以下、図面を参照して、本発明の各実施形態に係る測定装置について説明する。なお、各図面においては、説明の便宜上、各構成の縮尺を適宜変更しており、必ずしも厳密に図示されたものではない。
(第1実施形態)
図1〜図7を参照して、第1実施形態に係る測定装置100について説明する。以下では、説明の便宜上、図1等に示すように、互いに直交するX,Y及びZの三軸を設定し、測定装置の構成について説明する。本実施形態では、Z軸方向は、鉛直方向に平行な方向である。
図1は、本実施形態に係る測定装置100の正面図である。図2は、図1において二点鎖線で示した部分を拡大した拡大図である。測定装置100は、図1及び図2に示すように、例えばチップ部品といった測定対象Tを電気的に検査する検査装置1に用いられる。
検査装置1は、図1に示すように、測定対象Tの電気的特性を測定するための測定装置100と、電気的特性を測定するための測定位置に測定対象Tを搬送する搬送装置2と、測定対象Tに印加した電気信号を受信して所定の信号処理を行う制御装置6と、を備える。
測定装置100は、測定対象Tの高周波特性等の電気的特性を測定するために、測定位置にある測定対象Tに対して、第一接触子10及び第二接触子20を鉛直方向の下方から押し付けて、測定対象Tと制御装置6との間で電気信号を伝送する伝送機構である。測定装置100は、例えば、数百MHzといった特定の周波数の電磁波を測定対象Tに印加し、これに伴い測定対象Tにおいて発生する高周波信号を制御装置6に伝送する。これにより、測定対象Tの高周波特性の測定が行われる。
搬送装置2は、図2に示すように、測定対象Tを収容する収容溝3aが複数形成される搬送テーブル3と、回転軸を中心に搬送テーブル3を間欠的に回転させるインデックス機構(図示省略)と、を有する。搬送テーブル3は、円板状の部材である。複数の収容溝3aは、搬送テーブル3の外周面から径方向に延びて放射状に形成される。インデックス機構は、搬送テーブル3の中心軸を回転軸として間欠的に搬送テーブル3を回転させる。これにより、搬送テーブル3の収容溝3a内に収容された測定対象Tが測定位置に搬送され、測定装置100によって高周波特性の測定が行われる。また、インデックス機構によって搬送テーブル3が回転することで、高周波特性の測定が完了した測定対象Tが測定位置から搬出される。
搬送テーブル3の鉛直方向の上方には、鉛直方向下方からの第一接触子10及び第二接触子20の押し付けに伴う測定対象Tの浮き上がりを抑制する押さえ部材4が設けられる。搬送テーブル3の鉛直方向の下方には、測定対象Tを支持する支持部材5が設けられる。支持部材5には、第一接触子10及び第二接触子20の通過を許容する通過孔5a,5bが形成される。通過孔5a,5bは、隔壁5cによって隔てられる。測定対象Tは、隔壁5cによって鉛直方向下方から支持され、搬送テーブル3の収容溝3aからの脱落が規制される。
次に、主に図1及び図3を参照して、測定装置100の構成について説明する。図3は、測定装置100の側面図である。なお、図3は、測定装置100のみを図示するものであり、測定対象Tや搬送テーブル3等の構成の図示は省略している。
図1及び図3に示すように、測定装置100は、それぞれ測定対象Tに押し付けられる第一接触子10及び第二接触子20と、第一接触子10及び第二接触子20が取り付けられるベース部30と、ベース部30を駆動して第一接触子10及び第二接触子20を所定の押し付け方向に沿って測定対象Tに押し付ける駆動機構40と、制御装置6に入出力される電気信号を伝送する伝送部としての同軸ケーブル50と、同軸ケーブル50に対して第一接触子10及び第二接触子20を電気的に接続する接続部としての伝送基板60と、を備える。本実施形態では、押し付け方向は、Z軸に平行な方向である。
第一接触子10及び第二接触子20は、それぞれ導体によって形成され測定対象Tに押し付けられて高周波信号が入力される電極である。本実施形態では、第一接触子10がグランド電極であり、第二接触子20がシグナル電極である。第一接触子10及び第二接触子20の具体的構成については、後に詳細に説明する。
ベース部30には、ボルト等の取付手段(図示省略)によって、第一接触子10及び第二接触子20が取り付けられる。
駆動機構40は、ベース部30を一方向に沿って進退させるアクチュエータである。駆動機構40によるベース部30の駆動方向が、測定対象Tに対する第一接触子10及び第二接触子20の押し付け方向(本実施形態ではZ軸に平行な方向)に相当する。ベース部30が駆動機構40によって押し付け方向に沿って進退されることにより、第一接触子10及び第二接触子20が測定対象Tに対して接触・離間する。
駆動機構40は、図3に示すように、電動モータ41と、電動モータ41の回転を直線運動に変換するボールねじ機構42と、ベース部30の直線運動を案内するためのガイド部44と、を有する。
ボールねじ機構42は、押し付け方向(Z軸方向)に沿って設けられ電動モータ41によって回転するボールねじ42aと、ボールねじ42aの回転に伴いボールねじ42aの軸線方向に沿って移動するボールナット42bと、を有する。
ガイド部44は、押し付け方向に沿って設けられるレール44aを有する。ボールねじ機構42のボールナット42bは、ガイド部44のレール44aに沿ってスライド可能にガイド部44に取り付けられる。
ベース部30は、ボールねじ機構42のボールナット42bに取り付けられる。電動モータ41が回転駆動されると、ボールねじ42aの回転がボールナット42bの直線運動に変換され、ガイド部44のレール44aによって案内されながらボールナット42bが軸方向に移動する。これにより、ボールナット42bに取り付けられたベース部30がレール44aによって案内されながら押し付け方向に沿って直線駆動される。なお、駆動機構40は、ベース部30を一方向に沿って進退させることが可能なものであれば、本実施形態の構成に限られない。例えば、駆動機構40は、電動モータ41とボールねじ機構42との組み合わせに代えて、流体圧シリンダを用いてもよい。
同軸ケーブル50は、図1に示すように、特性測定用の電気信号を送受信する制御装置6に電気的に接続され、制御装置6により送受信される電気信号を伝送する。同軸ケーブル50は、図3に示すように、中心導体51と、中心導体51の周囲に設けられる絶縁層である絶縁体52と、絶縁体52の周囲に設けられる外部導体53と、が同心円上に配置される同軸伝送部である。
伝送基板60は、同軸ケーブル50の外周の外部導体53と第一接触子10とを電気的に接続する第一銅箔基板61と、同軸ケーブル50の中心にある中心導体51と第二接触子20とを電気的に接続する第二銅箔基板62と、により構成される。第一銅箔基板61と第二銅箔基板62とは、それぞれ平板状に形成され、互いに所定の間隔を空けて設けられる(図1参照)。図3に示すように、第一銅箔基板61は、一端が同軸ケーブル50の外部導体53に対してはんだ付け等の手段により連結され、他端が第一接触子10及びベース部30に対してボルト等の手段により連結される。第二銅箔基板62は、一端が同軸ケーブル50の中心導体51に対してそれぞれはんだ付け等の手段により連結され、他端が第二接触子20及びベース部30に対してボルト等の手段により連結される。
次に、主に図1、図4、及び図5を参照して、第一接触子10及び第二接触子20の具体的構成について説明する。図4は、第一接触子10の斜視図である。図5は、第二接触子20の斜視図である。
第一接触子10は、図1及び図4に示すように、ベース部30に取り付けられ第一銅箔基板61に電気的に接続される第一取付部11と、測定対象Tに押し付けられ、測定対象Tへの押し付けに伴い第一取付部11に優先して弾性変形する第一端子部15と、を有する。
第一接触子10の第一取付部11は、平板状に形成されベース部30に取り付けられる。第一取付部11は、図4に示すように、平坦に形成される第一狭小面11aと、平坦に形成され第一狭小面11aよりも大きな面積を有する第一広大面11bと、第一広大面11bより小さな面積を有し第一端子部15が接続される第一先端面11cと、を有する。第一狭小面11a、第一広大面11b、及び第一先端面11cは、互いに直交する平面である。第一接触子10は、第一取付部11の第一広大面11bが、Y軸に垂直であり、X軸及びZ軸を含むXZ平面に平行となるように、ベース部30に取り付けられる(図1参照)。Y軸方向に沿った第一狭小面11aの寸法(以下、「第一狭小面11aの幅」、「第一取付部11の板厚」とも称する。)は、X軸方向に沿った第一広大面11bの寸法よりも小さい。
第一端子部15は、第一取付部11と同一の板厚(Y軸方向の寸法)を有する。つまり、第一接触子10は、均一な板厚を有している。第一端子部15は、図4に示すように、押し付け方向に沿って(Z軸方向に平行に)延び測定対象Tに押し付けられる第一接触部16と、第一接触部16から曲がって形成される第一曲部17と、を有する。
第一接触部16の先端の端面は、押し付け方向に垂直な垂直面16aとして形成される。第一接触部16の垂直面16aが、測定対象Tに接触する。
第一曲部17は、第一接触部16から曲がって形成される。具体的には、第一曲部17は、XZ平面に平行な平面上(図1における紙面上)において、押し付け方向(Z軸方向)及びX軸方向のそれぞれに対して傾斜するように直線状に延びる。
第二接触子20は、図1及び図5に示すように、ベース部30に取り付けられ第二銅箔基板62に電気的に接続される第二取付部21と、測定対象Tに押し付けられ、測定対象Tへの押し付けに伴い第二取付部21に優先して弾性変形する第二端子部25と、を有する。
第二接触子20の第二取付部21は、平板状に形成されベース部30に取り付けられる。第二取付部21は、図5に示すように、平坦に形成される第二狭小面21aと、平坦に形成され第二狭小面21aよりも大きな面積を有する第二広大面21bと、第二広大面21bより小さな面積を有し第二端子部25が接続される第二先端面21cと、を有する。第二狭小面21a、第二広大面21b、及び第二先端面21cは、互いに直交する平面である。第二接触子20は、第二取付部21の第二広大面21bが、Y軸に垂直であり、X軸及びZ軸を含むXZ平面に平行となるように、ベース部30に取り付けられる。Y軸方向に沿った第二狭小面21aの幅(以下、「第二取付部21の幅」、「第二取付部21の板厚」とも称する。)は、X軸方向に沿った第二広大面21bの幅よりも小さい。また、第一狭小面11aの幅と第二狭小面21aの幅とは互いに等しく、第一広大面11bの幅と第二広大面21bの幅とは互いに等しい。
第二端子部25は、第二取付部21と同一の板厚を有する。つまり、第二接触子20は、均一な板厚を有しており、その板厚は第一接触子10の板厚と同一である。第二端子部25は、第一端子部15と対応する形状に形成される。具体的には、第二端子部25は、押し付け方向に沿って延び測定対象Tに押し付けられる第二接触部26と、第二接触部26から曲がって形成される第二曲部27と、を有する。
第二接触部26の先端の端面は、押し付け方向に垂直な垂直面26aとして形成される。第二接触部26の垂直面26aが、測定対象Tに接触する。第一接触部16の先端(垂直面16a)と第二接触部26の先端(垂直面26a)は、押し付け方向における位置が略同一となるように設けられる。
第二曲部27は、第二接触部26から曲がって形成され、XZ平面に平行な平面上において、押し付け方向(Z軸方向)及びX軸方向のそれぞれに対して傾斜するように直線状に延びる。
第一接触子10と第二接触子20とは、図1に示すように、第一取付部11と第二取付部21とが、XZ平面に平行であり、XZ平面に平行な同一平面上となるように設けられる。より具体的には、第一取付部11の第一狭小面11aと第二取付部21の第二狭小面21aとは、押し付け方向であるZ軸に対して平行である。よって、第一狭小面11aと第二狭小面21aとは、互いに平行に対向する。また、第一広大面11bと第二広大面21bとは、XZ平面に平行な同一平面上に配置される。
第一取付部11の第一狭小面11aと第二取付部21の第二狭小面21aとは互いに平行に対向するため、第一狭小面11aと第二狭小面21aの間隔は略一定となる。第一狭小面11aと第二狭小面21aとの間隔は、第一取付部11と第二取付部21との結合強度が所望のものとなるように、言い換えれば、伝送経路が所望の特性インピーダンス(例えば50Ω)となるように設定される。
また、第一端子部15と第二端子部25とは、それぞれ第一取付部11及び第二取付部21から互いに沿うようにして延びるように形成される。第一接触部16と第二接触部26との間隔は、測定対象Tの形状に応じて、伝送経路の特性インピーダンスが所望の値となるように設定される。
別の観点からいえば、第一曲部17と第二曲部27とは、X軸及びZ軸のいずれとも平行ではない直線状に形成される。第一曲部17と第二曲部27との直線部分は、同一方向に向けて互いに沿うように平行に形成される。これにより、第一曲部17と第二曲部27との間隔(第一曲部17と第二曲部27とによって構成される伝送経路の間隔)が一定に保たれるため、第一曲部17及び第二曲部27における特性インピーダンスを一定に保つことができる。
なお、第一曲部17及び第二曲部27が第一接触部16及び第二接触部26から「曲がって形成される」とは、第一端子部15及び第二端子部25が押し付け方向に沿った直線状の部位のみによって形成される構成(図8に示す構成)ではないことを意味するものである。「曲がって形成される」とは、第一曲部17と第二曲部27の形状を表現するものであり、曲げ加工によって形成されることを意味するものではない。第一曲部17及び第二曲部27は、曲げ加工を含む塑性加工以外にも、打ち抜きや切削などの機械加工によって形成することができる。
次に、図6及び図7を参照して、測定装置100の作用について説明する。図6は、第一接触子10及び第二接触子20が測定対象Tに接触した状態を示す図である。図7は、図6の状態から第一接触子10及び第二接触子20を測定対象Tに向けて押し付け方向の前方に移動させ、測定対象Tに対して押し付けた状態を示す図である。なお、図6及び図7では、測定対象T、第一接触子10、及び第二接触子20のみを図示し、その他の構成は図示を省略している。また、図7では、図6の状態における第一接触子10及び第二接触子20を破線で示している。
測定対象Tの高周波特性を測定するには、ベース部30を押し付け方向の前方(鉛直方向の上方)に移動させ、鉛直方向の下方から第一接触子10の第一接触部16及び第二接触子20の第二接触部26を測定対象Tに接触させる(図6に示す状態)。この際、ベース部30の移動によって第一銅箔基板61及び第二銅箔基板62(図1,2参照)が弾性変形する。これにより、同軸ケーブル50に対する第一接触子10、第二接触子20、及びベース部30の押し付け方向への相対移動が許容される。
第一接触部16及び第二接触部26が測定対象Tに接触した状態からベース部30をさらに鉛直方向上方へ移動させることで、所定の押し付け力により第一接触子10及び第二接触子20を測定対象Tに押し付けて電気的に接続させる。測定対象Tに接触した状態から第一接触部16及び第二接触部26をさらに押し付けるのに伴い、図7に示すように、第一接触子10の第一端子部15及び第二接触子20の第二端子部25が、第一取付部11及び第二取付部21を含む測定装置100の他部に優先して弾性変形する。より具体的には、第一曲部17が、第一取付部11との境界部分B12を支点として、撓むように弾性変形する。同様に、第二曲部27が、第二取付部21との境界部分B22を支点として、撓むように弾性変形する。よって、第一曲部17及び第二曲部27の弾性変形によって生じる弾性力により、第一接触部16及び第二接触部26を測定対象Tに押し付ける押し付け力が確保される。
ここで、一般に、測定装置では、接触子を測定対象に押し付けるのに伴い、接触子、同軸ケーブル、伝送基板等が変形する。接触子、同軸ケーブル、伝送基板等のいずれかが変形すると、変形した箇所でグランド線路とシグナル線路との相対的な位置関係(より具体的には間隔)が変化し、特性インピーダンスが変化してしまう。これにより、伝送経路における特性インピーダンスの不整合が発生することがある。伝送経路において特性インピーダンスの不整合が発生すると、不整合箇所で電気信号が反射するため、伝送損失が生じる。
これに対し、本実施形態では、第一接触子10の第一端子部15と第二接触子20の第二端子部25とは、互いに沿うようにして延びる。第一端子部15の第一接触部16と第二端子部25の第二接触部26とは互いに平行に延びるものであり、かつ、第一端子部15の第一曲部17と第二端子部25の第二曲部27とは互いに平行に延びる。また、第一接触部16の先端と第二接触部26の先端とは、押し付け方向における位置が互いに同一である。このため、第一接触部16及び第二接触部26を測定対象Tに接触させた状態からさらに測定対象Tに向け押し付けても、第一曲部17と第二曲部27とは、同じ方向に同程度の変形量だけ変形する。よって、第一端子部15と第二端子部25の間隔は変形の前後において変化しない。このように、第一端子部15と第二端子部25とが変形しても間隔が変化しないため、測定対象Tへの第一端子部15と第二端子部25との押し付けによる特性インピーダンスの変化を抑制して伝送損失の発生を抑制することができる。
次に、図8〜図11を参照して、第1実施形態の変形例について説明する。
(1)図8は、第1実施形態の第1変形例に係る第一接触子10及び第二接触子20を示す正面図である。上記実施形態では、図6等に示すように、第一端子部15は第一曲部17を有し、第二端子部25は第二曲部27を有する。これに対し、図8に示す第1変形例では、第一端子部15は、第一曲部17を有しておらず、押し付け方向に平行な直線状に形成される。また、第二端子部25は、第二曲部27を有しておらず、押し付け方向に平行な直線状に形成される。
このような第1変形例においても、第一端子部15と第二端子部25とが互いに対応する形状に形成され、同一方向に互いに沿って延びる。よって、第一端子部15と第二端子部25との間隔も一定となる。したがって、第一接触子10及び第二接触子20において特性インピーダンスを整合させることができ、高周波特性を精度よく測定することができる。
(2)図9は、第1実施形態の第2変形例に係る第一接触子10及び第二接触子20を示す正面図である。上記実施形態では、図6等に示すように、第一接触子10の第一曲部17と第二接触子20の第二曲部27は、それぞれ押し付け方向に対して傾斜する直線状に形成される。これに対し、第2変形例における第一曲部17aと第二曲部27aは、図9に示すように、弧状に湾曲した形状に形成される。この場合であっても、第一曲部17aと第二曲部27aとは、互いに対応した形状であって、互いに沿って延びるように形成される。このような第2変形例であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。また、図示は省略するが、第一曲部17と第二曲部27とは、直線状の形状と、湾曲した形状と、を組み合わせた形状に形成されてもよい。
(3)図10は、第1実施形態の第3変形例に係る第一接触子10及び第二接触子20を示す正面図である。上記実施形態では、図6に示すように、第一曲部17と第一接触部16との境界部分B11は、第一曲部17と第一取付部11との境界部分B12に対して、押し付け方向に垂直な方向(X軸方向、図6中左右方向)にずれている。同様に、第二曲部27と第二接触部26との境界部分B21は、第二曲部27と第二取付部21との境界部分B21に対して、押し付け方向に垂直な方向(X軸方向、図6中左右方向)にずれている。
これに対し、第3変形例では、図10に示すように、第一曲部17bは、押し付け方向に垂直な一方向(図10中左方向)に凸となるような半円弧状に形成される。このため、第一曲部17bと第一接触部16との境界部分B11と、第一曲部17bと第一取付部11との境界部分B21とは、押し付け方向に沿って配置される。第一曲部17bの凸の頂部T1は、押し付け方向(Z軸方向)における位置が、第一曲部17bと第一接触部16との境界部分B11と、第一曲部17bと第一取付部11との境界部分B12との中央となるように設けられる。
また、第二曲部27bは、第一曲部17bと同じ一方向に凸となるような半円弧状に形成される。第二曲部27bと第二接触部26との境界部分B21と、第二曲部27bと第二取付部21との境界部分B22とは、押し付け方向に沿って設けられる。第二曲部27の凸の頂部T2は、押し付け方向における位置が、第二曲部27bと第二接触部26との境界部分B21及び第二曲部27bと第二取付部21との境界部分B22の中央となるように設けられる。
このように、第3変形例では、第一曲部17bと第二曲部27bとは、互いに対応する形状に形成され、互いに沿って形成される。よって、第一曲部17bと第二曲部27bとの間隔も一定となる。このような第3変形例においても、上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
また、第一曲部17bと第二曲部27bとが上記のような形状に形成されるため、押し付け方向に沿って第一接触子10及び第二接触子20を測定対象Tに押し付けると、第一接触部16及び第二接触部26が押し付け方向に沿って移動するように、第一曲部17b及び第二曲部27bが弾性変形する。つまり、第一接触部16及び第二接触部26が押し付け方向に垂直な方向には移動しないように、第一曲部17b及び第二曲部27bは変形する。第一接触部16と第二接触部26とが押し付け方向に対して垂直方向に移動しないため、第一接触部16と第二接触部26とを安定した姿勢で測定対象Tに接触させることができる。さらに、第一接触部16と第二接触部26とが押し付け方向に垂直な方向に移動しないため、両者の間隔の変化も抑制できる。したがって、測定対象Tへの押し付けに伴う第一接触子10及び第二接触子20での伝送損失の発生や特性インピーダンスの変化をより一層抑制することができる。
なお、第一接触部16及び第二接触部26が押し付け方向に沿って移動するように第一曲部及び第二曲部が変形するものであれば、第一曲部及び第二曲部の形状は、半円弧状に限られない。例えば、図11に示すように、第一曲部17c及び第二曲部27cは、直線部によって構成され押し付け方向に垂直な一方向に凸となる「くの字」状に形成されてもよい。また、第一曲部及び第二曲部は、弧状に湾曲する部分と直線状に延びる部分とを組み合わせた形状であってもよい。
また、第一曲部17b,17cと第一接触部16との境界部分B11と、第一曲部17b,17cと第一取付部11との境界部分B12とが「押し付け方向に沿って設けられる」とは、図10、11に示すように、第一曲部17b,17cと第一接触部16との境界部分B11と、第一曲部17b,17cと第一取付部11との境界部分B12とが押し付け方向に平行な同一の仮想線L1上に配置されることを意味するものである。第二曲部27b,27cと第二接触部26との境界部分B21と、第二曲部27b,27cと第二取付部21との境界部分B22とが「押し付け方向に沿って設けられる」との意味についても同様に、押し付け方向に平行な同一の仮想線L2上に配置されることを意味する。
(4)次に、その他の変形例について説明する。
上記第1実施形態、第2変形例、第3変形例において、第一曲部17、17a,17b,17c及び第二曲部27、27a,27b,27cは、押し付け方向に平行な直線部分を含むことを除外するものではない。第一曲部17、17a,17b,17c及び第二曲部27、27a,27b,27cの一部に、押し付け方向に平行な直線部分が設けられていてもよい。
(第2実施形態)
次に、図12〜図14を参照して、第2実施形態に係る測定装置200について説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
測定装置200は、上記第1実施形態における第一銅箔基板61及び第二銅箔基板62により構成される伝送基板60に代えて、接続部として、柔軟性を有する伝送基板160を備える。また、測定装置200では、第一接触子110の第一取付部111と第二接触子120の第二取付部121の構成は上記第1実施形態と同様である一方、第一端子部115と第二端子部125の構成が上記第1実施形態とは異なる。以下、具体的に説明する。
伝送基板160は、柔軟性を有する帯状のフレキシブルプリント基板である。伝送基板160の一端部(図13中上端部)には、第一接触子110及び第二接触子120が接着される。伝送基板160の他端部は、コネクタ170(図12参照)を通じて、同軸ケーブル50に電気的に接続される。なお、コネクタ170は、公知の構成を採用することができるため、具体的な説明は省略する。また、コネクタ170は、必須の構成ではなく、コネクタ170を介さずに伝送基板160と同軸ケーブル50を直接接続してもよい。
第一接触子110及び第二接触子120から出力される電気信号は、伝送基板160の高周波伝送線路によって伝送され、同軸ケーブル50を通じて制御装置6(図1参照)に入力される。伝送基板160は、外力により変形が可能であり、駆動機構40(図1参照)によってベース部30が駆動されるのに伴って撓み変形する。これにより、同軸ケーブル50及びコネクタ170に対する押し付け方向に沿ったベース部30、第一接触子110、及び第二接触子120の相対移動が許容される。
伝送基板160は、図13に示すように、高周波伝送線路としてコプレーナ線路を形成する積層構造を有する基板である。伝送基板160では、絶縁層である基材161の一方の面に、導体層であるグランド線162と、導体層であるシグナル線163と、がプリントされる。
基材161は、柔軟性を有する材質で形成される。グランド線162及びシグナル線163は、それぞれ所定の幅を有して基材161の長手方向に沿って延びて設けられる。グランド線162の一端部が第一接触子110の第一取付部111に電気的に接続され、シグナル線163の一端部が第二接触子120の第二取付部121に電気的に接続される(図12参照)。図13で図示を省略したグランド線162の他端部は、コネクタ170を通じて同軸ケーブル50の外部導体53に電気的に接続される。図示を省略したシグナル線163の他端部は、コネクタ170を通じて同軸ケーブル50の中心導体51に電気的に接続される。
第1実施形態と同様に、第一接触子110の第一端子部115は、測定対象Tへの押し付けに伴い第一取付部111に優先して弾性変形する。また、第二接触子120の第二端子部125は、測定対象Tへの押し付けに伴い第二取付部121に優先して弾性変形する。
図14に示すように、本実施形態では、第一接触子110の第一端子部115と第二接触子120の第二端子部125とは、互いに沿って設けられるものではない。第一端子部115は、測定対象Tに接触する第一接触部116と、押し付け方向に対して傾斜するように第一接触部116から曲がって形成される第一傾斜部117と、を有する。第二端子部125は、測定対象Tに接触する第二接触部126と、押し付け方向に対して傾斜するように第二接触部126から曲がって形成される第二傾斜部127と、を有する。
第一傾斜部117は、押し付け方向に対して所定の角度で傾斜して延びる直線状に形成される。第二傾斜部127は、第一傾斜部117とは異なる角度によって押し付け方向に対して傾斜して延びる直線状に形成される。このように、本実施形態では、第一傾斜部117と第二傾斜部127とは互いに沿って延びるものではなく、互いに異なる角度によって押し付け方向に対して傾斜する。本実施形態では、第一傾斜部117と第二傾斜部127とは、押し付け方向に平行な基準線に対して線対称となるような「ハの字」状に延びるように構成される。
次に、測定装置200の作用について説明する。
上記第1実施形態と同様、測定対象Tの高周波特性を測定するには、ベース部30を鉛直方向の上方に移動させ、鉛直方向の下方から第一接触子110の第一接触部116及び第二接触子120の第二接触部126を測定対象Tに接触させる。この際、ベース部30の移動によって伝送基板160が撓み変形する。これにより、同軸ケーブル50に対する第一接触子110、第二接触子120、及びベース部30の相対移動が許容される。
第一接触部116及び第二接触部126が測定対象Tに接触した状態からベース部30をさらに鉛直方向上方へ移動させることで、所定の押し付け力により第一接触子110及び第二接触子120を測定対象Tに押し付けて電気的に接続させる。測定対象Tに接触した状態から第一接触部116及び第二接触部126をさらに押し付けるのに伴い、第一接触子110の第一端子部115及び第二接触子120の第二端子部125が、測定装置200の他部に優先して弾性変形する。
より具体的には、図14に示すように、第一傾斜部117及び第二傾斜部127が、それぞれ第一取付部111との境界部分B12及び第二取付部121との境界部分B22を支点として、撓むように優先して弾性変形する。よって、第一傾斜部117及び第二傾斜部127の弾性変形によって生じる弾性力により、第一接触部116及び第二接触部126を測定対象Tに押し付ける押し付け力が確保される。
ここで、一般に、測定装置では、接触子を測定対象に押し付けるためにベース部を直線駆動すると、同軸ケーブルと接触子とを電気的に接続する伝送基板が変形する。伝送基板が変形すると、接触子が変形する場合と同様に、伝送基板上のグランド線とシグナル線との相対的な位置関係が変化し、特性インピーダンスの不整合が生じるおそれがある。
さらに、ベース部は駆動機構によって駆動されるものであるため、駆動機構の作動誤差等の影響により、ベース部の移動は厳密には接触子の押し付け毎に一定ではない。このため、ベース部の移動による伝送基板の変形も一定ではなく、ベース部が移動する毎(接触子を測定対象Tに押し付ける毎)に異なることがある。このように、伝送基板の変形の再現性が乏しい場合には、測定装置のキャリブレーションを行っても、正確な高周波特性を測定することが困難となる。
これに対し、本実施形態では、伝送基板160は、リジットな基板ではなく、柔軟性を有するフレキシブルプリント基板である。フレキシブルプリント基板では、変形が生じても、グランド線162とシグナル線163との相対的な位置関係はほとんど変化しない。よって、ベース部30の移動によって伝送基板160が変形しても、また、ベース部30の移動の再現性が乏しい場合であっても、伝送基板160における特性インピーダンスの変化が抑制される。これにより、測定装置100のキャリブレーションを高精度で行うことができ、測定装置100の測定精度を向上させることができる。
(第3実施形態)
次に、図15を参照して、第3実施形態に係る測定装置300について説明する。第3実施形態は、上記第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせたものである。以下では、上記第1実施形態及び第2実施形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
第3実施形態に係る測定装置300は、第1実施形態に係る第一接触子10及び第二接触子20を備えると共に、接続部として第2実施形態に係る伝送基板160を備える。
このような第3実施形態では、第一接触子10の第一端子部15と第二接触子20の第二端子部25とは、互いに沿うようにして延びるため、測定対象Tへの押し付けによっても、相対的な位置関係(互いの間隔)が変化しない。よって、測定対象Tへの押し付けの際における第一接触子10と第二接触子20により構成される伝送経路の特性インピーダンスの変化を抑制して伝送損失の発生を抑制することができる。
また、伝送基板160は、柔軟性を有するフレキシブルプリント基板であるため、第一接触子10及び第二接触子20を押し付けるためベース部30を移動させて伝送基板160が変形しても、伝送基板160に設けられるグランド線162とシグナル線163の相対的な位置関係は変化しない。よって、測定対象Tへの第一接触子10と第二接触子20の押し付けの際においても、伝送基板160における特性インピーダンスの変化を抑制して、伝送損失の発生を抑制することができる。
ここで、例えば、伝送基板において特性インピーダンスの不整合が大きい場合には、電気信号は伝送基板においてほとんど反射されることとなり、第一接触子及び第二接触子においてインピーダンス整合が取れていたとしても伝送特性は悪くなってしまう。その反対も同様に、第一接触子及び第二接触子において特性インピーダンスの不整合が大きい場合には、伝送基板においてインピーダンス整合がとれていたとしても伝送特性は悪くなってしまう。このように、伝送経路において特性インピーダンスの不整合が大きい箇所があると、伝送経路のその他の箇所で特性インピーダンスを整合させても、伝送特性を向上させることが難しくなる。
これに対し、第3実施形態では、第一接触子10及び第二接触子20を測定対象Tに押し付ける際、第一接触子10及び第二接触子20における特性インピーダンスの変化が抑制されると共に、伝送基板160における特性インピーダンスの変化を抑制することができる。これにより、伝送経路全体で特性インピーダンスを整合させることができるため、より精度よく、より安定して伝送特性を向上させることができる。
(第4実施形態)
次に、図16〜図20を参照して、第4実施形態に係る測定装置400について説明する。以下では、上記第3実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第3実施形態と同一の構成には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
第4実施形態に係る測定装置400では、第3実施形態と同様、第一接触子310の第一端子部315と第二接触子320の第二端子部325とが互いに沿うように延びると共に、接続部が柔軟性を有する伝送基板(フレキシブルプリント基板)360である。
第一接触子310及び第二接触子320は、ベース部330に取り付けられる。ベース部330は、上記各実施形態におけるベース部30と形状が異なるものであり、その機能は同様のものであるため、詳細な説明は省略する。
第一接触子310は、主に図16及び図18に示すように、板状に形成される第一取付部311と、第一取付部311から延びる第一端子部315と、を有する。
図17及び図18に示すように、上記各実施形態と同様に、第一取付部311は、第一狭小面311a、第一広大面311b、及び第一先端面311cを有する。また、第一取付部311の第一広大面311bには、切り欠き311dが形成される。切り欠き311dが形成されることによって、第一取付部311には、相対的に板厚が薄い薄肉部312と、相対的に板厚が厚い厚肉部313と、が形成される。薄肉部312は、第一広大面311bと平行な端面(以下、「対向面312a」とする)を有している。
第一端子部315は、主に図16及び図18に示すように、押し付け方向に対して平行に延びる第一接触部316と、押し付け方向に対して傾斜して延びる第一曲部317と、を有する。第一曲部317は、第一取付部311の薄肉部312に接続される。第一曲部317は、押し付け方向に延びると共に、X軸方向に延びる。つまり、第一曲部317は、板状の第一取付部311に垂直な方向(言い換えれば、第一取付部311の板厚方向)であるX軸方向に延びる。また、第一曲部317は、第一接触子310に向かうにつれて、伝送経路における幅(本実施形態では、Y軸に沿った寸法)が小さくなるように形成される。第一接触部316の幅(Y軸方向に沿った寸法)、言い換えれば、第一端子部315の最小幅は、第一端子部315の板厚よりも大きく形成される。なお、第一端子部315の板厚は、一様である。
第二接触子320の第二取付部321は、図16及び図19に示すように、板状に形成される第二取付部321と、第二取付部321から延びる第二端子部325と、を有する。
第二取付部321は、図19に示すように、平板状に形成される。上記各実施形態と同様に、第二取付部は、第二狭小面321a、第二広大面321b、及び第2先端面321cを有する。
第二端子部325は、第二接触部326と、第二曲部327と、を有する。第二曲部327は、第一曲部317と同様、押し付け方向に延びると共に、第二取付部321の板厚方向であるX軸方向に延びる。また、第二曲部327は、第二接触子320に向かうにつれて、伝送経路における幅が小さくなるように形成される。第二接触部326の幅(第二端子部325の最小幅)は、第二端子部325の板厚よりも大きく形成される。なお、第二端子部325の板厚は一様である。
本実施形態では、第一接触子310と第二接触子320とは、第一取付部311と第二取付部321とが互いに平行かつ面対向するように配置される。具体的には、第一取付部311の薄肉部312の対向面312aと第二取付部321の第二広大面321bとが、互いに所定の間隔を空けて平行に対向する(図18参照)。また、第一取付部311の第一広大面311bと第二取付部321の第二広大面321bとは、伝送基板360の厚さ程度の間隔を空けて対向する。第一広大面311bと第二広大面321bとは、それぞれ押し付け方向であるZ軸に対して平行であって、X軸に対して垂直である。つまり、第一接触子310と第二接触子320とは、X軸方向に並んで配置される。
また、第一端子部315と第二端子部325とは、互いに対応する形状に形成されて互いに沿って延びる。このため、第一端子部315と第二端子部325との間隔を一定にすることができる。
伝送基板360には、図20に示すように、高周波伝送線路としてマイクロストリップ線路が設けられる。基材361の一方の面(表面)にシグナル線363が形成され((a)参照)、反対側の面(裏面)にグランド線362が形成される((b)参照)。
伝送基板360の一方の面のシグナル線363は、図16に示すように、第二接触子320の第二取付部321と電気的に接続される。伝送基板360の他方の面のグランド線362は、第一接触子310の第一取付部311、より具体的には、第一取付部311の厚肉部313と電気的に接続される(図17参照)。つまり、伝送基板360は、第一接触子310における第一取付部11の厚肉部313(第一広大面311b)と第二接触子320の第二取付部321(第二広大面321b)とによって挟まれるようにして、第一接触子310及び第二接触子320と接続される。
第一端子部315の板厚と第一取付部311の薄肉部312との板厚は、同一に形成される。これにより、第一端子部315と第二端子部325との間隔と、第一取付部311の薄肉部312と第二取付部321(第二広大面321b)との間隔とが、同一になる。言い換えれば、第一取付部311に切り欠き311dを形成することによって、第一取付部311と第二取付部321との間隔を、第一端子部315と第二端子部325との間隔に一致させることができる。これにより、測定装置400における伝送線路の結合強度の変化を抑制することができる。
次に、測定装置400の作用について説明する。
測定対象Tの高周波特性を測定するには、ベース部330を鉛直方向の上方に移動させ、鉛直方向の下方から第一接触子310の第一接触部316及び第二接触子320の第二接触部326を測定対象Tに接触させる。この際、ベース部330の移動によって伝送基板360が撓み変形する。これにより、同軸ケーブル50に対する第一接触子310、第二接触子320、及びベース部330の相対移動が許容される。
第一接触部316及び第二接触部326が測定対象Tに接触した状態からベース部330をさらに鉛直方向上方へ移動させることで、所定の押し付け力により第一接触子310及び第二接触子320を測定対象Tに押し付けて電気的に接続させる。測定対象Tに接触した状態から第一接触部316及び第二接触部326をさらに押し付けるのに伴い、第一接触子310の第一端子部315及び第二接触子320の第二端子部325が、測定装置400の他部に優先して弾性変形する。より具体的には、第一曲部317及び第二曲部327が、それぞれ第一取付部311との境界部分B12及び第二取付部321との境界部分B22を支点として、撓むように弾性変形する。よって、第一曲部317及び第二曲部327の弾性変形によって生じる弾性力により、第一接触部316及び第二接触部326を測定対象Tに押し付ける押し付け力が確保される。
本実施形態では、第一接触子310の第一端子部315と第二接触子320の第二端子部325とは、互いに沿うようにして延びるため、測定対象Tへの押し付けによっても、相対的な位置関係(互いの間隔)が変化しない。よって、測定対象Tへの押し付けの際における第一接触子310と第二接触子320の特性インピーダンスの変化を抑制して伝送損失の発生を抑制することができる。
また、伝送基板360は、柔軟性を有するフレキシブルプリント基板であるため、第一接触子310及び第二接触子320を押し付けるためベース部330を移動させて伝送基板360が変形しても、伝送基板360に設けられるグランド線362とシグナル線363の相対的な位置関係は変化しない。よって、測定対象Tへの第一接触子310と第二接触子320の押し付けの際においても、伝送基板360における特性インピーダンスの変化を抑制して、伝送損失の発生を抑制することができる。
このように、本実施形態では、第一接触子310及び第二接触子320を測定対象Tに押し付ける際、第一接触子310及び第二接触子320における特性インピーダンスの変化が抑制されると共に、伝送基板360における特性インピーダンスの変化を抑制することができる。これにより、伝送経路全体で特性インピーダンスの整合状態を維持することができるため、より精度よく、より安定して伝送特性を向上させることができる。
さらに、本実施形態では、第一接触子310の第一取付部311と第二接触子320の第二取付部321とが、平行に対向する。つまり、第一取付部311の第一狭小面311aと第二取付部321の第二狭小面321aとが対向するものではなく、第一広大面311bと第二広大面321bとが対向する。このため、第一接触子310及び第二接触子320の板厚に制限されることなく第一端子部315及び第二端子部325を加工できるため、第一端子部315及び第二端子部325の幅を容易に大きくすることができる。これにより、第一端子部315と第二端子部325とが対向する面積を広くすることができ、伝送経路の結合強度をより高めることができる。したがって、特性インピーダンスを所望の値(例えば50Ω)としやすく、測定装置400が測定可能な周波数帯域をより高周波側に広げることができる。
また、例えば第1実施形態のように、第一曲部と第二曲部とが平板状の第一取付部及び第二取付部に平行な平面に沿って延びるものである場合、第一曲部と第二曲部とは、その平面上において変形しやすい。このため、第一接触子及び第二接触子を測定対象に押し付けて第一曲部と第二曲部とが変形しても、第一曲部と第二曲部との相対的な位置関係はほとんど変化しない。しかしながら、このような構成において第一曲部と第二曲部における板厚と幅の比(板厚/幅)が小さすぎる場合や第一曲部及び第二曲部の長さが板厚に対して長すぎる場合などには、第一曲部及び第二曲部は、板厚方向(Y軸方向)に向けて変形しやすくなる。これにより、第一接触子及び第2接触子を測定対象に押し付けても、第一取付部及び第二取付部に平行な平面上での変形という意図した変形よりも、板厚方向に変形するといった意図しない変形が生じる場合がある。このような意図しない変形が生じると、第一端子部と第二端子部との相対的な位置関係が変化するため、特性インピーダンスの不整合が生じるおそれがある。
これに対し、本実施形態では、第一曲部317と第二曲部327とは、第一接触子310及び第二接触子320の板厚方向であるX軸方向に向け延びるように形成される。これにより、第一曲部及び第二曲部の板厚と幅の比が小さすぎるような場合であっても、意図する変形の方向と、変形しやすい方向とが一致するため、意図しない変形による特性インピーダンスの不整合の発生を抑制することができる。したがって、第一曲部317及び第二曲部327の変形の再現性が向上するため、ほぼ同一の条件によって高周波特性の測定を繰り返し行うことができ、測定装置400の測定精度が向上する。
また、本実施形態では、伝送基板360に設けられる高周波伝送線路は、基材361の表面にシグナル線363が形成され、裏面にグランド線362が形成されるマイクロストリップ線路である。マイクロストリップ線路は、グランド線362及びシグナル線363が同一面に設けられる高周波伝送線路と比較して、特性インピーダンスを決定する因子(パラメータ)が少なく、これに伴い誤差因子も少ない。よって、高周波伝送線路をマイクロストリップ線路とすることで、伝送基板360の特性インピーダンスを所望の値に整合させやすく、より良い伝送特性を得ることができる。
また、本実施形態では、第一接触子310の第一取付部311と第二接触子320の第二取付部321とが互いに平行かつ面対向して設けられる。伝送基板360は、第一接触子310の第一取付部311と第二接触子320の第二取付部321とに挟まれて設けられる。これによれば、伝送基板360の一方側にある第一接触子310と裏面のグランド線362とを容易に電気的に接続できると共に、伝送基板360の他方側にある第二接触子320と表面のシグナル線363とを容易に電気的に接続できる。よって、伝送基板360に設けられる高周波伝送路は、本実施形態のように、マイクロストリップ線路であることが望ましい。
次に、第4実施形態の変形例について説明する。
上記実施形態では、第一接触子310の第一曲部317と第二接触子320の第二曲部327は、それぞれ押し付け方向に対して傾斜する直線状に形成される。
これに対し、第4実施形態における第一曲部317と第二曲部327とは、第1実施形態における第2変形例と同様に、弧状に湾曲した形状に形成されてもよい。また、第一曲部317と第二曲部327とは、直線状の形状と、湾曲した形状と、を組み合わせた形状に形成されてもよい。このような変形例であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
また、第一接触子310の第一曲部317は、第1実施形態の第3変形例(図10,11参照)のように、第一接触部316との境界部分B11と第一取付部311との境界部分B12とが、押し付け方向に沿って並ぶように構成されてもよい。この場合、第一曲部317に対応して、第二曲部327は、第二接触部326との境界部分B21と第二取付部321との境界部分B22とが、押し付け方向に沿って並ぶように構成すればよい。このような変形例によれば、第1実施形態の第3変形例と同様に、第一曲部317及び第二曲部327を変形させたい方向と変形しやすい方向とが一致すると共に、第一接触部316及び第二接触部326が押し付け方向に沿って移動する。これにより、第一端子部315と第二端子部325との相対的な位置関係の変化がより一層抑制されると共に、測定対象Tに対する第一接触部316及び第二接触部326の接触姿勢がより一層安定する。したがって、測定装置400における伝送特性の再現性が高まり、繰り返し行われる測定の測定精度が向上する。
また、上記実施形態では、第一接触子310及び第二接触子320と同軸ケーブル50とを接続する接続部は、フレキシブルプリント基板である伝送基板360である。これに対し、第4実施形態に係る測定装置400では、伝送基板360に代えて、第1実施形態における第一銅箔基板61及び第二銅箔基板62を接続部としてもよい。言い換えれば、第1実施形態において、第一接触子10及び第二接触子20に代えて、第4実施形態における第一接触子310及び第二接触子320を適用してもよい。
次に、各実施形態の作用効果についてまとめて説明する。
第1、第3、第4実施形態に係る測定装置100,300,400は、測定対象Tに押し付けられる第一接触子10,310及び第二接触子20,320と、第一接触子10,310及び第二接触子20,320が取り付けられるベース部30と、ベース部30を駆動して第一接触子10,310及び第二接触子20,320を所定の押し付け方向に沿って測定対象Tに押し付ける駆動機構40と、電気信号を伝送する同軸ケーブル50と、同軸ケーブル50と第一接触子10,310及び第二接触子20,320とを電気的に接続すると共に、ベース部30が駆動されるのに伴って変形して同軸ケーブル50に対する第一接触子10,310及び第二接触子20,320の相対移動を許容する伝送基板60,160,360と、を備え、第一接触子10,310は、ベース部30に取り付けられ同軸ケーブル50に電気的に接続される第一取付部11,311と、測定対象Tに押し付けられ、測定対象Tへの押し付けに伴い第一取付部11,311に優先して弾性変形する第一端子部15,315と、を有し、第二接触子20,320は、ベース部30に取り付けられ同軸ケーブル50に電気的に接続される第二取付部21,321と、測定対象Tに押し付けられ、測定対象Tへの押し付けに伴い第二取付部21,321に優先して弾性変形する第二端子部25,325と、を有し、第一接触子10,310の第一端子部15,315と第二接触子20,320の第二端子部25,325とが、それぞれ第一取付部11,311及び第二取付部21,321から、互いに沿うようにして延びる。
第1、第3、第4実施形態によれば、第一端子部15,315と第二端子部25,325とは、互いに沿うようにして延びているため、第一端子部15,315と第二端子部25,325との間隔を一定に保ちやすく、測定対象Tへの押し付けの際にも間隔が変化しにくい。よって、第一接触子10,310と第二接触子20,320とにより構成される伝送経路において特性インピーダンスを一定に保ちやすく、同軸ケーブル50との特性インピーダンスの整合が図られるため、測定対象Tの高周波特性を精度よく測定することができる。
また、第1実施形態、第1実施形態の第2、第3変形例、第3、第4実施形態では、第一端子部15,315は、押し付け方向に沿って延び測定対象Tに押し付けられる第一接触部16,316と、第一接触部16,316から曲がって形成される第一曲部17,17b,17c、317と、を有し、第二端子部25,325は、押し付け方向に沿って延び測定対象Tに押し付けられる第二接触部26,326と、第二接触部26,326から曲がって形成されると共に第一曲部17,17b,17c、317に沿うように形成される第二曲部27,27b,27c,327と、を有する。
第1実施形態、第1実施形態の第2、第3変形例、第3、第4実施形態によれば、第二曲部27,27b,27c,327は第一曲部17,17b,17c、317に沿って形成されるため、第一接触部16,316及び第二接触部26,326を測定対象Tに押し付ける際、第一曲部17,17b,17c、317と第二曲部27,27b,27c,327とは、同じ方向に同程度の変形量だけ変形する。よって、第一端子部15,315と第二端子部25,325の間隔は変形の前後において変化しない。このように、第一端子部15,315と第二端子部25,325とが変形しても間隔が変化しないため、測定対象Tへの第一端子部15,315と第二端子部25,325との押し付けによる特性インピーダンスの変化を抑制して伝送損失の発生を抑制することができる。
また、第1実施形態の第3変形例では、第一曲部17b,17cは、測定対象Tへの第一接触部16の押し付けに伴い、第一接触部16が押し付け方向に沿って移動するように弾性変形し、第二曲部27b,27cは、測定対象Tへの第二接触部26の押し付けに伴い、第二接触部26が押し付け方向に沿って移動するように弾性変形する。
また、第1実施形態の第3変形例に係る測定装置100では、第一曲部17b,17c及び第二曲部27b,27cは、押し付け方向に垂直な一方向に向けて凸となるように形成され、第一曲部17b,17cと第一接触部16との境界部分B11及び第一曲部17b,17cと第一取付部11との境界部分B12は、押し付け方向に沿って設けられ、第一曲部17b,17cの凸の頂部T1は、押し付け方向に沿った位置が、第一曲部17b,17cと第一接触部16との境界部分B11及び第一曲部17b,17cと第一取付部11との境界部分B12の中央となるように設けられ、第二曲部27b,27cと第二接触部26との境界部分B21及び第二曲部27b,27cと第二取付部21との境界部分B22は、押し付け方向に沿って設けられ、第二曲部27b,27cの凸の頂部T2は、押し付け方向に沿った位置が、第二曲部27b,27cと第二接触部26との境界部分B21及び第二曲部27b,27cと第二取付部21との境界部分B22の中央となるように設けられる。
第1実施形態の第3変形例によれば、第一接触子10及び第二接触子20を測定対象Tに押し付けると、第一接触部16及び第二接触部26が押し付け方向に沿って移動するように、第一曲部17b,17c及び第二曲部27b,27cが弾性変形する。つまり、第一接触部16及び第二接触部26が押し付け方向に垂直な方向には移動しないように、第一曲部17b,17c及び第二曲部27b,27cは変形する。第一接触部16と第二接触部26とが押し付け方向に垂直方向に移動しないため、測定対象Tに対して第一接触部16と第二接触部26とを安定した姿勢で接触させることができると共に、第一接触部16と第二接触部26との間隔の変化も抑制できる。したがって、測定対象Tへの押し付けに伴う第一接触子10及び第二接触子20での伝送損失の発生をより一層抑制することができる。
また、第1〜第4実施形態では、第一接触子10,110,310の第一取付部11,111,311と第二接触子20,120,320の第二取付部21,121,321とは、それぞれ押し付け方向に平行な板状に形成され、互いに対向するように配置される。
また、第4実施形態では、第一端子部315と第二端子部325とが、第一取付部311と第二取付部321とから、第一取付部311及び第二取付部321に対して垂直な方向に向けて、かつ、測定対象Tに向かう押し付け方向の前方に向けて延びる。
第4実施形態によれば、第一曲部317と第二曲部327とは、第一接触子310及び第二接触子320の板厚方向であるX軸方向に向け延びるように形成される。これにより、意図する変形の方向と、変形しやすい方向とが一致するため、意図しない変形による特性インピーダンスの不整合の発生を抑制することができる。したがって、第一曲部317及び第二曲部327の変形の再現性が向上するため、繰り返し行われる測定対象Tの電気的特性の測定についての再現性が向上し、測定精度が向上する。
また、第2、第3、第4実施形態に係る測定装置200,300,400は、測定対象Tに押し付けられ測定対象Tへの押し付けに伴って変形する第一接触子10,110,310及び第二接触子20,120,320と、第一接触子10,110,310及び第二接触子20,120,320が取り付けられるベース部30と、ベース部30を駆動して第一接触子10,110,310及び第二接触子20,120,320を測定対象Tに押し付ける駆動機構40と、電気信号を伝送する同軸ケーブル50と、シグナル線163,363及びグランド線162,362を含む高周波伝送線路が設けられ、同軸ケーブル50と第一接触子10,110,310及び第二接触子20,120,320とを電気的に接続すると共に、柔軟性を有する伝送基板160,360と、を備える。
第2実施形態によれば、伝送基板160,360が柔軟性を有するため、伝送基板160,360が変形しても、伝送基板160,360のグランド線162,362とシグナル線163,363との相対的な位置関係はほとんど変化しない。よって、ベース部30を移動させて第一接触子10,110,310及び第二接触子20,120,320を測定対象Tに押し付ける際の伝送基板160,360における特性インピーダンスの変化が抑制される。これにより、測定装置200,300,400のキャリブレーションを高精度で行うことができ、測定装置200,300,400の測定精度を向上させることができる。
また、第4実施形態では、第一接触子310と第二接触子320とは、第一取付部311と第二取付部321とが互いに平行かつ面対向するように配置され、伝送基板360の一方の面には、第二接触子320の第二取付部321を電気的に接続可能なシグナル線363が形成され、伝送基板360の他方の面には、第一接触子310の第一取付部311を電気的に接続可能なグランド線362が形成される。
次に、各実施形態間で共通する変形例について説明する。以下のような変形例も本発明の範囲内であり、以下の変形例と上記各実施形態の各構成とを組み合わせたり、以下の変形例同士を組み合わせたりすることも可能である。また、上記実施形態の説明において記載された変形例についても同様に、他の変形例と任意に組み合わせることが可能である。
上記各実施形態において、グランド線路とシグナル線路との経路長とは、等しく形成されることが望ましい。具体的には、接続部におけるグランド線路(第一銅箔基板61、伝送基板160,360におけるグランド線162,362)とシグナル線路(第二銅箔基板62、伝送基板160,360におけるシグナル線163,363)との経路長が等しいことが望ましく、第一接触子10,110,310と第二接触子20,120,320の経路長が等しいことが望ましい。これによれば、グランド線路とシグナル線路との結合強度を一定に保ちやすく、特性インピーダンスの不整合を抑制できる。しかしながら、各実施形態は、グランド線路とシグナル線路の経路長が等しいものに限定されるものではなく、経路長が異なっていてもよい。
また、上記第2、第3、第4実施形態では、伝送基板160,360は、柔軟性を有するフレキシブルプリント基板である。これに対し、柔軟性を有する伝送基板160,360としては、柔軟性を有する部位と有していない部位とを含むフレックスリジット基板であってもよい。
また、上記第2及び第3実施形態では、伝送基板160に設けられる高周波伝送線路は、コプレーナ線路である。また、第4実施形態では、伝送基板360に設けられる高周波伝送線路は、マイクロストリップ線路である。これに対し、高周波伝送線路は、上記実施形態に記載の構成に限られるものではなく、その他のものであってもよい。接触子は、高周波伝送線路の種類に応じた数だけ備えられるように構成すればよい。つまり、測定装置200,300,400は、高周波伝送線路の種類に応じて、三つ以上の接触子を備えるものでもよい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
また、本明細書において、「平行」、「垂直」、「直交」、「同一」、「均一」、「一定」、「一様」等の語は、厳密な意味ではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲においてずれが許容される。