JP6708192B2 - 絶縁電線の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、絶縁電線の製造方法に関する。
導線を電着塗装して絶縁電線を製造する際に、水及び有機溶剤の混合液を分散媒とする電着ワニスを用いることが知られている。例えば、特許文献1には、絶縁電線の製造に用いる電着ワニスにおいて、水と塗装用樹脂に対して良溶媒である水溶性有機溶剤との混合液を分散媒とすることが開示されている。特許文献2には、絶縁電線の製造に用いる電着ワニスにおいて、水と水溶性有機溶剤との混合液を分散媒とすることが開示されている。
特開2017−16956号公報 特開2016−149281号公報
ところで、スマートフォン等で使用される小型インダクタ用の絶縁電線では、寸法構成の制約が厳しく、そのため絶縁電線における導線を被覆する絶縁被覆層の薄膜化が求められる。しかしながら、電着塗装により絶縁被覆層を薄膜化して形成する場合、絶縁被覆層に亀裂や凹みが発生し、そのため生産安定性及び絶縁信頼性の確保が困難になるという問題がある。
本発明の課題は、生産安定性及び絶縁信頼性を確保しつつ、絶縁被覆層を薄膜化することができる絶縁電線の製造方法を提供することである。
本発明は、導線を、帯電樹脂粒子を含む固形分並びに水及び水溶性有機溶剤の混合液を含有する電着ワニスに通して表面にワニス膜を付着させた後に加熱することにより、前記導線の表面に前記ワニス膜を焼き付けて前記導線の表面を被覆する膜厚が15μm以下の絶縁被覆層を形成する工程を含む絶縁電線の製造方法であって、前記ワニス膜において、前記固形分の含有量に対する前記水溶性有機溶剤の含有量の比が1.8以上5.6以下である。
本発明によれば、導線に付着したワニス膜において、固形分の含有量に対する水溶性有機溶剤の含有量の比が1.8以上5.6以下であることにより、導線の表面に優れた表面性状の絶縁被覆層を成膜することができ、それによって生産安定性及び絶縁信頼性を確保しつつ、絶縁被覆層を薄膜化することができる。
絶縁電線の斜視図である。 他の絶縁電線の斜視図である。 実施形態に係る絶縁電線の製造方法の工程順を示す図である。 絶縁被覆工程を示す図である。 絶縁被覆工程を示す要部拡大図である。
以下、実施形態について詳細に説明する。
(絶縁電線)
図1A及びBは、実施形態に係る製造方法で製造する絶縁電線10を示す。絶縁電線10は、図1Aに示すように上下面及び両側面が平坦面に形成された断面形状が扁平な矩形のものであってもよく、また、図1Bに示すように上下面が平坦面に形成され且つ両側面が外側に膨出した曲面に形成された断面形状が扁平なものであってもよい。これらの絶縁電線10は、例えば、スマートフォン等で使用される小型インダクタ等に用いられるものである。
絶縁電線10は、扁平な断面形状を有する平角導線11と、その外周面を被覆する絶縁被覆層12とを備える。平角導線11は、例えば純度4N以上の高純度銅で形成されている。平角導線11の厚さは例えば0.01mm以上1.0mm以下、及び幅は例えば0.2mm以上4.0mm以下である。絶縁被覆層12は樹脂で形成されている。絶縁被覆層12は、後述の電着塗装による単一の被覆処理層で構成されていることが好ましい。絶縁被覆層12の膜厚は、例えば1μm以上であるが、15μm以下であって、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは8μm以下の薄膜である。
(絶縁電線の製造方法)
実施形態に係る絶縁電線10の製造方法は、図2に示すように、伸線加工工程、冷間加工工程、焼鈍工程、油分除去工程、及び絶縁被覆工程を含む。なお、これらの工程は、それぞれの工程をバッチ式で行ってもよく、また、全ての工程を連続式で行ってもよく、更には、例えば伸線加工工程及び冷間加工工程を連続式で行った後、焼鈍工程のみをバッチ式で行い、それ以降の油分除去工程及び絶縁被覆工程を連続式で行う場合のようにバッチ式と連続式とを組み合わせて行ってもよい。
<伸線加工工程>
伸線加工工程では、母線としての荒引線を細径化して横断面が円形の丸線に伸線加工する。伸線加工としては、一般的には、荒引線を伸線ダイスに通す加工が挙げられる。荒引線の外径は例えば8.0mmであり、伸線後の丸線の外径は例えば0.05mm以上0.2mm以下である。なお、伸線加工は通常は多段階で行い、例えば、まず外径が8.0mmの荒引き線を外径が2.6mm以上3.2mm以下となるように伸線し、次いで0.6mm以上0.8mm以下となるように伸線し、更に0.05mm以上0.2mm以下となるように伸線する。
<冷間加工工程>
冷間加工工程では、伸線工程で伸線した丸線を、外周面に平行な一対の平坦面を含む平角導線11に冷間加工する。冷間加工としては、例えば、丸線を圧延機のローラー間に通す圧延加工、丸線をダイスに通す加工等が挙げられる。図1Aに示すような上下面及び両側面が平坦面に形成された断面形状が扁平な矩形の絶縁電線10を製造する場合、丸線を厚さ方向及び幅方向のそれぞれで圧延加工することにより同様の断面形状の平角導線11を得ることができる。また、図1Bに示すような上下面が平坦面に形成され且つ両側面が外側に膨出した曲面に形成された断面形状が扁平の絶縁電線10を製造する場合、丸線を厚さ方向で圧延加工することにより同様の断面形状の平角導線11を得ることができる。
<焼鈍工程>
焼鈍工程では、熱処理により、平角導線11を形成する金属の結晶粒度や0.2%耐力等の物性調整を行う。この焼鈍工程での熱処理は、長さ方向の特性を均一化させる観点からはバッチ式で行うことが好ましく、その場合、冷間加工工程後の平角導線11を巻回したボビンを熱処理炉に投入後、所定の昇温速度で炉内の温度を所定の保持温度まで高め、その保持温度で所定の保持時間を保持した後、所定の降温速度で炉内の温度を低下させることが好ましい。ここで、昇温速度は例えば20℃/h以上2000℃/h以下である。保持温度(焼鈍温度)は例えば150℃以上1000℃以下である。保持時間(焼鈍時間)は例えば1秒以上100時間以下である。降温速度は例えば10℃/h以上2000℃/h以下である。また、熱処理を連続式で行う場合、熱処理条件は、例えば焼鈍温度500℃以上900℃以下及び焼鈍時間1秒以上60秒以下である。熱処理は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気で行うことが好ましい。
<油分除去工程>
油分除去工程では、平角導線11の外周面に付着した油分を洗浄除去する。この油分除去工程での洗浄は、例えば、平角導線11を洗浄液に浸漬して引き上げた後、窒素ガス等の不活性ガスを吹き付けて平角導線11の外周面に付着した洗浄液を飛散させることにより行うことができる。ここで、洗浄液としては、例えば、水(温水)、有機溶剤等が挙げられる。洗浄液を水とする場合、水温は例えば10℃以上60℃以下である。洗浄液には洗剤を含めてもよい。
<絶縁被覆工程>
絶縁被覆工程では、図3A及びBに示すように、平角導線11を、電着バス21に入れた電着ワニスVに連続的に通して、表面にワニス膜Mを付着させて電着塗装した後、乾燥炉22に通して液状成分を飛散させるのに続いて、焼付炉23に通して加熱する。これにより、平角導線11の表面にワニス膜Mを焼き付けて平角導線11の表面を被覆する膜厚が15μm以下の絶縁被覆層12を形成する。このときの平角導線11の線速は、好ましくは1m/min以上50m/min以下、より好ましくは5m/min以上40m/min以下である。
絶縁被覆工程における電着塗装では、電着ワニスVとして、帯電樹脂粒子を含有するO/W型分散液を用いることが好ましい。そして、平角導線11を帯電樹脂粒子が有する電荷の逆となる電極として電着ワニスVに電圧を印加して電流を流し、それにより平角導線11の表面にワニス膜Mを付着させる。電着ワニスVへの電圧印加は、定電流法で行ってもよく、また、定電圧法で行ってもよい。その印加電圧は例えば10V以上100V以下である。電着ワニスVに流す電流値は、好ましくは1mA以上500mA以下、より好ましくは10mA以上200mA以下である。
平角導線11へのワニス膜Mの付着量は、電着ワニスVの組成を固定して考えると、平角導線11に流れる電荷量に依存する。したがって、絶縁被覆層12の膜厚もまた、その電荷量に依存する。そして、その平角導線11に流れる電荷量は、平角導線11の線速及び電着ワニスVに流す電流値に依存する。このことから、絶縁被覆層12の膜厚は、平角導線11の線速及び電着ワニスVに流す電流値の組み合わせにより制御することができる。なお、電着ワニスVを入れた電着バス21を隔室に収容し、低真空雰囲気(100Pa以上)或いは窒素ガス雰囲気で平角導線11の電着ワニスVへの浸漬を行ってもよい。
絶縁被覆工程における予備乾燥では、乾燥温度、つまり、乾燥炉22の炉内温度は、ワニス膜Mの発泡を抑制する観点から、水溶性有機溶剤の沸点以下であることが好ましく、具体的には100℃以上250℃以下が好ましい。乾燥時間は、例えば1秒以上180秒以下である。乾燥時間は、平角導線11の線速や乾燥炉22の長さの設定によって調節することができる。予備乾燥は、単一の焼付処理温度により一段階で行ってもよく、また、相互に異なる焼付処理温度の多段階で行ってもよい。
絶縁被覆工程における塗膜焼付では、焼付温度、つまり、焼付炉23の炉内温度は、例えば200℃以上500℃以下である。焼付時間は、例えば5秒以上1800秒以下である。焼付時間は、平角導線11の線速や焼付炉23の長さの設定によって調節することができる。塗膜焼付は、単一の焼付処理温度により一段階で行ってもよく、また、相互に異なる焼付処理温度の多段階で行ってもよい。
電着ワニスVは、帯電樹脂粒子を含む固形分、並びに分散媒として水及び水溶性有機溶剤の混合液を含有する。ここで、本出願における「固形分」とは、電着ワニスVを乾燥固化させたときに残留することとなる帯電樹脂粒子を含む成分のことである。
電着ワニスVが含有する固形分としては、帯電樹脂粒子の他に例えば着色剤等が挙げられる。電着ワニスVにおける初期の固形分の含有量Sは、好ましくは0.5質量%以上6.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上4.0質量%以下である。
固形分の帯電樹脂粒子は、負電荷を有するアニオン型のものであってもよく、また、正電荷を有するカチオン型のものであってもよい。帯電樹脂粒子を形成する樹脂としては、例えば、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ・アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。帯電樹脂粒子を構成する樹脂は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましく、ポリアミドイミド樹脂を用いることがより好ましい。電着ワニスVにおける帯電樹脂粒子の含有量S1は、好ましくは0.5質量%以上6.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上4.0質量%以下である。
固形分の着色剤としては、例えば、C.I.ソルベントブラック3、C.I.ソルベントブラック27、C.I.ソルベントブラック7等が挙げられる。着色剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましく、C.I.ソルベントブラック3を用いることがより好ましい。電着ワニスVにおける着色剤の含有量S2は、好ましくは0.025質量%以上0.300質量%以下、より好ましくは0.050質量%以上0.200質量%以下であり、また、帯電樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは1質量部以上20質量部以下、より好ましくは3質量部以上10質量部以下である。
電着ワニスVは、分散媒として、水及び水溶性有機溶剤の混合液を含有する。
分散媒を構成する水は、例えばイオン交換水や蒸留水である。電着ワニスVにおける水の含有量L1は、好ましくは20質量%以上95質量%以下、より好ましくは30質量%以上90質量%以下である。
分散媒を構成する水溶性有機溶剤は、水に対する親和性が高い非プロトン性極性溶媒であることが好ましい。また、水溶性有機溶剤は、帯電樹脂粒子を構成するポリマーに対しての良溶媒であることが好ましい。水溶性有機溶剤としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」という。)、ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」という。)、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、シクロヘキサノン等が挙げられる。水溶性有機溶剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましく、NMP及び/又はDMFを用いることがより好ましく、NMP及びDMFを併用することが更に好ましい。
電着ワニスVにおける水溶性有機溶剤の含有量L2は、好ましくは5質量%以上40質量%以下、より好ましくは10質量%以上30質量%以下である。電着ワニスVにおける水の含有量L1に対する水溶性有機溶剤の含有量L2の比(L2/L1)は、好ましくは0.01以上2.00以下、より好ましくは0.05以上1.00以下である。電着ワニスVにおける固形分の含有量Sに対する水溶性有機溶剤の含有量L2の比(L2/S)は、好ましくは3.0以上90.0以下、より好ましくは5.0以上80.0以下である。
水溶性有機溶剤としてNMP及びDMFを併用する場合、電着ワニスVにおけるNMPの含有量L2(NMP)は、好ましくは5.0質量%以上40.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以上30.0質量%以下である。電着ワニスVにおけるDMFの含有量L2(DMF)は、好ましくは0.5質量%以上20.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以上15.0質量%以下である。NMPの含有量L2(NMP)に対するDMFの含有量L2(DMF)の比(L2(DMF)/L2(NMP))は、好ましくは0.03以上0.50以下、より好ましくは0.04以上0.20以下である。
電着ワニスVは、中和剤を含有していてもよい。中和剤は、アニオン型の電着ワニスVの場合にはカチオンを形成する塩基性中和剤を用い、カチオン型の電着ワニスVの場合にはアニオンを形成する酸性中和剤が用いる。
塩基性中和剤としては、例えば、2−アミノエタノール(以下、「AE」という。)、2,2’−イミノジエタノール、2−アミノ−2−メチルプロパノールなどのアミノアルコール系化合物;モルホリンなどのモルホリン系化合物;ピペラジン無水物、ピペラジン六水和物などのピペラジン系化合物;トリエチルアミン、トリプロピルアミンなどのアルキルアミン系化合物;ピペリジンなどのピペリジン系化合物等が挙げられる。塩基性中和剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましく、2−アミノエタノールを用いることがより好ましい。
酸性中和剤としては、例えば、塩酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、シアノ酢酸、リン酸や硫酸などの無機酸及び有機酸等が挙げられる。酸性中和剤は、これらのうちの1種又は2種以上を用いることが好ましい。
電着ワニスVにおける中和剤の含有量L3は、好ましくは0.015質量%以上0.300質量%以下、より好ましくは0.040質量%以上0.200質量%以下であり、帯電樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは1質量部以上15質量部以下、より好ましくは2質量部以上10質量部以下である。
電着ワニスVの50%径(D50:メジアン径)は、好ましくは20nm以上10000nm以下、より好ましくは50nm以上1000nm以下である。この電着ワニスVの50%径(D50)は、例えば大塚電子社製のゼータ電位・粒径・分子量測定システム(ELSZ−2000ZS)を用いた動的光散乱法により測定される。
電着ワニスVの粘度は、液温20℃において、好ましくは2mPa・s以上50mPa・s以下、より好ましくは4mPa・s以上30mPa・s以下である。この電着ワニスVの粘度はB型粘度計(100rpm)により測定される。電着ワニスVのpHは、pHメーターにより測定され、例えば7以上9以下である。電着ワニスVの液温は例えば10℃以上30℃以下である。
電着ワニスVは、例えば、帯電樹脂粒子を構成する樹脂を含む油相成分と水相成分とをそれぞれ準備し、それらを混合した後に撹拌して転相乳化させることにより調製することができる。この撹拌には、汎用の乳化機、分散機、混合機、又は、攪拌機を用いることができる。具体的には、例えば、高剪断を与えることができるローター式又はステーター式ミキサー、コロイドミル、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等が挙げられる。撹拌の際における撹拌翼の外周の周速は、好ましくは1m/min以上好ましくは70m/min以下、より好ましくは10m/min以上30m/min以下である。撹拌時間は、好ましくは3分以上60分以下、より好ましくは5分以上30分以下である。
絶縁被覆工程では、平角導線11の線速及び電着ワニスVに流す電流値の設定に加え、平角導線11に付着するワニス膜Mにおいて、固形分の含有量S’に対する水溶性有機溶剤の含有量L2’の比(L2’/S’)が1.8以上5.6以下、好ましくは2.0以上5.0以下、より好ましくは2.5以上4.5以下となるように、電着バス21内の電着ワニスVの組成を調整する。
平角導線11に付着するワニス膜Mの組成は、帯電樹脂粒子が高い濃度で含まれることになるため、通常は電着バス21内の電着ワニスVの組成と一致しない。本発明者は、絶縁被覆層12の成膜性が、このワニス膜Mの組成と相関があり、このワニス膜Mにおいて、固形分の含有量S’に対する水溶性有機溶剤の含有量L2’の比(L2’/S’)が1.8以上5.6以下となるように、電着バス21内の電着ワニスVの組成、特に水溶性有機溶剤の含有量L2’を設定することにより、絶縁被覆層12の優れた成膜性が得られることを見出した。したがって、実施形態に係る絶縁電線10の製造方法によれば、平角導線11に付着したワニス膜Mにおいて、固形分の含有量S’に対する水溶性有機溶剤の含有量L2’の比(L2’/S’)が1.8以上5.6以下であることにより、平角導線11の表面に優れた表面性状の絶縁被覆層12を成膜することができ、それによって生産安定性及び絶縁信頼性を確保しつつ、絶縁被覆層12を薄膜化することができる。
ここで、ワニス膜Mにおける固形分の含有量S’は、好ましくは1.0質量%以上40.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以上30.0質量%以下である。ワニス膜Mにおける水溶性有機溶剤の含有量L2’は、好ましくは5.0質量%以上40.0質量%以下、より好ましくは10.0質量%以上30.0質量%以下である。
電着バス21内の電着ワニスVは平角導線11に付着して消費されるので、電着バス21に連続的又は断続的に電着ワニスVを補充することが好ましい。このとき補充する電着ワニスVは、ワニス膜Mにおいて、固形分の含有量S’に対する水溶性有機溶剤の含有量L2’の比(L2’/S’)が1.8以上5.6以下となるように、電着バス21内の電着ワニスVの組成を維持するものであれば、初期に仕込んだ電着ワニスVと同一であってもよく、また、それを濃縮又は希釈したものであってもよい。
なお、上記実施形態では、断面形状が扁平な矩形の絶縁電線10を示したが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、厚さ方向及び幅方向の寸法が等しい断面形状が正方形のものであってもよく、また、断面形状が円形の丸線であってもよい。
(絶縁電線の製造)
以下の実施例1〜7及び比較例1〜5の絶縁電線の作製実験を行った。それぞれの構成については表1及び2にも示す。
<実施例1>
固形分のポリアミドイミド(PAI)樹脂1.9質量%及び着色剤0.1質量%、分散媒の水88質量%及び水溶性溶剤10質量%(NMP:9.2質量%+DMF:0.8質量%)、並びに中和剤のAE0.07質量%を含有するO/W型分散液の電着ワニスを調整した。この電着ワニスにおける固形分の含有量は2.0質量%、50%径(D50)は200nm、液温20℃における粘度は5.0mPa・s、pHは7.4、液温は20℃であった。
この電着ワニスを用い、上記実施形態における絶縁被覆工程と同様の操作を行うことにより絶縁電線を作製した。平角導線には、厚さ0.06mm及び幅0.28mmの平角銅導線を用いた。予備乾燥では、乾燥温度を200℃及び乾燥時間を6秒とした。塗膜焼付では、焼付温度を350℃及び焼付時間を6秒とした。そして、平角導線の線速を30m/minとするとともに、電着ワニスに流す電流値を30mAとすることにより、膜厚3μmの絶縁被覆層を形成させた。
このとき、電着バスから引き上げられた平角導線の表面に付着したワニス膜を組成分析し、その固形分の含有量に対する水溶性有機溶剤の含有量の比を求めたところ3.2であった。
<実施例2>
実施例2では、電着ワニスにおける水溶性有機溶剤の含有量を15質量%(NMP:13.8質量%+DMF:1.2質量%)としたことを除いて実施例1と同一操作を行った。ワニス膜において、固形分の含有量に対する水溶性有機溶剤の含有量の比は5.0であった。
<実施例3>
実施例3では、電着ワニスに流した電流値を60mAとして膜厚5μmの絶縁被覆層を形成させたことを除いて実施例1と同一操作を行った。ワニス膜において、固形分の含有量に対する水溶性有機溶剤の含有量の比は2.0であった。
<実施例4>
実施例4では、電着ワニスに流した電流値を60mAとして膜厚5μmの絶縁被覆層を形成させたことを除いて実施例2と同一操作を行った。ワニス膜において、固形分の含有量に対する水溶性有機溶剤の含有量の比は2.9であった。
<実施例5>
実施例5では、電着ワニスにおける水溶性有機溶剤の含有量を20質量%(NMP:18.3質量%+DMF:1.7質量%)としたことを除いて実施例3と同一操作を行った。ワニス膜において、固形分の含有量に対する水溶性有機溶剤の含有量の比は3.8であった。
<実施例6>
実施例6では、平角導線の線速を20m/minとして膜厚8μmの絶縁被覆層を形成させたことを除いて実施例5と同一操作を行った。ワニス膜において、固形分の含有量に対する水溶性有機溶剤の含有量の比は2.3であった。
<実施例7>
実施例7では、電着ワニスにおける水溶性有機溶剤の含有量を30質量%(NMP:27.5質量%+DMF:2.5質量%)としたことを除いて実施例6と同一操作を行った。ワニス膜において、固形分の含有量に対する水溶性有機溶剤の含有量の比は3.5であった。
<比較例1>
比較例1では、電着ワニスにおける水溶性有機溶剤の含有量を5質量%(NMP:4.6質量%+DMF:0.4質量%)としたことを除いて実施例1と同一操作を行った。ワニス膜において、固形分の含有量に対する水溶性有機溶剤の含有量の比は1.6であった。
<比較例2>
比較例2では、電着ワニスにおける水溶性有機溶剤の含有量を20質量%(NMP:18.3質量%+DMF:1.7質量%)としたことを除いて実施例1と同一操作を行った。ワニス膜において、固形分の含有量に対する水溶性有機溶剤の含有量の比は6.5であった。
<比較例3>
比較例3では、電着ワニスにおける水溶性有機溶剤の含有量を30質量%(NMP:27.5質量%+DMF:2.5質量%)としたことを除いて実施例3と同一操作を行った。ワニス膜において、固形分の含有量に対する水溶性有機溶剤の含有量の比は5.7であった。
<比較例4>
比較例4では、電着ワニスにおける水溶性有機溶剤の含有量を10質量%(NMP:9.2質量%+DMF:0.8質量%)としたことを除いて実施例6と同一操作を行った。ワニス膜において、固形分の含有量に対する水溶性有機溶剤の含有量の比は1.2であった。
<比較例5>
比較例5では、電着ワニスにおける水溶性有機溶剤の含有量を15質量%(NMP:13.8質量%+DMF:1.2質量%)としたことを除いて実施例6と同一操作を行った。ワニス膜において、固形分の含有量に対する水溶性有機溶剤の含有量の比は1.7であった。
Figure 0006708192
Figure 0006708192
(試験方法)
実施例1〜7及び比較例1〜5のそれぞれで製造した絶縁電線の外観を目視により、絶縁被覆層の亀裂の有無、及び凹みの有無を確認した。そして、亀裂や凹みの有るものをA評価、無いものをB評価とした。
(試験結果)
表1及び2は、実施例1〜7及び比較例1〜5のそれぞれで製造した絶縁電線の絶縁被覆層における亀裂及び凹みの有無の評価結果を示す。
これによれば、ワニス膜において、固形分の含有量に対する水溶性有機溶剤の含有量の比が1.8以上5.6以下である実施例1〜7では、絶縁電線の絶縁被覆層に亀裂も凹みも認められず、したがって、平角導線の表面に優れた表面性状の絶縁被覆層を成膜することができることが分かる。
一方、固形分の含有量に対する水溶性有機溶剤の含有量の比が1.8よりも低い比較例1、4、及び5では、絶縁電線の絶縁被覆層に凹みは認められないものの、亀裂が認められた。固形分の含有量に対する水溶性有機溶剤の含有量の比が5.6よりも高い比較例2及び3では、絶縁電線の絶縁被覆層に亀裂は認められないものの、凹みが認められた。
なお、実施例1及び3と比較例4、実施例2及び4と比較例5、実施例5及び6と比較例2、及び実施例7と比較例3では、同一組成の電着ワニスを用いているにも関わらず、線速や電流値といった加工条件の相違によって絶縁被覆層の成膜性に相違が認められることが分かる。
本発明は、絶縁電線の製造方法の技術分野について有用である。
10 絶縁電線
11 平角導線
12 絶縁被覆層
21 電着バス
22 乾燥炉
23 焼付炉
M ワニス膜
V 電着ワニス

Claims (5)

  1. 導線を、帯電樹脂粒子を含む固形分並びに水及び水溶性有機溶剤の混合液を含有する電着ワニスに通して表面にワニス膜を付着させた後に加熱することにより、前記導線の表面に前記ワニス膜を焼き付けて前記導線の表面を被覆する膜厚が15μm以下の絶縁被覆層を形成する工程を含む絶縁電線の製造方法であって、
    前記ワニス膜において、前記固形分の含有量に対する前記水溶性有機溶剤の含有量の比が1.8以上5.6以下である絶縁電線の製造方法。
  2. 請求項1に記載された絶縁電線の製造方法において、
    前記電着ワニスにおける前記固形分の含有量が0.5質量%以上6.0質量%以下である絶縁電線の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載された絶縁電線の製造方法において、
    前記電着ワニスにおける前記水溶性有機溶剤の含有量が5質量%以上40質量%以下である絶縁電線の製造方法。
  4. 請求項1乃至3のいずれか記載された絶縁電線の製造方法において、
    前記水溶性有機溶剤が、N−メチル−2−ピロリドン及び/又はジメチルホルムアミドを含む絶縁電線の製造方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか記載された絶縁電線の製造方法において、
    前記帯電樹脂粒子がポリアミドイミド樹脂で形成されている絶縁電線の製造方法。
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