JP7288196B2 - 溶接構造体 - Google Patents

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Description

本発明は、コンテナ船等において利用される溶接構造体に関する。
大量の貨物を搭載する大型のコンテナ船においては、アッパーデッキ(上甲板)に、貨物の積み下ろしを行うための大きな開口部(ハッチ)が形成されている。また、アッパーデッキ上には、海水の流入防止等のために、ハッチを囲むようにハッチサイドコーミングが設けられている。アッパーデッキおよびハッチサイドコーミングはそれぞれ、複数の鋼板を溶接して構成されている。また、ハッチサイドコーミングは、アッパーデッキ上に溶接されている。
上記のような大型のコンテナ船が海上を航行する際には、波浪によって、船体全体を曲げるような荷重(縦曲げ荷重)が船体に付加される。このような荷重に対して、船体の強度(縦曲げ強度)を十分に確保するために、アッパーデッキおよびハッチサイドコーミングには、高強度の厚肉鋼板が利用されている。
また、上述のように、ハッチサイドコーミングおよびアッパーデッキはそれぞれ、複数の鋼板を溶接した構成を有している。言い換えると、ハッチサイドコーミングおよびアッパーデッキには、鋼板同士を溶接するための複数の溶接部が形成されている。溶接部で発生した亀裂は、溶接部に沿って伝播しやすい。このため、例えば、ハッチサイドコーミングの溶接部において亀裂が発生した場合、その亀裂が溶接部に沿ってアッパーデッキ側に向かって伝播し、伝播した亀裂がアッパーデッキの溶接部に進展する場合がある。したがって、船体の強度を十分に向上させるためには、ハッチサイドコーミングおよびアッパーデッキが、上記のような亀裂の進展を停止させることができる特性(脆性亀裂伝播停止特性)を有する必要がある。
例えば、特許文献1および2には、脆性亀裂伝播停止特性に関する溶接構造体が開示されている。
特開2007-326147号公報 特許第5365761号公報
ところで、ハッチサイドコーミングで発生し、アッパーデッキ側に向かって伝播した亀裂の進展を停止させるためには、これらの部材として、例えば、脆性亀裂伝播停止特性の指標である-10℃におけるKca値が6000N/mm1.5以上の厚肉鋼板を用いる必要があることが知られている。
また、上述の例だけでなく、亀裂がアッパーデッキから発生しハッチサイドコーミング側に向かって伝播する可能性もある。そして、日本海事協会と日本溶接協会との共同研究にて実施された実証試験結果によれば、ハッチサイドコーミングの板厚が80mm超である場合、アッパーデッキで発生し、ハッチサイドコーミング側に向かって伝播する亀裂の進展を停止させるためには、8000N/mm1.5以上という極めて高いKca値を有する厚肉鋼板を用いる必要があることが分かってきた。
従来、ハッチサイドコーミングに用いられる厚鋼板の脆性亀裂伝播停止特性を評価する場合には、大型の試験体を用いた構造モデルアレスト試験(脆性破壊伝播停止試験:試験片に脆性亀裂を人為的に発生させ、脆性亀裂を停止させる性能を評価する試験)が実施されていた。
しかしながら、大型試験を実施するためには、多くの時間と費用とを必要とするため、高い脆性亀裂伝播停止特性を有する厚鋼板の選別が容易でないという問題があった。そのため、より簡易な手法により低コストで優れた脆性亀裂伝播停止特性を有する溶接構造体を得る必要がある。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、脆性亀裂伝播停止特性に優れた溶接構造体を提供することを目的とする。
本発明は、下記の溶接構造体を要旨とする。
(1)板状の接合部材の端面が板状の被接合部材の被接合面に当接した状態で、前記接合部材が前記被接合部材に両側部分溶込み溶接されたT継手部を有する溶接構造体であって、
前記接合部材は、前記接合部材の板厚方向に垂直な第1表面および第2表面を有し、
前記第1表面および前記被接合面に垂直な断面において、
前記接合部材の板厚t(mm)、
前記第1表面側に形成された第1溶接金属における、前記接合部材側の止端とルートとを通る線と前記被接合面とがなす鋭角α(°)、および前記板厚方向における継手の部分溶込みd(mm)、ならびに、
前記第2表面側に形成された第2溶接金属における、前記接合部材側の止端とルートとを通る線と前記被接合面とがなす鋭角α(°)、および前記板厚方向における継手の部分溶込みd(mm)が、下記(i)~(v)式を満足し、
前記接合部材は、下記(a)~(d)の工程を順に実施する品質評価試験において、下記cおよびcが、下記(x)および(xi)式を満足するものである、
溶接構造体。
(a)前記第1表面および前記第2表面にそれぞれ対応する第1試験板面および第2試験板面を有し、板厚がt(mm)、幅が240mm、長さが500mmの試験板に対して、前記試験板の幅方向における一方側の面において、前記第1試験板面側および前記第2試験板面側にそれぞれ前記長さ方向に延びる開先を形成する工程。
(b)板厚がt(mm)、幅が260mm、長さが500mmであり、前記幅方向における一方側にノッチが設けられた助走板を用意し、前記試験板の前記一方側の面を、前記助走板の前記幅方向における他方側の面に当接した状態で、前記開先に両側部分溶込み溶接を行い、
前記第1試験板面および前記助走板の前記他方側の面に垂直な断面において、前記第1試験板面側に形成された第1試験溶接金属における、前記試験板側の止端とルートとを通る線と前記助走板の前記他方側の面とがなす鋭角β(°)、および前記板厚方向における継手の部分溶込みb(mm)、ならびに、前記第2試験板面側に形成された第2試験溶接金属における、前記試験板側の止端とルートとを通る線と前記助走板の前記他方側の面とがなす鋭角β(°)、および前記板厚方向における継手の部分溶込みb(mm)が、下記(vi)~(ix)式を満足し、板厚がt(mm)、幅が500mm、長さが500mmの試験体を形成する工程。
(c)前記試験体を用いて、-10℃の試験温度で、予め設定される前記接合部材の許容応力であるσ(N/mm)を試験応力として付与した状態で、前記助走板の前記ノッチに衝撃荷重を加え、前記第1試験溶接金属および前記第2試験溶接金属を介して前記試験板まで亀裂を進展させる工程。
(d)前記試験板の前記一方側の面と、前記第1試験溶接金属および前記第2試験溶接金属のそれぞれを介して進展した前記亀裂の先端との、前記幅方向における距離c(mm)およびc(mm)を測定する工程。
t≧50.0 ・・・(i)
30.0≦α≦70.0 ・・・(ii)
30.0≦α≦70.0 ・・・(iii)
3.0≦d≦t/3 ・・・(iv)
3.0≦d≦t/3 ・・・(v)
α-5.0≦β≦α+5.0 ・・・(vi)
α-5.0≦β≦α+5.0 ・・・(vii)
≦b≦d+5.0 ・・・(viii)
≦b≦d+5.0 ・・・(ix)
≦b・tan(β)+10.0 ・・・(x)
≦b・tan(β)+10.0 ・・・(xi)
(2)前記接合部材の板厚t(mm)が下記(xii)式を満足する、
上記(1)に記載の溶接構造体。
t>80.0 ・・・(xii)
(3)前記接合部材の降伏応力が400MPa以上、580MPa以下であり、引張強さが510MPa以上、750MPa以下である、
上記(1)または(2)に記載の溶接構造体。
(4)前記接合部材の-10℃における全厚のKca値が8000N/mm1.5未満である、
上記(1)から(3)までのいずれかに記載の溶接構造体。
本発明によれば、脆性亀裂伝播停止特性に優れた溶接構造体を得ることができる。
本発明の一実施形態に係る溶接構造体を示す斜視図である。 本発明の他の実施形態に係る溶接構造体を示す斜視図である。 本発明の他の実施形態に係る溶接構造体を示す斜視図である。 溶接構造体の断面図である。 本発明における品質評価試験を説明するための図である。 試験体の断面図である。 脆性亀裂伝播試験を説明するための図である。 構造モデルアレスト試験体の形状を説明するための図である。 応用例における厚鋼板の品質評価方法を説明するための図である。 試験体の断面図である。
本発明者らが上記の課題を解決するために検討を行った結果、以下の知見を得るに至った。
上述のように、厚鋼板の脆性亀裂伝播停止特性の評価には、大型の試験体を用いた構造モデルアレスト試験が用いられるのが一般的である。しかし、より小さい試験体を用いた中型試験において脆性亀裂伝播停止特性の評価が可能であれば、溶接構造体に用いる厚鋼板の選別が容易になり、低コストで優れた脆性亀裂伝播停止特性を有する溶接構造体を製造することが可能となる。
本発明は上記の知見に基づいてなされたものである。以下、本発明の一実施形態に係る溶接構造体について説明する。
1.溶接構造体の構成
図1は、本発明の一実施形態に係る溶接構造体を示す斜視図である。本実施形態に係る溶接構造体10は、接合部材11および被接合部材12を備えている。接合部材11は板状であり、板厚方向に垂直な第1表面11aおよび第2表面11bを有する。また、被接合部材12は板状であり、接合部材11の端面11cが当接される被接合面12aを有する。
そして、図1に示すように、溶接構造体10は、端面11cが被接合面12aに当接した状態で、接合部材11が被接合部材12に両側部分溶込み溶接されたT継手部を有する。なお、上記のT継手部を有する溶接構造体には、図1に示すようなT字状の構造体に加えて、例えば、図2および3に示す形状の構造体も含まれる。また、接合部材11には開先が設けられており、開先溶接によって接合されている。
本発明においては、厚肉の接合部材を対象としており、具体的には、接合部材11の板厚をt(mm)とした場合に、下記(i)式を満足する。接合部材11の板厚t(mm)は、下記(xii)式を満足するのが好ましい。tの上限は特に規定する必要はないが、例えば200mm、150mm、または120mmとすることができる。
t≧50.0 ・・・(i)
t>80.0 ・・・(xii)
なお、被接合部材の板厚については特に制限はないが、接合部材と同様に、50.0mm以上であることが好ましく、80.0mm超であることがより好ましい。
また、図1に示すように、溶接構造体10は、第1表面11a側に形成された第1溶接金属13aおよび第2表面11b側に形成された第2溶接金属13bを有する。
接合部材11および被接合部材12の接合箇所付近について、図4を用いてさらに詳しく説明する。図4は、溶接構造体10の、第1表面11aおよび被接合面12aに垂直な断面図である。図4においては、図面が煩雑になることを避けるため、ハッチングは付していない。
図4に示すように、接合部材11および被接合部材12の接合箇所の第1表面11a側には、第1溶接金属13aが形成されている。同様に、第2表面11b側には、第2溶接金属13bが形成されている。
ここで、被接合部材12から発生する亀裂は、第1溶接金属13aおよび第2溶接金属13bを経由して接合部材11に伝播する。したがって、被接合部材12から接合部材11へと伝播する亀裂の突入領域を制限するとともに、接合強度を確保する観点からは、溶接金属の形状の制御が重要となる。
具体的には、第1溶接金属13aにおける、接合部材11側の止端とルートとを通る線Lと被接合面12aとがなす鋭角α(°)および第2溶接金属13bにおける、接合部材11側の止端とルートとを通る線Lと被接合面12aとがなす鋭角α(°)は、それぞれ下記(ii)および(iii)式を満足する。
30.0≦α≦70.0 ・・・(ii)
30.0≦α≦70.0 ・・・(iii)
第1溶接金属13aにおける接合部材11側の止端とは、第1溶接金属13aの外縁と第1表面11aとの交点Aを意味する。また、第1溶接金属13aにおける接合部材11側のルートとは、第1溶接金属13aの外縁と端面11cとの交点Bを意味する。同様に、第2溶接金属13bにおける接合部材11側の止端とは、第2溶接金属13bの外縁と第2表面11bとの交点Aを意味し、第2溶接金属13bにおける接合部材11側のルートとは、第2溶接金属13bの外縁と端面11cとの交点Bを意味する。
さらに、第1溶接金属13aの板厚方向における継手の部分溶込みd(mm)および第2溶接金属13bの板厚方向における継手の部分溶込みd(mm)は、接合部材11の板厚t(mm)との関係において、それぞれ下記(iv)および(v)式を満足する。
3.0≦d≦t/3 ・・・(iv)
3.0≦d≦t/3 ・・・(v)
なお、第1溶接金属13aおよび第2溶接金属13bと接合部材11との境界は、目視により容易に判別することが可能である。
2.品質評価試験
本発明者らが行った研究により、後述する中型の品質評価試験によって所定の基準を満足する厚鋼板を接合部材として用いることで、低コストで優れた脆性亀裂伝播停止特性を有する溶接構造体が得られることを見出した。
試験方法について、詳しく説明する。図5は、本発明における品質評価試験を説明するための図である。本発明における品質評価試験は、下記(a)~(d)の工程を順に実施するものである。各工程について、説明する。
(a)開先形成工程
接合部材11に用いられる厚鋼板から、第1表面11aおよび第2表面11bにそれぞれ対応する第1試験板面21aおよび第2試験板面21bを有し、板厚がt(mm)、幅が240mm、長さが500mmの試験板21を採取する。すなわち、接合部材11の第1表面11aを試験板21の第1試験板面21aとし、接合部材11の第2表面11bを試験板21の第2試験板面21bとする。
試験板21の幅方向における一方側(図5における上側)の面21cにおいて、第1試験板面21a側および第2試験板面21b側にそれぞれ長さ方向に延びる開先を形成する。開先の形状および寸法については、後述する溶接工程において形成される溶接金属部の形状および寸法が規定を満足するように適宜選択すればよい。
(b)溶接工程
板厚がt(mm)、幅が260mm、長さが500mmの助走板22を用意する。助走板22の材質については特に制限はなく、例えば、熱処理を施して脆化した鋼板を用いることができる。また、助走板22の幅方向における一方側(図5における上側)には、ノッチ22aを形成しておく。ノッチ22aの形状については特に制限はないが、図5に示す形状とすることができる。
そして、試験板21の幅方向における一方側の面21cを、助走板22の幅方向における他方側(図5における下側)の面22bに当接した状態で、開先に両側部分溶込み溶接を行い、試験体20を形成する。その後、溶接により生じた余盛については削除することが好ましい。これにより、試験体20は、板厚がt(mm)、幅が500mm、長さが500mmの直方体状となる。
接合部材11に用いられる厚鋼板から採取された試験板21によって、溶接構造体10の脆性亀裂伝播停止特性の評価を行うためには、試験体20に形成される溶接金属の形状の制御が重要となる。試験体20に形成される溶接金属の形状について、図6を用いてさらに詳しく説明する。図6は、試験体20の、第1試験板面21aおよび助走板22の他方側の面22bに垂直な断面図である。図6においては、図面が煩雑になることを避けるため、ハッチングは付していない。
図6に示すように、試験板21および助走板22の接合箇所の第1試験板面21a側には第1試験溶接金属23aが形成され、第2試験板面21b側には第2試験溶接金属23bが形成される。
そして、第1試験溶接金属23aにおける、試験板21側の止端とルートとを通る線Mと助走板22の他方側の面22bとがなす鋭角β(°)および第2試験溶接金属23bにおける、試験板21側の止端とルートとを通る線Mと助走板22の他方側の面22bとがなす鋭角β(°)は、それぞれ下記(vi)および(vii)式を満足する。
α-5.0≦β≦α+5.0 ・・・(vi)
α-5.0≦β≦α+5.0 ・・・(vii)
第1試験溶接金属23aにおける試験板21側の止端とは、第1試験溶接金属23aの外縁と第1試験板面21aとの交点Cを意味する。また、第1試験溶接金属23aにおける試験板21側のルートとは、第1試験溶接金属23aの外縁と試験板21の一方側の面21cとの交点Dを意味する。同様に、第2試験溶接金属23bにおける試験板21側の止端とは、第2試験溶接金属23bの外縁と第2試験板面21bとの交点Cを意味し、第2試験溶接金属23bにおける試験板21側のルートとは、第2試験溶接金属23bの外縁と試験板21の一方側の面21cとの交点Dを意味する。
また、第1試験溶接金属23aの板厚方向における継手の部分溶込みb(mm)および第2試験溶接金属23bの板厚方向における継手の部分溶込みb(mm)は、下記(viii)および(ix)式を満足する。
≦b≦d+5.0 ・・・(viii)
≦b≦d+5.0 ・・・(ix)
継手の部分溶込みbは、第1試験板面21aと、第1試験板面21aと平行でかつ試験板21の板厚方向における第1試験溶接金属23aの板厚中心側の端部を通る仮想的な面21fとの距離である。また、継手の部分溶込みbは、第2試験板面21bと、第2試験板面21bと平行でかつ試験板21の板厚方向における第2試験溶接金属23bの板厚中心側の端部を通る仮想的な面21gとの距離である。
(c)脆性亀裂伝播試験工程
試験体20を用いて、-10℃の試験温度で、予め設定される接合部材11の許容応力であるσ(N/mm)を試験応力として付与した状態で、助走板22に設けられたノッチ22aに衝撃荷重を加え、第1試験溶接金属23aおよび第2試験溶接金属23bを介して試験板21まで亀裂を進展させる。
なお、上記の予め設定される接合部材の許容応力として、例えば、溶接構造体が船舶用である場合には、接合部材がハッチサイドコーミングとなる。ハッチサイドコーミングの許容応力は、船級協会が定める規則により決められているため、その値を採用すればよい。試験体20の温度は-10℃で均一とし、助走板22の温度は特に規定しない。その他の条件については、亀裂が試験板21まで進展する限り制限はないが、WES2815に準拠すればよい。
図7は、脆性亀裂伝播試験を説明するための図である。図7に示すように、試験体20の長さ方向における両端に治具24a,24bを溶接により接合し、両側から長さ方向に引張応力を付与することで、試験体20に上述した試験応力を付与することができる。
また、本工程においては、少なくとも試験板まで亀裂を進展させる必要があるため、衝撃荷重を付与した際に、助走板または溶接金属で亀裂が停止してしまわないような材質を選択する必要がある。
(d)脆性亀裂測定工程
上記(a)~(c)の工程を順に実施した後の試験板21について、亀裂の進展状況を調査する。具体的には、試験板21の一方側の面21cと、第1試験溶接金属23aおよび第2試験溶接金属23bのそれぞれを介して進展した亀裂の先端との、幅方向における距離c(mm)およびc(mm)を測定する。なお、亀裂先端の位置は、試験後のそのままの状態では確認できないため、試験体に荷重を負荷して強制破断させることで破面出しを行う。
本発明に係る溶接構造体10に用いられる接合部材11は、上述した(a)~(d)の工程を順に実施する品質評価試験において、cおよびcが、下記(x)および(xi)式を満足する必要がある。これにより、優れた脆性亀裂伝播停止特性を有する溶接構造体10が得られる。
≦b・tan(β)+10.0 ・・・(x)
≦b・tan(β)+10.0 ・・・(xi)
3.接合部材の機械的特性
本発明の溶接構造体に用いられる接合部材の機械的特性について、特に制限は設けない。しかし、溶接構造体をコンテナ船等において利用する場合においては、接合部材の降伏応力は400MPa以上、580MPa以下であるのが好ましく、引張強さは510MPa以上、750MPa以下であるのが好ましい。なお、接合部材の降伏応力は410MPa以上、570MPa以下であるのがより好ましく、引張強さは520MPa以上、740MPa以下であるのがより好ましい。
また、コスト的な観点からは、-10℃における全厚のKca値が8000N/mm1.5未満である接合部材を用いることが好ましい。なお、上記のKca値は、WES2815規格に準拠した温度勾配型ESSO試験により求めることが可能である。
4.溶接構造体の製造方法
溶接構造体の製造方法について、特に制限は設けないが、例えば、品質評価試験による評価結果が上述した条件を満足する接合部材を選別する工程と、当該接合部材を被接合部材に溶接する工程を行うことにより、製造することが可能である。
溶接工程においては、上述の被接合部材の被接合面に接合部材の端面を突き合わせた状態で、端面に沿って溶接することで製造することができる。この際、接合部材の被接合部材側を開先加工しておく。開先加工は、接合部材の端面全体にわたって施してもよいが、被接合部材との接合箇所にのみ施してもよい。
また、溶接方法についても特に制限はなく、CO溶接または被覆アーク溶接(SMAW)等の公知の方法を採用すればよい。また、入熱量は、例えば、0.5kJ/mm以上、3.0kJ/mm以下とすることが好ましい。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す板厚t(mm)を有し、板厚方向に直交する第1表面および第2表面を有する各種鋼板を用意した。その後、それぞれの鋼板から、第1表面および第2表面にそれぞれ対応する第1試験板面および第2試験板面を有し、鋼板の圧延方向が長さ方向となるように、板厚がt(mm)、幅が240mm、長さが500mmの試験板を採取した。そして、試験板の幅方向における一方側の面において、第1試験板面側および第2試験板面側にそれぞれ長さ方向に延びる開先を形成した。
Figure 0007288196000001
続いて、板厚がt(mm)、幅が260mm、長さが500mmの助走板を用意した。助走板としては、1200℃で加熱した後に空冷することで脆化させた鋼板を用いた。助走板の幅方向における一方側には、図5に示す形状のノッチを設けた。そして、開先を形成した試験板の一方側の面を、助走板の幅方向における他方側の面に当接した状態で、開先に両側部分溶込み溶接を行った。溶接条件は表2に示すとおりである。表2における「CO」はCO溶接を意味し、「SMAW」は被覆アーク溶接を意味する。その後、溶接により生じた余盛は削除した。これにより、板厚がt(mm)、長さが500mm、幅が500mmの直方体状の試験体を作製した。
Figure 0007288196000002
試験体においては、試験板および助走板の接合箇所の第1試験板面側には第1試験溶接金属が形成され、第2試験板面側には第2試験溶接金属が形成された。その後、各試験体を用いて、-10℃の試験温度で、予め設定される接合部材の許容応力であるσ(N/mm)を試験応力として付与した状態で、助走板の長さ方向における一方側の端部に設けられたノッチに衝撃荷重を加え、試験板まで亀裂を進展させた。
試験終了後、試験体に荷重を負荷して強制破断させることで破面出しを実施し、試験板に突入した亀裂の進展状況の調査を行った。その後、試験体の荷重方向の中心位置から左右に200mm離れた位置において、試験板と助走板の溶接金属(第1試験溶接金属および第2試験溶接金属)の断面を切り出した。これらの2カ所の溶接継手断面の写真をデジタルカメラによりそれぞれ撮影し、写真画像から溶接金属の形状を測定し、2カ所の測定結果の平均値を求めた。それらの結果を表2に併せて示す。
続いて、各鋼板の板厚の1/4位置から圧延方向に直角な方向にJIS Z 2241:2011に記載の4号引張試験片を採取し、JIS Z 2241:2011に準拠して引張試験を行い、降伏応力(YS)、引張強さ(TS)および全伸び(EL)を測定した。
さらに、各鋼板の-10℃における全厚のKca値を、WES2815規格に準拠した温度勾配型ESSO試験により求めた。それらの結果を表1に併せて示す。
その後、上記の各種鋼板を試験板(接合部材41)とし、図8に示す構造モデルアレスト試験体を作製して試験を実施した。板厚100mmの鋼板をCO溶接により接合した溶接継手を助走溶接継手(被接合部材42)とし、表3に示す条件でCO溶接または被覆アーク溶接(SMAW)により溶接構造体40を作製した。
Figure 0007288196000003
その後、溶接構造体40のフュージョンライン部46aにノッチ46bを導入した。そして、溶接構造体40を船舶設計温度である-10℃に冷却し、接合部材41の許容応力であるσ(N/mm)を試験応力として負荷し、ノッチ部近傍だけを-50℃程度に急冷し、ノッチ部に楔を介して打撃を加えて脆性亀裂を発生、伝播させた。
試験後の構造モデルアレスト試験体を使用し、試験体の荷重方向の中心位置から左右に250mm離れた位置において、接合部材と被接合部材との一方側(第1表面側)および他方側(第2表面側)の溶接金属(第1溶接金属および第2溶接金属)の断面を切り出した。これらの2カ所の溶接継手断面の写真をデジタルカメラによりそれぞれ撮影し、写真画像から溶接金属の形状を測定し、2カ所の測定結果の平均値を使用した。
測定された溶接金属の形状、および上記の構造モデルアレスト試験体を用いた試験の結果を表3に併せて示す。脆性亀裂が試験板で停止した場合は「停止」、試験板を破断した場合は「伝播」と判定した。
表3から明らかなように、本発明の規定を満足する接合部材を用いた場合には、優れた脆性亀裂伝播停止特性を得られたのに対して、本発明の規定を満足しない比較例の接合部材を用いた場合には、脆性亀裂が接合部材まで伝播する結果となった。
5.厚鋼板の品質評価方法
以上のように、本発明に係る溶接構造体10においては、接合部材11は、上述した条件での品質評価試験によって評価される。なお、当該品質評価試験は、厚鋼板の品質評価方法として応用可能である。応用例としての厚鋼板の品質評価方法は、以下に記載する(付記1)および(付記2)によって表現することができる。
(付記1)
板状の接合部材の端面が板状の被接合部材の被接合面に当接した状態で、前記接合部材が前記被接合部材に両側部分溶込み溶接されたT継手部を有する溶接構造体に用いられ、前記接合部材となる厚鋼板の品質評価方法であって、
前記接合部材は、前記接合部材の板厚方向に垂直な第1表面および第2表面を有し、
前記第1表面および前記被接合面に垂直な断面において、
前記接合部材の板厚t(mm)、
前記第1表面側に形成された第1溶接金属における、前記接合部材側の止端とルートとを通る線と前記被接合面とがなす鋭角α(°)、および前記板厚方向における継手の部分溶込みd(mm)、ならびに、
前記第2表面側に形成された第2溶接金属における、前記接合部材側の止端とルートとを通る線と前記被接合面とがなす鋭角α(°)、および前記板厚方向における継手の部分溶込みd(mm)が、下記(i)~(v)式を満足し、
下記(a)~(d)の工程を備える、
厚鋼板の品質評価方法。
(a)前記第1表面および前記第2表面にそれぞれ対応する第1試験板面および第2試験板面を有し、板厚がt(mm)である試験板に対して、前記試験板の幅方向における一方側の面において、前記第1試験板面側および前記第2試験板面側にそれぞれ前記長さ方向に延びる開先を形成する工程。
(b)板厚がt(mm)であり、前記幅方向における一方側にノッチが設けられた助走板を用意し、前記試験板の前記一方側の面を、前記助走板の前記幅方向における他方側の面に当接した状態で、前記開先に両側部分溶込み溶接を行い、
前記第1試験板面および前記助走板の前記他方側の面に垂直な断面において、前記第1試験板面側に形成された第1試験溶接金属における、前記試験板側の止端とルートとを通る線と前記助走板の前記他方側の面とがなす鋭角β(°)、および前記板厚方向における継手の部分溶込みb(mm)、ならびに、前記第2試験板面側に形成された第2試験溶接金属における、前記試験板側の止端とルートとを通る線と前記助走板の前記他方側の面とがなす鋭角β(°)、および前記板厚方向における継手の部分溶込みb(mm)が、下記(vi)~(ix)式を満足し、板厚がt(mm)である試験体を形成する工程。
(c)前記試験体を用いて、前記助走板の前記ノッチに衝撃荷重を加え、前記第1試験溶接金属および前記第2試験溶接金属を介して前記試験板まで亀裂を進展させる工程。
(d)亀裂の進展状況に基づき、前記厚鋼板が脆性亀裂伝播停止特性に優れるか否かの判定を行う工程。
t≧50.0 ・・・(i)
30.0≦α≦70.0 ・・・(ii)
30.0≦α≦70.0 ・・・(iii)
3.0≦d≦t/3 ・・・(iv)
3.0≦d≦t/3 ・・・(v)
α-5.0≦β≦α+5.0 ・・・(vi)
α-5.0≦β≦α+5.0 ・・・(vii)
≦b≦d+5.0 ・・・(viii)
≦b≦d+5.0 ・・・(ix)
(付記2)
前記(d)の工程において、前記試験板の前記一方側の面と、前記第1試験溶接金属および前記第2試験溶接金属のそれぞれを介して進展した前記亀裂の先端との、前記幅方向における距離をc(mm)およびc(mm)とした時に、cおよびcが、下記(x)および(xi)式を満足する場合に、前記厚鋼板が脆性亀裂伝播停止特性に優れると判定する、
付記1に記載の厚鋼板の品質評価方法。
≦b・tan(β)+10.0 ・・・(x)
≦b・tan(β)+10.0 ・・・(xi)
応用例における厚鋼板の品質評価方法について説明する。上記の品質評価方法は、溶接構造体に用いられ、接合部材となる厚鋼板の品質を評価する方法である。品質評価対象となる溶接構造体の構成については、上述のとおりであるため、説明は省略する。
図9は、応用例における厚鋼板の品質評価方法を説明するための図である。上記の品質評価方法は、下記(a)~(d)の工程を備える。各工程について、説明する。
(a)開先形成工程
厚鋼板から試験板31を採取する。試験板31は、接合部材11の第1表面11aおよび第2表面11bにそれぞれ対応する第1試験板面31aおよび第2試験板面31bを有する。すなわち、接合部材11の第1表面11aを試験板31の第1試験板面31aとし、接合部材11の第2表面11bを試験板31の第2試験板面31bとする。
試験板31の板厚は接合部材11となる厚鋼板の板厚と同じであり、すなわちt(mm)である。試験板31の幅および長さについては特に制限はないが、幅は150mm以上、1000mm以下、長さは300mm以上、2000mm以下とすることが好ましい。いずれも小さすぎると正確な品質の評価が難しくなり、大きすぎると低コストでの品質の評価が行えなくなる場合があるためである。
試験板31の幅方向における一方側(図9における上側)の面31cにおいて、第1試験板面31a側および第2試験板面31b側にそれぞれ長さ方向に延びる開先を形成する。開先の形状および寸法については、後述する溶接工程において形成される溶接金属部の形状および寸法が規定を満足するように適宜選択すればよい。
(b)溶接工程
試験板31と同じ厚さおよび長さを有する助走板32を用意する。すなわち、助走板32の厚さはt(mm)である。助走板32の長さは試験板31の長さと同一であるため、300mm以上、2000mm以下とすることが好ましい。また、助走板32の幅は150mm以上、1600mm以下とすることが好ましい。助走板32の幅が小さすぎると、助走板32から試験板31に亀裂が突入する際の駆動力が十分に得られなくなるおそれがあり、大きすぎると低コストでの品質の評価が行えなくなる場合があるためである。
助走板32の材質については特に制限はなく、例えば、熱処理を施して脆化した鋼板、亀裂の進展領域が溶接部である突合せ溶接接手、または亀裂の進展領域を電子ビーム溶接により脆化させた鋼板等を用いることができる。また、助走板32の幅方向における一方側(図9における上側)には、ノッチ32aを形成しておく。ノッチ32aの形状については特に制限はないが、図9に示す形状とすることができる。
さらに、助走板32が有する、厚さ方向に直交する一対の表面のうち、一方または両方に図9に示すような、サイドグルーブを形成しておいてもよい。サイドグルーブを有することにより、亀裂がサイドグルーブに沿って進展し、試験板31に突入しやすくなる。なお、図9に示す構成では、サイドグルーブは、助走板32の幅方向における一方側から他方側まで全ての長さにおいて形成しているが、その一部についてのみ形成してもよい。
そして、試験板31の幅方向における一方側の面31cを、助走板32の幅方向における他方側(図9における下側)の面32bに当接した状態で、開先に両側部分溶込み溶接を行い、試験体30を形成する。その後、溶接により生じた余盛については削除することが好ましい。これにより、試験体30は、板厚がt(mm)の直方体状となる。
試験体30の長さおよび幅については特に制限はなく、試験板31および助走板32のそれぞれの寸法により決定される。試験体30の幅は試験板31および助走板32の合計幅となるため、300mm以上、2600mm以下とすることが好ましい。また、試験体30の長さは、試験板31および助走板32の長さと同一であるため、300mm以上、2000mm以下とすることが好ましい。
さらに、試験板31の幅と助走板32の幅は同程度とすることが好ましく、助走板32の幅をL(mm)とし、試験体30の幅、すなわち、試験板31および助走板32の合計幅をW(mm)とした場合に、0.4≦L/W≦0.7を満足することが好ましい。
接合部材11に用いられる厚鋼板から採取された試験板31によって、溶接構造体10の脆性亀裂伝播停止特性の評価を行うためには、試験体30に形成される溶接金属の形状の制御が重要となる。試験体30に形成される溶接金属の形状について、図10を用いてさらに詳しく説明する。図10は、試験体30の、第1試験板面31aおよび助走板32の他方側の面32bに垂直な断面図である。図10においては、図面が煩雑になることを避けるため、ハッチングは付していない。
図10に示すように、試験板31および助走板32の接合箇所の第1試験板面31a側には第1試験溶接金属33aが形成され、第2試験板面31b側には第2試験溶接金属33bが形成される。
そして、第1試験溶接金属33aにおける、試験板31側の止端とルートとを通る線Mと助走板32の他方側の面32bとがなす鋭角β(°)および第2試験溶接金属33bにおける、試験板31側の止端とルートとを通る線Mと助走板32の他方側の面32bとがなす鋭角β(°)は、それぞれ下記(vi)および(vii)式を満足する。
α-5.0≦β≦α+5.0 ・・・(vi)
α-5.0≦β≦α+5.0 ・・・(vii)
第1試験溶接金属33aにおける試験板31側の止端とは、第1試験溶接金属33aの外縁と第1試験板面31aとの交点Cを意味する。また、第1試験溶接金属33aにおける試験板31側のルートとは、第1試験溶接金属33aの外縁と試験板31の一方側の面31cとの交点Dを意味する。同様に、第2試験溶接金属33bにおける試験板31側の止端とは、第2試験溶接金属33bの外縁と第2試験板面31bとの交点Cを意味し、第2試験溶接金属33bにおける試験板31側のルートとは、第2試験溶接金属33bの外縁と試験板31の一方側の面31cとの交点Dを意味する。
また、第1試験溶接金属33aの板厚方向における継手の部分溶込みb(mm)および第2試験溶接金属33bの板厚方向における継手の部分溶込みb(mm)は、下記(viii)および(ix)式を満足する。
≦b≦d+5.0 ・・・(viii)
≦b≦d+5.0 ・・・(ix)
継手の部分溶込みbは、第1試験板面31aと、第1試験板面31aと平行でかつ試験板31の板厚方向における第1試験溶接金属33aの板厚中心側の端部を通る仮想的な面31fとの距離である。また、継手の部分溶込みbは、第2試験板面31bと、第2試験板面31bと平行でかつ試験板31の板厚方向における第2試験溶接金属33bの板厚中心側の端部を通る仮想的な面31gとの距離である。
(c)脆性亀裂伝播試験工程
試験体30を用いて、所定の試験温度で、所定の試験応力として付与した状態で、助走板32のノッチ32aに衝撃荷重を加え、試験板31まで亀裂を進展させる。試験温度については特に制限はなく、溶接構造体10の使用温度以下とすることが好ましく、例えば、-10℃以下とすることが好ましい。また、試験体30に付与する試験応力についても特に制限はなく、例えば、予め設定される接合部材11の許容応力であるσ(N/mm)が試験応力となるよう設定してもよい。
なお、上記の予め設定される接合部材の許容応力として、例えば、溶接構造体が船舶用である場合には、接合部材がハッチサイドコーミングとなる。ハッチサイドコーミングの許容応力は、船級協会が定める規則により決められているため、その値を採用すればよい。試験体の温度は所定の試験温度で均一とし、助走板の温度は特に規定しない。その他の条件については、WES2815に準拠することが好ましい。
また、本工程においては、少なくとも試験板まで亀裂を進展させる必要があるため、衝撃荷重を付与した際に、助走板または溶接金属で亀裂が停止してしまわないような材質を選択する必要がある。
(d)判定工程
上記(a)~(c)の工程を順に実施した後の試験板31について、亀裂の進展状況を調査する。そして、当該調査結果に基づいて、厚鋼板が脆性亀裂伝播停止特性に優れるか否かの判定を行う。
具体的な判定方法については特に制限はないが、例えば、試験板31の一方側の面31cと、第1試験溶接金属33aおよび第2試験溶接金属33bのそれぞれを介して進展した亀裂の先端との、長さ方向における距離c(mm)およびc(mm)を測定し、距離cおよびcが、下記(x)および(xi)式を満足する場合に、接合部材となる厚鋼板が脆性亀裂伝播停止特性に優れると判定することができる。
≦b・tan(β)+10.0 ・・・(x)
≦b・tan(β)+10.0 ・・・(xi)
以上のように、本発明によれば、脆性亀裂伝播停止特性に優れた溶接構造体を得ることができる。
10 溶接構造体
11 接合部材
11a 第1表面
11b 第2表面
11c 端面
11f~11i 仮想的な面
12 被接合部材
12a 被接合面
13 溶接金属
13a 第1溶接金属
13b 第2溶接金属
20 試験体
21 試験板
21a 第1試験板面
21b 第2試験板面
21c 一方側の面
21f,g 仮想的な面
22 助走板
22a ノッチ
22b 他方側の面
23 試験溶接金属
23a 第1試験溶接金属
23b 第2試験溶接金属
24a,b 治具
30 試験体
31 試験板
31a 第1試験板面
31b 第2試験板面
31c 一方側の面
31f,g 仮想的な面
32 助走板
32a ノッチ
32b 他方側の面
33 試験溶接金属
33a 第1試験溶接金属
33b 第2試験溶接金属
40 溶接構造体
41 接合部材
42 被接合部材
43 溶接金属
46a フュージョンライン部
46b ノッチ

Claims (4)

  1. 板状の接合部材の端面が板状の被接合部材の被接合面に当接した状態で、前記接合部材が前記被接合部材に両側部分溶込み溶接されたT継手部を有する溶接構造体であって、
    前記接合部材は、前記接合部材の板厚方向に垂直な第1表面および第2表面を有し、
    前記第1表面および前記被接合面に垂直な断面において、
    前記接合部材の板厚t(mm)、
    前記第1表面側に形成された第1溶接金属における、前記接合部材側の止端とルートとを通る線と前記被接合面とがなす鋭角α(°)、および前記板厚方向における継手の部分溶込みd(mm)、ならびに、
    前記第2表面側に形成された第2溶接金属における、前記接合部材側の止端とルートとを通る線と前記被接合面とがなす鋭角α(°)、および前記板厚方向における継手の部分溶込みd(mm)が、下記(i)~(v)式を満足し、
    前記接合部材は、下記(a)~(d)の工程を順に実施する品質評価試験において、下記cおよびcが、下記(x)および(xi)式を満足するものである、
    溶接構造体。
    (a)前記第1表面および前記第2表面にそれぞれ対応する第1試験板面および第2試験板面を有し、板厚がt(mm)、幅が240mm、長さが500mmの試験板に対して、前記試験板の幅方向における一方側の面において、前記第1試験板面側および前記第2試験板面側にそれぞれ前記長さ方向に延びる開先を形成する工程。
    (b)板厚がt(mm)、幅が260mm、長さが500mmであり、前記幅方向における一方側にノッチが設けられた助走板を用意し、前記試験板の前記一方側の面を、前記助走板の前記幅方向における他方側の面に当接した状態で、前記開先に両側部分溶込み溶接を行い、
    前記第1試験板面および前記助走板の前記他方側の面に垂直な断面において、前記第1試験板面側に形成された第1試験溶接金属における、前記試験板側の止端とルートとを通る線と前記助走板の前記他方側の面とがなす鋭角β(°)、および前記板厚方向における継手の部分溶込みb(mm)、ならびに、前記第2試験板面側に形成された第2試験溶接金属における、前記試験板側の止端とルートとを通る線と前記助走板の前記他方側の面とがなす鋭角β(°)、および前記板厚方向における継手の部分溶込みb(mm)が、下記(vi)~(ix)式を満足し、板厚がt(mm)、幅が500mm、長さが500mmの試験体を形成する工程。
    (c)前記試験体を用いて、-10℃の試験温度で、予め設定される前記接合部材の許容応力であるσ(N/mm)を試験応力として付与した状態で、前記助走板の前記ノッチに衝撃荷重を加え、前記第1試験溶接金属および前記第2試験溶接金属を介して前記試験板まで亀裂を進展させる工程。
    (d)前記試験板の前記一方側の面と、前記第1試験溶接金属および前記第2試験溶接金属のそれぞれを介して進展した前記亀裂の先端との、前記幅方向における距離c(mm)およびc(mm)を測定する工程。
    t≧50.0 ・・・(i)
    30.0≦α≦70.0 ・・・(ii)
    30.0≦α≦70.0 ・・・(iii)
    3.0≦d≦t/3 ・・・(iv)
    3.0≦d≦t/3 ・・・(v)
    α-5.0≦β≦α+5.0 ・・・(vi)
    α-5.0≦β≦α+5.0 ・・・(vii)
    ≦b≦d+5.0 ・・・(viii)
    ≦b≦d+5.0 ・・・(ix)
    ≦b・tan(β)+10.0 ・・・(x)
    ≦b・tan(β)+10.0 ・・・(xi)
  2. 前記接合部材の板厚t(mm)が下記(xii)式を満足する、
    請求項1に記載の溶接構造体。
    t>80.0 ・・・(xii)
  3. 前記接合部材の降伏応力が400MPa以上、580MPa以下であり、引張強さが510MPa以上、750MPa以下である、
    請求項1または請求項2に記載の溶接構造体。
  4. 前記接合部材の-10℃における全厚のKca値が8000N/mm1.5未満である、
    請求項1から請求項3までのいずれかに記載の溶接構造体。
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