JP2704485B2 - 酸化物粉末の製造方法 - Google Patents

酸化物粉末の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、シリカ、アルミナ等よ
りなる金属酸化物等の酸化物の粉末を製造する方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】シリカ、アルミナ等のセラミックスは、
原料の粉末を焼結することにより製造している。原料の
粉末中には、粒子が隣接する粒子と強固に結合し、通常
のボールミル混合などによっては容易に解砕されない状
態である凝集した形(凝集体)が含まれることがある。
このような凝集体は焼結体の製造に悪影響を与え、従っ
て、原料中には凝集体は少ない方がよい。すなわち、凝
集体が少ない原料粉末を使用して焼結体を製造した場
合、異常粒成長が起こりにくいため、微細な結晶粒を有
し、特性に優れた焼結体が得られる。また、組成が均一
な粉末を使用すると、焼結むら、成分分布、あるいは特
性むらのない焼結体が得られる。そのため、凝集体の含
有量が少なく、かつ組成の均一な酸化物粉末が求められ
ている。
【0003】酸化物系のセラミックスの原料粉末におい
て、高純度で微粒の粉末を合成する方法として、共沈法
やアルコキシド法が採用されている。
【0004】しかし、従来の共沈法やアルコキシド法で
は、原料が高価であり、沈降粉末の仮焼、粉砕が必要で
あるため、その工程時に不純物が混入しやすい。また、
2成分以上の金属元素を含む複合酸化物の粉末を合成す
る場合、複合組成が沈降の初期と末期とで異なるという
問題がある。
【0005】また、酸化物粉末を製造する方法として、
液相を噴霧し、その後乾燥または焙焼する方法(噴霧焙
焼法)もある。この方法は、金属塩の溶液または懸濁液
を噴霧し、その後噴霧液滴を加熱することにより金属塩
を乾燥し、更に高温に加熱して酸化物に変化させる方法
である。この方法では、沈降粉末の仮焼、粉砕を必要と
しない利点がある。また、特開平2−59405号公報
には、噴霧焙焼法において、噴霧液滴の加熱を低温、中
温、高温の3段階に分けることにより組成の均一な複合
酸化物が得られることが記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の噴霧焙
焼法では、一般に噴霧した液滴を高温に加熱したとき粒
子の凝集が起きるため、得られる粉末に凝集粒子が多量
に入る欠点がある。また、加熱方式が外熱式にしろ内熱
式にしろ加熱部に温度分布が生じるため、組成の均一性
が得られないことが多い。特に、蒸気圧が異なる物質の
複合酸化物を製造する場合には、組成が不均一になりや
すい。また、温度分布があると、酸化物の形成に最適な
温度条件に設定しても、場所によっては高過ぎたり、低
過ぎたりするため、揮発成分を含む場合に制御すること
ができない。
【0007】本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みな
されたものであり、凝集体の含有量の少ない酸化物粉
末、あるいは複合酸化物の場合には組成の均一な複合酸
化物粉末を製造することができる方法を提供することを
目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の酸化物粉末の製
造方法は、下記(a)または(b)のうちの一方または
双方を噴霧するとともに(a)または(b)のうちの一
方または双方を酸化雰囲気で加熱することにより、
(a)または(b)のうちの一方または双方中の酸化さ
れることにより酸化物となる物質を酸化物に変換させる
とともに粉末化することを特徴とするものである。 (a)酸化されることにより酸化物となる物質を可燃性
液体中に懸濁させたサスペンション。 (b)酸化されることにより酸化物となる物質を液体中
に溶解させた溶液を、可燃性液体中に乳濁させたエマル
ション。
【0009】
【作用】本発明によれば、凝集体の含有量の少ない酸化
物粉末を製造することができる。この理由は明確ではな
いが、以下のように推察する。
【0010】本発明では、サスペンションまたはエマル
ションの媒体として可燃性液体を使用しているため、該
サスペンションまたはエマルションを噴霧した液滴を酸
化雰囲気で加熱すると、可燃性液体自体が燃焼する。こ
の燃焼の際に、その中に含まれる酸化物を形成する物質
が加熱、酸化されて酸化物に変換し、かつ該酸化物は粒
子状となる。媒体である可燃性液体が燃焼するため、上
記加熱、酸化は短時間で十分である。短時間の加熱によ
り粒子同士が接触する割合が少なくなり、凝集しにく
い。従って、凝集体の含有量の少ない酸化物粉末が得ら
れる。なお、本発明でいう凝集体とは、粒子が隣接する
粒子と強固に結合し、通常のボールミル混合などによっ
ては容易に解砕されない状態の粒子のことである。
【0011】また、複合酸化物を製造する場合には、加
熱部における温度分布が小さいため、複合組成の揃った
複合酸化物粉末が得られる。
【0012】
【発明の効果】本発明によれば、凝集体の含有量の少な
い酸化物粉末を製造することができる。また、複合酸化
物の場合には組成の均一な複合酸化物粉末を製造するこ
とができる。
【0013】
【実施例】以下、本発明をより具体的にした具体例を説
明する。
【0014】(具体例)本発明の酸化物の製造方法は、
(a)酸化されることにより酸化物となる物質を可燃性
液体中に懸濁させたサスペンション、または(b)上記
物質を溶解した溶液を、可燃性液体中に乳濁させたエマ
ルションのうちの一方または双方を噴霧するとともに該
サスペンションまたはエマルションを酸化雰囲気で加熱
するものである。
【0015】本発明で製造することができる酸化物とし
ては、特に制限はなく、例えば、室温で固体状態の金属
酸化物等が挙げられる。また、単独の酸化物でも複合酸
化物でも製造することができる。
【0016】酸化されることにより酸化物となる物質と
は、酸化物粉末の原料となるものであり、例えば、酸化
物として金属酸化物を製造する場合には、金属そのも
の、あるいは金属塩等が挙げられる。従って、例えば、
シリカ(SiO2 )を製造する場合には、珪素(Si)
またはその塩等が挙げられる。上記金属塩としては、塩
酸塩、硝酸塩、炭酸塩等が挙げられる。また、水等の液
体に対して溶解しない物質は、可燃性液体中に懸濁させ
ることによりサスペンションとして用いる。また、水等
の液体に対して溶解する物質は、該液体に溶解させた溶
液を可燃性液体中に乳濁させることによりエマルション
として用いるのがよい。このように、上記サスペンショ
ンまたはエマルションを作製できるものであれば、その
形状のいかんによらず原料として用いることができる。
また、酸化されることにより酸化物となる物質は、1種
で使用してもよく、または2種以上で使用してもよい。
このように、酸化されることにより酸化物となる物質
は、従来のアルコキシド法等で使用する原料よりも安価
なものを使用することができる。
【0017】また、サスペンションの調製は、酸化され
ることにより酸化物となる物質をそのまま可燃性液体中
に懸濁させる。エマルションの調製は、酸化されること
により酸化物となる物質を溶媒中に溶解させた溶液を可
燃性液体中に乳濁させる。従って、必ずしも溶媒に溶解
しない物質でも可燃性液体中に懸濁させることにより、
酸化物粉末の製造原料として用いることができる。
【0018】なお、サスペンションの場合、可燃性液体
中に懸濁させる物質の形状としては、粒子状等、どのよ
うなものでもよいが、微細なものほど微細な酸化物粉末
が得られる。また、エマルションの場合、酸化されるこ
とにより酸化物となる物質を溶解させる溶媒としては、
水が望ましい。従って、上記溶媒が水の場合、共沈法の
溶液と同様に、塩酸塩水溶液等として用いることができ
る。
【0019】可燃性液体は、サスペンションまたはエマ
ルションの媒体となるものであり、灯油、ケロシン、ガ
ソリン等が挙げられ、それらのうちの1種または2種以
上で使用する。
【0020】サスペンションまたはエマルションの作製
時、液体状態で混合するため、該サスペンションまたは
エマルションは均質なものとなる。この均質性により、
複合酸化物の製造の際、サスペンションまたはエマルシ
ョンの噴霧および加熱時に温度分布が生じないため、組
成の均一性が損なわれない。
【0021】なお、酸化されることにより酸化物となる
物質を溶解した溶液を可燃性液体中に乳濁させる場合、
乳化剤の添加、あるいはホモミキサ等による攪拌を行う
のがよい。乳化剤としては、金属イオンを含まないもの
が望ましく、特にノニオン系界面活性剤を用いるのが望
ましい。
【0022】また、エマルションを作製する際、適切な
乳化剤を用いることにより、径がほぼ均一な球が分散し
た懸濁液が得られる。この分散球の径の均一性が得られ
る酸化物粉末の粒径に反映される。分散球の径が均一な
エマルションを作製することは容易であり、従って、粒
径の均一な酸化物粉末を製造することは容易である。ま
た、噴霧粒子の凝集もないためより粒径の均一な酸化物
粉末が得られる。
【0023】サスペンションまたはエマルションを噴霧
する方法としては、圧縮空気を用いる噴霧器に、定量ポ
ンプによりサスペンションまたはエマルションを供給
し、噴霧する方法等が挙げられる。噴霧量は多いほど生
産効率がよいが、燃焼温度が高くなりすぎるために、噴
霧量に上限が存在することがある。
【0024】本発明では、サスペンションまたはエマル
ションを噴霧するとともに該サスペンションまたはエマ
ルションを酸化雰囲気で加熱する。これにより、サスペ
ンションまたはエマルション中の可燃性液体を燃焼させ
る。
【0025】加熱方法としては、噴霧液滴をバーナ等に
より加熱する、あるいは噴霧液滴を火炎または高温に加
熱した部分を通過させる方法等がある。
【0026】加熱する際の雰囲気としては、酸化雰囲気
が必要である。例えば、可燃性液体の燃焼に十分な酸素
を供給することにより酸化雰囲気を形成することができ
る。なお、酸素の供給を少なくすると不完全燃焼により
炭素(すす)が生じたり、炭化物が生じたりする場合が
ある。また、安定な燃焼を支援するとともに着火しやす
くするためにパイロットバーナを用いるのがよい。
【0027】製造した酸化物粉末は、飛散しないように
捕集する。また、酸化物粉末の生成と同時に燃焼によっ
て水蒸気等の排ガスが生じる。特に水蒸気により酸化物
粉末が湿ることがある。そのため、高温部で酸化物粉末
を捕集し、排ガスと分離するのがよい。例えば、粉末の
みを捕集するために、パンチングメタル等を通過させて
粉末のみを堆積させて捕集してもよい。
【0028】このようにして、酸化物粉末を製造する。
本発明では、従来のような仮焼、粉砕工程がないため、
不純物の混入がなく、少ない工程で行える。
【0029】なお、本発明により得られた酸化物粉末の
中でもZrTiO4 粉末は、PbOと混合および熱処理
により反応させると、従来よりも低温でチタン酸ジルコ
ン酸鉛(PZT)が得られる。
【0030】以下、本発明の実施例を説明する。
【0031】(実施例1)本実施例で使用した酸化物粉
末の製造装置の概念図を図1に示す。
【0032】該装置は、円筒形状の反応室1と該反応室
1にサスペンションまたはエマルションを供給する定量
ポンプ2とよりなる。反応室1は、反応通路(燃焼部)
11と、該反応通路11にサスペンションまたはエマル
ションを噴霧するためのアトマイザ12と、噴霧したサ
スペンションまたはエマルションを加熱するためのバー
ナ13と、製造した酸化物粉末を捕集するための粉末捕
集器14とよりなる。
【0033】アトマイザ12には、エアと、定量ポンプ
2よりサスペンションまたはエマルションとが供給され
る。アトマイザ12からは、反応通路11にサスペンシ
ョンまたはエマルションを噴霧し、それとともにエアを
供給する。反応通路11中に配置したバーナ13によ
り、サスペンションまたはエマルションの噴霧液を着火
し、燃焼させて酸化物粉末を生成させる。生成した酸化
物粉末を、反応室の下部に位置する粉末捕集器14によ
り捕集する。酸化物粉末の生成とともに発生する排ガス
は粉末捕集器14より反応室1外へ排出される。
【0034】この装置を用いて、以下のように酸化物粉
末を製造した。
【0035】ZrCl2 O・8H2 O(塩化酸化ジルコ
ニウム8水和物)の水溶液(濃度30%)をケロシン中
に懸濁させてエマルションを作製した。このエマルショ
ンを上記装置の定量ポンプ2によりアトマイザ12に供
給した。その後、アトマイザ12から反応通路11にエ
マルションを噴霧するとともにエアを供給した。それと
同時にバーナ13によりエマルション噴霧液滴とエアと
を600〜700℃で燃焼させた。これにより、粉末捕
集器14において、ZrO2 よりなる粉末を捕集した。
【0036】得られた酸化物粉末は、粒径が0.1μm
以下の酸化物粒子がほぐれ易い2μm程度の2次粒子よ
りなる、粒径の揃ったものであったが、この2次粒子は
簡単にほぐれるため強固に結合した凝集体ではなかっ
た。
【0037】なお、上記の加熱温度は、φ3mmのシー
ス熱電対で反応通路(燃焼部)壁面の温度をモニタした
ものであり、実際の反応温度より数百℃程度低いと見積
もられる。
【0038】(実施例2)原料として実施例1における
ZrCl2 O・8H2 Oの水溶液をTiCl4 (4塩化
チタン)の水溶液(濃度10%)に変えた以外は、実施
例1と同様にして酸化物粉末を製造した。
【0039】得られた酸化物粉末は、TiO2 よりなる
粉末であり、実施例1と同様、粒径が0.1μm以下の
酸化物粒子がほぐれ易い2μm程度の2次粒子よりな
る、粒径の揃ったものであった。
【0040】(実施例3)原料として実施例1における
ZrCl2 O・8H2 Oの水溶液を、実施例1と実施例
2で用いたZrCl2 O・8H2 OとTiCl4 各1モ
ルの混合水溶液に変えた以外は、実施例1と同様にして
酸化物粉末を製造した。
【0041】得られた酸化物粉末は、ZrTiO4 より
なる粉末であり、実施例1と同様、粒径が0.1μm以
下の酸化物粒子がほぐれ易い2μm程度の2次粒子より
なる、粒径の揃ったものであった。また、この酸化物粉
末における組成の均一性を観察するために、X線回折法
で結晶相を調べた。その結果、JCPDSカードNo.
34−0415と一致するシャープなX線回折線が得ら
れ、均一な組成であることが判断された。
【0042】また、得られたZrTiO4 粉末に、市販
のPbO粉末をモル比で2倍加え、常法により湿式ボー
ルミル混合した。混合粉末を300℃以上で1時間熱処
理し、X線回折で結晶相を同定した。
【0043】その結果、500℃でチタン酸ジルコン酸
鉛(PZT)が合成され、主相になり、600℃でPZ
T単相になった。このように、本実施例で得られたZr
TiO4 粉末は反応性が高く、低温でPZT単相が得ら
れた。
【0044】また、比較のため、原料としてPbOとZ
rO2 とTiO2 とを用い、これらを反応させてPZT
を合成すると、800℃でPbTiO3 、PZT、未反
応PbO、および未反応ZrO2 がX線的に検出され
た。
【0045】(比較例)従来の噴霧焙焼法によりZrT
iO4 よりなる酸化物粉末を製造した。すなわち、Zr
Cl2 ・8H2 OとTiCl4 各1モルを水2lに溶解
し、この水溶液を定量ポンプで供給してアトマイザ12
から反応通路11に噴霧し、700℃に加熱した。
【0046】これにより、直径が10〜20μmのZr
TiO4 よりなる酸化物粉末を得た。また、この酸化物
粉末は、1次粒子が焼結して球状凝集体を形成したもの
であった。噴霧した液滴は50〜70μm程度であり、
水分がなくなって生成する粉末のサイズは計算される1
0〜14μmとほぼ一致した。また、アトマイズは液滴
のサイズを小さくすると水溶液の供給量が低下するた
め、時間当たりの収量をかせぐことができなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例において酸化物粉末の製造に使
用するための装置の概念図
【符号の説明】
1 反応室 2 定量ポンプ 11 反応通路 12 アトマイザ 13 バーナ 14 粉末捕集器

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記(a)または(b)のうちの一方ま
    たは双方を噴霧するとともに(a)または(b)のうち
    の一方または双方を酸化雰囲気で加熱することにより、
    (a)または(b)のうちの一方または双方中の酸化さ
    れることにより酸化物となる物質を酸化物に変換させる
    とともに粉末化することを特徴とする酸化物粉末の製造
    方法。 (a)酸化されることにより酸化物となる物質を可燃性
    液体中に懸濁させたサスペンション。 (b)酸化されることにより酸化物となる物質を液体中
    に溶解させた溶液を、可燃性液体中に乳濁させたエマル
    ション。
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