[0005] 自由電子レーザが出力する放射のパワーを制御することが望ましい場合がある。リソグラフィ装置が受光する自由電子レーザ発生放射パワーを制御することが望ましい場合がある。
[0006] 本発明の目的は、従来技術に伴う少なくとも1つの問題を防止又は軽減することである。
[0007] 本発明の一態様によれば、リソグラフィ基板にパターンを付与する方法が提供される。この方法は、自由電子レーザを用いてEUV放射を発生させることと、EUV放射をリソグラフィ基板上に投影するリソグラフィ装置にEUV放射を送出することと、を備える。この方法は、自由電子レーザを監視しそれに応じて自由電子レーザの動作を調整するフィードバックベースの制御ループを用いることによって、リソグラフィ基板に送出されるEUV放射のパワーの変動を低減させることを更に備える。
[0008] このようにフィードバックベースの制御ループを用いてEUVパワー変動を低減すると、リソグラフィ基板に送出されるEUV放射線量の均一性(consistency)を向上させるので有利である。これによってリソグラフィ基板のいっそう均一な露光が行われる。
[0009] フィードバックベースの制御ループは、自由電子レーザによって出力されるEUV放射のパワーを監視することができる。これに加えて又はこの代わりに、フィードバックベースの制御ループは、自由電子レーザにおける電子の電流を監視することができる。これに加えて又はこの代わりに、フィードバックベースの制御ループは、自由電子レーザによって用いられる電子を発生させるのに用いられるレーザのパワーを監視することができる。これらは、自由電子レーザによって出力されるEUV放射のパワーに相関したパラメータの例である。他のパラメータを用いてもよい。
[0010] フィードバックベースの制御ループは10kHz以上の周波数で動作することができる。基板上のターゲット位置は、約1ms(これは1kHzに相当する)EUV放射を受光することができる。10kHz以上の周波数を有するフィードバックを用いてEUVパワー変動を低減させると、変動が充分に迅速に平滑化されるためターゲット位置が所望のEUV放射線量(例えば所望の公差内)を受光するので有利である。すなわち、1msの露光時間期間中にEUV放射パワー変動が平滑化されるので、ターゲット位置によって受光される全EUV放射線量は所望の線量である。例えばフィードバックループが1kHz以下で動作した場合には、基板のターゲット位置を照明する際の変動を補償するためのEUV放射パワー調整は、ターゲット位置が受光するEUV放射線量を補償するのに充分に迅速には行われない。
[0011] この方法は、リソグラフィ装置に送出されるEUV放射のパワーを更に制御するため、自由電子レーザによって出力されたEUV放射に可変の減衰を適用することを更に備えることができる。
[0012] リソグラフィ装置は、EUV放射を受光する複数のリソグラフィ装置のうちの1つとすることができる。
[0013] EUV放射の可変の減衰は、リソグラフィ装置の各々について独立して制御可能とすることができる。
[0014] 可変の減衰は第2のフィードバックベースの制御ループによって制御可能である。
[0015] 第2のフィードバックベースの制御ループは1kHz以下の周波数で動作可能である。
[0016] 第2のフィードバックベースの制御ループは、リソグラフィ装置に位置付けられたセンサによって測定されたようなEUV放射強度を用い、このセンサはリソグラフィ装置の投影システムよりも前段に位置付けることができる。
[0017] これに加えて又はこの代わりに、第2のフィードバックベースの制御ループは、リソグラフィ装置に位置付けられたセンサによって測定されたようなEUV放射強度を用い、このセンサはリソグラフィ装置の投影システムよりも後段に位置付けることができる。
[0018] 本発明の一態様によれば、自由電子レーザによる発生の後、リソグラフィ基板上のターゲット位置にリソグラフィ装置によって送出されるEUV放射の線量を制御する方法が提供される。この方法は、第1及び第2のフィードバックベースの制御ループを用いてターゲット位置に入射するEUV放射の強度を調整することを備え、第1のフィードバックベースの制御ループが第2のフィードバックベースの制御ループよりも高速の応答を有する。
[0019] 第2のフィードバックベースの制御ループはリソグラフィ装置に関連付けることができる。
[0020] 第1のフィードバックベースの制御ループは自由電子レーザに関連付けることができる。
[0021] リソグラフィ装置によって送出されるEUV放射の強度は、基板支持テーブルに位置付けられたセンサを用いて監視することができる。この強度はリソグラフィ装置によるターゲット位置の露光の間に測定され得る。
[0022] 本発明の一態様によれば、自由電子レーザを用いてEUVの発生を制御する方法が提供される。この方法は、自由電子レーザによって出力されるEUV放射のパワーを監視することと、フィードバックベースの制御ループを用いてEUV放射のパワーを制御することと、を備え、EUV放射のパワーの調整はEUV放射の実質的に一定な波長を維持しながら実行される。
[0023] EUV放射は、リソグラフィ基板にパターンを付与するために複数のリソグラフィ装置によって用いることができる。
[0024] 本発明の一態様によれば、EUV放射を発生させるように構成された自由電子レーザと、EUV放射をリソグラフィ基板上に投影するように構成されたリソグラフィ装置と、を備えるリソグラフィシステムが提供される。この装置は、自由電子レーザを監視するように構成されたセンサと、センサからの出力を受信しそれに応じて自由電子レーザの動作を調整するように構成されたコントローラと、を備えるフィードバックベースの制御ループを更に備える。
[0025] フィードバックベースの制御ループは、リソグラフィ基板に送出されるEUV放射のパワーの変動を低減させることができる利点を有し得る。
[0026] フィードバックベースの制御ループは、自由電子レーザによって出力されるEUV放射のパワーを監視するように構成することができる。これに加えて又はこの代わりに、フィードバックベースの制御ループは、自由電子レーザにおける電子の電流を監視するように構成可能である。これに加えて又はこの代わりに、フィードバックベースの制御ループは、自由電子レーザによって用いられる電子を発生させるのに用いられるレーザのパワーを監視するように構成可能である。これらは、自由電子レーザによって出力されるEUV放射のパワーに相関したパラメータの例である。他のパラメータを用いてもよい。
[0027] フィードバックベースの制御ループは、10kHz以上の周波数で動作するように構成することができる。
[0028] この装置は、リソグラフィ装置に送出されるEUV放射のパワーを更に制御するため、自由電子レーザによって出力されたEUV放射に可変の減衰を適用するように構成された減衰器を更に備えることができる。
[0029] リソグラフィ装置は、EUV放射を受光する複数のリソグラフィ装置のうちの1つとすることができる。
[0030] 減衰器は、リソグラフィ装置の各々について独立して制御可能とすることができる。
[0031] 可変の減衰は第2のフィードバックベースの制御ループによって制御可能である。
[0032] 第2のフィードバックベースの制御ループは1kHz以下の周波数で動作可能である。
[0033] 第2のフィードバックベースの制御ループは、リソグラフィ装置においてEUV放射強度を測定するように構成されたセンサを備えることができる。
[0034] センサはリソグラフィ装置の投影システムよりも前段に位置付けることができる。
[0035] センサはリソグラフィ装置の投影システムよりも後段に位置付けることができる。
[0036] 本発明の一態様によれば、自由電子レーザによる発生の後、リソグラフィ基板上のターゲット位置にリソグラフィ装置によって送出されるEUV放射の線量を制御するための装置が提供される。この装置は、ターゲット位置に入射するEUV放射の強度を調整するように動作可能な第1及び第2のフィードバックベースの制御ループを備え、第1のフィードバックベースの制御ループが第2のフィードバックベースの制御ループよりも高速の応答を有する。
[0037] 第2のフィードバックベースの制御ループはリソグラフィ装置に関連付けることができる。
[0038] 第1のフィードバックベースの制御ループは自由電子レーザに関連付けることができる。
[0039] リソグラフィ装置は基板支持テーブルに位置付けられたセンサを備え、センサは、リソグラフィ装置によって送出されるEUV放射の強度を監視するように構成することができる。この強度はリソグラフィ装置によるターゲット位置の露光の間に測定され得る。
[0040] EUV放射は、リソグラフィ基板にパターンを与えるために複数のリソグラフィ装置によって用いることができる。
[0001] 本発明の一態様によれば、自由電子レーザのための入射器が提供される。この入射器は、フォトカソードと、パルス放射ビームを放出し、パルス放射ビームをフォトカソード上に入射するように送出するように動作可能な放射源であって、これによって入射器から出力される電子バンチのビームをフォトカソードに放出させ、各電子バンチが放射ビームのパルスに対応する、放射源と、放射ビームの少なくとも1つのパルスが入射器から出力される電子ビーム内に関連した電子バンチを実質的に含まないように電子ビームを妨害するように動作可能な制御装置と、を備える。
[0002] このように入射器を制御することに伴う利点は、自由電子レーザから放出される放射ビームのパワーが制御できることである。自由電子レーザビームパワーの制御は、(少なくともいくつかの従来技術の制御方法に比べて)自由電子レーザビームの他の特性に及ぼす影響を抑えながら達成可能である。
[0003] 制御装置は、放射ビームの単一のパルスが入射器から出力される電子ビーム内に関連した電子バンチを実質的に含まないように電子ビームを妨害するように動作可能である。
[0004] 制御装置は、放射ビームの少なくとも1つのパルスがフォトカソードに入射するのを実質的に防止するように動作可能であり、これによってフォトカソードからの電子バンチの放出を妨害し得る。
[0005] 制御装置は、放射ビームの経路において、放射ビームがフォトカソードに入射するよりも前段に配置されたポッケルセルであって、このポッケルセルが偏光状態を変化させずに放射ビームを透過させるように構成された第1の動作モードと、ポッケルセルが放射ビームを透過させると共にポッケルセルの偏光状態を回転させるように構成された第2の動作モードと、の間でスイッチング可能である、ポッケルセルと、ポッケルセルとフォトカソードとの間で放射ビームの経路に配置された偏光子であって、所与の偏光状態を有する放射のみを透過させるように構成された偏光子と、を備えることができる。
[0006] ポッケルセルは、電気光学結晶、1対の電極、及び電圧源を備え、電圧源が電極間に電位差を発生させるように動作可能であり、これによってポッケルセルを第1の動作モードから第2の動作モードにスイッチングすることができる。
[0007] ポッケルセルは複数の対の電極及び複数の電圧源を備え、複数の電圧源の各々が複数の対の電極の1つ間に電位差を発生させるように動作可能であり、これによってポッケルセルを第1の動作モードから第2の動作モードにスイッチングすることができる。
[0008] ポッケルセルは、第2の動作モードにある場合に放射ビームの偏光状態を約90度回転させるように構成可能である。
[0009] 制御装置は、放射ビームの経路において、放射ビームがフォトカソードに入射するよりも前段に配置された複数のポッケルセルを備えることができ、複数のポッケルセルの各々は、ポッケルセルが偏光状態を変化させずに放射ビームを透過させるように構成された第1の動作モードと、ポッケルセルが放射ビームを透過させると共にポッケルセルの偏光状態を90度未満回転させるように構成された第2の動作モードと、の間でスイッチング可能であり、複数のポッケルセルの各々は、第2の動作モードにある場合に複数のポッケルセルが約90度の放射ビームの偏光状態の組み合わせた回転を適用するように構成されている。
[0010] 偏光子は、放射ビームがポッケルセルに入射する前の放射ビームの偏光状態を有する放射のみを透過させるように構成可能である。
[0011] 入射器は、第2の動作モードにある場合に放射ビームの偏光状態を約90度回転させるように構成された第2のポッケルセルを更に備えることができる。
[0012] 偏光子は、放射ビームがポッケルセルに入射する前の放射ビームの偏光状態に直交した偏光状態を有する放射のみを透過させるように構成可能である。
[0013] 第1のポッケルセルは、第1の時間期間で第1の動作モードと第2の動作モードとで周期的に交替するように構成することができ、第2のポッケルセルは、第1の時間期間で、かつ第1のポッケルセルの周期的な交替に対して位相差を有して、第1の動作モードと第2の動作モードとで周期的に交替するように構成されている。
[0014] 制御装置は、所与の時間期間に妨害される電子バンチ数を調整するため位相差を調整するように構成することができる。
[0015] 入射器は、放射ビームの経路において、放射ビームがフォトカソードに入射するよりも前段かつ放射ビームが偏光子を通過するよりも後段に配置された周波数倍増結晶を更に備えることができる。
[0016] 制御装置は、電子ビームから少なくとも1つの電子バンチを偏向させるように動作可能であり、これによって入射器から出力される電子ビームを妨害する。
[0017] 制御装置は、電子ビームの軌道の各側に配置された1対の伝導性板と、伝導性板間に電位差を発生させるように動作可能な電圧源であって、これによって、電子ビームから電子バンチを偏向させるのに充分な磁場を伝導性板間に発生させる、電圧源と、を備えることができる。
[0018] 入射器は、電子ビームから偏向された電子バンチを受容するように配置されたビームダンプを更に備えることができる。
[0019] 本発明の一態様によれば、自由電子レーザのための入射器が提供される。この入射器は、フォトカソードと、パルス放射ビームを放出し、パルス放射ビームをフォトカソード上に入射するように送出するように動作可能な放射源であって、これによって入射器から出力される電子バンチのビームをフォトカソードに放出させる、放射源と、電子ビームの少なくとも1つのバンチを脱焦させて電子ビーム内の少なくとも1つの脱焦した電子バンチを入射器から出力させるように動作可能な制御装置と、を備える。
[0020] 制御装置は、電子ビームの軌道の各側に配置された1対の伝導性板と、伝導性板を流れる電流を発生させるように動作可能な電圧源であって、これによって、電子ビーム内の電子バンチを脱焦させるのに充分な磁場を伝導性板間に発生させる、電圧源と、を備えることができる。
[0021] 本発明の一態様によれば、自由電子レーザが提供される。この入射器は、本発明の前出の態様による入射器と、入射器から出力される電子ビームを加速させるように動作可能な粒子加速器と、自由電子レーザ放射ビームの放出を誘導するように、加速された電子ビームを周期経路に沿って導くように動作可能なアンジュレータ(undulator)と、を備え、自由電子レーザ放射ビームが一連のパルスを含み、各パルスが電子ビームの電子バンチに対応する、アンジュレータと、を備える。
[0022] 入射器の制御装置は入射器から出力される電子ビームを妨害するように動作可能であり、これによって自由電子レーザ放射ビームのパルスを妨害する。
[0023] 自由電子レーザは、所与の時間期間に発生する自由電子レーザ放射ビームのパルスの数を制御するように、入射器の制御装置を制御するように動作可能なコントローラを更に備えることができる。
[0024] アンジュレータは、EUV自由電子レーザ放射ビームの放出を誘導するように動作可能である。
[0025] 自由電子レーザは、放射ビームの強度を監視すると共にコントローラに信号を出力するように構成された検出器を更に備え、これによってフィードバックループを提供することができる。
[0026] 本発明の一態様によれば、本発明の第3の態様による自由電子レーザを備える放射源を備え、更にリソグラフィ装置を備えるリソグラフィシステムが提供される。
[0027] リソグラフィ装置は、放射源の自由電子レーザから出力される自由電子レーザ放射ビームの少なくとも一部を含む放射ビームを受光するように配置することができる。リソグラフィ装置は、放射源から受光される放射ビームを調節するように構成された照明システムと、パターニングデバイスを支持するように構築された支持構造であって、パターニングデバイスが放射ビームの断面にパターンを与えてパターン付与された放射ビームを形成することができる、支持構造と、基板を保持するように構築された基板テーブルと、パターン付与された放射ビームを基板のターゲット位置上に投影するように構成された投影システムと、を備えることができる。
[0028] 入射器の制御装置は入射器から出力される電子ビームを妨害するように動作可能であり、これによって自由電子レーザ放射ビームのパルスを妨害し、これによってリソグラフィ装置により受光される放射ビームのパルスを妨害し、これによって基板のターゲット位置上に投影されるパターン付与された放射ビームのパルスを妨害することができる。
[0029] リソグラフィシステムはコントローラを更に備えることができ、このコントローラは、露光時間期間に基板のターゲット位置により受光されるパターン付与された放射ビームのパルスの数を制御するように、入射器の制御装置を制御するように動作可能であり、これによって露光時間期間に基板のターゲット位置により受光される放射線量を制御する。
[0030] 本発明の一態様によれば、自由電子レーザによって放出される放射ビームのパワーを制御する方法が提供される。この方法は、パルス放射ビームを入射器のフォトカソード上に送出し、これによって入射器から出力される電子バンチのビームをフォトカソードに放出させ、各電子バンチが放射ビームのパルスに対応する、ことと、放射ビームの少なくとも1つのパルスが入射器から出力される電子ビーム内に関連した電子バンチを実質的に含まないように電子ビームを妨害することと、粒子加速器を用いて電子ビームを加速させることと、自由電子レーザ放射ビームの放出を誘導するように、加速された電子ビームを周期経路に沿って導くように動作可能なアンジュレータを用いることと、を備え、自由電子レーザのパワーは電子ビームの妨害によって低減される。
[0031] 放射ビームの少なくとも1つのパルスがフォトカソードに入射するのを防止し、これによってフォトカソードからの電子バンチの放出を妨害することができる。
[0032] 少なくとも1つの電子バンチを電子ビームから偏向させ、これによって入射器から出力される電子ビームを妨害することができる。
[0033] 本発明の一態様によれば、自由電子レーザによって放出される放射ビームのパワーを制御する方法が提供される。この方法は、パルス放射ビームを入射器のフォトカソード上に送出し、これによって入射器から出力される電子バンチのビームをフォトカソードに放出させ、各電子バンチが放射ビームのパルスに対応する、ことと、入射器から出力される電子ビームの少なくとも1つのパルスを脱焦させることと、粒子加速器を用いて電子ビームを加速させることと、自由電子レーザ放射ビームの放出を誘導するように、加速された電子ビームを周期経路に沿って導くように動作可能なアンジュレータを用いることと、を備え、自由電子レーザのパワーは少なくとも1つの脱焦させた電子ビームパルスによって低減される。
[0034] 本発明の態様は、入射器によって自由電子レーザの加速器に与えられる電子ビーム電流の制御可能な妨害を行うことで、リソグラフィ装置のウェーハステージに送出されるEUV放射の線量を制御することができる。電流妨害は周期的であり得る。電流妨害はフィードバック及び/又はフィードフォワードシステムにより制御可能である。電流妨害によって、妨害の期間中は実質的にゼロである電流が与えられる。あるいは、電流妨害によって公称電流の約10%未満の電流が与えられる。
[0035] 一態様によれば、自由電子レーザを備える放射システムが提供される。自由電子レーザは、相対論的電子を生成するように動作可能な電子源と、複数の磁石を備えるアンジュレータであって、周期磁場を生成するように動作可能であり、相対論的電子がアンジュレータにおける放射と相互作用することでコヒーレントな放射の放出が誘導されるように、中心軸を中心として周期経路に沿って相対論的電子を導くように配置された、アンジュレータと、を備える。アンジュレータには、受信した信号に応じて放射の放射照度及び/又は偏光を変えるようにアンジュレータの1つ以上のパラメータを変化させるように動作可能な調整機構が設けられている。1つ以上のパラメータは自由電子レーザのパラメータとすることができる。
[0036] 一実施形態において、そのような放射システムを含むリソグラフィシステムを提供することができる。そのようなリソグラフィシステムは1つ以上のリソグラフィ装置を含み得る。
[0037] 別の態様によれば、自由電子レーザが提供される。この自由電子レーザは、相対論的電子を生成するように動作可能な電子源と、複数の磁石を備えるアンジュレータであって、周期磁場を生成するように動作可能であり、相対論的電子がアンジュレータにおける放射と相互作用することでコヒーレントな放射の放出が誘導されるように、中心軸を中心として周期経路に沿って相対論的電子を導くように配置された、アンジュレータと、を備える。アンジュレータには、受信した信号に応じて放射の放射照度及び/又は偏光を変えるようにアンジュレータの1つ以上のパラメータを変化させるように動作可能な調整機構が設けられている。
[0038] 自由電子レーザは、放出される放射の放射照度を確定すると共にこれを示す信号を調整機構に送信するように動作可能な放射センサを更に備えることができる。
[0039] アンジュレータはテーパ化する(taper)ことができる。
[0040] 調整機構は、アンジュレータの中心軸上の又は中心軸の近傍の磁場の強度を変えるように動作可能である。中心軸上の又は中心軸の近傍の磁場の強度は、磁石を中心軸に近付く方向へ又は中心軸から遠ざかる方向へ動かすことによって変えることができる。一実施形態では、放射の偏光が不変のままであるように磁石を中心軸に対して動かす。これに加えて又はこの代わりに、中心軸上の又は中心軸の近傍の磁場の強度は、磁石により生成される磁場を変えることによって変えることができる。
[0041] 調整機構はアンジュレータの周期を変えるように動作可能である。
[0042] 周期経路はらせん部分を含み得る。
[0043] 自由電子レーザは、電子源とアンジュレータとの間に配置された第1の偏向磁石を更に備えることができ、これは、電子がアンジュレータにより周期経路に沿って導かれアンジュレータ内の放射と相互作用してコヒーレントな放射の放出が誘導されるオフ状態、又は、電子がアンジュレータ内の異なる経路に沿って導かれアンジュレータ内の放射から切り離されてコヒーレントな放射の放出が実質的に誘導されないオン状態であり得る。
[0044] 自由電子レーザは、アンジュレータの下流に配置された第2の偏向磁石を更に備えることができ、これは第1の偏向磁石の作用を補償するように配置されているので、第1の偏向磁石がオン状態である場合に第2の偏向磁石から出射する電子が、第1の偏向磁石がオフ状態である場合に第2の偏向磁石から出射する電子と実質的に同じ軌道をとる。
[0045] 自由電子レーザは、電子を減速させるための減速機構と、電子を吸収するためのビームダンプと、を更に備えることができ、減速機構は、アンジュレータから出射した電子がビームダンプに入射する前にそのエネルギを低減させるように動作可能である。
[0046] 電子源は線形加速器を備えることができ、減速機構は線形加速器を用いてアンジュレータから出射した電子を減速させることができる。
[0047] 減速機構の少なくとも一部は電子源とは別個とすることができる。
[0048] 減速機構はシンクロトロン又はサイクロトロン等の能動減速機構を備え得る。
[0049] 減速機構は、電子が通過する粗い内面を有する伝導性導管等の受動減速機構を備え得る。
[0050] アンジュレータは、パターニングデバイスに入射する放射が所望の偏光を有するように、自由電子レーザとパターニングデバイスとの間に配置されたミラーに応じて放出される放射の偏光が選択されるように構成可能である。
[0051] 調整機構は、放射を少なくとも2つの成分に分割し、少なくとも2つの成分を異なる光路に沿って導き、少なくとも2つの成分を結合することによって放射の偏光を変えるように動作可能である。光路の1つは複数の反射を含んでその光路を進む成分の偏光ベクトルが回転するようになっている。これに加えて又はこの代わりに、アンジュレータがヘリカルアンジュレータを含む実施形態では、調整機構は、アンジュレータの少なくとも一部の周期磁石構造を他の部分に対して調整することによって放射の偏光を変えるように動作可能である。これに加えて又はこの代わりに、アンジュレータが平面アンジュレータを含む実施形態では、調整機構は、第1及び第2の直線偏光成分の比が変わるようにアンジュレータの少なくとも一部のテーパ化を変えることによって放射の偏光を変えるように動作可能である。これに加えて又はこの代わりに、調整機構は、所望の偏光状態を増幅するようにアンジュレータ内に平面アンジュレータ部の少なくとも一部を導入することによって放射の偏光を変えるように動作可能である。
[0052] 以下の態様のいずれかに、上述の(又は本明細書の他の箇所に述べる)特徴の1つ以上を含ませることができる。
[0053] 一態様によれば、本明細書に記載するような自由電子レーザと1つ以上のリソグラフィ装置とを備えるリソグラフィシステムが提供される。
[0054] 一態様によれば、放射を生成する方法が提供される。この方法は、相対論的電子のビームを生成することと、アンジュレータを用いて、相対論的電子のビームが放射ビームを放出するように、周期的に変化する経路に沿って相対論的電子のビームを導くことと、受信した信号に応じて、周期磁場及び放射ビームの放射照度を変えるようにアンジュレータの1つ以上のパラメータを変化させることと、を備える。
[0055] 一態様によれば、自由電子レーザが提供される。この自由電子レーザは、相対論的電子を生成するように動作可能な電子源と、複数の磁石を備え、相対論的電子が通過する周期磁場を生成するように動作可能なアンジュレータと、電子源とアンジュレータとの間に配置された第1の偏向磁石と、を備える。第1の偏向磁石は、電子がアンジュレータにより周期経路に沿って導かれアンジュレータ内の放射と相互作用してコヒーレントな放射の放出が誘導されるオフ状態、又は、電子がアンジュレータ内の異なる経路に沿って導かれアンジュレータ内の放射から切り離されてコヒーレントな放射の放出が実質的に誘導されないオン状態であり得る。
[0056] 一態様によれば、自由電子レーザが提供される。この自由電子レーザは、相対論的電子を生成するように動作可能な電子源と、複数の磁石を備えるアンジュレータであって、周期磁場を生成するように動作可能であり、相対論的電子が放射を放出するようにこれらを周期経路に沿って導くように配置された、アンジュレータと、電子がアンジュレータを出射したらこれらを吸収するように動作可能なビームダンプと、アンジュレータとビームダンプとの間に配置された減速機構と、備える。減速機構は、電子がビームダンプによって吸収される前にそのエネルギを低減させるように動作可能である。減速機構は電子源とは別個である。
[0057] 一態様によれば、リソグラフィシステムが提供される。このリソグラフィシステムは、第1の方向に放射を放出するように動作可能な自由電子レーザと、放射を受光してこれをパターニングデバイス上へと第2の方向に投影するように動作可能なリソグラフィ装置と、自由電子レーザとパターニングデバイスとの間に配置され、放射ビームを第1の方向から第2の方向へ導くように動作可能な1つ以上のミラーと、を備える。自由電子レーザは、第2の放射ビームの偏光がパターニングデバイスを照射するのに適切であるように、1つ以上のミラーに応じて第1の放射ビームの偏光が選択されるように構成されている。
[0058] 一態様によれば、EUV放射ビームの偏光を変換するための装置が提供される。この装置は、2つの光路と、EUV放射ビームを受光し、これを2つの成分に分割し、各成分を異なる各経路に沿って導くように動作可能なビームスプリッタと、を備える。2つの光路は収束し、光路の1つは複数のミラーを含んでその光路を進む成分の偏光ベクトルが回転するようになっている。
[0059] 本発明の一態様によれば、自由電子レーザが提供される。この自由電子レーザは、複数の相対論的電子バンチを含む電子ビームを生成するための電子源と、電子ビームを受け取ってこれを周期経路に沿って導くように配置されたアンジュレータであって、電子ビームがアンジュレータ内の放射と相互作用することで放射の放出が誘導されると共に放射ビームを供給するようになっている、アンジュレータと、調整可能圧縮器であって、(i)電子ビームがアンジュレータに入射する前の伝搬方向に沿った複数の電子バンチの1つ以上の電荷密度分布、又は(ii)複数の電子バンチの1つ以上がアンジュレータに入射する前の平均エネルギ、のうち少なくとも1つを制御するように動作可能な調整可能圧縮器と、
を備える。
[0060] 複数の電子バンチの伝搬方向に沿った電荷密度分布を変えると、アンジュレータの利得が変わる。すなわちこれは、アンジュレータによって出力される放射ビームのパワーに影響を及ぼす。アンジュレータの利得は、アンジュレータに入力されるパワー量の関数としての、アンジュレータによって出力されるパワー量として定義することができる。アンジュレータの利得は、利得長(アンジュレータ内の放射パワーがe倍増大するために電子バンチが移動しなければならないアンジュレータ内の距離)、アンジュレータの長さ、及び電子バンチとアンジュレータ内の放射との結合量に依存し得る。更に、複数の電子バンチの平均エネルギを変えると、放射ビームの波長が変わる(平均エネルギが増大すると放射ビーム波長が低減する)。これは結果として、アンジュレータにより出力される放射ビームの波長に影響を及ぼす。従って有利な点として、本発明の第1の態様は、出力パワー及び/又は波長を能動的に制御することができる自由電子レーザを提供する。
[0061] 調整可能圧縮器は、(a)複数の電子バンチの1つ以上のチャープ、又は(b)複数の電子バンチの1つ以上における電子の平均エネルギ、のうち少なくとも1つを制御するように配置された調整機構を備えることができる。
[0062] 調整機構は共振空洞を備えることができる。
[0063] 共振空洞は、電子ビームに対する共振空洞の位相が実質的に一定のままであるように配置することができ、位相は、共振空洞を通過する各バンチの中心の電子について空洞内の電場が実質的にゼロであるようになっている。有利な点として、このような配置は電子バンチの電荷分布のみを調整し電子バンチの平均エネルギを調整しないので、共振空洞を駆動するのに必要な無線周波数電力は平均ビーム電流に依存しない。従って、必要なパワーは低く、低効率の共振空洞を用いてチャープを変えることができる。
[0064] 有利な点として、共振空洞は、電子ビームに対する共振空洞の位相が実質的に一定のままであるように配置することができ、位相は、共振空洞を通過する各バンチの中心の電子について空洞内の電場が実質的に最大値又は最小値であるようになっている。
[0065] 共振空洞は常伝導共振空洞とすることができる。
[0066] 例えば銅空洞等の常伝導共振空洞は、例えば電子ビームの加速に用いられ得る超伝導空洞に比べ、比較的低いQ値を有する。共振器の帯域幅はそのQ値に反比例するので、このような常伝導空洞の無線周波数電力は高帯域幅で調整可能である。有利な点としてこれは、超伝導無線周波数空洞に比べ、空洞内の加速フィールド勾配の著しく高速な変化を可能とする。これは、自由電子レーザの出力パワー及び/又は波長を比較的迅速に調整可能とするので有益である。
[0067] 調整可能圧縮器は、電子ビームの伝搬方向に沿って複数の電子バンチの1つ以上を圧縮するように配置された磁気圧縮器を更に備えることができ、圧縮は、電子バンチが磁気圧縮器に入射する際のチャープに依存する。磁気圧縮器は調整機構の下流に配置することができる。
[0068] 電子源は、バンチ化電子ビームを生成するための機構と、バンチ化電子ビームを加速させるように動作可能な線形加速器と、を備えることができ、線形加速器は複数の無線周波数空洞を備え、調整可能圧縮器は線形加速器とは別個とすることができる。
[0069] 電子レーザは、コントローラと、放射ビームのパワーを示すか又は放射ビームによってターゲット位置に送出される放射線量を示す値を確定し、この値を示す信号をコントローラに出力するためのセンサと、を更に備えることができる。コントローラは、センサによって出力される信号に応じて、複数の電子バンチの1つ以上の電荷密度分布及び/又は複数の電子バンチの1つ以上の電子の平均エネルギを変化させるように動作可能である。
[0070] 本発明の一態様によれば、リソグラフィシステムが提供される。このリソグラフィシステムは、本発明の第1の態様による自由電子レーザと、各々が自由電子レーザによって生成される少なくとも1つの放射ビームの少なくとも一部を受光するように配置された少なくとも1つのリソグラフィ装置と、を備える。
[0071] 本発明の一態様によれば、装置が提供される。この装置は、放射を生成するための放射源であって、放射の波長を制御するように動作可能な調整機構を備える、放射源と、放射を受け取るためのターゲット位置と、放射を放射源からターゲット位置まで導くように配置された光学システムであって、波長に依存した透過率又は反射率を有する、光学システムと、コントローラと、放射のパワーを示すか又は放射によってターゲット位置に送出される放射線量を示す値を確定し、これを示す信号をコントローラに出力するためのセンサと、を備える。コントローラは、センサによって出力される信号に応じて、調整機構を用いて放射の波長を変化させるように動作可能である。
[0072] 有利な点として、そのような構成は、放射源によって供給される放射線量を制御するためのフィードバックベースの制御ループを提供する。
[0073] 放射源は自由電子レーザを備えることができる。自由電子レーザは、複数の相対論的電子バンチを含む電子ビームを生成するための電子源と、電子ビームを受け取ってこれを周期経路に沿って導くように配置されたアンジュレータであって、電子ビームがアンジュレータ内の放射と相互作用することで放射の放出が誘導されると共に放射ビームを供給するようになっている、アンジュレータと、を備えることができる。調整機構は、複数の電子バンチの1つ以上がアンジュレータに入射する前の電子の平均エネルギを変化させるように動作可能である。
[0074] 電子バンチの平均エネルギを変えると、放射ビームの波長が変わる(平均エネルギが増大すると放射ビーム波長が低減する)。これは結果として、アンジュレータにより出力される放射ビームのパワーに、従って放射源によってターゲット位置に供給される放射線量に影響を及ぼす。更に、光学システムは波長に依存した透過率又は反射率を有するので、放射ビームの波長を変えると、光学システムを介してターゲット位置に送出される放射線量が変わる。従って有利な点として、このような構成は、出力パワー及び波長を能動的に制御することができる自由電子レーザを提供する。放射ビームの波長の変化は、放射源によってターゲット位置に送出される線量に対して、放射ビームのパワーの変化よりも大きな影響を及ぼし得る。
[0075] 調整機構は共振空洞を備えることができる。
[0076] 共振空洞は常伝導共振空洞とすることができる。
[0077] 例えば銅空洞等の常伝導共振空洞は、例えば電子ビームの加速に用いられ得る超伝導空洞に比べ、比較的低いQ値を有する。共振器の帯域幅はそのQ値に反比例するので、このような常伝導空洞の無線周波数電力は高帯域幅で調整可能である。有利な点としてこれは、超伝導無線周波数空洞に比べ、空洞内の加速フィールド勾配の著しく高速な変化を可能とする。これは、自由電子レーザの出力パワー及び/又は波長を比較的迅速に調整可能とするので有益である。
[0078] 共振空洞は、複数の電子バンチの各々の到着に対する共振空洞の位相が実質的に一定のままであるように配置することができ、位相は、共振空洞を通過する複数の電子バンチの各々の中心の電子について空洞内の電場が実質的に最大値又は最小値であるようになっている。
[0079] 電子源は、バンチ化電子ビームを生成するための機構と、バンチ化電子ビームを加速させるように動作可能な線形加速器と、を備えることができ、線形加速器は複数の無線周波数空洞を備え、調整機構は線形加速器とは別個とすることができる。
[0080] 本発明の一態様によれば、自由電子レーザが提供される。この自由電子レーザは、複数の相対論的電子バンチを含む電子ビームを生成するための電子源であって、電子ビームが第1の周波数を有する、電子源と、電子ビームを受け取ってこれを周期経路に沿って導くように配置されたアンジュレータであって、電子ビームがアンジュレータ内の放射と相互作用することで放射の放出が誘導されると共に放射ビームを供給するようになっている、アンジュレータと、電子源とアンジュレータとの間に配置され、複数の電子バンチのチャープ及び/又は複数の電子バンチにおける平均エネルギが時間と共に変化するように第2の周波数で動作可能に配置された調整可能共振空洞と、を備える。
[0081] 第1及び第2の周波数が異なる場合、共振空洞は複数の電子バンチのチャープ及び平均エネルギを連続的に変化させることができる。チャープ及び平均エネルギの変化率は、第1及び第2の周波数の差に依存する。電子バンチにおける電子の平均エネルギを変えると、放射ビームの波長が変わる(平均エネルギが増大すると放射ビーム波長が低減する)。従って本発明の第4の態様は、自由電子レーザによって出力される放射の有効帯域幅を増大させるための機構を提供する。
[0082] 自由電子レーザは、電子ビームの伝搬方向に沿って電子バンチを圧縮するように配置された磁気圧縮器を更に備えることができ、圧縮は、電子バンチが磁気圧縮器に入射する際のチャープに依存する。
[0083] 共振空洞は常伝導共振空洞とすることができる。
[0084] 例えば銅空洞等の常伝導共振空洞は、例えば電子ビームの加速に用いられ得る超伝導空洞に比べ、比較的低いQ値を有する。共振器の帯域幅はそのQ値に反比例するので、このような常伝導空洞の無線周波数電力は高帯域幅で調整可能である。有利な点としてこれは、超伝導無線周波数空洞に比べ、空洞内の加速フィールド勾配の著しく高速な変化を可能とする。これは、自由電子レーザの出力パワー及び帯域幅を比較的迅速に調整可能とするので有益である。
[0085] 電子源は、バンチ化電子ビームを生成するための機構と、バンチ化電子ビームを加速させるように動作可能な線形加速器と、を備えることができ、線形加速器は複数の無線周波数空洞を備え、調整可能圧縮器は線形加速器とは別個とすることができる。
[0086] 自由電子レーザは、コントローラと、放射ビームのパワーを示すか又は放射ビームによってターゲット位置に送出される放射線量を示す値を確定し、これを示す信号をコントローラに出力するためのセンサと、を更に備えることができる。コントローラは、センサによって出力される信号に応じて共振空洞の1つ以上のパラメータを制御するように動作可能である。
[0087] センサによって出力される信号に応じて制御される共振空洞の1つ以上のパラメータは、共振空洞内の電場の振幅を含み得る。
[0088] センサによって出力される信号に応じて制御される共振空洞の1つ以上のパラメータは、共振空洞が動作する第2の周波数を含み得る。これは、共振空洞に電磁放射を供給する無線周波数源の周波数と共振空洞の幾何学的形状の双方を調整することで達成可能である。共振空洞の幾何学的形状を変えるには、例えば1つ以上の圧電ストレッチャ及び/又は圧縮器を用いて、共振空洞の共振周波数を共振空洞に電磁放射を供給する無線周波数源の周波数にマッチングさせればよい。
[0089] 本発明の一態様によれば、リソグラフィシステムが提供される。このリソグラフィシステムは、本発明の第4の態様による自由電子レーザと、各々が自由電子レーザによって生成される少なくとも1つの放射ビームの少なくとも一部を受光するように配置された少なくとも1つのリソグラフィ装置と、コントローラと、放射のパワーを示すか又は放射によって少なくとも1つのリソグラフィ装置内のターゲット位置に送出される放射線量を示す値を確定し、これを示す信号をコントローラに出力するためのセンサと、を備える。コントローラは、センサによって出力される信号に応じて共振空洞の1つ以上のパラメータを変化させるように動作可能である。
[0090] ターゲット位置は、例えば基板露光中のある時間期間にわたって放射を受光する基板上の位置とすればよい。ターゲット位置で受光されるエネルギ線量は、露光時間期間中の放射ビームパワーの時間についての積分であり得る。露光時間期間が充分に長い場合、この露光時間期間を通して高周波数変動を平均化することができる。これは、ターゲット位置によって受光される放射線量が波長に依存し、この依存性が放射ビームの波長及び帯域幅に大きく依存する実施形態では、特に有益である。本発明の第5の態様によって、放射ビームの帯域幅を制御することができ、従って帯域幅を最適化し、波長の変化に対する線量の感度を低下させることができる。
[0091] センサによって出力される信号に応じて制御される共振空洞の1つ以上のパラメータは、共振空洞内の電場の振幅を含むことができる。
[0092] センサによって出力される信号に応じて制御される共振空洞の1つ以上のパラメータは、共振空洞が動作する第2の周波数を含むことができる。これは、共振空洞に電磁放射を供給する無線周波数源の周波数と共振空洞の幾何学的形状の双方を調整することで達成可能である。共振空洞の幾何学的形状を変えるには、例えば1つ以上の圧電ストレッチャ及び/又は圧縮器を用いて、共振空洞の共振周波数を共振空洞に電磁放射を供給する無線周波数源の周波数にマッチングさせればよい。
[0093] 本発明の一態様によれば、ターゲット位置によって受光される放射線量を制御する方法が提供される。この方法は、ターゲット位置によって受光される放射線量の、放射ビームの波長及び/又はパワーに対する依存性を確定することと、複数の異なる波長の放射を生成するように動作可能な調整可能放射源を用いて放射を生成することと、波長に依存した光学システムを介して放射をターゲット位置まで導くことと、放射のパワーを示すか又は放射によってターゲット位置に送出される放射線量を示す値を確定することと、ターゲット位置によって受光される放射線量を制御するように、確定した値に応じて放射の波長を変化させることと、を備える。
[0094] ターゲット位置によって受光される放射線量の、放射ビームの波長及び/又はパワーに対する依存性を確定するステップは、較正ステップとして一度だけ実行すればよい。
[0095] 本発明の一態様によれば、入射器と、加速器と、アンジュレータと、を備え、EUV放射ビームを発生させるように構成された自由電子レーザが提供される。アンジュレータはアンジュレータモジュールと1つ以上の動的移相器とを備え、動的移相器は、自由電子レーザによって発生されるEUV放射ビームのパワー及び/又は帯域幅及び/又は空間パワー分布を変えるように動作可能である。
[0096] 1つ以上の動的移相器は、活性化された場合に電子軌道の長さを変えるように構成された電磁石を備えることができる。
[0097] 1つ以上の動的移相器は3対の電磁石を備え、各対は電子軌道の反対側に設けることができる。
[0098] コントローラは、電磁石に選択的に電流を供給して電磁石の活性化及びスイッチオフを行うように動作可能である。
[0099] コントローラは、電磁石に供給される電流のサイズを制御するように動作可能であり、これによって1つ以上の動的移相器によって与えられる移相シフトのサイズを制御する。
[0100] ビーム軌道の周りに伝導性材料から形成された保護チューブを設けることができる。
[0101] 少なくとも部分的に誘電体を充填した開口を保護チューブに設けることができる。
[0102] 開口はテーパ状の端部を有することができる。
[0103] 保護チューブの少なくとも一部は、10ミクロンより大きいが1mmより小さいスキン深さを有する伝導性材料から形成可能である。
[0104] 1つ以上の動的移相器は、活性化された場合に電子軌道の長さを変えるように構成された横キッカーを備えることができる。
[0105] 1つ以上の動的移相器はコントローラによって制御可能である。
[0106] コントローラは、10kHz以上の周波数で動的移相器を制御するように構成可能である。
[0107] 本発明の一態様によれば、入射器と、加速器と、アンジュレータと、を備え、EUV放射ビームを発生させるように構成された自由電子レーザが提供される。アンジュレータはアンジュレータモジュールと2つ以上の動的移相器とを備え、動的移相器は、自由電子レーザによって発生されるEUV放射ビームのパワーを著しく変化させることなく自由電子レーザによって発生されるEUV放射ビームの帯域幅及び/又は空間パワー分布を変えるように動作可能である。
[0108] 本発明の一態様によれば、自由電子レーザを用いてEUV放射ビームを発生させる方法が提供される。この方法は、1つ以上の動的移相器を用いて電子の運動とEUV放射との間の相対位相を変化させ、これによって自由電子レーザによって発生されるEUV放射ビームのパワー及び/又は帯域幅及び/又は空間パワー分布を変えることを備える。
[0109] 1つ以上の動的移相器は、活性化された場合に電子軌道の長さを変えるように構成された電磁石を備えることができる。
[0110] 1つ以上の動的移相器は3対の電磁石を備え、各対は電子軌道の反対側に設けることができる。
[0111] 電磁石に選択的に電流を供給して電磁石の活性化及びスイッチオフを行うことができる。
[0112] 電磁石に供給される電流のサイズを制御し、これによって1つ以上の動的移相器によって与えられる位相シフトのサイズを制御することができる。
[0113] 1つ以上の動的移相器は、活性化された場合に電子軌道の長さを変えるように構成された横キッカーを備えることができる。
[0114] 動的移相器は10kHz以上の周波数で制御することができる。
[0115] 本発明の一態様によれば、自由電子レーザを用いてEUV放射ビームを発生させる方法が提供される。この方法は、2つ以上の動的移相器を用いて、自由電子レーザによって発生されるEUV放射ビームのパワーを著しく変化させることなく自由電子レーザによって発生されるEUV放射ビームの帯域幅及び/又は空間パワー分布を変えることを備える。
[0116] 本発明の一態様によれば、放射ビームのパワーを示す値を確定するための測定装置が提供される。この測定装置は、センサと、放射ビームを受光するための、第1及び第2の領域を備える光学要素であって、第1の領域が放射ビームの第1の部分を受光するように配置され、第2の領域が放射ビームの第2の部分を受光するように配置され、第1及び第2の領域が光学要素の表面の空間的に別個の領域を形成する、光学要素と、を備える。第1の領域は更に、第1の部分から第1の分岐放射ビームを形成し、第1の分岐放射ビームを、第1の分岐放射ビームのパワーを確定するように配置されたセンサに送出するように配置され、第2の領域は更に、第2の部分から、センサに送出されない第2の分岐放射ビームを形成するように配置されている。
[0117] 有利な点として、このような構成は、放射ビームの経路にセンサを配置する必要なく、放射ビームの第1の部分のパワーを確定することができる。従って本発明では、経路に直接配置されたセンサの場合にはこれに大きな熱負荷を加えるはずの極めて高いパワー及び強度を有する放射ビームのパワーを測定することが可能となる。更に、放射ビームの経路にセンサを配置する必要がないので、本発明は、光学要素の第1の領域の寸法に制限がない構成を提供する。特にこれによって、第1の領域を充分に小さくして、パワー測定に用いられる強度分布の部分(すなわち第1の分岐放射ビームに寄与する部分)を、放射ビームの経路に1つ以上のセンサを配置した場合よりも小さくすることが可能となる。
[0118] 第1の領域は複数の空間的に分離した小領域を含むことができる。
[0119] 複数の空間的に分離した小領域は光学要素全体に分散させることができる。
[0120] 複数の空間的に分離した小領域は、光学要素の表面全体にくぼみ又は突起から成る矩形の2次元の格子状配列を形成することができる。
[0121] 光学要素は格子を含み、格子の複数の面は複数の空間的に分離した小領域を形成することができる。
[0122] 第1の分岐放射ビームは第1の領域からの第1の部分の反射によって形成することができる。
[0123] 光学要素の第1の領域は蛍光材料を含み、蛍光材料が放射ビームの第1の部分を吸収し、次いで第1の分岐放射ビームを形成する異なる波長の放射を放出することによって第1の分岐放射ビームを形成することができる。
[0124] 第1の分岐放射ビームは第1の領域からの第1の部分の散乱によって形成することができる。
[0125] 光学要素はかすめ入射ミラーを含むことができる。
[0126] センサは検知要素のアレイを含むことができる。
[0127] センサは、第1の分岐放射ビームのパワーを確定する前に第1の分岐放射ビームの波長をもっと長い波長に変換するための機構を備えることができる。
[0128] センサは、第1の分岐放射ビームのパルス持続時間を変えるための機構を備えることができる。
[0129] 複数の空間的に分離した小領域の各々の寸法は100μm以下のオーダーとすることができる。
[0130] 複数の空間的に分離した小領域の各々の寸法は充分に小さいので、遠距離場において、第2の分岐放射ビームの強度分布を放射ビームのものと実質的に同一とすることができる。
[0131] 複数の空間的に分離した小領域の各々の寸法は充分に小さいので、複数の空間的に分離した小領域の近傍における熱膨張歪みによる光学要素の反射面の形状の変動は無視できる程度とすることができる。
[0132] 複数の空間的に分離した小領域の各々の寸法は充分に小さいので、単一のマークによって放出又は散乱される総パワーは放射ビームの比較的小さい部分とすることができる。
[0133] 放射ビームのパワーを示す値は制御要素に与えることができる。制御要素は、放射ビームの特徴(aspect)を制御するように配置することができる。例えば制御要素は、放射ビームの強度分布又は平均強度を調整するように配置可能である。コントローラは放射ビームの位置を調整するように配置することができる。
[0134] 本発明の一態様によれば、放射ビームのパワーを示す値を確定するための測定装置が提供される。この測定装置は、センサと、放射ビームを受光するための、格子であり、複数の面を備える光学要素であって、各面が放射ビームの一部を受光すると共に放射サブビームを形成するように配置された、光学要素と、を備える。複数の面からの放射サブビームは干渉して、(i)第1の分岐放射ビームであって、この第1の分岐放射ビームのパワーを確定するように配置されたセンサに送出される、第1の分岐放射ビームと、(ii)センサに送出されない第2の分岐放射ビームと、を形成する。
[0135] 本発明の一態様によれば、本発明の第1の態様による測定装置と、1つ以上の放射ビームステアリング機構と、パワーを示す信号をセンサから受信し、これに応じて1つ以上の放射ビームステアリング機構を制御して放射ビームの位置を変えるように配置された制御ユニットと、を備える放射ビームステアリングユニットが提供される。
[0136] 本発明の一態様によれば、放射ビームを出力するように配置された機構と、本発明の第1の態様による測定装置であって、光学要素が放射ビームを受光するように配置されている、測定装置と、を備える放射源が提供される。
[0137] 本発明の一態様によれば、放射ビームを生成するための放射源と、1つ以上のリソグラフィ装置と、放射ビーム又はこれから形成された二次放射ビームのパワーを示す値を確定するように配置された、本発明の第1の態様による測定装置と、を備えるリソグラフィシステムが提供される。
[0138] 本発明の一態様によれば、放射ビームを生成するための放射源と、1つ以上のリソグラフィ装置と、放射ビーム又はこれから形成された二次放射ビームを方向操作するように配置された、本発明の第2の態様による放射ビームステアリングユニットと、を備えるリソグラフィシステムが提供される。
[0139] 本発明の一態様によれば、放射ビームのパワーを示す値を確定するための測定装置が提供される。この測定装置は、放射ビームのパワーを確定するためのセンサと、センサによってパワーが確定される前に放射ビームのパルス持続時間を変えるための機構と、を備える。
[0140] 有利な点として、パルス持続時間を変えるための機構は、比較的短いパルスの放射ビームについてパワー測定を簡略化することができる。例えば放射ビームが含むパルスは、高速フォトダイオード等の既知の検知要素が分解するには短すぎることがある。この場合、パルス持続時間を長くすることで、そのような検知要素によってパワーを分解することができる。
[0141] 放射ビームのパルス持続時間を変えるための機構は、センサによってパワーが確定される前に放射ビームの波長をもっと長い波長に変換するように動作可能である。
[0142] 放射ビームのパルス持続時間を変えるための機構は、放射ビームを吸収すると共に次いでもっと長い波長の放射を放出するように配置された蛍光材料を含むことができる。
[0143] 本発明の一態様によれば、放射ビームのパワーを示す値を確定する方法が提供される。この方法は、第1及び第2の領域を備える光学要素の方へ放射ビームを送出することであって、第1の領域が放射ビームの第1の部分を受光するように配置され、第2の領域が放射ビームの第2の部分を受光するように配置され、第1及び第2の領域が光学要素の表面の空間的に別個の領域を形成する、ことと、第1の部分から第1の分岐放射ビームを形成することと、第2の部分から第2の分岐放射ビームを形成することと、第1及び第2の分岐放射ビームを異なる位置に送出することと、第1の分岐放射ビームのパワーを確定することと、
を備える。
[0144] 第1の領域は複数の空間的に分離した小領域を含むことができる。
[0145] 複数の空間的に分離した小領域は光学要素全体に分散させることができる。
[0146] 複数の空間的に分離した小領域は、光学要素の表面全体にくぼみ又は突起から成る矩形の2次元の格子状配列を形成することができる。
[0147] 光学要素は格子を含み、格子の複数の面は複数の空間的に分離した小領域を形成することができる。
[0148] 第1の分岐放射ビームは第1の領域からの第1の部分の反射によって形成することができる。
[0149] 光学要素の第1の領域は蛍光材料を含み、蛍光材料が放射ビームの第1の部分を吸収し、次いで第1の分岐放射ビームを形成する異なる波長の放射を放出することによって第1の分岐放射ビームを形成することができる。
[0150] 第1の分岐放射ビームは、第1の領域からの第1の部分の散乱によって形成することができる。
[0151] 第1の分岐放射ビームのパワーを確定する前に、第1の分岐放射ビームの波長をもっと長い波長に変換することができる。
[0152] 第1の分岐放射ビームのパワーを確定する前に、第1の分岐放射ビームのパルス持続時間を変えることができる。
[0153] 本発明の一態様によれば、放射ビームのパワーを示す値を確定する方法が提供される。この方法は、複数の面を備える光学要素の方へ放射ビームを送出することであって、各面が放射ビームの一部を受光すると共に放射サブビームを形成するように配置されている、ことと、複数の面からの放射サブビーム間の干渉から第1及び第2の分岐放射ビームを形成し、第1及び第2の分岐放射ビームを異なる位置に送出することと、第1の分岐放射ビームのパワーを確定することと、を備える。
[0154] 本発明の一態様によれば、放射ビームを方向操作する方法が提供される。この方法は、本発明の第8又は第9の態様による方法を用いて放射ビームのパワーを示す値を確定することと、確定された値に応じて放射ビームの位置を制御することと、を備える。
[0155] 例えば、調整されるパラメータは放射ビームの位置とすることができる。調整されるパラメータは放射ビームの強度又は強度分布とすることができる。一般に、調整対象のパラメータはいずれかの適切な手段によって調整可能である。例えば調整は、放射ビーム源を調整することによって、又は放射ビーム源と光学要素との間の放射ビーム経路を調整することによって実行すればよい。
[0156] 本発明の一態様によれば、リソグラフィプロセスにおいて用いられる放射の強度を調整するための装置が提供される。この装置は、第1の放射ビームを受光するための第1の要素であって、第1の放射ビームの一部を第2の放射ビームの形態で第2の要素の方へ反射するように配置され、第2の要素が第2の放射ビームの一部を第3の放射ビームの形態で第2の要素から離れた方向へ反射するように配置されている、第1の要素と、第3の放射ビームの強度を変化させるように、第1の放射ビームと第1の要素との間、及び第2の放射ビームと第2の要素との間の少なくとも1つで入射角を調整するように適合された調整手段と、
を備える。
[0157] このように、第1の態様は、減衰装置に入射する放射の減衰を効率的に調整し、これによって減衰装置から出力する放射ビームの強度を調整するための装置を提供する。第1の態様は、第3の放射ビームの強度を迅速に調整することを可能としながら、機械的に高効率かつ簡単明瞭な方法で実装可能な機構を提供する。
[0158] 第3の放射ビームは、例えば減衰装置からリソグラフィ装置へと出力することができる。あるいは、第3の放射ビームを更に別の減衰装置へ送出することも可能である。
[0159] 第1の要素における第1の放射ビームの入射角は、第2の要素における第2の放射ビームの入射角と同一とすることができる。この装置は、第1の要素に対する第1の放射ビームの入射角が第2の要素に対する第2の放射ビームの入射角と常に実質的に同一であるように配置することができる。このように、第3の放射ビームは、第1の放射ビームの伝搬方向と実質的に同じ方向に第3の要素から反射される。
[0160] 調整手段は、第1及び第2の放射ビームの入射角を約1度から約10度の間で調整するように適合可能である。
[0161] 第1の要素は第1のポイントを中心として回転するように配置し、及び/又は第2の要素は第2のポイントを中心として回転するように配置することができる。調整手段は、第1及び第2の要素の少なくとも一方を選択的に回転させて、第1又は第2の放射ビームの第1及び第2の要素における入射角を調整するように配置することができる。これによって、第1の態様を実施する特に有効かつ容易な方法が提供される。
[0162] 第1の要素は第1のポイントを中心として回転するように配置し、及び/又は第2の要素は第2のポイントを中心として約9度の角度まで回転するように配置することができる。
[0163] 減衰装置は、第3の放射ビームを受光すると共に第3の放射ビームの一部を第4の放射ビームの形態で反射するための第3の要素と、第4の要素であって、第4の放射ビームを受光すると共に第4の放射ビームの一部を第5の放射ビームの形態で第4の要素から離れた方向へ反射するための第4の要素と、を更に備えることができる。
[0164] 第3及び第4の要素を設けることによって、減衰装置の減衰範囲を拡大することができる。この代わりに又はこれに加えて、第3及び第4の要素を設けることで、所与の減衰について、減衰装置の要素による反射が放射の極性に対して及ぼす影響を低減することができる。
[0165] 調整手段は、第3の放射ビームと第4の要素との間、及び第4の放射ビームと第4の要素との間の少なくとも1つで入射角を調整するように配置することができる。
[0166] 調整手段は、第1、第2、第3、及び第4の放射ビームの第1、第2、第3、及び第4の要素における入射角を約1度から約5度の間で調整するように適合することができる。このように、第3の放射ビームにおいて第1の放射ビームの極性を良好に維持しながら、約8%から20%の減衰範囲を達成可能である。
[0167] 第1の要素は第1のポイントを中心として回転するように配置し、第2の要素は第2のポイントを中心として回転するように配置し、第3の要素は第3のポイントを中心として回転するように配置し、第4の要素は第4のポイントを中心として回転するように配置することができる。調整手段は、第1、第2、第3、及び第4の要素の少なくとも1つを選択的に回転させて、第1、第2、第3、又は第4の放射ビームの第1、第2、第3、又は第4の要素における入射角を調整するように配置することができる。
[0168] 第1、第2、第3、及び第4の要素の各々は、第1、第2、第3、又は第4のポイントを中心として約4度の角度まで回転するように配置することができる。
[0169] この装置は、調整手段を制御するように配置されたコントローラを更に備えることができる。
[0170] コントローラは、センサから放射強度の指示を受信すると共にこの指示に応じて調整手段を制御するように配置することができる。このように、第1の減衰装置によって与えられる減衰を良好に制御することができる。コントローラは、例えば所定の位置に与えられる放射の強度を所定の強度範囲内に維持するように配置された制御ループの一部を構成することができる。
[0171] この装置は、更に別の減衰装置を更に備えることができる。更に別の減衰装置は固定減衰装置を含み得る。すなわち更に別の減衰装置が与え得る減衰は、変化させることができないか、又は第1及び第2の要素を用いてもしくは第1から第4までの要素を用いて達成可能である減衰の変動量に比べて少量しか変化させることができない。更に別の減衰装置は、可変減衰器の減衰よりも大きい減衰率を与えることができる。例えば、更に別の減衰装置は10の減衰率を与え得る。
[0172] あるいは、更に別の減衰装置は調整可能減衰装置を含むことができる。更に別の減衰装置は、第1の減衰装置よりも広い減衰範囲で調整可能であるが、第1の減衰装置を調整可能である周波数よりも低い周波数で調整することができる。
[0173] 更に別の減衰装置はEUV吸収媒体を収容するチャンバを備え、チャンバは放射ビームの経路に配置することができる。
[0174] 更に別の減衰装置は、チャンバ内の圧力を監視するように動作可能な圧力センサを備えることができる。
[0175] 更に別の減衰装置はガス入口及びガス出口を備えることができる。
[0176] 装置は第2のコントローラを更に備えることができ、第2のコントローラは、圧力モニタと連通し、チャンバ内の圧力を所定の範囲内に維持するようにガス入口及びガス出口を制御するように配置されている。
[0177] 第1及び第2のコントローラは同一のコントローラとすることができる。
[0178] 調整装置は、調整対象の各要素についてそれぞれの調整手段を備えることができる。
[0179] 装置は、放射ビームの1つの伝搬方向に対して非垂直角度に配置された反射膜を更に備えることができる。反射膜は、放射ビームの1つの一部を透過させると共に放射ビームの1つの一部を反射するように配置されている。
[0180] 放射ビームの1つは、例えば第1、第2、第3、又は第4の放射ビームとすればよい。
[0181] 本発明の一態様によれば、メイン放射ビームを生成するように動作可能な放射源と、メイン放射ビームの少なくとも一部を受光するように配置された、第1の態様による減衰装置と、減衰装置から減衰された放射ビームを受光するように配置された少なくとも1つのリソグラフィ装置と、を備えるリソグラフィシステムが提供される。
[0182] 例えば、メイン放射又はメイン放射ビームの一部は、第1の態様について上述した第1の放射ビームを与えることができる。
[0183] リソグラフィシステムは、放射ビームを受光すると共に少なくとも1つの分岐放射ビームを出力するように配置されたビーム分割装置を備えることができる。減衰装置は少なくとも1つの分岐放射ビームを受光するように配置することができる。
[0184] ビーム分割装置は複数の分岐放射ビームを出力するように配置することができる。リソリソグラフィシステムは、複数の分岐放射ビームの各々について減衰装置を備えることができ、各減衰装置は複数の分岐放射ビームのそれぞれ1つを受光するように配置することができる。
[0185] あるいは、リソグラフィシステムは、複数の分岐放射ビームのいくつかに1つ以上の減衰装置を備えることも可能である。すなわち、一部の分岐放射ビームはリソグラフィシステム内の減衰装置を通過しない場合もある。
[0186] 放射源は1つ以上の自由電子レーザを備えることができる。
[0187] 少なくとも1つのリソグラフィ装置は1つ以上のマスク検査装置を備えることができる。
[0188] メイン放射ビームはEUV放射を含むことができる。
[0189] 本発明の態様は、適切なハードウェア及び/又はソフトウェアの利用を含むいずれかの好都合な方法で実施可能であることは認められよう。あるいは、本発明の実施形態を実施するようにプログラマブルデバイスをプログラムすることも可能である。従って本発明は、本発明の態様を実施するための適切なコンピュータプログラムも提供する。そのようなコンピュータプログラムは、有形のキャリア媒体(例えばハードディスク、CD ROM等)及び通信信号等の無形のキャリア媒体を含む適切なキャリア媒体上に担持することができる。
[0190] 本発明の1つ以上の態様を、本明細書に記載する1つ以上の他の態様と、及び/又は前出もしくは以下の記載に述べる1つ以上の特徴と組み合わせることも可能である。
[00192] 図1は本発明の一実施形態に従ったリソグラフィシステムLSを示す。リソグラフィシステムLSは、自由電子レーザFEL、ビームデリバリシステム、及び複数のリソグラフィ装置LAa〜LAn(例えば8個のリソグラフィ装置)を備えている。自由電子レーザFELは、極端紫外線(EUV)放射ビームB(これをメインビームと称することがある)を発生するように構成されている。コントローラCTは、自由電子レーザFELから放出されたEUV放射のパワーを制御する。センサ装置STは、自由電子レーザビームにより出力されたEUV放射ビームのパワー又はEUV放射ビームのパワーに相関したパラメータを監視する。コントローラCTは、この検出器からの出力に基づいて自由電子レーザを調整する。従って、破線F1に示すようなフィードバックベースの制御ループが与えられる。センサ装置STはいずれかの適切な位置に設ければよい。自由電子レーザFELの出力パワーの制御に使用可能な装置及び方法について、以下で更に説明する。例えばこれらを用いて、自由電子レーザから出力されるEUV放射ビームパワーの変動を低減することができる(例えば1ms等の露光時間期間で平均した場合)。実質的に一定の波長を維持しながら自由電子レーザの出力パワーを調整するために使用可能な装置及び方法について、以下で更に説明する。
[00193] センサ装置STは例えば、(EUV放射ビームの一部を分離させて測定することで)EUV放射ビームのパワーを監視するように構成されたEUV放射検出器とすることができる。センサ装置は例えば、自由電子レーザFELの電子ビームの電流を測定するセンサとすればよい。これは例えば、電子電流に対する出力信号の較正が行われたビーム位置モニタとすればよい。電子ビームの電流はEUV放射ビームパワーに相関付けることができる(例えば自由電子レーザの変換効率が一定である場合)。センサ装置は例えば、電子ビームのための電子を発生させるのに用いるレーザビームのパワーの監視に用いられる検出器とすればよい(例えば図4を参照して以下で説明するように)。レーザビームのパワーはEUV放射ビームパワーに相関付けることができる。センサ装置は例えば、ビームダンプに入射する電子ビームの電子の電荷を測定するように構成されたファラデーカップ(又は同等物)とすればよい。ビームダンプに入射する電子の電荷はEUV放射ビームパワーに相関付けることができる。
[00194] ビームデリバリシステムは、ビーム分割装置19を備え、任意選択的にビーム拡大光学部品(図示せず)も備える場合がある。メイン放射ビームBは複数の放射ビームBa〜Bn(これらを分岐ビームと称することがある)に分割され、その各々はビーム分割装置19によってリソグラフィ装置LAa〜LAnのうち異なるものにそれぞれ送出される。分岐放射ビームBa〜Bnはメイン放射ビームから連続して分割させて、各分岐放射ビームを直前の分岐放射ビームの下流でメイン放射ビームから分割することができる。この場合、分岐放射ビームは例えば相互に実質的に並行して伝搬し得る。
[00195] 任意選的なビーム拡大光学部品(図示せず)は、放射ビームBの断面積を拡大するように配置されている。有利な点として、これはビーム拡大光学部品の下流のミラーに対する熱負荷を低減する。これによって、ビーム拡大光学部品の下流のミラーは、あまり冷却されず、従って安価である低性能のものを使用可能である。これに加えて又はこの代わりに、これは下流のミラーを近垂直入射とすることができる。ビーム分割装置19は、ビームBの経路に配置された複数のスタティック抽出ミラー(図示せず)を備え、これがメインビームBからの放射を複数の分岐放射ビームBa〜Bnに沿って送出することができる。メインビームBのサイズが大きくなると、ビームB経路にミラーを位置付ける際に要求される精度が低くなる。従ってこれは、分割装置19による出力ビームBのいっそう正確な分割を可能とする。例えばビーム拡大光学部品は、メインビームBをビーム分割装置19によって分割する前にメインビームBを約100μmから10cm超に拡大するように動作可能である。
[00196] 一実施形態において、分岐放射ビームBa〜Bnの各々は各減衰器15a〜15nを通過して送出される。各減衰器15a〜15nは、分岐放射ビームBa〜Bnが対応するリソグラフィ装置LAa〜LAnに入射する前に各分岐放射ビームBa〜Bnの強度を調整するように配置されている。各減衰器15a〜15nは、その減衰器に関連付けたリソグラフィ装置から与えられるフィードバックを用いて、コントローラCTAa〜CTAnによって制御することができる。例えばリソグラフィ装置LAnは、このリソグラフィ装置内に分岐放射ビームBnの強度を監視するセンサSLnを含むことができる。センサSLnからの出力を用いて減衰器15nを制御することができる。従って、破線F2nにより示すようなフィードバックベースの制御ループが与えられる。センサSLnはリソグラフィ装置LAn内のいずれかの適切な位置に設ければよい。例えばセンサSLnは、リソグラフィ装置の投影システムの後段(例えばリソグラフィ装置の基板支持テーブル)に位置付けることができる。あるいはセンサSLnは、リソグラフィ装置の投影システムの前段(例えばリソグラフィ装置の照明システムとマスク支持構造との間)に位置付けることも可能である。
[00197] 第1のフィードバックベースの制御ループF1は、第2のフィードバックベースの制御ループF2nよりも高速の応答を有し得る。
[00198] 第1のフィードバックベースの制御ループF1は、例えば50kHz以上のように、10kHz以上の周波数で動作可能である。第1のフィードバックベースの制御ループは、例えば約100kHz以上の周波数で動作可能である。第2のフィードバックベースの制御ループは1kHz以下の周波数で動作可能である。
[00199] 一実施形態において、第1のフィードバックループを制御するコントローラCTは、例えばビームスプリッタ19及び/又はリソグラフィ装置LAa〜LAnの光学部品の透過を考慮に入れるように構成可能である。この場合コントローラCTは、自由電子レーザFELを制御することにより、リソグラフィ装置のリソグラフィ基板に送出される放射線量を制御することができる。
[00200] 一実施形態において、リソグラフィ装置LAa〜LAnのセンサから自由電子レーザFELを制御するコントローラCTにフィードバックを与えることができる。センサは例えばリソグラフィ装置の照明システムに設ければよい。2つ以上のリソグラフィ装置LAa〜LAnのセンサからのフィードバックを、自由電子レーザFELを制御するCTに与えることができる。
[00201] リソグラフィ基板上のターゲット位置は、約1msの間EUV放射を受光し得る。自由電子レーザFELのフィードバックベースの制御によってリソグラフィ基板に送出されるEUV放射のパワーを制御すると、リソグラフィ基板上のターゲット位置における露光線量の均一性を向上させることができる。10kH以上の周波数で動作するフィードバックベースの制御ループは、1msで送出される露光線量をある程度制御する。50kHz以上の周波数で動作するフィードバックベースの制御ループでは、1msで送出される露光線量の制御が向上する(これは、EUV放射ビームパワーの変動をより完全に平滑化することができる)。約100kHz以上の周波数で動作するフィードバックベースの制御ループでは、1msで送出される露光線量の制御が更に向上し得る。1MHz以上の周波数で動作する自由電子レーザFELのフィードバックベースの制御ループでは、線量制御の点で著しい利点は付加されない場合がある。これは、1msの露光時間では、このような周波数でのEUV放射の変動が露光時間中に有効に平均化されるからである。
[00202] コントローラCT及び/又はコントローラCTAa〜CTAnは、何らかのフィードフォワード制御を組み込んで、既知であり既知の環境で発生する放射ビームパラメータの変化(例えば自由電子レーザの動作開始の直後に発生する放射ビーム変化)を考慮に入れることができる。
[00203] 放射源SO、ビーム分割装置19、ビーム拡大光学部品(ある場合)、及びリソグラフィ装置LAa〜LAnは全て、外部環境から隔離可能であるように構成及び配置することができる。放射源SO、ビーム分割装置19、及びリソグラフィ装置LAa〜LAnの少なくとも一部において真空を与えてEUV放射の吸収を最小限に抑えることができる。リソグラフィシステムLSの異なる部分に、異なる圧力の真空を与える(すなわち大気圧未満の異なる圧力に維持する)ことも可能である。
[00204] 図2を参照すると、リソグラフィ装置LAaは、照明システムIL、パターニングデバイスMA(例えばマスク)を支持するように構成された支持構造MT、投影システムPS、及び基板Wを支持するように構成された支持テーブルWTを備えている。照明システムILは、リソグラフィ装置LAaによって受光される分岐放射ビームBaがパターニングデバイスMAに入射する前にこれを調節するように構成されている。投影システムPSは、放射ビームBa’(これはパターニングデバイスMAによりパターンが与えられている)を基板W上に投影するように構成されている。基板は予め形成されたパターンを含むことができる。この場合リソグラフィ装置は、パターンが与えられた放射ビームBa’を、基板W上に予め形成されたパターンと位置合わせする。
[00205] リソグラフィ装置LAaにより受光される分岐放射ビームBaは、ビーム分割装置19から照明システムILの閉鎖構造の開口8を通って照明システムIL内に入る。任意選択的に、分岐放射ビームBaは、開口8において又はその近傍で中間焦点を形成するように集束させてもよい。
[00206] 照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11を含むことができる。ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11は共に、放射ビームBaに所望の断面形状及び所望の角度分布を与える。放射ビームBaは、照明システムILから出て、支持構造MTが保持するパターニングデバイスMAに入射する。パターニングデバイスMAは放射ビームを反射し、これにパターンを与えて、パターン付与されたビームBa’を形成する。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11に加えて又はこれらの代わりに、他のミラー又はデバイスを含むこともある。照明システムILは、例えば個別に移動可能なミラーのアレイを含むことができる。個別に移動可能なミラーは、例えば直径1mm未満であり得る。個別に移動可能なミラーは、例えば微小電気機械システム(MEMS)デバイスとすればよい。
[00207] パターン付与された放射ビームBa’は、パターニングデバイスMAから方向転換(例えば反射)後、投影システムPSに入る。投影システムPSは、放射ビームBを基板テーブルWTが保持する基板Wに投影するように構成された複数のミラー13、14を備えている。投影システムPSは放射ビームに縮小率を適用して、パターニングデバイスMA上の対応するフィーチャよりも小さいフィーチャを有する像を形成することができる。例えば縮小率4を適用可能である。図2において投影システムPSは2つのミラーを有するが、投影システムはいかなる数のミラーも含むことができる(例えば6個のミラー)。
[00208] リソグラフィ装置LAaは、放射ビームBaの断面にパターンを与え、パターン付与された放射ビームを基板のターゲット部分上に投影することで、基板のターゲット部分をパターン付与された放射に露光するように動作可能である。リソグラフィ装置LAaは、例えばスキャンモードで使用可能である。このモードでは、放射ビームBa’に与えたパターンを基板Wに投影している間に、支持構造MT及び基板テーブルWTを同期してスキャンする(すなわち動的露光)。支持構造MTに対する基板テーブルWTの速度及び方向は、投影システムPSの縮小率及び像反転特性によって決定することができる。基板Wに入射するパターン付与された放射ビームBa’は、ある帯域の放射を含み得る。放射の帯域を露光スリット(exposure slit)と称することができる。スキャン露光中、露光スリットが基板Wのターゲット部分の上を移動することで基板Wのターゲット部分をパターン付与された放射に露光するように、基板テーブルWT及び支持構造MTを移動させる。基板Wのターゲット部分内の所与の位置が露光される放射線量は、その位置の上で露光スリットをスキャンする際にその位置が放射に露光される放射ビームBa’のパワー及び時間量に依存する(この例ではパターンの影響は無視される)ことは認められよう。「ターゲット位置」という言葉は、放射に露光される(かつ受光した放射線量を算出することができる)基板上の位置を表すために使用可能である。
[00209] 図2に減衰器15aを示す。この減衰器はリソグラフィ装置の前段に設けられている。減衰器15aの実施形態については以下で更に説明する。リソグラフィ装置に、このリソグラフィ装置内のEUV放射ビームのパワーを測定するように構成されたセンサを備えることができる。センサは例えば、破線SLaで概略的に示すように照明システムIL内に設けることができる。これに加えて又はこの代わりに、センサを投影システムの後段に設けてもよい。センサは例えば、破線SLaで概略的に示すように基板テーブル上に設けることができる。コントローラCTAaは、減衰器15aによって与えられる減衰を制御することができる。コントローラCTAaは、センサSLaから信号を受信し、この信号を少なくとも部分的に用いて減衰を制御することができる。このように、フィードバックベースの制御ループを提供することができる。
[00210] 再び図1を参照すると、自由電子レーザFELは、リソグラフィ装置LAa〜LAnの各々へ供給するのに充分なパワーのEUV放射ビームBを発生するように構成されている。上記のように、放射源は自由電子レーザを含み得る。
[00211] 自由電子レーザは電子源及び加速器を含み、これらは、バンチ化相対論的電子ビームと、この相対論的電子バンチが送り出される周期磁場と、を生成するように動作可能である。周期磁場はアンジュレータにより生成され、これによって電子は中心軸を中心とした振動経路をとる。磁気構造によって生じた加速の結果、電子は概ね中心軸方向に電磁放射を自発的に放射する。相対論的電子はアンジュレータ内の放射と相互作用する。特定の条件下で、この相互作用によって電子はバンチ化して、アンジュレータ内の放射の波長で変調されたマイクロバンチ(microbunch)となり、中心軸に沿った放射のコヒーレントな放出が誘導される。
[00212] 電子がとる経路は、正弦波かつ平面状であるために電子が周期的に中心軸を横切るか、又はらせん状であるために電子が中心軸を中心として回転する場合がある。振動経路のタイプは、自由電子レーザが放出する放射の偏光に影響を与え得る。例えば、電子をらせん状経路に沿って伝搬させる自由電子レーザは楕円偏光放射を放出することができ、これは一部のリソグラフィ装置による基板Wの露光には望ましい場合がある。
[00213] 図3は自由電子レーザFELの概略図であり、これは入射器21、線形加速器22、バンチ圧縮器23、アンジュレータ24、電子減速器26、及びビームダンプ100を備えている。
[00214] 入射器21は、バンチ化電子ビームEを生成するように構成され、例えば熱イオンカソード又はフォトカソード等の電子源と加速電場とを備えている。電子ビームE内の電子は更に線形加速器22によって更に加速される。一例において線形加速器22は、共通軸に沿って軸方向に離間した複数の無線周波数空洞と、共通軸に沿って電磁場を制御して電子バンチが通過する際に各電子バンチを加速するように動作可能である1つ以上の無線周波数電力源と、を備えることができる。空洞は超伝導無線周波数空洞とすればよい。有利な点として、これによって、比較的大きい電磁場を高いデューティサイクルで印加すること、ビームアパーチャが大きくなるので航跡場(wakefield)による損失を低減させること、(空洞の壁を通って放散するのとは対照的に)ビームに伝達される無線周波数エネルギ部分を増大させることが可能となる。あるいは、空洞は従来どおり伝導性とすることも可能であり(すなわち超伝導ではない)、例えば銅から形成すればよい。他のタイプの線形加速器も使用可能であり、例としてレーザ航跡場加速器又は逆自由電子レーザ加速器がある。
[00215] 電子ビームEは、線形加速器22とアンジュレータ24との間に配置されたバンチ圧縮器23を通過する。バンチ圧縮器23は、電子ビームE内の電子をバンチ化して電子ビームE内の既存の電子バンチを空間的に圧縮するように構成されている。あるタイプのバンチ圧縮器23は、電子ビームEを横断する方向に向けられた放射場を含む。電子ビームE内の電子は放射と相互作用して、近傍の他の電子とバンチ化する。別のタイプのバンチ圧縮器23は磁気シケイン(magnetic chicane)を含む。この場合、電子がシケインを通過する際の経路の長さはそのエネルギに依存する。このタイプのバンチ圧縮器を用いると、電位が例えば無線周波数で振動する複数の導体によって線形加速器22で加速された電子バンチを圧縮することができる。
[00216] 次いで電子ビームEはアンジュレータ24を通過する。一般的に、アンジュレータ24は複数のモジュールから成る。各モジュールは周期的な磁気構造を含み、これは周期磁場を生成するように動作可能であり、入射器21及び線形加速器22によって生成された相対論的電子ビームEをそのモジュール内の周期経路に沿って導くように配置されている。この結果、各アンジュールモジュール内で、電子は概ねそのモジュール内の周期経路の中心軸の方向に電磁放射を放射する。アンジュレータ24は更に、1つ以上の隣接セクション対の間の四重極磁石等、電子ビームEを再集束させる(refocus)ための機構を備えることができる。電子ビームEを再集束するための機構は電子バンチのサイズを縮小することができ、これによってアンジュレータ24内の電子と放射との結合を向上させて、放射の放出の誘導を増大させることができる。
[00217] 電子が各アンジュレータモジュールを通過する際、それらは放射の電場と相互作用し、放射とエネルギを交換する。一般に、条件が以下で与える共振条件に近くない限り、電子と放射との間で交換されるエネルギ量は高速で振動する。
ここで、λemは放射の波長であり、λuは電子が伝搬しているアンジュレータモジュールのアンジュレータ周期であり、γは電子のローレンツ因子であり、Kはアンジュレータパラメータである。Aはアンジュレータ24の幾何学的形状に依存する。円偏光放射を生成するヘリカルアンジュレータ(helical undulator)ではA=1であり、平面アンジュレータ(planar undulator)ではA=2であり、楕円偏光放射を生成するヘリカルアンジュレータ(すなわち円偏光でもなく直線偏光でもない)では1<A<2である。実際には、各電子バンチはある幅のエネルギを有するが、この幅は(電子ビームEを低いエミッタンスで生成することによって)できる限り最小限に抑えることができる。アンジュレータパラメータKは典型的に約1であり、以下によって与えられる。
ここで、q及びmはそれぞれ電子の電荷及び質量であり、Boは周期磁場の振幅であり、cは光の速度である。
[00218] 共振波長λemは、各アンジュレータモジュールを通過する電子が自発的に放射する第1高調波波長に等しい。自由電子レーザFELは、SASE(self−amplified spontaneous emission:自己増幅自発放出)モードで動作することができる。SASEモードの動作では、電子ビームEが各アンジュレータモジュールに入射する前にその電子バンチのエネルギ幅が小さいことが必要であり得る。あるいは、自由電子レーザFELは、アンジュレータ24内の誘導放出により増幅可能なシード放射源を備えることができる。自由電子レーザFELは再循環増幅器自由電子レーザ(RAFEL:recirculating amplifier free electron laser)として動作可能であり、この場合、自由電子レーザFELが発生する放射の一部を用いて更に放射を発生させる。
[00219] アンジュレータ24を通過する電子によって放射振幅を増大させることができる。すなわち、自由電子レーザFELは非ゼロの利得を有することができる。共振条件を満たす場合、又は条件が共振に近いがわずかに外れている場合に、最大の利得が達成され得る。
[00220] 各アンジュレータモジュールの中心軸の周りの領域を、「有効磁場領域(good field region)」と見なすことができる。有効磁場領域は、中心軸の周りのある体積であり、アンジュレータモジュールの中心軸に沿った所与の位置では、この体積内の磁場の大きさ及び方向が実質的に一定である。有効磁場領域内で伝搬する電子バンチは、式(1)の共振条件を満たすことができ、従って放射を増幅する。更に、有効磁場領域内で伝搬する電子ビームEは、圧縮されない磁場による著しい予測外の分裂(disruption)を経験しないはずである。
[00221] 各アンジュレータモジュールは、ある範囲の許容可能な初期軌道を有し得る。この範囲の許容可能な初期軌道内の初期軌道でアンジュレータモジュールに入射する電子は、式(1)の共振条件を満たすことができ、そのアンジュレータモジュール内で放射と相互作用してコヒーレント放射の放出を誘導する。これに対して、他の軌道でアンジュレータモジュールに入射する電子は、コヒーレント放射の顕著な放出を誘導しない場合がある。
[00222] 例えば、一般的にらせん状のアンジュレータモジュールでは、電子ビームEはアンジュレータモジュールの中心軸と実質的に位置合わせしなければならない。電子ビームEとアンジュレータモジュールの中心軸との間の傾斜又は角度は概ね1/10pを超えてはならない(pはピアスパラメータである)。そうでない場合、アンジュレータモジュールの変換効率(すなわち、そのモジュール内で放射に変換される電子ビームEのエネルギ部分)は、所望の量未満に低下し得る(又はほとんどゼロまで低下し得る)。一実施形態では、EUVヘリカルアンジュレータモジュールのピアスパラメータは0.001のオーダーである場合があり、これは、アンジュレータモジュールの中心軸に対する電子ビームEの傾斜が100マイクロラジアン未満でなければならないことを示している。
[00223] 平面アンジュレータモジュールでは、もっと広い範囲の初期軌道が許容可能であり得る。電子ビームEが平面アンジュレータモジュールの磁場に対して実質的に垂直のままであり、平面アンジュレータモジュールの有効磁場領域内に留まるならば、コヒーレントな放射の放出を誘導することができる。
[00224] 電子ビームEの電子が各アンジュレータモジュール間のドリフト空間を移動する際は、電子は周期経路をとらない。従ってこのドリフト空間では、電子は空間的に放射と重複するが、放射と大きなエネルギを交換しないので、効果的に放射から切り離される。
[00225] バンチ化電子ビームEは有限エミッタンスを有するので、再集束されない限り直径が増大する。このため、アンジュレータ24は更に、1つ以上の隣接モジュール対の間に電子ビームEを再集束するための機構を備えている。例えば、各隣接モジュール対の間に四重極磁石を設けることができる。四重極磁石は電子バンチのサイズを縮小し、電子ビームEをアンジュレータ24の有効磁場領域内に維持する。これによって次段のアンジュレータモジュール内の電子と放射との結合が向上し、放射の放出の誘導が増大する。
[00226] アンジュレータ24に入射する際に共振条件を満たす電子は、放射を放出(又は吸収)する際にエネルギを喪失(又は獲得)するので、共振条件は満たされなくなる。従っていくつかの実施形態では、アンジュレータ24をテーパ化することができる。すなわち、電子バンチにアンジュレータ24を通過させる際にこれを共振又は共振近傍に維持するため、周期磁場の振幅及び/又はアンジュレータ周期λuは、アンジュレータ24の長さに沿って変化し得る。テーパ化を達成するには、各アンジュレータモジュール内で及び/又はモジュールごとに、周期磁場の振幅及び/又はアンジュレータ周期λuを変化させればよい。これに加えて又はこの代わりに、テーパ化を達成するには、各アンジュレータモジュール内で及び/又はモジュールごとに、アンジュレータ24のらせん構造を変化(これによってパラメータAを変化)させればよい。
[00227] 電子ビームEは、アンジュレータ24から出射した後、ダンプ100によって吸収される。ダンプ100は、電子ビームEを吸収するために充分な材料の量を含むことができる。この材料は、放射能誘導についての閾値エネルギを有し得る。閾値エネルギ未満のエネルギでダンプ100に入射する電子は、ガンマ線シャワーを生成する可能性はあるが、著しいレベルの放射能は誘導しない。材料は、電子衝突による放射能誘導についての高い閾値エネルギを有し得る。例えばビームダンプは、約17MeVの閾値エネルギを有するアルミニウム(Al)を含む場合がある。電子ビームEがダンプ100に入射する前に、その電子エネルギを低減させることが望ましい。これによって、ダンプ100から放射性廃棄物を除去及び処分する必要性が解消されるか又は少なくとも低減される。放射性廃棄物を除去するためには自由電子レーザFELを周期的にシャットダウンする必要があり、放射性廃棄物を処分することは高コストであると共に重大な環境への影響を伴う恐れがあるので、これは有利である。
[00228] アンジュレータ24とビームダンプ100との間に配置された減速器26に電子ビームEを送出することによって、電子ビームEがダンプ100に入射する前にその電子エネルギを低減させることができる。
[00229] 一実施形態において、アンジュレータ24から出射した電子ビームEを減速させるには、線形加速器22における無線周波数(RF)フィールドに対して180度の位相差で電子を線形加速器22に戻せばよい。このように、線形加速器におけるRFフィールドは、アンジュレータ24から出力した電子を減速させるように機能する。電子が線形加速器22で減速すると、それらのエネルギの一部は線形加速器22のRFフィールドに移動する。従って、減速している電子からのエネルギは線形加速器22によって回収されて、入射器21から出力した電子ビームEを加速させるために用いることができる。このような構成は、エネルギ回収線形加速器(ERL:energy recovering linear accelerator)として知られている。
[00230] 図4は入射器21の一実施形態の概略図である。入射器21は、電子銃31及び電子ブースタ33を備えている。電子銃31は、真空チャンバ32の内部にフォトカソード43を支持するように配置されている。電子銃31は更に、放射源35からの放射ビーム41を受けるように配置されている。放射源35は例えばレーザビーム41を放出するレーザ35から成るものとすればよい。レーザビーム41は、ウィンドウ37を通って真空チャンバ32内に送出され、フォトカソード43に入射する。図4に示す実施形態では、レーザビーム41はミラー39によって反射されてフォトカソード43に入射するようになっている。
[00231] フォトカソード43は高電圧に保持されている。例えば、フォトカソード43は約数百キロボルトの電圧に保持することができる。フォトカソード43は、電子銃32の一部を形成するか又は電子銃32とは別個とすることができる電圧源を用いて高電圧に保持すればよい。レーザビーム41内の光子はフォトカソード43によって吸収され、フォトカソード43内で電子を励起する。フォトカソード43内の一部の電子は、フォトカソード43から放出されるのに充分な高エネルギ状態に励起される。フォトカソード43の高電圧は負であり、このためフォトカソード43から放出される電子をフォトカソード43から離れる方向に加速するように機能し、これによって電子ビームEが形成される。
[00232] レーザビーム41はパルスレーザビームである。フォトカソード43からの電子は、レーザビーム41のパルスに対応したバンチで放出される。従って、電子ビームEは一連の電子バンチ42から成る。レーザ35は、例えばピコ秒レーザとすることができ、このためレーザビーム41のパルスは約2〜3ピコ秒の持続時間を有し得る。フォトカソード43の電圧はDC電圧又はAC電圧とすることができる。フォトカソード43の電圧がAC電圧である実施形態では、フォトカソード電圧の周波数及び位相をレーザビーム41のパルスに合致させると、レーザビーム41のパルスをフォトカソード43の電圧ピークと一致させることができる。レーザビーム41のパルスを電子ブースタ33及び線形加速器22の加速フィールドに合致させると、加速フィールドが電子バンチ42を加速するように作用する時に電子バンチ42を電子ブースタ33及び線形加速器22に到達させることができる。
[00233] フォトカソード43から放出される電子ビームEは電子ブースタ33によって加速される。電子ブースタ33は、電子バンチをビーム通路34に沿って線形加速器22(図4には示していない)の方に向けて加速するように機能する。線形加速器22は、(上述したように)電子バンチを更に相対論的速度まで加速する。電子ブースタ33は電子バンチ42を、例えば約5MeVを超えるエネルギに加速することができる。いくつかの実施形態では、電子ブースタ33は電子バンチ42を、約10MeVを超えるエネルギに加速することができる。いくつかの実施形態では、電子ブースタ33は電子バンチ42を約20MeVまでのエネルギに加速することができる。
[00234] 電子ブースタ33は線形加速器22と同様のものとすればよく、例えば複数の無線周波数空洞47(図4に示す)及び1つ以上の無線周波数電力源(図示せず)を備えることができる。無線周波数電力源は、ビーム通路34において電磁場を制御するように動作可能である。電子バンチ42が空洞47を通過する際に、無線周波数電力源により制御される電磁場が各電子バンチを加速させる。空洞47は超伝導無線周波数空洞とすればよい。あるいは、空洞47は従来どおり伝導性とすることも可能であり(すなわち超伝導ではない)、例えば銅から形成すればよい。
[00235] 上述したように、フォトカソード43に入射するレーザビーム41の各パルスは、対応する電子バンチ42をフォトカソード43から放出させる。電子ビームEの各電子バンチ42は、電子ブースタ33によって及び線形加速器22によって加速される。加速した電子バンチ42はアンジュレータ24に入射し、ここで放射の放出を誘導して放射ビームBを形成する。放射ビームBはパルス放射ビームであり、アンジュレータ24における各電子バンチ42が放射ビームBの放射パルスの放出を発生させる。従って、レーザビーム41のパルスごとに、電子ビームE内に対応する電子バンチ42が存在し、自由電子レーザFELから放出される放射ビームB内に対応するパルスが存在する。
[00236] 自由電子レーザFELは図1のリソグラフィシステムLSの一部を形成することができる。この場合、自由電子レーザが生成する放射は最終的に、1つ以上のリソグラフィ装置LAa〜LAn内の1つ以上の基板Wによって受光される。これらの基板Wは、パターン付与された放射を受光するように配置されたターゲット部分を含むと考えられる。リソグラフィシステムLS内で、放射は自由電子レーザFELから基板まで伝送されるが、その間に、(i)ビームデリバリシステム(例えばビーム拡大光学部品20及びビーム分割装置19を備える)、及び(ii)リソグラフィ装置LAa〜LAn内の光学部品(例えば光学部品10、11、13、14)を経由する。ビームデリバリシステム及びリソグラフィ装置内の光学部品は、自由電子レーザFELから基板Wまで放射を伝送するように構成された光路と称することができる。光路は、ある放射線量を基板Wに与えるように放射を反射及び/又は透過させ。光路を伝搬して基板Wに入射する放射ビームBの部分を光路の透過率と称することができる。光路は反射性及び/又は透過性の要素を含むことができ、光路の透過率は、光路における反射性要素の反射率と光路における透過性要素の透過率とに依存することは認められよう。光路の透過率は更に、放射ビームBの断面と、光路において放射ビームが入射する光学要素とのマッチングに依存し得る。例えば、光路における光学要素(例えばミラー)は、この光学要素に入射する放射ビームBの断面よりも小さい断面を有することがある。従って、光学要素の断面の外側にある放射ビームBの断面部分は、(例えばミラーで反射されないことによって)放射ビームから失われ、従って光路の透過率を低減させる可能性がある。
[00237] リソグラフィシステムLSのリソグラフィ装置LAa〜LAnにおいて基板W上のターゲット部分が受光する放射線量を制御することが望ましい場合がある。特に、基板上の所与のターゲット部分の各ターゲット位置が実質的に同じ放射線量を受光するように放射線量を制御することが望ましい場合がある。
[00238] 図2を参照して上述したように、基板Wのターゲット位置が受光する放射線量は、ターゲット位置が露光される放射ビームのパワー(例えばパターン付与された放射ビームBa’)と、基板Wのターゲット位置が放射ビームに露光される時間量と、に依存する。リソグラフィ装置LAaにおけるパターン付与された放射ビームBa’のパワーは、自由電子レーザFELが放出する放射ビームBのパワーと、自由電子レーザFEL及び基板Wの間の光路の透過率と、に依存する。従って、基板のターゲット位置で受光される放射線量を制御するには、自由電子レーザFELから放出される放射ビームBのパワーの制御、及び/又は自由電子レーザFELと基板Wとの間の光路の透過率の制御を行えばよい。自由電子レーザFELから放出される放射ビームBのパワーは、(図1に関連して上述したような)フィードバックベースの制御ループを用いて制御することができる。
[00239] 自由電子レーザFELから放出される放射ビームBのパワーは、例えば、(放射ビームパワーを測定するセンサからのフィードバックを用いて)自由電子レーザFELの1つ以上の特性を制御することによって制御可能である。例えば、(電子ビームEのパワーを放射ビームBのパワーに変換する)アンジュレータの変換効率、電子ビームEのエネルギ、及び/又は自由電子レーザFELの別の特性を制御すればよい。しかしながら、自由電子レーザFEL及びこの自由電子レーザFELが放出する放射ビームBの特性の多くは相互に関連しているので、1つの特性を変化させると別の特性に望ましくない変化が生じることがある。例えば、アンジュレータの変換効率及び/又は電子ビームEのエネルギを変化させると、放射ビームBの波長、帯域幅、及び/又は空間強度分布が変化することがある。自由電子レーザFELと基板Wとの間の光路の透過率は、放射ビームBの波長、帯域幅、及び/又は空間強度分布等の放射ビームBの特性に大きく依存し得る。従って、放射ビームBの特性(例えば波長、帯域幅、、空間強度分布)の変化は、基板Wで受光される放射線量に望ましくない変化が起こるというデメリットを伴う恐れがある。
[00240] あるいは、基板Wのターゲット位置を放射に露光する時間量を制御することによって、放射ビームBの他の特性(例えば波長、帯域幅、空間強度分布)に影響を及ぼすことなく、基板上のターゲット位置で受光される放射線量を制御することも可能である。
[00241] 一実施形態において、リソグラフィ装置は、スキャン方向を横断して基板Wのターゲット部分を通り抜けるある帯域の放射に対して基板をスキャンすることによってターゲット部分を露光するように構成可能である。放射の帯域を露光スリットと称することができる。基板W上のターゲット位置で受光される放射線量は、そのターゲット位置上に放射ビーム(例えばパターン付与された放射ビームBa’)を送出する露光時間期間と、この露光時間期間中に放射ビームで発生するパルスの数及び持続時間と、に依存する。例えばスキャンリソグラフィ装置において、基板Wのターゲット位置が放射ビームに露光される時間量は、露光スリットがその位置の上を移動するのに要する時間に依存する。ターゲット位置で受光される放射線量は、その露光時間量中に生じる放射ビームのパルス数と、各パルスでターゲット位置に送出される平均エネルギと、に依存する。一実施形態では、露光時間期間が約1msであるようにウェーハを露光スリットに対してスキャンすることができる。他の実施形態では、露光時間期間は1ms超としてもよく、例えば5msの長さとすることができる(例えば露光スリットに対するウェーハのスキャン移動が低速であるので)。
[00242] いくつかの実施形態において、基板W上のターゲット位置で受光される放射線量は、その位置の露光時間期間中にターゲット位置に入射する放射パルス数を制御することによって制御可能である。基板Wに入射する放射ビーム(例えばパターン付与された放射ビームBa’)は自由電子レーザFELから放出された放射ビームBから発し、露光時間期間中に基板Wに入射する放射ビームのパルス数は露光時間期間中の放射ビームBのパルス数に依存する。上述したように、放射ビームBのパルスは、フォトカソード43に入射するレーザビーム41のパルスに対応し、フォトカソード43から放出されてアンジュレータ24での放射放出を誘導する電子バンチ42に対応する。従って、フォトカソード43に入射するレーザビーム41のパルス数及び/又は露光時間期間中にアンジュレータ24を伝搬する電子バンチ42の数を制御することによって、露光時間期間中に基板Wのターゲット位置に入射する放射のパルス数を制御することができる。
[00243] 基板Wのターゲット位置に入射する放射パルス数の制御は、基板のターゲット位置に入射する放射パワーの制御と同等であると考えることができる。これは、少なくとも部分的に、自由電子レーザから出力される放射ビームBのパワーを制御することによって達成され得る。自由電子レーザから出力される放射ビームのパワーは、自由電子レーザから出力される放射ビームのパルス数を制御することによって制御可能である。
[00244] 図4に示す第1の制御装置51を用いて、露光時間期間中にフォトカソード43に入射するレーザビーム41のパルス数を制御することができ、従って露光時間期間中に電子ビームEを形成する電子バンチ42の数を制御することができる。また、図4には第2の制御装置52も示され、これを用いて露光時間期間中に入射器21から出力される電子バンチ42の数を制御することができる。第1及び/又は第2の制御装置51、52は、自由電子レーザから出力されるEUV放射ビームのパワーを測定するセンサ装置ST(図1を参照のこと)からのフィードバックを用いることができる(これによってフィードバックベースの制御ループを提供する)。これが、自由電子レーザから出力される放射ビームのパワーを制御する。
[00245] 第1の制御装置51及び/又は第2の制御装置52を用いて、露光時間期間中にアンジュレータ24を伝搬する電子バンチ42の数を制御し、従って、露光時間期間中に誘導される放射ビームBのパルス数と、露光時間期間中に基板Wで受光される放射のパルス数と、を制御することができる。従って、第1の制御装置51及び/又は第2の制御装置52を用いて、露光時間期間中に基板Wのターゲット位置が受光する放射線量を制御することが可能である。有利な点として、露光時間期間中に生じる放射ビームBのパルス数の制御によって放射線量を制御することは、放射ビームBの波長、帯域幅、又は空間強度分布のような放射ビームBの他の特性にほとんど又は全く影響を与えない。露光時間期間中に生じる放射ビームBのパルス数の制御によって放射線量を制御すると、例えば放射ビームパワーの1つ以上の測定値に応答するフィードバックベースの制御ループの一部として迅速に線量を調整することができるので、更に有利である。フィードバックベースの制御ループは、例えば10kHz以上の周波数で動作可能である。
[00246] いくつかの実施形態では、レーザビーム41の1つ以上のパルスがフォトカソード43に入射するのを実質的に防止することによって、基板Wのターゲット位置が受光する放射線量を制御することができる。レーザビーム41の1つ以上のパルスは、第1の制御装置51によってフォトカソード43に入射するのを実質的に防止することができる。
[00247] 図5は、ポッケルセル61、電圧源63、及び偏光子65を備える第1の制御装置51の一実施形態の概略図である。第1の制御装置51は、レーザ35からレーザビーム41を受光し、レーザビーム41をポッケルセル61に入射させる。ポッケルセル61は、電気光学結晶62及び1対の電極64を備えている。電極64はワイヤ67によって電圧源63に電気的に結合されて、電圧源63が電極64間に電位差を発生させて電気光学結晶62に印加電場を生成するように動作可能となっている。この印加電場に比例して電気光学結晶62の屈折率が変化するので、レーザビーム41が電気光学結晶62を伝搬する際にその偏光状態に所望の回転を発生させるため、電極64間の電位差を制御することができる。
[00248] 偏光子65は、所与の偏光状態を有する放射のみを透過するように構成されている。電圧源63は、偏光子65に入射するレーザビーム41の偏光状態を制御し、従って偏光子65を透過するレーザビーム41からの放射量を制御するように動作させることができる。ポッケルセル61に入射するレーザビーム41は直線偏光されている。偏光子65は例えば、レーザビーム41がポッケルセル61に入射する前のレーザビーム41の偏光状態を有する放射のみを透過させるように構成可能である。正常動作の間、電圧源63は電極64間に電位差を発生させないので、レーザビーム41が電気光学結晶62を伝搬する際にその偏光状態は変化せず、従ってレーザビーム41の実質的に全てが偏光子65を透過することができる。偏光子65を透過する放射は、第1の制御装置51から出て伝搬し、フォトカソード43に入射するように送出される(図4に示すように)。
[00249] 時として、レーザビーム41のパルスがフォトカソード43に入射するのを防止すること、又はフォトカソード43に入射するレーザビーム41のパルスのエネルギを低減することが望ましい場合がある。例えば、フォトカソード43に入射するレーザビーム41のパルスのエネルギを低減させて、フォトカソード43に入射するレーザビーム41の通常パルスの約10%以下のエネルギとすることが望ましい場合がある。電圧源63は、レーザビーム41が電気光学結晶62を伝搬する際にその偏光状態を約90度回転させる電位差を電極64間に発生させるように動作可能である。このためレーザビーム41を偏光子65によって実質的に阻止することができ、従ってフォトカソード43に入射するレーザビーム41からの放射は実質的に存在しない。
[00250] 電圧源63は、電極64間に電位差を発生させない第1の動作モードと電極64間に電位差を発生させる第2の動作モードとの間でポッケルセル61をスイッチングさせるように動作することができる。第1の動作モード中、レーザビーム41のパルスは偏光子65を透過し、フォトカソード43に入射し、フォトカソード43から電子バンチ42の放出を生じる。第2の動作モード中、レーザビーム41のパルスが偏光子65を透過しないようにその偏光状態が回転される。このため、レーザビーム41のパルスはフォトカソード43に入射せず、フォトカソード43からの対応する電子バンチ42は存在しない。ポッケルセル61の第2の動作モードへのスイッチングによってレーザビーム41の1つ以上のパルスがフォトカソード43に入射するのを防止することは、レーザビーム41のこの阻止されたパルスに対応する電子バンチ42がフォトカソード43から放出されないことを意味する。従って、レーザビーム41の1つ以上のパルスが電子ビームE内に関連した電子バンチ42を含まないように、電子ビームEは妨害される。電子ビームEの妨害は、アンジュレータ24を伝搬する電子バンチ42の妨害を生じ、従ってアンジュレータ24における放射パルス放出の誘導の妨害を生じる。結果として、自由電子レーザFELから放出される放射ビームBのパルスが妨害される。
[00251] 自由電子レーザFELから放出される放射ビームBのパルスを妨害すると、基板Wのターゲット位置に入射する放射のパルスの妨害が生じ、このため、ターゲット位置の露光時間期間(例えばその位置の上で露光スリットをスキャンする時間)中にターゲット位置に入射する放射線量が低減することは認められよう。第1の制御装置51の電圧源63は、基板Wのターゲット位置が受光する放射線量を制御するために露光時間期間中にその位置に入射する放射パルス数を制御するように制御可能である。電圧源63は、例えばコントローラCT(図1に示すコントローラCTに相当するものとすればよい)によって制御すればよい。
[00252] 理想的な適用例では、レーザビーム41は完璧に直線偏光され、偏光子65はポッケルセル61に入射したレーザビーム41の偏光状態を有する放射を透過させるように構成されている。そのような理想的な適用例では、ポッケルセル61が第2の動作モードである場合、レーザビーム41の偏光状態は90度回転され、レーザビーム41からの放射は偏光子65を透過せず、レーザビーム41のパルスはフォトカソード43に入射しない。しかしながら実際には、レーザビーム41はわずかに偏光解消され、偏光子65が透過させる偏光状態に対して垂直偏光状態を有する小さい成分を含み得る。ポッケルセル61が第2の動作モードである場合、垂直偏光成分の偏光状態は90度回転されて、偏光子65を透過し得る。従って、ポッケルセル61が第2の動作モードである場合でも、レーザビーム41からの少量の放射が偏光子65を透過し、フォトカソード43に入射することがある。例えば、ポッケルセル61が第2の動作モードである場合に、レーザビーム41の低パワーパルスがフォトカソード43に入射し得る。低パワーパルスは、ポッケルセル61が第1の動作モードである場合にフォトカソード43に入射するレーザビーム41のパルスパワーの約10%以下のパワーを有し得る。
[00253] レーザビーム41の低パワーパルスがフォトカソード43に入射することによって、フォトカソード43から低電荷電子バンチが放出することがある。低電荷電子バンチは、ポッケルセル61が第1の動作モードである場合にフォトカソード43から放出される公称電子バンチ42のピーク電流の約10%以下のピーク電流を有し得る。第1の動作モードで放出される公称電子バンチを、代表電子バンチ(typical electron bunch)42と称することができる。
[00254] アンジュレータ24において、所与の電子バンチ42により誘導される放射ビームBのパルスのパワーは、電子バンチ42の電荷及びアンジュレータ24で電子バンチ42によって生じる放射の利得の関数である。アンジュレータ24において電子バンチ42によって生じる利得は、電子バンチ42のいわゆる利得長によって表される。電子バンチ42の利得長は、アンジュレータ24において所与の放射利得を生じるために電子バンチ42が伝搬しなければならないアンジュレータ部分の長さを表す。ポッケルセル61が第1の動作モードである場合にフォトカソード43から放出される代表電子バンチ42は、アンジュレータ24を約15〜25利得長にわたって伝搬することができる。電子バンチの利得長は、電子バンチのピーク電流の立方根分の1に比例する。従って、代表電子バンチ42のピーク電流の約10%のピーク電流を有する低電荷電子バンチは、代表電子バンチ42の利得長よりも約2〜3倍大きい利得長を有する。従って、所与の長さのアンジュレータ24では、低電流電子バンチの利得は代表電子バンチ42の利得の約2〜3分の1である。
[00255] ポッケルセル61が第2の動作モードである場合にフォトカソード43から放出される低電荷電子バンチは、代表電子バンチ42の電荷の約10%の電荷を有し、代表電子バンチが生じる利得の約2〜3分の1の放射利得をアンジュレータ24において発生し得る。従って、低電流電子バンチが誘導する放射ビームBのパルスは、代表電子バンチ42が誘導する放射ビームBのパルスエネルギの約0.1%未満のエネルギを有し得る。更に、低電流電子バンチが誘導する放射ビームBのパルスは、代表電子バンチ42が誘導する放射ビームBのパルスの発散よりも大きい発散(例えば約10倍大きい発散)を有し得る。これらのファクタの組み合わせが意味することは、低電流電子バンチが誘導する放射ビームBのパルスによって基板Wのターゲット部分で受光される放射線量は、代表電流電子バンチ42が誘導する放射ビームBのパルスによって受光される放射線量に比べ、無視できる程度だということである。従って、電子ビームEの低電流電子バンチが自由電子レーザFELに与える影響は無視できる程度であると考えられる。このため、第1の制御装置51は、レーザビーム41の少なくとも1つのパルスが、入射器21から出力される電子ビームE内に関連した電子バンチ42を実質的に含まず、更に放射ビームB内に関連したパルスを実質的に含まないように、電子ビームEを妨害すると考えることができる。
[00256] いくつかの実施形態では、レーザビーム41の低パワーパルスのパワー及び低電荷電子バンチのピーク電流は、レーザビームがポッケルセル61に入射する前にレーザビーム41の経路に第2の偏光子を位置付けることによって低減させることができる。第2の偏光子は、偏光子65を透過する放射と同じ偏光状態を有する放射のみを透過させるように構成すればよく、ポッケルセル61に入射するレーザビーム41の偏光解消を低減させるように作用することができる。
[00257] 偏光子65は所与の偏光状態を有する放射のみを透過させるように構成されているが、偏光子65は、他の偏光状態の何らかの放射を透過させることも可能である。例えば、他の偏光状態の放射の約1〜0.1%に偏光子65を透過させることができる。この放射を、偏光子65が漏らす放射と呼ぶことができる。このため、ポッケルセル61が第2の動作モードであってレーザビーム41の大部分が偏光子65によって阻止される場合、レーザビーム41からの一部の放射をフォトカソード43に入射させるようにレーザビーム41からの一部の放射を偏光子65が漏らすことができる。
[00258] いくつかの実施形態では、レーザビーム41の周波数を2倍にする(かつ、波長を半分にする)ように作用する周波数倍増結晶を、レーザビーム41の経路に位置付けることができる。例えばレーザ35は、約1064nmの波長を有するレーザビーム41を放出するNd:YAGレーザとすることができる。レーザビーム41は、周波数倍増結晶を通過した後、約532nmの波長を有し得る。
[00259] 典型的に、周波数倍増結晶は、所与の偏光状態を有する放射の周波数のみを2倍にするように機能する。周波数倍増結晶は例えば、レーザビーム41が偏光子65を透過した後にレーザビーム41の光路に位置決めすることができる。周波数倍増結晶は、偏光子65が透過させるように構成された偏光状態を有する放射の周波数を2倍にするように構成可能である。偏光子65が異なる偏光状態を有するいくらかの放射を透過させた場合(例えばポッケルセル61が第2の動作モードである場合)、周波数倍増結晶は、この漏れた放射の周波数を2倍にしない。これは周波数倍増を行うために必要な偏光状態でないからである。このように周波数倍増結晶は、追加の偏光子として作用し、漏れた放射がフォトカソード43に入射するのを防ぐことができる。
[00260] 更に、周波数倍増結晶は、ポッケルセル61が第2の動作モードである場合に偏光子65を透過するレーザビーム41の低パワーパルスのパワーと、ポッケルセル61が第1の動作モードである場合に偏光子65を透過するレーザビーム41の高パワーパルスとのコントラストを増大させるように機能することができる。周波数倍増結晶がレーザビーム41のパルスを周波数2倍のパルスに変換する変換効率は、レーザビーム41のパルスのパワーに比例する。従って、低パワーパルスは高パワーパルスよりも低い変換効率で変換されるので、周波数倍増結晶によって低パワーパルスと高パワーパルスとのコントラストが増大する。
[00261] 有利な点として、ポッケルセル61を用いることで、レーザビーム41の阻止パルスとフォトカソード43に入射するレーザビーム41の可能パルスとの間の高速スイッチングが可能となる。電圧源63は、レーザビーム41のパルス1つだけがフォトカソード43への入射を阻止されるのに充分な高速でポッケルセル61を第1の動作モードと第2の動作モードとの間でスイッチングするように動作可能であることが望ましい場合がある。例えば電圧源は、レーザビーム41の1つのパルスがポッケルセル61を伝搬してレーザビーム41のこのパルスが偏光子65により阻止される時間期間だけポッケルセル61を第2の動作モードにスイッチングし、次いで、レーザビーム41の次のパルスがポッケルセル61を伝搬してレーザビーム41のこのパルスが偏光子65を透過する前にポッケルセル61を第1の動作モードにスイッチングすることが望ましい場合がある。このようなポッケルセル61の高速スイッチングにより、レーザビーム41の個々のパルスを制御することが可能となる。
[00262] レーザビーム41のパルス繰り返し周波数は100MHz超とすることができる。例えば、レーザビーム41のパルス繰り返し周波数は約300MHzであり得る。レーザビーム41の連続パルスがポッケルセル61を伝搬する際のパルス間の間隔は、約70cmとすることができる。電気光学結晶62の長さは約100mmとすることができ、このため電気光学結晶62を伝搬するレーザビーム41のパルスは一度に1つだけである。これによって、ポッケルセル61はレーザビーム41のパルスごとに異なる動作モード間でスイッチングすることができる。
[00263] 第2の動作モードにおいて電極64間に発生させる電位差(約90度のレーザビーム41の偏光状態の回転を生じるため)は、約100Vとすればよい。電極64間に所望の電位差(例えば100V)を発生させるのに要する時間量は、ポッケルセル61の容量と、電圧源63を電極64に接続するケーブル67のインピーダンスと、に比例する。ポッケルセル61の容量は、電極の表面積、電極間の間隔、及び電気光学結晶62の比誘電率の関数である。
[00264] 一実施形態において、電気光学結晶62の比誘電率は約20〜50の範囲内に収まり得る。各電極64の表面積は約500mm2とし、電極64の間隔は約5mmとすればよい。ポッケルセルの対応する容量は約50pFとすればよい。ケーブル67のインピーダンスは約50オームとすればよい。このような実施形態では、電極64間に所望の電位差100Vを発生させるのに要する時間量は約2.5ナノ秒であり得る。このような時間期間は、ポッケルセル61に到達するレーザビーム41の連続パルス間の遅延と同等であり得るので、このような時間期間は、連続パルス間でポッケルセルの第1及び第2の動作モードのスイッチングを可能とするには長すぎる場合がある。
[00265] 電極64間に所望の電位差(例えば100V)を発生させるのに要する時間量は、各々を別個の電圧源63に接続した複数の対の電極64をポッケルセルを設けることで短縮することができる。例えばいくつかの実施形態では、ポッケルセルに5対以上の電極64を設けることができる。いくつかの実施形態では、ポッケルセルに約10対までの電極64を設けてもよい。複数対の電極64の各々では表面積が小さくなるので、複数の電極64の各々間の容量を低減することができる。複数対の電極64間で均等に所与の表面積を分割した実施形態では、単一の対の電極64が所与の表面積をカバーする実施形態に比べて、各電極対64間の容量は、電極対64の数に等しい率だけ低減する。例えば、5対の電極を設けて所与の表面積をカバーする実施形態における各電極対間の容量は、単一の対の電極が同一の表面積をカバーする実施形態における電極対64間の容量に比べて、ほぼ5分の1である。
[00266] 各電極対64間の容量の低減によって、各電極対64間に所望の電位差を発生させるのに要する時間量が低減する。各電極対64に別個の電圧源63を設けることができる。別個の電圧源63は相互に同期するように動作して、各電極対64間の電位差を実質的に同一にすることができる。例えば複数の電圧源63を、相互に約1ピコ秒未満内に同期させることができる。
[00267] 複数対の電極64を備えたポッケルセル61を、電極対64間で電位差を発生させない第1の動作モードと、各電極対64間で所望の電位差を同期して発生させる第2の動作モードと、の間でスイッチングすることができる。各電極対64間の容量を低減させるように複数対の電極64を備えたポッケルセルを提供することで、第1の動作モードと第2の動作モードとの間でポッケルセル61をスイッチングするのに要する時間量が低減する。例えば、複数対の電極64を備えたポッケルセル61を、約1ナノ秒未満の時間期間で第1の動作モードと第2の動作モードとの間でスイッチングすることができる。これによって、ポッケルセル61にレーザビーム41の後続パルスが到着する間にポッケルセル61を第1及び第2の動作モードでスイッチングすることができ、従って、レーザビーム41のパルスごとにポッケルセル61の動作モードをスイッチングすることが可能となる。
[00268] 代替的な実施形態において、第1の制御装置51は、レーザビーム41が偏光子65に入射する前に伝搬する複数のポッケルセル61を備えることも可能である。複数のポッケルセル61の各々は、単一のポッケルセル61を備えた実施形態に比べて、例えば長さを短くすることができる。例えば、複数のポッケルセル61の各々は長さを約10mmとすることができる。複数のポッケルセル61の各々は、それぞれ別個の電圧源63に結合された1つ以上の電極64を備えてもよい。電圧源63は、電極対64間に電位差を発生させない第1の動作モードと、各電極対間に電位差を発生させる第2の動作モードと、の間でポッケルセル61をスイッチングさせるように動作可能である。ポッケルセル61が第2の動作モードである場合の各電極対64間の電位差は、各ポッケルセルが90度未満の角度だけレーザビーム41の偏光状態を回転させるようにすればよい。複数のポッケルセル61の各々が第2の動作モードであってレーザビーム41がポッケルセル61の各々を伝搬する場合に、複数のポッケルセル61の組み合わせ効果によってレーザビームの偏光状態を約90度回転させて、偏光子65を透過するレーザビーム41が実質的に存在しないように、複数のポッケルセル61を構成することができる。
[00269] 第2の動作モードである場合にレーザビーム41の偏光状態を90度未満だけ回転させるように構成されたポッケルセル61において電極対64間に発生させる電位差は、レーザビーム41の偏光状態を90度回転させるように構成された(例えば図5に示すポッケルセル)電極対64間の電位差よりも小さくすることができる。複数のポッケルセル61の各々がレーザビーム41の偏光状態を90度未満だけ回転させる実施形態では、単一のポッケルセル61がレーザビーム41の偏光状態を90度回転させる実施形態に比べ、第1の動作モードと第2の動作モードとの間のスイッチングの際に電極対64間に発生させる電位差が小さい。これにより、ポッケルセル61を第1の動作モードと第2の動作モードとでスイッチングするのに要する時間量が低減するという利点が得られる。上述したように、ポッケルセル61を第1の動作モードと第2の動作モードとでスイッチングするのに要する時間量が低減すると、ポッケルセル61にレーザビーム41の後続パルスが到着する間にポッケルセル61を第1の動作モードと第2の動作モードとでスイッチングすることができ、従ってレーザビーム41の個々のパルスごとにポッケルセル61の動作モードをスイッチングすることが可能となる。
[00270] 第1の制御装置51の代替的ではあるが同等の実施形態において、偏光子65は、レーザビーム41がポッケルセル61に入射する前のレーザビーム41の偏光状態に直交した偏光状態を有する放射のみを透過させるように構成可能である。そのような実施形態では、電圧源63が電極64間に電圧を印加しない時間中、レーザビーム41は偏光子65によって阻止される。電圧源63が電極64間に電圧を印加する時間中、レーザビーム41が偏光子65を透過してフォトカソード43に入射するようにポッケルセル61はレーザビーム41の偏光状態を回転させる。
[00271] 図6は、第1の制御装置51’の代替的な実施形態の概略図である。図6に示す第1の制御装置51’は、第1の偏光子65a、第2の偏光子65b、第1のポッケルセル61a、及び第2のポッケルセル61bを備えている。第1及び第2のポッケルセル61a、61bは各々、電気光学結晶62a、62b及び電極対64a、64bを備えている。電極対64a、64bは、図6に示すようなワイヤ67a、67bによって電圧源63a、63bに電気的に結合されている。
[00272] 第1の偏光子65aは、これに入射するレーザビーム41の偏光状態を有する放射を透過させるように構成されている。第1の偏光子65aは、レーザビーム41の偏光解消を低減させるように機能することができる。第1及び第2のポッケルセル61a、61bは各々、各電極対64a、64b間に電位差を発生させない第1の動作モードと、各電極対64a、64b間の電位差を発生させる第2の動作モードと、の間でスイッチングするように動作可能であり、レーザビーム41が各ポッケルセル61a、61bを伝搬する間にその偏光状態を約90度回転させる。第1及び第2のポッケルセル61a、61bは、別個の電圧源63a、63bによって第1及び第2の動作モード間で個別にスイッチングすることができる。
[00273] 第2の偏光子65bは、第1の偏光子65aを透過する放射の偏光状態に直交した偏光状態を有する放射のみを透過させるように構成されている。第1のポッケルセル61a及び第2のポッケルセル61bの双方が第1の動作モードである場合、レーザビーム41の偏光状態はポッケルセル61a、61bのいずれによっても回転されず、レーザビーム41は第2の偏光子65bを透過しない。第1又は第2のポッケルセル61a、61bの一方(双方ではない)が第2の動作モードである場合、レーザビーム41の偏光状態は第1及び第2の偏光子65a、65bの間で約90度回転して、レーザビーム41は第2の偏光子65bを透過する。第1のポッケルセル61a及び第2のポッケルセル61bの双方が第2の動作モードである場合、レーザビーム41の偏光状態は第1及び第2の偏光子65a、65bの間で180度回転し、レーザビーム41は第2の偏光子65を透過しない。従って、レーザビーム41が第2の偏光子65を透過するためには、第1又は第2のポッケルセル61a、61bの一方(双方でない)が第2の動作モードでなければならない。電圧源63a、63bは、コントローラCT(図1に示すコントローラCTに相当するものとすればよい)によって制御して、レーザビーム41のいくつのパルスが第2の偏光子65bを透過してフォトカソード43に入射するかを制御することができる。
[00274] 図7は、ある時間期間において第1及び第2のポッケルセル61a、61bによって生じるレーザビーム41の偏光状態の回転(図7の上部)と、同じ時間期間において第2の偏光子65bを透過する放射のパワー(図7の下部)と、の概略図である。図7の上部において、第1のポッケルセル61aによって生じる偏光回転を破線で示し、第2のポッケルセル61bによって生じる偏光回転を点線で示す。
[00275] 図7に示す時間期間の開始時、第1のポッケルセル61aは第2の動作モードであり、レーザビーム41の偏光状態を90度回転させる。第2のポッケルセル61bは第1の動作モードであり、レーザビーム41の偏光状態を回転させない。従って、第1及び第2のポッケルセル61a、61bによって生じるレーザビーム41の偏光状態の回転の合計は90度であり、図7の下部に示す透過パワーからわかるように、レーザビーム41は第2の偏光子65bを透過する。
[00276] 図7に示す時点t1において、第1のポッケルセル61aは第1の動作モードにスイッチングし、レーザビーム41の偏光状態を回転させない。時点t2において、第2のポッケルセル61bは第2の動作モードにスイッチングして、レーザビーム41の偏光状態を90度回転させる。時点t1と時点t2との間に、第1のポッケルセル61a又は第2のポッケルセル61bのいずれもレーザビーム41の偏光状態を回転させない時間期間tiがある。時間期間tiの間レーザビーム41は第2の偏光子65bを透過しないので、レーザビーム41はフォトカソード43に入射しない。時点t2の後、第2のポッケルセル61bはレーザビーム41の偏光状態を90度回転させ、レーザビーム41は再び第2の偏光子65bを透過してフォトカソード43に入射する。
[00277] 図7に示す時点t3において、第1のポッケルセル61aはスイッチングして第2の動作モードに戻り、レーザビーム41の偏光状態を90度回転させる。時点t4において、第2のポッケルセル61bは第1の動作モードにスイッチングし、レーザビーム41の偏光状態を90度回転させない。時点t3と時点t4との間に、第1のポッケルセル61a及び第2のポッケルセル61bが双方ともレーザビーム41の偏光状態を90度回転させて180度の組み合わせ回転を与える時間期間tiがある。時間期間tiの間レーザビーム41は第2の偏光子65bを透過しないので、レーザビーム41はフォトカソード43に入射しない。時点t4の後、第2のポッケルセル61bはレーザビーム41の偏光状態を90度回転させなくなり、レーザビーム41は再び第2の偏光子65bを透過してフォトカソード43に入射する。
[00278] また、図7に示す時点t5において、第1のポッケルセル61aはスイッチングして第1の動作モードに戻り、時点t6において、第2のポッケルセル61bはスイッチングして第2の動作モードに戻る。時点t5と時点t6との間に、第1のポッケルセル61a又は第2のポッケルセル61bのいずれもレーザビーム41の偏光状態を回転させないためにレーザビーム41が第2の偏光子65bを透過しない時間期間tiがある。
[00279] 図7に示す実施形態では、第1及び第2のポッケルセル61a、61bはそれぞれ時間期間Ta及びTbで周期的に第1及び第2の動作モード間でスイッチングする。第1及び第2のポッケルセル61a、61bの周期的なスイッチングは位相差θを有し、これによって、レーザビーム41が第2の偏光子65bを透過しないので電子ビームEが妨害される時間期間tiを生じる。図7から、電子ビームEが妨害される時間期間tiの長さを決定するのは、スイッチングの時間期間Ta、Tbでなく、第1及び第2のポッケルセル61a、61bのスイッチング間の位相差θであることは認められよう。従って、図6に示す第1の制御装置51’の実施形態では、ポッケルセル61a、61bの動作モードをスイッチングする時間期間Ta、Tbよりはるかに短い時間期間tiの間、レーザビーム41を阻止し電子ビームEを妨害することが可能となる。レーザビーム41を阻止し電子ビームEを妨害する時間期間tiは、例えば、レーザビーム41の1つのパルスが第1及び第2のポッケルセル61a、61bを伝搬する時間期間とほぼ等しくすることができる。従って、図6の第1の制御装置51’を用いて、レーザビーム41の単一パルスがフォトカソードに入射するのを防ぐことができ、レーザビーム41の単一パルスが入射器21から出力される電子ビームE内に関連した電子バンチ42を実質的に含まないように電子ビームを妨害することができる。いくつかの実施形態では、第1の制御装置51’は、レーザビーム41の2つ以上の連続パルスが入射器21から出力される電子ビームE内に関連した電子バンチ42を実質的に含まないように電子ビームEを妨害することができる。
[00280] 所与の時間内にフォトカソード43への入射を阻止するレーザビーム41のパルス数を調整する場合、ポッケルセルの各々が第1及び第2の動作モードである時間量をほぼ一定に保持することが望ましい場合がある。これによって、ポッケルセル内に放散されるレーザビーム41からのパワー量をほぼ一定に維持することができ、従ってポッケルセルの温度をほぼ一定を維持することが可能となる。所与の時間内にフォトカソード43への入射を阻止されるレーザビーム41のパルス数を調整するため、レーザビーム41を阻止する時間期間tiを調整するように第1及び第2のポッケルセル間の位相差θを調整すればよい。
[00281] 代替的な実施形態では、第1のポッケルセル61aと第2のポッケルセル61bとの間に半波長板を位置付けることができる。半波長板は、レーザビーム41の偏光状態を約90度回転させるように構成可能である。そのような実施形態では、第1及び第2のポッケルセルが双方とも同一の動作モードである時間中レーザビーム41は第1の制御装置51’を透過することができ、第1及び第2のポッケルセルが異なる動作モードである時間中はレーザビーム41を第1の制御装置51’によって阻止することができる。
[00282] 1つ以上のポッケルセル61を第1の動作モードと第2の動作モードとの間でスイッチングする実施形態について説明した。ポッケルセル61を第1の動作モードと第2の動作モードとの間でスイッチングすると、いくらかのパワーがポッケルセル61の電気光学結晶62内に放散される場合がある。電気光学結晶61へのパワー放散は、電気光学結晶61を加熱させることがある。いくつかの実施形態では、ポッケルセル61の温度を安定化させるため、1つ以上のポッケルセル61を冷却することができる。
[00283] 第1の制御装置51、51’は、フォトカソード43に入射するレーザビーム41のパワーを制御し、これによってフォトカソード43から放出される電子バンチの電流を制御するように動作可能である。例えば図1及び図4を共に参照すると、第1の制御装置51、51’を通ったレーザビーム41のパワーは、センサ装置STにより測定されるようなEUV放射ビームBのパワーに応答してコントローラCTによって制御することができる。このように、第1の制御装置51、51’はフィードバックベースの制御ループF1の一部を形成することができる。EUV放射ビームBの測定パワーが大きすぎる場合、コントローラCTは第1の制御装置51、51’にレーザビーム41からのパルスの阻止数を増加させる。逆に、EUV放射ビームBの測定パワーが小さすぎる場合、コントローラCTは第1の制御装置51、51’にレーザビーム41からのパルスの阻止数を減少させる。
[00284] 一実施形態では、EUV放射ビームのパワーの代わりに電子ビームEの電流を測定してもよい。測定EUV放射ビームパワーの代わりに測定電流を用いて、フィードバックベースの制御ループを与えることができる。
[00285] 上述の実施形態では、フォトカソード43に印加する電圧を制御することで、欠落したレーザビームパルスのために電子バンチがフォトカソードから放出されない事実に対応することができる。一般に、フォトカソード43に印加する電圧は安定化することができ、この安定化は欠落したレーザビームパルスを考慮に入れることができる。電圧安定化は、例えばフィードフォワード安定化とすればよい。
[00286] レーザビーム41の1つ以上のパルスがフォトカソード43に入射するのを阻止して、電子ビームEを妨害すると共に、レーザビーム41の少なくとも1つのパルスが入射器から出力される電子ビームE内に関連した電子バンチを実質的に含まないように動作可能である第1の制御装置51、51’の実施形態について説明した。これによって、自由電子レーザから出力される放射ビームBのパワーを制御することができる。第1の制御装置51、51’を用いることに加えて又はその代わりに、図4に示すような第2の制御装置52によって自由電子レーザから出力される放射ビームBのパワーを制御することも可能である。第2の制御装置52は、フォトカソード43から放出される電子バンチ42を電子ビームEから除去するように動作可能であり、これによって、レーザビーム41の少なくとも1つのパルスが電子ビームE内に関連した電子バンチを実質的に含まないように電子ビームEを妨害する。
[00287] 図8は、第2の制御装置52の実施形態の概略図である。第2の制御装置52は、電子ビームEの軌道のいずれかの側に配置された1対の伝導性板74を備えている。伝導性板74は、ワイヤ77によって電圧源73に電気的に結合されている。ワイヤ77、伝導性板74、及び電圧源73は、電流が流れ得る電気回路を形成する。電流の方向は図8のワイヤ77上の矢印の先端部により示されている。また、電気回路には抵抗75も含まれる。好ましくは、ワイヤ77、伝導性板74、及び抵抗75のインピーダンスを整合させる。電圧源は、電流が伝導性板を流れるように板74間に電位差を発生させるように動作可能である。電流が伝導性板74を反対方向に流れることで、板74間に磁場が発生する。電圧源73はコントローラCT(図1に示すコントローラCTに相当するものとすればよい)によって制御される。伝導性板74間に磁場を生成するように板74間に電位差を発生させると、発生した磁場は電子ビームEの電子バンチ42の軌道を変えて電子バンチをビームダンプ72の方に送出するように機能する。図8に電子バンチ42’を示すが、その軌道は伝導性板74間の磁場により変更され、電子バンチ42’は軌道71に沿ってビームダンプ72へと送出される。
[00288] ビームダンプ72は、偏向電子バンチ42’を吸収するのに充分な量の材料を含む。ビームダンプ72は、電子を吸収することで、ブースタ33に到達し線形加速器22によって加速され得るデメリットのある二次電子の生成を防止する。いくつかの実施形態では、代替的な手段を用いて二次電子の生成を防止することができる。例えば、電子ビームEが伝搬するビームパイプに1つ以上の孔を位置付けて、二次電子を生成することなく、偏向電子バンチ42’をビームパイプから外へ伝搬させることができる。いくつかの実施形態では、例えば二次電子がブースタ33の方向へ伝搬するのを防止するように構成された電場及び/又は磁場を発生させることによって、二次電子をブースタ33から離れた方向へ送出することができる。
[00289] 電圧源73は、伝導性板74間の電位差をオン及びオフにスイッチングすることで、伝導性板74間に電位差を発生させず電子バンチ42が同一の軌道に沿って移動して電子ビームE内に留まる第1の状態と、伝導性板74間に電位差を発生させて1つ以上の電子バンチ42’を電子ビームEの外側に偏向させてビームダンプ72へと送出する第2の状態と、の間でスイッチングするように動作可能である。電圧源73は例えば、一度に1つだけの電子バンチ42’を電子ビームEの外側へ偏向させるように、充分に高速に第1及び第2の状態間でスイッチングするように動作可能である。例えば、伝導性板74間の電位差をオフにして第1の電子バンチ42を電子ビームEの外側へ偏向させない間、第1の電子バンチ42は伝導性板74を通過することができる。次いで、後続の第2の電子バンチ42’が伝導性板74間を通過する前に伝導性板74間の電位差をオンにスイッチングして、第2の電子バンチを電子ビームEの外側へ偏向させて軌道71に沿ってビームダンプ72へと送出することができる。次いで、後続の第3の電子バンチ42が伝導性板74間を通過する前に伝導性板74間の電位差を再びオフにして、第3の電子バンチ42を電子ビームEの外側へ偏向しないようにすればよい。伝導性板74間の電位差は、例えば約10ナノ秒未満の時間期間だけ発生させることができる。例えば伝導性板74間の電位差は、約1ナノ秒以下の時間期間だけ発生させればよい。
[00290] あるいは、充分な時間期間にわたって伝導性板74間に電位差を発生させて、2つ以上の連続した電子バンチ42’を電子ビームEの外側にビームダンプ72の方へ偏向させることも可能である(例えば100以下の電子バンチ、例えば10以下の電子バンチ)。
[00291] 伝導性板74間の電位差によって生じる電子バンチ42’の角度偏向Δαの近似値は、以下の式3によって与えられる。
ここで、qは電子の電荷であり、Lは伝導性板74の電子ビームEの伝搬方向に沿った長さであり、Vは伝導性板74間の電位差であり、Eeは電子バンチ42’における電子のエネルギであり、hは伝導性板74間の間隔であり、wは伝導性板74の幅である。
[00292] 一実施形態において、伝導性板74間で電位差Vを発生させると、約1度の角度偏向Δαが得られる。この結果、伝導性板74から下流に約1メートルの距離では、偏向電子バンチ42’と電子ビームEとの間隔は約2cmとなり得る。他の実施形態では、角度偏向Δαは1度超とすることができ、例えば6度の大きさであり得る。この結果、伝導性板74から下流に約1メートルの距離では、偏向電子バンチ42’と電子ビームEとの間隔は約10cmとなり得る。
[00293] 伝導性板74間に発生させる電位差Vは、例えば約0.2kV超とすればよい。いくつかの実施形態において、電位差Vは1kVの大きさであり得る。単一の電子バンチ42’を電子ビームEの外側へ偏向させるのに充分な速さで0.2〜1kVの電位差をオン及びオフにスイッチングすることができる電圧源73は、市販されている。
[00294] 上述したように、第2の制御装置52は、1つ以上の電子バンチ42’を電子ビームEの外側へ偏向させるように動作可能である。従って、偏向した電子バンチ42’はブースタ33によっても線形加速器22によっても加速されず、アンジュレータ24を伝搬しない。このため第2の制御装置52は、レーザビーム41の少なくとも1つのパルスが入射器21から出力される電子ビームE内に関連した電子バンチを実質的に含まないように、電子ビームEを妨害するように動作可能である。第1の制御装置51を参照して上述したように、電子ビームEの妨害は、自由電子レーザFELから放出される放射ビームEのパルスを妨害し、従って基板Wのターゲット位置で受光される放射線量を低減させる。第2の制御装置52は、自由電子レーザにより放出される放射のパワーを制御するため、(例えばコントローラCTによって)制御することができる。コントローラCTは、EUV放射ビームのパワー(又は電子ビームの電流)に対応する信号を入力として受信することができる。このように、EUV放射ビームのパワーを制御することができるフィードバックベースの制御ループを設けることができる。これによって、露光時間期間中のEUV放射ビームパワーの変動を低減することができる。
[00295] 電子ビームEの外側に偏向する電子バンチ42’の数は充分に少ないので、自由電子レーザにおいて生じる過渡現象は比較的小さい。このため、例えば自由電子レーザから出力されるEUV放射ビームの波長は実質的に一定のままであり得る。実質的に一定の波長というのは、波長が変化しないこと、又は変化する量が充分に小さいので波長に依存したミラー透過のために生じるターゲット位置での線量ばらつきが所望の閾値未満に収まることを意味すると解釈することができる。
[00296] 代替的な実施形態では、電子ビームEを妨害して放射ビームBのパルスを妨害するため、自由電子レーザFELの他の位置で1つ以上の電子バンチ42’を電子ビームEの外側へ偏向させることも可能である。例えば、ブースタ33の後及び/又は線形加速器22の後で1つ以上の電子バンチ42を電子ビームEの外側へ偏向させることができる。しかしながら、電子バンチ42’を電子ビームEの外側へ偏向させるのは電子バンチ42’が比較的小さいエネルギを有する時であると有利である。例えば、電子バンチをブースタ33により加速する前、及び/又は電子バンチ42’を線形加速器22により加速する前に、電子バンチ42’を電子ビームEの外側へ偏向させることが有利である。その理由は、ブースタ33及び/又は線形加速器22において電子バンチ42のエネルギが増大すると、電子バンチ42の所望の偏向を与えるために必要な電場の大きさが増すからである。従って、ブースタ33及び/又は線形加速器22により加速された電子バンチ42を偏向させるには、伝導性板74間にいっそう大きな電位差Vを発生させる必要がある。大きい電位差の発生には時間がかかるので、電位差発生の速度を上げることがある。これは、単一の電子バンチ42’を電子ビームEの外側へ偏向させることが困難となり得ることを意味する。
[00297] 更に、ブースタ33及び/又は線形加速器22において加速された後に電子ビームEの外側へ偏向させた電子バンチは、加速される前に電子ビームの外側へ偏向させた電子バンチ42’よりも高いエネルギを有する。高エネルギの偏向電子バンチ42’は二次電子及び二次アイソトープを発生させるが、これを自由電子レーザFELから除去しなければならない可能性がある。
[00298] 図8に示す第2の制御装置52の実施形態では、電圧源73によって電流は伝導性板で反対方向に流れる。代替的な実施形態では、電流が伝導性板74の各々において同一方向に流れるように1つ以上の電圧源を構成することができる。そのような実施形態では、板74間に磁場を発生させて、板74間を移動する電子バンチ42を磁場によって脱焦させることができる。脱焦した電子バンチ42は、脱焦していない電子バンチ42に比べて大幅に低下した変換効率で、アンジュレータ24において放射放出を誘導し得る。従って、脱焦した電子バンチによりアンジュレータ24で誘導される放射パルスは、脱焦しない電子バンチによりアンジュレータ24で誘導される放射パルスよりも低いパワーを有し得る。このように、アンジュレータ24で誘導される対応した放射パルスのパワーを(例えば無視できる程度のパワーレベルまで)低減するため、電子バンチ42を第2の制御装置で脱焦することができる。これは、自由電子レーザFELから放出される放射ビームBのパルスを実質的に妨害すると考えられ、従って所与の露光時間期間に基板Wのターゲット位置が受光する放射パルス数を減らし、これによってターゲット位置で受光される放射線量を低減させることができる。
[00299] レーザビーム41の少なくとも1つのパルスが入射器21から出力される電子ビームE内に関連した電子バンチ42を実質的に含まないように電子ビームEを妨害するよう動作可能な第1の制御装置51及び第2の制御装置52の実施形態について説明した。上述したとおり、入射器21から出力される電子ビームEを妨害すると、自由電子レーザFELから放出される放射ビームBのパルスが妨害され、従って所与の露光時間期間に基板Wのターゲット位置が受光する放射パルス数が減るので、これによってターゲット位置が受光する放射量を低減させる。従って、基板Wのターゲット位置が受光する放射線量を制御するために、電子ビームEを第1の制御装置51及び/又は第2の制御装置52によって妨害することができる。
[00300] 第1の制御装置51及び/又は第2の制御装置52は、放射ビームBの1つ以上の測定値に応じて制御することができる(例えばコントローラCTによって)。例えば、自由電子レーザFELから出力される放射ビームBのパワーを測定するように放射センサ(図示せず)を配置することができる。基板Wのターゲット位置で所望の放射線量が受光されるように、放射ビームBの測定パワーに応じて第1の制御装置51及び/又は第2の制御装置52を制御すればよい。例えば放射センサによって放射ビームパワーの増大が測定された場合、第1の制御装置51及び/又は第2の制御装置52はこの測定値に応答して、所与の露光時間期間に基板Wのターゲット位置が受光する放射パルス数を減らすように電子ビームEを妨害して、放射ビームBのパワー増大に関わらずターゲット位置で受光される放射線量を所望の線量に維持することができる。
[00301] いくつかの実施形態では、放射ビームBのパワー測定値を、自由電子レーザFELの出力以外のリソグラフィシステムLSの位置で測定することも可能である。例えば、ビーム拡大光学部品(存在する場合)から出力され、ビーム分割装置19に入力される放射ビームのパワーを測定してもよい。これに加えて又はこの代わりに、ビーム分割装置19により出力された後の1つ以上の分岐放射ビームBa〜Bnのパワーを測定することも可能である。これに加えて又はこの代わりに、1つ以上のリソグラフィ装置LAa〜LAn内で1つ以上の分岐放射ビームBa〜Bnのパワーを測定してもよい。例えば、基板Wで受光されるパターン付与された放射ビーム(例えばパターン付与された放射ビームBa’)のパワーを測定してもよい。一般に、放射ビームB又は分岐放射ビームBa〜Bnの測定を行い、第1の制御装置51及び/又は第2の制御装置52の制御に用いることで、所与の露光時間期間に基板Wのターゲット位置が受光する放射線量を制御することができる。
[00302] 一般に、放射ビームB又は分岐放射ビームBa〜Bnの測定を行い、第1の制御装置51及び/又は第2の制御装置52の制御に用いることで、自由電子レーザから出力される放射パワーを制御することができる。測定(複数の測定)は、自由電子レーザから出力される放射パワーを安定化させるように機能するフィードバックベースの制御ループの一部を形成し得る。図1にフィードバックベースの制御ループF1の一例を示す。
[00303] いくつかの実施形態では、第1の制御装置51及び/又は第2の制御装置52は、正常動作中に、電子ビームE内の電子バンチ42の数及び放射ビームB内のパルス数を所与の量だけ減らすように電子ビームEを妨害することができる。これによって第1の制御装置51及び/又は第2の制御装置52は、必要に応じて電子ビーム内の電子バンチ42の数を増加又は減少させることで、自由電子レーザが出力する放射ビームのパワーの安定化を図ることができる。これにより、所与の時間期間(例えば1ms)でEUV放射ビームパワーを平均化した場合にこのパワーの変動を低減させることができる。
[00304] 基板Wのターゲット位置は、約1msの露光時間期間、露光することができる。レーザビーム41のパルス繰り返し周波数、従って放射ビームBのパルス繰り返し周波数は約300MHzであり得る。従ってこの例では、1msの露光時間期間中、基板Wのターゲット位置は約3x105の放射パルスに露光される。電子ビームEを周期的に妨害することが望ましい場合がある。例えば、第1の制御装置51及び/又は第2の制御装置52は、レーザビーム41の100又は1000につき1つのパルスが電子ビームE内に関連した電子バンチ42を実質的に含まないように、電子ビームEを妨害することができる。いくつかの実施形態では、電子ビームを妨害する時間期間は合計で、電子ビームを妨害しない時間期間の約1〜10%であり得る。いくつかの実施形態では、電子ビームを妨害する周波数は1Mhz以上とすることができる(例えば1MHzから約100MHzの範囲)。露光時間期間中に受光される放射線量を制御するため(例えば線量のばらつきを所望の閾値未満に維持するため)、露光時間期間中に電子ビームE内に関連した電子バンチ42を実質的に含まないレーザビーム41のパルス数を増加又は減少させることができる。これによって、露光時間期間で平均したEUV放射ビームパワーの変動が低減する。これに対応して、基板上のターゲット位置で受光されるEUV放射線量のばらつきが減少する。
[00305] スキャン露光において放射の露光スリットを基板上のターゲット位置の上でスキャンする実施形態では、露光時間期間Teが時間期間Tiの整数倍となるような時間期間Tiで電子ビームEを周期的に妨害することが望ましい場合がある(すなわちTe=nTi、ここでnは整数である)。これによって、基板Wの各ターゲット位置により受光される放射パルス数が、ターゲット位置上での露光スリットのスキャン数と同じであることが保証される。
[00306] 上述したように、電子ビームEからわずかな数の連続電子バンチ42(例えば100未満、又は10未満)を除去するように電子ビームEを妨害することが望ましい場合がある。例えば、電子ビームEから一度に1つの電子バンチ42を除去することが望ましい場合がある。電子ビームEからわずかな数の連続電子バンチ42を除去することで、線形加速器22及びアンジュレータ24を伝搬する電子ビームEには小さいギャップしか存在しないことが確実となる。これによって、(もっと大きいギャップが存在する場合に比べて)電子ビームEでのギャップのために自由電子レーザに生じる過渡現象が小さくなる。過渡現象は充分に小さいので、例えば自由電子レーザにより発生するEUV放射の波長は実質的に一定のままであり得る。実質的に一定の波長というのは、波長が変化しないこと、又は変化する量が充分に小さいので波長に依存したミラー透過のために生じるターゲット位置での線量ばらつきが所望の閾値未満に収まることを意味すると解釈することができる。
[00307] 線形加速器22は、外部駆動の振動電磁場が共振する複数の共振空洞(例えば超伝導無線周波数空洞)を備えることができる。共振空洞を通過する電子バンチ42の各電子は、それ自体の関連電磁場を有する。電子が空洞を通過すると、その電磁場に外乱が加わり(perturb)、航跡場として知られる電磁場が空洞内に生じる。従って、所与の時点での空洞内の電磁場は、外部駆動電磁場とすでに空洞を通過した電子の航跡場との組み合わせである。このため、電子ビームEでの妨害直後の電子バンチ42は、電子ビームEでの妨害後でない電子バンチ42とは異なる電磁場を線形加速器22の空洞において経験し得る。従って、電子ビームEでの妨害直後の電子バンチ42は、電子ビームEでの妨害後でない電子バンチ42とは異なる量だけ線形加速器22で加速され、これによってアンジュレータ24において異なるエネルギを有し得る。
[00308] いくつかの実施形態では、アンジュレータ24から出力される電子ビームEは、電子ビームEからエネルギを回収するため及び電子ビームEを減速させるため、線形加速器22に戻される。このような構成はエネルギ回収線形加速器(ERL)として知られている。減速した電子から回収されたエネルギは、入射器21から出力された電子ビームEを加速させるために用いられる。電子ビームEから電子バンチ42を除去することによって電子ビームEが妨害されると、線形加速器22における電子ビームからのエネルギ回収に妨害が生じる。このようなエネルギ回収の妨害は、線形加速器22を通過する加速電子が加速される量を低減させ、従って線形加速器22から出力されアンジュレータ24を伝搬する電子バンチ42のエネルギを変化させ得る。
[00309] 上述したように、線形加速器22の空洞において航跡場を妨害する効果、及び/又は線形加速器22において減速電子からのエネルギ回収を妨害する効果によって、一部の電子バンチ42は、これらの効果で影響を受けない電子バンチ42とは異なるエネルギでアンジュレータ24を通過し得る。アンジュレータ24で放出が誘導されない放射の波長は、アンジュレータ24における電子バンチのエネルギに依存するので、アンジュレータ24での電子バンチエネルギのばらつきは、自由電子レーザFELから放出される放射ビームBの波長のばらつきを生じる可能性がある。従って、電子ビームEの妨害は、電子ビームEの妨害直後の放射ビームBのパルス波長にばらつきを招く恐れがある。
[00310] 自由電子レーザFELから基板Wまで放射ビームBがとる光路の透過率は、放射ビームBの波長に依存し得る。従って放射ビームBの波長のばらつきは、基板上に入射する放射ビーム(例えばパターン付与された放射ビームB)のパワーにばらつきを生じ、これによって基板Wで受光される放射線量に影響を及ぼしかねない。放射ビームEの妨害が放射ビームBの波長に及ぼす影響を軽減することが望ましい場合がある。
[00311] 電子ビームEの妨害により生じる放射ビームBの波長変化は、電子ビームEを妨害する時間長に依存し得る。例えば、電子ビームEから電子バンチ42を1つだけ除去すると、電子ビームEは短い時間量だけ妨害され、妨害後の放射ビームBのパルス波長にはわずかなばらつきしか生じない場合がある。電子ビームEから除去する連続電子バンチ42の数を増やすと、電子ビームEを妨害する時間量が増大するので、妨害後の放射ビームBのパルス波長のばらつきが増大する可能性がある。従って、放射ビームBの波長に対する妨害の影響を抑えるため、限られた数のみの連続電子バンチ42が電子ビームEから除去されるように電子ビームEを妨害することが望ましい場合がある。例えば、電子ビームEから一度に1つだけの電子バンチ42を除去することが望ましい場合がある。実際は、電子パルスの高周波数(例えば約100MHz)のためにこれは可能でないことがある。一般に、1MHz以上の繰り返し率で電子ビームを妨害すること、更に電子ビームの妨害の合計をビーム時間の10%未満に制限することが望ましい場合がある。これによって、妨害が放射Bのパルス波長にばらつきを生じる程度を制限する。例えば、電子ビームから一度に除去する連続電子バンチを100以下とすればよい。
[00312] 一実施形態では、電子ビームEから複数の電子バンチ42を除去することによって生じる過渡現象を測定し考慮に入れることができる。例えば、放射ビームの波長の過渡的変化を測定し考慮に入れることができる。上記のように、リソグラフィ装置LAのミラーの透過は波長に依存している。ミラーの総合的な透過はピーク透過波長を有する。ミラーの透過はそのピークにおいて最大となり、ピークの各側のスロープに沿って波長の関数として低下する。自由電子レーザは、この総合的ミラー透過のスロープ上の波長(例えばスロープの中点の周辺)で動作するように構成することができる。電子ビームEから複数の電子バンチを除去した場合、加速器21は、それらの電子バンチに移動したはずのエネルギを維持する。次の電子バンチが加速器21を通過すると、それらはこの追加のエネルギを受け取る。これは、約1μs継続し得る過渡効果である。電子バンチは追加エネルギを有するので、より短い波長のEUV放射を発生する。この短い波長でのミラーの総合的透過は異なり(例えば低くなり)、結果として、EUV放射は基板に入射する前にミラーによって更に減衰される。この効果を用いて、電子ビームから複数の電子バンチ42を除去することによって(又は上述のように電子バンチを脱焦することによって)生じる過渡現象の効果を少なくとも部分的に補償することができる。
[00313] 関連した実施形態では、レーザビーム41のパルスパワーを変更することで電子バンチ42における電荷量を変えることができる。これは、それらの電子バンチ42が放出するEUV放射の強度及びEUV放射の波長を直接変化させる。更にこれは、加速器21におけるエネルギの過渡的変化を生じさせ、以降の電子バンチ42のエネルギ及び波長に影響を与える(例えば2〜3μsの期間)。これらのエネルギ及び波長の変化を、波長に依存したミラーの総合的透過と組み合わせて用いて、基板W上のターゲット位置に送出されるEUV放射線量を制御することができる。
[00314] 更に別の関連した実施形態では、電子バンチ42の加速を変更することによってEUV放射ビームの波長を調整することができる。上述したように、波長の変更は、基板Wのターゲット位置に送出される放射線量を制御する方法として用いることができる。電子バンチ42に与える加速を変更するには、電子ブースタ33又は加速器21において追加の空洞(例えば銅で形成される)を用いればよい。追加の空洞のピーク電場は、他の空洞が用いる電場よりも著しく小さいが、得られるEUV放射パルスの波長制御を可能とするには充分に大きいものとすることができる。追加の空洞が超伝導でない(例えば銅で形成される)場合、より小さいQ値を有し、より高速に波長を制御することができる。
[00315] 自由電子レーザFELは、この自由電子レーザFELの特性を監視する1つ以上の安全監視システムを含むことができる。例えば1つ以上の安全監視システムによって、入射器21から出力される電子バンチ42の電流、自由電子レーザFELを伝搬する電子ビームE、及び/又は放射ビームBのパルスを監視することができる。安全監視システムによる測定に対応して1つ以上の安全システムが動作し、監視した変数の規制及び/又は監視した変数が所望の状態と異なる場合のエラー警報の発生を行うことができる。例えば、放射ビームBのパルス及び/又は電子バンチ42が欠落した場合、これを1つ以上の安全監視システムが検出し、安全システムが対応した動作を行うことができる(例えば自由電子レーザFELをシャットダウンする)。また、第1の制御装置51及び/又は第2の制御装置52が電子ビームEを妨害した場合、この妨害を安全監視システム及び/又は安全システムに伝達して、欠落した電子バンチE及び/又は放射ビームBの欠落したパルスに対して安全システムが動作しないようにすることができる。
[00316] 電子ビームEを妨害することの利点について、基板Wのターゲット位置が受光する放射線量を制御する状況において説明した。電子ビームEの妨害は、電子ビームEの経路に沿って集まることがあるイオンを電子ビームEの経路から放散させ得るので、更に有利となる場合がある。イオンは、電子ビームEが自由電子レーザFEL内で伝搬するビームパイプにおいて生成され、電子により生じるポテンシャル井戸によって電子ビームEの経路に付着することがある。電子ビームEの電子はイオンによって散乱して有害な放射を生成する可能性がある。散乱した電子は更に、アンジュレータ24における磁石に損傷を与える恐れがある。電子ビームEの妨害は、電子ビームEによって生じるポテンシャル井戸を妨害し、この間にイオンは電子ビームEの経路から放散し得る。放散したイオンは、例えばビームパイプの壁によって吸収されてビームパイプから除去することができる。
[00317] 電子ビームEから1つ以上の電子バンチ42を除去することについて、先に言及した。電子ビームEから1つ以上の電子バンチ42を除去することは、(例えば第1の制御装置51を用いて)レーザビーム41の1つ以上のパルスがフォトカソード43に入射するのを実質的に防止して、フォトカソード43から実質的に全く電子バンチ42が放出されないようにすることを含み得る。電子ビームEから1つ以上の電子バンチ42を除去することは、(例えば第1の制御装置51を用いて)フォトカソード43に入射するレーザビーム41の1つ以上のパルスのパワーを公称パワーの10%未満に低減させ、これによってフォトカソード43から放出される電子バンチ42の電荷を低減させて、無視できる程度のEUV放射量を生成させることを含み得る。電子ビームEから1つ以上の電子バンチ42を除去することは、(例えば第2の制御装置52を用いて)電子ビームEから1つ以上の電子バンチ42を偏向させることを含み得る。
[00318] 代替的な手法においては、上述のように、電子ビームEから1つ以上の電子バンチ42を除去する代わりに、(例えば第2の制御装置52を用いて)1つ以上の電子バンチを脱焦させて、無視できる程度のEUV放射量を生成させることも可能である。
[00319] これより図9を参照して本発明の代替的な実施形態について説明する。図9は、図3に示したFELと共通の機構(feature)を多く有するFELを示す。繰り返しを避けるため、これらの機構についてはここで再度の説明は行わない。自由電子レーザFELは、放射ビームBのパワーを確定するように動作可能な放射センサ25を備えている。放射ビームBの一部を放射センサ装置ST(図1に示す放射センサ装置STに相当するものとすればよい)の方へ送出し、その部分の放射照度を測定することができる。これを用いてビームBのパワーを確定すればよい。この代わりに又はこれに加えて、ビームBのパワーを間接的に確定することも可能である。例えば、放射ビームBが通過する真空パイプに存在する残留ガスは、蛍光発光する(EUV放射を吸収して異なる波長の放射を放出する)及び/又はEUV放射のレーリー散乱を生じ得る。そのような残留ガスによる蛍光発光及び/又はレーリー散乱の測定値は、残留ガス圧の測定値と共に、ビームBのパワーを確定するには充分である場合がある。パワーの測定値は実質的に連続的又は間欠的であり得る。
[00320] アンジュレータ24は調整機構24aを有し、これは、放射センサ装置STにより確定されたパワーに応じてアンジュレータの1つ以上のパラメータを変化させることで放射ビームのパワーを変更するように動作可能である。これについて更に詳しく説明する。
[00321] 電子は、アンジュレータ24を移動する際、放射の電場と相互作用して放射とエネルギを交換する。アンジュレータ24に入射する際に共振条件を満たす電子は、放射を放出する際にエネルギを喪失するので、共振条件は満たされなくなる。従って上述したように、いくつかの実施形態ではアンジュレータをテーパ化することができる。すなわち、電子バンチにアンジュレータを通過させる際にこれを共振に維持するため、周期磁場の振幅及び/又はアンジュレータ周期λuは、アンジュレータの長さに沿って変化し得る。有利な点として、アンジュレータをテーパ化すると変換効率が著しく上昇する可能性がある。テーパ化アンジュレータを用いると、変換効率(すなわち、放射ビームBにおける放射に変換される電子ビームEのエネルギ部分)が2倍超上がる場合がある。アンジュレータのテーパ化を達成するには、その長さに沿ってアンジュレータのパラメータKを低減させればよい。
[00322] アンジュレータの軸に沿ったアンジュレータ周期λu及び磁場強度Boを電子バンチエネルギに一致させることで、確実に共振条件を満たすことができる。テーパ化されていないアンジュレータの場合、アンジュレータ周期λu及び周期磁場Boの振幅はアンジュレータ全体で一定のままである。テーパ化アンジュレータの場合、アンジュレータ周期λu及び/又は周期磁場Boの振幅はアンジュレータの軸に沿った距離と共に変化して、確実に共振条件を満たすことができる。この一致により、所与の長さのアンジュレータについて電子からEUV放射へのエネルギ抽出が最大となるか又は増大する。確実に共振周波数を満たすためにアンジュレータ周期λu及び磁場強度Boを一致させることは、自由電子レーザFELのデフォルト構成とすることができる。
[00323] 一実施形態において、アンジュレータ24の磁場の少なくとも一部が調整可能であり、調整機構24aはこれを変化させるように動作可能である。必要な場合、上述の一致させた構成から変換効率を低下させるため、アンジュレータの磁場の少なくとも一部の強度を動的に変更することができる。いくつかの実施形態では、調整機構24aは、アンジュレータ24の軸上又は軸の近傍の磁場強度を変更するように動作可能である。
[00324] 有利な点として、これは、例えば電子のエネルギ、電荷、圧縮、集束、及び繰り返し率等の1つ以上の特性を一定に保ちつつ、出力EUV放射パワーの制御を提供することができる。そのような構成は、例えば1つ以上の理由で利点がある。例えばそのような構成は、EUV放射に対する要求の変化に対処することを可能とする。例えばそのような構成は、EUV放射を用いるリソグラフィ装置LAの様々な要求に対応することを可能とする。リソグラフィ装置LAは、経時的に劣化し得るいくつかのミラーを備え、この構成は例えばそのような劣化を補償することができる。別の例として、そのような構成は、電子及び/又は中性子衝撃によるアンジュレータ24の磁石の劣化を補償することを可能とする。
[00325] 別の利点は、FELの変換効率を比較的迅速に変更可能であることである。特に、放射ビームBのパワーは、リソグラフィ装置LAによる基板W上のターゲット位置の露光のタイムスケール内で変更することができる(例えば約1ms内)。これによって、基板上のターゲット位置で受光する放射線量を制御するように放射ビームBのパワーを制御することが可能となる。すなわち、センサ装置STからのフィードバックを用いて、ターゲット位置で受光する放射線量の変動を低減させる(例えば線量のばらつきを所望の閾値未満に維持する)ことができる。
[00326] バンチ化電子ビームEの繰り返し率に応じて、パルスごとにパワーのばらつきを補正することが可能でない場合がある。
[00327] アンジュレータ24の軸上又は軸近傍の磁場強度は、アンジュレータ24の磁場を与える磁石をビーム軸に近付けること又はビーム軸から遠ざけることによって変更可能である。これは、アンジュレータ24のテーパ化の変更と考えられる。磁石は、他の磁石とは別個に又は他の磁石に応じて調整することができる。一実施形態では、EUV放射の偏光が実質的に不変のままであるように、磁石をビーム軸に対して移動させる。これは、リソグラフィ装置LAに特定の偏光の放射を与えることが望ましいか又は必要である場合に有利であり得る。例えばリソグラフィ装置LAは円偏光放射を必要とする場合がある。磁石を移動させることによる平面アンジュレータ24のテーパ化の調整は、偏光に対して実質的に何の影響も与えない。しかしながら、ヘリカルアンジュレータの磁石を調整すると、磁石の調整が垂直及び水平の双方向でない限り、放射の偏光が変わる。
[00328] 一実施形態では、アンジュレータ24の磁石はビーム軸の各側にギャップを挟んで配置することができる。ギャップは例えば4から10mmの間とすればよい。磁石間のギャップの大きさは、例えば約1ミクロンの精度で制御することができる。調整機構24aは、例えば10ミクロン以上ギャップサイズを変更するように動作可能である。
[00329] これに加えて又はこの代わりに、アンジュレータ24の軸上又は軸近傍の磁場強度は、磁石が生成する磁場を変えることで変更可能である。磁石は永久磁石とすればよく、それらが生成する磁場は、磁石に隣接して位置決めされるコイルを流れる電流及び/又は磁石の温度を変えることで変更可能である。磁石の温度を上げると磁場強度を低下させることができる。
[00330] 一実施形態では、調整機構24aはアンジュレータ24のアンジュレータ周期λuを変更するように動作可能である。
[00331] 一実施形態では、放射センサ装置STを用いて放射ビームBのパワーを監視することができる。この確定されたパワーに応じて、調整機構24aはアンジュレータ24の周期磁場を変更し、これが次いで放射ビームBのパワーを変えることができる。このように、自由電子レーザにより出力された放射ビームBのパワーを制御するフィードバックベースの制御ループを確立することができる。
[00332] 調整機構24aはコントローラCTによって制御することができる。放射センサ装置STはコントローラCTに接続され、確定したパワーを示す信号Sをコントローラに送信するように動作可能である。放射センサSTとコントローラとの接続は、(この実施形態又は他の実施形態について)物理的又は無線とすればよい。コントローラCTは信号Sを受信し、これに応じてアンジュレータ24の1つ以上のパラメータを変更するように動作可能である。パラメータは、放射センサ25から受信した信号Sに応じて、特定の(例えば所定の)アルゴリズムに従って変更することができる。センサ装置ST、コントローラCT、及び調整機構24aは、フィードバックベースの制御ループを構成し、これを用いて、(例えばパワー変動を低減するために)自由電子レーザによって出力された放射ビームのパワーを制御することができる。
[00333] コントローラCTは、追加の信号S’を受信し、これに応じてアンジュレータ24の1つ以上のパラメータを変更するように動作可能である。例えばプロセッサは、EUV放射の低需要又は高需要の予想周期を示す信号S’をリソグラフィ装置LAから受信し、プロセッサはこれに応じてアンジュレータ24の1つ以上のパラメータを変更することができる。
[00334] 自由電子レーザFELは、加速器22とアンジュレータ24との間に配置された第1の偏向磁石を備えることができ、これは、電子がアンジュレータ24により周期経路に沿って導かれアンジュレータ24内の放射と相互作用してコヒーレントな放射の放出を誘導する第1の状態、又は、電子がアンジュレータ24内の異なる経路に沿って導かれアンジュレータ24内の放射から切り離されてコヒーレントな放射の放出を実質的に誘導しない第2の状態であり得る。例えば第1の偏向磁石は、オン(第2の状態である)又はオフ(第1の状態である)にスイッチングされ得る。この構成は特にヘリカルアンジュレータに適用可能であり、その場合、電子の方向とアンジュレータの軸との間の角度がわずかに変化する(例えば約10マイクロラジアン)と、電子バンチからEUV放射を完全に切り離すことができる。従って、EUV放射の誘導放出は効果的にオフにスイッチングされ、自由電子レーザFELのEUV出力を無視できるレベルに低減させる。有利な点として、これは、望ましい場合がある緊急スイッチングオフ機能を提供する。自由電子レーザFELは、アンジュレータ24の下流に配置された第2の偏向磁石を備えることができ、これは、第1の偏向磁石の作用を補償するように配置されているので、第1の偏向磁石がオン状態である場合に第2の偏向磁石から出射する電子は、第1の偏向磁石がオフ状態である場合に第2の偏向磁石から出射する電子と実質的に同じ軌道をとる。これによって、第1の偏向磁石がオン又はオフにある場合に電子をビームダンプ100の方へ送出することができる。
[00335] SASE FELからのEUV放射の典型的な発散は、少なくとも数10マイクロラジアンのオーダーである。従って原則的には、アンジュレータの入力におけるビーム方向を制御することで、自由電子レーザFELから出射する放射ビームBの位置を大きく変えることなくEUV出力パワーを変更することができる。電子ビームの偏向は、(パルス電流により駆動される)偏向磁石を用いて動的に、曲げ磁石の機械的な移動によって、及び/又は1つ以上の双極子磁石のコイルを通る電流を変更することによって、達成可能である。
[00336] 上述のように自由電子レーザFELは、アンジュレータ24とビームダンプ100との間に配置された減速機構26を備えることができ、これは、電子がビームダンプ100により吸収される前にそのエネルギを低下させるように動作可能である。そのような構成は、電子がビームダンプにより吸収される際に有するエネルギ量を低減させ、従って生成される誘導放射及び二次粒子のレベルを低減させる。これによって、ビームダンプから放射性廃棄物を除去及び処分する必要性が解消されるか又は少なくとも低減される。放射性廃棄物を除去するためには自由電子レーザFELを周期的にシャットダウンする必要があり、放射性廃棄物を処分することは高コストであると共に重大な環境への影響を伴う恐れがあるので、これは有利である。
[00337] 減速機構26は、電子エネルギを7MeV未満、望ましくは5MeV未満に低下させるように動作可能である。有利な点として、このエネルギ未満の電子はビームダンプ100で著しいレベルの放射能を誘導しない。自由電子レーザFELの動作中、ガンマ放射が存在するが、電子ビームEをオフにスイッチングするとビームダンプ100は安全に処理される。
[00338] ある既知の減速機構は、電子を減速するために線形加速器を用いる。例えば、加速用の線形加速器22を減速にも用いることができ、その場合、アンジュレータ24から出射する電子バンチEを無線周波数(RF)フィールドに対して180度の位相差で線形加速器22内に入射させればよい。そのような構成はエネルギ回収LINACとして既知である。しかしながら、そのような構成によって許容可能なバンチ内の電子エネルギの拡散には制限がある。アンジュレータ24は、電子ビームEが通過する際にそのエネルギを拡散させる。この結果、無線周波数(RF)フィールドに対して180度の位相差で線形加速器22に入射する電子バンチの減速は不完全となる。このため電子の一部は、線形加速器22から出射する際に、入射器21から出射する電子よりも大きいエネルギを有し得る。従って、これらの電子の一部は7MeV又は5MeVという所望の閾値を超えるエネルギを有することがある。この結果、これらの電子のエネルギを更に低下させるための機構が必要となり得る。
[00339] 従って、減速機構26の少なくとも一部は電子源と別個にすることができる。特に、減速機構26は、電子を能動的に減速するために使用可能なシンクロトロン又はシクロトロンを備え得る。有利な点として、そのような構成ではアンジュレータから出射するバンチ内の電子エネルギにより大きな拡散が許容され、これは自由電子レーザの効率を上げることを可能とする。代替的な実施形態では、減速機構26は、電子を受動的に減速するために電子が通過する伝導性導管を備えることができる。例えば図11A及び図11Bを参照すると、減速機構26は、粗い内面を有する伝導性パイピング140a、140bの部分を備えて、航跡場によるエネルギ放散を促進することができる。例えばこの内面は、複数の交互のくぼみ141a、141b及び突起142a、142bを備えることができる。交互のくぼみ141a、141b及び突起142a、142bは、例えば三角形(141a、142a)又は矩形(141b、142b)等、いずれかの適切なプロファイル形状を有し得る。伝導性パイピングの内面は、適宜、孔やスリット等、大きい航跡場を誘導するための適切な不連続源を含むことができる。伝導性パイピング140a、140bは、水冷却等の冷却システム(図示せず)を備えてもよい。
[00340] 一実施形態において、調整機構24aは、放射ビームBの偏光を変えるように動作可能である。これは、調整機構が受信する信号S’に応じたものとすればよい。以下で更に説明するように、出力放射ビームBの偏光を変えるには、(a)アンジュレータ24の幾何学的形状を変更すること、及び/又は(b)アンジュレータ24から出射する放射ビームBを、例えばミラーシステム(図10を参照のこと)を用いて操作すること、を行えばよい。
[00341] 一実施形態では、自由電子レーザが生成する放射ビームBは、リソグラフィ装置LAの照明システムILへ、更にパターニングデバイスMAへと向けられる。一般に、放射は自由電子レーザFELとパターニングデバイスMAとの間で方向を変える。この方向の変化は1つ以上のミラーを用いて達成される。1つ以上のミラーは、照明システムIL内のファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11、及び/又は自由電子レーザFELとリソグラフィ装置LAとの間及び/又は照明システムIL内に位置決めされた他のいずれかのミラーを含み得る。一般に、それぞれの反射によって、電場が入射面に対して平行又は垂直である(多くの場合、放射のs成分及びp成分と呼ばれる)成分の強度比が変わり、放射の偏光を変化させる。偏光の変化は、最大の変化を生成するかすめ入射ミラー、及び偏光に大きな変化を生じない近垂直入射ミラー(照明システムIL内のファセットフィールドミラーデバイス10及び/又はファセット瞳ミラーデバイス11等)での入射角に依存する。
[00342] 自由電子レーザFELは、パターニングデバイスに入射する放射が所望の偏光を有するように、自由電子レーザFELとパターニングデバイスMAとの間に配置された1つ以上のミラーに応じて放射ビームBの偏光を選択するように構成することができる。例えば、パターニングデバイスに円偏光放射を照射することが望ましい場合がある。この場合、アンジュレータ24は楕円変更放射を生成し、パターニングデバイスMAに入射する放射が円偏光となるようなs成分及びp成分の相対強度とすればよい。s成分及びp成分の相対強度の選択は、光路におけるかすめ入射ミラーのみを考慮し、垂直又は近垂直入射ミラーの効果は無視することができる。
[00343] 楕円偏光放射を生成するため、いずれかの適切なアンジュレータ24をヘリカルアンジュレータとして用いることができる。一実施形態において、アンジュレータ24は、平面が実質的に相互に垂直である2つの同軸平面アンジュレータを備えることができ、この場合、偏光の水平強度と垂直強度の比により確実に所望の楕円放射を生成するように、2つの平面アンジュレータの長さ、アンジュレータ周期、及び磁場強度を選択する。一実施形態では、アンジュレータは、それぞれの平面が異なる3つ以上の同軸平面アンジュレータを備えることができる。このような構成は、2つだけの平面アンジュレータを用いた構成に比べて偏光のマッチングをいっそう円滑にすることができる。一実施形態では、アンジュレータは、平面が実質的に相互に垂直である第1及び第2の同軸平面アンジュレータと、これら第1及び第2のアンジュレータ間に配置された同軸ヘリカルアンジュレータと、を備えることができる。このような構成は、中間のヘリカルアンジュレータを導入することで、第1の偏光放射から(第1の平面アンジュレータから)のエネルギを、実質的に垂直な偏光の放射(第2の平面アンジュレータに対応する)に効率的に結合可能であるため、有利である。
[00344] リソグラフィ装置LAは、円偏光EUV放射を必要とすることがある。これは、円偏光放射を発生させるヘリカルアンジュレータを用いて達成可能である。しかしながらアンジュレータが平面状である場合、直線偏光から円偏光への変換が必要となり得る。任意選択として、以下で図10を参照して説明する装置130を用いてこれを実行することも可能である。
[00345] 装置130は、ミラー131を用いて放射ビームBを2つの成分に分割するように動作可能である。放射ビームBの第1の部分B1はミラー131によって90度反射され、放射ビームBの第2の部分B2はミラー131を通り過ぎる。放射ビームBの偏光ベクトルはミラー131に平行であり、従って第1の部分B1の偏光ベクトルは放射ビームBのものと同一である。次いで、第1の部分B1はミラー132、133によって連続的に2回、合わせて90度反射される。ミラー132からの第2の反射は第1の部分B1の偏光ベクトルを90度回転させ、ミラー133からの第3の反射はこの回転を行わない。3回の90度の回転後、第1の部分B1は第2の部分B2に平行となるがずれており、2つの部分B1、B2の偏光ベクトルは相互に直交している。2つのかすめ入射ミラー134、135を用いて第1の部分B1を導き、第2の部分B2と収束させる。第1及び第2の部分B1、B2は収束するが、第1の部分B1を反射させたため、第1及び第2の部分B1、B2の偏光ベクトルはもはや平行でない。第1及び第2の部分B1、B2の異なる反射損失を考慮に入れると共に、第1及び第2の部分B1、B2のパワーを適切に選択することによって、実質的に等しいパワー及び実質的に相互に直交した偏光の2つの収束ビームを生成することができる。これら2つのビームは、相対位相を適切に選択することで共に円偏光又は楕円偏光放射ビームを形成することができる。実際には、精密な位相整合は可能ではない場合がある。従って、代替的に、同時に伝搬するか又は重複するビームB1及びB2を双方ともリソグラフィ装置LAによって受光して基板W上に投影することができる(マスクMAによってパターンを付与した後)。装置130を用いて、基板Wの露光中に双方の偏光が存在することと、2つの偏光により送出される線量が平均してほぼ等しいことを保証することができる。
[00346] 自由電子レーザのバンチ圧縮器は、調整可能バンチ圧縮器を含むことができる。図12は調整可能バンチ圧縮器230を有する自由電子レーザFELを示す。調整可能バンチ圧縮器230は、(i)電子ビームEの電子バンチがアンジュレータ24に入射する前の伝搬方向に沿った電荷密度分布、又は(ii)電子ビームの電子バンチがアンジュレータ24に入射する前の平均エネルギ、のうち少なくとも1つを調整可能に制御するように構成することができる。調整可能バンチ圧縮器230は共振空洞232及び磁気圧縮器234を備えている。共振空洞232は磁気圧縮器234の「上流」に配置されている。すなわち、電子ビームEは最初に共振空洞232を通り、次いで磁気圧縮器234を通過する。
[00347] 図12の構成において、線形加速器22は、共通軸に沿って軸方向に離間した複数の超伝導無線周波数空洞222aを備えている。これらに、1つ以上の無線周波数電力源によって電磁放射を供給して、空洞222a内に振動電磁定在波を励起する。無線周波数電力源は、低電力無線周波数源225及び高電力増幅器222bを備えている。電磁エネルギは導波管222cを介して超伝導無線周波数空洞222aに伝達される。共通軸に沿った電場が振動する周波数は、電子ビームEのものと実質的に一致するように選択される。各電子バンチが各空洞を通過する際に、共通軸に沿った電場が電子を加速するようなタイミングとなっている。
[00348] 電子ビームEの各バンチが線形加速器22を通過する際に、バンチの異なる部分の電子は概して各バンチの長さのために異なる加速力を受ける。例えば、バンチの前方に近い電子は、バンチの後方に近いものとは異なる加速力を受ける。これは、共通軸上の所与の地点における超伝導共振空洞内の電磁定在波は、電子バンチがその地点を横断するのに要する時間で変化するからである。従って線形加速器22は、電子ビームを加速することに加えて、電子エネルギとバンチ内の位置との間の相関を生じる。このようなエネルギ−位置の相関は電子バンチの「チャープ(chirp)」として知られる。
[00349] 慣例により、個々の電子のエネルギが電子バンチの前方(後方)の近くで増大する場合、電子ビームのチャープは正(負)であると言うことができる。電子ビームE内の電子バンチのチャープは、電子バンチが無線周波数電磁波の立ち上がり又は立ち下がり勾配のどちらで加速される(又は減速される)かに応じて正又は負であり得る。無線周波数定在波は正弦波であり得るが、比較的短い電子バンチでは、共通軸上の所与の地点を横断するのに要する時間が比較的短く、電子ビームEのチャープは実質的に線形である場合がある。もっと長い電子バンチでは、チャープは線形でない場合がある。
[00350] 磁気圧縮器234は、電子ビームの伝搬方向に沿って電子ビームEの電子バンチを圧縮するように構成されている。更に、この圧縮は、電子バンチが磁気圧縮器に入射する際のチャープに依存する。例えば磁気圧縮器234は複数の磁石を備え、これらは、各電子が磁気圧縮器234を通過する際の経路長がそのエネルギに依存するように各電子バンチを拡散させてから再結合するように配置することができる。このような構成を用いて、所与のチャープを使用してビームを圧縮することができる。例えば磁気圧縮器234は、負のチャープを有する電子バンチ(すなわちバンチの後方近くの電子がバンチの前方近くのものよりも高いエネルギを有する)では、各バンチ内の高エネルギの電子が低エネルギの電子よりも短い経路をとるように構成することができる。
[00351] 伝搬方向に沿った電子バンチ内の電子の電荷密度分散を変更すると、アンジュレータ24の利得が変化する(変換効率は電子バンチのピーク電流に依存する)。これは結果として、アンジュレータ24が出力する放射ビームBのパワーを変化させる。
[00352] 安定した動作条件のもとでは、電子ビームEの電子バンチが線形加速器22により加速される際に与えられるチャープは実質的に一定であり得る。(a)電子ビームEが磁気圧縮器234に入射する直前にこのチャープを変えること、又は(b)所与のチャープに異なる圧縮を与えるように磁気圧縮器234を変更すること、のいずれかによって、伝搬方向に沿った電子ビームの電荷密度分布を、アンジュレータ24に入射する前に制御することができる。結果としてこれは、アンジュレータ24により出力される放射ビームBのパワーを制御するための機構を提供する。調整可能圧縮器230は、ビームEの電子バンチが(受動)磁気圧縮器234に入射する直前にそのチャープを変えることで放射ビームBのパワーを制御するように動作可能である。従って有利な点として、図12の構成は、出力パワーを能動的に制御可能である自由電子レーザを提供する。
[00353] 磁気圧縮器234は受動的であり、固定されたままである。共振空洞232は、電子ビームが磁気圧縮器234に入射する前にそのチャープを制御するように構成されている。共振空洞232を用いて電子ビームEの電子バンチのチャープを増大又は低減させることで、アンジュレータ24により出力される放射ビームBのパワーを制御することが可能となる。
[00354] 共振空洞232は線形加速器22とは別個に提供されている。共振空洞232は、線形加速器22と「位相ロック」されている。すなわち、共振空洞232は線形加速器22と実質的に同一の周波数で動作し、電子ビームEに対する共振空洞232の位相が実質的に一定のまま維持されるように構成されている。これは、同一の低電力無線周波数電力源225を用いて電磁エネルギを線形加速器22及び共振空洞232に供給することによって達成可能である。共振空洞232にはそれ自体の増幅器236が備えられ、電磁エネルギは増幅器236から導波管238を介して共振空洞232に伝達される。
[00355] 図12の自由電子レーザは更にコントローラCTも備えている。コントローラCTは、アンジュレータから出力されたEUV放射ビームBのパワーを測定するセンサ装置STから入力信号Sを受信するように動作可能である。信号Sに応答して、コントローラCTは、増幅器236及び導波管238を介して共振空洞232に供給される電磁パワーを調整するように動作可能である。このように、センサ装置ST、コントローラCT、及び調整可能圧縮器230から成るフィードバックベースの制御ループが与えられる。フィードバックベースの制御ループを用いて、EUV放射ビームのパワーの変動を低減させることができる(例えばパワーを約1ms等の時間期間で平均した場合)。フィードバックベースの制御ループを用いて、基板のターゲット位置に入射するEUV放射線量のばらつきを所望の閾値未満に保持することができる。
[00356] 上述のように、図12の調整可能圧縮器230を用いると、電子ビームEの電子バンチが(受動)磁気圧縮器234に入射する直前にそのチャープを変更することによって放射ビームBのパワーを制御することができる。この代わりに又はこれに加えて、図12の調整可能圧縮器230を用いて、電子ビームEがアンジュレータ24に入射する前にその平均エネルギを制御することも可能である。
[00357] 電子ビームEの電子バンチがアンジュレータ24に入射する前にその平均エネルギに比較的小さい変更を行うと、出力放射ビームBの波長が変わる。これは結果的に出力放射ビームBのパワーを変える。これは、(i)各バンチの平均エネルギの小さい変化が自由電子レーザの利得に影響を与える、及び(ii)アンジュレータ24で生成される各光子のエネルギがその波長に依存する、という2つのファクタの結果である。従って、有利な点として、そのような構成は、出力パワー及び波長を能動的に制御可能である自由電子レーザを提供する。
[00358] 図12の自由電子レーザは図1のリソグラフィシステムLSの一部を形成することができる。この場合、自由電子レーザが生成する放射は、最終的には1つ以上のリソグラフィ装置LAa〜LAn内の1つ以上の基板Wにより受光される。これらの基板は、基板W上の所与のターゲット位置が所定の時間期間(例えば約1ms)EUV放射により照明されるスキャン露光を用いて露光することができる。リソグラフィシステムLS内で、放射は自由電子レーザから基板まで伝送されるが、その間に、(i)ビームデリバリシステム(例えばビーム分割装置19を含む)、及び(ii)リソグラフィ装置LAa〜LAn内の光学部品(例えば光学部品10、11、13、14。図2を参照のこと)を経由する。熱的な理由のため、ビームデリバリシステム内の光学部品は主にかすめ入射ミラーを含むことがあり、このためこれらの光学部品の組み合わせた反射率は放射ビームBの波長から比較的独立したものであり得る。これに対して、リソグラフィ装置LAa〜LAn内の光学部品は近垂直入射ミラーを含むことがあり、所与の公称波長に最適化された多層ミラーを含むことがある。このため、リソグラフィ装置LAa〜LAn内の光学部品の組み合わせた波長は放射ビームBの波長及び帯域幅に大きく依存し得る。
[00359] 放射ビームBの出力パワーの変化は、自由電子レーザによって基板Wのターゲット位置に送出される放射線量に直接影響する。更に、上述の理由のため、放射ビームBの波長を変えると、基板上のターゲット位置に送出される放射線量が影響を受ける。放射ビームの波長の変化の方が、放射ビームのパワーの変化よりも、放射源がターゲット位置に送出する線量に対して大きな影響を及ぼし得る。センサ装置ST、コントローラCT、及び調整可能圧縮器230から成るフィードバックベースの制御ループを用いて、放射ビームBのパワー及び波長の変動を低減させることができる。これは結果的に、基板のターゲット位置に入射するEUV放射線量のばらつきを所望の閾値未満に維持することができる。
[00360] 調整可能圧縮器230は複数の異なるモードで動作可能である。例えば図12の調整可能圧縮器230を用いて、複数の電子バンチがアンジュレータ24に入射する前に伝搬方向に沿った電荷密度分布を制御することができる。あるいは、図12の調整可能圧縮器230を用いて、複数の電子バンチがアンジュレータ24に入射する前にその電子の平均エネルギを制御することができる。更に別の代替案では、図12の調整可能圧縮器230を用いて、(i)複数の電子バンチがアンジュレータ24に入射する前の伝搬方向に沿った電荷密度分布の制御、及び(ii)複数の電子バンチがアンジュレータ24に入射する前の平均エネルギの双方を制御することができる。コントローラCTは、調整可能圧縮器230を1つの動作モードから別のものにスイッチングさせるように動作可能である。これは、共振空洞232内の電磁波の位相を電子ビームEに対して変化させることによって達成可能である。コントローラCTは入力機構(図示せず)を備えることができ、これによってユーザは調整可能圧縮器230の動作モードを選択することが可能となる。
[00361] 複数の電子バンチが磁気圧縮器234に入射する前にそのチャープを変更するため(例えば第1のモードで)、共振空洞232内の電磁波の位相は、共振空洞を通過する電子ビームEの各バンチの中心の電子について空洞232内の電場が実質的にゼロとなるようにすればよい。このような構成では、各電子バンチのチャープの変化は、共振空洞232内のRFフィールド振動の振幅によって規定される。有利な点として、そのような構成は電子バンチのチャープのみを調整し、電子バンチ内の電子の平均エネルギは変化させないので、共振空洞232を駆動するのに必要な無線周波数電力は電子ビームEの平均電流に依存しない。従って必要となる電力は小さく、チャープを変更するために低効率で複雑でなく費用の安い共振空洞を用いることができる。
[00362] 各電子バンチがアンジュレータ24に入射する前に電子の平均エネルギを変更するため(例えば第2のモードで)、共振空洞232内の電磁波の位相は、共振空洞232を通過する電子ビームEの各バンチの中心の電子について空洞内の電場が実質的に最大値又は最小値となるようにすればよい。このような構成では、共振空洞232は、電子ビームEが空洞232を伝搬する際にこれを加速又は減速させて各バンチ内の電子の平均エネルギを変化させる傾向がある。このような構成では、各バンチ内の電子の平均エネルギの変化は、共振空洞232内のRFフィールド振動の振幅によって規定される。
[00363] 第1の動作モードにおいて、共振空洞232に供給される電磁パワーを変えると、電子バンチの電荷密度分布が変化し、従ってアンジュレータ24によって出力される放射ビームBのパワーが変化する。第2の動作モードにおいて、共振空洞232に供給される電磁パワーを変えると、各電子バンチ内の電子の平均エネルギが変化し、従ってアンジュレータ24によって出力される放射ビームBの波長が変化する(波長ほどでないがパワーも変化する)。従って、コントローラCTはセンサ装置STから受信した信号Sに応じて共振空洞232に供給される電磁パワーを変えるので、図12の構成は、出力放射ビームBのパワー及び/又は波長を制御するための好都合なフィードバックシステムを提供する。この能動フィードバックシステムを用いて、例えば基板上のターゲット位置に放射ビームが与える放射線量を安定化させることができる。
[00364] センサ装置STは、アンジュレータ24により出力されたメイン放射ビームBの合計パワー及び/又は強度分布を確定するように構成することができる。コントローラCTは、メイン放射ビームBの合計パワー及び/又は強度分布、並びにアンジュレータ24と基板Wとの間の光路のスペクトル応答に基づいて、増幅器236及び導波管238を介して共振空洞232に供給される電磁パワーが変動すると基板Wで受光される線量がどのように変動するかを明らかにすることができる。
[00365] 放射ビームBの波長及びパワーに対する基板のターゲット位置で受光される線量の依存性は、基板Wの露光に先立つ較正ステップ中に確定することができる。これを達成するには、メイン放射ビームBの複数の異なる波長及び/又は合計パワーについて、基板テーブルWTで受光される放射線量を測定すればよい。この較正ステップの間(基板Wの露光前)、線量は、例えば基板テーブルWT上に配置したセンサを用いて測定することができる。基板上のターゲット位置で受光されるエネルギ線量は、露光時間期間中の放射ビームパワーの時間についての積分であり得る。露光時間期間は例えば1msのオーダーとすればよい。複数の異なる波長は、増幅器236及び導波管238を介して共振空洞232に供給される電磁パワーを変えて波長を変化させることによって生成可能である。このようにして、放射ビームBの波長及びパワーに対する基板Wの受光線量の依存性を特徴付けた較正マップを求めることができる。較正マップは、コントローラCTによりアクセス可能なメモリに記憶すればよい。この手法を、放射ビームBのパワー(又は放射ビームの他の特性)を制御する本発明の他の実施形態と組み合わせて用いることができる。
[00366] コントローラCTは、メイン放射ビームBの波長、帯域幅、合計パワー、及び/又は強度分布を、露光時間期間中に基板Wのターゲット位置で受光する放射線量に変換するように動作可能である。この変換では、以前に求められてメモリに記憶することができる較正マップを用いればよい。有利な点として、これは、基板Wのターゲット位置が受光する放射線量を制御するための好都合な能動フィードバックシステムを提供し、これを例えば上述の線量を安定化させるために用いることができる。この手法を、放射ビームBのパワー(又は放射ビームの他の特性)を制御する本発明の他の実施形態と組み合わせて用いることができる。
[00367] いくつかの実施形態では、共振空洞232は常伝導共振空洞である。例えばこれは銅で形成することができる。例えば銅空洞のような常伝導共振空洞は、例えば線形加速器22内の電子ビームEの加速に用いられる超伝導空洞に比べ、比較的低いQ値を有する。共振器の帯域幅はそのQ値に反比例するので、このような常伝導空洞の無線周波数電力は高帯域幅で調整可能である。有利な点としてこれは、超伝導RF空洞に比べ、空洞内の加速フィールド勾配の著しく高速な変化を可能とする。従って、常伝導共振空洞232を用いると、自由電子レーザが出力する放射ビームBのパワー及び/又は波長を迅速に調整可能であるので特に有益である。これは特に、放射ビームBが(例えばリソグラフィ装置LAa〜LAnの1つの基板Wに)供給する放射線量をリアルタイムで制御可能とするので有利である。これは例えば、放射ビームが供給する放射線量を充分に迅速に制御するので、ターゲット位置で受光する線量のばらつきを低減することが可能となる(例えば制御は1msより高速である)。
[00368] 自由電子レーザが出力する放射の波長を変更することによってターゲット位置で受光する放射線量の制御を可能とする構成について検討したが、このような線量制御方法のために、調整可能な波長を有するいかなる放射源も代わりに用いることができる。更に、図12の構成をリソグラフィシステムと関連付けて検討したが、リソグラフィ装置LAa〜LS8内の基板W以外のターゲット位置で受光する放射線量の制御に関連する場合もある。
[00369] 図12の構成では、電子ビームEがアンジュレータ24に入射する前に伝搬方向に沿った電荷密度分布を制御するため、調整可能圧縮器230が受動磁気圧縮器234を備え、共振空洞232は磁気圧縮器234の「上流」に配置されている。しかしながら、電子ビームEがアンジュレータ24に入射する前にその平均エネルギを制御することのみが望ましいか又は必要である場合、共振空洞232は磁気圧縮器234の「上流」又は「下流」のいずれかに配置すればよい。
[00370] 図13は、電子ビームEの複数の電子バンチのチャープ及びバンチ内の電子の平均エネルギを連続的に変化させるように構成された調整可能バンチ圧縮器260を備えた自由電子レーザの代替的な構成を示す。調整可能バンチ圧縮器260は共振空洞262及び磁気圧縮器264を備えている。共振空洞262は磁気圧縮器264の「上流」に配置されている。すなわち、電子ビームEは最初に共振空洞262を通り、次いで磁気圧縮器264を通過する。
[00371] 磁気圧縮器264は、電子ビームの伝搬方向に沿って電子ビームEの電子バンチを圧縮するように構成され、この圧縮は電子バンチが磁気圧縮器264に入射する際のチャープに依存する。
[00372] 共振空洞262は線形加速器22とは別個である。共振空洞262には増幅器266が備えられ、電磁エネルギは増幅器266から導波管268を介して共振空洞262に伝達される。
[00373] 共振空洞262は、一般に電子ビームEのものとは異なる周波数で動作するように構成され、電子バンチのチャープ及び/又は電子バンチの平均エネルギが時間と共に変化するようになっている。これは、異なる低電力無線周波数電力源225、265を用いて電磁エネルギを線形加速器22及び共振空洞262のそれぞれに供給することで達成可能である。
[00374] 共振空洞262の周波数が電子ビームEのものと異なる場合、共振空洞262は電子バンチのチャープ及び電子バンチ内の電子の平均エネルギを連続的に変化させる。チャープ及び平均エネルギの変化率は、線形加速器22及び共振空洞262の周波数の差に依存する。電子バンチ内の電子の平均エネルギを変えると、放射ビームの波長が変わる(平均エネルギが増大すると放射ビームの波長が低減する)。従って図13の構成は、自由電子レーザによって出力される放射の有効帯域幅を増大させるための機構を提供する。
[00375] いくつかの実施形態では、共振空洞262は常伝導共振空洞である。例えばこれは銅で形成することができる。例えば銅空洞のような常伝導共振空洞は、例えば線形加速器22内の電子ビームEの加速に用いられる超伝導空洞に比べ、比較的低いQ値を有する。共振器の帯域幅はそのQ値に反比例するので、このような常伝導空洞の無線周波数電力は高帯域幅で調整可能である。有利な点としてこれは、超伝導RF空洞に比べ、空洞内の加速フィールド勾配の著しく高速の変化を可能とする。従って、常伝導共振空洞262を用いると、自由電子レーザが出力する放射ビームBのパワーを迅速に調整可能であるので特に有益である。これは例えば、放射ビームが供給する放射線量を充分に迅速に制御するので、ターゲット位置で受光する線量のばらつきを低減することが可能となる(例えば制御は1msより高速である)。
[00376] 図13の自由電子レーザは更にコントローラCTも備えている。コントローラCTは、センサ装置STから入力信号S1を受信するように動作可能である。コントローラCTは、信号S1に応じて、共振空洞262の1つ以上のパラメータを変化させるように動作可能である。例えばコントローラCTは、増幅器266及び導波管268を介して共振空洞262に供給される電磁パワーを変化させるように動作可能である。この代わりに又はこれに加えて、コントローラCTは、無線周波数空洞262内の電磁定在波の周波数を変化させるように動作可能である。これを達成するには、(a)低電力源265によって共振空洞262に与えられる電磁放射の周波数、及び(b)共振条件を維持するための共振空洞262の幾何学的形状、の双方を調整すればよい。共振空洞262の幾何学的形状は、例えば1つ以上の圧電ストレッチャ及び/又は圧縮器を用いて共振空洞262の共振周波数を低電力無線周波数源265の周波数にマッチングさせることで変更可能である。
[00377] センサ装置STは、放射ビームBのパワーを示す値を出力するように構成することができる。有利な点として、これは、出力放射ビームBのパワーを制御するための好都合なフィードバックベースの制御ループを提供し、例えばこれを用いて上述のパワーを安定化させることができる。コントローラCTは、センサ装置STが測定したパワーを上述の較正と共に用いて、放射ビームBによって基板上のターゲット位置に送出される放射線量を計算し、これに応じて放射ビームのパワーを調整することができる。ターゲット位置で受光されるエネルギ線量は、露光時間期間中の放射ビームパワーの時間についての積分であり得る。露光時間期間は例えば1msのオーダーとすればよい。
[00378] 上述の自由電子レーザの実施形態は、線形加速器22の下流かつアンジュレータ24の上流に配置された調整可能バンチ圧縮器230、260を備えている。すなわち電子ビームEは、線形加速器22、調整可能バンチ圧縮器230、260、及びアンジュレータ24をこの順序で通過する。しかしながら代替的な実施形態では、自由電子は、線形加速器22の上流に配置された調整可能バンチ圧縮器を備えることができる。上述の実施形態と同様、この調整可能バンチ圧縮器は、(i)電子ビームがアンジュレータに入射する前の伝搬方向に沿った複数の電子バンチの各々の電荷密度分布、又は(ii)複数の電子バンチの各々がアンジュレータに入射する前の平均エネルギ、のうち少なくとも1つを制御するように動作可能である。例えば調整可能バンチ圧縮器は、入射器21内にビームバンチャを備え、これは共振空洞を備えることができる。このような実施形態では、電子バンチ内の電子は相対論的でない。従って、ビームバンチャによって与えられるエネルギチャープは、各バンチの先頭及び末端の電子速度に著しい差を生じ得る。従ってそのような実施形態では、調整可能圧縮器は磁気圧縮器を含まない場合がある。
[00379] 図14は、本発明の一実施形態に従ったアンジュレータ24を概略的に示す。アンジュレータは3つのモジュール300を備えている。各アンジュレータモジュール300は周期磁石構造を備え、これが電子ビームEを周期経路に沿って導くので電子は周期経路の中心軸方向に電磁放射を放射し、これによってEUV放射ビームB(レーザ放射ビームと見なされる)を形成する。アンジュレータモジュール300間にギャップ302が設けられている。ギャップには動的移相器304が配置されている。「動的移相器」という言葉は、位相シフトを与えるか又は位相シフトを与えないように制御可能であり、及び/又は異なるサイズ及び/又は大きさの位相シフトを与えるように制御可能である移相器を意味するものと解釈すればよい。動的移相器304はコントローラCTによって制御される。図14には3つのアンジュレータモジュール300を示すが、アンジュレータ24はこれより多くのアンジュレータモジュール(又はこれより少ないアンジュレータモジュール)を備えることも可能である。同様に、図14には2つの動的移相器304を示すが、3つ以上の動的移相器を設けること又は単一の動的移相器を設けることも可能である。
[00380] 自由電子レーザの動作中、電子ビームパワーがレーザ放射ビームパワーに変換される効率は、アンジュレータモジュール300の周期磁場内の電子の振動運動と放射ビームの電磁波の位相(すなわち電子の振動運動によりアンジュレータ内の上流ですでに生成されている放射の位相)との相対位相によって影響される。
[00381] アンジュレータモジュール300間のギャップ302は各々、電子横断速度と放射ビームBの電磁場の位相との間の位相シフトを導入する。これらが同相である場合(すなわち位相差が2*Π*Nに近い場合。ここでNは整数である)、エネルギは電子から放射ビームBに移動する(これは自由電子レーザの増幅プロセスである)。位相差が(2*N+1)*Πに近い場合、位相差によって電子は放射ビームからエネルギを得るので、自由電子レーザの増幅プロセスを逆にする。2つのアンジュレータモジュール間のギャップにより導入される位相シフトΦは、以下によって決定される。
[00382] ここでLgはギャップ302の長さ(第1のアンジュレータモジュールの端部から次のアンジュレータモジュールの先端までの距離)であり、γは電子のローレンツ因子であり、λrは放射の波長であり、λuはアンジュレータの周期であり、Kはアンジュレータパラメータであり、Aはアンジュレータの幾何学的形状及び得られる放射ビームの偏光に依存する(式(1)について先に説明したのと同様)。
[00383] 式(4)からわかるように、正常な状況において、各ギャップ302が導入する位相シフトΦは固定されている。しかしながら、位相シフトは動的移相器304を用いて変更することができる。コントローラCTは、位相シフトを制御するように動的移相器を制御し、これによって電子ビームが光子に変換される効率を制御することができる。従ってコントローラCTは、動的移相器を用いてアンジュレータ24から放出されるEUV放射ビームBのパワーを制御することができる。
[00384] 図15は動的移相器304の一例を概略的に示す。動的移相器304は3対の電磁石306〜308を備え、それぞれの電磁石対は電子ビームEの軌道の各側に位置付けられている。第1の電磁石対306a、bは、フェライト材料から形成された第1の磁石306aと、電流が供給された場合に電子ビーム軌道に面した南極が発生するように配置されたワイヤループ310と、を備えている。この対の第2の電磁石306bは、フェライト材料を含み、電流が流れると電子ビーム軌道に面した北極が発生するように配置されたワイヤループ310を有する。このため、ワイヤに電流が流れると、磁場が電子ビーム軌道をまたいで延出する。ワイヤに電流が流れない場合、磁場は存在しない。
[00385] 第2の電磁石対307a、bは、同様に2片のフェライト材料を備え、それらの周りにワイヤループ310が設けられている。しかしながらこの場合、ワイヤ310に電流が流れることで発生する北極及び南極は、(第1の電磁石対306a、bに対して)電子ビーム軌道の反対側である。更に、第2の電磁石対307a、bは、第1の電磁石対によって発生する磁場の2倍の大きさの磁場を発生させるように構成されている。従って、ワイヤに電流が流れると、第1の電磁石対306a、bによって発生する磁場とは符号が逆で大きさが2倍の磁場が電子ビーム軌道をまたいで延出する。
[00386] 第3の電磁石対308a、bは、第1の電磁石対306a、bと同一の構成を有する。このため、ワイヤに電流が流れた場合にこの電磁石対308a、bが与える磁場は、第1の電磁石対306a、bによって発生する磁場と同じ符号及び大きさで、電子ビーム軌道をまたいで延出する。
[00387] 使用の際、電磁石306〜308のワイヤに電流が流れていない場合、電子ビームEは軌道の変更なしに(すなわち破線E1が示す軌道に沿って)移動する。ワイヤに電流が流れると、電磁石306〜308は、電子ビームEが図15に実線E2で示す長い経路をとるように電子ビームの軌道を曲げる。
[00388] 第1の電磁石対306a、bは、電子ビームの軌道を第1の方向に(図15の上方向に)曲げる。第2の電磁石対307a、bは、これと反対方向に2倍の大きさで曲げる(電子ビームは図15の下方向に曲がる)。最後に、第3の電磁石対308a、bが更に電子ビームを(図15の上方向に)曲げる。この更なる曲げは第1の電磁石対306a、bによる曲げに対応し、この結果、電子ビームEを最初の軌道に戻すことになる。電磁石がアクティブである場合の電子ビームE2の軌道をシケインと呼ぶことができる。
[00389] 図15からわかるように、電子ビームEが動的移相器304から出る時の軌道は、電磁石306〜308のワイヤ310に電流が流れているか流れていないかに関わらず(すなわち電磁石がアクティブであるか否かに関わらず)同一である。しかしながら、電磁石がアクティブである場合に電子ビームが移動する軌道E2の長さは、電磁石がアクティブでない場合に電子ビームが移動する軌道E1の長さよりも長い。このように、電磁石306〜308を活性化すると、電磁石がアクティブでない場合には存在しない電子ビームEの位相シフトが導入される。位相シフトは電磁ビームからEUV放射への変換効率に影響を与えるので、電磁石306〜308を用いて、自由電子レーザFELのアンジュレータの24によって放出されるEUV放射ビームのパワーを変更することが可能となる。
[00390] 動的移相器304によって電子ビームEに導入される位相差は以下のように計算することができる。
ここで、Δ/lは電子軌道に沿った第1の電磁石対306a、b及び第2の電磁石対307a、bの中心間の距離であり、mは電子質量であり、cは光の速度であり、lmは電子軌道に沿った第1の電磁石対の長さであり、Boは第1の電磁石対(及び第3の電磁石対308)により発生する磁場の強度である。
[00391] 一実施形態において、動的移相器304を用いてΠの位相シフトを与えることが望ましい場合がある。EUV放射を発生する自由電子レーザでは、以下のパラメータを適用可能である。λr=13.5nm、γ〜1500、Δ/=0.5m、及びlm=0.1m。これらのパラメータが適用された場合、Πの位相シフトを導入するために必要な磁場Boの大きさは約0.01Tである。これは比較的小さい磁場であり、MnZn又はNiZn等の適切なフェライト材料を用いて発生させることができる。
[00392] 電磁石対306〜308が与える電子軌道の曲げの大きさ(キック角と称されることがある)は、以下のように推定可能である。
[00393] 上記に例示したパラメータを用いる場合、これによって電子ビーム軌道の経路長は約0.03mm拡張する。
[00394] 動的移相器304の電磁石306〜308は全て同一のワイヤ310によって活性化することができる。すなわち、単一のソースからの電流が電磁石306〜308の各々に流れる。この構成の利点は、電磁石306〜308が全て一緒に活性化されると共に一緒にオフにスイッチングされることが確実となることである。これによって、1つの電磁石がオンにスイッチングされるが他はオンにされないために動的移相器304からのビーム軌道出力が逸脱するという可能性が回避される。逸脱したビームは、自由電子レーザのコンポーネントに入射してそのコンポーネントに損傷を与える恐れがある。
[00395] 電子ビームEは保護チューブ320によって取り囲むことができる。保護チューブ320は、チューブの外側のコンポーネントを航跡場の外乱(disturbance)から保護し、電子ビームEから失われた電子から保護するように作用する。また、保護チューブ320は、真空を確立可能とするために電子ビームEを外部環境から密閉する。保護チューブ320は、銅又はアルミニウム等の伝導性材料で形成すればよい。保護チューブ320は、誘電材料から形成され得る支持チューブ321で支持することができる。
[00396] 図16に示すように、保護チューブ320には、電子ビーム軌道と並行して延在する開口322を設けることができる。開口322は、電磁石306〜308により発生した磁場が保護チューブを通過して電子ビームEの軌道を変えることができるように位置決めされている。開口は、保護チューブ320内から真空が漏れるのを防止するために(例えば誘電材料を用いて)密閉することができる。開口322は、航跡場が誘発する加熱及び電子バンチの劣化を最小限に抑えるため、テーパ状の端部を有することができる(これは例えば開口が四角に区切った端部を有する場合に行うことがある)。
[00397] 代替的な構成では、保護チューブ320に孔を設ける代わりに、チューブの厚さを、電磁石306〜308の動作周波数で予想されるスキン層の厚さよりも薄くすることができる。例えば電磁石が約100kHzの周波数で振動磁場を発生する場合、銅又はアルミニウムのスキン深さは2〜300ミクロンである。電子ビームEの電子バンチに関連した航跡場の外乱はGhzのオーダーであり、このため2〜3ミクロンの侵入深さが予想され得る。従って、2〜3ミクロンより大きいが2〜300ミクロンより小さい壁厚の伝導性保護チューブ320により、電磁石306〜308を航跡場の外乱から保護し、同時に電磁石306〜308が発生する電磁場によって電子ビームの軌道を変えることを可能とする。伝導性壁が薄い(例えば数百ミクロン以下)実施形態において、支持チューブ321は伝導性壁に構造的な支持を与えることができる。一般に、伝導性壁の厚さは10ミクロン超とすればよい。一般に、伝導性壁の厚さは1mm未満とすればよい。
[00398] 上述の代替的な構成を組み合わせることも可能である。例えば、誘電材料を充填した金属保護チューブ320の開口322に、更に、薄い伝導性材料層を(例えば内面に)設けることができる。これは、誘電材料の帯電を防止し、従ってその後の放電により発生する損傷を防止するので有益である。
[00399] 図17に動的移相器304の代替的な実施形態を概略的に示す。この代替的な実施形態は、3つの横キック空洞330〜332を備えている。横キック空洞は概ね円筒形の空洞であり、中心軸が電子ビーム軌道Eに対応し、電子ビームを直線経路E1から逸脱させる(すなわち、概略的に示すようにシケイン経路E2をとらせる)電磁場を発生させる。横キック空洞330〜332は、RF電力を供給することで活性化される。このため、横キック空洞330〜332は、RF電力を供給及び除去することで活性化及びスイッチオフすることができる。あるいは、横キック空洞にRFパワーを連続的に供給し、空洞の形状を調整することで空洞をRF電力と共振させること及び共振させないことを可能とする。キックフィールド(kicking field)は、空洞が共振している場合その公称サイズであり、空洞が共振していない場合ほぼゼロである。空洞の形状は、空洞に設けた調節要素(図示せず)によって調整可能である。
[00400] 横キック空洞330〜332の効果は電磁石306〜308の効果と同一である。横キック空洞330〜332を用いて、電子ビームEに位相シフトを選択的に導入することができる。先に説明したように、位相シフトは結果的にアンジュレータの変換効率に影響を与え、従って自由電子レーザから出力されるEUV放射のパワーに影響を与える。
[00401] 一実施形態において、隣接したアンジュレータモジュール300間の間隔は、2Πの整数倍である電子ビーム位相変化を与えるように選択可能である。この場合、アンジュレータモジュール300内の周期磁場における電子の振動運動と放射ビームBの電磁場との間の相対位相は、動的移相器304がアクティブでない場合にはアンジュレータモジュール間で変化しない。一実施形態において、動的移相器304は、ほぼΠの位相シフトを与えるように構成することができる。このため、動的移相器の変調動作によってΠの位相シフトが電子ビームに与えられる。
[00402] 更に上述のように、自由電子レーザFELが発生するEUV放射ビームのパワーを、約10kHz以上(例えば約100kHz以上)の制御周波数で制御することが望ましい場合がある。これにより、基板上のターゲット位置で受光するEUV放射線量を制御することができる(例えばターゲット位置が1ms露光される場合)。従って、動的移相器304は10kHz以上の周波数で動作するように構成することができる。電磁石を用いる実施形態では、そのような周波数で動作可能であるフェライト材料を用いればよい。これらの周波数で動作可能であるフェライト材料の例には、MnZn又はNiZnがある。一般に、高速フェライト材料を使用可能である。一実施形態では、電磁石の1つ以上はエアコイル(すなわちフェライト材料のコアなしのワイヤループ)とすることができる。横キック空洞を用いる実施形態では、10kHz以上の制御周波数を有するRF電力供給を使用可能である。これに加えて又はこの代わりに、10kHz以上の制御周波数を有する空洞調節要素を使用可能である。
[00403] 自由電子レーザFELが放出するEUV放射のパワーを変更するために動的移相器304を用いることの利点は、電子バンチがアンジュレータの24に到達する前にその特性に影響を与えないことである。このため、図3を参照すると、電子ビームEの電子バンチの加速に用いられる加速器22に影響を与えないことが可能となる。自由電子レーザFELが、アンジュレータ24による電磁放射発生後に加速器22を介した電子の再循環を用いて電子を減速させる場合、減速のため加速器に入射する電子は動的移相器304によって影響を受けている。しかしながら、動的移相器304が引き起こす電子エネルギの変化は典型的に約0.1%であるため、加速器22に対してごくわずかな影響しか及ぼさない。
[00404] 一実施形態では、1対の動的移相器304を設けることができ(例えば図14に示すように)、各動的移相器は異なるギャップ302に設けられている。この場合、第1の動的移相器は第1の位相シフトを与えるように配置し、第2の動的移相器は第2の位相シフトを与えるように配置すればよい。第1及び第2の位相シフトは、例えば異なる大きさを有し得る。第1及び第2の位相シフトは、例えば同じ大きさであるが異なる符号を有し得る。
[00405] ある制御スキームでは、動的移相器304によって与えられる位相シフトは大きさが等しいが符号が逆であり得る。動的移相器に到達する前の電子ビームEにすでに位相シフトが存在する場合、一方の動的移相器304は位相シフトのサイズを大きくするように作用し、他方は位相シフトのサイズを小さくするように作用することができる。2つの動的移相器304の電子ビームEに対する組み合わせ効果により、結果として位相変化は生じない。このため、動的移相器304がアクティブである場合のアンジュレータの24の変換効率は、動的移相器304がアクティブでない場合の変換効率と同じである。
[00406] あるいは、所与の時点で2つの動的移相器の一方のみがアクティブであるように制御スキームを実施することも可能である。どちらの動的移相器を動作させても、アンジュレータにおける放射増幅は同じ量だけ変化する。このため、どちらの動的移相器がアクティブであるかには無関係に、出力放射ビームは同一のパワーを有する。
[00407] あるいは、2つの動的移相器が一緒に調整されるように制御スキームを実施することも可能である。この調整は、出力放射ビームのパワーが変化しないような大きさ及び符号を有する。調整は、所定の大きさ及び符号とすることができ、及び/又は較正され監視された大きさ及び符号としてもよい。
[00408] 上述した3つの制御スキームの全てにおいて、EUV放射ビームのパワーは同じままである。しかしながら、電子が2つの動的移相器304間を移動している際にその位相が変更されるので、これによって、動的移相器の間にあるアンジュレータ300での放射ビームの発生が変化する。動的移相器の間にあるアンジュレータ300において発生される放射ビームEは、放射帯域幅及び/又は空間パワー分布が変化している。また、動的移相器の下流のアンジュレータにおいても放射ビーム発生は変化し得る。従って、動的移相器304がアクティブである場合の放射ビームEは、(動的移相器がアクティブでない場合に発生する放射ビームと比較して)同じパワーであるが異なる帯域幅及び/又はパワー分布で発生される。この文書の他の箇所で説明するように、リソグラフィシステムのミラーの総合的な透過は波長に依存する。また、ミラーは有限の空間/角度受容度を有する。従って、動的移相器304を用いて放射ビームの帯域幅及び/又はパワー分布を変更することにより、リソグラフィ装置が基板に送出する放射線量を制御することができる。動的移相器304によって生じる帯域幅及び/又は空間パワー分布の変化がリソグラフィ装置投影システムPSにより送出される放射パワーに対して与える影響を較正し、この較正結果を、動的移相器304を制御する場合にコントローラCTによって用いることができる。
[00409] 上述の手法を一般化して3つ以上の動的移相器を用いることができる。これらの移相器の様々な組み合わせがリソグラフィ装置投影システムPSにより送出される放射ビームパワーに対して及ぼす影響を測定し、次いでコントローラCTによって用いて、放射ビームの帯域幅及び/又は空間パワー分布を制御することができる。例えば、10の動的移相器を設け、これらの動的移相器の様々な組み合わせをコントローラCTにより活性化及びスイッチングオフすることで、投影システムにより送出される放射ビームパワーの様々な変化を達成することができる(例えば自由電子レーザから出力される放射ビームパワーを著しく変化させることなく)。
[00410] 動的移相器304を制御することが動的移相器のアクティブ状態とアクティブでない状態との間のスイッチングを含む(例えばオン状態とオフ状態との間で変調される)実施形態について説明した。動的移相器がアクティブである場合にこれによって与えられる位相シフトのサイズも、(例えばコントローラCTによって)制御することができる。これを達成するには、例えば電磁石306〜308に供給される電流のサイズを調整することで、動的移相器によって与えられる位相シフトサのイズを調整すればよい。
[00411] 図18〜図27は、本発明の様々な実施形態と関連付けて参照したセンサ装置STを含み得るセンサ装置の様々な構成を示す。
[00412] 図18を参照すると、EUV放射ビームBのパワーを示す値を確定するためのセンサ装置400の第1の実施形態が示されている。センサ装置400は、センサ410と、メイン放射ビームBmを受光するための光学要素420と、を備えている。センサ410は、例えば電荷結合素子(CCD)及び/又はフォトダイオード等の検知要素アレイを含むことができる。光学要素420はミラーであり、かすめ入射ミラーとすればよい。EUV放射ビームBは、例えば自由電子レーザFELが生成する一次放射ビームB、又はビーム分割装置20が生成する二次放射ビームBa〜Bhの1つであり得る。
[00413] センサ410は検知環境415内に配置され、光学要素420はメインビーム環境425内に配置されている。一般に、検知環境415内の条件はメインビーム環境425内のものとは異なる場合がある。例えば放射ビームBはEUV放射を含み、従ってメインビーム環境425は真空条件に保持され得る。この実施形態では、壁430がメインビーム環境425から検知環境415を分離する。壁430には透明な膜又はウィンドウ431が設けられている。
[00414] 図19を参照すると、光学要素420の反射面421は概ね平滑であるが、この反射面全体に分散させた複数のマーク422が設けられている。本実施形態では、複数のマーク422の各々は反射面421における概ね半球形のくぼみの形態である。複数のマーク422は、例えばイオンミリング等のいずれかの適切なプロセスを用いて反射面にエッチングすることができる。複数のマーク422は、放射ビームBの第1の部分を受光するように配置された光学要素420の第1の領域を形成する。反射面の残りの実質的に平滑な部分は、放射ビームBの第2の部分を受光するように配置された光学要素420の第2の領域を形成する。光学要素のこれらの第1及び第2の領域が反射面421の空間的に別個の領域を形成するので、放射ビームBの第1及び第2の部分は放射ビームBの空間強度分布の異なる領域に対応する。
[00415] 放射ビームの第1の部分は、複数のマーク422により散乱して第1の分岐放射ビームB1を形成する。この散乱は、第1の分岐放射ビームB1がウィンドウ431を通って検知環境415へと送出されるようになっている。放射ビームBの第2の部分は、第2の領域により反射されて第2の分岐放射ビームB2を形成する。第2の分岐放射ビームB2はメインビーム環境425内に留まり、例えばリソグラフィ装置LAa〜LAnの1つ以上へと送出され得る。
[00416] センサ410を覆うように、蛍光材料のスクリーン411が設けられている。検知要素415内で、第1の分岐放射ビームB1は光学要素440によってセンサ410へと送出される。光学要素440はスクリーン411上に複数のマーク422の像を形成する。この像は焦点が合っている場合も合っていない場合もある。第1の分岐放射ビームB1は蛍光材料のスクリーン411によって吸収され、これがより長い波長の放射を放出する。放出された放射はセンサ410によって検出される。このような蛍光スクリーンを用いることで、比較的短いパルスの放射ビームのパワー測定が大幅に簡略化される。例えば、自由電子レーザはサブピコ秒パルスを生成し得る(典型的なパルスは100fsのオーダーであり得る)。このような短いパルスは、高速フォトダイオード等の既知の検知要素が分解するには短すぎることがある。しかしながら、蛍光材料がフェムト秒パルスにより励起された場合であっても、蛍光発光は典型的にナノ秒のタイムスケールで発生する。従って、蛍光スクリーンが放出した放射は既知の検知要素を用いて分解することができる。適切な蛍光材料には、直径3インチまでの単結晶ディスクにおいて慣例的に生成される半導体グレード材料である酸化亜鉛(ZnO)、又は例えばセリウム等の希土類元素がドーピングされたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)が含まれる(YAG:Ce)。
[00417] センサ410はケーブル413によってコントローラCTに接続されている。センサ410は、このセンサ410が確定したパワーを示す信号をコントローラCTに送信するように動作可能である。
[00418] 有利な点として、このセンサ装置400によって、放射ビームBの経路にセンサを配置する必要なく、放射ビームBの第1の部分のパワーを確定することができる。従って本発明では、経路に直接配置されたセンサの場合にはこれに大きな熱負荷を加えるはずの極めて高いパワー及び強度を有する放射ビームのパワーを測定することが可能となる。例えばこれは、複数のリソグラフィ装置LAa〜LAnに放射を与える自由電子レーザにより生成された一次放射ビームBのパワーを測定することができる。このような放射ビームは、数十キロワットのオーダーのパワー及び比較的小さいエテンデュ(etendue)を有し得る。
[00419] 更に、センサを放射ビームBの経路に配置する必要がないので、本発明のこの実施形態は、複数のマーク422の寸法に制限のない構成を提供する。特にこれは、1つ以上のセンサを放射ビームの経路に配置した場合に比べ、マーク422を充分に小さくして、パワー測定に用いられる強度分布の部分(すなわち第1の分岐放射ビームに寄与する部分)を著しく小さくすることができる。
[00420] 図19及び図20を参照すると、複数のマーク422は反射面421全体に分散している。この実施形態では、複数のマーク422は反射面421全体に矩形の格子状配列を形成し、第1の方向の隣接マーク間の間隔はlであり、第2の垂直方向の隣接マーク間の間隔はhである。代替的な実施形態では、反射面上でのマーク422の他の分散を用いることも可能である。各マーク422の寸法dは隣接マーク間の間隔l、hよりも著しく小さい。有利な点として、これにより、パワー測定に用いられる放射ビームBの第1の部分が比較的小さいことが保証される。
[00421] 各マーク422の寸法dは比較的小さくすることができる。例えば、各マーク422の寸法dは約100μmより小さくすることができる。
[00422] 光学要素に近い近接場(near field)では、第2の分岐放射ビームB2のパワー分布は放射ビームBのものと同様である。ただし、各々がマーク422の異なる1つに対応した複数のギャップでは、パワー分布は実質的にゼロである。第2の分岐放射ビームB2は例えば、光学要素420の遠距離場(far field)に配置され得るリソグラフィ装置LAa〜LAnの1つ以上へと送出することができる。このような実施形態では、好ましくは、各マーク422の寸法dが充分に小さいので、遠距離場におけるマーク422に対応したパワー分布の複数のギャップは、第2の分岐放射ビームB2の発散による回折によって平滑化されている。
[00423] 更に、好ましくは各マーク422の寸法dが充分に小さいので、このミラーが放射ビームBによって照明された場合、マーク422の近傍でのミラー熱膨張歪み及び反射面421の形状の変動は無視できる程度である。有利な点として、これによって、熱膨張のばらつきによる集束の影響は無視できる程度であるか又は補正可能であることが保証される。
[00424] 更に、好ましくは各マーク422の寸法dが充分に小さいので、単一マークにより放出又は散乱されるパワーは比較的小さい(例えば1%未満)。有利な点として、これによって、直接測定可能となる前に減衰が全く必要ないか又は比較的わずかしか必要ないことが保証される。
[00425] 第1の分岐放射ビームB1は、複数のマーク422の各々に対応した部分を備えている。そのような各部分が蛍光スクリーン411の異なる空間部分に送出されるように、複数のマーク422及び光学要素420を配置することができる。蛍光スクリーン411は、そのような各部分について別個の放射ビームを放出するように動作可能である。このような実施形態において、センサ410は、蛍光スクリーン411が放出するそのような各放射ビームのパワーを確定するように動作可能である。従って図21を参照すると、センサ410は、放射ビームBのビームプロファイル全体における多数の離散的なポイントでそのパワーを確定するように動作可能である。このため、センサは、離散的にサンプリングされた放射ビームの強度分布414を示す信号を出力するように動作可能である。
[00426] コントローラCTは、内挿補間によって、離散的にサンプリングした強度分布414から放射ビームのパワー分布を確定するように動作可能である。例えば予想ビームプロファイル形状を想定し、多数のプロファイル形状パラメータをセンサ410が出力するデータに当てはめることができる。これは例えば最小二乗アルゴリズムを用いればよい。
[00427] コントローラCTは、確定したパワー又は強度分布を用いて放射ビームBの特性(aspect)を制御するように動作可能である。例えばコントローラCTを自由電子レーザFELに接続し、確定したパワー又は強度分布に基づいてソース自由電子レーザのパラメータを制御することができる。例えばコントローラは、放射ビームBの方向及び/又は位置の調整、及び/又は放射ビームBのパワー強度又は強度分布の調整を行うように構成可能である。
[00428] 図22を参照すると、代替的な実施形態において、複数のマーク422は反射面421上で概ね半球形の突起の形態とすることができる。他の代替的な実施形態では、マーク422は様々な形状のくぼみ又は突起を含むことも可能である。
[00429] 図18に示す実施形態では、透明な膜又はウィンドウ431を有する壁430を設けて検知環境415をメインビーム環境425から分離する。図23に、放射ビームのパワーを示す値を確定するためのセンサ装置400aの代替的な実施形態を示す。センサ装置400に直接対応するセンサ装置400aの機構は同じ標示を有する。ここでは、センサ装置400aとセンサ装置400との相違のみを詳細に説明する。この代替的な実施形態では、第1の分岐放射ビームB1を蛍光スクリーン411に送出するように構成された光学要素440を含む全てのEUV光学部品はメインビーム環境425a内に配置されているが、センサ410は検知環境415a内に配置されている。壁430aは、検知環境415aをメインビーム環境425aから分離するために設けられ、これらは一般に異なる条件下に保持することができる。センサ装置400aのこの代替的な実施形態において、蛍光スクリーン411は壁430aのウィンドウとして機能し、検知環境415aをメインビーム環境425aから分離する。
[00430] 図24を参照すると、放射ビームのパワーを示す値を確定するためのセンサ装置400bの更に別の代替的な実施形態が示されている。センサ装置400に直接対応するセンサ装置400bの機構は同じ標示を有する。ここでは、センサ装置400bとセンサ装置400との相違のみを詳細に説明する。この代替的な実施形態では、光学要素420の反射面421は概ね平滑であるが、反射面全体に分散させた複数の蛍光マーク422aが設けられている。本実施形態では、複数の蛍光マーク422aの各々は、蛍光材料から形成された概ね半球形の突起の形態である。
[00431] 放射ビームの第1の部分は複数の蛍光マーク422aにより吸収され、これがより長い波長の放射を放出して第1の分岐放射ビームB1を形成する。蛍光マーク422aは、第1の分岐放射ビームB1がウィンドウ431を通って検知環境415へと送出されるように構成されている。このような蛍光スクリーンを用いることで、比較的短いパルスの放射ビームのパワー測定が簡略化される。適切な蛍光材料には、直径3インチまでの単結晶ディスクにおいて慣例的に生成される半導体グレード材料である酸化亜鉛(ZnO)、又は例えばセリウム等の希土類元素がドーピングされたイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)が含まれる(YAG:Ce)。
[00432] 前述の実施形態と同様、放射ビームBの第2の部分は第2の領域によって反射されて、メインビーム環境425内に留まる第2の分岐放射ビームB2を形成し、例えばリソグラフィ装置LAa〜LAnの1つ以上へ送出することができる。
[00433] EUV放射よりも長い波長を有する放射を含む第1の分岐放射ビームB1は、専用の光学部品を介してセンサ410へ送出される。第1の放射ビームB1が含む放射はすでに波長が長く、パルスが蛍光プロセスのスケール(典型的にはフェムト秒タイムスケールでなくナノ秒タイムスケール)であるので、蛍光スクリーンは設けられていない。この実施形態では、専用の光学部品は反射光学要素441及び集束光学要素442を備えている。あるいは、光学要素の他の組み合わせも必要に応じて使用可能である。専用の光学部品441、442及びセンサ410は検知環境415内に配置されている。例えばセンサ装置400に対するセンサ装置400bの相対的な利点は、第1の分岐放射ビームがEUV放射を含まず、従って第1の分岐放射ビームB1のために安価かつ簡単な光学構成及び検知環境415を使用可能なことである。例えば、高価なEUVミラーでなくレンズを用いてもよく、検知環境415は例えば大気圧の空気を含んでもよい。
[00434] センサ装置400bに対するセンサ装置400の相対的な利点は、検知材料(蛍光スクリーン411)でなく光学要素の反射面421(蛍光マーク422a)上に蛍光材料が設けられていることである。従って、センサ装置400において蛍光材料は高パワーEUV放射に露呈されず、このために寿命が長いと予想され得る。更に、センサ装置400bでは、蛍光マーク422aは、放射ビームBプロファイルのどの部分が入射するかに応じて異なる温度変化を経験し得る。蛍光プロセスは温度依存であり得るので、これによって、センサ410が確定する分布を放射ビームBの強度プロファイルに正確にマッピングすることが困難となり得る。
[00435] 図25を参照すると、放射ビームパワーを示す値を確定するための、本発明に従ったセンサ装置470の更に別の実施形態が示されている。センサ装置470は、センサ471と、放射ビームBを受光するための光学要素472と、を備えている。センサ471は、上述のセンサ410と実質的に同様とすればよい。特にセンサ471は、例えば電荷結合素子(CCD)及び/又はフォトダイオード等の検知要素アレイを備えることができる。
[00436] 光学要素472はミラーであり、かすめ入射ミラーとすればよい。前述の実施形態と同様、放射ビームBは、例えば自由電子レーザFELが生成する一次放射ビームB、又はビーム分割装置20が生成する二次放射ビームBa〜Bhの1つであり得る。
[00437] 光学要素472は反射面473を備えている。反射面473に、複数の規則的に離間した溝が延出している。これらの溝は、例えばエッチング又はスタンピング等のいずれかの適切なプロセスで形成することができる。
[00438] 光学要素472は、図1のビーム分割装置20の一部を形成することができ、熱的な理由でアンジュレータ24の出力から数十又は数百メートルのオーダーの距離に配置することができる。同様に、光学要素472は、例えば1から4度のオーダーの比較的小さいかすめ入射角を有するかすめ入射ミラーであり得る。
[00439] 光学要素472は、例えばシリコンの結晶面に沿ったエッチングによってシリコンから形成可能である。図26を参照すると、光学要素472をシリコンから形成する実施形態について、光学要素472の反射面473の一例が示されている。この図示する例では、上面475は<100>結晶面から形成され、溝を形成する面476a、476bは<111>及び<−111>面から形成することができる。このような構成では、溝の底部の角度は70.529度である。溝は<01−1>方向に沿って延出している。入来放射ビームBの方向は、<01−1>方向に対して小さい(かすめ入射)角度で配されている。このような格子によって、0次及び±1次と考えられる3つの分岐放射ビームを形成する。分岐放射ビームの強度比は、それらが反射される面(例えば上面475又は溝を形成する面476a、476b)の面積比と、入来放射ビームBの入射角とに依存する。
[00440] 光学要素472に、(例えばEUV放射のため)より高反射性の材料のコーティングを設けることも可能である。例えば光学要素にルテニウム(Ru)のコーティングを設ければよい。これは例えば約50nmの厚さを有し得る。
[00441] 光学要素472にシリコンを用いることの利点は、約123Kでの動作によって動作中の熱膨張を制限し得ることである。この温度では、シリコンの熱伝達率は400b W/m/K以上のオーダーであり、これは室温での熱伝達率の4倍で、銅(Cu)よりも約50%高い。従って、膨張が小さく光学要素472が設計構造寸法を維持する範囲に温度を維持しながら、比較的大きい熱負荷でも逃がす(drain)ことができる。
[00442] 溝によって反射面473は複数の表面要素グループに分割される。各表面要素グループは、複数の実質的に並行した表面要素を含む。例えば、図26の上面475は第1の表面要素グループを形成し、各リッジの一方側を形成する面476aは第2の表面要素グループを形成し、各リッジの反対側を形成する面476bは第3の表面要素グループを形成する。図26には光学要素の小さい部分のみを示すが、各グループは1000のオーダーの表面要素を含み得る。このような構成は反射格子として機能する。各表面要素グループは、放射ビームBの異なる部分を受光するように構成された光学要素472の異なる領域を形成する。光学要素472のこれらの異なる領域は反射面473の空間的に離散した領域を形成するので、反射ビームBの異なる部分は放射ビームBの強度分布の異なる部分に対応する。
[00443] 表面要素は各々、1から100μmのオーダーの幅を有し得る。
[00444] 各分岐放射ビームは、各々が単一グループの異なる表面要素から反射される複数のサブビームを含み得る。所与の表面要素グループ内の各表面要素は実質的に並行しているので、サブビームの各々は、少なくとも光学要素472の近接場において実質的に並行している。所与のグループの表面要素は、他のグループのものに対して非ゼロの角度に配置される。すなわち、異なるグループの表面要素は実質的に並行していない。従って、光学要素472の近接場では、各分岐放射ビームのパワー分布は放射ビームBのものと同様である。ただし、他の表面要素グループの表面要素に対応した複数のストリップが存在し、ここではパワー分布は実質的にゼロである。しかしながら、放射ビームBの非ゼロの発散のため、光学要素472の遠距離場では複数のサブビームが重複及び干渉して、放射ビームBと実質的に同様の形状のパワー分布が形成される。
[00445] あるいは、異なる表面要素からの複数のサブビームは、遠距離場において充分に拡散して相互に干渉する場合があり、各分岐放射ビームはこの干渉からの干渉縞において極大に相当し得る。
[00446] 再び図25を参照すると、一実施形態において、光学要素472の反射面473の幾何学的形状は、第1及び第2の分岐放射ビームB1、B2が形成されるようになっている。更に、光学要素472の反射面473の幾何学的形状は、第1の分岐放射ビームB1のパワーが第2の分岐放射ビームB2のものより著しく小さいようになっている。第1の分岐放射ビームB1は、この第1の分岐放射ビームB1のパワー及び/又はパワー強度分布を確定するように動作可能なセンサに送出される。第2の分岐放射ビームB2は、例えば、光学要素472の遠距離場に配置され得るリソグラフィ装置LAa〜LAnの1つ以上へと送出することができる。このような実施形態では、好ましくは、第1の分岐放射ビームB1を形成する表面要素の角度幅が充分に小さいので、遠距離場におけるこれらの表面要素に対応したパワー分布の複数のストリップは、第2の分岐放射ビームB2の発散による回折によって平滑化される。
[00447] 任意選択的に、第2の分岐放射ビームB2を送出するために第2の光学要素474を設けてもよい。第2の光学要素474は、第2の分岐放射ビームB2が放射ビームBと実質的に並行していることを保証するように構成可能である。いくつかの実施形態では、第2の分岐放射ビームB2が放射ビームBと実質的に一列に並ぶことを保証するため、更に別の光学要素を設けることも可能である。
[00448] いくつかの実施形態では、光学要素472の反射面473の幾何学的形状は、3つ以上の放射ビームが形成されるようになっている。このような実施形態では、光学要素472の反射面473の幾何学的形状は、第1の分岐放射ビームB1のパワーが、実質的に等しいパワーを有し得る残りの分岐放射ビームのものよりも著しく小さいようにすることができる。このような実施形態では、放射ビームパワーを示す値を確定するための装置は、ビームを複数の二次ビームに分割するように構成されたビーム分割装置と組み合わされる。このような実施形態では、光学要素は図1のビーム分割装置の一部を形成することができる。
[00449] 図27に、放射ビームパワーを示す値を確定するためのセンサ装置480の代替的な実施形態を示す。センサ装置470に直接対応するセンサ装置480の機構は同じ標示を有する。ここでは、センサ装置480とセンサ装置470との相違のみを詳細に説明する。この代替的な実施形態において、センサ装置480は、センサ481と、放射ビームBを受光するための光学要素486と、を備えている。
[00450] 光学要素486はミラーであり、かすめ入射ミラーとすればよい。前述の実施形態と同様、光学要素は、複数の分岐放射ビーム(図28の例示的な実施形態では3つ)を生成するように配置された反射格子である。第2及び第3の分岐放射ビームB2、B3の各々は複数のサブビームを含み、その各々は1つの表面要素グループ内の異なる表面要素から反射される。
[00451] 更に、第2又は第3の分岐放射ビームB2、B3の一部を形成するように表面要素によって反射されない放射ビームの第1の部分が存在する。この散乱放射は主に、隣接した表面要素の交点に形成されたエッジに入射する放射から構成され得る。この散乱放射は大きな立体角をカバーし、第1の分岐放射ビームB1を形成すると考えられる。
[00452] センサ装置480は更に、第1の放射ビームB1を集光してこれをセンサ481へと送出するように配置された近垂直入射放射コレクタ482を備えている。コレクタ482には2つのアパーチャ483、485が設けられ、第2及び第3の分岐放射ビームB2、B3が光学要素486から離れる方向に伝搬することを可能とする。
[00453] このような実施形態は、リソグラフィ装置LAa〜LAnによって受光される放射に寄与しない不可避の散乱放射の一部分を都合よく用いる。更に、入射する放射ビームBの比較的小さい部分のみがこのように散乱し、センサの過剰な熱負荷が回避されるという利点がある。放射ビームBの強度分布を確定するため、センサ装置480の較正により、第1の分岐放射ビームB1と放射ビームBとのパワー及びパワー分布の関係を明らかにする。
[00454] 実施形態に従ったセンサ装置は、ビームステアリングユニットの一部を形成することができる。特に、本発明の実施形態に従ったセンサ装置によって行われる放射ビームBのパワー分布を示す測定は、放射ビームBの方向操作(steer)に用いられるフィードバックベースの制御ループに対する入力を与えることができる。この入力に応じて放射ビームBの方向を変更すればよい。これは、例えば放射ビームBの経路で1つ以上の光学要素を移動させることで達成可能である。これに加えて又はこの代わりに、これは、自由電子レーザFELにおいてバンチ化電子ビームEの軌道を変更することで達成可能である。光案内効果の結果、自由電子レーザFELによって出力される一次放射ビームBの方向は、特にアンジュレータ24の端部内の電子ビームの軌道に依存する。
[00455] 自由電子レーザによって生成された放射ビームの遠距離場パワー分布は、ガウス状であるが真のガウス分布からは逸脱していると予想される。実施形態に従ったセンサ装置は、そのような未知の強度分布を有する放射ビームBの方向操作に用いられるフィードバックベースの制御ループに対する入力を与えるのに特に適している。その理由は、放射ビームプロファイルをビームプロファイル全体で、特にビームパワー分布の最大値付近でサンプリングできるからである。更に、光学要素の第1の領域を形成する複数のマークは充分に高密度であるので、各リソグラフィ装置LAa〜LAnに送出されるパワー及び強度分布を内挿補間によって確定することができる。
[00456] 複数のEUVリソグラフィ装置に放射を供給するように動作可能な自由電子レーザは、例えばアンジュレータ24の出力において数十キロワットのオーダーのパワー及び100μmのオーダーの直径、すなわちGW/cm2のオーダーの平均パワー密度を有し得る。更に、自由電子レーザの放射ビームが有し得るパルス長は100fs以下のオーダーであり、このため1014W/cm2のオーダーのピークパワー密度を生成することができる。このような放射ビームのパワー及び/又は位置を測定する1つの方法として、放射ビームプロファイルの周辺にセンサを配置することができる。しかしながら、このような高いピークパワー強度では、分布のピークから数シグマにセンサを配置する必要がある。従ってこのような配置では、総パワーの強度分布に関する情報が得られない。更に、このような配置は、自由電子レーザビームのポインティングの不安定さに極めて敏感である。
[00457] 再び図1及び図2を参照すると、リソグラフィシステムLSは減衰器15a〜15nを含むことができる。分岐放射ビームBa〜Bnは各減衰器15a〜15nを通過して送出される。各減衰器15a〜15nは、分岐放射ビームBa〜Bnがその対応するリソグラフィ装置LAa〜LAnの照明システムILに入射する前に各分岐放射ビームBa〜Bnの強度を調整するように構成されている。
[00458] 図28a及び図28bを参照すると、図1及び図2に示す減衰器15aに対応し得る減衰装置519の一例が示されている。分岐放射ビームBaは一点鎖線により示されている。減衰器15aは第1のミラー520及び第2のミラー521を備えている。第2のミラー521は、図示のy方向において第1のミラー520から距離2hだけ離れている。第2のミラー521は、減衰器15aに入った分岐放射ビームBaが第1のミラー520の反射面に入射しその反射面によって第2のミラー521の反射面の方へ反射されるように配置されている。第2のミラー521は、分岐放射ビームBaをリソグラフィ装置LAa(図28aには示していない)の方へ送出するような角度に配されている。
[00459] 第1のミラー520はアーム520’を介して第1の枢軸点522に接続され、第2のミラーはアーム521’を介して第2の枢軸点523に接続されている。第1のアクチュエータ(図示せず)が第1の枢軸点522を中心に回転するように設けられ、第2のアクチュエータ(図示せず)が第2の枢軸点523を中心に第2のミラー521を回転させるように設けられている。ミラー520、521の位置はコントローラCTAによって制御される。第1及び第2のアクチュエータは、当業者に容易に認められるような適切な形態とすればよい。例えばアクチュエータは、枢軸点522、523に配置されアーム520’、521’に接続されたモータを含み得る。
[00460] 枢軸点522、523を中心としたミラー520、521の回転により、分岐放射ビームBaに対するミラー520、521の入射角αを調整することができる。ミラー520、521が同一の入射角αに配置されると、ミラー520、521で反射された後の分岐放射ビームBaはミラー520、521で反射される前と同じ方向に伝搬することは認められよう。
[00461] ミラー520、521は、一般にかすめ(又は斜め(glancing))入射反射と称されるものによって分岐放射ビームBaを反射するように配置されている。図28aでは、ミラー520、521は最大入射角αでの配置が示され、分岐放射ビームはミラー520の下部(y方向に対して)及びミラー521の上部(y方向に対して)に入射する。いくつかの実施形態では、角度αの最大値は例えば約10度の角度であり得る。
[00462] 図28bでは、ミラー520、521は最小入射角αでの配置が示され、分岐放射ビームBaはミラー520の上部及びミラー521の下部に入射する。角度αの最小値は例えば約1度の角度αであり得る。従って、図示する例においてミラー520、521は1度から10度の入射角の間で各枢軸点522、523を中心に回転可能である。他の実施形態では、これよりも大きいか又は小さい角度範囲を可能とするようにミラー520、521の構成及び/又はサイズが異なる場合があることは認められよう。例えば枢軸点522、523は、ミラー520、521の有用角度範囲を拡大又は縮小するように選択することができる。更に、ミラー520、521の各々は固定の枢軸点を中心に回転する構成が図示されているが、これは例示に過ぎない。ミラー520、521の入射角は、当業者に容易に認められるような他のいずれかの構成を用いて調整可能であることは認められよう。一実施形態では、ミラー520、521は双方とも同一の枢軸点を中心に回転するように構成することができる。枢軸点522、523の位置を適切に選択することで、入来分岐放射ビームBaに対する出射分岐放射ビームBaの変位(すなわち図28a、28bの実施形態では2h)は、所定の比較的小さい範囲内の角度α(図28a、図28bに示すような)では実質的に一定とすることができる。しかしながら角度αの角度範囲がこれより大きい場合、入来分岐放射ビームBに対する出射分岐放射ビームBの変位を実質的に一定とするために、ミラー520、521の少なくとも一方又は双方に、ミラー520、521の一方又は双方をy方向に平行移動させるのに適した平行移動手段を備えることができる。
[00463] ミラー520、521の各々の反射率は、ミラー520、521と分岐放射ビームBaとの間の入射角αの関数である。例えば2度の入射角αでは、ミラー520、521の各々で、入射放射の約98%(ミラーが完璧に平坦な表面を有するルテニウム(Ru)コーティングを有するという理論上の場合)を反射することができる。すなわち2度の角度では、ミラー520、521の一方が反射する放射は、そのミラーに入射した放射強度に比べて2%低減する。このため、ミラー520、521の双方が2度の角度αに配置されている場合、分岐放射ビームBaの強度はミラー520、521による反射で約4%低減する。
[00464] 10度の入射角(上述の例で用いられる最大角度)では、ミラー520、521の各々で入射放射の約90%を反射することができる。すなわち、入射角が10度である場合、反射される放射の強度は入射した放射よりも10%低い。このため、ミラー520、521の双方が10度の入射角αに配置されている場合、分岐放射ビームBaの強度はミラー520、521による反射で約20%低減する。
[00465] 上述の説明から、角度αを1度から10度の間で調整することにより、リソグラフィ装置LAaで受光される分岐放射ビームBaの強度は2%から20%の間で変動し得ることが認められよう。
[00466] いくつかの実施形態では、ミラー520、521の入射角を1KHzまでの周波数で調整することができ、これによって分岐放射ビームBaの減衰のための調整機構を提供する。第1及び第2のアクチュエータ(例えばモータ)をコントローラCTAに接続することができる。コントローラCTAは、リソグラフィ装置LAaで受光される分岐放射ビームBaの所望の強度を示す命令を受信するように構成可能である。このような命令の受信に応じてコントローラがミラー520、521の入射角αを調整するようにアクチュエータを制御することで、分岐放射ビームBaの所望の減衰を達成し、これによってリソグラフィ装置LAaにおける所望の強度を達成することができる。コントローラは、センサSLa(図2を参照のこと)から入力として、リソグラフィ装置LAaにおける分岐放射ビームBaの強度を示す測定値を受信することができる。
[00467] コントローラCTAは、リソグラフィ装置LAaにおける強度を所定値に又は所定範囲内に維持するために、リソグラフィ装置LAaにおける分岐放射ビームBaの強度を検出すると共に分岐放射ビームBaの減衰を調整するように構成されたフィードバックベースの制御ループの一部とすることができる。図1を参照すると、このフィードバックベースの制御ループF2aは、自由電子レーザの後段かつビームスプリッタ19の前段に設けられたフィードバックベースの制御ループF1とは別個のものとすることができる。減衰器15aを制御するフィードバックベースの制御ループF2aを第2のフィードバックベースの制御ループと称する場合がある。自由電子レーザの後段かつビームスプリッタ19の前段に設けられたフィードバックベースの制御ループF1を第1のフィードバックベースの制御ループと称する場合がある。第1及び第2のフィードバックベースの制御ループF1、F2aは相互に独立して動作可能である。これらは、異なるコントローラCT、CTAにより制御するか、又は同一のコントローラにより制御することができる。第2のフィードバックベースの制御ループF2aは、第1のフィードバックベースの制御ループF1より低速であってもよい。
[00468] 他の実施形態では、ミラー520、521の各々の入射角は相互に独立して調整可能である。この結果として分岐放射ビームBaの伝搬方向が変化するが、これは、例えばミラー520、521の入射角を別個のステップでのみ調整可能な実施形態において、可能な減衰値数が増えるという点で有益である。
[00469] 上述の実施形態は減衰器15aを参照して説明したが、減衰器15b〜15nについても同様に実施可能であることは認められよう。
[00470] 図29を参照すると、減衰器15aを備えることができる減衰装置519の代替的な実施形態が示されている。図29の実施形態では、減衰装置519は4つのミラー530、531、532、533を備えている。ミラー530、531は図28a、28bを参照して上述したミラー520、521と同様に構成されている。具体的には、第1のミラー530には、このミラー530がアーム530’を介して接続する第1の枢軸点534を中心としてミラー530を回転させるように構成された第1のアクチュエータが設けられている。第2のミラー531には、このミラー531がアーム531’を介して接続する第2の枢軸点535を中心としてミラー531を回転させるように構成された第2のアクチュエータが設けられている。
[00471] ミラー532、533は、ミラー530、531と同様に構成されているが、第1のミラー530及び第2のミラー531の構成を、分岐放射ビームBaの伝搬方向に垂直な軸に沿って「ミラーリング」したものと見なすことができる。具体的には、第3のミラー532は、y方向において第2のミラー531と同じ位置に配置され、第2のミラー531から反射した放射を受光するように配置されている。第3のミラーには、第3の枢軸点536を中心としてミラー532を回転させるように構成された第3のアクチュエータが設けられている。第3のミラー532は、受光した放射を、第2のミラー532からy方向に2hの距離だけ離れた第4のミラー533の方へ反射させるように配置されている(すなわち第4のミラー553はy方向において第1のミラー530と同じ位置にある)。第4のミラー553には、第4の枢軸点537を中心としてミラー553を回転させるように構成された第4のアクチュエータが設けられている。第4のミラー553は、放射をリソグラフィ装置LAa(図29には図示していない)へ送出するように配置されている。
[00472] 第1から第4のミラー530〜553の各々の入射角αが同一である場合、分岐放射ビームBaは、減衰器15aへの入射時と同じ方向にかつy方向の同じ位置で減衰器15aから出射する。更に、各々が1度から10度の範囲で入射角を調整するように動作可能な4つのミラーを用いることで、減衰器15aの可能な減衰範囲は、(図28の構成における)2%から20%の範囲から、4%から40%まで拡大する(すなわち減衰器15aに入射する放射の96%から60%までの可能な透過範囲)。最小減衰が大きくても許容可能である場合、図29の実施形態で達成可能な大きい方の減衰範囲が有利であり得ることは認められよう。
[00473] 更に、図29の実施形態を用いて、分岐放射ビームBaの偏光に対する影響を低減しつつ、図28の実施形態が提供し得るものと同一又は同様の減衰範囲を与えることができる。これは、特定の減衰を達成するために必要な入射角αが小さいからである。所与の減衰について、分岐放射ビームBaのP偏光成分及びS偏光成分に対する4つのミラー530から553の組み合わせ効果は、2つのミラー520、521の組み合わせ効果よりも小さい。これは、20%又はこれに近い減衰(すなわち各ミラー520、521の入射角αが10度に近い)について特に当てはまる。
[00474] いくつかの実施形態では、分岐放射ビームBaが減衰器15aに入射する前の概ね円形の偏光をできる限り維持することが望ましいことがある。この場合、約1度から5度までの角度調整範囲で約2%から20%までの減衰範囲を達成し得る。従ってこの実施形態は、分岐放射ビームBaの偏光に対する影響を低減するために特に有益であり得る。
[00475] 更に、図29の構成では、ミラー530から553の1つ以上の平行移動補正を行うための平行移動手段は必要ない。出射ビームは、全てのαの値について入来ビームと同じ角度及び位置を有する(角度αが4つのミラー全てで等しい場合)。換言すると、ミラー530、531によって生じる距離2hのいかなる変化もミラー532、553によって「反転」されるので、分岐放射ビームBaが入射時と同じ位置で減衰器15aから出射することを保証するためにy方向のミラー平行移動は必要ない。
[00476] 図29は、2つのミラーのセットを2つ示すと考えることができる。すなわち、第1のセットはミラー530、531を含み、第2のセットはミラー532、533を含む。他の実施形態では、追加のミラー又は追加のミラーセットを設けることで、可能な減衰範囲を更に拡大するか、又は分岐放射ビームBaの偏光の変化を低減させることが可能であることは認められよう。
[00477] 減衰器15aから15nの1つ以上は代替的な減衰装置を含む場合もある(例えば上述の減衰装置に加えて又はその代わりに)。代替的な減衰装置は、固定の減衰を与えるか又は調整可能な減衰を与えることができる。調整可能な減衰が与えられる場合、調整は上述の減衰装置の速度よりも低速であり得る。代替的な減衰装置は、もっと高い可能減衰値の範囲を有し得る。
[00478] 図30aは、上述の減衰装置と組み合わせて又はその代わりに設けることができる代替的な減衰装置540の例を概略的に示す。これらの減衰装置を組み合わせて設ける場合、分岐放射ビームBaは、どちらかの減衰装置を通過してから他方を通過することができる。減衰装置540はコントローラCTAによって制御される。
[00479] 減衰装置540はガスベースであり、チャンバ542を画定する筐体541を備えている。筐体541は、いかなる形状のチャンバ542も画定することができる。例えば筐体541は概ね管状とすることができる。チャンバ542は、第1の端部で第1のウィンドウ543によって閉鎖され、第2の反対の端部で第2のウィンドウ544によって閉鎖されている。チャンバ542内に制御された量のガスを流入可能とするために入口545が設けられている。チャンバ542内から制御された量のガスを排出可能とするためにバルブ546も設けることができる。チャンバ542内の圧力を監視するために圧力モニタ547が設けられている。圧力モニタ547はいかなる形態の圧力モニタであってもよい。固定の封入されたガス媒体でなくガス流を供給することで、ガスによって吸収したエネルギを除去することができる。このように除去されるエネルギ量は、減衰装置540が大きい減衰率(10等の減衰率)を与える場合には相当なものとなり得る。
[00480] 入口545によってチャンバ542内にEUV吸収ガスを導入することができる。チャンバ542内に導入される特定のガスは、所望のEUV吸収レベルに応じて選択可能であることは認められよう。しかしながら一例として、水素、ヘリウム、及び/又はアルゴン等のガスが適切であり得る。ウィンドウ543、544は、EUV放射に高い透過率を与えるように構築すると共に、他の波長の電磁放射には高い吸収率を与えるように構築することができる。例えばこれらのウィンドウは、一般にスペクトル純度フィルタと称されるものを含むことができ、これはEUV波長外の放射を遮るがEUV放射の透過を可能とする。このようなスペクトル純度フィルタは、当業者に認められるいずれかの適切な方法で構築可能である。例えばウィンドウ543、544は、モリブデン(Mo)及びケイ化ジルコニウム(ZrSi)から構築すればよい。Mo/ZrSiスタックの一面又は両面にモリブデンシリサイド(MoSi)を被せてもよい。代替的な例では、ウィンドウ543、544はポリシリコン(pSi)から形成可能である。ポリシリコンフィルムの一面又は両面に窒化シリコン(SiN)層を被せてもよい。例えばグラフェン等の他の材料も、ウィンドウ543、544に用いるのに適切であり得る。ウィンドウ543、544の厚さは、チャンバ542内の所望の最大圧力に応じて選択すればよい。所望の最大圧力は所望の減衰に応じて選択すればよい。
[00481] 分岐放射ビームBaは、第1のウィンドウ543を通って代替的な減衰装置540に入射し、チャンバ542内の流体との相互作用によって減衰した後、第2のウィンドウ544を通って減衰装置540から出射する。チャンバ542を通過することによる分岐放射ビームBaの減衰は、チャンバ542内のガスの種類、量、及び圧力を変えることで変動させることができる。
[00482] 圧力センサ、ガス入口、及びガスバルブは、コントローラCTAと連通させることができる。コントローラCTAは、ガス入口545及びガスバルブ546を制御することでチャンバ542内の所望の圧力を達成するように動作可能である。チャンバ542内の所望の圧力は、代替的な減衰装置によって分岐放射ビームBaの所望の減衰が達成されるように選択することができる。この代わりに又はこれに加えて、チャンバ542内の所望の圧力は、チャンバ542内の圧力を所定の安全範囲内に維持するように選択してもよい。
[00483] 図30bに、代替的な減衰装置の代替的な実施形態を示す。同様のコンポーネントには同様の番号を付す。図30aの例示的な実施形態では、ウィンドウ543、544の双方が長さに沿って分岐放射ビームBaの伝搬方向に対して垂直である。このため、分岐放射ビームBaがチャンバ542に入射する位置とは無関係に、チャンバ542を通る分岐放射ビームBaの経路は同一の長さである。図30bに示す代替的な例では、ウィンドウ543、544は分岐放射ビームBaの伝搬方向に対して相互に角度が付いている。このため、分岐放射ビームBaがある位置からチャンバ542に入射する場合、分岐放射ビームBaが(図30bのy方向で)もっと低い別の位置からチャンバ542に入射する場合に比べて、短い距離でチャンバ542を通り抜ける。従って、分岐放射ビームBaがチャンバ542内に入射する位置を変えることによって分岐放射ビームBaの減衰を変動させることができる。更に、この構成を用いて光ビームの断面で強度勾配を発生させることも可能である。このような強度勾配を用いて、照明フィールドにおける強度のばらつきを補正してもよい。
[00484] 図31及び図32に、更に別の代替的なガスベースの減衰装置550を概略的に示す。まず図31を参照すると、装置550は、分岐放射ビームBaが通過するチューブ551を備えている。分岐放射ビームBaを減衰させるように作用するガスは、ガス供給552から3つのバルブ553a〜553cを介して、チューブ551に沿って離間したガス入口554a〜554cに供給される。チューブ551に3つの出口555a〜555cが設けられている。これらのガス出口は、関連付けられたガス入口554a〜554cに概ね対向している。各出口555a〜555cに真空ポンプ556a〜556cが接続され、ガスを排出機構557に送り出すように構成されている。
[00485] 減衰装置550は更に差動ポンピング部を備え、それらの2つ558はガス入口554a〜554cの上流に設けられ、それらの2つ559はガス入口の下流に設けられている。各差動ポンピング部558、559は、部分的に壁560で囲まれたチューブ551内の容積(volume)を含む。壁560の各々に、分岐放射ビームBaが通過する開口が設けられている。各容積にポンプ561が接続され、その容積からガスを送り出すために用いられる。差動ポンピング部558、559は、減衰装置550における圧力変動を他の装置から分離する(例えばそれらをリソグラフィ装置から分離する)ように動作可能である。
[00486] 使用の際、減衰装置550により与えられる減衰度は、バルブ553a〜553cを通過するガスのガス流量を変えることで制御される。バルブ553a〜553cはコントローラCTAによって制御可能である。チューブ551内のガス圧を上昇させると分岐放射ビームBaの減衰を増大させることができ、ガス圧を低下させると分岐放射ビームの減衰を低減させることができる。真空ポンプ556a〜556cを用いてチューブ551からガスを全て除去することで、減衰を0%まで低減させることができる。ガスにより与えられる減衰は、ガスが供給されるチューブ551の長さに依存し、更に、使用するガスに依存する。例えば水素ガスを用いる場合、EUV放射の吸収は0.1%Pa/mである。分岐放射ビームBaの0%から20%の減衰が必要である場合、10mのチューブ長にわたってガスを供給し、次いでチューブ内の水素ガス圧を0Paから20Paの間で変動させなければならない。例えばアルゴン(吸収率0.034Pa−1m−1)、窒素(0.059Pa−1m−1)、又はキセノン(0.062Pa−1m−1)等、もっと吸収率の高いガスを用いる場合は、これに応じてチューブ551の長さを縮小すればよい。例えば窒素を用いる場合、0〜0.7Paの圧力範囲で5m長のチューブを用いて、0%から20%までの減衰を達成可能である。
[00487] 減衰装置550の応答時間は、バルブ553a〜553cの速度、真空ポンプ556a〜556cのポンプ速度、及びガスを供給するチューブ551の容積に依存する。
[00488] 図32は、バルブ553a及びポンプ556aの実施形態を概略的に示す。バルブ553aは、アクチュエータ571によって作動されるバッフル570を備えている。バッフル570は、バッファ容積572とチューブ551との間の漏れのあるシールを形成する。バッファ容積572は、ガス供給552を用いてチューブ551内の圧力よりも高圧に維持される。アクチュエータ571はバッフル570を動かして、バッファ容積572からチューブ551内への出口554aを開閉する。バッフル570は軽量とすることができる(例えば10g以下、例えば約1gの重量)。この結果、アクチュエータ571は比較的高い周波数(例えば2kHz超)でバッフル570を用いて出口554aを開閉することができる。
[00489] 真空ポンプ556aは、このポンプの入口アパーチャにガスが流入する線形速度vとして表現可能なポンプ速度を有する。応答時間は、チューブ551の直径Dに概ね関連付けられる(応答時間Tは概ねD/vである)。典型的なターボ分子ポンプでは、vは約100m/sである。チューブ551の直径Dが5cmである場合、応答時間Tは約0.5msとなる。これは約2kHzの最大周波数に対応している。ガス入口554aの近傍でチューブ551の周囲に2つ以上のポンプ556aを設けることができる。この場合、応答周波数は増大する。
[00490] 一般に、図30a、図30bの代替的な減衰装置を用いて分岐放射ビームBaの減衰を変動させ得る範囲は、図28及び図29の減衰装置によって達成可能な減衰調整範囲よりも大きい。しかしながら、減衰を調整可能な速度は遅い。例えば、減衰を低減させるため、チャンバ542からガスを抜くことができる。しかしながらこれは、例えばミラー530から553を調整するために必要な時間に比べて著しく長い時間を要し得る。この時間長は、ターゲット位置がEUV放射を受光する時間期間より長い(例えば1msより長い)ことがある。
[00491] 図33を参照すると、更に別の代替的な実施形態が示されている。この場合、分岐放射ビームBaの経路に近垂直入射角で配置したEUV反射膜580によって減衰装置を提供する。膜580は、上述のウィンドウ543、544と同様に構築することができる。膜580は、使用する構成及び材料に応じていずれかの適切な寸法とすればよい。
[00492] 分岐放射ビームBaは、第1の減衰装置519から出射して膜580に入射する。膜580は、分岐放射ビームBaの部分581を減衰器515aの壁に配置された放射ダンプ582の方へ反射させる分岐放射ビームBaの入射角を生成するような向きに配置されている。分岐放射ビームBaの部分553は膜580を透過する。反射されない分岐放射ビームBaの部分は膜580によって吸収されることは認められよう。分岐放射ビームBaと膜580の入射角を近垂直入射角として、前段の光学要素(例えば図33の減衰装置519)の方への反射放射を実質的に回避することができる。
[00493] 膜580は、分岐放射ビームBaと交差しない第1の位置(図示せず)と、放射ビームと交差する第2の位置(図示している)と、の間で動かすことができる。膜の位置は、アクチュエータ(図示せず)を用いてコントローラCTAによって制御すればよい。従ってコントローラCTAは、膜580を用いて減衰を与えることが望まれるか否かに応じて、第1の位置及び第2の位置から選択する。
[00494] 図33において、膜580は減衰器15a内の減衰装置519の後段(分岐放射ビームBaの伝搬方向に対して)に配置されている。しかしながら他の実施形態では、減衰器15a内の減衰装置の順序は異なるものにしてもよい。更に、膜580等の複数の膜を連続的に設けることで、分岐放射ビームBaの減衰を更に増大可能であることも認められよう。分岐放射ビームと複数の膜との交差はコントローラCTAによって制御可能である。
[00495] 一実施形態では、膜580の代わりにメッシュを用いてもよい。一実施形態では、2つ以上のメッシュを使用可能である。メッシュは、膜よりも高い熱負荷に耐え得る場合がある。
[00496] 一実施形態において、減衰器は、照明システムIL(図2を参照のこと)の閉鎖構造の開口8における調整可能アパーチャを含むことができる。分岐放射ビームBaを減衰させるため、調整可能アパーチャのサイズを縮小することができる。この実施形態は放射の遠距離場分布に影響を与えない。これは、瞳面における放射にわずかな影響を与えるだけである(放射の極は小さくなるが位置は変わらない)。
[00497] 減衰器15a〜15nは、上述の実施形態の1つ以上を含むことができる。例えば図33の反射膜を、図28又は図29の減衰装置及び/又は図30a、30bの減衰装置と組み合わせることができる。実施形態の他の組み合わせも可能である。
[00498] 図1に関連付けて、各分岐放射ビームに各減衰器15a〜15nを設けることを説明したが、他の実施形態では、分岐放射ビームの1つ又はいくつかのみに減衰器を設ける場合もあることは認められよう。更に、複数の分岐放射ビームに単一の減衰器を設けることも可能である。例えば、減衰器15a〜15nはスプリッタ19の外側に配置して図示しているが、他の実施形態では、本明細書で説明したような減衰器をスプリッタ19内に配置することで複数の分岐放射ビームを減衰することができる。例えば、分岐放射ビームBb〜Bnの全てを共に減衰させるために、第1の分岐放射ビームBaの分岐直後に減衰器を設けてもよい。減衰器のいかなる組み合わせ又は構成も提供可能である。
[00499] 概略的に説明したような減衰器は、リソグラフィシステム内で基板よりも前段の他の場所に位置付けることも可能である。例えば図2を参照すると、照明システムIL内に減衰器を位置付けることができる。
[00500] 本発明の実施形態を単一の自由電子レーザFELの状況で説明したが、いかなる数の自由電子レーザFELも使用可能であることは認められよう。例えば、複数のリソグラフィ装置にEUV放射を提供するように2つの自由電子レーザを構成することができる。これはある程度の冗長性を織り込んでいる。この場合、一方の自由電子レーザが修理又は保守の最中である時に他方の自由電子レーザを用いることができる。
[00501] リソグラフィシステムLSの説明した実施形態は8つのリソグラフィ装置に言及し得るが、リソグラフィシステムLSはいかなる数のリソグラフィ装置も含むことができる。リソグラフィシステムLSを形成するリソグラフィ装置の数は、例えば、自由電子レーザから出力される放射量と、ビーム分割装置19で失われる放射量と、に依存し得る。これに加えて又はこの代わりに、リソグラフィシステムLSを形成するリソグラフィ装置の数は、1つのリソグラフィシステムLSのレイアウト及び/又は複数のリソグラフィシステムLSのレイアウトに依存し得る。
[00502] また、リソグラフィシステムLSの実施形態は、1つ以上のマスク検査装置MIA及び/又は1つ以上の空中検査測定システム(AIMS:Aerial Inspection Measurement system)を含むことができる。いくつかの実施形態では、リソグラフィシステムLSは、ある程度の冗長性を織り込むために2つのマスク検査装置を含み得る。これは、一方のマスク検査装置が修理又は保守の最中である時に他方のマスク検査装置の使用を可能とする。このため、一方のマスク検査装置は常に使用に供することができる。マスク検査装置は、リソグラフィ装置よりも低パワーの放射ビームを用いることができる。更に、本明細書に記載したタイプの自由電子レーザFELを用いて発生させた放射は、リソグラフィ又はリソグラフィ関連の用途以外の用途に使用可能であることは認められよう。
[00503] 「相対論的電子」という言葉は、相対論的エネルギを有する電子を意味するものと解釈するべきである。電子は、その運動エネルギが静止質量エネルギ(自然単位で511keV)以上に相当する場合に相対論的エネルギを有すると見なすことができる。実際には、自由電子レーザの一部を形成する粒子加速器は、静止質量エネルギよりはるかに大きいエネルギに電子を加速させることができる。例えば粒子加速器は、10MeV以上、100MeV以上、1GeV以上のエネルギに電子を加速させ得る。
[00504] EUV放射ビームを出力する自由電子レーザFELの状況において本発明の実施形態を説明した。しかしながら自由電子レーザFELは、いかなる波長の放射も出力するように構成可能である。従って、本発明のいくつかの実施形態は、EUV放射ビームでない放射ビームを出力する自由電子を含み得る。
[00505] 「EUV放射」という言葉は、例えば13〜14nmの範囲内のように、4〜20nmの範囲内の波長を有する電磁放射を包含すると考えることができる。EUV放射は、6.7nm又は6.8nm等、例えば4〜10nmの範囲内のように、10nm未満の波長を有することができる。
[00506] リソグラフィ装置LAa〜LAnはICの製造において使用可能である。あるいは、本明細書に記載したリソグラフィ装置LAa〜LAnは他の用途を有する場合もある。考えられる他の用途には、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用誘導及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造が含まれる。
[00507] 異なる実施形態を相互に組み合わせることができる。実施形態の特徴を他の実施形態の特徴と組み合わせることも可能である。
[00508] 本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実施可能であることは認められよう。上記の記載は限定でなく例示を意図したものである。従って、以下に述べる特許請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明に変更を行い得ることが当業者には認められよう。