JP2012201960A - 耐酸性良好な二相ステンレス鋼 - Google Patents

耐酸性良好な二相ステンレス鋼 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明により、NiをMnで代替し、低合金コスト化を図った汎用二相ステンレス鋼において、製造性を阻害することなく、大きな課題の一つである耐酸性の劣化を抑制できる汎用二相ステンレス鋼を提供する。
【解決手段】所定の成分組成を有し、下記(a)式で表されるGI値が80以上、130以下、下記(b)式で表されるPVB値が−5以下、を満たすことを特徴とする耐酸性良好な二相ステンレス鋼。
GI =−Cr+18Ni+30Cu+30Mo−10Mn+100Sn …(a)
PVB=S−(Ca+0.3Mg+0.1REM)+0.01Sn−B …(b)
(a)式において各元素名はいずれもその含有量(質量%)を表し、(b)式において各元素名はいずれもその含有量(質量ppm)を表す。
【選択図】なし

Description

本発明は、オーステナイト相とフェライト相の二相を持つ二相ステンレス鋼のうち、安価でかつ特性の優れた、改良された汎用二相ステンレス鋼に関する。より具体的には、高価なNiを安価なMnに置き換え、Mnの影響による耐酸性及び耐孔食性の低下を、Snの添加により抑制し、Snの添加の弊害である熱間加工性の低下も抑えることにより、低コストで、かつ、製造性を阻害しない耐酸性良好な二相ステンレス鋼に関する。
二相ステンレス鋼は、鋼の組織にオーステナイト相とフェライト相の両相を持ち、高強度高耐食性の材料として、従来から、石油化学装置材料、ポンプ材料、ケミカルタンク用材料等に使用されている。二相ステンレス鋼は、一般に低Niの成分系なので、金属原料価格の高騰に伴い、ステンレス鋼の主流であるオーステナイト系ステンレス鋼よりも、合金コストが低く、かつ、合金コストの変動が少ない材料として注目を浴びている。
二相ステンレス鋼の直近のトピックとして、低コスト化と使用量増加がある。特許文献1、2等には、低い合金コストのメリットをさらに増大させた鋼種が開示されている。
特許文献1、2で開示された鋼は、いずれもASTM−A240で規格化されており、特許文献1はS32101(代表成分22Cr−1.5Ni−5Mn−0.22N)に対応し、特許文献2はS82441(代表成分24Cr−3.6Ni−3Mn−0.27N)に対応する。
これらは、いずれも、JIS規格のSUS329J3Lや、ASTM規格のS31803及びS32205のような、汎用タイプの二相ステンレス鋼において、高価なNiを安価なMnに代替し、さらに高価なMoを安価なCu、Nの増量で代替することで、低コスト化を図ったものである。
また、特許文献3〜6には、二相ステンレス鋼において、耐食性向上のためSnを添加した合金が、開示されている。これらは、いずれも、N含有量が0.1%以下の低Nステンレス鋼又はMn量が2%以下の低Mnステンレス鋼である。
WO2002/27056号公報 WO2010/070202号公報 特開昭62−267452号公報 特開平3−158437号公報 特開平4−72013号公報 WO2010/107132号公報 特開2006−241590号公報
Shinji Tsuge: Proceedings of International Conference on Stainkess Steels, 1991, Chiba, ISIJ, p799-806 J.I.Komi et al.: Proceedings of International Conference on Stainkess Steels, 1991, Chiba, ISIJ, p807-814
硫酸やリン酸を運搬するケミカルタンカーなど、過酷な環境で用いられ、耐食性が要求される汎用タイプの二相ステンレス鋼であるS31803の低コスト化では、耐酸性及び耐孔食性の低下が問題となる。耐酸性を向上する作用を有するMo、Niを低減する成分設計を行う場合、耐酸性低下作用のあるMnを増加すると、二重に耐酸性が低下するからである。
さらに、高Mnの鋼は、酸性溶液中において、不動態皮膜が消失した際の金属母地の腐食速度が大きく、耐すきま腐食性にも問題がある。
本発明は、汎用タイプの二相ステンレス鋼について、合金コストを極力抑えた上で、耐酸性及び耐孔食性の低下を抑制し、酸環境中での使用に適した汎用二相ステンレス鋼の提供を課題とする。
本発明者らは、Moが2.0%以下、Niが5.0%以下、Mnが2.0%以上の低コストな成分系をベースとして、耐酸性及び耐孔食性の低下を抑制する方法について詳細に検討した。その結果、以下の知見を得た。
耐酸性劣化の抑制には、Ni、Cu、Snが有効であり、合金コストの観点からCu、Snの添加が有効である。
耐孔食性の向上には、Cr、N、Mo、Snが有効であり、合金コストの観点から、N、Snの添加が有効である。
そこで、耐酸性劣化の抑制、及び、耐孔食性の向上の両者に有効なSnについて、耐酸性を改善するための添加条件を検討した。
一般的に、耐酸性及び耐孔食性は、添加元素量と対応するとされる。そこで、上記ベース成分系において、種々添加量を変更して試験鋼片を作製し、腐食試験により、耐酸性及び耐孔食性に及ぼす各元素の抑制効果、促進効果の大きさを具体的に数値化した。
その結果、下記(a)式で表されるGI値を80〜130とすることで、Mnの悪影響を打ち消すことができることを見出した。
GI=−Cr+18Ni+30Cu+30Mo−10Mn+100Sn …(a)
ただし、式中の各元素名は、その含有量(質量%)を表す。
上記(a)式から分かるように、GI値は、Ni、Cu、Mo、及びSnの添加量増加と、Cr及びMnの添加量減少により、大きな値となる。
前述したように、本発明が対象とする高N二相ステンレス鋼は、NiやMoの添加量を減らし、Mnの添加量を増加させる鋼であるので、GI値を80〜130とするためには、必然的に、Snの添加量を多くする必要がある。本発明者らが検討したところ、本発明が対象とする鋼成分系においては、Snは、300ppm以上添加することが必要であることが分かった。
しかしながら、Snの多量添加は、熱間加工性を悪化させる。一般に、オーステナイト系ステンレスにおいて、Snを数100ppm添加すると、製造性が著しく悪化することが知られている。
高N含有二相ステンレス鋼は、フェライト/オーステナイト粒界の強度を低下させるS、O、Pなどの偏析元素により、熱間加工性が大きく損なわれると考えられており(例えば、非特許文献1、2参照)、熱間加工性は、オーステナイト系ステンレス鋼よりも、さらに悪いとされている。したがって、高N二相ステンレス鋼の熱間加工性改善は、オーステナイト系ステンレス鋼よりも困難である。
熱間加工性を改善する方法として、Bを添加する方法がある。例えば、オーステナイト系ステンレス鋼においては、熱間加工性を改善するために、Bを数十ppm程度添加する例が知られている。
しかし、添加量が約100ppmになると、溶融含有量の上限が存在する。そのため、これ以上、熱間加工性を改善する元素を増加させる方法を用いることはできない。オーステナイト系ステンレス鋼よりも熱間加工性が悪い高N二相鋼に対して、さらに熱間加工性を劣化させるSnのような元素を1000ppm以上も添加することは考えられず、熱間加工性を改善することを企図した検討は皆無であった。
そのため、Snのような熱間加工性を顕著に劣化させることで知られる元素を、高N二相ステンレス鋼に多量に添加して耐食性を高めた、安価な実用鋼を開発する発想は無く、そのような技術文献も存在しない。
このような状況の中、本発明者らは、他の方法で熱間加工性を改善する施策を検討するため、Snが高N二相鋼に与える影響を定量的に把握した。具体的には、Snの添加量を種々変えた試料に対して、熱間加工時の耳割れを調査し、特許文献7などで知られている熱間加工性に関する指標に、Snの項を付加することで、その影響度を調査した。
その結果、Snの熱間加工性への影響が、従来のオーステナイト系ステンレス鋼と比較して顕著に小さいことを知見した。
この従来の予測に反する知見を得たことから、本発明者らは、さらに耐酸性と熱間加工性とを両立し得る条件を詳細に検討し、本発明の完成に至った。本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)質量%で、C:0.06%以下、Si:0.1〜1.5%、Mn:2.0〜6.0%、P:0.05%以下、S:0.005%以下、Cr:21.0〜26.0%、Ni:2.0〜5.0%、Mo:0.1〜2.0%、Cu:0.1〜2.5%、Al:0.003〜0.050%、O:0.007%以下、N :0.10〜0.30%、Sn:0.03〜0.2%、及び、B:0.0005〜0.005%を含有し、さらに、Ca:0.0050%以下、Mg:0.0030%以下、及び、REM:0.10%以下から選ばれる1種又は2種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、下記(a)式で表されるGI値が80以上、130以下、下記(b)式で表されるPVB値が−5以下、を満たすことを特徴とする耐酸性良好な二相ステンレス鋼。
GI=−Cr+18Ni+30Cu+30Mo−10Mn+100Sn …(a)
PVB=S−(Ca+0.3Mg+0.1REM)+0.01Sn−B …(b)
(a)式において、各元素名は、その含有量(質量%)を表し、(b)式において、各元素名は、その含有量(質量ppm)を表す。
(2)さらに、質量%で、V:0.05〜0.5%、Nb:0.01〜0.20%、及び、Ti:0.003〜0.05%から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とした前記(1)の耐酸性良好な二相ステンレス鋼。
本発明によれば、合金コストを低下した汎用タイプ二相ステンレス鋼において、大きな課題の一つである耐酸性低下の抑制を、製造性を阻害することなく解決することができる。その結果、合金コストを低下した汎用タイプ二相ステンレス鋼を、耐酸性が課題となる用途に適用することができる。
本発明の二相ステンレス鋼の成分組成の限定理由について説明する。以下、「%」は、「質量%」、「ppm」は「質量ppm」を意味するものとする。
Cは、ステンレス鋼の耐食性を確保するために、含有量を0.06%以下とする。Cを0.06%を越えて含有させると、Cr炭化物が生成して、耐食性が劣化する。好ましくは、0.04%以下である。含有量を極端に低減することは、大幅なコストアップになるので、0.001%以上とするのが好ましい。
Siは、脱酸のため、0.1%以上添加する。しかしながら、Siを1.5%を超えて添加すると、靱性が劣化するので、含有量は1.5%以下とする。好ましい含有量は、0.2〜1.0%未満である。
Mnは、二相ステンレス鋼中のオーステナイト相を増加させることから、含有量は、2.0%以上とする。しかしながら、Mnを6.0%を超えて添加すると、耐酸性が劣化するので、含有量は6.0%以下とする。好ましい含有量は、2.0超〜3.0%未満である。
Pは、鋼中に不可避的に含有される元素であって、熱間加工性を劣化させるため、含有量は0.05%以下とする。好ましくは、0.03%以下である。含有量を極端に低減することは、大幅なコストアップになるので、0.005%以上とするのが好ましい。
Sは、Pと同様に、鋼中に不可避的に含有される元素であって、熱間加工性及び耐食性を劣化させるので、含有量は、0.005%以下とする。好ましくは、0.002%以下である。含有量を極端に低減することは大幅なコストアップになるので、0.0001%以上とするのが好ましい。
Crは、耐食性を確保するために必要な元素であり、比較的安価な合金であるので、本発明のステンレス鋼では、含有量は21.0%以上とする。含有量が26.0%を超えると、シグマ相等の析出が著しくなり、熱間加工性が劣化する。好ましい含有量は、21.0〜24.0%である。
Niは、二相ステンレス鋼中のオーステナイト相を増加させること、及び、各種酸に対する耐食性を改善するのに有効な元素であり、含有量は2.0%以上とする。しかし、高価な合金であるので、5.0%以下とする。好ましい含有量は、3.0〜4.0%未満である。
Moは、ステンレス鋼の耐食性を付加的に高める非常に有効な元素である。非常に高価な元素であるので、含有量は、2.0%以下とする。好ましい含有量は、0.1〜1.5%未満である。
Cuは、Niと同様、二相ステンレス鋼中のオーステナイト相を増加させること、及び、各種酸に対する耐食性を改善するのに有効な元素であり、かつ、Niと比べて安価な合金である。本発明のステンレス鋼では、Mnの影響による耐酸性の低下を抑制するため、Cuの含有量は、0.1%以上とする。Cuの含有量が2.5%を越えると、熱間加工性が低下するので、2.5%以下とする。好ましい含有量は、0.5%超〜2.0%である。
Alは、鋼の脱酸のための重要な元素であり、鋼中の酸素を低減するために、0.003%以上の含有が必要である。一方で、Alは、Nとの親和力が比較的大きな元素であり、過剰に添加すると、AlNを生じて母材の靭性を阻害する。その程度は、N含有量にも依存するが、Alの含有量が0.050%を越えると、靭性低下が著しくなるので、0.050%以下とする。好ましい含有量は、0.003〜0.030%である。
Oは、非金属介在物の代表である酸化物を構成する有害な元素であり、過剰な含有は靭性を阻害する。また、粗大なクラスター状酸化物が生成すると、表面疵の原因となる。このため、含有量は0.007%以下とする。好ましくは、0.005%以下である。
Nは、オーステナイト相に固溶して強度、耐食性を高めるとともに、母材及び熱影響部のオーステナイト相を増加させる有効な元素であるので、0.10%以上含有させる。一方、0.30%を越えて含有させると、溶接熱影響部にCr窒化物が析出して、耐食性の低下を引き起こすので、含有量は、0.30%以下とする。好ましい含有量は、0.15〜0.25%である。
なお、本発明の二相ステンレス鋼において良好な特性を得るためには、オーステナイト相面積率を30〜70%にすることが必要である。オーステナイト相面積率が30%未満では靱性不良が、70%超では熱間加工性、応力腐食割れが生じる。また、いずれの場合も、耐食性が不良となる。特に、本発明の二相ステンレス鋼では、窒化物析出による耐食性と靭性低下を極力抑制するために、窒素の固溶限の大きいオーステナイト相を可能な限り多くするのが好ましい。
さらに、前述のとおり、耐酸性は、合金元素添加量によって決定し、その程度は、下記(a)式で求められるGI値により表すことができる。耐酸性の指標であるGI値が大きいほど耐酸性が良好となるので、金属母地の腐食速度が小さくなり、板厚が減少しにくく、GI値が小さいほど金属母地の腐食速度が大きくなり、板厚が減少しやすい。
具体的には、下記(a)式で表されるGI値が80以上であれば、良好な耐酸性が得られる。ただし、GI値が130を超えると、合金コストが高くなるので好ましくない。
GI=−Cr+18Ni+30Cu+30Mo−10Mn+100Sn …(a)
(a)式において、各元素名は、その含有量(%)を表す。
Snは、各種酸に対する耐食性を改善するのに有効な元素であるので、0.03%以上含有させる。Snを0.2%を越えて含有させると、熱間加工性を阻害するので、含有量は0.2%以下とする。好ましい含有量は、0.05%超〜0.15%である。
Bは、鋼の熱間加工性を改善するために添加される。Snが粒界に偏析すると、熱間加工性が低下する。Bは、Snよりも粒界に偏析しやすく、かつ、粒界強度を高めるので、粒界にBを優先的に偏析させることにより、Snによる耐酸性向上効果、及び、耐孔食性向上効果を保持したまま、Snが粒界に偏析することによる熱間加工性の低下を抑制し、かつ、粒界強度を向上させる。さらに、Snの粒界偏析を抑制することで、鋼中にSn原子を分散させ、Snの耐食性向上効果を改善させる。
上記の効果を得るために、Bは、0.0005%以上含有させる。一方、Bを0.005%を超えて添加すると、過剰に融点が降下し、粒界が溶解するので、Bの含有量は0.005%以下とする。
Ca、Mg、REMは、いずれも、脱酸、脱硫剤として働き、さらに、鋼の熱間加工性を改善する元素であり、その目的で1種又は2種以上添加する。
Caは、0.0050%を超えて添加すると靭性が低下するので、含有量は0.0050%以下とする。好ましい含有量は0.0005〜0.0030%である。
Mgは、0.0030%を超えて添加すると靭性が低下するので、含有量は0.0030%以下とする。好ましい含有量は0.0001〜0.0015%である。
REMは、0.10%を超えて添加すると靭性が低下するため、含有量は0.10%以下とする。好ましい含有量は0.005〜0.05%である。ここで、REMの含有量は、LaやCe等のランタノイド系希土類元素の含有量の総和とする。
さらに、熱間加工性の観点から、下記(b)式で求まるPVB値を−5以下にすることによって、製造性を維持する。PVB値は、熱間加工性低下の原因であるS及びSnの粒界偏析に関する指標であり、Ca、Mg、及びREMによりSを固定し、無害化する効果とBにより粒界強度を向上する効果を表す。PVB値が−5を超えると、熱間加工性が悪くなり、熱延中に顕著な耳割れを引き起こす。PVB値が−5以下であれば、熱間加工性が良好となり、歩留りが向上する。
PVB=S−(Ca+0.3Mg+0.1REM)+0.01Sn−B …(b)
(b)式において、各元素名は、その含有量(ppm)を表す。
次に、本発明の二相ステンレス鋼に、選択元素として添加できる元素について説明する。
Tiは、極微量で窒化物を形成し、Cr窒化物の析出を抑制する効果があり、必要に応じて添加する。この効果を得るには、0.003%以上含有させることが必要である。一方、0.05%を越えて含有させると、粗大なTiNが生成して、鋼の靭性を阻害する。そのため、Tiの含有量は、0.003〜0.05%とする。好ましい含有量は、0.003〜0.020%である。
Nbは、Ti同様にCr窒化物の析出を抑制し、また、耐食性を高める作用も有する。Nbが形成する窒化物、炭化物は、熱間加工及び熱処理の過程で生成し、結晶粒成長を抑制し、鋼材を強化する作用を有する。この効果を得るには、Nbを0.01%以上含有させる。一方、Nbを過剰に添加すると、熱間圧延前の加熱時に未固溶析出物として析出し、靭性を阻害するので、含有量は0.20%以下とする。添加する場合の好ましい含有量は、0.01〜0.10%である。
Vは、耐食性を高める作用を有する。この効果を得るには、Vを0.05%以上含有させる。Vを0.5%を超えて含有させると、粗大なV系炭窒化物が生成し、靱性が劣化するので、含有量は0.5%以下とする。添加する場合の好ましい含有量は、0.06〜0.30%である。
以下に、実施例を用いて、本発明を具体的に説明する。
表1、表2に示す成分組成を有する供試鋼を、50kg真空誘導炉によりMgOるつぼ中で溶製し、約120mm角の鋼塊に鋳造した。次いで、鋼塊の本体部分より、80mm×110mm×1mmの寸法に鍛造した後、熱間圧延用素材を加工し、1180℃の温度に1〜2h加熱後、仕上温度900℃狙いの条件で圧延し、12mm厚×約700mm長の熱間圧延鋼板を得た。
なお圧延直後の鋼材温度が800℃以上の状態より200℃以下までスプレー冷却を実施した。最終の溶体化熱処理は、1050℃×20分均熱後、水冷の条件で実施した。
Figure 2012201960
Figure 2012201960
表1は、本発明の規定をすべて満たす本発明例である。表2は比較例であり、表2中の下線は、本発明の規定を満たさないことを示す。
表1、表2に記載されている成分以外は、Fe及び不可避的不純物である。また、表1、表2中に記載のGI値、PVB値は、それぞれ、
GI =−Cr+18Ni+30Cu+30Mo−10Mn+100Sn …(a)
PVB=S−(Ca+0.3Mg+0.1REM)+0.01Sn−B …(b)
を意味し、(a)式において、各元素名は、その含有量(%)を表し、(b)式において、各元素名は、その含有量(ppm)を表す。
表1、表2の空欄は、当該元素を意図的に添加していないので測定していないことを示す。また、表中のREMはランタノイド系希土類元素を意味し、それら元素の含有量の合計を示している。
得られた厚鋼板について、以下のとおり特性評価を行った。厚鋼板のフェライト相率は、いずれも、30〜70%の範囲内にあった。
<熱間加工性>
圧延材約700mmのうち最も長い耳割れの長さを耳割れ長さを評価した。後工程である冷間圧延等に支障がなく、また、歩留りを考慮して製造性が良好と判断できる5mmを基準とし、耳割れ長さが5mm以下であれば合格と判定した。
<耐酸性>
表層から25×25×3mmの試験片を採取し、試験片の表面を#600研磨し、20%硫酸中に浸漬した。浸漬直後、鉄くぎを10s接触させることにより、試験片表面を活性化させ、30分間浸漬した。その後、試験前後の重量変化より腐食速度を算出し、鋼種間の耐酸性を比較した。腐食速度が、一般的に耐酸性が求められるケミカルタンカーなどの用途において最低限必要とされる、1.00mm/y以下であれば合格と判定した。
<耐孔食性>
JISG0577に準拠した孔食電位測定を行った。具体的には、表層から25×10×2mmの試験片を採取し、1cmの試験面を残し、シリコン被覆材で被覆した試験片を準備した。試験開始直前に#600研磨をし、不動態皮膜を除去した試験片について、50℃、Ar脱気した1.0mol/LのNaCl水溶液中に浸漬して10min後、速度20mV/minで電位を掃印し、電流密度が100mA/cmを示した際の電位を孔食電位とした。孔食電位が、耐酸性が求められる用途において最低限必要とされる、0.20Vvs.SSE以上であれば合格と判定した。
表3に、評価結果を示す。本発明鋼では、圧延材の耳割れ、耐酸性、及び耐孔食性は、いずれも良好な値を示した。
Figure 2012201960
熱間加工性については、PVB値が−5を超えている、鋼L、H、U、及び、V、並びに、Si、Al、P、Cu、Nb、V、及び、Snの添加量がそれぞれ多過の、鋼D、N、G、M、Q、R、及び、Sで、熱延板の耳割れが5mm超となった。
耐酸性については、GI値が80未満の鋼A、E、I、及び、Lの腐食速度が1.00mm/yを超え、耐酸性が劣位であった。
耐孔食性については、Cが多い鋼C、Cr量が本発明の範囲外である鋼J、K、及び、N量が本発明の範囲外である鋼O、Pで、孔食電位が0.20Vvs.SSEを下回り、耐孔食性が劣位であった。
鋼Tは、表面に疵が生じた点で、劣位であった。
鋼B、Fは、GI値が130を超えており、コストの観点から好ましくない。
以上の実施例から分かるように、本発明によれば、耐酸性に優れた汎用二相ステンレス鋼が得られることが明確となった。
本発明によれば、NiをMnで代替し、低合金コスト化を図った汎用二相ステンレス鋼において、製造性を阻害することなく、耐酸性、耐孔食性の劣化が抑制でき、その結果、汎用二相ステンレス鋼の用途のうち耐酸性が課題となっていた用途への適用範囲の拡大によりコスト削減が図れ、産業上寄与するところは極めて大である。

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C :0.06%以下、
    Si:0.1〜1.5%、
    Mn:2.0〜6.0%、
    P :0.05%以下、
    S :0.005%以下、
    Cr:21.0〜26.0%、
    Ni:2.0〜5.0%、
    Mo:0.1〜2.0%、
    Cu:0.1〜2.5%、
    Al:0.003〜0.050%、
    O :0.007%以下、
    N :0.10〜0.30%、
    Sn:0.03〜0.2%、及び、
    B:0.0005〜0.005%
    を含有し、さらに、
    Ca:0.0050%以下、
    Mg:0.0030%以下、及び
    REM:0.10%以下
    から選ばれる1種又は2種以上を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    下記(a)式で表されるGI値が80以上、130以下、
    下記(b)式で表されるPVB値が−5以下、
    を満たすことを特徴とする耐酸性良好な二相ステンレス鋼。

    GI=−Cr+18Ni+30Cu+30Mo−10Mn+100Sn …(a)
    PVB=S−(Ca+0.3Mg+0.1REM)+0.01Sn−B …(b)
    (a)式において、各元素名は、その含有量(質量%)を表し、(b)式において、各元素名は、その含有量(質量ppm)を表す。
  2. さらに、質量%で、
    V :0.05〜0.5%、
    Nb:0.01〜0.20%、及び、
    Ti:0.003〜0.05%
    から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐酸性良好な二相ステンレス鋼。
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