[0009] 本発明の態様によれば、源からのビーム電流が周期的に中断されるため、そのようにしてビーム内に形成されたギャップが、加速位相及び減速位相中に複数のLINACセクションを同時伝播する時に実質的に重複するように、電子源に関するタイミングパターン設計規則及びFEL放射源内の経路長に関する設計規則が提供される。
[0010] 本発明の別の態様によれば、電子のバンチを発生させるための電子源と、電子のバンチを加速及び減速させるための複数の線形加速器(LINAC)と、動作中、電子のバンチがアンジュレータを通過することで放射を所望の波長で発生させるように構成されたアンジュレータと、電子源、複数のLINAC、及びアンジュレータの間の所望の電子バンチ経路に沿って電子のバンチを誘導するための複数のステアリングユニットとを備える、自由電子レーザ(FEL)放射源が存在する。FEL放射源は、動作中、各電子バンチが、電子源から電子バンチ経路に沿って複数のLINACの各々を加速位相中に少なくとも1回通過し、その後アンジュレータを通過し、その後複数のLINACを減速位相中に少なくとも1回通過するように;LINACのエネルギー回収動作を提供するために、加速位相における電子バンチによるLINACの通過が、その減速位相における電子バンチによるLINACの通過と整合されるように;及び、電子バンチの各連続ペアが、反復電子バンチシーケンスに従って、それぞれのバンチ間隔ずつ時間的に間隔が空けられるように、動作するように構成される。電子源は、アンジュレータでのイオンのクリアリングを可能にするために、電子バンチシーケンス内にクリアリングギャップを提供するように構成され、電子源は、複数のエネルギー回収LINACの各々について、及びクリアリングギャップのほぼすべてについて、加速位相又は減速位相においてクリアリングギャップがLINACを通過するごとに、クリアリングギャップが、減速位相又は加速位相においてLINACを通過するクリアリングギャップのうちの更なる1つと整合され、それによってLINACのエネルギー回収動作を維持するように、クリアリングギャップシーケンスに従ってクリアリングギャップを提供するように構成される。電子バンチシーケンス内のクリアリングギャップは、電子ビーム経路並びにアンジュレータ内の他の部分、例えば、他の部分よりも電子ビームがより集束される経路の部分においても、イオンのクリアリングを提供することができる。電子ビームがより集束される経路のこうした部分は、経路のほぼ直線的なセクション、例えばLINAC、屈曲前又は後のマッチングセクション、並びにアンジュレータのうちの1つ以上を含むことができる。
[0011] 動作中、各電子バンチは、各LINACを加速位相中に少なくとも2回及び減速位相中に少なくとも2回、通過することができる。
[0012] クリアリングギャップの先行及び/又は後続の電子バンチは、それらがLINACを通過する間、異なる位相を有することが可能であり、その差異はほぼ180度であり得るように、クリアリングギャップ及びクリアリングギャップのうちの更なる1つを整合させることができる。
[0013] 電子バンチシーケンスは周期的電子バンチシーケンスを含むことができ、クリアリングギャップは、周期的電子バンチシーケンスからの欠落電子バンチ、及び/又はシーケンスの通常のバンチよりも大幅に低い電荷を帯びているバンチを提供することによって、提供可能である。例えば大幅に低い電荷を帯びているバンチは、シーケンスの通常のバンチの電荷の50%未満、任意選択でシーケンスの通常のバンチの電荷の20%未満、任意選択でシーケンスの電荷の10%未満を帯びていてよい。大幅に低い電荷を帯びているバンチは、実質的に電荷を帯びていなくてもよい。
[0014] クリアリングギャップシーケンスは、クリアリングギャップが電子バンチ経路の長さに依存する選択された周期レートで提供され、電子バンチ経路は複数のループを含み得、アンジュレータを含むループのうちの1つの長さはループのうちの少なくとも他の1つの長さに対して選択された関係を有し得るようであってよく、選択された周期レート及びループ長さ間の選択された関係は、動作中、クリアリングギャップの整合を提供するためのものとすることができる。
[0015] 複数のLINACは、動作中、各電子バンチが第1及び第2のLINACの各々を、加速位相中に少なくとも2回及び減速位相中に少なくとも2回通過し、電子バンチの経路内にポイント(Z)が以下のように存在するように配置可能な、第1のLINAC及び第2のLINACを備えることが可能であり、
[0016] 第2のLINACを通るその減速位相における電子バンチの第1のパスのための、ポイント(Z)から第2のLINACへの入口(K)までのその減速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離(ZK)は、第2のLINACを通るその加速位相における電子バンチの第1のパスのための、第1のLINACからの出口(B)から第2のLINACへの入口(C)までのその加速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離(BC)にほぼ等しく、
[0017] 第1のLINACを通るその加速位相における電子バンチの第2のパスのための、第2のLINACからの出口(D)から第1のLINACへの入口(E)までのその加速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離(DE)は、第1のLINACを通るその減速位相における電子バンチの第1のパスのための、第2のLINACからの出口(L)から第1のLINACへの入口(M)までのその減速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離(LM)にほぼ等しく、
[0018] 第2のLINACを通るその加速位相における電子バンチの第1のパスのための、第1のLINACからの出口(F)から第2のLINACへの入口(G)までのその加速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離(FG)は、第2のLINACを通るその減速位相における電子バンチの第2のパスのための、第1のLINACからの出口(N)から第2のLINACへの入口(O)までのその減速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離(NO)にほぼ等しく、
[0019] 第2のLINACの出口(H)からアンジュレータ内のポイント(Z)までのその加速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離(HZ)は、第1のLINACを通るその減速位相における電子バンチの第2のパスのための、第2のLINACからの出口(P)から第1のLINACへの入口(Q)までのその減速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離(PQ)にほぼ等しい。
[0020] クリアリングギャップは、反復レートRで提供可能であり、R又はR*n(nは整数)はAZ/c当たり1にほぼ等しく、ここでAZは、その加速位相中の第1のLINACのその第1の通過のための、電子バンチの第1のLINACへの入口からポイント(Z)までの電子バンチ経路に沿った距離であり、cは、電子バンチ経路に沿った電子バンチの平均速度である。
[0021] ほぼ等しいものとして示された電子バンチ経路に沿った距離の各ペア(ZK=BC、DE=LM、FG=NO、HZ=PQ)について、それらのペアの距離のうちの一方(ZK、DE、FG、又はHZ)に沿った電子バンチの移動時間は、それらのペアの距離のうちの他方(BC、LM、NO、PQ)に沿った電子バンチの移動時間とほぼ同一であるか、又は任意選択で+/−ΔL/4未満だけ異なることが可能であり、ここでΔLはクリアリングギャップ持続時間である。
[0022] 放射源は、2つ又は3つのクリアリングギャップが電子バンチ経路上に同時に存在するように動作するように構成可能である。
[0023] 複数のLINACは、動作中、各電子バンチが第1及び第2のLINACの各々を、加速位相中に少なくとも2回及び減速位相中に少なくとも2回通過し、電子バンチの経路内にポイント(Z)が以下のように存在するように配置可能な、第1のLINAC及び第2のLINACを備えることが可能であり、
[0024] 距離AC、CE、EG、GZ、ZK、KM、MO、及びOQはほぼ等しく、
[0025] ACは、第1及び第2のLINACを通るその加速位相における電子バンチの第1のパスのための、第1のLINACへの入口(A)から第2のLINACへの入口(C)までのその加速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離であり、
[0026] CEは、第1のLINACを通るその加速位相における電子バンチの第2のパスのための、第2のLINACへの入口(C)から第1のLINACへの入口(E)までのその加速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離であり、
[0027] EGは、第1及び第2のLINACを通るその加速位相における電子バンチの第2のパスのための、第1のLINACへの入口(E)から第2のLINACへの入口(G)までのその加速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離であり、
[0028] GZは、第2のLINACを通るその加速位相における電子バンチの第2のパスのための、第2のLINACへの入口(G)からアンジュレータ内のポイント(Z)までのその加速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離であり、
[0029] KMは、第1及び第2のLINACを通るその減速位相における電子バンチの第1のパスのための、第2のLINACへの入口(K)から第1のLINACへの入口(M)までのその減速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離であり、
[0030] MOは、第1のLINACを通るその減速位相における電子バンチの第1のパスのための、第1のLINACへの入口(M)から第2のLINACへの入口(O)までのその減速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離であり、
[0031] OQは、第1及び第2のLINACを通るその減速位相における電子バンチの第2のパスのための、第2のLINACへの入口(O)から第1のLINACへの入口(Q)までのその減速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離である。
[0032] クリアリングギャップは反復レートRで提供可能であり、R又はRの整数倍(R*n、nは整数)はAC/c当たり1にほぼ等しいことが可能であり、ここでcは、電子バンチ経路に沿った電子バンチの平均速度である。
[0033] 源は、8つ又は9つのクリアリングギャップが電子バンチ経路上に同時に存在するように動作するように構成可能である。
[0034] 距離AC、CE、EG、GZ、ZK、KM、MO、及びOQの各々に沿った電子バンチの移動時間はほぼ同一であり、任意選択で+/−ΔL/4未満だけ異なることが可能であり、ここでΔLはクリアリングギャップ持続時間である。
[0035] 複数のLINACは、動作中、各電子バンチが第1及び第2のLINACの各々を、加速位相中に少なくとも2回及び減速位相中に少なくとも2回通過し、電子バンチの経路内にポイント(Z)が以下のように存在するように配置可能な、第1のLINAC及び第2のLINACを備えることが可能であり、
[0036] 距離AC、EG、ZK、及びMOはほぼ等しく、
[0037] 距離CE、GZ、KM、及びOQはほぼ等しく、
[0038] ACは、第1及び第2のLINACを通るその加速位相における電子バンチの第1のパスのための、第1のLINACへの入口(A)から第2のLINACへの入口(C)までのその加速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離であり、
[0039] CEは、第1のLINACを通るその加速位相における電子バンチの第2のパスのための、第2のLINACへの入口(C)から第1のLINACへの入口(E)までのその加速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離であり、
[0040] EGは、第1及び第2のLINACを通るその加速位相における電子バンチの第2のパスのための、第1のLINACへの入口(E)から第2のLINACへの入口(G)までのその加速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離であり、
[0041] GZは、第2のLINACを通るその加速位相における電子バンチの第2のパスのための、第2のLINACへの入口(G)からアンジュレータ内のポイント(Z)までのその加速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離であり、
[0042] KMは、第1及び第2のLINACを通るその減速位相における電子バンチの第1のパスのための、第2のLINACへの入口(K)から第1のLINACへの入口(M)までのその減速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離であり、
[0043] MOは、第1のLINACを通るその減速位相における電子バンチの第1のパスのための、第1のLINACへの入口(M)から第2のLINACへの入口(O)までのその減速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離であり、
[0044] OQは、第1及び第2のLINACを通るその減速位相における電子バンチの第2のパスのための、第2のLINACへの入口(O)から第1のLINACへの入口(Q)までのその減速位相における電子バンチの電子バンチ経路に沿った距離である。
[0045] クリアリングギャップは反復レートRで提供可能であり、R又はRの整数倍(R*n、nは整数)はc/AE当たり1にほぼ等しいことが可能であり、ここでcは、電子バンチ経路に沿った電子バンチの平均速度である。
[0046] 距離AC、EG、ZK、及びMOの各々に沿った電子バンチの移動時間はほぼ同一であり、任意選択で+/−ΔL/4未満だけ異なることが可能であり、ここでΔLはクリアリングギャップ持続時間であり、距離CE、GZ、KM、及びOQの各々に沿った電子バンチの移動時間はほぼ同一であり、任意選択で+/−ΔL/4未満だけ異なることが可能であり、ここでΔLはクリアリングギャップ持続時間である。
[0047] 各クリアリングギャップは、バンチシーケンス内の次のクリアリングギャップからクリアリングギャップ反復期間だけ離すことが可能であり、各クリアリングギャップはクリアリングギャップ持続時間を有し、クリアリングギャップ持続時間のクリアリングギャップ反復期間に対する比率は5%から20%の間であり、任意選択でほぼ10%に等しいものとすることができる。
[0048] クリアリングギャップはクリアリングギャップ反復レートで提供され得、反復レートは0.5MHzから1.5MHzの範囲内であり、任意選択でほぼ1MHzに等しいものとすることができる。
[0049] クリアリングギャップの各々は、10nsより長く、任意選択で100nsより長い持続時間を有することができる。
[0050] 電子バンチは、10fsから10psの範囲内(電子源で測定した場合)の電子バンチ持続時間を有することができる。
[0051] 電子バンチは、100MHzから1GHzの範囲内のバンチ反復レートで提供することができる。
[0052] 電子バンチはバンチ経路をたどることが可能であり、電子源から最後にバンチが最終のLINACを出るまでの間の各バンチのバンチ経路の長さは500mから1500mの範囲内であり、任意選択でおよそ800mであり得る。
[0053] アンジュレータは、動作中、電子のバンチがアンジュレータを通過することによって、4nmから25nmの範囲内の波長で放射を発生させるように構成可能である。
[0054] 独立して提供可能な、本発明の更なる態様において、本明細書で請求又は説明される放射源と、放射源からの放射を受け取り、放射を使用してパターニングデバイスからのパターンを基板上に投影するように配置されたリソグラフィ装置とを備える、リソグラフィシステムが提供される。
[0055] 独立して提供可能な、本発明の更なる態様において、電子のバンチを発生させるための電子源と、電子のバンチを加速及び減速させるための複数の線形加速器(LINAC)と、動作中、電子のバンチがアンジュレータを通過することで放射を所望の波長で発生させるように構成されたアンジュレータと、電子源、複数のLINAC、及びアンジュレータの間の所望の電子バンチ経路に沿って電子のバンチを誘導するための複数のステアリングユニットとを備える、自由電子レーザ(FEL)放射源を動作させる方法が提供される。方法は、動作中、各電子バンチが、電子源から電子バンチ経路に沿って複数のLINACの各々を加速位相中に少なくとも1回通過し、その後、アンジュレータを通過し、その後複数のLINACを減速位相中に少なくとも1回通過するように、FEL放射源を動作させることを含む。LINACのエネルギー回収動作を提供するために、加速位相における電子バンチのLINACの通過が、その減速位相における電子バンチのLINACの通過と整合される。電子バンチの連続ペアが、反復電子バンチシーケンスに従って、それぞれのバンチ間隔ずつ時間的に間隔が空けられる。アンジュレータでイオンをクリアできるようにするために電子バンチシーケンス内にクリアリングギャップが提供される。方法は、複数のエネルギー回収LINACの各々について、及びほぼすべてのクリアリングギャップについて、加速位相又は減速位相においてクリアリングギャップがLINACを通過するごとに、クリアリングギャップが、減速位相又は加速位相においてLINACを通過するクリアリングギャップのうちの更なる1つと整合され、それによってLINACのエネルギー回収動作を維持するように、クリアリングギャップシーケンスに従ってクリアリングギャップを提供することを含む。
[0056] 本発明の更なる態様において、自由電子レーザ(FEL)を使用して極端紫外(EUV)放射を生成する方法が提供され、方法は、電子バンチを発生させるためにドライブレーザビームをカソード上に向けて送ること、電子バンチを加速させるために電子バンチを線形加速器(LINAC)に渡すこと、EUV放射を発生させるように構成されたアンジュレータを通る電子バンチ経路に沿って電子バンチを渡すことを含み、方法は更に、所定の範囲内での電荷の変動及び電子バンチのエミッタンスを適用することによって、正電荷を持つイオンを電子バンチ経路から除去することを含み、所定の範囲の電荷又はエミッタンスの変動は、LINACにおける加速勾配の変動を制限するように選択される。
[0057] 方法は、例えば抽出電極を使用する必要なしにFELからイオンを除去するという理由で、有利である。
[0058] 所定の範囲の電子バンチの電荷又はエミッタンスの変動は、電子バンチの電荷又はエミッタンスの10%以下とすることができる。
[0059] 変動は、電子バンチの電荷及びエミッタンスの両方に適用可能である。
[0060] 適用される変動は、カソードに入射するドライブレーザビームのレーザパルスのエネルギーを変更することによって実装可能である。
[0061] ドライブレーザビームのレーザパルスのエネルギーを変更することは、ドライブレーザに関連付けられた雑音の増幅を含むことができる。
[0062] ドライブレーザのパルスのエネルギーを変更するために、ポッケルセルを使用することができる。
[0063] ドライブレーザによって生成されるパルスの波面は変動可能である。
[0064] ドライブレーザによって生成されるパルスの波面を変動させるために、ポッケルセルを使用することができる。
[0065] 電子バンチのエミッタンスの変動を適用するために、カソードの温度を変動させることができる。
[0066] カソードの温度を変動させるために、カソードに入射するレーザを使用することができる。
[0067] 本発明の更なる態様において、レーザパルスを放出するように構成されたドライブレーザと、レーザパルスを受け取り、電子バンチを発生させるように構成されたカソードと、電子バンチを加速させるように構成された線形加速器(LINAC)と、電子バンチを受け取り、EUV放射ビームを出力するように構成されたアンジュレータとを備える、自由電子レーザ(FEL)極端紫外(EUV)放射源が提供され、FELは、所定の範囲内で電子バンチの電荷又はエミッタンスを変動させるために制御ユニットによって制御される電子バンチ電荷又はエミッタンス変動装置を備える、イオン除去装置を更に備え、所定の範囲は、FELからイオンを除去するが、LINAC内での加速勾配の変動を制限するように選択される。
[0068] これは、例えば抽出電極を使用する必要なしにFELからイオンを除去するという理由で、有利である。
[0069] 電子バンチの電荷又はエミッタンスの変動の所定の範囲は、電子バンチの電荷又はエミッタンスの10%以下とすることができる。
[0070] 変動は、電子バンチの電荷及びエミッタンスの両方に適用可能である。
[0071] 適用される変動は、電極に入射するドライブレーザビームのレーザパルスのエネルギーを変更することによって実装可能である。
[0072] ドライブレーザビームのレーザパルスのエネルギーを変更することは、ドライブレーザに関連付けられた雑音の増幅を含むことができる。
[0073] ドライブレーザのパルスのエネルギーを変更するために、ポッケルセルを使用することができる。
[0074] ドライブレーザによって生成されるパルスの波面は変動可能である。
[0075] ドライブレーザによって生成されるパルスの波面を変動させるために、ポッケルセルを使用することができる。
[0076] 電子バンチのエミッタンスの変動を適用するために、カソードの温度を変動させることができる。
[0077] カソードの温度を変動させるために、カソードに入射するレーザを使用することができる。
[0078] 本発明の更なる態様において、電子バンチを加速させるように構成された線形加速器(LINAC)と、電子バンチを受け取り、EUV放射ビームを出力するように構成されたアンジュレータとを備える、自由電子レーザ(FEL)極端紫外(EUV)放射源が提供され、FELは、FELのビームパイプ内へと延在するRFエバネセント電磁波又はビーティングRF電磁波を提供するように構成された、RF電磁波エミッタを更に備える。
[0079] これは、イオンを引き出すことが可能なポイントまでビームパイプに沿ってイオンをプッシュすることが可能であり、結果としてイオンがビームパイプ内で費やす時間が少なくなるという理由で、有利である。
[0080] RF電磁波エミッタは、アンジュレータのアンジュレータモジュールの一方の側でビームパイプに接続することができる。
[0081] 抽出電極は、アンジュレータモジュールの反対側に提供することができる。
[0082] 本発明の更なる態様において、自由電子レーザ(FEL)を使用して極端紫外(EUV)放射を生成する方法が提供され、方法は、電子バンチを加速させるために電子バンチを線形加速器(LINAC)に渡した後、EUV放射を発生させるように構成されたアンジュレータを通る電子バンチ経路に沿って電子バンチを渡すことを含み、方法は更に、FELのビームパイプ内へと延在し、ビームパイプに沿ってイオンをプッシュする、RFエバネセント電磁波又はビーティングRF電磁波を発生させることを含む。
[0083] これは、イオンを引き出すことが可能なポイントまでビームパイプに沿ってイオンをプッシュすることが可能であり、結果としてイオンがビームパイプ内で費やす時間が少なくなるという理由で、有利である。
[0084] RFエバネセント電磁波又はビーティングRF電磁波が延在するビームパイプは、アンジュレータモジュール内に配置することができる。
[0085] RFエバネセント電磁波又はビーティングRF電磁波は、イオンをアンジュレータモジュールの反対側に向かってプッシュする電位を提供することができる。
[0086] 抽出電極は、アンジュレータモジュールのその反対側に提供可能である。
[0087] 電位は、およそ1ms以内に自由電子レーザからイオンを除去するのに十分な高い勾配を有することができる。
[0088] 当業者には容易に明らかであるように、上記又は下記に示される本発明の態様及び/又は特徴は、本発明の他の態様及び/又は特徴と組み合わせることができる。
[0089] 次に、本発明の実施形態を、添付の概略図を参照しながら単なる例として説明する。
[0090] 図1は、放射源SO、ビーム分割装置20、及び複数のリソグラフィ装置LA1〜LA20を備える、リソグラフィシステムLSを示す。放射源SOは少なくとも1つの自由電子レーザを備え、極端紫外(EUV)放射ビームB(主ビームとも呼ばれ得る)を発生させるように構成される。主放射ビームBは複数の放射ビームB1〜B20(分岐ビームとも呼ばれ得る)に分割され、その各々がビーム分割装置20によってリソグラフィ装置LA1〜LA20のうちの異なる1つに向けて送られる。分岐放射ビームB1〜B20は、主放射ビームBから順番に分割され得、各分岐放射ビームは先行する分岐放射ビームから下流で主放射ビームBから分割される。ビーム分割装置は、例えば各々が主放射ビームBの一部を分岐放射ビームB1〜B20に分割するように構成される、一連のミラー(図示せず)を備えることができる。
[0091] 分岐放射ビームB1〜B20は、図1では、分岐放射ビームB1〜B20が主放射ビームBの伝播方向にほぼ直角な方向に伝播するように、主放射ビームBから分岐しているものと示されている。しかしながら、いくつかの実施形態ではその代わりに、分岐放射ビームB1〜B20は、各分岐放射ビームB1〜B20の伝播方向と主放射ビームの伝播方向との間の角度がほぼ90度未満であるように、主放射ビームBから分割することができる。これによって、主放射ビームBが垂直より小さい入射角でミラーに入射するように、ビーム分割装置のミラーを配置することが可能になる。これによって、ミラーによって吸収される放射の量を有利に減少させ、更にそれによって、ミラーから反射され、分岐放射ビームB1〜B20を介してリソグラフィ装置LA1〜LA20に提供される、放射の量を増加させることができる。
[0092] リソグラフィ装置LA1〜LA20は、すべて同じ垂直レベル上に位置決めすることができる。リソグラフィ装置LA1〜LA20がその上に位置決めされる垂直レベルは、ビーム分割装置20がその上に位置決めされ、主ビームBがその上で放射源SOから受け取られる垂直レベルと、ほぼ同じ垂直レベルとすることができる。代替としてビーム分割装置20は、分岐放射ビームB1〜B20のうちの少なくともいくつかを、リソグラフィ装置LA1〜LA20のうちの少なくともいくつかがその上に位置決めされる1つ以上の異なる垂直レベルに向けて送ることができる。例えば主放射ビームBは、地階又は1階垂直レベル上でビーム分割装置によって受け取ることができる。ビーム分割装置20は、少なくともいくつかの分岐放射ビームB1〜B20を、ビーム分割装置の上方に位置決めされ、リソグラフィ装置LA1〜LA20のうちの少なくともいくつかがその上に位置決めされる、垂直レベルに向けて送ることができる。リソグラフィ装置LA1〜LA20は、複数の垂直レベル上に、また、リソグラフィ装置LA1〜LA20によって受信されるためにビーム分割装置20が分岐放射ビームB1〜B20を異なる垂直レベルに向けて送ることができるように、位置決めすることができる。
[0093] 放射源SO、ビーム分割装置20、及びリソグラフィ装置LA1〜LA20はすべて、外部環境から隔離できるように構築及び配置することができる。EUV放射の吸収を最小限にするように、放射源SO、ビーム分割装置20、及びリソグラフィ装置LA1〜LA20の少なくとも一部に真空を提供することができる。リソグラフィシステムLSの異なる部分に異なる圧力の真空を提供する(すなわち、大気圧よりも低い異なる圧力で保持する)ことができる。
[0094] 図2は、図1に示されたリソグラフィシステムLSのリソグラフィ装置LA1の概略図である。リソグラフィ装置LA1は、照明システムIL、パターニングデバイスMA(例えば、マスク)を支持するように構成された支持構造MT、投影システムPS、及び基板Wを支持するように構成された基板テーブルWTを備える。照明システムILは、パターニングデバイスMA上に入射する前にリソグラフィ装置LA1によって受け取られる分岐放射ビームB1を、調節するように構成される。投影システムPSは、分岐放射ビームB1(ここでマスクMAによってパターンが付与される)を基板W上に投影するように構成される。基板Wは予め形成されたパターンを含むことができる。その場合、リソグラフィ装置は、パターン付与された放射ビームB1を、基板W上に予め形成されたパターンと位置合わせする。
[0095] リソグラフィ装置LA1によって受け取られた分岐放射ビームB1は、ビーム分割装置20から、照明システムILの閉鎖構造内の開口8を通ってビーム分割装置20から照明システムIL内に渡される。任意選択で、分岐放射ビームB1は、開口8又はその近くに中間焦点を形成するために集束させることができる。
[0096] 照明システムILは、切子面のある磁界ミラーデバイス10及び切子面のある瞳ミラーデバイス11を含むことができる。切子面のある磁界ミラーデバイス10及び切子面のある瞳ミラーデバイス11は共に、放射ビームB1に所望の断面形状及び所望の角度分布を提供する。放射ビームB1は照明システムILから渡され、支持構造MTによって保持されるパターニングデバイスMA上に入射する。パターニングデバイスMAは反射し、パターン付与されたビームB11を形成するために放射ビームにパターンを付与する。照明システムILは、切子面のある磁界ミラーデバイス10及び切子面のある瞳ミラーデバイス11に加えて、又はそれらの代わりに、他のミラー又はデバイスを含むことができる。照明システムILは、例えば独立して移動可能なミラーのアレイを含むことができる。独立して移動可能なミラーは、例えば直径1mm未満とすることができる。独立して移動可能なミラーは、例えばMEMSデバイスとすることができる。
[0097] パターニングデバイスMAから反射した後、パターン付与された放射ビームB11は投影システムPSに入る。投影システムは、基板テーブルWTによって保持される基板W上に放射ビームB11を投影するように構成された複数のミラー13、14を備える。投影システムPSは放射ビームに減少係数を適用し、パターニングデバイスMA上の対応するフィーチャよりも小さいフィーチャを備える像を形成することができる。例えば減少係数4を適用することができる。投影システムPSは図2では2つのミラー13、14を有するが、投影システムは任意数のミラー(例えば、6つのミラー)を含むことができる。
[0098] いくつかの実施形態において、リソグラフィシステムLSは1つ以上のマスク検査装置(図示せず)を含むことができる。マスク検査装置は、ビーム分割装置20から分岐放射ビームB1〜B20を受け取り、分岐放射ビームをマスクMAに向けて送るように構成された、光学素子(例えば、ミラー)を含むことができる。マスク検査装置は、マスクから反射された放射を集め、結像センサでマスクの像を形成するように構成された、光学素子(例えば、ミラー)を更に含むことができる。結像センサで受け取られた像は、マスクMAの1つ以上の特性を決定するために使用可能である。マスク検査装置は、例えば、基板テーブルWTが結像センサに置き換えられた、図2に示されたリソグラフィ装置LA1と同様とすることができる。
[0099] いくつかの実施形態において、リソグラフィシステムLSは、マスクMAの1つ以上の特性を測定するために使用可能な1つ以上の空中像測定システム(AIMS)を含むことができる。AIMSは、例えばビーム分割装置20から分岐放射ビームB1〜B20を受け取り、マスクMAの1つ以上の特性を決定するために分岐放射ビームB1〜B20を使用するように構成可能である。
[00100] 放射源SOは、EUV放射のビームを生成するように動作可能な自由電子レーザFELを備える。任意選択で、放射源SOは2つ以上の自由電子レーザFELを備えることができる。
[00101] 自由電子レーザは、まとまった相対論的電子ビームを生成するように動作可能な電子源、及び相対論的電子論のバンチが向けられる際に介する周期的磁界を備える。周期的磁界はアンジュレータによって生成され、電子に中心軸の周囲の発振経路をたどらせる。磁界によって生じた加速の結果として、電子は自発的に電磁放射を、通常は中心軸の方向に放射する。相対論的電子は、アンジュレータ内の放射と相互作用する。ある条件下では、この相互作用によって電子はマイクロバンチにまとまり、アンジュレータ内の放射の波長で変調され、中心軸に沿った放射のコヒーレントエミッタンスが誘発される。
[00102] 図3は、電子源21、線形加速器22、ステアリングユニット23、及びアンジュレータ24を備える、自由電子レーザFELの概略図である。電子源21は代替としてインジェクタと呼ばれることもある。
[00103] 電子源21は、電子のビームEを生成するように動作可能である。電子源21は、例えばフォトカソード又は熱電子カソード及び加速電界を備えることができる。電子ビームEは、一連の電子のバンチを含むまとまった電子ビームEである。電子ビームEは、線形加速器22によって相対論的エネルギーまで加速される。例において線形加速器22は、共通軸に沿って軸方向に間隔が空けられた複数の無線周波キャビティと、電子の各バンチを加速させるように電子のバンチがそれらの間を通過する際に共通軸に沿って電磁界を制御するように動作可能な、1つ以上の無線周波電源と、を備えることができる。キャビティは、超電導無線周波キャビティとすることができる。有利なことに、これによって、比較的大きな電磁界を高デューティサイクルで適用すること、ビームアパーチャを大きくし、結果として生じる航跡場による損失を少なくすること、及び、ビームに送られる少量の無線周波エネルギーを(キャビティ壁を介して消散されるのとは反対に)増加させることが可能になる。代替として、キャビティは通常通り電導性(すなわち、超電導性ではない)であり得、例えば銅から形成することができる。他のタイプの線形加速器も使用可能である。例えば線形加速器22はレーザ加速器を備えることができ、ここで電子ビームEは集束されたレーザビームを通過し、レーザビームの電界が電子を加速させる。
[00104] 線形加速器22を出た相対論的電子ビームEは、ステアリングユニット23に入る。ステアリングユニット23は、電子ビームEを線形加速器22からアンジュレータ24に向けて送るように、相対論的電子ビームEの軌道を変更するように動作可能である。ステアリングユニット23は、例えば、ステアリングユニット23内に磁界を発生させるように構成された、1つ以上の電磁石及び/又は永久磁石を備えることができる。磁界は、電子ビームEの軌跡を変更させるように働く力を電子ビームEにかける。電子ビームEの軌跡は、線形加速器22を離れると同時に、ステアリングユニット23によって、電子をアンジュレータ24に向けて送るように変更される。
[00105] ステアリングユニット23が1つ以上の電磁石及び/又は永久磁石を備える実施形態において、磁石は、磁気双極子、磁気四極子、磁気六極子、及び/又は、電子ビームEに力を加えるように構成された任意の他の種類の多極磁界配列のうちの、1つ以上を形成するように配置可能である。ステアリングユニット23は、追加又は代替として、電子ビームEに力を加えるようにステアリングユニット23内に電界を作成するように構成された、1枚以上の電荷を帯びたプレートを備えることができる。一般に、ステアリングユニット23は、軌跡を変更するために電子ビームEに力を加えるように動作可能な、任意の装置を備えることができる。
[00106] ステアリングユニット23は、相対論的電子ビームEをアンジュレータ24に向けて送る。アンジュレータ24は、周期的経路に沿って相対論的電子を誘導するように動作可能であるため、電子ビームEは、コヒーレント放射のエミッタンスを誘発するようにアンジュレータ24内の放射と相互作用することになる。一般に、アンジュレータ24は、電子ビームEに周期的経路をたどらせる周期的磁界を生成するように動作可能な、複数の磁石を備える。結果として電子は、一般にアンジュレータ24の中心軸の方向に電磁放射を放出する。アンジュレータ24は、各セクションが周期的磁石構造を備える、複数のセクション(図示せず)を備えることが可能である。電磁放射は、各アンジュレータセクションの初めにバンチを形成することができる。アンジュレータ24は、例えば隣接するセクションの1つ以上のペア間の四極子磁石などの、電子ビームEを再集束させるためのメカニズムを、更に備えることができる。電子ビームEを再集束させるためのメカニズムは、電子バンチのサイズを減少させることが可能であり、これによってアンジュレータ24内の電子と放射との間の結合を向上させ、放射のエミッタンスの誘発を増加させる。
[00107] 電子はアンジュレータ24を通って移動する際、アンジュレータ24内の電磁放射の電界と相互作用し、放射とエネルギーを交換する。一般に、電子と放射との間で交換されるエネルギーの量は、条件が共振条件に近くない限りは高速で振動し、以下の式によって与えられ、
上式で、λemは放射の波長であり、λuはアンジュレータ周期であり、γは電子のローレンツ因子であり、Kはアンジュレータパラメータである。Aはアンジュレータ24のジオメトリに依存し、らせんアンジュレータの場合はA=1であるが、平面アンジュレータの場合はA=2である。実際には、電子の各バンチはエネルギーの拡散を有するが、この広がりは(低エミッタンスの電子ビームEを生成することによって)できる限り最小限にすることができる。アンジュレータパラメータKは、典型的にはほぼ1であり、以下の式によって与えられ、
上式で、q及びmはそれぞれ電荷及び電子の質量であり、Boは周期的磁界の振幅であり、cは光の速度である。
[00108] 共振波長λemは、アンジュレータ24を通って移動する電子によって自発的に放射される第1の調和波長に等しい。自由電子レーザFELは、自己増幅自然エミッタンス(SASE)モードで動作可能である。SASEモードでの動作は、電子ビームEがアンジュレータ24に入る前に、電子ビームE内での電子バンチのエネルギー拡散が少ないことが必要である。代替として、自由電子レーザFELは、アンジュレータ24内で誘発されるエミッタンスによって増幅可能な、シード放射源を備えることができる。
[00109] アンジュレータ24を通って移動する電子は、放射の振幅を増加させることが可能であり、すなわち自由電子レーザFELは非ゼロの利得を有することができる。最大利得は、共振条件に合致した時、又は条件が共振に近いがわずかに外れている時に、達成可能である。
[00110] アンジュレータ24に入る際に共振条件に合致する電子は、放射を放出(又は吸収)する際にエネルギーを失う(又は得る)ことになるため、共振条件はもはや満たされていない。したがって、いくつかの実施形態において、アンジュレータ24はテーパリングすることができる。すなわち、電子のバンチがアンジュレータ24を通って誘導される際に、電子のバンチを共振又は共振の近くで維持するために、周期的磁界及び/又はアンジュレータ周期λuの振幅は、アンジュレータ24の長さに沿って変動可能である。アンジュレータ24内の電子と放射との間の相互作用は、電子バンチ内にエネルギーの拡散を生成することに留意されたい。アンジュレータ24のテーパリングは、共振又は共振近くでの電子の数を最大にするように配置可能である。例えば電子バンチは、ピークエネルギーでピークになるエネルギー分布を有し得、テーパリングは、このピークエネルギーを伴う電子がアンジュレータ24を通って誘導される際に、この電子を共振又は共振近くで維持するように配置可能である。有利なことに、アンジュレータのテーパリングは、変換効率を大幅に向上させるためのキャパシティを有する。テーパリングされたアンジュレータを使用することで、変換効率(すなわち、放射ビームB内で放射に変換される電子ビームEのエネルギーの部分)を2倍以上向上させることができる。アンジュレータのテーパリングは、アンジュレータパラメータKをその長さに沿って減少させることによって達成可能である。これは、アンジュレータ周期λu、及び/又は、アンジュレータの軸に沿った磁界強度Bo、及び/又は、生成される放射の分極を定義するパラメータ(しばしばAと示される)を、一致させることによって達成され得、共振条件又はこれに近いことを保証するために、アンジュレータジオメトリによって電子バンチエネルギーに対して定義され得る。このように共振条件に合致することで、放出される放射の帯域幅が増加する。
[00111] アンジュレータ24を離れた後、電磁放射は放射ビームB’として放出される。放射ビームB’はEUV放射を備え、またビーム分割装置20(図1に示される)に提供され、リソグラフィ装置LA1〜20に提供される分岐放射ビームB1〜20を形成する、放射ビームBのすべて又は一部を形成することができる。
[00112] 図3に示された自由電子レーザの実施形態において、アンジュレータ24を離れた電子ビームE’は、第2のステアリングユニット25に入る。第2のステアリングユニット25は、線形加速器22を介して電子ビームE’を戻すように、アンジュレータ24を離れた電子ビームE’の軌跡を変更する。第2のステアリングユニット25はステアリングユニット23と同様であり得、例えば1つ以上の電磁石及び/又は永久磁石を備えることができる。第2のステアリングユニット25は、アンジュレータ24を離れる放射ビームB’の軌跡に影響を与えない。したがって、ステアリングユニット25は、放射ビームB’から電子ビームE’の軌跡を減結合する。いくつかの実施形態において、電子ビームE’の軌跡は、第2のステアリングユニット25に到達する前に(例えば、1つ以上の磁石を使用して)放射ビームB’の軌跡から減結合することができる。
[00113] 第2のステアリングユニット25は、アンジュレータ24を離れた後の電子ビームE’を線形加速器22に向けて送る。アンジュレータ24を通過した電子バンチは、線形加速器22内の加速場(例えば、無線周波磁界)に対しておよそ180度の位相差で、線形加速器22に入ることができる。線形加速器22内の電子バンチと加速場との間の位相差により、電子を磁界によって減速させることになる。減速電子E’は、そのエネルギーの一部を線形加速器22内の磁界に戻し、それによって、電子源21から到達する電子ビームEを加速させる磁界の強度を上昇させる。したがってこの配置は、電子源21から到達する後続の電子バンチを加速させるために、線形加速器22内の電子バンチに(それらが線形加速器によって加速された時に)与えられたエネルギーの一部を回収する。こうした配置は、エネルギー回収LINACと呼ぶことができる。
[00114] 線形加速器22によって減速された電子E’は、ビームダンプ26によって吸収される。ステアリングユニット23は、線形加速器22によって加速された電子ビームEの軌跡から、線形加速器22によって減速された電子ビームE’の軌跡を減結合するように動作可能である。これにより、減速された電子ビームE’をビームダンプ26によって吸収させることが可能である一方で、加速された電子ビームEはアンジュレータ24に向けて送られる。
[00115] 代替として、自由電子レーザFELは、ステアリングユニット23とは別の、ステアリングユニット23の上流で減速された電子ビームE’の軌跡から加速された電子ビームEの軌跡を減結合するように構成された、ビーム分割ユニット(図示せず)を備えることができる。
[00116] 代替として、加速された電子ビームEの軌跡は、ほぼ一定の磁界を発生させることにより、減速された電子ビームE’の軌跡から減結合することができる。加速された電子ビームEと減速された電子ビームE’との間のエネルギーの差異により、2つの電子ビームの軌跡が一定の磁界によって異なる量だけ変更される。したがって2つの電子ビームの軌跡は、互いに減結合されることになる。
[00117] ビームダンプ26は、例えば大量の水、又は、高エネルギー電子衝撃による放射性同位体発生に関して高いしきい値を備える材料を含むことができる。例えばビームダンプ26は、放射性同位体発生に関するしきい値がほぼ15MeVの、アルミニウムを含むことができる。線形加速器22内の電子ビームE’がビームダンプ26上に入射される前に、これを減速させることによって、電子がビームダンプ26によって吸収される時に有するエネルギーの量が削減される。これにより、誘起放射とビームダンプ26内で生成される2次粒子とのレベルを減少させる。これにより、ビームダンプ26からの放射性廃棄物の除去及び処分の必要性が取り除かれるか、又は少なくとも低減される。放射性廃棄物の除去には自由電子レーザFELを定期的に停止することが必要であり、放射性廃棄物の処分には費用が掛かり、環境に重大な影響を与える可能性があるため、これは有利である。
[00118] 減速器として動作する場合、線形加速器22は、電子E’のエネルギーをしきい値エネルギーより下まで減少させるように動作可能である。このエネルギーがしきい値より下の電子は、ビームダンプ26内にいかなる重大なレベルの放射能も誘起させ得ない。
[00119] いくつかの実施形態において、線形加速器22とは分離された減速器(図示せず)を使用して、アンジュレータ24を通過した電子ビームE’を減速させることができる。電子ビームE’は、線形加速器22によって減速されることに加え、又は線形加速器22によって減速される代わりに、減速器によって減速されることが可能である。例えば、第2のステアリングユニット25は、電子ビームE’が線形加速器22によって減速される前に、電子ビームE’に減速器を通過させることができる。追加又は代替として、電子ビームE’は、線形加速器22によって減速された後、及びビームダンプ26によって吸収される前に、減速器を通過することができる。代替として、電子ビームE’は、アンジュレータ24を離れた後に線形加速器22を通過しなくてもよく、ビームダンプ26によって吸収される前に1つ以上の減速器によって減速されてもよい。
[00120] 任意選択で、自由電子レーザFELは、1つ以上のバンチ圧縮器(図示せず)を備えることができる。バンチ圧縮器は、線形加速器22の下流又は上流に配設することができる。バンチ圧縮器は、電子を電子ビームE内にまとめ、電子ビームE内の既存の電子のバンチを空間的に圧縮するように構成される。1タイプのバンチ圧縮器は、電子ビームEに並行に向けられる加速場を備える。電子ビームE内の電子は、提供される場と相互作用し、付近の他の電子とまとまる。バンチ内の電子に与えられるエネルギー差は、非相対論的ケースに対して異なる伝播時間に変換される。したがって、こうしたバンチ圧縮器からある一定の距離にあるビームを、縦方向に圧縮することができる。別のタイプのバンチ圧縮器は磁気シケインを備え、ここで電子がシケインを通過する際にたどる経路の長さはそのエネルギーに依存する。このタイプのバンチ圧縮器は、その電位が例えば無線周波で振動する複数の導体によって線形加速器22内で加速された、電子のバンチを圧縮するために使用することができる。
[00121] アンジュレータの利得長さは、光増幅の特徴的スケールを定義する。利得長さは、アンジュレータを介して送られたバンチ内の高い電荷密度を用いて短くなる。したがって、バンチを半径方向及び縦方向に圧縮することが有益であり得る。同時に、圧縮されたバンチに関するバンチエミッタンス劣化率は上昇する。すなわち、正規化されたエミッタンスはビームライン内のメートル当たりの伝播を伸ばし、航跡場及びコヒーレントシンクロトロン放射によるより高い損失は、より短いバンチに関連付けられる。したがって、ステアリングユニット23とアンジュレータ24との間にバンチ圧縮器を置くことが最も有益であり得る。
[00122] 図3に示される自由電子レーザFELは建造物31内に収納されている。建造物31は、自由電子レーザFELが動作中に自由電子レーザFEL内で発生する放射をほとんど透過させない壁を備えることができる。例えば建造物31は、厚いコンクリート壁(例えば、およそ4メートル厚さの壁)を備えることができる。建造物31の壁には、例えば鉛などの放射線遮へい材料、並びに/あるいは、中性子及び/又は他の放射タイプを吸収するように構成された他の材料を、更に提供することができる。建造物31の壁に放射線吸収材料を提供することは、有利なことに、建造物31の壁の厚みを減少させることができる可能性がある。しかしながら、放射線吸収材料を壁に付加することは、建造物31の建設費用を増加させる可能性がある。放射線を吸収するために建造物31の壁に付加できる相対的に安価な材料は、例えば、地層とすることができる。
[00123] 放射線遮へい特性を有する建造物31の壁を提供することに加えて、建造物31は、自由電子レーザFELによって発生する放射線が建造物31の下の地面を汚染するのを防止するように構成することも可能である。例えば建造物31の基礎及び/又は土台に放射線遮へい材料を提供することが可能であるか、又は建造物31の下の地下水を放射線が汚染するのを防止するのに十分な厚みとすることができる。実施形態において、建造物31は少なくとも部分的に地下に位置決めすることができる。こうした実施形態において、地下水は、建造物31の外部の一部を取り囲むこと、並びに建造物31の下にあることが可能である。したがって、放射線が建造物31を取り囲む地下水を汚染するのを防止するために、建造物31の外部周辺に放射線遮へいを提供することができる。
[00124] 建造物31の外部で放射線を遮へいすることに加えて、又はその代替として、放射線遮へいを建造物31の内部に提供することもできる。例えば、大量の放射線を放出する自由電子レーザFELの部分に最も近い場所で、建造物31の内部に放射線遮へいを提供することができる。
[00125] 建造物31は、幅W及び長さLを有する。建造物31の幅W及び長さLは、電子ビームEが自由電子レーザFELをたどるループ32のサイズによって部分的に決定される。ループ32は長さ33及び幅35を有する。
[00126] ループ32の長さ33は、線形加速器22の長さ及びアンジュレータ24の長さによって決定される。線形加速器22の所与の長さは、例えば、電子がアンジュレータ24内でEUV放射を放出するのに十分な高いエネルギーまで電子ビームEを加速させるために必要な可能性がある。例えば線形加速器22は、約40メートルより大きい長さを有し得る。いくつかの実施形態において、線形加速器22は約80メートルまでの長さを有し得る。追加として、アンジュレータ24の所与の長さは、アンジュレータ24内のコヒーレント放射のエミッタンスを誘発させるために必要な可能性がある。例えばアンジュレータ24は、約40mより大きい長さを有し得る。いくつかの実施形態において、アンジュレータ24は約60メートルまでの長さを有し得る。
[00127] ループの幅は、ステアリングユニット23が電子ビームEの軌跡を調節する際に用いる湾曲の半径によって決定される。ステアリングユニット23内の電子ビームEの湾曲の半径は、例えば電子ビームE内の電子の速度、及びステアリングユニット23内で発生する磁界の強度に依存し得る。ステアリングユニット23内で発生する磁界の強度の増加は、電子ビームEの湾曲の半径を減少させる一方で、電子の速度の増加は電子ビームEの湾曲の半径を増加させる。ステアリングユニット23を通る電子ビームEの湾曲の半径は、例えばおよそ12mとすることができる。いくつかの実施形態において、ステアリングユニット23を通る電子ビームEの湾曲の半径は12m未満とすることができる。例えば、ステアリングユニット23を通る電子ビームEの湾曲の半径はおよそ7mとすることができる。
[00128] 電子ビームEが自由電子レーザFELをたどるループ32は、約60メートルよりも大きい長さ33を有し得る。いくつかの実施形態において、ループ32は約120メートルまでの長さ33を有し得る。ループ32は、約12メートルよりも大きい幅35を有し得る。いくつかの実施形態において、ループ32は約25メートルまでの幅35を有し得る。
[00129] 建造物31は他の構成要素を収納することもできる。例えば、電力を例えばアンジュレータ24、ステアリングユニット23、25、及び/又は自由電子レーザFELの他の構成要素に供給する電気構成要素を包含する電気キャビネット37を、建造物31内に収納することができる。図3に示されるように、アンジュレータ24に極めて接近して電気キャビネット37を提供することが有利であり得る。しかしながら、電気キャビネット37は、自由電子レーザFELの構成要素に対して他の位置に位置決めすることができる。
[00130] 追加として、自由電子レーザFELの構成要素に極低温冷却を提供するように構成された装置を包含する極低温冷却キャビネット39を、建造物31内に収納することができる。極低温冷却は、例えば線形加速器22に提供可能であり、線形加速器22の超電導キャビティを冷却することができる。極低温冷却キャビネット39を線形加速器22に極めて接近して提供することが有利であり得る。これにより、極低温冷却キャビネット39と線形加速器22との間のいかなるエネルギー損失をも減少させることができる。
[00131] 電気キャビネット37及び極低温冷却キャビネット39を、(図3に示されるように)電子ビームEが自由電子レーザFELをたどるループ32の外側に提供することが望ましい場合がある。キャビネット37、39をループ32の外側に提供することで、例えばキャビネット37、39の内部に収納されている構成要素を監視、制御、保守、及び/又は修理するために、キャビネットに容易にアクセスできる可能性がある。図3から理解されるように、キャビネット37、39をループ32の外側に位置決めすることで、建造物31内に自由電子レーザFELの構成要素を収納するために必要な、建造物31の最小幅Wを増加させる可能性がある。建造物31は、建造物31の寸法も決定する可能性がある、図3に示されていない他の構成要素も収納可能である。
[00132] 図3に示されるように、電子ビームが自由電子レーザFELをたどるループ32と、電気キャビネット37との間に、壁47が位置決めされる。壁47は、ループ32と極低温冷却キャビネット39との間にも位置決めされる。壁47は、自由電子レーザFEL内の電子ビームEによって発生する放射線から、電気キャビネット37及び極低温冷却キャビネット39を遮へいすることができる。これにより、キャビネット37、39内の構成要素が放射線によって損傷されるのを保護し、自由電子レーザFELが動作中である間に、保守作業員が危険レベルの放射線にさらされることなくキャビネット37、39にアクセスすることができる。
[00133] 図3に示される実施形態において、キャビネット37、39は、壁47によってループ32から遮へいされている間に、電子ビームが自由電子レーザFELをたどるループ32と同じ建造物31内に収納されているものとして示される。キャビネット39内に収納された極低温冷却構成要素は、自由電子レーザFELの構成要素に伝達される可能性のある振動を発生させる可能性があり、振動に敏感な自由電子レーザFELの構成要素に悪影響を与える可能性がある。極低温冷却構成要素によって発生する振動が自由電子レーザの敏感な部分に伝達されるのを防止するために、極低温冷却キャビネット39が収納される建造物31の部分を、敏感な構成要素が収納される建造物の部分から機械的に隔離することができる。例えば、極低温冷却キャビネット39は、線形加速器22、ステアリングユニット23、及びアンジュレータ24から機械的に隔離することができる。機械的隔離を提供するために、極低温冷却キャビネット39が収納される建造物31の部分は、例えば、線形加速器22、ステアリングユニット23、及びアンジュレータ24が収納される建造物の部分に対して、別の土台を有することができる。
[00134] 代替として、極低温冷却キャビネット39及び/又は電気キャビネット37は、建造物31とは別の1つ以上の建造物内に収納することができる。これによって、電子ビームEによって発生する放射線からキャビネット37、39が遮へいされること、及び、自由電子レーザFELの敏感な構成要素が極低温冷却キャビネット39から機械的に隔離されることを、保証することができる。
[00135] リソグラフィシステムLSは、単一の自由電子レーザFELを備えることができる。自由電子レーザFELは、複数のリソグラフィ装置に分岐放射ビームを提供するビーム分割装置20に、EUV放射ビームを供給することができる。放射源SOは、自由電子レーザFELから出力された放射ビームB’をリソグラフィシステムLSのビーム分割装置20に向けて送るように構成された専用光学構成要素を含む、光学システムを備えることができる。EUV放射は、一般にすべての物質によって十分に吸収されるため、損失を最小限にするために(透過性構成要素ではなく)反射性光学構成要素が一般に使用される。光学システムの専用光学構成要素は、リソグラフィ装置LA1〜LA20の照明システムIL及び/又はマスク検査装置による受け入れに好適なように、自由電子レーザFELによって生成される放射ビームの特性に適合可能である。
[00136] 代替として、放射源SOは、同じく放射源SOの一部を形成する光学システムに、各々がEUV放射ビームを提供可能な、複数の自由電子レーザ(例えば2つの自由電子レーザ)を備えることができる。光学システムは、複数の自由電子レーザの各々から放射ビームを受信することが可能であり、分岐放射ビームB1〜B20をリソグラフィ装置LA1〜LA20に提供するために、放射ビームをビーム分割装置20に提供される複合放射ビームに組み合わせることができる。
[00137] 図4は、第1の自由電子レーザFEL’及び第2の自由電子レーザFEL”を備える放射源SOを含む、リソグラフィシステムLSの概略図である。第1の自由電子レーザFEL’は第1のEUV放射ビームB’を出力し、第2の自由電子レーザFEL”は第2のEUV放射ビームB”を出力する。第1の自由電子レーザFEL’は第1の建造物31’内に収納される。第2の自由電子レーザFEL”は、第2の建造物31”内に収納される。
[00138] 第1及び第2の放射ビームB’、B”は、光学システム40によって受け取られる。光学システム40は、第1の放射ビームB’及び第2の放射ビームB”を受け取り、主放射ビームBを出力するように配置された、複数の光学素子(例えば、ミラー)を備える。第1及び第2の両方の自由電子レーザが動作している時点で、主放射ビームBは、第1及び第2の両方の放射ビームB’、B”からの放射を備える複合放射ビームである。複合放射ビームBは、分岐放射ビームB1〜B20をリソグラフィ装置LA1〜LA20に提供する、ビーム分割装置20に提供される。
[00139] 2つの自由電子レーザが主放射ビームBを形成するために放射ビームB’、B”を提供するように配置された、図4に示される配置構成によって、放射がリソグラフィ装置LA1〜LA20に連続的に提供されている間に、自由電子レーザのうちの1つをオフにすることができる。例えば自由電子レーザが修理又は保守を受けることができるようにするために、例えば自由電子レーザのうちの1つの動作を中止することができる。このイベントで、他の自由電子レーザは、光学システム40によって受け取られる放射ビームの提供を続行することができる。自由電子レーザのうちの1つのみが光学システム40に放射を提供しているイベントでは、光学システム40は、光学システム40に放射を提供している自由電子レーザからの放射を含む主放射ビームBを形成するように動作可能である。これにより、自由電子レーザのうちの1つが動作を中止している場合であっても、リソグラフィ装置LA1〜LA20の動作を続行することができる。
[00140] 図5は、自由電子レーザFEL’、FEL”の各々から放射のビームB’、B”を受け取り、出力放射ビームBを出力するように配置された、本発明の実施形態に従った光学システム40の実施形態の概略図である。光学システム40によって出力される放射ビームBは、ビーム分割装置20(図1を参照)によって受け取られる。
[00141] 光学システム40は、第1の1つの自由電子レーザFEL’に関連付けられた第1及び第2の光学素子132、134と、第2の1つの自由電子レーザFEL”に関連付けられた第1及び第2の光学素子136、138との、4つの光学素子を備える。光学素子132、134、136、138は、自由電子レーザFEL’、FEL”からの放射ビームB’、B”の断面のサイズ及び形状を変更するように配置される。
[00142] 特に、第1の光学素子132、136は凸面ミラーであり、自由電子レーザFEL’、FEL”からの放射ビームB’、B”の断面積を増加させるように働く。図5では、第1の光学素子132、136はx−y面でほぼ平坦に見えるが、この面及びz方向の両方で凸状であり得る。第1の光学素子132、136は凸状であるため、EUV放射ビームB’、B”の発散を増加させ、それによって、それらの下流のミラーにかかる熱負荷を減少させる。したがって第1の光学素子132は、第1の自由電子レーザFEL’から受け取る放射ビームB’の断面積を増加させるように配置される発散光学素子である。第1の光学素子136は、第2の自由電子レーザFELから受け取る放射ビームB”の断面積を増加させるように配置される発散光学素子である。これにより、下流のミラーを冷却の少ない低仕様のミラーにすることが可能であり、したがって安価である。追加又は代替として、下流のミラーを垂直入射により近くすることができる。実際に、放射源SOによって出力される放射ビームBは、ビームBの経路内に連続して配置された複数の連続する静止ナイフエッジミラーによって分割することができる。ビームBのサイズを増加させる(例えば、第1の光学素子132、136として凸面ミラーを用いることによって)ことで、ビームB経路内にミラーをロケートする際に必要な精度を減少させる。したがって、分割装置20による出力ビームBの分割をより正確にすることができる。
[00143] 第2の光学素子134、138は凹状であり、第2の光学素子134、138を離れるビームがほぼゼロ発散を有するように、第1の光学素子を形状的に補完するものである。したがって、第2の光学素子134、138の下流では、ビームはほぼ平行になる。ここでも、図5では第2の光学素子134、138はx−y面でほぼ平坦であるように見えるが、実際にはこの面及びz方向の両方で凹状である。
[00144] ビーム分割装置20によって受け取られる出力ビームBについて、自由電子レーザFEL’、FEL”によって出力されるものとは異なる形状及び/又は強度分布を有することが好ましい場合がある。例えば、ビーム分割装置20内の連続するナイフエッジ抽出ミラーのための円形ビームにとって、矩形型が好ましい場合がある。したがって、放射ビームB’、B”の断面積を増加させることに加えて、光学素子132、134、136、138は、放射ビームB’、B”の断面形状を変更するように働くことができる。特に、光学素子132、134、136、138は非点収差又は非球面であってよく、第2の光学素子134、138を離れる放射ビームB’、B”が、自由電子レーザFEL’、FEL”によって生成される放射ビームB’、B”よりもより矩形形状であることを保証するような形状とすることができる。例えば光学素子は、第2の光学素子134、138を離れるビームB’、B”が一般に矩形であるが角が丸いような形状とすることができるが、他の形状も可能である。こうした矩形形状の2次元は、例えばx−y面及びz方向などの2つの垂直方向で光学素子の湾曲の半径に関係し得る。有利なことに、これによって、出力放射ビームBを、リソグラフィ装置LA1〜LA20に入る前に分岐放射ビームB1〜B20(図1を参照)に分割するために使用されるミラーを、同一又は少なくとも極めて同様にすることができる。これは、製造の観点から特に有益である。
[00145] 自由電子レーザFEL’、FEL”の両方がオンの場合、光学システム40はそれらの放射ビームB’、B”を組み合わせて複合放射ビームBを形成するように動作可能である。この実施形態において、これは、第2の光学素子134、138を離れるビームB’、B”がどちらも互いに隣接し、相互に並行であるように、第1の自由電子レーザFEL’の第1及び第2の光学素子132、134を、第2の自由電子レーザFEL”のそれら136、138からx方向にオフセットすることによって達成される。特に、第1の自由電子レーザFEL’の第1及び第2の光学素子132、134は、第2の自由電子レーザFEL”のそれら136、138の「下流」(レーザビームB’、B”の伝播方向に関して)に配設される。
[00146] こうした配置において、光学システム40は、2つの放射ビームB’、B”を組み合わせて複合放射ビームを形成するように動作可能である。複合ビームは、光学システム40によって出力される出力放射ビームBである。図5は単なる例であり、光学システム40は図5に示された以外で実装可能であることを理解されよう。
[00147] 図4を再度参照すると、建造物31’、31”は、動作する自由電子レーザによって発生する放射(放射ビームB’、B”以外)が、建造物31’、31”の外に伝播されるのをほぼ防止するように構成される。したがって第1及び第2の自由電子レーザを別々の建造物に収納することで、一方の自由電子レーザが動作を続行している間に、他方の自由電子レーザで保守及び/又は修理を安全に実施することができる。例えば、第1の自由電子レーザFEL’が修理されるか又は保守を受けることができるようにするために、第1の電子レーザFEL’の動作を停止することができる。この間、第2の自由電子レーザFEL”は、光学システム40及びリソグラフィ装置LA1〜LA20に放射を提供するために、動作を続行することができる。したがって、第2の自由電子レーザFEL”の動作のために、第2の建造物31”内で放射が発生することになる。しかしながら、第2の建造物31”の壁によって提供される放射線遮へいにより、危険レベルの放射線が第2の建造物31”を出ることはなく、第1の建造物31’に入ることもない。したがって、保守作業員は、第1の自由電子レーザFEL’を修理するか又は保守を実施するために、第1の建造物に安全に入ることができる。
[00148] 電子ビームからのイオンの雲による集束がバンチ特性を劣化させ、アンジュレータ内の変換効率を低下させるため、電子ビームからのイオンをクリアリングできるように、一連の電子バンチ内にクリアリングギャップが提供される、マルチLINAC、マルチパスFELの放射源が提供されることが、実施形態の特徴である。整合されたクリアリングギャップが提供される、実施形態に従った2パスFELレーザについて説明する前に、単一パスFEL放射源の更なる例を、図6を参照しながら簡単に説明する。
[00149] 図6の単一パスFEL放射源は図3のそれと同様であり、インジェクタ221の形の電子源、インジェクタ221からの電子バンチを電子バンチストリームにマージするためのマージャ構成要素219、一連のLINACモジュールを含むLINAC222、アンジュレータ224、並びに、減速された電子バンチを抽出するため及びそれらをビームダンプ226に向けて送るためのデマージャ構成要素225を含む。放射源は、インジェクタ221から、LINAC222を通ってここで加速され、アンジュレータ224を通り、LINAC222に戻ってここで減速された後、ダンプ226に達する、電子バンチ経路227に沿って電子バンチを送るように動作可能な、図6に示されていないステアリングユニットも含む。
[00150] 図6の単一パスFEL放射源220の構成要素の各々は、図3の放射源の対応する構成要素と同様又は同一であり、どちらの放射源も同様に動作する。
[00151] FEL放射源220の動作中、各電子バンチは加速位相中に1回、減速位相中に1回、LINAC222を通過するため、FEL放射源は単一パスFEL放射源と呼ばれることがある。
[00152] たとえ加速位相中の電子バンチのエネルギーの増加が、主として電子バンチがLINACを通過する間に発生することが理解されるとしても、このケースでの電子バンチの加速位相は、電子バンチが最初にLINAC222に入った時からアンジュレータ224に入るまでの電子バンチの通行を含むものと見なすことができる。たとえ減速位相中の電子バンチのエネルギーの減少が、主として電子バンチがLINAC222を通過する間に発生することが理解されるとしても、このケースでの電子バンチの減速位相は、電子バンチがアンジュレータ224を出てから最後にLINAC222から出るまでの電子バンチの通行を含むものと見なすことができる。
[00153] 源による電子バンチの生成が、電子バンチ間のより長い周期的ギャップを含むように制御されることが、図6の放射源の特徴であり、それらのより長い周期的ギャップはクリアリングギャップと呼ぶことができる。クリアリングギャップのない電子バンチも、クリアリングギャップ周期よりも小さい周期で、周期的に間隔を空けられる。
[00154] 図6の放射源220は、クリアリングギャップの存在がLINAC222のエネルギー回収動作を大幅に阻止しないように、加速位相にある電子バンチ間の各クリアリングギャップが、減速位相にある電子バンチ間のクリアリングギャップと同時にLINAC222を通過するように、動作するように構成可能である。図6のような単一パスFEL放射源の場合、LINAC222でクリアリングギャップを重複させるために、クリアリングギャップが一定のレートで提供されること、及びクリアリングギャップの反復レートがN/tにほぼ等しいことを要求すれば十分であり、Nは整数であり、tは電子が単一ループを移動するため(例えば、マージャ構成要素219からマージャ構成要素219に戻るまで)の時間であり、t=L/cであって、Lはループの長さであり、cは電子バンチの平均速度であって、光の速度に近い。
[00155] 単一パスではなく2パス構成に目を向けると、実施形態に従った2パスFEL放射源240が図7に概略的に示されている。
[00156] 図7の2パスの分割加速FEL放射源240は、インジェクタ241の形の電子源、インジェクタ241からの電子バンチを電子バンチストリームにマージするためのマージャ構成要素239、各々が一連のLINACモジュールを含むLINAC242a、242bのペア、アンジュレータ244、並びに、減速された電子バンチを抽出するため及びそれらをビームダンプ246に向けて送るためのデマージャ構成要素245を含む。放射源は、電子バンチ経路247に沿って電子バンチを送るように動作可能な、図6に示されていないステアリングユニットも含む。
[00157] 図7の単一パスFEL放射源240の構成要素の各々は、図3又は図6のFEL放射源の対応する構成要素と同様又は同一である。放射源242は、加速バンチと減速バンチとの間でエネルギーが効果的に交換され、LINACがエネルギー回収LINACとして動作するように、LINAC242a、242bの各々について、加速及び減速の電子バンチはLINACをほぼ同時に通過するが、r.f.磁界に対して180度位相外れであるように、動作するように構成される。
[00158] FEL放射源240の動作中、各電子バンチは加速位相中に2回、減速位相中に2回、LINAC242a、242bの各々を通過するため、FEL放射源は2パスFEL放射源と呼ばれることがある。
[00159] たとえ加速位相中の電子バンチのエネルギーの増加が、主として電子バンチがLINAC242a、242bを通過する間に発生することが理解されるとしても、このケースでの電子バンチの加速位相は、電子バンチが最初にLINAC242aに入った時からアンジュレータ244に入るまでの電子バンチの通行を含むものと見なすことができる。たとえ減速位相中の電子バンチのエネルギーの減少が、主として電子バンチがLINAC242a、242bを通過する間に発生することが理解されるとしても、このケースでの電子バンチの減速位相は、電子バンチがアンジュレータ244を出てから最後にLINAC244aから出るまでの電子バンチの通行を含むものと見なすことができる。
[00160] 電子バンチ経路247は図7に概略的に示され、インジェクタ241を離れる電子バンチのための電子バンチ経路247上の逐次ポイントは、参照番号a1、a2、a3、a4、a5、a6、a7、a8によって示される。図7の経路247をa1からa8までのポイントを介してたどることによって理解できるように、電子バンチはa1からa8の間を進み、LINAC242a、242b及びアンジュレータ244も通過する。図7からわかるように、電子バンチ経路は、各電子バンチが同じポイントを複数回通過するようないくつかのループを含む。
[00161] 図7の装置を通る電子バンチの逐次的進行は、図8を参照しても理解可能であり、最初に第1のLINAC242aに入ることを示すポイントAから、最後に第1のLINAC242aから出ることを示すポイントJまでの、電子バンチの進行を示している。ポイントAからポイントI(アンジュレータ244への入口)までの電子バンチの進行は、電子バンチの加速位相とも呼ぶことができ、ポイントJ(アンジュレータからの出口)からポイントRまでの電子バンチの進行は、電子バンチの減速位相とも呼ぶことができる。
[00162] クリアリングギャップが電子バンチシーケンス内に提供されること、並びに、動作中、複数のLINAC242a、242bの各々について、周囲の電子バンチをその加速位相内に有するバンチシーケンス内のクリアリングギャップと、周囲の電子バンチをその減速位相内に有するバンチシーケンス内の更なるクリアリングギャップとが、LINACを通過中に整合されるように、クリアリングギャップのタイミングが電子源によって制御されることが、図7の実施形態の特徴である。電子バンチは、周期シーケンスで提供可能であり、クリアリングギャップは、いくつかのケースで周期シーケンスからの欠落バンチを表すものと見なされ得る。各電子バンチは、パルスレーザのフラッシュによって照らされた時に、電子源のフォトカソードから抽出される。クリアリングギャップ又は欠落バンチは、レーザ照明を一時的に抑えることによって電子ビームを中断することによって取得できる。これは例えば、偏光フィルタと組み合わせてレーザの分極を回転させる1つ又はいくつかのポッケルセルによって、及び/又はレーザの振幅を適切に作動させることによって実行可能である。実際には、欠落バンチは依然としていくつかの電子を含む場合があり、多くの実施形態のように、使用される光学及び電気構成要素を用いて、連続するバンチの間にフル電荷バンチから厳密にゼロ電荷状態に切り替えることは不可能である。したがってクリアリングギャップ又は欠落バンチは、イオンクリアリングが十分に可能なシーケンスの通常バンチに比べて、電荷が減少したバンチとすることができる。
[00163] 図7の実施形態は、クリアリングギャップのうちの1つが(そのギャップの周囲のバンチに関する加速位相又は減速位相のうちの一方で)LINAC内に存在するごとに、対応するクリアリングギャップも(ギャップの周囲のバンチに関する加速位相又は減速位相のうちの他方で)LINAC内に存在するように、及び、クリアリングギャップが動作するように構成され、クリアリングギャップは、対応する加速電子バンチ及び減速電子バンチ(例えば、クリアリングギャップの境界を画定する少なくとも直前及び直後の電子バンチ)を位相外れで維持し、それによって、クリアリングギャップが存在するにもかかわらず、最小限の電界勾配変動でLINACのエネルギー回収動作を維持するように整合される。クリアリングギャップは、LINACを通過する間、全体的又は部分的に重複可能である。
[00164] アンジュレータを備える2パスエネルギー回収LINACシステムに好適な整合クリアリングギャップシーケンスの設計は、図7のように複雑である。次に、実施形態に従った、図7の装置の動作モードに好適なクリアリングギャップシーケンスを、図8から図18を参照しながら説明する。
[00165] 図8から図11を参照しながら説明する第1の動作モードでは、どの時点でもAからJの間のポイント間の電子バンチ経路に沿ったポイントで、2つ又は3つのいずれかのクリアリングギャップが装置240内に存在する。図8は、その減速位相の終わりにLINAC242aに存在するクリアリングギャップ250、その加速位相の初めにも第1のLINAC242aに存在するクリアリングギャップ252、及びアンジュレータ244に同時に存在する更なるクリアリングギャップ254を示す。加速位相にあるクリアリングギャップへの言及は、周囲の電子バンチのうちの少なくとも1つが加速位相にあるクリアリングギャップへの言及として理解することが可能であり、同様に、減速位相にあるクリアリングギャップへの言及は、周囲の電子バンチのうちの少なくとも1つが減速位相にあるクリアリングギャップへの言及として理解することが可能である。
[00166] 図9から図11は、その後の時点で、電子バンチ経路257上のそれぞれの同時位置でのクリアリングギャップ252、254の各々を示す。クリアリングギャップ252のうちの一方がLINAC242a、242bのうちの1つを通過するごとに、クリアリングギャップ254のうちの他方がそのLINAC内に同時に存在することがわかる。
[00167] 以下の条件が実質上満たされるようなアンジュレータ244を含むビーム経路247内に(例えば1つのケースで図8に示されるような)ポイントZが存在する場合、
ZK=BC
DE=LM
FG=NO
HZ=PQ
及び、クリアリングギャップがAZ/c当たり1にほぼ等しい一定レートで供給される場合、図8から図11に示されたクリアリングギャップ(正確な縮尺ではない)の整合を提供するためのクリアリングギャップシーケンスが提供され、ここでcはバンチ経路に沿った電子バンチの平均速度であり、
Aは、第1のLINAC242aを通るその加速位相における電子バンチの第1のパスのための、第1のLINAC242aへの入口であり、
Bは、第1のLINAC242aを通るその加速位相における電子バンチの第1のパスのための、第1のLINAC242aからの出口であり、
Cは、第2のLINAC242bを通るその加速位相における電子バンチの第1のパスのための、第2のLINAC242bへの入口であり、
Dは、第2のLINAC242bを通るその加速位相における電子バンチの第1のパスのための、第2のLINAC242aからの出口であり、
Eは、第1のLINAC242aを通るその加速位相における電子バンチの第2のパスのための、第1のLINAC242aへの入口であり、
Fは、第1のLINAC242aを通るその加速位相における電子バンチの第2のパスのための、第1のLINAC242aからの出口であり、
Gは、第2のLINAC242bを通るその加速位相における電子バンチの第2のパスのための、第2のLINAC242bへの入口であり、
Hは、第2のLINAC242bを通るその加速位相における電子バンチの第2のパスのための、第2のLINAC242aからの出口であり、
Iは、アンジュレータへの入口であり、
Jは、アンジュレータからの出口であり、
Kは、第1のLINAC242bを通るその減速位相における電子バンチの第1のパスのための、第2のLINAC242bへの入口であり、
Lは、第1のLINAC242bを通るその減速位相における電子バンチの第1のパスのための、第2のLINAC242bからの出口であり、
Mは、第1のLINAC242aを通るその減速位相における電子バンチの第1のパスのための、第1のLINAC242aへの入口であり、
Nは、第1のLINAC242aを通るその減速位相における電子バンチの第1のパスのための、LINAC242aからの出口であり、
Oは、第2のLINAC242bを通るその減速位相における電子バンチの第2のパスのための、第2のLINAC242bへの入口であり、
Pは、第2のLINAC242aを通るその減速位相における電子バンチの第2のパスのための、第2のLINAC242bからの出口であり、
Qは、第1のLINAC242aを通るその減速位相における電子バンチの第2のパスのための、第1のLINAC242aへの入口であり、
Rは、第1のLINAC242aを通るその減速位相における電子バンチの第2のパスのための、第1のLINAC242aからの出口であり、
ZKは、電子バンチ経路に沿ったポイントZとKの間の距離であり、BCは、電子バンチ経路に沿ったポイントBとCの間の距離、などである。
このケースでは、経路等式(例えば、ZK=BC)は、ZからK及びBからCの電子バンチの移動時間が、約+/−ΔL/4の精度内で一致することを意味し得、ここでΔLはクリアリングギャップ持続時間である。こうした精度では、性能指数(加速勾配の公称からの偏差に、こうした偏差の持続時間をかける)は、非整合クリアリングギャップのケースの約10分の1であり、これはギャップ持続時間が500nsより小さいという条件で、本実施形態では十分である。同時に、経路長さは、約180度までの加速バンチ及び減速バンチの位相の差異を保持するように正確であるべきである。代替の実施形態では、条件は同じであるが、クリアリングギャップはより高いレートで供給され、ギャップの反復レートはAZ/nc当たり1にほぼ等しいレートであり、ここでcはバンチ経路に沿った電子バンチの平均速度であり、nは整数である。
[00168] 第1の動作モードに従ってクリアリングギャップの整合を提供するための上記段落で示した条件が精密にまとめられた場合、実際に、実構成要素の許容差及び変動の影響を受け、加速位相及び減速位相でのクリアリングギャップのマッチングは、クリアリングギャップの先行する(及び後続の)電子バンチが、LINACを通過中にr.f.磁界に対して精密に180度位相外れであるように整合されるため、LINACのr.f.キャビティ内の電界勾配の変動を最小限にし、LINACの最適なエネルギー回収動作を維持する。
[00169] 条件が逸脱している場合、加速位相及び減速位相におけるマッチングクリアリングギャップは、クリアリングギャップの先行(及び後続)電子バンチを、精密に180度位相外れからシフトさせるが、クリアリングギャップがまったく整合されていないケースに比べて、LINACのr.f.キャビティ内の電界勾配の変動を依然として削減することが可能である。
[00170] ポイントAからR及びZは図8にのみ示されており、図9から図16には示されていないが、それらのポイントは図8上に示されたと同じ図9から図16上の位置にあることが理解されよう。
[00171] 図12から図16に概略的に示された第2の動作モードにおいて、クリアリングギャップは、図8から図11に示された第1の動作モードよりも高い反復レートで提供されており、どの時点でもAからJの間のポイント間の電子バンチ経路に沿って、8つ又は9つのいずれかのクリアリングギャップが装置240内に存在する。
[00172] 図12から図15は、明確にするために1ペアのクリアリングギャップ260、262のみの進行を示し、図14では更なるクリアリングギャップ264がシーケンスにジョインしている。第1の動作モードと同じように、クリアリングギャップ260のうちの1つがLINAC242a、242bのうちの1つを通過するごとに、クリアリングギャップ262又は264のうちの別の1つがそのLINAC内に同時に存在することがわかる。同じことが、第2の動作モードに従い電子バンチ経路に沿って同時に存在するクリアリングギャップの他のペア(明確にするために、図12から図15には図示せず)にも適用される。図16は、第2の動作モードの場合、ある時点で電子バンチ経路に沿って同時に存在する9つすべてのクリアリングギャップを示す。
[00173] 以下の条件が実質上満たされるようなアンジュレータ244を含むビーム経路247内にポイントZが存在する場合、
AC=CE=EG=GZ=ZK=KM=MO=OQ
及び、クリアリングギャップが、AC/cにほぼ等しい一定のレートで供給される場合、図12から図16に示される第2の動作モードに従ってクリアリングギャップの整合を提供するために、クリアリングギャップシーケンスが提供される。いくつかのケースでは、BC=NO及びDE=PQも可能である。このケースでは、経路等式(例えば、AC=CE)は、AからC及びCからEの電子バンチの移動時間が、約+/−ΔL/4の精度内で一致することを意味し得、ここでΔLはクリアリングギャップ持続時間である。代替の実施形態では、条件は同じであるが、クリアリングギャップはより高レートで供給され、ギャップの反復レートはAC/nc当たり1にほぼ等しく、ここでcはバンチ経路に沿った電子バンチの平均速度であり、nは整数である。
[00174] 第1の動作モードのケースと同様に、第2の動作モードに従ってクリアリングギャップの整合を提供するための上記段落で示した条件が精密にまとめられた場合、実際に、実構成要素の許容差及び変動の影響を受け、加速位相及び減速位相でのクリアリングギャップのマッチングは、先行する(及び後続の)電子バンチが、LINACを通過中にr.f.磁界に対して精密に180度位相外れであるように整合されるため、LINACのr.f.キャビティ内の電界勾配の変動を最小限にし、LINACの最適なエネルギー回収動作を維持する。
[00175] 条件が逸脱している場合、加速位相及び減速位相におけるマッチングクリアリングギャップは、クリアリングギャップの先行(及び後続)電子バンチを、精密に180度位相外れからシフトさせるが、クリアリングギャップがまったく整合されていないケースに比べて、LINACのr.f.キャビティ内の電界勾配の変動を依然として削減することが可能である。
[00176] 第3の動作モードが、クリアリングギャップ270、272、274、276、278の進行を示す図17及び図18に概略的に示されている。塗りつぶされた円は、加速バンチ間に存在するクリアリングギャップを示し、白抜きの円は減速バンチ間に存在するクリアリングギャップを示し、斜線が引かれた円は加速でも減速でもないバンチ間に存在するクリアリングギャップを示す。
[00177] 以下の条件が実質上満たされるようなアンジュレータ244を含むビーム経路247内にポイントZが存在する場合、
AC=EG=ZK=MO、及び
CE=GZ=KM=OQ
図17及び図18に示される第3の動作モードに従ってクリアリングギャップの整合を提供するために、クリアリングギャップシーケンスが提供され、バンチ反復レートはAE/c当たり1であり、ここでcは電子バンチの平均速度である。このケースでは、2つの経路についての経路等式(例えば、AC=EG)は、経路のうちの一方(例えば、AからC)及び経路のうちの他方(例えば)についての電子バンチの移動時間が、約+/−ΔL/4の精度と同じであることを意味し得、ここでΔLはクリアリングギャップ持続時間である。代替の実施形態では、条件は同じであるが、クリアリングギャップはより高レートで供給され、ギャップの反復レートはAE/nc当たり1にほぼ等しく、ここでcはバンチ経路に沿った電子バンチの平均速度であり、nは整数である。
[00178] 説明した各動作モードは、例えばクリアリングギャップの反復レートを2倍、3倍、又は任意の他の好適な整数倍にすることで、自由電子レーザ放射源内を移動するより多くの数のバンチに拡張可能である。また、アンジュレータを含むループは、(前述のように)2つ以上のバンチを含むことが可能であるが、ループの長さ(第2のLINACの始めからアンジュレータを通り、再度第2のLINACの始めまでを測定)は、説明したケースのN倍長いものとし、ここでNは整数である。
[00179] 第1、第2、及び第3の動作モードは各々、第1及び第2のLINACのLINACモジュール内に、必要なパターンのクリアリングギャップの重複を提供する。それらの間の差異は、クリアリングギャップの反復レート、及び、装置のエネルギー回収LINAC内に同時に存在するクリアリングギャップの数である。
[00180] 異なるレートのクリアリングギャップ反復についてのイオン安定性の調査を受けて、より低い反復レートが有利であり得る(交互に与える負荷に応答して、インジェクタ241のブースタ構成要素の加速勾配の変動が、十分に補償され得るという条件で)ことがわかった。この利点は、同じデューティサイクル及びクリアリングギャップのより低い反復レートを用いた場合、ドリフト時間イオンはビーム増加をクリアしなければならないという観察から理解され得る。
[00181] 代替の実施形態では、図7の装置のエネルギー回収LINACにおける加速位相及び減速位相において、クリアリングギャップが同時に存在する、他のクリアリングギャップシーケンスが可能であることを理解されよう。しかしながら、図8から図18に関して説明した動作モードのクリアリングギャップシーケンスは、少なくともいくつかの他の好適なクリアリングギャップシーケンスよりも少ない反復レートを有する。他のシーケンス(より多くの数のバンチが、アンジュレータ244を含むループ内を移動する)が可能であるが、最適でない場合がある。
[00182] 図8から図16に関して上述した動作モードについての条件を詳述してきた。他の動作パラメータ、例えば、電子バンチの長さ及び反復周波数、電子バンチのエネルギー、クリアリングギャップの長さは、それらの条件に従って変更することができる。
[00183] 図7及び図8から図18に従った一実施形態における動作モードでは、平均ビーム電流は数十ミリアンペアであり、アンジュレータでのビームエネルギーは数百MeVである。電子バンチの反復レートは数百MHzであり、数十kWの電力がアンジュレータによって放出されるEUV放射ビーム内で送達される。LINACは、これらの実施形態において約5から10MV/mの加速を提供し、必要最終エネルギーは〜1GeVであり、その結果約100mから200mの加速長さを生じ、更にその結果、約200から400mの加速と減速とを加えた長さを生じる。LINAC及びアンジュレータを接続するアークの長さは、最小曲げ半径(〜10m、コヒーレントシンクロトロン放射損失によって限定される)によって定義されるため、屈曲の全長さは〜100から200mである。インジェクタ長さを加えたアンジュレータ長さも、〜100mである。したがって、電子バンチ経路の長さは約800mであり、このケースでは、最適なクリアリングギャップ反復周期は約1μs、例えば1.3μsであり、これは、3つのクリアリングギャップがシステム内を移動するケースに対応する(2*c* T=800m)。したがって、最低約100nsの各クリアリングギャップの長さに対応して、所与のデューティサイクルでの最長クリアリングギャップ、ビームパターン持続時間の少なくとも10%までのクリアリングギャップデューティサイクル(例えばこのケースでは、クリアリングギャップの長さは、クリアリングギャップ反復周期の少なくとも10%である)を提供する場合、最適なクリアリングギャップ反復レートは、このケースでは約1MHzである。イオン運動安定性シミュレーションによって電子ビームからイオンを除去させるためには、反復レート〜1MHzを伴うデューティサイクル(5%から25%)が、最も効率的であることがわかっている。
[00184] クリアリングギャップは提供されるが、加速位相及び減速位相でのクリアリングギャップが、LINACを通過中に重複しないように整合されていない(例えば、図8から図18に関して説明した動作モードに従ったクリアリングギャップが提供されていない)、図7の装置に関して、シミュレーションが行われた。こうした非マッチングクリアリングギャップの存在により、LINACモジュール内の電界勾配に変動が生じる。約5×10−3までのLINACモジュール内での全勾配の相対的r.m.s.振幅変動が、EUV波長変動に関する仕様(1MHzのクリアリングギャップ反復周波数、約100nsのクリアリングギャップの長さ、約20mAのビーム電流、及び約10MV/mのLINACの超電導無線周波キャビティにおける電界勾配の場合)から受け入れ可能であり得ることがわかっている。
[00185] いくつかの実施形態において、電子源に関連付けられた、インジェクタのブースタ(〜10MeVまでの電子バンチエネルギーをもたらし、電子源から1つのビームのみが通過する、加速器)と呼ばれる、更なるLINACが存在することに留意されたい。更なるLINACは、ループに注入される前の電子バンチの加速に使用されるため、電子ビームはその更なるLINAC内ではバランスを取ることはできない。クリアリングギャップの適用により、最新のRF増幅器による補償が不可能な重大な勾配変動が生じることになる。こうしたケースでの変動量は厳密であり、ビームラインの分散セクションにおけるブースタ後の望ましくない電子のフィルタリングにより、〜10−4の相対エネルギー変動である。通常、こうしたフィルタリングのエネルギー許容は〜1%であり、電子ビームは、名目の場合、それほど多くの電子を損失することなく装置のコリメータを通過するためのマージンを必要とする。したがって、選択されるクリアリングギャップパターンは、ブースタ内の勾配変動、並びに、いくつかのビームが同時伝播するエネルギー回収LINACの一部に対してゼロ電流運動を提供したいという希望に依存する。
[00186] 図19は、図7の実施形態のLINACモジュールについての時間の関数としての、LINACモジュール勾配の相対的なr.m.s.振幅変動のプロットであり、約8ns後に非マッチングクリアリングギャップがLINACモジュールに導入され、ギャップ反復レートは1MHzである。クリアリングギャップ反復周期の10%に等しい長さを有するクリアリングギャップの場合、LINACモジュール勾配の相対的なr.m.s.振幅変動は、約5×10−4の許容レベル内にとどまっていることがわかる。しかしながら、クリアリングギャップ反復周期に対してより長いクリアリングギャップの場合(20%又は30%ギャップ)、電界勾配の変動が許容できないほど高くなり、更に、ギャップ反復周期に対するギャップサイズでほぼ直線的に上昇することがわかる。
[00187] 図17から、いくつかの特定のケースにおいて、非マッチングクリアリングギャップであっても許容可能なパフォーマンスを提供できることがわかるが、クリアリングギャップ長さがクリアリングギャップ反復周期に対して十分短く保たれる場合、(図8から図16を参照しながら説明したような)LINAC内にクリアリングギャップのマッチングを提供するクリアリングギャップシーケンスを使用することで、LINAC電界勾配変動を低減させることが可能であり、より長いクリアリングギャップが使用可能であり、他の動作パラメータが変動する可能性があるにもかかわらず許容可能なパフォーマンスレベルが提供可能である。
[00188] 実際に、電子バンチシーケンス内のクリアリングギャップは、電子ビーム経路の他の部分並びにアンジュレータ内で、例えば電子ビームが他の部分よりも集束される経路の部分で、イオンのクリアリングを提供することも可能である。電子ビームがより集束され、イオンクリアリングが発生し得る経路のこうした部分は、いくつかのケースにおいて、経路の実質上直線のセクション、例えばLINAC、屈曲前後のマッチングセクション、並びにアンジュレータのうちの1つ以上を含む。ビームは通常、屈曲セクションでは分散によりそれほど集束されず、したがって集束は屈曲半径によって特性の劣化を招く場合がある。
[00189] 生成されるEUV放射の望ましい変換効率及び電力を達成するために、FELのアンジュレータ24の入力で様々なパラメータを指定することができる。電子バンチのピーク電流は、500A程度とすることができる。平均電流は、例えば30mAなどの数十ミリアンペア程度とすることができる。電子ビームの横エミッタンスは、例えば0.6mm*mRAD未満などの、十分の幾つかのmm*mRAD程度に制限することができる。電子ビームの縦エミッタンスは、例えば100KeV*psなどの、数十KeV*ps程度に制限することができる。
[00190] 生成されるEUV放射の望ましい変換効率及び電力を更に定義するために、アンジュレータ24の出力でいくつかのパラメータを指定することができる。これらの出力されるアンジュレータパラメータは、エネルギー回収線形加速器(LINAC)内で使用済み電子バンチからのエネルギー回収をサポートするために指定することもできる。電子ビームの横エミッタンス成長は、望ましい利得長さを維持するために、アンジュレータ24の全長に制限することができる。電子ビームの横エミッタンス成長は、例えば0.1mm*mRADに制限されるなど、十分の幾つかのmm*mRAD程度に制限することができる。
[00191] 電子ビームの横エミッタンス及び縦エミッタンスは、ビームダンプに接近した時に潜在的に損害を与える電子損失の数を抑制するために、電子バンチが減速され、ビームダンプ26に向けて送られる時に制限することができる。電子ビームの横エミッタンスは、例えば1mm*mRADなどの、数mm*mRAD程度に制限することができる。電子ビームのピーク間縦エミッタンスは、5%程度に制限することができる。アンジュレータ24とビームダンプ26との間に生じる任意の追加の散乱が生成するエミッタンス成長は、任意の関連する電子損失を更に抑制するために、0.1から1mm*mRAD程度の範囲に制限することができる。
[00192] 既知の自由電子レーザは、超高真空条件下で動作する。例えば、自由電子レーザは、およそ1nTorrの残留圧力で動作可能である。しかしながら動作中、電子ビーム経路内には残留ガスが依然として存在する。残留ガスの大半は水素からなる。上記で詳しく説明したように、FELの動作中、加速電子は陽イオンを生成する残余水素ガスと衝突する。加速電子によって放出されるシンクロトロン放射も残余水素ガスと相互作用し、結果として更に陽イオンが生成される。何らかの軽減努力をしなければ、電子ビーム経路内で作られる陽イオンの数は増加し、およそ10秒以内に陽イオン電荷は電子ビーム電荷と一致する。陽イオン電荷が電子ビーム電荷と一致した場合、以下で説明する効果により、電子ビームエミッタンスは大幅に増加する。
[00193] ほとんどの陽イオンは電子ビームの中心近くで作られる。陽イオンが作られると、電子ビームとの電磁相互作用により、電子ビーム軸方向に強制的に送られる。陽イオンが受ける力は、陽イオンと電子ビーム軸との間の距離に比例する。この比例が、陽イオンを電子ビーム軸の周囲で振動させる。ほぼ均一な電荷及び/又はエミッタンスを有する規則的な電子バンチセットにおいて、陽イオン振動は均一であり、ビーム軸周囲の小径内で起こる。すなわち、イオンは、振動の振幅又は速度にいかなる重大な変化もなく、電子ビームの静電電位内で「トラップ」状態で振動する。
[00194] 電子ビームを形成しこれを取り囲む振動陽イオンの雲が、電子の運動量を変更する。電子は、周囲の陽イオンとの静電相互作用により、電子ビーム軸に向けて送られる。電子が受ける運動量の変化は、結果として電子ビームエミッタンスの変化を生じさせる。
[00195] アンジュレータ24内にコヒーレントマイクロバンチを形成するには電子ビームが拡散し過ぎているため、FEL変換効率がゼロまで落ちるほど、電子ビームエミッタンスが大幅に増加する可能性がある(図3を参照)。電子ビームエミッタンスの増加は、所期のビーム経路からの電子の逸脱により、FEL内に大量の電子損失を生じさせることもある。このような場合、LINACのエネルギー回収セクションに到達する電子が少な過ぎるため、エネルギー回収LINAC22は動作不能である。
[00196] 電子ビームエミッタンスの劣化を制限するために、陽イオンの濃度は、電子の濃度よりもおよそ4桁以上小さいはずである。この電子ビームエミッタンスの劣化制限を達成するために、陽イオンは、作られてからおよそ1ミリ秒以内に電子ビームから除去されなければならない。
[00197] 電子ビームから陽イオンを除去するためのいくつかのストラテジが、単独又は様々な組み合わせで使用可能である。1つのストラテジは、陽イオンが蓄積する場所にイオン抽出電極を配置することを含む。イオン抽出電極は、電子ビームから陽イオンを取り除く電界を提供する。イオン抽出電極は、例えば質量対電荷比が10を超えるイオンなどの重イオンを除去する際に、特に効果的である。前述の別のストラテジは、陽イオンを電子ビームから流出させることが可能なイオンクリアリングギャップの導入を含む。
[00198] 電子ビーム経路から陽イオンを除去する1つの方法は、電荷及び/又はエミッタンスなどの電子バンチ特性の高速変動を導入することを含む。こうした変動は、クリアリングギャップを備えている電子ビームにも備えていない電子ビームにも導入することができる。クリアリングギャップを備えている電子ビームにこうした変動を適用することで、クリアリングギャップのみを実施するのに比べて、定常状態のイオン濃度を2桁以上低下させることができる。電子バンチの電荷及び/又はエミッタンスを変更することで、LINAC22のエネルギー回収セクション内の加速勾配に望ましくない変動を引き起こす場合がある。電子バンチの電荷及び/又はエミッタンスは、LINACの動作に対する有害な影響を避けるために、所定の範囲内で変動可能である。バンチの電荷及び/又はエミッタンスの変動を定義する関数は、あらゆるバンチ列ごとの電子ビームによって送達される平均電荷(平均エミッタンス)が一定に保たれるか、又は公称の10%未満、任意選択で公称の1%未満の偏差が許容されるように、選択することができる。変動が電子ビーム電荷及び/又はエミッタンスのおよそ1%から10%の間であるこうした関数は、LINAC22のエネルギー回収セクションの動作に悪影響を与えることなく、十分に陽イオンを除去することができる。変動は、電子ビーム電荷及び/又はエミッタンスの公称値のピーク間変動とすることができる。電子バンチの電荷及びエミッタンスは結合可能であり、すなわち、バンチ電荷の1%の増加(減少)で、バンチエミッタンスを1%増加(減少)させることができる。
[00199] 電子ビームから陽イオンを除去するために電子バンチ特性の高速変動を導入する方法は、いかなるイオンクリアリングギャップもない電子ビームバンチについて考察することで理解できよう。横方向の電子バンチ電荷分布は、電子ビーム軸を中心とするガウス分布として概算することができる。したがって電子ビームの横断面のサイズは、このガウス分布の幅(σ)として記述することができる。大部分の陽イオンは電子ビームサイズの2シグマ以内で生成される。電子ビームの2シグマ領域内では、陽イオンに作用する電子バンチの効果は線形化することができる。すなわち、電子バンチによって陽イオンが受ける力、又は速度変化は、以下のように、陽イオンの電子ビーム軸からの距離に比例する。
上式では以下の通りである。
γp−伝統的な陽子半径
A/Z−イオン質量(原子単位)対イオン電荷の比
c−光の速度
σx,y−x(又はy)方向の電子ビームサイズ(ガウスの横ビーム形状)
Nb−電子バンチ内の電子の数
β―電子バンチの速度対光の速度の比
(x,y)―電子ビーム軸に対するイオンのx(又は)座標
[00200] ほぼ同じ特性を共有する規則的な電子バンチからなる電子ビームのケースでは、電子ビーム内での陽イオンの振動は、以下の行列で記述可能である。
上式では以下の通りである。
N−電子バンチの数
tb−2つの電子バンチの到達間にイオンがドリフトできる時間
前述の典型的なEUV FEL条件での、行列[A]のトレースの係数は、2未満である。この結果は、電子ビーム内でイオンが効果的に「トラップ」されることを意味する。すなわち、任意数の規則的な電子バンチが陽イオンを通過した後、陽イオンの速度も振動振幅も無限に増加しない。
[00201] 図20は、電子ビーム経路440内の陽イオンの軌道430に与える不規則な電子バンチ450の影響を示す図である。電子バンチ電荷及び/又はエミッタンスの高速変動を導入することで、不規則な電子バンチのセット450が作り出される。各電子バンチは陽イオンに異なる力を誘起させる。異なって誘起された力が陽イオンに作用することで、電子ビーム軸440の周囲に不均一な振動430を発生させる。
[00202] 不規則な電子バンチ450によって陽イオンに及ぼされる異なる力は、陽イオンが電子ビーム経路440から出るように、陽イオンの振動の振幅430を増加させることができる。陽イオンの振動振幅Dは、陽イオンがFELのビームパイプ壁に衝突して、中性種を形成するために再結合した後、中性種は超高真空ポンプを介してFELから除去できるように、大幅に増加することができる。陽イオン振動振幅Dは、FEL内に多数の陽イオンが存在する場合であっても、実質上、電子ビーム経路440内には陽イオンが存在しないように、十分増加することができる。
[00203] 電子バンチ変動による陽イオンの除去は、イオンクリアリングギャップの導入を介して大幅に加速することができる。典型的なFEL条件(数十mAのビーム電流、0.1〜1mmのビームサイズ、1〜30のイオン質量対電荷比、〜0.1usのクリアリングギャップ、〜1MHzのクリアリングギャップ反復レート)において、イオンは、0.1〜10MHzの範囲内の周波数で電子ビームの中心軸の周囲で振動する。同じ周波数範囲内で電荷及び/又はエミッタンスについてのビーム変調関数を導入することによって、イオンを共振させること、及び、イオン振動振幅をビームパイプの範囲(<10ms)まで迅速に増加させることが可能である。電子ビーム経路から陽イオンを除去することによって、電子ビームのエミッタンス成長は軽減される。陽イオンを除去する方法は、LINAC22の動作に対するいかなる有害な影響をも回避しながら、受け入れ可能なFEL変換効率を維持することができる。最適変調関数の例は、図23及び図24で与えられる。準最適変調関数の例は、図25で与えられる。図23は正弦波変調関数を含み、これが、クリアリングギャップ中に0から2Πへの位相のランダムなジャンプを受け、振動周期の10%を取るため、フーリエスペクトルでは基本周波数(この例では〜1MHzの基本周波数)のゼロから10倍の周波数が存在することになり、同じ範囲の固有周波数を伴うイオンを共振させ、それらを除去する。
[00204] 図21は、電子インジェクタの実施形態を示す概略図である。インジェクタは、ドライブレーザ310、カソード340、及び電子ブースタ390を備える。カソード340は、電子銃室350の内部にある。電子銃室350は、放射源300から放射のビーム420を受け取るように配置される。放射源300は、例えば、レーザビーム400を放出するドライブレーザ310を備えることができる。ドライブレーザは、シードレーザ及び光増幅器(図示せず)を備えることができる。レーザビーム420は、電子銃室350内に向けて送られ、カソード340上に入射する。図21に示された実施形態において、レーザビーム420は、カソード340上に入射するようにミラー(図示せず)によって反射される。
[00205] カソード340は高電圧で保持される。例えばカソード340は、およそ数百キロボルトの電圧で保持することができる。カソード340は、電子銃室350の一部を形成することが可能であるか又は電子銃室から分離することが可能な電圧源を使用することによって、高電圧で保持することができる。レーザビーム420内の光子はカソード340によって吸収され、カソード内の電子を励起する。カソード340内のいくつかの電子が、十分な高エネルギー状態まで励起され、カソードから放出される。高電圧のカソード340は陰であるため、カソードから遠くへ放出される電子を加速させる働きをし、それによって電子のビームを形成する。
[00206] レーザビーム400は、パルスレーザビームである。電子は、レーザビーム420のパルスに対応するバンチ状態でカソード340から放出される。したがって電子ビームは、一連の電子バンチ360を含む。レーザ310は、例えばピコ秒レーザであってよく、したがって、レーザビーム内のパルスはおよそ数ピコ秒の持続時間を有し得る。カソード340の電圧はDC電圧又はAC電圧とすることができる。カソード340の電圧がAC電圧である実施形態において、カソード電圧の周波数及び位相は、レーザビームのパルスがカソードの電圧のピークと一致するように、レーザビーム400のパルスと合致することができる。レーザビーム400のパルスは、加速場が電子バンチを加速するように働く時点で電子バンチ360が電子ブースタに到達するように、電子ブースタ390内の加速場と合致することができる。同様に、レーザビームパルス400及びLINAC22の加速場も同期可能である。
[00207] ドライブレーザ310が高速変調ユニット320及びギャップ導入ユニット330を介してパルスレーザビームを送信した後、レーザビーム420はカソード340上に入射する。制御ユニット380は、ドライブレーザ310の持続時間及びタイミングを調整するために使用される。制御ユニット380は、高速変調ユニット320及びギャップ導入ユニット330を制御するためにも使用される。制御ループは、制御ユニット380と、エネルギー回収LINAC22と、LINAC内の加速勾配の変動を補償するブースタ390との間に存在する。電子バンチが既知の機能を使用して変調される場合、フィードフォワードループは、制御ユニット380とLINAC22との間に存在し得る。電子バンチ変調がドライブレーザ310の雑音増幅を介して実装される場合、高速変調ユニット及びドライブレーザは単一ユニットを形成するために組み合わせることができる。
[00208] カソード340から放出される電子ビームは、電子ブースタ390によって加速される。電子ブースタ390は、ビーム経路に沿い、エネルギー回収LINAC22に向けて電子バンチを加速するために働き、エネルギー回収LINAC22は、電子バンチを相対論的速度まで更に加速する。電子ブースタ390は、例えば、およそ5MeVを超えるエネルギーまで電子バンチ360を加速することができる。いくつかの実施形態において、電子ブースタ390は、およそ10MeVを超えるエネルギーまで電子バンチ360を加速することができる。いくつかの実施形態において、電子ブースタ390は、およそ20MeVまでのエネルギーに電子バンチ360を加速することができる。
[00209] 電子ブースタ390は、エネルギー回収LINAC22と同様であってよく、例えば複数の無線周波キャビティ及び1つ以上の無線周波電源を備えることができる。無線周波電源は、ビーム経路内の電磁界を制御するように動作可能であり得る。電子のバンチ360がキャビティ間を通過する際に、無線周波電源によって制御される電磁界は電子の各バンチを加速させる。キャビティは、超電導無線周波キャビティとすることができる。代替として、キャビティは従来の電導(すなわち、超電導ではない)であってよく、例えば銅から形成することができる。
[00210] 前述のように、カソード340上に入射するレーザビーム420の各パルスが、対応する電子バンチ360をカソード340から放出させる。電子ビームE内の各電子バンチ360は、電子ブースタ390によって、及びエネルギー回収LINAC22によって加速される。加速された電子バンチ360はアンジュレータに入り、ここで放射ビームを形成するために放射のエミッタンスを誘発する。放射ビームはパルス放射ビームであり、アンジュレータ内の各電子バンチ360が放射ビーム内の放射のパルスを放出させる。カソード340上に入射するレーザビーム420内の各パルスについて、電子ビーム内に対応する電子バンチ360が存在し、自由電子レーザFELから放出される放射ビーム内に対応するパルスが存在する。
[00211] 電子ビーム経路から陽イオンを除去するために電子バンチの電荷及び/又はエミッタンスが変動可能な、複数の方法が存在する。本発明の一実施形態は、ドライブレーザビームのレーザパルスのエネルギーを変更することを含む。
[00212] ドライブレーザ310によって放出されるパルスのエネルギーは、ドライブレーザに関連付けられた雑音(例えば、ショット雑音)の増幅を介して変更可能である。例えば、ドライブレーザ310のシードレーザに関連付けられた雑音は、レーザパルスの増幅に使用される光学増幅器に適用可能である。これにより、光学増幅器によって提供される増幅の変動が導入され、これがカソード340に提供されるレーザパルスの電力のパルス間変動を生じさせる。雑音増幅は、インジェクタで生成される電子バンチ電荷のパルス間変動を生じさせる。すなわち、各パルス内の異なる数の光子により、増幅されたショット雑音効果を介して、異なる量の電子が各バンチにおいてカソード340から放出される。高周波数(>10MHz)変調は、σ<100umの電子ビーム内のM/Z<10のイオンを除去するのに最適である(M/Zは、原子単位のイオンの質量と、電子ビームサイズ(ガウス)のその電荷σとの比である)。
[00213] ドライブレーザ310によって発生するレーザパルスのエネルギーは、高速変調ユニット320によって変更可能である。高速変調ユニット320は例えばポッケルセルを備えることができる。ポッケルセルは偏光子と共に光を遮断するために使用可能であり、遮断される光の量は、ポッケルセルの両端間の電圧によって決定される。したがってポッケルセルの両端間の電圧の変調を使用して、パルスがカソード340上に入射する前にドライブレーザ310によって放出されるパルスのエネルギーを変調することができる。ドライブレーザ310のエネルギーパルスの変調は、結果として、インジェクタ内のカソード340によって生成されるバンチ電荷を変調することになる。σ<1mmの電子ビーム内のM/Z<100のイオンに対して、中間周波数変調(0.1〜10MHz)が効率的である。
[00214] 本発明の更なる代替実施形態は、パルスがカソード340上に入射する前に、ドライブレーザ310によって生成されるパルスの波面の変動を誘起させることを含む。ドライブレーザによって生成されるパルスの波面の変動は、高モードビーティングで動作されるキャビティ増幅ポッケルセルを使用して達成可能である。カソードに到達するドライブレーザパルスの波面を変動させることで、結果としてカソード340の照明エリアのプロファイルを変更することになる。カソード340の照明エリアを変更することで、生成される電子バンチの空間電荷優勢エミッタンスが変更される。
[00215] 本発明の更に他の代替実施形態は、生成される電子バンチのエミッタンスの変動を適用するために、カソード340の温度の変動を誘起させることからなる。パルス間のカソード温度の変動は、開始電子バンチエミッタンスにおける変動を生成するために、開始電子熱エネルギーを変更する。ドライブレーザ310とは異なるレーザをカソード上に入射させ、これを使用してランダムに又は変調様式でカソードの温度を変動させることができる。第2のレーザは、光効果によって電子放射を防止するための、IRレーザとすることができる。各電子バンチでカソード温度が異なる場合、各電子バンチは異なる開始エミッタンスを有することになる。
[00216] 図22は、ドライブレーザによって発生するレーザパルスのセット400のエネルギーが、図21に示された高速変調ユニット410及びギャップ導入ユニット420を通って移動する際の変化を示す、例示的グラフである。図23及び図24は、典型的なFEL条件(十分な電力を伴う0.1〜10MHzの範囲のすべての周波数を含み、バンチ列当たりの平均電荷を保存する)でイオンを除去するのに最適な電荷変調関数の例である。図23は、位相変調電荷(1つのバンチ列に1つ又は整数数の振動周期が当てはまる)の例であり、振動位相はクリアリングギャップ中にジャンプする[0から2Π]。図24は、振幅変調電荷(1つのバンチ列に1つ又は整数数の振動周期が当てはまる)の例であり、変調の振幅(0〜10%以内)はクリアリングギャップ中にジャンプする。図25は、高周波数変調(パルス間に基づく)の例であり、限られた数のケースにのみ効率的である(M/Z<10及びσ<0.1mm)。
[00217] 高速変調ユニット及びギャップ導入ユニットは、各ユニットが非常に異なる周波数及び振幅で動作するため、別々とすることができる。
[00218] 電子バンチ電荷及び/又はエミッタンスの、前述のような位相及び/又は振幅の雑音様変動は、LINACに関連付けられた加速勾配及び電流負荷のひずみがごく小さいものであることを保証しながら、電子ビーム経路から陽イオンを除去する際に、イオンクリアリングギャップの効率を向上させる。定常状態の濃度の低下は、あらゆるバンチが同様でありクリアリングギャップが適用されるビームのケースに比べて、少なくとも2桁である。
[00219] 関数様変調電子バンチ電荷及び/又はエミッタンス変動によってLINAC内に生じる可能性のある、いずれの電流負荷及び加速勾配の変動をも補償するために、制御ユニットを使用して動作されるフィードフォワードループを使用することができる。
[00220] 変調ユニット320と制御ユニット380は、これらの組み合わせがビーム経路からイオンを除去する電子バンチの電荷又はエミッタンスに変動を適用するため、共にイオン除去装置の例であるとみなし得る。ドライブレーザから出力されるパルスの電荷又はエミッタンスを変動させるために、ドライブレーザ310に変動が適用される実施形態において、ドライブレーザと変調ユニット380は共に、イオン除去装置の例と見なすことができる。
[00221] 前述のように、陽イオン除去のこの方法は、単独で又は他のイオン除去方法と組み合わせて、使用可能である。他の陽イオン除去方法は、限定されないが、イオンクリアリングギャップの使用及び/又はイオン抽出電極の使用を含む。電子ビームから陽イオンをほぼ除去するために電子バンチ特性の高速変動の方法を使用することは、他の方法では十分でない場合、FELの動作でEUV放射を生成できるようにする。
[00222] 電子バンチはFELを通過する際、存在し得るイオン抽出電極内の電磁航跡場を誘起させる。これらの電磁航跡場の作成が、電子ビームエネルギーを損失させ、アンジュレータ24での電子バンチの輝度を低下させる。電子バンチ特性の高速変動は、組み合わせて使用された場合、電子ビームから陽イオンをほぼ除去するために必要なイオン抽出電極の数を減少させることができる。FELシステム内に存在するイオン抽出電極の数が減少するということは、電子バンチが受ける電磁「航跡場」の損失が少なくなることを意味し、FELの変換効率が向上することになる。
[00223] 電子バンチ特性を変動させる技法を使用することで、FEL LINACシステムのコミッショニングを簡略化することも可能である。これは、電子ビームからの陽イオンの除去が、陽イオンによって生じる前述の電子ビームの集束の影響を補償するために、LINACの要素を再調整する必要を皆無にできるためである。電子ビーム特性の高速変動は、かなり容易により多くの陽イオンを電子ビームから除去できるため、FELの真空要件も削減することができる。例えば、必要な真空ポンプの数及び/又はFELの内壁に塗布される気体吸収コーティングの量を削減することができる。
[00224] イオン抽出電極は前述のように電磁航跡場を誘起させる可能性があるが、それでもなお、FELからの効率的なイオンの抽出を提供するために、イオン抽出電極を使用することが有利であり得る。典型的な配置構成では、電極は、内部で電子ビームが伝播されるビームパイプの両側に提供される。電極の両端間に電圧差が適用され、電極間及び電子の伝播方向に対して直角に延在する電界を生成する。電界の近くに発生する陽イオンは、抽出電極のカソード方向に引き付けられる。イオンはカソードから又はビームパイプの壁から電子を受け取り、中性分子を形成する。中性分子は真空ポンプによってビームパイプから抽出される。
[00225] FELの電子ビームはそれ自体が、イオンをその発生場所から抽出電極方向へとプッシュする、縦方向の電位を提供する。この電位(有効ビーム電位と呼ばれることもある)による陽イオンの加速は、陽イオンの質量に依存する。重イオン(例えば、原子質量が10を超える)は、軽イオンよりも迅速に加速されない。電子ビームが方向を変える、ステアリングユニット23、25(図3を参照)などの自由電子レーザのいくつかの部分では、有効ビーム電位がかなり大きい可能性がある。これにより、イオンを抽出電極方向に十分迅速に移動させることができるため、自由電子レーザによって放出されるEUV放射ビームを大幅に劣化させることはない。例えばイオンは、1ms以内に電子ビーム経路から抽出可能である。しかしながら、自由電子レーザの他の部分、特に電子ビームが直線的に伝播されている場所では、有効ビーム電位は比較的小さい可能性があり、EUV放射ビームの劣化を避けるため、結果としてイオンが十分迅速に抽出されない可能性がある。アンジュレータ24はこうした場所の例である。電子ビームの横断寸法は、アンジュレータ24に沿って伝播する際に変化する可能性があり、X及びYの合計寸法は相対的に一定のままであるため、平坦な縦方向電位が生じる。したがって、アンジュレータモジュール内には有効ビーム電位が存在しないか又はわずかに存在する。
[00226] 例えばFELのアンジュレータ24のモジュール内部に抽出電極を提供することは、実用的でない可能性がある。例えばアンジュレータ24は長さ約2mの複数のモジュールを備えることができ、その内部に直径1cmのビームパイプが提供される。こうしたアンジュレータモジュール内に抽出電極を提供することは達成が困難な可能性があり、抽出電極がビームパイプの内部表面の滑らかさを損なうリスクが存在する。更に、アンジュレータモジュールの内部には、抽出電極の近くに形成される分子を抽出するための真空ポンプに接続するための開口部を提供する、十分な空間がない可能性がある。これらの理由で、抽出電極はアンジュレータモジュールの内部ではなくアンジュレータモジュールの間に提供することができる。
[00227] しかしながら、アンジュレータモジュールの中心に向かって発生したイオンは、アンジュレータモジュールの一方の端部に配置された抽出電極まで移動するために、かなりの時間がかかる可能性がある。例えばイオンは、抽出電極まで移動するために10ms以上かかる可能性がある。電子ビーム経路内の陽イオンの蓄積は、電子ビームのエミッタンスに有害な影響を与え、これが次に、FELによって放出されるEUV放射ビームにも有害な影響を与えることになる。陽イオンが発生した後、1ms以内に陽イオンを抽出することが望ましい可能性がある。
[00228] 上記の問題に対処する本発明の実施形態は図26に概略的に示されており、RF電磁波注入装置を示す。無線周波(RF)電磁波エミッタ500が導波管502を介して、自由電子レーザFELの一部を形成するビームパイプ504に接続される。RFエミッタ500及び導波管502は、例えばアンジュレータのモジュール間に提供するか、又は任意の他の好適な場所に提供することができる。導波管502がビームパイプ504と出会う場所に、結合アンテナ506(共振室と呼ばれることもある)が提供される。更にビームパイプ504に沿って抽出電極508が提供される。例えば、抽出電極は、結合アンテナ506からアンジュレータモジュール24の反対側に配置することができる。アンジュレータモジュール24は示されていないが、標示されたギャップ内に配置される。
[00229] 実施形態において、RFエミッタ500から放出されるRF電磁波は、導波管502に沿って結合アンテナ506内まで伝播するが、ビームパイプ504に沿って伝播することはない。代わりに、RF電磁波によって発生したエバネセント波がビームパイプ504内へと延在する。エバネセント波は、ビーム経路504に沿って延在する勾配を電界に与える。陽イオンは電界による電位勾配を受け、その電位勾配に沿って移動することになる。
[00230] エバネセント電磁波はアンジュレータモジュール24内へと延在し、陽イオンをアンジュレータモジュールの外へプッシュする電位を提供する。イオンは抽出電極508方向へプッシュされ、その後、抽出電極508がビーム経路からイオンを除去する。エバネセント電磁波によって与えられる電位は、ビーム経路から1ms以内にイオンを除去するのに十分に強力である。
[00231] エバネセント電磁波によって提供される電位UWは、導かれたRF電磁波がビームパイプ504と出会うポイントで最大である。図示された実施形態において、これは結合アンテナ506である。電位は平均勾配UW/λWで降下し、ここでλWは、ビームパイプ504内のエバネセント電磁波の波長である。電位の勾配は例えば0.1〜10V/mの範囲内であり得る(これは、イオンの電荷及び電磁波の電力に依存する)。イオンは、イオンの電荷対質量比に依存して加速しながら電位の勾配をたどる。イオンは、例えば約1ms以下で抽出可能である。
[00232] 実施形態において、エバネセント電磁波はTEモードで、すなわち、電子ビーム経路の軸に対して直角な電界を伴って、連続して印加可能である(電子ビーム経路は図26の点線によって示される)。これが当てはまるケースでは、電子ビームとエバネセント電磁波の磁界との相互作用はゼロである(互いに平行である)。エバネセント電磁波の電界によって引き起こされる電子エネルギー/運動量の変化は、10eV程度である。これは、電子ビームにほとんど影響を及ぼさず、FELから放出されるEUV放射ビームにもほとんど影響を及ぼさない。
[00233] 代替実施形態において、エバネセント電磁波はTMモードで、すなわち、電子ビーム経路の軸に対して直角な磁界を伴って、連続して印加可能である。これが当てはまるケースでは、電界によって引き起こされる電子のエネルギー/運動量の変化は、約100KeVであり得る。磁界はほとんど影響を及ぼさない。
[00234] 実施形態において、RFエミッタ500はパルスモードで動作可能であり、イオンクリアリングギャップ中のみRFエミッタが動作する。これが当てはまるケースでは、電子ビームがビームパイプ504に沿って移動する時にエバネセント電磁波は存在しないため、電子ビームはエバネセント電磁波の影響をまったく受けない。
[00235] 実施形態において、ビームパイプ504に沿って約2m延在する(これは、アンジュレータモジュールの長さに対応し得る)エバネセント波を提供することが望ましい可能性がある。0.1V/m以上の電位勾配を提供することが望ましい可能性がある。ビームパイプは、例えば約5mmの半径を有し得る。こうした例の円形導波管式によれば、電磁波に関するカットオフ周波数は17.58GHzである。
[00236] 以下の公式を使用して、RFエミッタ500によって与えられるべき電磁波の周波数を決定することができる。
上式で、fはカットオフ周波数であり、λはカットオフ周波数に対応する波長であり、λWはエバネセント波の望ましい波長(この例では2m)である。この式を使用すると、17.58GHzのカットオフ周波数の下方の約8.8MHzの周波数が、望ましいエバネセント波を提供することがわかる。
[00237] 図27は、半径5mmのビームパイプ内部に2mの長さで延在するエバネセント波の磁界強度が、異なる周波数のRF波に対してどのように変動するかを示すグラフである。ビームパイプのカットオフ周波数は17.58GHzである。グラフの左下隅に示された標示されていない曲線は、17.00GHz曲線である。グラフからわかるように、17.58GHzより大幅に下方の周波数の場合、2m長さのビームパイプのごく一部のみに沿って延在する。周波数が17.58GHzに近づくにつれて、エバネセント波はビームパイプに沿って更に延在し、例えば周波数が17.57GHzの場合、1mを超えて延在する。更にこの周波数でのエバネセント波は、かなりの勾配の磁界強度を有する(磁界強度は7,000kV/mからゼロまで降下する)。カットオフ周波数に達すると、エバネセント波はもはや存在せず、代わりに変調場が見られる。
[00238] 調整可能RF源を使用して、RFエミッタ500を駆動するRF信号を発生させることができる。RF源は、望ましいエバネセント波を提供するためにカットオフ周波数に十分近い周波数が提供可能であることを保証するために、1×10−5又はそれ以上の周波数安定性を有することができる。1×10−5よりも良好な安定性を備えるRF源の例は、米国のKeysight Technologies社から入手可能な、N5193A信号発生器である。
[00239] 重イオン(例えば、10以上の原子質量単位を伴うイオン)を1ms以内にアンジュレータモジュールから除去するのに十分強力な電位を提供するためには、約300kV/mの電界強度が望ましい可能性がある。これは次に、約30kWの電力がRFエミッタ500から送達されることを必要とする可能性がある。電磁波はビームパイプ504のカットオフ周波数の直下にあり、結果として、ビームパイプ内の抵抗損により、大量の電力が消散する可能性がある。抽出電極内でも何らかの電力が消散する可能性がある。電極は、電力消散を増加させるような、電極又は電極に隣接して共振が誘起されることのないように設計することができる。
[00240] 導波管502の幅D及びビームパイプ504の幅dは、どちらも図26に標示されている。導波管502にビームパイプ504の幅よりも大きい幅を与えることで、導波管内にRF電磁波を発生させることが可能であり、これがビームパイプ内にエバネセント波を形成する。導波管又はビームパイプが円形断面を有する実施形態において、幅は導波管又はビームパイプの直径に対応する。
[00241] 代替実施形態において、エバネセント波がビームパイプ504内へと延在するように配置する代わりに、2つの異なる周波数の電磁波がビームパイプ内で伝播することができる。伝播電磁波は、ビーティング電磁波を発生させるのに十分近い周波数とすることができる。電磁波の位相は、注入ポイント(例えば、結合アンテナ506)でビーティング電磁波の最大振幅を提供するように、及び抽出電極508で最小振幅を提供するように、制御することができる。ビーティング電磁波は、ビームパイプ504に沿って抽出電極508方向にイオンをプッシュする。実施形態において、注入ポイントはアンジュレータモジュール24の一方の側であり、抽出電極はアンジュレータモジュールの反対側であるものとすることができる。
[00242] ビーティング電磁波を使用する実施形態において、RFエミッタは、ビームパイプ504のカットオフ周波数よりかなり下方の周波数で、RF電磁放射を提供することができる。例えば実施形態において、周波数は9.75GHzとすることができる。2つの電磁波が提供され、それらの間に約1%の離調を有することができる。10原子単位の質量を伴うイオン(イオンは1電子が欠落しているものと想定する)に対して0.1V/mの電位降下を提供するために、ビームパイプ504内のビーティング電磁波の電界強度は、例えば約30KV/mとすることができる。この電界は、約300Wの電力で電磁波を発生させることによって提供可能である。
[00243] 一般に、電界強度と結果として生じる電位との間の関係は、以下の式を使用して決定可能であり、
上式で、Urfは電位であり、Zはイオンの電荷であり、Aは原子質量単位でのイオンの質量であり、MuC2は原子質量単位のエネルギー等量であり(931.5MeV)、
は2πで割った電磁波の波長であり、eは電子の電荷であり、Eは電磁波内の電界振動の振幅である。
[00244] 制御ユニット(図示せず)は、RFエミッタ500を駆動するRF信号を提供するRF源を制御するために使用可能である。制御ユニットは、ビームパイプ504内に望ましい電磁波(例えばエバネセント波又はビーティング波)を提供するようにRF信号を調整するために使用可能である。センサは電磁波の強度を監視するために使用可能である。
[00245] 上述の例において、エミッタ500によって提供される電磁波は、抽出電極508に向かってイオンをプッシュする電位を提供する。追加又は代替として、イオンは電磁波によってビーム経路内のある場所にプッシュされ得、ビーム経路内で電子ビームは、その場所に入ったイオンが不安定になり、ビームパイプ504の壁に向かってキックされるように集束される(例えば、クリアリングギャップ及び/又はクリアリングギャップとビーム変調との組み合わせの効果によるか、あるいは、質量対電荷比を減少させる電子ビームによってイオンからストリップされる追加の電子による)。
[00246] 自由電子レーザFELは、図1のリソグラフィシステムLSの一部を形成することが可能であり、自由電子レーザによって生成される放射は最終的に、1つ以上のリソグラフィ装置LA1〜LA20内の1つ以上の基板によって受け取られる。これらの基板は、パターンが付与された放射を受け取るように配置されたターゲット部分を備えるものと見なすことができる。
[00247] 「EUV放射」という用語は、4〜20nmの範囲内、例えば13〜14nmの範囲内の波長を有する電磁放射を包含するものと見なすことができる。EUV放射は10nm未満、例えば6.7nm又は6.8nmなどの4〜10nmの範囲内の波長を有することができる。
[00248] 以上、本発明の特定の実施形態について説明してきたが、本発明は説明した以外でも実践可能であることを理解されよう。上記の説明は限定的でなく例示的であることが意図されている。したがって当業者であれば、以下に示す特許請求の範囲を逸脱することなく、説明した本発明を修正可能であることが明らかとなろう。