JP6697406B2 - 透明電極、電子デバイス、および電子デバイスの製造方法 - Google Patents

透明電極、電子デバイス、および電子デバイスの製造方法 Download PDF

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Description

本発明の実施形態は、透明電極、電子デバイス、および電子デバイスの製造方法に関する。
近年エネルギーの消費量が増加してきており、地球温暖化対策として従来の化石エネルギーに代わる代替エネルギーの需要が高まっている。このような代替エネルギーのソースとして太陽電池に着目が集まっており、その開発が進められている。太陽電池は、種々の用途への応用が検討されているが、多様な設置場所に対応するために太陽電池のフレキシブル化と耐久性が特に重要となっている。最も基本的な単結晶シリコン系太陽電池はコストが高くフレキシブル化が困難であり、昨今注目されているペロブスカイト太陽電池は耐久性の点で改良の余地がある。
このような太陽電池の他、有機EL素子、光センサーといった光電変換素子について、フレキシブル化および耐久性改良を目的とした検討が行われている。このような素子には透明陽電極としては通常ITO膜が用いられている。しかしながら、これらの素子に関して、貼りあわせ接着層や陽極バッファとして一般的に用いられるPEDOT・PSSは、強酸であるPSSを放出する。放出されたPSSは拡散して、光電変換層やITOを劣化させることがある。また、透明電極として、低抵抗、かつ高透明性であるITO/Ag/ITOが用いられることがある。このような電極をPEDOT・PSS層を有する素子に用いた検討例はあるが(たとえば特許文献1)、アモルファスITO(以下、a−ITOということがある)や銀は酸やハロゲンによって劣化する傾向が強い。またpH安定性に優れた自己ドープ型透明導電性ポリマーは知られているが(たとえば特許文献2)帯電防止等に用いられる例が示されている。
特開2014−532025号公報 特許第4040938号
本実施形態は、上記のような課題に鑑みて、化学的に安定で低抵抗かつ高透過率の透明電極および電子デバイスおよび電子デバイスの製造方法を提供しようとするものである。
実施形態による透明電極は、
アモルファス無機酸化物を含有する導電層と、
前記導電層の上に形成された、ブレンステッド酸のアニオンと局在化されたカチオンとを側鎖に有する自己ドープ型導電性ポリマーを含有する膜、窒素原子を含有するグラフェン膜、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される遮蔽層と、
を具備することを特徴とするものである。
また、実施形態による電子デバイスは、陽極と陰極と光電変換層とを具備し、前記陽極、前記陰極、または前記陽極および前記陰極の両方が、前記の透明電極であることを特徴とするものである。
さらに実施形態による電子デバイスの製造方法は、
アモルファス無機酸化物を含有する導電層を用意する工程と、
ブレンステッド酸のアニオンと局在化されたカチオンとを側鎖に有する自己ドープ型導電性ポリマーを含有する膜、窒素原子を含有するグラフェン膜、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される遮蔽層を用意する工程と、
光電変換層を用意する工程と、
対向電極を用意する工程と、
前記の各層を接合させる工程と
を含むことを特徴とするものである。
実施形態による透明電極の構造を示す概念図。 実施形態による太陽電池の構造を示す概念図。 実施形態による有機EL素子の構造を示す概念図。 実施形態による電子デバイスの製造方法を示す概念図。 実施形態による別の太陽電池の構造を示す概念図。
以下実施形態を詳細に説明する。
[実施形態1]
まず、図1を用いて、第1の実施形態に係る透明電極の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る透明電極10の構成概略図である。この透明電極は、導電層12上に遮蔽層13が設置されている。
実施形態にかかる透明電極は、導電層12と遮蔽層13とを具備しているものであるが、さらに透明基板11を具備していてもよい。透明基板を具備することで、透明基板上に導電層12および遮蔽層13を順次形成させることが容易になる。また、透明基板を用いることで、この透明電極を太陽電池などの電子デバイスに用いる場合に、この透明電極が設置されている側の面を受光面とすることができる。このような透明基板の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)、ポリエチレンナフタレート(以下、PENという)などの樹脂材料が挙げられる。
なお、太陽電池などの電子デバイスにおいて、陽極および陰極のいずれか一方に透明電極を用いる場合には、それに対向する対向電極には不透明な樹脂や金属を含む不透明基板を用いることもできる。このときの受光面は、透明基板が設置されている側の面が受光面となる。
導電層12は、アモルファス無機酸化物を含有する導電層である。この層は、一般的に用いられている電極と同様に導電性の高いものである。
アモルファス無機酸化物としては、一般的に知られている任意のものから選択することができる。具体的には、インジウムドープスズ酸化物(Indium doped tin Oxide、ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(Fluorine doped tin oxide、FTO)、ZnO等が挙げられる。これらのアモルファス無機酸化物は、膜としたときに透明性の高いものが好ましい。
導電層は、上記のアモルファス無機酸化物のみから構成されるものであってもよいが、必要に応じて、金属などの導電性の高い材料と組み合わせたものであってもよい。組み合わせる方法は特に限定されないが、例えばアモルファス無機酸化物を含有する膜に、金属の薄膜を積層する方法が好ましい。金属としては、銀または銀合金が好ましい。合金の具体例としては、銀−パラジウム、銀−金、銀−スズ等が挙げられる。アモルファス無機酸化物を含有する膜と金属薄膜との積層順序は特に限定されないが、金属薄膜が、無機酸化物膜に挟まれる構造であることが好ましい。具体的には、ITO/銀合金/ITO、FTO/銀合金/FTO、ZnO/銀合金/ZnO等の構造が好ましい。
遮蔽層13は、
(i)ブレンステッド酸のアニオンと局在化されたカチオンとを側鎖に含有する自己ドープ型導電性ポリマーを含有する膜(以下、ポリマー膜という)、
(ii)窒素原子を含有するグラフェン膜(以下、N−グラフェン膜という)、および
(iii)(i)および(ii)の組み合わせ
からなる群から選択される。この遮蔽層は、導電性および透明性を維持しながら、光電変換層やバッファ層から導電層への、酸やハロゲンなどの有害物質の移動を阻害する作用を有する。
実施形態において、ポリマー膜に含まれる自己ドープ型導電性ポリマーとは、ブレンステッド酸基がπ電子共役系ポリマーに共役結合されており、そのポリマー自体が導電性を示すものである。実施形態においてはこのブレンステッド酸基が、ブレンステッド酸のアニオンと、それにイオン結合しているカチオンとの組み合わせである。このブレンステッド酸基はポリマーの側鎖に結合している。このような自己ドープ型導電性ポリマーの主鎖構造の例としては、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレンが挙げられる。そして、そのポリマーに組み合わされるブレンステッド酸の例としては、スルホン酸、カルボン酸、リン酸、ホウ酸等がある。
このような主鎖構造とブレンステッド酸との組み合わせは、目的に応じて任意に選択することができるが、例えば、下記式(I)で表されるポリチオフェン、下記式(II)で表されるポリアニリン、下記式(III)で表されるポリピロールが挙げられる。
Figure 0006697406
式中、Lは、単結合またはエーテル結合を含んでいてもよい炭化水素鎖であり、Bはブレンステッド酸基のアニオン、Aはブレンステッド酸基のカチオンを表し、nは重合度を表す数である。また、隣接する繰り返し単位に含まれる2つのLが結合して環構造を形成していてもよい。なお、式中ではブレンステッド酸基をBで表わしているがBの対カチオンとしてはプロトン化したポリチオフェンカチオンも存在しており、一般的にはAはブレンステッド酸基のカチオンとポリチオフェンカチオンの混合体である。
好ましいポリマーの具体例として、以下の構造を有するものを挙げることができる。ここではすべて酸型の構造として示している。
Figure 0006697406
Figure 0006697406
Figure 0006697406
これらの式中、n、n’、およびmは1以上の数である。
これらの中では式(I)、特に、(Ia)〜(Id)で表されるポリチオフェンが低抵抗であり、また化学的に安定であることから好ましい。ブレンステッド酸としてはスルホン酸がドーピングの効果が最も高く好ましい。これらのポリマーには、実施形態の効果を損なわない限り、ブレンステッド酸基以外の任意の置換基が結合していてもよい。例えば、アルキル基やエーテル基はポリマーの溶解性を高めることから好ましい。ブレンステッド酸基はポリマーの側鎖であるアルキル基もしくはアリール基に結合してもよいが,アルキル基に結合しているのが安定性の観点から好ましい。
ブレンステッド酸アニオンと局在化されたカチオンを側鎖に含有する自己ドープ型導電性ポリマーの場合、フリーのブレンステッド酸が少ないため、導電層(アモルファス無機酸化物含有膜または金属薄膜)への酸の拡散が少なく、導電層の酸による劣化を防ぐことができる。また自己ドープ型導電性ポリマーのブレンステッド酸アニオンが陰イオンとして存在しており、光電変換層に含まれるハロゲンイオン等の陰イオンが導電層へ拡散することを防ぐことができる。これによって、導電層の劣化が防がれる。また、デバイスの導電層側から、光電変換層へ陰イオン等が進入することを防ぐことも可能となる。そのため有機太陽電池(以下、OPVという)やペロブスカイト太陽電池等の太陽電池、各種光センサーなどの電子デバイスの耐久性を向上することができる。
局在化されたカチオンとしてはアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンが好ましい。アンモニウムイオン、ホスホニウムイオンとしては4級アンモニウムイオン、4級ホスホニウムイオンがさらに好ましい。
このポリマー層には、ポリオール化合物または酸化グラフェンをさらに含んでいることが好ましい。これらの化合物がポリマー層中に存在することで、隣接する層との接着性が改良されるためである。
N−グラフェン膜は、炭素のみからなるグラフェン膜を構成する炭素の一部が窒素原子で置換された、平面状の膜である。N−グラフェン膜は、単層構造であっても、多層構造であってもよい。
実施形態によるN−グラフェン膜の窒素の含有量(N/C原子比)はX線光電子スペクトル(XPS)で測定することができ、0.1〜30atom%であることが好ましく、1〜10atom%であることがより好ましい。
このようなN−グラフェン膜は遮蔽効果が高く、酸やハロゲンイオンの拡散を防ぐことによりアモルファス酸化物や銀合金を含む電極の劣化を防ぎ、外部からの不純物の光電変換層への侵入をふせぐことができる。さらにN−グラフェン膜は窒素原子を含んでいることから酸に対するトラップ能も高いので、遮蔽効果はより高いものとなっている。
なお、遮蔽膜は、N−グラフェン膜とポリマー膜とを組み合わせた積層構造を有していてもよい。これらを積層することによりさらに電極の劣化を防ぐことができる。この場合にはN−グラフェン膜が透明導電膜12側にあることが好ましい。これは、N−グラフェン層が、ポリマー膜中に残存するフリーのブレンステッド酸が導電層へ拡散することを防ぐことができるからである。
実施形態による透明電極が基板を具備する場合には、目的に応じて基板の種類が選択される。例えば、透明基板としては、ガラスなどの無機材料、PET、PEN、ポリカーボネート、PMMAなどの有機材料が用いられる。特に、柔軟性のある有機材料を用いると、実施形態による透明電極が柔軟性に富むものになるので好ましい。
また、実施形態による透明電極は、バッファ層やブルッカイト酸化チタン層(詳細後述)をさらに具備することもできる。これらの層は、実施形態による透明電極が電子デバイスに組み込まれた際に、光電変換層などから移動してくるハロゲンなどによって導電層が劣化することを防ぐ作用を奏する。
[実施形態2]
図2を用いて、第2の実施形態に係る光電変換素子の構成について説明する。図2は、本実施形態に係る太陽電池セル20(光電変換素子)の構成概略図である。太陽電池セル20は、このセルに入射してきた太陽光等の光の光エネルギーを電力に変換する太陽電池としての機能を有する素子である。太陽電池セル20は、透明電極21の表面に設けられた光電変換層22と、光電変換層22の透明電極21の反対側面に設けられた対向電極23とを具備している。
ここで透明電極21は実施形態1で示されたものと同様である。すなわち、アモルファス無機酸化物を含有する導電層と、ポリマー膜、N−グラフェン膜、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される遮蔽層とを有している。
光電変換層22は、入射してきた光の光エネルギーを電力に変換して電流を発生させる半導体層である。光電変換層22は、一般に、p型の半導体層とn型の半導体層とを具備している。光電変換層としてはp型ポリマーとn型材料との積層体、RNHPbX(Xはハロゲンイオン、Rはアルキル基等)、CIGSなどの化合物半導体等がある。
また光電変換層22として、シリコン半導体や、InGaAsやGaAsやカルコパイライト系やCdTe系やInP系やSiGe系などの無機化合物半導体、量子ドット含有型、さらには色素増感型の透明半導体を用いてもよい。いずれの場合も効率が高く、より出力の劣化を小さくできる。
遮蔽層の材料として自己ドープ型導電性ポリマーを用い、かつ光電変換層に陽イオンが含まれる場合、ポリマー中に含まれる局在化されたカチオンは、光電変換層に含まれる陽イオンと同じ陽イオンであることが好ましい。例えばCHNHPbXを含む光電変換層であれば局在化されたカチオンはメチルアンモニウムイオンが好ましい。
光電変換層22と透明電極21の間には電荷注入を促進もしくはブロックするためにバッファ層24が挿入されていてもよい。
対向電極23は通常は金属電極であるが、実施形態による透明電極を用いてもよい。対向電極23と光電変換層22の間には電荷注入を促進もしくはブロックするためにバッファ層25が挿入されていてもよい。
遮蔽層として自己ドープ型導電性ポリマー層を用いる場合には、透明電極21が陽極となる構成が好ましい。
遮蔽層としてN−グラフェン膜を用いる場合には、透明電極21は陽極および陰極にもすることができる。ただし、陽極となる透明電極に、遮蔽層としてN−グラフェン膜を用いる場合には、N−グラフェン膜と光電変換層22との間にイオン化ポテンシャルを大きくするバッファ層を設置することが好ましい。このようなバッファ層としては例えばバナジウム酸化物、PEDOT/PSS、p型ポリマー、五酸化バナジウム(V)、2,2’,7,7’−Tetrakis[N,N−di(4−methoxyphenyl)amino]−9,9’− spirobifluorene(以下、Spiro−OMeTADという)、酸化ニッケル(NiO)、三酸化タングステン(WO)、三酸化モリブデン(MoO)等からなる層を用いることができる。
一方、陰極となる透明電極に、遮蔽層としてN−グラフェン膜を用いる場合には、N−グラフェン層と光電変換層22との間に仕事関数を小さくするバッファ層24を設置することが好ましい。このようなバッファ層としてはフッ化リチウム(LiF)、カルシウム(Ca)、6,6’−フェニル−C61−ブチル酸メチルエステル(6,6’−phenyl−C61−butyric acid methyl ester、C60−PCBM)、6,6’−フェニル−C71−ブチル酸メチルエステル(6,6’−phenyl−C71−butyric acid methyl ester、以下C70−PCBMという)、インデン−C60ビス付加体(Indene−C60 bisadduct、以下、ICBAという)、炭酸セシウム(CsCO)、二酸化チタン(TiO)、poly[(9,9−bis(3’−(N,N−dimethylamino)propyl)−2,7−fluorene)−alt−2,7−(9,9−dioctyl− fluorene)](以下、PFNという)、バソクプロイン(Bathocuproine、以下BCPという)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化亜鉛(ZnO)、ポリエチンイミン等からなる層を用いることができる。
なお、遮蔽層に代えて、あるいは、遮蔽層と光電変換層との間に、ブルッカイト型酸化チタン層を設けることができる。酸化チタンには、ルチル型、アナターゼ型、およびブルッカイト型の3種類の結晶構造があることが知られている。実施形態においては、このうちブルッカイト型酸化チタンを含む層を用いることが好ましい。このブルッカイト型酸化チタン層は、光電変換層から導電層へのハロゲンの移動、および導電層から光電変換層への金属イオンの移動を抑制する効果を奏する。このため、電極や電子デバイスの長寿命化が可能となる。このようなブルッカイト型酸化チタン層は、ブルッカイト型酸化チタンのナノ粒子、具体的には平均粒子径が5〜30nmの粒子からなるものが好ましい。ここで、平均粒子径は粒度分布測定装置により測定した。このようなブルッカイト型ナノ粒子は、例えば高純度化学研究所などから市販されている。
対向電極23して、透明電極21と同様の構造を有する電極を用いてもよい。また、対向電極23として、無置換の平面状の単層グラフェンを含有していてもよい。無置換の単層グラフェンは、メタン、水素、アルゴンを反応ガスとして銅箔を下地触媒層としたCVD法により作製することができる。たとえば熱転写フィルムと単層グラフェンを圧着した後、銅を溶解して、単層グラフェンを熱転写フィルム上に転写する。同様の操作を繰り返すことに複数の単層グラフェンを熱転写フィルム上に積層することができ、2〜4層のグラフェン層を作製する。この膜に銀ペースト等を用いて集電用の金属配線を印刷することで対向電極とすることができる。無置換のグラフェンの代わりに、一部の炭素がホウ素で置換されたグラフェンを用いてもよい。ホウ素置換グラフェンはBH、メタン、水素、アルゴンを反応ガスとして同様に作製できる。これらのグラフェンは熱転写フィルムからPET等の適当な基板上に転写することもできる。
またこれらの単層もしくは多層グラフェンに電子ドナー分子として3級アミンをドーピングしてもよい。このようなグラフェン膜からなる電極も透明電極として機能する。
対向電極23上に正孔注入層25として例えばポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)・ポリ(スチレンスルホン酸)複合体(PEDOT・PSS)膜を形成してもよい。この膜は、例えば50nmの厚さとすることができる。
実施形態による太陽電池セルは、両面を透明電極に挟まれた構造とすることができる。
このような構造を有する太陽電池は、両面からの光を効率よく利用することができる。エネルギー変換効率は一般に5%以上であり、長期間安定でフレキシブルであるという特徴を有する。
また、対向電極23としてグラフェン膜の代わりに、ITOガラス透明電極を用いることができる。この場合には、太陽電池のフレキシビリティは犠牲になるが高効率で光エネルギーを利用することができる。また、金属電極としてステンレスや銅、チタン、ニッケル、クロム、タングステン、金、銀、モリブデン、すず、亜鉛等を用いてもよい。この場合には、透明性が低下する傾向にある。
なお、本実施形態の太陽電池セルは光センサーとしても使用できる。グラフェン薄膜は可視光から赤外領域が透明であるので、赤外領域に感度を有する光電変化層を用いると赤外線センサーとしても利用できる。
[実施形態3]
まず、図3を用いて、第3の実施形態に係る光電変換素子の構成について説明する。図3は、本実施形態に係る有機EL素子30(光電変換素子)の構成概略図である。有機EL素子30は、この素子に入力された電気エネルギーを光に変換する発光素子としての機能を有する素子である。有機EL素子30は、透明電極31の表面に設けられた光電変換層(発光層)32と、光電変換層32の透明電極31の反対側面に設けられた対向電極33とを具備している。
ここで透明電極21は実施形態1で示されたものと同様である。
光電変換層32は、透明電極31から注入された電荷と対向電極33から注入された電荷を再結合させ電気エネルギーを光に変換させる有機薄膜層である。光電変換層32は通常p型の半導体層とn型の半導体層からなっている。光電変換層32と対向電極33の間には電荷注入を促進もしくはブロックするためバッファ層35が設けられ、光電変換層32と透明電極31の間にもバッファ層34が設けられていてもよい。
対向電極33は、通常は金属電極であるが透明電極を用いてもよい。対向電極33と光電変換層(発光層)32の間には電荷注入を促進もしくはブロックするためにバッファ層35が挿入されていてもよい。
遮蔽層として自己ドープ型導電性ポリマー層を用いる場合には、透明電極31が陽極となる構成が好ましい。
遮蔽層としてN−グラフェン膜を用いる場合には、透明電極31は陽極および陰極にもすることができる。ただし、陽極となる透明電極に、遮蔽層としてN−グラフェン膜を用いる場合には、N−グラフェン膜と光電変換層32との間にイオン化ポテンシャルを大きくするバッファ層を設置することが好ましい。このようなバッファ層としては例えばバナジウム酸化物、PEDOT/PSS、p型ポリマー、五酸化バナジウム、Spiro−OMeTAD、酸化ニッケル、三酸化タングステン、三酸化モリブデン等からなる層を用いることができる。
一方、陰極となる透明電極に、遮蔽層としてN−グラフェン膜を用いる場合には、N−グラフェン層と光電変換層22との間に仕事関数を小さくするバッファ層24を設置することが好ましい。このようなバッファ層としては亜鉛酸化物、チタン酸化物、フッ化リチウム、炭酸セシウム、ポリエチレンイミン類、等がある。
なお、実施形態2と同様に、遮蔽層に代えて、あるいは、遮蔽層と光電変換層との間に、ブルッカイト型酸化チタン層を設けることができる。
対向電極33として、透明電極31と同様の透明電極を用いてもよい。また透明電極として、実施形態2において説明したグラフェン膜を用いてもよい。
実施形態による有機EL素子は、両面を透明電極に挟まれた構造とすることができる。
このような構造を有する有機EL素子は、両面発光が可能であり、長期間安定でフレキシブルである。
[実施形態4]
第4の実施形態に係る電子デバイスの製造方法を、図4を参照しながら説明すると以下の通りである。
実施形態による電子デバイス40の製造方法は、導電層41、遮蔽層42、光電変換層43、対抗電極44を接合させることにより製造することができる。これらの各層および電極は、それぞれ独立に形成させてから接合しても、各層を順次積層形成させてもよい。
各層の形成方法について説明すると以下の通りである。
導電層41は基板を有しない単独の膜であってもよいが、基板の表面に形成されていてもよい。一般的には、製造を容易にするために、基板の表面に導電層を形成させることが好ましい。
実施形態において、導電層41はアモルファス無機酸化物を含有する層である。アモルファス無機酸化物としては、ITOやFTOが好ましく用いられる。これらのアモルファス無機酸化物の膜は、一般的にはスパッタリング法により形成される。また、印刷法により形成されてもよい。
導電層41は、金属薄膜を有していてもよい。導電層が金属薄膜を有する場合には、無機酸化物を含む膜の上に直接形成させても、無機酸化物を含む膜に金属薄膜を貼り付けてもよい。
導電層41に接合する遮蔽層42は、(i)ポリマー膜、(ii)N−グラフェン膜、および(iii)ポリマー膜とN−グラフェン膜との組み合わせのいずれかである。
遮蔽層としてポリマー膜を用いる場合には、前記した自己ドープ型導電性ポリマーを含む水溶液を調製し、その水溶液を塗布乾燥することによって形成させることができる。ポリマー水溶液のpHは、3以上とすることが好ましい。このようなpHとすることで、自己ドープ型導電性ポリマーのブレンステッド酸の共役塩基が陰イオンとして存在することが可能となり、光電変換層に含まれるハロゲンイオン等の陰イオンの電極への拡散を防ぐことができる。この結果、電極の劣化を防いだり、デバイス外部から光電変換層への陰イオン等の拡散を防ぐことが可能となり、電子デバイスの耐久性を向上することができる。
なお、ポリマー水溶液のpHは11以下であることが好ましい。ポリマーとして非自己ドープ型導電性ポリマーを用いた場合には、強酸性であるpH2以下であることが必要となり、実施形態の効果を達成することが困難となる。なお、ポリマー水溶液には、ポリオール化合物もしくは酸化グラフェンを添加することができる。これらの添加物を用いることで、隣接層との接着性を高めることから好ましい。なお、ポリマー膜は、導電層の上に直接形成させても、ほかの基板上に形成させたポリマー膜を、前記した導電層の上に転写などにより設置することもできる。
遮蔽層としてN−グラフェン膜用いる場合には、N−グラフェン膜を例えば以下の方法によって形成させる。
まず、下地触媒として銅箔を準備し、その表面をレーザー照射によってアニール処理し、結晶粒を大きくする。次いで、その銅箔の表面に、アンモニア、メタン、水素、およびアルゴン(15:60:65:200ccm)を反応ガスとして、1000℃/5分の条件下、化学気相蒸着法(以下、CVDという)により膜を作製する。得られた膜を、アンモニア、アルゴン気流下1000℃で5分間、さらに処理した後、アルゴン下で冷却することによって、単層のN−グラフェン膜を得ることができる。
単層N−グラフェン膜の表面に熱転写フィルムを圧着した後、アンモニアアルカリ性の塩化第二銅エッチャントに漬けて、銅箔を溶解し、単層グラフェンを熱転写フィルム上に転写する。同様の操作を繰り返すことにより、熱転写フィルム上に単層グラフェンが2〜4層積層された多層N−グラフェン膜を得ることができる。
上記したN−グラフェン膜の製造法において、CVD法の原料としてアンモニアガスの代わりにピリジンやメチルアミン、エチレンジアミン、尿素などの低分子窒素化合物やメタンの代わりにエチレンやアセチレン、メタノール、エタノール等を用いてもよい。
N−グラフェン膜はその他の方法でも形成することができる。例えば、酸化グラフェンの水分散液を石英ガラス上や金属上(例えばCu)にスピンコートして薄膜状にした後、アンモニア、水素、アルゴンの混合雰囲気下で熱処理して窒素置換して製造することができる。または酸化グラフェン薄膜をヒドラジンで加熱処理して乾燥させて製造することができる。または、無置換グラフェン薄膜を窒素プラズマ中で処理して製造することもできる。
さらには、ポリアクリロニトリル、ポリイミドなどの含窒素ポリマー化合物を石英ガラス上や金属上に塗布して薄膜を形成し、それを真空中やアルゴン下で加熱することによりグラファイト化することによっても製造できる。また窒素置換グラフェンの分散液を作製し、その分散液を石英ガラスなどに塗布する方法や、グラフェン分散液をフィルターでろ過してフィルター上にN−グラフェンを堆積させることにより膜を作製し、フィルターから剥離して膜を作製できる。
実施形態による透明電極において、このように形成されたN−グラフェン層は、導電層の上に直接、または前記したポリマー膜を介して導電層の上に間接的に、設置されている。この設置は後述するように、熱転写フィルムから転写されることによって行われるのが一般的である。このとき、あらかじめ導電層に集電用の金属配線を形成させておいてもよい。
遮蔽膜として、ポリマー膜とN−グラフェン膜との組み合わせを用いる場合には、導電層の直上にN−グラフェン膜を設置し、その上にポリマー膜を形成または設置することが好ましい。
光電変換層43の形成方法は、用いられる材料に応じて適切に選択され、特に限定されない。たとえばペロブスカイト太陽電池ではペロブスカイト化合物前駆体溶液を塗布し、乾燥することにより光電変換層を形成することができる。また、半導体結晶からなる半導体膜を張り付けることにより光電変換層とすることもできる。
対抗電極44は、その構成に応じて任意の方法で製造することができる。金属薄膜を光電変換層に接合することや、光電変換層の表面にスパッタ法などにより金属層を積層することもできる。また、実施形態による透明電極を接合したり、単層または多層グラフェン膜を電極として接合することもできる。
これら、導電層41、遮蔽層42、光電変換層43、および対抗電極44を接合することで電子デバイス40を形成させる。これらの接合の順序は特に限定されず、任意の順序で、または同時に行うことができる。
必要に応じて、導電層または対抗電極に基板を接合したり、遮蔽層42と光電変換層43との間、および/または光電変換層43と対抗電極44との間にバッファ層を挿入して接合することもできる。
さらには、バッファ層と光電変換層の間にブルッカイト型酸化チタン層を設けたり、バッファ層に代えてブルッカイト型酸化チタン層を設けたりしてから接合することもできる。このブルッカイト型酸化チタン層は、グラフェン膜を含む遮蔽層と組み合わせることが特に好ましい。ブルッカイト型酸化チタン層は、ブルッカイト型酸化チタンのナノ粒子を極性溶媒中に分散させた分散液を、遮蔽層、バッファ層、または光電変換層の表面に塗布し、乾燥させることで形成させることができる。分散液の濃度は、目的とする層の厚さや電子デバイスの性能などに応じて調整される。ナノ粒子の分散安定性を維持するために、分散液のpHは1〜3であることが好ましい。塗布方法は、スピンコート、バーコート、スプレーコートなど、任意の方法を採用することができる。塗布後、高温、例えば100〜150℃に加熱することで乾燥が好ましい。なお、分散液の濃度が低い場合、塗布後に直ちに加熱を行うと、ナノ粒子の凝集が起こる場合がある。このため、加熱に先立って、溶媒の大部分を一般に35℃以下、例えば室温において除去した後、加熱して高温に付することが好ましい。
接合は塗布等のウエットプロセス、貼り合わせや転写等のドライプロセス、スパッタや蒸着等の真空プロセス等で作製することができる。この中で貼り合わせや転写は溶媒等の制約がなく、また低温でできるため素子ダメージが少ないために好ましい。貼り合わせ面としては真空貼り合わせ等を用いればすべて面で接合が可能である。素子耐久性の面で接着性があるバッファ層面が好ましく、自己ドープ型導電性ポリマー面が特に好ましい。なお、ここで「接合」とは、いずれかの層の上に直接別の層を形成させることも包含するものとする。
(実施例1)
図1に示す構造の透明電極10を作成した。この電極は、a−ITO/銀合金/a−ITOの積層構造(厚さ100nm)を有する導電層が厚さ150μmのPETフィルム上に形成され、その上にブレンステッド酸アニオンと局在化されたカチオンを側鎖に含有する自己ドープ型導電性ポリマー膜である遮蔽層が積層されている。
自己ドープ型導電性ポリマーとして下記式(Ia−x)で示されるスルホン酸基を有するポリチオフェンの10%水溶液に、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を添加してpH6に調整する。この水溶液をa−ITO/銀合金/a−ITOを有する導電層にバーコーターを用いて塗布した後90℃で1時間乾燥して透明電極を作製する。
Figure 0006697406
この透明電極は15%塩水中での3日間浸漬では電極の導電性や形状に変化は見られない。
(実施例2)
図1に示す構造の透明電極10を作成した。この電極は、a−ITO/銀合金/a−ITOの積層構造(厚さ100nm)を有する導電層が厚さ150μmのPETフィルム上に形成され、その上に平面状の、炭素原子の一部が窒素原子に置換された、平均4層のN−グラフェン膜が積層された遮蔽層が形成されている。
遮蔽層は以下の通り作成する。まず、Cu箔の表面をレーザー照射によって加熱処理し、アニールにより結晶粒を大きくする。このCu箔を下地触媒層とし、アンモニア、メタン、水素、アルゴン(15:60:65:200ccm)を混合反応ガスとして1000℃、5分間の条件下、CVD法により平面状の単層N−グラフェン膜を製造する。この時、ほとんどは単層のグラフェン膜が形成されるが、条件により一部に2層以上のN−グラフェン膜も生成する。さらにアンモニア、アルゴン混合気流下1000℃で5分処理した後、アルゴン気流下で冷却する。熱転写フィルム(150μm厚)と単層N−グラフェンを圧着した後、Cuを溶解するため、アンモニアアルカリ性の塩化第二銅エッチャントに漬けて、単層N−グラフェン膜を熱転写フィルム上に転写する。同様の操作を繰り返すことに単層グラフェン膜を熱転写フィルム上に4層積層して多層N−グラフェン膜を得る。
熱転写フィルムをa−ITO/銀合金/a−ITO/PETフィルムの上にラミネートした後、加熱してN−グラフェン膜をa−ITO/銀合金/a−ITO/PETフィルム上に転写して透明電極を作製する。
XPSで測定された窒素の含有量は、この条件では1〜2atm%である。XPSから測定したカーボン材料の炭素原子と酸素原子の比率は100〜200である。
この透明電極は15%塩水中での3日間浸漬では導電性や形状に変化は見られない。
(実施例3)
図1に示す構造の透明電極10を作成した。この電極は、a−ITO/銀合金/a−ITOの積層構造(厚さ100nm)を有する導電層が厚さ150μmのPETフィルム上に形成され、その上に平面状の、炭素原子の一部が窒素原子に置換された、平均2層のN−グラフェン膜が積層された遮蔽層が形成されている。
遮蔽層は以下の通り作成した。まず、a−ITO/銀合金/a−ITOの積層構造を有する導電層を準備する。この導電層のITO表面をUVオゾン処理して親水性にしておく。次いで、酸化グラフェンの水溶液をUVオゾン処理した導電層上にバーコーターで塗布する。グラフェン膜の膜厚は酸化グラフェンの濃度とバーコーターのバーと導電層との距離で調整することができる。塗布後、90℃で20分乾燥し、さらに110℃の水和ヒドラジン蒸気で1時間処理して、酸化グラフェン膜の炭素の一部が窒素原子に置換された2層グラフェン膜を具備した透明電極を作製する。
この透明電極は15%塩水中での3日間浸漬では導電性や形状に変化は見られない。
(実施例4)
図1に示す構造の透明電極10を作成する。この電極は、a−ITO/銀合金/a−ITOの積層構造(厚さ100nm)を有する導電層が厚さ150μmのPETフィルム上に形成され、その上に平面状の、炭素原子の一部が窒素原子に置換され、平均2層のN−グラフェン膜と、ブレンステッド酸アニオンと局在化されたカチオンを側鎖に含有する自己ドープ型導電性ポリマー膜が積層された遮蔽層が形成されている。
この透明電極は、実施例3で得られる透明電極上に、実施例1と同様の方法でポリマー積層することにより作製する。
この透明電極は20%塩水中での3日間浸漬では導電性や形状に変化は見られない。
(実施例5)
図1に示す構造の透明電極10を作成する。この電極は、a−ITO(厚さ400nm)を有する導電層が厚さ150μmのPETフィルム上に形成され、その上に平面状の、炭素原子の一部が窒素原子に置換され、平均2層のN−グラフェン膜が積層された遮蔽層が形成されている。
この透明電極は、導電層を変更し、実施例3と同様の方法で作成する。
この透明電極はpH1.5の塩酸中での2日間浸漬では導電性や形状に変化は見られない。また浸漬後の塩酸中には、溶解したインジウムやスズは検出されない。
(実施例6)
図1に示す構造の透明電極10を作成する。この電極は、a−ITO(厚さ400nm)を有する導電層が厚さ150μmのPETフィルム上に形成され、その上に平面状の、炭素原子の一部が窒素原子に置換され、平均2層のN−グラフェン膜と、ブレンステッド酸アニオンと局在化されたカチオンを側鎖に含有する自己ドープ型導電性ポリマー膜が積層された遮蔽層が形成されている。
この透明電極は、導電層を変更し、実施例4と同様の方法で作成する。
この透明電極にpH1.5のPEDOT・PSSの水溶液を塗布し110℃で15分乾燥する。この透明電極は大気中での1週間放置では導電性や形状に変化は見られない。また放置後の透明電極の断面を走査型電子顕微鏡での観察ではPEDOT・PSS層中に溶解したインジウムやスズは検出されない。
(実施例7)
図1に示す構造の透明電極10を作成する。この電極は、a−ZnO(厚さ400nm)を有する導電層が厚さ150μmのPETフィルム上に形成され、その上に平面状の、炭素原子の一部が窒素原子に置換された、平均2層のN−グラフェン膜と、ブレンステッド酸アニオンと局在化されたカチオンを側鎖に含有する自己ドープ型導電性ポリマー膜が積層された遮蔽層が形成されている。
この透明電極は、導電層を変更し、実施例4と同様の方法で作成する。
この透明電極にpH1.5のPEDOT・PSSの水溶液を塗布し110℃で15分乾燥する。この透明電極は大気中での1週間放置では導電性や形状に変化は見られない。また放置後の透明電極の断面を走査型電子顕微鏡で観察ではPEDOT・PSS層中に溶解したインジウムやスズは検出されない。
(比較例1)
厚さ150μmのPETフィルム上に、ITO/銀合金/ITOの積層構造(厚さ100nm)が形成された透明導電フィルムを、25%塩水中に3日間浸漬したところ、導電性が低下し、表面に白点が観察される。この白点は、銀合金と塩化物イオンの反応により形成されるものである。
(比較例2)
厚さ150μmのPETフィルム上にa−ITO(厚さ400nm)からなる導電層が形成された透明導電フィルムを、pH1.5の塩酸中2日間浸漬すると、導電性が低下する。また、浸漬後の塩酸中に溶解したインジウムやスズが検出される。
(実施例8)
図2に示す太陽電池セルを作成する。この太陽電池セルは、
(a)厚さ150μmのPETフィルム、
(b)a−ITO/銀合金/a−ITOの積層構造(厚さ100nm)を有する導電層、(c)平面状の、2層N−グラフェン膜、
(d)ブレンステッド酸アニオンと局在化されたカチオンを側鎖に含有する自己ドープ型導電性ポリマー膜、
(e)ペロブスカイト型有機無機ハイブリッド型光電変換層、
(f)バッファ層、
(g)平面状の、4層N−グラフェン膜
(h)a−ITO/銀合金/a−ITOの積層構造(厚さ100nm)を有する導電層、および
(i)厚さ150μmのPETフィルム
がこの順序で積層される。ここで、(c)と(d)とが遮蔽層を構成し、(b)、(c)および(d)が実施形態による透明電極を構成し、(g)と(h)とが対向電極を構成する。なお、この対向電極も実施形態による透明電極であり、(g)も遮蔽層である。
この太陽電池を以下の方法で作成する。
PETフィルム(a)の上に導電層(b)を形成させる。次いで導電層のITO表面をUVオゾン処理して親水性にする。ついで、そのITO表面上に酸化グラフェン水溶液をバーコーターで塗布する。90℃で20分乾燥した後、110℃で水和ヒドラジン蒸気で1時間処理して酸化グラフェンが一部窒素原子に置換された2層N−グラフェン膜(c)に変化させる。次に、式(Ia−x)で示されるポリチオフェンの10%水溶液に、メチルアミン水溶液を添加してpH6に調整し、ポリマーに対して5%のソルビト−ル(低分子ポリオール化合物)を混合して、自己ドープ型導電性ポリマー水溶液を調製する。この水溶液をN−グラフェン膜(c)上にバーコーターを用いて塗布した後90℃で1時間乾燥して、ポリマー膜(d)を形成させ、透明電極を作製する。
対向電極および光電変換層は以下の通り作成する。PETフィルム(i)の表面に導電層(h)を形成させる。この導電層の表面に、実施例2と同様の方法で4層N−グラフェン膜(g)を形成させる。このN−グラフェン膜上にC60−PCBMのトルエン溶液をバーコーターで塗布してバッファ層(f)を形成させる。その上にPbIのジメチルホルムアミド溶液(20wt%)を、バーコーターで塗布し、次いで、CHNHIのイソプロピルアルコール溶液(2wt%)を、バーコーターで塗布し、90℃で30分乾燥することにより光電変換層(e)を形成させる。
透明電極と、対向電極の上に形成した光電変換層とを、80℃、乾燥大気中で貼り合わせ、周りを封止することにより両面が透明な太陽電池セルを作製する。
得られる太陽電池セルは1SUNの太陽光に対して14%以上のエネルギー変換効率を示し、一か月放置しても効率の劣化は5%未満である。
(実施例9)
図2に示す太陽電池セルを作成した。この太陽電池セルは、ポリマー水溶液のpH調整にメチルアミンに代えて1,4−ジアミノブタンを用い、光電変換層の形成にCHNHIに代えて(CHNHBrを用いた他は、実施例8と同様の方法で作成する。
得られる太陽電池セルは1SUNの太陽光に対して14%以上のエネルギー変換効率を示し、一か月放置しても効率の劣化は3%未満である。
(実施例10)
図2に示す太陽電池セルを作成した。この太陽電池セルは、
(a)厚さ150μmのPETフィルム、
(b)a−ITO/銀合金/a−ITOの積層構造(厚さ100nm)を有する導電層、(c)平面状の、2層N−グラフェン膜、
(d)ブレンステッド酸アニオンと局在化されたカチオンを側鎖に含有する自己ドープ型導電性ポリマー膜、
(e)バッファ層、
(f)ペロブスカイト型有機無機ハイブリッド型光電変換層、
(g)バッファ層、
(h)銀電極層
がこの順序で積層される。ここで、(c)と(d)とが遮蔽層を構成し、(b)、(c)および(d)が実施形態による透明電極を構成する。
この太陽電池を以下の方法で作成する。
PETフィルム(a)の上に導電層(b)を形成させる。次いで導電層のITO表面をUVオゾン処理して親水性にする。ついで、そのITO表面上に酸化グラフェン水溶液をバーコーターで塗布する。90℃で20分乾燥した後、110℃で水和ヒドラジン蒸気で1時間処理して酸化グラフェンが一部窒素原子に置換された2層N−グラフェン膜(c)に変化させる。次に、式(Ia−1)で示されるポリチオフェンの10%水溶液に、メチルアミン水溶液を添加してpH6に調整し、ポリマーに対して5%のソルビト−ル(低分子ポリオール化合物)を混合して、自己ドープ型導電性ポリマー水溶液を調製する。この水溶液をN−グラフェン膜(c)上にバーコーターを用いて塗布した後90℃で1時間乾燥して、ポリマー膜(d)を形成させ、透明電極を作製する。
透明電極の上に、PEDOT・PSSの水溶液をバーコーターで塗布し、100℃で30分乾燥してPEDOT・PSSを含むバッファ層(e)(50nm厚)を形成させる。
バッファ層(e)上にPbIのジメチルホルムアミド溶液(20wt%)を、バーコーターで塗布し、次いで、CHNHBrのイソプロピルアルコール溶液(2wt%)を、バーコーターで塗布してから、90℃で30分乾燥することによって光電変換層(f)を形成させる。
光電変換層(f)の上にC60−PCBMのトルエン溶液をバーコーターで塗布して乾燥することにより、バッファ層(g)を形成させる。
対向電極(h)としてバッファ層(g)の上に銀膜をスパッタで作製し、周りを封止することにより太陽電池セルを作製する。
得られる太陽電池セルは1SUNの太陽光に対して12%以上のエネルギー変換効率を示し、一か月放置しても効率の劣化は7%未満である。
(実施例11)
図2に示す太陽電池セルを作成する。この太陽電池セルは、
(a)ステンレス箔からなる金属薄膜電極(対向電極)、
(b)平面状の、2層N−グラフェン膜
(c)バッファ層、
(d)ペロブスカイト型有機無機ハイブリッド型光電変換層、
(e)バッファ層、
(f)平面状の、2層N−グラフェン膜、
(g)a−ITO(厚さ400nm)からなる導電層
(h)銅からなる補助電極層
がこの順序で積層される。ここで、(f)が遮蔽層を構成し、(f)および(g)が実施形態による透明電極を構成する。
ステンレス箔(a)の表面を、希塩酸で処理して表面酸化膜を除去してから酸化グラフェンの水溶液をバーコーターで塗布して酸化グラフェン膜を形成させる。次いで、90℃で20分乾燥した後、110℃で水和ヒドラジン蒸気で1時間処理して酸化グラフェンの炭素原子の一部が窒素原子に置換された2層N−グラフェン膜(b)に変化させる。
N−グラフェン膜(b)の上に、PEDOT・PSSの水溶液をバーコーターで塗布し、100℃で30分乾燥してPEDOT・PSSを含むバッファ層(c)(50nm厚)を形成させる。
バッファ層(c)上にPbIのジメチルホルムアミド溶液(20wt%)を、バーコーターで塗布し、次いで、CHNHBrのイソプロピルアルコール溶液(2wt%)を、バーコーターで塗布してから、90℃で30分乾燥することによって光電変換層(d)を形成させる。
光電変換層(d)の上にバッファ層としてC60−PCBMのトルエン溶液をバーコーターで塗布して乾燥させ、バッファ層(e)を形成させる。
バッファ層(e)の上に酸化グラフェン水溶液をバーコーターで塗布する。90℃で20分乾燥した後、110℃で水和ヒドラジン蒸気で1時間処理して酸化グラフェンが一部窒素原子に置換された2層N−グラフェン膜(f)に変化させる。
N−グラフェン膜(f)の表面にa−ITOをスパッタで製膜し、さらに補助電極として銅をスパッタして補助配線を作製して透明電極を形成させる。さらに周りを封止することにより太陽電池セルを作製する。
得られる太陽電池セルは1SUNの太陽光に対して12%以上のエネルギー変換効率を示し、一か月放置しても効率の劣化は3%未満である。
(実施例12)
図2に示す太陽電池セルを作成した。この太陽電池セルは、
(a)ステンレス箔からなる金属薄膜電極(対向電極)、
(b)自己ドープ型導電性ポリマーを含むポリマー層
(c)バッファ層、
(d)ペロブスカイト型有機無機ハイブリッド型光電変換層、
(e)バッファ層、
(f)平面状の、2層N−グラフェン膜、
(g)a−ITO(厚さ400nm)からなる導電層
(h)銅からなる補助電極層
がこの順序で積層される。ここで、(f)が遮蔽層を構成し、(f)および(g)が実施形態による透明電極を構成する。
自己ドープ型導電性ポリマーとして下記式(Ia−y)で示されるスルホン酸基を有するポリチオフェンの10%水溶液に、メチルアミン水溶液を添加してpH7に調整し、ポリマーに対して1%の酸化グラフェンを混合して、ポリマー水溶液を調製した。ステンレス箔(a)の表面を、希塩酸で処理して表面酸化膜を除去してから、ポリマー水溶液をバーコーターで塗布し、90℃で20分乾燥させてポリマー膜(b)を形成させる。
Figure 0006697406
ポリマー膜(b)の上に、PEDOT・PSSの水溶液をバーコーターで塗布し、100℃で30分乾燥してPEDOT・PSSを含むバッファ層(c)(50nm厚)を形成させる。
次に、熱転写フィルム上に、PbIのジメチルホルムアミド溶液(20wt%)を、バーコーターで塗布し、次いで、CHNHIのイソプロピルアルコール溶液(2wt%)を、バーコーターで塗布した後、90℃で30分乾燥して光電変換層(d)を形成させる。
熱転写フィルムをステンレス箔に貼り合わせた後、加熱して、光電変換層(d)をバッファ層(c)の上に転写して、熱転写フィルムを剥離する。
転写された光電変換層(d)の上にバッファ層としてC60−PCBMのトルエン溶液をバーコーターで塗布して乾燥させ、バッファ層(e)を形成させる。
バッファ層(e)の上に酸化グラフェン水溶液をバーコーターで塗布する。90℃で20分乾燥した後、110℃で水和ヒドラジン蒸気で1時間処理して酸化グラフェンが一部窒素原子に置換された2層N−グラフェン膜(f)に変化させる。
N−グラフェン膜(f)の表面にa−ITOをスパッタで製膜し、さらに補助電極として銅をスパッタして補助配線を作製して透明電極を形成させる。さらに周りを封止することにより太陽電池セルを作製する。
得られる太陽電池セルは1SUNの太陽光に対して10%以上のエネルギー変換効率を示し、一か月放置しても効率の劣化は5%未満である。
(実施例13)
図2に示す太陽電池セルを作成した。この太陽電池セルは、実施例8に示した太陽電池に対して、ペロブスカイト型光電変換層をバルクヘテロ接合型光電変換層に代えた構成を有するものであり、以下の構成を有している。
(a)厚さ150μmのPETフィルム、
(b)a−ITO/銀合金/a−ITOの積層構造(厚さ100nm)を有する導電層、(c)平面状の、2層N−グラフェン膜、
(d)ブレンステッド酸アニオンと局在化されたカチオンを側鎖に含有する自己ドープ型導電性ポリマー膜、
(e)バルクヘテロ接合型光電変換層、
(f)平面状の、4層N−グラフェン膜
(g)a−ITO/銀合金/a−ITOの積層構造(厚さ100nm)を有する導電層、および
(h)厚さ150μmのPETフィルム
がこの順序で積層される。ここで、(c)と(d)とが遮蔽層を構成し、(b)、(c)および(d)が実施形態による透明電極を構成し、(f)と(g)とが対向電極を構成する。なお、この対向電極も実施形態による透明電極である。
この太陽電池を以下の方法で作成する。
透明電極は、ポリマー水溶液のpH調整にメチルアミンに代えて水酸化ナトリウムを用い、ポリマー水溶液のpHは7としたほかは、実施例8と同様の方法により作成する。
対向電極および光電変換層は以下の通り作成する。PETフィルム(h)の表面に導電層(g)を形成させる。この導電層の表面に、実施例2と同様の方法で4層N−グラフェン膜(f)を形成させる。このN−グラフェン膜上にポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)(以下、P3HTという)とC60−PCBMとを含むクロルベンゼン溶液をバーコーターで塗布し、100℃で20分乾燥することにより光電変換層(e)を形成させる。
透明電極と、対向電極の上に形成した地光電変換層とを、80℃、乾燥大気中で貼り合わせ、周りを封止することにより両面が透明な太陽電池セルを作製する。
得られる太陽電池セルは1SUNの太陽光に対して3%以上のエネルギー変換効率を示し、一か月放置しても効率の劣化は5%未満である。
(比較例3)
図2に示す太陽電池セルを作成した。この太陽電池セルは、
(a)厚さ150μmのPETフィルム
(b)a−ITO/銀合金/a−ITOの積層構造(厚さ100nm)を有する導電層
(c)バッファ層、
(d)ペロブスカイト型有機無機ハイブリッド型光電変換層、
(e)バッファ層、
(f)銀電極層
がこの順序で積層される。
この太陽電池を以下の方法で作成する。
PETフィルム(a)の上に導電層(b)を形成させる。次いで導電層の上に、PEDOT・PSSの水溶液をバーコーターで塗布し、100℃で30分乾燥してPEDOT・PSSを含むバッファ層(c)(50nm厚)を形成させる。
バッファ層(c)上にPbIのジメチルホルムアミド溶液(20wt%)を、バーコーターで塗布し、次いで、CHNHBrのイソプロピルアルコール溶液(2wt%)を、バーコーターで塗布してから、90℃で30分乾燥することによって光電変換層(d)を形成させる。
光電変換層(d)の上にC60−PCBMのトルエン溶液をバーコーターで塗布して乾燥することにより、バッファ層(e)を形成させる。
対向電極(f)としてバッファ層(e)の上に銀膜をスパッタで作製し、周りを封止することにより太陽電池セルを作製する。
得られる太陽電池セルは1SUNの太陽光に対して14%以上のエネルギー変換効率を示すが、一か月放置すると効率は50%以上低下する。
(実施例14)
図3に示す有機EL素子を作成する。この有機EL素子は、
(a)厚さ150μmのPETフィルム、
(b)a−ITO/銀合金/a−ITOの積層構造(厚さ100nm)を有する導電層、(c)平面状の、2層N−グラフェン膜、
(d)バッファ層、
(e)光電変換層(発光層)、
(f)銀−マグネシウム電極層
がこの順序で積層される。ここで、(c)が遮蔽層を構成し、(b)および(c)が実施形態による透明電極を構成する。
この有機EL素子を以下の方法で作成する。
PETフィルム(a)の上に導電層(b)を形成させる。次いで導電層のITO表面をUVオゾン処理して親水性にする。ついで、そのITO表面上に酸化グラフェン水溶液をバーコーターで塗布する。90℃で20分乾燥した後、110℃で水和ヒドラジン蒸気で1時間処理して酸化グラフェンが一部窒素原子に置換された2層N−グラフェン膜(c)に変化させる。
N−グラフェン膜(c)の上に、PEDOT・PSSの水溶液をバーコーターで塗布し、100℃で30分乾燥してPEDOT・PSSを含むバッファ層(d)(50nm厚)を形成させる。
バッファ層(d)の上にp型の有機半導体であるN,N’−ジ−1−ナフチル−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(以下、NPDという)を30nmの厚さで蒸着し、その上にn型の半導体としても機能し、発光層でもあるトリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq)(40nm)を蒸着する。さらに発光層(e)の上に銀−マグネシウム電極(f)をスパッタ法により製膜する。
得られる有機EL素子は出力光の劣化が少なく、1000時間連続運転しても出力の低下は10%である。
(実施例15)
光電変換素子として化合物薄膜太陽電池を作製する。ステンレス(SUS304)鋼箔上にモリブデンを蒸着する。その上に光電変換層としてCu−Ga膜を作製、In膜を作製、セレン化によるp型のCIGS膜を作製し、その上n型層としてCdS膜を作製する。その上に酸化グラフェンの水溶液をバーコーターで塗布して酸化グラフェン膜を形成させる。次いで、90℃で20分乾燥した後、110℃で水和ヒドラジン蒸気で1時間処理して酸化グラフェンの炭素原子の一部が窒素原子に置換された2層N−グラフェン膜に変化させ遮蔽層を作製する。さらにその上にアルファス成分を含有するZnO膜をスパッタで製膜する。その上に補助電極としてアルミニウムをスパッタ製膜する。
得られる太陽電池セルは1SUNの太陽光に対して16%以上のエネルギー変換効率を示し、一か月放置しても効率の劣化は5%未満である。
上記に述べるように、実施形態に係る透明電極はアモルファス無機酸化物含有膜を含有する導電層と、該導電層の上に形成された、ブレンステッド酸アニオンと局在化されたカチオンを側鎖に含有する自己ドープ型導電性ポリマー膜、及び/または、窒素原子を含有するグラフェン膜を含有する遮蔽層を有するものである。この透明電極によって、光電変換層に含まれるハロゲンイオン等の陰イオン等の電極への拡散や酸の電極への拡散を防ぐことにより電極劣化を防いだり、外部からの陰イオン等の光電変換層への拡散を防ぎ、ペロブスカイト型太陽電池や有機太陽電池等の太陽電池や光センサーやOLED等の電子デバイスの耐久性を向上できる。
一般に、アモルファス無機酸化物が酸にさらされると含有する金属イオンが溶けだし光電変換層に拡散して素子劣化を起こしやすい。遮蔽膜として非自己ドープ型導電性ポリマーを含む膜を形成することができるが、その場合にはその膜を調製するためにポリマー溶液のpHは一般に2以下である。これに対して、自己ドープ型導電性ポリマーを用いると、ポリマー溶液のpHを3以上にすることができる。このようなポリマー溶液を用いると、自己ドープ型導電性ポリマーのブレンステッド酸の共役塩基が陰イオンとして存在するため、光電変換層に含まれるハロゲンイオン等の陰イオンの電極への拡散を防ぐことができる。この結果、電極劣化を防いだり、外部からの陰イオン等の光電変換層への拡散を防ぐことが可能となり、OPVやペロブスカイトPV等の太陽電池や光センサーや電子デバイスの耐久性を向上することができる。
なお透明電極側ではなく金属を用いた対向電極側に本実施形態による自己ドープ型導電性ポリマーやN−グラフェンやこれらの積層構造を形成しても金属イオンの溶解を防止することができるため素子寿命を長くすることができる。
(実施例16)
図5に示す構造の太陽電池50を作成する。
PETフィルム51の上にITO/銀合金/ITOからなる導電層52を形成させる。次いで導電層52のITO表面をUVオゾン処理して親水性にする。ついで、そのITO表面上に酸化グラフェン水溶液をバーコーターで塗布する。90℃で20分乾燥した後、110℃で水和ヒドラジン蒸気で1時間処理して酸化グラフェンが一部窒素原子に置換された2層N−グラフェン層53に変化させる。XPSで測定された窒素の含有量は、この条件では4〜5atm%である。XPSから測定したカーボン材料の炭素原子と酸素原子の比率は5〜10である。次に、1−ブタノールにSnClを溶解させた溶液をバーコーターで塗布する。窒素雰囲気下室温で1時間乾燥させた後、130℃で10分加熱して第1のバッファ層54を作製する。
ブルッカイト酸化チタンナノ粒子を水/エタノール混合溶媒(塩酸でpH1.5に調整)に分散させ、バーコーターで塗布する。窒素下室温で1時間乾燥させた後130℃で10分加熱してブルッカイト酸化チタン層55を作製する。次にPbIのジメチルホルムアミド溶液(20wt%)を、バーコーターで塗布し、次いで、CHNHBrのイソプロピルアルコール溶液(2wt%)を、バーコーターで塗布してから、90℃で30分乾燥することによって有機無機ハイブッリドペロブスカイト層(光電変換層)56を作製する。
PETフィルム59上にNi層をメッキして第2の導電層58(対向電極)を作製した。その上に、5%のソルビトールを添加したPEDOT・PSSの水溶液をバーコーターで塗布し、100℃で30分乾燥してPEDOT・PSSを含む第2のバッファ層57(50nm厚)を形成させる。
第2バッファ層57を80℃に加熱し、有機無機ハイブッリドペロブスカイト層56と大気中で湿度を30%以下にした条件で貼り合わせて周りを封止することにより太陽電池セル50を作製する。
得られる太陽電池セルは1SUNの太陽光に対して13%以上のエネルギー変換効率を示し、一か月放置しても効率の劣化は5%未満である。
(実施例17)
グラフェン層として以下の通り作成することを除いては実施例16と同様にして太陽電池セルを作製する。まず、Cu箔の表面をレーザー照射によって加熱処理し、アニールにより結晶粒を大きくする。このCu箔を下地触媒層とし、アンモニア、メタン、水素、アルゴン(15:60:65:200ccm)を混合反応ガスとして1000℃、5分間の条件下、CVD法により平面状の単層N−グラフェン膜を製造する。この時、ほとんどは単層のグラフェン膜が形成されるが、条件により一部に2層以上のN−グラフェン膜も生成する。さらにアンモニア、アルゴン混合気流下1000℃で5分処理した後、アルゴン気流下で冷却する。熱転写フィルム(150μm厚)と単層N−グラフェンを圧着した後、Cuを溶解するため、アンモニアアルカリ性の塩化第二銅エッチャントに漬けて、単層N−グラフェン膜を熱転写フィルム上に転写する。同様の操作を繰り返すことに単層グラフェン膜を熱転写フィルム上に4層積層して多層N−グラフェン膜を得る。熱転写フィルムをa−ITO/銀合金/a−ITO/PETフィルムの上にラミネートした後、加熱してN−グラフェン膜をa−ITO/銀合金/a−ITO/PETフィルム上に転写して透明電極を作製する。
XPSで測定された窒素の含有量は、この条件では1〜2atm%である。XPSから測定したカーボン材料の炭素原子と酸素原子の比率は100〜200である。
得られる太陽電池セルは1SUNの太陽光に対して15%以上のエネルギー変換効率を示し、一か月放置しても効率の劣化は5%未満である。
10…透明電極
11…透明基板
12…導電膜
13…遮蔽層
20…太陽電池セル
21…透明電極
22…光電変換層
23…対向電極
24、25…バッファ層
30…有機EL素子
22…透明電極
23…光電変換層(発光層)
33…対向電極
34、35…バッファ層
40…透明基板
41…導電層
42…遮蔽層
43…光電変換層
44…対向電極
50…太陽電池セル
51、59…PETフィルム
52…導電層
53…2層N−グラフェン層
54、57…バッファ層
55…ブルッカイト型酸化チタン層
56…光電変換層
58…対向電極

Claims (12)

  1. 陽極と陰極と光電変換層とを具備する電子デバイスであって、前記陽極、前記陰極、または前記陽極および前記陰極の両方が透明電極であり、
    前記透明電極が、
    アモルファス無機酸化物を含有する導電層と、
    前記導電層の上に形成された、N−グラフェン膜からなる遮蔽層と、
    を具備し、
    前記N−グラフェン膜が、炭素のみからなるグラフェン膜を構成する炭素の一部が窒素原子で置換された膜であり、
    前記光電変換層がハロゲン原子を含むペロブスカイトを含有する
    ものであることを特徴とする電子デバイス。
  2. 前記導電層が、前記アモルファス無機酸化物含有膜と、銀もしくは銀合金を含有する金属膜との積層体である、請求項1記載の電子デバイス。
  3. 前記導電層が透明基板上に設置されている、請求項1または2に記載の電子デバイス。
  4. 前記N−グラフェン膜の平均層数が、2以上4以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電子デバイス。
  5. 前記N−グラフェン膜の、炭素原子に対する窒素原子の含有率が0.1〜10atom%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子デバイス。
  6. 前記N−グラフェン膜の上に、自己ドープ型導電性ポリマーを含有する膜がさらに積層されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子デバイス。
  7. 前記自己ドープ型導電性ポリマーを含有する膜が、ポリオール化合物または酸化グラフェンをさらに含有する、請求項6に記載の電子デバイス。
  8. 前記自己ドープ型導電性ポリマーが、ブレンステッド酸のアニオンと局在化されたカチオンを側鎖に含有し、前記局在化されたカチオンが、前記ペロブスカイトの結晶に含まれるカチオンと同じである、請求項に記載の電子デバイス。
  9. 前記透明電極に対向する対向電極が金属電極である、請求項1〜8のいずれか一項記載の電子デバイス。
  10. 前記金属電極と光電変換層との間に、ブレンステッド酸のアニオンと局在化されたカチオンとを側鎖に有する自己ドープ型導電性ポリマーを含む膜、N−グラフェン膜、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるもう一つの遮蔽層をさらに具備する、請求項に記載の電子デバイス。
  11. アモルファス無機酸化物を含有する導電層を用意する工程と、
    N−グラフェン膜からなる遮蔽層を用意する工程と、
    ハロゲン原子を含むペロブスカイトを含有する光電変換層を用意する工程と、
    対向電極を用意する工程と、
    前記の各層を接合させる工程と
    を含み、
    前記N−グラフェン膜が、炭素のみからなるグラフェン膜を構成する炭素の一部が窒素原子で置換された膜であることを特徴とする、電子デバイスの製造方法。
  12. 前記N−グラフェン膜の上にブレンステッド酸のアニオンと局在化されたカチオンとを側鎖に有する自己ドープ型導電性ポリマーを含有する膜を形成させる工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
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