JP5464838B2 - 絶縁部材の製造方法 - Google Patents
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Description
(1)分子骨格中にシロキサン結合を有し、分子中にアニオン性基を有するブロック共重合ポリイミドを樹脂成分として含有する、サスペンジョン型電着塗料組成物中に、被絶縁処理部材を浸漬し、該部材を陽極として電流を通じて該部材の表面上にポリイミド被膜を成長させるアニオン電着工程と、
前記ポリイミド被膜を有する被絶縁処理部材を水溶性極性溶媒と水及び/又は脂肪族アルコール系溶媒を含む洗浄液にて洗浄する工程と、
前記ポリイミド被膜を有する被絶縁処理部材にエアーを噴き付けて洗浄液を除去する工程と、
前記ポリイミド被膜を乾燥する工程とを含む、絶縁部材の製造方法。
(2)洗浄液が、水溶性極性溶媒50〜80重量%と水及び/又は脂肪族アルコール系溶媒20〜50重量%を含有するものである、上記(1)記載の絶縁部材の製造方法。
(3)水溶性極性溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン(γBL)、アニソール、テトラメチル尿素及びスルホランから選ばれる1種又は2種以上である、上記(2)記載の絶縁部材の製造方法。
(4)ブロック共重合ポリイミドが、ジアミン成分の一つとして、分子骨格中にシロキサン結合を有するジアミンを含むポリイミドである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の絶縁部材の製造方法。
(5)分子骨格中にシロキサン結合を有するジアミンが、ビス(4−アミノフェノキシ)ジメチルシラン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及び下記の一般式(I)で表される化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、上記(4)記載の絶縁部材の製造方法。
(6)一般式(I)中の4つのRが、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、フェニル基、又は1個〜3個の炭素数1〜6のアルキル基若しくは炭素数1〜6のアルコキシル基で置換されたフェニル基を表す上記(5)記載の絶縁部材の製造方法。
(7)ブロック共重合ポリイミドの分子中のアニオン性基が、カルボン酸基若しくはその塩、及び/又は、スルホン酸基若しくその塩である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の絶縁部材の製造方法。
(8)ブロック共重合ポリイミドが、ジアミン成分の1つとして、芳香族ジアミノカルボン酸を含むものである、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の絶縁部材の製造方法。
(9)ブロック共重合ポリイミドの全ジアミン成分中、分子骨格中にシロキサン結合を有するジアミンの割合が5〜90モル%、芳香族ジアミノカルボン酸の割合が10〜70モル%である(ただし、両者の合計は100モル%以下であり、第3のジアミン成分を含んでいてもよい)、上記(8)記載の絶縁部材の製造方法。
(10)絶縁部材が絶縁電線であり、被絶縁処理部材が導体線である、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の絶縁部材の製造方法。
(11)絶縁部材が絶縁処理リード端子付き電子部品であり、被絶縁処理部材がリード端子付き電子部品である、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の絶縁部材の製造方法。
本発明でいう「絶縁部材」とは、種々の技術分野において、表面の絶縁保護が必要となる部材の表面に、電着被膜による絶縁層を形成して絶縁処理した部材を意味し、具体的には、導体線の外周に電着被膜による絶縁層を形成した絶縁電線、積層型トランス用コイルに使用される、打ち抜き加工された金属板の外周に電着被膜による絶縁層を形成した絶縁金属板、プローブガード測定用の針状金属ピン、モーターコアなどに使用される、切削または積層により3次元的に成形された金属板の外周に電着被膜による絶縁層を形成した絶縁金属板、リード端子を備えた電子部品のリード端子の表面に電着被膜による絶縁層を形成した絶縁処理リード端子付き電子部品等が挙げられる。
[電着塗料組成物の調製]
ステンレス製の碇型攪拌機を取り付けた2リットルのセパラブル三つ口フラスコに水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。該フラスコに3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物58.84g(200ミリモル)、ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン43.25g(100ミリモル)、γ−バレロラクトン4.0g(40ミリモル)、ピリジン6.3g(80ミリモル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)531gおよびトルエン50gを仕込み、室温、窒素雰囲気下、180rpmで10分攪拌した後、180℃に昇温して2時間攪拌した。反応中、トルエン−水の共沸分を除いた。ついで、室温に冷却し、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物64.45g(200ミリモル)、信越化学工業社製KF−8010を83.00g(100ミリモル)、3,5−ジアミノ安息香酸30.43g(200ミリモル)、NMP531gおよびトルエン50gを添加し、180℃、180rpmで攪拌しながら、8時間反応させた。還流物を系外に除くことにより、20重量%濃度のポリイミド溶液(20%ポリイミドワニス)を得た。得られたポリイミドの数平均分子量及び重量平均分子量は、それぞれ24,000及び68,000であった。
上記電着液組成物を使用し、電極−被着体間距離を25mmとし、電着電圧を30〜50V、電着電流を0.01〜200mAの範囲内、電着時間を10〜60秒の範囲内でそれぞれ変更し、φ1.0mm、長さ20cmの円形銅線外周に電着を行い、電着後の銅線を電着浴から取り出した。次に、N−メチルピロリドン(NMP)70重量%と水30重量%からなる洗浄液に、上記の電着により被膜形成を行った円形銅線を3秒間浸漬して引き上げ、エアガンによりエアーを噴き付けて、洗浄液の除去を行った。その後、90℃×30分間、さらに170℃×30分間、さらに220℃×30分間被膜を焼き付けることで、種々の厚みのポリイミド被膜(絶縁層)を有する円形絶縁銅線(1条件当たりのサンプル数=10)を得た。
JIS−C−3003に準拠して、ピンホールの有無を調査した。
マイクロメータ(最小目盛:0.1mm)を用いて計測した。サンプル1個当たり2cmの間隔で離間する5箇所の厚さを測定し、平均値をそのサンプルの測定結果とした。
JIS−C−3003に準拠して、B法金属箔法により、AC破壊電圧を測定した。すなわち、1cmのスズ箔を絶縁電線に巻き付け、導体−すず箔間にて測定した。そして、各板に交流電圧発生装置を接続し、1秒間当たり100Vの速度で電圧を上昇させて、短絡(漏れ電流値10mA以上)した電圧を破壊電圧とした。表1には10個のサンプルの平均値と最大値と最小値を示した。
絶縁電線の被膜厚さが21μmの試料(試験No.3)について、JIS−C−3003に記載の温度指数評価法に準拠して絶縁電線の耐熱性(電着被膜の耐熱寿命)を評価した。すなわち、電線試料2本を用いて2個撚りし、試験片を得た。この試験片を290〜320℃の範囲内の10℃間隔の温度(290℃、300℃、310℃、320℃)に設定したオーブンで熱処理し、それぞれについて、500V×1秒の電圧印加で破壊に至るまでの時間を計測した。温度指数は290℃、300℃、310℃、320℃の各温度での測定結果をアレニウスプロットした耐熱寿命グラフより算出した。寿命20,000時間に相当する耐熱温度、すなわち、温度指数は240℃で、耐熱区分は200℃以上であるC種に相当するものであった。
実施例1で得られたブロック共重合ポリイミド(樹脂成分)を20重量%含有する半固形状の組成物100gを160℃に加熱溶融した後、NMP70gを加え、アニソール55g、シクロヘキサノン45g及びN−メチルモルホリン2.6g(中和率200モル%)を加え、攪拌しながら水30gを滴下して、固形分濃度6.6%、pH7.8の電着液組成物を得た。粒径分析装置ELS−Z2(大塚電子株式会社製)を用いて、電着液における分散粒子の粒径および標準偏差を測定したが、粒径が0.1μm以上の析出粒子は観察されなかった。そして、この電着液組成物を使用して、極間距離を25mm、電着電圧を160Vとし、電着電流を0.01〜200mAの範囲内、電着時間を10〜60秒の範囲内で変更して、実施例1で使用した円形銅線と同じ銅線に電着を行い、電着後の銅線を電着浴から取り出し、実施例1と同様の条件で被膜の洗浄と被膜の焼き付けを行って、種々の厚みのポリイミド被膜(絶縁層)を有する円形絶縁銅線(1条件当たりのサンプル数=10)を得た。そして、上述の試験方法で、電着液の電着性(被膜の状態)、被膜の厚さ、AC耐電圧及び被膜の耐熱寿命を評価した。下記表2に結果を示す。なお、被膜の耐熱寿命はポリイミド被膜の厚さが18μmの試料について行ったところ、温度指数は180℃で、耐熱区分はH種であった。
[絶縁処理リード端子付きサーミスタの作製]
図2(A)に示す、部品本体であるサーミスタ素子(両面にAuからなる端子電極が対向して形成された負特性のサーミスタ素子)1の端子電極にAu粉末を含む導電性ペーストを用いて、φ0.4mm、長さ80mmの銅被覆ニッケル鋼線(ジュメット線)からなるリード端子2の一端を接続し、サーミスタ素子1及びサーミスタ素子1の端子電極とリード端子2の接続部に低融点ガラス(軟化点570℃)からなるガラス管(外径1.35mm、内径1.05mm、長さ3.0mm)を装着後、750℃で3分間加熱し、ガラス封止することでリード端子付きサーミスタ5を用意した。このリード端子付きサーミスタ5を、電着浴に満たした上記実施例1で作製の電着塗料組成物中に部品本体(サーミスタ1)側からリード端子2の先端の50mmの長さ部分を残して浸漬し、電圧30V、通電量を0.05〜0.2Cとし、電着被膜を形成した。その時の電着電流値は0.01〜200mAの範囲内、電着時間は0.5〜30秒の範囲内で変更した。次に、N−メチルピロリドン(NMP)75重量%と水25重量%からなる洗浄液に、上記の電着によりリード端子に被膜を形成したリード端子付きサーミスタを3秒間浸漬して引き上げ、エアガンによりエアーを噴き付けて、洗浄液の除去を行った。その後、90℃×30分間、さらに170℃×30分間、さらに220℃×30分間被膜を焼き付けることで、図2(B)に示すリード端子2の先端側の50mmの長さ部分を残して、リード端子2がポリイミド被膜(絶縁被膜)4で被覆された絶縁処理リード端子付きサーミスタ10を得た(1条件当たりのサンプル数=10)を得た。
図4に示すように、予め、電極68が設置された水槽66に水67を充満した。そこに、リード端子2の絶縁被膜4による被覆部分が水67に浸かり、該被覆部分と未被覆部分の境界が水面近傍に位置するようにリード端子付きサーミスタ10を配置した。なお、予め、絶縁被膜4からリード端子(ジュメット線)が露出する境界付近を絶縁テープ64でマスクし、封止ガラス3とリード端子2との境界部分を絶縁テープ65でマスクした。テープによるマスキングは、これらの付近で、リード端子(ジュメット線)が直接、水67と接触することによる測定エラーを防止するためである。この構成において、絶縁被膜4が水67と接触している長さを28mmとした。この状態で、電極68とリード端子2間にAC電源69から交流電圧を印加し、絶縁破壊が生じる電圧値を求めた。
洗浄液を水に変更した以外は、実施例2と同様にして絶縁処理リード端子付きサーミスタを作製し、被膜厚さを測定し、被膜のAC耐電圧を評価した。下記表4に結果を示す。表中の被膜厚さとAC耐電圧は各試験条件での10個のサンプルの平均値である。
図3から、洗浄液に水を使用した参考例2に対し、洗浄液にN−メチルピロリドンと水の混合液を使用した実施例では、焼き付け後の被膜がより高い耐電圧性を示すものとなっており、本発明方法によれば、リード端子が極めて優れた電気絶縁性を有する絶縁被膜で絶縁処理された絶縁処理リード端子付き電子部品を製造できることが分かる。
2 リード端子
3 ガラス(封止ガラス)
4 ポリイミド被膜
5 リード端子付きサーミスタ
10 絶縁処理リード端子付きサーミスタ
Claims (10)
- 分子骨格中にシロキサン結合を有し、分子中にアニオン性基を有するブロック共重合ポリイミドの析出粒子(固形粒子)が分散した、サスペンジョン型電着塗料組成物中に、被絶縁処理部材を浸漬し、該部材を陽極として電流を通じて該部材の表面上にポリイミド被膜を成長させるアニオン電着工程と、
前記ポリイミド被膜を有する被絶縁処理部材を、N−メチルピロリドン(NMP)60〜75重量%と水及び/又は脂肪族アルコール系溶媒25〜40重量%を含む洗浄液にて洗浄する工程と、
前記ポリイミド被膜を有する被絶縁処理部材にエアーを噴き付けて洗浄液を除去する工程と、
前記ポリイミド被膜を乾燥する工程とを含む、絶縁部材の製造方法。 - ブロック共重合ポリイミドの析出粒子(固形粒子)の粒子径が0.1〜10μm、粒子径の標準偏差が0.1〜8μmである、請求項1記載の絶縁部材の製造方法。
- ブロック共重合ポリイミドが、ジアミン成分の一つとして、分子骨格中にシロキサン結合を有するジアミンを含むポリイミドである、請求項1または2のいずれか1項に記載の絶縁部材の製造方法。
- 一般式(I)中の4つのRが、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数
3〜7のシクロアルキル基、フェニル基、又は1個〜3個の炭素数1〜6のアルキル基若しくは炭素数1〜6のアルコキシル基で置換されたフェニル基を表す請求項4記載の絶縁部材の製造方法。 - ブロック共重合ポリイミドの分子中のアニオン性基が、カルボン酸基若しくはその塩、及び/又は、スルホン酸基若しくはその塩である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の絶縁部材の製造方法。
- ブロック共重合ポリイミドが、ジアミン成分の1つとして、芳香族ジアミノカルボン酸を含むものである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の絶縁部材の製造方法。
- ブロック共重合ポリイミドの全ジアミン成分中、分子骨格中にシロキサン結合を有するジアミンの割合が5〜90モル%、芳香族ジアミノカルボン酸の割合が10〜70モル%である(ただし、両者の合計は100モル%以下であり、第3のジアミン成分を含んでいてもよい)、請求項7記載の絶縁部材の製造方法。
- 絶縁部材が絶縁電線であり、被絶縁処理部材が導体線である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の絶縁部材の製造方法。
- 絶縁部材が絶縁処理リード端子付き電子部品であり、被絶縁処理部材がリード端子付き電子部品である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の絶縁部材の製造方法。
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