JP6677206B2 - ポリアリレート樹脂の製造方法及び電子写真感光体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリアリレート樹脂の製造方法及び電子写真感光体の製造方法に関する。
電子写真感光体は、像担持体として電子写真方式の画像形成装置(例えば、プリンター又は複合機)において用いられる。電子写真感光体は、感光層を備える。電子写真感光体は、例えば、単層型電子写真感光体、又は積層型電子写真感光体が用いられる。単層型電子写真感光体は、電荷発生の機能と、電荷輸送の機能とを有する感光層を備える。積層型電子写真感光体は、感光層が電荷発生の機能を有する電荷発生層と、電荷輸送の機能を有する電荷輸送層とを備える。
特許文献1には、ポリカーボネート樹脂の製造方法が記載されている。
特開2002−030140号公報
しかしながら、特許文献1に記載のポリカーボネート樹脂の製造方法は、重合触媒の残存量を十分に低減できず、かつ分子量を高めることができなかった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、重合触媒としての第4アンモニウム塩の残存量を低減し、かつポリアリレート樹脂の分子量を高めことのできる、ポリアリレート樹脂の製造方法を提供することである。また、別の目的は、感度特性及び耐摩耗性に優れる電子写真感光体の製造方法を提供することである。
ポリアリレート樹脂の製造方法は、合成工程と、洗浄工程とを含む。前記合成工程は、ビスフェノール誘導体と、芳香族ジカルボン酸誘導体とを重合触媒を用いて界面重合させる。前記洗浄工程は、有機相を洗浄水で複数回にわたり洗浄してポリアリレート樹脂を得る。前記重合触媒は、一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩である。前記ポリアリレート樹脂の吸光度は、0.100以下である。前記吸光度は、前記ポリアリレート樹脂の9.1質量%テトラヒドラフラン溶液を、光路長1.00cmのセルに充填し、波長390nmの光を用いて測定される。
Figure 0006677206
前記一般式(1)中、X-は、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は硫酸水素イオンを表す。Yは、プロピル基、ブチル基又はベンジル基を表す。
本発明の電子写真感光体の製造方法は、樹脂製造工程と、感光層形成工程とを含む。前記樹脂製造工程は、上述のポリアリレート樹脂の製造方法を用いてポリアリレート樹脂を製造する。前記感光層形成工程は、前記感光層塗布液を塗布し、感光層を形成する。前記感光層塗布液は、正孔輸送剤と、前記ポリアリレート樹脂とを含む。
本発明のポリアリレート樹脂の製造方法は、重合触媒としての第4級アンモニウム塩の残存量が少なく、分子量の高いポリアリレート樹脂を製造することができる。また、本発明の電子写真感光体の製造方法は、感度特性及び耐摩耗性に優れる電子写真感光体を製造することができる。
(a)、(b)及び(c)は、それぞれ電子写真感光体の構造の一例を示す概略断面図である。 (a)、(b)及び(c)は、それぞれ電子写真感光体の構造の別の例を示す概略断面図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。なお、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
以下、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基及び炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基は、それぞれ、次の意味である。
炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基又はオクチル基が挙げられる。
炭素原子数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上4以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基又はt−ブチル基が挙げられる。
炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基又はオクチルオキシ基が挙げられる。
炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基は、非置換である。炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基又はシクロヘプチリデン基が挙げられる。
<第一実施形態:ポリアリレート樹脂の製造方法>
本発明の第一実施形態に係るポリアリレート樹脂の製造方法は、合成工程と、洗浄工程とを含む。合成工程は、ビスフェノール誘導体と、芳香族ジカルボン酸誘導体とを重合触媒を用いて界面重合させる。洗浄工程は、有機相を洗浄水で複数回にわたり洗浄してポリアリレート樹脂を得る。重合触媒は、一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩である。ポリアリレート樹脂の吸光度は、0.100以下である。吸光度は、前記ポリアリレート樹脂の9.1質量%テトラヒドラフラン溶液を、光路長1.00cmのセルに充填し、波長390nmの光を用いて測定される。
Figure 0006677206
一般式(1)中、X-は、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は硫酸水素イオンを表す。Yは、プロピル基、ブチル基又はベンジル基を表す。
第一実施形態に係るポリアリレート樹脂の製造方法は、重合触媒としての第4アンモニウム塩の残存量を低減し、かつポリアリレート樹脂の分子量を高めことのできる、ポリアリレート樹脂を製造することができる。その理由は以下のように推測される。
第一実施形態に係るポリアリレート樹脂の製造方法は、重合触媒として一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩(以下、第4級アンモニウム塩(1)と記載することがある)を用いる。第4級アンモニウム塩(1)は、重合効率に優れるため、重合されるポリアリレート樹脂の分子量(より具体的には、粘度平均分子量等)を高めることができる。また、第4級アンモニウム塩(1)は、水洗浄で除去されやすいため、重合されるポリアリレート樹脂中の残存量を低減することができる。よって、第一実施形態に係るポリアリレート樹脂の製造方法は、重合触媒としての第4アンモニウム塩の残存量を低減し、かつポリアリレート樹脂の分子量を高めことができると考えられる。
重合されるポリアリレート樹脂は、特に、電子写真感光体のバインダー樹脂として有用である。重合される第4級アンモニウム塩の残存量が少なく、分子量が高いため、優れた感度特性及び耐摩耗性を電子写真感光体に発現させることができるからである。
(吸光度)
ポリアリレート樹脂の吸光度は、0.100以下であり、0.070以下であることが好ましい。
(吸光度の測定方法)
吸光度は、ポリアリレート樹脂の9.1質量%テトラヒドラフラン溶液を、光路長1.00cmのセルに充填し、波長390nmの光を用いて測定される。詳しくは、第一実施形態に係るポリアリレート樹脂の製造方法で合成したポリアリレート樹脂をテトラヒドロフランに十分に溶解又は分散させる。このとき、ポリアリレート樹脂の濃度が9.1質量%となるようにする。その結果、ポリアリレート樹脂の9.1質量%のテトラヒドロフラン溶液を得る。
測定用セル(光路長1.00cm)に上記テトラヒドロフラン溶液を充填し数分間(5分間以上)静置する。測定用セルを吸光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製「分光硬度計 U−3000」)に設置する。波長390nmの光を用いて測定する。リファレンスとしてテトラヒドロフラン溶媒のみの吸光度を用いる。吸光度の測定は、温度25℃及び相対湿度50%RHで実施する。
[1.合成工程]
合成工程は、ビスフェノール誘導体と、芳香族ジカルボン酸誘導体とを重合触媒を用いて界面重合させる。その結果、ポリアリレート樹脂が合成され、ポリアリレート樹脂の溶液が得られる。
合成工程の界面重合の一例を説明する。合成工程では、反応式(R−1)で表される反応(以下、反応(R−1)と記載することがある)に従って又はこれに準ずる方法により、一般式(2)で表されるポリアリレート樹脂(以下、ポリアリレート樹脂(2)と記載することがある)が製造される。
Figure 0006677206
反応(R−1)では、ビスフェノール誘導体として、一般式(2−1)で表される化合物及び一般式(2−3)で表される化合物を挙げている。以下、それぞれビスフェノール誘導体(2−1)及び(2−3)と記載することがある。また、芳香族ジカルボン酸誘導体として、一般式(2−2)で表される2,6−ナフタレンジカルボン酸及び一般式(2−4)で表されるジカルボキシジフェニルエーテルを挙げている。以下、それぞれ芳香族ジカルボン酸誘導体(2−2)及び(2−4)と記載することがある。そして、生成物として、ポリアリレート樹脂(2)を挙げている。
反応(R−1)は、溶媒中で進行させる。反応(R−1)は、アルカリの存在下で進行させてもよい。アルカリとしては、例えば、アルカリ金属の水酸化物(より具体的には、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等)、アルカリ土類金属の水酸化物(より具体的には、水酸化カルシウム等)が挙げられる。反応(R−1)は、不活性ガス雰囲気下で進行させてもよい。不活性ガスとしては、例えば、アルゴンが挙げられる。反応(R−1)の反応時間は、30分以上5時間以下が好ましい。反応温度は、5℃以上25℃以下が好ましい。
ポリアリレート樹脂(2)の製造では、合成工程及び洗浄工程以外に必要に応じて他の工程を含んでもよい。他の工程としては、例えば、精製工程が挙げられる。精製工程では、例えば、公知の方法(より具体的には、ろ過、クロマトグラフィー又は晶折等)が用いてもよい。
[1−1.ポリアリレート樹脂]
ポリアリレート樹脂(2)は、一般式(2)で表される。
Figure 0006677206
一般式(2)中、R1及びR4は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表す。R2、R3、R5及びR6は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表す。R2及びR3は、互いに結合して炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基を表してもよい。R5及びR6は、互いに結合して炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基を表してもよい。r及びsは、0以上49以下の整数を表す。t及びuは、1以上50以下の整数を表す。r+t=s+uである。r+s+t+u=100である。
一般式(2)中、R2、R3、R5及びR6が表す炭素原子数1以上4以下のアルキル基は、メチル基又はエチル基が好ましい。炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基は、シクロヘキシリデン基が好ましい。s/(s+u)が0.10以上0.70以下であることが好ましい。
一般式(2)中、R1及びR4は水素原子を表し、R2及びR3のうちの一方はメチル基を表し、R2及びR3のうちの他方はエチル基を表し、R5及びR6のうちの一方はメチル基を表し、R5及びR6のうちの他方はエチル基を表すことが好ましい。
ポリアリレート樹脂としては、例えば、化学式(R−1)、化学式(R−2)、化学式(R−3)又は化学式(R−4)で表されるポリアリレート樹脂(以下、それぞれポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−4)と記載することがある)が挙げられる。
Figure 0006677206
ポリアリレート樹脂(2)は、一般式(2−7)で表される繰返し単位と、化学式(2−8)で表される繰返し単位とを有する。以下、これらの繰返し単位をそれぞれ繰返し単位(2−7)及び(2−8)と記載することがある。r及びsが1以上の整数を表す場合、ポリアリレート樹脂(2)は、一般式(2−5)で表される繰返し単位と、化学式(2−6)で表される繰返し単位とを更に有する。以下、これらの繰返し単位をそれぞれ繰返し単位(2−5)及び(2−6)と記載することがある。
Figure 0006677206
一般式(2−5)及び(2−7)中のR1、R2、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ一般式(2)中のR1、R2、R3、R4、R5及びR6と同義である。
ポリアリレート樹脂(2)は、繰返し単位(2−5)〜(2−8)以外の繰返し単位を有してもよい。ポリアリレート樹脂(2)中の繰返し単位の物質量の合計に対する繰返し単位(2−5)〜(2−8)の物質量の合計の比率(モル分率)は、0.80以上が好ましく、0.90以上がより好ましく、1.00が更に好ましい。
ポリアリレート樹脂(2)における繰返し単位(2−5)〜(2−8)の配列は、ビスフェノール誘導体由来の繰返し単位と芳香族ジカルボン酸誘導体由来の繰返し単位とが互いに隣接する限り、特に限定されない。例えば、繰返し単位(2−5)は、繰返し単位(2−6)又は繰返し単位(2−8)と隣接して互いに結合している。
ポリアリレート樹脂(2)の粘度平均分子量は、感光層の耐摩耗性を向上させる観点から10,000以上であることが好ましく、30,000より大きいことがより好ましく、55,000より大きいことが更に好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が10,000以上である場合、バインダー樹脂の耐摩耗性が高まり、電荷輸送層が摩耗しにくくなる。一方、バインダー樹脂の粘度平均分子量は、80,000以下であることが好ましく、70,000以下であることがより好ましい。バインダー樹脂の粘度平均分子量が80,000以下である場合、感光層(より具体的には、単層型感光層又は電荷輸送層)の形成時に、バインダー樹脂が溶剤に溶解し易くなり、感光層の形成が容易になる傾向がある。
[1−2.芳香族ジカルボン酸誘導体及びビスフェノール誘導体]
ビスフェノール誘導体は、ビスフェノール又はビスフェノールのエステル化合物を示す。ビスフェノール誘導体(2−1)及び(2−3)としては、例えば、化学式(2−9)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、化学式(2−10)で表される1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン又は化学式(2−11)で表される1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンが挙げられる。
Figure 0006677206
反応(R−1)では、ビスフェノール誘導体(2−1)及び(2−3)に加えて他のビスフェノール誘導体を用いてもよい。他のビスフェノール誘導体としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールS又はビスフェノールZが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸誘導体は、芳香族ジカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸の酸無水物若しくはハロゲン化物(ハロゲン化アルカノイル)を示す。反応(R−1)では、芳香族ジカルボン酸誘導体(2−2)及び(2−4)に加えて他の芳香族ジカルボン酸誘導体を用いてもよい。他の芳香族ジカルボン酸誘導体としては、例えば、4,4’−ジカルボキシビフェニル、テレフタル酸又はイソフタル酸が挙げられる。
芳香族ジカルボン酸誘導体(2−2)及び(2−4)の合計物質量1モルに対する、ビスフェノール誘導体(2−1)及び(2−3)の合計物質量は、0.9モル以上1.1モル以下であることが好ましい。上記範囲であると、ポリアリレート樹脂(2)を精製し易く、ポリアリレート樹脂(2)の収率が向上するからである。
[1−3.重合触媒]
重合触媒は、第4級アンモニウム塩(1)である。第4級アンモニウム塩は、一般式(1)で表される。
Figure 0006677206
一般式(1)中、X-は、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は硫酸水素イオンを表す。Yは、プロピル基(より具体的には、n−プロピル基等)、ブチル基(より具体的には、n−ブチル基等)又はベンジル基を表す。
第4級アンモニウム塩(1)としては、例えば、化学式(CA−1)、化学式(CA−2)、化学式(CA−3)又は化学式(CA−4)で表される(以下、それぞれ第4級アンモニウム塩(CA−1)〜(CA−4)と記載することがある)。
Figure 0006677206
ポリアリレート樹脂の粘度平均分子量を効率よく高める観点から、第4級アンモニウム塩(CA−1)〜(CA−4)のうち、第4級アンモニウム塩(CA−1)、(CA−2)又は(CA−4)が好ましく、第4級アンモニウム塩(CA−1)又は(CA−2)がより好ましい。洗浄工程において効率よく重合触媒を低減する観点から、第4級アンモニウム塩(CA−1)〜(CA−4)のうち、第4級アンモニウム塩(CA−1)〜(CA−3)が好ましく、第4級アンモニウム塩(CA−3)がより好ましい。
第4級アンモニウム塩(1)の添加量は、ビスフェノール誘導体1モルに対して、0.001モル以上0.020モル以下であることが好ましい。第4級アンモニウム塩(1)の添加量が0.001モル以上であると、ポリアリレート樹脂の収率が向上しやすい。第4級アンモニウム塩(1)の添加量が0.020モル以下であると、第4級アンモニウム塩(1)の残存量を低減しやすい。
[1−4.溶媒]
溶媒としては、例えば、塩素化飽和炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン(塩化エチレン)、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン又は四塩化炭素等)、塩素化芳香族炭化水素(より具体的には、クロロベンゼン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン又はトルエン等)又はエーテル(より具体的には、ジエチルエーテル等)が挙げられる。これらの反応溶媒のうち、洗浄性に優れる観点から、塩素化飽和炭化水素が好ましく、クロロホルムがより好ましい。
[1−5.末端封止剤]
末端封止剤としては、例えば、反応性の官能基を1つ有する化合物が挙げられる。このような末端封止剤としては、例えば、1価アルコール、1価フェノール系化合物、又は1価カルボン酸が挙げられる。1価アルコールとしては、メタノール、n−プロパノール又はヘキサノールが挙げられる。1価フェノール系化合物としては、フェノール又はp−tert−ブチルフェノールが挙げられる。1価カルボン酸としては、例えば、酢酸、安息香酸、p−tert−ブチル安息香酸が挙げられる。
末端封止剤の添加量は、ビスフェノール誘導体1モルに対して0.005モル以上0.250モル以下であることが好ましく、0.010モル以上0.100モル以下であることがより好ましい。
[2.洗浄工程]
洗浄工程では、有機相を洗浄水で複数回にわたり洗浄して、ポリアリレート樹脂を得る。詳しくは、合成工程で得られたポリアリレート樹脂の溶液に洗浄水を加え、混合液を得る。洗浄水としては、例えば、純水(より具体的には、イオン交換水等)が挙げられる。純水の電気伝導度は、室温(25℃)において、1.00μS/cm以下であることが好ましい。混合液を攪拌し、不純物(より具体的には、第4級アンモニウム塩等)を水相へ抽出する。混合液を静置しエマルションから二相分離の状態とする。水相を廃棄する。新たに洗浄水を有機相に加え、上記と同様の操作を繰り返す。このような操作を複数回にわたり実施する。
攪拌に用いる機器としては、例えば、マックスブレンド(住友重機械工業株式会社製)、スタティックミキサー(住友重機械株式会社製)又はホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)が挙げられる。
第一実施形態に係るポリアリレート樹脂の製造では、洗浄性に優れる第4級アンモニウム塩(2)を重合触媒として用いる。このため、洗浄水の電気伝導度が1.00μS・cm以下である場合、5回以下の洗浄で、少なくとも1つの廃棄水の電気伝導度が10μS・cm以下とすることができる。簡便な方法で、効率よく不純物の残存量を低減することができる。
<第二実施形態:感光体の製造方法>
本発明の第二実施形態に係る電子写真感光体(以下、感光体と記載することがある)の製造方法は、樹脂製造工程と、感光層形成工程とを含む。樹脂製造工程は、第一実施形態に係るポリアリレート樹脂の製造方法を用いてポリアリレート樹脂を製造する。感光層形成工程は、感光層塗布液を塗布し、感光層を形成する。感光層塗布液は、正孔輸送剤と、ポリアリレート樹脂とを含む。
第二実施形態に係る感光体の製造方法は、感度特性及び耐摩耗性に優れる感光体を製造することができる。その理由は以下のように推測される。第二実施形態に係る感光体の製造方法は、第一実施形態に係るポリアリレート樹脂の製造方法を用いて、ポリアリレート樹脂を製造する。このため、得られるポリアリレート樹脂は、不純物(より具体的には、第4級アンモニウム塩等)の残存量が少なく、分子量が高くなる。よって、第二実施形態に係る感光体の製造方法は、不純物の残存量が低減され、かつ機械的強度に優れる感光層を得ることができる。このため、第二実施形態に係る感光体の製造方法は、感度特性及び耐摩耗性に優れる感光体を製造することができると考えられる。
[1.感光体]
感光体は、例えば、導電性基体と、感光層とを備える。感光体としては、例えば、積層型電子写真感光体(以下、積層型感光体と記載することがある)、又は単層型電子写真感光体(以下、単層型感光体と記載することがある)が挙げられる。また、感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂としてのポリアリレート樹脂(2)とを含む。
[1−1.単層型感光体]
図1を参照して、単層型感光体の構造を説明する。図1は、感光体の一例を示す概略断面図である。図1(a)に示すように、感光体1としての単層型感光体は、導電性基体2と、感光層3とを備える。感光層3は、単層型感光層3aである。図1(a)に示すように、感光層3は導電性基体2上に直接的に配置されてもよい。
また、感光層3は導電性基体2上に間接的に配置されてもよい。図1(b)に示すように、単層型感光体は、導電性基体2と、中間層4(下引層)と、感光層3とを備える。
単層型感光体は、最表面層として保護層5を更に備えてもよい。図1(c)に示すように、単層型感光体は、導電性基体2と、感光層3と、保護層5とを備える。
単層型感光層は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、ポリアリレート樹脂(2)とを含む。単層型感光層は、添加剤を更に含んでよい。
単層型感光層の厚さは、感光層としての機能を十分に発現できれば、特に限定されない。具体的には、感光層の厚さは、5μm以上100μm以下であってもよく、10μm以上50μm以下であることが好ましい。
[1−2.積層型感光体]
積層型感光体は、例えば、電荷発生層と、電荷輸送層とを備える。以下、図2を参照して、積層型感光体の構造を説明する。図2は、感光体の構造の別の例を示す概略断面図である。図2(a)に示すように、感光体1としての積層型感光体は、導電性基体2と、感光層3とを備える。感光層3は、電荷発生層3bと電荷輸送層3cとを備える。図2(a)に示すように、積層型感光体は、導電性基体2上に電荷発生層3bを備え、電荷発生層3bの上に更に電荷輸送層3cを備えてもよい。また、図2(b)に示すように、積層型感光体は、導電性基体2上に電荷輸送層3cを備え、電荷輸送層3cの上に更に電荷発生層3bを備えてもよい。図2(a)に示すように、電荷輸送層3cは積層型感光体の最表面層として配置されてもよい。電荷輸送層3cは、一層(単層)であってもよい。
図2(a)に示すように、感光層3は導電性基体2上に直接的に配置されてもよい。また、図2(c)に示すように、積層型感光体は、例えば、導電性基体2と、中間層4(下引層)と、感光層3とを備える。図2(c)に示すように、感光層3は導電性基体2上に間接的に配置されてもよい。図2(c)に示すように、中間層4は、導電性基体2と電荷発生層3bとの間に設けられてもよい。中間層4は、例えば、電荷発生層3bと電荷輸送層3cとの間に設けられてもよい。電荷発生層3bは、単層であってもよく、複数層であってもよい。
電荷発生層は、電荷発生剤と、電荷発生層用バインダー樹脂(以下、ベース樹脂と記載することがある)とを含む。電荷輸送層は、正孔輸送剤と、ポリアリレート樹脂(2)とを含む。
電荷発生層の厚さは、電荷発生層として十分に作用することができれば、特に限定されない。電荷発生層の厚さは、具体的には、0.01μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3μm以下であることがより好ましい。電荷輸送層の厚さは、電荷輸送層として十分に作用することができれば、特に限定されない。電荷輸送層の厚さは、具体的には、2μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。
[2.感光層形成工程]
[2−1.単層型感光層形成工程]
単層型感光体の製造方法において、感光層形成工程は、塗布液調製工程と、単層型感光層形成工程とを含む。
塗布液調製工程は、単層型感光層を形成するための塗布液(以下、単層型感光層用塗布液と記載することがある)を調製する。単層型感光層用塗布液は、例えば、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂としてのポリアリレート樹脂(2)と、溶剤とを含む。単層型感光層用塗布液は、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、ポリアリレート樹脂(2)とを溶剤に溶解又は分散させることにより調製する。単層型感光層用塗布液は、必要に応じて各種添加剤を更に加えてもよい。
単層型感光層用塗布液は、それぞれ各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー又は超音波分散器を用いることができる。
単層型感光層用塗布液は、各成分の分散性、又は形成される各々の層の表面平滑性を向上させるために、例えば、界面活性剤又はレベリング剤を含有してもよい。
単層型感光層形成工程は、例えば、単層型感光層用塗布液を導電性基体上に塗布し、塗布膜を形成する。次いで、塗布膜を乾燥させ、単層型感光層を形成する。
塗布液を塗布する方法としては、塗布液を均一に塗布できる方法であれば、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法又はバーコート法が挙げられる。
塗布液に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去する方法としては、塗布液中の溶剤を蒸発させ得る方法であれば、特に限定されない。除去する方法としては、例えば、加熱、減圧又は加熱と減圧との併用が挙げられる。より具体的には、高温乾燥機又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(より具体的には、熱風乾燥等)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて中間層を形成する工程を更に有してもよい。中間層を形成する工程は、公知の方法を適宜選択することができる。
[2−2.積層型感光層形成工程]
積層型感光体の製造方法において、感光層形成工程は、塗布液調製工程と、積層型感光層形成工程とを含む。単層型感光層形成工程と重複する事項は省略して説明する。
塗布液調製工程は、電荷発生層を形成するための塗布液(以下、電荷発生層用塗布液と記載することがある)と、電荷輸送層を形成するための塗布液(以下、電荷輸送層用塗布液と記載することがある)とを調製する。電荷発生層用塗布液は、電荷発生剤と、ベース樹脂と、溶剤とを含む。電荷発生層用塗布液は、電荷発生剤と、ベース樹脂とを溶剤に溶解又は分散させることにより調製する。電荷輸送層用塗布液は、正孔輸送剤と、ポリアリレート樹脂(2)と、溶剤とを含む。電荷輸送層用塗布液は、正孔輸送剤と、ポリアリレート樹脂(2)とを溶剤に溶解又は分散させることにより調製する。電荷発生層用塗布液及び電荷輸送層用塗布液は、必要に応じて各種添加剤を更に加えてもよい。
積層型感光層形成工程は、例えば、電荷発生剤用塗布液を導電性基体上に塗布し、塗布膜を形成し、塗布膜を乾燥させて電荷発生層を形成する。次いで、電荷輸送剤用塗布液を電荷発生層上に塗布し、塗布膜を形成し、塗布膜を乾燥させて電荷輸送層を形成する。
[2−3.溶剤]
電荷発生層用塗布液、電荷輸送層用塗布液及び単層型感光層用塗布液(以下、これら3つの塗布液を併せて塗布液と記載することがある)に含有される溶剤は、塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できれば、特に限定されない。溶剤としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はブタノール等)、脂肪族炭化水素(より具体的には、n−ヘキサン、オクタン又はシクロヘキサン等)、芳香族炭化水素(より具体的には、ベンゼン、トルエン又はキシレン等)、ハロゲン化炭化水素(より具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素又はクロロベンゼン等)、エーテル(より具体的には、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル又はジエチレングリコールジメチルエーテル等)、ケトン(より具体的には、アセトン、メチルエチルケトン又はシクロヘキサノン等)、エステル(より具体的には、酢酸エチル又は酢酸メチル等)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの溶剤のうち、非ハロゲン溶剤を用いることが好ましい。
更に、電荷輸送層用塗布液に含有される溶剤は、電荷発生層用塗布液に含有される溶剤と、異なることが好ましい。積層型感光体を製造する際、通常、電荷発生層、電荷輸送層の順に形成するため、電荷発生層上に、電荷輸送層用塗布液を塗布することになる。電荷輸送層形成時に、電荷発生層は、電荷輸送層用塗布液の溶剤に溶解しないことが求められるからである。
[2−4.電荷発生剤]
電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコンのような無機光導電材料の粉末、ピリリウム塩、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、又はキナクリドン系顔料が挙げられる。フタロシアニン系顔料としては、例えば、フタロシアニン又はフタロシアニン誘導体が挙げられる。フタロシアニンとしては、例えば、無金属フタロシアニン顔料(より具体的には、X型無金属フタロシアニン(x−H2Pc)等)が挙げられる。フタロシアニン誘導体としては、例えば、金属フタロシアニン顔料(より具体的には、チタニルフタロシアニン、又はV型ヒドロキシガリウムフタロシアニン等)が挙げられる。フタロシアニン系顔料の結晶形状については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン系顔料が使用される。フタロシアニン顔料の結晶形状としては、例えば、α型、β型又はY型が挙げられる。電荷発生剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。感光層がバインダー樹脂としてポリアリレート樹脂(2)を含有している場合、感光体の耐摩耗性を向上させる観点から、電荷発生剤は、フタロシアニン顔料が好ましく、チタニルフタロシアニンがより好ましく、Y型チタニルフタロシアニンが更に好ましい。
所望の領域に吸収波長を有する電荷発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上の電荷発生剤を組み合わせて用いてもよい。更に、例えば、デジタル光学式の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。デジタル光学式の画像形成装置としては、例えば、半導体レーザーのような光源を使用したレーザービームプリンター又はファクシミリが挙げられる。そのため、例えば、フタロシアニン系顔料が好ましく、Y型チタニルフタロシアニン(Y−TiOPc)がより好ましい。
Y型チタニルフタロシアニンは、Cu−Kα特性X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=27.2°に主ピークを有する。CuKα特性X線回折スペクトルにおける主ピークとは、ブラッグ角(2θ±0.2°)が3°以上40°以下である範囲において、1番目又は2番目に大きな強度を有するピークである。
(CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法)
CuKα特性X線回折スペクトルの測定方法を説明する。試料(チタニルフタロシアニン)をX線回折装置(株式会社リガク製「RINT(登録商標)1100」)のサンプルホルダーに充填して、X線管球Cu、管電圧40kV、管電流30mA、かつCuKα特性X線の波長1.542Åの条件で、X線回折スペクトルを測定する。測定範囲(2θ)は、3°以上40°以下(スタート角3°、ストップ角40°)であり、走査速度は、例えば10°/分である。得られたX線回折スペクトルから主ピークを決定し、主ピークのブラッグ角を読み取る。
短波長レーザー光源を用いた画像形成装置に適用される感光体には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料、又はペリレン系顔料が好適に用いられる。なお、短波長レーザー光源は、例えば、350nm以上550nm以下程度の波長を有する。
電荷発生剤は、例えば、化学式(CGM−1)〜(CGM−4)で表されるフタロシアニン系顔料である(以下、それぞれ電荷発生剤(CGM−1)〜(CGM−4)と記載することがある)。
Figure 0006677206
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電荷発生剤の含有量は、電荷発生層用バインダー樹脂(以下、ベース樹脂と記載することがある)100質量部に対して、5質量部以上1000質量部以下であることが好ましく、30質量部以上500質量部以下であることがより好ましい。
[2−5.正孔輸送剤]
正孔輸送剤としては、例えば、ジアミン誘導体(より具体的には、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体又はN,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体等);オキサジアゾール系化合物(より具体的には、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等);スチリル系化合物(より具体的には、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等);カルバゾール系化合物(より具体的には、ポリビニルカルバゾール等);有機ポリシラン化合物;ピラゾリン系化合物(より具体的には、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等);ヒドラゾン系化合物;インドール系化合物;オキサゾール系化合物;イソオキサゾール系化合物;チアゾール系化合物;チアジアゾール系化合物;イミダゾール系化合物;ピラゾール系化合物;トリアゾール系化合物が挙げられる。
感光体の感度特性及び耐摩耗性を更に向上させる観点から、これらの正孔輸送剤のうち一般式(HTM1)、(HTM2)又は(HTM3)で表される化合物(以下、それぞれ正孔輸送剤(HTM1)、(HTM2)及び(HTM3)と記載することがある)が好ましい。
Figure 0006677206
一般式(HTM1)中、Q1は、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又は炭素原子数1以上8以下のアルキル基を有してもよいフェニル基を表す。Q2は、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表す。Q3、Q4、Q5、Q6、及びQ7は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表す。Q3、Q4、Q5、Q6、及びQ7のうちの隣接した二つが互いに結合して環を形成してもよい。aは、0以上5以下の整数を表す。aが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のQ2は、互いに同一でも異なっていてもよい。
一般式(HTM1)中、Q3〜Q7の表す炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
一般式(HTM1)中、Q3〜Q7は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましく、水素原子又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表すことがより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基が更に好ましい。aは、0を表すことが好ましい。
Figure 0006677206
一般式(HTM2)中、Q8、Q10、Q11、Q12、Q13及びQ14は、各々独立に、水素原子、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表す。Q9及びQ15は、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基、又はフェニル基を表す。bは、0以上5以下の整数を表す。bが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のQ9は、互いに同一でも異なっていてもよい。cは、0以上4以下の整数を表す。cが2以上4以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のQ15は、互いに同一でも異なっていてもよい。kは、0又は1を表す。
一般式(HTM2)中、Q8及びQ10〜Q14の表す炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましい。
一般式(HTM2)中、Q8及びQ10〜Q14は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表すことが好ましい。b、c及びkは、0を表すことが好ましい。
Figure 0006677206
一般式(HTM3)中、Ra、Rb及びRcは、各々独立に、炭素原子数1以上8以下のアルキル基、フェニル基、又は炭素原子数1以上8以下のアルコキシ基を表す。qは、0以上4以下の整数を表す。qが2以上4以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のRcは、互いに同一でも異なっていてもよい。m及びnは、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。mが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のRbは、互いに同一でも異なっていてもよい。nが2以上5以下の整数を表す場合、同一のフェニル基に結合する複数のRaは、互いに同一でも異なっていてもよい。
一般式(HTM3)中、Ra及びRbの表す炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、炭素原子数1以上4以下のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基を表すことがより好ましい。
一般式(HTM3)中、Ra及びRbは、炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましい。m及びnは、各々独立に、0又は2を表すことが好ましい。qは0を表すことが好ましい。
正孔輸送剤(HTM1)としては、例えば、化学式(HTM−1)で表される化合物が挙げられる。正孔輸送剤(HTM2)としては、例えば、化学式(HTM−2)で表される化合物が挙げられる。正孔輸送剤(HTM3)としては、例えば、化学式(HTM−3)で表される化合物が挙げられる。以下、これらの化合物を、それぞれ正孔輸送剤(HTM−1)〜(HTM−3)と記載することがある。
Figure 0006677206
積層型感光体において、正孔輸送剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、10質量部以上200質量部以下であることが好ましく、20質量部以上100質量部以下であることがより好ましい。
[2−6.バインダー樹脂]
バインダー樹脂の含有量の比率は、電荷輸送層に含まれるすべての構成要素(例えば、正孔輸送剤及びバインダー樹脂)の質量の合計に対して40質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
[2−7.ベース樹脂]
ベース樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸系共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂又はポリエステル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂又はその他架橋性の熱硬化性樹脂が挙げられる。光硬化性樹脂としては、例えば、エポキシアクリル酸系樹脂、又はウレタン−アクリル酸系樹脂が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのベース樹脂のうち、ポリビニルアセタール樹脂が好ましい。
ベース樹脂は、上述したバインダー樹脂と同様の樹脂も例示されているが、同一の積層型感光体においては、通常、バインダー樹脂とは異なる樹脂が選択される。これは以下の理由を根拠としている。積層型感光体を製造する際、通常、電荷発生層、電荷輸送層の順に形成するため、電荷発生層に、電荷輸送層用塗布液を塗布することになる。電荷輸送層の形成時に、電荷発生層は、電荷輸送層用塗布液の溶剤に溶解しないことが好ましい。そこで、ベース樹脂は、同一の積層型感光体においては、通常、バインダー樹脂とは異なる樹脂が選択される。
[2−8.添加剤]
電荷発生層と、電荷輸送層と、単層型感光体の感光層と、中間層とのうちの少なくとも一つが、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、各種の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、劣化防止剤(より具体的には、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、消光剤又は紫外線吸収剤等)、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、電子アクセプター化合物、ドナー、界面活性剤又はレベリング剤が挙げられる。
レベリング剤としては、例えば、ジメチルシリコーンオイルが挙げられる。可塑剤としては、例えば、メタターフェニルが挙げられる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。なお、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。
(感光体の材料の準備)
感光層を形成するために、電荷発生剤と、正孔輸送剤と、バインダー樹脂とを準備した。
(電荷発生剤)
第二実施形態で説明した電荷発生剤(CGM−2)を準備した。電荷発生剤(CGM−2)は、化学式(CGM−2)で表されるY型チタニルフタロシアニン(Y型チタニルフタロシアニン結晶)であった。結晶構造はY型であった。
Y型チタニルフタロシアニン結晶は、CuKα特性X線回折スペクトルチャートにおいて、ブラッグ角2θ±0.2°=9.2°、14.5°、18.1°、24.1°、27.2°にピークを有しており、主ピークは27.2°であった。なお、CuKα特性X線回折スペクトルは、第二実施形態で説明した測定装置及び測定条件で測定された。
(正孔輸送剤)
第二実施形態で説明した正孔輸送剤(HTM−1)〜(HTM−3)を準備した。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂として第一実施形態で説明したポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−4)を準備した。ポリアリレート樹脂の製造方法において、重合触媒として第一実施形態で説明した第4級アンモニウム塩(CA−1)〜(CA−4)を準備した。更に、重合触媒として第4級アンモニウム塩(CA−5)〜(CA−7)を準備した。第4級アンモニウム塩(CA−5)〜(CA−7)は、それぞれ化学式(CA−5)〜(CA−7)で表される。
Figure 0006677206
<実施例1>
[ポリアリレート樹脂の製造方法(A−1)]
[樹脂製造工程]
セパラブルフラスコを反応容器として用いた。この反応容器は、温度計と、三方コックとを備えた容量2Lの筒型セパラブルフラスコである。反応容器にビスフェノールB(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン)20.01g(82.56ミリモル)と、p−tert−ブチルフェノール0.124g(0.826ミリモル)と、水酸化ナトリウム7.84g(196ミリモル)と、第4級アンモニウム塩(CA−1)0.207g(0.768ミリモル)とを投入した。次いで、反応容器内をアルゴン置換した。その後、水600mLを更に反応容器に投入した。反応容器の内温を20℃に保持して反応容器内の内容物を1時間攪拌した。その後、反応容器の内温を10℃に冷却した。その結果、アルカリ性水溶液Aを得た。
一方、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロリド9.40g(37.15ミリモル)と、4,4’−オキシビス安息香酸ジクロリド10.96g(37.15ミリモル)とをクロロホルム(アミレン添加品)300gに溶解させた。その結果、クロロホルム溶液Bを得た。
次いで、反応容器内のアルカリ性水溶液Aを10℃に保持し攪拌しながら、クロロホルム溶液Bを反応容器に投入した。これにより、重合反応を開始させた。反応容器内の内温を13±3℃に調節して、反応容器の内容物を3時間攪拌して重合反応を進行させた。
[水洗浄工程]
(第一回目の水洗浄)
その後、デカントを用いて反応容器の内容物における上層(水層)を除去し、有機層を得た。次いで、イオン交換水(電気伝導度0.10μS・cm)500mLと、クロロホルム300gと酢酸6mLとを反応容器内に更に投入した。室温(25℃)で反応容器内の内容物を30分間攪拌した。その後、デカントを用いて反応容器の内容物における上層を除去し、有機層を得た。除去した上層の水(第一回目の洗浄後の廃棄水)の電気伝導度を測定した。この測定は、電気伝導率計(ハンナ インスツルメンツ社製「純水用ECテスター HI 98308(PWT PURE)」)を用いて室温で実施された。第一回目の洗浄後の廃棄水の電気伝導度は、100μS・cm以上であった。
(第二回目の水洗浄)
イオン交換水500mLと、クロロホルム300gと酢酸6mLとを反応容器内に更に投入した。室温で反応容器内の内容物を30分間攪拌した。その後、デカントを用いて反応容器の内容物における上層を除去し、有機層を得た。除去した上層の水(第二回目の洗浄後の廃棄水)の電気伝導度を測定した。第二回目の洗浄後の廃棄水の電気伝導度は、24.5μS・cmであった。
(第三回目の水洗浄)
イオン交換水500mLと、クロロホルム300gと酢酸6mLとを反応容器内に更に投入した。室温で反応容器内の内容物を30分間攪拌した。その後、デカントを用いて反応容器の内容物における上層を除去し、有機層を得た。除去した上層の水(第二回目の洗浄後の廃棄水)の電気伝導度を測定した。第三回目の洗浄後の廃棄水の電気伝導度は、8.4μS・cmであった。このように、廃棄水の電気伝導度が10.0μS・cm以下になるまで水洗浄を繰り返した。
有機層をろ過し、ろ液を得た。容量3Lのビーカーにメタノール1.5Lを投入した。ビーカー内にろ液をゆっくりと滴下した。その結果、沈殿物を得た。ろ過により沈殿物を取り出した。沈殿物を温度70℃で12時間真空乾燥させた。ポリアリレート樹脂(R−1)を得た。ポリアリレート樹脂(R−1)の収量は27.5gであり、収率は83.4%であった。ポリアリレート樹脂(R−1)の粘度平均分子量は67,000であった。以下、ポリアリレート樹脂の製造方法(A−1)で得られたポリアリレート樹脂をポリアリレート樹脂(A−1)と記載することがある。
(吸光度の測定)
吸光度計(株式会社日立ハイテクサイエンス製「分光硬度計 U−3000」)を用いてポリアリレート樹脂(A−1)の吸光度を測定した。ポリアリレート樹脂(A−1)の9.1質量%テトラヒドラフラン溶液を調製し、吸光度測定用溶液とした。吸光度測定用溶液を光路長1.00cmのセルに充填し、セルを吸光度計に設置した。波長390nmの光を用いて、温度23℃及び相対湿度50%RHで吸光度を測定した。なお、参照データとしてテトラヒドロフラン溶媒を用いた。
<実施例2〜8>
[ポリアリレート樹脂の製造方法(A−2)〜(A−8)]
以下に示す以外は実施例1のポリアリレート樹脂の製造方法(A−1)と同様にして実施例2〜8のポリアリレート樹脂の製造方法(A−2)〜(A−8)
により、ポリアリレート樹脂(A−2)〜(A−8)を製造した。ポリアリレート樹脂(R−1)の出発物質であるビスフェノールBをポリアリレート樹脂(R−2)〜(R−4)の出発物質であるビスフェノール誘導体に変更した。ポリアリレート樹脂(R−1)の出発物質である2,6−ナフタレンジカルボン酸ジクロリド及び4,4’−オキシビス安息香酸ジクロリドをポリアリレート樹脂(R−1)〜(R−4)の出発物質であるハロゲン化アルカノイルに変更した。出発物質の物質量比は、ポリアリレート樹脂(R−1)〜(R〜4)中の芳香族カルボン酸由来及びビスフェノール誘導体由来の繰返し単位のモル分率に対応するようにして決定した。水洗浄工程は、上述のように、水洗浄後の廃棄水の電気伝導度が10μS・cm以下となるまで繰り返した。重合触媒を第4級アンモニウム塩(CA−1)から表1に記載の第4級アンモニウム塩に変更した。反応溶媒をクロロホルム(アミレン添加品)から表1に記載の溶媒に変更した。以下、実施例2〜8のポリアリレート樹脂の製造方法(A−2)〜(A−8)で製造されたポリアリレート樹脂をそれぞれポリアリレート樹脂(A−2)〜(A−8)と記載することがある。
<比較例1〜4>
[ポリアリレート樹脂の製造方法(B−1)〜(B−4)]
以下に示す以外は実施例1のポリアリレート樹脂の製造方法(A−1)と同様にして比較例1〜4のポリアリレート樹脂の製造方法(B−1)〜(B−4)
により、ポリアリレート樹脂(B−1)〜(B−4)を製造した。上述のように、水洗浄後の廃棄水の電気伝導度が10μS・cm以下となるまで繰り返した。比較例2は、15回洗浄しても廃棄水の電気伝導度は10μS・cm以下とならなかった。重合触媒を第4級アンモニウム塩(CA−1)から表1に記載の第4級アンモニウム塩に変更した。反応溶媒をクロロホルム(アミレン添加品)から表1に記載の反応溶媒に変更した。以下、比較例1〜4のポリアリレート樹脂の製造方法(B−1)〜(B−4)で製造されたポリアリレート樹脂をそれぞれポリアリレート樹脂(B−1)〜(B−4)と記載することがある。
<実施例9>
[感光体の製造方法(C−1)]
以下、感光体の製造方法(C−1)を説明する。感光体の製造方法(C−1)は、中間層形成工程と、感光層形成工程とを含む。感光層形成工程は、電荷発生層形成工程と、電荷輸送層形成工程とを含む。
(中間層形成工程)
はじめに、表面処理された酸化チタン(テイカ株式会社製「試作品SMT−A」、平均一次粒径10nm)を準備した。詳しくは、アルミナとシリカとを用いて酸化チタンを表面処理し、更に、表面処理された酸化チタンを湿式分散しながらメチルハイドロジェンポリシロキサンを用いて表面処理したものを準備した。次いで、表面処理された酸化チタン(2質量部)と、ポリアミド樹脂であるアミラン(登録商標)(東レ株式会社製「CM8000」)(1質量部)とを、混合溶媒に添加した。アミランは、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド66及びポリアミド610の四元共重合ポリアミド樹脂であった。混合溶剤は、メタノール(10質量部)と、ブタノール(1質量部)と、トルエン(1質量部)とを含む溶剤であった。ビーズミルを用いて、材料(表面処理された酸化チタン及びポリアミド樹脂)と混合溶媒とを5時間混合し混合溶剤中に材料を分散させた。これにより、中間層用塗布液を調製した。
得られた中間層用塗布液を、目開き5μmのフィルターを用いてろ過した。その後、導電性基体としてのアルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、全長246mm)の表面に、ディップコート法を用いて、中間層用塗布液を塗布し、塗布膜を形成した。続いて、塗布膜を130℃で30分間乾燥させて、導電性基体(ドラム状支持体)上に中間層(膜厚2μm)を形成した。
(電荷発生層形成工程)
Y型チタニルフタロシアニン(1.5質量部)と、ベース樹脂としてのポリビニルアセタール樹脂(積水化学工業株式会社製「エスレックKX−5」)(1質量部)とを、混合溶剤に添加した。この混合溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテル(40質量部)と、テトラヒドロフラン(40質量部)とを含む溶剤であった。ビーズミルを用いて、材料(Y型チタニルフタロシアニン及びポリビニルアセタール樹脂)と混合溶剤とを2時間混合し、溶剤中に材料を分散させて、電荷発生層用塗布液を作製した。得られた電荷発生層用塗布液を、目開き3μmのフィルターを用いてろ過した。次いで、得られたろ過液を、上述のようにして形成された中間層上にディップコート法を用いて塗布し、塗布膜を形成した。塗布膜を50℃で5分間乾燥させた。これにより、中間層上に電荷発生層(膜厚0.3μm)を形成した。
(電荷輸送層形成工程)
正孔輸送剤(HTM−1)50質量部と、メタターフェニル5質量部と、バインダー樹脂としてのポリアリレート樹脂(A−1)100質量部と、レベリング剤としてのジメチルシリコーンオイル(信越化学工業株式会社「KF96−50CS」)0.05質量部とを、混合溶媒に添加した。この溶媒は、テトラヒドロフラン600質量部と、トルエン100質量部とを含む溶媒であった。材料(正孔輸送剤(HTM−1)、メタターフェニル、ポリアリレート樹脂(A−1)及びジメチルシリコーンオイル)と、混合溶媒とを混合し、溶媒中に材料を分散させて、電荷輸送層用塗布液を調製した。
電荷発生層用塗布液と同様の操作により、電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に塗布し、塗布膜を形成した。その後、開始温度60℃から最終到達温度130℃まで昇温速度1℃/分で70分間塗布膜を乾燥させた。電荷発生層上に電荷輸送層(膜厚20μm)を形成した。その結果、感光体(C−1)が得られた。以下、このように感光体の製造方法(C−1)で製造された感光体を、感光体(C−1)と記載することがある。感光体(C−1)は、導電性基体上に、中間層、電荷発生層及び電荷輸送層が、この順で積層された構成を有していた。
<実施例10〜18>
[感光体の製造方法(C−2)〜(C−10)]
以下に示す以外は実施例9の感光体の製造方法(C−1)と同様にして実施例10〜18の感光体の製造方法(C−2)〜(C−10)により、それぞれ感光体(C−2)〜(C−10)を製造した。ポリアリレート樹脂(A−1)を表2に記載の種類のバインダー樹脂に変更した。正孔輸送剤(HTM−1)を表2に記載の種類の正孔輸送剤に変更した。
<比較例5〜8>
[感光体の製造方法(D−1)〜(D−4)]
以下に示す以外は実施例9の感光体の製造方法(C−1)と同様にして比較例1〜4の感光体の製造方法(D−1)〜(D−4)により、それぞれ感光体(D−1)〜(D−4)を製造した。ポリアリレート樹脂(A−1)を表2に記載の種類のバインダー樹脂に変更した。
[感光体の性能評価]
(感光体の帯電特性評価:帯電電位V0の測定)
感光体(C−1)〜(C−10)及び感光体(D−1)〜(D−4)の何れかを、ドラム感度試験機(ジュンテック株式会社製)を用いて、回転数31rpmとし、ドラム流れ込み電流が−10μmA時の表面電位を測定した。測定した表面電位を帯電電位V0(単位:V)とした。帯電電位は、温度23℃及び湿度50%RHで測定された。表2に帯電電位V0を示す。
(感光体の感度特性評価:露光後電位VLの測定)
感光体(C−1)〜(C−10)及び感光体(D−1)〜(D−4)の何れかを、ドラム感度試験機(ジェンテック株式会社製)を用いて、回転数を31rpmとし、−600Vになるように帯電させた。次いで、単色光(波長:780nm、露光量:0.8μJ/cm2)をハロゲンランプの光からバンドパスフィルターを用いて取り出し、感光体の表面に照射した。単色光の照射終了後、80ミリ秒が経過した後の表面電位を測定した。測定した表面電位を露光後電位VL(単位:V)とした。露光後電位は、温度23℃及び相対湿度50%RHで測定された。表1に露光後電位VLを示す。
(感光体の耐摩耗性評価:摩耗減量の測定)
感光体(C−1)〜(C−10)及び感光体(D−1)〜(D−4)の何れかの製造において調製した電荷輸送層用塗布液を、アルミパイプ(直径:78mm)に巻きつけたポリプロピレンシート(厚さ0.3mm)に塗布し、塗布膜を形成した。開始温度60℃から最終到達温度130℃まで昇温速度1℃/分で70分間塗布膜を乾燥させた。電荷輸送層(膜厚30μm)が形成された摩耗評価試験用のシートを作製した。摩耗させる前の摩耗評価試験用シートの質量を測定した。
このポリプロピレンシートから電荷輸送層を剥離し、ウィールS−36(テーバー社製)に貼り付け、サンプルを作製した。作製したサンプルをロータリーアブレージョンテスター(株式会社東洋精機製作所製)にセットし、摩耗輪(テーバー社製「CS−10」)を用い、荷重500gf及び回転速度60rpmの条件で1,000回転させ、摩耗評価試験を実施した。摩耗させた後の摩耗評価試験用シートの質量を測定した。摩耗前後の摩耗評価試験用シートの質量から、その質量変化の値を算出した。得られた質量変化の値を摩耗減量(単位:mg/1000回転)とした。得られた摩耗減量に基づいて、感光体の耐摩耗性を評価した。
表1にポリアリレート樹脂の製造方法(A−1)〜(A−8)及び(B−1)〜(B−4)の条件を示す。欄「No」のA−1〜A−8及びB−1〜B−4は、ポリアリレート樹脂の製造方法(A−1)〜(A−8)及び(B−1)〜(B−4)、並びにそれらの方法により製造されたポリアリレート樹脂(A−1)〜(A−8)及び(B−1)〜(B−4)を示す。欄「構造」のR−1〜R−4は、それぞれ化学式(R−1)〜(R−4)で表されるポリアリレート樹脂の構造を示す。欄「重合触媒」のCA−1〜CA−7は、それぞれ第4級アンモニウム塩(CA−1)〜(CA−7)を示す。欄「溶媒」のクロロホルムは、クロロホルム(アミレン添加品)を示す。欄「分子量」の数値は、バインダー樹脂の粘度平均分子量を示す。欄「洗浄回数」は、洗浄後の廃棄水の電気伝導度が10μS・cm以下となるまでの水洗浄の回数を示す。ただし、比較例2は、洗浄を15回実施したが、洗浄後の廃棄水の電気伝導度が10μS・cm以下とならなかった。欄「洗浄後の廃棄水の電気伝導度」の「−」は、電気伝導度を測定しなかったことを示す。
表2に感光体の製造方法(C−1)〜(C−10)及び(D−1)〜(D−4)を示す。欄「No」のC−1〜C−10及びD−1〜D−4は、感光体の製造方法(C−1)〜(C−10)及び(D−1)〜(D−4)、並びにそれらの方法により製造された感光体(C−1)〜(C−10)及び(D−1)〜(D−4)を示す。欄「HTM」のHTM−1〜HTM−3は、それぞれ正孔輸送剤(HTM−1)〜(HTM−3)を示す。欄「樹脂」のA−1〜A−8及びB−1〜B−4は、それぞれポリアリレート樹脂(A−1)〜(A−8)及び(B−1)〜(B−4)を示す。
Figure 0006677206
Figure 0006677206
表1に示すように、ポリアリレート樹脂の製造方法(A−1)〜(A−8)は、重合触媒として第4級アンモニウム塩(CA−1)〜(CA−4)を用いた。得られたポリアリレート樹脂(A−1)〜(A−8)の吸光度は、0.056以上0.092以下であった。表2に示すように、感光体の製造方法(C−1)〜(C−10)は、ポリアリレート樹脂(A−1)〜(A−8)の何れかを用いて感光体を製造する方法であった。表2に示すように、感光体(C−1)〜(C−10)では、露光後電位は−76V以上−49V以下であり、摩耗減量は5.0mg以上8.5mg以下であった。
表1に示すように、ポリアリレート樹脂の製造方法(B−1)〜(B−4)は、重合触媒として第4級アンモニウム塩(CA−5)〜(CA−7)を用いた。得られたポリアリレート樹脂(B−1)、(B−2)及び(B−4)の吸光度は、0.105以上0.253以下であった。表2に示すように、感光体の製造方法(C−1)〜(C−4)は、ポリアリレート樹脂(B−1)〜(B−4)の何れかを用いて、感光体を製造する方法であった。表2に示すように、ポリアリレート樹脂(B−1)、(B−2)及び(B−4)では、露光後電位は−295V以上−99V以下であった。ポリアリレート樹脂(B−3)では、摩耗減量は12.6mgであった。
表1及び表2から明らかなように、ポリアリレート樹脂の製造方法(A−1)〜(A−8)は、ポリアリレート樹脂の製造方法(B−1)〜(B−4)に比べ、重合触媒としての第4アンモニウム塩の残存量を低減し、かつポリアリレート樹脂の分子量を高めことができる。また、感光体の製造方法(C−1)〜(C−10)は、感光体の製造方法(D−1)〜(D−4)に比べ、感度特性及び耐摩耗性に優れる感光体を製造することができる。
本発明のポリアリレート樹脂は、電子写真感光体のバインダー樹脂として利用できる。また、本発明に係る電子写真感光体は、複合機のような画像形成装置に利用できる。
1 電子写真感光体
2 導電性基体
3 感光層
3a 単層型感光層
3b 電荷発生層
3c 電荷輸送層

Claims (6)

  1. ビスフェノール誘導体と、芳香族ジカルボン酸誘導体とを重合触媒を用いて界面重合させる合成工程と、
    有機相を洗浄水で複数回にわたり洗浄してポリアリレート樹脂を得る洗浄工程とを含み、
    前記重合触媒は、一般式(1)で表される第4級アンモニウム塩であり、
    前記ポリアリレート樹脂は、一般式(2)で表され、
    前記ポリアリレート樹脂の吸光度は、0.100以下であり、
    前記吸光度は、前記ポリアリレート樹脂の9.1質量%テトラヒドラフラン溶液を、光路長1.00cmのセルに充填し、波長390nmの光を用いて測定される、ポリアリレート樹脂の製造方法。
    Figure 0006677206
    前記一般式(1)中、
    -は、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン又は硫酸水素イオンを表し、
    Yは、プロピル基、ブチル基又はベンジル基を表す。
    Figure 0006677206
    前記一般式(2)中、
    1 及びR 4 は、各々独立に、水素原子又はメチル基を表し、
    2 、R 3 、R 5 及びR 6 は、各々独立に、水素原子又は炭素原子数1以上4以下のアルキル基を表し、
    2 及びR 3 は、互いに結合して炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基を表してもよく、
    5 及びR 6 は、互いに結合して炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基を表してもよく、
    r及びsは、0以上49以下の整数を表し、
    t及びuは、1以上50以下の整数を表し、
    r+t=s+uであり、
    r+s+t+u=100である。
  2. 前記有機相は、クロロホルムを含む、請求項1に記載のポリアリレート樹脂の製造方法。
  3. 前記第4級アンモニウム塩は、化学式(CA−1)、化学式(CA−2)、化学式(CA−3)又は化学式(CA−4)である、請求項1又は2に記載のポリアリレート樹脂の製造方法。
    Figure 0006677206
  4. 前記一般式(2)中、
    1及びR4は、水素原子を表し、
    2及びR3のうちの一方はメチル基を表し、R2及びR3のうちの他方はエチル基を表し、
    5及びR6のうちの一方はメチル基を表し、R5及びR6のうちの他方はエチル基を表す、請求項1〜3の何れか一項に記載のポリアリレート樹脂の製造方法。
  5. 前記一般式(2)で表されるポリアリレート樹脂は、化学式(R−1)、化学式(R−2)、化学式(R−3)又は化学式(R−4)で表されるポリアリレート樹脂である、請求項1〜3の何れか一項に記載のポリアリレート樹脂の製造方法。
    Figure 0006677206
  6. 請求項1〜の何れか一項に記載のポリアリレート樹脂の製造方法を用いて前記ポリアリレート樹脂を製造する樹脂製造工程と、
    感光層塗布液を塗布し、感光層を形成する感光層形成工程とを含み、
    前記感光層塗布液は、正孔輸送剤と、前記ポリアリレート樹脂とを含む、電子写真感光体の製造方法。
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