以下、本発明の一実施形態に係る車体構造について、図1から図5を参照して説明する。本実施形態の車体構造は、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)や電気自動車(EV)などのように、バッテリーパックから電力供給される電動モータで走行可能な任意の自動車に適用できる。
本実施形態においては、自動車の側面衝突時に電気機器である電気温水ヒータが車幅方向の内側に侵入し、車体と干渉した場合であっても、電気温水ヒータに接続された電線(一例として、ワイヤハーネス)を保護し、損傷を防止することが可能な車体構造を例に説明する。なお、電気温水ヒータの他、例えば電気機器がインバータやDCDCコンバータなどの場合であっても、これらに接続された電線を保護し、損傷を防止可能な構造として、本実施形態の車体構造を適用することができる。
図1は、本実施形態に係る車体構造1の概要を示す斜視図である。図1においては、矢印FRの方向を自動車の前方(前側)、その逆方向を後方(後側)とし、矢印UPの方向を自動車の上方(上側)、その逆方向を下方(下側)として定義する。また、矢印INの方向を自動車の内方(内側)、その逆方向を外方(外側)としてそれぞれ定義する。矢印INに沿った方向は、自動車の車幅方向(左右方向)に相当する。なお、後述する図2から図5においても、図1における各方向と同様に方向を定義する。
図1に示すように、車体構造1を備えた自動車には、バッテリーパック3と電気温水ヒータ4がそれぞれフロアパネル2に配置されている。
フロアパネル2は、自動車の車室を画成する床面を構成する部材であり、本実施形態では、高床部21、中床部22、低床部23の順で高さ(上下方向の位置)が低くなる三段構造をなしている。高床部21は、車幅方向の略中央に設けられ、低床部23は、車幅方向の両端に対をなして配置されているサイドシル11に連接して設けられている。中床部22は、車幅方向に対して高床部21と低床部23の間に設けられている。高床部21と中床部22は、内側傾斜部24によって連続し、中床部22と低床部23は、外側傾斜部25によって連続している。内側傾斜部24は、中床部22との連続部位から高床部21との連続部位に向かうに従って徐々に内側へ倒れるように傾斜している。外側傾斜部25は、低床部23との連続部位から中床部22との連続部位に向かうに従って徐々に内側へ倒れるように傾斜している。高床部21は、中床部22および低床部23よりも上方(車室側)へ隆起するとともに、前後方向に連続している。これにより、フロアパネル2は、1つの高床部21を境界に車幅方向の左右に区切られている。高床部21を挟んで左右両側には、それぞれ中床部22および低床部23が延在している。内側傾斜部24は、高床部21と中床部22、外側傾斜部25は、中床部22と低床部23とを、それぞれ車幅方向に画する境界部となっている。
フロアパネル2の上部には、乗員が着座する座席(シート)が取り付けられている。図1に示すフロアパネル2の位置には、自動車の前席左側の座席(図示省略)が取り付けられる。フロアパネル2の上面には、かかる座席の脚部を支持する支持部材が設けられている。
支持部材は、座席の前側脚部(図示省略)を支持する前脚支持部材(シートクロスフロント)と、後側脚部(図示省略)を支持する後脚支持部材(シートクロスリア)12とを備えている。なお、図1には、後脚支持部材12のみを示し、前脚支持部材については図示を省略している。後脚支持部材12は、フロアパネル2の内側傾斜部24とサイドシル11の間に車幅方向と平行に架け渡されている。これに対し、前脚支持部材(図示省略)は、後脚支持部材12よりも前方で、フロアパネル2の内側傾斜部24とサイドシル11の間に車幅方向と平行に架け渡されている。これにより、前脚支持部材および後脚支持部材12は、自動車の側面衝突時の衝撃力をサイドシル11から車幅方向の内側(例えば、フロアパネル2の高床部21)へ伝達する強度部材となっている。また、後脚支持部材12よりも後方には、強度部材としてクロスメンバ13が配置されている。クロスメンバ13は、一対のサイドシル11の間に車幅方向と平行に架け渡されている。
バッテリーパック3は、複数のバッテリーセル(単電池)31を相互に接続して構成されている。相互に接続したバッテリーセル31は、バッテリーケース(図示省略)に収容されている。PHEVやEVに搭載された電動モータ(図示省略)は、バッテリーパック3から電力供給されて駆動する。
バッテリーパック3は、フロアパネル2の高床部21および中床部22の下側に取り付けられている。本実施形態においては、複数のバッテリーセル31が車幅方向(左右方向)に並ぶように、高床部21および中床部22の下側にバッテリーケースが固定されている。バッテリーケースは、例えばフロアパネル2の下面に溶接された所定の取付部材(バッテリーブラケット)を介して、高床部21および中床部22の下側に締結固定されている。これにより、バッテリーパック3は、フロアパネル2の下方かつ車幅方向の略中央に配置され、車幅方向の最も外側のバッテリーセル31がフロアパネル2の外側傾斜部25と対向して位置付けられる。
電気温水ヒータ4は、本実施形態における電気機器に相当する。電気温水ヒータ4は、筐体41から引き出された電線42を介して、外部電源およびECU(エンジンコントロールユニット)とそれぞれ接続されている。電線42の形態は、特に限定されない。本実施形態では、電源ケーブルや信号ケーブルなどの複数のケーブルを含むワイヤハーネスを、電線42の一例として適用する。電線42は、筐体41のコネクタ部43を介して電気温水ヒータ4の制御基板(図示省略)に繋げられている。コネクタ部43は、筐体41の前側の側壁部41aに設けられている。
電気温水ヒータ4は、バッテリーパック3よりも車幅方向の外側となるように、フロアパネル2に取り付けられている。図2には、電気温水ヒータ4のフロアパネル2への取付態様を示す。図1および図2に示すように、電気温水ヒータ4は、フロアパネル2の低床部23にブラケット5を介して取り付けられている。
ブラケット5は、車幅方向に対して電気温水ヒータ4の内側に配置される内側ブラケット6と、外側に配置される外側ブラケット7を有している。内側ブラケット6および外側ブラケット7は、いずれもアルミ合金などで形成された板状の部材(板材の成形体)である。内側ブラケット6は、車幅方向の内側で前後方向に亘って、電気温水ヒータ4をフロアパネル2の低床部23に支持している。一方、外側ブラケット7は、車幅方向の外側で前後方向に亘って、電気温水ヒータ4を低床部23に支持している。
内側ブラケット6および外側ブラケット7は、フロアパネル2の低床部23に固定されたブラケット(以下、パネル側ブラケットという)60,70を介して、低床部23に取り付けられている。パネル側ブラケット60,70は、低床部23の座面23aにそれぞれ溶接されている。パネル側ブラケット60が溶接される座面23aの裏側には、フロアサイドメンバ14が配置されている。フロアサイドメンバ14は、車両の骨格部材である。内側ブラケット6はパネル側ブラケット60に、外側ブラケット7はパネル側ブラケット70に、それぞれボルト(図示省略)で締結されている。パネル側ブラケット60,70には、ボルトと螺合する貫通孔(図示省略)が形成されている。
低床部23に取り付けられた状態で、電気温水ヒータ4は、筐体41の側壁部41bがフロアパネル2の外側傾斜部25と近接して位置付けられる。換言すれば、電気温水ヒータ4とバッテリーパック3は、高さ方向(上下方向)の位置が一部重なるように、車幅方向に並んで配置される。電気温水ヒータ4とバッテリーパック3の間は、フロアパネル2の外側傾斜部25で仕切られた状態となっている。
また、低床部23に取り付けられた状態では、低床部23に対して底部44を傾かせて、電気温水ヒータ4が位置決めされている。具体的には、電気温水ヒータ4は、底部44の車幅方向の内側が外側よりも上方に位置付けられるとともに、前後方向の後側が前側よりも上方に位置付けられている。
図3には、内側ブラケット6の構成を示す。図3に示すように、内側ブラケット6は、第1の取付部61と、第2の取付部62と、離間部63と、起立部64とを含んで構成されている。
第1の取付部61は、フロアパネル2、具体的にはパネル側ブラケット60に取り付けられる部位である。第1の取付部61には、パネル側ブラケット60の貫通孔と連通し、ボルト(図示省略)と螺合する貫通孔(ネジ孔)61aが形成されている。
第2の取付部62は、第1の取付部61の端部から連続して設けられ、電気温水ヒータ4の筐体41の側壁部41bに取り付けられる部位である。本実施形態では、第1の取付部61の外側縁部から筐体41の側壁部41bに沿って、略鉛直上方に屈曲して第2の取付部62が設けられ、側壁部41bにボルト80で締結されている。第2の取付部62には、ボルト80が挿通される貫通孔62aが形成されている。筐体41の側壁部41bには、貫通孔62aと連通し、ボルト80と螺合するネジ穴(図示省略)が形成されている。
離間部63は、第2の取付部62の端部から連続して設けられ、筐体41の側壁部41bから離間するように延びて起立部64と連続している。本実施形態では、下部(第2の取付部62との連続部分)から上部(起立部64との連続部分)へ向かうに従って徐々に車幅方向の内側へ倒れるように、離間部63が傾斜している。この場合、離間部63は、フロアパネル2の外側傾斜部25および後述するガイドプレート9のガイド部91とほぼ沿うように傾斜している。ただし、離間部63の傾斜角度(第2の取付部62との間の角度)は、特に限定されない。
起立部64は、離間部63の端部から連続して設けられ、筐体41の側壁部41bに沿って起立している。本実施形態では、上下方向に沿って略鉛直に起立部64が起立し、側壁部41bと対向している。起立部64と側壁部41bとの対向間隔は、少なくとも電線42の外径よりも大きな寸法に設定されている。なお、電線42の外径は、電線42の形態に関わらず、断面形状の差渡し長さの最大値として定義する。例えば、ワイヤハーネスであれば、外被もしくは電線束の断面形状の差渡し長さの最大値である。これにより、起立部64と側壁部41bとの間には、電線42を配設可能な空隙Sが形成される。換言すれば、起立部64は、側壁部41bとの間に電線42を配設可能な空隙Sをあけて起立している。
起立部64には、プロテクタ8が設けられている。プロテクタ8は、電線42を取り付け、支持するとともに、自動車の衝突時(本実施形態では、側面衝突時)に電線42を保護するための部材である。電線42は、プロテクタ8に支持されて空隙Sを通って配設される。プロテクタ8は、内側ブラケット6と同様に、アルミ合金などで形成された板状の部材(板材の成形体)であるが、内側ブラケット6よりも板厚が大きい(厚肉とされている)。これにより、プロテクタ8は、内側ブラケット6よりも自動車の側面衝突時の衝撃力に対する耐性が高くなっている。ただし、プロテクタ8の板厚は、内側ブラケット6と略同一としてもよい。
プロテクタ8は、空隙Sに配設された電線42の上方に、起立部64から側壁部41bへ向けて突出して設けられている。換言すれば、電線42は、内側ブラケット6(起立部64)、側壁部41b、そしてプロテクタ8で囲まれた空間に相当する空隙Sに配設されている。プロテクタ8の突出形態は特に限定されないが、本実施形態では、プロテクタ8を庇状とし、その先端(起立部64からの突出端)は、側壁部41bとの間で所定間隔をあけて対向している。起立部64と側壁部41bとの対向間隔は、電線42の外径よりも大きな寸法に設定されているため、プロテクタ8は、かかる対向間隔よりは小さいが、電線42の外径よりも大きな寸法で、起立部64から突出させる。これにより、プロテクタ8は、空隙Sに配設された電線42の配設方向と交差する(本実施形態では、電線42の上方を横切る)とともに、その突出端が側壁部41bと対向した状態となる。一例として、プロテクタ8の突出端は、側壁部41bの上端近傍(シール部分を除く筐体41の容体もしくは蓋)と対向させる。
プロテクタ8は、前後方向から見て略L字状の成形体となっている。プロテクタ8の第1の片部81は、起立部64に固定(一例として、溶接)されており、第2の片部82は、その端部83を側壁部41bへ向けるように、第1の片部81に対して所定角度で(一例として、略直角に)屈曲している。第1の片部81と第2の片部82は、湾曲状(いわゆるR状)に連続している。
また、プロテクタ8は、前後方向(電線42の配設方向)に所定間隔をあけて、2箇所にそれぞれ1つずつ設けられている。図3には、起立部64の前側にプロテクタ8a、後側にプロテクタ8bを設けた形態を一例として示す。なお、以下の説明において、プロテクタ8をプロテクタ8aとプロテクタ8bに区別する場合には、これらの各部の符号にaもしくはbの添え字を付する。
プロテクタ8bは、プロテクタ8aよりも上方に配置されている。すなわち、起立部64への第1の片部81a,81bの固定位置は、プロテクタ8aよりもプロテクタ8bの方が高くなっている。さらに、プロテクタ8a,8bは、後側が前側よりも上方となるようにそれぞれ傾けて配置され、電気温水ヒータ4の前後方向の傾きと一致させている。これにより、第2の片部82a,82bの端部83a,83bは、いずれも側壁部41bの上端近傍(シール部分を除く筐体41の容体もしくは蓋)と対向するようになっている。第2の片部82a,82bの端部83a,83bの車幅方向の位置(別の捉え方をすれば、第2の片部82a,82bの起立部64からの突出長さ)は、双方のプロテクタ8a,8bでほぼ一致している。これに対し、第2の片部82a,82bの前後方向の長さは、プロテクタ8aよりもプロテクタ8bの方が長くなっている。
プロテクタ8の第2の片部82は、電線42を支持する支持部84を有している。本実施形態では、電線42を吊り下げて支持する吊下部材と、吊下部材を取り付ける取付部とにより、支持部84が構成されている。
図4および図5には、取付部に取り付けた吊下部材で吊り下げて、電線42を支持する態様の一例をそれぞれ模式的に示す。吊下部材の形態は特に限定されないが、例えば、図4および図5に示すような樹脂製のクリップ86やバンド87などを適用することができる。図3、図4および図5に示すように、第2の片部82には、クリップ86やバンド87の取付部として、貫通孔88が形成されている。貫通孔88は、第2の片部82を上下方向に貫通している。例えば、クリップ86やバンド87を貫通孔88に挿通して取り付け、クリップ86で電線42を挟み込んで支持してもよいし、バンド87で電線42を抱えて支持してもよい。これにより、電線42は、第2の片部82から吊り下げられた状態で空隙Sに配設される。
プロテクタ8aの貫通孔88aは、第2の片部82aの前端近傍に形成され、プロテクタ8bの貫通孔88bは、第2の片部82bの後端近傍に形成されている。この場合、第2の片部82aは、その前端が起立部64の前端縁とほぼ重なるように位置付けられ、第2の片部82bは、その後端が起立部64の後端縁よりも後方に位置付けられている。すなわち、貫通孔88bは、起立部64の後端縁を越えて第2の片部82bを後方に延長させた部分(延長部85b)に形成されている。なお、第1の片部81bは、その後端が起立部64の後端縁とほぼ重なるように位置付けられ、第2の片部82bのようには後方へ延長されていない。
貫通孔88aと貫通孔88bの形成間隔は、電線42の支持位置の間隔(貫通孔88a,88bに取り付けられる吊下部材間の距離)に相当する。したがって、電線42の支持位置の間隔を、空隙Sにおける電線42の配設長さ(起立部64の前後方向の長さ)よりも伸ばすことができる。これにより、空隙Sに配設された電線42の姿勢を安定させることができる。第2の片部82bの端部83bのうち、延長部85bに相当する部位は、筐体41の車幅方向内側の後隅部(隅切りされた部位)41cと対向している。
なお、本実施形態においては、2つのプロテクタ8a,8bを設けているが、プロテクタ8の数は2つに限定されない。例えば、3つ以上のプロテクタ8を起立部64から突出させてもよいし、プロテクタ8aとプロテクタ8bの間を繋いで一連としたような1つのプロテクタ8を起立部64から突出させても構わない。プロテクタ8を1つとする場合には、複数の支持部84を設ければよい。例えば、貫通孔88a,88bと同一の位置に貫通孔を形成し、これらの貫通孔にクリップ86やバンド87などの吊下部材をそれぞれ取り付ければよい。
電気温水ヒータ4とバッテリーパック3との間には、ガイドプレート9が介在している。具体的には、車幅方向に対して、電気温水ヒータ4とバッテリーパック3の間を仕切るフロアパネル2の外側傾斜部25の外側、かつ電気温水ヒータ4の内側に、ガイドプレート9が配置されている。自動車の側面衝突時、電気温水ヒータ4は、サイドシル11およびフロアパネル2の変形に伴って車幅方向の内側へ移動(変位)する場合がある。ガイドプレート9は、このように電気温水ヒータ4が車幅方向の内側へ移動する際、その移動をガイドするための部材である。側面衝突時、電気温水ヒータ4は、ガイドプレート9のガイド部91に沿って上方かつ車幅方向の内側へ、バッテリーパック3から逸れるように移動する。このため、電気温水ヒータ4がバッテリーパック3と干渉するような事態を回避することができ、バッテリーセル31に不具合が生じることを防いでいる。ガイド部91は、フロアパネル2の外側傾斜部25とほぼ同じ高さで、外側傾斜部25に沿って傾斜している。
ここで、自動車の側面衝突時の電気温水ヒータ4の挙動についてさらに説明する。自動車が側面衝突すると、その衝撃力は、サイドシル11に対して水平方向(水平面に沿った方向)と略平行に、車幅方向の外方から内方へ入力される。したがって、かかる衝撃力が入力されたサイドシル11は、車幅方向の内側へ侵入するように変形する。サイドシル11の変形によって、フロアパネル2は、車幅方向の内側へ侵入するとともに、低床部23が上方へ持ち上げられるように変形する。そして、フロアパネル2の変形によって、電気温水ヒータ4は、車幅方向の内側へ移動(変位)する。
電気温水ヒータ4の車幅方向の内側には、ガイドプレート9が配置されているため、内側へ移動した電気温水ヒータ4は、ガイドプレート9とぶつかる。具体的には、電気温水ヒータ4に締結された内側ブラケット6がガイドプレート9のガイド部91とぶつかる。内側ブラケット6がガイド部91とぶつかると、起立部64がガイド部91によって車幅方向の外側へ押される。これにより、起立部64に設けられたプロテクタ8の第2の片部82が筐体41の側壁部41bに当接する。
側壁部41bに当接したプロテクタ8の第2の片部82は、そのまま空隙Sに配設された電線42の上方で、側壁部41bに対して突っ張った状態を維持する。本実施形態では、第2の片部82の端部83が対向する筐体41のシール部分を除く容体もしくは蓋に当接するため、プロテクタ8が強固に筐体41と接触する。したがって、プロテクタ8の第2の片部82を、側壁部41bに対して突っ張った状態に維持させやすい。また、端部83が押圧する筐体41から受ける押圧力の反力(以下、端部83の応力という)は、第1の片部81から起立部64へ面で伝わるため、端部83の応力による起立部64の破断を防ぐことができる。加えて、第1の片部81と第2の片部82がいわゆるR状に連続しているため、これらの連続部分が突き当たることによる起立部64の破断も防ぐことができる。
このため、内側ブラケット6がガイドプレート9とぶつかった場合、端的には自動車が側面衝突した場合(特に、側面衝突の初期状態)であっても、空隙Sを狭めることなく、つまり内側ブラケット6、側壁部41b、およびプロテクタ8で囲まれた電線42の配設空間を維持し、所定の大きさに保つことができる。すなわち、空隙Sにおいて、内側ブラケット6の起立部64と筐体41の側壁部41bとの対向間隔を、電線42の外径よりも大きな間隔のまま保つことができる。また、電線42の上方で側壁部41bに対して突っ張る第2片部82によって、電線42を空隙Sに支持することができる。したがって、空隙Sを通って配設されている電線42が起立部64と側壁部41bとの間に挟まれて損傷するような事態を回避することができる。
また、その後さらに電気温水ヒータ4が車幅方向の内側へ移動し、変形したフロアパネル2や周辺機器にぶつかった場合(例えば、自動車の側面衝突の終期状態)であっても、プロテクタ8の第2の片部82は、空隙Sに配設された電線42の上方で、側壁部41bに対して突っ張った状態を維持する。このため、空隙Sを所定の大きさに保ち続けることができるとともに、空隙Sに電線42を支持し続けることができる。したがって、この場合も同様に電線42の損傷を回避することができる。
加えて、電気温水ヒータ4の筐体41は、車幅方向の内側の後隅部41cが隅切りされている。このため、第2の片部82bの端部83bのうち、延長部85bに相当する部位は、それ以外の部位が側壁部41aと当接した状態では、側壁部41aと当接しない。したがって、第2の片部82bに端部83の応力が作用された場合であっても、延長部85bに作用される当該応力を軽減できる。プロテクタ8bの支持部84b(吊下部材および貫通孔88b)は、延長部85bに配されているため、支持部84bが電線42を支持する機能が端部83の応力によって損なわれずに済む。このため、自動車の側面衝突時に、電線42を吊り下げた状態で空隙Sに止めることができるので、電線42の損傷を確実に回避することができる。
なお、第2の片部82の端部83が筐体41のシール部分と当接しないので、筐体41との当接時に端部83からシール部分に押圧力が作用されることを回避できる。したがって、筐体41のシール部分が剥がれることを防ぎ、自動車の側面衝突時においても電気温水ヒータ4のシール性を維持することができる。
上述した実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。このような新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
上述した実施形態では、プロテクタ8を内側ブラケット6の起立部64に設け、起立部64から電気温水ヒータ4(筐体41)の側壁部41bへ向けて突出させているが、これとは逆に、プロテクタを電気温水ヒータの側壁部に設け、側壁部から内側ブラケットの起立部へ向けて突出させてもよい。また、内側ブラケットの起立部から電気温水ヒータの側壁部へ向けて突出するプロテクタと、側壁部から起立部へ向けて突出するプロテクタの双方を設けた形態としても構わない。