以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には同一符号を付してある。
(第1実施形態)
第1実施形態について図1〜図8に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る車両用空調装置1の概略構成図である。
本実施形態では、本発明の冷凍サイクル装置10を内燃機関(エンジン)および走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両の車両用空調装置1に適用している。この冷凍サイクル装置10は、車両用空調装置1において、空調対象空間である車室内へ送風される車室内送風空気を冷却あるいは加熱する機能を果たす。
このため、冷凍サイクル装置10は、車室内を冷房する冷房モード(冷房運転)の冷媒流路、車室内を除湿しながら暖房する除湿暖房モード(除湿運転)の冷媒流路、車室内を暖房する暖房モード(暖房運転)の冷媒流路を切替可能に構成されている。
さらに、この冷凍サイクル装置10では、除湿暖房モードとして、通常時に実行される第1除湿暖房モード、および外気温が極低温時等に実行される第2除湿暖房モードの冷媒流路を切替可能に構成されている。
本実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用しており、高圧冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を越えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。この冷媒には、圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
圧縮機11は、車両のエンジンルーム内に配置されて、冷凍サイクル装置10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機である。圧縮機構11aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用することができる。
電動モータ11bは、制御装置50から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれの形式を採用してもよい。そして、この回転数制御によって、圧縮機構11aの冷媒吐出能力が変更される。従って、本実施形態では、電動モータ11bが圧縮機構11aの吐出能力変更手段を構成する。
圧縮機11の吐出口側には、凝縮器12の入口側が接続されている。凝縮器12は、室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されて、圧縮機11から吐出された吐出冷媒(高圧冷媒)を放熱させて、蒸発器16を通過した車室内送風空気を加熱する放熱器である。
凝縮器12の出口側には第1膨張弁13(第1減圧手段)の入口側が接続されている。第1膨張弁13は、冷媒を減圧させる減圧手段であり、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体を変位させて絞り開度を変化させるステッピングモータからなる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。
第1膨張弁13は、絞り開度を全開する全開機能付きの可変絞り機構で構成されている。つまり、第1膨張弁13は、絞り開度を全開することで冷媒の減圧作用を発揮させないようにすることができる。第1膨張弁13は、制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
第1膨張弁13の出口側には、四方弁14の第1出入口が接続されている。四方弁14は、制御装置から出力される制御電圧によって、その作動が制御される電気式四方弁である。
四方弁14の第2出入口には、室外熱交換器15の一方の出入口側が接続されている。四方弁14の第3出入口には、蒸発器16の一方の出入口側が接続されている。四方弁14の第4出入口には、アキュムレータ17の入口側が接続されている。
四方弁14は、第1膨張弁13の出口側と室外熱交換器15の一方の出入口側と接続すると同時に蒸発器16の一方の出入口側とアキュムレータ17の入口側とを接続する冷媒流路、および第1膨張弁13の出口側と蒸発器16の一方の出入口側とを接続すると同時に室外熱交換器15の一方の出入口側とアキュムレータ17の入口側とを接続する冷媒流路を切り替える機能を果たす。
従って、四方弁14は、サイクルを循環する冷媒の冷媒流路を切り替える切替手段(冷媒流路切替手段)を構成している。
室外熱交換器15は、その内部を流通する冷媒と送風ファン(図示略)から送風された外気とを熱交換させるものである。この室外熱交換器15は、暖房モード時等には、冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発器として機能し、冷房モード時等には、冷媒を放熱させる放熱器として機能する。
室外熱交換器15の他方の出入口側には、第2膨張弁18(第2減圧手段)の一方の出入口側が接続されている。第2膨張弁18は、冷媒を減圧させる減圧手段であり、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体を変位させて絞り開度を変化させるステッピングモータからなる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。
第2膨張弁18は、絞り開度を全開する全開機能付きの可変絞り機構で構成されている。つまり、第2膨張弁18は、絞り開度を全開することで冷媒の減圧作用を発揮させないようにすることができる。第2膨張弁18は、制御装置50から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
第2膨張弁18の他方の出入口側には、蒸発器16の他方の出入口側が接続されている。蒸発器16は、室内空調ユニット30のケーシング31内のうち、凝縮器12の車室内送風空気流れ上流側に配置され、冷房モード時および除湿暖房モード時等にその内部を流通する冷媒を、凝縮器12通過前の車室内送風空気と熱交換させて蒸発させ、吸熱作用を発揮させることにより車室内送風空気を冷却する蒸発器である。
室外熱交換器15の他方の出入口側と第2膨張弁18との間には、三方弁19が接続されている。三方弁19は、室外熱交換器15の他方の出入口側と第2膨張弁18とを接続する冷媒流路と、室外熱交換器15の他方の出入口側と四方弁14の第3出入口(蒸発器16側の出入口)とを接続する冷媒流路とを切り替える電磁弁であり、制御装置から出力される制御信号により、その作動が制御される。
アキュムレータ17は、その内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰冷媒を蓄える気液分離器である。アキュムレータ17の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。従って、アキュムレータ17は、圧縮機11に液相冷媒が吸入されることを抑制し、圧縮機11における液圧縮を防止する機能を果たす。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、凝縮器12および蒸発器16等を収容したものである。
ケーシング31は、車室内送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、車室内空気(内気)と外気とを切替導入する内外気切替装置33が配置されている。
内外気切替装置33には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口が形成されている。さらに、内外気切替装置33の内部には、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドアが配置されている。
内外気切替装置33の空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して導入された空気を車室内に向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)32aを電動モータ32bにて駆動する電動送風機であって、制御装置50から出力される制御信号(制御電圧)によって回転数(送風量)が制御される。なお、遠心式多翼ファン32aは、車室内へ空気を送風する送風手段としての機能を果たす。
送風機32の空気流れ下流側には、蒸発器16、ヒータコア34および凝縮器12が、車室内送風空気の流れに対して、この順に配置されている。換言すると、蒸発器16は、凝縮器12およびヒータコア34に対して、車室内送風空気の流れ方向上流側に配置されている。
ここで、ヒータコア34は、車両走行用の駆動力を出力するエンジンの冷却水と車室内送風空気とを熱交換させる加熱用熱交換器(冷却水空気熱交換器)である。なお、本実施形態のヒータコア34は、凝縮器12に対して車室内送風空気の流れ方向上流側に配置されている。
ケーシング31内には、蒸発器16を通過した空気を、凝縮器12およびヒータコア34を迂回させて流す冷風バイパス通路35が形成されている。
蒸発器16の空気流れ下流側かつ凝縮器12およびヒータコア34の空気流れ上流側には、蒸発器16通過後の空気のうち、凝縮器12を通過させる空気と冷風バイパス通路35を通過させる空気との風量割合を調整するエアミックスドア36が配置されている。
凝縮器12および冷風バイパス通路35の空気流れ下流側には、凝縮器12を通過した空気と冷風バイパス通路35を通過した空気とを混合させる混合空間が設けられている。
ケーシング31の送風空気流れ最下流側には、混合空間にて混合された空調風を、空調対象空間である車室内へ吹き出す吹出口(図示略)が配置されている。具体的には、吹出口としては、車室内の乗員の上半身へ空調風を吹き出すフェイス吹出口、乗員の足元へ空調風を吹き出すフット吹出口、および車両前面窓ガラス内側面へ空調風を吹き出すデフロスタ吹出口が設けられている。
従って、エアミックスドア36が凝縮器12およびヒータコア34を通過させる空気と冷風バイパス通路35を通過させる空気との風量割合を調整することで、混合空間にて混合された空調風の温度が調整され、各吹出口から吹き出される空調風の温度が調整される。なお、エアミックスドア36は、制御装置50から出力される制御信号によって作動するサーボモータ(図示略)によって駆動される。
フェイス吹出口、フット吹出口、およびデフロスタ吹出口の送風空気流れ上流側には、フェイス吹出口の開口面積を調整するフェイスドア(図示略)、フット吹出口の開口面積を調整するフットドア(図示略)、およびデフロスタ吹出口の開口面積を調整するデフロスタドア(図示略)が配置されている。
これらのフェイスドア、フットドア、およびデフロスタドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、リンク機構等を介して、制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御されるサーボモータ(図示略)によって駆動される。
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。制御装置50は、CPU、ROM、RAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種制御機器の作動を制御する。
制御装置50の入力側には、車室内温度Trを検出する内気センサ、外気温Tamを検出する外気センサ、車室内の日射量Tsを検出する日射センサ、室外熱交換器15における冷媒温度(室外熱交換器温度)TOを検出する室外熱交換器冷媒温度検出手段としての室外熱交換器温度センサ51、蒸発器16における冷媒温度(蒸発器温度)TEを検出する蒸発器冷媒温度検出手段としての蒸発器温度センサ52、圧縮機11から吐出された冷媒の温度を検出する吐出温度センサTd、車室内へ吹き出す吹出空気温度(車室内吹出空気温度)TAVを検出する吹出温度検出手段としての吹出空気温度センサ等の種々の空調制御用のセンサ群が接続されている。
図1の例では、室外熱交換器温度センサ51として、室外熱交換器15出口側冷媒の温度を検出する温度センサが設けられ、蒸発器温度センサ52として、蒸発器16の表面温度(フィン温度)を検出する温度センサが設けられている。
室外熱交換器温度センサ51として、室外熱交換器15の表面温度(フィン温度)を検出する温度センサが設けられていてもよい。蒸発器温度センサ52として、蒸発器16出口側冷媒の温度を検出する温度センサが設けられていてもよい。
制御装置50の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル(図示略)が接続され、操作パネルに設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。この操作パネルに設けられた各種操作スイッチとしては、具体的に、室内空調ユニット30にて車室内送風空気の冷却を行うか否かを設定するエアコンスイッチ(A/Cスイッチ)、車室内の設定温度を設定する温度設定スイッチ等が設けられている。
制御装置50は、その出力側に接続された各種制御機器の作動を制御する制御手段が一体に構成されたものであるが、それぞれ制御機器の作動を制御する構成(ソフトウェアおよびハードウェア)が、それぞれの制御機器の作動を制御する制御手段を構成している。
例えば、圧縮機11の電動モータを制御する構成が吐出能力制御手段を構成し、第1膨張弁13を制御する構成が第1絞り制御手段を構成し、第2膨張弁18を制御する構成が第2絞り制御手段を構成し、四方弁14を制御する構成が流路切替制御手段を構成している。
制御装置50のうち四方弁14を制御する構成は、四方弁14とともに、サイクルを循環する冷媒の冷媒流路を切り替える切替手段(冷媒流路切替手段)を構成している。
次に、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動について説明する。本実施形態の車両用空調装置1では、車室内を冷房する冷房モード、車室内を暖房する暖房モード、車室内を除湿しながら暖房する除湿暖房モードに切り替えることができる。
各運転モードの切替制御処理について図2に基づいて説明する。図2は、本実施形態の車両用空調装置1の制御装置50が実行する制御処理の流れを示すフローチャートである。なお、図2のフローチャートは図示しない空調制御のメインルーチンのサブルーチンとして実行される。また、図2の各制御ステップは、制御装置50が有する各種の機能実現手段を構成している。
まず、制御装置50が上述のセンサ群の検出信号および操作パネルの操作信号を読み込み(S10)、読み込んだ検出信号および操作信号の値に基づいて車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である目標吹出温度TAOを、以下の数式F1に基づいて算出する(S20)。従って、本実施形態の制御ステップS20は、目標吹出温度決定手段を構成している。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C…(F1)
なお、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサによって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサによって検出された外気温、Tsは日射センサによって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
次に、操作パネルのA/Cスイッチがオンされているか否かを判定する(S30)。その結果、A/Cスイッチがオフと判定された場合(S30:NO)には、運転モードを、室内空調ユニット30にて車室内送風空気を冷却しない暖房モード(非冷却モード)に決定し(S40)、A/Cスイッチがオンと判定された場合(S30:YES)には、運転モードを、室内空調ユニット30にて車室内送風空気を冷却する冷房モードおよび除湿暖房モードのいずれか(冷却モード)に決定すべくステップS50へ移行する。
ステップS50では、目標吹出温度TAOが予め定められた冷房基準温度αより小さいか否かを判定する。この結果、目標吹出温度TAOが冷房基準温度αよりも低いと判定された場合(S50:YES)には、車室内の冷房を実行するために、運転モードを冷房モードに決定し(S60)、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上であると判定された場合(S50:YES)には、ステップS70へ移行する。
ステップS70では、室外熱交換器温度センサの検出値(室外熱交換器温度TO)から蒸発器温度センサの検出値(蒸発器温度TE)を減じた温度差(=TO−TE)が予め定めた基準値β1(以下、閾値β1という。)を下回っているか否かを判定する。この結果、室外熱交換器温度TOと蒸発器温度TEとの温度差が閾値β1以上と判定された場合(S70:NO)には、車室内への吹出空気の温度調整可能範囲が低温域から高温域の広範囲となる通常時の除湿暖房モードである第1除湿暖房モードに決定し(S80)、室外熱交換器温度TOと蒸発器温度TEとの温度差が閾値β1を下回っていると判定された場合(S70:YES)には、ステップS90へ移行する。
ステップS90では、目標吹出温度TAOから吹出空気温度センサの検出値(車室内吹出空気温度TAV)を減じた温度差(=TAO−TAV)が予め定めた基準値γ1(以下、閾値γ1という。)を上回っているか否かを判定する。
ステップS90の判定処理の結果、目標吹出温度TAOと車室内吹出空気温度TAVとの温度差が閾値γ1以下と判定された場合(S90:NO)には、第1除湿暖房モードに決定し(S80)、目標吹出温度TAOと車室内吹出空気温度TAVとの温度差が閾値γ1を上回っていると判定された場合(S90:YES)には、ステップS100へ移行する。
ステップS100では、蒸発器温度TEから室外熱交換器温度TOを減じた温度差(=TE−TO)が予め定めた基準値β2(以下、閾値β2という。)を下回っているか否かを判定する。この結果、室外熱交換器温度TOと蒸発器温度TEとの温度差が閾値β2以上と判定された場合(S100:NO)には、車室内への吹出空気の温度調整可能範囲が第1除湿暖房モードに比べて高温域となる第2除湿暖房モードに決定し(S110)、室外熱交換器温度TOと蒸発器温度TEとの温度差が閾値β2を下回っていると判定された場合(S100:YES)には、ステップS120へ移行する。
ステップS120では、車室内吹出空気温度TAVから目標吹出温度TAOを減じた温度差(=TAV−TAO)が予め定めた基準値γ2(以下、閾値γ2という。)を上回っているか否かを判定する。
ステップS120の判定処理の結果、車室内吹出空気温度TAVと目標吹出温度TAOとの温度差が閾値γ2を上回っていると判定された場合(S120:YES)には、第1除湿暖房モードに決定し(S80)、車室内吹出空気温度TAVと目標吹出温度TAOとの温度差が閾値γ2以下と判定された場合(S120:NO)には、第2除湿暖房モードに決定する(S110)。
このようにして、各運転モードを、車両用空調装置1の運転環境に応じて、暖房モード、冷房モード、第1除湿暖房モードおよび第2除湿暖房モードを適切に切り替えることができる。
次に、冷房モード、暖房モード、第1除湿暖房モードおよび第2除湿暖房モードにおける作動について説明する。
(A)暖房モード
暖房モードでは、制御装置50が、四方弁14にて第1膨張弁13の出口側と室外熱交換器15の一方の出入口側と接続すると同時に蒸発器16の一方の出入口側とアキュムレータ17の入口側とを接続する。さらに、制御装置50が、三方弁19にて室外熱交換器15の他方の出入口側と四方弁14の第3出入口(蒸発器16側の出入口)とを接続する。これにより、冷凍サイクル装置10では、図1の白抜斜線矢印で示すように冷媒が流れる冷媒回路に切り替えられる。
この冷媒回路の構成で、制御装置50が、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号等に基づいて、制御装置50に接続された各種制御機器の作動状態(各種制御機器へ出力する制御信号)を決定する。
例えば、圧縮機11の冷媒吐出能力、すなわち圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御信号については、以下のように決定される。まず、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置50に記憶された制御マップを参照して、凝縮器12の目標凝縮器温度TCOを決定する。
そして、この目標凝縮器温度TCOと吐出温度センサの検出値との偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いて、車室内へ吹き出される吹出空気温度が目標吹出温度TAOに近づくように圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御信号が決定される。
第1膨張弁13へ出力される制御信号については、第1膨張弁13へ流入する冷媒の過冷却度が、サイクルの成績係数(COP)を最大値に近づけるように予め定められた目標過冷却度に近づくように決定される。
エアミックスドア36のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア36が冷風バイパス通路35を閉塞し、蒸発器16を通過後の送風空気の全流量がヒータコア34および凝縮器12の空気通路を通過するように決定される。
そして、上記の如く決定された制御信号等を各種制御機器へ出力する。その後、操作パネルによって車両用空調装置1の作動停止が要求されるまで、所定の周期毎に運転モードの決定処理→各種制御機器の作動状態の決定→制御信号等の出力といった制御ルーチンが繰り返される。なお、このような制御ルーチンの繰り返しは、他の運転モード時にも同様に行われる。
従って、暖房モード時の冷凍サイクル装置10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が凝縮器12に流入する。凝縮器12に流入した冷媒は、送風機32から送風されて蒸発器16を通過した車室内送風空気と熱交換して放熱する。これにより、車室内送風空気が加熱される。
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13に流入し、第1膨張弁13にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。そして、第1膨張弁13にて減圧された低圧冷媒は、室外熱交換器15に流入して、送風ファンから送風された外気から吸熱する。室外熱交換器15から流出した冷媒は、第2膨張弁18および蒸発器16をバイパスして、アキュムレータ17へ流入して気液分離される。
そして、アキュムレータ17にて分離された気相冷媒が圧縮機11の吸入側から吸入されて再び圧縮機11にて圧縮される。なお、アキュムレータ17にて分離された液相冷媒は、サイクルが要求されている冷凍能力を発揮するために必要としていない余剰冷媒としてアキュムレータ17の内部に蓄えられる。
以上の如く、暖房モードでは、凝縮器12にて圧縮機11から吐出された高圧冷媒の有する熱を車室内送風空気に放熱させるとともに、ヒータコア34にて冷却水が有する熱を車室内送風空気に放熱させて、加熱された車室内送風空気を車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の暖房を実現することができる。
(B)冷房モード
冷房モードでは、制御装置50が、四方弁14にて第1膨張弁13の出口側と室外熱交換器15の一方の出入口側と接続すると同時に蒸発器16の一方の出入口側とアキュムレータ17の入口側とを接続する。そして、制御装置50が、三方弁19にて室外熱交換器15の他方の出入口側と第2膨張弁18とを接続する。さらに、第1膨張弁13の絞り開度を全開状態とする。これにより、冷凍サイクル装置10は、図1の白抜矢印で示すように冷媒が流れる冷媒回路に切り替えられる。
この冷媒回路の構成で、制御装置50が、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号等に基づいて、制御装置50に接続された各種制御機器の作動状態(各種制御機器へ出力する制御信号)を決定する。
例えば、圧縮機11の冷媒吐出能力、すなわち圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御信号については、以下のように決定される。まず、目標吹出温度TAOに基づいて、予め制御装置50に記憶された制御マップを参照して、蒸発器16から吹き出される送風空気の目標蒸発器吹出温度TEOを決定する。
そして、この目標蒸発器吹出温度TEOと蒸発器温度センサの検出値との偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いて蒸発器16を通過した空気の温度が、目標吹出温度TAOに近づくように圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御信号が決定される。
第2膨張弁18へ出力される制御信号については、第2膨張弁18へ流入する冷媒の過冷却度が、サイクルの成績係数(COP)を最大値に近づくように予め定められた目標過冷却度に近づくように決定される。
エアミックスドア36のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア36がヒータコア34および凝縮器12の空気通路を閉塞し、蒸発器16を通過後の送風空気の全流量が冷風バイパス通路35を通過するように決定される。
従って、冷房モード時の冷凍サイクル装置10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が凝縮器12に流入する。この際、エアミックスドア36がヒータコア34および凝縮器12の空気通路を閉塞しているので、凝縮器12に流入した冷媒は、殆ど車室内送風空気と熱交換することなく、凝縮器12から流出する。
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13に流入する。この際、第1膨張弁13の絞り開度を全開状態としているので、凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13にて減圧されることなく、室外熱交換器15に流入する。そして、室外熱交換器15に流入した冷媒は、室外熱交換器15にて送風ファンから送風された外気へ放熱する。
室外熱交換器15から流出した冷媒は、第2膨張弁18へ流入して、第2膨張弁18にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される。第2膨張弁18にて減圧された低圧冷媒は、蒸発器16に流入し、送風機32から送風された車室内送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内送風空気が冷却される。
蒸発器16から流出した冷媒は、アキュムレータ17へ流入して気液分離される。そして、アキュムレータ17にて分離された気相冷媒が圧縮機11の吸入側から吸入されて再び圧縮機11にて圧縮される。なお、アキュムレータ17にて分離された液相冷媒は、サイクルが要求されている冷凍能力を発揮するために必要としていない余剰冷媒としてアキュムレータ17の内部に蓄えられる。
以上の如く、冷房モードでは、エアミックスドア36にてヒータコア34および凝縮器12の空気通路を閉塞しているので、蒸発器16にて冷却された車室内送風空気を車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の冷房を実現することができる。
(C)第1除湿暖房モード
第1除湿暖房モードでは、制御装置50が四方弁14にて第1膨張弁13の出口側と室外熱交換器15の一方の出入口側と接続すると同時に蒸発器16の一方の出入口側とアキュムレータ17の入口側とを接続する。そして、制御装置50が、三方弁19にて室外熱交換器15の他方の出入口側と第2膨張弁18とを接続する。さらに、第1、第2膨張弁13、18を絞り状態または全開状態とする。これにより、冷凍サイクル装置10は、冷房モードと同様に、図1の白抜矢印に示すように冷媒が流れる冷媒回路に切り替えられる。なお、第1除湿暖房モード(第1冷媒流路)では、室外熱交換器15、第2膨張弁18、蒸発器16の順に冷媒が流れることとなる。
この冷媒回路の構成で、制御装置50が、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号等に基づいて、制御装置50に接続された各種制御機器の作動状態(各種制御機器へ出力する制御信号)を決定する。
例えば、圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御信号については、冷房モードと同様に決定される。また、エアミックスドア36のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア36が冷風バイパス通路35を閉塞し、蒸発器16を通過後の送風空気の全流量がヒータコア34および凝縮器12の空気通路を通過するように決定される。
また、第1膨張弁13および第2膨張弁18については、車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である目標吹出温度TAOに応じて変更している。具体的には、制御装置50は、車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である目標吹出温度TAOの上昇に伴って、第1膨張弁13の絞り開度を減少させるとともに、第2膨張弁18の絞り開度を増大させる。これにより、第1除湿暖房モードでは、第1モードから第4モードの4段階のモードを実行する。
(C−1)第1モード
第1モードは、第1除湿暖房モード時に、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上、かつ予め定めた第1基準温度以下となった場合に実行される。
第1モードでは、第1膨張弁13の絞り開度を全開状態とし、第2膨張弁18を絞り状態とする。従って、サイクル構成(冷媒流路)については、冷房モードと全く同じ冷媒流路となるものの、エアミックスドア36が凝縮器12およびヒータコア34側の空気通路を全開状態としているので、サイクルを循環する冷媒の状態については、図3のモリエル線図に示すように変化する。
すなわち、図3に示すように、圧縮機11から吐出された高圧冷媒(a1点)は、凝縮器12へ流入して、蒸発器16にて冷却されて除湿された車室内送風空気と熱交換して放熱する(図3のa1点→a2点)。これにより、車室内送風空気が加熱される。
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13に流入する。この際、第1膨張弁13の絞り開度を全開状態としているので、凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13にて減圧されることなく、室外熱交換器15に流入する。そして、室外熱交換器15に流入した冷媒は、室外熱交換器15にて送風ファンから送風された外気へ放熱する(図3のa2点→a3点)。
室外熱交換器15から流出した冷媒は、第2膨張弁18へ流入して、第2膨張弁18にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される(図3のa3点→a4点)。第2膨張弁18にて減圧された低圧冷媒は、蒸発器16に流入し、送風機32から送風された車室内送風空気から吸熱して蒸発する(図3のa4点→a5点)。これにより、車室内送風空気が冷却される。そして、蒸発器16から流出した冷媒は、冷房モードと同様に、アキュムレータ17→圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
以上の如く、第1除湿暖房モードの第1モード時には、蒸発器16にて冷却され除湿された車室内送風空気を、ヒータコア34および凝縮器12にて加熱して車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
なお、図3中、圧力P1は、蒸発器16における冷媒蒸発温度がフロスト限界温度になるときの蒸発器16における冷媒圧力(フロスト限界圧力)である。第1モードでは、蒸発器16における冷媒圧力がフロスト限界圧力P1を下回らないように圧縮機11の回転数が決定される。
(C−2)第2モード
第2モードは、第1除湿暖房モード時に、目標吹出温度TAOが第1基準温度より高く、かつ予め定めた第2基準温度以下となった場合に実行される。第2モードでは、第1膨張弁13を絞り状態とし、第2膨張弁18の絞り開度を第1モード時よりも増加させた絞り状態とする。従って、第2モードでは、サイクルを循環する冷媒の状態については、図4のモリエル線図に示すように変化する。
すなわち、図4に示すように、圧縮機11から吐出された高圧冷媒(b1点)は、凝縮器12へ流入して、蒸発器16にて冷却されて除湿された車室内送風空気と熱交換して放熱する(図4のb1点→b2点)。これにより、車室内送風空気が加熱される。
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13に流入し、中間圧冷媒となるまで減圧される(図4のb2点→b3点)。そして、第1膨張弁13にて減圧された中間圧冷媒は、室外熱交換器15に流入して、送風ファンから送風された外気へ放熱する(図4のb3点→b4点)。
室外熱交換器15から流出した冷媒は、第2膨張弁18へ流入して、第2膨張弁18にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される(図4のb4点→b5点)。第2膨張弁18にて減圧された低圧冷媒は、蒸発器16に流入し、送風機32から送風された車室内送風空気から吸熱して蒸発する(図4のb5点→b6点)。これにより、車室内送風空気が冷却される。そして、蒸発器16から流出した冷媒は、冷房モードと同様に、アキュムレータ17→圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
以上の如く、第1除湿暖房モードの第2モード時には、第1モードと同様に、蒸発器16にて冷却され除湿された車室内送風空気を、凝縮器12にて加熱して車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
この際、第2モードでは、第1膨張弁13を絞り状態としているので、第1モードに対して、室外熱交換器15へ流入する冷媒の温度を低下させることができる。従って、室外熱交換器15における冷媒の温度と外気温との温度差を縮小して、室外熱交換器15における冷媒の放熱量を減少させることができる。
この結果、第1モード時に対して、凝縮器12における冷媒の放熱量を増加させることができ、第1モードよりも凝縮器12から吹き出される吹出空気の温度を上昇させることができる。
なお、第2モードでは、蒸発器16における冷媒圧力がフロスト限界圧力P1を下回らないように圧縮機11の回転数が決定される。
(C−3)第3モード
第3モードは、第1除湿暖房モード時に、目標吹出温度TAOが第2基準温度より高く、かつ予め定めた第3基準温度以下となった場合に実行される。第3モードでは、第1膨張弁13の絞り開度を第2モード時よりも減少させた絞り状態とし、第2膨張弁18の絞り開度を第2モード時よりも増加させた絞り状態とする。従って、第3モードでは、サイクルを循環する冷媒の状態については、図5のモリエル線図に示すように変化する。
すなわち、図5に示すように、圧縮機11から吐出された高圧冷媒(c1点)は、凝縮器12へ流入して、蒸発器16にて冷却されて除湿された車室内送風空気と熱交換して放熱する(図5のc1点→c2点)。これにより、車室内送風空気が加熱される。
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13に流入し、外気温よりも温度の低い中間圧冷媒となるまで減圧される(図5のc2点→c3点)。そして、第1膨張弁13にて減圧された中間圧冷媒は、室外熱交換器15に流入して、送風ファンから送風された外気から吸熱する(図5のc3点→c4点)。
室外熱交換器15から流出した冷媒は、第2膨張弁18へ流入して、第2膨張弁18にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される(図5のc4点→c5点)。第2膨張弁18にて減圧された低圧冷媒は、蒸発器16に流入し、送風機32から送風された車室内送風空気から吸熱して蒸発する(図5のc5点→c6点)。これにより、車室内送風空気が冷却される。そして、蒸発器16から流出した冷媒は、冷房モードと同様に、アキュムレータ17→圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
以上の如く、第1除湿暖房モードの第3モード時には、第1、第2モードと同様に、蒸発器16にて冷却され除湿された車室内送風空気を、凝縮器12にて加熱して車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
この際、第3モードでは、第2膨張弁18の絞り開度を増加させることによって、室外熱交換器15を吸熱器(蒸発器)として機能させているので、第2モードよりも凝縮器12から吹き出される温度を上昇させることができる。
この結果、第2モードに対して、凝縮器12における冷媒の放熱量を増加させることができ、第2モードよりも凝縮器12から吹き出される吹出空気の温度を上昇させることができる。
なお、第3モードでは、蒸発器16における冷媒圧力がフロスト限界圧力P1を下回らないように圧縮機11の回転数が決定される。
(C−4)第4モード
第4モードは、第1除湿暖房モード時に、目標吹出温度TAOが第3基準温度より高くなった場合に実行される。第4モードでは、第1膨張弁13の絞り開度を第3モード時よりも減少させた絞り状態とし、第2膨張弁18の絞り開度を全開状態とする。従って、第4モードでは、サイクルを循環する冷媒の状態については、図6のモリエル線図に示すように変化する。
すなわち、図6に示すように、圧縮機11から吐出された高圧冷媒(d1点)は、凝縮器12へ流入して、蒸発器16にて冷却されて除湿された車室内送風空気と熱交換して放熱する(図6のd1点→d2点)。これにより、車室内送風空気が加熱される。
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13に流入し、低圧冷媒となるまで減圧される(図6のd2点→d3点)。そして、第1膨張弁13にて減圧された低圧冷媒は、室外熱交換器15に流入して、送風ファンから送風された外気から吸熱する(図6のd3点→d4点)。
室外熱交換器15から流出した冷媒は、第2膨張弁18へ流入する。この際、第2膨張弁18の絞り開度を全開状態としているので、室外熱交換器15から流出した冷媒は、第2膨張弁18にて減圧されることなく、蒸発器16に流入する。
蒸発器16に流入した低圧冷媒は、送風機32から送風された車室内送風空気から吸熱して蒸発する(図6のd4点→d5点)。これにより、車室内送風空気が冷却される。そして、蒸発器16から流出した冷媒は、冷房モードと同様に、アキュムレータ17→圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
以上の如く、第1除湿暖房モードの第4モード時には、第1〜第3モードと同様に、蒸発器16にて冷却され除湿された車室内送風空気を、凝縮器12にて加熱して車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
この際、第4モードでは、第3モードと同様に、室外熱交換器15を吸熱器(蒸発器)として機能させることができるとともに、第3モードよりも第2膨張弁18の絞り開度を増加(全開状態)させているので、室外熱交換器15における冷媒蒸発温度を低下させることができる。従って、第3モードよりも室外熱交換器15における冷媒の温度と外気温との温度差を拡大させて、室外熱交換器15における冷媒の吸熱量を増加させることができる。
この結果、第3モードに対して、凝縮器12における冷媒の放熱量を増加させることができ、第3モードよりも凝縮器12から吹き出される吹出空気の温度を上昇させることができる。
なお、第4モードでは、蒸発器16における冷媒圧力がフロスト限界圧力P1を下回らないように圧縮機11の回転数が決定される。
このように、第1除湿暖房モードの第1〜第4モードでは、目標吹出温度TAOに応じて第1膨張弁13、第2膨張弁18の絞り開度を変更することで、車室内へ吹き出す吹出空気の温度を低温域から高温域までの広範囲に亘って調整することができる。
換言すると、第1除湿暖房モードでは、室外熱交換器15を、冷媒を放熱させる放熱器として機能させる状態から冷媒に吸熱させる蒸発器として機能させる状態へ切り替えながら、室外熱交換器15における冷媒の放熱量あるいは吸熱量を調整することができる。
従って、室外熱交換器15を放熱器あるいは蒸発器のいずれか一方として機能させるサイクル構成よりも、凝縮器12における冷媒の放熱量を幅広い範囲で調整することができ、除湿運転時に空調対象空間へ吹き出される吹出空気の温度調整範囲を拡大させることができる。
(D)第2除湿暖房モード
第2除湿暖房モードでは、制御装置50が四方弁14にて第1膨張弁13の出口側と蒸発器16の一方の出入口側とを接続すると同時に室外熱交換器15の一方の出入口側とアキュムレータ17の入口側とを接続する。そして、制御装置50が、三方弁19にて室外熱交換器15の他方の出入口側と第2膨張弁18とを接続する。さらに、第1、第2膨張弁13、18を絞り状態または全開状態とする。従って、冷凍サイクル装置10は、図1の黒塗矢印に示すように冷媒が流れる第2冷媒流路に切り替えられる。なお、第2除湿暖房モード(第2冷媒流路)では、第1除湿暖房モード(第1冷媒流路)とは逆に、蒸発器16、第2膨張弁18、室外熱交換器15の順に冷媒が流れることとなる。
この冷媒流路の構成で、制御装置50が、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号等に基づいて、制御装置50に接続された各種制御機器の作動状態(各種制御機器へ出力する制御信号)を決定する。
例えば、圧縮機11の電動モータ11bに出力される制御信号については、冷房モードと同様に決定される。また、エアミックスドア36のサーボモータへ出力される制御信号については、エアミックスドア36が冷風バイパス通路35を閉塞し、蒸発器16を通過後の送風空気の全流量がヒータコア34および凝縮器12の空気通路を通過するように決定される。
また、第1膨張弁13および第2膨張弁18については、車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である目標吹出温度TAOに応じて変更している。具体的には、制御装置50は、車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である目標吹出温度TAOの上昇に伴って、第1膨張弁13の絞り開度を増大させるとともに、第2膨張弁18の絞り開度を減少させる。これにより、第2除湿暖房モードでは、第1モードから第2モードの2段階のモードを実行する。
(D−1)第1モード
第1モードは、第2除湿暖房モード時に、目標吹出温度TAOが第4基準温度より高くなった場合に実行される。第1モードでは、第1膨張弁13の絞り開度を第1除湿暖房モードの第4モード時と同じとし、第2膨張弁18の絞り開度を全開状態とする。従って、第1モードでは、サイクルを循環する冷媒の状態については、図6のモリエル線図に示すように変化する。
すなわち、図6に示すように、圧縮機11から吐出された高圧冷媒(d1点)は、凝縮器12へ流入して、蒸発器16にて冷却されて除湿された車室内送風空気と熱交換して放熱する(図6のd1点→d2点)。これにより、車室内送風空気が加熱される。
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13に流入し、低圧冷媒となるまで減圧される(図6のd2点→d3点)。そして、第1膨張弁13にて減圧された低圧冷媒は、蒸発器16に流入して、送風機32から送風された車室内送風空気から吸熱して蒸発する(図6のd3点→d4点)。これにより、車室内送風空気が冷却される。
蒸発器16から流出した冷媒は、第2膨張弁18へ流入する。この際、第2膨張弁18の絞り開度を全開状態としているので、蒸発器16から流出した冷媒は、第2膨張弁18にて減圧されることなく、室外熱交換器15に流入する。
室外熱交換器15に流入した低圧冷媒は、送風ファンから送風された外気から吸熱する(図6のd4点→d5点)。そして、室外熱交換器15から流出した冷媒は、冷房モードと同様に、アキュムレータ17→圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
以上の如く、第2除湿暖房モードの第1モード時には、第1除湿暖房モードと同様に、蒸発器16にて冷却され除湿された車室内送風空気を、ヒータコア34および凝縮器12にて加熱して車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
この際、第1モードでは、第1除湿暖房モードの第4モードと同様に、室外熱交換器15を吸熱器(蒸発器)として機能させることができるとともに、第1除湿暖房モードの第3モードよりも第1膨張弁13の絞り開度を縮小させているので、室外熱交換器15における冷媒蒸発温度を低下させることができる。従って、第1除湿暖房モードの第3モードよりも室外熱交換器15における冷媒の温度と外気温との温度差を拡大させて、室外熱交換器15における冷媒の吸熱量を増加させることができる。
この結果、第1除湿暖房モードの第3モードに対して、凝縮器12における冷媒の放熱量を増加させることができ、第1除湿暖房モードの第3モードよりも凝縮器12から吹き出される吹出空気の温度を上昇させることができる。すなわち、第1除湿暖房モードの第4モードと同等に、凝縮器12から吹き出される吹出空気の温度を上昇させることができる。
なお、第1モードでは、蒸発器16における冷媒圧力がフロスト限界圧力P1を下回らないように圧縮機11の回転数が決定される。
(D−2)第2モード
第2モードは、第2除湿暖房モード時に、目標吹出温度TAOが第5基準温度より高くなった場合に実行される。第2モードでは、第1膨張弁13の絞り開度を第1モード時と比較して同等あるいは増加させ、第2膨張弁18を絞り状態とする。従って、第2モードでは、サイクルを循環する冷媒の状態については、図7のモリエル線図に示すように変化する。
すなわち、図7に示すように、圧縮機11から吐出された高圧冷媒(e1点)は、凝縮器12へ流入して、蒸発器16にて冷却されて除湿された車室内送風空気と熱交換して放熱する(図7のe1点→e2点)。これにより、車室内送風空気が加熱される。
凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13に流入し、送風機32から送風された車室内送風空気よりも温度の低い中間圧冷媒となるまで減圧される(図7のe2点→e3点)。そして、第1膨張弁13にて減圧された中間圧冷媒は、蒸発器16に流入して、送風機32から送風された車室内送風空気から吸熱して蒸発する(図7のe3点→e4点)。これにより、車室内送風空気が冷却される。
蒸発器16から流出した冷媒は、第2膨張弁18へ流入して、第2膨張弁18にて低圧冷媒となるまで減圧膨張される(図7のe4点→e5点)。第2膨張弁18にて減圧された低圧冷媒は、室外熱交換器15に流入し、送風ファンから送風された外気から吸熱して蒸発する(図7のe5点→e6点)
そして、蒸発器16から流出した冷媒は、冷房モードと同様に、アキュムレータ17→圧縮機11の吸入側へと流れて再び圧縮機11にて圧縮される。
以上の如く、第2除湿暖房モードの第2モード時には、第1モードと同様に、蒸発器16にて冷却され除湿された車室内送風空気を、ヒータコア34および凝縮器12にて加熱して車室内へ吹き出すことができる。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
この際、第2モードでは、第1モードと同様に、室外熱交換器15を吸熱器(蒸発器)として機能させることができるとともに、第1モードよりも第2膨張弁18の絞り開度を縮小させているので、室外熱交換器15における冷媒蒸発温度を低下させることができる。従って、第1モードよりも室外熱交換器15における冷媒の温度と外気温との温度差を拡大させて、室外熱交換器15における冷媒の吸熱量を増加させることができる。
この結果、第1モードに対して、凝縮器12における冷媒の放熱量を増加させることができ、第1モードよりも凝縮器12から吹き出される吹出空気の温度を上昇させることができる。
なお、第2モードでは、蒸発器16における冷媒圧力がフロスト限界圧力P1を下回らないように圧縮機11の回転数が決定される。
このように、第2除湿暖房モード時には、第1除湿暖房モード時とは逆に、室外熱交換器15が蒸発器16よりも冷媒流れ下流側になるので、蒸発器16における冷媒蒸発温度をフロスト限界温度以上に維持しつつ、室外熱交換器15における冷媒蒸発温度をフロスト限界温度以下に低下させることができる。
このため、蒸発器16におけるフロスト(着霜)の発生を防止しつつ、第1除湿暖房モードよりも室外熱交換器15における冷媒の吸熱量を増加させることができ、ひいては凝縮器12から吹き出される吹出空気の温度を上昇させることができる。
以上説明した本実施形態の車両用空調装置1では、上記の如く、冷凍サイクル装置10の冷媒流路を切り替えることによって、車室内の適切な冷房、暖房および除湿暖房を実行することで、車室内の快適な空調を実現することができる。
特に、本実施形態の車両用空調装置1では、除湿暖房モードとして、室外熱交換器15における熱交換能力(放熱能力および吸熱能力)を調整して車室内へ吹き出す吹出空気を低温域から高温域に亘る広範囲で温度調整可能な第1除湿暖房モードと、第1除湿暖房モードよりも車室内へ吹き出す吹出空気を高温域で温度調整可能な第2除湿暖房モードとを切り替えることできる。
従って、空調対象空間である車室内への吹出空気の温度調整可能範囲を拡大させることができる。
本実施形態によると、第1除湿暖房モードの第3、第4モードおよび第2除湿暖房モードの第1、第2モードにおいて、室外熱交換器15および蒸発器16で冷媒が吸熱するので、第1除湿暖房モードの第1、第2モードのように室外熱交換器15で冷媒が吸熱せず外気に放熱する場合と比較して、凝縮器12から吹き出される吹出空気の温度を上昇させることができる。
しかも、第1除湿暖房モードでは、室外熱交換器15、第2膨張弁18、蒸発器16の順に冷媒が流れるのに対し、第2除湿暖房モードでは、第1モードとは逆に、蒸発器16、第2膨張弁18、室外熱交換器15の順に冷媒が流れる。
このため、第2除湿暖房モードでは、蒸発器16における冷媒蒸発温度がフロスト限界温度以上となるように第1膨張弁13の絞り開度を調整するとともに、第2膨張弁18の絞り開度を小さくして室外熱交換器15での吸熱量を多くすることができるので、蒸発器16における着霜を防止しつつ、第1除湿暖房モードよりも高い吹出温度を得ることができる。
本実施形態によると、ステップS70、S100で説明したように、室外熱交換器温度TOと蒸発器温度TEとの温度差に基づいて第1除湿暖房モードと第2除湿暖房モードとを切り替える。換言すれば、室外熱交換器15における冷媒圧力と蒸発器16における冷媒圧力との圧力差に基づいて第1除湿暖房モードと第2除湿暖房モードとを切り替える。このため、吹出空気温度の連続性を極力保つことができる。
以下、その理由を説明する。冷凍サイクルにおける暖房能力は、以下の数式F2で表される。
室外熱交換器の暖房能力=室内蒸発器の吸熱能力(除湿能力)+圧縮動力+室外熱交換器の熱交換量…(F2)
そうすると、必要な除湿能力を維持させたとき、所望の暖房能力に制御させるためには室外熱交換器の熱交換量を調整する必要がある。
図8は、必要な除湿能力を維持させたときの第1除湿暖房モードおよび第2除湿暖房モードの吹出温度(すなわち暖房能力)の制御可能領域を示すグラフである。
蒸発器16における冷媒蒸発温度をフロスト限界温度(例えば1℃)に制御した場合、第1除湿暖房モードのうち暖房能力が最も高い第4モードと、第2除湿暖房モードのうち暖房能力が最も低い第1モードとでは、室外熱交換器15における冷媒圧力が同じになるので、吹出温度も同じになる。
したがって、第1除湿暖房モードの吹出温度上限および第2除湿暖房モードの吹出下限温度となる限界線LLが存在する。
一方、第1除湿暖房モードの第4モードでは、第2膨張弁18の絞り開度を全開状態とするので、室外熱交換器15における冷媒圧力と蒸発器16における冷媒圧力とが同じになり、第2除湿暖房モードの第1モードでも、第2膨張弁18の絞り開度を全開状態とするので、室外熱交換器15における冷媒圧力と蒸発器16における冷媒圧力とが同じになる。
そのため、室外熱交換器15における冷媒圧力と蒸発器16における冷媒圧力との圧力差が小さい場合に第1除湿暖房モードと第2除湿暖房モードとを切り替えることによって、限界線LLに近い制御状態のときに第1除湿暖房モードと第2除湿暖房モードとを切り替えることができ、ひいては第1除湿暖房モードと第2除湿暖房モードとの切り替え時に吹出空気温度が急変することを抑制することができる。
さらに、本実施形態によると、ステップS80、S110で説明したように、目標吹出温度TAOと車室内吹出空気温度TAVとの温度差、すなわち暖房負荷に対する暖房能力の過不足量に基づいて、第1除湿暖房モードと、第除湿暖房1モードよりも暖房能力の高い第2除湿暖房モードとを切り替えるので、暖房負荷に応じて暖房能力を調整して、車室内の快適な除湿暖房を実現することができる。
また、四方弁14といった簡易な構成によって、第1除湿暖房モードおよび第2除湿暖房モードを切り替えることができるので、車室内への吹出空気の温度調整可能範囲を拡大させる構成を容易に実現することができる。
(第2実施形態)
本第2実施形態では、図9に示すように、上記第1実施形態のステップS70、S100を、ステップS71、S101に変更している。
ステップS71では、第2膨張弁18の絞り開度が予め定めた基準値δ1(以下、閾値δ1という。)を上回っているか否かを判定する。この結果、第2膨張弁18の絞り開度が閾値δ1以下と判定された場合(S71:NO)には、車室内への吹出空気の温度調整可能範囲が低温域から高温域の広範囲となる通常時の除湿暖房モードである第1除湿暖房モードに決定し(S80)、第2膨張弁18の絞り開度が閾値δ1を上回っていると判定された場合(S71:YES)には、ステップS90へ移行する。
ステップS101では、第2膨張弁18の絞り開度が予め定めた基準値δ2(以下、閾値δ2という。)を上回っているか否かを判定する。この結果、第2膨張弁18の絞り開度が閾値δ2以下と判定された場合(S101:NO)には、車室内への吹出空気の温度調整可能範囲が第1除湿暖房モードに比べて高温域となる第2除湿暖房モードに決定し(S110)、第2膨張弁18の絞り開度が閾値δ2を上回っていると判定された場合(S101:YES)には、ステップS120へ移行する。
本実施形態によると、第2膨張弁18の絞り開度に基づいて第1除湿暖房モードと第2除湿暖房モードとを切り替える。換言すれば、室外熱交換器15における冷媒圧力と蒸発器16における冷媒圧力との圧力差に基づいて第1除湿暖房モードと第2除湿暖房モードとを切り替える。このため、上記第1実施形態と同様に吹出空気温度の連続性を極力保つことができる。
(第3実施形態)
上記実施形態では、凝縮器12は、圧縮機11から吐出された吐出冷媒(高圧冷媒)と、蒸発器16を通過した車室内送風空気とを熱交換することによって車室内送風空気を加熱する冷媒空気熱交換器であるが、本第3実施形態では、図10に示すように、凝縮器12は、圧縮機11から吐出された吐出冷媒(高圧冷媒)と、車両走行用の駆動力を出力するエンジンの冷却水(熱媒体)とを熱交換することによって冷却水を加熱する冷媒冷却水熱交換器(冷媒熱媒体熱交換器)である。
さらに、凝縮器12で加熱された冷却水は、ヒータコア34(冷却水熱媒体熱交換器)を循環するようになっている。これにより、ヒータコア34において、凝縮器12で加熱された冷却水と蒸発器16を通過した車室内送風空気とが熱交換されることによって車室内送風空気が加熱されるようになっている。
本実施形態においても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
(他の実施形態)
上記実施形態を適宜組み合わせることができる。上記実施形態を、例えば以下のように種々変形可能である。
(1)上記実施形態では、冷房モードおよび除湿暖房モード(冷却モード)と、暖房モード(非冷却モード)とをA/Cスイッチの操作信号によって切り替える例について説明したが、これに限定されない。例えば、操作パネルに各運転モードを設定する運転モード設定スイッチを設け、当該運転モード設定スイッチの操作信号に応じて、暖房モードと冷房モードおよび除湿暖房モードを切り替えるようにしてもよい。
(2)上記実施形態では、暖房モード、冷房モードおよび除湿暖房モードの各運転モード時に、制御装置50が、室内凝縮器12およびヒータコア34の空気通路、および冷風バイパス通路35のいずれか一方を閉塞するようにエアミックスドア36を作動させる例について説明したが、エアミックスドア36の作動はこれに限定されない。
例えば、エアミックスドア36が室内凝縮器12およびヒータコア34の空気通路、ならびに冷風バイパス通路35の双方を開放するようにしてもよい。そして、室内凝縮器12およびヒータコア34の空気通路を通過させる風量と冷風バイパス通路35を通過させる風量との風量割合を調整することで、車室内への吹出空気の温度を調整するようにしてもよい。このような、温度調整は、車室内送風空気の温度を微調整し易い点で有効である。
(3)上記第1、第2実施形態では、室内空調ユニット30の内部にヒータコア34を配置する構成としているが、エンジン等の外部熱源が不足するような場合には、ヒータコア34を廃止したり、ヒータコア34を電気ヒータ等へ置き換えたりしてもよい。
(4)上記実施形態では、ヒータコア34は、エンジンの冷却水と車室内送風空気とを熱交換させるようになっているが、ヒータコア34は、走行用電動モータやインバータ等の発熱機器の冷却水と車室内送風空気とを熱交換させるようになっていてもよい。
(5)上述の各実施形態では、車両用空調装置1に冷凍サイクル装置10を適用する例を説明したが、これに限定されず、例えば、冷凍サイクル装置10を据え置き型の空調装置等に適用してもよい。