JP6699401B2 - 着色組成物、及び記録方法 - Google Patents
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Description
金属光沢の中でも、とりわけ金色は富の象徴であり、太古の昔から人々に好まれてきており、正月などのおめでたい行事には欠かせない色である。一方、銀色も落ち着いた風合いで人気が高く、様々な場面で見かけることが多い。また、銀色は金色と異なり、その他の色の着色組成物と混合することにより、金色を含む様々な金属光沢色を表現することができるため、金色よりも汎用性が高く、産業上利用価値が高い。
本発明の着色組成物は、下記一般式(1)で表されるスチルベン系化合物と、2種以上の溶剤と、を含み、前記2種以上の溶剤の使用温度における蒸気圧の最大値と最小値との差が、6.6kPa以上であり、更に必要に応じて、樹脂、及びその他の成分を含む。
一方、本発明における銀色光沢とは、測定角60°における光沢度が30以上あり、かつ、色彩値(a*値、b*値)におけるa*値、b*値がいずれも−3.5以上3.5以下である場合をいう。この範囲を外れると、黄味がかったり、青みがかったりするため銀色とは言いがたくなる。なお、メタリック印刷物の色見本(商品名:PANTONE PLUS プレミアムメタリックガイド/コート紙 PMC1.2 silver、パントン社製)の測定角60°における光沢度は71.8で、a*値は−0.61、b*値は−0.74である。
しかし、前記スチルベン系化合物が一種類の溶剤に溶解している着色組成物である場合、前記着色組成物が記録媒体に滴下されたとき、前記スチルベン系化合物は、結晶析出するより早く前記溶剤と共に前記記録媒体中に浸透し、塗膜の形成が困難となり銀色光沢の弱い画像となることがわかった。
そこで、本発明においては、前記着色組成物に複数の溶剤を用いることにより、溶剤間の蒸気圧差により溶剤の蒸発速度を制御する。即ち、記録媒体上で蒸気圧の高い溶媒が、前記着色組成物が浸透し終わるよりも早く蒸発することにより、蒸気圧の低い溶剤が前記記録媒体上に残る。そして、前記蒸気圧が高い溶剤が蒸発することにより、前記着色組成物中の溶剤に対する前記スチルベン系化合物の溶解度が減少し、前記記録媒体上に鱗片状結晶が析出する。残った溶剤は、蒸気圧が低く蒸発速度は穏やかであるため、前記記録媒体へ浸透していく。最後に前記蒸気圧が低い溶剤の前記記録媒体への浸透に伴い、鱗片状結晶が穏やかに積み重なり、高い銀色光沢のある表面が平滑な塗膜が得られると考えられる。
前記一般式(1)で表されるスチルベン系化合物が銀色光沢を発現するためには、R1及びR2以外の基本骨格が重要である。一方、前記R1及び前記R2については、基本骨格が有する特性に悪影響を与えない範囲で種々選択することができる。
また、銀色光沢の発現のためにはトランス体であることが重要であり、純粋なシス体は銀色光沢を発現しない。したがって、前記一般式(1)としてトランス体を示したが、シス体が多少混入しても銀色光沢に大きな影響は及ぼさないから、銀色光沢に影響を与えない限りシス体が混入しても構わない。
前記R3は、水素原子、又は炭素数が1〜2のアルキル基を表す。
前記R4は、ヒドロキシ基、炭素数が1〜2のアルコキシ基、炭素数が2〜5のアルケニルオキシ基、SO3Na基、OSO3Na基、フェニルアルキル基(アルキル部分の炭素数が1〜3)、又はナフチルアルキル基(アルキル部分の炭素数が1〜3)を表す。
前記R5は、炭素数が1〜20のアルキル基、炭素数が1〜20のアルケニル基、又は炭素数が1〜12のヒドロキシアルキル基を表す。
前記R6は、水素原子、又はメチル基を表す。
前記R7は、炭素数が1〜4のアルキル基を表す。
前記R8は、炭素数が1〜5のアルキル基を表す。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
還流管を取り付けた100mLナスフラスコに、チタノセンジクロライドと亜鉛粉末を入れ、窒素雰囲気下で脱水THF(安定化剤無添加)を加えて、室温で溶液の色が赤から緑になるまで撹拌する。次いで、溶液を還流させ始め、中間体Xと、中間体Yを加える。反応混合物を8時間還流させ、室温まで冷却した後、tert−ブチルメチルエーテルで反応を停止し、得られた溶液をろ過する。溶媒を減圧留去した後、残渣をクロロホルムで溶解させる。得られたクロロホルム溶液を1N塩酸と飽和食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧留去して、下記(反応式A)に示すように、一般式(1)で表されるスチルベン系化合物を得る。下記に示したような一般的な方法で合成すると、ほぼトランス体のスチルベン系化合物を得ることができる。
前記溶剤としては、特に制限はなく、水系溶剤であっても、有機溶剤であってもよい。
前記有機溶剤としては、例えば、炭化水素(例えば、ヘキサン:Pv=20kPa、トルエン:Pv=3.8kPa)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン:Pv=56kPa、クロロホルム:Pv=26kPa等)、アルコール類(例えば、メタノール:Pv=16kPa、エタノール:Pv=7.6kPa等)、ケトン類(例えば、アセトン:Pv=32kPa、メチルエチルケトン:Pv=13kPa等)、カルボン酸(例えば、蟻酸:Pv=5.7kPa、酢酸:Pv=3.1kPa等)、カルボン酸エステル(例えば、酢酸メチル:Pv=14kPa、酢酸エチル:Pv=12kPa)、エーテル類(例えば、テトラヒドロフラン:Pv=23kPa、ジオキサン:Pv=5.1kPa等)、窒素化合物(例えば、アセトニトリル:Pv=12kPa、N−メチルピロリドン:Pv=0.1kPa等)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、前記Pvは、25℃における蒸気圧を示す。
前記2種以上の溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、スチルベン系化合物に対する貧溶媒を1種以上含むことが好ましい。また、スチルベン系化合物に対する良溶媒及び貧溶媒を含むことが好ましい。
本発明で用いる2種以上の溶剤のうち、使用温度における蒸気圧の最大値と最小値との差としては、6.6kPa以上であることが好ましく、7.1kPa以上がより好ましい。
この際、蒸気圧の差を計算するのに用いた溶剤の含有量は、前記着色組成物全量に対して、10質量%以上含有されているものとする。
前記溶剤の蒸気圧は、使用温度により変化する。前記使用温度としては、前記スチルベン系化合物が溶媒中に溶解すればよく、特に制限はなく、前記スチルベン系化合物の溶解度を向上させる目的で着色組成物を加温してもよく、前記使用温度としては、40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。
本実施例における着色組成物液温(インクジェットヘッド内温度)における各溶剤の蒸気圧は、クラウジウス−クラペイロン式(数式1)において算出することができる。
(数式1)
着色組成物中に含有する樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave−UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
インクには、必要に応じて、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤等を加えても良い。
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。 これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F−1)及び一般式(F−2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
上記一般式(F−1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0〜10の整数が好ましく、nは0〜40の整数が好ましい。
一般式(F−2)
CnF2n+1−CH2CH(OH)CH2−O−(CH2CH2O)a−Y
上記一般式(F−2)で表される化合物において、YはH、又はCnF2n+1でnは1〜6の整数、又はCH2CH(OH)CH2−CnF2n+1でnは4〜6の整数、又はCpH2p+1でpは1〜19の整数である。aは4〜14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。 この市販品としては、例えば、サーフロンS−111、S−112、S−113、S−121、S−131、S−132、S−141、S−145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129、FC−135、FC−170C、FC−430、FC−431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF−470、F−1405、F−474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN−100、FSN、FSO−100、FSO、FS−300、UR、キャプストーンFS−30、FS−31、FS−3100、FS−34、FS−35(いずれも、Chemours社製);FT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF−136A,PF−156A、PF−151N、PF−154、PF−159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS−3100、FS−34、FS−300、株式会社ネオス製のFT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF−151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
本発明の銀色光沢画像の形成方法で用いる記録媒体としては、例えば、普通紙やコート
紙、アート紙、キャストコート紙、布、及び木材などの浸透性の記録媒体を挙げることができる。また、塩化ビニルシートやPETフィルムなどの樹脂フィルムや、金属及びガラスなどの非浸透性の記録媒体を用いることもできる。
これらの中でも、前記記録媒体を動的走査吸液計で測定したとき、接触時間400msにおける前記記録媒体への純水の転移量としては、3ml/m2以上40ml/m2以下の記録媒体であると、溶剤が記録媒体中へ均一に移動し、塗膜が平滑になるため好ましい。
この他にも、記録媒体が黒色であると、透過した光の反射量が少なく、銀色光沢が際立つため好ましい。
本発明の記録方法は、刺激を印加し、前記着色組成物を飛翔させて記録媒体に画像を記録する着色組成物飛翔工程と、を含み、更に必要に応じて、加熱工程とその他の工程を含む。
前記着色組成物飛翔工程は、前記着色組成物に、刺激を印加し、前記着色組成物を飛翔させて画像を記録する工程である。
前記加熱工程は、画像を記録した前記記録媒体を加熱する工程である。
前記記録方法としては、前記記録媒体に高画像品質な記録ができるが、より一層高画質で耐擦性、及び接着性の高い画像の形成、並びに高速の記録条件にも対応できるようにするために、記録後に前記記録媒体を加熱することが好ましい。記録後に加熱工程を含むと、前記着色組成物中に含有される樹脂の造膜が促進されるため、記録物の画像堅牢性を向上させることができる。
前記加熱温度としては、着色組成物中に含まれる水溶性有機溶媒の種類や量、及び添加する樹脂エマルジョンの最低造膜温度に応じて変更することができ、さらに印刷する基材の種類に応じても変更することができる。
前記加熱温度としては、乾燥性、及び造膜温度の点から、高いことが好ましく、40℃以上120℃以下がより好ましく、50℃以上90℃以下が特に好ましい。前記加熱温度が、40℃以上120℃以下であると、印刷する記録媒体の熱によるダメージを防止し、インクヘッドが温まることによる不吐出が生じることを抑制することができる。
立体造形物を造形するための立体造形装置は、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、着色組成物の収容手段、供給手段、吐出手段や乾燥手段等を備えるものを使用することができる。立体造形物には、着色組成物を重ね塗りするなどして得られる立体造形物が含まれる。また、記録媒体等の基材上に着色組成物を付与した構造体を加工してなる成形加工品も含まれる。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された記録物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形する用途に好適に使用される。
(反応式1)
f1のNMRの測定値及び元素分析の結果は次のとおりである。
1H NMR(400MHz;ジメチルスルホキシド−d6(DMSO−d6)):δ 3.71(triplet(t),4H),3.99(t,4H),4.87(singlet(s),2H),6.92(doublet(d),4H),7.02(s,2H),7.48(d,4H);13C NMR(100MHz;DMSO−d6):δ 59.6,69.5,114.7,125.8,127.4,130.0,158.1
元素分析値 C:71.98、H:6.71、O:21.31
(反応式2)
次に、還流管を取り付けた100mLナスフラスコに、チタノセンジクロライド(3.9g、15.7mmol)と亜鉛粉末(2.0g、31.5mmol)を入れ、窒素雰囲気下で脱水THF(安定剤無添加)を65mL加えて、室温で溶液の色が赤から緑になるまで撹拌した。次いで、溶液を還流させ始め、前記中間体を(2.0g、11.6mmol)加えた。反応混合物を8時間還流させ、室温まで冷却した後、tert−ブチルメチルエーテルで反応を停止し、得られた溶液をろ過した。溶媒を減圧留去した後、残渣をクロロホルムで溶解させた。得られたクロロホルム溶液を1N塩酸と飽和食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧留去した。得られた白色固体をエタノールで2回再結晶し、析出した結晶を吸引濾過して円形のろ紙上(直径21mm)に積層させ、スチルベン系化合物(a1)の銀色光沢結晶薄膜体を得た。製造例1と同様に、元素分析とNMRにより同定し、a1が得られていることを確認した。
(反応式3)
(反応式4)
次に、還流管を取り付けた100mLナスフラスコに、チタノセンジクロライド(3.9g、15.7mmol)と亜鉛粉末(2.0g、31.5mmol)を入れ、窒素雰囲気にした後、脱水THFを65mL加え、室温で溶液の色が赤から緑になるまで撹拌した。次いで、溶液を還流させ始め、前記中間体を(2.0g、11.6mmol)加えた。反応混合物を8時間還流させ、室温まで冷却した後、tert−ブチルメチルエーテルで反応を停止させ、混合溶液をろ過した。ろ液の溶媒を減圧留去した後、残渣をクロロホルムで溶解させ、1N塩酸と飽和食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ減圧留去した。得られた白色固体をエタノールで2回再結晶し、析出した結晶を吸引濾過して円形のろ紙上(直径21mm)に積層させ、スチルベン系化合物(f5)の銀色光沢結晶薄膜体を得た。製造例1と同様にして、元素分析とNMRにより同定し、f5が得られていることを確認した。
(反応式5)
(反応式6)
(反応式7)
(反応式8)
(反応式9)
(反応式10)
(反応式11)
(反応式12)
(反応式13)
(反応式14)
次に、窒素雰囲気下、二口ナスフラスコにチタノセンジクロリド(3.00g、12.0mmol)と亜鉛粉末(1.57g、24.0mmol)を入れ、脱水THFを50mL加えて、室温で溶液の色が赤から緑になるまで撹拌した。更に溶液を70℃で30分間還流させ、前記中間体1(2.10g、10.0mmol)を加えた。薄層クロマトグラフィーで確認しつつ中間体1が消費されるまで反応混合物を還流させ、tert−ブチルメチルエーテルで反応を停止させた。吸引ろ過して反応液から亜鉛粉末を除去し、ろ液を1N塩酸及び飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで脱水した。更に溶媒を減圧除去し、残渣をヘキサンで洗浄した後、エタノールで再結晶してg1の中間体2を得た。
次に、前記中間体2(1.00g、2.60mmol)と脱水THF(30mL)を二口ナスフラスコに入れ、70℃で還流させ始めたところで、0.5質量%水酸化ナトリウム水溶液を50mL加えた。反応系を2時間還流させた後、減圧留去により溶媒を除去し、残渣に水を100mL加えた。吸引ろ過により水不要物を除去した後、ろ液が酸性になるまで希塩酸を滴下し粗生成物を析出させた。粗生成物をアセトン30mLで洗浄し、g1の中間体3を得た。
次に、窒素雰囲気下、前記中間体3(0.50g、1.52mmol)を入れた二口ナスフラスコに塩化チオニルを8mL加えた。反応系を80℃で5時間還流させた後、未反応の塩化チオニルを減圧除去し、g1の中間体4を得た。
次に、前記中間体4にクロロホルムを10mL加え、氷浴で0℃まで冷却した後、0℃の2.4質量%水酸化ナトリウム水溶液5mLとイソプロピルアミン(0.89g、15.1mmol)を加えた。得られた溶液を90分間撹拌した後、吸引ろ過して円形のろ紙上(直径21mm)に積層させ、最後にメタノール30mLで洗浄し、スチルベン系化合物(g1)の銀色光沢結晶薄膜体を得た。製造例1と同様にして、元素分析とNMRにより同定し、g1が得られていることを確認した。
(反応式15)
(反応式16)
(反応式17)
(反応式18)
(反応式19)
(反応式20)
次に、還流管を取り付けた100mLナスフラスコに、チタノセンジクロライド(3.9g、15.7mmol)と亜鉛粉末(2.0g、31.5mmol)を入れ、窒素雰囲気下で脱水THF(安定剤無添加)を65mL加えて、室温で溶液の色が赤から緑になるまで撹拌した。次いで、溶液を還流させ始め、前記k1の中間体(2.72g、5.8mmol)を加えた。反応混合物を8時間還流させ、室温まで冷却した後、tert−ブチルメチルエーテルで反応を停止し、得られた溶液をろ過した。溶媒を減圧留去した後、残渣をクロロホルムで溶解させた。得られたクロロホルム溶液を1N塩酸と飽和食塩水で分液洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧留去した。得られた白色固体をエタノールで2回再結晶し、析出した結晶を吸引濾過して円形のろ紙上(直径21mm)に積層させ、スチルベン系化合物(k1)の銀色光沢結晶薄膜体を得た。製造例1と同様にして、元素分析とNMRにより同定し、k1が得られていることを確認した。
―着色組成物の調製―
100mLバイアル瓶に下記の化合物を添加した。
・着色剤:スチルベン系化合物(化合物a1) 2.5質量%
・溶剤 97.5質量%
溶剤の種類及び含有率は下記の通りである。ここではそれぞれ溶剤A、溶剤Bと記す。
・溶剤A:テトラヒドロフラン(THF) 50質量%
・溶剤B:エタノール 50質量%
―アルミニウム粒子含有着色組成物の調製―
PETフィルム(商品名:東洋紡エステル(登録商標)フィルム E5100、東洋紡株式会社製、平均厚み100μm)にコロナ処理を行い、その表面にTHFで溶解させたポリスチレン(商品名:VS1063、星光PMC株式会社製)をバーコーターで塗布して70℃にして15分間乾燥させ、前記PETフィルム上に剥離樹脂層を形成した。
前記PETフィルム上に形成した前記剥離樹脂層の表面に、真空蒸着装置(装置名:VE−2012型 デスクトップ型真空蒸着装置、株式会社真空デバイス社製)を用いて平均厚み30nmの蒸着アルミニウム層を形成し、アルミニウム蒸着PETフィルムを作製した。
前記アルミニウム蒸着PETフィルムを、THF溶液に浸漬し、超音波洗浄機(装置名:VS−150、アズワン株式会社製)により2時間剥離処理を行った。前記PETフィルムから前記蒸着アルミニウム層を剥離した後、前記PETフィルムを取り除き、アルミニウム分散液を得た。得られたアルミニウム分散液を吸引濾過し、THFで洗浄することでアルミニウムとポリスチレンを分離した。その後、ろ物をTHF中に再度分散させ微小化処理を超音波ホモジナイザー(装置名:US−300T:チップ直径26、株式会社日本精機製作所製)により10時間行い、アルミニウム粒子を含む溶液を調製した。
前記アルミニウムを含む溶液をフィルタ(商品名:LCF−24110、日本ポール株式会社製、SUS304Lリジメッシュ、ろ過精度18μm)を用いてろ過を行い、続いて孔径5μmのセルロースアセテートメンブレンフィルタを用いて加圧ろ過し、粗大粒子を除去した。得られたろ液を、ロータリーエバポレータでTHFを一部留去した。最後に、エタノールを加え、以下の組成になるようアルミニウム粒子含有着色組成物を調製した。
・アルミニウム粒子 2.5質量%
・溶剤 97.5質量%
溶剤の種類および含有率は下記の通りである。
・溶剤A:THF 50質量%
・溶剤B:エタノール 50質量%
なお、アルミニウム粒子分散液を5,000倍に希釈し、透過型電子顕微鏡用コロジオン膜(商品名:コロジオン支持膜、EMジャパン株式会社製)上に霧吹きで吹き付け乾燥させた。前記コロジオン膜上のアルミニウム粒子を反射型電子顕微鏡(装置名:VE−7800、株式会社キーエンス製)で観察し、アルミニウム粒子50個の長軸長さを測定したところ、平均長軸長さは3.1μmであった。
参考例1において、下記表1〜5に示すように、溶剤種、着色組成物の液温、着色剤の種類、溶剤の含有量、記録媒体に変更した以外は、参考例1と同様にして、着色組成物を得た。参考例1とヘッド内温度、記録媒体、着色剤を同様にして、下記表5のように溶剤を3種類用いたものが参考例29であり、溶剤を4種類用いたものが参考例30である。
下記表6のように溶剤を3種類用いたものが比較例5である。参考例1とヘッド内温度、記録媒体、着色剤として高分子化合物(特開2013−203785号公報:参考例1に記載)を用いたものが比較例6である。
なお、参考例1及び比較例1においては記録媒体として黒色紙(品番 ナー3285、株式会社長門屋商店製)を用いた。実施例8〜11、15〜17、参考例2〜7、12〜14、18〜30及び比較例2〜7において用いた記録媒体は上記黒色紙に代え、電子写真記録用塗工紙(商品名:PODグロスコート紙、王子製紙株式会社製)、グラビア印刷用コート紙(商品名:スペースDXマット紙、日本製紙株式会社製)、オフセットコート紙(商品名:オーロラコート、日本製紙株式会社製)、インクジェット用マットコート紙(商品名:スーパーファイン専用紙、セイコーエプソン株式会社製)、スライドガラス(松浪硝子工業株式会社製)、ポリエステルフィルム(商品名:ルミナーU12、東レ株式会社製)のいずれかを用いた。
比較例1においては、アルミニウム粒子の沈降により吐出不良が生じたため、光沢度の評価はできなかった。下記表1〜3における転移量とは、接触時間400msのときのものを意味する。下記表4及び5におけるNMPはN−メチルピロリドンである。
50mLの容量のバイアル瓶(商品名:SV−50A、日電理化硝子株式会社製)に、得られた着色組成物30mLを入れ、デジタルホットスターラー(装置名:デジタルホットスターラー DP−1M、アズワン株式会社製)を用いて60℃に加温し、そのまま60℃で一晩静置し、目視にて、沈降物を確認し、下記評価基準に基いて、「着色材の沈降性」を評価した。
[評価基準]
ランク1:沈降物がない
ランク2:沈降物が存在する
画像形成は、拡張型塗布装置(装置名:EV2500、株式会社リコー製)に記録ヘッド(装置名:MH5420、株式会社リコー製:吐出口4列、各320ノズル、吐出量35pL、解像度600dpi(横)×600dpi(縦))を用いて記録した。まず、着色組成物をカートリッジに充填し、次に、全ノズルに着色組成物が充填されたことを確認後、記録ヘッド内を前記表4〜6に示す液温に加温した。記録媒体上への着色組成物付着量が28g/m2となるように吐出量を調整した後、30mm×30mmのベタ画像を前記表1〜3に示す記録媒体に1パス記録し、記録物を得た。
得られた記録物の銀色光沢度を評価した。
即ち、精密光沢度計(装置名:GM26−DS、株式会社村上技術研究所製)を用いて光沢度を測定した。また、測色計(装置名:X−Rite eXact advance、x−rite社製、光源:D50/2°)を用いて測色(a*値、及びb*値)し、下記評価基準に基づいて、「銀色光沢度(光沢度及び色彩値)」を評価した。前記光沢度は、精密光沢度計に付属された黒色ガラス基準板の測定角60°における光沢値が92.1を指したときの光沢値である。
[評価基準]
光沢度
ランク1:70以上
ランク2:50以上70未満
ランク3:30以上50未満
ランク4:30未満
色彩値(a*値)
ランク1:−1.5≦a*≦1.5
ランク2:−2.5≦a*<−1.5 又は 1.5<a*≦2.5
ランク3:−3.5≦a*<−2.5 又は 2.5<a*≦3.5
ランク4:a*<−3.5 3.5<a*
色彩値(b*値)
ランク1:−1.5≦b*≦1.5
ランク2:−2.5≦b*<−1.5 又は 1.5<b*≦2.5
ランク3:−3.5≦b*<−2.5 又は 2.5<b*≦3.5
ランク4:b*<−3.5 3.5<b*
実施例8〜11、15〜17、参考例2〜7、12〜14、18〜30及び比較例2〜7において得られた着色剤の沈降性は、参考例1及び比較例1と同様の方法を用いて評価した。
<1> 下記一般式(1)で表されるスチルベン系化合物と、
2種以上の溶剤と、を含み、
前記2種以上の溶剤の使用温度における蒸気圧の最大値と最小値との差が、6.6kPa以上であることを特徴とする着色組成物である。
一般式(1)
<2> 前記R1及び前記R2の前記フェニル基、及び前記ナフチル基、並びに前記R4のフェニルアルキル基、及び前記ナフチルアルキル基は、置換基を有してもよく、
前記置換基が、アルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、シアノ基、シアノアルキル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、及びアミノ基から選択される少なくとも1種である前記<1>に記載の着色組成物である。
<3> 前記R1及び前記R2が、−(CH2)2−OHである前記<1>から<2>のいずれかに記載の着色組成物である。
<4> 前記R1及び前記R2が、2−メチル−2−ブテニル基である前記<1>から<2>のいずれかに記載の着色組成物である。
<5> 前記R1及び前記R2が、エチル基である前記<1>から<2>のいずれかに記載の着色組成物である。
<6> 前記R1及び前記R2が、プロピオン酸メチルである前記<1>から<2>のいずれかに記載の着色組成物である。
<7> 前記R1及び前記R2が、ジエチルエーテルである前記<1>から<2>のいずれかに記載の着色組成物である。
<8> 前記溶剤が、前記スチルベン系化合物に対する良溶媒を含む前記<1>から<7>のいずれかに記載の着色組成物である。
<9> 前記溶剤が、前記スチルベン系化合物に対する良溶媒と、前記スチルベン系化合物に対する貧溶媒と、を含み、
前記良溶媒の25℃における蒸気圧が、23kPa以上である前記<1>から<8>のいずれかに記載の着色組成物である。
<10> 前記溶剤が、前記スチルベン系化合物に対する貧溶媒を1種以上含み、
前記貧溶媒の含有量が、15質量%以上である前記<1>から<9>のいずれかに記載の着色組成物である。
<11> 前記良溶媒が、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、クロロホルム、アセトン、及びトルエンから選択される少なくとも1種を含む前記<8>から<10>に記載の着色組成物である。
<12> 前記良溶媒の含有量が、20質量%以上90質量%以下である前記<8>から<11>のいずれかに記載の着色組成物である。
<13> 前記貧溶媒が、メタノール、エタノール、酢酸、酢酸エチル、アセトニトリル、及び水から選択される少なくとも1種を含む前記<9>から<12>のいずれかに記載の着色組成物である。
<14> 前記2種以上の溶剤の使用温度における蒸気圧の最大値と最小値との差が、7.1kPa以上である前記<1>から<13>のいずれかに記載の着色組成物である。
<15> 前記使用温度が40℃以上である前記<1>から<14>のいずれかに記載の着色組成物である。
<16> 前記使用温度が60℃以上である前記<1>から<15>のいずれかに記載の着色組成物である。
<17> インクジェット用である前記<1>から<16>のいずれかに記載の着色組成物である。
<18> 前記<1>から<17>のいずれかに記載の着色組成物に刺激を印加し、前記着色組成物を飛翔させて記録媒体に画像を記録する着色組成物飛翔工程を含み、
動的走査吸液計を用いて測定した接触時間400msにおける純水の前記記録媒体への転移量が、3mL/m2以上40mL/m2以下であることを特徴とする記録方法である。
<19> 前記記録媒体が、普通紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、布、木材、塩化ビニルシート、及びPETフィルムから選択される少なくとも1種である前記<18>に記載の記録方法である。
<20> 前記記録媒体が、黒色紙、グロスコート紙、オーロラコート紙、及びスペースDXマットコート紙から選択される少なくとも1種である前記<18>から<19>のいずれかに記載の記録方法である。
Claims (7)
- 下記一般式(1)で表されるスチルベン系化合物と、
2種以上の溶剤と、を含み、
前記2種以上の溶剤の使用温度における蒸気圧の最大値と最小値との差が、6.6kPa以上であることを特徴とする着色組成物。
一般式(1)
- 前記R 1 及び前記R 2 が、炭素数2〜6のアルキル基である請求項1に記載の着色組成物。
- 前記R1及び前記R2が、−(CH2)2−OHである請求項1から2のいずれかに記載の着色組成物。
- 前記溶剤が、前記スチルベン系化合物に対する良溶媒と、前記スチルベン系化合物に対する貧溶媒と、を含み、
前記良溶媒の25℃における蒸気圧が、23kPa以上である請求項1から3のいずれかに記載の着色組成物。 - 前記溶剤が、前記スチルベン系化合物に対する貧溶媒を1種以上含み、
前記貧溶媒の含有量が、15質量%以上である請求項1から4のいずれかに記載の着色組成物。 - インクジェット用である請求項1から5のいずれかに記載の着色組成物。
- 請求項1から6のいずれかに記載の着色組成物に刺激を印加し、前記着色組成物を飛翔させて記録媒体に画像を記録する着色組成物飛翔工程を含み、
動的走査吸液計を用いて測定した接触時間400msにおける純水の前記記録媒体への転移量が、3mL/m2以上40mL/m2以下であることを特徴とする記録方法。
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