JP6683081B2 - 金属酸化物の製造方法 - Google Patents

金属酸化物の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6683081B2
JP6683081B2 JP2016177037A JP2016177037A JP6683081B2 JP 6683081 B2 JP6683081 B2 JP 6683081B2 JP 2016177037 A JP2016177037 A JP 2016177037A JP 2016177037 A JP2016177037 A JP 2016177037A JP 6683081 B2 JP6683081 B2 JP 6683081B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
value
less
metal oxide
emulsifier
mass
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2016177037A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018039711A (ja
Inventor
慎吾 細谷
慎吾 細谷
樹 松元
樹 松元
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kao Corp
Original Assignee
Kao Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kao Corp filed Critical Kao Corp
Priority to JP2016177037A priority Critical patent/JP6683081B2/ja
Publication of JP2018039711A publication Critical patent/JP2018039711A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6683081B2 publication Critical patent/JP6683081B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Description

本発明は、金属酸化物の製造方法に関する。
金属酸化物は、光導電性、圧電性、蛍光性、化学反応の触媒特性等の性能を利用して、様々な工業分野で利用されている。そのため、各用途に適した構造の金属酸化物を効率的に得るための製造方法に関する研究が盛んに行われている。例えば、金属酸化物を化学反応触媒として用いる場合は、触媒性能を最大限に発揮させるために、微粒子化や比表面積を高めることを目的に、製造方法が種々検討されている。
金属酸化物の製造方法に関しては、例えば、金属蒸気と酸素含有ガスを混合して金属酸化物微粒子を得る気相法、金属無機酸塩水溶液を霧化し、霧を加熱炉で熱分解反応させ、酸化物系微粒子を得る噴霧熱分解法等がある。これらの手法は、製造上、高温の蒸気や霧を制御する必要があるため、装置が複雑となり、コスト高になる傾向があり、大量生産には適していない。
一方、金属酸化物や無機塩微粒子等を、油中水滴型エマルジョン(W/O型エマルジョン)を利用して製造することも試みられている。特許文献1の実施例4では、メタバナジン酸アンモニウム水溶液を原料として用いて、マイクロエマルジョンを作製し、これにアンモニア水を加えて、超微粒子分散液を作製する技術が開示されている。
特許文献2では、ケイ酸ナトリウム水溶液がn−デカン中に分散したW/O型エマルジョンに炭酸ガスを吹き込み、ゲル化させ、シリカヒドロゲルを得る技術が開示されている。
特許文献3では、硫酸亜鉛水溶液等と油液とでW/O型エマルジョンを作製し、溶解度差を利用して硫酸亜鉛等を結晶化させ、油液及び水溶液を分離して微粒子水溶性無機塩を製造する方法が開示されている。
特開平7−246343号公報 特開2004−298859号公報 特開2009−120423号公報
W/O型エマルジョンを利用して、金属酸化物を得る手法は、気相法等と比較して、高温のガスを制御する必要性がなく、装置が簡便であるため、製造コストが低く、大量生産に適している。しかしながら、W/O型エマルジョンを利用した場合において、触媒として利用する際に強く要求される、比表面積が大きな金属酸化物を得ることが困難であった。
そこで、本発明は、低コストで大量生産が可能であり、かつ、比表面積が大きく触媒性能に優れる金属酸化物の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、特定濃度の金属塩水溶液を、特定の油剤成分と特定の乳化剤を含む油相に分散乳化させ、W/O型エマルジョン(以下、W/O型乳化物ともいう)を作製し、これにアルカリを添加することで、比表面積が大きい金属酸化物が得られることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の[1]に関する。
[1]乳化剤及び油剤成分を含有する油相に、水溶性金属塩を含有する水相が分散乳化したW/O型乳化物に、アルカリを添加する工程を経て金属酸化物を製造する方法であって、該水相中の水溶性金属塩の濃度が2質量%以上15質量%以下であり、乳化剤の有機性値が100以上700以下、乳化剤の無機性値が220以上1300以下であり、油剤成分の有機性値が150以上750以下、油剤成分の無機性値が0以上300以下であり、乳化剤の無機性値と油剤成分の無機性値との差(乳化剤の無機性値−油剤成分の無機性値)が、220以上1300以下である、金属酸化物の製造方法。
本発明によれば、低コストで大量生産が可能であり、かつ、比表面積が大きく触媒性能に優れる金属酸化物の製造方法を提供することができる。
実施例1において得られた粉末のX線回折測定結果 実施例11において得られた粉末のX線回折測定結果
[金属酸化物の製造方法]
本発明は、乳化剤及び油剤成分を含有する油相に、水溶性金属塩を含有する水相が分散乳化したW/O型乳化物に、アルカリを添加する工程を経て金属酸化物を製造する方法であって、該水相中の水溶性金属塩の濃度が2質量%以上15質量%以下であり、乳化剤の有機性値が100以上700以下、乳化剤の無機性値が220以上1300以下であり、油剤成分の有機性値が150以上750以下、油剤成分の無機性値が0以上300以下であり、乳化剤の無機性値と油剤成分の無機性値との差(乳化剤の無機性値−油剤成分の無機性値)が、220以上1300以下である、金属酸化物の製造方法である。
なお、本発明において乳化剤の無機性値と油剤成分の無機性値との差(乳化剤の無機性値−油剤成分の無機性値)をΔIV、乳化剤の有機性値と油剤成分の有機性値との差(乳化剤の有機性値−油剤成分の有機性値)をΔOVと称することもある。
本発明の製造方法によって得られる金属酸化物の比表面積が大きい理由は定かではないが、W/O型乳化物の水滴という微細な空間内で、水溶性金属塩がアルカリの添加により不溶化することが重要と考えられる。よって、乳化剤の有機性値が100未満の場合や無機性値が1300より大きい場合には、乳化剤は水溶性となり、O/W乳化物となってしまうため金属酸化物の比表面積が小さくなると考えられる。また、乳化剤の有機性値が700より大きい場合や無機性値が220未満の場合には、乳化剤は油溶性となり、W/O型乳化物の界面吸着量が低下するため、水滴が粗大化して金属酸化物の比表面積が小さくなると考えられる。一方、油剤成分の有機性値が150未満だとガス化しやすいためW/O型乳化物が安定して調製できず、750より大きいと油剤の疎水性相互作用が大きくなるため、水滴が粗大化して金属酸化物の比表面積が小さくなると考えられる。また、油剤成分の無機性値が300より大きいと、油剤が水溶性となるためW/O型乳化物が安定して調製できない。さらに、ΔIVが1300より大きいと、乳化剤と油剤との静電性(双極子モーメント、極性、誘電率など)が大きく異なるため水滴が粗大化して金属酸化物の比表面積が小さくなると考えられる。
以下、本発明の金属酸化物の製造方法を具体的に説明する。
<W/O型乳化物>
本発明では、特定のW/O型乳化物にアルカリを添加する。W/O型乳化物とは、油中水滴型のエマルションであり、油相に水滴が分散乳化している構造を有する。
(水溶性金属塩を含有する水相)
W/O型乳化物における水相は、水溶性金属塩を含有する。水溶性金属塩の金属種としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、チタン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム等が挙げられる。塩の種類としては、例えば、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。この中でも、比表面積が大きい金属酸化物を得る観点から、好ましくは亜鉛塩、コバルト塩、銅塩、ニッケル塩、ルテニウム塩、パラジウム塩であり、より好ましくは硝酸亜鉛である。
本発明に用いる水としては水道水、イオン交換水、蒸留水等が挙げられるが、触媒の反応阻害を回避する観点からイオン交換水または蒸留水が好ましく、蒸留水がより好ましい。
水相中の水溶性金属塩の濃度は、比表面積の大きい金属酸化物を得る観点から、2質量%以上であり、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは4質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上であり、そして、15質量%以下であり、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは9質量%以下であり、さらに好ましくは8質量%以下である。
水相中の水の濃度は、比表面積の大きい金属酸化物を効率的に得る観点から、好ましくは85質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは92質量%以上であり、そして、好ましくは98質量%以下であり、より好ましくは96質量%以下であり、更に好ましくは95質量%以下である。
(乳化剤及び油剤成分を含有する油相)
油相は、水相を分散乳化させるための分散媒として機能する。油相には、乳化剤及び油剤成分が含まれる。
≪油剤成分≫
油相を構成する油剤成分は、比表面積が大きい金属酸化物を得る観点から、有機性値が150以上750以下、無機性値が0以上300以下の油剤成分が使用できる。
有機性値、無機性値とは、「有機概念図」における値であり、「有機概念図」とは、化合物の共有結合性を有機性値で評価すると共にイオン結合性を無機性値で評価し、横軸を有機軸及び縦軸を無機軸とした直交座標平面上に、その化合物の位置付けを点(有機性値,無機性値)で表した図である。有機性値はその化合物に含まれる各置換基に与えられた有機性値と、それら置換基に含まれる炭素を除いた炭素数に20を掛けた値との累積加算値であり、無機性値はその化合物に含まれる各置換基に与えられた無機性値の累積加算値である。なお、置換基の有機性値と無機性値に関しては、「有機概念図−基礎と応用−」(著者:甲田義生、発行元:三共出版、昭和59年発行)p.13の表を参照することができる。
油剤成分の有機性値(OV)は、安定したW/O型乳化物を調製する観点から150以上であり、好ましくは180以上であり、より好ましくは200以上であり、更に好ましくは230以上であり、そして、金属酸化物の比表面積を大きくする観点から750以下であり、好ましくは600以下であり、より好ましくは500以下であり、更に好ましくは400以下である。
油剤成分の無機性値(IV)は、0以上であり、そして300以下であり、好ましくは200以下であり、より好ましくは100以下である。
油剤成分として使用できる化合物としては、例えば、ヘキサデセン(有機性値:320、無機性値:2)、オクタデセン(有機性値:360、無機性値:2)、オレイン酸メチル(有機性値:380、無機性値:62)、ラウリルアルコール(有機性値:240、無機性値:100)、イソステアリン酸プロピレングリコール(有機性値:410、無機性値:166)、オレイン酸プロピレングリコール(有機性値:420、無機性値:162)、ジオクタン酸エチレングリコール(有機性値:340、無機性値:120)、ジカプリン酸ジエチレングリコール(有機性値:480、無機性値:195)、ジカプロン酸プロピレングリコール(有機性値:300、無機性値:120)、ジミリスチン酸グリセリル(有機性値:620、無機性値:220)、ジヤシ油脂肪酸グリセリル(有機性値:540、無機性値:220)、ジラウリン酸グリセリル(有機性値:540、無機性値:220)、ジラウリン酸ジエチレングリコール(有機性値:560、無機性値:195)、ジラウリン酸ポリエチレングリコール(有機性値:600、無機性値:270)、ジ酢酸モノステアリン酸グリセリル(有機性値:500、無機性値:180)、セスキオレイン酸グリセリル(有機性値:600、無機性値:243)、セバシン酸ジイソプロピル(有機性値:300、無機性値:120)、セバシン酸ジエチル(有機性値:280、無機性値:120)、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル(有機性値:540、無機性値:180)、トリ2−エチルへキサン酸グリセリル(有機性値:510、無機性値:180)、トリオクタン酸トリメチロールプロパン(有機性値:550、無機性値:180)、トリカプリル酸グリセリル(有機性値:540、無機性値:180)、パルミチン酸エチレングリコール(有機性値:360、無機性値:160)、ヒマシ油脂肪酸メチル(有機性値:380、無機性値:162)、ミリスチルアルコール(有機性値:280、無機性値:100)、モノオレイン酸エチレングリコール(有機性値:400、無機性値:162)、モノステアリン酸エチレングリコール(有機性値:400、無機性値:160)、モノステアリン酸プロピレングリコール(有機性値:420、無機性値:160)、ヤシ油アルコール(有機性値:240、無機性値:100)、乳酸オクチルドデシル(有機性値:450、無機性値:160)、乳酸オレイル(有機性値:420、無機性値:162)、乳酸セチル(有機性値:380、無機性値:160)等を例示することができる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
好ましい有機性値(OV)及び無機性値(IV)を有する油剤成分としては、例えば、ヘキサデセン(有機性値:320、無機性値:2)、オクタデセン(有機性値:360、無機性値:2)、オレイン酸メチル(有機性値:380、無機性値:62)、ラウリルアルコール(有機性値:240、無機性値:100)等が挙げられる。
W/O乳化物中の油剤成分の含有量は、比表面積の大きい金属酸化物を安定的かつ効率的に得る観点から好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、そして、好ましくは90%以下であり、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
≪乳化剤≫
水相を油相中に分散乳化させ、W/O型乳化物とするために、乳化剤を使用する。乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤等を使用することができる、これらの中でも、W/O型乳化物を形成させ易い観点から、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
乳化剤の有機性値は、比表面積が大きい金属酸化物を得る観点から、100以上であり、好ましくは150以上であり、より好ましくは200以上であり、更に好ましくは300以上であり、そして、700以下であり、好ましくは600以下であり、より好ましくは550以下であり、更に好ましくは500以下である。
乳化剤の無機性値は、比表面積が大きい金属酸化物を得る観点から、220以上であり、好ましくは230以上であり、より好ましくは240以上であり、更に好ましくは250以上であり、そして、1300以下であり、好ましくは1000以下であり、より好ましくは700以下であり、更に好ましくは500以下である。
好ましい乳化剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル(有機性値330、無機性値280)、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル(有機性値360、無機性値340)、ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル(有機性値390、無機性値400)、ポリオキシエチレン(6)ラウリルエーテル(有機性値420、無機性値460)、ポリオキシエチレン(4)オレイルエーテル(有機性値480、無機性値342)、ソルビタンモノオレイン酸エステル(有機性値480、無機性値392)等が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において、比表面積が大きい金属酸化物を得る観点から、乳化剤の無機性値と油剤成分の無機性値の差ΔIV((乳化剤の無機性値)−(油剤成分の無機性値))が220以上であり、好ましくは230以上であり、より好ましくは240以上であり、更に好ましくは250以上であり、そして、1300以下であり、好ましくは、900以下であり、より好ましくは700以下であり、更に好ましくは500以下である。
また、乳化剤の有機性値と油剤成分の有機性値の差ΔOV((乳化剤の無機性値)−(油剤成分の有機性値))は、好ましくは−50以上、より好ましくは−40以上、更に好ましくは−20以上であることが好ましく、そして、好ましくは550以下であり、より好ましくは300以下であり、更に好ましくは200以下である。
ΔIVとΔOVを制御することによって、比表面積が大きい金属酸化物が得られる理由は、おそらく乳化剤と油剤成分のIVとOVの値が近いことで乳化しやすくなり、水滴が微細化するからと考えられる。
W/O型乳化物には、上述した油剤成分、乳化剤以外の添加剤等の他の成分を含んでもよい。
<W/O型乳化物の形成方法>
W/O型乳化物の形成方法は、特に限定されないが、油剤成分に乳化剤を添加・溶解した油相に、特定濃度の水溶性金属塩水溶液を加え、分散機を用いて分散乳化させる方法が好ましい。上記した通り、本発明の水相中の水溶性金属塩の濃度は2質量%以上であり、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは4質量%以上であり、更に好ましくは5質量%以上であり、そして、15質量%以下であり、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは9質量%以下であり、更に好ましくは8質量%以下であるため、かかる濃度範囲に調製した水溶性金属塩水溶液を油相に加えるとよい。分散機としては、ホモジナイザー、超音波分散機等が好ましい。
W/O型乳化物中の水相の割合は、1質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましく、そして、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。
W/O型乳化物中の油剤成分の割合は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、そして、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下が更に好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
W/O型乳化物中の乳化剤の割合は、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、そして、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましい。
<W/O型乳化物にアルカリを添加する工程を経て金属酸化物を得る方法>
上述したW/O型乳化物にアルカリを添加する工程を経て、液滴中に金属塩由来の析出物(水溶性金属塩とアルカリとの反応物)を生成させることができる。
アルカリとしては、例えば、水にアルカリを溶解させて調製したアルカリ水溶液を使用することができる。アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニア、水酸化テトラアルキルアンモニウム等を用いることができる。この中でも、アンモニアが好ましい。
アルカリを添加する態様としては、アンモニアガス等の気体をW/O乳化物に吹き込んでもよいし、アルカリ水溶液としてW/O乳化物に添加してもよい。添加量等、反応条件の制御のし易さの観点から、アルカリ水溶液を添加する態様が好ましい。
アルカリ水溶液のアルカリ濃度は、好ましくは0.3質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは10質量%以上であり、そして、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
W/O型乳化物へのアルカリ水溶液の添加量は、水相中の金属塩に対して、アルカリが好ましくは1.0倍当量以上、より好ましくは1.5倍当量以上、更に好ましくは1.8倍当量以上であり、そして、好ましくは3倍当量以下、より好ましくは2.5倍当量以下である。
W/O型乳化物へのアルカリ水溶液の添加は、一括添加、分割添加、連続添加のいずれの態様でもよい。比表面積の大きい金属酸化物を得る観点から、一括添加が好ましい。アルカリ水溶液を添加する際の温度は、特に限定されないが、好ましくは50〜95℃であり、より好ましくは70〜90℃である。生成した金属塩由来の析出物を単離する方法は、デカンテーション、遠心分離等、公知の手法を適用することができる。例えば、70℃〜90℃で0.5時間〜5時間程度保温し、水相と油相を分離させ、その後、分液ロート等で、水溶性金属塩由来の析出物が懸濁した水相を分離させた後、分離物について遠心分離操作を行い、次いで、好ましくは30℃〜300℃、より好ましくは40℃〜200℃、更に好ましくは60℃〜150℃、より更に好ましくは70℃〜100℃で加熱乾燥させることにより、粉末状の水溶性金属塩由来の析出物を単離することができる。該粉末状の水溶性金属塩由来の析出物は、用いる水溶性金属塩の種類にもよるが、金属酸化物である場合(アルカリ添加によって直接金属酸化物が生成する場合)、金属酸化物と金属水酸化物との混合物である場合、金属水酸化物である場合等、種々の形態が考えられる。
金属水酸化物を金属酸化物とするために、アルカリを添加することにより生じる析出物に対して焼成する焼成工程を設けてもよい。焼成温度は、好ましくは300℃〜1,200℃、より好ましくは500℃〜1,000℃、更に好ましくは600℃〜900℃であり、焼成時間は、好ましくは1〜48時間、より好ましくは3〜24時間である。なお、仮に焼成工程を経たとしても、粉末を焼成するので、複雑な装置は必要とせず、高温のガスのハンドリングを要する従来の気相法や噴霧熱分解法と比較しコスト上のメリットは大きい。
上記粉末状の水溶性金属塩由来の析出物は、例えば、X線回折測定(XRD測定)により、金属酸化物であることを同定することができる。
本発明を適用することで、水溶性金属塩の種類に応じた金属酸化物を得ることが可能となる。金属酸化物の種類としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化ストロンチウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ルテニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム、酸化オスミウム等が挙げられる。例えば、本発明により得られる酸化亜鉛は、比表面積が大きいため、長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪酸等の還元反応等の触媒用として有用である。
本発明で得られる金属酸化物の比表面積は、触媒活性の観点から、好ましくは6m/g以上であり、より好ましくは10m/g以上であり、更に好ましくは15m/g以上であり、更に好ましくは20m/g以上であり、更に好ましくは25m/g以上である。また、本発明で得られる金属酸化物の比表面積は、大きいほど触媒活性が優れるため、上限値は特に限定されないが、製造上の観点から、好ましくは800m/g以下、より好ましくは600m/g以下、更に好ましくは400m/g以下である。
なお、比表面積は、BET法によるBET比表面積であり、実施例に記載の方法によって測定できる。
金属酸化物の比表面積の測定、及び触媒活性の評価は、以下の方法により行った。
[金属酸化物の比表面積]
「マイクロメリティックス比表面積測定装置フローソーブIII2310」(((株))島津製作所製)を用いて、下記条件で窒素吸着によるBET法により、BET比表面積を測定した。
・サンプル量:0.4 〜 0.6 g
・脱気条件: 70℃、 20分間
・吸着ガス: 窒素
[X線回折測定法]
株式会社リガク製粉末X線回折装置MiniflexIIを使用した。Cu−Kα線をX線源とし、測定条件は管電圧を30kV、管電流を15mA、走査範囲(2θ)を10〜80°、サンプリング幅0.02°、スキャンスピード10°/min、発散スリット1.25°、散乱スリット8mm、受光スリット解放とした。
実施例1
油剤成分としてヘキサデセン127.24g、乳化剤としてポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル10gをホモミキサー(プライミクス株式会社製、「T.K−ROBOMIX」)に導入し、次いで、該油相に硝酸亜鉛濃度6.37質量%の硝酸亜鉛水溶液60gを加え、室温下(25℃)において、10,000rpmで60分間撹拌し、W/O乳化物を調製した。その後、25質量%のアンモニア水溶液2.76gをW/O乳化物に一括添加し、水相に酸化亜鉛を生成させた。80℃で1時間保温させた後、分液ロートを用い、酸化亜鉛が懸濁した水相を分離させ、スラリーを得た。次いで、スラリーについて12,000rpm、5分間、20℃の条件で遠心分離(日立工機株式会社製、「CR21GIII」)を行い、上澄みを捨てて水で再分散する洗浄操作を三回行い、得られた固体を80℃で12時間、加熱乾燥させて、粉末を得た。得られた粉末は、X線回折測定の結果、酸化亜鉛であることを同定した(図1)。得られた酸化亜鉛のBET比表面積を表1に示す。
実施例2〜10、比較例1、2
油剤成分の種類及び量、乳化剤の種類及び量、硝酸亜鉛濃度、アンモニア水溶液の添加量を表1の通り変更した以外は、実施例1と同様の方法で、酸化亜鉛粉末を得た。
得られた粉末のBET比表面積を表1に示す。
実施例11
油剤成分としてオレイン酸メチル110g、乳化剤としてポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル(花王株式会社製、「エマルゲン106」)10gをホモミキサーに導入し、該油相に対して硝酸亜鉛濃度3.18質量%の硝酸亜鉛水溶液60gを加え、室温下(25℃)において、10,000rpmで60分間撹拌し、W/O乳化物を調製した。その後、1Mの苛性ソーダ水溶液20gをW/O乳化物に一括添加し、水相に酸化亜鉛を生成させた。80℃で1時間保温させた後、分液ロートを用い、酸化亜鉛が懸濁した水相を分離させ、スラリーを得た。次いで、スラリーについて12,000rpm、5分間、20℃の条件で遠心分離(日立工機株式会社製、「CR21GIII」)を三回行い、得られた固体を80℃で12時間、加熱乾燥させて、粉末を得た。得られた粉末は、X線回折測定の結果、酸化亜鉛であることを同定した(図2)。得られた粉末のBET比表面積を表1に示す。
比較例3
硝酸亜鉛濃度1.84質量%の硝酸亜鉛水溶液102.97gを300mlのフラスコに入れ、0.5質量%アンモニア水溶液を一括添加で、合計102.04gを添加し、80℃に昇温して1時間保温した。その後、ろ過して得られた固体を80℃で12時間、加熱乾燥させて粉末を得た。
表1の結果より、実施例1〜11により得られた酸化亜鉛の比表面積は、各比較例と比較して大きかった。特に、硝酸亜鉛濃度を4〜9%の範囲とした実施例1〜6により得られた酸化亜鉛は、他の実施例、比較例と比較して、比表面積がより大きかった。
実施例4及び比較例3の調製を複数回繰り返して得られた酸化亜鉛を600℃で1時間半焼成すると、比表面積はそれぞれ19.3m/gと1.35m/gになった。これら触媒10gとオレイン酸メチルエステル200gを500mlオートクレーブに仕込み、密閉した後、窒素置換4回と水素置換4回を行い、水素を14MPaまで注入して280℃まで昇温した。280℃到達時にサンプリングを行い、反応0時間のサンプルとした。サンプリング終了後、19MPaになるように水素ガスを抜いて圧力を調整して、再び密閉して4時間後にサンプリングを行った。各サンプルのけん化価を測定し、反応速度乗数を次式で算出した。
k=(lnSV0hr−lnSV4hr)/4
上記式において、SV0hrとSV4hrは、それぞれ反応0時間と4時間のけん化価を表す。
その結果、実施例4で得られた酸化亜鉛の触媒活性が0.02hr-1、比較例3で得られた酸化亜鉛の触媒活性が0.01hr-1であった。このことにより、本発明により得られた金属酸化物は、触媒用の金属酸化物として有用であることが分かった。

Claims (7)

  1. 乳化剤及び油剤成分を含有する油相に、水溶性金属塩を含有する水相が分散乳化したW/O型乳化物に、アルカリを添加する工程を経て金属酸化物を製造する方法であって、
    該水相中の水溶性金属塩の濃度が2質量%以上15質量%以下であり、
    乳化剤の有機性値が100以上700以下、乳化剤の無機性値が220以上1300以下であり、
    油剤成分の有機性値が150以上750以下、油剤成分の無機性値が0以上300以下であり、
    乳化剤の無機性値と油剤成分の無機性値との差(乳化剤の無機性値−油剤成分の無機性値)が220以上1300以下である、金属酸化物の製造方法。
  2. 乳化剤の有機性値と油剤成分の有機性値との差(乳化剤の有機性値−油剤成分の有機性値)が−50以上550以下である、請求項1に記載の金属酸化物の製造方法。
  3. 前記水溶性金属塩が亜鉛塩である、請求項1又は2に記載の金属酸化物の製造方法。
  4. 乳化剤がノニオン性界面活性剤である、請求項1〜3のいずれかに記載の金属酸化物の製造方法。
  5. アルカリを添加することにより生じる析出物に対して焼成する工程を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の金属酸化物の製造方法。
  6. 前記金属酸化物が、長鎖脂肪酸又は長鎖脂肪酸エステルの還元反応用触媒として用いられる、請求項1〜5のいずれかに記載の金属酸化物の製造方法。
  7. 前記金属酸化物の比表面積が6m/g以上である、請求項1〜6のいずれかに記載の金属酸化物の製造方法。
JP2016177037A 2016-09-09 2016-09-09 金属酸化物の製造方法 Active JP6683081B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016177037A JP6683081B2 (ja) 2016-09-09 2016-09-09 金属酸化物の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2016177037A JP6683081B2 (ja) 2016-09-09 2016-09-09 金属酸化物の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018039711A JP2018039711A (ja) 2018-03-15
JP6683081B2 true JP6683081B2 (ja) 2020-04-15

Family

ID=61624917

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2016177037A Active JP6683081B2 (ja) 2016-09-09 2016-09-09 金属酸化物の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6683081B2 (ja)

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4032652B2 (ja) * 2001-02-23 2008-01-16 株式会社豊田中央研究所 複合酸化物粉末及びその製造方法
JP4812233B2 (ja) * 2003-02-28 2011-11-09 トヨタ自動車株式会社 複合酸化物の製造方法
JP2009082828A (ja) * 2007-09-28 2009-04-23 Fujifilm Corp 逆ミセル液、無機ナノ粒子及び無機ナノ粒子の製造方法
WO2013133411A1 (ja) * 2012-03-08 2013-09-12 堺化学工業株式会社 炭酸亜鉛塩粒子、酸化亜鉛粒子、それらの製造方法、放熱性フィラー及び化粧料
US9873108B2 (en) * 2013-01-31 2018-01-23 Japan Science And Technology Agency Metal oxide mesocrystal, and method for producing same

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018039711A (ja) 2018-03-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8415267B2 (en) Nanoparticles including metal oxide having catalytic activity
ES2271313T3 (es) Produccion de cera producida mediante sintesis de fischer-tropsch.
WO2001038024A1 (fr) Procede de production de poudre fine de nickel metallique comprenant des particules spheriques fines
JP7160839B2 (ja) 中空シリカ粒子の製造方法
JP5398126B2 (ja) 金属酸化物微粒子粉末、金属酸化物微粒子の製造方法および製造システム
JP2007029859A (ja) 微粒子の製造方法および装置
UA120850C2 (uk) Індивідуалізовані неорганічні частинки
JP6081936B2 (ja) チタン酸ストロンチウムの立方体若しくは直方体結晶の製造方法およびチタン酸ストロンチウム微粒子
Schnepp et al. A flexible one-pot route to metal/metal oxide nanocomposites
JP6683081B2 (ja) 金属酸化物の製造方法
JP4839854B2 (ja) ニッケル微粒子の製造方法
Kumar et al. Synthesis and catalytic applications of ruthenium (0) nanoparticles in click chemistry
Ghiaci et al. Size-controlled synthesis of ZrO2–TiO2 nanoparticles prepared via reverse micelle method: investigation of particle size effect on the catalytic performance in vapor phase Beckmann rearrangement
JP4576909B2 (ja) 多孔質体の製造方法
CN105498779A (zh) 一种纳米铜基co2加氢制甲醇催化剂的制备方法
JP2018044245A (ja) 白金族ナノ粒子分散液および白金族ナノ粒子
Zakarya et al. Synthesis of titanium dioxide microstructures via sucrose ester microemulsion-mediated hydrothermal method
JP2704485B2 (ja) 酸化物粉末の製造方法
JPH0826307B2 (ja) ケイ酸亜鉛蛍光粉末の製法
JP4765381B2 (ja) 耐熱性を備えた複合酸化物の製法
JP2008303131A (ja) 部分置換型チタン酸カルシウム微粒子の製造方法及びそれにより得られる材料
RU2506228C1 (ru) Способ получения мезопористого наноразмерного порошка диоксида церия (варианты)
JP2007106635A (ja) ジルコニア系酸化物粉末の製造方法
RU2741733C1 (ru) Способ получения нанопорошка иттрий-алюминиевого граната
JP6138588B2 (ja) 希土類酸化物微粒子の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20190610

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20200225

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20200220

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20200309

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6683081

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250