以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。全図面に渡り、対応する構成要素には共通の参照符号を付す。
図1は、本発明の第1実施形態による筆記具1の筆記状態の正面図であり、図2は、図1の線A−Aにおける縦断面図であり、図3は、図1の筆記具1の非筆記状態の縦断面図である。
筆記具1は、軸筒2と、消去部材3とを有している。軸筒2は、筒状の先軸4と、先軸4の後端部にその前端部が螺合する筒状の後軸5とを有している。先軸4の先端には、軸筒2内に収容された筆記体であるリフィル6の筆記部6aを突出させるための孔4aが形成されている。
本明細書中では、筆記具1の軸線方向において、筆記部6a側を「前」側と規定し、筆記部6aとは反対側を「後」側と規定する。また、「中心軸線」とは、筆記具1の中心軸線を意味する。さらに、筆記具1は、後述する出没機構によって、軸筒2内でリフィル6が前後方向に摺動する。このとき、筆記部6aが軸筒2、すなわち先軸4の孔4aから突出した状態を筆記状態(図2)と称し、筆記部6aが軸筒2内に没入した状態を非筆記状態(図3)と称す。
後軸5の後端部には、後壁部5aが形成されており、その中央には円形の取付開口5bが形成されている。また、後軸5の後壁部5a近傍の内壁よりも前方の内壁は、より内径が大きく形成され、従って、それらの境界部分には段部5cが形成されている。先軸4及び後軸5は、例えばポリカーボネート樹脂といった樹脂材料から形成される。
リフィル6として、熱変色インクを収容したボールペン、熱変色芯を収容したシャープペンシル、消しゴム消去性インクを収容したサインペン、鉛筆ホルダー等を使用することができる。
本実施形態におけるリフィル6は、熱変色性インクを収容する。熱変色性インクとは、常温(例えば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(例えば60℃)まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、その後、所定温度(例えば−5℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有するインクを言う。熱変色性インクを用いた筆記具1では上記第2色を無色とし、第1色(例えば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とすることを、ここでは「消去する」ということとする。従って、描線が筆記された紙面等に対して摩擦体としての消去部材3によって擦過して摩擦熱を生じさせ、それによって描線を無色に変化、すなわち消去させる。なお、当然のことながら上記第2色は、無色以外の有色でも良い。
なお、本発明における「消去」とは、上記熱変色性インクを用いた場合以外にも、筆記した描線、文字等を消しゴム等の消去部材で吸着又は削ぎ落とすことをいう。従って、本発明は、筆記した描線を、消去部材を用いて消去する任意の筆記具にも適用可能である。
消去部材3は、全体として円柱状に形成されている。消去部材3の一端は、平坦に形成され、その中央には取付突起3aが形成されている。取付突起3aは、後軸5の後壁部5aに形成された取付開口5b内に圧入等によって取り付けられている。消去部材3の他端には、凸曲面上の消去部3bが形成されている。さらに、消去部材3の中心軸線に沿って、消去部材3を貫通する通気孔3cが形成されている。消去部材3に通気孔3cが形成されていることによって、軸筒2の内部と外部とが連通している。なお、消去部材3の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、三角柱状、直方体、表面に凹凸や突起を有する複雑な形状としても良い。
摩擦体としての消去部材3を形成する材料として、シリコーンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等のゴム材質やスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマーといったゴム弾性材料、2種以上のゴム弾性材料の混合物、及び、ゴム弾性材料と合成樹脂との混合物、市販されている消しゴム等が挙げられる。
軸筒2内、特に後軸5内には、出没機構が配置されている。出没機構は、内筒7と、外摺動部材8と、内摺動部材9と、ボール10と、解除部材11と、コイルスプリング13とを有している。
図4は、図1の筆記具1の内筒7の斜視図であり、図5は、図4の内筒7の縦断面図である。内筒7は、円筒状の内筒本体7aと、大径フランジ部7bと、小径フランジ部7cとを有している。大径フランジ部7bは、内筒本体7aの前端部に形成され、内筒本体7aよりも大きな径を有する環状の突起である。小径フランジ部7cは、大径フランジ部7bの後方に形成され、内筒本体7aの径よりも大きく且つ大径フランジ部7bの径よりも小さい径を有する環状の突起である。内筒本体7aの側面には、貫通孔7dが形成されている。内筒7の大径フランジ部7bの内面には、その他の部分の内径よりも小さい径の内面を有する小径部7eが形成されている。内筒7は、例えばポリカーボネート樹脂といった樹脂材料等から形成される。
図6は、図1の筆記具1の外摺動部材8の斜視図であり、図7は、図6の外摺動部材8の縦断面図である。外摺動部材8は全体として円筒状の部材であり、外摺動部材8の外径は後軸5の内径よりも小さい。外摺動部材8の軸線方向の中央部分の内面には、その他の部分の内径よりも小さい径の内面を有する保持部である厚肉部8aが形成されている。すなわち、厚肉部8a以外のその他の部分は、解除部である薄肉部8bを構成する。外摺動部材8の厚肉部8aの内径は、内筒7の内筒本体7aの外径よりも大きく、且つ、内筒7の小径フランジ部7cの外径よりも小さい。外摺動部材8の厚肉部8aの前端及び後端には、外摺動部材8の薄肉部8bの内面に連続的に接続する斜面であるテーパ面8cが、環状に形成されている。外摺動部材8は、例えばステンレス鋼等の金属材料から形成されることが好ましいが、樹脂材料や、金属粉を混合させた樹脂材料から形成しても良い。
図8は、図1の筆記具1の内摺動部材9の斜視図であり、図9は、図8の内摺動部材9の縦断面図である。内摺動部材9は、円筒部9aと錘部9bとを有する全体として円筒状の部材である。すなわち、内摺動部材9の後端部分は、中実に形成され、錘部9bを構成し、錘部9bより前方の部分は、円筒状の円筒部9aである。内摺動部材9の外径は、内筒7の小径部7eの内径よりも大きく、内筒7のその他の部分の内径よりも小さい。円筒部9aと錘部9bとの境界近傍の錘部9bの外周面には、環状の凹部9cが形成されている。内摺動部材9は、例えば比重のあるステンレス鋼等の金属材料から形成されることが好ましいが、樹脂材料や、金属粉を混合させた樹脂材料、エラストマー等のゴム弾性材料から形成しても良い。
図10は、図1の筆記具1の解除部材11の斜視図であり、図11は、図10の解除部材11の縦断面図である。解除部材11は、円筒状の解除部材本体11aと、フランジ部11bとを有している。フランジ部11bは、解除部材本体11aの前端部に形成され、解除部材本体11aよりも大きな径を有する環状の突起である。フランジ部11bの外径は、後軸5の内径よりも小さい。解除部材本体11aの内面には、その他の部分の内径よりも小さい径の内面を有する小径部11cが形成されている。解除部材本体11aの小径部11cの内径は、内筒7の内筒本体7aの外径よりも大きく、且つ、内筒7の小径フランジ部7cの外径よりも小さい。解除部材本体11aの小径部11c以外のその他の部分の内径は、内筒7の小径フランジ部7cの外径よりも大きい。解除部材本体11aの小径部11cの前端及び後端には、解除部材本体11aのその他の部分の内面に連続的に接続する斜面であるテーパ面11dが、環状に形成されている。解除部材11は、例えばステンレス鋼等の金属材料から形成されることが好ましいが、樹脂材料や、金属粉を混合させた樹脂材料から形成しても良い。
ボール10は、内筒7の貫通孔7dに収容可能な大きさの球形に形成され、例えばステンレス鋼等の金属材料から形成されることが好ましいが、樹脂材料や、金属粉を混合させた樹脂材料から形成しても良い。
図2又は図3を参照すると、内筒7の後方から、内筒7の内筒本体7aの外側に対して、コイルスプリング13、解除部材11、ボール10及び外摺動部材8の順に、取り付けられる。また、内筒7の後方から、内筒7の内側に対して、内摺動部材9が取り付けられる。この状態で、出没機構を、後軸5内に前方から挿入すると、内筒7の後端面が後軸5の後壁部5aに当接すると共に内筒7の大径フランジ部7bと後軸5の内面とが圧入によって固定される。ボール10は、内筒7の貫通孔7d内に収容された状態で、外摺動部材8と内摺動部材9との間に常に配置されている。
従って、後軸5の内周面と内筒7の外周面との間に、解除部材11、ボール10及び外摺動部材8が摺動可能に配置され、内筒7内に、内摺動部材9が摺動可能に配置される。解除部材11の摺動は、コイルスプリング13の弾発力によって前方への摺動が規制され、外摺動部材8の前端面によって後方への摺動が規制される。コイルスプリング13の前端は、内筒7の大径フランジ部7bの後端面によって支持される。外摺動部材8の摺動は、解除部材11の後端面によって前方への摺動が規制され、後軸5の段部5cによって後方への摺動が規制される。内摺動部材9の摺動は、内筒7の小径部7eの後端面によって前方への移動が規制され、後軸5の後壁部5aによって後方への摺動が規制される。
リフィル6は、円筒状のガイド管12内に摺動可能に挿入される。ガイド管12の後端部は、内筒7の前端部に対して圧入によって取り付けられる。すなわち、ガイド管12は、ガイド管12の後端面が内筒7の小径部7eの前端面に当接するまで内筒7内に挿入される。また、リフィル6は、先軸4内に配置されたコイルスプリング14によって後方へ付勢されている。
図12は、図1の筆記具1の非筆記状態から筆記状態への遷移を説明する縦断面図である。図12の(a)は、筆記具1の非筆記状態のときの出没機構を示している。内筒7の貫通孔7d内に収容されたボール10は、外摺動部材8の薄肉部8bと内摺動部材9の凹部9c以外の外周面との間に配置されている。この状態で、筆記具1を軸線方向前方に移動させて、この移動を瞬間的に停止させると、筆記具1内部の出没機構は、前方向の慣性力を受ける。筆記具1の移動と瞬間的な停止は、例えば、使用者が筆記する際に筆記具1を把持しながら軸線方向に振る動作によって行われる。
前方向の慣性力を受けた出没機構は、内摺動部材9がリフィル6と共に内筒7内を前方へ向かって摺動する。その結果、ボール10が内摺動部材9の凹部9c内へ嵌合する。次いで、外摺動部材8が、後軸5と内筒7との間を前方へ向かって摺動して、テーパ面8cがボール10に対して当接する。(図12(b))。
次いで、外摺動部材8は慣性力によってそのまま摺動を継続し、テーパ面8cによって案内されることによってボール10を乗り越え、厚肉部8aによってボール10と共に内摺動部材9を係止する(図12(c))。すなわち、外摺動部材8の厚肉部8aとボール10とが径方向に整列してボール10と共に内摺動部材9を係止する。このとき、リフィル6の先端の筆記部6aが先軸4の先端の孔4aから突出した状態で、リフィル6が出没機構によって保持されることから、筆記具1は筆記状態となっている。この状態で筆記を行うと、筆圧によって、内摺動部材9が後方へ摺動する方向、すなわち外摺動部材8の厚肉部8aがボール10と及び内摺動部材9に係止する方向に力が作用するため、筆記状態が解除されることはない。
図13は、図1の筆記具1の筆記状態から非筆記状態への遷移を説明する縦断面図である。図13の(a)は、筆記具1の筆記状態のときの出没機構を示している。すなわち、図13の(a)は、図12(c)と略同一の状態を示している。この状態で、筆記具1を軸線方向前方に移動させて、この移動を瞬間的に停止させると、筆記具1内部の出没機構は、前方向の慣性力を受ける。筆記具1の移動と瞬間的な停止は、例えば、使用者が筆記する際に筆記具1を把持しながら軸線方向に振る動作によって行われる。また、筆記具1を停止状態から軸線方向前方へ移動させる瞬間、すなわち使用者が筆記具1を振る瞬間は、筆記具1内部の出没機構は、後方向の慣性力を受ける。
筆記状態の筆記具1において、外摺動部材8及び内摺動部材9は、ボール10と共に係止しているが、解除部材11は、摺動可能な状態にある。このため、出没機構が前方向の慣性力を受けると、解除部材11が前方へ向かって摺動し、コイルスプリング13によって弾発し、運動方向が後方へ転換する。すなわち、解除部材11は後方へ向かって摺動し、その後端面が、外摺動部材8の前端面に衝突する。それによって、外摺動部材8は後方へ摺動し、厚肉部8aによる内摺動部材9及びボール10との係止が解除される(図13(b))。すなわち、薄肉部8bとボール10とが径方向に整列して、ボール10が内摺動部材9の凹部9cから外れ、出没機構によるリフィル6の保持が解除される。
その結果、先軸4内に配置されたコイルスプリング14の付勢力によって内摺動部材9が後方へ向かって摺動する(図13(c))。従って、リフィル6の先端の筆記部6aは、先軸4の先端の孔4aから軸筒2内に没入し、筆記具1は非筆記状態となる。
なお、出没機構が後方向の慣性力を受けることによって、外摺動部材8が後方へ向かって摺動し、内摺動部材9及びボール10との係止が解除されるようにしても良い。この場合、解除部材11は省略できる。
また、内摺動部材9の錘部9bの重さや位置及びバランスを調整することによって、筆記具1全体の重心を、筆記具1を把持して筆記するのに最も適した位置に調整することができる。
本発明によれば、単に筆記具1を軸線方向に振ることによって、筆記具1の筆記状態と非筆記状態とを簡単に切り替えることができる。また、筆記具1を軸線方向に振ることによってこれらの切り替えを行うことから、筆記具1の軸筒2の外周面を把持した状態から、筆記具を持ち替える必要はなく、それによる煩わしさや筆記具を落とす危険性もない。また、筆記具1を軸線方向に振ることによってこれらの切り替えを行うことから、筆記具1の外面に対してノック棒のような操作部又は操作機構を設ける必要がなく、筆記具の外観を自由にデザインすることができる。
図14は、本発明の第2実施形態による筆記具100の消去状態の正面図であり、図15は、図14の線B−Bにおける縦断面図であり、図16は、図14の筆記具100の非消去状態の縦断面図である。
筆記具100は、両端から同一又は異なる筆記部等を突出可能な、いわゆる両頭式の筆記具である。すなわち、筆記具100は、第1筆記具101と第2筆記具102とからなり、それぞれ中央部分で連結しているか又は一体として形成される。
第1筆記具101は、第1軸筒110を有している。第1軸筒110は、筒状の第1筒状部材111と、第1筒状部材111の一端にその一端が螺合する筒状の第2筒状部材112とを有している。第2筆記具102は、第2軸筒120を有している。第2軸筒120は、筒状の第1筒状部材121と、第1筒状部材121の一端にその一端が螺合する筒状の第2筒状部材122とを有している。
第1筆記具101の第1軸筒110内には、第1実施形態の筆記体であるリフィル6が上述した出没機構と共に収容される。従って、図12及び図13を参照しながら説明した原理によって、第1筆記具101の筆記状態と非筆記状態とを切り替えることができる。
第2筆記具102の第2軸筒120内には、第1実施形態の筆記体であるリフィル6と同一形状の消去部材103が上述した出没機構と共に収容される。従って、図12及び図13を参照しながら説明した原理によって、第2筆記具102消去状態と非消去状態とを切り替えることができる。すなわち、消去部材103の先端の消去部103aが第1筒状部材121から突出した状態を消去状態(図15)と称し、消去部材103の先端の消去部103aが第1筒状部材121内に没入した状態を非消去状態(図16)と称する。
なお、第1筆記具101又は第2筆記具102を単体として着目した場合には、基本的構成、すなわち出没機構は、それぞれ第1実施形態の筆記具1と同一である。すなわち、第1筆記具101は、第1実施形態と同一の筆記部用の出没機構を有し、第2筆記具102は、消去部用の出没機構を有している。従って、各出没機構の各構成の説明は省略する。
図17は、本発明の第3実施形態による筆記具200の筆記状態の正面図であり、図18は、図17の線C−Cにおける縦断面図であり、図19は、図17の筆記具200の非筆記状態の縦断面図である。
筆記具200は、軸筒202と、消去部材203とを有している。軸筒202は、筒状の先軸204と、先軸204の後端部にその前端部が螺合する筒状の後軸205とを有している。先軸204の先端には、軸筒202内に収容された筆記体であるリフィル206の筆記部206aを突出させるための孔204aが形成されている。
本明細書中では、上述した実施形態と同様に、筆記具200の軸線方向において、筆記部206a側を「前」側と規定し、筆記部206aとは反対側を「後」側と規定する。また、「中心軸線」とは、筆記具200の中心軸線を意味する。さらに、筆記具200は、後述する出没機構によって、軸筒202内でリフィル206が前後方向に摺動する。このとき、筆記部206aが軸筒202、すなわち先軸204の孔204aから突出した状態を筆記状態(図18)と称し、筆記部206aが軸筒202内に没入した状態を非筆記状態(図19)と称す。
後軸205の後端部には、後壁部205aが形成されており、その中央には後方へ突出する円柱の突出部205dが形成されている。また、後軸205の後壁部205a近傍の内壁よりも前方の内壁は、より内径が大きく形成され、従って、それらの境界部分には段部205cが形成されている。先軸204及び後軸205は、例えばポリカーボネート樹脂といった樹脂材料から形成される。
消去部材203は、全体として円筒状に形成されている。また、消去部材203の中心軸線に沿って、消去部材203を貫通する貫通孔203cが形成されている。消去部材203の一端は、平坦に形成され、その近傍の貫通孔203cの内壁には、取付段部203dが形成されている。消去部材203は、後軸205の後壁部205aに形成された突出部205dに圧入等によって取り付けられている。その結果、消去部材203の取付段部203dと後軸205の突出部205dとが係止することによって、消去部材203の抜けが防止される。消去部材203の他端には、凸曲面上の消去部203bが形成されている。なお、消去部材203の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、三角柱状、直方体、表面に凹凸や突起を有する複雑な形状としても良い。
軸筒202内、特に後軸205内には、出没機構が配置されている。出没機構は、内筒207と、外摺動部材208と、内摺動部材209と、ボール10と、コイルスプリング213と、重量体215とを有している。
図20は、図17の筆記具200の内筒207の斜視図であり、図21は、図20の内筒207の縦断面図である。内筒207は、円筒状の内筒本体207aと、大径フランジ部207bと、中径フランジ部207fと、小径フランジ部207cとを有している。大径フランジ部207bは、内筒本体207aの前端部に形成され、内筒本体207aよりも大きな径を有する環状の突起である。中径フランジ部207fは、大径フランジ部207bの後方に形成され、大径フランジ部207bの径よりも小さい径を有する環状の突起である。小径フランジ部207cは、中径フランジ部207fの後方に形成され、内筒本体207aの径よりも大きく且つ中径フランジ部207fの径よりも小さい径を有する環状の突起である。内筒本体207aの側面には、ボール10が挿入可能な貫通孔207dが3箇所径方向に対して均等に形成されている。内筒207の前端部の内面には、大径部207gが形成され、その後方には、大径部207gよりも小さい内径を有する小径部207hが形成されている。内筒207は、例えばポリカーボネート樹脂といった樹脂材料等から形成される。
図22は、図17の筆記具200の外摺動部材208の斜視図であり、図23は、図22の外摺動部材208の縦断面図である。外摺動部材208は全体として円筒状の部材であり、外摺動部材208の外径は後軸205の内径よりも小さい。外摺動部材208の後端部の内面には、保持部である厚肉部208aが形成されている。厚肉部208aの前方の部分、すなわち前端部の内面は、前端から後方に向かって内径が小さくなり且つ厚肉部208aの前端に連続的に接続する斜面であるテーパ面208cが、環状に形成されている。テーパ面208cは、解除部である。外摺動部材208の厚肉部208aの内径は、内筒207の内筒本体207aの外径よりも大きく、且つ、内筒207の小径フランジ部207cの外径よりも小さい。外摺動部材208は、例えばステンレス鋼等の金属材料から形成されることが好ましいが、樹脂材料や、金属粉を混合させた樹脂材料から形成しても良い。
図24は、図17の筆記具200の内摺動部材209の斜視図であり、図25は、図24の内摺動部材209の縦断面図である。内摺動部材209は、全体として円筒状の部材である内摺動部材本体209aを有する。内摺動部材本体209aの後端部には、環状の突起である第1フランジ部209bが形成され、内摺動部材本体209aの後端と前端との間には、環状の突起である第2フランジ部209cが形成されている。内摺動部材209の内摺動部材本体209aの外径は、内筒207の小径部207hの内径よりも小さい。第1フランジ部209b及び第2フランジ部209cの外径は、内筒207の小径部207hの内径よりも大きい。第1フランジ部209bと第2フランジ部209cとの間の内摺動部材本体209aの外周面には、環状の凹部209dが形成されている。
内摺動部材本体209aの前端部には、軸線方向に延びる複数のリブ209eが形成されている。リフィル206の後端内に、内摺動部材本体209aの前端が挿入されると、複数のリブ209eによって圧入嵌合がなされる。この状態で、リフィル206の後端面は、第2フランジ部209cの前端面に当接するが、第2フランジ部209cに通気孔209fが形成されていることによって、リフィル206内と軸筒202内とが連通する。内摺動部材209は、例えば比重のあるステンレス鋼等の金属材料から形成されることが好ましいが、樹脂材料や、金属粉を混合させた樹脂材料、エラストマー等のゴム弾性材料から形成しても良い。
図18又は図19を参照すると、内摺動部材209の内摺動部材本体209aの外側に対して、内筒207、コイルスプリング213、外摺動部材208の順に、取り付けられる。また、内摺動部材209の後端部に対して、重量体215が取り付けられる。この状態で、出没機構を、後軸205内に前方から挿入すると、内筒207の大径フランジ部207bと後軸205の内面とが圧入によって固定される。ボール10は、内筒7の貫通孔207d内に収容された状態で、外摺動部材208と内摺動部材209との間に常に配置されている。
従って、後軸205の内周面との内筒207の外周面との間に、ボール10及び外摺動部材208が摺動可能に配置され、内筒207内に、内摺動部材209が摺動可能に配置される。内摺動部材209の摺動は、コイルスプリング213の弾発力によって前方への摺動が規制され、重量体215を介して後軸205の後壁部205aによって後方への摺動が規制される。コイルスプリング213の前端は、内筒207の後端面によって支持され、コイルスプリング213の後端は、第1フランジ部209bの前端面によって支持される。外摺動部材208の摺動は、内筒207の小径フランジ部207cの後端面によって前方への摺動が規制され、後軸205の段部205cによって後方への摺動が規制される。
筆記状態の筆記具200において、外摺動部材208及び内摺動部材209は、ボール10と共に係止している。出没機構が後方向の慣性力を受けると、外摺動部材208は後方へ向かって摺動し、その後端面が、後軸5の段部5cに衝突する。外摺動部材208の厚肉部208aによる内摺動部材209及びボール10との係止が解除される。すなわち、外摺動部材208のテーパ面208cとボール10とが径方向に整列して、ボール10が内摺動部材209の凹部209dから外れ、出没機構によるリフィル206の保持が解除される。
その結果、内摺動部材209の外径に配置されたコイルスプリング213の付勢力によって、リフィル206と圧入嵌合により一体となった内摺動部材209が後方へ向かって摺動する。従って、リフィル206の先端の筆記部206aは、先軸204の先端の孔204aから軸筒202内に没入し、筆記具200は非筆記状態となる。
本発明の第2実施形態による筆記具100及び第3実施形態による筆記具200によれば、上述した第1実施形態の筆記部1と同様の効果を奏する。また、特に、第2実施形態による筆記具100を振ることによって、第1筆記具101の筆記状態と非筆記状態とを切り替えると同時に、第2筆記具102消去状態と非消去状態と切り替えることができる。また、振り方を変化させたり、各部材の重量や重心等を調整したりすることによって、第1筆記具101及び第2筆記具102の出没機構を独立的に操作できるようにしても良い。