JP6648462B2 - 光配向性を有する熱硬化性組成物、配向層、配向層付基板及びその製造方法、並びに、位相差板及びその製造方法 - Google Patents

光配向性を有する熱硬化性組成物、配向層、配向層付基板及びその製造方法、並びに、位相差板及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、配向層に用いられる光配向性を有する熱硬化性組成物、配向層、配向層付基板及びその製造方法、並びに、位相差板及びその製造方法に関するものである。
液晶はその配向性と屈折率、誘電率、磁化率等の物理的性質の異方性とを利用して、液晶表示素子以外に、位相差板、偏光板等の各種光学素子等、様々な応用が検討されている。
液晶を配向させるためには配向層が用いられる。配向層の形成方法としては、例えばラビング法や光配向法が知られており、光配向法はラビング法の問題点である静電気や塵の発生がなく、定量的な配向処理の制御ができる点で有用である(例えば特許文献1参照)。
配向層には、液晶配向能の他、耐熱性、耐溶剤性等が要求される。例えば、配向層が、各種デバイスの製造過程にて熱や溶剤にさらされたり、各種デバイスの使用時に高温にさらされたりする場合がある。配向層が高温にさらされると、液晶配向能が著しく低下するおそれがある。
そこで、例えば特許文献2には、安定した液晶配向能を得るために、光により架橋反応の可能な構造と熱によって架橋する構造とを有する重合体成分を含有する液晶配向剤、および、光により架橋反応の可能な構造を有する重合体成分と熱によって架橋する構造を有する化合物とを含有する液晶配向剤が提案されている。
また、特許文献3には、優れた液晶配向能、十分な耐熱性、高い耐溶剤性および高い透明性を得るために、(A)光二量化部位および熱架橋部位を有するアクリル共重合体と、(B)架橋剤とを含有する、光配向性を有する熱硬化膜形成組成物が提案されている。(B)架橋剤は(A)アクリル共重合体の熱架橋部位と結合するものであり、光配向性を有する熱硬化膜形成組成物を加熱により硬化させて硬化膜を形成し、硬化膜に偏光紫外線を照射して配向層を形成することができる。
特許文献4には、優れた液晶配向能、十分な耐熱性、高い耐溶剤性および高い透明性を得るために、(A)光二量化部位および熱架橋部位を有するアクリル共重合体と、(B)所定のアルキルエステル基およびヒドロキシアルキルエステル基の少なくとも一方と、カルボキシル基およびフェノール性ヒドロキシ基の少なくともいずれか一方とを有するアクリル重合体と、(C)架橋剤とを含有する、光配向性を有する熱硬化膜形成組成物が提案されている。(C)架橋剤は(A)アクリル共重合体の熱架橋部位ならびに(B)アクリル重合体のカルボキシル基およびフェノール性ヒドロキシ基と結合するものであり、光配向性を有する熱硬化膜形成組成物を加熱により硬化させて硬化膜を形成し、硬化膜に偏光紫外線を照射して配向層を形成することができる。
特許文献5には、優れた液晶配向能、十分な耐熱性、高い耐溶剤性および高い透明性を得るために、(A)光配向性基およびヒドロキシ基を有する化合物と、(B)ヒドロキシ基およびカルボキシル基の少なくとも一方を有するポリマーと、(C)架橋剤とを含有する、光配向性を有する熱硬化膜形成組成物が提案されている。(C)架橋剤は(A)化合物のヒドロキシ基ならびに(B)ポリマーのヒドロキシ基およびカルボキシル基と結合するものであり、光配向性を有する熱硬化膜形成組成物を加熱により硬化させて硬化膜を形成し、硬化膜に偏光紫外線を照射して配向層を形成することができる。
しかしながら、熱硬化を行う場合には、配向層の硬度が高くなるため、この配向層上に形成される液晶層との密着性が低下する場合があるという問題がある。特に、特許文献3、4のように、光配向部位および熱架橋部位を有するアクリル共重合体を用い、架橋剤による熱硬化を行うと、膜の内部に網目構造が形成されるため、高硬度になり、配向層とその上に形成される液晶層との密着性が低下する。
本発明者らは、上記問題に鑑み、液晶配向能および液晶層との密着性に優れる配向層を形成可能な、光配向性を有する熱硬化性組成物として、スチレン骨格を含む光配向性構成単位およびスチレン骨格を含む熱架橋性構成単位を有する共重合体を含有する熱硬化性組成物を開示している(特許文献6)。
一方、特許文献7には、アクリルフィルム基材を用いながら基材との密着性に優れた配向材として使用できる硬化膜として、(A)光配向性基を有する化合物及び光配向性基を有するポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種、(B)アクリル酸エステル単位構造を有するポリマーを含有する硬化膜形成組成物により形成されている硬化膜が提案されている。特許文献7には、密着性向上成分としてヒドロキシ基及び(メタ)アクリル基を有する化合物が記載されている。しかしながら、特許文献7において当該密着性向上成分が使用されている実施例6〜10の密着性評価は、密着性向上成分が使用されていない他の実施例と同様の評価結果であったことが示されている。
特許第4094764号公報 特許第4207430号公報 国際公開第2010/150748号 国際公開第2011/010635号 国際公開第2011/126022号 特許第5626492号公報 国際公開第2014/073658号
近年、位相差板、偏光板等の各種光学素子に対してより耐久性が求められており、これらに用いられる配向層と液晶層との密着性もより耐久性が求められ、より向上した密着性が望まれている。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、光配向部位および熱架橋部位の両方を有する共重合体を含有する熱硬化性組成物において、良好な液晶配向能を有し、液晶層との密着性に優れる配向層を形成可能な、光配向性を有する熱硬化性組成物ならびにそれを用いた配向層、配向層付基板および位相差板を提供することを主目的とする。
本発明者らは、光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体と、前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する架橋剤とに加えて、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つ、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物を含有させると、液晶配向能が阻害されることなく良好な液晶配向能を有し、液晶層との密着性がより優れる配向層が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は、光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体と、
前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する架橋剤と、
ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つ、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物と、
を含有することを特徴とする光配向性を有する熱硬化性組成物を提供する。
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、光開始剤を更に含有することが、液晶層との密着性がより優れる配向層を得ることができる点から、好ましい。
また本発明においては、前記光配向性構成単位が、下記式(1)で表される光配向性構成単位を含むことが、より優れた液晶配向能とより優れた密着性の点から好ましい。
(ここで、式(1)中、Xは光配向性基、Lは2価の連結基または単結合、Rは水素原子、メチル基、塩素原子又はフェニル基、kは1〜5を表す。)
また本発明は、光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と架橋剤とが結合してなる架橋構造を有する共重合体と、
ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つと架橋剤とが結合してなる架橋構造、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物と、
を含有することを特徴とする配向層を提供する。
さらに本発明は、基板と、上記基板上に形成され、上述の配向層とを有することを特徴とする配向層付基板を提供する。
また本発明は、基板上に、前記本発明に係る光配向性を有する熱硬化性組成物を塗布して前記光配向性を有する熱硬化性組成物の塗膜を形成し、当該塗膜を加熱することにより硬化膜を形成する工程と、
前記硬化膜に偏光紫外線を照射することにより配向層を形成する工程とを有する、配向層付基板の製造方法を提供する。
また本発明は、基板と、
前記基板上に配置された、光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と架橋剤とが結合してなる架橋構造を有する共重合体と、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つと架橋剤とが結合してなる架橋構造、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基が重合した構造を有する化合物とを含有する配向層と、
前記配向層上に配置された、エチレン性不飽和二重結合基を有する重合性液晶組成物のエチレン性不飽和二重結合基が重合した構造を有する位相差層と
を有することを特徴とする位相差板を提供する。
また本発明は、基板上に、前記本発明に係る光配向性を有する熱硬化性組成物を塗布して前記光配向性を有する熱硬化性組成物の塗膜を形成し、当該塗膜を加熱することにより硬化膜を形成する工程と、
前記硬化膜に偏光紫外線を照射することにより配向層を形成する工程と、
前記配向層上に、エチレン性不飽和二重結合基を有する重合性液晶組成物を塗布して前記重合性液晶組成物の塗膜を形成し、当該塗膜を前記重合性液晶組成物の相転移温度まで加熱することにより前記配向層によって液晶分子を配向させる工程と、
前記液晶分子が配向した重合性液晶組成物の塗膜に光照射することにより位相差層を形成する工程と
を有する、位相差板の製造方法を提供する。
本発明においては、液晶配向能、液晶層との密着性に優れる配向層を形成可能な、光配向性を有する熱硬化性組成物、当該光配向性を有する熱硬化性組成物を用いた配向層、配向層付基板及びその製造方法、並びに、位相差板及びその製造方法を提供することができるという効果を奏する。
本発明の配向層付基板の一例を示す概略断面図である。 本発明の位相差板の一例を示す概略断面図である。
以下、本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物ならびにそれを用いた配向層、配向層付基板及びその製造方法、並びに、位相差板及びその製造方法について詳細に説明する。
A.光配向性を有する熱硬化性組成物
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体と、
前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する架橋剤と、
ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つ、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物と、
を含有することを特徴とするものである。
本発明においては、光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体と、前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する架橋剤とに加えて、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つ、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基を有する熱架橋性重合性化合物(以下、単に「芳香族炭化水素基を含む熱架橋性重合性化合物」、「前記熱架橋性重合性化合物」と称する場合がある)が含有されている。当該芳香族炭化水素基を含む熱架橋性重合性化合物は重合体に比べて低分子成分であることから、本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物を用いて配向層を形成した場合には、当該熱架橋性重合性化合物が配向層の表面に浮き出てきやすい。そのため、前記芳香族炭化水素基を含む熱架橋性重合性化合物を配向層の表面近傍に局在化させることができる。この状態で熱硬化を行うと、前記熱架橋性重合性化合物のヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つが前記架橋剤と反応することにより、芳香族炭化水素基とエチレン性不飽和二重結合基とを含む重合性化合物を配向層の表面近傍に固定化することができる。更に、配向層上に重合性液晶組成物の硬化物を含有する位相差層等の液晶層を形成する場合、配向層の表面近傍に固定化された前記重合性化合物のエチレン性不飽和二重結合基は、重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物が有するエチレン性不飽和二重結合基と反応し得るものである。したがって、配向層と液晶層との界面で、配向層の表面近傍に固定化された重合性化合物のエチレン性不飽和二重結合基と液晶層に用いられる重合性液晶化合物のエチレン性不飽和二重結合基とを反応させることができ、配向層および液晶層の密着性を向上させることができる。
後述の比較例に示したように、炭化水素基として芳香族炭化水素基を含まず、脂肪族炭化水素基のみを含む熱架橋性重合性化合物を用いた場合には、密着性が向上せず、液晶配向能が阻害されやすい傾向がみられた。これに対して本発明では、芳香族炭化水素基を含む熱架橋性重合性化合物を用いることから、液晶配向能が阻害されることなく良好な液晶配向能を有し、液晶層との密着性がより優れる配向層が得られる。芳香族炭化水素基を含む熱架橋性重合性化合物は、液晶層との界面で存在しても脂肪族炭化水素基のみを含む場合に比べて液晶配向能を阻害し難く、且つ、液晶層との界面で存在すると液晶分子とπ電子系の相互作用が強くなって、重合性液晶化合物のエチレン性不飽和二重結合基との反応がより進行し易くなり、液晶層との密着性がより優れるようになると推定される。
また、本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物によれば、光配向部位および熱架橋部位の両方を有する共重合体、及び架橋剤を含むことから、熱硬化を行うと、その架橋構造によって配向層の耐熱性、耐溶剤性が良好となり、耐久性が高い配向層が得られる。このような光配向部位および熱架橋部位の両方を有する共重合体及び架橋剤を含む配向層は、高硬度になることから、その上に形成される液晶層との密着性は低下し易い傾向がある。それに対して、本発明においては、更に前記芳香族炭化水素基を含む熱架橋性重合性化合物を組み合わせて用いたことから、耐久性の高い密着性をも得ることができる。
以下、本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物における各成分について説明する。
1.共重合体
本発明に用いられる共重合体は、光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有するものである。
以下、共重合体における各構成単位について説明する。
(1)光配向性構成単位
本発明における光配向性構成単位は、光照射により光反応を生じることで異方性を発現する部位である。光反応としては、光二量化反応または光異性化反応であることが好ましい。すなわち、光配向性構成単位は、光照射により光二量化反応を生じることで異方性を発現する光二量化構成単位、または、光照射により光異性化反応を生じることで異方性を発現する光異性化構成単位であることが好ましい。
光配向性構成単位は、光配向性基を有するものである。光配向性基は、上述のように、光照射により光反応を生じることで異方性を発現する官能基であり、光二量化反応または光異性化反応を生じる官能基であることが好ましい。
光二量化反応を生じる光配向性基としては、例えばシンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基、キノリン基、アゾベンゼン基、スチルベン基等が挙げられる。これらの官能基におけるベンゼン環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、光二量化反応を妨げないものであればよく、例えばアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基等が挙げられる。
光異性化反応を生じる光配向性基としては、シストランス異性化反応を生じるものであることが好ましく、例えばシンナモイル基、カルコン基、アゾベンゼン基、スチルベン基等が挙げられる。これらの官能基におけるベンゼン環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、光異性化反応を妨げないものであればよく、例えばアルコキシ基、アルキル基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基等が挙げられる。
中でも、光配向性基は、シンナモイル基であることが好ましい。具体的に、シンナモイル基としては、下記式(2−1)及び(2−2)で表される基からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
上記式(2−1)中、R11は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアリール基または炭素数1〜18のシクロアルキル基を表す。ただし、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよく、置換基を有してもよい。R12〜R15はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアリール基または炭素数1〜18のシクロアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基またはシアノ基を表す。ただし、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよく、置換基を有してもよい。R16およびR17はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアリール基または炭素数1〜18のアルコキシ基を表す。
また、上記式(2−2)中、R21〜R25はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアリール基または炭素数1〜18のシクロアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基またはシアノ基を表す。ただし、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよく、置換基を有してもよい。R26およびR27はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアリール基または炭素数1〜18のアルコキシ基を表す。
なお、光配向性基がシンナモイル基の場合であって、上記式(2−1)で表される基の場合、後述する単量体単位に含まれるスチレン骨格のベンゼン環がシンナモイル基のベンゼン環となっていてもよい。
また、上記式(2−1)で表されるシンナモイル基は、下記式(2−3)で表される基であることがより好ましい。
上記式(2−3)中、R12〜R17は上記式(2−1)と同様である。R18は水素原子、炭素数1〜18のアルコキシ基、シアノ基、炭素数1〜18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基またはシクロヘキシル基を表す。ただし、アルキル基、フェニル基、ビフェニル基およびシクロヘキシル基はエーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合していてもよい。nは1〜5を表し、R18はオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよい。nが2〜5の場合、R18は互いに同一でもよく異なってもよい。中でも、nが1であり、R18がパラ位に結合していることが好ましい。
光配向性基が上記式(2−3)及び(2−2)で表される基からなる群から選択される少なくとも1種の基である場合、光配向性構成単位の末端付近に芳香環が配置されるようになり、π電子を多く含むようになる。そのため、配向層上に形成される液晶層と親和性が高くなり、液晶配向能が向上し、液晶層との密着性が高くなると考えられる。
光配向性構成単位を構成する単量体単位としては、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、ビニルエステル等が挙げられる。中でも、上記熱架橋性構成単位と同様に、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンが好ましい。
光配向性構成単位としては、下記式(3)で表される構成単位を例示することができる。
(上記式(3)中、Zは単量体単位を表し、Xは光配向性基を表し、Lは2価の連結基または単結合を表す。)
上記式(3)中、Zは単量体単位を表し、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、ビニルエステル等が挙げられる。中でも、上述のように、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンが好ましい。具体的には、下記式(4−1)〜(4−6)で表される単量体単位を挙げることができる。
(上記式(4−1)〜(4−6)中、R31は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基を表し、R32は水素原子またはメチル基を表し、R33は水素原子、メチル基、塩素原子またはフェニル基、R34は水素原子または低級アルキル基を表す。)
単量体単位がスチレンの場合、−L−Xはオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよく、また複数結合していてもよい。すなわち、下記式(1)で表される光配向性構成単位を含むことが、より優れた液晶配向能とより優れた密着性の点から好ましい。一般に液晶分子にはベンゼン環等の芳香環を有するものが多く、同じくπ電子系を含む。そのため、共重合体中にスチレン骨格を有し、π電子系を多く含むと、本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物から形成された配向層は、液晶分子との相互作用が強くなる。これにより、液晶分子を配向制御しやすくなり、優れた液晶配向能が得られると考えられる。また、π電子系の相互作用により、本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物から形成された配向層は、この配向層上に形成される液晶層との密着性も高くなると考えられる。
(ここで、式(1)中、Xは光配向性基、Lは2価の連結基または単結合、Rは水素原子、メチル基、塩素原子又はフェニル基、kは1〜5を表す。)
kは1〜5であり、−L−Xはオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよい。kが2〜5の場合、LおよびXは互いに同一でもよく異なってもよい。中でも、kが1であり、−L−Xがパラ位に結合していることが好ましい。
上記式(3)中、Xは光配向性基を表し、例えばシンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基、キノリン基、アゾベンゼン基、スチルベン基等が挙げられる。これらの官能基におけるベンゼン環は、置換基を有していてもよい。置換基としては、光二量化反応や光異性化反応を妨げないものであればよく、例えばアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、シアノ基等が挙げられる。
中でも、光配向性基はシンナモイル基であることが好ましい。具体的には、上記式(2−1)、(2−2)で表される基であることが好ましい。
上記式(3)におけるLは2価の連結基または単結合である。なお、Lが単結合の場合、光配向性基Xは単量体単位Zに直接結合される。2価の連結基としては、例えばエーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、アルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基、およびこれらの組み合わせ等が挙げられる。具体的には、−O−、−S−、−COO−、−COS−、−CO−、−OCO−、−OCO(CHCOO−、−OCO(CHCHO)COO−、−OCOCO−、−OCOC10O−、−COO(CHO−、−COO(CHCHO)−、−COOCO−、−COOC10O−、−O(CHO−、−O(CHCHO)−、−OCO−、−OC10O−、−(CHO−等が挙げられる。nは1〜20、mは1〜10である。
共重合体が有する光配向性構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
共重合体の合成には、上記光配向性構成単位を形成する光配向性基を有するモノマーを用いることができる。光配向性基を有するモノマーは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
共重合体における光配向性構成単位の含有割合としては、共重合体全体を100モル%としたとき、10モル%〜90モル%の範囲内で設定することができ、好ましくは20モル%〜80モル%の範囲内である。光配向性構成単位の含有割合が少ないと、感度が低下し、良好な液晶配向能を付与するのが困難になる場合がある。また、光配向性構成単位の含有割合が多いと、相対的に熱架橋性構成単位の含有割合が少なくなり、十分な熱硬化性が得られず、良好な液晶配向能を維持するのが困難になる場合がある。
(2)熱架橋性構成単位
本発明における熱架橋性構成単位は、加熱により架橋剤と結合する部位である。
熱架橋性構成単位は、熱架橋性基を有するものである。熱架橋性基としては、例えばヒドロキシ基、カルボキシ基、フェノール性ヒドロキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミド基等が挙げられる。中でも、反応性の観点から、脂肪族ヒドロキシ基が好ましく、第1級ヒドロキシ基がより好ましい。なお、第1級ヒドロキシ基とは、ヒドロキシ基が結合する炭素原子が第1級炭素原子であるヒドロキシ基をいう。
熱架橋性構成単位を構成する単量体単位としては、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、マレイミド、ビニルエーテル、ビニルエステル等が挙げられる。中でも、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンが好ましい。
アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルのモノマーは、溶解性が高く、市販品として入手しやすく、共重合とした際の反応性が良いという利点を有する。
また、スチレンの場合、より優れた液晶配向能とより優れた密着性の点から好ましい。共重合体において、スチレン骨格を有することにより、π電子系を多く含む共重合体とすることができる。そのため、本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物を用いて配向層を形成した場合、π電子系の相互作用により、液晶配向能を向上させ、また液晶層との密着性を高めることができると考えられる。
熱架橋性構成単位としては、下記式(5)で表される構成単位を例示することができる。
(上記式(5)中、Zは単量体単位を表し、Yは熱架橋性基を表し、Lは2価の連結基または単結合を表す。)
上記式(5)中、Zは単量体単位を表し、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン、マレイミド、ビニルエーテル、ビニルエステル等が挙げられる。中でも、上述のように、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンが好ましい。
当該単量体単位としては、具体的には、前記式(4−1)〜(4−6)で表される単量体単位を挙げることができる。
単量体単位が前記式(4−2)で表されるようなスチレンの場合、−L−Yはオルト位、メタ位、パラ位のいずれに結合していてもよく、また複数結合していてもよい。複数の場合、LおよびYは互いに同一でもよく異なってもよい。中でも、−L−Yが1つでありパラ位に結合していることが好ましい。
上記式(5)中、Yは熱架橋性基を表し、例えばヒドロキシ基、カルボキシ基、フェノール性ヒドロキシ基、メルカプト基、グリシジル基、アミド基等が挙げられる。中でも、上述したように、反応性の観点から、脂肪族ヒドロキシ基が好ましく、第1級ヒドロキシ基がより好ましい。
上記式(5)中、Lは単結合または2価の連結基を表す。なお、Lが単結合の場合、熱架橋性基Yは単量体単位Zに直接結合される。2価の連結基としては、例えばエーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、アルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基、およびこれらの組み合わせ等が挙げられる。中でも、2価の連結基は、−(CH−または−(CO)−を有することが好ましく、nは4〜11、mは2〜5であることが好ましい。nおよびmが小さすぎると、熱架橋性構成単位において熱架橋性基と共重合体の主骨格との距離が短くなるため、熱架橋性基に架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と架橋剤との反応性が低下するおそれがある。一方、nおよびmが大きすぎると、熱架橋性構成単位において連結基の鎖長が長くなるため、末端の熱架橋性基が表面に出にくく、熱架橋性基に架橋剤が結合しにくくなり、熱架橋性構成単位と架橋剤との反応性が低下するおそれがある。
なお、例えばLが−(CO)−の場合であって、Yがヒドロキシ基の場合、−L−Yは−(CO)−Hとすることができる。
また、上記式(5)では熱架橋性基Yが単量体単位Zに2価の連結基または単結合Lを介して結合されているが、Yがカルボキシ基またはヒドロキシ基の場合、上記式(5)で表される熱架橋性構成単位は、下記式(5−1)や式(5−2)で表される構成単位であってもよい。なお、下記式中、各符号は上記式と同様である。
また、熱架橋性構成単位は架橋基を有していてもよい。この場合、熱架橋性構成単位が架橋剤を兼ねることができる。このような熱架橋性構成単位を有する共重合体を用いる場合は、本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物を架橋剤を添加せずに利用することができる。しかしながら、保存安定性の点から、熱架橋性構成単位は架橋基を有さないことが好ましい。
架橋基を有する熱架橋性構成単位としては、例えば、オルト位がヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換されたフェノール性ヒドロキシ基、グリシジル基を有するものが挙げられる。
このような熱架橋性構成単位を形成するモノマーとしては、例えばアクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、アクリルアミド化合物、メタクリルアミド化合物、スチレン化合物、マレイミド化合物、ビニル化合物等が挙げられる。
アクリル酸エステル化合物およびメタクリル酸エステル化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、テトラエチレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、トリプロピレングリコールモノアクリレート、テトラプロピレングリコールモノアクリレート等のヒドロキシ基とアクリル基またはメタクリル基とを有するモノマーが挙げられる。
スチレン化合物としては、例えば、4−ビニル安息香酸とジオールとのエステル化物、4−ビニル安息香酸とジエチレングリコールとのエステル化物、ヒドロキシスチレンとジオールとのエーテル化物、ヒドロキシスチレンとジエチレングリコールとのエーテル化物等のヒドロキシ基とスチレン基とを有するモノマーが挙げられる。
その他にも、熱架橋性構成単位を形成するモノマーとしては、具体的には例えば、特許5626493号公報 段落0075〜0079に記載されているモノマーを用いることができる。
共重合体が有する熱架橋性構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
共重合体の合成には、上記熱架橋性構成単位を形成する熱架橋性基を有するモノマーを用いることができる。熱架橋性基を有するモノマーは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
共重合体における熱架橋性構成単位の含有割合としては、共重合体全体を100モル%としたとき、10モル%〜90モル%の範囲内で設定することができ、好ましくは20モル%〜80モル%の範囲内である。熱架橋性構成単位の含有割合が少ないと、十分な熱硬化性が得られず、良好な液晶配向能を維持するのが困難になる場合がある。また、熱架橋性構成単位の含有割合が多いと、相対的に光配向性構成単位の含有割合が少なくなり、感度が低下し、良好な液晶配向能を付与するのが困難になる場合がある。
(3)他の構成単位
本発明において、共重合体は、光配向性構成単位および熱架橋性構成単位の他に、光配向性基および熱架橋性基のいずれも有さない構成単位を有していてもよい。共重合体に他の構成単位が含まれることにより、例えば溶剤溶解性、耐熱性、反応性等を高めることができる。
光配向性基および熱架橋性基を有さない構成単位を構成する単量体単位としては、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、マレイミド、アクリルアミド、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン、ビニル等が挙げられる。中でも、上記熱架橋性構成単位と同様に、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレンが好ましい。
このような光配向性基および熱架橋性基を有さない構成単位を形成するモノマーとしては、例えばアクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物、ビニル化合物等が挙げられる。具体的には例えば、国際公開第2010/150748号の段落0036〜0040に記載されているモノマーを用いることができる。
共重合体における光配向性基および熱架橋性基を有さない構成単位は、1種であってもよく2種以上であってもよい。
共重合体における上記構成単位の含有割合としては、共重合体全体を100モル%としたとき、0モル%〜50モル%の範囲内であることが好ましく、0モル%〜30モル%の範囲内であることがより好ましい。上記構成単位の含有割合が多いと、相対的に光配向性構成単位および熱架橋性構成単位の含有割合が少なくなり、感度が低下し、良好な液晶配向能を付与するのが困難になり、また十分な熱硬化性が得られず、良好な液晶配向能を維持するのが困難になる場合がある。
(4)共重合体
共重合体の数平均分子量は、特に限定されるものではなく、例えば3,000〜200,000程度とすることができ、好ましくは4,000〜100,000の範囲内である。数平均分子量が大きすぎると、溶剤に対する溶解性が低くなったり粘度が高くなったりして取り扱い性が低下し、均一な膜を形成しにくい場合がある。また、数平均分子量が小さすぎると、熱硬化時に硬化不足になり溶剤耐性や耐熱性が低下する場合がある。
なお、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法により測定することができる。
共重合体の合成方法としては、光配向性基を有するモノマーと熱架橋性基を有するモノマーとを共重合する方法が挙げられる。
共重合体の合成方法としては特に限定されないが、例えば、光配向性基を有するモノマーと熱架橋性基を有するモノマーと重合開始剤等とを共存させた溶剤中において重合反応させることにより得ることができる。その際、用いられる溶剤は、光配向性基を有するモノマー、熱架橋性基を有するモノマーおよび重合開始剤等を溶解するものであれば特に限定されない。具体的には、後述の光配向性を有する熱硬化性組成物に用いられる溶剤と同様とすることができる。また、重合反応の際の温度は、例えば50℃〜120℃程度で設定することができる。上記方法により得られる共重合体は、通常、溶剤に溶解した溶液の状態である。
上記方法により得られた共重合体はそのまま用いることができるが、下記に示す方法により精製して用いることもできる。
すなわち、上記方法で得られた共重合体の溶液を、攪拌下のジエチルエーテルやメタノール、水等に投入して再沈殿させ、生成した沈殿物を濾過、洗浄した後に、常圧または減圧下で、常温乾燥または加熱乾燥し、共重合体の粉体とすることができる。この操作により、共重合体と共存する重合開始剤および未反応のモノマーを除去することができ、その結果、精製した共重合体の粉体が得られる。一度の操作で十分に精製できない場合は、得られた粉体を溶剤に再溶解させ、上記の操作を繰り返し行えばよい。
共重合体は、共重合体を合成した際の溶液形態で、あるいは、粉体形態で、あるいは精製した粉末を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いてもよい。
また、共重合体は、1種であってもよく複数種の共重合体の混合物であってもよい。
2.架橋剤
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する架橋剤を含有する。架橋剤は、上記共重合体の熱架橋性構成単位と結合することにより、耐熱性および耐溶剤性を高めることができる。また、当該架橋剤は、後述する、芳香族炭化水素基を含む熱架橋性重合性化合物のヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つとも結合して、芳香族炭化水素基を含む熱架橋性重合性化合物を配向層表面に固定化することにより、密着性向上に寄与する。
架橋剤としては、前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合すると共に、後述する化合物のヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つとも結合する化合物を選択して用いることが好ましい。
このような架橋剤としては、例えばエポキシ化合物、メチロール化合物、イソシアナート化合物等が挙げられる。中でも、メチロール化合物が好ましい。
また、架橋剤は、アミノ基の水素原子がメチロール基またはアルコキシメチル基で置換されたメラミン化合物、尿素化合物、グリコールウリル化合物およびベンゾグアナミン化合物を縮合させて得られる化合物であってもよい。
さらに、架橋剤としては、ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換されたアクリルアミド化合物またはメタクリルアミド化合物を使用して製造されるポリマーも用いることができる。
具体的には例えば、国際公開第2010/150748号の段落0047〜0050に記載されている架橋剤を用いることができる。
また、分子内にベンゼン環を複数個含む架橋剤も利用することができる。分子内にベンゼン環を複数個含む架橋剤としては、例えばヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基を合わせて2個以上有し、分子量が1200以下のフェノール誘導体や、少なくとも2個の遊離N−アルコキシメチル基を有するメラミン−ホルムアルデヒド誘導体やアルコキシメチルグリコールウリル誘導体が挙げられる。ヒドロキシメチル基を有するフェノール誘導体は、対応するヒドロキシメチル基を有さないフェノール化合物とホルムアルデヒドを塩基触媒下で反応させることによって得ることができる。
これらの架橋剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物における架橋剤の含有量は、上記共重合体100質量部に対して1質量部〜40質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは2質量部〜30質量部の範囲内である。含有量が少なすぎる場合には、光配向性を有する熱硬化性組成物から形成される硬化膜の耐熱性および溶剤耐性が低下し、液晶配向能が低下するおそれがある。また、含有量が多すぎる場合には、液晶配向能および保存安定性が低下することがある。
3.芳香族炭化水素基を含む熱架橋性重合性化合物
本発明においては、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つ、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物を含む。ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つは、熱架橋性基として機能し、エチレン性不飽和二重結合基は、重合性基として機能することから、当該化合物は、芳香族炭化水素基を含む熱架橋性重合性化合物として機能する。
ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つは、前記架橋剤と反応し得る官能基である。ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つが前記架橋剤と反応することにより、配向層に固定化される。
芳香族炭化水素基を含む熱架橋性重合性化合物は、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つを1分子中に1個以上有する。ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つが前記化合物1分子中に多すぎると、化合物が配向層に強く固定化されて、エチレン性不飽和二重結合基が反応し難くなる恐れがある点から、芳香族炭化水素基を含む熱架橋性重合性化合物は、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つを1分子中に1〜2個有することが好ましく、更に1分子中に1個有することが好ましい。
また、フェノール性ヒドロキシ基を有する場合には、架橋剤との反応性が高くなるため、密着性向上の点から好ましい。
エチレン性不飽和二重結合基は、ラジカル重合性基であり、本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物を用いて配向層を形成し、配向層上に重合性液晶組成物を用いて液晶層を形成した場合には、重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物が有するエチレン性不飽和二重結合基と反応し得るものである。なお、ラジカル重合性基とは、紫外線等の活性エネルギー線の照射またはラジカルの作用により重合可能な官能基である。エチレン性不飽和二重結合基としては、例えばビニル基(HC=CH−)、アクリロイル基(HC=CH−C(=O)−)、メタアクリロイル基(HC=C(CH)−C(=O)−)等が挙げられる。
熱架橋性重合性化合物は、1分子中に1個以上のエチレン性不飽和二重結合基を有する。
熱架橋性重合性化合物は、エチレン性不飽和二重結合基の二重結合を末端に有することが好ましい。
熱架橋性重合性化合物としては、下記式(6)で表される化合物を例示することができる。
式(6)
(R31−(L)−(Y
(上記式(6)中、R31はエチレン性不飽和二重結合基、Yはヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つであり、Lは芳香族炭化水素基を含む(s+t)価の連結基を表す。sはエチレン性不飽和二重結合基の化合物1分子中に含まれる数を表し、1以上である。tはヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つの化合物1分子中に含まれる数を表し、1以上である。)
エチレン性不飽和二重結合基R31およびヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つYは、上述の通りである。
s、tがそれぞれ独立に2以上であり、1分子中に含まれるR31及びYがそれぞれ独立に複数個存在する場合、複数個のR31及びYはそれぞれ独立に、互いに同一でもよく異なっていてもよい。
は芳香族炭化水素基を含む(s+t)価の連結基である。
(s+t)価の連結基としては、芳香族炭化水素基を必ず含み、更に、例えばエーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、2価のアミノ基(−NR−;ここで、Rは水素又は炭化水素基)、アミド基、及び、鎖状、分岐状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、からなる群から選択される1種以上の基との組み合わせの基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基を構成する芳香族炭化水素としては、炭素数が6〜14であることが好ましく、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、アントラセン等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素基を構成する芳香族炭化水素としては、ベンゼンであることが光配向性基との親和性が高くなる点から好ましい。
また、芳香族炭化水素基は、1価の置換基を有していても良い。前記1価の置換基としては、例えば、鎖状、分岐状若しくは環状の1価の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、シアノ基等が挙げられる。
また、前記熱架橋性重合性化合物としては、メタクリル酸グリシジルのような、アクリロイル基及びメタアクリロイル基の少なくとも1種とグリシジル基とを有する化合物と、フェノール性ヒドロキシ基を有する芳香族炭化水素基を含む化合物との反応生成物も密着性向上の点から好ましい。この場合、反応生成物は、分子の中央部付近にグリシジル基とフェノール性ヒドロキシ基との反応によりアルコール性ヒドロキシ基を有し、端部付近にアクリロイル基及びメタアクリロイル基の少なくとも1種と、芳香族炭化水素基とを有する構造となるため、分子中央部付近のアルコール性ヒドロキシ基で架橋剤と反応し、分子端部付近のエチレン性不飽和二重結合基及び芳香族炭化水素基の影響により配向膜表面で後述の液晶分子とπ電子系の相互作用が強くなって、重合性液晶化合物のエチレン性不飽和二重結合基との反応がより進行し易くなり、液晶層との密着性がより優れるようになると推定される。
前記アルコール性ヒドロキシ基と芳香族炭化水素環との間の結合を構成する炭素原子及びヘテロ原子の合計原子数は、3個以上6個以下であることが好ましく、且つ、前記アルコール性ヒドロキシ基とエチレン性不飽和二重結合基の炭素原子との間の結合を構成する炭素原子及びヘテロ原子の合計原子数は、3個以上5個以下であることが好ましい。
前記熱架橋性重合性化合物としては、下記に示される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
前記熱架橋性重合性化合物は、該当する構造を有する市販品を用いても良いし、適宜合成して得ることもできる。例えば、芳香族炭化水素基とグリシジルエーテル基を有する化合物と、アクリル酸やメタクリル酸とを反応させたり、アクリロイル基及びメタアクリロイル基の少なくとも1種とグリシジル基とを有する化合物と、フェノール性ヒドロキシ基を有する芳香族炭化水素基を含む化合物とを反応させたり、アクリロイル基及びメタアクリロイル基の少なくとも1種とヒドロキシ基とを有する化合物と、カルボキシ基を2つ有する芳香族炭化水素基を含む化合物とを反応させたり、アクリル酸クロライド及びメタアクリル酸クロライドの少なくとも1種と、ヒドロキシ基を2つ有する芳香族炭化水素とを反応させたりすることによって得ることができる。
また、前記熱架橋性重合性化合物は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記熱架橋性重合性化合物の分子量としては、120〜1000の範囲内であることが好ましく、中でも120〜500の範囲内であることが好ましく、更に150〜400の範囲内であることが好ましい。分子量が大きすぎると、本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物を用いて配向層を形成した場合に、光配向性化合物が配向層の表面近傍に局在化しにくくなるおそれがある。
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物における前記熱架橋性重合性化合物の含有量は、上記共重合体100質量部に対して5質量部〜60質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10質量部〜50質量部の範囲内であり、さらに好ましくは20質量部〜50質量部の範囲内である。前記熱架橋性重合性化合物の含有量が少なすぎると、本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物を用いて配向層を形成した場合に、液晶層との密着性の向上の効果が十分に得られないおそれがある。また、前記熱架橋性重合性化合物の含有量が多すぎると、相対的に共重合体の含有量が少なくなり、良好な液晶配向能が得られないおそれがある。
4.酸または酸発生剤
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、酸または酸発生剤を含有してもよい。酸または酸発生剤により、本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物の熱硬化反応を促進させることができる。
酸または酸発生剤としては、スルホン酸基含有化合物、塩酸またはその塩、および塗膜の乾燥および加熱硬化時に熱分解して酸を発生する化合物、すなわち温度50℃から250℃で熱分解して酸を発生する化合物であれば特に限定されるものではない。具体的には、国際公開第2010/150748号の段落0054に記載されているものを用いることができる。
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物における酸または酸発生剤の含有量は、上記共重合体100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜20質量部の範囲内、より好ましくは0.05質量部〜10質量部の範囲内、さらに好ましくは0.1質量部〜5質量部の範囲内である。酸または酸発生剤の含有量を上記範囲内とすることで、十分な熱硬化性および溶剤耐性を付与することができ、さらに光照射に対する高い感度をも付与することができる。一方、含有量が多すぎると、光配向性を有する熱硬化性組成物の保存安定性が低下する場合がある。
5.光開始剤
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、光開始剤を更に含有することが、液晶層との密着性がより優れる配向層を得ることができる点から好ましい。
前記芳香族炭化水素基を含む熱架橋性重合性化合物と組み合わせて光開始剤を更に含有することにより、前記芳香族炭化水素基を含む熱架橋性重合性化合物におけるエチレン性不飽和二重結合基と、重合性液晶組成物に含まれる重合性液晶化合物が有するエチレン性不飽和二重結合基との反応を促進させることができ、液晶層との密着性がより向上すると推定される。
光開始剤としては、光照射によりラジカル種を発生するラジカル系光重合開始剤が好適に用いられる。本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物に、前記酸または酸発生剤を含有させる場合には、光開始剤としては、例えばアミノアルキルフェノン系光開始剤のように塩基性を有する光開始剤ではないことが好ましく、塩基性基を有しない光開始剤であることが好ましい。
光開始剤としては、例えば、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤、オキシムエステル系光開始剤、α−ヒドロキシアセトフェノン系光開始剤、及びベンジルケタール系光開始剤等が挙げられる。
以下に光開始剤の具体例を挙げるがこれらに限定されるものではない。
アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤の具体例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
オキシムエステル系光開始剤の具体例としては、1.2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)などが挙げられる。
α−ヒドロキシアセトフェノン系光開始剤の具体例としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル-プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル-プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−{4−(1−メチルビニル)フェニル}プロパノン]、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−3,5,2−メチルプロピオニル)−ベンジル)−フェニル)−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。
また、ベンジルケタール系光開始剤の具体例としては、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オンなどが挙げられる。
光開始剤としては、中でも、反応性が高い点から、アシルフォスフィンオキサイド系光開始剤およびオキシムエステル系光開始剤の少なくとも1種が好ましい。
光開始剤としては、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物における光開始剤の含有量は、上記共重合体100質量部に対して5質量部〜30質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5質量部〜20質量部の範囲内である。含有量が少なすぎると光開始剤の効果を十分に得られない場合があり、含有量が多すぎると配向性の低下が生じる恐れがある。
6.増感剤
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、増感剤を含有してもよい。増感剤により、光二量化反応や光異性化反応等の光反応を促進させることができる。
増感剤としては、具体的には、国際公開第2010/150748号の段落0057に記載されているものを用いることができる。
中でも、ベンゾフェノン誘導体およびニトロフェニル化合物が好ましい。増感剤は単独でまたは2種以上の化合物を組み合わせて併用することができる。
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物における増感剤の含有量は、上記共重合体100質量部に対して0.1質量部〜20質量部の範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.2質量部〜10質量部の範囲内である。含有量が少なすぎると増感剤としての効果を十分に得られない場合があり、含有量が多すぎると透過率の低下および塗膜の荒れが生じることがある。
7.溶剤
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、主として溶剤に溶解した溶液状態で用いられる。
溶剤としては、上記の各成分を溶解できるものであれば特に限定されるものでなく、具体的には、国際公開第2010/150748号の段落0061に記載されているものを用いることができる。
溶剤は1種単独でまたは2種以上の組合せで使用することができる。
8.添加剤
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、シランカップリング剤、界面活性剤、レオロジー調整剤、顔料、染料、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤等を含有することができる。また、液晶配向能の向上のために、液晶性モノマーを含有させることができる。
9.光配向性を有する熱硬化性組成物
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、通常、各成分が溶剤に溶解した溶液として用いられる。本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物における固形分の割合は、各成分が均一に溶剤に溶解している限り特に限定されるものではなく、0.1質量%〜80質量%の範囲内であり、好ましくは0.5質量%〜60質量%の範囲内であり、より好ましくは0.5質量%〜40質量%の範囲内である。固形分の割合が少なすぎると、液晶配向能や熱硬化性を付与することが困難になる場合がある。また、固形分の割合が多すぎると、光配向性を有する熱硬化性組成物の粘度が高くなり、均一な膜を形成しにくくなる。
なお、固形分とは、光配向性を有する熱硬化性組成物の全成分から溶剤を除いたものをいう。
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物の調製方法は特に限定されるものではないが、保存安定性が長くなることから、共重合体、架橋剤、前記熱架橋性重合性化合物、およびその他の添加剤を混合し、後から酸または酸発生剤を添加する方法が好ましい。なお、酸または酸発生剤をはじめから添加する場合には、酸または酸発生剤として、塗膜の乾燥および加熱硬化時に熱分解して酸を発生する化合物を用いることが好ましい。
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物の調製においては、溶剤中の重合反応によって得られる共重合体の溶液をそのまま使用することができる。この場合、共重合体の溶液に、上述のように架橋剤、前記熱架橋性重合性化合物およびその他の添加剤等を入れて均一な溶液とし、後から酸または酸発生剤を添加する。この際に、濃度調整を目的としてさらに溶剤を加えてもよい。このとき、共重合体の生成過程で用いられる溶剤と、光配向性を有する熱硬化性組成物の濃度調整に用いられる溶剤とは同一であってもよく異なってもよい。
また、調製された光配向性を有する熱硬化性組成物の溶液は、孔径が0.2μm程度のフィルタ等を用いて濾過した後、使用することが好ましい。
10.用途
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物の用途としては、例えば位相差板等の各種光学素子の配向層、液晶表示素子の配向層を挙げることができる。また、本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物は、液晶表示素子、有機EL素子、TFT、カラーフィルタ等の各種デバイスにおける絶縁膜や保護膜等に用いることもでき、例えば有機EL素子の絶縁膜、TFTの層間絶縁膜、カラーフィルタのオーバーコート層等を挙げることができる。
B.配向層
本発明の配向層は、光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と架橋剤とが結合してなる架橋構造を有する共重合体と、
ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つと架橋剤とが結合してなる架橋構造、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物と、
を含有することを特徴とするものである。
ここで、架橋構造とは、三次元的な網目構造をいう。架橋構造には、前記共重合体の熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と架橋剤とが結合してなる架橋構造と、前記化合物のヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つと架橋剤とが結合してなる架橋構造とが含まれる。架橋構造には、光配向性基同士が光二量化反応により架橋した構造、ならびに、エチレン性不飽和二重結合基同士が重合した構造は含まれない。
本発明によれば、配向層は、所定の光二量化構造または光異性化構造、および、所定の架橋構造を有する共重合体と、芳香族炭化水素基を含み、所定の架橋構造、および、エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物とを含有するものであるため、良好な液晶配向能を有し、液晶層との密着性に優れ、且つ、良好な耐熱性および耐溶剤性を有するものである。
以下、本発明の配向層における各構成について説明する。
1.配向層に含まれる共重合体
配向層には、光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と架橋剤とが結合してなる架橋構造を有する共重合体が含まれる。
配向層に含まれる前記共重合体は、上記「A.光配向性を有する熱硬化性組成物」に記載した光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体を熱硬化し、光配向させることにより形成することができる。本発明においては架橋剤が用いられ、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基は架橋剤と結合する。したがって、架橋構造は、熱架橋性基と架橋剤とが加熱により架橋した構造となる。なお、前記共重合体の熱架橋性構成単位が架橋基を有する場合には、当該架橋構造として、熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と熱架橋性構成単位が有する架橋基とが結合してなる架橋構造を含んでいても良い。
なお、架橋剤は、前記「A.光配向性を有する熱硬化性組成物」に記載した架橋剤を用いることができ、架橋構造中には、架橋剤が反応した後の架橋剤の残基が含まれる。
例えば、架橋剤がヘキサメトキシメチルメラミンの場合、架橋構造は例えば下記に示すような構造になる。なお、下記式中、各符号は上記式(1)と同様である。下記共重合体は例示であり、単量体単位や熱架橋性基の残基等は下記に限定されるものではない。
なお、共重合体の各構成単位については、上記「A.光配向性を有する熱硬化性組成物」に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
配向層が上記共重合体を含有することは、配向層から材料を採取し分析することで確認することができる。分析方法としては、NMR、IR、GC−MS、XPS、TOF−SIMSおよびこれらの組み合わせた方法を適用することができる。
共重合体における光二量化構造は、上記式(1)で表される光配向性構成単位の光配向性基同士が光二量化反応により架橋した構造であり、シクロプロパン骨格を有する構造である。
光二量化反応は、下記に示すような反応であり、光配向性基に含まれるオレフィン構造が光反応によりシクロプロパン骨格を形成する反応である。光配向性基の種類に応じてXa〜XdおよびXa’〜Xd’は異なる。
光二量化構造は、シンナモイル基の光二量化構造であることが好ましい。具体的には、上記「A.光配向性を有する熱硬化性組成物」に記載したシンナモイル基同士が光二量化反応により架橋した構造が好ましい。中でも、配向層は、下記式(7−1)、(7−2)で表されるような光二量化構造を有することが好ましい。なお、下記式中、各符号は上記式(2−1)、(2−2)、及び(2−3)と同様である。
配向層が、上記式(7−1)、(7−2)で表されるような光二量化構造を有する場合、芳香環が多く配置され、π電子を多く含むようになる。そのため、配向層上に形成される液晶層と親和性が高くなり、液晶配向能が向上し、液晶層との密着性がさらに高くなると考えられる。
また、共重合体における光異性化構造は、光配向性構成単位が有する光配向性基が光異性化反応により異性化した構造である。例えばシストランス異性化反応の場合、光異性化構造は、シス体がトランス体に変化した構造およびトランス体がシス体に変化した構造のいずれであってもよい。
例えば、光配向性基がシンナモイル基の場合、光異性化反応は下記に示すような反応であり、光配向性基に含まれるオレフィン構造が光反応によりシス体またはトランス体を形成する反応である。光配向性基の種類に応じてXa〜Xdは異なる。
光異性化構造は、シンナモイル基の光異性化構造であることが好ましい。具体的には、上記「A.光配向性を有する熱硬化性組成物」に記載したシンナモイル基が光異性化反応により異性化した構造が好ましい。この場合、光異性化構造は、シス体がトランス体に変化した構造およびトランス体がシス体に変化した構造のいずれであってもよい。中でも、配向層は、下記式(8−1)及び(8−2)で示されるような、上記式(2−1)及び(2−2)で表されるシンナモイル基の光異性化構造を有することが好ましい。
なお、配向層が上記光二量化構造または光異性化構造を有することは、NMRまたはIRにより分析可能である。
2.配向層に含まれる重合性化合物
本発明における配向層には、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つと架橋剤とが結合してなる架橋構造、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(以下、単に、配向層に含まれる重合性化合物という場合がある)が含まれる。
前記ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つと架橋剤とが結合してなる架橋構造、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物は、上記「A.光配向性を有する熱硬化性組成物」に記載したヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つ、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物を架橋剤と架橋させることにより形成することができる。前記架橋構造には、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つの残基と、架橋剤が反応した後の架橋剤の残基とが含まれる。
なお、前記配向層に含まれる重合性化合物の芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基については、上記「A.光配向性を有する熱硬化性組成物」に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
配向層が前記配向層に含まれる重合性化合物を含有することは、配向層から材料を採取し分析することで確認することができる。分析方法としては、NMR、IR、GC−MS、XPS、TOF−SIMSおよびこれらの組み合わせた方法を適用することができる。
3.配向層
配向層は、酸または酸発生剤、光開始剤、増感剤、その他の添加剤、及びそれらの分解物を含有してもよい。なお、これらの添加剤については、上記「A.光配向性を有する熱硬化性組成物」に記載したものと同様である。
また、配向層は、未反応の、光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体、架橋剤、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つ、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物を含有していても良い。
配向層は上述の光配向性を有する熱硬化性組成物から形成されるものである。
ここで、光配向性を有する熱硬化性組成物から形成される配向層とは、光配向性を有する熱硬化性組成物を含有する膜を熱硬化させ、さらに光配向させてなる配向層をいう。すなわち、配向層は、まず、基板上に塗布して前記光配向性を有する熱硬化性組成物の塗膜を形成し、当該塗膜を加熱することにより硬化膜を形成し、前記硬化膜に偏光紫外線を照射することにより、形成することができる。
前記塗膜の形成方法、熱硬化膜の形成方法、光配向させる方法等は、後述の配向層付基板の製造方法に記載した方法と同様であって良いので、ここでの説明を省略する。
なお、配向層が上述の光配向性を有する熱硬化性組成物から形成されたものであることは、配向層から材料を採取し分析することで確認することができる。分析方法としては、NMR、IR、GC−MS、XPS、TOF−SIMSおよびこれらの組み合わせた方法を適用することができる。
C.配向層付基板、及びその製造方法
本発明の配向層付基板は、基板と、前記基板上に配置された、前記本発明に係る配向層とを有することを特徴とするものである。
図1は本発明の配向層付基板の一例を示す概略断面図である。図1に例示する配向層付基板1においては、基板2上に配向層3が形成されている。
本発明によれば、上述の配向層を有することにより、優れた液晶配向能、液晶層との密着性、耐熱性および耐溶剤性を有する配向層付基板を提供することができる。
以下、本発明の配向層付基板における各構成について説明する。
1.配向層
本発明の配向層付基板における配向層は、前記本発明に係る配向層であり、液晶分子を配向させる機能を有するものである。当該配向層は、上記「B.配向層」に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
2.基板
本発明に用いられる基板は、配向層を支持するものである。
基板としては、特に限定されるものではなく、用途等に応じて適宜選択される。基板の材料としては、例えば、ガラスや石英、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリエステル、アクリル等の樹脂、アルミニウム等の金属、シリコンやシリコンナイトライド等のセラミック等が挙げられる。また、基板は表面処理が施されたものであってもよい。
基板は、可撓性を有していてもよく有さなくてもよく、用途等に応じて適宜選択される。
3.導電層
本発明においては、基板と配向層と間に導電層が形成されていてもよい。導電層は例えば各種デバイスの電極として機能するものである。導電層の材料としては、例えばITO、IZO等の透明導電材料や、アルミニウム、モリブデン、クロム等の金属材料が挙げられる。
4.用途
本発明の配向層付基板の用途としては、例えば位相差板等の各種光学素子、液晶表示素子、発光素子等を挙げることができる。
5.配向層付基板の製造方法
本発明の配向層付基板の製造方法は、基板上に、前記本発明に係る光配向性を有する熱硬化性組成物を塗布して前記光配向性を有する熱硬化性組成物の塗膜を形成し、当該塗膜を加熱することにより硬化膜を形成する工程と、
前記硬化膜に偏光紫外線を照射することにより配向層を形成する工程とを有することを特徴とするものである。
光配向性を有する熱硬化性組成物の塗布方法としては、基板上に均一な膜を形成可能な方法であれば特に限定されるものではなく、例えばスピンコート法、ロールコート法、ロッドバーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法、スロットダイコート法、ワイヤーバーコート法、フローコート法、インクジェット法等を挙げることができる。
塗膜の乾燥には、例えばホットプレートやオーブン等を用いることができる。温度は、例えば30℃〜160℃程度で設定することができ、好ましくは50℃〜140℃の範囲内である。時間は、例えば20秒間〜60分間程度で設定することができ、好ましくは30秒間〜10分間の範囲内である。
塗膜を加熱することにより硬化膜を形成する場合にも、ホットプレートやオーブン等を用いることができる。温度は、例えば30℃〜250℃程度で設定することができる。時間は、例えば20秒間〜60分間程度で設定することができる。また、塗膜の乾燥および加熱硬化を同時に行ってもよく別々に行ってもよい。
光配向性を有する熱硬化性組成物を熱硬化させて得られる硬化膜の膜厚は、用途等に応じて適宜選択されるものであり、例えば0.05μm〜30μm程度とすることができる。なお、硬化膜の膜厚が薄すぎると、十分な液晶配向能が得られない場合がある。
得られた硬化膜には、偏光紫外線を照射することにより、光反応を生じさせて異方性を発現させることができる。偏光紫外線の波長は通常150nm〜450nmの範囲内である。また、偏光紫外線の照射方向は、基板面に対して垂直または斜め方向とすることができる。
以上のようにして、配向層を形成することができる。
D.位相差板
本発明の位相差板は、基板と、
前記基板上に配置された、光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と架橋剤とが結合してなる架橋構造を有する共重合体と、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つと架橋剤とが結合してなる架橋構造、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基が重合した構造を有する化合物とを含有する配向層と、
前記配向層上に配置された、エチレン性不飽和二重結合基を有する重合性液晶組成物のエチレン性不飽和二重結合基が重合した構造を有する位相差層と
を有することを特徴とするものである。
図2は本発明の位相差板の一例を示す概略断面図である。図2に例示する位相差板10においては、基板11上に配向層12が形成され、配向層12上に位相差層13が形成されている。
本発明によれば、配向層が、所定の光二量化構造または光異性化構造、および、架橋構造を有する共重合体と、所定の架橋構造、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物とを含有し、当該エチレン性不飽和二重結合基が重合した構造を有するため、液晶配向能、液晶層との密着性、耐熱性および耐溶剤性に優れており、光学特性の良好な位相差板を得ることができる。
なお、基板については、上記「C.配向層付基板」に記載したので、ここでの説明は省略する。以下、本発明の位相差板における他の構成について説明する。
1.位相差板における配向層
位相差板における配向層は、基板上に配置された、光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と架橋剤とが結合してなる架橋構造を有する共重合体と、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つと架橋剤とが結合してなる架橋構造、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基が重合した構造を有する化合物(以下単に、配向層における芳香族炭化水素基を含む化合物という場合がある)とを含有するものである。
なお、前記共重合体については、上記「B.配向層」における共重合体と同様であるので、ここでの説明は省略する。
前記配向層における芳香族炭化水素基を含む化合物のエチレン性不飽和二重結合基が重合した構造は、配向層上に重合性液晶組成物を塗布し、重合性液晶組成物の相転移温度まで加熱して配向層によって液晶分子を配向させ、硬化することにより得ることができる。
前記配向層における芳香族炭化水素基を含む化合物のエチレン性不飽和二重結合基が重合した構造は、前記配向層における芳香族炭化水素基を含む化合物のエチレン性不飽和二重結合基同士、または、前記配向層における芳香族炭化水素基を含む化合物のエチレン性不飽和二重結合基と位相差層に含まれる重合性液晶化合物が有するエチレン性不飽和二重結合基が重合した構造である。
配向層が上記構造を有することは、XPSまたはIRにより分析可能である。
2.位相差層
本発明における位相差層は、上記配向層上に形成され、重合性液晶組成物の硬化物を含有するものである。
重合性液晶組成物としては、重合性基を有する重合性液晶化合物を含有するものを用いることができ、位相差層に一般的に用いられるものを使用することができる。
重合性液晶化合物が有するエチレン性不飽和二重結合基としては、例えばアクリロイル基、メタアクリロイル基等が挙げられる。
重合性液晶組成物には、例えば水平配向、コレステリック配向、垂直配向、ハイブリッド配向等の配向性を有するものがあり、配向層との組み合わせや所望の位相差等に応じて適宜選択される。
位相差層は、配向層上に重合性液晶組成物を塗布し、重合性液晶組成物の相転移温度まで加熱して配向層によって液晶分子を配向させ、硬化することにより得ることができる。位相差層の膜厚および形成方法等は、一般的な位相差層と同様とすることができる。
3.位相差板
基板および配向層の間には導電層が形成されていてもよい。なお、導電層については、上記「C.配向層付基板」に記載したので、ここでの説明は省略する。
位相差板は可撓性を有していてもよく有さなくてもよい。
4.位相差板の製造方法
本発明に係る位相差板の製造方法は、基板上に、前記本発明に係る光配向性を有する熱硬化性組成物を塗布して前記光配向性を有する熱硬化性組成物の塗膜を形成し、当該塗膜を加熱することにより硬化膜を形成する工程と、
前記硬化膜に偏光紫外線を照射することにより配向層を形成する工程と、
前記配向層上に、エチレン性不飽和二重結合基を有する重合性液晶組成物を塗布して前記重合性液晶組成物の塗膜を形成し、当該塗膜を前記重合性液晶組成物の相転移温度まで加熱することにより前記配向層によって液晶分子を配向させる工程と、
前記液晶分子が配向した重合性液晶組成物の塗膜に光照射することにより位相差層を形成する工程とを有することを特徴とするものである。
なお、本発明に係る位相差板の製造方法において、硬化膜を形成する工程、配向層を形成する工程は、上記「C.配向層付基板」に記載したので、ここでの説明は省略する。
液晶分子を配向させる工程において、エチレン性不飽和二重結合基を有する重合性液晶組成物の塗膜を形成する方法、相転移温度まで加熱する方法については、従来公知の方法を用いればよく、特に限定されない。塗布方法、加熱方法については、上記配向層形成工程と同様の方法を用いることができる。
前記液晶分子が配向した重合性液晶組成物の塗膜には、光照射することにより、重合反応を生じさせて、位相差層に含まれる重合性液晶化合物が有するエチレン性不飽和二重結合基同士、または、前記配向層における芳香族炭化水素基を含む化合物のエチレン性不飽和二重結合基と位相差層に含まれる重合性液晶化合物が有するエチレン性不飽和二重結合基を重合する。光照射方法は従来公知の方法を用いればよい。光照射方法としては、紫外線照射が好ましく用いられる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
[合成例1]光配向性モノマー1の合成
特許第5668881号の合成例1と同様にして、下記スキームに示すように光配向性モノマー1を合成した。
[合成例2]光配向性モノマー2の合成
特許第5626492号の合成例3と同様にして、下記スキームに示すように光配向性モノマー2を合成した。
[合成例3]熱架橋性モノマー2の合成
特許第5668881号の合成例5と同様にして、下記スキームに示すように熱架橋性モノマー2を合成した。
以下の共重合体の合成に用いた各モノマーの構造を下記表1に示す。
合成した各モノマーは、日本電子(株)製JEOL JNM−LA400WBを用いて、H NMR測定により、化学構造を確認した。
[製造例1]共重合体1の合成
光配向性モノマー1 4.2g、熱架橋性モノマー1(ヒドロキシブチルアクリレート) 1.4g、重合触媒としてα,α’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)50mgをジオキサン25mlに溶解し、90℃にて6時間反応させた。反応終了後、再沈殿法により精製することで、共重合体1を得た。得られた共重合体1の数平均分子量は21300であった。
なお、合成した各共重合体の数平均分子量(以下、Mnと称す)は、東ソー(株)製HLC−8220 GPCを用いて、ポリスチレンを標準物質とし、NMPを溶離液としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)にて算出した。
[製造例2]共重合体2の合成
光配向性モノマー2 3.1g、熱架橋性モノマー2 1.9gを用いた以外は製造例1と同様にして、共重合体2を合成した。得られた共重合体2の数平均分子量は19400であった。
[実施例1]
(熱硬化性組成物1の調製)
下記に示す組成の熱硬化性組成物1を調製した。芳香族炭化水素基を含む熱架橋性重合性化合物1として、下記表2に示される化合物を準備した。
・共重合体1:0.1g
・ヘキサメトキシメチルメラミン(HMM):0.01g
・熱架橋性重合性化合物1:0.01g
・p−トルエンスルホン酸1水和物(PTSA):0.0015g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME):2g
(配向層の形成)
透明ガラス基板の一面に、上記熱硬化性組成物をスピンコートにより塗布し、100℃のオーブンで1分間加熱乾燥させ、硬化膜を形成し、塗膜を得た。この硬化膜表面にHg−Xeランプおよびグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線を基板法線から垂直方向に20mJ/cm照射することで、配向層を形成した。
(位相差板の作製)
下記式で表される液晶性モノマーをシクロヘキサンノンに固形分15質量%となるように溶解した溶液に、BASF株式会社製の光重合開始剤イルガキュア184を5質量%添加し、重合性液晶組成物を調製した。
透明ガラス基板の配向層が形成された面に、上記重合性液晶組成物をスピンコートにより塗布し、70℃のオーブンで1分間加熱し塗膜を形成した。この基板に窒素雰囲気化でHg−Xeランプを用いて365nmの輝線を含む非偏光の紫外線300mJ/cmを重合性液晶組成物の塗布面に照射して、位相差板を製造した。
[実施例2〜16および比較例1〜3]
共重合体1〜2、架橋剤としてヘキサメトキシメチルメラミン(HMM)、酸または酸発生剤としてp−トルエンスルホン酸1水和物(PTSA)、熱架橋性重合性化合物1〜4及び比較熱架橋性重合性化合物C1〜C2、溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、場合により光開始剤1〜2を用いて、実施例1と同様に、実施例2〜16および比較例1〜3の熱硬化性組成物を調製し、配向層を形成し、位相差板を作製した。
なお、光開始剤1及び2は以下に示すとおりである。
光開始剤1:2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(Irgacure TPO BASF製)
光開始剤2:エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(0−アセチルオキシム)(Irgacure OXE−02 BASF製)
各熱硬化性組成物の組成を下記表3に示す。
[評価]
得られた各熱硬化性組成物および各位相差板について以下の評価を行った。
(液晶配向性)
2枚の直線偏光板をクロスニコル状態にして、その間に位相差板を挟み、目視で観察した。基板を回転させた際に、面内に観察される明暗模様が明確なものを「A」、面内に観察される明暗模様が明確であるが、配向性が弱いものを「B」、配向欠陥がみられるものを「C」として評価した。ここで、配向性が弱いとは、一部灰色である場合や、均一でない場合をいう。
(密着性)
位相差板に対し、等間隔スペーサーを用いて、カッターナイフで1mm間隔に切り込みを入れて、10×10の格子パターンを形成した。続いて、格子パターンの上にセロハンテープを置き、しっかりと密着させた後、セロハンテープを引き剥がした。セロハンテープを引き剥がした後の塗膜のカット部分を観察した。塗膜がカットの線に沿って、または交差する点において剥離が生じている格子の目の個数が、格子パターン全体の個数に対して5%未満の場合を「A」とし、5%以上10%未満の場合を「B」とし、10%以上の場合を「C」とした。
(耐久密着性1 48時間保管後)
位相差フイルムを温度60℃、湿度90%のオーブンに48時間保管した後、上記密着性と同じ評価方法にて耐久密着性を評価した。塗膜がカットの線に沿って、または交差する点において剥離が生じている格子の目の個数が、格子パターン全体の個数に対して5%未満の場合を「A」とし、5%以上10%未満の場合を「B」とし、10%以上の場合を「C」とした。
(耐久密着性2 96時間保管後)
位相差フイルムを温度60℃、湿度90%のオーブンに96時間保管した後、上記密着性と同じ評価方法にて耐久密着性を評価した。塗膜がカットの線に沿って、または交差する点において剥離が生じている格子の目の個数が、格子パターン全体の個数に対して5%未満の場合を「A」とし、5%以上10%未満の場合を「B」とし、10%以上の場合を「C」とした。

Claims (8)

  1. 光配向性構成単位および熱架橋性構成単位を有する共重合体と、
    前記熱架橋性構成単位の熱架橋性基と結合する架橋剤と、
    ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つ、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物と、
    を含有し、前記エチレン性不飽和二重結合基は、ビニル基、アクリロイル基、及びメタアクリロイル基からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする光配向性を有する熱硬化性組成物。
  2. 光開始剤を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
  3. 前記光配向性構成単位が、下記式(1)で表される光配向性構成単位を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の光配向性を有する熱硬化性組成物。
    (ここで、式(1)中、Xは光配向性基、Lは2価の連結基または単結合、Rは水素原子、メチル基、塩素原子又はフェニル基、kは1〜5を表す。)
  4. 光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と架橋剤とが結合してなる架橋構造を有する共重合体と、
    ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つと前記共重合体と結合した架橋剤とが結合してなる架橋構造、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物と、
    を含有し、前記エチレン性不飽和二重結合基は、ビニル基、アクリロイル基、及びメタアクリロイル基からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする配向層。
  5. 基板と、前記基板上に配置された、請求項4に記載の配向層とを有することを特徴とする配向層付基板。
  6. 基板上に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光配向性を有する熱硬化性組成物を塗布して前記光配向性を有する熱硬化性組成物の塗膜を形成し、当該塗膜を加熱することにより硬化膜を形成する工程と、
    前記硬化膜に偏光紫外線を照射することにより配向層を形成する工程とを有する、配向層付基板の製造方法。
  7. 基板と、
    前記基板上に配置された、光配向性構成単位が有する光配向性基の光二量化構造または光異性化構造、および熱架橋性構成単位が有する熱架橋性基と架橋剤とが結合してなる架橋構造を有する共重合体と、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも1つと前記共重合体と結合した架橋剤とが結合してなる架橋構造、芳香族炭化水素基、およびエチレン性不飽和二重結合基が重合した構造を有する化合物とを含有する配向層と、
    前記配向層上に配置された、エチレン性不飽和二重結合基を有する重合性液晶組成物のエチレン性不飽和二重結合基が重合した構造を有する位相差層と
    を有し、前記エチレン性不飽和二重結合基は、ビニル基、アクリロイル基、及びメタアクリロイル基からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする位相差板。
  8. 基板上に、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光配向性を有する熱硬化性組成物を塗布して前記光配向性を有する熱硬化性組成物の塗膜を形成し、当該塗膜を加熱することにより硬化膜を形成する工程と、
    前記硬化膜に偏光紫外線を照射することにより配向層を形成する工程と、
    前記配向層上に、エチレン性不飽和二重結合基を有する重合性液晶組成物を塗布して前記重合性液晶組成物の塗膜を形成し、当該塗膜を前記重合性液晶組成物の相転移温度まで加熱することにより前記配向層によって液晶分子を配向させる工程と、
    前記液晶分子が配向した重合性液晶組成物の塗膜に光照射することにより位相差層を形成する工程と
    を有する、位相差板の製造方法。
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