JP6686884B2 - 積層体 - Google Patents

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Description

本発明は積層体、詳しくは反射防止部材に好適な積層体に関する。
反射防止部材は一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)や液晶表示装置(LCD)のような画像表示装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するようにディスプレイの最表面に配置される。特に最近では、指で操作する電子機器が増加しており、例えば、スマートフォン・タッチパネル、キーボード、家電製品のリモコン等の各種ディスプレイにおいて、画像のコントラストを高く見せるため、透明性の高い反射防止部材(アンチリフレクションフィルム)が用いられている。また、ピアノブラックと呼ばれる、黒色で光沢感のある筐体用の部材において、その黒色を強調する目的で、その表面に反射防止部材が使用される場合がある。
一般的な反射防止部材の構成として、例えば、以下のものが挙げられる。
特許文献1には、優れた反射防止効果を有し、かつ優れた耐摩擦性を有する光学物品として、屈折率の高い物質からなる高屈折率層と屈折率の低い物質からなる低屈折率層との積層構造から成る反射防止部材が開示されている。
また、特許文献2には、より広い波長領域の反射率を低減し、かつ可視光域での着色を低減する構造として、高屈折率層と低屈折率層から成る複数層の被膜をフィルムなどの支持基材の表面に作製する、多層積層構造が記載されている。
このような反射防止部材では指紋汚れの付着が課題となっている。具体的には、物の表面に人の指が触れることによって指紋が付着し、清潔感を喪失する、すなわち、指紋が認識されて、見た目が汚れたような不快な印象を与えることが問題となっている。また、視認性が悪化する、すなわち指紋が付着している箇所と付着していない箇所の反射率の違いなどにより、表示画像、表示信号もしくは反射像などが不鮮明となることが問題となっている。
反射防止部材への指紋汚れの付着に対する技術として、例えば、以下の技術が挙げられる。
特許文献3には、フッ素含有紫外線硬化樹脂の撥水撥油性による指紋付着量の低減効果を利用した低屈折率層用樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献4には、親油性表面と凹凸形状および低屈折率の中空シリカにより指紋を目立ちにくくすることを目的とした耐指紋性塗膜形成品が開示されている。
一方、特許文献5には、視認性抑制を目的として屈折率の異なる層から成る積層構造に着目した技術として、透明プラスチックフィルムからなる基材上に、高屈折率層、低屈折率層および透明導電性薄膜層をこの順に積層した構成を有し、高屈折率層の屈折率が1.70〜2.50、膜厚が4〜20nmの範囲にあり、低屈折率層の屈折率が1.30〜1.60、膜厚が20〜50nmの範囲であることを特徴とする透明導電性積層フィルムによる、透明電極シートの電極パターン視認抑制フィルム(インデックスマッチングフィルム)が開示されている。
特開2006−035624号公報 特開平7−5452号公報 特開2014−142444号公報 特開2011−068000号公報 特開2010−015861号公報
特許文献1および2に記載の技術は、表面層の屈折率および厚みの調整により設計された積層構造により、優れた反射防止効果が得られる技術である。この技術について本発明者らが検討したところ、付着した指紋が非常に目立ちやすいことを確認した。これは指紋を構成する皮脂が積層体表面に新たな膜を形成することで、本来の光学設計にズレが生じることによるものである。結果として指紋付着の有無により「反射率」や「反射光の色味」に変化が生じるため、指紋の形状やこれを拭った部分が変色したように視認され、課題解決には至らない。特許文献1および2に記載の技術は、部材の反射率を落とすことに特化した技術であるが、汚れの付着により光学特性が変化するという着想に至っていない。一方で、単に汚れ付着前の反射率を極小とすることでは、指紋付着部分との反射率差を増加させ、かえって指紋が視認されやすくなるため、その構成範囲およびそこから類推される技術範囲においては、十分な指紋視認性の低減を達成することが出来ない。
特許文献3に記載の技術は、表面に撥油性の層を設けることで、指紋付着量を低減させることを目的とした技術である。この技術について本発明者らが検討したところ、確かに付着する皮脂の量を軽減することは可能であるものの、付着を完全になくすことはできなかった。また、弾かれた皮脂が表面で球状の滴を形成するため、少量の付着でも目立ちやすいことを確認した。加えて特許文献1に示される低屈折率層用樹脂組成物では十分な透明性が得られなかった。特許文献3に記載の技術には、撥油表面に付着する汚れ量の見積りや、数10nmの皮脂層の存在による光学設計の変化についての着想は無く、その構成範囲およびそこから類推される技術範囲においては十分な指紋視認性の低減を達成することが出来ない。
また、特許文献4に記載の技術は、表面の親油化および凹凸形状の付与を利用して指紋を目立ちにくくすることを目的とした技術である。この技術について本発明者らが検討したところ、指紋の付着量が少ない時には、指紋の視認性低減に優れた効果を発揮することを確認した。しかしながら、この技術は、表面が皮脂と馴染みやすくなるため皮脂の付着量が多くなりやすい。そして、そのような多量の汚れに対しては効果が十分に発揮されないことを確認した。すなわち、タッチパネルや筐体など指が頻繁に触れる用途には不向きである。特許文献4に記載の技術についても同様に、親油表面に付着する汚れ量の見積りや、数10nmの皮脂層の存在による光学設計の変化についての着想は無く、その規定する構成範囲およびそこから類推される技術範囲においては十分な指紋視認性の低減を達成することが出来ない。
一方、特許文献5に記載の技術は、積層構造の光学設計により、高屈折率の金属電極が蒸着された際に、この電極を視認しづらくする屈折率調整層が挙げられている。この屈折率調整層について本発明者らが検討したところ、可視光領域での反射率が高く反射防止部材とは成り得ないこと、指紋付着部分の反射率が低下するため、反射率差が生じることを確認した。このような屈折率調整層は、素子内部に位置する前提で設計されているため、指紋付着のような汚染に対する設計にはなっておらず、また反射防止性との両立も困難である。特許文献5に記載の技術では、高反射率である透明導電シートの電極の視認を抑制するという目的と、本発明が目標とする低反射率の積層体を提供するという目的が相反するため、単純な組み合わせによって、本発明の積層体を得ることは出来ない。
上記を鑑みて本発明が解決しようとする課題は、低反射率で透明性が高く、かつ指紋の汚れが目立ちにくい、すなわち、指紋の視認性低減に優れた積層体を提供することにある。具体的には、低反射率で透明性が高く、かつ指紋の汚れが目立たない反射防止部材、あるいは低反射率で透明性が高く、かつ指紋の汚れが目立たず、好ましくは耐擦傷性に優れたハードコート部材として好適な積層体を提供することにある。
上記課題を解決するために本発明者らは、まず、反射防止部材ではない部材、および反射防止部材に指紋が付着した場合における指紋の視認性のメカニズムについて、以下のとおり、検討した。
反射防止部材ではない部材に指紋が付着する際、表面に皮脂の薄膜が形成されるため、付着前後で光学設計が変化する。指紋を構成する成分は主に、オレイン酸に代表される脂肪酸を主成分とする油性の液体成分、塩を含んだ水分、および埃や塵、角質などの固形分である。本発明者らが確認したところ、これら指紋の成分は、個人や環境により多少のばらつきはあるものの、概ねガラスやアクリル樹脂などの部材の屈折率よりもやや低い程度の屈折率を有している。これらの部材の表面に指紋が付着しても、少量であれば比較的視認されにくい。しかし、指紋の付着量が多くなった場合には、油滴や固形分が光を散乱するため、指紋が目立ちやすくなる。このような場合には乾いた布などで部材表面を拭うこと(拭き取り)により指紋が視認されにくい状態にすることが出来る。
一方、反射防止部材の場合には、屈折率の異なる各層の厚みが光の波長の4分の1程度に設計されているため、ごく少量、具体的には数10nm程度の皮脂の付着であっても、光学設計に異常をきたし、変色(すなわち最低反射率となる波長の変化による、反射光の色味の変化)や反射防止効果そのものの喪失につながる。また、仮に部材表面の屈折率を、付着する皮脂汚れの値に近づけたとしても、厚みの変化による設計のズレを回避することは不可能である。
さらに拭き取りについても課題が存在する。本発明者らが検討したところ、乾いた布材による拭き取りの実態は、表面に付着した皮脂を塗り伸ばし、均一な薄膜にすることであり、皮脂の付着量を一定量以下に削減することが出来ないことを確認している。
本発明者らはこれらの課題を、部材表面に形成される汚れの被膜を光学設計の中に組み込むこと、および、汚れの層の有無に依らず可視光領域の光学特性が変化しづらい光学設計を有する積層構造を設計すること、により解決した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1) 支持基材の少なくとも片面に表面層を有する積層体であり、前記積層体の表面層側の絶対反射率R1と表面層の上に更に、屈折率1.45、厚み50nmの、光学的厚み(層の厚みに層の屈折率を乗じた値)が72.5nmの層Lを設けた際の絶対反射率R2が以下の条件(A)から(C)を満たし、
前記表面層が屈折率の異なる2つ以上の層を含み、前記表面層の最表面から第2層目の層が以下の条件(F)および(G)を満たす無機粒子を含む、積層体。
(A) −0.5% ≦ R1(435.8)−R2(435.8) ≦ 1.0%
(B) −0.5% ≦ R1(546.1)−R2(546.1) ≦ 1.0%
(C) −0.5% ≦ R1(700.0)−R2(700.0) ≦ 1.0%
R1(X):積層体の表面層側の波長Xnmにおける絶対反射率R1
R2(X):表面層の上に更に、屈折率1.45、厚み50nmの、光学的厚み(層の厚みに層の屈折率を乗じた値)が72.5nmの層Lを設けた際の、波長Xnmにおける絶対反射率R2
(F)数平均粒子径が5nm以上80nm以下
(G)数珠状に連結したおよび/または分岐した無機粒子
(2) 前記絶対反射率R1が以下の条件を満たす、(1)に記載の積層体。
(D) 1.0% ≦ R1ave ≦ 3.0%
(E) −0.2% ≦ R1slope ≦ 0.2%
R1ave:絶対反射率R1の波長380nmから780nmにおける平均値
R1slope:絶対反射率R1を波長380nmから780nmにおいて直線近似した際の波長100nmあたりの絶対反射率R1の変化量
(3)記表面層の最表面から第1層目の層の光学的厚み(層の厚みに層の屈折率を乗じた値)が40nm以上100nm以下である、(1)または(2)に記載の積層体。
(4) 前記表面層の最表面の原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される2乗平均粗さを超えるピーク数が25μmあたり500個以上1500個以下であることを特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の積層体。
記表面層の最表面から第2層目の層の屈折率が1.45以上1.55以下である、(1)から()のいずれかに記載の積層体。
) 前記表面層が屈折率の異なる3つ以上の層を含む、(1)から()のいずれかに記載の積層体。
) 前記表面層の最表面から第2層目の層より支持基材側に光学的厚み(層の厚みに層の屈折率を乗じた値)が2μm以上5μm以下の層を有する、()に記載の積層体。
本発明によれば、低反射率で透明性が高く、かつ指紋の汚れが目立ちにくい積層体を提供することができる。本発明の積層体は、反射防止部材やハードコート部材として好適であり、特に樹脂基材上に形成された反射防止フィルムやハードコートフィルムとして好適である。本発明の積層体を用いることにより、特に低反射率で透明性が高く、かつ指紋の汚れが目立たず、好ましくは耐擦傷性に優れた反射防止フィルムを提供することができる。
本発明の積層体の一様態を表す断面模式図である。 本発明の積層体がその他の層を含む場合の断面模式図である。 多層スライドダイコートの模式図である。 多層スロットダイコートの模式図である。 ウェット−オン−ウェットコートの模式図である。
以下、本発明の実施の形態について具体的に述べる。
本発明の積層体は、支持基材の少なくとも片面に表面層を有する積層体であり、前記積層体の表面層側の絶対反射率R1と表面層の上に更に、屈折率1.45、厚み50nmの、光学的厚み(層の厚みに層の屈折率を乗じた値)72.5nmの層Lを設けた際の絶対反射率R2が以下の条件を満たす。
(A)−0.5% ≦R1(435.8)−R2(435.8) ≦1.0%
(B)−0.5% ≦R1(546.1)−R2(546.1) ≦1.0%
(C)−0.5% ≦R1(700.0)−R2(700.0) ≦1.0%
R1(X):積層体の表面層側の波長Xnmにおける絶対反射率R1
R2(X):表面層の上に更に、屈折率1.45、厚み50nmの、光学的厚み(層の厚みに層の屈折率を乗じた値)72.5nmの層Lを設けた際の、波長Xnmにおける絶対反射率R2。
なお、以下では「屈折率1.45、厚み50nmの、光学的厚み(層の厚みに層の屈折率を乗じた値)72.5nmの層L」を単に「光学的厚み72.5nmの層L」ということもある。
<積層体の定義および光学特性、表面特性、機械特性>
まず、本発明の積層体の定義、光学的厚み、および本発明の積層体の光学特性、表面特性、機械特性について説明する。
[積層体、表面層]
本発明において、積層体とは、支持基材の少なくとも片側の表面に一以上の層が形成された一連の部材を表す。表面層とは、支持基材の表面に形成された一以上の層を表す。なお、支持基材については後述する
ここで、本発明における層とは、前記積層体の表面から厚み方向(平面状の場合)または内部方向(3次元形状の場合)に向かい、厚み方向または内部方向に隣接する部位と元素組成、含有物(粒子等)の形状、物理特性が不連続な境界面を有することにより区別でき、有限の厚さを有する部位を指す。より具体的には、前記積層体を表面から厚み方向に各種組成/元素分析装置(IR、XPS、XRF、EDAX、SIMS等)、電子顕微鏡(透過型、走査型)または光学顕微鏡にて断面観察した際、前記不連続な境界面により区別される。
[光学的厚み]
本発明において、「光学的厚み72.5nmの層L」は、指紋の付着により形成される汚れの被膜層に相当する光学設計値を有する層である。
本発明における光学的厚みとは、一般に光学的距離もしくは光路長などと表現される物理量と同義であり、具体的には層の厚みに層の屈折率を乗じた値として定義される。光学干渉の計算において、光の位相差を考える際には高い屈折率の材質ほど長く、低い屈折率の材質ほど短く光路を算出する必要がある。そのような屈折率の違いを考慮に入れた層の厚みが光学的厚みであり、光学的厚みが等しいということは光学的に等価な層であることを意味する。
また本発明において、絶対反射率R2の測定のために層Lを設ける場合、その光学的厚みが精確に72.5nmでなくても、積層体の効果を見積もることは可能である。具体的には層Lの光学的厚みが72.5nmよりも高い場合には、表面に形成される汚れの被膜がより分厚いことに相当するため、本発明と同等の効果が得られると推測される。反対に層Lの光学的厚みが72.5nmよりも低い場合には、表面に形成される汚れの被膜がより薄いことに相当するため、効果が不十分となる場合がある。
本発明において、絶対反射率R2の測定のために設ける「光学的厚み72.5nmの層L」を得るための層の屈折率と層の厚みの組み合わせは、材料入手性および層形成の容易さの点で、屈折率1.45、厚み50nmの構成である。光学的厚み72.5nmの層Lの具体的な作製方法および評価方法については後述する。
[絶対反射率 R1、R2]
一般に屈折率の異なる、複数の層から成る積層体において、その絶対反射率は、「層界面での反射」および「各層界面での反射光の干渉」の2つの物理現象により決定される。屈折率差を有する2つの層の界面での反射については、「フレネルの式」と呼ばれる関係式により「各層の屈折率」から反射率を見積もることが可能である。一方、反射光同士の干渉については、「各層の厚み」および「屈折率」から算出される光路差および位相差を基に、いわゆる「薄膜干渉」の計算モデルにより見積もることが可能である。すなわち「絶対反射率」の目標値に対して、光学シミュレーションにより、積層体の厚みおよび屈折率を設計することが可能となる。
具体的に本発明の積層体は以下の条件を満たす。
(A) −0.5% ≦ R1(435.8)−R2(435.8) ≦ 1.0%
(B) −0.5% ≦ R1(546.1)−R2(546.1) ≦ 1.0%
(C) −0.5% ≦ R1(700.0)−R2(700.0) ≦ 1.0%
R1(X):積層体の表面層側の波長Xnmにおける絶対反射率R1
R2(X):表面層の上に更に光学的厚み72.5nmの層Lを設けた際の、波長Xnmにおける絶対反射率R2。
ここで、絶対反射率とは、入射光強度に対する反射光強度の比率を示す値であり、本発明においてはRnもしくはRn(X)と記述する。また、nは1または2の自然数であり、n=1の場合は積層体の表面層側の絶対反射率を、n=2の場合は表面層の上に更に光学的厚み72.5nmの層Lを設けた際の絶対反射率を表す。また、Rn(X)は波長Xnmの光を入射した際の絶対反射率を表す。絶対反射率の具体的な測定方法については後述する。
前記(A)〜(C)における435.8nm、546.1nmおよび700.0nmの波長は、それぞれCIE標準表色系のうちRGB表色系において定められる三原色の波長に相当する。したがって、前記(A)〜(C)は、青、緑、赤のいずれの反射光においても、そのR1とR2の差が特定の範囲となることを意味する。
前記(A)〜(C)のいずれかにおいて、R1−R2が1.0%よりも大きい場合には、その波長における指紋付着後の絶対反射率が低下することにより、指紋汚れが沈み込むように暗く強調され、視認されやすくなる場合がある。反対に−0.5%よりも小さい場合には指紋付着後の絶対反射率が上昇し、指紋汚れが明るく強調され視認されやすくなる場合がある。なお、指紋付着後の絶対反射率が低くなる場合の方が、同等の絶対反射率差が生じても目立ちにくいため、R1−R2の値は正の値に広い範囲を有する。
[平均反射率 Rave]
本発明の積層体において、R1の平均反射率R1aveは以下の条件を満たすことが好ましい。
(D) 1.0% ≦ R1ave ≦ 3.0%
R1ave:絶対反射率R1の波長380nmから780nmにおける平均値
ここで、平均反射率とは波長380nmから780nmの可視光領域における絶対反射率Rの平均値を意味する値であり、本発明ではRaveと記述する。また、いずれの層からの反射であるかを区別する際には、前述の絶対反射率と同様の自然数nを付与する。平均反射率の測定、および算出方法については後述する。
前記(D)において、平均反射率R1aveが3.0%よりも大きい場合には、十分な反射防止性を得られない場合がある。一方、平均反射率R1aveが1.0%よりも小さい場合には反射防止性自体には問題ないが、現実的に存在しうる材料の屈折率範囲では前述の条件(A)〜(C)を満たす構成をとることが困難となり、指紋汚れが目立ちやすくなる場合がある。
[反射率傾斜 Rslope]
本発明の積層体において、反射率傾斜 R1slopeは以下の条件を満たすことが好ましい。
(E) −0.2% ≦ R1slope ≦ 0.2%
R1slope:絶対反射率R1を波長380nmから780nmにおいて直線近似した際の波長100nmあたりの絶対反射率R1の変化量
ここで、反射率傾斜とは波長380nmから780nmの可視光領域における絶対反射率Rの変化率を意味する数値であり、線形近似における傾きの値に相当する。本発明では反射率傾斜をRslopeと記述し、いずれの層からの反射であるかを区別する際には、前述の絶対反射率と同様の自然数nを付与する。反射率傾斜の算出方法については後述する。
反射率傾斜が−0.2%より小さい、もしくは0.2%より大きい場合には、前記(A)〜(C)の1つ以上の波長において、絶対反射率を条件の範囲内に収めることが困難となり、指紋汚れが目立ちやすくなる場合がある。
[積層体の透明性]
本発明の積層体が良好な性質を示すためには、透明性が高いことが好ましい。透明性が低いと例えば画像表示装置として用いた場合、画像彩度の低下などによる画質低下が生じる場合がある。透明性の評価にはヘイズ、および全光線透過率を用いることができる。
ヘイズはJIS K 7136(2000)に規定された透明性材料の濁りの指標である。ヘイズは小さいほど透明性が高いことを示す。一方でヘイズが大きいということは積層体の表面、もしくは界面の形状が粗く、光を散乱しやすい形状が形成されていることを示唆している。
本発明の積層体のヘイズは、1.5%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることがさらに好ましい。ヘイズの値が小さいほど透明性の点で良好であるものの、0%とすることは困難であり、本発明の積層体における現実的な下限値は0.01%程度となる。また、ヘイズが1.5%より大きいと、絶対反射率の値は見かけでは低下するものの、散乱光量が増加するため画像の視認性が低下する場合がある。
全光線透過率は、JIS K 7361−1(1997)に規定された透明性材料の光透過性の指標であり、高いほど透明性が高いことを示す。
本発明の積層体の全光線透過率は、好ましくは88%以上であり、より好ましくは91%以上であり、さらに好ましくは93%以上である。全光線透過率の値が大きいほど透明性が向上するが、本発明の積層体における現実的な上限値は96%程度である。また、全光線透過率が88%より小さいと、画像が暗くなる場合がある。
[積層体の表面特性]
本発明の積層体は表面に微細な凹凸を有する層があることが好ましく、特に特定範囲の凹凸が単位面積当たりに存在する個数には好ましい範囲があることを見出した。この理由は明確ではないが、微細な凹凸構造を導入することにより付着した指紋の成分が作る油滴を微細化し、光散乱および吸収を低減することにより付着した指紋が視認されにくくなるためと推定している。具体的には、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される2乗平均粗さを超えるピーク数が、25μmあたり500個以上1500個以下であることが好ましく、800個以上1200個以下であることがより好ましい。この範囲を外れると、指紋を構成する油滴の大きさを微細化する効果が不十分になる場合がある。
ここで、前記2乗平均粗さとは、平均線から測定曲線までの偏差の2乗を平均した値の平方根で、粗さ曲線から求めるものを指し、ピークとは平均線を基準に測定曲線までの距離が前記2乗平均粗さを超えるものを指す。なお、一般的にはJIS R1683(2007年版)に基づくAFMによる算術平均粗さなどが表面形状の指標として用いられるが、算術平均粗さは表面全域の平均的な深さ情報を表す数値であり、本発明の積層体が有するような局所的な凹凸構造の形状や数を評価することはできない。
[積層体の機械特性]
本発明の積層体は、最表面に配置される部材であることから、後述の鉛筆硬度試験法による表面硬度測定において、HB以上であることが好ましく、H以上であることがより好ましく、2H以上であることがさらに好ましい。鉛筆硬度がHBに満たない場合には、表面に凹みなどの欠点が発生しやすくなり、結果として画像の視認性や積層体の品位が低下する場合がある。
また、本発明の積層体は、最表面に配置される部材であることから、後述の耐擦傷性試験において、3点以上であることが好ましく、4点以上であることがより好ましく、5点であることがさらに好ましい。耐擦傷性試験が3点に満たない場合には、表面に擦り傷が発生しやすくなり、結果として画像の視認性や積層体の品位が低下する場合がある。
続いて、本発明の積層体の各層の構成について説明する。
図1に本発明の積層体の好ましい一態様を示す。
本態様の積層体(1)は、支持基材(2)の片側に表面層(3)が積層されている。表面層(3)は、屈折率の異なる3つの層を含む。表面層(3)の最表面から第1層目の層(4)および最表面から第2層目の層(5)には、後述のとおり、それぞれ好ましい光学設計の範囲が存在する。また、表面層(3)の最表面から第2層目の層より支持基材側に後述の特定の光学厚みで設計された層(6)を有する。さらに表面層(3)の最も支持基材に近い側には、表面層と支持基材の密着性を向上する層(7)が含まれる。
また、本発明の積層体の層数には特に上限はなく、図2に示されるように、1以上の追加の層(8)を含む態様であってもよい。
本発明の積層体において、表面層は屈折率の異なる2つ以上の層を含み、3つ以上の層を含むことが好ましい。屈折率の異なる層の数が2つ以下の場合には、前述の条件(E)を満たすことが難しくなり、結果として指紋汚れが目立ちやすくなる場合がある。屈折率の異なる層の数の上限については特に限定は無いが、生産性およびコストの観点から、好ましくは10層以下、より好ましくは5層以下である。
本発明の積層体において、最表面から第1層目の層の光学的厚みは40nm以上100nm以下であることが好ましく、60nm以上75nm以下であることがより好ましい。この層は積層体の最表面に位置する層であり、絶対反射率の値に寄与する層である。最表面から第1層目の層の光学的厚みが100nmを超えると、前述の条件(D)におけるR1aveを1.0%以上とすること、もしくは条件(E)を満たすことが困難となるため、結果として指紋汚れが目立ちやすくなる場合がある。一方、最表面から第1層目の層の光学的厚みが40nmに満たない場合には、前述の条件(D)におけるR1aveが3.0%を超える場合があり、結果として十分な反射防止性を得られない場合がある。
本発明の積層体において、表面層の最表面から第2層目の層の屈折率は1.45以上1.55以下であることが好ましい。ここで屈折率とは、光が空気中からある物質中に進む時、その界面で進行方向の角度を変える割合のことであり、JIS K 7142(1996)に規定されている方法により測定することができる。最表面から第2層目の層は後述の緩衝層と最表面から第1層目の層の間に位置する層であり、上下の層を調整する中間層として機能する。最表面から第2層目の層の屈折率が1.45未満の場合には前述の条件(D)におけるR1aveを1.0%以上とすること、もしくは条件(E)を満たすことが困難となるため、結果として指紋汚れが目立ちやすくなる場合がある。一方、最表面から第2層目の層の屈折率が1.55を超えると前述の条件(D)におけるR1aveが3.0%以上となる場合があり、結果として十分な反射防止性を得られない場合がある。
本発明の積層体は、表面層の最表面から第2層目の層より支持基材側に光学的厚みが2μm以上5μm以下の層を有することが好ましい。この層は、より支持基材側の層の光学的な影響を軽減して光学設計を簡素化できると同時に、塗膜への硬度、耐擦傷性などを付与する、光学的、力学的な緩衝層として機能する。前記緩衝層の光学的厚みが2μmに満たない場合には、光学設計にズレが生じやすくなる場合があり、結果として指紋汚れが目立ちやすくなる場合がある。一方で、前記緩衝層の光学的厚みが5μmを超えると、より表面側の設計のみでは光学設計を合わせこむことが困難となる場合があり、結果として十分な反射防止性を得られない場合がある。
[支持基材]
本発明の積層体は支持基材を有する。
支持基材としては、ガラスなどの無機材料、およびプラスチックフィルムのいずれも使用することができるが、表面層を構成する際の加工性の観点からプラスチックフィルムの方が好ましい。
プラスチックフィルムの材料の例には、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、アセチルプロピオニルセルロース、ニトロセルロース)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスチレン(例、シンジオタクチックポリスチレン)、ポリオレフィン(例、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルペンテン)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレートおよびポリエーテルケトンなどが含まれる。これらのうち、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートが好ましい。
支持基材の全光線透過率は、80〜100%であることが好ましく、86〜100%であることがより好ましい。全光線透過率とは、光を照射した際に試料を透過する光の割合のことであり、前述のとおり、JIS K 7361−1(1997)に従い測定することができる。
支持基材のヘイズは0.01〜2.0%であることが好ましく、0.01〜1.0%であることがより好ましい。ヘイズとは、前述のとおり、JIS K 7136(2000)に規定された透明材料の濁りの指標である。ヘイズは小さいほど透明性が高いことを示す。
支持基材の屈折率は1.40〜1.70であることが好ましい。屈折率は、前述のとおり、JIS K 7142(1996)に規定されている方法により測定することができる。
支持基材は、赤外線吸収剤あるいは紫外線吸収剤を含有してもよい。赤外線吸収剤もしくは紫外線吸収剤を含有する場合のその含有量は、支持基材の全成分100質量%のうち、0.01〜20質量%であることが好ましく、0.05〜10質量%であることがより好ましい。
支持基材は、滑り剤として、不活性無機化合物の粒子を含有してもよい。前記不活性無機化合物の例にはSiO、TiO、BaSO、CaCO、タルクおよびカオリンが含まれる。
支持基材の表面には、各種の表面処理を施すことも可能である。前記表面処理の例には、薬品処理、機械的処理、コロナ放電処理、火焔処理、紫外線照射処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理、混酸処理およびオゾン酸化処理が含まれる。これらの中でもグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ放電処理および火焔処理が好ましく、グロー放電処理、コロナ放電処理と紫外線処理がより好ましい。
支持基材は、易接着層、ハードコート層、アンチブロッキング層、帯電防止層、紫外線吸収層、オリゴマーブロック層などの層(これらを機能性層と称する)を有してもよい。なお、本発明の積層体において、これらの機能性層が上下の層との間に明確な界面および屈折率差を有する場合には、製造の工程において支持基材に由来する層であっても、支持基材の一部としてではなく表面層の一層として扱う。
<積層体を製造する方法>
続いて本発明の積層体を製造する好ましい方法について説明する。
本発明において、表面層を形成する方法としては、例えば蒸着、スパッタリング、CVDなどの気相処理、塗工、含浸、めっき、ケン化などの液相処理、転写、貼合などの固相処理、およびこれら処理の組み合わせによって支持基材の表面に形成する方法が挙げられる。これらのうち、好ましいのは蒸着による気相処理、塗工による液相処理であり、より好ましいのは、塗工による液相処理の中でも、支持基材の少なくとも片面に、後述する好ましい塗料組成物を、逐次または同時に塗布−乾燥−硬化することにより形成する方法である。
ここで、「逐次に塗布する」もしくは「逐次塗布」とは、1種類の塗料組成物を塗布−乾燥−硬化後、次いで種類の異なる塗料組成物を、塗布−乾燥−硬化することにより表面層を形成することを意図している。「逐次塗布」において形成される表面層は、用いる塗料組成物の種類、数を適宜選択することにより、屈折率の大小を制御することができる。「逐次塗布」により形成される表面層は、通常、複数の界面を有する「多層構造」となる。
また、「同時塗布する」もしくは「同時塗布」とは、塗布工程において支持基材上に2種類以上の液膜を塗布後、乾燥、硬化することを意図している。「同時塗布」において形成される表面層は、明確な界面を有さない「傾斜構造」を形成する場合があるが光学的厚みを同等に設計するとこで「多層構造」と光学的に等価な構造を製造することが可能である。
本発明の積層体の表面層を形成する方法において、塗料組成物を逐次に塗布する場合には、ディップコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法(米国特許第2681294号明細書)などにより支持基材等に塗布することにより表面層を形成することが好ましい
また、2種類以上の塗料組成物を同時塗布する場合には、図3のように多層スライドダイ(9)を用い、塗布前の液膜状態で順に積層した後、積層した液膜を塗布する「多層スライドダイコート」や、図4のように多層スロットダイ(10)を用い、基材上に塗布と同時に積層する「多層スロットダイコート」、図5のように単層スロットダイ(11)を複数用い、支持基材上に1層の液膜を形成後、未乾燥の状態でもう1層を積層させる「ウェット−オン−ウェットコート」(図5)などにより支持基材等に塗布することにより表面層を形成することが好ましい。
次いで、支持基材等の上に塗布された液膜を乾燥する。得られる積層体中から完全に溶媒を除去するために、乾燥工程では液膜の加熱を伴うことが好ましい。
乾燥方法については、伝熱乾燥(高熱物体への密着)、対流伝熱(熱風)、輻射伝熱(赤外線)、その他(マイクロ波、誘導加熱)などが挙げられる。これらのうち、本発明においては、幅方向でも精密に乾燥速度を均一にする必要があることから、対流伝熱、または輻射伝熱が好ましい。
さらに、熱または活性エネルギー線を照射することによるさらなる硬化操作(硬化工程)を行ってもよい。
硬化工程において、後述の塗料組成物Aおよび塗料組成物Bを用い、熱で硬化する場合には、室温以上200℃以下であることが好ましく、硬化反応の活性化エネルギーの観点から、80℃以上200℃以下がより好ましい。
活性エネルギー線により硬化する場合には、汎用性の点から電子線(EB線)および/または紫外線(UV線)を用いることが好ましい。
紫外線により硬化する場合は、最表面については酸素阻害を防ぐことができることから酸素濃度ができるだけ低い方が好ましく、窒素雰囲気下(窒素パージ)で硬化する方がより好ましい。酸素濃度が高い場合には、最表面の硬化が阻害され、表面の硬化が不十分となる場合がある。
紫外線を照射する際に用いる紫外線ランプの種類としては、例えば、放電ランプ方式、フラッシュ方式、レーザー方式、無電極ランプ方式等が挙げられる。放電ランプ方式である高圧水銀灯を用いて紫外線硬化させる場合、紫外線の照度が100〜3,000mW/cm、好ましくは200〜2,000mW/cm、さらに好ましくは300〜1,500mW/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが好ましい。また、紫外線の積算光量が100〜3,000mJ/cm、好ましくは200〜2,000mJ/cm、さらに好ましくは300〜1,500mJ/cmとなる条件で紫外線照射を行うことが好ましい。ここで、紫外線の照度とは、単位面積当たりに受ける照射強度で、ランプ出力、発光スペクトル効率、発光バルブの直径、反射鏡の設計および被照射物との光源距離によって変化する。しかし、紫外線の照度は搬送スピードによっては変化しない。また、紫外線積算光量とは単位面積当たりに受ける照射エネルギーで、その表面に到達するフォトンの総量である。積算光量は、光源下を通過する搬送スピードに反比例し、照射回数とランプ灯数に比例する。
<塗料組成物中の成分>
本発明の積層体を製造する方法に好ましく用いられる塗料組成物について説明する。
本発明の積層体の表面層は、架橋性材料、低屈折率材料、高屈折率材料、防汚性材料、耐傷性材料のうち少なくとも1つの材料および有機溶剤を含む、少なくとも1つ以上の塗料組成物の塗工の組み合わせにより製造されることが好ましい。これらの塗料組成物にはさらに、界面活性剤、増粘剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて適宜含有させてもよい。
[架橋性材料]
架橋性材料としては特に限定するものではないが、製造性の観点より、熱および/または活性エネルギー線などにより硬化可能な架橋性材料であることが好ましい。架橋性材料は一種類のみを用いてもよいし、二種類以上を混合して用いてもよい。また、粒子を膜中に保持する観点より、分子中に反応性部位を有することが好ましい。前記反応性部位の好適な例として、アルコキシシリル基、シラノール基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロキシ基、およびメタクリロキシ基からなる群から選ばれた基が挙げられる。前記架橋性材料として、多官能(メタ)アクリレートを用いることが特に好ましい。
[低屈折率材料]
本発明の表面層の最表面から第1層目の層は、その他の層と比較して、より屈折率の低い材料を含むことが好ましい。より屈折率が低い材料の例として、無機粒子、樹脂材料が挙げられる。
前記無機粒子としては、Si,Na,K,Ca,MgおよびAlから選択される半金属元素または金属元素の酸化物、窒化物、ホウ素化物、フッ素化物、炭酸塩、硫酸塩が好ましく、シリカ粒子(SiO)、アルカリ金属フッ化物類(NaF,KF,NaAlFなど)、およびアルカリ土類金属フッ化物(CaF、MgFなど)がより好ましく、耐久性、屈折率、コストなどの点からシリカ粒子がさらに好ましい。
前記樹脂材料としてフッ素系樹脂を使用する場合には、屈折率が低いトリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基とエーテル結合とを主骨格として構成されるフッ素系樹脂であることが好ましい。また、フッ素系樹脂を使用することは後述の防汚性の観点からも好ましい。
[高屈折率材料]
本発明の表面層の最表面から第2層目の層は、最表面から第1層目の層と比較して、より屈折率の高い材料を含むことが好ましい。屈折率の高い材料の例として、前記低屈折率材料として用いた無機粒子、樹脂材料より屈折率の高い無機粒子、樹脂材料が挙げられる。
高屈折率材料として無機粒子を使用する場合には、前記低屈折率材料のシリカ粒子よりも屈折率が高い無機粒子であることが特に好ましい。このように屈折率が高い無機粒子として、屈折率が1.55〜2.80の無機化合物が好ましく用いられる。前記無機化合物の具体例としては、アンチモン酸化物、アンチモン含有酸化亜鉛、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、リン含有酸化スズ(PTO)、ガリウム含有酸化亜鉛(GZO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、および/または酸化チタン(TiO)が挙げられる。これらのうち、特に屈折率が高い酸化チタン、酸化ジルコニウムが好ましい。また、高屈折材料として樹脂材料を使用する場合には、屈折率が高い、シクロオレフィン、カーボネート、フルオレンなどの構造を有する化合物を用いることが好ましい。
無機粒子の数平均粒子径は5nm以上80nm以下が好ましい。無機粒子の数平均粒子径が5nmよりも小さくなると、凹凸を形成する能力が不十分になる場合があり、80nmよりも大きくなると光沢感が低下する場合がある。
さらに、無機粒子の形態は特に限定するものではないが、無機粒子が数珠状に連結(複数の粒子が連鎖状につながった形状)した長鎖の構造を有するもの、または、連結した無機粒子が分岐したものや屈曲したものが好ましい。以降これらを数珠状に連結したおよび/または分岐した無機粒子と呼ぶ。
前記数珠状に連結したおよび/または分岐した無機粒子は、一次粒子を2価以上の金属イオンを介在させ粒子−粒子間を結合させたもので、少なくとも3個以上、好ましくは5個以上、更に好ましくは7個以上連結したものをいう。前記数珠状に連結したおよび/または分岐した無機粒子の連結、分岐、屈曲状態は走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて確認することができる。
本発明の特に好ましい表面形状を得るためには、前記数珠状に連結したおよび/または分岐した無機粒子がバインダー原料の良溶媒中で安定に分散するのに必要な表面修飾がなされていることが特に好ましい。例えば、バインダー原料としてアクリル系モノマー、オリゴマーを使用する場合には、表面修飾としては炭素数1〜5以内のアルキル基、アルケニル基、ビニル基、(メタ)アクリル基などが必要最低限、表面に導入されていることが好ましい。これを満たす市販品としては、例えば、日産化学工業株式会社製オルガノシリカゾル、MEK−ST−UP(MEK分散体)がある。
[防汚性材料]
本発明の積層体の最表面から第1層目の層に防汚性材料を用いることは、指紋などの汚れによる汚染をより低減することができるため好ましい。防汚性材料としては、フッ素系樹脂に代表される撥油型とシリコーン樹脂に代表される親油型が挙げられるが、本発明においては積層体表面に形成される汚れの層の厚みを低減させる効果を有する撥油型の防汚性材料を用いることが好ましい。
より好ましい防汚性材料としては、フッ素セグメントとシリコーンセグメントが共重合された構造を有する防汚性材料が挙げられる。このような防汚性材料により形成された表面は、フッ素材料による撥油性を維持したまま、付着した指紋を拭き取りにより容易に薄膜化出来るため、本発明の効果が極めて得やすくなる。このような構造を有する防汚性材料の市販品の例としては、DIC株式会社のフッ素系界面改質剤、商品名“メガファック”シリーズなどが挙げられる。
[耐傷性材料]
本発明の積層体が最表面から第2層目の層より支持基材側に有する光学的厚みが2μm以上5μm以下の層は、耐傷性材料を含む層であることが好ましい。それにより、前記層は硬度、耐擦傷性を有することができる。このような層を形成する耐傷性材料は特に限定されず、市販のハードコート材料や傷修復性を有する材料を好適に用いることが出来る。
市販のハードコート材料の例としては、「大成ファインケミカル株式会社;(有機-無機ハイブリッドコート材“STR-SiA”)」や「東亜合成株式会社;(商品名“光硬化型SQシリーズ”)」や「東洋インキ株式会社;(商品名“リオデュラス”(登録商標))」などが挙げられ、これらの材料を好適に使用することが可能である。
また、市販の傷修復性を有する材料の例としては「中国塗料株式会社;(商品名“フォルシード”シリーズ)」や「アイカ工業株式会社;(商品名“アイカアイトロン”シリーズ)」などが挙げられる。
[有機溶剤]
有機溶剤は、特に限定されるものではないが、常圧での沸点が200℃以下の溶媒が、塗工および乾燥時の表面層の平滑性の観点から好ましい。具体的には、水、アルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類、炭化水素類、アミド類、フッ素類等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
<積層体の用途>
以下、本発明の積層体の好ましい用途について説明する。
[反射防止部材]
本発明の積層体は反射防止部材に好適に用いることができる。反射防止部材とは、各種支持基材の少なくとも片面に反射防止機能を有する表面層が形成された部材を指し、基材がプラスチックフィルムの場合には一般に反射防止フィルムと呼ばれる。本発明の積層体を用いた反射防止部材には、さらに、易接着層、防湿層、帯電防止層、シールド層、下塗り層や保護層などを設けてもよい。シールド層は、電磁波や赤外線を遮蔽するために設けられる。
[ハードコート部材]
本発明の積層体はハードコート部材に好適に用いることができる。ハードコート部材を構成する支持基材がプラスチックフィルムの場合には、一般にハードコートフィルムと呼ばれる。本発明の積層体をハードコート部材として使用する際には、平均反射率についての条件(D)におけるR1aveは3.0%以上であってもよく、6.0%以下であればハードコート部材として使用することが可能である。R1aveが6.0%を超える場合には、条件(A)〜(C)を満たす構成を取ることが困難となり、付着した指紋汚れが目立ちやすくなる場合がある。
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
<塗料組成物の調製>
以下、表面層の最表面から第1層目の層を形成するために使用する塗料組成物を、塗料組成物A、第2層目の層を作成するために使用する塗料組成物を塗料組成物B、同じく第3層目、第4層目に対応する塗料組成物を、同様に塗料組成物C、Dと記載する。
[塗料組成物A1]
下記材料を混合し、塗料組成物A1を得た。
無粒子型低屈折率コート剤 X−12−2510A(信越シリコーン株式会社:固形分3質量%)
97 質量部
フッ素系添加剤 RS−75(DIC株式会社:固形分40質量%) 0.23 質量部
イソプロピルアルコール 2.77 質量部
光開始剤 Irgacure184(BASF株式会社:固形分100質量%)
0.09 質量部
[塗料組成物A2]
下記材料を混合し、塗料組成物A2を得た。
粒子含有低屈折率コート剤 X−12−2530N(信越シリコーン株式会社:固形分4質量%)
72.75 質量部
フッ素系添加剤 RS−75(DIC株式会社:固形分40質量%) 0.23 質量部
イソプロピルアルコール 27.03 質量部
[塗料組成物A3]
下記材料を混合し、塗料組成物A3を得た。
無粒子型低屈折率コート剤 X−12−2510A(信越シリコーン株式会社:固形分3質量%)
100 質量部
光開始剤 Irgacure184(BASF株式会社:固形分100質量%)
0.09 質量部
[塗料組成物A4]
下記材料を混合し、塗料組成物A4を得た。
無粒子型低屈折率コート剤 X−12−2510A(信越シリコーン株式会社:固形分3質量%)
97 質量部
シリコーン含有フッ素系添加剤 RS−56(DIC株式会社:固形分40質量%)
0.23 質量部
イソプロピルアルコール 2.77 質量部
光開始剤 Irgacure184(BASF株式会社:固形分100質量%)
0.09 質量部
[塗料組成物A5]
下記材料を混合し、塗料組成物A5を得た。
無粒子型低屈折率コート剤 X−12−2510A(信越シリコーン株式会社:固形分3質量%)
97 質量部
シリコーン含有アクリレート EBECRYL1360(ダイセル・オルネクス株式会社:固形分100質量%) 0.09 質量部
イソプロピルアルコール 2.91 質量部
光開始剤 Irgacure184(BASF株式会社:固形分100質量%)
0.09 質量部
[塗料組成物A6]
下記材料を混合し、塗料組成物A6を得た。
粒子含有低屈折率コート剤 X−12−2530N(信越シリコーン株式会社:固形分4質量%)
72.75 質量部
シリコーン含有フッ素系添加剤 RS−56(DIC株式会社:固形分40質量%)
0.23 質量部
イソプロピルアルコール 27.03 質量部

[塗料組成物A7]
下記材料を混合し、塗料組成物A7を得た。
無粒子型低屈折率コート剤 X−12−2510A(信越シリコーン株式会社:固形分3質量%)
30.0 質量部
バインダー原料 KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社:固形分100質量%)
2.01 質量部
フッ素系添加剤 RS−75(DIC株式会社:固形分40質量%) 0.23 質量部
イソプロピルアルコール 67.77 質量部
光開始剤 Irgacure184(BASF株式会社:固形分100質量%)
0.09 質量部
[塗料組成物A8]
下記材料を混合し、塗料組成物A8を得た。
バインダー原料 KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社:固形分100質量%)
5.82 質量部
フッ素系添加剤 RS−75(DIC株式会社:固形分40質量%) 0.45 質量部
酢酸エチル 93.73 質量部
光開始剤 Irgacure184(BASF株式会社:固形分100質量%)
0.18 質量部
[塗料組成物A9]
下記材料を混合し、塗料組成物A9を得た。
ハードコート塗材 Z−877(アイカ工業株式会社:固形分40質量%)
72.75 質量部
フッ素系添加剤 RS−75(DIC株式会社:固形分40質量%) 2.25 質量部
酢酸エチル 25.0 質量部
[塗料組成物B1]
下記材料を混合し、塗料組成物B1を得た。
バインダー原料 KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社:固形分100質量%)
6.0 質量部
酢酸エチル 94.0 質量部
光開始剤 Irgacure184(BASF株式会社:固形分100質量%)
0.18 質量部
[塗料組成物B2]
下記材料を混合し、塗料組成物B2を得た。
バインダー原料 KAYARAD PET−30(日本化薬株式会社:固形分100質量%)
6.0 質量部
酢酸エチル 94.0 質量部
光開始剤 Irgacure184(BASF株式会社:固形分100質量%)
0.18 質量部
[塗料組成物B3]
下記材料を混合し、塗料組成物B3を得た。
高屈折率コート剤 EA−HR034(大阪ガスケミカル株式会社:固形分100質量%)
3.6 質量部
バインダー原料 KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社:固形分100質量%)
2.4 質量部
酢酸エチル 94.0 質量部
光開始剤 Irgacure184(BASF株式会社:固形分100質量%)
0.18 質量部
[塗料組成物B4]
下記材料を混合し、塗料組成物B4を得た。
高屈折率コート剤 No.550C−22(中国塗料株式会社:固形分30質量%)
20.0 質量部
メチルイソブチルケトン 80.0 質量部
[塗料組成物B5]
下記材料を混合し、塗料組成物B5を得た。
無粒子型低屈折率コート剤 X−12−2510A(信越シリコーン株式会社:固形分3質量%)
80 質量部
バインダー原料 KAYARAD PET−30(日本化薬株式会社:固形分100質量%)
0.6 質量部
イソプロピルアルコール 19.4 質量部
光開始剤 Irgacure184(BASF株式会社:固形分100質量%)
0.09 質量部
[塗料組成物B6]
下記材料を混合し、塗料組成物B6を得た。
バインダー原料 KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社:固形分100質量%)
4.2 質量部
数珠状オルガノシリカゾル MEK−ST−UP(日産化学工業株式会社:固形分20質量%)
9.0 質量部
メチルイソブチルケトン 86.6 質量部
光開始剤 Irgacure184(BASF株式会社:固形分100質量%)
0.18 質量部
[塗料組成物B7]
下記材料を混合し、塗料組成物B7を得た。
バインダー原料 KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社:固形分100質量%)
4.2 質量部
オルガノシリカゾル MEK−ST(日産化学工業株式会社:固形分30質量%)
6.0 質量部
メチルイソブチルケトン 89.6 質量部
光開始剤 Irgacure184(BASF株式会社:固形分100質量%)
0.18 質量部
[塗料組成物B8]
下記材料を混合し、塗料組成物B8を得た。
バインダー原料 KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社:固形分100質量%)
5.6 質量部
オルガノシリカゾル MEK−ST−ZL(日産化学工業株式会社:固形分30質量%)
1.4 質量部
メチルイソブチルケトン 92.8 質量部
光開始剤 Irgacure184(BASF株式会社:固形分100質量%)
0.18 質量部
[塗料組成物B9]
下記材料を混合し、塗料組成物B9を得た。
バインダー原料 KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社:固形分100質量%)
3.6 質量部
数珠状オルガノシリカゾル MEK−ST−UP(日産化学工業株式会社:固形分20質量%)
12.0 質量部
メチルイソブチルケトン 84.2 質量部
光開始剤 Irgacure184(BASF株式会社:固形分100質量%)
0.18 質量部
[塗料組成物B10]
下記材料を混合し、塗料組成物B10を得た。
バインダー原料 KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社:固形分100質量%)
2.4 質量部
数珠状オルガノシリカゾル MEK−ST−UP(日産化学工業株式会社:固形分20質量%)
18.0 質量部
メチルイソブチルケトン 79.4 質量部
光開始剤 Irgacure184(BASF株式会社:固形分100質量%)
0.18 質量部
[塗料組成物B11]
下記材料を混合し、塗料組成物B11を得た。
バインダー原料 KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社:固形分100質量%)
3.0 質量部
数珠状オルガノシリカゾル MEK−ST−UP(日産化学工業株式会社:固形分20質量%)
15.0 質量部
メチルイソブチルケトン 81.8 質量部
光開始剤 Irgacure184(BASF株式会社:固形分100質量%)
0.18 質量部
[塗料組成物C1]
下記材料を混合し、塗料組成物C1を得た。
ハードコート塗材 Z−877(アイカ工業株式会社:固形分40質量%)
75.0 質量部
酢酸エチル 25.0 質量部
[塗料組成物C2]
下記材料を塗料組成物C2として使用した。
傷修復性塗材 Z−913−3(アイカ工業株式会社:固形分40質量%)
100.0 質量部
[塗料組成物C3]
下記材料を混合し、塗料組成物C3を得た。
ハードコート塗材 Z−878(アイカ工業株式会社:固形分40質量%)
75.0 質量部
酢酸エチル 25.0 質量部
[塗料組成物C4]
下記材料を混合し、塗料組成物C4を得た。
高屈折率コート剤 EA−HR034(大阪ガスケミカル株式会社:固形分100質量%)
5.4 質量部
バインダー原料 KAYARAD DPHA(日本化薬株式会社:固形分100質量%)
0.6 質量部
光開始剤 Irgacure184(BASF株式会社:固形分100質量%)
0.18 質量部
酢酸エチル 94.0 質量部
[塗料組成物C5]
下記材料を混合し、塗料組成物C5を得た。
ハードコート塗材 Z−729−37(アイカ工業株式会社:固形分50質量%)
80.0 質量部
メチルイソブチルケトン 20.0 質量部
[塗料組成物D1]
下記材料を混合し、塗料組成物D1を得た。
ハードコート塗材 Z−877(アイカ工業株式会社:固形分40質量%)
75.0 質量部
酢酸エチル 25.0 質量部
[数平均粒子径(一次粒子)]
走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察、測定した。観察試料は前記塗料組成物を分散媒(イソプロピルアルコール)に固形分濃度0.5質量%に希釈し、超音波にて分散後、導電テープ上に滴下、乾燥して調製した。数平均粒子径は、1視野あたり一次粒子の集合体としての個数が10個以上50個以下になる倍率にて観察を行い、得られた画像から一次粒子の外接円の直径を求めてこれを等価粒子径とし、観察数を増やし一次粒子100個について測定した値からJIS Z8819−2(2001年版)記載の個数基準算術平均長さ径に基づき、数平均粒子径を求めた。
<積層体の作成方法>
以下、積層体の作成方法を示す。支持基材として、PET樹脂フィルム上に易接着性塗料が塗布されている“ルミラー”(登録商標)U48(東レ株式会社製)および易接着性塗料が塗布されていない“ルミラー”(登録商標)T60(東レ株式会社製)を用いた。各積層体の構成、および使用した支持基材、塗料組成物の組み合わせを表1に示す。表1に記載の条件および組成にて、実施例、参考例および比較例の積層体を作成した。すなわち、支持基材上に、前述の塗料組成物をスロットダイコーターにて表1の厚みとなるように塗出量を調整しながら塗布後、下記に示す第一段階の乾燥を行い、次いで第二段階の乾燥を行った。
第一段階
熱風温度 50℃
熱風風速 1.5m/s
風向 塗布面に対して平行
乾燥時間 0.5分間
第二段階
熱風温度 100℃
熱風風速 5m/s
風向 塗布面に対して垂直
乾燥時間 1分間
なお、熱風の風速は吹き出し部の動圧測定値から風速に換算した値である。
乾燥後、UV硬化が不要な塗料組成物A2およびA9を除く、各塗料組成物については、160W/cmの高圧水銀灯ランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600W/cm、積算光量800mJ/cmの紫外線を、酸素濃度0.1体積%の下で照射して硬化させた。
<層Lの形成>
前述の方法で作成した積層体を5×10cmに切り出し、その表面層側に以下の塗料組成物Lをバーコーターにて塗布後、上記積層体の作成方法と同様の乾燥・硬化方法により硬化させ、屈折率1.45、厚み50nmの樹脂層Lを作成した。
[塗料組成物L]
下記材料を混合し、塗料組成物Lを得た。
バインダー原料 HPA(大阪有機化学工業:固形分100質量%) 2.0 質量部
酢酸エチル 98.0 質量部
光開始剤 Irgacure184(BASF株式会社:固形分100質量%)
0.06 質量部。
<積層体の評価>
作製した積層体について次に示す性能評価を実施し、得られた結果を表2から表4に記載した。特に断りのない場合を除き、測定は各実施例・参考例・比較例において1つのサンプルについて場所を変えて3回測定を行い、その平均値を用いた。
[絶対反射率の測定]
絶対反射率の評価は(株)島津製作所製分光光度計UV−3100を用いて実施した。測定は積層体の表面層側、もしくは前述の方法で積層体の上に形成した層L側より光を入射する向きにて実施し、裏面反射を防ぐため、非測定面上には黒色のビニールテープをゴムローラーにより貼り付けた。次いで435.8nm、546.1nmおよび700.0nmの絶対反射率について、測定する波長の前後1.0nmを0.2nmおきに計11点指定し、各波長に対する絶対反射率を計測、その平均値をそれぞれRn(438.5)、Rn(546.1)およびRn(700.0)とした(ここでnは自然数であり、n=1では積層体の表面層側の絶対反射率を、n=2では前述の方法で作成した層Lを設けた際の絶対反射率を表す)。一方、後述の平均反射率および反射率傾斜の算出に使用する絶対反射率については、380nmから780nmの波長範囲を0.5nm間隔にて測定を実施した。
[平均反射率および反射率傾斜の算出]
上記の方法により測定された波長範囲380nmから780nm測定間隔0.5nmの絶対反射率データについて、その平均値を算出し、これを平均反射率Raveとした。
一方、反射率傾斜については、前述の各波長における絶対反射率のデータをMicrosoft Excel2010に取り込み、最小二乗法による線形近似式を算出し、その傾きを基に100nm辺りの絶対反射率の変化量を算出し、反射率傾斜Rslopeとした。
[表面層の層厚み]
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて断面を観察することにより、支持基材上の第1層と第2層の断面形状と層厚みを測定した。各層の厚みは、以下の方法に従い測定した。表面層の断面の超薄切片をTEMにより20万倍の倍率で撮影した画像から、ソフトウェア(画像処理ソフトImageJ/開発元:アメリカ国立衛生研究所(NIH))にて、各層の厚みを読み取った。合計で30点の層厚みを測定して求めた平均値を膜厚とした。
[表面層の屈折率]
積層体の表面層の層数、および各層の厚みについては前述の透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて計測を実施した。これらの情報を基に、各層の屈折率は、積層体の表面層に対して反射分光膜厚計(大塚電子製、商品名[FE−3000])により、300〜800nmの範囲での絶対反射率を測定し、該装置付属のソフトウェア[FE−Analysis]を用い、大塚電子株式会社製[膜厚測定装置 総合カタログP6(非線形最小二乗法)]に記載の方法に従い、550nmにおける屈折率を求めた。
屈折率の波長分散の近似式としてCauchyの分散式(数式1)を用い最小二乗法(カーブフィッティング法)により、光学定数(C、C、C)を計算し、550nmにおける屈折率を測定した。
[2乗平均粗さ、ピーク数の測定]
積層体を任意の場所で切り出した後、原子間力顕微鏡(AFM)(Digital Instruments社製、NanoScope IIIa ver.5.31R1)を用いて、観察モード=DFMモード、スキャナー=FS−20A、カンチレバー=DF−3、観察視野=5×5μm2、分解能1024×512pixelsにて表面形態観察を行い、観察像を得た。次いで2乗平均粗さの100%をピーク閾値にするため、「Peak Thrsh (%rms)」を100%に設定して解析を行い、ピーク数を求めた。
[透明性]
積層体の透明性は全光線透過率およびヘイズを測定することにより判定した。全光線透過率およびヘイズの測定はJIS K7136(2000)およびJIS K7361−1(1997)に基づき、日本電色工業(株)製ヘイズメーターを用いて、積層体サンプルの支持基材とは反対側(表面層側)から光を透過するように装置に置いて測定を行った。なお、同一サンプルの異なる3箇所で測定し、その平均値を採用した。
[鉛筆硬度試験法による表面硬度測定]
積層フィルムを温度20℃で12時間放置した後、同環境にてJIS K 5600−5−4(1999)に記載の引っかき硬度(鉛筆法)に従い、表面層の表面硬度を測定した。
[耐擦傷性]
積層体の表面層側に200g/cm荷重となるスチールウール(#0000)を垂直にあて、1cmの長さを10往復した際に目視される傷の概算本数を記載し下記のクラス分けを行い、3点以上を合格とした。
5点: 0本
4点: 1本以上 5本未満
3点: 5本以上 10本未満
2点: 10本以上 20本未満
1点: 20本以上。
[耐指紋性(指紋低視認性)]
指紋低視認性は、積層体の表面層側を上にして黒画用紙上に置き、指紋を押し付ける指(人差し指)と親指を3回こすってから、前記表面層の表面に指(人差し指)をゆっくりと押し付け、付着した指紋の視認性を下記の評価基準で評価し、5点以上を合格とした。
10点: 指紋が視認されない、もしくは未付着部との差がわからない
7点: 指紋がほとんど視認できない、もしくは指紋だとは認識されない
5点: 指紋が僅かに視認されるが、ほとんど気にならない
3点: 指紋が視認される
1点: 指紋が明確に視認され、非常に気になる
上記評価を10人の対象者について行い、その平均値を求めた。小数点以下については四捨五入して取り扱った。
[耐指紋性(指紋拭き取り後の低視認性)]
前述の方法で、指紋を付着させた後、次いで、折り上げ寸法が12.5×12.5cmのセルロース長繊維不織布ガーゼ(“ハイゼ”ガーゼ NT−4 川本産業株式会社製)を用いて拭き取りを行った。指紋拭き取り後の低視認性は、この拭き取り方法で拭いた後の視認性を下記の評価基準で評価し、5点以上を合格とした。
10点: 3回拭くと、ほぼ視認されなくなる
7点: 3回拭くと、ほぼ気にならない程度になる
5点: 3回または4回拭いただけでは汚れが残るが、5回拭くと、ほぼ視認されなくなる
3点: 10回拭けば、ほぼ気にならない程度になる
1点: 10回以上拭いても、汚れが残る
上記評価を10人の対象者について行い、その平均値を求めた。小数点以下については四捨五入して取り扱った。
[耐指紋性(強制条件下での指紋低視認性)]
強制条件下での指紋低視認性は、積層体の表面層側を上にして黒画用紙上に置き、指紋を押し付ける指(人差し指)と親指を3回こすってから、前記表面層の表面に指(人差し指)をゆっくりと押し付け、2cmの長さを10往復した際に付着した指紋の視認性を下記の評価基準で評価し、5点以上を合格とした。
10点: 指紋が視認されない、もしくは未付着部との差がわからない
7点: 指紋がほとんど視認できない、もしくは指紋だとは認識されない
5点: 指紋が僅かに視認されるが、ほとんど気にならない
3点: 指紋が視認される
1点: 指紋が明確に視認され、非常に気になる
上記評価を10人の対象者について行い、その平均値を求めた。小数点以下については四捨五入して取り扱った。
本発明の積層体は、例えば、プラスチック光学部品、タッチパネル、フィルム型液晶素子、プラスチック容器;建築内装材としての床材、壁材、人工大理石等の汚染防止のための保護コーティング材;フィルム型液晶素子、タッチパネル、プラスチック光学部品等の反射防止膜などに利用可能である。具体的には、スマートフォン・テレビ・カーナビゲーション・パソコンの液晶画面、案内・警告・避難誘導のための信号表示灯、メガネ・サングラス・望遠鏡・カメラのレンズ、時計の文字盤の透明カバーなどの部材として好適に用いることができる。
1 積層体
2 支持基材
3 表面層
4 表面層の最表面から第1層目の層
5 表面層の最表面から第2層目の層
6 表面層の最表面から第2層目の層より支持基材側の光学的厚みが2μm以上5μm以下の層
7 表面層と支持基材の密着性を向上する層
8 追加の層
9 多層スライドダイ
10 多層スロットダイ
11 単層スロットダイ

Claims (7)

  1. 支持基材の少なくとも片面に表面層を有する積層体であり、前記積層体の表面層側の絶対反射率R1と表面層の上に更に、屈折率1.45、厚み50nmの、光学的厚み(層の厚みに層の屈折率を乗じた値)が72.5nmの層Lを設けた際の絶対反射率R2が以下の条件(A)から(C)を満たし、
    前記表面層が屈折率の異なる2つ以上の層を含み、前記表面層の最表面から第2層目の層が以下の条件(F)および(G)を満たす無機粒子を含む、積層体。
    (A) −0.5% ≦ R1(435.8)−R2(435.8) ≦ 1.0%
    (B) −0.5% ≦ R1(546.1)−R2(546.1) ≦ 1.0%
    (C) −0.5% ≦ R1(700.0)−R2(700.0) ≦ 1.0%
    R1(X):積層体の表面層側の波長Xnmにおける絶対反射率R1
    R2(X):表面層の上に更に、屈折率1.45、厚み50nmの、光学的厚み(層の厚みに層の屈折率を乗じた値)が72.5nmの層Lを設けた際の、波長Xnmにおける絶対反射率R2
    (F)数平均粒子径が5nm以上80nm以下
    (G)数珠状に連結したおよび/または分岐した無機粒子
  2. 前記絶対反射率R1が以下の条件を満たす、請求項1に記載の積層体。
    (D) 1.0% ≦ R1ave ≦ 3.0%
    (E) −0.2% ≦ R1slope ≦ 0.2%
    R1ave:絶対反射率R1の波長380nmから780nmにおける平均値
    R1slope:絶対反射率R1を波長380nmから780nmにおいて直線近似した際の波長100nmあたりの絶対反射率R1の変化量
  3. 前記表面層の最表面から第1層目の層の光学的厚み(層の厚みに層の屈折率を乗じた値)が40nm以上100nm以下である、請求項1または2に記載の積層体。
  4. 前記表面層の最表面の原子間力顕微鏡(AFM)によって観察される2乗平均粗さを超えるピーク数が25μmあたり500個以上1500個以下である、請求項1から3のいずれかに記載の積層体。
  5. 前記表面層の最表面から第2層目の層の屈折率が1.45以上1.55以下である、請求項1から4のいずれかに記載の積層体。
  6. 前記表面層が屈折率の異なる3つ以上の層を含む、請求項1から5のいずれかに記載の積層体。
  7. 前記表面層の最表面から第2層目の層より支持基材側に光学的厚み(層の厚みに層の屈折率を乗じた値)が2μm以上5μm以下の層を有する、請求項6に記載の積層体。
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