以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の実施形態において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
先ず、本発明の第1実施形態について、図1〜図6を参照しつつ説明する。第1実施形態に係る車両用空調装置1は、内燃機関(即ち、エンジンENG)、及び、走行用電動モータから走行用の駆動力を得るハイブリッド車両に適用されている。
当該車両用空調装置1は、ハイブリッド車両における車室内の空調を行う機能と、ハイブリッド車両に搭載されたエンジンENG及びインバータINVを冷却する機能を有している。
第1実施形態に係る車両用空調装置1の具体的構成について、図1〜図3を参照しつつ説明する。図1に示すように、当該車両用空調装置1は、冷凍サイクル装置10と、室内空調ユニット30と、空調制御装置40と、エンジン冷却水回路70と、インバータ冷却水回路80を有している。
そして、当該車両用空調装置1において、冷凍サイクル装置10は、暖房モードの冷媒回路、除湿暖房モードの冷媒回路、及び冷房モードの冷媒回路へ切り替え可能に構成されている。
ここで、冷房モードは、送風空気を冷却して車室内へ吹き出す運転モードである。暖房モードは、送風空気を加熱して車室内へ吹き出す運転モードである。又、除湿暖房モードは、冷却されて除湿された送風空気を再加熱して車室内へ吹き出す運転モードである。
尚、図1では、冷房モードの冷媒回路における冷媒の流れを白抜き矢印で示し、暖房モードの冷媒回路における冷媒の流れを黒塗り矢印で示している。又、除湿暖房モードの冷媒回路における冷媒の流れを斜線ハッチング付き矢印で示している。
この冷凍サイクル装置10では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力Pdが冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、冷媒としてHFO系冷媒(例えば、R1234yf)等を採用してもよい。更に、冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
図1に示すように、冷凍サイクル装置10は、圧縮機11、室内凝縮器12、第1膨張弁15a、第2膨張弁15b、室外熱交換器16、逆止弁17、室内蒸発器18、蒸発圧力調整弁19、アキュムレータ20、第1開閉弁21、第2開閉弁22を有している。
圧縮機11は、冷凍サイクル装置10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。当該圧縮機11は、本発明における圧縮機に相当する。そして、圧縮機11は、車両ボンネット内に配置されている。
圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて駆動する電動圧縮機として構成されている。この圧縮機構としては、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用することができる。
圧縮機11を構成する電動モータは、後述する空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御される。この電動モータとしては、交流モータ、直流モータの何れの形式を採用してもよい。そして、空調制御装置40が電動モータの回転数を制御することによって、圧縮機構の冷媒吐出能力が変更される。従って、電動モータが圧縮機構の吐出能力変更部を構成している。
圧縮機11の吐出口には、室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、暖房モード時及び除湿暖房モード時に、送風空気を加熱する加熱用熱交換器として機能する。
即ち、室内凝縮器12は、暖房モード時及び除湿暖房モード時に、圧縮機11から吐出された高温高圧の吐出冷媒と後述する室内蒸発器18を通過した送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する。室内凝縮器12は、後述する室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されている。
室内凝縮器12の冷媒出口には、第1三方継手13aの1つの流入出口側が接続されている。第1三方継手13aのような三方継手は、冷凍サイクル装置10において、分岐部或いは合流部としての機能を果たす。
例えば、除湿暖房モード時の第1三方継手13aでは、3つの流入出口のうち1つが流入口として用いられ、残りの2つが流出口として用いられる。従って、除湿暖房モード時の第1三方継手13aは、1つの流入口から流入した冷媒の流れを分岐して2つの流出口から流出させる分岐部としての機能を果たす。これらの三方継手は、複数の配管を接合して形成してもよいし、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けて形成してもよい。
更に、冷凍サイクル装置10は、後述するように、第2三方継手13b〜第4三方継手13dを備えている。第2三方継手13b〜第4三方継手13dの基本的構成は、第1三方継手13aと同様である。例えば、除湿暖房モード時の第4三方継手13dでは、3つの流入出口のうち2つが流入口として用いられ、残りの1つが流出口として用いられる。従って、除湿暖房モード時の第4三方継手13dは、2つの流入口から流入した冷媒を合流させて1つの流出口から流出させる合流部としての機能を果たす。
そして、第1三方継手13aの別の流入出口には、第1冷媒通路14aが接続されている。第1冷媒通路14aは、室内凝縮器12から流出した冷媒を、室外熱交換器16の冷媒入口(即ち、流入口16a)側へ導く。
又、第1三方継手13aのさらに別の流入出口には、第2冷媒通路14bが接続されている。第2冷媒通路14bは、室内凝縮器12から流出した冷媒を、後述する第3冷媒通路14cに配置された第2膨張弁15bの入口側(具体的には、第3三方継手13cの1つの流入出口)へ導く。
第1冷媒通路14aには、第1膨張弁15aが配置されている。第1膨張弁15aは、暖房モード時及び除湿暖房モード時に、室内凝縮器12から流出した冷媒を減圧させる。第1膨張弁15aは、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の絞り開度を変化させるステッピングモータからなる電動アクチュエータとを有する可変絞り機構である。
更に、第1膨張弁15aは、絞り開度を全開にすることによって、冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能付きの可変絞り機構として構成されている。第1膨張弁15aは、空調制御装置40から出力される制御信号(制御パルス)によって、その作動が制御される。
第1膨張弁15aの出口側には、室外熱交換器16の冷媒入口(即ち、流入口16a)側が接続されており、車両ボンネット内の車両前方側に配置されている。室外熱交換器16は、第1膨張弁15aから流出した冷媒と図示しない送風ファンから送風された車室外空気(即ち、外気OA)とを熱交換させるものである。送風ファンは、空調制御装置40から出力される制御電圧によって回転数(送風能力)が制御される電動送風機である。
具体的には、室外熱交換器16は、暖房モード時においては、外気から吸熱する吸熱器として機能する。冷房モード時及び除湿暖房モード時においては、室外熱交換器16は、外気OAへ放熱する放熱器として機能する。即ち、室外熱交換器16は、本発明における放熱器として機能する。
図2に示すように、室外熱交換器16は、冷媒入口としての流入口16aと、冷媒出口としての流出口16bとを有している。流入口16aは、室外熱交換器16の上部に配置されており、第1冷媒通路14aを流れた冷媒が流入する部分である。流出口16bは、室外熱交換器16の下部に配置されており、第2三方継手13bへ向かって冷媒が流出する部分である。
そして、冷媒は、図2における冷媒流れRとして示すように、流入口16aを介して室外熱交換器16内に流入すると、室外熱交換器16の熱交換部を構成する扁平チューブに沿って流れ、流出口16bから外部へ流出する。この時、室外熱交換器16では、扁平チューブ内を流れる冷媒と、車両の前方から後方に向かって流れる外気OAとの間で熱交換が行われる。
室外熱交換器16の冷媒出口側には、第2三方継手13bの1つの流入出口が接続されている。第2三方継手13bの別の流入出口には、第3冷媒通路14cが接続されている。第3冷媒通路14cは、室外熱交換器16から流出した冷媒を、室内蒸発器18の冷媒入口側へ導く。
又、第2三方継手13bのさらに別の流入出口には、第4冷媒通路14dが接続されている。第4冷媒通路14dは、室外熱交換器16から流出した冷媒を、後述するアキュムレータ20の入口側(具体的には、第4三方継手13dの1つの流入出口)へ導く。
第3冷媒通路14cには、逆止弁17、第3三方継手13c、並びに、第2膨張弁15bが、冷媒流れに対してこの順に配置されている。逆止弁17は、冷媒が第2三方継手13b側から室内蒸発器18側へ向かう流れを許容し、その逆側への流れを防止するものである。第3三方継手13cには、前述した第2冷媒通路14bが接続されている。
第2膨張弁15bは、室外熱交換器16から流出して室内蒸発器18へ流入する冷媒を減圧させる。第2膨張弁15bは、本発明における減圧部として機能する。第2膨張弁15bの基本的構成は、第1膨張弁15aと同様である。更に、第2膨張弁15bは、絞り開度を全閉した際にこの冷媒通路を閉塞する全閉機能付きの可変絞り機構で構成されている。
従って、第1実施形態に係る冷凍サイクル装置10では、第2膨張弁15bを全閉として第3冷媒通路14cを閉じることによって、冷媒回路を切り替えることができる。換言すると、第2膨張弁15bは、冷媒減圧装置としての機能を果たすと共に、サイクルを循環する冷媒の冷媒回路を切り替える冷媒回路切替装置としての機能を兼ね備えている。
室内蒸発器18は、冷房モード時及び除湿暖房モード時に、冷却用熱交換器として機能する。即ち、室内蒸発器18は、冷房モード時及び除湿暖房モード時に、第2膨張弁15bから流出した冷媒と室内凝縮器12通過前の送風空気とを熱交換させる。従って、室内蒸発器18は、本発明における蒸発器に相当する。
室内蒸発器18では、第2膨張弁15bにて減圧された冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する。室内蒸発器18は、室内空調ユニット30のケーシング31内のうち、室内凝縮器12の送風空気流れ上流側に配置されている。
室内蒸発器18の冷媒出口には、蒸発圧力調整弁19の流入口側が接続されている。蒸発圧力調整弁19は、室内蒸発器18の着霜(フロスト)を抑制するために、室内蒸発器18における冷媒蒸発圧力(即ち、低圧側冷媒圧力)を着霜抑制圧力以上に調整する機能を果たす。換言すると、蒸発圧力調整弁19は、室内蒸発器18における冷媒蒸発温度Teを予め定められた着霜抑制温度以上に調整する機能を果たす。
図1に示すように、蒸発圧力調整弁19の出口側には、第4三方継手13dが接続されている。又、上述したように、第4三方継手13dにおける他の流入出口には、第4冷媒通路14dが接続されている。そして、第4三方継手13dのさらに別の流入出口には、アキュムレータ20の入口側が接続されている。
アキュムレータ20は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰冷媒を蓄える気液分離器である。アキュムレータ20の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。従って、アキュムレータ20は、圧縮機11に液相冷媒が吸入されることを抑制し、圧縮機11における液圧縮を防止する機能を果たす。
又、第2三方継手13bと第4三方継手13dとを接続する第4冷媒通路14dには、第1開閉弁21が配置されている。第1開閉弁21は、電磁弁によって構成されている。そして、第1開閉弁21は、第4冷媒通路14dを開閉することによって冷媒回路を切り替える冷媒回路切替装置として機能する。第1開閉弁21は、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
同様に、第1三方継手13aと第3三方継手13cとを接続する第2冷媒通路14bには、第2開閉弁22が配置されている。第2開閉弁22は、第1開閉弁21と同様に、電磁弁によって構成されている。第2開閉弁22は、第2冷媒通路14bを開閉することによって冷媒回路を切り替える冷媒回路切替装置として機能する。
次に、車両用空調装置1を構成する室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、冷凍サイクル装置10によって温度調整された送風空気を車室内へ吹き出すためのものである。この室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。
図1に示すように、室内空調ユニット30は、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、室内蒸発器18、室内凝縮器12等を収容して構成されている。ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成するものである。ケーシング31は、或る程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。
ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、内外気切替装置33が配置されている。内外気切替装置33は、ケーシング31内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する。
具体的には、内外気切替装置33は、ケーシング31内へ内気を導入させる内気導入口及び外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を連続的に変化させることができる。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
そして、内外気切替装置33の送風空気流れ下流側には、送風機(ブロワ)32が配置されている。この送風機32は、内外気切替装置33を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する。
送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機である。送風機32における遠心多翼ファンの回転数(送風量)は、空調制御装置40から出力される制御電圧によって制御される。
送風機32の送風空気流れ下流側には、室内蒸発器18及び室内凝縮器12が、送風空気流れに対して、この順に配置されている。換言すると、室内蒸発器18は、室内凝縮器12よりも送風空気流れ上流側に配置されている。
又、ケーシング31内には、冷風バイパス通路35が形成されている。冷風バイパス通路35は、室内蒸発器18を通過した送風空気を、室内凝縮器12を迂回させて下流側へ流す為の通路である。
室内蒸発器18の送風空気流れ下流側であって、且つ、室内凝縮器12の送風空気流れ上流側には、エアミックスドア34が配置されている。エアミックスドア34は、室内蒸発器18通過後の送風空気のうち室内凝縮器12を通過させる風量割合を調整する際に用いられる。
従って、車両用空調装置1は、冷風バイパス通路35を全開開度とし、エアミックスドア34により室内凝縮器12へ向かう送風空気の流路を全閉することで、室内凝縮器12における熱交換量を最小値にすることができる。
又、室内凝縮器12の送風空気流れ下流側には、混合空間が設けられている。混合空間では、室内凝縮器12にて加熱された送風空気と、冷風バイパス通路35を通過して室内凝縮器12にて加熱されていない送風空気とが混合される。更に、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、複数の開口穴が配置されている。混合空間にて混合された送風空気(空調風)は、これらの開口穴を介して、空調対象空間である車室内へ吹き出される。
これらの開口穴としては、具体的に、フェイス開口穴、フット開口穴、デフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出す為の開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出す為の開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出す為の開口穴である。
更に、フェイス開口穴、フット開口穴及びデフロスタ開口穴の送風空気流れ下流側は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口及びデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。従って、エアミックスドア34が、室内凝縮器12を通過させる風量と冷風バイパス通路35を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間にて混合される空調風の温度が調整されて、各吹出口から車室内へ吹き出される空調風の温度が調整される。
つまり、エアミックスドア34は、車室内へ送風される空調風の温度を調整する温度調整部としての機能を果たす。エアミックスドア34は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータによって駆動される。この電動アクチュエータは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
又、フェイス開口穴、フット開口穴、及びデフロスタ開口穴の送風空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス開口穴の開口面積を調整するフェイスドア、フット開口穴の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ開口穴の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替ドアを構成する。フェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、それぞれリンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されており、連動して回転操作される。この電動アクチュエータも、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
吹出口モード切替ドアによって切り替えられる吹出口モードとしては、具体的に、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード等がある。
フェイスモードは、フェイス吹出口を全開にしてフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。バイレベルモードは、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。フットモードは、フット吹出口を全開にしてフット吹出口から車室内乗員の足元に向けて送風空気を吹き出す吹出口モードである。
更に、乗員が、操作パネル60に設けられた吹出モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタモードとすることもできる。デフロスタモードは、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出す吹出口モードである。
図示は省略するが、車室内に設けられた送風空気の吹出口は、車室内におけるシートの配置にあわせて複数個所に配置されている。車室内のシートとしては、例えば、運転席、助手席、後部座席等が含まれている。この場合、送風空気の吹出口には、運転席側の吹出口と、助手席側の吹出口、後部座席側の吹出口が含まれている。
当該車両用空調装置1は、図3に示すように、これらのシート毎に吹出口における送風量を調整する為の送風調整機構36を有している。送風調整機構36は、各吹出口の上流側にあたるダクトの内部において、ダクト内の流路を開閉可能に配置されたドア部材と、当該ドア部材を作動させる為の駆動モータを有して構成されている。
従って、当該車両用空調装置1によれば、送風調整機構36の作動を制御することによって、送風空気の風量をシート毎に調整することができる。例えば、当該車両用空調装置1によれば、助手席及び後部座席側の吹出口における送風空気の風量を抑え、運転席側の吹出口における送風空気の風量を増大させることも可能となる。
即ち、当該送風調整機構36は、車室内に対する空調風の送風態様を変更することができ、本発明における送風機構部に相当する。
エンジン冷却水回路70は、車両に搭載されたエンジンENGを冷却する為に、熱媒体であるエンジン冷却水を循環させる回路であり、図1に示すように、熱交換器であるエンジンラジエータ71と、図示しない冷却水ポンプとを有している。
エンジンラジエータ71は、エンジン冷却水回路70を循環する熱媒体であるエンジン冷却水と外気とを熱交換させる熱交換器である。図2に示すように、エンジンラジエータ71は、室外熱交換器16に対して導入される外気OAの流れに関して、室外熱交換器16よりも下流側に、間隔を隔てて配置されている。
より具体的には、エンジンラジエータ71は、外気OAの流れの下流側において、室外熱交換器16の流入口16aを含む上側部分を占めるように配置されている。従って、エンジンラジエータ71は、室外熱交換器16で冷媒と熱交換した外気OAに対して、エンジン冷却水の熱を放熱する。そして、冷却水ポンプは、エンジン冷却水を吸入して吐出する電動式の熱媒体ポンプである。
従って、エンジン冷却水回路70は、エンジンENGとエンジンラジエータ71を含む循環流路内を、冷却水ポンプの駆動によってエンジン冷却水を循環させ、エンジンENG及びエンジンラジエータ71で熱交換させる。つまり、エンジン冷却水回路70は、エンジンENGの排熱をエンジン冷却水で吸熱し、この熱をエンジンラジエータ71で放熱させることができる。
エンジン冷却水としては、少なくともエチレングリコール、ジメチルポリシロキサンもしくはナノ流体を含む液体、又は不凍液体が使用可能であるが、冷却対象機器であるエンジンENGの温度条件等に応じて適切なものが用いられている。
インバータ冷却水回路80は、車両に搭載されたインバータINVを含む冷却対象機器を冷却する為に、熱媒体であるインバータ冷却水を循環させる回路であり、熱交換器であるインバータラジエータ81と、図示しない冷却水ポンプとを有している。
インバータINVは、電池から供給された直流電力を交流電力に変換して走行用モータに出力する電力変換部である。インバータINVは、インバータ冷却水回路80によって冷却される冷却対象機器の一つである。インバータ冷却水回路80に配置される冷却対象機器は、インバータINVだけに限定されるものではなく、種々の冷却対象機器がインバータ冷却水回路80に配置されていてもよい。
インバータラジエータ81は、インバータ冷却水回路80を循環する熱媒体であるインバータ冷却水と外気とを熱交換させる熱交換器である。図2に示すように、インバータラジエータ81は、エンジンラジエータ71と同様に、室外熱交換器16に対して導入される外気OAの流れに関して、室外熱交換器16よりも下流側に、間隔を隔てて配置されている。
より具体的には、インバータラジエータ81は、外気OAの流れの下流側において、室外熱交換器16の流出口16bを含む下側部分を占めるように配置されており、エンジンラジエータ71の下方に位置している。従って、インバータラジエータ81は、室外熱交換器16で冷媒と熱交換した外気OAに対して、インバータ冷却水の熱を放熱する。冷却水ポンプは、インバータ冷却水を吸入して吐出する電動式の熱媒体ポンプである。
従って、インバータ冷却水回路80は、インバータINVとインバータラジエータ81を含む循環流路内を、冷却水ポンプの駆動によってインバータ冷却水を循環させ、インバータINV及びインバータラジエータ81で熱交換させる。つまり、インバータ冷却水回路80は、インバータINVの排熱をインバータ冷却水で吸熱し、この熱をインバータラジエータ81で放熱させることができる。
インバータ冷却水としては、エチレングリコールを含む液体、または不凍液体が使用可能であるが、インバータINVを含む冷却対象機器の温度条件等に応じて適切なものが用いられている。
次に、車両用空調装置1の制御系について、図3を参照しつつ説明する。車両用空調装置1は、冷凍サイクル装置10の構成機器や室内空調ユニット30を制御する為の空調制御装置40を有している。
空調制御装置40は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、空調制御装置40は、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行うことで、出力側に接続された圧縮機11、第1膨張弁15a、第2膨張弁15b、第1開閉弁21、第2開閉弁22、送風機32、内外気切替装置33、送風調整機構36等の空調制御機器の作動を制御する。
又、空調制御装置40の入力側には、空調制御用のセンサ群の検出信号が入力される。図3に示すように、空調制御用のセンサ群には、内気温センサ51、外気温センサ52、日射センサ53、吐出温度センサ54、高圧側圧力センサ55、蒸発器温度センサ56、低圧側圧力センサ57、冷媒温度センサ58等が含まれる。
内気温センサ51は、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ52は、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ53は、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。吐出温度センサ54は、圧縮機11吐出冷媒の吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度検出部である。
高圧側圧力センサ55は、室内凝縮器12の出口側冷媒圧力(高圧側冷媒圧力)Pdを検出する高圧側圧力検出部である。蒸発器温度センサ56は、室内蒸発器18における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Teを検出する蒸発器温度検出部である。蒸発器温度センサ56は、室内蒸発器18の熱交換フィン温度を検出している。
ここで、蒸発器温度センサ56として、室内蒸発器18のその他の部位の温度を検出する温度検出部を採用してもよいし、室内蒸発器18を流通する冷媒自体の温度を直接検出する温度検出部を採用してもよい。
低圧側圧力センサ57は、冷凍サイクルの低圧側における冷媒圧力を検出する低圧側圧力検出部であり、圧縮機11の吸入口側における冷媒圧力を、低圧側冷媒圧力Psとして検出する。そして、冷媒温度センサ58は、室外熱交換器16の流出口16bから流出する冷媒の温度を検出する検出部である。
又、空調制御装置40の入力側には、乗員検出部59が接続されている。当該乗員検出部59は、車室内のシートに着座した乗員を検出する為の検出部である。当該乗員検出部59は、運転席、助手席、後部座席の座面部等に配置された着座センサ、各シートに係るシートベルトのロック状態を検出するセンサ等によって構成されている。
従って、空調制御装置40は、乗員検出部59による検出結果に基づいて、車室内におけるどのシートに乗員が着座しているか否かを特定することができる。車室内における乗員は、空調負荷としての側面も有する為、当該乗員検出部59は、本発明における空調負荷特定部の一部を構成する。
尚、乗員検出部59は、上述した着座センサ等のセンサ群に限定されるものではない。車室内の各シートにおける乗員の有無を特定することができれば、種々の態様を採用することができる。例えば、車室内を赤外線カメラ等で撮像し、撮像した画像に対して所定の画像処理を施すことで、車室内の各シートにおける乗員の有無を特定する構成を、乗員検出部59としても良い。
そして、空調制御装置40の入力側には、エンジン冷却水回路70のエンジン冷却水温度センサ72と、インバータ冷却水回路80のインバータ冷却水温度センサ82とが夫々接続されている。
エンジン冷却水温度センサ72は、エンジン冷却水回路70の循環流路の内、エンジンENG側の流出口側からエンジンラジエータ71の流入口側までの範囲に配置されており、エンジン冷却水の温度を検出する。
従って、空調制御装置40は、エンジンENGからエンジン冷却水が吸熱した熱量を推定することができる。当該エンジン冷却水温度センサ72は、本発明に係る熱媒体温度検出部の一つである。
又、インバータ冷却水温度センサ82は、インバータ冷却水回路80の循環流路の内、インバータINV側の流出口からインバータラジエータ81の流入口側までの範囲に配置されており、インバータ冷却水の温度(以下、インバータ冷却水温度TWhv)を検出する。
従って、空調制御装置40は、インバータINVからインバータ冷却水が吸熱した熱量を推定できる。当該インバータ冷却水温度センサ82は、本発明に係る熱媒体温度検出部の一つである。
更に、空調制御装置40の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル60が接続されている。従って、空調制御装置40には、操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。
操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、オートスイッチ、冷房スイッチ(A/Cスイッチ)、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ、吹出モード切替スイッチ等が含まれる。
オートスイッチは、車両用空調装置1の自動制御運転を設定或いは解除する為の入力部である。冷房スイッチは、車室内の冷房を行うことを要求する為の入力部である。風量設定スイッチは、送風機32の風量をマニュアル設定する為の入力部である。温度設定スイッチは、車室内の目標温度である車室内設定温度Tsetを設定する為の入力部である。吹出モード切替スイッチは、吹出モードをマニュアル設定する為の入力部である。
又、空調制御装置40の入力側には、図示しない車両制御装置90が接続されている。この車両制御装置90は、車両用空調装置1が搭載された車両の走行に関する各種制御を担っている。例えば、車両制御装置90は、空調運転の負荷が過剰である場合に、車両走行系を保護する為に、空調負荷低減信号を空調制御装置40へ出力する。
尚、空調制御装置40は、その出力側に接続された各種空調制御機器を制御する制御部(換言すると、制御装置)が一体に構成されたものであるが、それぞれの空調制御機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの空調制御機器の作動を制御する制御部を構成している。
例えば、空調制御装置40のうち、圧縮機11の作動を制御する構成が吐出能力制御部を構成している。又、空調制御装置40のうち、冷媒回路切替装置である第1開閉弁21、第2開閉弁22等の作動を制御する構成が冷媒回路制御部を構成している。
又、空調制御装置40のうち、エンジンラジエータ71よるエンジンENGの冷却性能又は、インバータラジエータ81によるインバータINVの冷却性能が予め定められた基準よりも低いか否かを判定する構成が機器冷却判定部40aを構成している。
そして、空調制御装置40のうち、インバータラジエータ81等による冷却性能が所定の基準よりも低い場合に、室外熱交換器16における目標過冷却度を大きく設定する構成が目標過冷却度特定部40bを構成している。空調制御装置40のうち、減圧装置である第1膨張弁15a及び第2膨張弁15bの作動を制御する構成が減圧制御部40cを構成している。
又、空調制御装置40のうち、乗員検出部59等を制御して、前記車室内における空調負荷に応じて、前記車室内における快適性を維持する構成が空調制御部40dを構成している。当該空調制御装置40のうち、内気温センサ51、外気温センサ52等の検出結果から、室内蒸発器18にて熱交換される吸込空気の温度を特定する構成が吸込温度特定部40eを構成する。
そして、空調制御装置40のうち、車両制御装置90からの空調負荷低減信号を検出したか否かを判定する構成が低減信号検出部40fを構成している。又、送風調整機構36の検出結果に基づいて、車室内の空調負荷である乗員を特定する構成が空調負荷特定部40gを構成している。
続いて、第1実施形態に係る車両用空調装置1の作動について説明する。上述したように、車両用空調装置1では、暖房モード、除湿暖房モード、及び冷房モードの運転を切り替えることができる。そして、これらの各運転モードの切り替えは、空調制御プログラムが実行されることによって行われる。この空調制御プログラムは、操作パネル60のオートスイッチが投入(ON)された際に実行される。
空調制御プログラムのメインルーチンでは、空調制御用のセンサ群の検出信号及び各種空調操作スイッチからの操作信号を読み込む。そして、読み込んだ検出信号及び操作信号の値に基づいて、車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である目標吹出温度TAOを、以下数式F1に基づいて算出する。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×As+C…(F1)
ここで、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気温センサ51によって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気温センサ52によって検出された外気温、Asは日射センサ53によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
更に、操作パネル60の冷房スイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが予め定めた冷房基準温度よりも低くなっている場合には、冷房モードでの運転を実行する。又、操作パネル60の冷房スイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度以上になっている場合には、除湿暖房モードでの運転を実行する。又、冷房スイッチが投入されていない場合には、暖房モードでの運転を実行する。
この空調制御プログラムにより、冷房モードは、主に夏季のように比較的外気温が高い場合に実行される。除湿暖房モードは、主に春季あるいは秋季に実行される。更に、暖房モードは、主に冬季の低外気温時に実行することができる。
更に、空調制御プログラムでは、各運転モード時に応じて、各種制御対象機器の作動状態を決定する。そして、決定した作動状態に応じた制御信号および制御電圧等を各種制御対象機器へ出力する。
(a)暖房モード
暖房モードでは、空調制御装置40が、第1開閉弁21を開き、第2開閉弁22を閉じる。又、空調制御装置40は、第1膨張弁15aについては、減圧作用を発揮する絞り状態とし、第2膨張弁15bについては全閉状態とする。
これにより、暖房モードでは、図1の黒塗り矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→第1膨張弁15a→室外熱交換器16→(第1開閉弁21→)アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒を循環させる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、室内凝縮器12へ流入する冷媒が目標凝縮器温度TCOとなるように、圧縮機11の作動を制御する。目標凝縮器温度TCOは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って上昇するように決定される。さらに、空調制御装置40は、第1膨張弁15aへ流入する冷媒の圧力に基づいて、サイクルのCOPが極大値に近づくように第1膨張弁15aの作動を制御する。又、空調制御装置40は、冷風バイパス通路35が全閉となるようにエアミックスドアを変位させ、室内凝縮器12側の通風路を全開にする。
暖房モードの冷凍サイクル装置10では、室内凝縮器12を放熱器として機能させ、室外熱交換器16を蒸発器として機能させる。そして、室外熱交換器16にて冷媒が蒸発する際に外気から吸熱した熱を室内凝縮器12にて送風空気に放熱する。これにより、送風空気を加熱することができる。
従って、暖房モードでは、室内凝縮器12にて加熱された送風空気を車室内に吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。
(b)除湿暖房モード
除湿暖房モードでは、空調制御装置40が、第1開閉弁21及び第2開閉弁22を開き、第1膨張弁15a及び第2膨張弁15bを絞り状態とする。
これにより、除湿暖房モードでは、図1の斜線ハッチング付き矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→第1膨張弁15a→室外熱交換器16→(第1開閉弁21→)アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒を循環させると共に、圧縮機11→室内凝縮器12→(第2開閉弁22→)第2膨張弁15b→室内蒸発器18→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒を循環させる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、この除湿暖房モードでは、室内凝縮器12から流出した冷媒の流れを第1三方継手13aにて分岐し、分岐された一方の冷媒を第1膨張弁15a→室外熱交換器16→圧縮機11の順に流すと共に、分岐された他方の冷媒を第2膨張弁15b→室内蒸発器18→蒸発圧力調整弁19→圧縮機11の順に流す冷媒回路に切り替えられる。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、室内蒸発器18から吹き出される送風空気が目標蒸発器温度TEOとなるように、圧縮機11の作動を制御する。目標蒸発器温度TEOは、目標吹出温度TAOの低下に伴って低下するように決定される。目標蒸発器温度TEOは、室内蒸発器18の着霜を抑制可能な範囲で決定される。
又、空調制御装置40は、第1膨張弁15aへ流入する冷媒の圧力に基づいて、サイクルのCOPが極大値に近づくように第1膨張弁15a及び第2膨張弁15bの作動を制御する。この際、空調制御装置40は、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、第1膨張弁15aの絞り開度を減少させ、第2膨張弁15bの絞り開度を増加させる。又、空調制御装置40は、冷風バイパス通路35が全閉となるようにエアミックスドアを変位させ、室内凝縮器12側の通風路を全開にする。
この除湿暖房モードでは、室内凝縮器12を放熱器として機能させ、室外熱交換器16及び室内蒸発器18を蒸発器として機能させる。この為、目標吹出温度TAOの上昇に伴って室外熱交換器16の冷媒の飽和温度を低下させて、室外熱交換器16における冷媒の吸熱量を増加させることができる。これにより、室内凝縮器12における冷媒の放熱量を増加させて加熱能力を向上させることができる。
従って、この除湿暖房モードでは、室内蒸発器18にて冷却されて除湿された送風空気を、室内凝縮器12にて再加熱して車室内に吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。更に、室外熱交換器16における冷媒の飽和温度(蒸発温度)を、室内蒸発器18における冷媒の飽和温度(蒸発温度)よりも低下させることができるので、除湿暖房モードにおける送風空気の加熱能力を増加させることができる。
(c)冷房モード
冷房モードでは、空調制御装置40は、第1開閉弁21及び第2開閉弁22を閉じる。又、空調制御装置40は、第1膨張弁15aを全開状態とし、第2膨張弁15bを絞り状態とする。
これにより、冷房モードでは、図1の白抜き矢印に示すように、圧縮機11→(室内凝縮器12→第1膨張弁15a→)室外熱交換器16→(逆止弁17→)第2膨張弁15b→室内蒸発器18→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒を循環させる蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、室内蒸発器18から吹き出される送風空気が目標蒸発器温度TEOとなるように、圧縮機11の作動を制御する。目標蒸発器温度TEOは、目標吹出温度TAOの低下に伴って低下するように決定される。
目標蒸発器温度TEOは、室内蒸発器18の着霜を抑制可能な範囲で決定される。又、空調制御装置40は、冷風バイパス通路35が全開となるようにエアミックスドア34を変位させ、室内凝縮器12側の通風路を全閉にする。
そして、空調制御装置40は、室外熱交換器16の流出口16b側における冷媒の過冷却度SCが目標過冷却度TSCに近づくように、第2膨張弁15bの作動を制御する。当該空調制御装置40は、高圧側圧力センサ55で検出された高圧側冷媒圧力Pdと、冷媒温度センサ58により検出された冷媒温度と、冷凍サイクルを循環する冷媒の物性に基づいて、室外熱交換器16における過冷却度SCを算出する。
空調制御装置40は、算出した過冷却度SCが目標過冷却度TSCに近づくように、第2膨張弁15bの絞り開度を制御する。この点については後に詳細に説明する。
冷房モードの冷凍サイクル装置10では、室外熱交換器16を放熱器として機能させ、室内蒸発器18を蒸発器として機能させる。そして、室内蒸発器18にて冷媒が蒸発する際に送風空気から吸熱した熱を室外熱交換器16にて外気に放熱する。これにより、送風空気を冷却することができる。
従って、冷房モードでは、室内蒸発器18にて冷却された送風空気を車室内に吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
続いて、第1実施形態に係る車両用空調装置1における制御処理について、図面を参照しつつ説明する。図4に示すフローチャートは、空調制御装置40によって、車両用空調装置1の空調運転の実行がなされている間、繰り返し実行される。
尚、上述したように、車両用空調装置1の冷房モード時において、空調制御装置40は、室外熱交換器16の出口側における過冷却度SCが目標過冷却度TSCに近づくように、第2膨張弁15bの絞り開度を制御する。この作動制御を行う際の空調制御装置40は、本発明における減圧制御部として機能する。
図4に示すように、先ず、ステップS1では、運転モードが冷房モードであるか否かが判定される。現時点の運転モードが冷房モードである場合には、ステップS2に進む。一方、現時点の運転モードが冷房モード以外の運転モード(例えば、暖房モードや除湿暖房モード)である場合、そのまま、この制御処理を終了する。
ステップS2においては、エアコン吸込温度Tainが基準吸込温度α以下であるか否かが判定される。ここで、エアコン吸込温度Tainは、エアコン熱負荷が高く、室外熱交換器16の放熱が大きいか否かを判定する為の指標の一例であり、前記ラジエータによる前記冷却対象機器の冷却性能を予め定められた基準に対して相対的に評価する為の指標の一例である。
エアコン吸込温度Tainは、内気温センサ51で検出される内気温Trと、外気温センサ52で検出される外気温Tamと、内外気切替装置33の作動状態(即ち、内気の風量と外気の風量との風量割合)とに基づいて、空調制御装置40によって算出される。この時、空調制御装置40は、吸込温度特定部40eとして機能する。
算出されたエアコン吸込温度Tainが基準吸込温度α以下である場合、室外熱交換器16における放熱は大きくないと判断して、ステップS3に移行する。この基準吸込温度αは、本発明における基準空気温度に相当する。
一方、エアコン吸込温度Tainが基準吸込温度α以下ではない場合、室外熱交換器16における放熱量が大きく、インバータラジエータ81等の冷却性能が不足する状況であると判定して、ステップS4に進む。即ち、ステップ2の判定を行う空調制御装置40は、本発明における機器冷却判定部として機能する。
ステップS3では、冷房効率優先制御が行われる。この場合、冷房モードにおけるエネルギ消費効率を優先する為に、目標過冷却度TSCは、図5に示す制御マップにおける下限線Llと、外気温センサ52で検出した外気温Tamに基づいて特定される。下限線Llは、サイクルの成績係数COPが最も高くなるように定められている。
冷房モードにおけるサイクルの成績係数COPが最も高い状態の目標過冷却度TSCを特定した後、この制御処理を終了する。上述したように、車両用空調装置1の冷房モード時において、空調制御装置40は、室外熱交換器16の出口側における過冷却度SCが目標過冷却度TSCに近づくように、第2膨張弁15bの絞り開度を制御する。
従って、この冷房効率優先制御である場合、車両用空調装置1では、サイクルの成績係数COPが最も高い状態で冷房運転が行われる。
ステップS4では、機器冷却補助制御が行われる。この場合、冷房モードにおけるサイクルの成績係数よりもインバータラジエータ81等における冷却性能の不足を補う為に、目標過冷却度TSCが特定される。
ステップS4では、目標過冷却度は、図5に示す制御マップにおける上限線Lhと、外気温センサ52で検出した外気温Tamに基づいて特定される。当該制御マップにおける上限線Lhは、冷凍サイクル装置10における冷房運転を継続可能な状態で、且つ、室外熱交換器16の出口側における過冷却度ができるだけ大きくなるように決定され、この制御マップにおける下限線Llよりも大きな値を示す。
即ち、上限線Lhは、冷房モード時の成績係数COPの向上よりも、過冷却度SCを大きくとることを優先して定められている。ステップS4を実行する空調制御装置40は、本発明に係る目標過冷却度特定部として機能する。ステップS4にて目標過冷却度TSCを特定した後、ステップS5に移行する。
ここで、ステップS3の冷房効率優先制御における目標過冷却度TSCと、ステップS4の機器冷却補助制御における目標過冷却度TSCの差が及ぼす効果について説明する。上述したように、冷房モードにおいては、インバータラジエータ81等の冷却性能を示す指標であるエアコン吸込温度Tainに応じて、ステップS3又はステップS4にて目標過冷却度TSCが特定される。
そして、第2膨張弁15bの絞り開度を調整することによって、室外熱交換器16の出口側における過冷却度SCが、ステップS3又はステップS4で特定された目標過冷却度TSCに近づくように制御される。
エアコン吸込温度Tainと基準吸込温度αの比較からエアコン熱負荷が低く、室外熱交換器16の放熱がそれほど大きくないと判定された場合、目標過冷却度TSCは、冷房効率優先制御にて、サイクルの成績係数COPが最も高くなるように定められる。
この場合、冷房効率優先制御に係る冷房モードにて、目標過冷却度TSCに近づくように室外熱交換器16の出口側における過冷却度SCを制御すると、図2に示すように、室外熱交換器16の流出口16b側には、過冷却域Rscaが形成される。
一方、エアコン吸込温度Tainと基準吸込温度αの比較から室外熱交換器16における放熱量が大きく、エンジンラジエータ71、インバータラジエータ81の冷却性能が不足する状況であると判定された場合、目標過冷却度TSCは、機器冷却補助制御にて、冷房効率優先制御の場合よりも大きな値に特定される。
つまり、機器冷却補助制御にて特定される目標過冷却度TSCは、冷凍サイクル装置10における冷房運転が継続可能であり、且つ、室外熱交換器16の出口側における過冷却度ができるだけ大きくなるように決定される。
この場合、機器冷却補助制御に係る冷房モードにて、目標過冷却度TSCに近づくように、室外熱交換器16の出口側における過冷却度SCを制御すると、室外熱交換器16の流出口16b側には、過冷却域Rscbが形成される。
上述したように、機器冷却補助制御における目標過冷却度TSCは、冷房効率優先制御における目標過冷却度TSCよりも大きく特定される。従って、図2に示すように、機器冷却補助制御における過冷却域Rscbは、冷房効率優先制御にて特定された目標過冷却度TSCに基づく過冷却域Rscaよりも大きく形成される。
続いて、ステップS3の冷房効率優先制御による冷房運転と、ステップS4の機器冷却補助制御による冷房運転とを、冷房時におけるサイクルの成績係数とラジエータ前面温度Trfの観点にて比較する。
尚、ラジエータ前面温度Trfは、外気OAの流れに関して、室外熱交換器16の下流側であって、エンジンラジエータ71又はインバータラジエータ81の上流側に位置する空間における空気の温度を意味する。
図6に示すように、機器冷却補助制御の場合における成績係数COPは、冷房効率優先制御の場合における成績係数COPよりも低下する。この成績係数COPの低下要因とし
ては、圧縮機11の動力増加に起因するものと考えられ、例えば、外気温Tamが40℃の場合には、約8%低下する。
そして、機器冷却補助制御の場合におけるラジエータ前面温度Trfは、冷房効率優先制御の場合におけるラジエータ前面温度Trfよりも低下し、例えば、外気温Tamが40℃の場合には、約3℃低下する。
このラジエータ前面温度Trfの低下要因としては、室外熱交換器16の出口側における過冷却域Rscaが過冷却域Rscbに増大させたことが挙げられる。過冷却域Rsca、過冷却域Rscbは、室外熱交換器16中の冷媒温度の中で、最も冷媒温度が低い領域である為、ラジエータ(即ち、エンジンラジエータ71、インバータラジエータ81)の前面における空気温度を低く分布させることができるからである。
つまり、機器冷却補助制御においては、ラジエータの前面における空気温度を低くすることで、車室内の冷房運転を継続しつつ、ラジエータによる冷却対象機器に対する冷却性能を向上させることができる。
このように、第1実施形態に係る車両用空調装置1では、エアコン吸込温度Tainと基準吸込温度αの比較から、ラジエータによる冷却対象機器に対する冷却性能が予め定められた基準よりも高いと判断された場合には、ステップS3の冷房効率優先制御にて、目標過冷却度TSCが特定される。
この場合の目標過冷却度TSCは、成績係数COPが極大値になるように決定されている為、成績係数COPが高い状態で、冷房運転を継続することができる。この場合、室外熱交換器16の放熱がそれほど大きくない為、インバータラジエータ81によるインバータINVの冷却を十分に行うことができる。
一方、エアコン吸込温度Tainと基準吸込温度αの比較から、ラジエータによる冷却対象機器に対する冷却性能が予め定められた基準よりも低いと判断された場合には、ステップS4の機器冷却補助制御にて、目標過冷却度TSCが特定される。
この場合の目標過冷却度TSCは、冷凍サイクル装置10における冷房運転が継続可能であり、且つ、室外熱交換器16の出口側における過冷却度が、冷房効率優先制御の場合よりも、できるだけ大きくなるように特定される。
この場合、室外熱交換器16における過冷却域を増大させることで、ラジエータ前面温度Trfを平均的に低下させることができる。これにより、インバータラジエータ81等における熱交換性能の低下を抑制できる為、車両用空調装置1は、この場合におけるインバータINV等の冷却性能不足を、できる限り補うことができる。又、この場合、車両用空調装置1は、冷房効率優先制御の場合に比べて、成績係数COPは低下するものの、冷房運転を継続することができる。
再び図4に戻り、ステップS5以後の制御処理について説明する。ステップS5においては、乗員検出部59の検出結果に基づいて、車室内にて乗員を検出したか否かが判定する。空調負荷の一つである乗員を検出した場合、ステップS6に移行する。そうでない場合は、そのままの状態で当該制御処理を終了する。
ステップS6では、集中空調制御が行われる。当該集中空調制御では、空調制御装置40は、冷房運転と平行して送風調整機構36の作動を制御することで、乗員検出部59にて検出した乗員の着座するシートに対して、空調風を集中して送風させる。
例えば、集中空調制御の具体例として、車室内の乗員として、運転席に着座した運転手が検出された場合について説明する。この場合の集中空調制御の具体的内容としては、空調制御装置40は、送風調整機構36の作動を制御して、乗員のいない助手席側及び後部座席側の吹出口を閉鎖して、運転席側の吹出口から空調風を吹き出すように調整する。
この場合に、空調制御装置40は、室内空調ユニット30における送風機32の送風能力を、乗員という空調負荷に応じて調整する。この具体例の場合、助手席側及び後部座席側の吹出口を閉鎖し、運転席側から空調風を供給する為、全てのシートに送風する場合に比べて、送風機32の送風量を低下させる。
これにより、室内蒸発器18の吸熱量が低減することになる為、室外熱交換器16における放熱量を低減させることができ、インバータラジエータ81等におけるインバータINV等の冷却性能の低下を抑制できる。
集中空調制御では、乗員不在のシートに対する送風を停止して、乗員の着座しているシートに対して集中して空調風の送風を行うことで、乗員の快適性をできるだけ維持することができる。この集中空調制御を実行する空調制御装置40は、本発明における空調制御部として機能する。その後、ステップS6にて集中空調制御を終了すると、そのまま、この制御処理を終了する。
そして、図2に示すように、インバータラジエータ81は、過冷却域が形成される室外熱交換器16の流出口16bに対して外気OAの下流側に配置されている。従って、当該車両用空調装置1によれば、インバータラジエータ81によるインバータINVの冷却性能を担保することができる。
以上説明したように、第1実施形態に係る車両用空調装置1によれば、冷凍サイクル装置10による車室内空調と、エンジン冷却水回路70、インバータ冷却水回路80による冷却対象機器(例えば、エンジンENG、インバータINV)の冷却とを実行することができる。
図2に示すように、この車両用空調装置1において、エンジンラジエータ71、インバータラジエータ81は、室外熱交換器16に対して導入される外気OAの流れに関して、室外熱交換器16よりも下流側に配置されている。従って、室外熱交換器16における放熱量は、エンジンラジエータ71、インバータラジエータ81における冷却対象機器の冷却性能に影響を与える。
この点、この車両用空調装置1によれば、室外熱交換器16の流出口16b側における冷媒の過冷却度SCがエアコン吸込温度Tainによって特定された目標過冷却度TSCに近づくように第2膨張弁15bの制御が行われる。
従って、車両用空調装置1は、冷凍サイクル装置10による車室内空調と、エンジン冷却水回路70、インバータ冷却水回路80による冷却対象機器の冷却とを、冷凍サイクル装置10に係る負荷に応じた適切なバランスで行うことができる。即ち、車両用空調装置1は、第2膨張弁15bの制御を行うことで、エンジンENG、インバータINVの冷却を継続しつつ、車室内空調による快適性を保つことができる。
又、車両用空調装置1は、冷房モードにおいて、機器冷却補助制御が行われた場合、空調負荷としての乗員の有無に応じて、集中空調制御を実行する。これにより、目標過冷却度が大きく設定された場合であっても、車室内の乗員に対して集中して空調風を供給することで、当該乗員の快適性をできるだけ維持しておくことができる。
そして、当該車両用空調装置1においては、インバータラジエータ81等によるインバータINV等の冷却性能が予め定められた基準よりも低いか否かを、エアコン吸込温度Tainと基準吸込温度αとの比較によって判断している。
これにより、当該車両用空調装置1は、インバータラジエータ81等によるインバータINV等の冷却性能に関して、より高い精度で判定することができ、車室内空調と冷却対象機器の冷却とを高い精度で両立させることができる。
又、当該車両用空調装置1においては、ステップS4の機器冷却補助制御にて、冷房効率優先制御時よりも大きな目標過冷却度TSCが設定された場合には、集中空調制御を実行する。
ステップS6の集中空調制御によれば、送風調整機構36等の作動を制御することで、乗員検出部59にて検出された乗員に対して、集中した空調風を供給することができる。つまり、当該車両用空調装置1は、機器冷却補助制御で目標過冷却度TSCが大きく設定された場合でも、乗員の快適性をできるだけ維持することができる。
又、図2に示すように、インバータラジエータ81は、過冷却域が形成される室外熱交換器16の流出口16bに対して外気OAの下流側に配置されており、エンジンラジエータ71は、インバータラジエータ81の上方に配置されている。従って、車両用空調装置1は、エンジンENG、インバータINVのそれぞれに適した態様で、冷却性能を担保することができる。
(第2実施形態)
続いて、上述した第1実施形態とは異なる第2実施形態について、図面を参照しつつ説明する。第2実施形態に係る車両用空調装置1は、目標過冷却度TSCの設定に関する制御処理の内容を除いて、基本的に第1実施形態と同様の構成である。従って、以下の説明において、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
以下、第2実施形態に係る車両用空調装置1が第1実施形態と相違する点について、図7を参照しつつ説明する。第2実施形態に係る冷房モード時においても、空調制御装置40は、室外熱交換器16の出口側における過冷却度SCが目標過冷却度TSCに近づくように、第2膨張弁15bの絞り開度を制御する。
そして、図7に示すフローチャートは、この目標過冷却度TSCを設定する際に、空調制御装置40によって、車両用空調装置1の空調運転の実行がなされている間、繰り返し実行される。第2実施形態に係る制御処理では、ラジエータによる冷却対象機器の冷却性能が予め定められた基準よりも低いか否かを判定する処理内容が、第1実施形態と相違している。
図7に示すように、ステップS11では、運転モードが冷房モードであるか否かが判定される。現時点の運転モードが冷房モードである場合、ステップS12に進む。一方、現時点の運転モードが冷房モード以外である場合、そのまま、この制御処理を終了する。
ステップS12においては、インバータ冷却水温度センサ82で検出されるインバータ冷却水温度TWhvが基準冷却水温度β以下であるか否かが判定される。
ここで、インバータ冷却水温度TWhvは、車両冷却系(即ち、インバータ冷却水回路80等)の冷却負荷が大きいか否かを判定する為の指標の一例であり、インバータラジエータ81によるインバータINVの冷却性能が予め定められた基準よりも低いか否かを判定する為の指標の一つである。
インバータ冷却水温度センサ82で検出されたインバータ冷却水温度TWhvが基準冷却水温度β以下である場合、インバータ冷却水回路80の冷却負荷は大きくないと判断して、ステップS13の冷房効率優先制御に移行する。一方、インバータ冷却水温度TWhvが基準冷却水温度β以下ではない場合、ステップS14の機器冷却補助制御に進む。基準冷却水温度βは、本発明における基準熱媒体温度の一例である。
尚、図7に示すステップS13〜ステップS16の制御処理は、第1実施形態におけるステップS3〜ステップS6に対応する。従って、ステップS13〜ステップS16の処理内容に関する詳細な説明は省略する。
ここで、ステップS13、ステップS14で目標過冷却度TSCを特定する際には、第1実施形態と同様の制御マップを参照して行われる。この場合の制御マップは、図5に示す制御マップと同様に、目標過冷却度TSCと外気温Tamとの関係性を示すように構成されている。しかしながら、下限線Ll及び上限線Lhは、それぞれ、エアコン吸込温度Tainではなく、インバータ冷却水温度TWhvに基づいて定められる。
このように、第2実施形態に係る車両用空調装置1では、インバータラジエータ81によるインバータINVの冷却性能が予め定められた基準よりも高い場合には、ステップS13の冷房効率優先制御にて、目標過冷却度TSCが特定される。
この場合の目標過冷却度TSCは、サイクルの成績係数COPが極大値になるように決定される為、成績係数COPが高い状態で、冷房運転を継続することができる。又、室外熱交換器16の放熱がそれほど大きくない為、インバータラジエータ81等によるインバータINV等の冷却も十分に行うことができる。
一方、インバータラジエータ81によるインバータINVの冷却性能が予め定められた基準よりも低い場合には、ステップS14の機器冷却補助制御にて、目標過冷却度TSCが特定される。
この場合の目標過冷却度TSCは、冷凍サイクル装置10における冷房運転が継続可能であり、且つ、室外熱交換器16の出口側における過冷却度ができるだけ大きくなるように決定される。従って、第2実施形態に係る車両用空調装置1は、冷房効率優先制御の場合に比べて成績係数COPは低下するものの、冷房運転を継続することができる。
又、第2実施形態に係る車両用空調装置1によれば、インバータラジエータ81によるインバータINVの冷却性能に応じて、室外熱交換器16における過冷却域を増大させ、ラジエータ前面温度Trfを平均的に低下させることができる。これにより、インバータラジエータ81におけるインバータINVの冷却性能を補うことができ、エンジンENG等の冷却性能不足に起因するパワーセーブ等の制限を受けることを防止できる。
そして、第2実施形態に係る車両用空調装置1によれば、ステップS14の機器冷却補助制御にて、冷房効率優先制御時よりも大きな目標過冷却度TSCが設定された場合、集中空調制御を実行する。
ステップS16の集中空調制御では、送風調整機構36等の作動を制御することで、乗員検出部59にて検出された乗員に対して、集中した空調風を供給することができる。つまり、当該車両用空調装置1は、機器冷却補助制御で目標過冷却度TSCが大きく設定された場合でも、乗員の快適性をできるだけ維持することができる。
以上説明したように、第2実施形態に係る車両用空調装置1によれば、第1実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、第1実施形態と同様に得ることができる。
第2実施形態に係る車両用空調装置1においては、インバータラジエータ81によるインバータINVの冷却性能が予め定められた基準よりも低いか否かを、インバータ冷却水温度センサ82で検出されたインバータ冷却水温度TWhvと基準冷却水温度βとの比較によって判断している。
これにより、当該車両用空調装置1は、インバータラジエータ81によるインバータINVの冷却性能に関して、より高い精度で判定することができ、車室内空調と冷却対象機器の冷却とを高い精度で両立させることができる。
又、第2実施形態においても、インバータラジエータ81は、過冷却域が形成される室外熱交換器16の流出口16bに対して外気OAの下流側に配置されている。従って、車両用空調装置1は、室外熱交換器16の過冷却域によって、インバータラジエータ81によるインバータINVの冷却性能を担保することができる。
(第3実施形態)
続いて、上述した各実施形態とは異なる第3実施形態について、図面を参照しつつ説明する。第3実施形態に係る車両用空調装置1は、室内蒸発器18に対するエンジンラジエータ71、インバータラジエータ81の配置及び制御処理の内容を除いて、基本的に上述した実施形態と同様の構成である。従って、以下の説明において、上述した実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
以下、第3実施形態に係る車両用空調装置1が第1実施形態と相違する点について、図8、図9を参照しつつ説明する。
先ず、第3実施形態に係る車両用空調装置1における室外熱交換器16、エンジンラジエータ71、インバータラジエータ81の配置について、図8を参照しつつ説明する。
第3実施形態に係る車両用空調装置1において、エンジンラジエータ71及びインバータラジエータ81は、室外熱交換器16に対して導入される外気OAの流れに関して、室外熱交換器16よりも下流側に、間隔を隔てて配置されている。
図8に示すように、第3実施形態に係るインバータラジエータ81は、外気OAの流れの下流側において、室外熱交換器16の流入口16aを含む上側部分を占めるように配置されている。
一方、第3実施形態に係るエンジンラジエータ71は、外気OAの流れの下流側において、室外熱交換器16の流出口16bを含む下側部分を占めるように配置されており、インバータラジエータ81の下方に位置している。従って、エンジンラジエータ71は、冷房運転時における室外熱交換器16の過冷却域に対して、外気OAの流れの下流側にあたる位置に配置されている。
これにより、第3実施形態によれば、冷房運転時に室外熱交換器16の過冷却域を制御することで、エンジンラジエータ71によるエンジンENGの冷却性能を、より大きく変化させることが可能となる。
第3実施形態に係る車両用空調装置1において、空調制御装置40は、冷房モード時における室外熱交換器16の出口側における過冷却度SCが目標過冷却度TSCに近づくように、第2膨張弁15bの絞り開度を制御する。
図9に示すフローチャートは、この目標過冷却度TSCを設定する際に、空調制御装置40によって、車両用空調装置1の空調運転の実行がなされている間、繰り返し実行される。第3実施形態に係る制御処理では、ラジエータによる冷却対象機器の冷却性能が予め定められた基準よりも低いか否かを判定する処理内容が、上述した実施形態と相違している。
ステップS21では、運転モードが冷房モードであるか否かが判定される。現時点の運転モードが冷房モードである場合、ステップS22に進む。一方、現時点の運転モードが冷房モード以外である場合、そのまま、この制御処理を終了する。
ステップS22においては、エンジン冷却水温度センサ72でエンジン冷却水温度TWegが基準冷却水温度γ以下であるか否かが判定される。
ここで、エンジン冷却水温度TWegは、車両冷却系(即ち、エンジン冷却水回路70等)の冷却負荷が大きいか否かを判定する為の指標の一例であり、エンジンラジエータ71によるエンジンENGの冷却性能が予め定められた基準よりも低いか否かを判定する為の指標の一つである。
エンジン冷却水温度センサ72で検出されたエンジン冷却水温度TWegが基準冷却水温度γ以下である場合、エンジン冷却水回路70の冷却負荷は大きくないと判断して、ステップS23の冷房効率優先制御に移行する。一方、エンジン冷却水温度TWegが基準冷却水温度γ以下ではない場合、ステップS24の機器冷却補助制御に進む。基準冷却水温度γは、本発明における基準熱媒体温度の一例である。
尚、図9に示すステップS23〜ステップS26の制御処理は、第1実施形態におけるステップS3〜ステップS6に対応する。従って、ステップS23〜ステップS26の処理内容に関する詳細な説明は省略する。
ここで、ステップS23、ステップS24で目標過冷却度TSCを特定する際には、上述した実施形態と同様の制御マップを参照して行われる。この場合の制御マップは、図5に示す制御マップと同様に、目標過冷却度TSCと外気温Tamとの関係性を示すように構成されている。しかしながら、下限線Ll及び上限線Lhは、それぞれ、エアコン吸込温度Tain、インバータ冷却水温度TWhvではなく、エンジン冷却水温度TWegに基づいて定められる。
このように、第3実施形態に係る車両用空調装置1では、エンジンラジエータ71によるエンジンENGの冷却性能が予め定められた基準よりも高い場合には、ステップS23の冷房効率優先制御にて、目標過冷却度TSCが特定される。
この場合の目標過冷却度TSCは、サイクルの成績係数COPが極大値になるように決定される為、成績係数COPが高い状態で、冷房運転を継続することができる。又、室外熱交換器16の放熱がそれほど大きくない為、エンジンラジエータ71によるエンジンENGの冷却も十分に行うことができる。
一方、エンジンラジエータ71によるエンジンENGの冷却性能が予め定められた基準よりも低い場合には、ステップS24の機器冷却補助制御にて、目標過冷却度TSCが特定される。
この場合の目標過冷却度TSCは、冷凍サイクル装置10における冷房運転が継続可能であり、且つ、室外熱交換器16の出口側における過冷却度ができるだけ大きくなるように決定される。従って、第3実施形態に係る車両用空調装置1は、冷房効率優先制御の場合に比べて成績係数COPは低下するものの、冷房運転を継続することができる。
又、第3実施形態に係る車両用空調装置1によれば、エンジンラジエータ71によるエンジンENGの冷却性能に応じて、室外熱交換器16における過冷却域を増大させ、ラジエータ前面温度Trfを平均的に低下させることができる。これにより、エンジンラジエータ71におけるエンジンENGの冷却性能を補うことができ、エンジンENG等の冷却性能不足に起因するパワーセーブ等の制限を受けることを防止できる。
そして、第3実施形態に係る車両用空調装置1によれば、ステップS24の機器冷却補助制御にて、冷房効率優先制御時よりも大きな目標過冷却度TSCが設定された場合、集中空調制御を実行する。
ステップS26の集中空調制御では、送風調整機構36等の作動を制御することで、乗員検出部59にて検出された乗員に対して、集中した空調風を供給することができる。つまり、当該車両用空調装置1は、機器冷却補助制御で目標過冷却度TSCが大きく設定された場合でも、乗員の快適性をできるだけ維持することができる。
以上説明したように、第3実施形態に係る車両用空調装置1によれば、上述した実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、上述した実施形態と同様に得ることができる。
第3実施形態に係る車両用空調装置1においては、エンジンラジエータ71によるエンジンENGの冷却性能が予め定められた基準よりも低いか否かを、エンジン冷却水温度センサ72で検出されたエンジン冷却水温度TWegと基準冷却水温度γとの比較によって判断している。
これにより、当該車両用空調装置1は、エンジンラジエータ71によるエンジンENGの冷却性能に関して、より高い精度で判定することができ、車室内空調と冷却対象機器の冷却とを高い精度で両立させることができる。
又、図8に示すように、第3実施形態に係るエンジンラジエータ71は、過冷却域が形成される室外熱交換器16の流出口16bに対して外気OAの下流側に配置されている。従って、車両用空調装置1は、室外熱交換器16の過冷却域によって、エンジンラジエータ71によるエンジンENGの冷却性能を担保することができる。
(第4実施形態)
続いて、上述した各実施形態とは異なる第4実施形態について、図面を参照しつつ説明する。第4実施形態に係る車両用空調装置1は、制御処理の内容を除いて、基本的に上述した第1実施形態と同様の構成である。従って、以下の説明において、上述した実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
以下、第4実施形態に係る車両用空調装置1が第1実施形態と相違する点について、図10を参照しつつ説明する。第4実施形態に係る冷房モード時においても、空調制御装置40は、室外熱交換器16の出口側における過冷却度SCが目標過冷却度TSCに近づくように、第2膨張弁15bの絞り開度を制御する。
そして、図10に示すフローチャートは、この目標過冷却度TSCを設定する際に、空調制御装置40によって、車両用空調装置1の空調運転の実行がなされている間、繰り返し実行される。
図10に示すように、先ず、ステップS31では、運転モードが冷房モードであるか否かが判定される。現時点の運転モードが冷房モードである場合には、ステップS32に進む。一方、現時点の運転モードが冷房モード以外である場合、そのまま、この制御処理を終了する。
ステップS32においては、車両制御装置90から出力される空調負荷低減信号が未検出であるか否かが判定される。上述したように、空調負荷低減信号は、車両用空調装置1による空調運転の負荷が過剰である場合に、車両制御装置90から車両走行系を保護する為に出力される信号である。このステップS32を実行する空調制御装置40は、本発明における低減信号検出部40fとして機能する。
即ち、空調負荷低減信号は、エアコン熱負荷が大きく、室外熱交換器16における放熱が大きい状況であることを示す指標の一例であり、ラジエータによる冷却対象機器の冷却性能が予め定められた基準よりも低いか否かを判定する為の指標の一例である。
空調負荷低減信号が未検出である場合、エアコン熱負荷がそれほど大きくなく、車両冷却系の冷却能力が十分な状況であると判断して、ステップS33に移行する。一方、空調負荷低減信号を検出した場合、エアコン熱負荷が大きく、車両冷却系の冷却能力が不足する状況であると判断して、ステップS34に進む。
尚、図10に示すステップS33〜ステップS36の制御処理は、第1実施形態におけるステップS3〜ステップS6に対応する。従って、ステップS33〜ステップS36の処理内容に関する詳細な説明は省略する。
ここで、ステップS33、ステップS34で目標過冷却度TSCを特定する際には、上述した実施形態と同様の制御マップを参照して行われる。この場合の制御マップは、図5に示す制御マップと同様に、目標過冷却度TSCと外気温Tamとの関係性を示すように構成されている。
このように、第4実施形態に係る車両用空調装置1では、エンジンラジエータ71によるエンジンENGの冷却性能が予め定められた基準よりも高い場合には、ステップS33の冷房効率優先制御にて、目標過冷却度TSCが特定される。
この場合の目標過冷却度TSCは、サイクルの成績係数COPが極大値になるように決定される為、成績係数COPが高い状態で、冷房運転を継続することができる。又、室外熱交換器16の放熱がそれほど大きくない為、インバータラジエータ81によるインバータINVの冷却も十分に行うことができる。
一方、インバータラジエータ81によるインバータINVの冷却性能が予め定められた基準よりも低い場合には、ステップS34の機器冷却補助制御にて、目標過冷却度TSCが特定される。
この場合の目標過冷却度TSCは、冷凍サイクル装置10における冷房運転が継続可能であり、且つ、室外熱交換器16の出口側における過冷却度ができるだけ大きくなるように決定される。従って、第4実施形態に係る車両用空調装置1は、冷房効率優先制御の場合に比べて成績係数COPは低下するものの、冷房運転を継続することができる。
又、第4実施形態に係る車両用空調装置1によれば、空調負荷低減信号を検出したか否かに応じて、室外熱交換器16における過冷却域を増大させ、ラジエータ前面温度Trfを平均的に低下させることができる。これにより、インバータラジエータ81におけるインバータINVの冷却性能を補うことができ、インバータINV等の冷却性能不足に起因するパワーセーブ等の制限を受けることを防止できる。
そして、第4実施形態に係る車両用空調装置1によれば、ステップS34の機器冷却補助制御にて、冷房効率優先制御時よりも大きな目標過冷却度TSCが設定された場合、集中空調制御を実行する。
ステップS36の集中空調制御では、送風調整機構36等の作動を制御することで、乗員検出部59にて検出された乗員に対して、集中した空調風を供給することができる。つまり、当該車両用空調装置1は、機器冷却補助制御で目標過冷却度TSCが大きく設定された場合でも、乗員の快適性をできるだけ維持することができる。
以上説明したように、第4実施形態に係る車両用空調装置1によれば、第1実施形態と共通の構成及び作動から奏される作用効果を、第1実施形態と同様に得ることができる。
第4実施形態に係る車両用空調装置1においては、インバータラジエータ81によるインバータINVの冷却性能が予め定められた基準よりも低いか否かを、空調負荷低減信号を検出したか否かによって判断している。
これにより、当該車両用空調装置1は、車両制御装置90からの制御信号を受信したか否かという単純な制御で判定することができ、空調制御装置40の制御負担を軽減すると同時に、車室内空調と冷却対象機器の冷却とを高い精度で両立させることができる。
又、第4実施形態においても、インバータラジエータ81は、過冷却域が形成される室外熱交換器16の流出口16bに対して外気OAの下流側に配置されている。従って、車両用空調装置1は、室外熱交換器16の過冷却域によって、インバータラジエータ81によるインバータINVの冷却性能を担保することができる。
(他の実施形態)
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能である。例えば、上述した各実施形態を適宜組み合わせても良いし、上述した実施形態を種々変形することも可能である。
(1)上述した実施形態においては、本発明における空調制御部による制御態様の一例として、ステップS6等に示す集中空調制御を挙げていたが、この態様に限定されるものではない。本発明に係る空調制御部による制御態様として、いわゆるECOモードを用いても良い。
このECOモードでは、空調制御装置40は、冷房モードにおいて、室内蒸発器18における冷媒の目標蒸発温度を、乗員が不快にならない範囲で通常時(例えば、冷房効率優先制御時)よりも大きくする運転モードである。乗員が不快にならない範囲とは、車室内の空気に関する情報(例えば、内気温、内気湿度、内外気切替装置33の作動状態等)に応じて定められる。
(2)又、上述の各実施形態に係る冷凍サイクル装置10は、冷房運転、暖房運転、除湿暖房運転を切り替え可能に構成されていたが、この態様に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態における各運転モードに加えて、除霜運転モードに切り替え可能に構成することも可能である。
(3)そして、上述の各実施形態における除湿暖房モードは、室外熱交換器16と室内蒸発器18が冷媒流れに対して並列的に接続される冷凍サイクルにより構成されていたが、この態様に限定されるものではない。
例えば、圧縮機11→室内凝縮器12→第1膨張弁15a→室外熱交換器16→第2膨張弁15b→室内蒸発器18→蒸発圧力調整弁19→アキュムレータ20→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルにより、除湿暖房運転を行うように構成することも可能である。この場合、室外熱交換器16と室内蒸発器18が冷媒流れに対して直列的に接続される冷凍サイクルが構成される。
更に、除湿暖房モードにおいて、室外熱交換器16と室内蒸発器18が冷媒流れに対して並列的に接続される冷凍サイクルと、室外熱交換器16と室内蒸発器18が冷媒流れに対して直列的に接続される冷凍サイクルとを、適宜切り替えるように構成することも可能である。
(4)上述の各実施形態では、空調制御プログラムを実行することによって、各運転モードを切り替えた例を説明したが、各運転モードの切り替えはこれに限定されるものではない。例えば、目標吹出温度TAOおよび外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、各運転モードを切り替えてもよい。
又、操作パネル60に各運転モードを設定する運転モード設定スイッチを設け、当該運転モード設定スイッチの操作信号に応じて、冷房モード、除湿暖房モード及び暖房モードを切り替えるようにしてもよい。
(5)又、上述した第3実施形態においては、エンジンラジエータ71によるエンジンENGの冷却性能が予め定められた基準より低いか否かを判定する際に、エンジン冷却水温度センサ72にて検出されるエンジン冷却水温度TWegを用いていたが、この態様に限定されるものではない。第1実施形態のように、エアコン吸込温度Tainを用いても良いし、第4実施形態のように、空調負荷低減信号を用いてもよい。