JP6693089B2 - 転写用積層体、及び光学素子の製造方法 - Google Patents

転写用積層体、及び光学素子の製造方法 Download PDF

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本発明は、転写による光学素子の製造方法に関するものである。
従来、画像表示装置に関して、種々の光学素子をパネル面に配置する構成が提案されている。またこのような光学素子には、Cプレート、Aプレートとして機能する液晶材料による位相差を設ける構成が提案されている(例えば特許文献1、2)。
すなわち、例えば画像表示装置では、パネル面に正Cプレートを配置することにより、視野角特性を向上することができ、この正Cプレートには、Cプレートとして機能する液晶材料による位相差層を適用することができる。また画像表示装置では、直線偏光板と1/4波長板との積層による円偏光板を画像表示パネルのパネル面に配置することにより反射防止を図ることができ、この1/4波長板には、Aプレートとして機能する液晶材料による位相差層を適用することができる。またこの円偏光板を構成する1/4波長板には、透過光に1/4波長の位相差を付与する位相差層と、透過光に1/2波長の位相差を付与する位相差層との積層体を適用して広帯域化することができ、この積層体に係る各位相差層に、Aプレートとして機能する液晶材料による位相差層を適用することができる。またパッシブ方式の3次元画像表示に利用される光学素子であるパターン位相差フィルムでは、Aプレートとして機能する液晶材料による位相差層が設けられ、この液晶材料による位相差層が画像表示パネルにおける画像表示に対応するようにパターニングされて作製される。
このようなCプレート、Aプレートとして機能する液晶材料による位相差層は、基材に液晶を配向させるための配向層を形成した後、位相差層の塗工液を塗工、乾燥、加熱、必要に応じて硬化することにより、位相差層に係る液晶材料を配向層の配向規制力により配向させた状態で固化して形成される。
一方、近年ではこのような光学素子を備えた画像表示装置は、全体の厚みを薄くすることが要求されている。基材に配向層及び位相差層を備えた光学素子を用いると、当該光学素子には基材も配向層も含まれることになるため、薄型化のためには基材や配向層を省略することが望ましい。このような方法としては、支持基材上に配向層を形成し、配向層上に位相差層を形成した転写用積層体を準備した後、最終的に位相差層を積層すべき被転写体上に粘着層を介して位相差層を転写し、その後、前記支持基材等を剥離除去する方法(例えば特許文献3参照)が知られている。
しかしながらCプレート、Aプレートとして機能する液晶材料による位相差層を備えた転写用積層体、この転写用積層体により作製される光学素子においては、実用上未だ不十分な問題がある。
すなわちこのような転写用積層体は、ロールにより提供される長尺フィルム材を搬送しながらこのフィルム材に順次配向層、位相差層を作製して形成されるが、各層間で十分に密着力を確保できない場合、光学素子の製造過程等において転写用積層体が層間剥離する恐れがある。一方で、層間剥離し難いように密着力を高めると、転写用積層体から支持基材を剥離する際に、十分な速度により支持基材を剥離することが困難になり、その結果、効率良く光学素子を生産できなくなったり、ジッピング等の不具合が発生する問題がある。なおここでジッピングは、連続してなめらかに支持体を剥離できないことにより、支持体が間欠的に剥離し、その結果、転写層の表面が波打ったりする現象である。
特開2006−268007号公報 特開2008−139806号公報 特開2014−13291号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、ジッピング等の不具合の発生を有効に回避して効率良く光学素子を生産することができ、配向層および位相差層の間で剥離して位相差層を転写することが可能な転写用積層体、および光学素子の製造方法を提供することを主目的とする。
本発明者らは、転写用積層体において、前記樹脂基材と前記配向層との剥離強度を前記配向層と前記位相差層との剥離強度よりも大きくした上で、配向層の位相差層側表面のISO14577−1で規定される押し込み硬さを所定量以上にすると、ジッピング等の不具合の発生を有効に回避して効率良く位相差層のみを転写することができることを見出し、本発明に至った。
上記目的を達成するために、本発明は、樹脂基材と、
前記樹脂基材上に配置され、配向材を含有する配向層と、
前記配向層上に配置された位相差層と
を有し、前記配向層の前記位相差層側表面のISO14577−1で規定される押し込み硬さが100N/mm以上であり、前記樹脂基材と前記配向層との剥離強度が前記配向層と前記位相差層との剥離強度よりも大きいことを特徴とする転写用積層体を提供する。
前記本発明に係る転写用積層体においては、前記配向層が含有する前記配向材が、光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基の架橋構造を有する共重合体であることが好ましい。前記配向層の前記位相差層側表面の前記押し込み硬さを所定量以上に調整し易く、また、前記樹脂基材と前記配向層との剥離強度が大きくなり易く、更に光学特性に優れる光学素子を得ることができるからである。
また、本発明は、樹脂基材上に、配向材を含有する配向層を形成する工程と、前記配向層上に位相差層を形成する工程とを有し、前記配向層の前記位相差層側表面のISO14577−1で規定される押し込み硬さが100N/mm以上であり、前記樹脂基材と前記配向層との剥離強度が前記配向層と前記位相差層との剥離強度よりも大きい転写用積層体を準備する転写用積層体準備工程と、
被転写体および前記転写用積層体の前記位相差層を対向させ、前記被転写体上に前記転写用積層体を転写する転写工程と、
前記被転写体上に転写された前記転写用積層体から前記樹脂基材および前記配向層を剥離する剥離工程と
を有することを特徴とする光学素子の製造方法を提供する。
前記光学素子の製造方法においては、前記転写用積層体準備工程において、樹脂基材上に、光配向性材料を含有し光配向性を有する熱硬化性組成物を塗布し、加熱し、偏光紫外線を照射することにより配向層を形成する工程を含むことが好ましい。光配向法は、定量的な配向処理の制御がし易いからである。
また、前記光配向性を有する熱硬化性組成物が、光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体を含有することが好ましい。前記配向層の前記位相差層側表面の前記押し込み硬さを所定量以上に調整し易く、また、前記樹脂基材と前記配向層との剥離強度が大きくなり易く、更に光学特性に優れる光学素子を得ることができるからである。
前記光学素子の製造方法においては、前記転写用積層体準備工程において、樹脂基材上に、ラビング用配向材料を含有する組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜表面をラビング処理することにより配向層を形成する工程を含んでいても良い。
本発明においては、ジッピング等の不具合の発生を有効に回避して効率良く光学素子を生産することができ、配向層および位相差層の間で剥離して位相差層を転写することが可能な転写用積層体、および光学素子の製造方法を提供することができるという効果を奏する。
本発明の光学素子の製造方法の一例を示す工程図である。
本発明の転写用積層体は、樹脂基材と、
前記樹脂基材上に配置され、配向材を含有する配向層と、
前記配向層上に配置された位相差層と
を有し、前記配向層の前記位相差層側表面のISO14577−1で規定される押し込み硬さが100N/mm以上であり、前記樹脂基材と前記配向層との剥離強度が前記配向層と前記位相差層との剥離強度よりも大きいことを特徴とする。
また、本発明の光学素子の製造方法は、樹脂基材上に、配向材を含有する配向層を形成する工程と、前記配向層上に位相差層を形成する工程とを有し、前記配向層の前記位相差層側表面のISO14577−1で規定される押し込み硬さが100N/mm以上であり、前記樹脂基材と前記配向層との剥離強度が前記配向層と前記位相差層との剥離強度よりも大きい転写用積層体を準備する転写用積層体準備工程と、
被転写体および前記転写用積層体の前記位相差層を対向させ、前記被転写体上に前記転写用積層体を転写する転写工程と、
前記被転写体上に転写された前記転写用積層体から前記樹脂基材および前記配向層を剥離する剥離工程と
を有することを特徴とする。
本発明の転写用積層体は、前記配向層の前記位相差層側表面のISO14577−1で規定される押し込み硬さが100N/mm以上であり、前記樹脂基材と前記配向層との剥離強度が前記配向層と前記位相差層との剥離強度よりも大きいことから、ジッピング等の不具合の発生を有効に回避しながら配向層および位相差層の間で剥離して位相差層を転写することが可能である。
前記ISO14577−1で規定される押し込み硬さは、配向層最表面の硬さを表していると考えられる。配向層の位相差層側表面の押し込み硬さが所定以上と高いことにより、液晶組成物に含まれる溶剤に溶解し難くなったり、配向層と位相差層との界面でそれぞれの層の硬さが異なるようになる。これにより、配向層と位相差層との密着性が低下し、連続してなめらかに支持体を剥離可能となり、ジッピング等の不具合の発生を有効に回避できるのではないかと考えられる。
本発明の光学素子の製造方法によれば、前記本発明の転写用積層体を用いて、ジッピング等の不具合の発生を有効に回避しながら配向層および位相差層の間で剥離して位相差層を転写することが可能であることから、効率良く光学素子を生産することができる。
また、本発明の光学素子の製造方法によれば、剥離工程にて樹脂基材および配向層を剥離するため、配向層を有しない光学素子を得ることができる。そのため、光学素子の薄型化が可能であり、画像表示装置全体の厚みを薄くすることができる。また、被転写体側に配向層も転写されると、配向層が光配向膜である場合、シンナモイル基やアゾベンゼン基等の光配向性基が存在しており、これらの光配向性基は可視光領域に吸収を持つため、配向層に色付きが生じ、光学特性が低下する恐れがある。本発明によれば、配向層を有しない光学素子を得ることができるため、配向層による光学特性の低下を防ぐことができる。
以下、本発明の転写用積層体及び光学素子の製造方法について詳細に説明する。本発明の転写用積層体は、本発明の光学素子の製造方法の転写用積層体準備工程において、説明する。
本発明の光学素子の製造方法について図面を参照して説明する。
図1(A)〜(D)は本発明の光学素子の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図1(A)に示すように、樹脂基材2と、樹脂基材2上に配置され、配向材を含有する配向層3と、配向層3上に配置され、液晶層である位相差層4とを有する転写用積層体1を準備する。転写用積層体1においては、樹脂基材2と配向層3との剥離強度が、配向層3と位相差層4との剥離強度よりも大きくなっており、且つ、配向層3の位相差層側表面5の前記押し込み硬さが所定値以上となっている。次に、図1(B)に示すように、被転写体11と転写用積層体1の位相差層4とを対向させ、粘着層12を介して被転写体11上に転写用積層体1を転写する。次に、図1(C)に示すように、被転写体11上に転写された転写用積層体1から樹脂基材2および配向層3を剥離する。これにより、図1(D)に示すように、被転写体11上に位相差層4が転写された光学素子10が得られる。
以下、本発明の光学素子の製造方法における各工程について説明する。
1.転写用積層体準備工程
本発明における転写用積層体準備工程は、樹脂基材上に、配向材を含有する配向層を形成する工程と、前記配向層上に位相差層を形成する工程とを有し、前記配向層の前記位相差層側表面のISO14577−1で規定される押し込み硬さが100N/mm以上であり、前記樹脂基材と前記配向層との剥離強度が前記配向層と前記位相差層との剥離強度よりも大きい転写用積層体を準備する工程である。
ここで、樹脂基材と配向層との剥離強度が配向層と位相差層との剥離強度よりも大きいことは、後述の剥離工程にて配向層および位相差層の界面で剥離することで確認することができる。一方、剥離工程にて樹脂基材および配向層の界面で剥離する場合には、樹脂基材と配向層との剥離強度が配向層と位相差層との剥離強度よりも大きいとはいえない。
また、配向層および位相差層の界面で剥離することは、IRにより分析可能である。
(1)配向層を形成する工程
本発明における配向層は、後述する樹脂基材上に形成され、配向材を含有するものである。配向材は、前記位相差層に含まれる液晶材料を配向させるための液晶配向材が用いられる。配向層の形成方法としては、偏光照射により配向規制力が付与される光配向性材料を用いる方法(以下「光配向法」という場合がある)、ラビングによって配向規制力が付与されるラビング用配向材料を用いる方法(以下「ラビング法」という場合がある)が挙げられる。中でも、静電気や塵の発生がなく、定量的な配向処理の制御を行いやすい点から、光配向法がより好ましい。
前記配向層の前記位相差層側表面のISO14577−1で規定される押し込み硬さが100N/mm以上であるようにするためには、配向層は、光配向性材料又はラビング用配向材料(以下、まとめて、配向性材料という場合がある)を含有する硬化性組成物の硬化物であることが好ましい。硬化性成分の含有量や硬化条件を適宜調節することにより、配向層の前記位相差層側表面のISO14577−1で規定される押し込み硬さを達成し易くなるからである。
配向性材料を含有する硬化性組成物としては、配向性材料自体が硬化可能であってもなくても良く、例えば、重合性基を有する配向性材料を含有する硬化性組成物、熱架橋性基を有する配向性材料と架橋剤とを含有する硬化性組成物、重合性基を有する配向性材料と重合性化合物とを含有する硬化性組成物、熱架橋性基を有する配向性材料と熱架橋性化合物と架橋剤とを含有する硬化性組成物、配向性材料と重合性化合物とを含有する硬化性組成物、配向性材料と熱架橋性化合物と架橋剤とを含有する硬化性組成物、等が挙げられる。
配向層の前記位相差層側表面のISO14577−1で規定される押し込み硬さを達成する方法としては、例えば、配向性材料や含まれる成分の分子量を上げる等の方法を挙げることができる。配向性材料を含有する硬化性組成物を用いる場合には、更に、配向性材料自体が有する重合性基や熱架橋性基の割合を増やす、重合性化合物や架橋剤の含有量を増やす、光開始剤や酸触媒等、開始剤の含有量を増やす、光照射量を多くする、硬化温度を上げる、硬化時間を長くする等、組成や硬化条件を適宜調整することにより達成することができる。
以下、より具体的に、光配向法と、ラビング法により配向層を形成する方法を順に説明する。
(1−1)光配向法により配向層を形成する工程
光配向法により配向層を形成する工程としては、樹脂基材上に、光配向性材料を含有する組成物を塗布し、乾燥し、偏光紫外線を照射することにより配向層を形成する工程が挙げられる。
中でも、樹脂基材上に、光配向性材料を含有し光配向性を有する熱硬化性組成物を塗布し、加熱し、偏光紫外線を照射することにより配向層を形成する工程を含むことが好ましい。このように、光配向性を有する熱硬化性組成物を含有する膜を熱硬化させ、さらに光配向させてなる配向層は、熱硬化性組成物の硬化物からなることから架橋構造、すなわち三次元的な網目構造を有している。そのため、当該架橋構造の程度を適宜調整することにより、配向層は硬度が高くなりやすく、配向層の前記位相差層側表面のISO14577−1で規定される押し込み硬さを達成し易くなる。また、配向層が架橋構造を有するため、耐熱性および耐溶剤性に優れる配向層を得ることができ、液晶配向能の低下を抑制することができる。そのため、配向層上に形成される位相差層の光学特性を良好にすることができる。
以下、光配向性を有する熱硬化性組成物を用いて配向層を形成する方法について詳しく説明する。
(a)光配向性を有する熱硬化性組成物
光配向性を有する熱硬化性組成物には、通常、光配向性成分と、熱架橋性成分と、架橋剤とが含まれる。ここで光配向性成分とは、後述する光配向性基を有する成分であり、熱架橋性成分とは、後述する熱架橋性基を有する成分である。
例えば、光配向性成分と、熱架橋性成分と、架橋剤とは、各々低分子化合物であっても重合体の構成単位に含まれるものであっても良い。光配向性を有する熱硬化性組成物は、例えば、光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体と、架橋剤とを含有する組成物であっても良いし、例えば国際公開第2011/126022号に記載されているように、光配向性基および熱架橋性基を有する低分子化合物と、熱架橋性基を有するポリマーと、架橋剤とを含有する組成物であっても良いし、例えば国際公開第2014/073658号に記載されているように、光配向性基および熱架橋性基を有する低分子化合物と、樹脂基材に親和性が高いポリマーと、架橋剤とを含有する組成物であっても良い。
本発明に用いられる光配向性を有する熱硬化性組成物は、光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体を含有することが好ましい。光配向性及び熱架橋性が十分になり易く、前記配向層の前記位相差層側表面の前記押し込み硬さを所定量以上に調整し易く、また、前記樹脂基材と前記配向層との剥離強度が大きくなり易く、光学特性に優れる光学素子を得やすいからである。
以下、本発明において好適に用いられる光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体を含有する、光配向性を有する熱硬化性組成物について詳述するが、本発明は当該態様に限定されるものではない。
(a−1)共重合体
本発明に好適に用いられる共重合体は、光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有するものである。
以下、共重合体における各構成単位について説明する。
(a−1−1)光配向性構成単位
本発明における光配向性構成単位は、光照射により光反応を生じることで異方性を発現する部位である。光反応としては、光二量化反応または光異性化反応であることが好ましい。すなわち、光配向性構成単位は、光照射により光二量化反応を生じることで異方性を発現する光二量化構成単位、または、光照射により光異性化反応を生じることで異方性を発現する光異性化構成単位であることが好ましい。
光配向性構成単位は、光配向性基を有するものである。光配向性基は、上述のように、光照射により光反応を生じることで異方性を発現する官能基であり、光二量化反応または光異性化反応を生じる官能基であることが好ましい。
光二量化反応を生じる光配向性基としては、例えばシンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基、キノリン基、アゾベンゼン基、スチルベン基等が挙げられる。これらの官能基におけるベンゼン環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、光二量化反応を妨げないものであればよく、例えばアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基等が挙げられる。
光異性化反応を生じる光配向性基としては、シストランス異性化反応を生じるものであることが好ましく、例えばシンナモイル基、カルコン基、アゾベンゼン基、スチルベン基等が挙げられる。これらの官能基におけるベンゼン環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、光異性化反応を妨げないものであればよく、例えばアルコキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基等が挙げられる。
中でも、光配向性基は、シンナモイル基であることが好ましい。具体的に、シンナモイル基としては、下記式(2−1)及び(2−2)で表される基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記式(2−1)中、R11は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアリール基または炭素数1〜18のシクロアルキル基を表す。ただし、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよく、置換基を有してもよい。R12〜R15はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアリール基または炭素数1〜18のシクロアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基またはシアノ基を表す。ただし、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよく、置換基を有してもよい。R16およびR17はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアリール基または炭素数1〜18のアルコキシ基を表す。
また、上記式(2−2)中、R21〜R25はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアリール基または炭素数1〜18のシクロアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基またはシアノ基を表す。ただし、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよく、置換基を有してもよい。R26およびR27はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアリール基または炭素数1〜18のアルコキシ基を表す。
なお、光配向性基がシンナモイル基の場合であって、上記式(2−1)で表される基の場合、後述する単量体単位に含まれるスチレン骨格のベンゼン環がシンナモイル基のベンゼン環となっていてもよい。
また、上記式(2−1)で表されるシンナモイル基は、下記式(2−3)で表される基であることがより好ましい。
上記式(2−3)中、R12〜R17は上記式(2−1)と同様である。R18は水素原子、炭素数1〜18のアルコキシ基、シアノ基、炭素数1〜18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基またはシクロヘキシル基を表す。ただし、アルキル基、フェニル基、ビフェニル基およびシクロヘキシル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよい。nは1〜5を表し、R18はオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよい。nが2〜5の場合、R18は互いに同一でもよく異なってもよい。中でも、nが1であり、R18がパラ位に結合していることが好ましい。
光配向性基が上記式(2−3)及び(2−2)で表される基からなる群から選択される少なくとも1種の基である場合、光配向性構成単位の末端付近に芳香環が配置されるようになり、π電子を多く含むようになる。そのため、配向層上に形成される液晶層と親和性が高くなり、液晶配向能が向上し、液晶層との密着性が高くなると考えられる。
光配向性構成単位を構成する単量体単位としては、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、ビニルエステル等が挙げられる。中でも、上記熱架橋性構成単位と同様に、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンが好ましい。
光配向性構成単位としては、下記式(3)で表される構成単位を例示することができる。
(上記式(3)中、Zは単量体単位を表し、Xは光配向性基を表し、Lは2価の連結基または単結合を表す。)
上記式(3)中、Zは単量体単位を表し、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、ビニルエステル等が挙げられる。中でも、上述のように、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンが好ましい。具体的には、下記式(4−1)〜(4−6)で表される単量体単位を挙げることができる。
(上記式(4−1)〜(4−6)中、R31は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R32は水素原子またはメチル基を表し、R33は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R34は水素原子または低級アルキル基を表す。)
単量体単位がスチレンの場合、−L−Xはオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよく、また複数結合していてもよい。すなわち、下記式(1)で表される光配向性構成単位を含むことが、より優れた液晶配向能が得られる点、及びジッピングの発生をより抑制しやすい点から好ましい。一般に液晶分子にはベンゼン環等の芳香環を有するものが多く、同じくπ電子系を含む。そのため、共重合体中にスチレン骨格を有し、π電子系を多く含むと、本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物から形成された配向層は、液晶分子との相互作用が強くなる。これにより、液晶分子を配向制御しやすくなり、優れた液晶配向能が得られると考えられる。
また、下記式(1)で表される光配向性構成単位は高感度であるため、特に光配向性基が光二量化反応を生じる官能基である場合には、光二量化反応、すなわち光架橋反応が進行しやすく、配向層の架橋密度が高くなる。そのため、配向層表面の押し込み硬さを所定以上にしやすく、また、液晶組成物に含まれる溶剤に溶解し難くなったり、配向層と位相差層とで硬さが異なるようになり、配向層および位相差層の間でより剥離しやすくなる。
(ここで、式(1)中、Xは光配向性基、Lは2価の連結基または単結合、Rは水素原子、メチル基、塩素原子又はフェニル基、kは1〜5を表す。)
kは1〜5であり、−L−Xはオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよい。kが2〜5の場合、LおよびXは互いに同一でもよく異なってもよい。中でも、kが1であり、−L−Xがパラ位に結合していることが好ましい。
上記式(3)中、Xは光配向性基を表し、例えばシンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基、キノリン基、アゾベンゼン基、スチルベン基等が挙げられる。これらの官能基におけるベンゼン環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、光二量化反応や光異性化反応を妨げないものであればよく、例えばアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基等が挙げられる。
中でも、光配向性基はシンナモイル基であることが好ましい。具体的には、上記式(2−1)、(2−2)で表される基であることが好ましい。
上記式(3)におけるLは2価の連結基または単結合である。なお、Lが単結合の場合、光配向性基Xは単量体単位Zに直接結合される。2価の連結基としては、例えばエーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、アルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基、およびこれらの組み合わせ等が挙げられる。具体的には、−O−、−S−、−COO−、−COS−、−CO−、−OCO−、−OCO(CHCOO−、−OCO(CHCHO)COO−、−OCOCO−、−OCOC10O−、−COO(CHO−、−COO(CHCHO)−、−COOCO−、−COOC10O−、−O(CHO−、−O(CHCHO)−、−OCO−、−OC10O−、−(CHO−等が挙げられる。nは1〜20、mは1〜10である。
共重合体が有する光配向性構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
共重合体の合成には、上記光配向性構成単位を形成する光配向性基を有するモノマーを用いることができる。光配向性基を有するモノマーは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
共重合体における光配向性構成単位の含有割合としては、共重合体全体を100モル%としたとき、10モル%以上90モル%以下の範囲内で設定することができ、好ましくは20モル%以上80モル%以下の範囲内である。光配向性構成単位の含有割合が少ないと、感度が低下し、良好な液晶配向能を付与するのが困難になる場合がある。また、光配向性構成単位の含有割合が多いと、相対的に熱架橋性構成単位の含有割合が少なくなり、十分な熱硬化性が得られず、良好な液晶配向能を維持するのが困難になる場合がある。中でも、前記押し込み硬さを達成し易くなる点から、光配向性構成単位の含有割合としては、共重合体全体を100モル%としたとき、70モル%以下とすることが好ましい。
(a−1−2)熱架橋性構成単位
本発明における熱架橋性構成単位は、加熱により架橋剤と結合する部位である。
熱架橋性構成単位は、熱架橋性基を有するものである。熱架橋性基としては、例えばヒドロキシ基、カルボキシ基、フェノール性ヒドロキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミド基等が挙げられる。中でも、反応性の観点から、脂肪族ヒドロキシ基が好ましく、第1級ヒドロキシ基がより好ましい。なお、第1級ヒドロキシ基とは、ヒドロキシ基が結合する炭素原子が第1級炭素原子であるヒドロキシ基をいう。
熱架橋性構成単位を構成する単量体単位としては、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、ビニルエステル等が挙げられる。中でも、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンが好ましい。
アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのモノマーは、溶解性が高く、市販品として入手しやすく、共重合とした際の反応性が良いという利点を有する。
また、スチレンの場合、より優れた液晶配向能とより優れた密着性の点から好ましい。共重合体において、スチレン骨格を有することにより、π電子系を多く含む共重合体とすることができる。そのため、本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物を用いて配向層を形成した場合、π電子系の相互作用により、液晶配向能を向上させ、また液晶層との密着性を高めることができると考えられる。
熱架橋性構成単位としては、下記式(5)で表される構成単位を例示することができる。
(上記式(5)中、Zは単量体単位を表し、Yは熱架橋性基を表し、Lは2価の連結基または単結合を表す。)
上記式(5)中、Zは単量体単位を表し、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、マレイミド、ビニルエーテル、ビニルエステル等が挙げられる。中でも、上述のように、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンが好ましい。
当該単量体単位としては、具体的には、前記式(4−1)〜(4−6)で表される単量体単位を挙げることができる。
単量体単位が前記式(4−2)で表されるようなスチレンの場合、−L−Yはオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよく、また複数結合していてもよい。複数の場合、LおよびYは互いに同一でもよく異なってもよい。中でも、−L−Yが1つでありパラ位に結合していることが好ましい。
上記式(5)中、Yは熱架橋性基を表し、例えばヒドロキシ基、カルボキシ基、フェノール性ヒドロキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミド基等が挙げられる。中でも、上述したように、反応性の観点から、脂肪族ヒドロキシ基が好ましく、第1級ヒドロキシ基がより好ましい。
上記式(5)中、Lは単結合または2価の連結基を表す。なお、Lが単結合の場合、熱架橋性基Yは単量体単位Zに直接結合される。2価の連結基としては、例えばエーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、アルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基、およびこれらの組み合わせ等が挙げられる。中でも、2価の連結基は、−(CH−または−(CO)−を有することが好ましく、nは4〜11、mは2〜5であることが好ましい。nおよびmが小さすぎると、熱架橋性構成単位において熱架橋性基と共重合体の主骨格との距離が短くなるため、熱架橋性基に架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と架橋剤との反応性が低下するおそれがある。一方、nおよびmが大きすぎると、熱架橋性構成単位において連結基の鎖長が長くなるため、末端の熱架橋性基が表面に出にくく、熱架橋性基に架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と架橋剤との反応性が低下するおそれがある。
なお、例えばLが−(CO)−の場合であって、Yがヒドロキシ基の場合、−L−Yは−(CO)−Hとすることができる。
また、上記式(5)では熱架橋性基Yが単量体単位Zに2価の連結基または単結合Lを介して結合されているが、Yがカルボキシ基またはヒドロキシ基の場合、上記式(5)で表される熱架橋性構成単位は、下記式(5−1)や式(5−2)で表される構成単位であってもよい。なお、下記式中、各符号は上記式と同様である。
また、熱架橋性構成単位は架橋基を有していてもよい。この場合、熱架橋性構成単位が架橋剤を兼ねることができる。このような熱架橋性構成単位を有する共重合体を用いる場合は、本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物を架橋剤を添加せずに利用することができる。しかしながら、保存安定性の点から、熱架橋性構成単位は架橋基を有さないことが好ましい。
架橋基を有する熱架橋性構成単位としては、例えば、オルト位がヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換されたフェノール性ヒドロキシ基、グリシジル基を有するものが挙げられる。
このような熱架橋性構成単位を形成するモノマーとしては、例えばアクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、アクリルアミド化合物、メタクリルアミド化合物、スチレン化合物、マレイミド化合物、ビニル化合物等が挙げられる。
アクリル酸エステル化合物およびメタクリル酸エステル化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、テトラエチレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、トリプロピレングリコールモノアクリレート、テトラプロピレングリコールモノアクリレート等のヒドロキシ基とアクリル基またはメタクリル基とを有するモノマーが挙げられる。
スチレン化合物としては、例えば、4−ビニル安息香酸とジオールとのエステル化物、4−ビニル安息香酸とジエチレングリコールとのエステル化物、ヒドロキシスチレンとジオールとのエーテル化物、ヒドロキシスチレンとジエチレングリコールとのエーテル化物等のヒドロキシ基とスチレン基とを有するモノマーが挙げられる。
その他にも、熱架橋性構成単位を形成するモノマーとしては、具体的には例えば、特許5626493号公報 段落0075〜0079に記載されているモノマーを用いることができる。
共重合体が有する熱架橋性構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
共重合体の合成には、上記熱架橋性構成単位を形成する熱架橋性基を有するモノマーを用いることができる。熱架橋性基を有するモノマーは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
共重合体における熱架橋性構成単位の含有割合としては、共重合体全体を100モル%としたとき、10モル%以上90モル%以下の範囲内で設定することができ、好ましくは20モル%以上80モル%以下の範囲内である。中でも、前記押し込み硬さを達成し易くなる点から、熱架橋性構成単位の含有割合としては、共重合体全体を100モル%としたとき、30モル%以上とすることが好ましい。熱架橋性構成単位の含有割合が少ないと、十分な熱硬化性が得られず、良好な液晶配向能を維持するのが困難になる場合がある。また、熱架橋性構成単位の含有割合が多いと、相対的に光配向性構成単位の含有割合が少なくなり、感度が低下し、良好な液晶配向能を付与するのが困難になる場合がある。
(a−1−3)他の構成単位
本発明において、共重合体は、光配向性構成単位および熱架橋性構成単位の他に、光配向性基および熱架橋性基のいずれも有さない構成単位を有していてもよい。共重合体に他の構成単位が含まれることにより、例えば溶剤溶解性、耐熱性、反応性等を高めることができる。
光配向性基および熱架橋性基を有さない構成単位を構成する単量体単位としては、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、アクリルアミド、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン、ビニル等が挙げられる。中でも、上記熱架橋性構成単位と同様に、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンが好ましい。
このような光配向性基および熱架橋性基を有さない構成単位を形成するモノマーとしては、例えばアクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物、ビニル化合物等が挙げられる。具体的には例えば、国際公開第2010/150748号の段落0036〜0040に記載されているモノマーを用いることができる。
共重合体における光配向性基および熱架橋性基を有さない構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
共重合体における上記構成単位の含有割合としては、共重合体全体を100モル%としたとき、0モル%以上50モル%以下の範囲内であることが好ましく、0モル%以上30モル%以下の範囲内であることがより好ましい。上記構成単位の含有割合が多いと、相対的に光配向性構成単位および熱架橋性構成単位の含有割合が少なくなり、感度が低下し、良好な液晶配向能を付与するのが困難になり、また十分な熱硬化性が得られず、良好な液晶配向能を維持するのが困難になる場合がある。
(a−1−4)共重合体
共重合体の数平均分子量は、特に限定されるものではなく、例えば3,000以上200,000以下程度とすることができ、好ましくは4,000以上100,000以下の範囲内である。数平均分子量が大きすぎると、溶剤に対する溶解性が低くなったり粘度が高くなったりして取り扱い性が低下し、均一な膜を形成しにくい場合がある。また、数平均分子量が小さすぎると、熱硬化時に硬化不足になり溶剤耐性や耐熱性が低下する場合がある。中でも、前記押し込み硬さを達成し易くなる点から、共重合体の数平均分子量は、5000以上であることが好ましい。
なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定することができる。
共重合体の合成方法としては、光配向性基を有するモノマーと熱架橋性基を有するモノマーとを共重合する方法が挙げられる。
共重合体の合成方法としては特に限定されないが、例えば、光配向性基を有するモノマーと熱架橋性基を有するモノマーと重合開始剤等とを共存させた溶剤中において重合反応させることにより得ることができる。その際、用いられる溶剤は、光配向性基を有するモノマー、熱架橋性基を有するモノマーおよび重合開始剤等を溶解するものであれば特に限定されない。具体的には、後述の光配向性を有する熱硬化性組成物に用いられる溶剤と同様とすることができる。また、重合反応の際の温度は、例えば50℃以上120℃以下程度で設定することができる。上記方法により得られる共重合体は、通常、溶剤に溶解した溶液の状態である。
上記方法により得られた共重合体はそのまま用いることができるが、下記に示す方法により精製して用いることもできる。
すなわち、上記方法で得られた共重合体の溶液を、攪拌下のジエチルエーテルやメタノール、水等に投入して再沈殿させ、生成した沈殿物を濾過、洗浄した後に、常圧または減圧下で、常温乾燥または加熱乾燥し、共重合体の粉体とすることができる。この操作により、共重合体と共存する重合開始剤および未反応のモノマーを除去することができ、その結果、精製した共重合体の粉体が得られる。一度の操作で十分に精製できない場合は、得られた粉体を溶剤に再溶解させ、上記の操作を繰り返し行えばよい。
共重合体は、共重合体を合成した際の溶液形態で、あるいは、粉体形態で、あるいは精製した粉末を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いてもよい。
また、共重合体は、1種であってもよく複数種の共重合体の混合物であってもよい。
(a−2)架橋剤
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する架橋剤を含有することが好ましい。架橋剤は、上記共重合体の熱架橋性構成単位と結合することにより、架橋密度を高め、配向層の表面硬度を高めることができる。そのため、ジッピング抑制効果が向上し、更に耐熱性および耐溶剤性を高めることができる。
架橋剤としては、例えばエポキシ化合物、メチロール化合物、イソシアナート化合物等が挙げられる。中でも、メチロール化合物が好ましい。
また、架橋剤は、アミノ基の水素原子がメチロール基またはアルコキシメチル基で置換されたメラミン化合物、尿素化合物、グリコールウリル化合物およびベンゾグアナミン化合物を縮合させて得られる化合物であってもよい。
さらに、架橋剤としては、ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換されたアクリルアミド化合物またはメタクリルアミド化合物を使用して製造されるポリマーも用いることができる。
具体的には例えば、国際公開第2010/150748号の段落0047〜0050に記載されている架橋剤を用いることができる。
また、分子内にベンゼン環を複数個含む架橋剤も利用することができる。分子内にベンゼン環を複数個含む架橋剤としては、例えばヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基を合わせて2個以上有し、分子量が1200以下のフェノール誘導体や、少なくとも2個の遊離N−アルコキシメチル基を有するメラミン−ホルムアルデヒド誘導体やアルコキシメチルグリコールウリル誘導体が挙げられる。ヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体は、対応するヒドロキシメチル基を有さないフェノール化合物とホルムアルデヒドを塩基触媒下で反応させることによって得ることができる。
これらの架橋剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物における架橋剤の含有量は、上記共重合体100質量部に対して1質量部以上40質量部以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは2質量部以上30質量部以下の範囲内である。含有量が少なすぎる場合には、光配向性を有する熱硬化性組成物から形成される硬化膜の耐熱性および溶剤耐性が低下し、液晶配向能が低下するおそれがある。また、含有量が多すぎる場合には、液晶配向能および保存安定性が低下することがある。中でも、前記押し込み硬さを達成し易くなる点から、架橋剤の含有量は、上記共重合体100質量部に対して5質量部以上であることが好ましい。
(a−3)酸または酸発生剤
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、酸または酸発生剤を含有してもよい。酸または酸発生剤により、本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物の熱硬化反応を促進させることができる。
酸または酸発生剤としては、スルホン酸基含有化合物、塩酸またはその塩、および塗膜の乾燥および加熱硬化時に熱分解して酸を発生する化合物、すなわち温度50℃から250℃で熱分解して酸を発生する化合物であれば特に限定されるものではない。具体的には、国際公開第2010/150748号の段落0054に記載されているものを用いることができる。
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物における酸または酸発生剤の含有量は、上記共重合体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上20質量部以下の範囲内、より好ましくは0.05質量部以上10質量部以下の範囲内である。酸または酸発生剤の含有量を上記範囲内とすることで、十分な熱硬化性および溶剤耐性を付与することができ、さらに光照射に対する高い感度をも付与することができる。一方、含有量が多すぎると、光配向性を有する熱硬化性組成物の保存安定性が低下する場合がある。中でも、前記押し込み硬さを達成し易くなる点から酸または酸発生剤の含有量は、上記共重合体100質量部に対して0.7質量部以上であることが好ましい。
(a−4)増感剤
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、増感剤を含有してもよい。増感剤により、光二量化反応や光異性化反応等の光反応を促進させることができる。増感剤としては、具体的には、国際公開第2010/150748号の段落0057に記載されているものを用いることができる。中でも、ベンゾフェノン誘導体およびニトロフェニル化合物が好ましい。増感剤は単独でまたは2種以上の化合物を組み合わせて併用することができる。
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物における増感剤の含有量は、上記共重合体100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部以上10質量部以下の範囲内である。含有量が少なすぎると増感剤としての効果を十分に得られない場合があり、含有量が多すぎると透過率の低下および塗膜の荒れが生じることがある。
(a−5)溶剤
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、主として溶剤に溶解した溶液状態で用いられる。
溶剤としては、上記の各成分を溶解できるものであれば特に限定されるものでなく、具体的には、国際公開第2010/150748号の段落0061に記載されているものを用いることができる。
溶剤は1種単独でまたは2種以上の組合せで使用することができる。
また、溶剤は、樹脂基材と配向層との剥離強度を配向層と位相差層との剥離強度よりも大きくするために、樹脂基材を溶解可能なものであってもよい。溶剤に樹脂基材の一部が溶解することで、配向層および樹脂基材の密着性を高めることができ、樹脂基材と配向層との剥離強度を配向層と位相差層との剥離強度よりも大きくすることができる。
樹脂基材を溶解可能な溶剤としては、樹脂基材の種類に応じて適宜選択される。例えば、樹脂基材がアクリル樹脂、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、環状ポリオレフィン等である場合、溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等を用いることができる。
さらに、溶剤を、樹脂基材を溶解可能なものとするために、溶剤および樹脂基材のSP値の差の絶対値を所定の範囲内としてもよい。具体的には、溶剤のSP値は、樹脂基材のSP値との差の絶対値が3.0(cal/cm31/2以下であることが好ましく、2.0(cal/cm31/2以下であることがより好ましい。溶剤および樹脂基材のSP値の差の絶対値が上記範囲であることにより、溶剤および樹脂基材の親和性が良く、配向層および樹脂基材の密着性を高めることができるからである。
ここで、SP値は、溶解性の指標である溶解度パラメータであり、Fedorsの方法で計算される。Fedorsの方法は、例えば「SP値 基礎・応用と計算方法」(山本秀樹著 株式会社情報機構発行、2005年)に記載されている。Fedorsの方法において、SP値は次式により算出される。
SP値=[ΣEcoh/ΣV]
上記式中、Ecohは凝集エネルギー密度、Vはモル分子容である。原子団ごとに決められたEcohおよびVに基づき、EcohおよびVの総和であるΣEcohおよびΣVを求めることによって、SP値を算出することができる。
(a−6)添加剤
本発明における光配向性を有する熱硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、シランカップリング剤、界面活性剤、レオロジー調整剤、顔料、染料、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤等を含有することができる。また、液晶配向能の向上のために、液晶性モノマーを含有させることができる。例えば、界面活性剤、離型剤等が添加されている場合には、界面活性剤や離型剤等が配向層の表面に浮き出てきやすいため、配向層および位相差層の剥離性を高めることができ、樹脂基材と配向層との剥離強度を配向層と位相差層との剥離強度よりも大きくすることができる。
(a−7)熱硬化性組成物
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、通常、各成分が溶剤に溶解した溶液として用いられる。本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物における固形分の割合は、各成分が均一に溶剤に溶解している限り特に限定されるものではなく、0.1質量%以上80質量%以下の範囲内であり、好ましくは0.5質量%以上60質量%以下の範囲内であり、より好ましくは0.5質量%以上40質量%以下の範囲内である。固形分の割合が少なすぎると、液晶配向能や熱硬化性を付与することが困難になる場合がある。また、固形分の割合が多すぎると、光配向性を有する熱硬化性組成物の粘度が高くなり、均一な膜を形成しにくくなる。
なお、固形分とは、光配向性を有する熱硬化性組成物の全成分から溶剤を除いたものをいう。
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物の調製方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を適宜選択して用いればよい。保存安定性が長くなることから、共重合体、架橋剤、およびその他の添加剤を混合し、後から酸または酸発生剤を添加する方法が好ましい。なお、酸または酸発生剤をはじめから添加する場合には、酸または酸発生剤として、塗膜の乾燥および加熱硬化時に熱分解して酸を発生する化合物を用いることが好ましい。
また、調製された光配向性を有する熱硬化性組成物の溶液は、孔径が0.2μm程度のフィルタ等を用いて濾過した後、使用することが好ましい。
(b)配向層の形成方法
配向層の形成方法としては、上述したように、基材上に光配向性を有する熱硬化性組成物を塗布し、加熱硬化し、偏光紫外線を照射する方法が用いられる。
光配向性を有する熱硬化性組成物の塗布方法としては、基材上に均一な膜を形成可能な方法であれば特に限定されるものではなく、例えばスピンコート法、ロールコート法、ロッドバーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法、スロットダイコート法、ワイヤーバーコート法、フローコート法、インクジェット法等を挙げることができる。
光配向性を有する熱硬化性組成物の塗布後は、組成物中に含まれる溶媒を除去するために乾燥を行ってもよい。塗膜の乾燥には、例えばホットプレートやオーブン等を用いることができる。温度は、溶媒に合わせて適宜選択されれば良く、例えば30℃以上160℃以下程度で設定することができ、好ましくは50℃以上140℃以下の範囲内である。時間は、例えば20秒間以上60分間以下程度で設定することができ、好ましくは30秒間以上10分間以下の範囲内である。
架橋反応を進行させるための塗膜の加熱硬化にも、ホットプレートやオーブン等を用いることができる。温度は、前記押し込み硬さを達成できるように適宜選択されれば良く、例えば30℃以上250℃以下程度で設定することができる。中でも、前記押し込み硬さを達成し易くなる点から、温度は80℃以上であることが好ましい。時間は、前記押し込み硬さを達成できるように適宜選択されれば良く、例えば20秒間以上60分間以下程度で設定することができる。中でも、前記押し込み硬さを達成し易くなる点から、時間は1分以上であることが好ましい。
塗膜の乾燥および加熱硬化を同時に行ってもよく別々に行ってもよい。
光配向性を有する熱硬化性組成物を熱硬化させて得られる硬化膜の膜厚は、用途等に応じて適宜選択されるものであり、例えば0.05μm以上30μm以下程度とすることができる。なお、硬化膜の膜厚が薄すぎると、十分な液晶配向能が得られない場合がある。
得られた硬化膜には、偏光紫外線を照射することにより、光反応を生じさせて異方性を発現させることができる。偏光紫外線の波長は通常150nm以上450nm以下の範囲内である。また、偏光紫外線の照射方向は、基材面に対して垂直または斜め方向とすることができる。
なお、配向層が上述の光配向性を有する熱硬化性組成物から形成されたものであることは、配向層から材料を採取し分析することで確認することができる。分析方法としては、NMR、IR、GC−MS、XPS、TOF−SIMSおよびこれらの組み合わせた方法を適用することができる。
(c)配向層
光配向法によって形成された配向層は、少なくとも光配向性基を有する光配向性材料を用いて形成されたものであることから、光照射により光反応を生じることで異方性を発現した構造を有する配向材を含有し、光配向性基の光二量化構造または光異性化構造を有する配向材を含有するものが挙げられる。
上述の光配向性を有する熱硬化性組成物から形成されたものである場合、配向層は、光配向性基の光二量化構造または光異性化構造を有する配向材、および、熱架橋性基の架橋構造を有する。
配向層が上述の光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体を含有する光配向性を有する熱硬化性組成物から形成されたものである場合、配向層は、光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基の架橋構造を有する共重合体を含有する。
ここで、架橋構造とは、三次元的な網目構造をいう。架橋構造には、前記共重合体の熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と架橋剤とが結合してなる架橋構造が少なくとも含まれる。ここでの架橋構造には、光配向性基同士が光二量化反応により架橋した構造、ならびに、エチレン性不飽和二重結合基同士が重合した構造は含まれない。
光配向法によって得られた配向層が、所定の光二量化構造または光異性化構造、および、所定の架橋構造を有する共重合体を含有する場合、良好な液晶配向能を有し、且つ、良好なジッピング抑制効果、更に良好な耐熱性および耐溶剤性を有するものである。
例えば、架橋剤がヘキサメトキシメチルメラミンの場合、架橋構造は例えば下記に示すような構造になる。なお、下記式中、各符号は上記式(1)と同様である。下記共重合体は例示であり、単量体単位や熱架橋性基の残基等は下記に限定されるものではない。
なお、共重合体の各構成単位については、上記「光配向性を有する熱硬化性組成物」に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
配向層が上記共重合体を含有することは、配向層から材料を採取し分析することで確認することができる。分析方法としては、NMR、IR、GC−MS、XPS、TOF−SIMSおよびこれらの組み合わせた方法を適用することができる。
共重合体における光二量化構造は、上記式(1)で表される光配向性構成単位の光配向性基同士が光二量化反応により架橋した構造であり、シクロプロパン骨格を有する構造である。
光二量化反応は、下記に示すような反応であり、光配向性基に含まれるオレフィン構造が光反応によりシクロプロパン骨格を形成する反応である。光配向性基の種類に応じてXa〜XdおよびXa’〜Xd’は異なる。
光二量化構造は、シンナモイル基の光二量化構造であることが好ましい。具体的には、上記「光配向性を有する熱硬化性組成物」に記載したシンナモイル基同士が光二量化反応により架橋した構造が好ましい。中でも、配向層は、下記式(7−1)、(7−2)で表されるような光二量化構造を有することが好ましい。なお、下記式中、各符号は上記式(2−1)、(2−2)、及び(2−3)と同様である。
配向層が、上記式(7−1)、(7−2)で表されるような光二量化構造を有する場合、芳香環が多く配置され、π電子を多く含むようになる。そのため、配向層上に形成される液晶層と親和性が高くなり、液晶配向能が向上し、液晶層との密着性がさらに高くなると考えられる。
また、共重合体における光異性化構造は、光配向性構成単位が有する光配向性基が光異性化反応により異性化した構造である。例えばシストランス異性化反応の場合、光異性化構造は、シス体がトランス体に変化した構造およびトランス体がシス体に変化した構造のいずれであってもよい。
例えば、光配向性基がシンナモイル基の場合、光異性化反応は下記に示すような反応であり、光配向性基に含まれるオレフィン構造が光反応によりシス体またはトランス体を形成する反応である。光配向性基の種類に応じてXa〜Xdは異なる。
光異性化構造は、シンナモイル基の光異性化構造であることが好ましい。具体的には、上記「光配向性を有する熱硬化性組成物」に記載したシンナモイル基が光異性化反応により異性化した構造が好ましい。この場合、光異性化構造は、シス体がトランス体に変化した構造およびトランス体がシス体に変化した構造のいずれであってもよい。中でも、配向層は、下記式(8−1)及び(8−2)で示されるような、上記式(2−1)及び(2−2)で表されるシンナモイル基の光異性化構造を有することが好ましい。
なお、配向層が上記光二量化構造または光異性化構造を有することは、NMRまたはIRにより分析可能である。
(1−2)ラビング法により配向層を形成する工程
ラビング法により配向層を形成する工程としては、樹脂基材上に、ラビング用配向材料を含有する組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜表面をラビング処理することにより配向層を形成する工程が挙げられる。
中でも、樹脂基材上に、ラビング用配向材料を含有する硬化性組成物を塗布し、加熱、や光照射等により重合乃至架橋反応等の硬化反応を進行させて硬化塗膜を形成し、当該硬化塗膜表面をラビング処理することにより配向層を形成する工程を含むことが好ましい。このように、ラビング用配向材料を含有する硬化性組成物を含有する塗膜を硬化させ、さらにラビング処理してなる配向層は、硬化性組成物の硬化物からなることから架橋構造、すなわち三次元的な網目構造を有している。そのため、当該架橋構造の程度を適宜調整することにより、配向層は硬度が高くなりやすく、配向層の前記位相差層側表面のISO14577−1で規定される押し込み硬さを達成し易くなる。また、配向層が架橋構造を有するため、耐熱性および耐溶剤性に優れる配向層を得ることができ、液晶配向能の低下を抑制することができる。そのため、配向層上に形成される位相差層の光学特性を良好にすることができる。
(a)ラビング用配向材料を含有する組成物
ラビング用配向材料を含有する組成物には、通常、少なくともラビング用配向材料が含まれる。ラビング用配向材料を含有する組成物としては、中でも前述のように、ラビング用配向材料を含有する硬化性組成物が好ましい。
ラビング用配向材料を含有する硬化性組成物としては、例えば、重合性基を有するラビング用配向材料を含有する硬化性組成物、熱架橋性基を有するラビング用配向材料と架橋剤とを含有する硬化性組成物、重合性基を有するラビング用配向材料と重合性化合物とを含有する硬化性組成物、熱架橋性基を有するラビング用配向材料と熱架橋性化合物と架橋剤とを含有する硬化性組成物、ラビング用配向材料と重合性化合物とを含有する硬化性組成物、ラビング用配向材料と熱架橋性化合物と架橋剤とを含有する硬化性組成物等が挙げられる。重合性基としては、エチレン性不飽和二重結合基が好適に用いられる。エチレン性不飽和二重結合基としては、例えばアクリロイル基、メタアクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。熱架橋性基としては、前述と同様のものが挙げられる。
硬化反応が、重合性基による光硬化反応の場合、照度により反応制御が容易であり、硬度の調節が容易になる点から好ましい。
一方、熱架橋性基による熱硬化反応の場合、光照射装置を使用せずに配向膜が形成できるため、プロセス上利点がある。
(a−1)ラビング用配向材料
ラビング用配向材料としては、例えば分子内にアミド結合を有するポリアミドやゼラチン類、分子内にイミド結合を有するポリイミド及びその加水分解物であるポリアミック酸、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸又はポリアクリル酸エステル類等のポリマーを挙げることができる。
ラビング用配向材料としては、重合性基、熱架橋性基、及び架橋基の少なくとも1つを有していても良い。重合性基、熱架橋性基、及び架橋基の少なくとも1つを有するラビング用配向材料としては、例えば、エチレン性不飽和二重結合基を導入したポリビニルアルコール、未変性のポリビニルアルコール、イソシアネート基を導入したポリビニルアルコール等が挙げられる。
本発明において利用される配向材料は、ポリビニルアルコール、ポリイミド、及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。特に、重合性基、熱架橋性基、及び架橋基の少なくとも1つを有するポリビニルアルコール、又は未変性のポリビニルアルコールが、光学特性が良好である点から好ましい。ポリビニルアルコールは、種々の鹸化度のものが存在するが、中でも耐久性、耐水性の点から鹸化度が85以上99以下であることが好ましい。
ラビング用配向材料のポリマーの数平均分子量は、特に限定されるものではないが、例えば3000以上500000以下程度とすることができ、好ましくは4000以上300000以下の範囲内である。数平均分子量が大きすぎると、溶剤に対する溶解性が低くなったり粘度が高くなったりして取り扱い性が低下し、均一な膜を形成しにくい場合がある。また、数平均分子量が小さすぎると、表面硬さが不十分になる恐れがある。
ラビング用配向材料としては、市販品を用いてもよい。例えば、ポリビニルアルコールとしては、「PVA103」、「PVA203」(クラレ社製)が挙げられる。
(a−2)架橋剤
架橋剤としては、前記光配向性を有する熱硬化性組成物で述べた架橋剤と同様であっても良い。例えば、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソキサゾールおよびジアルデヒド澱粉等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒドが好ましく、グルタルアルデヒドがより好ましい。
本発明のラビング用配向材料を含有する組成物における架橋剤の含有量は、上記ラビング用配向材料100質量部に対して0.01質量部以上50質量部以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上30質量部以下の範囲内である。含有量が少なすぎると硬化性化合物の効果を十分に得られない場合があり、含有量が多すぎると配向性の低下が生じる恐れがある。中でも、前記押し込み硬さを達成し易くなる点から架橋剤の含有量は、上記ラビング用配向材料100質量部に対して1質量部以上であることが好ましい。
(a−3)重合性化合物
重合性化合物としては、エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物が好適に用いられる。エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物は、反応性に優れ、透明性が高く、材料が豊富にあるため、必要な物性に調整しやすいためである。
架橋した架橋構造、すなわち三次元的な網目構造を有するようにするため、重合性化合物は1分子中に2つ以上のエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物であることが好ましく、更に重合性化合物は1分子中に3つ以上のエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物であることが好ましい。
具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのコハク酸変性物、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、(メタ)アクリレートとは、メタクリレートとアクリレートの各々を表す。
これらの重合性化合物は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のラビング用配向材料を含有する組成物における重合性化合物の含有量は、上記ラビング用配向材料100質量部に対して0.1質量部以上300質量部以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上250質量部以下の範囲内である。含有量が少なすぎると重合性化合物の効果を十分に得られない場合があり、含有量が多すぎると配向性の低下が生じる恐れがある。
(a−4)光開始剤
重合性化合物に組み合わせて用いられる光開始剤としては、光照射によりラジカル種を発生するラジカル系光重合開始剤が好適に用いられる。光開始剤としては、例えば、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、オキシムエステル系光開始剤、α−ヒドロキシアセトフェノン系光開始剤、及びベンジルケタール系光開始剤等が挙げられる。
また、本発明のラビング用配向材料を含有する組成物における光開始剤の含有量は、上記ラビング用配向材料100質量部に対して0.01質量部以上50質量部以下範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.05質量部以上30質量部以下範囲内である。含有量が少なすぎると重合性化合物の効果を十分に得られない場合があり、含有量が多すぎると配向性の低下が生じる恐れがある。
(a−4)その他の成分
本発明のラビング用配向材料を含有する組成物は、主として溶剤に溶解した溶液状態で用いられ、通常溶剤が含まれ、その他の成分が更に含まれていても良い。その他の成分としては、架橋剤を用いる場合には酸または酸発生剤を更に含有しても良く、また、増感剤、前述したような添加剤を更に含有していても良い。溶剤、及びその他の成分としては、前記光配向性を有する熱硬化性組成物と同様であって良い。
(b)配向層の形成方法
配向層の形成方法としては、上述したように、基材上にラビング用配向材料を含有する組成物を塗布して塗膜を形成し、当該塗膜表面をラビング処理する方法が用いられる。
ラビング用配向材料を含有する組成物の塗布方法、及び塗膜の乾燥方法としては、前記光配向性を有する熱硬化性組成物の場合と同様であって良い。
形成された塗膜の膜厚は、用途等に応じて適宜選択されるものであり、例えば0.05μm以上30μm以下程度とすることができる。なお、塗膜の膜厚が薄すぎると、十分な液晶配向能が得られない場合がある。
形成された塗膜を更に硬化させる場合の方法として、塗膜の加熱硬化方法としては、前記光配向性を有する熱硬化性組成物の場合と同様であって良い。
一方、塗膜の光硬化方法としては、紫外線照射が好適に用いられる。紫外線照射は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線を使用することができる。エネルギー線源の照射量は、前記押し込み硬さを達成できるように適宜選択されれば良く、紫外線波長365nmでの積算露光量として、例えば10mJ/cm以上10000mJ/cm以下の範囲内であることが好ましい。
得られた塗膜表面をラビング処理、すなわち、ラビング布で擦ることにより、配向規制力を発現させることができる。ラビング法により配向規制力を付与するには、例えばラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールを、ステージに載せられ、搬送されている乾燥後の配向性塗膜に接触させる。
ラビング処理の際は、例えば起毛パイルを有するラビング布が巻きつけられたラビングローラを一方向に回転させながら、得られた塗膜表面に押し付け、その状態で得られた塗膜を移動させる。ラビング布の材質には特に制限はなく、例えば、コットンやレーヨンを用いる。
ラビング処理の方法は、特に制限はなく、従来公知の方法を適宜選択して用いることができる。例えば「液晶便覧」(丸善株式会社、平成12年10月30日発行)226〜229ページ「配向方法−ラビング法」に記載の方法で行なうことができる。
(c)配向層
配向層が上述のラビング用配向材料を含有する組成物から形成されたものである場合、配向層は、ラビング用配向材料由来の配向規制力が付与された配向材と、必要に応じて用いられた重合性化合物や架橋剤由来の硬化物を含有する。例えば、エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物を含む組成物を用いた場合には、配向層は、エチレン性不飽和二重結合基が重合した構造を有する化合物を含有し、熱架橋性基と架橋剤を含有する組成物を用いた場合には、熱架橋性基の架橋構造を有する。
なお、配向層が上述のラビング用配向材料を含有する組成物から形成されたものであることは、配向層から材料を採取し分析することで確認することができる。分析方法としては、NMR、IR、GC−MS、XPS、TOF−SIMSおよびこれらの組み合わせた方法を適用することができる。
(1−3)配向層の表面硬度
本発明に用いられる転写用積層体においては、配向層の位相差層側表面のISO14577−1で規定される押し込み硬さが100N/mm以上であることを特徴とする。
配向層の位相差層側表面のISO14577−1で規定される押し込み硬さは、下記の式により定義される押し込み硬度(H)をいう。
押し込み硬度(H)=Fmax/Ap
ただし、Fmaxは最大負荷荷重(N)であり、Apは最大荷重において圧子と試験片が接している面積(mm)であり、押し込み硬度の単位はN/mmとなる。
配向層の位相差層側表面のISO14577−1で規定される押し込み硬さの測定は、ISO14577−1 2002−10−01 Part1に準拠して測定されるものであり、例えば、株式会社エリオニクス製 超微小押し込み硬さ試験機(ナノインデンテーションテスター) ENT1100aを用いて、押し込み荷重10mgf(250ステップ分割)、試験荷重保持時間1秒で測定することができる。
本発明に用いられる転写用積層体においては、配向層の位相差層側表面のISO14577−1で規定される押し込み硬さが100N/mm以上であることから、転写用積層体を被転写体に転写後、樹脂基材及び配向層を剥離する工程において、ジッピング等の不具合の発生が抑制され、転写された位相差層表面には傷等がなく平坦性が良好な位相差層を被転写体上に形成することができる。
配向層の位相差層側表面のISO14577−1で規定される押し込み硬さが100N/mm以上であればよいが、中でも150N/mm以上であることが、更に200N/mm以上であることが、ジッピング等の不具合の発生をより抑制し易い点から好ましい。
一方で、硬さが高すぎると転写用積層体を巻き取った場合に割れる恐れがあることから、前記押し込み硬さは、通常1000N/mm以下で設定されることが好ましい。
(2)位相差層
本発明における位相差層は、上記配向層上に形成されるものであり、通常、液晶組成物の硬化物を含有するものである。
位相差層は、配向層上に液晶組成物を塗布し、液晶組成物の相転移温度まで加熱して配向層によって液晶分子を配向させ、硬化することにより得ることができる。
液晶組成物は、少なくとも液晶化合物を含有するものであり、通常はさらに溶剤を含有する。液晶組成物は、液晶化合物の配向を阻害しない範囲で、さらに他の成分を含有してもよい。
液晶組成物としては、位相差層に一般的に用いられるものを使用することができる。液晶組成物には、例えば水平配向、コレステリック配向、垂直配向、ハイブリッド配向等の配向性を有するものがあり、配向層との組み合わせや所望の位相差等に応じて適宜選択される。
利用可能な液晶化合物の例には、棒状液晶化合物及びディスコティック液晶化合物が含まれる。棒状液晶化合物及びディスコティック液晶化合物は、高分子液晶でも低分子液晶でもよい。具体例としては、特開2012−042530号公報の段落0127〜0208に記載の化合物が挙げられる。
中でも、液晶化合物は、重合性基を有する重合性液晶化合物であることが好ましい。重合性液晶化合物同士を架橋することができ、位相差層の安定性が増すからである。
液晶組成物の塗布方法としては、配向層上に均一な膜を形成可能な方法であれば特に限定されるものではなく、上述の光配向性を有する熱硬化性組成物の塗布方法と同様とすることができる。
次いで、液晶組成物中の液晶化合物を上記配向層により配向させて、位相差層を形成する。配向方法としては、一般的な配向方法を適用することができ、例えば液晶組成物の相転移温度まで加温する方法が挙げられる。
重合性液晶化合物を用いる場合には、さらに紫外線を照射して硬化してもよい。
位相差層の膜厚は、所望の位相差を得ることができればよく、用途等に応じて適宜決定されるものであり、一般的な位相差層と同様とすることができる。
(3)樹脂基材
本発明に用いられる樹脂基材は、転写用積層体において配向層および位相差層を支持するものである。転写用積層体の支持基材として適用可能な樹脂基材から、配向層との組み合わせによって適宜選択して用いることができる。
樹脂基材としては、特に限定されるものではなく、一般的な樹脂基材を用いることができる。また、樹脂基材は表面処理が施されたものであってもよい。
樹脂基材の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリエステル、アクリル、脂肪族環状ポリオレフィン等の樹脂が挙げられる。
例えば、前記配向層に光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基の架橋構造を有する共重合体を含み、光配向性構成単位及び熱架橋性構成単位の少なくとも1つの単量体単位がスチレンの場合、より好ましくは、下記式(1)で表される光配向性構成単位を含む場合、樹脂基材は芳香族系樹脂を含有することが好ましい。前記配向層にスチレン骨格を有しており、π電子系を多く含んでいる場合に、樹脂基材が芳香族系樹脂を含有する場合には、同じくπ電子系を含む。そのため、π電子系の相互作用により、樹脂基材と配向層との密着性が高くなると考えられる。したがって、樹脂基材と配向層との剥離強度を配向層と位相差層との剥離強度よりも大きくすることが容易になる。
芳香族系樹脂としては、例えば芳香族系ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。中でも、芳香族系ポリエステルが好ましい。芳香族系ポリエステルは汎用性が高く、安価であり、剥離除去される樹脂基材としての使用に好適である。
芳香族系ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。特に、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。上述したように、ポリエチレンテレフタレートは汎用性が高く、安価であり、剥離除去される樹脂基材としての使用に好適である。
また、樹脂基材と配向層との剥離強度を配向層と位相差層との剥離強度よりも大きくするために、上述したように、樹脂基材は配向層形成用組成物に含有される溶剤に溶解可能なものであってもよい。溶剤に樹脂基材の一部が溶解することにより、樹脂基材および配向層の密着性を高めることができ、樹脂基材と配向層との剥離強度を配向層と位相差層との剥離強度よりも大きくすることができる。
このような樹脂基材の材料としては、溶剤の種類に応じて適宜選択される。例えば、溶剤がメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル等を含む場合、樹脂基材の材料としては、例えばアクリル樹脂、トリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、脂肪族環状ポリオレフィン等を用いることができる。
さらに、樹脂基材を溶剤に溶解可能なものとするために、上述したように、樹脂基材および溶剤のSP値の差の絶対値を所定の範囲としてもよい。樹脂基材および溶剤のSP値の差の絶対値が所定の範囲であることにより、樹脂基材および溶剤の親和性が良く、配向層および樹脂基材の密着性を高めることができるからである。
このような樹脂基材の材料としては、一般的な樹脂基材の中から適宜選択して用いることができる。中でも、アクリル樹脂、トリアセチルセルロースが好ましい。
また、樹脂基材と配向層との剥離強度を配向層と位相差層との剥離強度よりも大きくするために、樹脂基材の表面に易接着処理が施されていてもよく、あるいは易接着層が形成されていてもよい。これにより、樹脂基材および配向層の密着性を高めることができ、樹脂基材と配向層との剥離強度を配向層と位相差層との剥離強度よりも大きくすることができる。
易接着処理としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理等が挙げられる。
易接着層の材料としては、樹脂基材および配向層の両方に密着性を有する樹脂を用いることができ、例えばウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩素化ポリプロピレン等が挙げられる。
この場合には、樹脂基材の材料として、芳香族系樹脂の他に、トリアセチルセルロース、脂肪族環状ポリオレフィン、アクリル樹脂、脂肪族ポリエステル等も用いることができる。
樹脂基材は、可撓性を有していてもよく有さなくてもよいが、樹脂基材を剥離しやすいことから、可撓性を有することが好ましい。
(4)剥離強度
本発明においては、樹脂基材と配向層との剥離強度が、配向層と位相差層との剥離強度よりも大きい。
樹脂基材と配向層との剥離強度を配向層と位相差層との剥離強度よりも大きくするためには、上述したように、配向層形成用組成物に含まれる溶剤を樹脂基材を溶解可能なものとすることが好ましい。また、樹脂基材表面に接着性が向上するための表面処理を行うことが好ましい。このような場合、樹脂基材および配向層の密着性を向上させることができる。
また、樹脂基材と配向層との剥離強度が配向層と位相差層との剥離強度よりも大きくなるよう、配向層と位相差層との剥離強度を小さくするために、配向層の耐溶剤性を比較的高くすることも好ましい。配向層の耐溶剤性が比較的高い場合には、配向層上に液晶組成物を塗布して位相差層を形成する際に、液晶組成物中の溶剤に配向層が溶解しにくくなるため、配向層および位相差層の密着性を低くすることができる。また、前述のように、配向層の位相差層側表面のISO14577−1で規定される押し込み硬さが100N/mm以上であることから、配向層と位相差層との剥離強度が小さくなりやすい。
配向層の前記押し込み硬さが所定量以上となるようにするため、及び配向層の耐溶剤性を比較的高くするため、具体的には、配向性材料や含まれる成分の分子量を上げる等の方法を挙げることができる。また、配向性材料を含有する硬化性組成物を用いる場合には、更に、配向性材料自体が有する重合性基や熱架橋性基の割合を増やす、重合性化合物や架橋剤の含有量を増やす、光開始剤や酸触媒等、開始剤の含有量を増やす、光照射量を多くする、硬化温度を上げる、硬化時間を長くする等、組成や硬化条件を適宜調整することにより硬化性組成物の硬化反応を促進することが好ましい。
位相差層と配向層との剥離強度は、ジッピング等の不具合の発生を有効に回避して効率良く光学素子を生産する点から、10000mm/分の剥離速度において0.10N以上1.00N以下に設定されることが好ましく、更に、0.15N以上0.50N以下に設定されることが好ましく、より更に0.15N以上0.40N以下に設定されることが好ましい。この剥離強度は、前述の樹脂基材と配向層との剥離強度を比較的大きくする方法、並びに配向層と位相差層の剥離強度を比較的小さくする方法を適宜選択して組み合わせることにより、調整することができる。
ここでこの剥離強度は、JISZ0237:2009に準拠した計測方法による計測値である。
例えば、厚み60μm、幅60mm、長さ60cmのTACフィルムを被着材に設定し、幅50mm、長さ60cmの転写用積層体を用意し、この転写用積層体の位相差層面を粘着剤(例えば、綜研化学製 SKダイン)を使用して十分な密着力により被着材に貼り付けた後、10000mm/分の剥離速度により180度剥離の条件で基材を配向層と一体に位相差層から剥離して、剥離に要する力を計測することができる。
(5)その他の構成
本発明においては、後述するように、被転写体上に粘着層または接着層を介して転写用積層体を転写することができる。そのため、転写用積層体においては、位相差層上に粘着層または接着層が形成されていてもよい。
粘着層および接着層の材料としては、位相差層および被転写体の両方に密着性を有する粘着剤や接着剤を用いることができる。粘着剤および接着剤としては、転写法による位相差板の製造方法に使用される一般的なものを適用することができる。
粘着層および接着層の厚みは、例えば1μm以上30μm以下程度で設定される。
また、粘着層または接着層上には離型層が配置されていてもよい。離型層は、被転写体上に転写用積層体を転写する際に剥離されるものである。
離型層としては、一般的なものを使用することができる。
2.転写工程
本発明における転写工程は、被転写体と上記転写用積層体の上記位相差層とを対向させ、上記被転写体上に上記転写用積層体を転写する工程である。
被転写体としては、例えば偏光板、位相差板等の光学部材や、被転写基材を用いることができる。位相差板としては、例えば液晶層である位相差層を有するものや、延伸フィルムを用いることができる。
被転写体上に転写用積層体を転写する方法としては、例えば被転写体上に粘着層または接着層を介して転写用積層体を転写する方法が挙げられる。
粘着層および接着層は、転写用積層体に形成されていてもよく、被転写体に形成されていてもよい。
なお、粘着層および接着層については、上述したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
3.剥離工程
本発明における剥離工程は、上記被転写体上に転写された上記転写用積層体から上記樹脂基材および上記配向層を剥離する工程である。
樹脂基材および配向層の剥離方法としては、例えば物理的に引き離す方法等、一般的な方法が適用される。
4.その他
本発明においては、上記の転写工程および剥離工程を繰り返し行ってもよい。これより、被転写体上に位相差層を複数積層することができる。この場合、各位相差層の位相差は同じであってもよく異なっていてもよいが、中でも各位相差層は互いに位相差が異なることが好ましい。光学特性に優れる光学素子を得ることができるからである。位相差層の積層数は、特に限定されないが、2または3であることが好ましい。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
[合成例1]光配向性モノマー1の合成
特許第5668881号の合成例1と同様にして、下記スキームに示すように光配向性モノマー1を合成した。
[合成例2]光配向性モノマー2の合成
特許第5626492号の合成例3と同様にして、下記スキームに示すように光配向性モノマー2を合成した。
[合成例3]熱架橋性モノマー2の合成
特許第5668881号の合成例5と同様にして、下記スキームに示すように熱架橋性モノマー2を合成した。
以下の共重合体の合成に用いた各モノマーの構造を下記表1に示す。
合成した各モノマーは、日本電子(株)製JEOL JNM−LA400WBを用いて、H NMR測定により、化学構造を確認した。
[製造例1]共重合体1の合成
光配向性モノマー1 4.2g、熱架橋性モノマー1(ヒドロキシブチルアクリレート) 1.4g、重合触媒としてα,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)50mgをジオキサン25mlに溶解し、90℃にて6時間反応させた。反応終了後、再沈殿法により精製することで、共重合体1を得た。得られた共重合体1の数平均分子量は21300であった。
なお、合成した各共重合体の数平均分子量(以下、Mnと称す)は、東ソー(株)製HLC−8220 GPCを用いて、ポリスチレンを標準物質とし、NMPを溶離液としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)にて算出した。
[製造例2]共重合体2の合成
光配向性モノマー2 3.1g、熱架橋性モノマー2 1.9gを用いた以外は製造例1と同様にして、共重合体2を合成した。得られた共重合体2の数平均分子量は19400であった。
[実施例1]
(熱硬化性組成物1の調製)
下記に示す組成の光配向性を有する熱硬化性組成物1を調製した。
・共重合体1(A−1):0.1g
・ヘキサメトキシメチルメラミン(B−1):0.01g
・p−トルエンスルホン酸1水和物(C−1):0.00075g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME):2g
(配向層の形成)
易接着ポリエチレンテレフタレート(PET)基材の易接着面に、実施例1で調製した熱硬化性組成物をバーコートにより塗布し、80℃のオーブンで2分間加熱乾燥させ、硬化膜を形成した。この硬化膜表面にHg−Xeランプおよびグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線を基板法線から垂直方向に10mJ/cm照射することで、配向層を形成した。
(位相差層の形成)
下記式で表される棒状液晶性モノマーをシクロヘキサノンに固形分15質量%となるように溶解した溶液に、BASF株式会社製の光重合開始剤イルガキュア184を5質量%添加し、重合性液晶組成物を調製した。
ポリエチレンテレフタレート基材の配向層が形成された面に、上記重合性液晶組成物をスピンコートにより塗布し、70℃のオーブンで1分間加熱し塗膜を形成した。この基板に窒素雰囲気化でHg−Xeランプを用いて365nmの輝線を含む非偏光の紫外線300mJ/cmを重合性液晶組成物の塗布面に照射して、位相差層を形成した。これにより、転写用積層体を得た。
(転写)
被転写体として、粘着剤を塗布したガラス基材を用意した。転写用積層体を位相差層の面がガラス基材の粘着剤と接するように貼り付けた。その後、ポリエチレンテレフタレート基材側を剥離した。
[実施例2〜14および比較例1〜4]
下記表2に示す熱硬化性組成物の組成、樹脂基材、配向層の形成条件、及び液晶種類にて、実施例1と同様に、実施例2〜14および比較例1〜4の熱硬化性組成物を調製して配向層を形成し、位相差層を形成して転写用積層体を作製し、転写を行った。
参考例15]
(ラビング用組成物1の調製)
下記に示す組成のラビング用配向材料を含む光硬化性組成物を調製した。
・ポリメチルメタクリレート(シグマ−アルドリッチ(株)製、Mn=15000)(A−3):0.3g
・トリメチロールプロパントリアクリレート(B−2):0.6g
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート(B−3):0.1g
・2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン(C−2):0.05g
・トルエン:0.4g
(配向層の形成)
表面にコロナ処理を施したトリアセチルセルロース(TAC)基材のコロナ処理面に、上記で調製したラビング用組成物1をバーコートにより塗布し、100℃のオーブンで1分間加熱乾燥し、塗膜を形成した。その後、当該基板に窒素雰囲気下でHg−Xeランプを用いて365nmの輝線を含む非偏光の紫外線300mJ/cmをラビング用組成物の塗膜表面に照射し、硬化塗膜を形成した。その後、硬化塗膜表面をラビング布で擦ることでラビング処理し、配向層を形成した。
(転写用積層体、転写)
配向層形成後は、実施例1と同様にして、位相差層を形成して転写用積層体を作製し、転写を行った。
参考例16]
(ラビング用組成物2の調製)
下記に示す組成のラビング用配向材料を含む熱硬化性組成物を調製した。
・PVA103(ポリビニルアルコール、鹸化度98、クラレ製)(A−4):0.1g
・グルタルアルデヒド(B−4):0.01g
・水:1.3g
・メタノール:1.3g
(配向層の形成)
表面にコロナ処理を施したトリアセチルセルロース(TAC)基材のコロナ処理面に、上記で調製したラビング用組成物2をバーコートにより塗布し、120℃のオーブンで2分間加熱して乾燥及び熱硬化を行い、硬化塗膜を形成した。その後、塗膜表面をラビング布で擦ることでラビング処理し、配向層を形成した。
(転写用積層体、転写)
配向層形成後は、実施例1と同様にして、位相差層を形成して転写用積層体を作製し、転写を行った。
参考例17]
液晶種類を表2に記載したように変更した以外は、参考例16と同様にして、参考例17の転写用積層体を作製し、転写を行った。
[比較例5]
下記に示す組成のラビング用組成物3を調製した。参考例15においてラビング用組成物1を用いる代わりに、下記ラビング用組成物3を用いた以外は参考例15と同様にして、転写用積層体を作製し、転写を行った。
(ラビング用組成物3の調製)
・ポリメチルメタクリレート(シグマ−アルドリッチ(株)製、Mn=15000)(A−3):0.3g
・トルエン:0.4g
[比較例6]
参考例16において、硬化条件を80℃で2分間加熱に変更した以外は、参考例16と同様にして、転写用積層体を作製し、転写を行った。
参考例17において、グルタルアルデヒド(B−4)を0.01gから0.005gに変更した以外は、参考例17と同様にして、転写用積層体を作製し、転写を行った。
[評価]
(配向層の位相差層側表面の押し込み硬さ)
配向層の前記位相差層側表面のISO14577−1で規定される押し込み硬さ測定は、ISO14577−1 2002−10−01 Part1に準拠して、株式会社エリオニクス製 超微小押し込み硬さ試験機(ナノインデンテーションテスター) ENT1100aを用いて、押し込み荷重10mgf(250ステップ分割)、試験荷重保持時間1秒で測定した。
(液晶配向性)
2枚の直線偏光板をクロスニコル状態にして、その間に位相差板を挟み、目視で観察した。基板を回転させた際に、面内に観察される明暗模様が明確なものを「A」、面内に観察される明暗模様が明確であるが、配向性が弱いものを「B」、配向欠陥がみられるものを「C」として評価した。ここで、配向性が弱いとは、一部灰色である場合や、均一でない場合をいう。
(高速剥離強度)
剥離強度は、JISZ0237:2009に準拠した計測方法により計測した。
厚み60μm、幅60mm、長さ60cmのTACフィルムを被着材に設定し、幅50mm、長さ60cmの転写用積層体を用意し、この転写用積層体の位相差層面を粘着剤(綜研化学製 SKダイン)を使用して十分な密着力により被着材に貼り付けた後、10000mm/分の剥離速度により180度剥離の条件で基材を配向層と一体に位相差層から剥離して剥離に要する力を計測した。
剥離強度は、剥離開始端、剥離終了端における15cm分を除いた残り30cmの部分で得られる剥離強度の計測結果を平均値化して求めた。なお試験装置は、エーアンドデイ製テンシロンRTG−1310を使用した。
(ジッピング、傷)
ジッピングの評価は、転写用積層体の基材及び配向層を剥離した後の位相差層表面を目視で観察した。位相差層表面が平坦であり、ジッピング及び傷が発生していないものを「A」、実用上問題とならない程度の傷が発生しているものを「B」、実用上問題とならない程度のジッピングおよび傷が発生しているものを「C」、実用上問題となる程度のジッピングおよび傷が発生しているものを「D」として評価した。
(剥離界面の確認)
転写用積層体を被転写体に転写し、転写用積層体の基材を剥離した後の、被転写体側および基材側のそれぞれについて赤外吸収スペクトルを測定した。なお、比較例1、2、5及び7では転写用積層体の基材を剥離できなかったため、剥離界面の確認を行わなかった。
位相差層転写後に転写用積層体から剥離した基材の位相差層が形成されていた面に対して赤外吸収スペクトルを測定したところ、実施例1〜14および比較例3〜4のすべてで、基材由来のピーク以外に、1504cm−1および1603cm−1に共重合体の光配向性構成単位に含まれる芳香族由来の伸縮振動による吸収、および1550cm−1に架橋剤に含まれるトリアジン環由来の吸収を確認した。また参考例15で、基材由来のピーク以外に、1450cm−1に配向層由来のメチレン基の変角振動による吸収を確認した。また参考例16及び17で、基材由来のピーク以外に、1450cm−1に、配向層由来のメチレン基の変角振動による吸収を確認した。
また、被転写体に転写された位相差層の面に対して赤外吸収スペクトルを測定したところ、実施例1〜14では、1550cm−1に架橋剤に含まれるトリアジン環由来の吸収は確認できなかった。一方、比較例3〜4では、1504cm−1および1603cm−1に共重合体の光配向性構成単位に含まれる芳香族由来の伸縮振動による吸収、および1550cm−1に架橋剤に含まれるトリアジン環由来の吸収が確認された。また、参考例15では、1450cm−1に配向層由来のメチレン基の変角振動による吸収は確認できず、参考例16及び17でも1450cm−1に配向層由来のメチレン基の変角振動による吸収は確認できなかった。一方、比較例6では、1450cm−1に配向層由来のメチレン基の変角振動による吸収が確認された。
これらのことより、実施例1〜14、参考例15〜17では、位相差層および配向層の界面で剥離していると考えられる。これに対し、比較例1〜7では、位相差層と配向層との密着性が強く、転写面が部分的に変化してしまい、安定的に位相差層および配向層の界面で剥離できないことが明らかとなった。
なお、表2における略号は以下のとおりである。
A−2:共重合体2
COP:表面にコロナ処理を施したシクロオレフィンポリマー基材
円盤状:下記式で表される円盤状液晶性モノマー
1 … 転写用積層体
2 … 樹脂基材
3 … 配向層
4 … 位相差層
10 … 光学素子
11 … 被転写体
12 … 粘着層

Claims (2)

  1. 樹脂基材と、
    前記樹脂基材上に配置され、配向材を含有する配向層と、
    前記配向層上に配置された位相差層と
    を有し、前記配向層の前記位相差層側表面のISO14577−1で規定される押し込み硬さが100N/mm以上であり、
    前記配向層が含有する前記配向材が、光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基の架橋構造を有する共重合体であり、
    前記配向層と前記位相差層との剥離強度は、JISZ0237:2009に準拠した計測方法による10000mm/分の剥離速度において0.10N以上1.00N以下であり、
    前記樹脂基材と前記配向層との剥離強度が前記配向層と前記位相差層との剥離強度よりも大きく、前記配向層および前記位相差層の間で剥離して位相差層を転写可能なことを特徴とする転写用積層体。
  2. 樹脂基材上に、配向材を含有する配向層を形成する工程と、前記配向層上に位相差層を形成する工程とを有し、前記配向層の前記位相差層側表面のISO14577−1で規定される押し込み硬さが100N/mm以上であり、前記配向層が含有する前記配向材が、光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基の架橋構造を有する共重合体であり、前記配向層と前記位相差層との剥離強度は、JISZ0237:2009に準拠した計測方法による10000mm/分の剥離速度において0.10N以上1.00N以下であり、前記樹脂基材と前記配向層との剥離強度が前記配向層と前記位相差層との剥離強度よりも大きく、前記配向層および前記位相差層の間で剥離して位相差層を転写可能な転写用積層体を準備する転写用積層体準備工程と、
    被転写体および前記転写用積層体の前記位相差層を対向させ、前記被転写体上に前記転写用積層体を転写する転写工程と、
    前記被転写体上に転写された前記転写用積層体から前記樹脂基材および前記配向層を剥離する剥離工程と
    を有することを特徴とする光学素子の製造方法。
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