以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の実施形態において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
先ず、本発明の第1実施形態について、図1〜図4を参照しつつ説明する。第1実施形態に係る車両用空調装置1は、内燃機関(即ち、エンジンEG)、及び、走行用電動モータから走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用されている。
当該ハイブリッド車両は、いわゆる、プラグインハイブリッド自動車として構成されている。従って、当該ハイブリッド車両は、車両停車時に外部電源(例えば、商用電源)から供給された電力を、車両に搭載された電池(即ち、バッテリ25)に充電可能に構成されている。この電池としては、例えば、リチウムイオン電池を用いることができる。
そして、当該ハイブリッド車両において、エンジンEGから出力される駆動力は、車両走行用として用いられるだけではなく、発電機を作動させるためにも用いられる。そして、当該ハイブリッド車両は、発電機にて発電された電力、及び外部電源から供給された電力を、バッテリ25に蓄えることができる、バッテリ25に蓄えられた電力は、走行用電動モータだけではなく、当該ハイブリッド車両に搭載された各種車載機器に供給される。
当該ハイブリッド車両は、走行開始時のようにバッテリ25の蓄電残量が予め定めた走行用基準残量以上になっているときには、EV走行モードで走行する。当該EV走行モードは、バッテリ25の電力による走行用電動モータの駆動によって車両を走行させる走行モードを意味する。
一方、当該ハイブリッド車両は、車両走行中にバッテリ25の蓄電残量が走行用基準残量よりも低くなっているときには、HV走行モードで走行する。HV走行モードは、主にエンジンEGが出力する駆動力によって車両を走行させる走行モードであるが、車両走行負荷が高負荷となった際には、走行用電動モータを作動させてエンジンEGを補助する。
第1実施形態に係るハイブリッド車両は、このようにEV走行モードとHV走行モードとを切り替えることで、車両走行用の駆動力をエンジンEGだけから得る通常の車両に対してエンジンEGの燃料消費量を抑制して、車両燃費を向上させている。
当該ハイブリッド車両において、EV走行モードとHV走行モードとの切り替えは、後述する車両制御装置70によって制御される。そして、ハイブリッド車両におけるエンジンEGは、本発明における動力装置に相当する。
当該車両用空調装置1は、ハイブリッド車両の車室内において、快適な空調を実現する為、暖房モード、冷房モード、除湿暖房モード等の複数の運転モードに切り替えることができる。従って、当該車両用空調装置1は、本発明に係る車両用暖房装置に相当する。
又、バッテリ25のような二次電池は、劣化を促進させることなく充放電容量を充分に活かすために、適正温度帯で使用されることが望ましい。この為、当該車両用空調装置1は、バッテリ25の温度を適正温度帯内に維持するように、バッテリ25を冷却する機能を有している。
図1に示すように、当該車両用空調装置1は、冷凍サイクル装置10と、室内空調ユニット30と、加熱側熱媒体回路40と、制御装置50等を有している。冷凍サイクル装置10は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルにより送風空気の温度を調整する為の装置である。室内空調ユニット30は、ハイブリッド車両の車室内へ送風空気を送風する。加熱側熱媒体回路40は、熱媒体である冷却水を介して、送風空気を加熱する為の熱媒体回路である。
冷凍サイクル装置10は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを有しており、車室内の空調を行うために、送風空気を加熱或いは冷却する機能を果たす。更に、当該冷凍サイクル装置10は、冷凍サイクルの低圧冷媒によって、バッテリ25を冷却する機能を果たす。
当該冷凍サイクル装置10は、車室内の空調を行うために、冷房モードの冷媒回路、除湿暖房モードの冷媒回路、及び暖房モードの冷媒回路を切り替え可能に構成されている。車両用空調装置1において、冷房モードは、送風空気を冷却して車室内へ吹き出すことによって車室内の冷房を行う運転モードである。
そして、除湿暖房モードは、冷却されて除湿された送風空気を再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。暖房モードは、送風空気を加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う運転モードである。
図1では、冷房モードの冷媒回路における冷媒の流れを白抜き矢印で示している。又、除湿暖房モードの冷媒回路における冷媒の流れを斜線ハッチング付き矢印で示している。更に、暖房モードの冷媒回路における冷媒の流れを黒塗り矢印で示している。
当該冷凍サイクル装置10では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)が採用されており、圧縮機11から吐出された吐出冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
そして、当該冷凍サイクル装置10は、圧縮機11と、放熱器12と、第1膨張弁14aと、第2膨張弁14bと、室外熱交換器16と、逆止弁17と、室内蒸発器18と、蒸発圧力調整弁19と、アキュムレータ20とを有している。
圧縮機11は、冷凍サイクル装置10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。当該圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機により構成されている。当該圧縮機11は、本発明における圧縮機として機能する。
そして、圧縮機11における冷媒吐出能力(即ち、回転数)は、後述する制御装置50から出力される制御信号によって制御される。当該圧縮機11は、車両ボンネット内に配置されている。
圧縮機11の吐出口には、放熱器12の冷媒入口側が接続されている。当該放熱器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と、後述する加熱側熱媒体回路40を循環する熱媒体である冷却水とを熱交換させることによって高圧冷媒を凝縮させる。当該放熱器12は水−冷媒熱交換器によって構成されており、本発明における放熱器として機能する。
尚、車両用空調装置1を構成する加熱側熱媒体回路40については、後に図面を参照しつつ詳細に説明する。
放熱器12の冷媒出口側には、第1三方継手13aの流入口側が接続されている。第1三方継手13aは、互いに連通する3つの流入出口を有している。このような三方継手としては、複数の配管を接合して形成されたものや、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けることによって形成されたものを採用することができる。
尚、当該冷凍サイクル装置10は、後述するように、第2三方継手13b〜第6三方継手13fを有している。これらの第2三方継手13b〜第6三方継手13fの基本的構成は、第1三方継手13aと同様である。
そして、第1三方継手13aの一方の流出口には、第1膨張弁14aの入口側が接続されている。第1三方継手13aの他方の流出口には、第2三方継手13bの一方の流入口側が接続されている。
第1三方継手13aの他方の流出口側と第2三方継手13bの一方の流入口側とを接続する冷媒通路には、第1開閉弁15aが配置されている。第1開閉弁15aは、第1三方継手13aの他方の流出口側と第2三方継手13bの一方の流入口側とを接続する冷媒通路を開閉する電磁弁である。
図1に示すように、当該冷凍サイクル装置10は、後述するように、第2開閉弁15bを有している。当該第2開閉弁15bの基本的構成は、第1開閉弁15aと同様である。第1開閉弁15a、第2開閉弁15bは、冷媒通路を開閉することで、上述した各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。
従って、第1開閉弁15a、第2開閉弁15bは、サイクルの冷媒回路を切り替える冷媒回路切替装置である。第1開閉弁15a、第2開閉弁15bは、制御装置50から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
第1膨張弁14aは、少なくとも暖房モード時に、放熱器12から流出した高圧冷媒を減圧させる減圧装置である。当該第1膨張弁14aは、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。第1膨張弁14aは、本発明における減圧部として機能する。
更に、冷凍サイクル装置10は、後述するように、第2膨張弁14bを有している。第2膨張弁14bの基本的構成は、第1膨張弁14aと同様である。これらの第1膨張弁14a、第2膨張弁14bは、弁開度を全開にすることで流量調整作用および冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能、および弁開度を全閉にすることで冷媒通路を閉塞する全閉機能を有している。
そして、この全開機能および全閉機能によって、第1膨張弁14a、第2膨張弁14bは、上述した各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、第1膨張弁14a、第2膨張弁14bは、冷媒回路切替装置としての機能を兼ね備えている。第1膨張弁14a、第2膨張弁14bは、制御装置50から出力される制御信号(制御パルス)によって、その作動が制御される。
第1膨張弁14aの出口には、室外熱交換器16の冷媒入口側が接続されている。室外熱交換器16は、第1膨張弁14aから流出した冷媒と外気ファン16aにより送風された外気とを熱交換させる熱交換器である。室外熱交換器16は、車両ボンネット内の前方側に配置されている。
室外熱交換器16は、少なくとも冷房モード時には、高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能し、少なくとも暖房モード時には、低圧冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。つまり、室外熱交換器16は本発明における蒸発器に相当する。
そして、外気ファン16aは、電動式の送風機によって構成されている。そして、当該外気ファン16aの送風能力(即ち、回転数)は、制御装置50から出力される制御電圧によって制御される。
室外熱交換器16の冷媒出口には、第3三方継手13cの流入口側が接続されている。第3三方継手13cの一方の流出口には、第4三方継手13dの一方の流入口側が接続されている。
第3三方継手13cの一方の流出口側と第4三方継手13dの一方の流入口側とを接続する冷媒通路には、第2開閉弁15bが配置されている。第2開閉弁15bの開閉によって、この冷媒通路における冷媒流れの有無を切り替えることができる。
そして、第3三方継手13cの他方の流出口には、第2三方継手13bの他方の流入口側が接続されている。第3三方継手13cの他方の流出口側と第2三方継手13bの他方の流入口側とを接続する冷媒通路には、逆止弁17が配置されている。
当該逆止弁17は、第3三方継手13c側(即ち、室外熱交換器16側)から第2三方継手13b側(即ち、第2膨張弁14b及び放熱器12)へ冷媒が流れることを許容し、第2三方継手13b側から第3三方継手13c側へ冷媒が流れることを禁止する機能を果たす。
又、第2三方継手13bの流出口には、第5三方継手13eの流入口側が接続されている。第5三方継手13eの一方の流出口には、第2膨張弁14bの入口側が接続されている。そして、第5三方継手13eの他方の流出口には、バッテリ25のウォータジャケットにおける冷媒入口側が接続されている。
当該バッテリ25のウォータジャケットは、バッテリ25の外表面を覆うように配置されており、その内部に冷媒流路を有している。従って、第5三方継手13eの他方の流出口から流出した低圧冷媒は、バッテリ25で生じた熱を吸熱して、当該バッテリ25を冷却する。バッテリ25のウォータジャケットにおける冷媒出口には、第6三方継手13fの一方の流入口側が接続されている。
第2膨張弁14bは、少なくとも冷房モード時に、室外熱交換器16から流出した冷媒を減圧させる電気式の可変絞り機構である。そして、第2膨張弁14bの出口側には、室内蒸発器18の冷媒入口側が接続されている。
室内蒸発器18は、後述する室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置されている。室内蒸発器18は、少なくとも冷房モード時に、第2膨張弁14bにて減圧された低圧冷媒と送風機32から送風された送風空気とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、低圧冷媒に吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。室内蒸発器18の冷媒出口には、第6三方継手13fの他方の流入口側が接続されている。
第6三方継手13fの流出口には、蒸発圧力調整弁19の入口側が接続されている。蒸発圧力調整弁19は、室内蒸発器18出口側冷媒の圧力の上昇に伴って、弁開度を増加させる機械式の可変絞り機構で構成されている。
当該蒸発圧力調整弁19は、室内蒸発器18の着霜を抑制する為に、室内蒸発器18における冷媒蒸発圧力を、予め定めた基準圧力以上に維持する機能を果たす。これにより、蒸発圧力調整弁19は、室内蒸発器18における冷媒蒸発温度を、室内蒸発器18の着霜を抑制可能な基準温度以上に維持することができる。
蒸発圧力調整弁19の出口には、第4三方継手13dの他方の流入口側が接続されている。第4三方継手13dの流出口には、アキュムレータ20の入口側が接続されている。アキュムレータ20は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰液相冷媒を蓄える気液分離器である。アキュムレータ20の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
次に、車両用空調装置1の室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、冷凍サイクル装置10によって温度調整された送風空気を車室内へ吹き出すためのものである。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。
図1に示すように、室内空調ユニット30は、その外殻を形成する空調ケース31に、送風機32、室内蒸発器18、ヒータコア43等を収容して構成されている。即ち、室内空調ユニット30において、室内蒸発器18、ヒータコア43党は、空調ケース31の内部に形成された空気通路に配置されている。
空調ケース31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成している。当該空調ケース31は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)によって成形されている。
空調ケース31における送風空気流れの最上流側には、内外気切替装置33が配置されている。内外気切替装置33は、空調ケース31内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する。
内外気切替装置33は、空調ケース31内へ内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させる。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータの作動は、制御装置50から出力される制御信号によって制御される。
内外気切替装置33の送風空気流れ下流側には、送風機32が配置されている。送風機32は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機によって構成されている。送風機32は、内外気切替装置33を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する。そして、送風機32の送風能力(即ち、回転数)は、制御装置50から出力される制御電圧によって制御される。
送風機32の送風空気流れ下流側には、室内蒸発器18、ヒータコア43が、送風空気流れに対して、この順に配置されている。つまり、室内蒸発器18は、ヒータコア43よりも、送風空気流れ上流側に配置されている。
尚、ヒータコア43は、加熱側熱媒体回路40の構成装置の一つであり、加熱側熱媒体回路40を循環する冷却水と室内蒸発器18を通過した送風空気とを熱交換させて、送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。ヒータコア43を含む加熱側熱媒体回路40の詳細については、後に図面を参照しつつ詳細に説明する。
そして、空調ケース31内部には、バイパス通路35が設けられている。当該バイパス通路35は、室内蒸発器18通過後の送風空気を、ヒータコア43を迂回して流す為の通路である。
又、空調ケース31内の室内蒸発器18の送風空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア43の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア34が配置されている。
エアミックスドア34は、室内蒸発器18通過後の送風空気のうち、ヒータコア43側を通過する送風空気の風量とバイパス通路35を通過させる送風空気の風量との風量割合を調整する風量割合調整部である。
エアミックスドア34は、エアミックスドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータの作動は、制御装置50から出力される制御信号によって制御される。
ヒータコア43及びバイパス通路35の送風空気流れ下流側には、混合空間が設けられている。当該混合空間は、ヒータコア43にて冷却水と熱交換して加熱された送風空気とバイパス通路35を通過した加熱されていない送風空気とを混合させる為の空間である。
更に、空調ケース31における送風空気流れの下流部には、混合空間にて混合された送風空気(即ち、空調風)を、空調対象空間である車室内へ吹き出すための開口穴が配置されている。
この開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
これらのフェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口及びデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
従って、エアミックスドア34が、ヒータコア43を通過させる風量とバイパス通路35を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間にて混合される空調風の温度が調整される。これにより、各吹出口から車室内へ吹き出される送風空気(空調風)の温度が調整されることになる。
そして、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴の送風空気流れ上流側には、それぞれ、フェイスドア、フットドア、及びデフロスタドアが配置されている。フェイスドアは、フェイス開口穴の開口面積を調整する。フットドアは、フット開口穴の開口面積を調整する。デフロスタドアは、デフロスタ開口穴の開口面積を調整する。
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替装置を構成する。又、これらのドアは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。尚、この電動アクチュエータの作動も、制御装置50から出力される制御信号によって制御される。
吹出口モード切替装置によって切り替えられる吹出口モードとしては、具体的に、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード等がある。
フェイスモードは、フェイス吹出口を全開としてフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。バイレベルモードは、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。フットモードは、フット吹出口を全開にすると共にデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出す吹出口モードである。
更に、乗員が操作パネル60に設けられた吹出モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタモードにすることもできる。デフロスタモードは、デフロスタ吹出口を全開としてデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出す吹出口モードである。
次に、車両用空調装置1の加熱側熱媒体回路40について説明する。当該加熱側熱媒体回路40は、冷凍サイクル装置10の放熱器12やハイブリッド車両の構成機器とヒータコア43との間で、熱媒体を循環させる熱媒体回路である。当該加熱側熱媒体回路40における熱媒体としては、冷却水が用いられている。この冷却水としては、例えば、水やエチレングリコール水溶液等を採用することができる。
図1、図3等に示すように、当該加熱側熱媒体回路40は、冷凍サイクル装置10の放熱器12と、エンジンEGと、加熱側水ポンプ41と、水加熱ヒータ42と、ヒータコア43とを有している。当該加熱側熱媒体回路40では、冷却水流路によって、これらの構成機器を接続が接続されており、熱媒体が循環可能な閉回路を為している。
エンジンEGは、当該ハイブリッド車両の内燃機関であって、本発明における動力装置に相当する。そして、エンジンEGは、加熱側熱媒体回路40の冷却水流路に配置されており、冷却水と熱交換可能に構成されている。
又、エンジンEGにおける冷却水流路の流出口側には、エンジンポンプEGpが配置されている。当該エンジンポンプEGpは、加熱側熱媒体回路40の冷却水を吸入して吐出する電動ポンプであり、本発明における循環装置の一部を構成する。
エンジンポンプEGpの作動は、制御装置50によって制御される。エンジンポンプEGpは、エンジンEGの駆動力を、ベルトを介して動力伝達することによって駆動されるベルト駆動式ポンプであってもよい。
そして、エンジンポンプEGpの吐出口側には、第1接続部44aの流出入口が接続されている。第1接続部44aは、3本の冷却水流路を接続して構成されており、3つの流出入口を有している。当該第1接続部44aは、加熱側熱媒体回路40における冷却水流れの分岐部又は合流部として機能する。
尚、図1等に示すように、当該加熱側熱媒体回路40は、第2接続部44b、第3接続部44cを有している。第2接続部44b、第3接続部44cの基本的構成は、第1接続部44aと同様であり、加熱側熱媒体回路40の分岐部及び合流部として機能する。
そして、第1接続部44aにおける流出入口の一つには、加熱側水ポンプ41の吸入口側が接続されている。又、当該第1接続部44aにおいて、残る一つの流出入口には、流量調整弁47における流出入口の一つが接続されている。
加熱側水ポンプ41は、第1接続部44a側から冷却水を吸い込んで圧送する水ポンプであり、本発明における循環装置の一部を構成する。当該加熱側水ポンプ41の吐出口側には、水加熱ヒータ42の流入口側が接続されている。
従って、加熱側水ポンプ41は、第1接続部44aから流出した冷却水を、水加熱ヒータ42へ圧送することができる。加熱側水ポンプ41の水圧送能力(即ち、回転数)は、制御装置50から出力される制御電圧によって制御される。
水加熱ヒータ42は、加熱側水ポンプ41から流出した冷却水を加熱する加熱装置である。当該水加熱ヒータ42は、例えば、PTC素子やニクロム線等を有しており、制御装置50から出力される制御電力が供給されることによって発熱して冷却水を加熱する。
従って、水加熱ヒータ42による冷却水に対する加熱能力は、制御装置50から出力される制御電力によって制御される。即ち、水加熱ヒータ42は、本発明における熱源装置として機能すると共に、本発明における加熱ヒータに相当する。
そして、水加熱ヒータ42における冷却水の流出口側には、放熱器12の冷却水流入口側が接続されている。当該放熱器12は、上述したように、冷凍サイクル装置10を構成しており、少なくとも暖房モードにおいて、圧縮機11で圧縮された高圧冷媒の熱を、加熱側熱媒体回路40を循環する冷却水に対して放熱する。
これにより、放熱器12では、高圧冷媒の熱を熱源として、加熱側熱媒体回路40の冷却水が加熱される。即ち、少なくとも暖房モードで作動している冷凍サイクル装置10の放熱器12は、本発明における熱源装置として機能する。
そして、放熱器12の冷却水流出口側には、第3接続部44cにおける一つの流出入口側が接続されている。当該第3接続部44cにおける他の流出口には、ヒータコア43の流入口側が接続されている。そして、当該第3接続部44cにおいて残る一つの流出口側には、流量調整弁47における流出入口の一つが接続されている。
上述したように、ヒータコア43は、加熱用熱交換器であり、加熱側熱媒体回路40を循環する冷却水と室内蒸発器18を通過した送風空気とを熱交換させて、送風空気を加熱する。図1に示すように、ヒータコア43は、室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置されており、本発明におけるヒータコアに相当する。
当該流量調整弁47は、いわゆる電磁式三方弁によって構成されている。上述したように、当該流量調整弁47における一つの流出入口は、第1接続部44aに接続されており、他の流出入口は、第3接続部44cに接続されている。
そして、流量調整弁47における残る一つの流出入口には、第2接続部44bが接続されている。従って、当該流量調整弁47は、その内部に配置された弁体を作動させることで、各流出入口を通過する冷却水の流量を調整することができる。当該流量調整弁47の作動は、制御装置50から出力される制御信号によって制御される。
即ち、流量調整弁47は、当該制御装置50の制御信号に応じて、第1接続部44a、第2接続部44b、第3接続部44cにおける冷却水の流量を調整することができる。換言すると、流量調整弁47は、加熱側熱媒体回路40において冷却水が流れる流路構成を切り替えることができる。
そして、ヒータコア43における流出口側には、第2接続部44bの一つの流出入口が接続されている。又、流量調整弁47における残る一つの流出入口には、第2接続部44bにおける他の流出入口が接続されている。
第2接続部44bの残る一つの流出入口側には、エンジンEGにおける冷却水流路の流入口側が接続されている。従って、当該加熱側熱媒体回路40は、エンジンEGやヒータコア43等を介した冷却水の循環回路を構成することができる。
尚、第1実施形態に係る加熱側熱媒体回路40は、第1接続流路45を有している。第1接続流路45は、エンジンEGにおける流出口側と第1接続部44aを接続する冷却水流路と、エンジンEGにおける流入口側と第2接続部44bとを接続する冷却水流路を含んでいる。当該第1接続流路45は、本発明における第1流路に相当する。
そして、当該加熱側熱媒体回路40は、第2接続流路46を有している。第2接続流路46は、第1接続部44aと第3接続部44cとを接続する冷却水流路のうち、水加熱ヒータ42等が配置されている冷却水流路を意味する。第2接続流路46は、本発明における第2流路に相当する。
次に、第1実施形態に係る車両用空調装置1の制御系について説明する。図2に示すように、車両用空調装置1は、制御装置50を有している。当該制御装置50は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。
そして、制御装置50は、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された各種制御対象機器の作動を制御する。制御対象機器は、圧縮機11、第1膨張弁14a、第2膨張弁14b、第1開閉弁15a、第2開閉弁15b、外気ファン16a、送風機32、加熱側水ポンプ41、水加熱ヒータ42、流量調整弁47、エンジンポンプEGp等を含んでいる。
又、制御装置50の入力側には、車両用空調装置1による運転制御に用いられる各種空調センサ群が接続されている。そして、当該制御装置50には、これらの空調センサ群の検出信号が入力される。
図3に示すように、空調センサ群は、内気温センサ51、外気温センサ52、日射センサ53、第1水温センサ54a、第2水温センサ54b、第1冷媒温度センサ55a、第2冷媒温度センサ55b、第3冷媒温度センサ55c、吐出圧力センサ56a、室外器圧力センサ56b、蒸発器温度センサ57、空調風温度センサ58等を含んでいる。
内気温センサ51は、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ52は、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ53は、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。
第1水温センサ54aは、加熱側熱媒体回路40において、放熱器12の冷却水流入口側における冷却水温度を検出する冷却水温度検出部である。そして、第2水温センサ54bは、加熱側熱媒体回路40において、放熱器12の冷却水流出口側における冷却水温度を検出する冷却水温度検出部である。
尚、第1水温センサ54aは、放熱器12における流入口側の冷却水温度を検出しているが、第1水温センサ54aとして、ヒータコア43から流出した冷却水温度を検出するものを採用してもよい。
第1冷媒温度センサ55aは、圧縮機11から吐出された冷媒の吐出温度Td1を検出する第1冷媒温度検出部である。第2冷媒温度センサ55bは、放熱器12から流出した冷媒の出口側吐出温度Td2を検出する第2冷媒温度検出部である。第3冷媒温度センサ55cは、室外熱交換器16から流出した冷媒の温度(室外熱交換器温度)Td3を検出する第3冷媒温度検出部である。
吐出圧力センサ56aは、圧縮機11の吐出口側から第1膨張弁14aの入口側へ至る冷媒通路の高圧側冷媒圧力Pdを検出する吐出圧力検出部である。室外器圧力センサ56bは、室外熱交換器16から流出した冷媒の圧力(室外器冷媒圧力)Psを検出する室外器圧力検出部である。
蒸発器温度センサ57は、室内蒸発器18における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。空調風温度センサ58は、混合空間から車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する空調風温度検出部である。
図3に示すように、制御装置50の入力側には、操作パネル60が接続されている。操作パネル60は、車室内前部の計器盤付近に配置されており、各種操作スイッチを有している。従って、制御装置50には、各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
操作パネル60における各種操作スイッチは、オートスイッチ、冷房スイッチ、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ、吹出モード切替スイッチ等を含んでいる。オートスイッチは、車両用空調装置1の自動制御運転を設定或いは解除する際に操作される。
冷房スイッチは、車両用空調装置1により車室内の冷房を行うことを要求する際に操作される。風量設定スイッチは、送風機32の風量をマニュアル設定する際に操作される。温度設定スイッチは、車室内の目標温度Tsetを設定する際に操作される。吹出モード切替スイッチは、車両用空調装置1における吹出モードをマニュアル設定する際に操作される。
更に、制御装置50の入力側には、車両制御装置70が接続されている。上述したように、当該ハイブリッド車両において、車両制御装置70がEV走行モードとHV走行モードとの切り替え制御を行う。従って、制御装置50には、ハイブリッド車両の走行モード(即ち、HV走行モード又はEV走行モード)を示す走行モード信号が入力される。
尚、第1実施形態に係る制御装置50は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェア及びソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
例えば、制御装置50のうち、冷凍サイクル装置10で生じる熱量を制御する構成は、サイクル熱量制御部50aを構成している。当該サイクル熱量制御部50aは、圧縮機11、第1膨張弁14a、第2膨張弁14b、第1開閉弁15a、第2開閉弁15b、外気ファン16a、送風機32の作動を制御する構成ということができる。
そして、制御装置50のうち、水加熱ヒータ42で生じる熱量を制御する構成は、ヒータ熱量制御部50bを構成する。当該ヒータ熱量制御部50bは、水加熱ヒータ42に供給する電力量を制御する構成ということができる。
又、制御装置50のうち、水加熱ヒータ42、エンジンポンプEGp、流量調整弁47の作動を制御する構成は、冷却水流量調整部50cを構成する。当該冷却水流量調整部50cは、エンジンEGを通過する冷却水流量と、熱源装置(即ち、水加熱ヒータ42や放熱器12)を通過する冷却水流量との流量バランスを調整する構成ということができる。
続いて、第1実施形態に係る車両用空調装置1の各運転モードについて説明する。上述したように、当該車両用空調装置1は、車室内の冷房、除湿暖房、及び暖房を行うことができる。車両用空調装置1における冷凍サイクル装置10は、車室内の空調の為に、冷房モード、除湿暖房モード、暖房モードの運転を切り替える。
冷凍サイクル装置10の各運転モードの切り替えは、空調制御プログラムが実行されることによって行われる。空調制御プログラムは、操作パネル60のオートスイッチが投入(ON)されて、自動制御が設定された際に実行される。
より具体的には、空調制御プログラムのメインルーチンでは、上述の空調制御用のセンサ群の検出信号及び各種空調操作スイッチからの操作信号を読み込む。そして、読み込んだ検出信号および操作信号の値に基づいて、車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である目標吹出温度TAOを、以下数式F1に基づいて算出する。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×As+C…(F1)
尚、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内の目標温度(車室内設定温度)、Trは内気温センサ51によって検出された内気温、Tamは外気温センサ52によって検出された外気温、Asは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
そして、操作パネル60の冷房スイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが予め定めた冷房基準温度αよりも低くなっている場合には、運転モードが冷房モードに切り替えられる。
又、操作パネル60の冷房スイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上になっている場合には、運転モードが除湿暖房モードに切り替えられる。そして、操作パネル60の冷房スイッチが投入されていない場合には、運転モードが暖房モードに切り替えられる。
この為、冷房モードは、主に夏季のように比較的外気温が高い場合に実行される。除湿暖房モードは、主に春季あるいは秋季に実行される。暖房モードは、主に冬季の低外気温時に実行される。
(a)冷房モード
先ず、冷凍サイクル装置10における冷房モードの作動について説明する。当該冷房モードでは、制御装置50は、第1膨張弁14aを全開状態とし、第2膨張弁14bについては、減圧作用を発揮する絞り状態にする。
又、制御装置50は、第1開閉弁15aを閉じ、第2開閉弁15bを閉じる。そして、制御装置50は、ヒータコア43側の通風路が全閉となり、バイパス通路35側が全開となるようにエアミックスドア34を変位させる。
これにより、冷房モードの冷凍サイクル装置10においては、図1の白抜き矢印に示すように、圧縮機11(→放熱器12→第1膨張弁14a)→室外熱交換器16→逆止弁17→第2膨張弁14b→室内蒸発器18→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、制御装置50は、圧縮機11の冷媒吐出能力(即ち、圧縮機11の電動モータへ出力される制御信号)を決定する。具体的には、室内蒸発器18から吹き出される送風空気が目標蒸発器温度TEOとなるように、圧縮機11の作動を制御する。
目標蒸発器温度TEOは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置50に記憶されている制御マップを参照して決定される。この制御マップでは、目標吹出温度TAOの低下に伴って、目標蒸発器温度TEOが低下するように決定される。更に、目標蒸発器温度TEOは、室内蒸発器18の着霜を抑制可能な範囲(具体的には、1℃以上)で決定される。
又、制御装置50は、第2膨張弁14bへ流入する冷媒の過冷却度が冷房用の目標過冷却度となるように、第2膨張弁14bの絞り開度を調整する。冷房用の目標過冷却度は、室外器冷媒圧力Ps、及び室外熱交換器温度Td3に基づいて、予め制御装置50に記憶されている制御マップを参照して決定される。この制御マップでは、サイクルの成績係数COPrが極大値に近づくように冷房用の目標過冷却度が決定される。
この為、冷房モードの冷凍サイクル装置では、室外熱交換器16を放熱器として機能させ、室内蒸発器18を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。そして、室内蒸発器18にて冷媒が蒸発する際に空気から吸熱した熱を室外熱交換器16にて外気に放熱する。これにより、空気を冷却することができる。従って、冷房モードでは、室内蒸発器18にて冷却された空気を車室内に吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
尚、逆止弁17を通過した冷媒は、第5三方継手13eから第2膨張弁14bへ向かう流れと、バッテリ25へ向かう流れに分岐可能である。第5三方継手13eからバッテリ25へ冷媒経路上には、図示しない絞り機構が配置されている。この為、バッテリ25の周囲には、当該絞り機構で減圧された低圧冷媒が供給される。これにより、バッテリ25に生じた熱を低圧冷媒の蒸発潜熱で吸熱することができるので、冷房モードの冷凍サイクル装置10は、バッテリ25を冷却することができる。
(b)除湿暖房モード
次に、冷凍サイクル装置10における除湿暖房モードの作動について説明する。除湿暖房モードでは、制御装置50は、第1膨張弁14aを絞り状態とし、第2膨張弁14bを絞り状態とする。
又、制御装置50は、第1開閉弁15a及び第2開閉弁15bを開く。そして、制御装置50は、ヒータコア43側の通風路が全開となり、バイパス通路35側が全閉となるようにエアミックスドア34を変位させる。
これにより、除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、図1の斜線ハッチング付き矢印に示すように、圧縮機11→放熱器12→第1膨張弁14a→室外熱交換器16→第2開閉弁15b→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、圧縮機11→放熱器12→第1開閉弁15a→第2膨張弁14b→室内蒸発器18→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。即ち、室外熱交換器16と室内蒸発器18が冷媒流れに対して並列的に接続される冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、制御装置50は、圧縮機11の冷媒吐出能力(即ち、圧縮機11の電動モータへ出力される制御信号)を決定する。具体的には、放熱器12へ流入する冷媒の圧力が目標凝縮圧力PDOとなるように、圧縮機11の作動を制御する。
目標凝縮圧力PDOは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置50に記憶されている制御マップを参照して決定される。この制御マップでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、目標凝縮圧力PDOが上昇するように決定される。
又、制御装置50は、目標吹出温度TAO等に基づいて、予め制御装置50に記憶されている制御マップを参照して、サイクルの成績係数COPrが極大値に近づくように第1膨張弁14a及び第2膨張弁14bの作動を制御する。具体的には、制御装置50は、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、第1膨張弁14aの絞り開度を減少させる。
この為、除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、放熱器12が放熱器として機能し、室外熱交換器16及び室内蒸発器18が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
当該車両用空調装置1は、室外熱交換器16及び室内蒸発器18にて冷媒が蒸発する際に吸熱した熱を、放熱器12及び加熱側熱媒体回路40を介して送風空気に放熱させることができる。これにより、室内蒸発器18にて冷却されて除湿された送風空気を、ヒータコア43にて再加熱することができる。
従って、除湿暖房モードでは、室内蒸発器18にて冷却されて除湿された送風空気を、放熱器12及び加熱側熱媒体回路40を介して、ヒータコア43にて再加熱して車室内に吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。尚、当該冷凍サイクル装置10は、除湿された送風空気を再加熱できる為、除湿暖房モード時における熱源装置の一つとして機能する。
(c)暖房モード
続いて、冷凍サイクル装置10における暖房モードの作動について説明する。暖房モードでは、制御装置50は、第1膨張弁14aを絞り状態とし、第2膨張弁14bを全閉状態とする。
又、制御装置50は、第1開閉弁15aを閉じ、第2開閉弁15bを開く。そして、制御装置50は、ヒータコア43側の通風路が全開となり、バイパス通路35側が全閉となるようにエアミックスドア34を変位させる。
これにより、暖房モードの冷凍サイクル装置10においては、図1の黒塗り矢印に示すように、圧縮機11→放熱器12→第1膨張弁14a→室外熱交換器16→第2開閉弁15b→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、制御装置50は、圧縮機11の冷媒吐出能力(即ち、圧縮機11の電動モータへ出力される制御信号)を決定する。具体的には、放熱器12へ流入する冷媒の圧力が目標凝縮圧力PDOとなるように、圧縮機11の作動を制御する。
目標凝縮圧力PDOは、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置50に記憶されている制御マップを参照して決定される。この制御マップでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、目標凝縮圧力PDOが上昇するように決定される。
又、制御装置50は、第1膨張弁14aへ流入する冷媒の過冷却度が暖房用の目標過冷却度となるように、第1膨張弁14aの絞り開度を調整する。暖房用の目標過冷却度は、吐出圧力センサ56aによって検出された高圧側冷媒圧力Pdに基づいて、予め制御装置50に記憶されている制御マップを参照して決定される。この制御マップでは、COPrが極大値に近づくように暖房用の目標過冷却度を決定する。
この為、暖房モードの冷凍サイクル装置10では、放熱器12が放熱器として機能し、室外熱交換器16が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。そして、室外熱交換器16にて冷媒が蒸発する際に外気から吸熱した熱を、放熱器12及び加熱側熱媒体回路40を介して、ヒータコア43にて送風空気に放熱させることができる。
これにより、当該冷凍サイクル装置10は、送風空気を加熱することができ、本発明における熱源装置の一つとして機能する。従って、暖房モードでは、車両用空調装置1は、ヒータコア43にて加熱された送風空気を、暖房対象空間である車室内に吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。
上述したように、当該車両用空調装置1においては、空調対象空間である車室内の暖房を行う際に、加熱側熱媒体回路40を構成するヒータコア43で放熱することで、送風空気を加熱している。従って、暖房モード時における加熱側熱媒体回路40の作動について説明する。
ここで、車両用空調装置1が搭載されたハイブリッド車両は、HV走行モードとEV走行モードの2つの走行モードで走行可能に構成されている。暖房モードにおける有効な熱源も、ハイブリッド車両の走行モードに応じて相違する。
この為、当該車両用空調装置1において、制御装置50は、車両制御装置70から出力された走行モード信号に基づいて、加熱側熱媒体回路40における冷却水の流路や流量を変更する。
先ず、暖房モード時において、ハイブリッド車両がHV走行モードで走行する場合の加熱側熱媒体回路40の作動について、図3を参照しつつ説明する。尚、図3にて、破線矢印で示す冷却水の流れにおける流量は、実線矢印で示す冷却水の流れにおける流量よりも少ないものとする。破線矢印側における冷却水の温度が過度に低下しない程度の流量である。
暖房モード時において、車両制御装置70からHV走行モードを示す走行モード信号が出力された場合、制御装置50は、エンジンポンプEGp、加熱側水ポンプ41、流量調整弁47の作動を制御する。
具体的には、第1接続流路45を含む経路を流れる冷却水の流量が、第2接続流路46を含む経路を流れる流量よりも多くなるように、加熱側水ポンプ41等の作動が調整される。
このHV走行モードの場合、加熱側水ポンプ41の圧送能力が低い状態に制御される。又、流量調整弁47は、第1接続部44a側の流出入口と第3接続部44c側の流出入口とを接続し、第2接続部44b側の流出入口を閉鎖するように、作動制御される。
これにより、図3に示すように、加熱側熱媒体回路40における冷却水の流れは、第1接続流路45を含む経路と、第2接続部44bを含む経路に調整される。ここで、第1接続流路45を含む経路とは、エンジンEG→エンジンポンプEGp→第1接続流路45→第1接続部44a→流量調整弁47→第3接続部44c→ヒータコア43→第2接続部44b→第1接続流路45→エンジンEGの順で冷却水が循環する経路を意味する。
一方、第2接続流路46を含む経路とは、第1接続部44aで分岐した後、第1接続部44a→第2接続流路46→加熱側水ポンプ41→水加熱ヒータ42→放熱器12→第3接続部44cと流れ、第3接続部44cにて合流する経路を意味する。
尚、第1接続流路45を含む経路を流れる冷却水の流量は、本発明における第1流量に相当する。そして、第2接続流路46を含む経路を流れる冷却水の流量は、本発明における第2流量に相当する。
これにより、第2接続流路46を介して、第1接続部44aから第3接続部44cへ流れる冷却水の流量は、加熱側水ポンプ41、水加熱ヒータ42、放熱器12のヒートショック負荷を抑える為に必要な最小流量に調整される。換言すると、流量調整弁47を介して、第1接続部44aから第3接続部44cへ流れる冷却水の流量は、加熱側熱媒体回路40を循環する冷却水の大部分を占めることになる。
そして、ヒータコア43を通過する冷却水は、上述したようにエンジンEGの排熱を有している為、当該加熱側熱媒体回路40は、主にエンジンEGの排熱を熱源として、ヒータコア43にて送風空気を加熱することができる。
従って、当該車両用空調装置1によれば、HV走行モード時における暖房を、エンジンEGの排熱を熱源として、有効に活用して実現することができる。換言すると、当該車両用空調装置1によれば、第2接続流路46に配置された水加熱ヒータ42や放熱器12による冷却水の加熱は、必ずしも車室内の暖房に必要とするものではない。
つまり、当該車両用空調装置1は、水加熱ヒータ42による加熱や、冷凍サイクル装置10の暖房モードでの作動を停止した状態でも、エンジンEGの排熱を用いて、車室内の暖房を行うことができる。
又、第2接続流路46側における冷却水の流量を小さくすることで、第2接続流路46側における冷却水の通水抵抗の増大を抑制することができる。即ち、当該車両用空調装置1は、HV走行モード時における加熱側熱媒体回路40全体における通水抵抗の増大を抑え、この場合の第2接続流路46側に冷却水を必要以上に流すことによる暖房性能の低下を抑制することができる。
ここで、水加熱ヒータ42の加熱や冷凍サイクル装置10の暖房モードでの作動を停止し、第2接続流路46に対する冷却水の流入を遮断した場合について考察する。この状態では、第2接続流路46における冷却水の流れが生じない為、水加熱ヒータ42や放熱器12内部における冷却水の温度は時間の経過とともに低下していく。
水加熱ヒータ42や放熱器12における冷却水が冷え切ってしまうと、水加熱ヒータ42の加熱や冷凍サイクル装置10の暖房モードでの作動を再開した際に、ヒータコア43に対して、冷え切った状態の冷却水がヒータコア43に流入することになる。この流入する冷却水の温度差によって、ヒータコア43に大きなヒートショック負荷がかかってしまい、ヒータコア43の劣化や破損を引き起こすことが想定される。
この点、当該車両用空調装置1におけるHV走行モードでは、図3に示すように、エンジンEGの排熱で温められた冷却水を、第2接続流路46を介して、水加熱ヒータ42や放熱器12を通過させている。
これにより、水加熱ヒータ42や放熱器12内部の冷却水の温度が過度に下がることはない。つまり、第2接続流路46側の冷却水の流量を大きくした場合であっても、ヒータコア43に対するヒートショック負荷を低く抑えることができ、ヒータコア43の劣化や破損を抑制することができる。
次に、暖房モード時において、ハイブリッド車両がEV走行モードで走行する場合の加熱側熱媒体回路40の作動について、図4を参照しつつ説明する。尚、図4にて、破線矢印で示す冷却水の流れにおける流量は、実線矢印で示す冷却水の流れにおける流量よりも少ないものとする。破線矢印側における冷却水の温度が過度に低下しない程度の流量である。
上述したように、EV走行モードでは、バッテリ25の電力による走行用電動モータの駆動によって、ハイブリッド車両が走行する。つまり、EV走行モードにおいては、加熱側熱媒体回路40の冷却水を加熱する熱源として、エンジンEGの排熱を利用することが難しい。
従って、当該車両用空調装置1の加熱側熱媒体回路40では、EV走行モードにおける車室内暖房を行う際には、水加熱ヒータ42にて生じる熱や、冷凍サイクル装置10の放熱器12で放熱される熱を用いて、加熱側熱媒体回路40の冷却水を温めるように構成されている。
暖房モード時において、車両制御装置70からEV走行モードを示す走行モード信号が出力された場合、制御装置50は、エンジンポンプEGp、加熱側水ポンプ41、流量調整弁47の作動を制御して、第2接続流路46を含む経路を流れる冷却水の流量が、第1接続流路45を含む経路を流れる流量よりも多くなるように調整する。
EV走行モードでは、走行用駆動源としてエンジンEGが利用されていないので、エンジンポンプEGpによる冷却水の圧送能力はごく小さな状態となる。当該EV走行モードに際して、加熱側水ポンプ41の圧送能力が、HV走行モード時よりも高い状態で制御される。又、流量調整弁47は、第1接続部44a側の流出入口と第2接続部44b側の流出入口とを接続し、第3接続部44c側の流出入口を閉鎖するように作動制御される。
この結果、EV走行モードにおける加熱側熱媒体回路40では、第1接続流路45を含む経路と、第2接続流路46を含む経路が構成される。図4に示すように、EV走行モードにおける第1接続流路45を含む経路は、第2接続部44bにて分岐した後、第2接続部44b→第1接続流路45→エンジンEG→エンジンポンプEGp→第1接続流路45→第1接続部44aと流れ、第1接続部44aにて合流する経路を意味する。
一方、EV走行モードにおける第2接続流路46を含む経路とは、第1接続部44aで分岐した後、第1接続部44a→第2接続流路46→加熱側水ポンプ41→水加熱ヒータ42→放熱器12→第3接続部44c→ヒータコア43→第2接続部44b→流量調整弁47→第1接続部44aの順で冷却水が循環する経路を意味する。
これにより、EV走行モードでは、水加熱ヒータ42の作動や放熱器12を通過する高圧冷媒によって加熱された冷却水の熱を、ヒータコア43にて送風空気に放熱することができる。即ち、当該車両用空調装置1は、EV走行モード時における車室内の暖房に際して、水加熱ヒータ42や、冷凍サイクル装置10の放熱器12を熱源装置として利用することができる。
又、第2接続流路46側における冷却水の流量を大きくすることで、水加熱ヒータ42や放熱器12を暖房熱源として有効に活用することができ、車両用空調装置1の暖房性能を高めることができる。
そして、エンジンEGを経由する第1接続流路45側に関して、冷却水流量を少なくすることで、第1接続流路45における冷却水の通水抵抗の増大を抑制することができる。即ち、当該車両用空調装置1は、EV走行モード時における加熱側熱媒体回路40全体における通水抵抗の増大を抑え、この場合の第1接続流路45側に冷却水を必要以上に流すことによる暖房性能の低下を抑制することができる。
以上説明したように、第1実施形態に係る車両用空調装置1は、ハイブリッド車両の駆動源として配置されたエンジンEGと、ヒータコア43と、加熱側水ポンプ41を含む加熱側熱媒体回路40を有している。
当該車両用空調装置1は、加熱側熱媒体回路40のヒータコア43にて冷却水の有する熱を、送風機32によって送風される送風空気に対して放熱することで、送風空気を加熱し車室内を暖房することができる。
図3、図4に示すように、第1実施形態における加熱側熱媒体回路40において、エンジンEGは、第1接続流路45を介して、ヒータコア43に接続されている。そして、当該加熱側熱媒体回路40では、水加熱ヒータ42及び冷凍サイクル装置10の放熱器12は、第2接続流路46を介して、ヒータコア43に接続されており、エンジンEGに対して並列に配置されている。
エンジンEGの駆動力を利用するHV走行モードにおいては、冷却水流量調整部50cは、エンジンEG及び第1接続流路45の冷却水の流量が、第2接続流路46側の冷却水の流量よりも多くなるように、加熱側水ポンプ41等の作動を制御する。これにより、当該車両用空調装置1は、エンジンEGの排熱を有効に活用して、車室内の暖房を行うことができる。
又、このHV走行モードでは、エンジンEGの排熱を利用することができるので、放熱器12や水加熱ヒータ42の暖房熱源としての必要性は、EV走行モードに比べて低い。このような場合において、水加熱ヒータ42や放熱器12を経由する第2接続流路46側の冷却水の流量を少なくすることができる為、当該車両用空調装置1は、加熱側熱媒体回路40全体としての通水抵抗を低く抑えることができ、HV走行モードにおける暖房性能の低下を抑制することができる。
そして、第2接続流路46側における冷却水の流量は、水加熱ヒータ42や放熱器12内部の冷却水温度を維持可能であって、少ない流量に定められる。この為、第2接続流路46側の冷却水の流量を増大させた場合であっても、ヒータコア43に冷え切った冷却水が流入することはない。
即ち、当該車両用空調装置1によれば、ヒータコア43に対するヒートショック負荷を低減することができ、低温の冷却水の流入に伴うヒータコア43の劣化や破損を抑制することができる。
図1、図3等に示すように、当該車両用空調装置1の加熱側熱媒体回路40は、水加熱ヒータ42を有しており、第2接続流路46を流れる冷却水を加熱することができる。これにより、当該車両用空調装置1は、エンジンEGの排熱が利用できないEV走行モードにおいて、水加熱ヒータ42を熱源装置として、車室内の暖房を行うことができる。
更に、車両用空調装置1に係る加熱側熱媒体回路40は、冷凍サイクル装置10の放熱器12を有しており、第2接続流路46を流れる冷却水に対して、冷凍サイクル装置10の高圧冷媒の有する熱を放熱することができる。これにより、当該車両用空調装置1は、エンジンEGの排熱が利用できないEV走行モードにおいて、冷凍サイクル装置10の放熱器12を熱源装置として、車室内の暖房を行うことができる。
又、当該車両用空調装置1は、冷凍サイクル装置10を有することで、車室内の暖房だけでなく、車室内の冷房や除湿暖房を行うことができる。
(第2実施形態)
続いて、上述した第1実施形態とは異なる第2実施形態について、図6を参照しつつ説明する。第2実施形態に係る車両用空調装置1は、第1実施形態と同様に、ハイブリッド車両に搭載されている。第2実施形態におけるハイブリッド車両は、車両制御装置70の制御により、HV走行モードとEV走行モードとを切り替えることができる。
そして、第2実施形態に係る車両用空調装置1は、第1実施形態と同様に、冷凍サイクル装置10と、室内空調ユニット30と、加熱側熱媒体回路40と、制御装置50等を有している。
第2実施形態に係る車両用空調装置1は、加熱側熱媒体回路40の具体的構成を除き、第1実施形態と同様の構成である。従って、第2実施形態に係る冷凍サイクル装置10、室内空調ユニット30、制御装置50等に関する説明は、既に説明済みである為、省略する。
第2実施形態に係る加熱側熱媒体回路40は、第1実施形態と同様に、冷凍サイクル装置10の放熱器12やハイブリッド車両の構成機器とヒータコア43との間で、冷却水を循環させる熱媒体回路である。当該加熱側熱媒体回路40は、冷凍サイクル装置10の放熱器12と、エンジンEGと、加熱側水ポンプ41と、水加熱ヒータ42と、ヒータコア43とを有している。
図5、図6に示すように、エンジンEGにおける冷却水流路の流出口側には、エンジンポンプEGpが配置されている。そして、第2実施形態においても、エンジンポンプEGpの吐出口側には、第1接続部44aの流出入口が接続されている。
第2実施形態に係る第1接続部44aにおける流出入口の一つには、水加熱ヒータ42における流入口側が接続されている。水加熱ヒータ42は、冷却水流路を流れる冷却水を加熱する。そして、当該第1接続部44aにおいて、残る一つの流出入口には、流量調整弁47における流出入口の一つが接続されている。
水加熱ヒータ42における冷却水の流出口側には、ヒータコア43の流入口側が接続されている。当該ヒータコア43は、加熱用熱交換器であり、加熱側熱媒体回路40を循環する冷却水と室内蒸発器18を通過した送風空気とを熱交換させて、送風空気を加熱できる。
第2実施形態において、ヒータコア43の流出口側には、第3接続部44cにおける一つの流出入口側が接続されている。当該第3接続部44cにおける他の流出入口には、開閉弁48の流入口側が接続されている。そして、当該第3接続部44cにおいて残る一つの流出口側には、第2接続部44bにおける一つの流出入口側が接続されている。
第2実施形態に係る加熱側熱媒体回路40において、開閉弁48は、第3接続部44cにおける冷却水の流れを調整する為に配置されている。当該加熱側熱媒体回路40において、開閉弁48を閉状態にすれば、第3接続部44cに流入した冷却水は、全て第2接続部44bに向かって流れる。開閉弁48を開状態にすれば、第3接続部44cに流入した冷却水について、開閉弁48側への流入が許容される。
従って、当該開閉弁48は、冷却水流量調整部50cによる制御対象機器の一つを構成する。開閉弁48の開閉状態は、制御装置50からの制御信号に従って切り替えられる。即ち、当該開閉弁48は、本発明における流量調整部の一部を構成する。
そして、当該開閉弁48の流出口側には、加熱側水ポンプ41の吸入口側が接続されている。第2実施形態に係る加熱側水ポンプ41は、第3接続部44c側から冷却水を吸い込んで圧送する水ポンプである。
当該加熱側水ポンプ41の吐出口側には、冷凍サイクル装置10における放熱器12の冷却水流入口側が接続されている。当該放熱器12は、少なくとも暖房モードにおいて、圧縮機11で圧縮された高圧冷媒の熱を、加熱側熱媒体回路40を循環する冷却水に対して放熱する。
そして、放熱器12の冷却水流出口側には、流量調整弁47が接続されている。上述したように、当該流量調整弁47における一つの流出入口は、第1接続部44aに接続されており、他の流出入口は、放熱器12の冷却水流出口側に接続されている。
当該流量調整弁47における残る一つの流出入口には、第2接続部44bが接続されている。従って、当該流量調整弁47は、その内部に配置された弁体を作動させることで、各流出入口を通過する冷却水の流量を調整することができる。
図5等に示すように、第2接続部44bの一つの流出口側には、第3接続部44cが接続されており、他の一つの流出口側には、流量調整弁47が接続されている。そして、第2接続部44bにおける残る一つの流出入口側には、エンジンEGにおける冷却水流路の流入口側が接続されている。従って、第2実施形態に係る加熱側熱媒体回路40は、エンジンEGやヒータコア43等を介した冷却水の循環回路を構成することができる。
尚、第2実施形態に係る加熱側熱媒体回路40は、第1接続流路45を有している。第1接続流路45は、エンジンEGにおける流出口側と第1接続部44aを接続する冷却水流路と、エンジンEGにおける流入口側と第2接続部44bとを接続する冷却水流路を含んでいる。当該第1接続流路45は、本発明における第1流路に相当する。
又、当該加熱側熱媒体回路40は、第2接続流路46を有している。第2接続流路46は、第1接続部44aと第3接続部44cとを接続する冷却水流路のうち、放熱器12等が配置され、流量調整弁47を経由する冷却水流路を意味する。第2接続流路46は、本発明における第2流路に相当する。
第2実施形態に係る車両用空調装置1は、第1実施形態と同様に、暖房モード時における走行モードに応じて、加熱側熱媒体回路40を制御する。この点について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、第2実施形態に係る加熱側熱媒体回路40について、暖房モード時においてHV走行モードで走行する場合の作動を、図5を参照しつつ説明する。第2実施形態では、制御装置50は、暖房モード時において、車両制御装置70からHV走行モードを示す走行モード信号が出力されると、エンジンポンプEGp、加熱側水ポンプ41、流量調整弁47、開閉弁48の作動を制御する。
具体的には、エンジンポンプEGpの圧送能力が所定の状態に調整される。又、加熱側水ポンプ41の作動を停止すると共に、開閉弁48が閉状態に制御される。この時、流量調整弁47についても、第1接続部44aと第2接続部44bの間の流れを遮断するように制御しても良い。
これにより、図5に示すように、加熱側熱媒体回路40における冷却水の流れは、第1接続流路45を含む経路となり、放熱器12等が配置された第2接続流路46を冷却水が通過することはない。
つまり、第2実施形態に係る第1接続流路45を含む経路とは、エンジンEG→エンジンポンプEGp→第1接続流路45→第1接続部44a→水加熱ヒータ42→ヒータコア43→第3接続部44c→第2接続部44b→第1接続流路45→エンジンEGの順で冷却水が循環する経路を意味する。
図5からもわかるように、開閉弁48が閉状態である為、第3接続部44cに流入した冷却水は、開閉弁48を通過して、加熱側水ポンプ41や放熱器12が配置された第2接続流路46に流入することはない。即ち、第3接続部44cに流入した冷却水の全てが、そのまま第2接続部44bを経由して、エンジンEGに流入する。
従って、第2実施形態においても、車両用空調装置1は、エンジンEGの排熱を有効に活用して、車室内の暖房を行うことができる。又、HV走行モードにおいて、放熱器12や加熱側水ポンプ41が配置された第2接続流路46へ冷却水を流すことがない為、当該車両用空調装置1は、HV走行モード時における加熱側熱媒体回路40全体における通水抵抗の増大を抑え、この場合の第2接続流路46側に冷却水を必要以上に流すことによる暖房性能の低下を抑制することができる。
次に、第2実施形態に係る加熱側熱媒体回路40について、暖房モード時においてEV走行モードで走行する場合の作動を、図6を参照しつつ説明する。第2実施形態では、制御装置50は、暖房モード時において、車両制御装置70からEV走行モードを示す走行モード信号が出力されると、エンジンポンプEGp、加熱側水ポンプ41、流量調整弁47、開閉弁48の作動を制御する。
具体的には、加熱側水ポンプ41の圧送能力が所定の状態に調整されると共に、開閉弁48が開状態に制御される。そして、流量調整弁47は、第1接続部44a側の流出入口と第3接続部44c側の流出入口が接続され、第2接続部44b側の流出入口が閉鎖されるように制御される。更に、エンジンポンプEGpの作動が停止される。
これにより、図6に示すように、加熱側熱媒体回路40における冷却水の流れは、放熱器12等が配置された第2接続流路46を含む経路となり、第1接続流路45及びエンジンEGを冷却水が通過することはない。
つまり、第2実施形態に係る第2接続流路46を含む経路とは、第1接続部44a→水加熱ヒータ42→ヒータコア43→第3接続部44c→第2接続流路46→開閉弁48→加熱側水ポンプ41→放熱器12→流量調整弁47→第2接続流路46→第1接続部44aの順で冷却水が循環する経路を意味する。
これにより、EV走行モードでは、水加熱ヒータ42の作動や放熱器12を通過する高圧冷媒によって加熱された冷却水の熱を、ヒータコア43にて送風空気に放熱することができる。即ち、当該車両用空調装置1は、EV走行モード時における車室内の暖房に際して、水加熱ヒータ42や、冷凍サイクル装置10の放熱器12を熱源装置として利用することができる。
又、第2接続流路46側にて冷却水を循環することができるので、水加熱ヒータ42や放熱器12を暖房熱源として有効に活用することができ、車両用空調装置1の暖房性能を高めることができる。
そして、エンジンEGを経由する第1接続流路45側に関して、冷却水を流すことがない為、第1接続流路45側における冷却水の通水抵抗の影響を受けることはない。即ち、当該車両用空調装置1は、EV走行モード時における加熱側熱媒体回路40全体における通水抵抗の増大を抑え、この場合の第1接続流路45側に冷却水を流すことによる暖房性能の低下を抑制できる。
以上説明したように、第2実施形態に係る車両用空調装置1によれば、第1実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、第1実施形態と同様に得ることができる。
そして、第2実施形態に係る車両用空調装置1においては、暖房モード時にてHV走行モードで走行している場合には、第2接続流路46側へ冷却水を流入させることなく、エンジンEGを介して冷却水を循環させる。
これにより、当該車両用空調装置1は、HV走行モードにおいて、エンジンEGの排熱を最大限活用して、車室内の暖房を行うことができる。そして、第2接続流路46側へ冷却水を流入させることはない。
この為、この場合の加熱側熱媒体回路40における冷却水の流れに、放熱器12等を通過する際の通水抵抗が作用することはない。即ち、当該車両用空調装置1は、この場合の第2接続流路46側に冷却水を流すことによる暖房性能の低下を抑制できる。
又、暖房モード時にEV走行モードで走行している場合には、車両用空調装置1は、第1接続流路45側へ冷却水を流入させ、エンジンEGを経由させることなく、第2接続流路46側にて冷却水を循環させることができる。
これにより、当該車両用空調装置1は、EV走行モードにおいて、放熱器12や水加熱ヒータ42等の熱源装置の熱を最大限活用して、車室内の暖房を行うことができる。そして、第1接続流路45側へ冷却水を流入させることはない。
この為、この場合の加熱側熱媒体回路40における冷却水の流れに、エンジンEGを通過する際の通水抵抗が作用することはない。つまり、当該車両用空調装置1は、この場合の第1接続流路45側に冷却水を流すことによる暖房性能の低下を抑制できる。
(他の実施形態)
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、上述した各実施形態を適宜組み合わせても良いし、上述した実施形態を種々変形することも可能である。
(1)上述した実施形態においては、車両用空調装置1を、暖房運転だけでなく、冷房運転や除湿暖房運転を実行可能に構成していたが、この態様に限定されるものではない。本発明は、少なくとも暖房が可能であればよく、暖房専用の車両用暖房装置として構成しても良いことはいうまでもない。
(2)又、上述した実施形態においては、暖房モード時における走行モードの切替に応じて、加熱側熱媒体回路40における冷却水の流量を調整していたが、この態様に限定されるものではない。
加熱側熱媒体回路40における冷却水流量の調整に関しては、熱媒体である冷却水を介して送風空気を加熱する運転モードであれば、走行モードの切替に応じて冷却水流量を調整しても良い。例えば、除湿暖房モードにおいて、除湿された送風空気を加熱する場合に適用しても良い。
(3)そして、上述した実施形態においては、本発明における熱源装置として、冷凍サイクル装置10の放熱器12と、水加熱ヒータ42を有する構成であったが、この態様に限定されるものではない。
例えば、上述した実施形態に係る加熱側熱媒体回路40において、冷凍サイクル装置10の放熱器12だけが熱源装置として配置されている構成としても良いし、水加熱ヒータ42だけが熱源装置として配置されている構成としても良い。
又、本発明における熱源装置としては、熱媒体回路を循環する熱媒体を加熱することができればよく、冷凍サイクル装置10の放熱器12や水加熱ヒータ42とは異なる種々の装置を適用することができる。
(4)又、熱媒体回路における熱源装置(例えば、放熱器12や水加熱ヒータ42)等の配置は、図3〜図6に示す配置に限定されるものではない。熱媒体回路における各構成機器の配置は、HV走行モードのように、動力装置の作動を前提とするモードでは、動力装置を介して、ヒータコアを循環する経路とし、EV走行モードのように、動力装置の作動を必要としないモードでは、熱源装置を介してヒータコアを循環する経路とするように構成されていれば、適宜変更することができる。
例えば、加熱側熱媒体回路40において、放熱器12や水加熱ヒータ42等の熱源装置を、冷却水流れに関してヒータコア43の下流側に配置することも可能である。
(5)そして、上述した実施形態においては、本発明に係る流量調整部を、三方弁からなる流量調整弁47を含む構成としていたが、この構成に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態における流量調整弁47を、複数の弁(例えば、逆止弁や開閉弁)によって構成することも可能である。