〜6.5%、
Cr:15.0〜25.0%、
Mo:0.05%以上4.0%以下、
Cu:0.05%以上3.0%以下、
N:0.05〜0.30%、
W:0.01〜1.0%、
Ta:0.70%以下
を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
下記式(1)で表されるPREN値が20.0以上36.0以下である、貯蔵槽用二相ステンレス鋼。
PREN値=Cr+3.3Mo+16N … (1)
ただし、式(1)中の元素記号は、当該元素の鋼中含有率(質量%)である。
本発明によれば、水中での腐食疲労強度に優れ、かつ耐食性にも優れた貯蔵槽用二相ステンレス鋼を提供できる。
(a)は、PREN値が36超のステンレス鋼における腐食部の断面形状を示す模式図であり、(b)は、PREN値が36以下のステンレス鋼における腐食部の断面形状を示す模式図である。
以下、本発明の二相ステンレス鋼の一実施形態について詳述する。
まず、本実施形態における各成分元素の限定範囲とその理由について説明する。なお、鋼の成分を示す%については、特に断らない限り質量%を意味する。
C:Cは、ステンレス鋼の耐食性を確保するため、0.080%以下の含有量に制限する。0.080%を超えて含有させるとCr炭化物が生成して、耐食性が劣化する。Cr炭化物の生成抑制の観点からは、Cの好ましい範囲は0.060%以下である。C量の下限は特に限定しないが、好ましくは0.010%以上であり、より好ましくは0.015%以上である。
Si:Siは脱酸のため0.01%以上添加する。好ましくは0.10%以上である。しかしながら、2.0%を超えて添加するとσ相の析出が促進される。そのため、上限を2.0%に限定する。1.3%未満が効果的であり、1.0%以下がより効果的であり、0.7%以下が更に効果的である。
Mn:Mnは脱酸材およびオーステナイト相を増加させ、且つ加工誘起マルテンサイトを抑制して靭性向上にも寄与することから1.00%以上添加する。好ましくは1.50%超であり、更に好ましくは2.00%超である。しかしながら、7.00%を超えて添加すると耐食性が劣化する。そのため、上限を7.00%以下に限定する。好ましい範囲は6.00%以下である。
Ni:Niは腐食が生じた際の腐食進展を抑制する効果と、二相組織にするためのオーステナイト安定化元素としての効果があるが、0.50%を下回ると十分な耐食性を得ることが出来ず、6.5%を超えると、耐食性の効果は飽和する。またNiの使用量が増加して鋼板が高価格となる。よって、0.50〜6.5%の範囲にすることが必要である。好ましくは1.0〜6.0%である。
Cr:Crが15.0%を下回ると、十分な耐食性を得ることが出来ず、25.0%を超えるとσ相の析出が多くなり、耐食性、熱間製造性が劣化する。従って15.0〜25.0%の範囲にすることが必要である。好まし下限は17.0%以上であり、更に好ましくは18.0%以上である。また好ましい上限は、24.0%以下であり、更に好ましくは23.0%以下である。
Mo:Moは耐食性を向上させる元素であり、0.05%以上の添加で効果が発揮する。4.0%以下であれば含有してもよい。ただし、Moが3.5%を超えると熱間加工時にσ相が析出し易くなる場合があるため、好ましくは3.5%以下とする。
Cu:Cuは0.05%以上の添加で腐食が生じた際の腐食進展を抑制する効果があり、3.0%以下であれば含有してもよいが、2.5%を超えると鋳造時に割れが発生し易くなるため、好ましくは2.5%以下である。
N:Nは0.05%以上の添加で耐食性を高める有効な元素であり、0.30%以下であれば含有してもよい。ただし、0.25%以上含有させると鋳造時に気泡発生し易くなる場合があるため、好ましくは0.25%以下である。更に好ましくは0.20%以下である。
本発明においては、前述の元素に加えて、鋼の諸特性を調整する目的で、以下の合金元素が含有されていてもよい。
Ti、Nb、V、W、Sn、Sb、Gaは耐食性を向上する元素であり、以下の範囲で1種または2種以上含有してもよい。
Ti:0.001〜0.40%、Nb:0.001〜0.40%、V:0.01〜0.50%、W:0.01〜1.0%、Sn:0.001〜0.50%、Sb:0.001〜0.50%、Ga:0.001〜0.50%。
Ti、Nb:TiおよびNbは、C、Nを炭窒化物として固定して耐食性、特に粒界腐食を抑制する作用を有する。このため、TiとNbの一方又は両方を含有させてもよいが、過剰に含有させても効果は飽和するため、各々の含有量の上限を0.40%以下とする。ここにおいて、TiとNbの少なくとも一方の含有量が0.001%以上であれば効果を発揮することができる。なお、Ti、Nbの適正含有量としては、両元素の合計量がC、N合計含有量の5倍量以上かつ30倍量以下がよい。好ましくは、Ti、Nb合計含有量がC、N合計含有量の10倍〜25倍とするのがよい。
V、W:V、Wは耐食性、特に耐すき間腐食性を改善するため、必要に応じて添加することができる。ただしVやWの過度の添加は加工性を低下させる上、耐食性向上効果も飽和するため、V、Wの下限を0.01%以上、Vの上限を0.50%以下、Wの上限を1.0%以下とする。より望ましいVの範囲は、0.04〜0.30%である。Wは0.04〜0.50%が好ましい。
Sn、Sb:Sn、Sbは微量の含有で耐食性を向上させるのに有用な元素であり、廉価性を損なわない範囲で含有させる。SnまたはSbの含有量が0.001%未満では耐食性向上効果は発現されず、0.50%を超えるとコスト増が顕在化すると共に加工性も低下するので、含有量0.001〜0.50%を適正範囲とする。好ましくは0.01%以上、0.30%以下とするのがよい。
Ga:Gaは耐食性および加工性向上に寄与する元素であり、0.001〜0.50%の範囲で含有させることができる。より好ましくは、0.015〜0.30%である。
Al:Alは、鋼の脱酸のための重要な元素であり、鋼中の酸素を低減するために選択的に添加される。上記効果を得るには、Alを0.003%以上含有させることが必要である。Al含有量は、好ましくは0.010%以上とする。一方でAlはNとの親和力が比較的大きな元素であり、過剰に添加するとAlNを生じて母材の靭性を阻害する。その程度はN含有量にも依存するが、Alが0.050%を越えると靭性低下が著しくなるため、その含有量の上限を0.050%と定めた。Al含有量は、好ましくは0.030%以下である。
B、Ca、Mg、REMは、熱間加工性を改善する元素であり、その目的で1種または2種以上添加してもよい。B、Ca、Mgではこの効果は0.0002%以上で発現することから下限を0.0002%以上とした。REMの場合は、下限を0.001%以上とした。しかしながら、いずれも過剰な添加は逆に熱間加工性を低下するため、その含有量の上下限を次のようすることが好ましい。すなわち、B、Ca、Mgについては0.0005〜0.0050%、REMについては0.005〜0.10%である。B、Ca、Mgは、より好ましい範囲は0.0005〜0.0015%であり、REMは0.005〜0.030%である。ここで、REM(希土類元素)は一般的な定義に従い、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の2元素と、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までの15元素(ランタノイド)の総称を指す。単独で添加してもよいし、混合物であってもよい。
ZrおよびTaは、添加によりCおよびSの耐食性への悪影響を抑制することができる。この効果を安定して発揮する含有量は、Zrは0.003%以上、Taは0.010%以上である。ZrおよびTaは、過剰に添加すると靱性低下を生じる等の悪影響が発生する。このため、Zrおよび/またはTaを選択的に添加する場合の含有量を、Zrは0.20%以下、Taは0.70%以下に限定するとよい。
本実施形態のステンレス鋼は、上述してきた元素以外は、Fe及び不純物からなる。以上説明した各元素の他にも、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることが出来る。
なお、上記不純物としてPを多量に含む場合は、熱間加工性及び靱性を劣化させるため、0.050%以下に抑制するとよい。P含有量は好ましくは0.030%以下である。一方、P含有量を極端に減ずることは大幅なコストアップになる。このため、好ましくはP含有量の下限を0.005%とすることが好ましい。
また、上記不純物としてSを多量に含む場合は、熱間加工性、靱性および耐食性をも劣化させるため0.0050%以下に限定するとよい。S含有量は好ましくは0.0020%以下である。一方、S含有量を極端に減ずることは大幅なコストアップになるので、好ましくはS含有量の下限を0.0001%とする。
本実施形態の二相ステンレス鋼においては、PREN値を36.0以下にすることが好ましい。PREN値は、二相ステンレス鋼の耐食性を表すパラメーターの一種であり、耐孔食性指数(Pitting Resistance Equivalent Number)の略称である。PREN値は下記式により定義される。式中の元素記号は当該元素の鋼中含有率(質量%)である。
PREN=Cr+3.3Mo+16N
PREN値は、その値が大きいほど耐食性が高くなることを表す指標として一般に用いられているが、本発明者らは、貯蔵槽に使用する鋼材においてPREN値が高すぎると腐食疲労強度に不利になることを見出した。この理由は今のところ不明であるが、腐食部の断面形状から次のような理由が考えられる。PREN値が大きな材料の場合、腐食の開始位置からその周辺に向けて腐食が広がりにくく、腐食が板厚方向に進行して、図1(a)に示すように、腐食部の断面が板厚方向に向けて深く浸食した鋭利な形状になる。一方でPREN値が小さくなると、腐食開始位置からその周辺にむけて広範囲に腐食が進み、腐食部の断面は図1(b)に示すように比較的広がった形状になる。このように、PREN値が高すぎると図1(a)に例示するように腐食部の断面が鋭利な形状になり、これを起点にして、破壊が進みやすくなるものと考えられる。
したがって、本実施形態の貯蔵槽用のステンレス鋼においては、PRENの上限を36.0以下とする。PREN値はより好ましくは30.0以下であり、更に好ましくは27.0以下である。また、PREN値が低すぎると耐食性が低下するので、PREN値の下限は20.0以上が好ましく、21.0以上が更に好ましい。
本実施形態の二相ステンレス鋼を製造するには、製銑・製鋼工程及び連続鋳造工程を経ることによって、上記成分を有する鋼片を製造し、得られた鋼片を圧延することにより、本実施形態の二相ステンレス鋼が得られる。本実施形態の二相ステンレス鋼は、例えば、棒鋼であってもよいし鋼板であってもよく、形状は特に限定されない。また、本実施形態における鋼片の圧延は、熱間圧延のみであってもよいし、熱間圧延の後に冷間圧延を行ってもよい。
以上説明したように、本実施形態の貯蔵槽用ステンレス鋼によれば、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo、Cu及びNを所定の範囲で含み、かつPREN値が36.0以下なので、水中での腐食疲労強度に優れ、かつ耐食性にも優れる。このような二相ステンレス鋼を貯蔵槽の壁部や補強材の素材として用いることにより、貯蔵槽の液相部や気相部における耐食性に優れることから壁部の厚みや補強材のサイズを小さくすることができ、貯蔵槽の基礎構造に対する負荷を軽減し、耐震性をも高めることができる。
本実施形態の二相ステンレス鋼は、例えば、オゾン処理用のタンク、水処理施設のタンク、配管、水道水や工業用水の貯水タンクや、温泉施設における貯湯タンク等の種々の貯蔵槽に利用できる。また、本実施形態の二相ステンレス鋼は、貯蔵槽の壁部のみならず、壁部同士を連結する補強材にも使用できる。更に、貯蔵槽に貯蔵される水としては例えば、水道水、河川水、井戸水、温泉水、各種の排水等を例示できる。また、水温は常温から100℃弱までの水に適用可能である。
以下に、本発明の効果を確認するため、以下のような様な実施例を行った。なお、本実施例は本発明の一実施例を示すものであり、以下の構成に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
なお、表中の下線は本発明範囲から外れているものを示す。
表1に示す化学成分を有するステンレス鋼を真空誘導溶解炉にて溶製し、鋳造後1200℃に均熱後、熱間鍛造し、6mmまで熱間圧延し、焼鈍・酸洗の後、1mmまで冷間圧延し、更に焼鈍・酸洗することで二相ステンレス鋼板を製造した。
得られた二相ステンレス鋼鈑(発明例No.1〜25、比較例No.26〜29)に対し、以下の方法に従って、耐食性、及び、腐食疲労強度の各試験を行った。結果を表1に示す。
(耐食性)
耐食性の評価は、貯蔵槽の液相部が晒される乾湿繰返し腐食環境を模擬するため、JASO M 609−91の複合サイクル試験を行った。20サイクル試験を行った後の孔食面積が0.5面積%以下だった場合を◎、0.5面積%超、2.0面積%以下だった場合を○、2.0面積%超だった場合を×、と評価した。
(腐食疲労強度)
小野式回転曲げ疲労試験機により、下記試験条件下で腐食疲労破壊に至る反復回数(破断回数)を測定した。SUS444の試験結果を基準とし、反復回数がSUS444の90〜110%の場合を○、90%未満の場合を×、110%超を◎と評価した。
(腐食疲労強度の試験条件)
試験片:JIS Z2274 1号(平行部φ10×35L)
腐食液:Clを200ppmに調整した80℃の水。
曲げ応力:300MPa
表1に示すように、本発明例(No.1〜25)は、耐食性、及び、腐食疲労性に優れており、貯蔵槽用の二相ステンレス鋼として好適であることがわかる。なお、No.1〜10、21、23及び24は参考例である。
一方、No.26、27及び29は、PREN値が36.0を超えており、耐食性は良好であったが、腐食疲労強度が満足できるものではなかった。
また、No.28は、Ni量が0.50%未満であり、腐食疲労強度は良好であったが、耐食性が低下した。
Figure 0006708482

Claims (5)

  1. 質量%で、
    C:0.080%以下、
    Si:2.0%以下、
    Mn:1.00〜7.00%、
    Ni:0.50〜6.5%、
    Cr:15.0〜25.0%、
    Mo:0.05%以上4.0%以下、
    Cu:0.05%以上3.0%以下、
    N:0.05〜0.30%
    を含有し、
    更に、
    Ti:0.001〜0.40%、
    Nb:0.001〜0.40%、
    V:0.01〜0.50%、
    W:0.01〜1.0%、
    Sn:0.001〜0.50%、
    Sb:0.001〜0.50%、
    Ga:0.001〜0.50%
    のうちの1種または2種以上を含有し、
    残部がFe及び不純物からなり、
    下記式(1)で表されるPREN値が20.0以上36.0以下である、貯蔵槽用二相ステンレス鋼。
    PREN値=Cr+3.3Mo+16N … (1)
    ただし、式(1)中の元素記号は、当該元素の鋼中含有率(質量%)である。
  2. 質量%で、
    C:0.080%以下、
    Si:2.0%以下、
    Mn:1.00〜7.00%、
    Ni:0.50〜6.5%、
    Cr:15.0〜25.0%、
    Mo:0.05%以上4.0%以下、
    Cu:0.05%以上3.0%以下、
    N:0.05〜0.30%
    を含有し、
    更に、
    B:0.0002〜0.0050%、
    Ca:0.0002〜0.0050%、
    Mg:0.0002〜0.0050%、
    REM:0.001〜0.10%
    のうちの1種または2種以上を含有し、
    残部がFe及び不純物からなり、
    下記式(1)で表されるPREN値が20.0以上36.0以下である、貯蔵槽用二相ステンレス鋼。
    PREN値=Cr+3.3Mo+16N … (1)
    ただし、式(1)中の元素記号は、当該元素の鋼中含有率(質量%)である。
  3. 質量%で、
    C:0.080%以下、
    Si:2.0%以下、
    Mn:1.00〜7.00%、
    Ni:0.50〜6.5%、
    Cr:15.0〜25.0%、
    Mo:0.05%以上4.0%以下、
    Cu:0.05%以上3.0%以下、
    N:0.05〜0.30%
    を含有し、
    更に、
    Ti:0.001〜0.40%、Nb:0.001〜0.40%、V:0.01〜0.50%、W:0.01〜1.0%、Sn:0.001〜0.50%、Sb:0.001〜0.50%、Ga:0.001〜0.50%のうちの1種または2種以上と、
    B:0.0002〜0.0050%、Ca:0.0002〜0.0050%、Mg:0.0002〜0.0050%、REM:0.001〜0.10%のうちの1種または2種以上と、を含有し、
    残部がFe及び不純物からなり、
    下記式(1)で表されるPREN値が20.0以上36.0以下である、貯蔵槽用二相ステンレス鋼。
    PREN値=Cr+3.3Mo+16N … (1)
    ただし、式(1)中の元素記号は、当該元素の鋼中含有率(質量%)である。
  4. 質量%で、
    C:0.080%以下、
    Si:2.0%以下、
    Mn:1.00〜7.00%、
    Ni:0.50〜6.5%、
    Cr:15.0〜25.0%、
    Mo:0.05%以上4.0%以下、
    Cu:0.05%以上3.0%以下、
    N:0.05〜0.30%、
    Zr:0.20%以下
    を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
    下記式(1)で表されるPREN値が20.0以上36.0以下である、貯蔵槽用二相ステンレス鋼。
    PREN値=Cr+3.3Mo+16N … (1)
    ただし、式(1)中の元素記号は、当該元素の鋼中含有率(質量%)である。
  5. 質量%で、
    C:0.080%以下、
    Si:2.0%以下、
    Mn:1.00〜7.00%、
    Ni:0.50〜6.5%、
    Cr:15.0〜25.0%、
    Mo:0.05%以上4.0%以下、
    Cu:0.05%以上3.0%以下、
    N:0.05〜0.30%、
    W:0.01〜1.0%、
    Ta:0.70%以下
    を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
    下記式(1)で表されるPREN値が20.0以上36.0以下である、貯蔵槽用二相ステンレス鋼。
    PREN値=Cr+3.3Mo+16N … (1)
    ただし、式(1)中の元素記号は、当該元素の鋼中含有率(質量%)である。
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