本発明の好ましい実施の形態の詳細について、添付の図面をもとに、以下説明する。
[第1の実施の形態]
図4に本実施例のナノインプリント微細加工装置の構成を示す。図4において、凹凸からなる転写パターンが描かれた原版としてのモールド1を、モールド保持手段としてのモールド台2に固定する。モールド台2は、モールドステージ3に搭載されている。モールド押し付け手段としての押し付けステージ5はフレーム10に取り付けてあり、モールドステージ3を図の+Z、−Z方向に駆動することにより押し付け加工を行う。押し付けステージ5による押し付け力は、ひずみゲージやバネ秤といった力計測手段4により計測される。押し付けステージ5は、リニアモーターやエアーで駆動される。
被転写ターゲットとなるウエハ6には、パターニングを形成するレジスト7を塗布する。レジストには例えばPMMA(polymethylmethacrylate)を用いる。ウエハ6はウエハチャック8に保持され、ウエハチャック8はウエハステージ9上に搭載されている。ウエハステージは図のX、Y、Z、ωx、ωy、ωzの6軸に対して自由度を有しており、ウエハ位置を精密に制御することができる。
モールド台2近傍にはモールド温度計測手段11と、モールド温度調整手段12が設置されている。モールドの温度をモールド温度計測手段11により計測し、モールド温度調整手段12により調整することができる。
ウエハチャック8にはウエハ温度計測手段13と、ウエハ温度調整手段14が設置されている。ウエハの温度をウエハ温度計測手段13により計測し、ウエハ温度調整手段14により調整することができる。ここで、ウエハ温度計測手段13としては、例えば、熱電対、白金温度計などを使用してもよく、ウエハ温度調整手段14としては、ヒーター、ペルチェ素子、水等の流体を用いた温調を使用しても良い。
転写前には、不図示の位置ずれ計測手段により、モールド1とウエハ6の相対的な位置ずれを計測し、補正する。モールド1とウエハ6の位置ずれ計測手段は、公知の技術を用いればよく、その位置ずれ補正はウエハステージ9で行う。
次に図5を用いて、本実施例の制御ブロックを説明する。
全体制御部(S0501)は、加工装置全体のシーケンスを制御するとともに、装置外部とのインターフェース、オペレータへのマンマシンインターフェースを提供する。
搬送制御部(S0511)は、全体制御部(S0501)からの指令により、ウエハ搬送部(S0512)とモールド搬送部(S0513)を駆動制御する。
ウエハステージ制御部(S0509)は、全体制御部(S0501)からの指令により、ウエハステージ駆動部(S0510)を駆動制御する。
モールド制御部(S0502)は、全体制御部(S0501)からの指令により、モールド押し付け手段(S0506)、モールド温度調整手段(S0507)、ウエハ温度調整手段(S0508)を制御する。
なお、図5は本実施例の制御ブロックの一例を示したに過ぎず、同じ目的を達成するための他の構成はいくつも存在する。
次に図1〜3を用いて、本実施例の動作を説明する。
図1は、本実施例のナノインプリント加工装置を用いた微細加工方法の全体加工フローである。
S0101は、図4には不図示のモールド搬送系を用いて、モールド1を加工装置外からモールド台2まで搬送する工程である。
S0102、S0107は、図4には不図示のウエハ搬送系を用いて、ウエハ6を加工装置外からウエハチャック8まで搬送する工程である。
本発明の要点は、ナノインプリント加工フローにおいて、S0102〜S0106の条件だし工程を行うことにある。
すなわち、本加工ウエハ押し付け加工工程S0108を行う前に、S0102〜S0106の工程により加工の最適条件を求めておくことが、要点である。
S0102〜S0104の条件だし工程を終えた条件だし用ウエハは、ナノインプリント加工装置外に搬出され、条件だしウエハ後処理工程S0105を行う。
後処理されたウエハは、観察装置で観察され、加工条件の最適値が決定される(S0106)。
その最適な加工条件を全体制御部(S0501)に対して設定した後、本加工ウエハを搬入し(S0107)、本加工ウエハ押し付け加工(S0108)を行った後、加工装置外に搬出する(S0109)。S0107〜S0109の本加工工程は、必要な枚数だけ繰り返し行う。
図2を用いて、本実施例の条件だしウエハ押し付け加工工程(S0103)の詳細な動作を説明する。
まず条件だしを行う加工パラメータを設定する(S0103−01)。本実施例においては、押し付け力、モールド温度、ウエハ温度の3種類とそれぞれの駆動過渡特性を加工パラメータとしている。押し付け力は、押し付け加工において最も根本的なパラメータである。モールド温度、ウエハ温度はモールド、ターゲットの弾性を左右するパラメータであり、材質により適した温度が存在するはずである。本実施例では、押し付け力と材質の弾性の関係に着目し、上記パラメータを採用したものである。また、押し付け力、モールド温度、ウエハ温度を駆動する際に、その過渡特性も制御することにより、より精密な加工を行うことができる。特に押し付け力の過渡特性は、材質の弾性に合わせて設定することが望ましい。
加工パラメータは、図5の全体制御部(S0501)に対して、オペレータが設定するか、あらかじめ作成したジョブファイルをロードすることにより行う。
次に加工条件計測工程(S0103−02)では、その時点の押し付け力、モールド温度、ウエハ温度を計測する。以下図5と対応して説明すると、それぞれ力計測手段(S0503)、モールド温度計測手段(S0504)、ウエハ温度計測手段(S0505)によりモールド制御部(S0502)が計測値を取得し、全体制御部(S0501)に通知する。
加工条件調整工程(S0103−03)では、全体制御部(S0501)がモールド制御部(S0502)に対して加工条件計測工程で計測した計測値に基づいて定めた加工パラメータ値を通知し、駆動を指令する。モールド制御部(S0502)は、指令されたパラメータ値によって、モールド押し付け手段(S0506)、モールド温度調整手段(S0507)、ウエハ温度調整手段(S0508)を駆動する。
次に、加工条件計測工程(S0103−04)では、加工条件調整工程(S0103−03)で駆動された結果の押し付け力、モールド温度、ウエハ温度を再度計測し、全体制御部(S0501)に通知する。
次の加工条件比較(S0103−05)のステップにおいて、全体制御部(S0501)は、設定された駆動目標値と駆動後の計測値を比較する。その差分が、あらかじめ決められた許容範囲内の場合は、条件だし加工終了判断(S0103−06)ステップに進む。差分が許容範囲外の場合は、加工条件調整工程(S0103−03)に戻り、決められた回数以内でリトライ動作を行う。リトライを行いたくない場合は、回数の上限を1回に設定する。
条件だし加工終了判断(S0103−06)ステップでは、条件だし工程を終了するかどうか判断し、まだ終了しない場合は加工パラメータ設定(S0103−01)ステップに戻り、異なるパラメータで前述の動作を繰り返し行う。その際、別のショットに移動することが可能である。
図3にウエハ押し付け本加工工程(S0108)のフローを示す。本実施例においては、条件だしウエハ押し付け加工工程(S0103)と同様、計測→駆動→計測という手順で行っている。より加工時間を重視する場合には、計測を省略し、S0108−06と07のみを実行することも可能である。
なお、本実施例の別の形態として、ウエハステージ側のZ軸を駆動することにより押し付け加工を行うものも考えられる。
また、本実施例の構成はウエハの処理、加工条件設定を装置外部で行うものであったが、それを同一装置内で処理可能に構成することは当然可能である。
[第2の実施の形態]
図8に本発明の第二の実施例のナノインプリント微細加工装置の構成を示す。
なお、ウエハ面を複数の領域に分け、それぞれの領域に対して条件だしを行なっている点が、本実施例と第一の実施例の相違点である。
レーザー干渉計21は、装置の基準点に対するモールド台2の位置を計測する。それぞれ3点の位置を計測しているので、モールド台2のZ、ωx、ωyの情報が得られる。またウエハ高さ計測手段22は、モールドステージ基部の不可動部分に固定されており、モールドステージ基部を基準としてウエハ面上の1点のZ距離を計測することができる。ウエハステージのX、Y軸を駆動してウエハ面上の複数点を計測することにより、ウエハ面のZ、ωx、ωy情報を求めることができる。以上の情報から、モールドステージ3とウエハステージ9の相対的なZ、ωx、ωyの関係を求めることができる。また、本実施例においてモールドステージ3は、モールドステージ駆動部15により、Z、ωx、ωyの3軸に対して自由度を有するものとしている。本実施例の押し付け動作は、モールドステージ3のZ駆動機構により行う。
次に図9を用いて、本実施例の制御ブロックを説明する。
ウエハステージ制御部(S0909)は、全体制御部(S0901)からの指令により、ウエハステージ駆動部(S0910)を駆動制御する。本実施例を特徴づける点として、次の動作を行うことを明示しておく。
ウエハステージ制御部(S0909)は、ウエハ高さ計測手段(S0922)からウエハ上の決められた3点以上の計測値を取得し、ウエハ面上をある数に分割した分割面のZ、ωx、ωyを求める。ウエハを分割した分割面の最小の数は1であり、その場合はウエハ全面を1組の「Z、ωx、ωy]座標で代表することになる。
求められたウエハ面のZ、ωx、ωy情報は、仮想基準平面からの差分値に換算されて全体制御部(S0901)に格納される。
モールド制御部(S0902)は、全体制御部(S0901)によって、モールドステージのZ、ωx、ωyの目標値を指示される。それに従って、モールドステージのZ、ωx、ωy軸駆動を制御する。
なお、図9は本実施例の制御ブロックの一例を示したに過ぎず、同じ目的を達成するための他の構成はいくつも存在する。
本実施例の加工全体フローは、図1とほぼ同様であるが、ウエハ押し付け加工工程において異なる。
図6を用いて、本実施例の条件だしウエハ押し付け加工工程(S0103)の詳細な動作を説明する。
まず、ウエハ高さ計測手段を用いて、ウエハ上を例えば10mm×10mmに分割した格子点の高さを計測する(S0103−11)。格子のピッチは、モールド面積、ウエハ平面度等から決めればよく、この寸法に限らない。ウエハステージをXY方向に駆動して、計測手段の計測点にウエハの計測ポイントを合わせて計測を行う動作を、必要ポイント分だけ繰り返す。計測した結果は、ウエハステージ制御部(S0909)から全体制御部(S0901)に通知する。その情報から全体制御部(S0901)は、ウエハ面上のZマッピングデータを作成する。
次に駆動条件だしを行う加工パラメータを設定する(S0103−12)。本実施例においては、押し付け加工するエリア中心のウエハのZは、常に一定の値になるように制御する。前記ウエハエリアのωx、ωyは、モールド表面に対して平行になることを想定して、設定、制御を行う。この場合、モールド表面は底面と平行であると想定して、仮想的なモールド表面に対してウエハエリアのωx、ωyを合わせている。
モールドのωx、ωyは、モールド表面の角度を補正するためのパラメータである。これは、モールド底面を基準面としてモールド台に取り付けるので、モールド底面と表面の作成時の角度誤差による押し付け加工時の影響を取り除くためのものである。また、モールド表面とウエハ面は平行であることが望ましい場合が多いが、モールドの特性によっては、あえて角度をつけたほうが良好な結果が得られる場合が考えられる。その場合にも本実施例によってより好適な加工条件を求めることが可能である。
モールドのZは、本実施例の押し付け加工において、加工結果を最も左右する条件であるといえる。また、Z駆動の過渡特性もモールドの特性によって最適値が存在すると考えられる。
以上に鑑み、本実施例では、モールドZおよびその過渡特性、モールドωx、ωyを加工パラメータとしている。
次のウエハ座標駆動工程(S0103−13)では、全体制御部(S0901)は条件だし加工を行うウエハエリアを、前述のマッピングデータに基づき加工位置に駆動する。
次に、モールド駆動工程(S0103−13)では、全体制御部(S0901)は加工条件のモールドωx、ωyを先に駆動した後、加工条件のZおよびその過渡特性においてモールドを押し付け駆動する。
次のモールド押し付け解除工程(S0103−14)では、ウエハをステップ可能にするためにモールドZの押し付けを解除する。
別の条件での加工を行う時には、加工パラメータ設定ステップ(S0103−12)まで戻って必要な分だけ条件だし加工を行う。
なお、本実施例では、計測値によりウエハステージ位置、モールドステージ位置のサーボ制御を行っている。そのため、計測条件の確認ステップは省略している。
図7に本実施例のウエハ押し付け本加工工程(S0108)のフローを示す。各軸の駆動順序は、前述の条件だし加工工程(S0103)と同様であるので、説明は割愛する。
なお、本実施例の別の形態として、ウエハステージ側のZ軸を駆動することにより押し付け加工を行うものも考えられる。
また、本実施例の別の形態として、モールド表面の角度を計測する手段を設け、モールド表面の角度設定の情報として使用することも考えられる。
[第3の実施の形態]
本実施例の特徴は、加工の制御パラメータを押し付け力、加工の補正パラメータを押し付け力、計測パラメータをモールドとウエハ間の距離としたことにある。押し付け時の距離計測結果により、押し付け力を補正する。
図13に本実施例のナノインプリント微細加工装置の構成を示す。図13において、凹凸からなる転写パターンが描かれた原版となるモールド1を、モールド台2に固定する。モールド台2は、モールドステージ3に搭載されている。押し付けステージ5はフレーム10に取り付けてあり、モールドステージ3を図の+Z、−Z方向に駆動することにより押し付け加工を行う。押し付けステージ5による押し付け力は、力計測手段4により計測される。
被転写ターゲットとなるウエハ6には、パターニングを形成するレジスト7を塗布する。レジストには例えばPMMAを用いる。ウエハ6はウエハチャック8に保持され、ウエハチャック8はウエハステージ9上に搭載されている。ウエハステージは図のX、Y、Z、ωx、ωy、ωzの6軸に対して自由度を有しており、ウエハ位置を精密に制御することができる。
レーザー干渉計21は、装置の基準点に対するモールド台2の位置を計測する。それぞれ3点の位置を計測しているので、モールドステージ3のZ、ωx、ωyの情報が得られる。またウエハ高さ計測手段22は、モールドステージ基部の不可動部分に固定されており、モールドステージ基部を基準としてウエハ面上の1点のZ距離を計測することができる。ウエハステージのX、Y軸を駆動してウエハ面上の複数点を計測することにより、ウエハ面のZ、ωx、ωy情報を求めることができる。以上の情報から、モールドステージ3とウエハステージ9の相対的なZ、ωx、ωyの関係を求めることができる。また、本実施例においてモールドステージ3は、モールドステージ駆動部15により、Z、ωx、ωyの3軸に対して自由度を有するものとしている。本実施例の押し付け動作は、モールドステージ3のZ駆動機構により行う。
転写前には、不図示の位置ずれ計測手段により、モールド1とウエハ6のXY方向の相対的な位置ずれを計測し、補正する。モールド1とウエハ6の位置ずれ計測手段は、公知の技術を用いればよく、その位置ずれ補正はウエハステージ9で行う。
次に図14を用いて、本実施例の制御ブロックを説明する。
全体制御部(S1401)は、加工装置全体のシーケンスを制御するとともに、装置外部とのインターフェース、オペレータへのマンマシンインターフェースを提供する。
搬送制御部(S1408)は、全体制御部(S1401)からの指令により、ウエハ搬送部(S1409)とモールド搬送部(S1410)を駆動制御する。
ウエハステージ制御部(S1405)は、全体制御部(S1401)からの指令により、ウエハステージ駆動部(S1405)を駆動制御する。本実施例を特徴づける点として、次の動作を行うことを明示しておく。
ウエハステージ制御部(S1405)は、ウエハ高さ計測手段(S1406)からウエハ上の決められた3点以上の計測値を取得し、ウエハ面上をある数に分割した分割面のZ、ωx、ωyを求める。ウエハを分割する最小の数は1であり、その場合はウエハ全面を1組の「Z、ωx、ωy」座標で代表することになる。
求められたウエハ面のZ、ωx、ωy情報は、仮想基準平面からの差分値に換算されて全体制御部(S1401)に格納される。
モールド制御部(S1402)は、全体制御部(S1401)によって、モールドステージのZ、ωx、ωyの目標値を指示される。それに従って、モールドステージのZ、ωx、ωy軸駆動を制御する。
なお、図14は本実施例の制御ブロックの一例を示したに過ぎず、同じ目的を達成するための他の構成はいくつも存在する。
次に図11を用いて、本実施例の動作を説明する。
図11は、本実施例のナノインプリント加工装置の1ウエハに対する加工フローである。
S1101は、図13には不図示のモールド搬送系を用いて、モールド1を加工装置外からモールド台2まで搬送する工程である。その際、従前の工程により別のモールドがモールド台2に装着されている場合は、従前のモールドをとりはずしてから、使用するモールドを装着する。
S1102は、図13には不図示のウエハ搬送系を用いて、ウエハ6を加工装置外からウエハチャック8まで搬送する工程である。
S1103は、押し付け加工時の押し付け力目標値の初期値と、駆動補正量の初期値を設定する工程である。ここで、押し付け力目標値の初期値をF1、駆動補正量の初期を0に設定したとする。
次に本実施例の要点である、押し付け工程における駆動補正条件へのフィードバックについて説明する。
第1ショットの押し付け(S1104)を行った状態において、押し付け力はS1103で設定した初期値F1になっている。この状態で、ウエハ高さ計測(S1105)、モールド高さ計測(S1106)を行い、モールド基準面とウエハ基準面間の距離を算出する。これにより、所定の駆動力において、モールドがどれくらい押し込まれているかがわかる。ウエハ側もしくはモールド側が想定したよりも軟らかければ、より深く押し込まれ、想定したよりも硬ければ、より浅く押し込まれる。あらかじめ決められた押し付け力と距離の関係を参照して、この時の距離計測結果が許容範囲内かどうかを判断する(S1107)。なお、補正量は、目標値に対する距離計測結果によって決定をする。目標値を変更しなければ、補正量を変更しても距離の許容範囲は不変である。
例えば、図12に示すような条件をあらかじめ設定しておく。図12において、設計値の特性は曲線Cであり、曲線Aと曲線Bの間が許容範囲内である。許容範囲外の場合は、押し付け力目標値を補正する(S1108)。例えば当初の押し付け力目標値F1で押し付けた結果が点Z1となった場合には、距離が許容範囲外である。この状態から許容範囲内(距離がD1−DdからD1+Duの間)になるように補正する。設計曲線Cを参照して、距離がD1となるように駆動補正量△F1を設定する。次にS1104のステップに移行してF1+△F1=F2の力で押し付けを続行する。同様にウエハ高さ計測(S1105)、モールド高さ計測(S1106)を行う。その結果、この例では点Z2に移行した。距離はD1よりわずかにずれているが、許容範囲のD1−DdからD1+Duの間に入った。この動作を距離計測結果が許容範囲内になるまでループを繰り返す。ただし、図11には図示していないが、ループ回数には上限をもうけている。
第1ショットの押し付けが終了した後、所定ショット数に対する判定を行い(S1109)、残りのショットがあれば、押し付けを解除して第2ショット位置にウエハステージを駆動する(S1110)。第2ショットは、第1ショットで決定された補正量とF1の合計の力で押し付けを行う(S1104)。第2ショットのS1107の工程で、目標値はF1のままなので、第1ショットと同様に、距離の許容範囲はD1−DdからD1+Duの間となる。したがって、第1ショットと第2ショットの押し付けに関わる物理的要因がほとんど同じであれば、第2ショットは補正量の変更なしに工程が進むはずである。第3ショット以降、最終ショットまで同様の加工工程を行い、ウエハを装置外に搬出する(S1111)。
以上がウエハ1枚についての加工工程であるため、S1105、S1106、S1107の工程は省いてもよい。2枚目以降のウエハの加工に関して、モールドを交換する必要がなければ、モールド搬入(S1101)の工程は省略されることになる。
図12で示した特性は、説明のための一例であり、実際にはモールドの特性、加工精度等に合わせて設定すればよい。
なお、本実施例の別の形態として、ウエハステージ側のZ軸を駆動することにより押し付け加工を行うものも考えられる。この場合にはウエハステージが押し付け手段となる。
また、押し付け力の目標値として、静的な値だけでなく、時間変化も考慮した特性として指定することも考えられる。ただし当該ショットでのフィードバックは難しいので、次ショット以降の加工条件にフィードバックすることになる。
[第4の実施の形態]
本実施例の特徴は、加工モールドを基準ターゲットに押し付けるモールド較正工程、および、被加工ウエハに基準モールドを押し付けるウエハ較正工程を有することにある。加工の制御パラメータは押し付け力である。較正工程で求めた、駆動力に対するモールドとウエハ間の距離情報により、加工の制御パラメータを補正する。
図16に本実施例のナノインプリント微細加工装置の構成を示す。第3の実施の形態と重複する部分は、説明を省略する。
図16において、基準モールド31は基準モールド台32に保持されている。
モールド台32は、基準モールド31の交換が可能な機構を有している。基準モールドには、ウエハの較正に好適な材質、形状のものを使用する。例えば、加工時に使用するモールドと同じ材質のものを使用する。基準ウエハ33は基準ウエハ台35に保持されており、基準ウエハ台35は、基準ウエハ33の交換が可能な機構を有している。本実施例では、被加工ターゲットとしてウエハが用いられるので、それにあわせてウエハを切り出したものを基準ターゲットとして使用している。基準ウエハにはレジスト34を塗布してもよいし、もちろん目的によっては塗布しなくてもよい。
レーザー干渉計21は、装置の基準点に対するモールド台2の位置を計測する。この計測結果により、モールド1、基準モールド31の高さ情報を取得することができる。
ウエハ高さ計測手段22は光学式の距離計測センサである。ウエハ6表面および基準ウエハ35表面の高さを計測することができる。
次に図15を用いて、本実施例の動作を説明する。
図15は、本実施例のナノインプリント加工装置の1ウエハに対する加工フローである。
S1501は、図16には不図示のモールド搬送系を用いて、モールド1を加工装置外からモールド台2まで搬送する工程である。もし、従前の工程により別のモールドがモールド台2に装着されている場合は、従前のモールドをとりはずしてから、使用するモールドを装着する。
S1502は、押し付け加工時の押し付け力目標値の初期値を設定する工程である。
S1503は、モールド1を基準ウエハ33に押し付け、モールド押し付け特性の較正をする工程である。ウエハステージ9をXY方向に駆動し、基準ウエハ33を加工モールド1に対面させる。次に所定の押し付け力にて加工モールド1を基準ウエハ33に押し付ける。その時の基準ウエハ33の高さとモールド1の基準面の高さを計測し、モールド1基準面とウエハ間の距離を算出する。これにより、所定の駆動力において、モールドがどれくらい押し込まれているかがわかる。モールド側が想定したよりも軟らかければ、より深く押し込まれ、想定したよりも硬ければ、より浅く押し込まれる。あらかじめ決められた押し付け力と距離の関係を参照して、モールドの要因による押し付け力の補正を行う。補正の方法は第1の実施例に記載したものと同様である。
S1504は、図16には不図示のウエハ搬送系を用いて、ウエハ6を加工装置外からウエハチャック8まで搬送する工程である。
S1505は、被加工ウエハ6に基準モールド31を押し付け、モールド押し付け特性の較正をする工程である。ウエハステージ9をXY方向に駆動し、被加工ウエハ6を基準モールド31に対面させる。この際、図16の構成においては、−X側にウエハステージを移動し、ウエハ6上の+X側部分に基準モールド31を対面させることにより、ウエハ高さ計測手段22でウエハ6表面を計測することができる。次に所定の押し付け力にて基準モールド31を被加工ウエハ6に押し付ける。その時の被加工ウエハ6の高さと基準モールド31の基準面の高さを計測し、基準モールド31基準面と被加工ウエハ6間の距離を算出する。これにより、所定の駆動力において、モールドがどれくらい押し込まれているかがわかる。ウエハ側が想定したよりも軟らかければ、より深く押し込まれ、想定したよりも硬ければ、より浅く押し込まれる。あらかじめ決められた押し付け力と距離の関係を参照して、ウエハの要因による押し付け力の補正を行う。補正の方法は第1の実施例に記載したものと同様である。
以上の動作により、モールド要因およびウエハ要因による押し付け特性は較正される。
S1506のモールド押し付け工程では、補正された押し付け力目標値で加工を行う。以降、所定ショット数の加工を行って、加工済みのウエハを装置外に搬出する(S1508)。
以上がウエハ1枚についての加工工程である。2枚目以降のウエハの加工に関して、モールドを交換する必要がなければ、S1501〜S1503の工程は省略されることになる。
なお、本実施例では、加工の制御パラメータを押し付け力とし、この押し付け力を補正したが、加工の制御パラメータをモールドとウエハ間の距離(間隔)としても良い。
[第5の実施の形態]
本実施例の特徴は、加工の制御パラメータを押し付け力、加工の補正パラメータを押し付け力、計測パラメータをモールド温度としたことにある。モールド温度の所定温度からのずれ量により押し付け力を補正する。
図18に本実施例のナノインプリント微細加工装置の構成を示す。第3の実施の形態と重複する部分は、説明を省略する。
モールド温度計測手段41は、モールド1の温度を計測することができる。
次に図17を用いて、本実施例の動作を説明する。
図17は、本実施例のナノインプリント加工装置の1ウエハに対するフローである。
S1701は、図18には不図示のモールド搬送系を用いて、モールド1を加工装置外からモールド台2まで搬送する工程である。その際、従前の工程により別のモールドがモールド台2に装着されている場合は、従前のモールドをとりはずしてから、使用するモールドを装着する。
S1702は、図18には不図示のウエハ搬送系を用いて、ウエハ6を加工装置外からウエハチャック8まで搬送する工程である。
S1703は、押し付け加工時の押し付け力目標値の初期値と、駆動補正量の初期値を設定する工程である。ここで、押し付け力目標値の初期値をF3、駆動補正量の初期を0に設定したとする。
S1704は、被加工ウエハ6にモールド1を押し付ける工程である。この状態で、モールド温度計測(S1705)を行う。この温度を所定の温度と比較し、あらかじめ決められた温度ずれ量と押し付け力補正量の関係を参照して、この時の温度計測結果が許容範囲内かどうかを判断する(S1706)。なお、補正量は、目標値に対する距離計測結果によって決定をする。目標値を変更しなければ、補正量を変更しても距離の許容範囲は不変である。
例えば、図19に示すような条件をあらかじめ設定しておく。図19において、温度ずれ量に対する押し付け力補正量の特性は曲線Dであり、想定温度からのずれは−Tu〜+Tdの範囲が許容範囲である。許容範囲外の場合は、補正量を設定する(S1707)。例えば、当初の押し付け力目標値F3で押し付けたときの温度ずれ量が、△T3となったとする(点Z3)。この場合は温度ずれ量が許容範囲外になっている。曲線Dより押し付け力の補正量を読むと△F3なので、押し付け力の補正値として△F3を設定する。次にS1704のステップに移行してF3+△F3の力で押し付けを続行する。再度モールド温度計測(S1705)を行い、許容範囲内かどうかを判断する(S1706)。このループの繰り返しを、温度が許容範囲内に入るまで行う。以上で1ショット目の押し付け加工が完了する。なお容易に想像されるように、このループにはリトライ回数の上限を設け、それを超えた場合には、当該ショットの加工は異常であったとして処理する。
第1ショットの押し付けが終了した後、所定ショット数に対する判定を行い(S1708)、残りのショットがあれば、押し付けを解除して第2ショット位置にウエハステージを駆動する(S1709)。第2ショットは、第1ショットで決定された補正量とF3の合計の力で押し付けを行う(S1704)。第2ショットのS1706の工程で、目標値はF3のままなので、第1ショットと同様に、距離の許容範囲は−Tdから+Tuの間となる。したがって、第1ショットと第2ショットの押し付けに関わる物理的要因がほとんど同じであれば、第2ショットは補正量の変更なしに工程が進むはずである。第3ショット以降、最終ショットまで同様の加工工程を行い、ウエハを装置外に搬出する(S1710)。
なお、本実施例ではモールドの温度を計測パラメータとしたが、目的によってはウエハの温度も考慮する方法も考えられる。
[第6の実施の形態]
その他の実施の形態について記載する。
加工の制御パラメータをモールドとウエハ間の距離、補正パラメータをモールドとウエハ間の距離、計測パラメータを押し付け力とした例である。この形態は、第3の実施の形態の距離と押し付け力を入れ替えたものと考えると、容易に理解できるであろう。
この例では、距離サーボの駆動系を構成する。目標値を距離で与え、モールドとウエハ間の距離を計測することによりモールドの位置決めを行う。
補正特性としては例えば、図20に示すような条件をあらかじめ設定しておく。図20において、設計値の特性は曲線Jであり、曲線Gと曲線Hの間が許容範囲内である。許容範囲外の場合は、距離目標値を補正する。例えば当初の距離目標値D3で押し付けた結果が点Z3となった場合には、距離が許容範囲外である。この状態から許容範囲内(押し付け力がF3−FdからF3+Fuの間)になるように補正する。設計曲線Jを参照して、押し付け力がF3となるように距離目標値をD4に補正する。次に補正された目標値で押し付けを続行する。その結果、この例では点Z4に移行した。この時の押し付け力はF3よりわずかにずれているが、許容範囲のF3−FdからF3+Fuの間に入った。この動作を押し付け力結果が許容範囲内になるまで所定の回数以内でループを繰り返す。
[第7の実施の形態]
その他の実施の形態について記載する。
加工の制御パラメータをモールドとウエハ間の距離、補正パラメータをモールドとウエハ間の距離、計測パラメータをモールド温度とした例である。この形態は、第5の実施の形態の距離と押し付け力を入れ替えたものと考えると、容易に理解できるであろう。
補正の方法としては第5の実施の形態とほとんど同じである。図19の押し付け力に関する事項を距離に置き換えれば、そのまま理解できると思われるので、それをもって説明に代える。
[第8の実施の形態]
本実施例の特徴は、加工時に押し付け力を計測し、その計測値をあらかじめ決められた異常判断条件により判断し、必要であれば警告、もしくは加工中断の措置をとることにある。
図23に本実施例のナノインプリント微細加工装置の構成を示す。図23において、凹凸からなる転写パターンが描かれた原版となるモールド1を、モールド台2に固定する。モールド台2は、モールドステージ3に搭載されている。押し付けステージ5はフレーム10に取り付けてあり、モールドステージ3を図の+Z、−Z方向に駆動することにより押し付け加工を行う。押し付けステージ5による押し付け力は、力計測手段4により計測される。
被転写ターゲットとなるウエハ6には、パターニングを形成するレジスト7を塗布する。レジストには例えばPMMAを用いる。ウエハ6はウエハチャック8に保持され、ウエハチャック8はウエハステージ9上に搭載されている。ウエハステージ9は図のX、Y、Z、ωx、ωy、ωzの6軸に対して自由度を有しており、ウエハ位置を精密に制御することができる。
転写前には、不図示の位置ずれ計測手段により、モールド1とウエハ6のXY方向の相対的な位置ずれを計測し、補正する。モールド1とウエハ6の位置ずれ計測手段は、公知の技術を用いればよく、その位置ずれ補正はウエハステージ9で行う。
次に図24を用いて、本実施例の制御ブロックを説明する。
コンソール(S2401)は、装置外部とのインターフェース、オペレータへのマンマシンインターフェースを提供する。
全体制御部(S2402)は、加工装置全体のシーケンスを制御する。
異常検知部(S2403)は、押し付け力計測手段(S2407)から計測値を受け取り、あらかじめ決められた条件により状態を判断する。判断した結果は、全体制御部(S2402)とモールド制御部(S2404)に通知することができる。モールド制御部(S2404)は、全体制御部(S2402)からの指令により、モールド押し付け手段(S2408)を制御する。モールド押し付け手段(S2408)は、与えられた力の指令値通りに押し付け力を発生させるアクチュエーターである。
ウエハステージ制御部(S2405)は、全体制御部(S2402)からの指令により、ウエハステージ駆動部(S2409)を駆動制御する。
搬送制御部(S2406)は、全体制御部(S2402)からの指令により、図23には不図示のウエハ搬送部(S2410)とモールド搬送部(S2411)を駆動制御する。
なお、図24は本実施例の制御ブロックの一例を示したに過ぎず、同じ目的を達成するための他の構成はいくつも存在する。
次に図21を用いて、本実施例の動作を説明する。
図21(1)は、本実施例のナノインプリント加工装置の1ウエハに対する加工フローである。
S2101は、モールド搬送系を用いて、モールド1をモールド台2まで搬送する工程である。その際、従前の工程により別のモールドがモールド台2に装着されている場合は、従前のモールドをとりはずしてから、使用するモールドを装着する。
S2102は、ウエハ搬送系を用いて、ウエハ6をウエハチャック8まで搬送する工程である。
S2103は、押し付け加工時の押し付け力の指令値F1と、異常判定値F2〜F4と、delay値を設定する工程である。
続いて、異常判定プロセスを起動(S2104)し、異常監視フラグをON(S2105)にした後、第1ショットの押し付け(S2106)を行い、異常監視フラグをOFF(S2107)し、押し付けを解除(S2108)する。
ここで、本実施例の要点である、押し付け工程における異常判定方法について説明する。
図21(2)の異常判定プロセスは、1ウエハ加工プロセスと並行して実行されるプロセスである。プロセスが起動されて、異常監視フラグがONの間、押し付け力を監視し、異常値と判定すると所定のアクションを起こす動作を行う。
異常監視フラグのON(開始)をチェック(S2121)し、ONであれば設定されたdelay分待った後(S2122)、異常監視フラグの終了チェック(S2123)に進む。delayは、押し付け力が押し付け開始から所定の値になるまでの間、無意味な異常判定を出力しないために設けてある。S2123のフラグチェックがONの場合、押し付け力計測(S2124)を行った結果に対して異常判定(S2125)を行う。異常判定の方法については後で説明する。正常であればS2123に戻ってループを続ける。もしS2125で正常以外の結果が出た場合には、異常の種類に従ってアクションを行う。結果が警告である場合には、警告履歴をコンソールに対してセット(S2128)するとともに、コンソールの表示部に警告表示(S2129)を行う。そして(S2123)に戻ってループを続ける。異常種類による分岐(S2126)の結果が加工中断だった場合には、即座に加工中断の割込み処理を行う(S2127)。
正常か警告しか出なかった場合には、異常監視フラグがOFFされるのをS2123にて検知しプロセスは終了する。
ここで、異常判定の方法を図22を用いて説明する。
押し付け力の目標値F1に対して、F1−F3からF1+F2の範囲を正常範囲(S2201)とする。計測値がこの範囲であれば、加工には問題が生じない。これに対して、0からF1−F3の範囲(S2203)と、F1+F2からF1+F4の範囲(S2202)を警告範囲としている。警告範囲は加工精度が悪化するが、モールド、ターゲット、装置にダメージが生じることはない範囲である。F1+F4以上の範囲(S2204)は、加工中断範囲としている。この範囲では、モールド、ターゲット、装置にダメージが生じる恐れがある。本実施例では押し付け力による判定を行っているので、過小である側には加工中断範囲を設定していない。
本実施例では、本来目標値通りに制御されるはずの、押し付け力を検出することにより異常判定を行っている。想定される異常の原因としては、装置故障か、モールドやターゲットの特性の違いによる過渡的な押し付け力の異常が考えられる。
なお、図22で示した特性は、説明のための一例であり、実際にはモールドの特性、加工精度等に合わせて設定すればよい。
図21(1)に戻って説明を続けると、第1ショットの押し付けを解除した後、ショット数の判定を行う(S2109)。残りショットがあれば、ショット間の移動(S2110)を行い、S2103のステップに移行し、第2ショット以降の加工を行う。所定ショットの加工が終了したら、加工済みウエハをチャックから所定位置まで搬出(S2111)する。当該ウエハの加工履歴として、警告履歴をファイルに出力(S2112)し、次段以降の処理で参照できるようにする。
以上がウエハ1枚についての加工工程である。2枚目以降のウエハの加工に関して、モールドを交換する必要がなければ、モールド搬入(S2101)の工程は省略されることになる。
なお、本実施例の別の形態として、ウエハステージ側のZ軸を駆動することにより押し付け加工を行うものも考えられる。
また、図22の異常判定方法として、静的な値だけでなく、時間変化も考慮した特性として指定することも考えられる。
[第9の実施の形態]
本実施例の特徴は、加工時にモールドとターゲットの距離を計測し、その計測値をあらかじめ決められた異常判断条件により判断し、必要であれば警告、もしくは加工中断の措置をとることにある。
以下、第一の実施の形態との相違点を中心に説明する。
図27に本実施例のナノインプリント微細加工装置の構成を示す。図27において、モールドステージ3は固定設置されている。モールドステージ駆動部15はモールドステージ3に搭載されており、モールド台2を押し付け駆動する。
レーザー干渉計21は、モールド高さを計測する手段であり、装置基準に対する、モールド台2基準面の距離を計測する。
ウエハ高さ計測手段22は、モールドステージ3に対する、ウエハ表面の距離を計測する。
レーザー干渉計21とウエハ高さ計測手段22の計測値より、モールド1の厚みが既知であれば、モールドとウエハ間の間隔を知ることができる。
なお、モールド高さ計測手段とウエハ高さ計測手段には、これ以外の方式の距離計測手段をもちいることもできる。
次に図28を用いて、本実施例の制御ブロックを説明する。
異常検知部(S2803)は、ウエハ高さ計測手段(S2812)とモールド高さ計測手段(S2813)から計測値を受け取り、あらかじめ決められた条件により状態を判断する。判断した結果は、全体制御部(S2802)とモールド制御部(S2804)に通知することができる。
なお、図28は本実施例の制御ブロックの一例を示したに過ぎず、同じ目的を達成するための他の構成はいくつも存在する。
次に図25を用いて、本実施例の動作を説明する。
図25(1)は、本実施例のナノインプリント加工装置の1ウエハに対する加工フローである。
S2503は、押し付け加工時の押し付け力の指令値F1と、異常判定値D1〜D4と、delay値を設定する工程である。
ここで、異常判定の方法を図26を用いて説明する。モールドとウエハの間隔は基準面同士の距離であり、相対的な値といってよい。図26の上側にいくほど、モールドとウエハが離れる方向にプロットしてある。目標値D1に対して、D1−D3からD1+D2の範囲を正常範囲(S2601)とする。計測値がこの範囲であれば、加工には問題が生じない。これに対して、D1−D4からD1−D3の範囲(S2603)と、D1+D2以上の範囲(S2602)を警告範囲としている。警告範囲は加工精度が悪化するが、モールド、ターゲット、装置にダメージが生じることはない範囲である。D1−D4以下の範囲(S2604)は、加工中断範囲としている。この範囲では、モールド、ターゲット、装置にダメージが生じる恐れがある。本実施例ではモールドとウエハの間隔による判定を行っているので、過大である側には加工中断範囲を設定していない。
なお、図26で示した特性は、説明のための一例であり、実際にはモールドの特性、加工精度等に合わせて設定すればよい。
なお、本実施例の別の形態として、ウエハステージ側のZ軸を駆動することにより押し付け加工を行うものも考えられる。
また、本実施例においては、モールドとターゲット両方の高さを計測することによって、それらの間隔を求めていたが、いずれかが固定されている場合には、一方のみの高さを計測することによりそれらの相対的な角度を求めてもよい。
また、図26の異常判定方法として、静的な値だけでなく、時間変化も考慮した特性として指定することも考えられる。
[第10の実施の形態]
本実施例の特徴は、加工時にモールドとターゲットの角度を計測し、その計測値をあらかじめ決められた異常判断条件により判断し、必要であれば警告、もしくは加工中断の措置をとることにある。
以下、第8の実施の形態との相違点を中心に説明する。
図31に本実施例のナノインプリント微細加工装置の構成を示す。
レーザー干渉計21は、モールドステージ測距手段であり、装置基準に対する、モールド台2基準面の距離を計測する。モールド基準面の3点を計測することにより、装置基準に対するωx、ωy軸角度を計測することができる。
ウエハ高さ計測手段23は、モールドステージ3に対する、ウエハ表面の距離を計測する。同時にウエハ上の3点を計測できる構成になっているので、装置基準に対するウエハの角度を計測することができる。
なお、モールドステージ測距手段とウエハ高さ計測手段には、これ以外の方式の距離計測手段をもちいることもできる。
本実施例の制御ブロックについては図28と同等である。
次に図29を用いて、本実施例の動作を説明する。
図29(1)は、本実施例のナノインプリント加工装置の1ウエハに対する加工フローである。
S2903は、押し付け加工時の押し付け力の指令値F1と、異常判定値A1〜A5と、delay値を設定する工程である。
ここで、異常判定の方法を図30を用いて説明する。ウエハ対モールド角度(ωx、ωy)は基準面同士の角度であり、相対的な値といってよい。ωx、ωyそれぞれ同じ判定条件で別々に判定する。目標値A1に対して、A1−A3からA1+A2の範囲を正常範囲(S3001)とする。計測値がこの範囲であれば、加工には問題が生じない。これに対して、A1−A5からA1−A3の範囲(S3003)と、A1+A2からA1+A4の範囲(S3002)を警告範囲としている。警告範囲は加工精度が悪化するが、モールド、ターゲット、装置にダメージが生じることはない範囲である。A1−A5以下の範囲(S3005)と、A1+A4以上の範囲(S3004)は、加工中断範囲としている。この範囲では、モールド、ターゲット、装置にダメージが生じる恐れがある。本実施例ではモールドとウエハの角度による判定を行っているので、過小、過大両側に加工中断範囲を設定している。
なお、図30で示した特性は、説明のための一例であり、実際にはモールドの特性、加工精度等に合わせて設定すればよい。
なお、本実施例の別の形態として、ウエハステージ側のZ軸を駆動することにより押し付け加工を行うものも考えられる。
なお、本実施例においては、モールドとターゲット両方の角度を計測することによって、それらの相対的な角度を求めていたが、いずれかが固定されている場合には、一方のみの角度を計測することによりそれらの相対的な角度を求めてもよい。
また、図30の異常判定方法として、静的な値だけでなく、時間変化も考慮した特性として指定することも考えられる。さらに、ωx、ωyに別の異常判定値を設定することも考えられる。
[第11の実施の形態]
本実施例の特徴は、加工時にモールドとターゲットの温度を計測し、その計測値をあらかじめ決められた異常判断条件により判断し、必要であれば警告、もしくは加工中断の措置をとることにある。
以下、第8の実施の形態との相違点を中心に説明する。
モールド近傍とウエハ近傍に温度計測手段を設置し、それぞれの温度を計測することができる構成としている。
本実施例の制御ブロックについて図34に示す。
異常検知部(S3403)は、ウエハ温度計測手段(S3412)とモールド温度測距手段(S3413)から計測値を受け取り、あらかじめ決められた条件により状態を判断する。判断した結果は、全体制御部(S3402)とモールド制御部(S3404)に通知することができる。
なお、図34は本実施例の制御ブロックの一例を示したに過ぎず、同じ目的を達成するための他の構成はいくつも存在する。
次に図32を用いて、本実施例の動作を説明する。
図32(1)は、本実施例のナノインプリント加工装置の1ウエハに対する加工フローである。
S3203は、押し付け加工時の押し付け力の指令値F1と、異常判定値T1〜T5と、delay値を設定する工程である。
ここで、異常判定の方法を図33を用いて説明する。ウエハ温度、モールド温度は、それぞれ同じ判定条件で別々に判定する。目標値T1に対して、T1−T3からT1+T2の範囲を正常範囲(S3301)とする。計測値がこの範囲であれば、加工には問題が生じない。これに対して、T1−T5からT1−T3の範囲(S3303)と、T1+T2からT1+T4の範囲(S3302)を警告範囲としている。警告範囲は加工精度が悪化するが、モールド、ターゲット、装置にダメージが生じることはない範囲である。T1−T5以下の範囲(S3305)と、T1+T4以上の範囲(S3304)は、加工中断範囲としている。この範囲では、モールド、ターゲット、装置にダメージが生じる恐れがある。本実施例ではモールドとウエハの温度による判定を行っているので、過小、過大両側に加工中断範囲を設定している。
なお、図33で示した特性は、説明のための一例であり、実際にはモールドの特性、加工精度等に合わせて設定すればよい。
なお、本実施例の別の形態として、ウエハステージ側のZ軸を駆動することにより押し付け加工を行うものも考えられる。
また、図33の異常判定方法として、静的な値だけでなく、時間変化も考慮した特性として指定することも考えられる。
さらに、ウエハ温度、モールド温度に別の異常判定値を設定することも考えられ、いずれか一方のみに対して温度計測手段を設けてもよい。
[第12の実施の形態]
本発明の第12の実施例に係る、半導体ウエハのナノインプリント半導体ウエハ微細加工方法について、以下に説明する。
本実施例の特徴は、加工前に以下の4項目の情報を得て、加工条件であるところの押し付け力を決定することにある。
(1)モールドの硬度
(2)モールド凸凹パターンの凸部合計面積
(3)モールド凸凹の先端形状
(4)ウエハ(表面膜を含む)の表面硬度
図36に本実施例方法を適用するナノインプリント微細加工装置の構成を示す。図36において、凹凸からなる転写パターンが描かれた原版となるモールド1を、モールド台2に固定する。モールド台2は、モールドステージ3に搭載されている。押し付けステージ5はフレーム10に取り付けてあり、モールドステージ3を図の+Z、−Z方向に駆動することにより押し付け加工を行う。押し付けステージ5による押し付け力は、力計測手段4により計測される。
被転写ターゲットとなるウエハ6には、パターニングを形成するレジスト7を塗布する。レジストには例えばPMMAを用いる。ウエハ6はウエハチャック8に保持され、ウエハチャック8はウエハステージ9上に搭載されている。ウエハステージ9は図のX、Y、Z、ωx、ωy、ωzの6軸に対して自由度を有しており、ウエハ位置を精密に制御することができる。
転写前には、不図示の位置ずれ計測手段により、モールド1とウエハ6のXY方向の相対的な位置ずれを計測し、補正する。モールド1とウエハ6の位置ずれ計測手段は、公知の技術を用いればよく、その位置ずれ補正はウエハステージ9で行う。
次に図37を用いて、本実施例の制御ブロックを説明する。
コンソールS3701は、装置外部とのインターフェース、オペレータへのマンマシンインターフェースを提供する。
全体制御部S3702は、加工装置全体のシーケンスを制御する。
モールド制御部S3703は、全体制御部S3702からの指令により、モールド押し付け手段S3707を制御する。モールド押し付け手段S3707は、与えられた力の指令値通りに押し付け力を発生させるアクチュエーターである。
ウエハステージ制御部S3704は、全体制御部S3702からの指令により、ウエハステージ駆動部S3708を駆動制御する。
搬送制御部S3705は、全体制御部S3702からの指令により、図36には不図示のウエハ搬送部S3709とモールド搬送部S3710を駆動制御する。
なお、図37は本実施例の制御ブロックの一例を示したに過ぎず、同じ目的を達成するための他の構成はいくつも存在する。
次に図35を用いて、本実施例の動作を説明する。
図35は、本実施例のナノインプリント加工装置の1ウエハに対する加工フローである。
S3501は、モールドの特性をコンソールS3701に入力する工程である。具体的には、以下の項目について入力を行う。
(1)モールドの硬度
(2)モールド凸凹パターンの凸部合計面積
(3)モールド凸凹の先端形状
(4)ウエハ(表面膜を含む)の表面硬度
ここで、(1)のモールドの硬度としては、モールドに使用している材質、モールドの加工方法等より推定される値、もしくはなんらかの方法により硬度を計測した値を入力することができる。
(2)のモールド凸凹パターンの凸部合計面積としては、CADパターンから計算した値を入力することができる。
(3)のモールド凸凹の先端形状値としては、CADパターンから計算した値、SEM等により計測した値を入力することができる。
S3502は、ウエハの特性をコンソールS3701に入力する工程である。具体的には、以下の項目について入力を行う。
(4)のウエハ(表面膜を含む)の表面硬度値としては、使用ウエハの納品仕様もしくは、加工前サンプルを何らかの方法により計測した値を入力することができる。
S3503は、S3501とS3502で入力された値を処理して、加工パラメータを決定する工程である。パラメータを決定する方法はいろいろ考えられる。例えば、理論的に数式化することもできるし、その数式のパラメータを実験によりより最適化することもできる。
S3504は、モールド搬送系を用いて、モールド1をモールド台2まで搬送する工程である。その際、従前の工程により別のモールドがモールド台2に装着されている場合は、従前のモールドをとりはずしてから、使用するモールドを装着する。
S3505は、モールド1を装置基準に対して位置合わせする工程である。
S3506は、ウエハ搬送系を用いて、ウエハ6をウエハチャック8まで搬送する工程である。
S3507は、ウエハ6を装置基準およびモールド1に対して位置合わせする工程である。
S3508は、モールド1をウエハ6に押し付け加工する工程である。加工ショットが複数の場合には、押し付けとその解除を繰り返しながら、ステップアンドリピートにより所定ショット数の加工を行う。
S3509は、押し付け加工が終了したウエハを装置外部に搬出する工程である。
以上がウエハ1枚についての加工工程である。2枚目以降のウエハの加工に関して、モールドを交換する必要がなく、ウエハ6の特性も同等とみなせる場合には、S3501〜S3504の工程は省略されることになる。
[第13の実施例]
第12の実施例は、補正する加工条件が押し付け力である場合の例であった。
その他の実施例として、以下の加工条件を補正することをあげることができる。
(1)ターゲットに対するモールドの押し付け方向の距離
(2)ターゲット面に対するモールド面の角度
(3)ターゲットもしくは/およびモールドの温度
ここで、(1)のターゲットに対するモールドの押し付け方向の距離とは、実際には各計測基準間の距離となる。なぜなら、押し付け時にモールドとターゲットは密着するので、その間隔を測ることは困難だからである。従って、モールドやターゲットの変形により計測値が誤差を持つことになる。この誤差を補正するために、第12の実施例と同様、事前にモールドとターゲットの情報を入力し、それを処理することにより計測値の補正パラメータを得ることができる。
(2)のターゲット面に対するモールド面の角度補正とは、ターゲットの表面形状、多層構成による断面形状等により、ショット内で押し付け力の分布ができることを補正するためのものである。図36に示す座標軸のωx、ωy軸まわりに、モールドを回転させようとする力成分が生じる。この力が押し付け加工にどのような影響を与えるかは、加工の目的により異なるので、その目的に合わせて補正量を決定すればよい。事前の情報として、ターゲットの表面形状、多層構成による断面形状と、加工目的による角度補正決定のための係数を設定することにより、角度の補正パラメータを決定することができる。
(3)のターゲットもしくは/およびモールドの温度補正とは、モールドとターゲットの硬度の違いを温度で補正するものである。第12の実施例の押し付け力で補正する方法の他に、温度も補正した方が好ましい結果を得られるモールドとターゲットの組合せの場合にもちいるとよい。
次に、上述の微細加工装置や微細加工方法を利用したデバイスの製造方法の実施例を説明する。
[第14の実施例]
図38は半導体デバイス(ICやLSI等の半導体チップ、液晶パネルやCCD)の製造フローを示す。ステップ1(回路設計)では半導体デバイスの回路設計を行なう。ステップ2(マスク製作)では設計した回路パターンを形成したモールドを製作する。一方、ステップ3(ウエハ製造)ではシリコン等の材料を用いてウエハを製造する。ステップ4(ウエハプロセス)は前工程と呼ばれ、上記用意したモールドとウエハとを用いて、ウエハ上に実際の回路を形成する。次のステップ5(組み立て)は後工程と呼ばれ、ステップ5よって作成されたウエハを用いてチップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の工程を含む。ステップ6(検査)ではステップ5で作成された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行なう。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これが出荷(ステップ7)される。
図39は上記ウエハプロセスの詳細なフローを示す。ステップ11(酸化)ではウエハの表面を酸化させる。ステップ12ではウエハの表面に絶縁膜を形成する。ステップ13(電極形成)ではウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ14(イオン打ち込み)ではウエハにイオンを打ち込む。ステップ15(レジスト処理)ではウエハにレジスト(感材)を塗布する。ステップ16(転写)では上記微細加工装置や微細加工方法によってモールドをレジストに押し付けて回路パターンを転写し、更に異方性エッチングを行ってパターニングする。ステップ17(エッチング)ではパターニングされたレジストをマスクにウエハをエッチングする。ステップ18(レジスト剥離)ではエッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらステップを繰り返し行なうことによりウエハ上に回路パタ−ンが形成される。
本実施例の製造方法を用いれば、従来は難しかった高集積度のデバイスを製造することが可能になる。
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されず、その要旨の範囲内で様々な変形や変更が可能である。