以下、添付図面を参照しながら本発明をそのいくつかの実施形態を通して例示的に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態のインプリント装置100の構成を示す概略図である。インプリント装置100は、基板1の上でモールド18を使ってインプリント材を成形するインプリント処理を行う。より具体的には、インプリント装置100は、基板1の表面上にインプリント材を供給し、該インプリント材にモールド18を接触させた状態で該インプリント材を硬化させる。本実施形態では、インプリント材として、レジストが採用されている。また、レジストの硬化法として、紫外線(UV光)の照射によってレジストを硬化させる光硬化法が採用されている。したがって、本実施形態では、インプリント装置100は、基板1の表面上にレジストを供給し、レジストとモールド18(のパターン面)とを接触させた状態でレジストを硬化させることによって基板1の表面上にパターンを形成する。但し、インプリント装置100は、その他の波長域の光の照射によってレジストを硬化させるように構成されてもよいし、その他のエネルギー、例えば、熱によってレジストを硬化させる熱硬化法を採用するように構成されてもよい。
基板1の表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系において方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転をそれぞれθX、θY、θZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御または駆動を意味する。また、θX軸、θY軸、θZ軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な軸の周りの回転、Y軸に平行な軸の周りの回転、Z軸に平行な軸の周りの回転に関する制御または駆動を意味する。また、位置は、X軸、Y軸、Z軸の座標に基づいて特定されうる情報であり、姿勢は、θX軸、θY軸、θZ軸に対する相対的な回転で特定されうる情報である。位置決めは、位置および/または姿勢を制御することを意味する。
インプリント装置100は、インプリント環境を一定の温度、湿度に維持し、異物の侵入を排除するためのチャンバー200を有する。また、インプリント装置100は、計測器4、計測器6、基板ステージ7、ブリッジ構造体8、計測器9、硬化用光源11、アライメント計測部12、ハーフミラー13、排気ダクト14、連結部材15およびモールドヘッド16を有する。更に、インプリント装置100は、空気ばね19、ベース定盤20、ガス供給部21、ホルダ22、レジスト供給部(ディスペンサ)23、オフアクシススコープ24、圧力センサ25、検出部26、制御部400およびユーザーインターフェース34を有する。制御部400は、ネットワーク301を介して、統括コンピュータ300と接続されている。モールドヘッド16は、パターン面Pを有するモールド18を保持するモールドチャック17を含む。モールド18のパターン面Pには、基板1に形成すべきパターンに対応する凹凸パターンが形成されている。
モールドチャック17は、例えば、真空吸着によってモールド18を保持する。モールドチャック17は、モールドチャック17からのモールド18の脱落を防止する構造を有していてもよい。本実施形態では、モールドチャック17は、モールドヘッド16と強固に結合している。モールドヘッド16は、ブリッジ構造体8を基準として、少なくとも、Z、ωX及びωYの3軸方向にモールドチャック17を駆動することが可能な機構を有する。モールドヘッド16は、連結部材15を介して、ブリッジ構造体8に連結され、ブリッジ構造体8によって支持されている。また、アライメント計測部12もブリッジ構造体8によって支持されている。
アライメント計測部12は、モールド18と基板1との位置合わせ(アライメント)のためのアライメント計測を行う。アライメント計測部12は、本実施形態では、モールド18に設けられたマークおよび基板ステージ7や基板1に設けられたマークを検出してアライメント信号を生成するアライメント検出系を含む。また、アライメント計測部12は、カメラを含んでいてもよく、紫外線の照射による基板1上のレジストの硬化状態(インプリント状態)を観察する機能を有していてもよい。この場合、アライメント計測部12は、基板上のレジストの硬化状態だけではなく、基板上のレジストに対するモールド18の接触状態、基板上のレジストのモールド18への充填状態、基板上のレジストからのモールド18の分離状態も観察することが可能である。連結部材15の上方には、ハーフミラー13が配置されている。硬化用光源11からの光は、ハーフミラー13で反射され、モールド18を透過して基板1の上のレジストに照射される。基板1の上のレジストは、硬化用光源11からの光の照射によって硬化する。
ブリッジ構造体8は、床からの振動を絶縁するための空気ばね19を介して、ベース定盤20に支持されている。空気ばね19は、アクティブ防振機能として露光装置(フォトリソグラフィー装置)において一般的に採用されている構造を有する。例えば、空気ばね19は、ブリッジ構造体8及びベース定盤20に設けられたXYZ相対位置測定センサ、XYZ駆動用リニアモータ、空気ばねの内部のエア容量を制御するサーボバルブなどを含む。ブリッジ構造体8には、ホルダ22を介して、基板1にレジストを供給(塗布)するためのノズルを含むレジスト供給部23(ディスペンサ)が取り付けられている。レジスト供給部23は、例えば、レジストの液滴を線状に基板1に供給する。レジスト供給部23からレジストを基板1に供給しながら基板ステージ7(即ち、基板1)を移動させることによって、基板1上の矩形形状等の任意形状の領域にレジストを塗布することができる。
基板1は、本実施形態では、円形状を有する。したがって、基板1の上に矩形形状のショット領域を規定する場合、基板の周辺部では、矩形形状が基板1(の外周)から食み出すので、矩形形状のショット領域を確保することができない。このようなショット領域は、一般に、欠けショット領域や周辺ショット領域と呼ばれる。現状では、33mm×26mmの1つのショット領域に複数のチップを形成することが可能である。したがって、基板1に効率よくチップを形成するためには、欠けショット領域にもパターンを形成する必要がある。
また、インプリント装置100を使用するプロセスでは、基板1の表面上に形成される凹凸パターンの凹部に膜が残る。この膜は残膜と呼ばれる。残膜は、レジストにモールド18のパターンを転写した後のエッチングによって除去される必要がある。残膜の厚さは、RLT(Residual Layer Thickness)と呼ばれる。必要なRLTに相当する厚さの膜がショット領域に形成されていない場合には、レジストのエッチングの際に基板1がエッチングされて抉れてしまう。これを防止するためには、基板1の周辺部、即ち、欠けショット領域へのレジストの塗布が有効である。但し、この際、レジスト供給部23が、通常の矩形形状のショット領域(完全ショット領域や中心ショット領域と呼ばれる)に対するレジストの塗布時と同様に矩形領域に対してレジストを塗布すると、基板1からレジストが食み出してしまう。この状態において、硬化用光源11から光を照射すると、基板1を保持する保持面(例えば、基板ステージ7に設けられた基板チャック)上でレジストが硬化して付着する。これにより、基板1が保持面に接着されてしまうことに加えて、次にインプリント処理を行う基板1が付着物(硬化したレジスト)を挟んで保持され、基板1の表面の面精度が低下して正常にパターンを形成することができなくなってしまう。そこで、本実施形態では、レジスト供給部23によるレジストの吐出と基板ステージ7の移動との組み合わせによって、基板1の適切な領域にレジストを塗布するようにする。
基板ステージ7は、基板チャックを有し、該基板チャックによって基板1を保持する。基板ステージ7は、X、Y、Z、ωX、ωYおよびωZの6軸方向に移動することが可能な機構を有する。本実施形態では、基板ステージ7は、X方向の移動機構を含むXスライダー3、および、Y方向の移動機構を含むYスライダー5を介して、ブリッジ構造体8によって支持されている。Xスライダー3には、Xスライダー3とYスライダー5との相対位置を計測する計測器4が設けられている。また、Yスライダー5には、Yスライダー5とブリッジ構造体8との相対位置を計測する計測器6が設けられている。したがって、計測器4、6は、ブリッジ構造体8を基準として、基板ステージ7の位置を計測する。計測器4及び6のそれぞれは、本実施形態では、エンコーダ(リニアエンコーダ)で構成されている。
基板ステージ7とブリッジ構造体8とのZ方向における距離は、ブリッジ構造体8、Xスライダー3およびYスライダー5によって決まる。Xスライダー3およびYスライダー5のZ方向、チルト方向の剛性を十nm/N程度に高く維持することによって、基板ステージ7とブリッジ構造体8とのZ方向における変動を数十nm程度の変動に抑えることができる。
計測器9は、ブリッジ構造体8に設けられ、本実施形態では、干渉計で構成されている。計測器9は、基板ステージ7に向けて計測光10を照射し、基板ステージ7の端面に設けられた干渉計用ミラーで反射された計測光10を検出することで、基板ステージ7の位置を計測する。計測器9は、基板ステージ7の基板1の保持面に対して計測器4、6よりも近い位置において、基板ステージ7の位置を計測する。なお、図1では、計測器9から基板ステージ7に照射される計測光10が1つしか示されていないが、計測器9は、少なくとも基板ステージ7のXY位置、回転量およびチルト量を計測することができるように構成されている。
ガス供給部21は、モールド18のパターンへのレジストの充填性を向上させるために、モールド18の近傍、具体的には、モールド18と基板1との間の空間に充填用ガスを供給する。充填用ガスは、モールド18とレジストとの間に挟み込まれた充填用ガス(気泡)を迅速に低減させ、モールド18のパターンへのレジストの充填を促進させるために、透過性ガス及び凝縮性ガスの少なくとも1つを含む。ここで、透過性ガスとは、モールド18に対して高い透過性を有し、基板1上のレジストにモールド18を接触させた際にモールド18を透過するガスである。また、凝縮性ガスとは、基板1上のレジストにモールド18を接触させた際に液化(即ち凝縮)するガスである。
オフアクシススコープ24は、モールド18を介さずに、基板ステージ7に配置された基準プレートに設けられた基準マークやアライメントマークを検出する。また、オフアクシススコープ24は、基板1(の各ショット領域)に設けられたアライメントマークを検出することも可能である。圧力センサ25は、本実施形態では、基板ステージ7に設けられ、モールド18を基板1上のレジストに接触させることで基板ステージ7に作用する圧力を検出する。圧力センサ25は、基板ステージ7に作用する圧力を検出することによって、モールド18と基板1上のレジストとの接触状態を検出するセンサとして機能する。また、圧力センサ25は、モールドヘッド16に設けてもよく、モールドヘッド16及び基板ステージ7のうち少なくとも一方に設けられていればよい。
制御部400は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、又は、プログラムが組み込まれた汎用コンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成されうる。制御部400は、インプリント装置100の動作を制御する。制御部400の詳細については後述する。
ガス供給部21は、インプリント処理を行っている期間において、モールド18と基板1との間の空間に充填用ガスを供給する。モールド18と基板1との間に供給された充填用ガスは、モールドヘッド16の上部から排気ダクト14を介して吸引されて、インプリント装置100の外部に排出される。また、モールド18と基板1との間に供給された充填用ガスをインプリント装置100の外部に排出するのではなく、ガス回収機構(不図示)で回収してもよい。
図2はインプリント処理の流れを示すフローチャートである。図2のフローチャートを参照しながらインプリント装置100の動作を説明する。この動作は、制御部400によって制御される。ステップS100では、制御部400は、制御情報を生成する。ここで、制御情報は、インプリント処理に関する動作を制御するための情報であり、例えば、基板の複数のショット領域のそれぞれに対するインプリント処理を制御するための情報でありうる。ただし、制御情報は、1回のインプリント処理を制御するための情報であってもよいし、複数の基板のそれぞれの複数のショット領域のそれぞれに対するインプリント処理を制御するための情報であってもよい。ステップS100における決定処理の詳細については後述する。
ステップS101では、制御部400による制御の下で、アライメント計測部12によるアライメント計測の結果に基づいて、モールド18と基板ステージ7との位置合わせが行われる。この際、モールド18は、モールド搬送系(不図示)によってインプリント装置100に搬入され、モールドチャック17に渡され、モールドチャック17によって保持される。アライメント計測部12(アライメント検出系)によって検出されるマーク(アライメントマーク)は、専用の基準マークとして基板ステージ7に設けられてもよいし、専用のアライメント基板に設けられてもよい。
ステップS102では、制御部400による制御の下で、処理対象と判断された基板1がインプリント装置100に搬入され、基板1が基板ステージ7(基板チャック)によって保持される。ステップS103では、制御部400による制御の下で、プリアライメントが行われる。基板1がインプリント装置100に搬入された後に初めて行われるプリアライメント(S103)では、基板1がオフアクシススコープ24の下に移動され、オフアクシススコープ24によって基板1の位置が計測される。この際のプリアライメントは、モールド18と基板1とのアライメント(S106)において、基板1の各ショット領域に設けられたアライメントマークがアライメント計測部12の計測レンジに収まるような精度(1μm〜2μm程度)で行われる。処理対象基板であるか否かは、ショット領域に対するインプリント処理をスキップするかどうかを示す情報を有するテーブルTBL(図11)を参照することによって判断される。この判断の詳細については後述する。本実施形態では、テーブルTBLは、インプリント処理に関する動作を制御するための制御情報である。
処理対象と判断されたショット領域毎に行われるプリアライメント(S103)は、アライメント(S106)の際の補正駆動量を少なくする目的で行われる。このプリアライメント(S103)では、アライメント計測部12によるアライメント計測の結果に基づいて、モールド18と基板1のインプリント対象のショット領域との位置合わせが行われる。処理対象基板であるか否かは、テーブルTBL(図11)を参照することによって判断される。この判断の詳細については後述する。
ステップS104では、制御部400による制御の下で、基板1のインプリント対象のショット領域がレジスト供給部23の下に位置するように基板ステージ7が移動される。また、ガス供給部21によって、制御部400による制御の下で、モールド18と基板1との間の空間に充填用ガスが供給される。
ステップS105では、制御部400による制御の下で、レジスト供給部23によって基板1の処理対象と判断されたショット領域に対してレジストが供給される。具体的には、レジスト供給部23は、レジスト供給部23の下に移動した基板1のインプリント対象のショット領域に対して、予め定められた塗布パターンに従ってレジストを供給する。また、基板1のインプリント対象のショット領域にレジストが供給されたら、制御部400による制御の下で、該ショット領域がモールド18(のパターン面P)の下に位置するように基板ステージ7が移動される。
ステップS106では、制御部400による制御の下で、モールド18のパターン面Pと基板1上のレジストとが接触した状態でアライメント計測部12によるアライメント計測の結果に基づいてモールド18と基板1のショット領域とのアライメントが行われる。このようなアライメントは、ダイバイダイアライメントと呼ばれる。
ステップS107では、制御部400による制御の下で、モールド18のパターン面Pと基板1上のレジストとが接触した状態において、モールド18を介して、硬化用光源11からの光が基板1のインプリント対象のショット領域上のレジストに照射される。
ステップS108では、制御部400による制御の下で、モールドヘッド16を上昇させて、基板1のインプリント対象のショット領域上の硬化したレジストからモールド18が引き離される。これにより、基板1のインプリント対象のショット領域には、モールド18のパターン面Pに対応したレジストパターンが残る。即ち、モールド18のパターン面Pに対応したパターンが基板1のインプリント対象のショット領域に形成あるいは転写される。モールド18を硬化したレジストから引き離す際には、レジストパターンが破断しないように、モールド18のパターン面Pにかかるせん断力がレジストパターンの破断応力以下になるように、モールドヘッド16を上昇させる。
ステップS109では、制御部400は、基板1の処理対象と判断された全てのショット領域にパターンが形成されたかどうかを判断する。処理対象と判断された全てのショット領域にパターンが形成されていない場合には、次のショット領域にパターンを形成するために、ステップS103に移行する。処理対象と判断された全てのショット領域にパターンが形成されている場合には、S110に移行する。
ステップS110では、制御部400による制御の下で、基板1がインプリント装置100から搬出される。ステップS111では、制御部400は、インプリント処理で得られた処理データを、ネットワーク301を介して、統括コンピュータ300に送る。
ステップS112では、制御部400は、処理対象と判断された全ての基板1にインプリント処理を行ったかどうかを判断する。処理対象と判断された全ての基板1にインプリント処理を行っていない場合には、次の処理対象と判断された基板1にインプリント処理を行うために、ステップS102に移行する。処理対象と判断された全ての基板1にインプリント処理を行っている場合には、処理を終了する。
図3には、インプリント処理が模式的に示されている。図3(a)は、レジスト供給部23によってレジスト27aが供給された基板1のショット領域にモールド18のパターン面Pが接触を開始する前の状態を示している。図3(b)は、モールド18のパターン面Pと基板1のショット領域上のレジスト27bとが接触した状態を示している。この状態で、硬化用光源11からの光が基板1のショット領域上のレジストに照射される。これによって、レジスト27bが硬化する。図3(c)は、モールドヘッド16を上昇させて、基板1のショット領域上の硬化したレジスト27cからモールド18が引き離される様子を示している。これにより、基板1のショット領域には、モールド18のパターン面Pのパターンに対応したレジスト27cのパターンが残る。図3(d)は、モールド18のパターン面Pのパターンと、硬化後のレジスト27cを示している。モールド18のパターンは、基板1の上に形成すべき凸パターンに対応する凸形成パターン28と、基板に形成すべき凹パターンに対する凹形成パターン36とを有する。Pdは、パターン深さを表し、RLTは残膜厚(Residual Layer Thickness: RLT)を表す。
図4は、図1に示された制御部400の構成の一部が例示されている。制御部400は、第1取得部401、第2取得部402、計算部403および生成部404を含みうる。第1取得部401は、ユーザーインターフェース34を介してユーザーから、または、ネットワーク301を介して統括コンピュータ300から、基板の加工領域を示す領域情報を取得し、それを計算部403に伝達する。領域情報は、基板における有効領域と無効領域とを識別するための情報である。有効領域は、インプリント処理によってパターンが形成されるべき領域であり、無効領域は、基板の表面領域のうち有効領域以外の領域であり、例えば、有効領域の表面よりも低い表面を有する加工領域である。第2取得部402は、ユーザーインターフェース34を介してユーザーから、または、ネットワーク301を介して統括コンピュータ300から、閾値情報を取得し、それを生成部404へ伝達する。閾値情報は、後述の基準としての閾値を示す情報である。
計算部403は、領域情報に基づいて、基板の複数のショット領域から選択されたショット領域中の有効領域の大きさを評価するための指標を求める。ここで、計算部403は、領域情報の他、基板の複数のショット領域からインプリント対象として選択されたショット領域の大きさおよび位置に基づいて指標を求めるように構成されうる。生成部404は、計算部403が求めた指標が基準を満たしているかどうかに応じて、インプリン処理に関する動作を制御するための制御情報を生成する。
図11に例示されるテーブルTBLは、生成部404によって生成された制御情報の一例を提供する。テーブルTBLは、複数のショット領域のそれぞれに対するインプリント処理をスキップするかどうかを示す情報をショット領域ごとに有しうる。
図5は、ユーザーインターフェース34が提供するインターフェース画面を例示している。ユーザーインターフェース34は、入出力デバイスによって構成されうる。入出力デバイスは、例えば、ディスプレイ、タッチパネル、キーボードおよびポインティングデバイスの全部または一部を含みうる。インターフェース画面は、ユーザーが領域情報を入力するための入力部501と、ユーザーが閾値情報を入力するための入力部502とを含みうる。領域情報は、基板における有効領域と無効領域とを識別するための情報である。無効領域と有効領域とは排他的な領域であるので、領域情報は、例えば、無効領域を示す情報として与えられうる。この場合、無効領域を示す領域情報に基づいて、有効領域を特定することができる。逆に、領域情報は、有効領域を示す情報として与えられてもよい。この場合、有効領域を示す領域情報に基づいて、無効領域を特定することができる。閾値情報は、例えば、百分率で与えられうるが、他の形式で与えられてもよい。図5に示された例では、領域情報として、無効領域を示す情報が、基板の外側エッジからの半径方向の距離で与えられている。また、図5に示された例では、閾値情報は、ショット領域に対する有効領域の非率を示す百分率で与えられている。
図6は、基板の外側エッジと基板上の複数のショット領域のレイアウト(ショットレイアウト)の関係を示す図である。図6に示された矩形領域は、ショット領域であり、矩形領域の中に示された番号は、ショット領域を特定するショット領域番号である。この明細書では、モールドのパターン領域は、インプリント処理によって基板の上に転写すべきパターンが形成された領域として定義され、ショット領域は、パターン領域と同一の形状を有する領域として定義される。よって、全てのショット領域は、同一の形状および同一の面積を有する。
通常、1つのショット領域は、複数のチップ領域を有する。そこで、基板の周辺部に配置された欠けショット領域であっても、基板の有効領域内に1以上のチップ領域を含む場合には、インプリント処理がなされうる。この明細書では、欠けショット領域は、その一部分が基板の有効領域の外に食み出しているショット領域として定義され、完全ショット領域は、その全体が基板の有効領域に収まっているショット領域として定義される。図6において、ショット領域番号5が与えられたショット領域37は、欠けショット領域である。欠けショット領域と基板の有効領域との重複部分の面積は、完全ショット領域と基板の有効領域との重複部分の面積より小さい。
図7、図8は、図6に示された欠けショット領域37と、基板の外側エッジと、無効領域Lと、欠けショット領域37における有効領域39とを例示している。図7、図8に示された例では、基板1は、周辺部に無効領域としての加工領域を有し、加工領域は、基板1の外側エッジから基板1の中心方向への距離がL[mm]以内の領域である。ショット領域の有効領域占有率は、以下の(式1)で与えられうる(式1)で与えられる。有効領域占有率は、ショット領域中の有効領域の大きさを評価するための指標の一例である。有効領域占有率は、モールドのパターン領域の面積(=ショット領域の面積)に対するショット領域中の有効領域の面積の比率と等価である。
有効領域占有率 = (有効領域の面積/ショット領域の面積)×100 [%] ・・・(式1)
ショット領域の面積 = A[mm] × B[mm] ・・・(式2)
但し、a、bは、基板の中心を(0,0)とした場合の有効領域と無効領域との境界線38とショット領域が交点する点のx座標、rは境界線38の半径、Yはショット領域の底辺のY座標である。ショット領域の面積は、モールドのパターン領域の面積と等しい。
本実施形態では、無効領域が基板の周辺部に設けられる例が説明されているが、無効領域は、基板の周辺部に限られず、基板のどの位置に設けられてもよい。
図9は、無効領域としての加工領域が基板1の周辺部に設けられている例を示す断面図である。無効領域としての加工領域40は、有効領域の表面よりも低い表面を有する。よって、有効領域と無効領域との間に段差が形成されている。段差の高さは、例えば、1[μm]から100[μm]までの範囲内でありうる。
図10は、図2のステップS100の処理、即ち、制御情報を生成する生成処理の流れを示すフローチャートである。ステップS200では、第1取得部401は、ユーザーインターフェース34を介してユーザーから、または、ネットワーク301を介して統括コンピュータ300から、領域情報を取得し、それを計算部403へ伝達する。この領域情報は、図7、図8および図9に示されたLに相当する情報である。
一例において、領域情報は、不図示の加工装置から、基板識別情報またはロット識別情報と対応付けて統括コンピュータ300に提供され、統括コンピュータ300は、領域情報と基板識別情報またはロット識別情報とを対応付けて管理する。統括コンピュータ300は、基板識別情報またはロット識別情報に対応する基板またはロットがインプリント装置100によって処理される際に、基板識別情報またはロット識別情報に対応する領域情報を統括コンピュータ300に提供するように構成されうる。
ステップS201では、第2取得部402は、ユーザーインターフェース34を介してユーザーから、または、ネットワーク301を介して統括コンピュータ300から、閾値情報を取得し、それを生成部404へ情報を伝達する。この閾値情報によって与えられる閾値は、(式1)に従って計算される有効領域占有率がインプリント処理を実行するために十分であるか否かを判定するための基準となる。この閾値は、個々の基板、個々のロットによって異なりうるものであり、ユーザー(オペレータ)あるいは統括コンピュータ300により、任意に設定されうる。例えば、使用されるレジストの粘性が大きく、硬化されたインプリント材からのモールドの分離に要する力(以下、分離力)が大きいプロセスにおいては、有効領域占有率が分離力に影響する度合いが大きい。よって、この場合には、閾値が大きめに設定されうる。逆に、使用されるレジストの粘性が小さく、分離力が小さいプロセスにおいては、有効領域占有率が分離力に影響する度合いが小さい。よって、この場合には、閾値が小さめに設定されうる。つまり、レジストの粘性、或いはその他のプロセス条件によって、有効領域占有率が同じであっても、インプリント処理に与える影響が異なることを意味する。この差を吸収するパラメータとして閾値情報を変更可能とすることで、きめ細かいインプリント制御が可能となる。
レジスト粘性、或いはその他のプロセス条件に差異が無い状況でインプリント装置100が運用される場合は、インプリント装置100が閾値情報を固定値として保有してもよい。
ステップS202では、計算部403は、考慮対象であるショット領域の大きさ(図7または図8のA[mm]およびB[mm])、該ショット領域の中心の位置の座標情報C(x,y)を取得する。これらの情報は、例えば、ユーザーインターフェース34を介してユーザーから、または、ネットワーク301を介して統括コンピュータ300から取得することができる。そして、ステップS203では、計算部403は、(式1)〜(式3)に従って有効領域占有率(指標)を計算する。
ステップS204では、生成部404は、ステップS203で計算した有効領域占有率(指標)と閾値情報によって与えられる閾値との大小関係を比較する。そして、有効領域占有率が閾値情報によって与えられる閾値より大きい場合は、ステップS206へ進む。一方、有効領域占有率が閾値情報によって与えられる閾値と同じまたは小さい場合は、ステップS205へ進む。
ステップS205では、生成部404は、考慮対象のショット領域に対するインプリント処理をスキップするように、テーブルTBL(図11)、即ちインプリント処理を制御する制御情報を更新するする。この更新は、例えば、スキップするか否かを示すフラグFlagの値を、スキップすることを示す”0”に設定するものである。一方、ステップS206では、生成部404は、考慮対象のショット領域に対するインプリント処理をスキップしないように、テーブルTBL(図11)、即ちインプリント処理を制御する制御情報を更新する。この更新は、例えば、例えば、スキップするか否かを示すフラグFlagの値を、スキップしないことを示す”1”に設定するものである。
ステップS207では、制御部400は、全ショット領域についてステップS203〜S206の処理が終了したかどうかを判定し、全ショット領域について処理が終了した場合には、制御情報の決定処理を終了し、そうでない場合はステップS203へ進む。
有効領域占有率が閾値情報によって与えられる閾値と同じまたは小さい場合は、有効領域占有率が閾値情報によって与えられる閾値(有効占有率)が基準を満たさないことを意味する。制御部400は、指標が基準を満たさない場合にエラー表示を行うように構成されてもよい。また、制御部400は、指標が基準を満たしていない場合に、エラー表示を行うとともに、処理を継続するかどうかをユーザーに選択させるように構成されてもよい。これにより、ユーザーは、指標が基準を満たさないショット領域に対するインプリント処理をスキップするかどうかを選択することができる。
図11を参照しながらテーブルTBLについて例示的に説明する。テーブルTBLは、インプリント処理を制御する制御情報を提供する。テーブルTBLは、ロットを構成する複数の基板のそれぞれの複数のショット領域のそれぞれに対するインプリント処理をスキップするかどうかを示す情報を含む。換言すると、テーブルTBLは、各ロットの各基板の各ショット領域に対するインプリント処理をスキップするかどうかを示す情報を含む。テーブルTBLは、ロットを識別するロット識別子(Lot ID)、基板(ウエハ)を識別する基板識別子(Wafer ID)、ショット領域を識別するショット番号(Shot No.)を含む。また、テーブルTBLは、ショット領域に対するインプリント処理をスキップするかどうかを示すフラグ(Flag)を含む。テーブルTBLを構成する項目のうちフラグ以外の値(データ)は、例えば、統括コンピュータ300から提供され、フラグ(Flag)の値は、図10に示される生成処理において決定されうる。あるいは、フラグ(Flag)の値は、デフォルトで、インプリント処理をスキップしないこと(つまり、インプリントを実行すること)を示す値に設定されていてもよい。この場合、図10に示される生成処理において、インプリント処理をスキップするショット領域のフラグの値が、インプリント処理をスキップすることを示す値に変更されうる。図11の例では、インプリント処理を実行するショット領域のフラグ(Flag)は”1”とされ、インプリント処理をスキップするショット領域のフラグ(Flag)は”0”とされる。
ここで、複数のショット領域のそれぞれについて求められた複数の有効領域占有率のそれぞれが閾値より大きいことは、複数のショット領域のそれぞれについて求められた指標が基準を満たしていることを示している。また、複数のショット領域のそれぞれについて求められた複数の有効領域占有率の中に閾値以下のものが存在することは、複数の指標の中に基準を満たさないものが存在することを示している。よって、上記の制御部400の動作は、複数のショット領域のそれぞれについて求められた複数の指標のそれぞれが基準を満たしている場合に、予め準備された制御情報(具体的には、基板の全ショット領域に対してインプリント処理を行うことを指示する制御情報。)に従った動作を実行するものとして理解するこができる。また、上記の制御部400の動作は、該複数の指標の中に基準を満たさないものが存在する場合に、予め準備された制御情報を、指標が基準を満たしていないショット領域に対してインプリント処理を行わないように変更し(これにより、変更制御情報を生成する。)、変更制御情報に従った動作を実行するものとして理解することができる。
図11の例では、ロット識別子(Lot ID)がd1001のロットは、基板識別子(Wafer ID)が4852、4853、4854、4855の4枚の基板で構成される。ロット識別子(Lot ID)がd1001のロットでは、全ての基板の全てのショット領域のフラグ(Flag)が”1”となっているので、全ての基板の全てのショット領域に対してインプリント処理がなされる。
また、図11の例では、ロット識別子(Lot ID)がd1002のロットは基板識別子(Wafer ID)が2901、2902、2903の3枚の基板で構成される。ロット識別子(Lot ID)がd1002のロットの各基板のショット番号(Shot No.)が1、4、29、32のフラグ(Flag)が”0”となっているので、これらのショット番号のショット領域に対するインプリント処理がスキップされる。図6には、ロット識別子(Lot ID)がd1002のロットにおけるショットレイアウトが例示されている。
上記の例では、スキップするように制御情報によって指定されているショット領域に対するインプリント処理がスキップされるが、これは一例に過ぎない。スキップするように制御情報によって指定されているショット領域を含み基板、または、スキップするように制御情報によって指定されているショット領域を含むロットに対するインプリント処理がスキップされてもよい。どの範囲でスキップを実行するかは、予めユーザーインターフェース34を介してユーザーから、または、ネットワーク301を介して統括コンピュータ300から設定されうる。また、スキップするように指定されているショット領域の数が基板の中に所定数以上存在する場合に、当該基板に対するインプリント処理をスキップしてもよい。
以下、本発明の第2実施形態を説明する。第1実施形態では、図11に示されるテーブルTBLに追加される情報は、フラグ(Flag)の値のみである。第2実施形態では、制御部400(生成部404)は、フラグの値の他、有効領域占有率をテーブルTBLに追加する。
また、第2実施形態では、図2のステップS108において、硬化したレジストパターンからモールド18を引き離す際に、制御部400は、レジストパターンが破損しないように、モールドヘッド16の上昇を制御する。具体的には、制御部400は、モールド18のパターン面Pにかかるせん断力がレジストパターンの破断応力以下になるように、モールドヘッド16によるモールドチャック17(換言すると、モールド18)の上昇駆動を制御する。ここで、制御部400は、モールドヘッド16によるモールドチャック17の上昇駆動を制御するための駆動プロファイル(駆動制御情報)をショット領域の有効領域占有率に応じて決定する。
図12は、モールドヘッド16によるモールドチャック17の上昇駆動を制御する駆動プロファイル(駆動制御情報)を例示している。有効領域占有率が大きい場合は、同一の駆動プロファイルでモールドチャック17(モールド18)を駆動した場合に発生するせん断力が大きくなる。逆に、有効領域占有率が小さい場合は、同一の駆動プロファイルでモールドチャック17(モールド18)を駆動した場合に発生するせん断力が小さくなる。そこで、有効領域占有率が基準値より大きい場合は、制御部400は、駆動プロファイルα(第1駆動制御情報)を選択する。一方、有効領域占有率が該基準値と等しいか小さい場合は、制御部400は、駆動プロファイルαとは異なる駆動プロファイルβ(第2駆動制御情報)を選択する。ここで、駆動プロファイルαは、モールドチャック17(モールド18)の最大駆動速度が、駆動プロファイルβよりも小さい。ここでは2種類の駆動プロファイルが例示されているが、更に多くの駆動プロファイルが提供されてもよい。このように複数の駆動プロファイルから有効領域占有率に応じて選択された駆動プロファイルに従ってモールド18を駆動することによって、意プリント不良を低減し、レジストパターンを安定して形成することができる。また、全体のスループットを向上させることもできる。駆動プロファイルは、有効領域占有率をパラメータとする数式によって与えられてもよい。
以下、本発明の第3実施形態を説明する。第1実施形態では、制御部400が有効領域占有率を計算し、その有効領域占有率に従って、インプリント処理を含む動作を実行する。このような制御部400の機能の全部または一部は、統括コンピュータ300(情報処理装置)に組み込まれてもよい。
一例において、テーブルTBLは、外部装置あるいは情報処理装置としての統括コンピュータ300によって生成され、統括コンピュータ300からネットワーク301を介してインプリント装置100の制御部400に送信されうる。制御部400は、統括コンピュータ300から受信したテーブルTBLを処理対象のロットまたは基板の処理レシピと関連付けてデータベースに格納するように構成されうる。
図13は、第3実施形態のインプリント装置100の動作を示すフローチャートである。ステップS300では、制御部400は、予め統括コンピュータ300から受信した複数のテーブルTBLの中から、処理対象のロットまたは基板に対応するテーブルTBLを抽出する。そして、制御部400は、その後、このテーブルTBLに従って、ステップS101以降の処理を第1実施形態と同様に実行する。第3実施形態では、テーブルTBLの生成を制御部400が行わないので、制御部400の演算処理に関わる負荷を軽減することが可能となる。
以下、本発明の第4実施形態を説明する。第1実施形態では、第1取得部401がユーザーインターフェース34を介してユーザーから、または、ネットワーク301を介して統括コンピュータ300から、基板の加工領域を示す領域情報を取得する。領域情報は、基板加工装置(不図示)に指示した加工情報、または基板加工装置から提供される情報に基づいて取得することができる。しかし、基板加工装置が誤った情報を提供した場合、誤った情報に基づいて制御情報が生成されるので、モールドまたは基板が損傷を受ける可能性や、インプリント不良が発生する可能性がある。
そこで、領域情報を受け取ることなく、インプリント装置100内の計測部(基板の表面の高さを計測する機能を有する計測部)、例えば、アライメント計測部12またはオフアクシススコープ24を用いて基板の表面高さを計測してもよい。この場合、第1取得部401は、計測部による計測結果に基づいて領域情報を取得することができる。計測は、基板がインプリント装置100に搬入された後、インプリント処理を実行する前に実施されうる。この計測結果に基づいて生成された領域情報は、例えば、基板識別情報と対にして保管されうる。インプリント処理を実行する際、保管された領域情報を読み出すことで、図2に例示される動作と同様の動作を実行することができる。
以下、上記のインプリント装置を使って物品を製造する物品製造方法を説明する。物品としてのデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)の製造方法は、上述したインプリント装置を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板)にパターンを形成する工程を含む。さらに、該製造方法は、パターンを形成された基板をエッチングする工程を含みうる。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、該製造方法は、エッチングの代わりに、パターンを形成された基板を加工する他の処理を含みうる。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも一つにおいて有利である。