JP6693205B2 - 溶接方法および船舶の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、船舶が備える鋼板同士を突合わせ溶接する方法に関する。また、その溶接方法を用いる船舶の製造方法に関する。
船舶が備える鋼板には、脆性亀裂の伝播を停止させる特性(以下、「アレスト性」ともいう)が要求される。船舶では、脆性亀裂が発生しやすい箇所が限られており、その箇所にはアレスト性に優れる鋼(以下、「高アレスト鋼」ともいう)が適用される場合が多い。例えば、コンテナ船では、ハッチサイドコーミングウェブおよびデッキプレート等で脆性亀裂が発生しやすい。
図1A〜図1Cは、コンテナ船のハッチサイドコーミングの一例を示す模式図である。そのうちの図1Aはコンテナ船の全体の横断面図、図1Bはハッチサイドコーミング周辺(図1AのX部)を拡大した横断面図、図1Cはハッチサイドコーミング周辺の斜視図である。図1Aおよび図1Bは、船舶の長手方向(前後方向)の中間部における横断面図である。図面の理解を容易にするため、図1Bおよび図1Cでは、隅肉溶接の溶接金属について図示を省略する。
コンテナ船10は、図1Aに示すように、上部に開口を有し、その上部には、ハッチサイドコーミング20が設けられる。ハッチサイドコーミング20は、図1Bおよび図1Cに示すように、ハッチサイドコーミングウェブ21と、ハッチサイドコーミングトップ22と、コーミング付きロンジスチフナ23とを備える。ハッチサイドコーミングウェブ21は上下方向に沿って設けられる。また、ハッチサイドコーミングトップ22は、コンテナ船10の幅方向に沿って設けられ、ハッチサイドコーミングウェブ21の上部と隅肉溶接によって接合される。なお、ロンジスチフナ23は、必要に応じて設けられ、ハッチサイドコーミング20がロンジスチフナ23を備えない場合もある。
このようなハッチサイドコーミング20は、デッキプレート11上に設けられる。具体的には、ハッチサイドコーミングウェブ21の下部がデッキプレート11と隅肉溶接または部分溶け込み溶接によって接合される。デッキプレート11は、コンテナ船10の幅方向に沿って設けられ、外板12および縦隔壁13と隅肉溶接によって接合される。外板12および縦隔壁13は、いずれも上下方向に沿って設けられる。そのうちの外板12はコンテナ船10の幅方向の舷側に配置され、縦隔壁13は幅方向の内側に配置される。
ハッチサイドコーミングウェブ21およびデッキプレート11等は、コンテナ船10の長手方向に沿って伸びる。このようなハッチサイドコーミングウェブ21およびデッキプレート11等は、いずれも、複数の鋼板からなり、複数の鋼板は突合わせ溶接によって接合される。このため、図1Cに示すように、ハッチサイドコーミングウェブ21は、所定の間隔で突合わせ溶接部21cを有し、その溶接部21c(溶接線)は上下方向に沿って伸びる。また、デッキプレート11も、所定の間隔で突合わせ溶接部11cを有し、その溶接部11c(溶接線)は船舶の幅方向に沿って伸びる。
このようなハッチサイドコーミングウェブ21およびデッキプレート11等では、脆性亀裂が発生しやすいことから、高アレスト鋼が適用される場合が多い。
高アレスト鋼を用いても、船舶では、突合わせ溶接部(以下、単に「溶接部」ともいう)のうちの溶接金属内に脆性亀裂が発生し、溶接線に沿って伝播することがある。また、溶接部周辺の母材(鋼板)のアレスト性が、溶接の際の入熱で低減することがある。このような溶接部のうちの熱影響部(以下、「溶接熱影響部」ともいう)では、靱性が低下することから、脆性亀裂の発生および伝播が起きやすい。このため、発生した脆性亀裂が溶接線に沿って溶接熱影響部内を伝播する場合がある。
溶接部での脆性亀裂の伝播を停止する技術は、例えば特許4733955号公報(以下、「特許文献1」という)および特許5433928号公報(以下、「特許文献2」という)に記載される。
特許文献1に記載の溶接方法では、脆性亀裂が伝播する可能性のある突合わせ溶接継手において、脆性亀裂を停止させる領域を設ける。その領域では、溶接継手の一部をガウジングまたは機械加工により除去した後、その除去部分を補修溶接することによって補修溶接部を形成する。その補修溶接部は、突合わせ溶接部に比べて高い靭性とし、所定の形状とする。これにより、特許文献1では、溶接部を伝播する脆性亀裂を逸らせて鋼板に導き、亀裂の伝播を停止できるとしている。また、特許文献1では、補修溶接部の靭性を高めるため、Niを2質量%以上含有する溶接ワイヤを用いて補修溶接を行う。
特許文献2では、V形の開先が設けられた鋼板同士を多層盛突合わせ溶接する。多層盛突合わせ溶接では、多パスで溶接することにより、複数の溶接層を形成する。その際、表面溶接層と裏面溶接層との間に、超音波打撃処理により圧縮残留応力が付与された改質層を形成する。その改質層は、圧縮残留応力が付与されていることから、脆性亀裂が発生および伝播しにくい特性を有する。このような改質層により、亀裂の伝播を抑制または停止できるとしている。
特許4733955号公報 特許5433928号公報
前述の通り、突合わせ溶接部で脆性亀裂が発生し、溶接線に沿って伝播する場合がある。船舶では、突合わせ溶接部のうちの溶接線方向の先端近傍(例えば先端から20mmの範囲)で脆性亀裂が発生しやすい。具体的には、前記図1A〜図1Cに示すようなコンテナ船10の場合、波による曲げ応力に伴い、ハッチサイドコーミングウェブ21同士の溶接部21cのうち、上方の先端近傍(図1Bの破線の円で囲む部分参照)で脆性亀裂が発生し、上下方向に沿って伝播しやすい。また、デッキプレート11同士の溶接部11cでは、その両方の先端近傍(舷側および内側の先端近傍、図1Bの破線の円で囲む部分参照)のいずれも脆性亀裂が発生しやすく、その亀裂が船舶の幅方向に沿って伝播しやすい。
このような脆性亀裂の伝播を所定の位置で停止させるため、アレスト設計が行われる。例えば、前記図1A〜図1Cに示すコンテナ船では、船舶の長手方向において、ハッチサイドコーミングウェブ21同士の溶接部21cの位置は、デッキプレート11同士の溶接部11cの位置と異なる。この場合、ハッチサイドコーミングウェブ21同士の溶接部21cのうちの上方の先端近傍で脆性亀裂が発生し、溶接線に沿って伝播すると、脆性亀裂がデッキプレート11に到達する。デッキプレート11はアレスト性に優れるので、亀裂の伝播がデッキプレート11で停止する。
しかしながら、亀裂の伝播長さが長くなるほど、亀裂の伝播を停止させるのが難しくなるので、亀裂の伝播長さが短い段階(以下、「初期段階」ともいう)で亀裂の伝播を停止させるのが望まれる。また、亀裂の伝播を停止させた後も亀裂が残存するので、亀裂によって船舶が損傷することとなる。この船舶への損傷を低減する観点からも、亀裂の伝播長さが短い段階で亀裂の伝播を停止させるのが望まれる。
前述の特許文献1に記載の溶接方法では、溶接継手の一部をガウジングまたは機械加工により除去した後、その除去部分を補修溶接することによって補修溶接部を形成する。その際、補修溶接部の靭性を高めるため、Niを2質量%以上含有する溶接ワイヤを用いる。このような特許文献1では、突合わせ溶接部の先端近傍に発生する脆性亀裂について検討されていない。また、特許文献1に記載の溶接方法では、ガウジングや補修溶接によって工数が増加する。また、補修溶接部の靭性を高めるため、高価な溶接ワイヤを用いる必要があり、材料コストが増加する。
前述の特許文献2に記載の溶接方法では、多層盛突合わせ溶接により、表面溶接層、裏面溶接層、および、中間の改質層を形成する。加えて、改質層には、超音波打撃処理によって圧縮残留応力を付与する。このような特許文献2では、突合わせ溶接部の先端近傍に発生する脆性亀裂について検討されていない。また、特許文献2に記載の溶接方法により、溶接のパス数の増加や超音波衝撃処理によって工数が増加する。
本発明の目的は、工数の増加を低減しながら、溶接部のうちで溶接線方向の先端近傍に発生する脆性亀裂の伝播を初期段階で停止できる溶接方法を提供することである。また、その溶接方法を用いる船舶の製造方法を提供することである。
本発明の一実施形態による溶接方法は、船舶が備える第1の鋼板および第2の鋼板を突合わせ溶接する方法であって、当該溶接方法は、溶接前に、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板との突合わせ部を、一方の端部である第1のA区間と残りのB区間とに分割し、または、一方の端部である第1のA区間と他方の端部である第2のA区間と残りのB区間とに分割する工程と、前記区間ごとにアーク溶接を行う工程と、を含む。
前記A区間の長さL(mm)は、20mm以上であり、かつ、下記(1)式を満足するのが好ましい。
6000≧σ(πL)1/2{(2W/πL)tan(πL/2W)}1/2 ・・・(1)
ここで、Wは前記鋼板の幅(mm)、σは前記鋼板の幅方向と垂直な方向の許容応力(MPa)である。
本実施形態の溶接方法は、前記第1の鋼板および前記第2の鋼板が、いずれも、ハッチサイドコーミングウェブである構成を採用できる。この場合、前記突合わせ部を分割する工程では、前記突合わせ部が、上方の端部である前記第1のA区間と前記残りのB区間に分割される。
本実施形態の溶接方法は、前記第1の鋼板および前記第2の鋼板が、いずれも、デッキプレートである構成を採用できる。この場合、前記突合わせ部を分割する工程では、前記突合わせ部が、船舶の幅方向における舷側の端部である前記第1のA区間と、前記幅方向における内側の端部である前記第2のA区間と、前記残りのB区間に分割される。
本発明の一実施形態による船舶の製造方法は、前記船舶が備える第1の鋼板および第2の鋼板を準備する工程と、上述の溶接方法により、前記第1の鋼板および前記第2の鋼板を突合わせ溶接する工程と、を含む。
本発明の溶接方法および船舶の製造方法は、溶接前に突合わせ部を複数の区間に分割し、それらの区間ごとにアーク溶接を行う。この場合、脆性亀裂が伝播して溶接部の継ぎ目の周辺に到達すると、脆性亀裂が溶接部から逸れてアレスト性の高い鋼板中に導かれる。これにより、脆性亀裂の伝播を初期段階で停止できる。また、ガウジング、補修溶接および超音波衝撃処理を行わないので、工数の増加を低減できる。
図1Aは、コンテナ船の全体の横断面図である。 図1Bは、図1AのX部を拡大した横断面図である。 図1Cは、図1AのX部を拡大した斜視図である。 図2Aは、本実施形態の溶接方法によってハッチサイドコーミングウェブ同士を突合わせ溶接する手順例(以下、「第1手順例」ともいう)における突合わせ部の区間を示す模式図である。 図2Bは、第1手順例におけるA区間の溶接後を示す模式図である。 図2Cは、第1手順例における残りのB区間の溶接後を示す模式図である。 図3Aは、溶接回数を1回とする場合にハッチサイドコーミングウェブの溶接部で圧縮残留応力が発生する部分を示す模式図である。 図3Bは、溶接回数を2回とする場合にハッチサイドコーミングウェブの溶接部で圧縮残留応力が発生する部分を示す模式図である。 図4Aは、本実施形態の溶接方法によってデッキプレート同士を突合わせ溶接する手順例(以下、「第2手順例」ともいう)における突合わせ部の区間を示す模式図である。 図4Bは、第2手順例における舷側のA区間の溶接後を示す模式図である。 図4Cは、第2手順例における内側のA区間の溶接後を示す模式図である。 図4Dは、第2手順例における残りのB区間の溶接後を示す模式図である。 図4Eは、第2手順例における溶接後の残留応力分布を示す模式図である。 図5Aは、実施例の試験体を模式的に示す正面図である。 図5Bは、図5Aの右側面図である。 図6Aは、本発明例1での試験体の作製手順におけるA区間の突合わせ溶接後を模式的に示す正面図である。 図6Bは、本発明例1での試験体の作製手順におけるノッチ加工後を模式的に示す正面図である。 図6Cは、本発明例1での試験体の作製手順におけるLBH模擬板の隅肉溶接後を模式的に示す正面図である。 図6Dは、本発明例1での試験体の作製手順におけるHSC模擬板の仮付け溶接後を模式的に示す正面図である。 図6Eは、本発明例1での試験体の作製手順における残りのB区間の突合わせ溶接後を模式的に示す正面図である。 図6Fは、本発明例1での試験体の作製手順におけるHSC模擬板の本溶接後を模式的に示す正面図である。 図7Aは、比較例1での試験体の作製手順における突合わせ溶接後を模式的に示す正面図である。 図7Bは、比較例1での試験体の作製手順におけるノッチ加工後を模式的に示す正面図である。 図7Cは、比較例1での試験体の作製手順におけるLBH模擬板の隅肉溶接後を模式的に示す正面図である。 図7Dは、比較例1での試験体の作製手順におけるHSC模擬板の仮付け溶接後を模式的に示す正面図である。 図7Eは、比較例1での試験体の作製手順におけるHSC模擬板の本溶接後を模式的に示す正面図である。 図8Aは、本発明例1で亀裂が伝播した経路を模式的に示す正面図である。 図8Bは、比較例1で亀裂が伝播した経路を模式的に示す正面図である。
本実施形態の溶接方法では、船舶が備える第1の鋼板および第2の鋼板を突合わせ溶接する。本実施形態の溶接方法は、例えば、前記図1A〜図1Cに示すようなハッチサイドコーミングウェブ21同士の突合わせ溶接を対象にできる。この場合、第1の鋼板および第2の鋼板は、いずれも、ハッチサイドコーミングウェブ21となる。また、本実施形態の溶接方法は、デッキプレート11同士の突合わせ溶接を対象にしてもよい。この場合、第1の鋼板および第2の鋼板は、いずれも、デッキプレート11となる。
本実施形態の溶接方法について、ハッチサイドコーミングウェブ同士の突合わせ溶接に適用する場合の手順例を参照しながら以下に説明する。
図2A〜図2Cは、本実施形態の溶接方法によってハッチサイドコーミングウェブ同士を突合わせ溶接する手順例を示す模式図である。そのうちの図2Aは突合わせ部の区間、図2BはA区間の溶接後、図2Cは残りのB区間の溶接後をそれぞれ示す。図2A〜図2Cは、ハッチサイドコーミングウェブを図1Bの右側から観察する場合を示す。なお、本発明において、溶接部は、溶接金属と溶接熱影響部とを含むが、図面の理解を容易にするため、図2A〜図2Cおよび後述の図3A〜図8Bでは、溶接金属を溶接部として示す。
本実施形態の溶接方法は、溶接前に、第1の鋼板21aと第2の鋼板21bとの突合わせ部21f(本手順例ではハッチサイドコーミングウェブ同士の溶接線)を複数の区間に分割する工程と、それらの区間ごとにアーク溶接を行う工程と、を含む。
溶接前に突合わせ部21fを分割する工程では、突合わせ部21fを2つの区間または3つの区間に分割する。突合わせ部21fを2つの区間に分割する態様では、図2Aに示すように、溶接(溶接線21e)方向の一方の端部である第1のA区間Z1と、残りのB区間ZRとに分割する。後述の図4Aに示すように、突合わせ部11fを3つの区間に分割する態様では、一方の端部である第1のA区間Z1と、他方の端部である第2のA区間Z2と、残りのB区間ZRとに分割する。
続いて、突合わせ部21fについて、上述の区間ごとにアーク溶接を行う。図2A〜図2Cに示す手順例では、A区間Z1についてアーク溶接を行った後(図2B参照)、残りのB区間ZRについてアーク溶接を行う(図2C参照)。このように区間ごとに溶接を行うことにより、連続する溶接部21cを複数回の溶接によって形成する。これにより、形成された溶接部21cは、区間の境界に継ぎ目21dを有し、その継ぎ目21dの周辺に圧縮残留応力が発生する。その理由を図3Aおよび図3Bを参照しながら説明する。
図3Aおよび図3Bは、ハッチサイドコーミングウェブの溶接部で圧縮残留応力が発生する部分を示す模式図である。そのうちの図3Aは溶接回数を1回とする場合、図3Bは溶接回数を2回とする場合をそれぞれ示す。図3Aおよび図3Bでは、溶接部21cのうちで圧縮残留応力が発生する部分を破線で囲んで示し、それ以外の部分では引張残留応力が発生する。図3Aは、突合わせ部を分割することなく、1回の溶接によって溶接部21cを形成する場合を示す。また、図3Bは、前述の図2A〜図2Cに示す手順例を採用する場合を示す。なお、以下の説明において、開始部は、溶接部のうちで溶接開始時に形成される部分を意味し、終了部は、溶接部のうちで溶接終了時に形成される部分を意味する。
アーク溶接によって連続する溶接部を形成する場合、開始部と終了部との間の部分では、変形が拘束された状態で溶接入熱により溶融膨張し、その後凝固収縮する。このため、開始部と終了部の間の部分には、引張残留応力が発生する。一方で、開始部および終了部は、開始部と終了部の間の部分と比べ、自由端面があるため変形しやすい。このため、開始部と終了部の間の部分に発生した引張残留応力との応力バランスを保つように圧縮残留応力が開始部および終了部に発生する。
したがって、1回の溶接によって溶接部21cを形成する場合、溶接部21cのうち、溶接線方向の両方の先端周辺(図3Aでは上方および下方の先端周辺)では、圧縮残留応力が発生し、それらの間の部分では引張残留応力が発生する。この場合、溶接部の上方の先端近傍で脆性亀裂が発生すると、引張残留応力が発生している部分を溶接線方向(図3Aでは上下方向)に沿って伝播し、溶接部21cの下方の先端やデッキプレート(図示なし)まで到達しやすい。
これに対し、本実施形態の溶接方法では、突合わせ部を複数の区間に分割し、連続する溶接部21cを複数回の溶接によって形成する。この場合、各回の溶接において、開始部および終了部に圧縮残留応力が発生する。このため、区間の境界周辺(継ぎ目21dの周辺)に圧縮残留応力が発生する(図3B参照)。この場合、溶接部の上方の先端近傍で発生した脆性亀裂が溶接線方向に沿って伝播し、脆性亀裂が継ぎ目21dの周辺に到達すると、溶接線方向に沿うことなく、脆性亀裂が逸れて第1の鋼板21aおよび第2の鋼板21bのいずれかに導かれる。第1の鋼板21aまたは第2の鋼板21bに到達した脆性亀裂は、鋼板のアレスト性によって伝播を停止する。
このように本実施形態の溶接方法では、溶接部21cの溶接線方向の先端近傍で脆性亀裂が発生した場合でも、溶接部21cの継ぎ目21dの周辺で逸らして鋼板に導くことができる。これにより、亀裂の伝播を停止できるので、本実施形態の溶接方法は、脆性亀裂の伝播を初期段階で停止できる。
本実施形態の溶接方法では、突合わせ部を複数の区間に分割し、複数回の溶接によって溶接部を形成する。このため、本実施形態の溶接方法は、突合わせ部を分割することなく、1回の溶接によって溶接部を形成する場合と比べ、工数が増加する。しかしながら、本実施形態の溶接方法における工数の増加は、特許文献1に記載の溶接方法におけるガウジングや補修溶接による工数の増加と比べ、軽微である。また、本実施形態の溶接方法における工数の増加は、特許文献2に記載の溶接方法におけるガウジングや補修溶接による工数の増加と比べ、小さい。溶接のパス数の増加や超音波衝撃処理による工数の増加と比べ、軽微である。このため、本実施形態の溶接方法は、従来の溶接方法と比べ、工数の増加を低減できる。
また、本実施形態の溶接方法では、特許文献1に記載の溶接方法のように高価な溶接ワイヤを用いなくてもよい。このため、安価な溶接ワイヤを用いれば、材料コストの増加を防止できる。
突合わせ部を2つの区間に分割する態様、および、突合わせ部を3つの区間に分割する態様のいずれを採用するかは、例えば、脆性亀裂が発生する可能性に基づいて決定すればよい。ハッチサイドコーミングウェブ同士の突合わせ溶接を対象とする場合のように、一方の先端近傍でのみ脆性亀裂が発生しやすければ、2つの区間に分割する態様および3つの区間に分割する態様のいずれも採用できる。工数の増加をより低減する観点では、2つの区間に分割する態様を採用するのが好ましい。
デッキプレート同士の突合わせ溶接を対象とする場合のように、両方の先端近傍のいずれでも脆性亀裂が発生しやすければ、3つの区間に分割する態様を採用するのが好ましい。3つの区間に分割する態様の手順例については、後で詳述する。
2つの区間に分割する態様を採用する場合、突合わせ部を一方の端部であるA区間と残りのB区間とに分割するが、両方の端部のいずれをA区間に設定するかは、脆性亀裂が発生する可能性に基づいて決定すればよい。具体的には、一方の端部(A区間)が、脆性亀裂が発生しやすい先端近傍を含むようにすればよく、ハッチサイドコーミングウェブであれば、上方の端部をA区間とすればよい。
2つの区間に分割する態様、および、3つの区間に分割する態様のいずれでも、A区間の長さL(mm)(図2A参照)は、20mm以上であるのが好ましい。その理由を以下に説明する。なお、3つの区間に分割する態様を採用する場合、2つのA区間の長さを、同じにしてもよく、あるいは、異ならせてもよい。A区間の長さL(mm)は、突合わせ部の溶接方向(図2Aの実線矢印参照)の先端からB区間との境界までの距離を意味する。
溶接欠陥は、溶接部の溶接線方向の先端から20mmの範囲内で発生しやすく、その範囲内で脆性亀裂が発生しやすい。このため、A区間の長さが20mm以上であれば、区間内で伝播しやすい脆性亀裂が発生することになり、亀裂の伝播を停止する効果が増大する。脆性亀裂の伝播開始時よりも、脆性亀裂が僅かに伝播した状態の方が、圧縮残留応力による亀裂の伝播を停止する効果が増大する。このため、A区間の長さは50mm以上とするのがより好ましい。亀裂の伝播を停止する効果をより増大させる観点から、A区間の長さは、80mm以上とするのが最も好ましい。
ここで、亀裂の伝播のしやすさは、下記(2)式の指数Kdによって数値化できる。亀裂の伝播を停止するためには、指数Kdは、鋼板の亀裂伝播停止靭性値Kca(N/mm3/2)以下とする必要がある。
Kd=σ1(πa)1/2{(2W/πa)tan(πa/2W)}1/2 ・・・(2)
ただし、σ1は亀裂伝播方向と垂直な方向の応力(MPa)、aは亀裂の長さ(mm)、Wは鋼板の幅(mm)である。
脆性亀裂が溶接部を伝播する場合、亀裂伝播方向と垂直な方向の応力σ1は、鋼板の幅方向と垂直な方向(図2Aの破線矢印参照)の応力となる。亀裂の長さaにA区間の長さL(mm)および応力σ1(実応力)に許容応力σ(MPa)を代入することによって算出される指数Kdを、鋼板の亀裂伝播停止靭性値Kca(N/mm3/2)以下とする。この場合、溶接部の継ぎ目の周辺で鋼板に導かれた脆性亀裂は、鋼板のアレスト性によって伝播を確実に停止する。換言すると、A区間の長さL(mm)が下記(3)式を満足すれば、脆性亀裂の伝播を確実に停止できる。このため、A区間の長さL(mm)が下記(3)式を満足するのが好ましい。
Kca≧σ(πL)1/2{(2W/πL)tan(πL/2W)}1/2 ・・・(3)
船舶では、アレスト性が要求される箇所に使用される鋼板の亀裂伝播停止靭性値は、(−10℃以下で)6000N/mm3/2以上である場合が多い。このため、A区間の長さL(mm)が、下記(1)式を満足するのがより好ましい。A区間の長さL(mm)が下記(1)式を満足すれば、鋼板の亀裂伝播停止靭性値が6000N/mm3/2程度である場合に伝播を確実に停止でき、靭性値がより高い場合には伝播をより確実に停止できる。
6000≧σ(πL)1/2{(2W/πL)tan(πL/2W)}1/2 ・・・(1)
許容応力σは、設計上の鋼板に作用してよい応力の大きさの上限値で、換言すると、設計時に鋼板に作用することが予測される応力(使用応力)である。このような許容応力は、強度計算によって算出でき、例えば、財団法人日本海事協会の鋼船規則CSR−B編に基づいて算出できる。許容応力は、例えば、ハッチサイドコーミングやデッキプレートであれば、250〜320MPa程度である。なお、鋼板の幅W(図2A参照、単位:mm)は、換言すると、突合わせ部の長さである。
続いて、本実施形態の溶接方法をデッキプレート同士の突合わせ溶接に適用する場合の手順例を説明する。
図4A〜図4Eは、本実施形態の溶接方法によってデッキプレート同士を突合わせ溶接する手順例を示す模式図である。そのうちの図4Aは突合わせ部の区間、図4Bは舷側のA区間の溶接後、図4Cは内側のA区間の溶接後、図4Dは残りのB区間の溶接後、図4Eは溶接後の残留応力分布をそれぞれ示す。図4A〜図4Eは、デッキプレートを図1Bの上方から観察する場合を示す。図4Eでは、溶接部11cのうちで圧縮残留応力が発生する部分を破線で囲んで示し、それ以外の部分では引張残留応力が発生する。
本手順例では、図4Aに示すように、突合わせ部11fを3つの区間に分割する。具体的には、船舶の幅方向における舷側の端部である第1のA区間Z1と、船舶の幅方向における内側の端部である第2のA区間Z2と、残りのB区間ZRとに分割する。
続いて、上述の区間ごとにアーク溶接を行う。図4A〜図4Eに示す手順例では、舷側のA区間Z1についてアーク溶接を行った後(図4B参照)、内側のA区間Z2についてアーク溶接を行い(図4C参照)、その後、残りのB区間ZRについてアーク溶接を行う(図4D参照)。
これにより、形成された溶接部11cは、区間の境界に継ぎ目11dを有し、その継ぎ目11dの周辺に圧縮残留応力が発生する(図4E参照)。このため、溶接部のうちで船舶の幅方向の舷側の先端近傍で脆性亀裂が発生して伝播し、脆性亀裂がその舷側の継ぎ目11dの周辺に到達すると、脆性亀裂が逸れて第1の鋼板11aまたは第2の鋼板11bに導かれる。また、溶接部のうちで船舶の幅方向の内側の先端近傍で脆性亀裂が発生して伝播し、脆性亀裂がその内側の継ぎ目11dの周辺に到達すると、脆性亀裂が逸れて第1の鋼板11aまたは第2の鋼板11bに導かれる。したがって、脆性亀裂は、初期段階で第1の鋼板11aまたは第2の鋼板11bに到達し、亀裂の伝播を停止する。
突合わせ部を2つの区間に分割する態様、および、突合わせ部を3つの区間に分割する態様のいずれでも、溶接を行う順序に特に制限はない。具体的には、突合わせ部を2つの区間に分割する態様であれば、図2A〜図2Cに示す手順例のように、A区間Z1の溶接を行った後に残りのB区間ZRの溶接を行うことができる。あるいは、残りのB区間ZRの溶接を行った後に、A区間Z1の溶接を行ってもよい。この場合でも、図3Bに示すように、継ぎ目21dの周辺に圧縮残留応力が発生し、亀裂の伝播を停止できる。
A区間Z1の溶接を行った後に残りのB区間ZRの溶接を行えば、A区間Z1の溶接を仮付け溶接として利用でき、作業性を向上できる。このため、A区間Z1の溶接を行った後に残りのB区間ZRの溶接を行うのが好ましい。
突合わせ部を3つの区間に分割する態様でも、図4A〜図4Dに示す手順例の順序に限定されず、他の順序で溶接を行ってもよい。2つのA区間Z1およびZ2の溶接を仮付け溶接として利用する観点から、残りのB区間ZRの溶接を最後に行うのが好ましい。
突合わせ部を2つの区間に分割する態様または3つの区間に分割する態様のどちらでも、残りのB区間ZRを複数に分割し、区間ごとにアーク溶接を行ってもよい。
第1および第2の鋼板の寸法や材質に特に制限はなく、従来から船舶に用いられる鋼板を用いることができる。例えば、鋼板の寸法は、長さ:1000〜8000mm、幅:1000〜4000mm、厚さ:6〜250mmとすることができる。また、鋼板に逸れた亀裂を確実に停止させる観点から、鋼板の亀裂伝播停止靭性値は―10℃で6000N/mm3/2以上とするのが好ましく、―10℃で8000N/mm3/2以上とするのがより好ましく、―10℃で10000N/mm3/2以上とするのが最も好ましい。
複数回の溶接によって溶接部を形成する場合、溶接部の継ぎ目で発生する溶接欠陥を防止するため、区間ごとにアーク溶接を行う工程では、複数回の溶接の間に、グラインダーを用いた研削等により、後段の溶接における開始部または終了部と接続する部分の余盛を除去するのが好ましい。例えば、図2A〜図2Cに示す手順例であれば、後段の残りのB区間ZRの溶接前に(図2Bに示す状態で)、溶接部21cの下部の余盛を除去するのが好ましい。また、図4A〜図4Eに示す手順例であれば、残りのB区間ZRの溶接前に(図4Cに示す状態で)、内側のA区間Z1の溶接部11cのうちで船舶の幅方向の内側部分の余盛を除去するとともに、舷側のA区間Z2の溶接部11cのうちで船舶の幅方向の舷側部分の余盛を除去するのが好ましい。
開先形状およびアーク溶接の種類等の溶接条件には、特に制限がなく、従来と同様に適宜設定することができる。アーク溶接には、例えば、一般的なガスシールドアーク溶接を採用できる。また、シールドガスには、例えば、一般的な二酸化炭素を採用できる。
[船舶の製造方法]
本実施形態の船舶の製造方法は、船舶が備える第1の鋼板および第2の鋼板を準備する工程と、その第1の鋼板および第2の鋼板を突合わせ溶接する工程と、を含む。突合わせ溶接は、前述の本実施形態の溶接方法によって行う。このため、本実施形態の船舶の製造方法によれば、脆性亀裂の伝播を鋼板に逸らせ、脆性亀裂の伝播を初期段階で停止できる。また、工数の増加を低減でき、安価な溶接ワイヤを用いる場合は材料コストの増加を防止できる。
本実施形態の船舶の製造方法は、上述の工程を含めばよく、それ以外は従来の船舶の製造方法と同様に行えばよい。
本発明の効果を確認するため、試験体を作製し、その試験体を用いて亀裂を伝播させる試験を行った。
[試験体の作製]
図5Aおよび図5Bは、実施例の試験体を示す模式図である。そのうちの図5Aは正面図であり、図5Bは右側面図である。試験体30の側面形状は、図5Bに示すように、十字状であり、複数の鋼板を溶接することによって作製される。試験体30は、ハッチサイドコーミングウェブを模擬するHSC模擬板31と、デッキプレートを模擬するDP模擬板32と、縦隔壁を模擬するLBH模擬板33とを備える。HSC模擬板31は、第1の鋼板31aおよび第2の鋼板31bからなり、長手方向の中央に突合わせ溶接部31cを有する。HSC模擬板31およびLBH模擬板33は、いずれも、DP模擬板32に隅肉溶接されている。
HSC模擬板31、DP模擬板32およびLBH模擬板33の材質は、炭素鋼とした。その鋼板の亀裂伝播停止靭性値が―10℃で3000N/mm3/2程度であり、アレスト性が低い。このため、突合わせ溶接部31cから鋼板に到達した脆性亀裂は、伝播を停止することなく、伝播を継続する。
HSC模擬板31、DP模擬板32およびLBH模擬板33の寸法は、以下の通りである。なお、HSC模擬板31の寸法は、突合わせ溶接後の寸法である。
HSC模擬板31の寸法:長さ1000mm、幅500mm、厚さ100mm
DP模擬板32の寸法:長さ1000mm、幅500mm、厚さ100mm
LBH模擬板33の寸法:長さ1000mm、幅200mm、厚さ100mm
突合わせ溶接および隅肉溶接は、いずれも、ガスシールドアーク溶接により行った。その際、シールドガスには二酸化炭素を用いた。HSC模擬板31の突合わせ溶接部31cは、以下の条件とした。
開先形状:V形
開先角度:30°
開先深さ:100mm
図6A〜図6Fは、本発明例1での試験体の作製手順を模式的に示す正面図である。そのうちの図6AはA区間の突合わせ溶接後、図6Bはノッチ加工後、図6CはLBH模擬板の隅肉溶接後、図6DはHSC模擬板の仮付け溶接後、図6Eは残りのB区間の突合わせ溶接後、図6FはHSC模擬板の本溶接後をそれぞれ示す。図面の理解を容易にするため、図6A〜図6Fでは、当該手順で形成した突合わせ溶接部31cまたは隅肉溶接部34にハッチングを施す。
本発明例1では、HSC模擬板31を構成する第1の鋼板31aおよび第2の鋼板31bを突合わせ溶接する前に、突合わせ部を上方の端部であるA区間と、残りのB区間に分割した。A区間の長さは、115mmとした。続いて、図6Aに示すように、A区間を溶接した。その際、突合わせ溶接部31cで欠陥が発生するのを防止するため、タブ板36を用いた。A区間の溶接後、突合わせ溶接部の上側の先端から、脆性亀裂を模擬するノッチ35を溶接線に沿って設けることにより、亀裂を導入した(図6B参照)。ノッチ35は、幅15mm、長さ100mm、深さ20mmとした。
一方で、LBH模擬板33をDP模擬板32に隅肉溶接した(図6C参照)。そのDP模擬板32に、さらにHSC模擬板31を隅肉溶接によって仮付けした(図6D参照)。この状態で、残りのB区間をアーク溶接し、HSC模擬板31の突合わせ溶接部31cを完成させた(図6E参照)。最後に、仮付けのHSC模擬板31をDP模擬板32に本溶接した(図6F参照)。
図7A〜図7Eは、比較例1での試験体の作製手順を模式的に示す正面図である。そのうちの図7Aは突合わせ溶接後、図7Bはノッチ加工後、図7CはLBH模擬板の隅肉溶接後、図7DはHSC模擬板の仮付け溶接後、図7EはHSC模擬板の本溶接後をそれぞれ示す。図7A〜図7Eでは、当該手順で形成した突合わせ溶接部31cまたは隅肉溶接部34にハッチングを施す。
比較例1では、最初に、HSC模擬板31を構成する第1の鋼板31aおよび第2の鋼板31bを突合わせ溶接した(図7A参照)。その際、突合わせ部を分割することなく、1回の溶接によって溶接部31cを形成した。また、溶接部31cで欠陥が発生するのを防止するため、タブ板36を用いた。突合わせ溶接後、突合わせ溶接部31cの上側の先端から、脆性亀裂を模擬するノッチ35を溶接線に沿って設けることにより、亀裂を導入した(図7B参照)。ノッチ35の寸法は、本発明例1と同じにした。一方で、LBH模擬板33をDP模擬板32に隅肉溶接した(図7C参照)。そのDP模擬板32に、さらにHSC模擬板31を隅肉溶接によって仮付けした(図7D参照)。最後に、仮付けのHSC模擬板31をDP模擬板32に本溶接した(図7F参照)。
比較例2では、本発明例1と同様の手順で試験体を得た後、その試験体に荷重を負荷することにより、突合わせ溶接部31cの圧縮残留応力を除去した。荷重は、鋼板の降伏応力390MPaの90%の応力が突合わせ溶接部31cに付与されるように設定した。なお、鋼板の降伏応力は、規格で規定される降伏応力の最小値とした。
[亀裂の伝播試験]
試験は、日本溶接協会規格WES2815(2014)を参考にして行った。具体的には、HSC模擬板31に温度勾配を付与するとともに、DP模擬板32およびLBH模擬板33を一定温度とした状態で、引張応力が突合わせ溶接部31cの溶接線と垂直な方向に発生するように荷重を負荷した。引張応力は、実際のコンテナ船の設計応力を模擬し、257MPaとした。
[試験結果]
図8Aおよび図8Bは、実施例で亀裂が伝播した経路を模式的に示す正面図である。そのうちの図8Aは本発明例1を、図8Bは比較例1をそれぞれ示す。図8Aおよび図8Bでは、亀裂が伝播した経路を破線矢印で示す。
比較例1では、図8Bに示すように、脆性亀裂を模擬する亀裂が、HSC模擬板31の突合わせ溶接部31cの溶接線に沿って伝播(直進)した。本試験では、アレスト性の低い鋼板を用いたので、DP模擬板に到達した亀裂は、伝播(直進)を停止することなく、LBH模擬板33まで到達し、試験体30が破断した。比較例2でも、比較例1と同様に、亀裂が伝播した。
これに対し、本発明例1では、図8Aに示すように、脆性亀裂を模擬する亀裂が、HSC模擬板31の突合わせ溶接部31cの溶接線に沿って伝播した後、溶接部の継ぎ目31d(A区間と残りのB区間の境界)の手前で逸れた。このため、亀裂は、第2の鋼板31bに到達した。本試験では、アレスト性の低い鋼板を用いたので、第2の鋼板31bに到達した亀裂は、伝播を継続し、第2の鋼板31bの長手方向の先端まで到達し、試験体30が破断した。
これらから、本実施形態の溶接方法および船体の製造方法によれば、溶接部の先端近傍に発生して伝播する脆性亀裂を初期段階で逸らせて鋼板に導けることが確認できた。
本発明の溶接方法および船舶の製造方法によれば、工数の増加を低減しながら、溶接部のうちで溶接線方向の先端近傍に発生する脆性亀裂の伝播を初期段階で停止できる。ハッチサイドコーミングウェブ同士およびデッキプレート同士の突合わせ溶接部では、先端近傍で脆性亀裂が発生して溶接線方向に沿って伝播しやすい。このため、ハッチサイドコーミングウェブ同士およびデッキプレート同士の突合わせ溶接において特に有効に利用できる。
10:コンテナ船、 11:デッキプレート、 11a:第1の鋼板、
11b:第2の鋼板、 11c:突合わせ溶接部(溶接金属)、 11d:継ぎ目、
11e:溶接線、 11f:突合わせ部、 12:外板、 13:縦隔壁、
14:デッキロッジ、 20:ハッチサイドコーミング、
21:ハッチサイドコーミングウェブ、 21a:第1の鋼板、
21b:第2の鋼板、 21c:突合わせ溶接部(溶接金属)、 21d:継ぎ目、
21e:溶接線、 21f:突合わせ部、 22:ハッチサイドコーミングトップ、
23:コーミング付きロンジスチフナ、 Z1:第1のA区間、
Z2:第2のA区間、 ZR:残りのB区間、 30:試験体、
31:HSC模擬板、 31a:第1の鋼板、 31b:第2の鋼板、
31c:突合わせ溶接部(溶接金属)、 31d:継ぎ目、 32:DP模擬板、
33:LBH模擬板、 34:隅肉溶接部(溶接金属)、 35:ノッチ、
36:タブ板

Claims (4)

  1. 船舶が備える第1の鋼板および第2の鋼板を突合わせ溶接する方法であって、
    当該溶接方法は、
    溶接前に、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板との突合わせ部を、一方の端部である第1のA区間と残りのB区間とに分割する工程と、
    前記区間ごとにアーク溶接を行う工程と、を含み、
    前記第1の鋼板および前記第2の鋼板は、いずれも、ハッチサイドコーミングウェブであり、
    前記突合わせ部を分割する工程では、前記突合わせ部が、上方の端部である前記第1のA区間と前記残りのB区間とに分割され、
    前記A区間の長さL(mm)は、20mm以上であり、かつ、下記(1)式を満足する、溶接方法。
    6000≧σ(πL) 1/2 {(2W/πL)tan(πL/2W)} 1/2 ・・・(1)
    ここで、Wは前記第1の鋼板および前記第2の鋼板の幅(mm)であり、前記幅Wは1000〜4000mmであり、
    σは前記第1の鋼板および前記第2の鋼板の幅方向と垂直な方向の許容応力(MPa)であり、前記許容応力σは250〜320MPaである。
  2. 船舶が備える第1の鋼板および第2の鋼板を突合わせ溶接する方法であって、
    当該溶接方法は、
    溶接前に、前記第1の鋼板と前記第2の鋼板との突合わせ部を、一方の端部である第1のA区間と他方の端部である第2のA区間と残りのB区間とに分割する工程と、
    前記区間ごとにアーク溶接を行う工程と、を含み、
    前記第1の鋼板および前記第2の鋼板は、いずれも、デッキプレートであり、
    前記突合わせ部を分割する工程では、前記突合わせ部が、船舶の幅方向における舷側の端部である前記第1のA区間と、前記幅方向における内側の端部である前記第2のA区間と、前記残りのB区間に分割される、溶接方法。
  3. 請求項2に記載の溶接方法であって、
    前記A区間の長さL(mm)は、20mm以上であり、かつ、下記(1)式を満足する、溶接方法。
    6000≧σ(πL) 1/2 {(2W/πL)tan(πL/2W)} 1/2 ・・・(1)
    ここで、Wは前記第1の鋼板および前記第2の鋼板の幅(mm)、σは前記第1の鋼板および前記第2の鋼板の幅方向と垂直な方向の許容応力(MPa)である。
  4. 船舶を製造する方法であって、
    当該製造方法は、
    前記船舶が備える第1の鋼板および第2の鋼板を準備する工程と、
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶接方法により、前記第1の鋼板および前記第2の鋼板を突合わせ溶接する工程と、を含む、船舶の製造方法。
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