以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
(空気調和システムの構成)
図1は、この発明の実施の形態に従う空気調和システム100の構成図である。実施の形態に従う空気調和システム100は、同一の室内空間を空調する2台の空調装置(第1の空調装置および第2の空調装置)を備える。図1の例では、空気調和システム100は、空調装置1および換気装置2を備えており、同一の部屋Rを空調するように構成されている。なお、本発明に従う空気調和システムは、2台の空調装置の一方が換気装置である必要はなく、両方とも空調装置であっても良い。すなわち、2台の空調装置の属性は限定されるものではない。
図1を参照して、空気調和システム100は、空調装置1と、換気装置2と、コントローラ30とを備える。空調装置1は、複数の室内機11,12と、室内機11,12に対応して設けられた室外機10とを含む。換気装置2は、外調機21と、外調機21に対応して設けられた室外機20とを含む。図1に示した例では、室内機は複数、外調機は単数であるが、室内機は単数であっても良く、外調機は複数であっても良い。
複数の室内機11,12および室外機10は、冷媒配管13によって接続されている。室内機11,12は部屋Rの内部に配置され、室外機10は部屋Rの外部に配置されている。
外調機21および室外機20は、冷媒配管22によって接続されている。外調機21および室外機20は部屋Rの外部に配置されている。外調機21は、例えば、部屋Rの天井裏に配置されている。外調機21は、部屋Rの内部に配置されても良い。
コントローラ30は、室内機11,12、室外機10、外調機21および室外機20の各々と、伝送線40によって接続されている。コントローラ30は、ディスプレイおよび操作スイッチを含む。コントローラ30はマイクロコンピュータによって構成することができる。操作スイッチは、一般的に、ユーザ(たとえば、部屋Rの在室者M)によって操作可能な押圧スイッチによって構成される。あるいは、ディスプレイをタッチパネルで構成した場合には、ディスプレイおよび操作スイッチを一体的に設けることも可能である。
(空気調和システムの冷媒系統)
次に、図2および図3を参照して、空気調和システム100の冷媒系統について説明する。空気調和システム100の冷媒系統は、空調装置1の冷媒系統である冷媒回路1000(図2参照)と、換気装置2の冷媒系統である冷媒回路2000(図3参照)とを有している。
図2は、空調装置1の冷媒回路1000の概略図である。
図2を参照して、冷媒回路1000は、圧縮機10a、四方弁10d、室外熱交換器10b、膨張弁(絞り装置または流量調整装置)11c,12c、室内熱交換器11b,12b、室外熱交換器10b用の送風機10g、および室内熱交換器11b,12b用の送風機11g,12gを含む。
圧縮機10a、四方弁10d、室外熱交換器10b、膨張弁11c,12c、および室内熱交換器11b,12bは、冷媒配管によって順次接続され、冷媒が循環する冷凍サイクルを構成する。
室外機10は、圧縮機10a、四方弁10d、室外熱交換器10b、送風機10g、アキュムレータ10e、および室外機制御部10fを含む。室外熱交換器10bは、冷媒を凝縮させる凝縮器、もしくは冷媒を蒸発させる蒸発器となる。送風機10gは、室外熱交換器10bに向けて空気を送出する。圧縮機10aは冷媒を圧縮する。四方弁10dは、室外熱交換器10bに流れる冷媒の流れを反転する。
室内機11は、室内熱交換器11b、送風機11g、膨張弁11c、および室内機制御部11fを含む。室内熱交換器11bは、冷媒を凝縮させる凝縮器、もしくは冷媒を蒸発させる蒸発器となる。送風機11gは、室内熱交換器11bに向けて空気を送出する。膨張弁11cは、凝縮された冷媒を減圧する。
室内機12は、室内熱交換器12b、送風機12g、膨張弁12c、および室内機制御部12fを含む。室内熱交換器12bは、冷媒を凝縮させる凝縮器、もしくは冷媒を蒸発させる蒸発器となる。送風機12gは、室内熱交換器12bに向けて空気を送出する。膨張弁12cは、凝縮された冷媒を減圧する。
冷凍サイクルは、暖房用の経路と冷房用の経路とに切り替えることができる。暖房用冷凍サイクルは、圧縮機10a、室内熱交換器11b,12b、膨張弁11c,12cおよび室外熱交換器10bの順に経由して冷媒を圧縮機10aに戻す。冷房用冷凍サイクルは、圧縮機10a、室外熱交換器10b、膨張弁11c,12c、および室内熱交換器11b,12bの順に経由して冷媒を圧縮機10aに戻す。
図3は、換気装置2の冷媒回路2000の概略図である。
図3を参照して、冷媒回路2000は、圧縮機20a、四方弁20d、室外熱交換器20b、膨張弁21c、換気熱交換器21b、室外熱交換器20b用の送風機20g、および換気熱交換器21b用の送風機21gを含む。
圧縮機20a、四方弁20d、室外熱交換器20b、膨張弁21c、および換気熱交換器21bは、冷媒配管によって順次接続され、冷媒が循環する冷凍サイクルを構成する。
室外機20は、圧縮機20a、四方弁20d、室外熱交換器20b、送風機20g、アキュムレータ20e、および室外機制御部20fを含む。室外熱交換器20bは、冷媒を凝縮させる凝縮器、もしくは冷媒を蒸発させる蒸発器となる。送風機20gは、室外熱交換器20bに向けて空気を送出する。圧縮機20aは、冷媒を圧縮する。四方弁20dは、室外熱交換器20bに流れる冷媒の流れを反転する。
外調機21は、換気熱交換器21b、送風機21g、膨張弁21c、および外調機制御部21fを含む。換気熱交換器21bは、冷媒を凝縮させる凝縮器、もしくは冷媒を蒸発させる蒸発器となる。送風機21gは、換気熱交換器21bに向けて空気を送出する。膨張弁21cは、凝縮された冷媒を減圧する。
冷媒回路2000は、暖房用の経路と冷房用の経路とに切り替えることができる。暖房用冷凍サイクルは、圧縮機20a、換気熱交換器21b、膨張弁21cおよび室外熱交換器20bの順に経由して冷媒を圧縮機20aに戻す。冷房用冷凍サイクルは、圧縮機20a、室外熱交換器20b、膨張弁21c、および換気熱交換器21bの順に経由して冷媒を圧縮機20aに戻す。
(冷媒)
冷媒回路1000,2000に用いられる冷媒は、たとえばR410A、R407C、R404AなどのHFC冷媒、R22、R134aなどのHCFC冷媒、もしくは二酸化炭素、炭化水素、ヘリウムのような自然冷媒などがある。
(圧縮機)
圧縮機10a,20aは、冷媒を吸入して圧縮し、高温および高圧のガス冷媒として吐出する。圧縮機10a,20aは、例えばインバータを搭載しており、インバータにより制御されるモータ(図示せず)によって駆動される容積式圧縮機である。圧縮機は、例えば、レシプロタイプ、ロータリータイプ、スクロールタイプ、スクリュータイプなどの各種タイプの圧縮機を適用することができる。なお、圧縮機の台数は1台に制限されるものではなく、複数の圧縮機が並列もしくは直列に接続されていてもよい。
室外機制御部10fは、圧縮機10aの運転周波数(回転速度)を制御する。これにより、圧縮機10aの運転容量(単位時間当たりに吐出する冷媒の量)が制御される。室外機制御部20fは、圧縮機20aの運転周波数を制御する。これにより、圧縮機20aの運転容量が制御される。
(熱交換器)
室外熱交換器10b,20bは、暖房時にともに蒸発器として動作する。室外熱交換器10bは、膨張弁11c,12cから送られてきた冷媒と室外の空気との間で熱交換を行ない、冷媒を蒸発させる。室外熱交換器20bは、膨張弁21cから送られてきた冷媒と室外の空気との間で熱交換を行ない、冷媒を蒸発させる。
室外熱交換器10b,20bは、冷房時にともに凝縮器として動作する。室外熱交換器10bは、圧縮機10aから吐出された冷媒と室外の空気との間で熱交換を行ない、冷媒を凝縮する。室外熱交換器20bは、圧縮機20aから吐出された冷媒と室外の空気との間で熱交換を行ない、冷媒を凝縮する。
室内熱交換器11b,12bおよび換気熱交換器21bは、暖房時にともに凝縮器として動作する。室内熱交換器11b,12bは、圧縮機10aから吐出される冷媒と送風機11g,12gによって送風される室内空気との間でそれぞれ熱交換を行ない、冷媒を凝縮する。換気熱交換器21bは、圧縮機20aから吐出される冷媒と送風機21gによって取り込まれた室外の空気との間で熱交換を行ない、冷媒を凝縮する。
室内熱交換器11b,12bおよび換気熱交換器21bは、冷房時にともに蒸発器として動作する。室内熱交換器11b,12bは、膨張弁11c,12cから送られてきた冷媒と送風機11g,12gによって送風される室内空気との間でそれぞれ熱交換を行ない、冷媒を蒸発させる。換気熱交換器21bは、膨張弁21cから送られてきた冷媒と送風機21gによって取り込まれた室外の空気との間で熱交換を行ない、冷媒を蒸発させる。
熱交換器10b,11b,12b,20b,21bは、例えば、伝熱管と多数のフィンとにより構成されたクロスフィン式のフィン・アンド・チューブ型熱交換器である。
(膨張弁)
膨張弁11c,12c,21cは、冷凍サイクル内を流れる冷媒の流量を調整することができる。膨張弁11c,12c,21cは、たとえばステッピングモータ(図示せず)により弁の開度を調整可能に構成された電子膨張弁、受圧部にダイアフラムを採用した機械式膨張弁、またはキャピラリーチューブにより構成される。
本実施の形態では、膨張弁11c,12c,21cを、室内機11,12および外調機21にそれぞれ配置したが、冷媒配管上あるいは室外機に配置してもよい。すなわち、各膨張弁は、凝縮器と蒸発器との間に配置されていれば良い。
室内機制御部11fは、ステッピングモータにより膨張弁11cの開度を制御する。室内機制御部12fは、膨張弁12cの開度を制御する。外調機制御部21fは、膨張弁21cの開度を制御する。これにより、冷媒の減圧量が制御される。
(四方弁)
四方弁10dは、内部で部材がスライドすることにより熱交換器10b,11b,12bを流れる冷媒の方向を切り替えるための弁である。室内を冷房する場合には、四方弁10dによって、圧縮機10a、室外熱交換器10b、膨張弁11c,12c、および室内熱交換器11b,12bの順に冷媒が流れる冷凍サイクルが構成される。室内を暖房する場合には、四方弁10dによって、圧縮機10a、室内熱交換器11b,12b、膨張弁11c,12c、および室外熱交換器10bの順に冷媒が流れる冷凍サイクルが構成される。四方弁10dは、室外機制御部10fからの指示に従って、冷房時と暖房時とで冷媒の方向を切り替える。
四方弁20dは、内部で部材がスライドすることにより熱交換器20b,21bを流れる冷媒の方向を切り替えるための弁である。室内を冷房する場合には、四方弁20dによって、圧縮機20a、室外熱交換器20b、膨張弁21c、および換気熱交換器21bの順に冷媒が流れる冷凍サイクルが構成される。室内を暖房する場合には、四方弁10dによって、圧縮機20a、換気熱交換器21b、膨張弁21c、および室外熱交換器20bの順に冷媒が流れる冷凍サイクルが構成される。四方弁20dは、室外機制御部20fからの指示に従って、冷房時と暖房時とで冷媒の方向を切り替える。
(送風機)
送風機10gは、室外熱交換器10bに供給する空気の流量を変えることができる。送風機11g,12gは、室内熱交換器11b,12bにそれぞれ供給する空気の流量を変えることができる。送風機20gは、室外熱交換器20bに供給する空気の流量を変えることができる。送風機21gは、換気熱交換器21bに供給する空気の流量を変えることができる。送風機10g,11g,12g,20g,21gは、例えば、DCモータなどの駆動用モータによって駆動される遠心ファンまたは多翼ファンである。
(アキュムレータ)
アキュムレータ10e,20eは、液状の冷媒の通過を防止し、圧縮機10a,20aに液冷媒が流入しないようにするためのタンクである。
(空調装置1の風路の構成)
図2を参照しながら空調装置1における風路の構成を説明する。室外機10は、図示しない吸込口から室外の空気を取り入れると、室外熱交換器10bを通じて冷媒と熱交換した空気を、送風機10gを用いて室外に排出する。室内機11,12は、室内の空気を取り入れると、室内熱交換器11b,12bを通じて熱交換した空気を、送風機11g,12gを用いて室内に供給する。
(換気装置2の風路の構成)
図3を参照しながら換気装置2における風路の構成を説明する。室外機20は、図示しない吸込口から室外の空気を取り入れると、室外熱交換器20bを通じて冷媒と熱交換した空気を、送風機20gを用いて室外に排出する。外調機21は、室外の空気を取り入れると、換気熱交換器21bを通じて熱交換した空気を、送風機21gを用いて室内に供給する。
(冷媒回路1000の冷房動作)
図2を参照しながら冷媒回路1000の冷房動作を説明する。圧縮機10aから吐出された冷媒は四方弁10dを通過して室外熱交換器10bへと流れる。室外熱交換器10bは凝縮器として動作する。冷媒は空気と熱交換するときに凝縮液化して、膨張弁11c,12cへと流れる。冷媒は膨張弁11c,12cで減圧される。室内熱交換器11b,12bは蒸発器として動作する。冷媒は、室内熱交換器11b,12bにおいて部屋Rの空気から熱を奪って蒸発する。これにより、部屋Rの温度が下がる。その後、冷媒は、四方弁10dを通過して再び圧縮機10aに吸入される。
(冷媒回路1000の暖房動作)
次に、冷媒回路1000の暖房動作を説明する。圧縮機10aから吐出された冷媒は四方弁10dを通過して室内熱交換器11b,12bへと流れる。室内熱交換器11b,12bは凝縮器として動作する。冷媒は部屋Rの空気に熱を与えて凝縮液化する。これにより、部屋Rの温度が上がる。その後、冷媒は膨張弁11c,12cへと流れる。冷媒は膨張弁11c,12cで減圧される。室外熱交換器10bは蒸発器として動作する。冷媒は空気と熱交換して蒸発した後、四方弁10dを通過して再び圧縮機10aに吸入される。
(冷媒回路2000の冷房動作)
図3を参照しながら冷媒回路2000の冷房動作を説明する。圧縮機20aから吐出された冷媒は四方弁20dを通過して室外熱交換器20bへと流れる。室外熱交換器20bは凝縮器として動作する。冷媒は空気と熱交換するときに凝縮液化して、膨張弁21cへと流れる。冷媒は膨張弁21cで減圧される。換気熱交換器21bは蒸発器として動作する。冷媒は、換気熱交換器21bにおいて室外の空気から熱を奪って蒸発する。この室外の空気が部屋Rに供給される。その後、冷媒は、四方弁20dを通過して再び圧縮機20aに吸入される。
(冷媒回路2000の暖房動作)
次に、冷媒回路2000の暖房動作を説明する。圧縮機20aから吐出された冷媒は四方弁20dを通過して換気熱交換器21bへと流れる。換気熱交換器21bは凝縮器として動作する。冷媒は室外の空気に熱を与えて凝縮液化する。この室外の空気が部屋Rに供給される。その後、冷媒は膨張弁21cへと流れる。冷媒は膨張弁21cで減圧される。室外熱交換器20bは蒸発器として動作する。冷媒は空気と熱交換して蒸発した後、四方弁20dを通過して再び圧縮機20aに吸入される。
(検知部)
次に、空気調和システム100に設置される検知部について説明する。
室内温度検知部1aは、空調対象である部屋Rの内部に配置されており、部屋Rの室内温度Tを検知する。室内温度検知部1aは、例えば、室内機11,12の吸込口付近に配置され、室内温度として吸込空気温度を検知することができる。室内温度検知部1aによる検知値はコントローラ30へ入力される。
なお、室内温度検知部1aは、部屋Rの室内温度を検知できれば、コントローラ30の内部もしくは各室内機の内部に配置されてもよい。また、室内温度検知部1aの配置数は特に限定されるものではない。
室外温度検知部1bは、室外機10の内部に配置されており、室外温度として室外機10の周辺の気温を検知する。室外温度検知部1bによる検知値はコントローラ30へ入力される。室外温度検知部1bは、温度センサを用いて室外温度を取得する。あるいは、室外温度検知部1bは、インターネットその他のネットワークを経由して天気情報を受信することにより、室外温度を取得することも可能である。
制御対象検知部1cは、換気装置2の制御対象を検知する。この制御対象には、外調機21の吹出口から吹出される吹出空気温度、吹出空気の露点温度、および絶対湿度が含まれる。
配管温度検知部11hは室内熱交換器11bのガス側に接続される冷媒配管に配置される。配管温度検知部11iは室内熱交換器11bの液側に接続される冷媒配管に配置される。配管温度検知部12hは室内熱交換器12bのガス側に接続される冷媒配管に配置される。配管温度検知部12iは室内熱交換器12bの液側に接続される冷媒配管に配置される。配管温度検知部11h,12hは、室内熱交換器11b,12bが蒸発器として動作するときに、蒸発器出口での冷媒の温度を検知する。配管温度検知部11i,12iは、室内熱交換器11b,12bが凝縮器として動作するときに、凝縮器出口での冷媒の温度を検知する。配管温度検知部11h,12h,11i,12iによる検知値はコントローラ30へ入力される。
配管温度検知部11h,11i,12h,12iによる検知値は、冷媒回路1000を流れる冷媒の過熱度および過冷却度を算出するために用いられる。冷媒の過熱度とは、蒸発温度ETと蒸発器出口での冷媒温度との差である。冷媒の過冷却度とは、凝縮温度CTと凝縮器出口での冷媒の温度との差である。
配管温度検知部21hは換気熱交換器21bのガス側に接続される冷媒配管に配置される。配管温度検知部21iは換気熱交換器21bの液側に接続される冷媒配管に配置される。配管温度検知部21hは、換気熱交換器21bが蒸発器として動作するときに、蒸発器出口での冷媒の温度を検知する。配管温度検知部21iは、換気熱交換器21bが凝縮器として動作するときに、凝縮器出口での冷媒の温度を検知する。配管温度検知部21h,21iによる検知値は、冷媒回路2000を流れる冷媒の過熱度および過冷却度を算出するために用いられる。
吐出温度検知部10jは、圧縮機10aから吐出する冷媒の吐出温度Tdを検知する。吐出温度検知部20jは、圧縮機20aから吐出する冷媒の吐出温度Tdを検知する。以下の説明では、圧縮機10aの吐出温度Tdを「Td1」と表記し、圧縮機20aの吐出温度Tdを「Td2」と表記する。
凝縮温度検知部10kは、冷媒回路1000を流れる冷媒の凝縮温度CTを検知する。凝縮温度検知部20kは、冷媒回路2000を流れる冷媒の凝縮温度CTを検知する。凝縮温度検知部10k,20kによる検知値はコントローラ30へ入力される。
蒸発温度検知部10lは、冷媒回路1000を流れる冷媒の蒸発温度ETを検知する。蒸発温度検知部20lは、冷媒回路2000を流れる冷媒の蒸発温度ETを検知する。蒸発温度検知部10l,20lによる検知値はコントローラ30へ入力される。
以下の説明では、空調装置1の冷媒回路1000を流れる冷媒の凝縮温度CTを「CT1」と表記し、蒸発温度ETを「ET1」と表記する。また、換気装置2の冷媒回路2000を流れる冷媒の凝縮温度CTを「CT2」と表記し、蒸発温度ETを「ET2」と表記する。
(コントローラ)
次に、コントローラ30について説明する。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置、入出力バッファ等を含む(いずれも図示せず)。コントローラ30は、空調装置1(室外機10、室内機11,12)および換気装置2(外調機21および室外機20)を制御する。なお、これらの制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
コントローラ30と、室外機10、室内機11,12、外調機21および室外機20の各々との間は、伝送線40により相互に通信可能に接続されている。各検知部の検知値および、室外機10、室内機11,12、外調機21および室外機20への制御指示は伝送線40を通じて送信される。伝送線40は有線である必要はない。伝送線40を通じた通信は、例えば赤外線通信のような無線通信であってもよい。
なお、コントローラ30は、部屋Rの室内に配置されている必要はない。コントローラ30は、部屋Rの外部に配置されて、例えばLTE(Long Term Evolution)、CDMA(Code Division Multiple Access)あるいはBluetooth(登録商標)のような無線通信方式を用いて、室外機10、室内機11,12、外調機21および室外機20の各々と通信してもよい。
(空気調和システム100の制御構成)
次に、図4を参照して、空気調和システム100の制御構成について説明する。
上述した各種検知部による検知値はコントローラ30に入力される。コントローラ30は、各種検知部による検知値に基づいて、空調装置1および換気装置2を制御するための制御指示を生成する。コントローラ30は、生成した制御指示を空調装置1および換気装置2の制御部(室外機制御部10f,20f、室内機制御部11f,12f、外調機制御部21f)へ送信する。
室外機制御部10fは、圧縮機10aの運転周波数(回転速度)を制御することで、圧縮機10aの運転容量を変更する。室外機制御部10fは、コントローラ30で設定された室内温度の目標値(目標温度T*)を取得する。また、室外機制御部10fは、コントローラ30から、冷媒回路1000の蒸発温度ET1の目標値(目標蒸発温度ET1*)を取得する。室外機制御部10fは、送風機10gの送風量を制御する。
室内機制御部11f,12fは、膨張弁11c,12cの開度をそれぞれ制御することで、冷媒回路1000内を流れる冷媒の流量を調整する。また、室内機制御部11f,12fは、送風機11g,12gの送風量をそれぞれ制御する。
室外機制御部20fは、圧縮機20aの運転周波数を制御することで、圧縮機20aの運転容量を変更する。室外機制御部20fは、コントローラ30で設定された制御対象の目標値を取得する。また、室外機制御部20fは、送風機20gの送風量を制御する。
外調機制御部21fは、膨張弁21の開度を制御することで、冷媒回路2000内を流れる冷媒の流量を調整する。また、外調機制御部21fは、送風機21gの送風量を制御する。
コントローラ30、室外機制御部10f、室内機制御部11f,12f、室外機制御部20f、および外調機制御部21fは、これらの機能を実現する回路デバイスなどのハードウェアで実現することもできるし、マイコンまたはCPUなどの演算装置上で実行されるソフトウェアとして実現することもできる。コントローラ30、室外機制御部10f、室内機制御部11f,12f、室外機制御部20f、および外調機制御部21fは、本発明における「制御装置」の一実施例に対応する。
なお、室外機制御部10f、室内機制御部11f,12f、室外機制御部20f、および外調機制御部21fを、コントローラ30に設けても良い。あるいは、コントローラ30の機能を、室外機制御部10f、室内機制御部11f,12f、室外機制御部20f、および外調機制御部21fのいずれかに設けても良い。
空気調和システム100は、空調装置1および換気装置2を制御する制御態様として、「通常制御」および「連携制御」を備えている。
通常制御とは、部屋Rの室内温度Tがコントローラ30で設定された目標温度T*に一致するように、空調装置1を制御するとともに、換気装置2の制御対象がコントローラ30で設定された目標値に一致するように、換気装置2を制御するものである。なお、上述のように、換気装置2の制御対象には、外調機21の吹出空気温度、吹出空気の露点温度、および絶対湿度が含まれる。通常制御では、空調装置1における圧縮機10aの運転容量と、換気装置2における圧縮機20aの運転容量とは、互いに独立に制御される。
これに対して、連携制御とは、空調装置1の運転と換気装置2の運転とを連携して制御するものである。本実施の形態では、後述するように、空気調和システム全体の消費電力が小さくなるように、空調装置1および換気装置2の連携制御を実行する。
連携制御では、空調装置1の運転状態を示す情報と換気装置2の運転状態を示す情報とはコントローラ30を通じて、空調装置1の制御部および換気装置2の制御部によって共有されている。この共有されている情報に基づいて、空調装置1における圧縮機10aの運転容量と、換気装置2における圧縮機20aの運転容量とは連携して制御される。
<通常制御>
最初に、空気調和システム100において実行される通常制御について説明する。
(1)冷房運転
空気調和システム100が冷房運転を行なうときの空調装置1および換気装置2の制御について説明する。
(空調装置1の制御)
室外機制御部10fおよび室内機制御部11f,12fは、室内温度検知部1aにより検知された室内温度Tに基づいて空調装置1を制御する。
室外機制御部10fは、目標温度T*に対する室内温度Tの偏差α1(α1=T−T*)に基づいて、目標蒸発温度ET1*を演算する。そして、室外機制御部10fは、蒸発温度検知部10lにより検知される蒸発温度ET1が目標蒸発温度ET1*に一致するように、圧縮機10aの運転周波数を制御する。
室内機制御部11f,12fは、それぞれ、室内機11,12における過熱度が所定値となるように、膨張弁11c,12cの開度を調整する。室内機制御部11f,12fは、さらに、送風機11g,12gの送風量が設定風量になるように、送風機11g,12gの回転速度を制御する。設定風量は、例えば、偏差α1に応じて設定される。偏差α1が閾値以下の場合には、室内機制御部11f,12fは送風量を低下または送風を停止させるように送風量を設定する。
室外機制御部10fは、室外温度検知部1bにより検知された室外温度に基づいて、凝縮温度CT1の目標値(目標凝縮温度CT1*)を設定すると、目標凝縮温度CT1*に基づいて送風機10gの送風量を設定する。そして、室外機制御部10fは、送風機10gの送風量が設定風量になるように、送風機10gの回転速度を制御する。
なお、室内機11,12のそれぞれの空調範囲において、偏差α1の絶対値が予め設定された閾値よりも小さくなると、室外機制御部10fは、目標蒸発温度ET1*を上昇させる。目標蒸発温度ET1*を上昇させることで、圧縮機10aの仕事量(消費電力)が小さくなるため、空調装置1の運転効率を高めることができる。
(換気装置2の制御)
室外機制御部20fおよび外調機制御部21fは、制御対象検知部1cの検知値に基づいて換気装置2を制御する。
室外機制御部20fは、制御対象検知部1cにより検知された吹出空気温度SAが、コントローラ30で設定された吹出空気温度の目標値(目標吹出空気温度SA*)に一致するように、換気装置2を制御する。具体的には、室外機制御部20fは、目標吹出空気温度SA*に対する吹出空気温度SAの偏差β1(β1=SA*−SA)と予め設定された換気風量とに基づいて、必要な空調能力を演算する。そして、室外機制御部20fは、目標吹出空気温度SA*に到達できるように、演算された空調能力に基づいて圧縮機20aの運転周波数を制御する。
外調機制御部21fは、外調機21における過熱度が所定値になるように、膨張弁21cの開度を調整する。外調機制御部21fは、さらに、送風機21gの送風量が予め設定された換気風量になるように、送風機21gの回転速度を制御する。
室外機制御部20fは、室外温度検知部1bの検知値に基づいて凝縮温度CT2の目標値(目標凝縮温度CT2*)を設定すると、目標凝縮温度CT2*に基づいて送風機20gの送風量を設定する。そして、室外機制御部20fは、送風機20gの送風量が設定風量になるように、送風機20gの回転速度を制御する。
(2)暖房運転
空気調和システム100が暖房運転を行なうときの空調装置1および換気装置2の制御について説明する。
(空調装置1の制御)
室外機制御部10fおよび室内機制御部11f,12fは、室内温度検知部1aにより検知された室内温度Tに基づいて空調装置1を制御する。
室外機制御部10fは、目標温度T*に対する室内温度Tの偏差α1に基づいて目標凝縮温度CT1*を演算する。そして、室外機制御部10fは、凝縮温度検知部10kにより検知される凝縮温度CT1が目標凝縮温度CT1*に一致するように、圧縮機10aの運転周波数を制御する。
室内機制御部11f,12fは、それぞれ、室内機11,12における過冷却度が所定値となるように、膨張弁11c,12cの開度を調整する。室内機制御部11f,12fは、さらに、送風機11g,12gの送風量が設定風量になるように、送風機11g,12gの回転速度を制御する。設定風量は、例えば偏差α1に応じて設定される。偏差α1が閾値以下の場合には、室内機制御部11f,12fは送風量を低下または送風を停止させるように送風量を設定する。
室外機制御部10fは、室外温度検知部1bにより検知された室外温度に基づいて、蒸発温度ET1の目標値(目標蒸発温度ET1*)を設定すると、目標蒸発温度ET1*に基づいて送風機10gの送風量を設定する。そして、室外機制御部10fは、送風機10gの送風量が設定風量になるように、送風機10gの回転速度を制御する。
なお、室内機11,12のそれぞれの空調範囲において、偏差α1の絶対値が予め設定された閾値よりも小さくなると、室内機制御部11f,12fは、過剰暖房を抑制するために、室内機11,12の運転を停止する。
(換気装置2の制御)
室外機制御部20fおよび外調機制御部21fは、制御対象検知部1cの検知値に基づいて換気装置2を制御する。
室外機制御部20fは、制御対象検知部1cにより検知された吹出空気温度SAが、コントローラ30で設定された吹出空気温度の目標値(目標吹出空気温度SA*)に一致するように、換気装置2を制御する。具体的には、室外機制御部20fは、目標吹出空気温度SA*に対する制御対象検知部1cの検知温度SAの偏差β1と予め設定された換気風量とに基づいて、必要な空調能力を演算する。そして、室外機制御部20fは、目標吹出空気温度SA*に到達できるように、演算された空調能力に基づいて圧縮機20aの運転周波数を制御する。
外調機制御部21fは、外調機21における過冷却度が所定値になるように、膨張弁21cの開度を調整する。外調機制御部21fは、さらに、送風機21gの送風量が予め設定された換気風量になるように、送風機21gの回転速度を制御する。
室外機制御部20fは、室外温度検知部1bの検知値に基づいて蒸発温度ET2の目標値(目標蒸発温度ET2*)を設定すると、目標蒸発温度ET2*に基づいて送風機20gの送風量を設定する。そして、室外機制御部20fは、送風機20gの送風量が設定風量になるように、送風機20gの回転速度を制御する。
<連携制御>
次に、空気調和システム100において実行される連携制御について説明する。本実施の形態では、冷房運転時に実行される連携制御について説明する。
上述した通常制御から連携制御への遷移は、空調装置1および換気装置2の運転状態に基づいて実行される。最初に、図5を参照して、通常制御から連携制御への遷移について説明する。図5のステップS01〜S04は、通常制御から連携制御へ遷移するか否かを判定する処理を示している。
(S01:通常制御)
ステップS01では、空気調和システム100において上述した通常制御が実行されている。通常制御では、室内負荷に応じて圧縮機10aの運転周波数を制御することにより、空調装置1の蒸発温度ET1が変化する。また、換気負荷に応じて圧縮機20aの運転周波数を制御することにより、換気装置2の蒸発温度ET2が変化する。
(S02:連続運転の判定)
ステップS02では、空調装置1および換気装置2の各々において、圧縮機の運転状態が安定しているか否かが判定される。具体的には、圧縮機10a,20aの各々が予め設定された所定時間(A時間とする)連続して運転しているか否かが判定される。
例えば、直近に圧縮機10aを起動した時点から現在までの圧縮機10aの運転時間(連続運転時間)と、A時間とが比較される。圧縮機10aの連続運転時間がA時間よりも長い場合、圧縮機10aの運転状態が安定していると判定される。一方、圧縮機10aの連続運転時間がA時間以下である場合、圧縮機10aの運転状態が安定していないと判定される。この場合、連携制御へ遷移することなく、通常制御を継続させる。
圧縮機10aと同様に、圧縮機20aの連続運転時間がA時間よりも長い場合(S02のYES判定時)、圧縮機20aの運転状態が安定していると判定される。一方、圧縮機20aの連続運転時間がA時間以下である場合(S02のNO判定時)、圧縮機20aの運転状態が安定していないと判定される。この場合、連携制御へ遷移することなく、通常制御を継続させる。
なお、ステップS02の判定に用いられる「A時間」とは、空調装置1および換気装置2の各々が、運転および停止を繰り返す発停状態であるか否かを判定するために設定される時間である。A時間の設定には、圧縮機の運転周波数または膨張弁の開度が変更された場合に圧縮機の運転状態が安定するまでの時間を考慮する必要がある。例えば、A時間は30分程度に設定される。
(S03:空調装置の制御目標達成の判定)
圧縮機10aの運転状態が安定していると判定されると(S02のYES判定時)、続いて、空調装置1の制御が制御目標値を達成しているかが判定される。具体的には、目標室内温度T*に対する室内温度検知部1aによる検知温度Tの偏差α1が第1の閾値(±B℃とする)以下であるか否かが判定される。偏差α1が±B℃以下である場合(S03のYES判定時)、空調装置1の制御が制御目標値を達成していると判定される。
一方、偏差α1が±B℃より大きい場合(S03のNO判定時)、空調装置1の制御が未だ制御目標値を達成していないと判定され、通常制御が継続される。
なお、ステップS03の判定に用いられる「B℃」(第1の閾値)とは、空調装置1の運転状態が安定しているか否かを判定するための指標である。この指標は、その単位および大きさを空調装置1の制御目標値に応じて自在に設定することができる。例えば、制御目標値が部屋Rの室内温度である場合には、B℃は目標室内温度T*に対する許容温度差となる。通常、コントローラ30では0.5℃または1.0℃刻みで目標室内温度T*を設定することができる。目標室内温度T*に対する許容温度差は、コントローラ30の温度設定間隔に合わせて1.0℃程度に設定することが好ましい。これによれば、室内温度が安定した状態で連携制御を実行できるため、ユーザの快適性を保つことができる。
(S04:換気装置の制御目標達成の判定)
空調装置1の制御が制御目標値を達成している場合(S03のYES判定時)、さらに、換気装置2の制御が制御目標値を達成しているか否かが判定される。具体的には、目標吹出空気温度SA*に対する制御対象検知部1cによる検知値(吹出空気温度SA)の偏差β1が第2の閾値(±C℃とする)以下であるか否かが判定される。偏差β1が±C℃以下である場合(S04のYES判定時)、換気装置2の制御が制御目標値を達成していると判定される。
一方、偏差β1が±C℃より大きい場合(S04のNO判定時)、換気装置2の制御が制御目標値を達成していないと判定され、通常制御が継続される。
なお、ステップS04の判定に用いられる「C℃」(第2の閾値)とは、換気装置2の運転状態が安定しているか否かを判定するための指標である。この指標は、その単位および大きさを換気装置2の制御目標値(外調機21の吹出空気温度、吹出空気の露点温度、吹出空気の乾球温度など)に応じて自在に設定することができる。例えば、制御目標値が外調機21の吹出空気温度SAである場合には、C℃は目標吹出空気温度SA*に対する許容温度差となる。通常、コントローラ30では0.5℃または1.0℃刻みで吹出空気温度を設定することができる。目標吹出空気温度SA*に対する許容温度差は、コントローラ30の温度設定間隔に合わせて1.0℃程度に設定することが好ましい。これによれば、ユーザの快適性を保ちながら、連携制御を実行することができる。
このようにして、通常制御の実行中、圧縮機10a,20aの運転状態がともに安定しており、かつ、空調装置1および換気装置2の制御がともに制御目標値を達成していると判定されると、空気調和システム100は通常制御から連携制御へ遷移する。連携制御では、空調装置1および換気装置2の間で互いの運転状態が共有されている。この共有された運転状態に基づいて空調装置1および換気装置2を連携して制御することにより、空気調和システム100全体の消費電力を低減することができる。その結果、空気調和システム100の運転効率を向上させることができる。
具体的には、冷房運転時における連携制御は、「蒸発温度差制御」、「高低圧温度差制御」、および「吐出過熱度差制御」により構成される。「蒸発温度差制御」とは、空調装置1における蒸発温度ET1と、換気装置2における蒸発温度ET2との差を小さくするための制御である。「高低圧温度差制御」とは、空調装置1における凝縮温度CT1および蒸発温度ET1の温度差(高低圧温度差)と、換気装置2における凝縮温度CT2および蒸発温度ET2の温度差との差を小さくするための制御である。「吐出過熱度差制御」とは、空調装置1における吐出温度Td1および凝縮温度CT1の温度差(吐出過熱度)と、換気装置2における吐出温度Td2および凝縮温度CT2の温度差との差を小さくするための制御である。
なお、暖房運転時における連携制御では、上述した蒸発温度差制御に代えて、「凝縮温度差制御」が実行される。「凝縮温度差制御」とは、空調装置1における凝縮温度CT1と、換気装置2における凝縮温度CT2との差を小さくするための制御である。
以下に説明するように、蒸発温度差制御(または凝縮温度差制御)、高低圧温度差制御および吐出過熱度差制御は、空調装置1および換気装置2における処理負荷の偏在を抑制することにより、空気調和システム全体の消費電力を低減するものである。
ここで、冷房運転時における連携制御では、蒸発温度差制御、高低圧温度差制御、吐出過熱度差制御の順に優先度が与えられており、優先度の高いものから順に実行される。これは、冷房運転時には、蒸発温度が、室内熱交換器の吸込空気温湿度、送風機の送風量、室外機熱交換器の容量、および圧縮機性能(圧縮機効率)などの他の特性値に比べて、空気調和システムの消費電力に与える影響が大きいことによる。したがって、冷房運転時における連携制御では、蒸発温度差制御を優先的に実行することで、空気調和システムの消費電力を効果的に低減することが可能となる。
以下、冷房運転時に実行される連携制御の処理手順について説明する。最初に、冷房運転時に実行される連携制御の第一の態様として、蒸発温度差制御が実行される。
[蒸発温度差制御]
蒸発温度差制御では、空調装置1における蒸発温度ET1と換気装置2における蒸発温度ET2との差を小さくする。そのため、蒸発温度が高い方の装置において、蒸発温度が低下させるために圧縮機の運転周波数を下げる。一方、蒸発温度が低い方の装置において、蒸発温度を上昇させるために圧縮機の運転周波数を上げる。
図8は、空調装置1および換気装置2における蒸発温度ETと、空気調和システム100全体の消費電力との関係を示す図である。図8において、横軸は蒸発温度ETを示し、縦軸は空気調和システム全体の消費電力を示している。
図8中のk1に示す関係は、空調装置1および換気装置2の間で、室内への供給風量、凝縮温度、熱交換器性能(熱交換効率)、圧縮機の性能(圧縮機効率)および吸入空気温湿度が同等である場合を想定している。空気調和システム全体の消費電力は、冷媒回路1000および冷媒回路2000の各々における逆カルノーサイクルから演算することができる。
図8を参照して、空気調和システム全体の消費電力は蒸発温度に対して二次関数的に変化している。空調装置1と換気装置2との間で圧縮機効率が等しい場合、蒸発温度ET1と蒸発温度ET2とが等しいときに(ET1=ET2)、空気調和システム全体の消費電力が最小となっている。
図8では、ET1=ET2となる状態よりも低温側は、蒸発温度ET1が蒸発温度ET2よりも低い状態(ET1<ET2)を示し、高温側は、蒸発温度ET2が蒸発温度ET1よりも低い状態(ET2<ET1)を示している。蒸発温度ET2が蒸発温度ET1よりも低くなると、この蒸発温度ET2の変化に対して二次関数的に消費電力が増加している。これは、蒸発温度ET2が低くなると、冷媒回路2000では、蒸発器における冷媒の取得熱量が増加するため、風量当たりの処理能力が高くなるが、圧縮機の成績係数(COP)が下がることによる。また、蒸発温度ET1が蒸発温度ET2よりも低くなると、この蒸発温度ET1の変化に対して二次関数的に消費電力が増加している。これは、蒸発温度ET1が低くなると、冷媒回路1000では、蒸発器における風量当たりの処理能力が高くなるが、圧縮機のCOPが下がることによる。
なお、空調装置1と換気装置2との間で圧縮機効率が異なる場合には、図9および図10に示されるように、蒸発温度ET1と蒸発温度ET2との間に若干の温度差がある状態で、空気調和システム全体の消費電力が最小となる。
図9中のk2は、空調装置1の圧縮機効率が換気装置2の圧縮機効率よりも高い場合における、蒸発温度ETと空気調和システム全体の消費電力との関係を示している。図9では、蒸発温度ET2よりも蒸発温度ET1がやや低いときに、消費電力が最小となっている。これは、ET1=ET2であっても、圧縮機効率が低い換気装置2が、圧縮機効率が高い空調装置1に比べて消費電力が大きくなることによる。このような場合には、圧縮機効率の高い空調装置1において、蒸発温度ET1を低下させて空調能力を高めることで、より多くの負荷を処理するようにする。これにより、圧縮機効率の低い換気装置2が処理すべき負荷が軽減されるため、結果的に空気調和システム全体の消費電力が低減する。
図10中のk3は、換気装置2の圧縮機効率が空調装置1の圧縮機効率よりも高い場合における、蒸発温度ETと空気調和システム全体の消費電力との関係を示している。図10では、蒸発温度ET1よりも蒸発温度ET2がやや低いときに、消費電力が最小となっている。このような場合には、圧縮機効率の高い換気装置2において蒸発温度ET2を低下させて、換気装置2がより多くの負荷を処理するようにする。これにより、圧縮機効率の低い空調装置1が処理すべき負荷が軽減されるため、結果的に空気調和システム全体の消費電力が低減する。
このように、蒸発温度の変動は、空気調和システム全体の消費電力に対して二次関数的に影響を与える。なお、圧縮機効率は圧縮機のCOPに対して一次関数的に影響を与え、かつ、熱交換効率は空調能力に対して一次関数的に影響を与え得る。蒸発温度差制御は、空気調和システムの消費電力に対して最も影響度が大きい蒸発温度に着目したものである。蒸発温度差制御部は、蒸発温度ET1および蒸発温度ET2の差が小さくなるように、空調装置1および換気装置2を制御することで、空気調和システム全体の消費電力の低減を実現する。
以下、図5のステップS05〜S12を参照しながら蒸発温度差制御の処理手順について説明する。
(S05:蒸発温度差制御の開始判定)
ステップS05では、蒸発温度検知部10lにより検知される空調装置1の蒸発温度ET1と、蒸発温度検知部20lにより検知される換気装置2の蒸発温度ET2との差の絶対値(=abs{ET1−ET2})が算出される。以下の説明では、蒸発温度ET1および蒸発温度ET2の差の絶対値を「蒸発温度差ΔET」とも表記する。
算出された蒸発温度差ΔETは第3の閾値(D℃とする)と比較される。蒸発温度差ΔETがD℃より大きい場合(S05のYES判定時)、処理はステップS06に進む。一方、蒸発温度差ΔETがD℃以下である場合(S05のNO判定時)、処理は図6のステップS13に進む。
なお、ステップS05の判定に用いられる「D℃」(第3の閾値)とは、蒸発温度差制御を開始するか否かを判定するための指標である。空調装置1の運転状態が安定し、かつ、換気装置2の運転状態が安定している場合(S03,S04のYES判定時)であっても、冷凍サイクルを安定させるために膨張弁が動作することで、蒸発温度が変動することがある。蒸発温度の許容変動範囲を、ステップS03,S04で示した許容温度差よりも若干大きく設定することで、膨張弁による一時的な変動を加味して蒸発温度差制御を開始するか否かを判定することができる。さらに、蒸発温度検知部10l,20lの検知精度も考慮すると、「D℃」(第3の閾値)は、ステップS03における「B℃」(第1の閾値)およびステップS04における「C℃」(第2の閾値)以上の値に設定することが好ましい。
(S06:蒸発温度の比較)
蒸発温度差ΔETがD℃より大きい場合(S05のYES判定時)、ステップS06により、蒸発温度ET1と蒸発温度ET2との大小が比較される。この比較結果に基づいて、空調装置1の圧縮機10aおよび換気装置2の圧縮機20aの運転周波数が変更される。
(S07:空調装置の蒸発温度上昇操作)
蒸発温度ET2が蒸発温度ET1より大きい場合(S06のYES判定時)、ステップS07により、空調装置1の圧縮機10aの運転周波数を下げる。これにより、空調装置1における蒸発温度ET1を上昇させる。
(S08:換気装置の蒸発温度低下操作)
さらに、ステップS08により、換気装置2の圧縮機20aの運転周波数を上げる。これにより、換気装置2における蒸発温度ET2を低下させる。
すなわち、蒸発温度ET2が蒸発温度ET1よりも高い場合には(S06のYES判定時)、蒸発温度ET1を上昇させるとともに(S07)、蒸発温度ET2を低下させるように(S08)、圧縮機10a,20aの各々の運転周波数を変更する。これにより、蒸発温度差ΔETを小さくする。
なお、ステップS07における蒸発温度ET1の上昇量およびステップS08における蒸発温度ET2の低下量は、例えば、蒸発温度差ΔETを圧縮機10a,20aの運転容量の比で分配した大きさとすることができる。あるいは、上昇量および低下量をいずれも、蒸発温度差ΔETに所定比率(例えば、30%程度)を乗じた大きさとすることができる。
(S09:換気装置の蒸発温度上昇操作)
これに対して、蒸発温度ET1が蒸発温度ET2より大きい場合には(S06のNO判定時)、ステップS09により、換気装置2の圧縮機20aの運転周波数を下げる。これにより、換気装置2における蒸発温度ET2を上昇させる。
(S10:空調装置の蒸発温度低下操作)
さらに、ステップS10により、空調装置1の圧縮機10aの運転周波数を下げる。これにより、空調装置1における蒸発温度ET1を低下させる。
すなわち、蒸発温度ET1が蒸発温度ET2よりも高い場合には(S06のNO判定時)、蒸発温度ET2を上昇させるとともに(S09)、蒸発温度ET1を低下させるように(S10)、圧縮機10a,20aの各々の運転周波数を変更する。これにより、蒸発温度差ΔETを小さくする。
なお、ステップS09における蒸発温度ET2の上昇量およびステップS10における蒸発温度ET1の低下量は、例えば、蒸発温度差ΔETを圧縮機10a,20aの運転容量の比で分配した大きさとすることができる。あるいは、上昇量および低下量をいずれも、蒸発温度差ΔETに所定の比率(例えば、30%程度)を乗じた大きさとすることができる。
(S11,S12:蒸発温度差制御の継続判定)
ステップS07〜S10によって蒸発温度差ΔETを小さくするための操作が行なわれると、ステップS11に進み、空調装置1および換気装置2のいずれかに対して運転状態の設定変更がなされたか否かが判定される。具体的には、空調装置1および換気装置2のいずれかにおいて設定温度および設定風量などが変更された場合には(S11のYES判定時)、蒸発温度差制御を継続することができないと判定される。したがって、空気調和システム100は連携制御から通常制御へ遷移する。
一方、空調装置1および換気装置2のいずれにおいても設定変更がなされていない場合(S11のNO判定時)、ステップS12に進み、目標室内温度T*に対する室内温度検知部1aによる検知温度Tの偏差α1が所定の閾値(±E℃とする)以下であるか否かが判定される。偏差α1が±E℃以下である場合(S12のYES判定時)、処理をステップS05に戻すことにより、蒸発温度差制御を継続させる。
一方、偏差α1が±E℃より大きい場合(S12のNO判定時)、蒸発温度差制御を継続することができないと判定される。したがって、空気調和システム100は連携制御から通常制御へ遷移する。
なお、ステップS12の判定に用いられる「E℃」とは、蒸発温度差制御を継続するか否かを判定するための指標である。この指標の設定には、圧縮機の運転周波数の変更による一時的な室内温度の変動を考慮する必要がある。そのため、「E℃」は、ステップS03における「B℃」(第1の閾値)よりも大きな値に設定することが好ましい。
また、圧縮機10a,20aの運転周波数を変更するときには、一方の圧縮機の運転周波数を下げる操作(蒸発温度上昇操作)を行なった後に、他方の圧縮機の運転周波数を上げる操作(蒸発温度低下操作)を行なうことが好ましい。圧縮機の運転周波数を上げる操作を最初に行なうと、対応する空調装置の空調能力が急激に高まるため、部屋Rの冷え過ぎを招くとともに、当該圧縮機の発停を誘発する可能性がある。圧縮機の運転周波数を下げる操作を最初に行なうことで、このような不具合を抑制することができるため、省エネルギー性とユーザの快適性とを確保することができる。
[高低圧温度差制御]
ステップS05で蒸発温度差ΔETがD℃以下であると判定されると(S05のNO判定時)、次に、連携制御の第二の態様として、高低圧温度差制御が実行される。
高低圧温度差制御では、空調装置1における高低圧温度差(CT1−ET1)と、換気装置2における高低圧温度差(CT2−ET2)との差を小さくする。そのため、高低圧温度差が高い方の装置において、高低圧温度差を減少させるために圧縮機の運転周波数を下げる。一方、高低圧温度差が低い方の装置において、高低圧温度差を増加させるために圧縮機の運転周波数を上げる。
上記の蒸発温度差制御を実行したことによって蒸発温度ET1と蒸発温度ET2とが同等となっている場合であっても、凝縮温度CT1と凝縮温度CT2とが異なることがある。空調装置1と換気装置2との間で凝縮温度が異なると、圧縮機における圧縮比が異なってくる。圧縮比が大きくなると、圧縮機の冷媒循環量が減少するとともに、圧縮器の仕事量が増加する。そのため、運転効率の観点では、空気調和システム100は必ずしも最適な運転状態とはなっていない。
一方、凝縮温度は、凝縮器の容量および凝縮器への送風量などの凝縮器の性能に影響される。したがって、空調装置1および換気装置2の間で凝縮器の性能が異なると、凝縮温度も異なってくる。
高低圧温度差制御では、高低圧温度差(CT1−ET1)と高低圧温度差(CT2−ET2とを比較することで、空調装置1および換気装置2の間で凝縮器の性能を比較することができる。そして、高低圧温度差(CT1−ET1)と高低圧温度差(CT2−ET2)との差が小さくなるように圧縮機10a,20aの運転周波数を変更することにより、凝縮器の性能の違いを加味した連携制御を実行することができる。
以下、図6を参照しながら高低圧温度差制御の処理手順について説明する。
(S13:高低圧温度差制御の開始判定)
ステップS13では、蒸発温度検知部10lにより検知される蒸発温度ET1と、凝縮温度検知部10kにより検知される凝縮温度CT1との差(=高低圧温度差(CT1−ET1))が算出される。また、蒸発温度検知部20lにより検知される蒸発温度ET2と、凝縮温度検知部20kにより検知される凝縮温度CT2との差(=高低圧温度差(CT2−ET2))が算出される。続いて、高低圧温度差(CT1−ET1)と高低圧温度差(CT2−ET2)との差の絶対値(=abs{(CT1−ET1)−(CT2−ET2)}が算出される。
算出された差の絶対値は第4の閾値(F℃とする)と比較される。当該差の絶対値がF℃より大きい場合(S13のYES判定時)、処理はステップS14に進む。一方、当該差の絶対値がF℃以下である場合(S13のNO判定時)、処理は図7のステップS21に進む。
なお、ステップS13の判定に用いられる「F℃」(第4の閾値)とは、高低圧温度差制御を開始するか否かを判定するための指標である。1つの冷凍サイクルにおいて、圧縮機の運転周波数を上げると、凝縮温度が上昇し、蒸発温度が低下する。よって、高低圧温度差が大きくなる。一方、圧縮機の運転周波数を下げると、凝縮温度が低下し、蒸発温度が上昇する。よって、高低圧温度差が小さくなる。このように、当該冷凍サイクルでは、圧縮機の運転周波数を変更することで、高低圧温度差が変化する。
したがって、蒸発温度差制御を実行した場合、圧縮機10a,20aの運転周波数が変更されるため、空調装置1における高低圧温度差(CT1−ET1)と、換気装置2における高低圧温度差(CT2−ET2)との差が大きくなっている。なお、この差は、蒸発温度差ΔETに比べて大きい。「F℃」は、蒸気温度差制御を開始するか否かを判定指標である「D℃」(第3の閾値)以上の値に設定することが好ましい。このようにすると、高低圧温度差制御に比べて蒸発温度差制御を優先的に実行できるため、連携制御を安定化することができる。
(S14:高低圧温度差の比較)
高低圧温度差(CT1−ET1)と高低圧温度差(CT2−ET2)との差の絶対値がF℃より大きい場合(S13のYES判定時)、ステップS14により、高低圧温度差(CT1−ET1)と高低圧温度差(CT2−ET2)との大小が比較される。この比較結果に基づいて、圧縮機10a,20aの運転周波数が変更される。
(S15:換気装置の高低圧温度差減少操作)
高低圧温度差(CT2−ET2)が高低圧温度差(CT1−ET1)より大きい場合(S14のYES判定時)、ステップS15により、換気装置2の圧縮機20aの運転周波数を下げる。これにより、換気装置2では、凝縮温度CT2が低下するため、高低圧温度差(CT2−ET2)が減少する。
(S16:空調装置の高低圧温度差増加操作)
さらに、ステップS16により、空調装置1の圧縮機10aの運転周波数を上げる。これにより、空調装置1では、凝縮温度CT1が上昇するため、高低圧温度差(CT1−ET1)が増加する。
すなわち、高低圧温度差(CT2−ET2)が高低圧温度差(CT1−ET1)よりも大きい場合には(S14のYES判定時)、高低圧温度差(CT2−ET2)を減少させるとともに(S15)、高低圧温度差(CT1−Et1)を増加させるように(S16)、圧縮機10a,20aの運転周波数を変更する。これにより、空調装置1および換気装置2の間の高低圧温度差(CT−ET)の差を小さくする。
(S17:空調装置の高低圧温度差減少操作)
高低圧温度差(CT2−ET2)が高低圧温度差(CT1−ET1)より小さい場合(S14のNO判定時)、ステップS17により、空調装置1の圧縮機10aの運転周波数を下げる。これにより、空調装置1では、凝縮温度CT1が低下するため、高低圧温度差(CT1−ET1)が減少する。
(S18:換気装置の高低圧温度差増加操作)
さらに、ステップS18により、換気装置2の圧縮機20aの運転周波数を上げる。これにより、換気装置2では、凝縮温度CT2が上昇するため、高低圧温度差(CT2−ET2)が増加する。
すなわち、高低圧温度差(CT2−ET2)が高低圧温度差(CT1−ET1)よりも小さい場合には(S14のNO判定時)、高低圧温度差(CT1−ET1)を減少させるとともに(S17)、高低圧温度差(CT2−ET2)を増加させるように(S18)、圧縮機10a,20aの運転周波数を変更する。これにより、空調装置1および換気装置2の間の高低圧温度差(CT−ET)の差を小さくする。
(S19,S20:高低圧温度差制御の継続判定)
ステップS13〜S18によって高低圧温度差(CT−ET)の差を小さくするための操作が行なわれると、ステップS19に進み、空調装置1および換気装置2のいずれかに対して運転状態の設定変更がなされたか否かが判定される。具体的には、空調装置1および換気装置2のいずれかで設定温度および設定風量などが変更された場合には(S19のYES判定時)、高低圧温度差制御を継続することができないと判定される。したがって、空気調和システム100は連携制御から通常制御へ遷移する。
一方、空調装置1および換気装置2のいずれにおいても設定変更がなされていない場合(S19のNO判定時)、ステップS20に進み、目標室内温度T*に対する室内温度検知部1aの偏差α1が所定の閾値(±E℃)以下であるか否かが判定される。偏差α1が±E℃以下である場合(S20のYES判定時)、処理をステップS13に戻すことにより、高低圧温度差制御を継続させる。
一方、偏差α1が±E℃より大きい場合(S20のNO判定時)、高低圧温度差制御を継続することができないと判定される。したがって、空気調和システム100は連携制御から通常制御へ遷移する。
なお、蒸気温度差制御と同様に、圧縮機10a,20aの運転周波数を変更するときには、一方の圧縮機の運転周波数を下げる操作(高低圧温度差減少操作)を行なった後に、他方の圧縮機の運転周波数を上げる操作(高低圧温度差増加操作)を行なうことが好ましい。
[吐出過熱度差制御]
ステップS13で高低圧温度差(CT1−ET1)と高低圧温度差(CT2−ET2)との差の絶対値がF℃以下であると判定されると(S13のNO判定時)、次に、連携制御の第三の態様として、吐出過熱度差制御が実行される。
吐出過熱度差制御では、空調装置1における吐出過熱度(Td1−CT1)と、換気装置2における吐出過熱度(Td2−CT2)との差を小さくする。そのため、吐出過熱度が高い方の装置において、吐出温度を低下させるために圧縮機の運転周波数を下げる。一方、吐出過熱度が低い方の装置において、吐出温度を増加させるために圧縮機の運転周波数を上げる。
上記の高低圧温度差制御によって空調装置1および換気装置2の間で高低圧温度差が同等となっている場合、吐出過熱度の差は圧縮機の吐出温度の違いを表している。したがって、吐出過熱度は、圧縮機の性能を示す指標となる。空調装置1および換気装置2の間で吐出温度が異なる場合、圧縮機の性能の違いが影響することで、運転効率の観点では、空気調和システム100は必ずしも最適な運転状態とはなっていない。
吐出過熱度差制御では、吐出過熱度(Td1−CT1)と吐出過熱度(Td2−CT2とを比較することで、空調装置1および換気装置2の間で圧縮機の性能を比較することができる。そして、吐出過熱度(Td1−CT1)と吐出過熱度(Td2−CT2)との差が小さくなるように圧縮機10a,20aの運転周波数を変更することにより、圧縮機の性能の違いを加味した連携制御を実行することができる。これにより、空気調和システム100の運転効率をさらに向上させることができる。
例えば、吐出過熱度が大きくなる場合としては、圧縮機の運転周波数が高い状態、または、圧縮機効率が低い状態であると考えられる。圧縮機の運転周波数が高い状態であるときには、圧縮機の運転周波数を下げることで、吐出過熱度を小さくして効率化することができる。一方、圧縮機効率が低い状態であるときには、圧縮機の運転周波数を下げることで、圧縮機の仕事量を減らして効率化することができる。
以下、図7を参照しながら吐出過熱度差制御の処理手順について説明する。
(S21:吐出過熱度差制御の開始判定)
ステップS21では、吐出温度検知部10jにより検知される吐出温度Td1と、凝縮温度検知部10kにより検知される凝縮温度CT1との差(=吐出過熱度(Td1−CT1))が算出される。また、吐出温度検知部20jにより検知される吐出温度Td2と、凝縮温度検知部20kにより検知される凝縮温度CT2との差(=吐出過熱度(Td2−CT2))が算出される。続いて、吐出過熱度(Td1−CT1)と吐出過熱度(Td2−CT2)との差の絶対値(=abs{(Td1−CT1)−(Td2−CT2)}が算出される。
算出された吐出過熱度差の絶対値は第5の閾値(G℃とする)と比較される。吐出過熱度差の絶対値がG℃より大きい場合(S21のYES判定時)、処理はステップS22に進む。一方、吐出過熱度差の絶対値がG℃以下である場合(S21のNO判定時)、処理はステップS29に進む。
ここで、ステップS21の判定に用いられる「G℃」(第5の閾値)とは、吐出過熱度差制御を開始するか否かを判定するための指標である。1つの冷凍サイクルにおいて、圧縮機の運転周波数を上げると、圧縮機の吐出温度Tdが上昇し、その結果、吐出過熱度(Td−CT)が大きくなる。一方、圧縮機効率が低下している場合においても、吐出過熱度(Td−CT)が大きくなる。すなわち、吐出過熱度は、圧縮機の運転周波数のみならず、圧縮機効率によっても変化し得る。そのため、圧縮機の運転周波数を変更しても、圧縮機の性能の個体差により、吐出過熱度差を小さくすることができない場合が生じる。
吐出過熱度差制御は、このような圧縮機の性能の個体差を補正するための制御である。この個体差は冷凍サイクルの状態によって変更しないものである。このような圧縮機の性能の個体差を加味して連携制御を実行することができるため、連携制御の精度を高めることができる。
なお、「G℃」(第5の閾値)は、高低圧温度差制御を開始するか否かの判定指標である「F℃」(第4の閾値)以上の値に設定することが好ましい。このようにすると、空調装置1および換気装置2の制御によっても到達不可能な運転状態が制御目標値に設定されることを防ぐことができるため、誤った制御が実行される可能性を低減できる。
(S22:吐出過熱度の比較)
吐出過熱度(Td1−CT1)と吐出過熱度(Td2−CT2)との差の絶対値がG℃より大きい場合(S21のYES判定時)、ステップS22により、吐出過熱度(Td1−ET1)と吐出過熱度(Td2−CT2)との大小が比較される。この比較結果に基づいて、圧縮機10a,20aの運転周波数が変更される。
(S23:換気装置の吐出過熱度減少操作)
吐出過熱度(Td2−CT2)が吐出過熱度(Td1−CT1)より大きい場合(S22のYES判定時)、ステップS23により、換気装置2の圧縮機20aの運転周波数を下げる。これにより、換気装置2では、圧縮機20aの吐出温度Td2が低下するため、吐出過熱度(Td2−ET2)が減少する。
(S24:空調装置の吐出過熱度増加操作)
さらに、ステップS24により、空調装置1の圧縮機10aの運転周波数を上げる。これにより、空調装置1では、吐出温度Td1が増加するため、吐出過熱度(Td1−CT1)が増加する。
すなわち、吐出過熱度(Td2−CT2)が吐出過熱度(Td1−CT1)よりも大きい場合には(S22のYES判定時)、吐出過熱度(Td2−CT2)を減少させるとともに(S23)、吐出過熱度(Td1−CT1)を増加させるように(S24)、圧縮機10a,20aの運転周波数を変更する。これにより、空調装置1および換気装置2の間の吐出過熱度(Td−CT)の差を小さくする。
(S25:空調装置の吐出過熱度減少操作)
吐出過熱度(Td2−CT2)が吐出過熱度(Td1−CT1)より小さい場合(S22のNO判定時)、ステップS25により、空調装置1の圧縮機10aの運転周波数を下げる。これにより、空調装置1では、圧縮機10aの吐出温度Td1が低下するため、吐出過熱度(Td1−CT1)が減少する。
(S26:換気装置の吐出過熱度増加操作)
さらに、ステップS26により、換気装置2の圧縮機20aの運転周波数を上げる。これにより、換気装置2では、吐出温度Td2が上昇するため、吐出過熱度(Td2−CT2)が増加する。
すなわち、吐出過熱度(Td2−CT2)が吐出過熱度(Td1−CT1)よりも小さい場合には(S22のNO判定時)吐出過熱度(Td1−CT1)を減少させるとともに(S25)、吐出過熱度(Td2−CT2)を増加させるように(S26)、圧縮機10a,20aの運転周波数を変更する。これにより、空調装置1および換気装置2の間の吐出過熱度の差を小さくする。
(S27,S28:吐出過熱度差制御の継続判定)
ステップS21〜S26によって吐出過熱度の差を小さくするための操作が行なわれると、ステップS27に進み、空調装置1および換気装置2のいずれかに対して運転状態の設定変更がなされたか否かが判定される。具体的には、空調装置1および換気装置2のいずれかで設定温度および設定風量などが変更された場合には(S27のYES判定時)、吐出過熱度差制御を継続することができないと判定される。したがって、空気調和システム100は連携制御から通常制御へ遷移する。
一方、空調装置1および換気装置2のいずれにおいても設定変更がなされていない場合(S27のNO判定時)、ステップS28に進み、目標室内温度T*に対する室内温度検知部1aによる検知温度Tの偏差α1が所定の閾値(±E℃)以下であるか否かが判定される。偏差α1が±E℃以下である場合(S28のYES判定時)、処理をステップS21に戻すことにより、吐出過熱度差制御を継続させる。
一方、偏差α1が±E℃より大きい場合(S28のNO判定時)、吐出過熱度差制御を継続することができないと判定される。したがって、空気調和システム100は連携制御から通常制御へ遷移する。
(S29:運転状態維持操作)
ステップS21にて吐出過熱度差がG℃以下である場合(S21のNO判定時)、ステップS29に進み、空調装置1および換気装置2の運転状態を維持する。
(S30,31:通常制御復帰判定)
ステップS30では、空調装置1および換気装置2のいずれかに対して運転状態の設定変更がなされたか否かが判定される。具体的には、空調装置1および換気装置2のいずれかで設定温度および設定風量などが変更された場合には(S30のYES判定時)、吐出過熱度差制御を継続することができないと判定される。したがって、空気調和システム100は連携制御から通常制御へ遷移する。
一方、空調装置1および換気装置2のいずれにおいても設定変更がなされていない場合(S30のNO判定時)、ステップS31に進み、目標室内温度T*に対する室内温度検知部1aによる検知温度Tの偏差α1が所定範囲(±B℃)内であるか否かが判定される。偏差α1が±B℃以下である場合(S31のYES判定時)、処理をステップS29に戻すことにより、吐出過熱度差制御を継続させる。
一方、偏差α1が±B℃より大きい場合(S31のNO判定時)、吐出過熱度差制御を継続することができないと判定される。したがって、空気調和システム100は連携制御から通常制御へ遷移する。
なお、蒸気温度差制御および高低圧温度差制御と同様に、圧縮機10a,20aの運転周波数を変更するときには、一方の圧縮機の運転周波数を下げる操作(吐出過熱度減少操作)を行なった後に、他方の圧縮機の運転周波数を上げる操作(吐出過熱度増加操作)を行なうことが好ましい。
以上説明したように、本発明の実施の形態に従う空気調和システム100では、2台の空調装置(空調装置1および換気装置2)の連携制御として、蒸発温度差制御、高低圧温度差制御および吐出過熱度差制御を実行する。これにより、当該2台の空調装置間の処理負荷の偏在を抑制することができ、結果的に空気調和システム100の運転効率を向上させることができる。
例えば、空気調和システム100の冷房運転時において、室外温湿度が高いが、室内の負荷発生源が少なく、かつ、部屋Rの断熱性能が高いという状況を想定する。このような状況において通常制御を実行する場合、換気装置2は、吹出空気温度が目標吹出空気温度に一致するように、高容量での運転を継続する。一方、空調装置1は、室内負荷が小さいため、低容量での運転を実行する。
このとき、換気装置2では、高容量運転時、風量当たりの能力を高めるために蒸発温度ET2を低下させる必要があり、結果的に圧縮機効率が低下する傾向となる。これに対して、空調装置1では、低容量運転を行なっているため、蒸発温度ET1を上昇させることができ、圧縮機効率を向上させる余地が生じている。しかしながら、蒸発温度ET1を上昇させると、空調装置1の風量当たりの空調能力が低下するため、空調装置1が処理できる負荷が減少する。その結果、効率が低い換気装置2が処理すべき負荷がさらに増えてしまい、空気調和システム100の運転効率が低下する可能性がある。
このような状況において蒸発温度差制御が行なわれると、蒸発温度ET1が低下するように圧縮機10aの運転周波数を上昇させる一方で、蒸発温度ET2を上昇するように圧縮機20aの運転周波数を低下させる。これにより、空調装置1では、風量当たりの空調能力が高まるため、処理できる負荷が増える。一方、換気装置2では、蒸発温度ET2が上昇したことで圧縮機効率が改善される。また、空調装置1が処理する負荷が増えることで、換気装置2が処理すべき負荷が減少する。その結果、空気調和システム全体の消費電力は、通常制御時における消費電力に比べて減少する。したがって、空気調和システム100の運転効率が向上する。
さらに、本発明の実施の形態に従う連携制御によれば、空調装置1および換気装置2の各々が処理する熱量および、室内空間に供給する空気の風量を大きく変更することがない。これにより、ユーザの快適性と省エネルギー性とを両立することができる。
ここで、空気調和システム全体の消費電力を低減するためには、空調装置1および換気装置2の各々について、蒸発温度および凝縮温度の関係の他に、室内熱交換器の吸込空気温湿度および送風量、室外熱交換器の容量、室外機の風量制御範囲、および圧縮機の性能などの多様な特性値を考慮して演算された、システム特性を示す情報が必要である。そして、システム特性を示す情報の演算には複雑な計算が必要とされる。
これに対して、本実施の形態に従う連携制御では、消費電力に対する影響度が大きい蒸発温度以外の特性値を、空調装置1と換気装置2との間で同等であると想定することで、消費電力を最小にするための最適な条件が、蒸発温度ET1と蒸発温度ET2とが同等であることに集約される(図8参照)。したがって、この条件を満足するように空調装置1および換気装置2を制御することで、容易に効率化を実現することができる。
また、空気調和システムの効率化に必要となる情報を、蒸発温度に関するものに限定することができるため、各空調装置を構成する機器の特性が分からない状態であっても、蒸発温度に基づいて、連携制御を容易に実行することができる。これによれば、例えば、過去に設置された機器など、その特性値が不明な機器との連携制御も可能となる。この結果、汎用性の高い制御を構築することができる。
また、蒸発温度差制御を開始するか否かを判定するための指標である第3の閾値(D℃)を、空調装置1および換気装置2の運転状態が安定しているか否かを判定するための指標である第1および第2の閾値(B℃、C℃)以上の値にすることで、検知部の検知誤差を考慮した制御を構築することができる。これにより、誤った制御を抑制することが可能となる。
また、連携制御を継続するか否かを判定するための指標である閾値(E℃)を、通常制御時において空調装置1の運転状態が安定しているか否かを判定するための指標(B℃)より大きな値にすることで、圧縮機の運転周波数の変更による一時的な室内温度の変動に起因して連携制御から通常制御に戻ることを抑制することができる。これにより、効率化に最適な運転状態に到達しやすくなるため、省エネルギー性を実現できる。
また、冷房運転時において、蒸発温度差制御によって蒸発温度差ΔETが小さくなった後に空調装置1および換気装置2の高低圧温度差を比較することで、各装置が有する熱交換器の性能を、高低圧温度差を通じて比較することができる。これにより、熱交換器の性能を加味した連携制御を構築することができる。
さらに、高低圧温度差制御の後に吐出過熱度差制御を行なうことで、空調装置1および換気装置2における冷凍サイクルの圧縮比が同等である状態での吐出温度を比較することができる。この状態での吐出温度は、冷凍サイクルの状態に左右されない値であるため、圧縮機の性能を示す指標になる。したがって、圧縮機性能を考慮した連携制御が可能となり、結果的に効率化に向けた制御の精度を向上させることができる。
(変更例)
(1)上記の実施の形態では、空調装置および換気装置の運転状態が安定しており、かつ、空調装置の制御および換気装置の制御のいずれもが制御目標値を達成している場合に、通常制御から連携制御に遷移する構成について説明したが、空調装置および換気装置のいずれかの制御で制御目標値を達成していない場合に、通常制御から連携制御に遷移する構成としてもよい。
図11は、本実施の形態に従う空気調和システム100において実行される連携制御の変更例を説明する図である。図11に示される空気調和システム100では、部屋Rの在室者Mの人数が多いため、室内負荷が大きくなっている。そのため、空調装置1では、室内温度が目標室内温度に一致するように、高容量での運転が行なわれている。一方、換気負荷が室内負荷に比べて小さいため、換気装置2は、低容量での運転を実行している。空調装置1では未だ制御目標値が達成しておらず、換気装置2では制御目標値が達成している。
このように空調装置1および換気装置2の間で処理負荷が偏在している状況で連携制御を実行する。連携制御では、蒸発温度ET1が上昇するように圧縮機10aの運転周波数を上昇させる一方で、蒸発温度ET2を低下するように圧縮機20aの運転周波数を上昇させる。これにより、換気装置2では、風量当たりの空調能力が高まるため、処理できる負荷が増える。一方、空調装置1では、蒸発温度ET1が上昇したことで圧縮機効率が改善される。また、換気装置2が処理する負荷が増えることで、空調装置1が処理すべき負荷が減少する。処理負荷の偏在が抑制されることで、空気調和システム全体の消費電力を低減することができる。これにより、空気調和システム100の運転効率を向上させることができる。
(2)換気装置2として、還気および外気を顕熱交換もしくは全熱交換させる全熱交換器を設置しても良い。このようにすると、換気装置2の熱交換器に流入する空気の温度を室内温度に近づくため、蒸発温度差制御での想定条件に近づけることができる。その結果、蒸発温度差制御によって、効率化に最適な運転状態に近づけることができる。
(3)暖房運転時における連携制御では、蒸発温度差制御(図5参照)に代えて、凝縮温度差制御(図12参照)が実行される。以下、図12のステップS05A〜S12を参照して、凝縮温度差制御の処理手順について説明する。
(S05A:凝縮温度差制御の開始判定)
ステップS05Aでは、凝縮温度検知部10kにより検知される空調装置1の凝縮温度CT1と、凝縮温度検知部20kにより検知される換気装置2の凝縮温度CT2との差の絶対値(=abs{CT1−CT2})が算出される。以下の説明では、凝縮温度CT1および凝縮温度CT2の差の絶対値を「凝縮温度差ΔCT」とも表記する。
算出された凝縮温度差ΔCTは第3の閾値(D℃)と比較される。凝縮温度差ΔCTがD℃より大きい場合(S05AのYES判定時)、処理はステップS06Aに進む。一方、凝縮温度差ΔCTがD℃以下である場合(S05AのNO判定時)、処理は図6のステップS13に進む。
ステップS05Aの判定に用いられる「D℃」(第3の閾値)とは、凝縮温度差制御を開始するか否かを判定するための指標である。「D℃」(第3の閾値)は、ステップS03における「B℃」(第1の閾値)およびステップS04における「C℃」(第2の閾値)以上の値に設定することが好ましい。
(S06A:凝縮温度の比較)
凝縮温度差ΔCTがD℃より大きい場合(S05AのYES判定時)、ステップS06Aにより、凝縮温度CT1と凝縮温度CT2との大小が比較される。この比較結果に基づいて、空調装置1の圧縮機10aおよび換気装置2の圧縮機20aの運転周波数が変更される。
(S07A:換気装置の凝縮温度低下操作)
凝縮温度CT2が凝縮温度CT1より大きい場合(S06AのYES判定時)、ステップS07Aにより、換気装置2の圧縮機20aの運転周波数を下げる。これにより、換気装置2における凝縮温度CT2を低下させる。
(S08A:空調装置の凝縮温度上昇操作)
さらに、ステップS08Aにより、空調装置1の圧縮機10aの運転周波数を上げる。これにより、空調装置1における凝縮温度CT1を上昇させる。
すなわち、凝縮温度CT2が凝縮温度CT1よりも高い場合には(S06AのYES判定時)、凝縮温度CT2を低下させるとともに(S07A)、凝縮温度CT1を上昇させるように(S08A)、圧縮機10a,20aの各々の運転周波数を変更する。これにより、凝縮温度差ΔCTを小さくする。
なお、ステップS07Aにおける凝縮温度CT2の低下量およびステップS08Aにおける凝縮温度CT1の上昇量は、例えば、凝縮温度差ΔCTを圧縮機10a,20aの運転容量の比で分配した大きさとすることができる。あるいは、上昇量および低下量をいずれも、凝縮温度差ΔCTに所定比率(例えば、30%程度)を乗じた大きさとすることができる。
(S09A:空調装置の凝縮温度低下操作)
これに対して、凝縮温度CT1が凝縮温度CT2より高い場合には(S06AのNO判定時)、ステップS09Aにより、空調装置1の圧縮機10aの運転周波数を下げる。これにより、空調装置1における凝縮温度CT1を低下させる。
(S10:換気装置の凝縮温度上昇操作)
さらに、ステップS10Aにより、換気装置2の圧縮機20aの運転周波数を上げる。これにより、換気装置2における凝縮温度CT2を上昇させる。
すなわち、凝縮温度CT1が凝縮温度CT2よりも高い場合には(S06AのNO判定時)、凝縮温度CT1を低下させるとともに(S09A)、凝縮温度CT2を上昇させるように(S10A)、圧縮機10a,20aの各々の運転周波数を変更する。これにより、凝縮温度差ΔCTを小さくする。
なお、ステップS09Aにおける凝縮温度CT1の低下量およびステップS10Aにおける凝縮温度CT2の上昇量は、例えば、凝縮温度差ΔCTを圧縮機10a,20aの運転容量の比で分配した大きさとすることができる。あるいは、上昇量および低下量をいずれも、凝縮温度差ΔCTに所定の比率(例えば、30%程度)を乗じた大きさとすることができる。
(S11,S12:凝縮温度差制御の継続判定)
ステップS07A〜S10Aによって凝縮温度差ΔCTを小さくするための操作が行なわれると、ステップS11に進み、空調装置1および換気装置2のいずれかに対して運転状態の設定変更がなされたか否かが判定される。具体的には、空調装置1および換気装置2のいずれかにおいて設定温度および設定風量などが変更された場合には(S11のYES判定時)、凝縮温度差制御を継続することができないと判定される。したがって、空気調和システム100は連携制御から通常制御へ遷移する。
一方、空調装置1および換気装置2のいずれにおいても設定変更がなされていない場合(S11のNO判定時)、ステップS12に進み、目標室内温度T*に対する室内温度T偏差α1が所定範囲(±E℃)内であるか否かが判定される。偏差α1が±E℃以下である場合(S12のYES判定時)、処理をステップS05Aに戻すことにより、凝縮温度差制御を継続させる。
一方、偏差α1が±E℃より大きい場合(S12のNO判定時)、凝縮温度差制御を継続することができないと判定される。したがって、空気調和システム100は連携制御から通常制御へ遷移する。
なお、圧縮機10a,20aの運転周波数を変更するときには、一方の圧縮機の運転周波数を下げる操作(凝縮温度低下操作)を行なった後に、他方の圧縮機の運転周波数を上げる操作(凝縮温度上昇操作)を行なうことが好ましい。このようにすると、部屋Rの過熱および圧縮機の発停を抑制することができる。よって、省エネルギー性とユーザの快適性とを確保することができる。
(4)空調装置1において圧縮機10aの運転周波数を低下させるときには、換気装置2において、熱交換器に供給する空気の流量を増加させることが好ましい。空調装置1において圧縮機10aの運転周波数を低下させると、蒸発温度ET1が上昇するため、空気調和システム全体の空調能力が低下して結果的に室内温度Tが上昇してしまう可能性がある。換気装置2において熱交換器への送風量を増やすことで、空気調和システム全体の空調能力の低下を抑制することができる。同様の理由により、換気装置2において圧縮機20aの運転周波数を低下させるときには、空調装置1において、熱交換器に供給する空気の流量を増加させることが好ましい。
(5)室内空間の湿度が第6の閾値より高いときには、圧縮機10a,20aの運転周波数の低下を禁止することが好ましい。このようにすると、蒸発温度ET1,ET2の上昇が抑えられるため、室内空間の湿度を第6の閾値以下に保つことができる。よって、在室者の快適性を担保することができる。
今回開示された各実施の形態は、適宜組合せて実施することも予定されている。今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。