JP5464838B2 - 絶縁部材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は絶縁部材の製造方法に関し、詳しくは、特定のブロック共重合ポリイミドからなる電着被膜で絶縁処理された絶縁部材の製造方法に関する。
従来から、絶縁保護が必要な部材(部品)に絶縁処理を行う方法として、例えば、部材表面に電着塗料を電着して電着被膜による絶縁層を形成することが知られている。この種の電着塗料としては、例えば、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸を溶解した有機極性溶媒に、貧溶媒及び水を添加した水分散系電着液が知られており、該電着液による電着膜を240〜260℃に加熱してイミド化することで絶縁層(絶縁被膜)が形成される(特許文献1〜3)。しかし、従来提案の電着塗料による電着被膜は、被電着物被絶縁処理部材に対する被膜の剥がれや被膜の割れの生じにくさについては必ずしも満足することができない。また、被膜の耐電圧性や耐熱性も十分に高いものとはいえない。そこで、特許文献4には、このような従来の電着塗料の問題を改善でき、被電着物上に剥がれや割れが生じにくい電着被膜を形成できる電着塗料として、主鎖中にシロキサン結合を有する特定のブロック共重合ポリイミドを樹脂成分として含有する電着塗料組成物が提案されている。この電着塗料組成物は、従来のポリイミド電着塗料に比べて、被電着物(被絶縁処理部材)対する電着膜の剥がれや電着膜の割れが生じにくく、しかも、耐熱性及び耐電圧性にも優れる電着被膜を形成できるものである。
しかしながら、近時において、例えば、電気・電子部品関連、自動車分野、航空宇宙分野等の分野では、絶縁部材における絶縁被膜(絶縁層)の耐熱性や耐電圧性の一層の向上が望まれているところ、本発明者らの研究では、特許文献4に提案の電着塗料組成物であっても、かかる要求に十分に応えることができないことが分かった。すなわち、特許文献4に提案の電着塗料組成物は、数種類の溶剤の混合系からなるために溶剤の配合比率の若干の変動によって電着塗料としての挙動が大きく変化し、得られる電着被膜の膜性状が均一になりにくく、そのために、高度の耐電圧性や耐熱性の電着被膜を形成することができないことが分かった。また、概ね15μm以下の比較的薄い厚みの被膜を形成する場合に、同一の膜厚の被膜であっても、耐電圧が大きくばらつき、所望の特性の絶縁被膜を再現性よく形成できないことが分かった。
特開昭49−52252号公報 特開昭52−32943号公報 特開昭63−111199号公報 特開2005−162954号公報 国際公開公報WO99/19771 米国特許第5,502,143号公報
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、膜性状の均一性が高く、被絶縁処理部材に対する密着性に優れ、しかも、高度の耐電圧性及び耐熱性を有する電着被膜によって絶縁処理された絶縁部材を再現性良く製造することができる、絶縁部材の製造方法を提供することである。
本願発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、分子骨格中にシロキサン結合を有し、分子中にアニオン性基を有するブロック共重合ポリイミドとともに使用する溶媒組成及び塗料化の際の温度条件等を工夫することで、前記ブロック共重合ポリイミドが比較的大きな粒径の析出粒子として分散したサスペンジョン型塗料となり、こうして得られた塗料は電着速度が速く、短時間で膜性状の均一性が高い一様な厚みの電着被膜を形成できて、その耐電圧性及び耐熱性が極めて良好で、しかも、従来では困難なレベルまで厚膜化した電着被膜を形成できること、さらに、電着工程後に形成された電着被膜に特定組成の洗浄液による洗浄とエアーの噴き付けによる洗浄液の除去処理を行なってから、被膜の乾燥処理を行なうことで、膜性状の一層の均一化が図れることを知見し、該知見に基づいてさらに研究を進めることにより、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)分子骨格中にシロキサン結合を有し、分子中にアニオン性基を有するブロック共重合ポリイミドを樹脂成分として含有する、サスペンジョン型電着塗料組成物中に、被絶縁処理部材を浸漬し、該部材を陽極として電流を通じて該部材の表面上にポリイミド被膜を成長させるアニオン電着工程と、
前記ポリイミド被膜を有する被絶縁処理部材を水溶性極性溶媒と水及び/又は脂肪族アルコール系溶媒を含む洗浄液にて洗浄する工程と、
前記ポリイミド被膜を有する被絶縁処理部材にエアーを噴き付けて洗浄液を除去する工程と、
前記ポリイミド被膜を乾燥する工程とを含む、絶縁部材の製造方法。
(2)洗浄液が、水溶性極性溶媒50〜80重量%と水及び/又は脂肪族アルコール系溶媒20〜50重量%を含有するものである、上記(1)記載の絶縁部材の製造方法。
(3)水溶性極性溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン(γBL)、アニソール、テトラメチル尿素及びスルホランから選ばれる1種又は2種以上である、上記(2)記載の絶縁部材の製造方法。
(4)ブロック共重合ポリイミドが、ジアミン成分の一つとして、分子骨格中にシロキサン結合を有するジアミンを含むポリイミドである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の絶縁部材の製造方法。
(5)分子骨格中にシロキサン結合を有するジアミンが、ビス(4−アミノフェノキシ)ジメチルシラン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及び下記の一般式(I)で表される化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、上記(4)記載の絶縁部材の製造方法。
Figure 0005464838
(式中、4つのRは、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基又は1個〜3個のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されたフェニル基を表し、l及びmはそれぞれ独立して1〜4の整数を表し、nは1〜20の整数を表す。)
(6)一般式(I)中の4つのRが、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜7のシクロアルキル基、フェニル基、又は1個〜3個の炭素数1〜6のアルキル基若しくは炭素数1〜6のアルコキシル基で置換されたフェニル基を表す上記(5)記載の絶縁部材の製造方法。
(7)ブロック共重合ポリイミドの分子中のアニオン性基が、カルボン酸基若しくはその塩、及び/又は、スルホン酸基若しくその塩である、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の絶縁部材の製造方法。
(8)ブロック共重合ポリイミドが、ジアミン成分の1つとして、芳香族ジアミノカルボン酸を含むものである、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の絶縁部材の製造方法。
(9)ブロック共重合ポリイミドの全ジアミン成分中、分子骨格中にシロキサン結合を有するジアミンの割合が5〜90モル%、芳香族ジアミノカルボン酸の割合が10〜70モル%である(ただし、両者の合計は100モル%以下であり、第3のジアミン成分を含んでいてもよい)、上記(8)記載の絶縁部材の製造方法。
(10)絶縁部材が絶縁電線であり、被絶縁処理部材が導体線である、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の絶縁部材の製造方法。
(11)絶縁部材が絶縁処理リード端子付き電子部品であり、被絶縁処理部材がリード端子付き電子部品である、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の絶縁部材の製造方法。
本発明によれば、膜質の均一性に優れ、被絶縁処理部材に対する剥がれや割れが生じにくく、従来にない高度の耐電圧性及び耐熱性を有する電着被膜で絶縁処理された絶縁部材を製造することができ、しかも、電着被膜の被膜厚みと耐電圧の相関性が高いので、所望の耐電圧性を有する絶縁部材を再現性良く製造することができる。従って、従来にない優れた絶縁性能と耐熱性を有する絶縁部材を高い歩留まりで製造することができる。
以下、本発明を好適な実施形態に即して説明する。
本発明でいう「絶縁部材」とは、種々の技術分野において、表面の絶縁保護が必要となる部材の表面に、電着被膜による絶縁層を形成して絶縁処理した部材を意味し、具体的には、導体線の外周に電着被膜による絶縁層を形成した絶縁電線、積層型トランス用コイルに使用される、打ち抜き加工された金属板の外周に電着被膜による絶縁層を形成した絶縁金属板、プローブガード測定用の針状金属ピン、モーターコアなどに使用される、切削または積層により3次元的に成形された金属板の外周に電着被膜による絶縁層を形成した絶縁金属板、リード端子を備えた電子部品のリード端子の表面に電着被膜による絶縁層を形成した絶縁処理リード端子付き電子部品等が挙げられる。
本発明で使用する電着塗料組成物は、分子骨格(すなわちポリイミドの主鎖)中にシロキサン結合(−Si−O−)を有し、分子中にアニオン性基を有するブロック共重合ポリイミドを樹脂成分として含有する。
ここで、「ブロック共重合ポリイミド」とは、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを加熱してイミドオリゴマーを生成させ(第1段階反応)、次いでこれに前記のテトラカルボン酸二無水物と同一若しくは異なるテトラカルボン酸二無水物又は/及び前記のジアミンとは異なるジアミンを加えて反応(第2段階反応)させることによって、アミック酸間で起る交換反応に起因するランダム共重合化を防止して得られる、共重合ポリイミドのことを意味する。
上記のポリイミドの主鎖中にシロキサン結合を含有し、分子中にアニオン性基を有するブロック共重合ポリイミドにおいて、主鎖中のシロキサン結合はテトラカルボン酸二無水物成分由来のシロキサン結合であっても、ジアミン成分由来のシロキサン結合であってもよいが、好ましくはジアミン成分由来のシロキサン結合であり、通常、ジアミン成分の少なくとも一部に、分子骨格中にシロキサン結合(−Si−O−)を有するジアミン化合物(以下、「シロキサン結合含有ジアミン」と呼ぶことがある。)を用いて得られたブロック共重合ポリイミドが使用される。
シロキサン結合含有ジアミンとしては、テトラカルボン酸二無水物との間でイミド化し得るものであれば特に制限なく使用できるが、例えば、ビス(4−アミノフェノキシ)ジメチルシラン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及び一般式(I):
Figure 0005464838
(式中、4つのRは、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基、又は1個〜3個のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されたフェニル基を表し、l及びmはそれぞれ独立して1〜4の整数を表し、nは1〜20の整数を表す。)で表される化合物が挙げられる。当該一般式(I)で表される化合物は、式中nが1又は2の単一化合物、及びポリシロキサンジアミンを含む。
式(I)中の4つのRのそれぞれにおいて、アルキル基、シクロアルキル基の炭素数は1〜6が好ましく、1〜2がより好ましい。また、1個〜3個のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されたフェニル基における、1個〜3個のアルキル基若しくはアルコキシル基は、それが2又は3個の場合、互いに同一であっても異なってもよい。また、アルキル基、アルコキシル基は、それぞれ、炭素数が1〜6が好ましく、1〜2がより好ましい。
一般式(I)で表される化合物は、式中の4つのRがアルキル基(特にメチル基)又はフェニル基であるのが好ましく、また、式中l及びmが2〜3、nが5〜15にあるポリシロキサンジアミンが好ましい。
なお、ポリシロキサンジアミンの好ましい例としては、ビス(γ−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン(式(I)中、l及びmが3、4つのRがメチル基のもの。)、ビス(γ−アミノプロピル)ポリジフェニルシロキサン(式(I)中、l及びmが3、4つのRがフェニル基のもの。)が挙げられる。
本発明で使用する電着塗料組成物において、シロキサン結合含有ジアミンはいずれか1種の化合物を単独で使用しても、2種以上を併用して使用してもよい。なお、かかるシロキサン結合含有ジアミンは、市販品を使用してもよく、信越化学工業社、東レ・ダウコーニング社、チッソ社から販売されているものをそのまま使用できる。具体的には、信越化学工業社製のKF−8010(ビス(γ−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン:アミノ基当量約450)、X−22−161A(ビス(γ−アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン:アミノ基当量約840)等が挙げられ、これらは特に好ましいものである。
本発明で使用する電着塗料組成物において、アニオン性基とは、電着組成物の溶媒(後述)中でアニオンになる基であり、好ましくはカルボキシル基若しくはその塩、及び/又は、スルホン酸基若しくはその塩である。アニオン性基は、シロキサン含有ジアミンやテトラカルボン酸二無水物成分が有していてもよいが、アニオン性基を有するジアミンをジアミン成分の1つとして用いることが好ましい。ポリイミドの耐熱性、被電着物(被絶縁処理部材)との密着性、重合度向上のために、このようなアニオン性基含有ジアミンは、芳香族ジアミンであることが好ましい。すなわち、芳香族ジアミノカルボン酸及び/又は芳香族ジアミノスルホン酸が好ましい。芳香族ジアミノカルボン酸としては、例えば、3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノフェニル酢酸、2,5−ジアミノテレフタル酸、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,5−ジアミノパラトルイル酸、3,5−ジアミノ−2−ナフタレンカルボン酸、1,4−ジアミノ−2−ナフタレンカルボン酸等が挙げられ、芳香族ジアミノスルホン酸としては、2,5−ジアミノベンゼンスルホン酸、4,4’−ジアミノ−2,2’−スチルベンジスルホン酸、o−トリジンジスルホン酸等が挙げられる。これらの中でも、3,5−ジアミノ安息香酸が特に好ましい。このようなアニオン性基含有芳香族ジアミンは、単独で用いることもできるし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。なお、シロキサン結合含有ジアミンがアニオン性基を有している場合には、ジアミン成分は、シロキサン結合含有ジアミンのみであってもかまわない。
ジアミン成分として、上記したシロキサン結合含有ジアミン及びジアミノカルボン酸に加え、さらに他のジアミンが含まれていてもよい。このようなジアミンとしては、ポリイミドの耐熱性、被電着物への密着性、重合度向上のため通常は芳香族ジアミンが用いられる。このような芳香族ジアミンの例として、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチル−1,1’−ビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,6−ジアミノピリジン、2,6−ジアミノ−4−メチルピリジン、4,4’−(9−フルオレニリデン)ジアニリン、α,α−ビス(4-アミノフェニル)-1,3-ジイソプロピルベンゼンを挙げることができ、中でも、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンがより好ましい。
全ジアミン成分中、前記シロキサン結合含有ジアミンの割合は5〜90モル%が好ましく、より好ましくは15〜50モル%である。シロキサン結合含有ジアミン単位が5モル%未満の場合、ポリイミドの電着被膜は伸び率が劣り、十分な可とう性が得られにくくなって、剥がれや割れを生じ易くなるため、好ましくない。また、前記芳香族ジアミノカルボン酸又はその塩の割合が10〜70モル%であることが好ましい(ただし、シロキサン結合含有ジアミンと芳香族ジアミノカルボン酸又はその塩の合計は100モル%以下であり、また、上記の通り第3のジアミン成分を含んでいてもよい)。
一方、ポリイミド中のテトラカルボン酸二無水物成分としては、ポリイミドの耐熱性、ポリシロキサンジアミンの相溶性の点から芳香族テトラカルボン酸二無水物が通常使用され、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3',4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらの中でもポリイミドの耐熱性、被電着物への密着性、ポリシロキサンジアミンの相溶性、重合速度の観点から3,3',4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物が特に好ましいものとして挙げられる。これら例示のテトラカルボン酸二無水物は、何れか1種の化合物を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
本発明で使用する電着塗料組成物の樹脂成分として用いられるポリイミドは、水溶性極性溶媒に可溶な(例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)中に、5重量%以上、好ましくは10重量%以上の濃度で溶解する溶解性を示す。)ブロック共重合ポリイミドである。ブロック共重合ポリイミド及びその製造方法は、既に公知であり(例えば特許文献5及び6に記載)、本発明で用いるポリイミドも、上記ジアミン成分及びテトラカルボン酸二無水物を用い、公知の方法を適用して製造することができる。重合反応には水溶性極性溶媒が用いられ、具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン(γBL)、アニソール、テトラメチル尿素、及びスルホランから選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、なかでも、NMPが好ましい。かかる水溶性極性溶媒中に、テトラカルボン酸二無水物とジアミンを、ほぼ等モル(好ましくはモル比で1:0.95〜1.05)加え、触媒存在下で加熱して脱水イミド化反応することにより直接ポリイミド溶液を製造する。触媒は、ラクトンと塩基又はクロトン酸と塩基から成る2成分系の複合触媒である。ラクトンとしてはγ−バレロラクトンが好ましく、塩基としてはピリジン又はN−メチルモルホリンが好ましい。ラクトン又はクロトン酸と塩基の混合比は、1:1〜5(モル当量)好ましくは、1:1〜2である。水が存在すると、酸−塩基の複塩として、触媒作用を示し、イミド化が完了し、水が反応系外に出る(好ましくは、トルエンの存在下で重縮合反応を行い、生成する水はトルエンと共に反応系外に除かれる)と触媒作用を失う。この触媒の使用量は、テトラカルボン酸二無水物に対し通常1/100〜1/5モル、好ましくは1/50〜1/10モルである。上記イミド化反応に供するテトラカルボン酸二無水物とジアミンとの混合比率(酸/ジアミン)は、上記の通りモル比で1:0.95〜1.05程度が好ましい。また、反応開始時における反応混合物全体中の酸二無水物の濃度は4〜16重量%程度が好ましく、ラクトン又はクロトン酸の濃度は0.2〜0.6重量%程度が好ましく、塩基の濃度は0.3〜0.9重量%程度が好ましく、トルエンの濃度は6〜15重量%程度が好ましい。反応温度は、150℃〜220℃が好ましい。また、反応時間は特に限定されず、製造しようとするポリイミドの分子量等により異なるが、通常180〜900分間程度である。また、反応は撹拌下で行うことが好ましい。
水溶性極性溶媒中、上記2成分系の酸触媒の存在下で酸二無水物とジアミンとを加熱してイミドオリゴマーを生成させ、次いでこれに酸二無水物又は/及びジアミンを加えて第2段階反応することによりポリイミドを生成することができる。この方法によりアミック酸間で起こる交換反応に起因するランダム共重合化を防止することができる。その結果、ブロック共重合ポリイミドが製造できる。このときの固形分濃度は10〜40重量%が好ましく、より好ましくは20〜30重量%である。
ポリイミドは固有対数粘度(25℃)が20wt%NMP溶液時で5000〜50,000mPasであるものが好ましく、5000〜15,000mPasがより好ましい。
また、樹脂成分として用いられるブロック共重合ポリイミドの重量平均分子量(Mw)はポリスチレン換算で20,000〜150,000が好ましく、特に45,000〜90,000が好ましい。当該ポリイミドの重量平均分子量が20,000未満の場合、電着被膜の耐熱性が低下する傾向となり、また被膜表面が荒れてしまい、審美性および耐電圧特性が低下する傾向となる。また、重量平均分子量が150,000より大きくなると、ポリイミド樹脂が水に対して撥水性を帯び電着液(塗料)製造工程でゲル化を引き起こし易くなる。
また、数平均分子量(Mn)については、ポリスチレン換算で10,000〜70,000が好ましく、より好ましくは20,000〜40,000である。数平均分子量が10,000未満の場合、電着効率が低下する傾向となり、また、耐熱性、耐電圧性が低下する場合もある。ここで、ポリイミドの分子量はGPCにより測定される、ポリスチレン換算の分子量であり、GPC装置としてHLC−8220(東ソー(株)製)を、カラムにTSKgel SuperH−RC(東ソー(株)製)を使用して、測定した値である。
本発明で使用する電着塗料組成物は、サスペンジョン型電着塗料である。ここで、「サスペンジョン型電着塗料」とは、本発明で使用する電着塗料組成物が、電気泳動法光散乱法(レーザードップラー法)での粒径分析装置ELS−Z2(大塚電子株式会社製)を用いて測定し、測定結果をキュムラント解析法にて解析したポリイミド粒子(析出粒子)の粒子径が0.1〜10μm、粒子径の標準偏差が0.1〜8μmで分散されているサスペンジョンを形成していることを意味する。
本発明で使用する電着塗料組成物(サスペンジョン型電着塗料組成物)は、その固有相対粘度が5〜100mPasであることが好ましい。かかる粘度範囲の組成物は、30μm以上の膜厚が得られ、かつ均一な膜厚が得られる電着塗料用組成物として好適である。なお、固有対数粘度は、B型粘度計(東機産業(株)製)を用いて測定した。
また、ブロック共重合ポリイミドからなる粒子の平均粒子径は0.1〜10μmであるのが好ましく、0.5〜5μmがより好ましい。平均粒子径が0.1μm未満であるとクーロン効率の低下および過電圧による耐電圧性能の低下をもたらす。また、10μmを超えるとクーロン効率の制御および粒子が大きくなることによるリーク電流の増大により耐電圧性能の低下を引き起こす。そのため、クーロン効率の制御および耐電圧性能の維持のバランスのとれた粒子径範囲として0.5〜5μmが好ましい。
本発明で使用する電着塗料組成物(サスペンジョン型電着塗料組成物)の製造は、具体的には、次のようにして行う。先ず、上記の重合反応を経て得られたブロック共重合ポリイミドを含む重合反応後組成物(すなわち、ブロック共重合ポリイミドと水溶性極性溶媒とを含み、ブロック共重合ポリイミドの含有量が15〜25重量%の組成物)を加熱溶融する。ここでの加熱温度は通常50〜180℃程度、好ましくは60〜160℃程度である。加熱温度が50℃未満では、ブロック共重合ポリイミドが溶解せず、他の溶媒と分散しにくい傾向となり、180℃を超えると、加水分解を起こし、分子量が低下する傾向となる。
次に、前記加熱溶融後の組成物に塩基性化合物を添加、攪拌してブロック共重合ポリイミドを中和した後、組成物を40℃以下に冷却し、さらにブロック共重合ポリイミドの貧溶媒及び水を添加し、混合攪拌して、サスペンジョンを調製する。
かかるサスペンジョン型塗料組成物の製造工程において、ブロック共重合ポリイミドを中和した後の組成物の冷却後温度が40℃を超える場合、中和剤によりポリイミドが分解する傾向となる。組成物の冷却温度はより好ましくは30℃以下である。なお、組成物の冷却温度が低すぎると、再び固化が始まる傾向となるため、冷却温度の下限は20℃以上が好ましい。
上記塩基性化合物は、ブロック共重合ポリイミドが有するアニオン性基を中和し得るものであれば特に制限なく使用できるが、塩基性含窒素化合物が好ましく、例えば、N,N−ジメチルアミノエタノール、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N−ジメチルベンジルアミン、アンモニア等の第1級アミン、第2級アミン又は第3級アミンが挙げられる。また、ピロール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、イソキサゾール、チアゾール、イソチアゾール等の含窒素五員複素環化合物やピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン等の含窒素六員複素環化合物等の含窒素複素環式化合物が挙げられる。なお、脂肪族アミンは臭気が強いものが多いので、低臭気である点から含窒素複素環式化合物が好ましい。また、塗料の毒性を考慮した場合、含窒素複素環式化合物の中でも毒性が低いピペリジン、モルホリンなどが好ましい。当該塩基性化合物の使用量はポリイミド中の酸性基が水溶液中に安定に溶解または分散する程度であり、通常、理論中和量の30〜200モル%程度である。
また、上記ブロック共重合ポリイミドの貧溶媒は、例えば、フェニル基、フルフリル基若しくはナフチル基を有するアルコール又はケトン類が挙げられ、具体的には、アセトフェノン、ベンジルアルコール、4−メチルベンジルアルコール、4−メトキシベンジルアルコール、エチレングリコールモノフェニルエーテル、フェノキシ−2−エタノール、シンナミルアルコール、フルフリルアルコール、ナフチルカルビノール等が挙げられる。また、脂肪族アルコール系溶媒は毒性が低い点で好ましく、エーテル基を有する脂肪族アルコール系溶媒が特に好ましい。脂肪族アルコール系溶媒としては、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール類、プロピレングリコール類が挙げられる。エチレングリコール類、プロピレングリコール類の具体例としては、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(1−メトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これら貧溶媒は1種又は2種以上を使用できる。
かかる貧溶媒の配合量は組成物全量に対し10〜40重量%が好ましく、10〜30重量%がより好ましい。また、上記水の量は組成物全量に対し10〜30重量%が好ましく、15〜30重量%がより好ましい。
なお、上記のブロック共重合ポリイミドの貧溶媒や水以外に、組成物の粘度、電気伝導度を調整する目的で、水溶性極性溶媒や油溶性溶媒を適量添加してもよい。ここで、水溶性極性溶媒の具体例としては、前記のブロック共重合ポリイミドの重合反応に使用する水溶性極性溶媒と同じものが挙げられ、油溶性溶媒としてはγ−ブチロラクトン等が挙げられる。なお、油溶性溶媒を添加する場合、その量は組成物全量に対し15重量%以下である。
本発明で使用する電着塗料組成物(サスペンジョン型電着塗料組成物)の固形分濃度は1〜15重量%が好ましく、より好ましくは5〜10重量%である。また、水溶性極性溶媒の含有量は組成物全量に対し25〜60重量%が好ましく、より好ましくは35〜55重量%である。
本発明で使用する電着塗料組成物(サスペンジョン型電着塗料組成物)は、被膜の成長過程での電気伝導度が高く、低電流の電着条件でも、被絶縁処理部材(被電着物)表面に膜性状の均一性の高いポリイミド電着被膜を形成することができ、その結果、所望厚みの優れた耐電圧性及び耐熱性を有する絶縁被膜を再現性よく形成することができる。また、ブロック共重合ポリイミドの分散粒子(析出粒子)が被絶縁処理部材(被電着物)の表面に堆積(付着)しやすいことから、被絶縁処理部材がリード端子を備えた電子部品(リード端子付き電子部品)のような単一の線材や平板材でない複雑な形状の部材や、絶縁部と導電部が混在する部材であっても、部材の絶縁保護を図るべき導電性領域に対して被膜の密着性が十分でない不良部分を生じることなく、膜性状の均一性の高いポリイミドの被膜を形成することができる。また、30μmを超える厚みの被膜形成も可能である。
本発明の絶縁部材の製造方法において、電着被膜の形成は、被絶縁処理部材(被電着物)を電着塗料用組成物に浸漬し、該部材(被電着物)を陽極として電流を通じて該部材(被電着物)上にポリイミド被膜を成長させればよい。
本発明における「被絶縁処理部材」の材質は特に限定されず、その少なくとも一部が、銅、銅合金、銅グラットアルミニウム、アルミニウム、鉄、亜鉛メッキ鉄、銀、金、ニッケル、チタン、タングステン等から選ばれる1種又は2種以上の金属によって構成される部材等が挙げられる。具体的には、例えば、製造する絶縁部材が絶縁電線の場合、被絶縁処理部材は銅線、銅合金、銅クラッドアルミニウム、アルミニウム、ステンレス合金等の導体線であり、製造する絶縁部材が絶縁処理リード端子付き電子部品の場合、銅被覆ニッケル鋼線(ジュメット線)、ニッケル線、コバール線、鉄ニッケル線、Ni合金線、Niめっき線等による絶縁処理がされていないリード端子を備えた電子部品(リード端子付き電子部品)等が挙げられる。なお、ここでいうリード端子付き電子部品とは、部品本体であるサーミスタ(温度センサ)、トランス、抵抗器、コンデンサ、インダクタ、圧電素子、水晶振動子、発光素子(LED)、冷陰極蛍光ランプ(CCFL)、ダイオード等の素子の電極にリード端子を溶接、ハンダ等で接続した電子部品である。
電着は、定電流法又は定電圧法で行うことができ、例えば、定電流法の場合、電流値:1.0〜200mA、直流電圧:5〜200V(好ましくは30〜120V)の条件が挙げられる。また、電着時間は電着条件、形成すべき電着膜の厚み等によっても異なるが、一般的には10〜120秒の範囲から選択され、好ましくは30〜60秒である。また、電着の際の組成物温度は通常10〜50℃、好ましくは10〜40℃、より好ましくは20〜30℃である。電着電圧が5Vより低いと電着によって被膜を形成させることが困難となる傾向があり、200Vよりも大きくなると被塗布物からの酸素の発生が激しくなり均一な被膜形成ができなくなる。また、電着時間が10秒よりも短いと、電着電圧を高めに設定しても被膜が成長しにくいためにピンホールが発生しやすく、電着膜の耐電圧性能が低下する傾向となり、120秒を超えると、被膜の厚さが必要以上に厚くなるだけで経済性に欠ける。また、組成物温度が10℃よりも低いと電着によって被膜形成をさせることが困難になり、50℃よりも高くなると温度管理が必要となり生産コストを上げる原因になる。
電着によって形成されたブロック共重合ポリイミドの被膜は、加熱乾燥(焼付け)されるが、本発明では、電着によって形成されたブロック共重合ポリイミドの被膜を水溶性極性溶媒と水及び/又は脂肪族アルコール系溶媒を含む洗浄液(好ましくは水溶性極性溶媒と水の混合液からなる洗浄液)にて洗浄し、さらにエアーの噴き付けによって不要な洗浄液を被膜から分離(除去)した後に、被膜の加熱乾燥(焼付け)を行なう。
被膜の加熱乾燥(焼付け)前に行なう洗浄処理により、加熱乾燥(焼付け)後の被膜は膜性状の一層の均一化が図られ、被絶縁処理部材への密着性や被膜の絶縁性能がより向上する。また、洗浄後のエアーの噴き付けによる洗浄液の分離(除去)操作により、被絶縁処理部材が絶縁部と導電部が混在するような部材である場合に、被絶縁処理部材の実質的に絶縁保護を要しない領域(絶縁部)に付着していた不要な塗料成分を除去できるため、電着被膜の加熱乾燥(焼付け)の際の塗料成分の不要な発泡が生じるのを防止することができ、また、導電部の絶縁部との境界付近においても電着被膜の高い密着力が維持される。
また、例えば、リード端子を備えた電子部品の場合、後述するように、電子部品本体(例えば、サーミスタ素子)と、電子部品本体の端子電極とリード端子の接続部はセラミックやガラスで封止されることが多いが、セラミックやガラスによる封止部から突出するリード端子の根元から先端の手前までを電着被膜で被覆する場合、リード端子の根元付近はセラミックやガラスとの境界に位置することから、被膜の密着性が低下しやすい。しかし、被膜の加熱乾燥(焼付け)前に行なう、上記洗浄液による被膜の洗浄処理とエアーによる洗浄液の除去処理を行なうことで、加熱乾燥(焼付け)後の被膜の密着性が高まり、被膜剥がれを防止することができる。
このような電着被膜の加熱乾燥(焼付け)前に行なう洗浄液による洗浄操作によってより好ましい性状の被膜が形成できるのは、洗浄液として水溶性極性溶媒と水及び/又は脂肪族アルコール系溶媒を含む洗浄液(好ましくは水溶性極性溶媒と水の混合液)を使用するためであり、洗浄液が水溶性極性溶媒である場合、電着後の被膜中に残存する塗料の分離(除去)だけでなく被膜の溶解等が生じてしまい、また、洗浄液が水及び/又は脂肪族アルコール系溶媒である場合、被膜中の良溶媒の溶出により被膜の密着性低下が生じ、加熱乾燥(焼付け)後の被膜の膜性状を向上させることができない。水溶性極性溶媒と水及び/又は脂肪族アルコール系溶媒を含有する洗浄液を使用することで加熱乾燥(焼付け)後の被膜の膜性状が向上する理由は明らかではないが、ブロック共重合ポリイミドに対する良溶媒である水溶性極性溶媒とブロック共重合ポリイミドに対する貧溶媒である水及び/又は脂肪族アルコール系溶媒とが混在する洗浄液が被膜に接触することで、被膜中のブロック共重合ポリイミドの粒子同士の結合力が増すとともに、被膜中に残存する塗料(液状成分)が適度に減量されて、加熱乾燥(焼付け)による被膜の緻密化がより高まるためであると考えられる。
水溶性極性溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン(γBL)、アニソール、テトラメチル尿素、及びスルホラン等が挙げられ、これらはいずれか1種又は2種以上を使用することができる。中でも、N−メチルピロリドン(NMP)が特に好ましい。また、脂肪族アルコール系溶媒としては、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール類、プロピレングリコール類等が挙げられ、いずれか1種又は2種以上を使用することができる。
洗浄液における水溶性極性媒と水及び/又は脂肪族アルコール系溶媒との混合比は水溶性極性媒50〜80重量%と水及び/又は脂肪族アルコール系溶媒20〜50重量%が好ましく、より好ましくは水溶性極性媒60〜80重量%と水及び/又は脂肪族アルコール系溶媒20〜40重量%であり、とりわけ好ましくは水溶性極性媒60〜75重量%と水及び/又は脂肪族アルコール系溶媒25〜40重量%である。水溶性極性媒が80重量%を超えると、電着による被膜が溶解して、被膜の厚み減少が顕著になり、水及び/又は脂肪族アルコール系溶媒50重量%を超えると、被膜外観(ツヤ)の低下や被膜のザラツキが生じ、場合によってはクラックを生じることがある。
なお、ブロック共重合ポリイミドに対する貧溶媒として水及び脂肪族アルコール系溶媒を使用する場合、両者の混合比(水:脂肪族アルコール系溶媒)は、重量比で1:0.1〜5程度とするのが好ましい。
洗浄液による洗浄処理は、表面に電着による被膜が形成された被絶縁処理部材を洗浄液に浸漬するか、被膜に洗浄液を噴射させる等によって行なうことができる。洗浄処理の時間は、例えば、洗浄液への浸漬である場合、1〜30秒程度が一般的である。30秒よりも長くなると、析出樹脂の再溶解による、被膜厚さの減少や被膜の不均一化を起こす虞があり、1秒よりも短いと洗浄不足による、被膜厚さ不均一化の傾向となる。
一方、エアーの噴き付けによる洗浄液の分離(除去)処理は、例えば、エアガン等によって行なうことができ、エアガンの噴射圧によっても相違するが、一般に吹き付け時間は1〜30秒程度とするのがよい。吹き付け時間が30秒を超えて長くなりすぎると、被膜外観(ツヤ)の低下や被膜のザラツキが生じ、場合によってはクラックを生じやすい傾向となり、また、1秒よりも短いと、洗浄液の除去が不十分となり、発泡等の外観不良を起こしやすい傾向となる。
加熱乾燥(焼付け)は、被絶縁処理部材への被膜の密着性の観点から、70〜110℃で10〜60分の第一段階の焼付け処理を行った後、160〜180℃で10〜60分の第二段階の焼付け処理を行い、さらに200〜220℃で30〜60分の第三段階の焼付け処理を行うのが好ましい。
このようにして電着膜(被膜)を加熱乾燥(焼付け)して得られるポリイミド被膜は、被絶縁処理部材に対して強固密着し、かつ、割れが生じ難い可撓性に優れるものとなり、しかも、例えば、JIS−C−3003に準拠したB法金属箔法によるAC耐電圧が、層厚みが10μmのときに1kV以上、層厚みが20μmのときに2kV以上、層厚みが30μmのときに3kV以上を示すような高度の耐電性を示す絶縁層となり、また、例えば、JIS−C−3003に準拠した温度指数評価法での温度指数が200℃以上(すなわち、耐熱区分がC種以上)を示すような高度の耐熱性を有する絶縁層となる。また、JIS−C−2151に準拠して測定される伸び率が5%以上、好ましくは8%以上という高い伸び率を示す。
なお、特許文献4で提案されている電着塗料組成物は、分子骨格中にシロキサン結合を有し、分子中にアニオン性基を有するブロック共重合ポリイミドを樹脂成分として含有する点で、本発明で使用する上記のサスペンジョン型電着塗料組成物と共通するが、ブロック共重合ポリイミドが析出粒子(固形粒子)として存在しない、液相分散乃至溶液型の組成物であり、数種類の溶剤の混合系からなるために溶剤の配合比率の若干の変動によって電着塗料としての挙動が大きく変化し、得られる電着被膜の膜性状が均一になりにくい。このため、JIS−C−3003に準拠した温度指数評価法による耐熱区分が最高でF種の電着被膜(絶縁層)しか形成できず、また、JIS−C−3003に準拠したB法金属箔法による層厚みが10μmのときのAC耐電圧は最高でもせいぜい0.3kV程度しか示さない。また、電着条件を種々変更しても、厚みが30μmを超える電着被膜(絶縁層)を形成することは困難である。また、特に5〜15μm程度の比較的薄い厚みの被膜を形成した場合、被膜厚みに対する被膜の絶縁性能のバラツキが大きく、所望の耐電圧性を有する被膜を再現性よく形成することができない。
以下、実施例と比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
実施例1
[電着塗料組成物の調製]
ステンレス製の碇型攪拌機を取り付けた2リットルのセパラブル三つ口フラスコに水分分離トラップを備えた玉付冷却管を取り付けた。該フラスコに3,3’4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物58.84g(200ミリモル)、ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン43.25g(100ミリモル)、γ−バレロラクトン4.0g(40ミリモル)、ピリジン6.3g(80ミリモル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)531gおよびトルエン50gを仕込み、室温、窒素雰囲気下、180rpmで10分攪拌した後、180℃に昇温して2時間攪拌した。反応中、トルエン−水の共沸分を除いた。ついで、室温に冷却し、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物64.45g(200ミリモル)、信越化学工業社製KF−8010を83.00g(100ミリモル)、3,5−ジアミノ安息香酸30.43g(200ミリモル)、NMP531gおよびトルエン50gを添加し、180℃、180rpmで攪拌しながら、8時間反応させた。還流物を系外に除くことにより、20重量%濃度のポリイミド溶液(20%ポリイミドワニス)を得た。得られたポリイミドの数平均分子量及び重量平均分子量は、それぞれ24,000及び68,000であった。
得られたポリイミドワニスをガラス板上にバーコーターを用いてウエット膜厚50μmにて塗布した。その後、温風乾燥機にて90℃/30分、180℃/30分、220℃/30分で乾燥させた後、ガラス板より剥離させ、JIS C 2151に準拠して機械的伸び率を測定し、21.8%のポリイミド被膜が得られた。また熱分解温度は420℃であった。
先に得られた20%ポリイミドワニス100gを窒素雰囲気下160℃で1時間攪拌し、その後、30℃まで急冷し、N−メチルピロリドン59.4gとピペリジン2.2g(中和率200モル%)を加え激しく攪拌した。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテル129gを加えながら攪拌し、水67gを滴下して電着液を調製した。粒径分析装置ELS−Z2(大塚電子株式会社製)を用いて、該電着液における分散粒子の粒径および標準偏差を測定したところ、粒径0.7μm、標準偏差0.5μmの析出粒子(固形粒子)を有するサスペンジョンを形成していた。なお、固形分濃度6.0%、pH8.7、電気伝導度7.3mS/mの黒濁液であった。また、固有対数粘度は、50mPasであった。
[絶縁電線の作製]
上記電着液組成物を使用し、電極−被着体間距離を25mmとし、電着電圧を30〜50V、電着電流を0.01〜200mAの範囲内、電着時間を10〜60秒の範囲内でそれぞれ変更し、φ1.0mm、長さ20cmの円形銅線外周に電着を行い、電着後の銅線を電着浴から取り出した。次に、N−メチルピロリドン(NMP)70重量%と水30重量%からなる洗浄液に、上記の電着により被膜形成を行った円形銅線を3秒間浸漬して引き上げ、エアガンによりエアーを噴き付けて、洗浄液の除去を行った。その後、90℃×30分間、さらに170℃×30分間、さらに220℃×30分間被膜を焼き付けることで、種々の厚みのポリイミド被膜(絶縁層)を有する円形絶縁銅線(1条件当たりのサンプル数=10)を得た。
そして、得られた円形絶縁銅線につき、以下の試験方法で、電着液の電着性(被膜の状態)、被膜の厚さ、被膜のAC耐電圧及び耐熱寿命を評価した。下記表1にその結果を示す。
1.被膜の状態
JIS−C−3003に準拠して、ピンホールの有無を調査した。
2.被膜の厚さ
マイクロメータ(最小目盛:0.1mm)を用いて計測した。サンプル1個当たり2cmの間隔で離間する5箇所の厚さを測定し、平均値をそのサンプルの測定結果とした。
3.被膜のAC耐電圧
JIS−C−3003に準拠して、B法金属箔法により、AC破壊電圧を測定した。すなわち、1cmのスズ箔を絶縁電線に巻き付け、導体−すず箔間にて測定した。そして、各板に交流電圧発生装置を接続し、1秒間当たり100Vの速度で電圧を上昇させて、短絡(漏れ電流値10mA以上)した電圧を破壊電圧とした。表1には10個のサンプルの平均値と最大値と最小値を示した。
4.被膜の耐熱寿命
絶縁電線の被膜厚さが21μmの試料(試験No.3)について、JIS−C−3003に記載の温度指数評価法に準拠して絶縁電線の耐熱性(電着被膜の耐熱寿命)を評価した。すなわち、電線試料2本を用いて2個撚りし、試験片を得た。この試験片を290〜320℃の範囲内の10℃間隔の温度(290℃、300℃、310℃、320℃)に設定したオーブンで熱処理し、それぞれについて、500V×1秒の電圧印加で破壊に至るまでの時間を計測した。温度指数は290℃、300℃、310℃、320℃の各温度での測定結果をアレニウスプロットした耐熱寿命グラフより算出した。寿命20,000時間に相当する耐熱温度、すなわち、温度指数は240℃で、耐熱区分は200℃以上であるC種に相当するものであった。
Figure 0005464838
比較例1
実施例1で得られたブロック共重合ポリイミド(樹脂成分)を20重量%含有する半固形状の組成物100gを160℃に加熱溶融した後、NMP70gを加え、アニソール55g、シクロヘキサノン45g及びN−メチルモルホリン2.6g(中和率200モル%)を加え、攪拌しながら水30gを滴下して、固形分濃度6.6%、pH7.8の電着液組成物を得た。粒径分析装置ELS−Z2(大塚電子株式会社製)を用いて、電着液における分散粒子の粒径および標準偏差を測定したが、粒径が0.1μm以上の析出粒子は観察されなかった。そして、この電着液組成物を使用して、極間距離を25mm、電着電圧を160Vとし、電着電流を0.01〜200mAの範囲内、電着時間を10〜60秒の範囲内で変更して、実施例1で使用した円形銅線と同じ銅線に電着を行い、電着後の銅線を電着浴から取り出し、実施例1と同様の条件で被膜の洗浄と被膜の焼き付けを行って、種々の厚みのポリイミド被膜(絶縁層)を有する円形絶縁銅線(1条件当たりのサンプル数=10)を得た。そして、上述の試験方法で、電着液の電着性(被膜の状態)、被膜の厚さ、AC耐電圧及び被膜の耐熱寿命を評価した。下記表2に結果を示す。なお、被膜の耐熱寿命はポリイミド被膜の厚さが18μmの試料について行ったところ、温度指数は180℃で、耐熱区分はH種であった。
Figure 0005464838
図1は実施例1及び比較例1で作製した円形絶縁銅線(サンプル)の被膜厚みとAC耐電圧の関係を示したものである。なお、図1中の参考例1は電着被膜の焼付け前の洗浄を水で行った以外は実施例1と同様にして作製した円形絶縁銅線(サンプル)における被膜厚みとAC耐電圧の関係である。
図1からサスペンジョン型電着塗料組成物を使用することで、従来の液相分散乃至溶液型の電着塗料組成物を使用した場合に比べて、高度の耐電圧性を有する絶縁被膜を形成できることが分かる。また、表1及び表2の対比から、サスペンジョン型電着塗料組成物を使用することで、従来の液相分散乃至溶液型の電着塗料組成物を使用した場合に比べて、電着被膜の被膜厚みに対する耐電圧のバラツキが小さくなる(すなわち、同一条件により得られる略同一厚みの被膜のAC耐電圧の最大値と最小値の差が小さくなる)ことがわかる。そして、サスペンジョン型電着塗料組成物による電着被膜の焼付け前にN−メチルピロリドン(NMP)と水の混合液からなる洗浄液にて被膜を洗浄する本発明方法(実施例1)では、サスペンジョン型電着塗料組成物による電着被膜の焼付け前に水で被膜を洗浄した場合(参考例1)に比べて被膜の耐電圧性が更に向上するとともに、被膜厚みとAC耐電圧との相関性が更に向上することが分かる。従って、本発明方法によれば、意図した厚みの絶縁被膜であって、高度の耐電圧性及び耐熱性を有する絶縁被膜にて絶縁処理された絶縁部材を高い歩留まりで製造できることがわかる。
実施例2
[絶縁処理リード端子付きサーミスタの作製]
図2(A)に示す、部品本体であるサーミスタ素子(両面にAuからなる端子電極が対向して形成された負特性のサーミスタ素子)1の端子電極にAu粉末を含む導電性ペーストを用いて、φ0.4mm、長さ80mmの銅被覆ニッケル鋼線(ジュメット線)からなるリード端子2の一端を接続し、サーミスタ素子1及びサーミスタ素子1の端子電極とリード端子2の接続部に低融点ガラス(軟化点570℃)からなるガラス管(外径1.35mm、内径1.05mm、長さ3.0mm)を装着後、750℃で3分間加熱し、ガラス封止することでリード端子付きサーミスタ5を用意した。このリード端子付きサーミスタ5を、電着浴に満たした上記実施例1で作製の電着塗料組成物中に部品本体(サーミスタ1)側からリード端子2の先端の50mmの長さ部分を残して浸漬し、電圧30V、通電量を0.05〜0.2Cとし、電着被膜を形成した。その時の電着電流値は0.01〜200mAの範囲内、電着時間は0.5〜30秒の範囲内で変更した。次に、N−メチルピロリドン(NMP)75重量%と水25重量%からなる洗浄液に、上記の電着によりリード端子に被膜を形成したリード端子付きサーミスタを3秒間浸漬して引き上げ、エアガンによりエアーを噴き付けて、洗浄液の除去を行った。その後、90℃×30分間、さらに170℃×30分間、さらに220℃×30分間被膜を焼き付けることで、図2(B)に示すリード端子2の先端側の50mmの長さ部分を残して、リード端子2がポリイミド被膜(絶縁被膜)4で被覆された絶縁処理リード端子付きサーミスタ10を得た(1条件当たりのサンプル数=10)を得た。
このようにして作製された絶縁処理リード端子付きサーミスタにつき、被膜厚さを測定し、被膜のAC耐電圧を評価した。
被膜の厚さは、マイクロメータ(最小目盛:0.1mm)を用いて計測した。サンプル1個当たり5mmの間隔で離間する3箇所の厚さを測定し、平均値をそのサンプルの測定結果とした。また、被膜のAC耐電圧は、以下の水中法により測定した。
[AC耐電圧測定法(水中法)]
図4に示すように、予め、電極68が設置された水槽66に水67を充満した。そこに、リード端子2の絶縁被膜4による被覆部分が水67に浸かり、該被覆部分と未被覆部分の境界が水面近傍に位置するようにリード端子付きサーミスタ10を配置した。なお、予め、絶縁被膜4からリード端子(ジュメット線)が露出する境界付近を絶縁テープ64でマスクし、封止ガラス3とリード端子2との境界部分を絶縁テープ65でマスクした。テープによるマスキングは、これらの付近で、リード端子(ジュメット線)が直接、水67と接触することによる測定エラーを防止するためである。この構成において、絶縁被膜4が水67と接触している長さを28mmとした。この状態で、電極68とリード端子2間にAC電源69から交流電圧を印加し、絶縁破壊が生じる電圧値を求めた。
下記の表3が測定結果であり、被膜厚さとAC耐電圧は各試験条件での10個のサンプルの平均値である。
Figure 0005464838
参考例2
洗浄液を水に変更した以外は、実施例2と同様にして絶縁処理リード端子付きサーミスタを作製し、被膜厚さを測定し、被膜のAC耐電圧を評価した。下記表4に結果を示す。表中の被膜厚さとAC耐電圧は各試験条件での10個のサンプルの平均値である。
Figure 0005464838
図3は表3、4の結果から被膜厚さとAC耐電圧の関係を示した図である。
図3から、洗浄液に水を使用した参考例2に対し、洗浄液にN−メチルピロリドンと水の混合液を使用した実施例では、焼き付け後の被膜がより高い耐電圧性を示すものとなっており、本発明方法によれば、リード端子が極めて優れた電気絶縁性を有する絶縁被膜で絶縁処理された絶縁処理リード端子付き電子部品を製造できることが分かる。
図1は実施例1、比較例1及び参考例1における電着被膜の厚みとAC耐電圧の関係を示す図である。 図2(A)、(B)は絶縁処理リード端子付きサーミスタの製造方法を説明するための模式図である。 図3は実施例2、参考例2における電着被膜の厚みとAC耐電圧の関係を示す図である。 AC耐電圧測定法(水中法)の説明図である。
符号の説明
1 サーミスタ素子
2 リード端子
3 ガラス(封止ガラス)
4 ポリイミド被膜
5 リード端子付きサーミスタ
10 絶縁処理リード端子付きサーミスタ

Claims (10)

  1. 分子骨格中にシロキサン結合を有し、分子中にアニオン性基を有するブロック共重合ポリイミドの析出粒子(固形粒子)が分散した、サスペンジョン型電着塗料組成物中に、被絶縁処理部材を浸漬し、該部材を陽極として電流を通じて該部材の表面上にポリイミド被膜を成長させるアニオン電着工程と、
    前記ポリイミド被膜を有する被絶縁処理部材を、N−メチルピロリドン(NMP)60〜75重量%と水及び/又は脂肪族アルコール系溶媒25〜40重量%を含む洗浄液にて洗浄する工程と、
    前記ポリイミド被膜を有する被絶縁処理部材にエアーを噴き付けて洗浄液を除去する工程と、
    前記ポリイミド被膜を乾燥する工程とを含む、絶縁部材の製造方法。
  2. ブロック共重合ポリイミドの析出粒子(固形粒子)の粒子径が0.1〜10μm、粒子径の標準偏差が0.1〜8μmである、請求項1記載の絶縁部材の製造方法。
  3. ブロック共重合ポリイミドが、ジアミン成分の一つとして、分子骨格中にシロキサン結合を有するジアミンを含むポリイミドである、請求項1または2のいずれか1項に記載の絶縁部材の製造方法。
  4. 分子骨格中にシロキサン結合を有するジアミンが、ビス(4−アミノフェノキシ)ジメチルシラン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、及び下記の一般式(I)で表される化合物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項記載の絶縁部材の製造方法。
    Figure 0005464838
    (式中、4つのRは、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、フェニル基又は1個〜3個のアルキル基若しくはアルコキシル基で置換されたフェニル基を表し、l及びmはそれぞれ独立して1〜4の整数を表し、nは1〜20の整数を表す。)
  5. 一般式(I)中の4つのRが、それぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数
    3〜7のシクロアルキル基、フェニル基、又は1個〜3個の炭素数1〜6のアルキル基若しくは炭素数1〜6のアルコキシル基で置換されたフェニル基を表す請求項記載の絶縁部材の製造方法。
  6. ブロック共重合ポリイミドの分子中のアニオン性基が、カルボン酸基若しくはその塩、及び/又は、スルホン酸基若しくその塩である、請求項1〜のいずれか1項に記載の絶縁部材の製造方法。
  7. ブロック共重合ポリイミドが、ジアミン成分の1つとして、芳香族ジアミノカルボン酸を含むものである、請求項1〜のいずれか1項に記載の絶縁部材の製造方法。
  8. ブロック共重合ポリイミドの全ジアミン成分中、分子骨格中にシロキサン結合を有するジアミンの割合が5〜90モル%、芳香族ジアミノカルボン酸の割合が10〜70モル%である(ただし、両者の合計は100モル%以下であり、第3のジアミン成分を含んでいてもよい)、請求項記載の絶縁部材の製造方法。
  9. 絶縁部材が絶縁電線であり、被絶縁処理部材が導体線である、請求項1〜のいずれか1項に記載の絶縁部材の製造方法。
  10. 絶縁部材が絶縁処理リード端子付き電子部品であり、被絶縁処理部材がリード端子付き電子部品である、請求項1〜のいずれか1項に記載の絶縁部材の製造方法。
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