JP6562190B1 - 溶接構造体 - Google Patents

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Abstract

接合部材11の端面11cが被接合部材12の被接合面12aに当接した状態で接合部材11が被接合部材12に両側部分溶込み溶接されたT継手部を有し、接合部材11の端面11cに垂直な方向における長さをH(mm)とし、予め設定される接合部材11の許容応力をσ(N/mm2)とした場合に、被接合部材12の、被接合面12aの1mm深さ位置から採取されるタイプP3試験片を用いたNRL落重試験による無延性遷移温度NDTT(℃)が、[NDTT≦360.4−46.8×ln{σ(πH)0.5}]を満足する、溶接構造体10。

Description

本発明は、コンテナ船等において利用される溶接構造体に関する。
大量の貨物を搭載する大型のコンテナ船においては、アッパーデッキ(上甲板)に、貨物の積み下ろしを行なうための大きな開口部(ハッチ)が形成されている。また、アッパーデッキ上には、海水の流入防止等のために、ハッチを囲むようにハッチサイドコーミングが設けられている。アッパーデッキおよびハッチサイドコーミングはそれぞれ、複数の鋼板を溶接して構成されている。また、ハッチサイドコーミングは、アッパーデッキ上に溶接されている。
上記のような大型のコンテナ船が海上を航行する際には、波浪によって、船体全体を曲げるような荷重(縦曲げ荷重)が船体に付加される。このような荷重に対して、船体の強度(縦曲げ強度)を十分に確保するために、アッパーデッキおよびハッチサイドコーミングには、高強度の厚肉鋼板が利用されている。
また、上述のように、ハッチサイドコーミングおよびアッパーデッキはそれぞれ、複数の鋼板を溶接した構成を有している。言い換えると、ハッチサイドコーミングおよびアッパーデッキには、鋼板同士を溶接するための複数の溶接部が形成されている。溶接部で発生したき裂は、溶接部に沿って伝播しやすい。このため、例えば、ハッチサイドコーミングの溶接部においてき裂が発生した場合、そのき裂が溶接部に沿ってアッパーデッキ側に向かって伝播し、伝播したき裂がアッパーデッキの溶接部に進展する場合がある。したがって、船体の強度を十分に向上させるためには、ハッチサイドコーミングおよびアッパーデッキが、上記のようなき裂の進展を停止させることができる特性(脆性き裂伝播停止特性)を有する必要がある。
例えば、特許文献1および2には、脆性き裂伝播停止特性に関する溶接構造体が開示されている。
特開2007−326147号公報 特許第5365761号
ところで、ハッチサイドコーミングで発生し、アッパーデッキ側に向かって伝播したき裂の進展を停止させるためには、これらの部材として、例えば、脆性き裂伝播停止特性の指標である−10℃におけるKca値が6000N/mm1.5以上の厚肉鋼板を用いる必要があることが知られている。
しかしながら、このような高い脆性き裂伝播停止特性を有する厚肉鋼板を安定的に製造することは、技術的な面からもコスト的な面からも困難であるという問題がある。そのため、より合理的な手法により低コストで優れた脆性き裂伝播停止特性を有する溶接構造体を得る必要がある。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、脆性き裂伝播停止特性に優れた溶接構造体を提供することを目的とする。
本発明は、下記の溶接構造体を要旨とする。
(1)板状の接合部材の端面が板状の被接合部材の被接合面に当接した状態で、前記接合部材が前記被接合部材に両側部分溶込み溶接されたT継手部を有する溶接構造体であって、
前記接合部材の前記端面に垂直な方向における長さをH(mm)とし、予め設定される前記接合部材の許容応力をσ(N/mm)とした場合に、
前記被接合部材の、前記被接合面の1mm深さ位置から採取され、厚さ方向が前記被接合部材の板厚方向と一致するASTM E208に規定されるタイプP3試験片を用いたNRL落重試験による無延性遷移温度NDTT(℃)が、下記(i)式を満足する、
溶接構造体。
NDTT≦360.4−46.8×ln{σ(πH)0.5} ・・・(i)
(2)前記被接合部材の板厚t(mm)が、下記(ii)式を満足する、
上記(1)に記載の溶接構造体。
t≧50.0 ・・・(ii)
(3)前記被接合部材の板厚t(mm)が下記(iii)式を満足する、
上記(1)または(2)に記載の溶接構造体。
t>80.0 ・・・(iii)
(4)前記被接合部材の降伏応力が400〜580MPaであり、引張強さが510〜750MPaである、
上記(1)から(3)までのいずれかに記載の溶接構造体。
(5)前記被接合部材の−10℃における全厚のKca値が6000N/mm1.5未満である、
上記(1)から(4)までのいずれかに記載の溶接構造体。
本発明によれば、脆性き裂伝播停止特性に優れた溶接構造体を得ることができる。
本発明の一実施形態に係る溶接構造体を示す斜視図である。 本発明の他の実施形態に係る溶接構造体を示す斜視図である。 本発明の他の実施形態に係る溶接構造体を示す斜視図である。 構造モデルアレスト試験体の形状を説明するための図である。
本発明者らが上記の課題を解決するために検討を行った結果、以下の知見を得るに至った。
上述のように、溶接構造体に用いられる部材の全厚にわたって脆性き裂伝播停止特性を向上させるためには、例えば、Kca値が6000N/mm1.5以上の厚肉鋼板を用いる必要がある。
しかしながら、例えば、ハッチサイドコーミングからアッパーデッキ側に向かってき裂が伝播する場合において、き裂が突入するアッパーデッキの表層領域の脆性き裂伝播停止特性を、ハッチサイドコーミングの高さおよび許容応力に応じて向上させることができれば、き裂の進展を停止させることが可能になる。その結果、溶接構造体全体での脆性き裂伝播停止特性を低コストで向上させることが可能になる。
本発明は上記の知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の一実施形態に係る溶接構造体について説明する。
1.溶接構造体の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る溶接構造体を示す斜視図である。本実施形態に係る溶接構造体10は、接合部材11および被接合部材12を備えている。接合部材11は板状であり、板厚方向に垂直な第1表面11aおよび第2表面11bを有する。また、被接合部材12は板状であり、接合部材11の端面11cが当接される被接合面12aを有する。
そして、図1に示すように、溶接構造体10は、端面11cが被接合面12aに当接した状態で、接合部材11が被接合部材12に両側部分溶込み溶接されたT継手部を有する。本実施形態においては、溶接構造体10は、第1表面11a側に形成された第1溶接部13aおよび第2表面11b側に形成された第2溶接部13bを有する。なお、上記のT継手部を有する溶接構造体には、図1に示すようなT字状の構造体に加えて、例えば、図2および3に示す形状の構造体も含まれる。
また、接合部材11と被接合部材12とは、隅肉溶接によって接合されていてもよいが、接合強度の観点からは、接合部材11に開先を設け、開先溶接によって接合されていることが好ましい。
例えば、溶接構造体10をコンテナ船等に用いる場合には、厚肉の被接合部材が対象となる。具体的には、被接合部材12の板厚をt(mm)とした場合に、下記(ii)式を満足するのが好ましく、下記(iii)式を満足するのがより好ましい。
t≧50.0 ・・・(ii)
t>80.0 ・・・(iii)
なお、接合部材11の板厚についても特に制限はないが、被接合部材12と同様に、50.0mm以上であることが好ましく、80.0mm超であることがより好ましい。
2.被接合部材の無延性遷移温度
上述のように、被接合部材の全厚にわたって脆性き裂伝播停止特性を向上させるためには、例えば、Kca値が6000N/mm1.5以上の鋼板を被接合部材として用いる必要があり、そのような特性を有する鋼板の確保が困難であるという問題がある。しかしながら、少なくとも被接合部材の接合部材側の表層部における脆性き裂伝播停止特性を、接合部材の高さおよび想定される許容応力に応じて向上させることによって、き裂の進展を停止することが可能になる。
すなわち、被接合部材の表層部における無延性遷移温度を、接合部材の高さおよび予め設定される接合部材の許容応力に応じて制御することによって、き裂の進展を停止することが可能になる。具体的には、接合部材の高さが高いほど、また、接合部材の許容応力が高いほど、き裂が進展しやすくなるため、表層部における無延性遷移温度を低くする必要がある。
そのため、接合部材11の端面11cに垂直な方向における長さをH(mm)とし、接合部材11の許容応力をσ(N/mm)とした場合に、被接合面12aの1mm深さ位置から採取されるASTM E208に規定されるタイプP3試験片を用いたNRL落重試験による無延性遷移温度NDTT(℃)を、下記(i)式を満足させる必要がある。
NDTT≦360.4−46.8×ln{σ(πH)0.5} ・・・(i)
NDTTの測定方法について、詳しく説明する。まず、被接合面12a側から、ASTM E208に規定されるタイプP3試験片を採取する。タイプP3試験片とは、長さ130mm、幅50mm、厚さ16mmの試験片である。この際、被接合面12aを1mm削り取った後、試験片の厚さ方向が、被接合部材12の板厚方向と一致するように採取する。すなわち、被接合面12aの1mm深さ位置から17mm深さ位置までの領域から試験片が採取されることとなる。
また、後述するように、試験片の長手方向と垂直な面においてき裂が発生するように試験を行う。溶接構造体において、き裂は第1溶接部13aおよび第2溶接部13bの延伸方向と垂直な面において発生する。そのため、試験片は、その長手方向が溶接構造体の溶接部の延伸方向と一致するように採取する。
その後、上記試験片を用いて、ASTM E208に準拠したNRL落重試験を実施する。具体的には、まず上記試験片の厚さ方向に垂直な被接合部材の表面側の面上に、試験片の長手方向に平行な方向に延びる溶接ビードを形成する。その際、溶接材料はASTM E208に規定される靱性の低い溶接材料を使用する。溶接ビードの長さは60〜70mm、幅は12〜16mmの範囲となるよう調整する。そして、溶接ビード上に試験片の幅方向に平行な切欠きを形成する。この時、切欠きの幅は1.5mm以下とし、切欠きの溝底と試験片との距離が1.8〜2.0mmの範囲となるよう調整する。
そして、上記試験片の溶接ビードを形成した面を下側に向け、長さ方向の両端部を支持した後、溶接ビードを形成したのと反対側の面に対して、落重による衝撃曲げ荷重を加える。その後、切欠きから発生した脆性き裂が試験片に伝播する状態を調べることで、Break(き裂伝播あり)またはNo Break(き裂伝播なし)を判定する。切欠から発生した脆性き裂が試験片の表面を試験片幅方向に伝播してその端部まで進行した場合、試験結果はBreak(き裂伝播あり)と判定される。幅方向の端部にき裂が達しなかった場合、試験結果はNo Break(き裂伝播なし)と判定される。
上記の落重試験は、2個ずつの試験片を用いて、例えば、−100℃の条件から開始して、5℃間隔で試験温度を変化させながら(No Breakの場合は5℃低下、Breakの場合は5℃上昇)、2個の試験片ともにNo Breakが得られた最も低い試験温度から5℃低い温度を無延性遷移温度とする。
なお、上記の予め設定される接合部材の許容応力として、例えば、溶接構造体が船舶用である場合には、接合部材がハッチサイドコーミングとなる。ハッチサイドコーミングの許容応力は、船級協会が定める規則により決められているため、その値を採用すればよい。
3.被接合部材の機械的特性
本発明の溶接構造体に用いられる被接合部材の機械的特性について、特に制限は設けない。しかし、溶接構造体をコンテナ船等において利用する場合においては、アッパーデッキとなる被接合部材の降伏応力は400〜580MPaであるのが好ましく、引張強さは510〜750MPaであるのが好ましい。なお、被接合部材の降伏応力は410〜570MPaであるのがより好ましく、引張強さは520〜740MPaであるのがより好ましい。
また、上述のように、本発明においては、被接合部材の全厚にわたって脆性き裂伝播停止特性が優れていなくても、き裂の進展を停止することが可能になる。そのため、技術的およびコスト的な観点から、−10℃における全厚のKca値が6000N/mm1.5未満である被接合部材を用いることが好ましい。なお、上記のKca値は、WES2815規格に準拠した温度勾配型ESSO試験により求めることが可能である。
具体的には、寸法が500mm×500mm×板厚程度の全厚大型試験片を作製し、この試験片の端部にV切欠を形成する。試験片には温度勾配を付与し、V切欠に、楔を介して衝撃荷重を負荷して、脆性き裂を人為的に発生させる。試験体に付加された応力と、脆性き裂の伝播が停止した位置での温度と、き裂の長さに基づいてKca値を算出する。温度勾配条件および負荷荷重条件を変えて試験を行い、き裂停止温度とKca値の関係を求めることで、−10℃におけるKca値を求めることができる。
4.溶接構造体の製造方法
溶接構造体の製造方法について、特に制限は設けないが、例えば、表層部の無延性遷移温度が上述した条件を満足する被接合部材を選別する工程と、接合部材を上記の被接合部材に溶接する工程を行うことにより、製造することが可能である。
溶接工程においては、上述の被接合部材の被接合面に接合部材の端面を突き合わせた状態で、端面に沿って溶接することで製造することができる。この際、接合部材の被接合部材側を開先加工しておくことが望ましい。開先加工は、接合部材の端面全体にわたって施してもよいが、被接合部材との接合箇所にのみ施してもよい。
また、溶接方法についても特に制限はなく、CO溶接または被覆アーク溶接(SMAW)等の公知の方法を採用すればよい。入熱量は、例えば、0.5〜3.0kJ/mmとすることが好ましい。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す板厚を有する各種鋼板を用意した後、それぞれの鋼板について、一方側の面(被接合面)の表層部における無延性遷移温度を調査した。具体的には、被接合面を1mm削り取った後、試験片の厚さ方向が、上記鋼板の板厚方向と一致するように、ASTM E208に規定されるタイプP3試験片を採取した。そして、当該試験片を用いて、ASTM E208に準拠したNRL落重試験を実施し、無延性遷移温度NDTT(℃)を求めた。
続いて、各鋼板の板厚の1/4位置から圧延方向に直角な方向にJIS Z 2241に記載の4号引張試験片を採取し、JIS Z 2241に準拠して引張試験を行い、降伏応力(YS)、引張強さ(TS)および全伸び(EL)を測定した。
さらに、各鋼板の−10℃における全厚のKca値を、WES2815規格に準拠した温度勾配型ESSO試験により求めた。それらの結果を表1に併せて示す。
Figure 0006562190
その後、上記の各種鋼板を試験板(被接合部材12)とし、図4に示す構造モデルアレスト試験体を作製して試験を実施した。表2に示す高さH(mm)を有し、板厚100mmの鋼板をCO溶接により接合した溶接継手を助走溶接継手(接合部材11)とし、表2に示す条件でCO溶接または被覆アーク溶接(SMAW)により溶接構造体10を作製した。その際、接合部材11に板厚の1/3の深さの両側開先を設け、接合部材11と被接合部材12とを開先溶接により接合した。
Figure 0006562190
その後、溶接構造体10のフュージョンライン部16aにノッチ16bを導入した。そして、溶接構造体10を船舶設計温度である−10℃に冷却し、表2に示す接合部材11の許容応力σに相当する試験応力を負荷し、ノッチ部近傍だけを−50℃程度に急冷し、ノッチ部に楔を介して打撃を加えて脆性き裂を発生、伝播させた。
測定された溶接部の形状および上記の構造モデルアレスト試験体を用いた試験の結果を表2に併せて示す。脆性き裂が試験板で停止した場合は停止、試験板を破断した場合は破断と判定した。
表2から明らかなように、本発明の規定を満足する被接合部材を用いた場合には、優れた脆性き裂伝播停止特性を得られたのに対して、本発明の規定を満足しない比較例の被接合部材を用いた場合には、脆性き裂が被接合部材まで伝播する結果となった。
以上のように、本発明によれば、脆性き裂伝播停止特性に優れた溶接構造体を得ることができる。
10 溶接構造体
11 接合部材
11a 第1表面
11b 第2表面
11c 端面
12 被接合部材
12a 被接合面
13a 第1溶接部
13b 第2溶接部
16a フュージョンライン部
16b ノッチ

Claims (5)

  1. 板状の接合部材の端面が板状の被接合部材の被接合面に当接した状態で、前記接合部材が前記被接合部材に両側部分溶込み溶接されたT継手部を有する溶接構造体であって、
    前記接合部材の前記端面に垂直な方向における長さをH(mm)とし、予め設定される前記接合部材の許容応力をσ(N/mm)とした場合に、
    前記被接合部材の、前記被接合面の1mm深さ位置から採取され、厚さ方向が前記被接合部材の板厚方向と一致するASTM E208に規定されるタイプP3試験片を用いたNRL落重試験による無延性遷移温度NDTT(℃)が、下記(i)式を満足する、
    溶接構造体。
    NDTT≦360.4−46.8×ln{σ(πH)0.5} ・・・(i)
  2. 前記被接合部材の板厚t(mm)が、下記(ii)式を満足する、
    請求項1に記載の溶接構造体。
    t≧50.0 ・・・(ii)
  3. 前記被接合部材の板厚t(mm)が下記(iii)式を満足する、
    請求項1または請求項2に記載の溶接構造体。
    t>80.0 ・・・(iii)
  4. 前記被接合部材の降伏応力が400〜580MPaであり、引張強さが510〜750MPaである、
    請求項1から請求項3までのいずれかに記載の溶接構造体。
  5. 前記被接合部材の−10℃における全厚のKca値が6000N/mm1.5未満である、
    請求項1から請求項4までのいずれかに記載の溶接構造体。
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CN113879484A (zh) * 2021-10-22 2022-01-04 上海外高桥造船有限公司 一种船舶阳台分段及其焊接方法

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