JP6669033B2 - エジェクタ式冷凍サイクル - Google Patents

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Description

本発明は、エジェクタを備えるエジェクタ式冷凍サイクルに関する。
従来、特許文献1に、冷媒減圧装置としてエジェクタを備える蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置であるエジェクタ式冷凍サイクルが開示されている。特許文献1のエジェクタ式冷凍サイクルは、空調装置に適用されている。さらに、特許文献1のエジェクタ式冷凍サイクルは、空調対象空間を暖房する暖房モード時に、通常運転と高加熱能力運転とを切り替え可能に構成されている。
そして、暖房モードの通常運転では、サイクルが高い成績係数(COP)を発揮できるようにサイクル構成機器の作動を制御している。具体的には、暖房モードの通常運転では、エジェクタのノズル部へ流入する冷媒が、目標過冷却度の液相冷媒となるように、ノズル部の上流側に配置された冷媒流量調整弁の作動を制御している。この目標過冷却度は、COPが極大値に近づくように設定されている。
一方、暖房モードの高加熱能力運転では、COPの向上に優先して、空調対象空間へ送風される送風空気の加熱能力(すなわち、暖房能力)を向上させるようにサイクル構成機器の作動を制御している。具体的には、暖房モードの高加熱能力運転では、エジェクタのノズル部へ流入する冷媒が、目標乾き度の気液二相冷媒となるように、冷媒流量調整弁の作動を制御している。
この目標乾き度は、圧縮機吐出冷媒を熱源として送風空気を加熱する室内凝縮器における送風空気の加熱能力が極大値に近づくように、0.5〜0.8といった比較的高い値に設定されている。
特開2014−206362号公報
ところで、特許文献1の暖房モードの通常運転では、COPを向上させるためにエジェクタのノズル部へ流入する冷媒を過冷却液相冷媒に調整している。このため、通常運転では、エジェクタのノズル部へ流入する冷媒を気液二相冷媒に調整する高加熱能力運転よりも加熱能力を向上させにくい。同様に、特許文献1の暖房モードの高加熱能力運転では、通常運転よりもCOPを向上させにくい。
つまり、特許文献1のエジェクタ式冷凍サイクルでは、暖房モード時に、COPの向上と加熱能力の向上との両立を図ることが難しい。
本発明は、上記点に鑑み、熱交換対象流体を加熱する際のサイクルの成績係数の向上と加熱能力の向上とを両立可能なエジェクタ式冷凍サイクルを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、圧縮機から吐出された冷媒を熱源として、熱交換対象流体を加熱する加熱用熱
交換器(12)と、加熱用熱交換器から流出した冷媒を減圧させるノズル部(15a)から噴射された噴射冷媒の吸引作用によって冷媒吸引口(15c)から冷媒を吸引し、噴射冷媒と冷媒吸引口から吸引された吸引冷媒とを混合させて昇圧させる昇圧部(15d)を有するエジェクタ(15)と、エジェクタから流出した冷媒の気液を分離する気液分離部(19)と、気液分離部から流出した液相冷媒と熱媒体とを熱交換させる補助加熱用熱交換器(20)と、補助加熱用熱交換器から流出した冷媒を減圧させる加熱側減圧装置(14c)と、冷媒と外気とを熱交換させる室外熱交換器(18)と、を備え、
熱交換対象流体を加熱する加熱モード時には、補助加熱用熱交換器にて冷媒の有する熱を熱媒体に放熱させ、加熱側減圧装置にて減圧された冷媒を室外熱交換器へ流入させ、室外熱交換器から流出した冷媒を冷媒吸引口から吸引させ、さらに、気液分離部にて分離された気相冷媒を圧縮機に吸入させる冷媒回路になっており、
熱交換対象流体は、空調対象空間へ送風される送風空気であり、熱媒体は、空調対象空間の外部の外気であり、加熱用熱交換器では、加熱モード時に、補助加熱用熱交換器にて加熱された外気を送風空気として加熱するエジェクタ式冷凍サイクルである。
これによれば、加熱モード時に、エジェクタ(15)のノズル部(15a)へ流入する冷媒を、比較的乾き度の高い気液二相冷媒とすることで、熱交換対象流体の加熱能力(Q)を向上させることができる。
さらに、このような運転条件では、後述する実施形態に説明するように、エジェクタ(15)の昇圧部(15d)の昇圧能力を向上させて、気液分離部(19)へ流入する冷媒の温度を熱媒体よりも高い温度とすることができる。従って、補助加熱用熱交換器(20)にて、気液分離部(19)から流出した液相冷媒の有する熱を熱媒体に放熱させることができ、気液分離部(19)から流出した液相冷媒を過冷却することができる。
そして、過冷却された液相冷媒を加熱側減圧装置(14c)を介して、室外熱交換器(18)へ流入させることで、室外熱交換器(18)にて冷媒が外気から吸熱する吸熱量を増大させることができる。その結果、サイクルの成績係数(COP)を向上させることができる。
すなわち、請求項1に記載の発明によれば、熱交換対象流体を加熱する際のサイクルの成績係数(COP)の向上と熱交換対象流体の加熱能力(Q)の向上とを両立可能なエジェクタ式冷凍サイクルを提供することができる。
また、上述したCOPの向上と加熱能力の向上との両立を図るために、エジェクタ(15)のノズル部(15a)へ流入する冷媒の乾き度(x)を調整する乾き度調整装置(14b)を備えていてもよい。そして、加熱モード時に、乾き度調整装置(14b)が、気液分離部(19)内の冷媒の温度が熱媒体の温度よりも高くなるように乾き度(x)を調整するようになっていてもよい。
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクルの冷房モード時および直列除湿暖房モード時の冷媒回路を示す全体構成図である。 第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクルの並列除湿暖房モード時の冷媒回路を示す全体構成図である。 第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクルの暖房モード時の冷媒回路を示す全体構成図である。 第1実施形態の車両用空調装置の電気制御部を示すブロック図である。 第1実施形態の各運転モードにおける各機器の作動状態を示す図表である。 第1実施形態のエジェクタ式冷凍サイクルの暖房モード時の冷媒の状態を示すモリエル線図である。 エジェクタのノズル部へ流入する冷媒の乾き度を変化させた際の加熱能力の比の変化を示すグラフである。 エジェクタのノズル部へ流入する冷媒の乾き度を変化させた際のCOPの変化を示すグラフである。 第2実施形態のエジェクタ式冷凍サイクルの全体構成図である。 第3実施形態のエジェクタ式冷凍サイクルの全体構成図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態のうち、第1実施形態および第3実施形態が本発明の実施形態であり、第2実施形態は、参考例として示す形態である。
(第1実施形態)
図1〜図8を用いて、本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、本発明に係るエジェクタ式冷凍サイクル10を、車両走行用の駆動力を走行用電動モータから得る電気自動車に搭載される車両用空調装置1に適用している。エジェクタ式冷凍サイクル10は、車両用空調装置1において、空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を加熱あるいは冷却する機能を果たす。従って、エジェクタ式冷凍サイクル10における熱交換対象流体は送風空気である。
エジェクタ式冷凍サイクル10は、図1〜図3に示すように、冷房モードの冷媒回路(図1参照)、直列除湿暖房モードの冷媒回路(図1参照)、並列除湿暖房モードの冷媒回路(図2参照)、暖房モードの冷媒回路(図3参照)を切替可能に構成されている。
冷房モードは、送風空気を冷却して車室内を冷房する運転モードである。直列除湿暖房モードは、冷却して除湿された送風空気を再加熱して車室内の除湿暖房を行う運転モードである。並列除湿暖房モードは、直列除湿暖房モードよりも高い加熱能力で送風空気を再加熱して車室内の除湿暖房を行う運転モードである。さらに、暖房モードは、送風空気を加熱して車室内を暖房する運転モードである。
なお、図1〜図3では、それぞれの運転モードにおける冷媒の流れを実線矢印で示している。また、エジェクタ式冷凍サイクル10における加熱能力Qとは、後述する室内凝縮器12の出口側冷媒のエンタルピから入口側冷媒のエンタルピを減算したエンタルピ差ΔHと、室内凝縮器12を流通する冷媒流量Gnとの積算値等を用いて定義することができる。
また、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、冷媒として、HFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。この冷媒には、圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
エジェクタ式冷凍サイクル10の構成機器のうち、圧縮機11は、車両ボンネット内に配置され、エジェクタ式冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。本実施形態では、圧縮機11として、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機を採用している。圧縮機11は、後述する空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御される。
圧縮機11の吐出口には、室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、後述する室内空調ユニット30において送風空気の空気通路を形成するケーシング31内に配置されている。室内凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と後述する室内蒸発器23通過後の送風空気とを熱交換させて、高圧冷媒を熱源として送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。室内空調ユニット30の詳細については後述する。
室内凝縮器12の冷媒出口には、第1三方継手13aの1つの流入出口側が接続されている。さらに、エジェクタ式冷凍サイクル10では、後述するように、第2〜第7三方継手13b〜13gを備えている。第2〜第7三方継手13b〜13gの基本的構成は、第1三方継手13aと同様である。
これらの三方継手のうち、例えば、並列除湿暖房モード時の第1三方継手13aでは、3つの流入出口のうち1つが流入口として用いられ、残りの2つが流出口として用いられる。従って、並列除湿暖房モード時の第1三方継手13aは、流入口から流入した冷媒の流れを分岐する分岐部としての機能を果たす。
また、例えば、並列除湿暖房モード時の第7三方継手13gでは、3つの流入出口のうち2つが流入口として用いられ、残りの1つが流出口として用いられる。従って、並列除湿暖房モード時の第7三方継手13gは、2つの流入口から流入した冷媒の流れを合流させる合流部としての機能を果たす。
第1三方継手13aの一方の流出口には、第2三方継手13bの1つの流入口側が接続されている。第1三方継手13aの他方の流出口には、第6三方継手13fの1つの流入口側が接続されている。第1三方継手13aの他方の流出口側と第6三方継手13fの1つの流入口側とを接続する冷媒通路には、第1開閉弁17aが配置されている。
第1開閉弁17aは、冷媒通路を開閉する電磁弁である。さらに、エジェクタ式冷凍サイクル10では、後述するように、第2〜第5開閉弁17b〜17eを備えている。第2〜第5開閉弁17b〜17eの基本的構成は、第1開閉弁17aと同様である。
第1〜第5開閉弁17a〜17eは、冷媒通路を開閉することで、上述した各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、第1〜第5開閉弁17a〜17eは、冷媒回路切替装置としての機能を果たす。第1〜第5開閉弁17a〜17eは、空調制御装置40から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
第2三方継手13bの一方の流出口には、第3三方継手13cの1つの流入出口側が接続されている。第2三方継手13bの一方の流出口側と第3三方継手13cの1つの流入出口側とを接続する冷媒通路には、第1流量調整弁14aが配置されている。
また、第2三方継手13bの他方の流出口には、後述するエジェクタ15のノズル部15aの入口側が接続されている。第2三方継手13bの他方の流出口側とエジェクタ15のノズル部15aの入口側とを接続する冷媒通路には、第2流量調整弁14bが配置されている。
第1、第2流量調整弁14a、14bは、いずれも冷媒通路の開度を変化させる弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータ(具体的には、ステッピングモータ)を有して構成される電気式の可変絞り機構である。第1流量調整弁14aは、少なくとも直列除湿暖房モード時に、後述する室外熱交換器18へ流入する冷媒流量を調整するとともに、冷媒を減圧させる膨張弁としての機能を果たす。
第2流量調整弁14bは、少なくとも並列除湿暖房モード時および暖房モード時に、エジェクタ15のノズル部15aへ流入する冷媒流量を調整するとともに、ノズル部15aへ流入する冷媒を減圧させる機能を果たす。このため、第2流量調整弁14bは、ノズル部15aへ流入する冷媒の乾き度xを調整する乾き度調整装置としての機能を果たす。
さらに、エジェクタ式冷凍サイクル10では、後述するように、第3、第4流量調整弁14c、14dを備えている。第3、第4流量調整弁14c、14dの基本的構成は、第1、第2流量調整弁14a、14bと同様である。
これらの第1〜第4流量調整弁14a〜14dは、弁開度を全開にすることで流量調整作用および冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能、および弁開度を全閉にすることで冷媒通路を閉塞する全閉機能を有している。
そして、この全開機能および全閉機能によって、第1〜第4流量調整弁14a〜14dは、上述した各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、第1〜第4流量調整弁14a〜14dは、第1〜第5開閉弁17a〜17eとともに、冷媒回路切替装置としての機能を兼ね備えている。第1〜第4流量調整弁14a〜14dは、空調制御装置40から出力される制御信号(制御パルス)によって、その作動が制御される。
第3三方継手13cの別の流入出口には、室外熱交換器18の一方の冷媒出入口側が接続されている。第3三方継手13cのさらに別の流入出口には、エジェクタ15の冷媒吸引口15c側が接続されている。第3三方継手13cのさらに別の流入出口とエジェクタ15の冷媒吸引口15cとを接続する冷媒通路には、この冷媒通路を開閉する第2開閉弁17bが配置されている。
エジェクタ15は、少なくとも並列除湿暖房モード時および暖房モード時に、室内凝縮器12から流出した冷媒を減圧させる減圧装置としての機能を果たす。さらに、エジェクタ15は、高速度で噴射される噴射冷媒の吸引作用によって、室外熱交換器18から流出した冷媒を吸引して輸送する冷媒輸送装置としての機能を果たす。
より具体的には、エジェクタ15は、ノズル部15aおよびボデー部15bを有している。ノズル部15aは、冷媒の流れ方向に向かって徐々に先細る形状の金属製(本実施形態では、ステンレス製)の略円筒状部材で形成されている。そして、内部に形成された冷媒通路にて冷媒を等エントロピ的に減圧させるものである。
ノズル部15aの内部に形成された冷媒通路には、通路断面積が最も縮小した喉部(最小通路面積部)が形成され、さらに、この喉部から冷媒を噴射する冷媒噴射口へ向かうに伴って冷媒通路面積が拡大する末広部が形成されている。つまり、ノズル部15aは、ラバールノズルとして構成されている。
さらに、本実施形態では、ノズル部15aとして、エジェクタ式冷凍サイクル10の通常作動時に、冷媒噴射口から噴射される噴射冷媒の流速が音速以上となるように設定されたものが採用されている。もちろん、ノズル部15aを先細ノズルで構成してもよい。
ボデー部15bは、金属製(本実施形態では、アルミニウム合金製)の円筒状部材で形成されており、内部にノズル部15aを支持固定する固定部材として機能するとともに、エジェクタ15の外殻を形成するものである。より具体的には、ノズル部15aは、ボデー部15bの長手方向一端側の内部に収容されるように圧入にて固定されている。従って、ノズル部15aとボデー部15bとの固定部(圧入部)から冷媒が漏れることはない。
また、ボデー部15bの外周面のうち、ノズル部15aの外周側に対応する部位には、その内外を貫通してノズル部15aの冷媒噴射口と連通するように設けられた冷媒吸引口15cが形成されている。この冷媒吸引口15cは、ノズル部15aから噴射される噴射冷媒の吸引作用によって、室外熱交換器18一方の冷媒出入口から流出した冷媒をエジェクタ15の内部へ吸引する貫通穴である。
さらに、ボデー部15bの内部には、冷媒吸引口15cから吸引された吸引冷媒をノズル部15aの冷媒噴射口側へ導く吸引通路、および吸引通路を介してエジェクタ15の内部へ流入した吸引冷媒と噴射冷媒とを混合させて昇圧させる昇圧部であるディフューザ部15dが形成されている。
ディフューザ部15dは、吸引通路の出口に連続するように配置されて、冷媒通路面積が徐々に拡大するように形成されている。これにより、噴射冷媒と吸引冷媒とを混合させながら、その流速を減速させて噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒の圧力を上昇させる機能、すなわち、混合冷媒の速度エネルギを圧力エネルギに変換する機能を果たす。
ディフューザ部15dの冷媒流出口には、アキュムレータ19の入口側が接続されている。アキュムレータ19は、エジェクタ15のディフューザ部15dから流出した冷媒の気液を分離して、サイクルの余剰冷媒を蓄える気液分離部である。アキュムレータ19には、分離された気相冷媒を流出させるための気相冷媒流出口と、分離された液相冷媒を流出させるための2つの液相冷媒流入出口が設けられている。
アキュムレータ19の気相冷媒流出口には、第7三方継手13gの一方の流入口側が接続されている。アキュムレータ19の気相冷媒流出口側と第7三方継手13gの一方の流入口側とを接続する冷媒通路には、この冷媒通路を開閉する第4開閉弁17dが配置されている。
アキュムレータ19の一方の液相冷媒流入出口には、第4三方継手13dの1つの流入出口が接続されている。アキュムレータ19の一方の液相冷媒流入出口側と第4三方継手13dの1つの流入出口側とを接続する冷媒通路には、この冷媒通路を開閉する第3開閉弁17cが配置されている。第4三方継手13dの別の流入出口には、室外熱交換器18の他方の冷媒出入口側が接続されている。
室外熱交換器18は、車両ボンネット内に配置されて、その内部を流通する冷媒と図示しない送風ファンから送風された外気とを熱交換させる熱交換器である。室外熱交換器18は、冷房モードでは、高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能する。さらに、室外熱交換器18は、並列除湿暖房モードおよび暖房モードでは、冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。
アキュムレータ19の他方の液相冷媒流入出口には、補助加熱用熱交換器20の冷媒入口側が接続されている。補助加熱用熱交換器20は、車両ボンネット内に配置されて、少なくとも暖房モード時に、アキュムレータ19から流出した液相冷媒と図示しない補助送風ファンから送風された外気とを熱交換させて、冷媒の有する熱を外気に放熱させる熱交換器である。従って、本実施形態における熱媒体は外気である。
また、送風ファンおよび補助送風ファンは、いずれも空調制御装置40から出力される制御電圧によって回転数(送風空気量)が制御される電動送風機である。
さらに、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10は、補助加熱用熱交換器20通過後の外気を車室外へ放出する外部放出装置21を備えている。外部放出装置21は、ダクト21aおよび外部放出ドア21bを有している。
ダクト21aは、補助加熱用熱交換器20を通過した外気を後述する室内空調ユニット30の内外気切替装置33の外気導入口へ導く導入用通風路と、再び車室外(すなわち、空調対象空間の外部)へ放出させる放出用通風路とを形成するものである。外部放出ドア21bは、ダクト21aの内部に配置されて、導入用通風路と放出用通風路とを切り替えるものである。
外部放出ドア21bは、外部放出ドア用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
補助加熱用熱交換器20の冷媒出口には、第5三方継手13eの流入口側が接続されている。第5三方継手13eの1つの流出口には、前述した室外熱交換器18に接続された第4三方継手13dの1つの流入出口側が接続されている。第5三方継手13eの1つの流出口側と第4三方継手13dの1つの流入出口側とを接続する冷媒通路には、第3流量調整弁14cが配置されている。
第3流量調整弁14cは、少なくとも並列除湿暖房モード時および暖房モード時に、補助加熱用熱交換器20から流出した冷媒を減圧させる加熱側減圧装置としての機能を果たす。
第5三方継手13eの別の流出口には、前述した第1三方継手13aに接続された第6三方継手13fの別の流入口側が接続されている。第5三方継手13eの別の流出口側と第6三方継手13fの別の流入口側とを接続する冷媒通路には、第5開閉弁17eが配置されている。
第6三方継手13fの流出口には、室内蒸発器23の冷媒入口側が接続されている。第6三方継手13fの流出口側と室内蒸発器23の冷媒入口側とを接続する冷媒通路には、第4流量調整弁14dが配置されている。
室内蒸発器23は、室内空調ユニット30のケーシング31内であって、前述した室内凝縮器12よりも空気流れ上流側に配置されている。室内蒸発器23は、第4流量調整弁14dにて減圧された低圧冷媒を室内凝縮器12通過前の送風空気とを熱交換させて蒸発させ、吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
従って、第4流量調整弁14dは、冷房モード時、直列除湿暖房モード時、および並列除湿暖房モード時に、補助加熱用熱交換器20から流出した冷媒を減圧させる冷却側減圧装置である。
室内蒸発器23の冷媒出口には、前述したアキュムレータ19の気相冷媒流出口に接続された第7三方継手13gの他方の流入口側が接続されている。第7三方継手13gの流出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、エジェクタ式冷凍サイクル10によって温度調整された送風空気を車室内へ吹き出すためのもので、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側(車室内)に配置されている。室内空調ユニット30は、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、室内蒸発器23、室内凝縮器12、およびエアミックスドア34等を収容して構成されている。
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成するもので、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、ケーシング31内へ内気(車室内空気)および外気(車室外空気)を導入する内外気切替装置33が配置されている。
内外気切替装置33は、ケーシング31内へ内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を連続的に変化させるものである。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
ここで、本実施形態の内外気切替装置33の外気導入口から導入される外気は、車室外の大気であれば、補助加熱用熱交換器20にて加熱されて、ダクト21aの導入用通風路を介して外気導入口へ導かれた外気も含まれる。
内外気切替装置33の送風空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機(ブロワ)32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置40から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
送風機32の送風空気流れ下流側には、室内蒸発器23および室内凝縮器12が、この順に配置されている。つまり、室内蒸発器23は、室内凝縮器12よりも送風空気流れ上流側に配置されている。さらに、室内蒸発器23の空気流れ下流側であって、かつ、室内凝縮器12の送風空気流れ上流側には、室内蒸発器23通過後の送風空気のうち、室内凝縮器12を通過させる風量割合を調整するエアミックスドア34が配置されている。
また、室内凝縮器12の空気流れ下流側には、室内凝縮器12にて冷媒と熱交換して加熱された送風空気と室内凝縮器12を迂回して加熱されていない送風空気とを混合させる混合空間35が設けられている。さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35にて混合された送風空気(空調風)を、空調対象空間である車室内へ吹き出す開口穴が設けられている。
具体的には、この開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
これらのフェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
従って、エアミックスドア34が、室内凝縮器12を通過させる風量と室内凝縮器12を迂回させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間にて混合される空調風の温度が調整される。これにより、各吹出口から車室内へ吹き出される送風空気(空調風)の温度が調整されることになる。
つまり、エアミックスドア34は、車室内へ送風される空調風の温度を調整する温度調整部としての機能を果たす。エアミックスドア34は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴の送風空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス開口穴の開口面積を調整するフェイスドア、フット開口穴の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ開口穴の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出モードを切り替える吹出モード切替装置を構成するものであって、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
吹出口モード切替装置によって切り替えられる吹出口モードとしては、具体的に、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード等がある。
フェイスモードは、フェイス吹出口を全開してフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。バイレベルモードは、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。フットモードは、フット吹出口を全開するとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出す吹出口モードである。
さらに、乗員が操作パネル50に設けられた吹出モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置40は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種制御対象機器11、14a〜14d、17a〜17e、32等の作動を制御する。
また、空調制御装置40の入力側には、図4のブロック図に示すように、内気温センサ41、外気温センサ42、日射センサ43、室外熱交換器温度センサ44、吐出温度センサ45、室内蒸発器温度センサ46、空調風温度センサ47等が接続されている。そして、空調制御装置40には、これらのセンサ群の検出信号が入力される。
内気温センサ41は、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ42は、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ43は、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。室外熱交換器温度センサ44は、室外熱交換器における冷媒の温度(室外熱交換器温度)Toutを検出する室外熱交換器温度検出部である。吐出温度センサ45は、圧縮機11の吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度検出部である。室内蒸発器温度センサ46は、室内蒸発器23における冷媒蒸発温度(室内蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。空調風温度センサ47は、混合空間から車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する空調風温度検出部である。
さらに、空調制御装置40の入力側には、図4に示すように、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル50が接続され、この操作パネル50に設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル50に設けられた各種操作スイッチとしては、オートスイッチ、冷房スイッチ(A/Cスイッチ)、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ、吹出モード切替スイッチ等がある。
オートスイッチは、車両用空調装置1の自動制御運転を設定あるいは解除する入力部である。冷房スイッチ(A/Cスイッチ)は、車室内の冷房を行うことを要求する入力部である。風量設定スイッチは、送風機32の風量をマニュアル設定する入力部である。温度設定スイッチは、車室内の目標温度Tsetをマニュアル設定する入力部である。吹出モード切替スイッチは吹出モードをマニュアル設定する入力部である。
なお、本実施形態の空調制御装置40は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
例えば、空調制御装置40のうち、圧縮機11の冷媒吐出能力(圧縮機11の回転数)を制御する構成は、吐出能力制御部を構成している。また、第1〜第5開閉弁17a〜17e等の冷媒回路切替装置の作動を制御する構成は、冷媒回路制御部を構成している。また、外部放出装置を構成する外部放出ドア21b(具体的には、外部放出ドア用の電動アクチュエータ)の作動を制御する構成は、外部放出制御部を構成している。
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。前述の如く、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、冷房モード、直列除湿暖房モード、並列除湿暖房モード、および暖房モードの運転を切り替えることができる。
これらの運転モードの切り替えは、空調制御装置40の記憶回路に予め記憶された空調制御プログラムが実行されることによって行われる。空調制御プログラムは、操作パネル50のオートスイッチが投入(ON)された際に実行される。
より具体的には、空調制御プログラムのメインルーチンでは、上述の空調制御用のセンサ群の検出信号および各種空調操作スイッチからの操作信号を読み込む。そして、読み込んだ検出信号および操作信号の値に基づいて、車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である目標吹出温度TAOを、以下数式F1に基づいて算出する。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×As+C…(F1)
なお、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサによって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサによって検出された外気温、Asは日射センサによって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
そして、操作パネル50の冷房スイッチが投入されており、かつ、目標吹出温度TAOが予め定めた冷房基準温度αよりも低くなっている場合には、冷房モードでの運転を実行する。
また、冷房スイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上になっており、かつ、外気温Tamが予め定めた除湿暖房基準温度βよりも高くなっている場合には、直列除湿暖房モードでの運転を実行する。
また、冷房スイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上になっており、かつ、外気温Tamが除湿暖房基準温度β以下になっている場合には、並列除湿暖房モードでの運転を実行する。そして、冷房スイッチが投入されていない場合には、暖房モードでの運転を実行する。
これにより、本実施形態の車両用空調装置1では、主に夏季のように比較的外気温が高い場合に、冷房モードでの運転を実行している。また、主に早春季あるいは晩秋季等に、直列除湿暖房モードおよび並列除湿暖房モードでの運転を実行している。また、主に冬季のように比較的外気温が低い場合に、暖房モードでの運転を実行している。以下に各運転モードにおける作動を説明する。
(a)冷房モード
冷房モードは、送風空気を冷却する冷却モードである。冷房モードでは、空調制御装置40が、図5の図表に示すように、第1流量調整弁14aを全開とし、第2流量調整弁14bを全閉とし、第3流量調整弁14cを全閉とし、第4流量調整弁14dを冷媒減圧作用を発揮する絞り状態とする。さらに、空調制御装置40は、第1開閉弁17aを閉じ、第2開閉弁17bを閉じ、第3開閉弁17cを開き、第4開閉弁17dを閉じ、第5開閉弁17eを開く。
これにより、冷房モードでは、図1の実線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12(→第1流量調整弁14a)→室外熱交換器18→アキュムレータ19→補助加熱用熱交換器20→第4流量調整弁14d→室内蒸発器23→圧縮機11の順に冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。
空調制御装置40は、この冷媒回路の構成で、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号等に基づいて、各種制御対象機器の作動状態(各種制御対象機器へ出力する制御信号)を決定する。
例えば、圧縮機11の冷媒吐出能力、すなわち圧縮機11の電動モータに出力される制御信号については、次のように決定される。まず、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、室内蒸発器23の目標蒸発器吹出温度TEOを決定する。この目標蒸発器吹出温度TEOは、室内蒸発器23の着霜を抑制可能に決定された基準着霜防止温度(例えば、1℃)以上となるように決定される。
そして、この目標蒸発器吹出温度TEOと室内蒸発器温度センサ46によって検出された室内蒸発器温度Tefinとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いて室内蒸発器温度Tefinが目標蒸発器吹出温度TEOに近づくように、圧縮機11の電動モータに出力される制御信号が決定される。
また、第4流量調整弁14dの絞り開度、すなわち第4流量調整弁14dへ出力される制御信号(制御パルス)については、圧縮機11へ吸入される吸入冷媒の過熱度が予め定めた基準過熱度に近づくように決定される。
また、エアミックスドア34を駆動する電動アクチュエータへ出力される制御信号については、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の空気通路を全閉とし、室内蒸発器23通過後の送風空気の全流量が室内凝縮器12を迂回して流れるように決定される。
また、内外気切替ドア用の電動アクチュエータへ出力される制御信号については、基本的に外気を導入する外気モードが優先されるが、冷房モード時に目標吹出温度TAOが極低温域となって高い冷房性能を得たい場合等には内気を導入する内気モードとなる。
また、外部放出ドア21bを駆動する電動アクチュエータへ出力される制御信号については、補助加熱用熱交換器20を通過した外気が車室外へ放出される放出用通風路を開くように決定される。また、送風ファンおよび補助送風ファンに出力される制御電圧については、送風ファンおよび補助送風ファンから送風される送風空気量が、それぞれ予め定めた送風空気量となるように決定される。
そして、上記の如く決定された制御信号等を各種制御対象機器へ出力する。その後、車両用空調装置1の作動停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、上述の検出信号および操作信号の読み込み→目標吹出温度TAOの算出→各種制御対象機器の作動状態決定→制御電圧および制御信号の出力といった制御ルーチンが繰り返される。なお、このような制御ルーチンの繰り返しは、他の運転モード時にも同様に行われる。
従って、冷房モード時のエジェクタ式冷凍サイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、室内凝縮器12へ流入する。冷房モードでは、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の空気通路を全閉としているので、室内凝縮器12へ流入した冷媒は、殆ど送風空気と熱交換することなく室内凝縮器12から流出する。
室内凝縮器12から流出した冷媒は、第1三方継手13a、第2三方継手13b、全開となっている第1流量調整弁14a、および第3三方継手13cを介して、室外熱交換器18の一方の冷媒出入口へ流入する。室外熱交換器18へ流入した冷媒は、室外熱交換器18にて送風ファンから送風された外気へ放熱して凝縮する。
室外熱交換器18の他方の冷媒出入口から流出した冷媒は、第4三方継手13dおよび第3開閉弁17cを介して、アキュムレータ19へ流入して気液分離される。アキュムレータ19にて分離された液相冷媒は、補助加熱用熱交換器20へ流入する。補助加熱用熱交換器20へ流入した冷媒は、補助加熱用熱交換器20にて補助送風ファンから送風された外気へ放熱して過冷却される。
冷房モードでは、補助加熱用熱交換器20を通過した外気が外部放出装置21から車室外に放出される。従って、冷房モードの室外熱交換器18、アキュムレータ19および補助加熱用熱交換器20は、いわゆるサブクール型の凝縮器を構成している。
補助加熱用熱交換器20から流出した冷媒は、第5三方継手13e、第5開閉弁17e、および第6三方継手13fを介して、第4流量調整弁14dへ流入して低圧冷媒となるまで減圧される。第4流量調整弁14dにて減圧された低圧冷媒は、室内蒸発器23へ流入する。
室内蒸発器23へ流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された送風空気と熱交換して蒸発する。これにより、送風空気が冷却される。室内蒸発器23から流出した冷媒は、第7三方継手13gを介して、圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
従って、冷房モードでは、室内蒸発器23にて冷却された送風空気を、室内凝縮器12にて再加熱することなく車室内へ吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
さらに、冷房モードでは、室外熱交換器18、アキュムレータ19、および補助加熱用熱交換器20が、サブクール型の凝縮器を構成しているので、室内蒸発器23における冷媒の吸熱量を増大させることができる。これにより、サイクルの成績係数(COP)を向上させることができる。
(b)直列除湿暖房モード
直列除湿暖房モードでは、空調制御装置40が、図5の図表に示すように、第1流量調整弁14aを絞り状態とし、第2流量調整弁14bを全閉とし、第3流量調整弁14cを全閉とし、第4流量調整弁14dを絞り状態とする。さらに、空調制御装置40は、第1開閉弁17aを閉じ、第2開閉弁17bを閉じ、第3開閉弁17bを開き、第4開閉弁17dを閉じ、第5開閉弁17eを開く。
これにより、直列除湿暖房モードでは、図1の実線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→第1流量調整弁14a→室外熱交換器18→アキュムレータ19→補助加熱用熱交換器20→第4流量調整弁14d→室内蒸発器23→圧縮機11の順に冷媒が循環する、すなわち冷房モードと同様に冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。このため、直列除湿暖房モードの冷媒回路では、室外熱交換器18、補助加熱用熱交換器20、および室内蒸発器23が、冷媒流れに対して直列的に接続されている。
空調制御装置40は、この冷媒回路の構成で、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号等に基づいて、各種制御対象機器の作動状態(各種制御対象機器へ出力する制御信号)を決定する。
例えば、第1流量調整弁14aの絞り開度、すなわち第1流量調整弁14aへ出力される制御信号(制御パルス)については、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。具体的には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、絞り開度が減少するように決定される。換言すると、サイクルに要求される加熱能力の上昇に伴って、絞り開度が減少するように決定される。
また、第4流量調整弁14dの絞り開度については、冷房モードと同様に、吸入冷媒の過熱度が予め定めた基準過熱度に近づくように決定される。このため、第4流量調整弁14dの絞り開度は、第1流量調整弁14aの絞り開度が減少するに伴って増加することになる。換言すると、サイクルに要求される加熱能力の上昇に伴って、絞り開度が増加するように決定される。
また、エアミックスドア34の開度、すなわちエアミックスドア34を駆動する電動アクチュエータへ出力される制御信号については、空調風温度センサ47によって検出された送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように決定される。その他の制御対象機器の作動状態は、冷房モードと同様に決定される。
従って、直列除湿暖房モード時のエジェクタ式冷凍サイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、室内凝縮器12へ流入する。直列除湿暖房モードでは、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の送風空気通路を開くので、室内凝縮器12へ流入した高圧冷媒が、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された送風空気の一部と熱交換して放熱する。これにより、送風空気の一部が加熱される。
室内凝縮器12から流出した冷媒は、第1三方継手13aおよび第2三方継手13bを介して、第1流量調整弁14aへ流入して減圧される。第1流量調整弁14aにて減圧された冷媒は、第3三方継手13cを介して、室外熱交換器18の一方の冷媒出入口へ流入する。
この際、室外熱交換器18へ流入した冷媒の温度が外気温Tamより高くなっていれば、室外熱交換器18へ流入した冷媒は、室外熱交換器18にて送風ファンから送風された外気へ放熱して凝縮する。また、室外熱交換器18へ流入した冷媒の温度が外気温Tamより低くなっていれば、室外熱交換器18へ流入した冷媒は、室外熱交換器18にて送風ファンから送風された外気から吸熱して蒸発する。
室外熱交換器18の他方の冷媒出入口から流出した冷媒は、第4三方継手13d、第3開閉弁17c、およびアキュムレータ19を介して、補助加熱用熱交換器20へ流入する。
この際、補助加熱用熱交換器20へ流入した冷媒の温度が外気温Tamよりも高くなっていれば、補助加熱用熱交換器20へ流入した冷媒は、補助加熱用熱交換器20にて補助送風ファンから送風された外気へ放熱する。また、補助加熱用熱交換器20へ流入した冷媒の温度が外気温Tamより低くなっていれば、補助加熱用熱交換器20へ流入した冷媒は、補助加熱用熱交換器20にて補助送風ファンから送風された外気から吸熱する。
補助加熱用熱交換器20を通過した外気は、車室外に放出される。補助加熱用熱交換器20から流出した冷媒は、第5三方継手13e、第5開閉弁17e、および第6三方継手13fを介して、第4流量調整弁14dへ流入して低圧冷媒となるまで減圧される。第4流量調整弁14dにて減圧された低圧冷媒は、室内蒸発器23へ流入する。以降の作動は、冷房モードと同様である。
従って、直列除湿暖房モードでは、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された送風空気を室内凝縮器12にて再加熱して車室内へ吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。
さらに、直列除湿暖房モードでは、第1流量調整弁14aを絞り状態としているので、冷房モードよりも室外熱交換器18へ流入する冷媒の温度を低下させることができる。従って、冷房モードよりも室外熱交換器18における冷媒の温度と外気温との温度差を縮小させて、室外熱交換器18における冷媒の放熱量を低減させることができる。
これにより、単に冷房モード時に送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくようにエアミックスドア34の作動を制御する場合に対して、室内凝縮器12における冷媒圧力を上昇させることができる。その結果、サイクルを循環する循環冷媒流量を増加させることなく、送風空気を冷房モード時よりも高い温度帯まで昇温させることができる。
また、室外熱交換器18へ流入した冷媒の温度が外気温Tamより低くなっている際には、室外熱交換器18および補助加熱用熱交換器20を蒸発器として機能させることができる。従って、室外熱交換器18へ流入した冷媒の温度が外気温Tamより高くなっているときよりも、室内凝縮器12における冷媒の放熱量を増加させることができる。
その結果、室外熱交換器18へ流入した冷媒の温度が外気温Tamより低くなっている際には、外気温Tamより高くなっている際よりも、室内凝縮器12における送風空気の加熱能力を向上させることができる。
(c)並列除湿暖房モード
並列除湿暖房モードでは、空調制御装置40が、図5の図表に示すように、第1流量調整弁14aを全閉とし、第2流量調整弁14bを絞り状態とし、第3流量調整弁14cを絞り状態とし、第4流量調整弁14dを絞り状態とする。さらに、空調制御装置40は、第1開閉弁17aを開き、第2開閉弁17bを開き、第3開閉弁17cを閉じ、第4開閉弁17dを開き、第5開閉弁17eを閉じる。
これにより、並列除湿暖房モードでは、図2の実線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→第2流量調整弁14b→エジェクタ15→アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、アキュムレータ19→補助加熱用熱交換器20→第3流量調整弁14c→室外熱交換器18→エジェクタ15の冷媒吸引口15cの順に冷媒が循環するエジェクタ式冷凍サイクルが構成される。
同時に、圧縮機11→室内凝縮器12(→第1開閉弁17a)→第4流量調整弁14d→室内蒸発器23→圧縮機11の順に冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。このため、並列除湿暖房モードの冷媒回路では、室外熱交換器18と補助加熱用熱交換器20は、冷媒流れに対して直列的に接続され、室内蒸発器23は、室外熱交換器18および補助加熱用熱交換器20の双方に対して並列的に接続されている。
空調制御装置40は、この冷媒回路の構成で、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号等に基づいて、各種制御対象機器の作動状態(各種制御対象機器へ出力する制御信号)を決定する。
例えば、第2流量調整弁14bの絞り開度については、すなわち第2流量調整弁14bへ出力される制御信号(制御パルス)については、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、第1三方継手13aから第4流量調整弁14d側へ流入する冷媒の流量と第1三方継手13aから第2三方継手13bを介して第2流量調整弁14b側へ流入する冷媒の流量との流量比が予め定めた基準流量比に近づくように決定される。
また、第3流量調整弁14cの絞り開度については、すなわち第3流量調整弁14cへ出力される制御信号(制御パルス)については、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。具体的には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、絞り開度が減少するように決定される。換言すると、サイクルに要求される加熱能力の上昇に伴って、絞り開度が減少するように決定される。
さらに、並列除湿暖房モードでは、室外熱交換器18における冷媒蒸発温度が室内蒸発器23における冷媒蒸発温度以下となるように、第3流量調整弁14cの絞り開度が決定される。
また、エアミックスドア34の開度、すなわちエアミックスドア34を駆動する電動アクチュエータへ出力される制御信号については、直列除湿暖房モードと同様に、空調風温度センサ47によって検出された送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように決定される。その他の制御対象機器の作動状態は、冷房モードと同様に決定される。
従って、並列除湿暖房モード時のエジェクタ式冷凍サイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、室内凝縮器12へ流入する。並列除湿暖房モードでは、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の送風空気通路を開くので、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、室内凝縮器12へ流入し、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された送風空気の一部と熱交換して放熱する。これにより、送風空気の一部が加熱される。
室内凝縮器12から流出した冷媒の流れは、第1三方継手13aにて分岐される。第1三方継手13aにて分岐された一方の冷媒は、第2三方継手13bを介して、第2流量調整弁14bへ流入して減圧される。第2流量調整弁14bにて減圧された冷媒は、エジェクタ15のノズル部15aへ流入する。ノズル部15aへ流入した冷媒は、等エントロピ的に減圧されて噴射される。
そして、この噴射冷媒の吸引作用によって、室外熱交換器18の一方の冷媒出入口から流出した冷媒が、エジェクタ15の冷媒吸引口15cから吸引される。ノズル部15aから噴射された噴射冷媒および冷媒吸引口15cから吸引された吸引冷媒は、ディフューザ部15dへ流入する。
ディフューザ部15dでは、冷媒通路面積の拡大により、冷媒の速度エネルギが圧力エネルギに変換される。これにより、噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒の圧力が上昇する。ディフューザ部15dから流出した冷媒はアキュムレータ19へ流入して気液分離される。
アキュムレータ19にて分離された気相冷媒は、第4開閉弁17dおよび第7三方継手13gを介して、圧縮機11へ吸入される。このため、並列除湿暖房モードでは、アキュムレータ19内の冷媒圧力が、圧縮機11へ吸入される吸入冷媒の圧力と同等となる。
アキュムレータ19にて分離された液相冷媒は、補助加熱用熱交換器20へ流入する。補助加熱用熱交換器20へ流入した液相冷媒は、圧縮機11の吸入冷媒と同等の圧力となっているので、外気温Tamよりも低い温度となる。このため、補助加熱用熱交換器20へ流入した冷媒は、外気から吸熱して蒸発する。
補助加熱用熱交換器20を通過した外気は、車室外に放出される。ここで、本実施形態の並列除湿暖房モードでは、外部放出ドア21bが放出用通風路を開くように外部放出装置21の作動を制御しているが、並列除湿暖房モードでは、導入用通風路を開くように外部放出装置21の作動を制御してもよい。また、補助送風ファンを停止させてもよい。
補助加熱用熱交換器20から流出した冷媒は、第3流量調整弁14cへ流入して減圧される。第3流量調整弁14cにて減圧された冷媒は、第4三方継手13dを介して、室外熱交換器18の他方の冷媒出入口から流入し、送風ファンから送風された外気からさらに吸熱して蒸発する。
室外熱交換器18の一方の冷媒出入口から流出した冷媒は、第3三方継手13cおよび第2開閉弁17bを介して、エジェクタ15の冷媒吸引口15cから吸引される。
また、第1三方継手13aにて分岐された他方の冷媒は、第1開閉弁17a、および第6三方継手13fを介して、第4流量調整弁14dへ流入して減圧される。第4流量調整弁14dにて減圧された冷媒は、室内蒸発器23へ流入し、送風機32から送風された送風空気と熱交換して蒸発する。これにより、送風空気が冷却される。
室内蒸発器23から流出した冷媒は、第7三方継手13gにて、アキュムレータ19にて分離された気相冷媒と合流して圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
従って、並列除湿暖房モードでは、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された送風空気を室内凝縮器12にて再加熱して車室内へ吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。
さらに、並列除湿暖房モードでは、室外熱交換器18、補助加熱用熱交換器20、および室内蒸発器23を蒸発器として機能させ、室外熱交換器18における冷媒蒸発温度を室内蒸発器23における冷媒蒸発温度よりも低下させている。これにより、直列除湿暖房モードよりも外気からの冷媒の吸熱量を増加させて、室内凝縮器12における冷媒の放熱量を増加させることができる。
その結果、サイクルを循環する循環冷媒流量を増加させることなく、直列除湿暖房モードよりも、室内凝縮器12における送風空気の加熱能力を向上させることができる。
(d)暖房モード
暖房モードは、送風空気を加熱する加熱モードである。暖房モードでは、空調制御装置40が、図5の図表に示すように、第1流量調整弁14aを全閉とし、第2流量調整弁14bを絞り状態とし、第3流量調整弁14cを絞り状態とする。さらに、空調制御装置40は、第1開閉弁17aを閉じ、第2開閉弁17bを開き、第3開閉弁17bを閉じ、第4開閉弁17dを開き、第5開閉弁17eを閉じる。
これにより、暖房モードでは、図3の実線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→第2流量調整弁14b→エジェクタ15→アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、アキュムレータ19→補助加熱用熱交換器20→第3流量調整弁14c→室外熱交換器18→エジェクタ15の冷媒吸引口15cの順に冷媒が循環するエジェクタ式冷凍サイクルが構成される。
空調制御装置40は、この冷媒回路の構成で、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号等に基づいて、各種制御対象機器の作動状態(各種制御対象機器へ出力する制御信号)を決定する。
例えば、圧縮機11の冷媒吐出能力については、すなわち圧縮機11の電動モータに出力される制御信号については、次のように決定される。まず、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、室内凝縮器12の目標凝縮器温度TCOを決定する。
そして、この目標凝縮器温度TCOと吐出温度センサ45によって検出された吐出冷媒温度Tdとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いて吐出冷媒温度Tdが目標凝縮器温度TCOに近づくように、圧縮機11の電動モータに出力される制御信号が決定される。
また、第2流量調整弁14bの絞り開度については、すなわち第2流量調整弁14bへ出力される制御信号(制御パルス)については、圧縮機11の冷媒吐出能力(例えば、圧縮機11の電動モータに出力される制御信号)に基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。
この制御マップでは、ノズル部15aへ流入する冷媒が比較的乾き度の高い気液二相冷媒となるように、第2流量調整弁14bの絞り開度を決定している。より具体的には、ノズル部15aへ流入する冷媒の乾き度xが、0.5以上、かつ、0.8以下となるように、第2流量調整弁14bの絞り開度を決定している。
この乾き度xの範囲は、暖房モード時の室内凝縮器12における送風空気の加熱能力Qを、極大値に近づけることができる値として、予め実験的に得られた値である。
ここで、ノズル部15aへ流入する冷媒の乾き度xを上記の範囲内で調整することで、暖房モード時の加熱能力Qを極大値に近づけることができる原理について説明する。まず、エジェクタ15では、ノズル部15aにて冷媒が減圧される際の運動エネルギの損失を、ディフューザ部15dにて冷媒を昇圧させること、すなわち圧力エネルギに変換することによって回収している。
この回収エネルギ量は、ノズル部15aにて冷媒を等エントロピ的に減圧させた際の冷媒のエンタルピの低下量(すなわち、ノズル部15aへ流入する流入冷媒のエンタルピからノズル部15aから噴射された直後の噴射冷媒のエンタルピを減算したエンタルピ差)によって表すことができる。
さらに、回収エネルギ量は、ノズル部15aへ流入する乾き度xが高くなるに伴って、増加することが判っている。その理由は、ノズル部15aへ流入する乾き度xが高くなるに伴って、モリエル線図上の等エントロピ線の傾きが小さくなるからである。
従って、ノズル部15aへ流入する冷媒の乾き度xを高くするに伴って、回収エネルギ量を増加させて、ディフューザ部15dにおける冷媒昇圧量を増加させることができる。これにより、圧縮機11の吸入冷媒の密度を上昇させることができ、圧縮機11の回転数を増加させることなく、圧縮機11から吐出される冷媒流量を増加させることができる。すなわち、室内凝縮器12を流通する冷媒流量Gnを増加させることができる。
その一方で、ノズル部15aへ流入する冷媒の乾き度xが高くなるに伴って、室内凝縮器12の出口側冷媒のエンタルピから入口側冷媒のエンタルピを減算したエンタルピ差ΔH(後述する図6のa6点とb6点のエンタルピ差)が小さくなる。従って、エンタルピ差ΔHと冷媒流量Gnとの積算値で定義される加熱能力Qは、ノズル部15aへ流入する冷媒の乾き度xが高くなるに伴って、極大値(ピーク値)を有するように変化する。
そして、本発明者らの試験検討によれば、ノズル部15aへ流入する冷媒の乾き度xが、0.5以上、かつ、0.8以下の範囲で、加熱能力Qが極大値に近づくことが判っている。
そこで、本実施形態の制御マップでは、ノズル部15aへ流入する冷媒の乾き度xが0.5以上、かつ、0.8以下の範囲で、ディフューザ部15d出口側の冷媒の温度(すなわち、アキュムレータ19内の冷媒の温度)が外気温Tamよりも高くなるように、第2流量調整弁14dの絞り開度を決定している。
また、エアミックスドア34の開度、すなわちエアミックスドア34を駆動する電動アクチュエータへ出力される制御信号については、室内蒸発器23通過後の送風空気の全流量が室内凝縮器12側の空気通路を流れるように決定される。また、内外気切替ドア用の電動アクチュエータへ出力される制御信号については、基本的に外気を導入する外気モードが優先される。
また、外部放出ドア21bを駆動する電動アクチュエータへ出力される制御信号については、導入用通風路を開くように決定される。その他の制御対象機器の作動状態は、並列除湿暖房モードと同様に決定される。
従って、暖房モード時のエジェクタ式冷凍サイクル10では、図6のモリエル線図に示すように冷媒の状態が変化する。
具体的には、暖房モードでは、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の送風空気通路を全開とするので、圧縮機11から吐出された高圧冷媒(図6のa6点)が、室内凝縮器12へ流入し、室内蒸発器23通過後の送風空気と熱交換して放熱する(図6のa6点→b6点)。これにより、送風空気が加熱される。
室内凝縮器12から流出した冷媒は、第1三方継手13aおよび第2三方継手13bを介して、第2流量調整弁14bへ流入して減圧される(図6のb6点→c6点)。これにより、ノズル部15aへ流入する冷媒の乾き度xが0.5以上かつ0.8以下に調整される。第2流量調整弁14bにて減圧された冷媒は、エジェクタ15のノズル部15aへ流入する。
ノズル部15aへ流入した冷媒は、等エントロピ的に減圧されて噴射される(図6のc6点→d6点)。そして、この噴射冷媒の吸引作用によって、室外熱交換器18の一方の冷媒出入口から流出した冷媒が、エジェクタ15の冷媒吸引口15cから吸引される。ノズル部15aから噴射された噴射冷媒および冷媒吸引口15cから吸引された吸引冷媒は、ディフューザ部15dへ流入する(図6のd6→e6点、k6点→e6点)。
ディフューザ部15dでは、冷媒通路面積の拡大により、冷媒の速度エネルギが圧力エネルギに変換される。これにより、噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒の圧力が上昇する(図6のe6点→f6点)。この際、暖房モードでは、ディフューザ部15dから流出した冷媒の温度が外気温Tamよりも高くなるように、混合冷媒の圧力の圧力を昇圧させている。
ディフューザ部15dから流出した冷媒は、アキュムレータ19へ流入して気液分離される。アキュムレータ19にて分離された液相冷媒(図6のh6点)は、補助加熱用熱交換器20へ流入する。補助加熱用熱交換器20へ流入した冷媒は、補助加熱用熱交換器20にて補助送風ファンから送風された外気へ放熱して過冷却される(図6のh6点→i6点)。
補助加熱用熱交換器20にて加熱された外気は、内外気切替装置33の外気導入口へ導かれる。従って、暖房モードの室内凝縮器12では、補助加熱用熱交換器20にて加熱された外気を、送風空気として加熱している。
補助加熱用熱交換器20から流出した冷媒は、第5三方継手13eを介して、第3流量調整弁14cへ流入して減圧される(図6のi6点→j6点)。第3流量調整弁14cにて減圧された冷媒は、第4三方継手13dを介して、室外熱交換器18の他方の冷媒出入口から流入し、送風ファンから送風された外気から吸熱して蒸発する(図6のj6点→k6点)。
室外熱交換器18の一方の冷媒出入口から流出した冷媒は、第3三方継手13cおよび第2開閉弁17bを介して、エジェクタ15の冷媒吸引口15cから吸引される。また、アキュムレータ19にて分離された気相冷媒(図6のg6点)は、第4開閉弁17dおよび第5三方継手13eを介して圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される(図6のg6点→a6点)。
従って、暖房モードでは、室内凝縮器12にて加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。
さらに、暖房モードでは、エジェクタ15のディフューザ部15dにて昇圧された冷媒を圧縮機11へ吸入させることができる。従って、蒸発器として機能する熱交換器(暖房モードでは、室外熱交換器18)における冷媒蒸発圧力と圧縮機11の吸入冷媒の圧力が同等となる通常の冷凍サイクル装置よりも圧縮機11の消費動力を低減させて、COPを向上させることができる。
以上の如く、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、車両用空調装置1において、冷房モード、直列除湿暖房モード、並列除湿暖房モード、および暖房モードの運転を切り替えることによって、車室内の適切な空調を実現することができる。
さらに、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10の暖房モードでは、エジェクタ15のノズル部15aへ流入する冷媒の乾き度xを、比較的高い乾き度となるように調整している。従って、室内凝縮器12における送風空気の加熱能力Qを極大値に近づけることができる。
これに加えて、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10の暖房モードでは、補助加熱用熱交換器20にて加熱された外気(すなわち、熱媒体)を、送風空気(すなわち、熱交換対象流体)として、室内凝縮器12にて加熱している。従って、送風空気を効率的に加熱することができ、図7に示すように、従来技術のエジェクタ式冷凍サイクルの加熱能力比QA_oldよりも、送風空気の加熱能力比QAを向上させることができる。
なお、図7では、通常の冷凍サイクル装置の加熱能力に対する本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10の加熱能力比をQAで表し、通常の冷凍サイクル装置の加熱能力に対する従来技術のエジェクタ式冷凍サイクルの加熱能力比をQA_oldで表している。これらの加熱能力比QAおよび加熱能力比QA_oldは、必ずしも加熱能力Qと同様に乾き度xが0.5以上、かつ、0.8以下の範囲で極大値となるわけではない。
ところが、従来技術のエジェクタ式冷凍サイクル10では、ノズル部15aへ流入する冷媒の乾き度xを比較的高い値に調整すると、COPが極大値よりも低下してしまうことも判っている。その理由は、エジェクタ15の昇圧能力を向上させたことによって、エジェクタ15の吸引能力が低下し、室外熱交換器18を流通する冷媒の流量が減少してしまうからである。
これに対して、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10の暖房モードでは、補助加熱用熱交換器20を備え、さらに、アキュムレータ19内の冷媒の温度を熱媒体である外気よりも上昇させている。従って、補助加熱用熱交換器20にて、アキュムレータ19から流出した液相冷媒と外気とを熱交換させて、液相冷媒を過冷却することができる。
そして、過冷却された液相冷媒を、加熱側減圧装置である第3流量調整弁14cにて減圧して室外熱交換器18にて蒸発させることで、冷媒が外気から吸熱する吸熱量を増大させることができる。その結果、図8に示すように、従来技術のエジェクタ式冷凍サイクルの成績係数COP_oldよりも、COPを向上させることができる。
すなわち、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、熱交換対象流体(本実施形態では、送風空気)を加熱する際のCOPの向上と加熱能力Qの向上との両立を図ることができる。
また、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、乾き度調整装置としての第2流量調整弁14bを備えているので、加熱モード時に、確実にアキュムレータ19内の冷媒の温度を外気温Tamよりも高い温度に調整することができる。従って、上述したCOPの向上効果および加熱能力Qの向上効果を確実に得ることができる。
また、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、外部放出装置21を備えているので、冷房モードのように、送風空気を加熱するための熱量が不足していない場合には、余剰の熱を車室外に放出することができる。換言すると、送風空気を加熱するために必要な熱量を充分に確保できている場合には、余剰の熱を車室外に放出することができる。
(第2実施形態)
第1実施形態では、補助加熱用熱交換器20にて加熱された送風空気を内外気切替装置33の外気導入口へ導いた例を説明したが、本実施形態では、図9に示すように、暖房モード時に、補助加熱用熱交換器20にて加熱された送風空気を熱源として、加熱対象物であるバッテリ22を加熱する例を説明する。なお、図9では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面でも同様である。
バッテリ22は、走行用電動モータへ供給される電力を蓄える蓄電部である。バッテリ22は、充電することによって繰り返し電力の放電を行うことのできる二次電池であり、具体的には、リチウムイオン電池である。この種のバッテリ22には、バッテリを劣化させることなく充放電容量を充分に活かすことのできる適正温度帯が存在する。例えば、リチウムイオン電池では、10℃〜40℃程度が適正温度帯であることが知られている。
そこで、本実施形態では、バッテリ22を外部放出装置21の導入用通風路内に配置している。そして、バッテリ温度センサによって検出されたバッテリ22の温度が、基準下限温度以下となった際に、外部放出装置21の通風路を導入用通風路側へ切り替える。これにより、加熱された送風空気をバッテリ22に吹き付けてバッテリ22を加熱する。
また、バッテリ22の温度が、基準上限温度以上となった際には、外部放出装置21の通風路を放出用通風路側へ切り替える。これにより、バッテリ22の温度上昇を抑制してバッテリ22の温度を適正温度帯に調整している。
その他のエジェクタ式冷凍サイクルの構成および作動は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10においても、第1実施形態と同様に、暖房モード時に、熱交換対象流体である送風空気を加熱する際のCOPの向上と加熱能力Qの向上との両立を図ることができる。
さらに、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、加熱対象物であるバッテリ22の温度調整を行うこともできる。
ここで、本実施形態では、補助加熱用熱交換器20にて加熱された送風空気をバッテリ22に吹き付けることによってバッテリ22を加熱しているが、バッテリ22の加熱態様はこれに限定されない。
例えば、補助加熱用熱交換器20として、アキュムレータ19から流出した液相冷媒と水(熱媒体)とを熱交換させる水−冷媒熱交換器を採用し、補助加熱用熱交換器20にて加熱された水を、バッテリ22のケース等に形成された水通路を流通させることによって、バッテリ22を加熱するようにしてもよい。
(第3実施形態)
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10aでは、第1実施形態で説明したのエジェクタ式冷凍サイクル10に対して、図10に示すように、冷却側減圧装置として冷却側エジェクタ25を追加した例を説明する。
冷却側エジェクタ25の基本的構成は、第1実施形態で説明したエジェクタ15と同様である。なお、以下の説明では、説明の明確化のために、エジェクタ15を加熱側エジェクタ15、エジェクタ15のノズル部15a等を加熱側ノズル部15a等と記載する。さらに、アキュムレータ19を加熱側アキュムレータ19と記載する。
冷却側エジェクタ25は、加熱側エジェクタ15の加熱側ノズル部15aおよび加熱側ボデー15bと同様の冷却側ノズル部25aおよび冷却側ボデー25bを有している。冷却側ボデー25bには、加熱側エジェクタ15と同様に、冷却側冷媒吸引口25cおよび冷却側ディフューザ部(冷却側昇圧部)25dが形成されている。
冷却側ディフューザ部25dの冷媒流出口には、冷却側アキュムレータ26の入口側が接続されている。冷却側アキュムレータ26の基本的構成は、加熱側アキュムレータ19と同様である。冷却側アキュムレータ26は、冷却側ディフューザ部25dから流出した冷媒の気液を分離する冷却側気液分離部である。
冷却側アキュムレータ26の気相冷媒流出口には、第7三方継手13gの他方の流入口側が接続されている。
冷却側アキュムレータ26の液相冷媒流入出口には、室内蒸発器23の冷媒入口側が接続されている。冷却側アキュムレータ26の液相冷媒流入出口側と室内蒸発器23の冷媒入口側とを接続する冷媒通路には、第4流量調整弁14dが配置されている。室内蒸発器23の冷媒出口には、冷却側エジェクタ25の冷却側冷媒吸引口25c側が接続されている。その他の構成は、第1実施形態と同様である。
次に、上記構成における本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10aの作動について説明する。エジェクタ式冷凍サイクル10aは、冷房モード、並列除湿暖房モード、および暖房モードの運転を切り替えることができる。各運転モードの切り替えは、第1実施形態と同様に、空調制御プログラムが実行されることによって行われる。
本実施形態の エジェクタ式冷凍サイクル10aでは、冷房スイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上になっている際に、並列除湿暖房モードでの運転が実行される。その他の作動は、基本的に第1実施形態と同様である。
(a)冷房モード
冷却モードである冷房モードでは、空調制御装置40が、第1実施形態と同様に、第1〜第4流量調整弁14a〜14d、および第1〜第5開閉弁17a〜17eの作動を制御する。
これにより、冷房モードでは、図10の実線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12(→第1流量調整弁14a)→室外熱交換器18→加熱側アキュムレータ19→補助加熱用熱交換器20→冷却側エジェクタ25→冷却側アキュムレータ26→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、冷却側アキュムレータ26→第4流量調整弁14d→室内蒸発器23→冷却側エジェクタ25の冷却側冷媒吸引口5cの順に冷媒が循環するエジェクタ式冷凍サイクルが構成される。
空調制御装置40は、この冷媒回路の構成で、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号等に基づいて、各種制御対象機器の作動状態(各種制御対象機器へ出力する制御信号)を決定する。
例えば、第4流量調整弁14dの絞り開度については、すなわち第2流量調整弁14bへ出力される制御信号(制御パルス)については、第4流量調整弁14dの絞り開度が予め定めた基準開度となるように制御信号が決定される。その他の制御対象機器の作動状態は、第1実施形態の冷房モードと同様に決定される。
従って、冷房モード時のエジェクタ式冷凍サイクル10aでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、第1実施形態と同様に、室外熱交換器18→加熱側アキュムレータ19→補助加熱用熱交換器20の順に流れ、過冷却液相冷媒となって、冷却側エジェクタ25の冷却側ノズル部25aへ流入する。
冷却側ノズル部25aへ流入した冷媒は、等エントロピ的に減圧されて噴射される。そして、この冷却側噴射冷媒の吸引作用によって、室内蒸発器23の一方の冷媒出入口から流出した冷媒が、冷却側エジェクタ25の冷却側冷媒吸引口25cから吸引される。冷却側ノズル部25aから噴射された冷却側噴射冷媒および冷却側冷媒吸引口25cから吸引された冷却側吸引冷媒は、冷却側ディフューザ部25dへ流入する。
冷却側ディフューザ部25dでは、冷媒通路面積の拡大により、冷媒の速度エネルギが圧力エネルギに変換される。これにより、冷却側噴射冷媒と冷却側吸引冷媒との冷却側混合冷媒の圧力が上昇する。冷却側ディフューザ部25dから流出した冷媒は、冷却側アキュムレータ26へ流入して気液分離される。
冷却側アキュムレータ26にて分離された液相冷媒は、第4流量調整弁14dへ流入して減圧される。第4流量調整弁14dにて減圧された冷媒は、室内蒸発器23へ流入し、送風機32から送風された送風空気と熱交換して蒸発する。これにより、送風空気が冷却される。室内蒸発器23から流出した冷媒は、第7三方継手13gを介して、圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
従って、本実施形態の冷房モードでは、室内蒸発器23にて冷却された送風空気を、室内凝縮器12にて再加熱することなく車室内へ吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
(b)並列除湿暖房モード
並列除湿暖房モードでは、空調制御装置40が、第1実施形態と同様に、第1〜第4流量調整弁14a〜14d、および第1〜第5開閉弁17a〜17eの作動を制御する。
これにより、並列除湿暖房モードでは、圧縮機11→室内凝縮器12→第2流量調整弁14b→加熱側エジェクタ15→加熱側アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、加熱側アキュムレータ19→補助加熱用熱交換器20→第3流量調整弁14c→室外熱交換器18→加熱側エジェクタ15の加熱側冷媒吸引口15cの順に冷媒が循環するエジェクタ式冷凍サイクルが構成される。
同時に、圧縮機11→室内凝縮器12(→第1開閉弁17a)→冷却側エジェクタ25→冷却側アキュムレータ26→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、冷却側アキュムレータ26→第4流量調整弁14d→室内蒸発器23→冷却側エジェクタ25の冷却側冷媒吸引口25cの順に冷媒が循環するエジェクタ式冷凍サイクルが構成される。
空調制御装置40は、この冷媒回路の構成で、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号等に基づいて、各種制御対象機器の作動状態(各種制御対象機器へ出力する制御信号)を第1実施形態の並列除湿暖房モードと同様に決定する。
このため、加熱側エジェクタ15を含む側のサイクルでは、第1実施形態の並列除湿暖房モードと全く同様に冷媒の状態が変化して、冷媒が室外熱交換器18にて外気から吸熱した熱を室内凝縮器12にて放熱することができる。
一方、冷却側エジェクタ25を含む側のサイクルでは、第1三方継手13aにて分岐された他方の冷媒が冷却側エジェクタ25の冷却側ノズル部25aへ流入する。以降の作動は、本実施形態の冷房モードと同様である。
従って、本実施形態の並列除湿暖房モードでは、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された送風空気を室内凝縮器12にて再加熱して車室内へ吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。
(c)暖房モード
加熱モードである暖房モードでは、空調制御装置40が、第1実施形態と同様に、第1〜第4流量調整弁14a〜14d、および第1〜第5開閉弁17a〜17eの作動を制御する。このため、第1実施形態の暖房モードと全く同様の順に冷媒が循環するエジェクタ式冷凍サイクルが構成される。
空調制御装置40は、この冷媒回路の構成で、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号等に基づいて、各種制御対象機器の作動状態(各種制御対象機器へ出力する制御信号)を第1実施形態の暖房モードと同様に決定する。
従って、本実施形態の暖房モードでは、室内凝縮器12にて加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。
以上の如く、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10aによれば、車両用空調装置1において、冷房モード、並列除湿暖房モード、および暖房モードでの運転を切り替えることによって、車室内の適切な空調を実現することができる。
さらに、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10aでは、冷却側エジェクタ25を備えているので、冷房モード時および並列除湿暖房モード時に、冷却側エジェクタ25の冷却側ディフューザ部25dにて昇圧された冷媒を圧縮機11へ吸入させることができる。
従って、蒸発器として機能する熱交換器(冷房モードおよび並列除湿暖房モードでは、室内蒸発器23)における冷媒蒸発圧力と圧縮機11の吸入冷媒の圧力が同等となる通常の冷凍サイクル装置よりも圧縮機11の消費動力を低減させて、COPを向上させることができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の実施形態では、本発明に係るエジェクタ式冷凍サイクル10、10aを電気自動車用の空調装置に適用した例を説明したが、エジェクタ式冷凍サイクル10、10aの適用はこれに限定されない。例えば、内燃機関(エンジン)から車両走行用の駆動力を得る通常の車両や、内燃機関と走行用電動モータとの双方から車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両の空調装置に適用してもよい。
内燃機関を有する車両に適用する場合は、送風空気の補助加熱部として内燃機関の冷却水を熱源として送風空気を加熱するヒータコアを設けてもよい。さらに、車両用に限定されることなく定置型空調装置に適用してもよい。
また、空調装置に限定されることなく、熱交換対象流体としての給湯水を加熱する給湯装置等に適用してもよい。この場合は、給湯水を加熱する加熱モード時に、給湯水を熱媒体として補助加熱用熱交換器にて加熱し、補助加熱用熱交換器にて加熱された給湯水を熱交換対象流体として加熱用熱交換器にてさらに加熱するようにしてもよい。
(2)エジェクタ式冷凍サイクル10、10aの各構成機器は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。
具体的には、上述の実施形態では、圧縮機11として、電動圧縮機を採用した例を説明したが、圧縮機11はこれに限定されない。例えば、圧縮機11として、エンジン駆動式の可変容量型圧縮機等を採用してもよい。
また、上述の実施形態では、加熱用熱交換器として、圧縮機11吐出冷媒と送風空気とを熱交換させて、圧縮機11吐出冷媒を熱源として直接的に送風空気を加熱する室内凝縮器12を採用した例を説明したが、加熱用熱交換器はこれに限定されない。
例えば、水等の熱媒体を循環させる熱媒体循環回路を設け、この熱媒体循環回路に高圧冷媒と熱媒体とを熱交換させる水−冷媒熱交換器、および水−冷媒熱交換器にて加熱された熱媒体と送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する加熱用熱交換器等を配置してもよい。つまり、加熱用熱交換器は、圧縮機吐出冷媒を熱源として、熱媒体を介して間接的に送風空気を加熱するものであってもよい。
また、上述の実施形態では、冷媒回路切替装置として、複数の流量調整弁および開閉弁を採用した例を説明したが、冷媒回路切替装置はこれに限定されない。例えば、全閉機能を有しない流量調整弁と開閉弁とを組み合わせたもの、三方弁、四方弁等を採用してもよい。
ここで、本発明に係るエジェクタ式冷凍サイクルにおいて、運転モードの切り替えは必須ではない。少なくとも加熱モード(暖房モード)での運転が実行可能であれば、熱交換対象流体を加熱する際のCOPの向上と加熱能力Qの向上とを両立させる効果を得ることができる。
また、上述の実施形態では、外部放出装置21として、補助加熱用熱交換器20にて加熱された外気を外部に放出しない場合に、内外気切替装置33の外部導入口側へ導くものを採油した例を説明したが、外部放出装置21はこれに限定されない。外部放出装置21は、加熱された外気を室内凝縮器12の空気流れ上流側のいずれかの部位に導くようになっていてもよい。
また、上述の第2実施形態では、補助加熱用熱交換器20にて加熱された外気で加熱対象物であるバッテリ22を加熱した例を説明したが、加熱対象物はこれに限定されない。加熱対象物は、内燃機関、変速機、インバータ等のように低外気温時等に暖機を必要とする機器であってもよいし、給湯水等であってもよい。
また、上述の実施形態で説明した各構成機器を一体化したものを採用してもよい。例えば、第2流量調整弁14b、エジェクタ15、アキュムレータ19等を一体化(モジュール化)してもよい。この場合は、エジェクタ15のノズル部15aの通路内にニードル状、あるいは円錐状の弁体を配置し、この弁体を変位させることで、第2流量調整弁14bと同様の機能を発揮させるようにしてもよい。また、例えば、第1三方継手13aと第2三方継手13bとを一体化させた四方継手を採用してもよい。
また、上述の各実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10、10aの室内蒸発器23の冷媒出口側に、室内蒸発器23の冷媒蒸発圧力を予め定めた所定値以上に調整する蒸発圧力調整弁を配置してもよい。これによれば、室内蒸発器23の着霜を機械的機構によって、より一層確実に防止することができる。
また、上述の実施形態では、冷媒としてR134aを採用した例を説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R1234yf、R600a、R410A、R404A、R32、R407C、等を採用してもよい。または、これらの冷媒のうち複数種を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。
(3)上述の実施形態の暖房モード時には、圧縮機11の冷媒吐出能力に基づいて、乾き度調整装置である第2流量調整弁14bの弁開度を調整した例を説明したが、第2流量調整弁14bの弁開度の調整はこれに限定されない。
例えば、室内凝縮器12出口側冷媒の乾き度を検出する乾き度センサを設け、この乾き度センサの検出値が0.5以上かつ0.8以下となるように第2流量調整弁14bの弁開度の弁開度を調整してもよい。また、ディフューザ部15dから流出した冷媒の温度、あるいはアキュムレータ19内の冷媒の温度を検出する温度検出部を備え、温度検出部が外気温よりも高くなるように第2流量調整弁14bの弁開度の弁開度を調整してもよい。
(4)上述の実施形態では、空調制御プログラムを実行することによって、各運転モードを切り替えた例を説明したが、各運転モードの切り替えはこれに限定されない。例えば、操作パネル50に各運転モードを設定する運転モード設定スイッチを設け、当該運転モード設定スイッチの操作信号に応じて、各暖房モードを切り替えるようにしてもよい。
11 圧縮機
12 室内凝縮器(加熱用熱交換器)
14b 第2流量調整弁(乾き度調整装置)
14c 第3流量調整弁(加熱側減圧装置)
15 エジェクタ(加熱側エジェクタ)
18 室外熱交換器
19 アキュムレータ(気液分離部)
20 補助加熱用熱交換器
21 外部放出装置
23 室内蒸発器(冷却用熱交換器)

Claims (3)

  1. 冷媒を圧縮して吐出する圧縮機(11)と、
    前記圧縮機から吐出された冷媒を熱源として、熱交換対象流体を加熱する加熱用熱交換器(12)と、
    前記加熱用熱交換器から流出した冷媒を減圧させるノズル部(15a)から噴射された噴射冷媒の吸引作用によって冷媒吸引口(15c)から冷媒を吸引し、前記噴射冷媒と前記冷媒吸引口から吸引された吸引冷媒とを混合させて昇圧させる昇圧部(15d)を有するエジェクタ(15)と、
    前記エジェクタから流出した冷媒の気液を分離する気液分離部(19)と、
    前記気液分離部から流出した液相冷媒と熱媒体とを熱交換させる補助加熱用熱交換器(20)と、
    前記補助加熱用熱交換器から流出した冷媒を減圧させる加熱側減圧装置(14c)と、
    冷媒と外気とを熱交換させる室外熱交換器(18)と、を備え、
    前記熱交換対象流体を加熱する加熱モード時には、前記補助加熱用熱交換器にて冷媒の有する熱を前記熱媒体に放熱させ、前記加熱側減圧装置にて減圧された冷媒を前記室外熱交換器へ流入させ、前記室外熱交換器から流出した冷媒を前記冷媒吸引口から吸引させ、さらに、前記気液分離部にて分離された気相冷媒を前記圧縮機に吸入させる冷媒回路になっており、
    前記熱交換対象流体は、空調対象空間へ送風される送風空気であり、
    前記熱媒体は、前記空調対象空間の外部の外気であり、
    前記加熱用熱交換器では、前記加熱モード時に、前記補助加熱用熱交換器にて加熱された外気を前記送風空気として加熱するエジェクタ式冷凍サイクル。
  2. 前記ノズル部へ流入する冷媒の乾き度(x)を調整する乾き度調整装置(14b)を備え、
    前記乾き度調整装置は、前記加熱モード時に、前記気液分離部内の冷媒の温度が前記熱媒体の温度よりも高くなるように前記乾き度(x)を調整するものである請求項1に記載のエジェクタ式冷凍サイクル。
  3. 前記補助加熱用熱交換器から流出した冷媒を減圧させる冷却側減圧装置(14d、25)と、
    前記冷却側減圧装置にて減圧させた冷媒と前記加熱用熱交換器通過前の前記送風空気とを熱交換させる冷却用熱交換器(23)と、
    冷媒回路を切り替える冷媒回路切替装置(17a〜17e)と、
    前記補助加熱用熱交換器通過後の前記外気を前記空調対象空間の外部へ放出する外部放出装置(21)と、を備え、
    前記送風空気を冷却して前記空調対象空間へ送風する冷却モード時には、前記冷媒回路切替装置は、前記加熱用熱交換器から流出した冷媒を前記室外熱交換器へ流入させ、前記室外熱交換器から流出した冷媒を前記気液分離部へ流入させ、前記補助加熱用熱交換器から流出した冷媒を前記冷却側減圧装置へ流入させる冷媒回路に切り替え、
    さらに、前記冷却モード時には、前記外部放出装置は、前記補助加熱用熱交換器通過後の前記外気を前記空調対象空間の外部へ放出させる請求項1または2に記載のエジェクタ式冷凍サイクル。
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