以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。
また、各実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。
さらに、以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
(第1実施形態)
本実施形態について、図1〜図10を参照して説明する。本実施形態では、本開示の車両用空調装置1を内燃機関(例えば、エンジン)42および図示しない走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得るハイブリッド自動車に適用した例について説明する。
本実施形態の車両用空調装置1は、空調対象空間である車室内を冷房する冷房モード、車室内を除湿しながら暖房する除湿暖房モード、車室内を暖房する暖房モードに切替可能に構成されている。
また、本実施形態の車両用空調装置1は、暖房モードとして、温水暖房およびヒートポンプ暖房を切替可能となっている。温水暖房は、加熱源である内燃機関42を利用して室内への送風空気を加熱する暖房モードである。また、ヒートポンプ暖房は、後述するヒートポンプサイクル10の室内凝縮器12により送風空気を加熱する暖房モードである。本実施形態では、温水暖房が第1の暖房モードを構成し、ヒートポンプ暖房が第2の暖房モードを構成している。なお、説明の便宜上、以下、ヒートポンプ暖房をHP暖房と呼ぶことがある。
本実施形態の車両用空調装置1は、図1に示すように、主たる構成要素として、ヒートポンプサイクル10、および室内空調ユニット30を備えている。
ヒートポンプサイクル10は、圧縮機11、室内凝縮器12、第1膨張弁13、室外熱交換器14、第2膨張弁18、室内蒸発器19、アキュムレータ22を備える蒸気圧縮式の冷凍サイクルで構成されている。
本実施形態のヒートポンプサイクル10では、冷媒としてHFC系冷媒(例えば、R134a)を採用しており、サイクル内の高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。なお、勿論、HFO系冷媒(例えば、R1234yf)等が採用されていてもよい。
ヒートポンプサイクル10の冷媒には、圧縮機11内部の各種構成要素を潤滑するための潤滑油である冷凍機油が混入されている。潤滑油は、その一部が冷媒とともにサイクルを循環する。
ヒートポンプサイクル10の構成機器である圧縮機11は、車両のエンジンルーム内に配置されている。圧縮機11は、ヒートポンプサイクル10において、吸入した冷媒を圧縮して吐出する機能を果たす。
圧縮機11は、図示しない圧縮機構を図示しない電動モータにて駆動する電動圧縮機で構成されている。圧縮機構としては、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用することができる。電動モータは、インバータ80から出力される交流電流によってその作動が制御される交流モータである。
本実施形態の圧縮機11は、図2に示すように、インバータ80を介して空調制御装置50に接続されている。インバータ80は、空調制御装置50からの制御信号に応じて圧縮機11を制御する装置である。インバータ80は、圧縮機11を制御することで、室内凝縮器12へ流入する高圧冷媒の流量を調整可能に構成されている。そして、インバータ80は、室内凝縮器12へ流入する高圧冷媒の流量を変化させることで、室内凝縮器12における高圧冷媒と送風空気との熱交換量を調整することが可能となっている。従って、本実施形態では、インバータ80が室内凝縮器12へ流入する高圧冷媒の流量を調整する冷媒流量調整部、および熱交換調整部を構成している。
図1に戻り、圧縮機11の冷媒吐出口側には、室内凝縮器12が接続されている。室内凝縮器12は、後述する室内空調ユニット30の空調ケース31内に配置されている。室内凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒を送風空気と熱交換させて、室内蒸発器19を通過した後の送風空気を加熱する凝縮器である。
室内凝縮器12の冷媒出口側には、第1膨張弁13が接続されている。第1膨張弁13は、室内凝縮器12から流出した冷媒を減圧する減圧機構である。第1膨張弁13は、絞り開度が変更可能に構成された弁体、および弁体を駆動するアクチュエータを有する。
本実施形態の第1膨張弁13は、減圧作用を発揮する絞り状態と減圧作用を発揮しない全開状態とに設定可能な可変絞り機構で構成されている。また、第1膨張弁13は、空調制御装置50から出力される制御信号によって制御される電気式の可変絞り機構で構成されている。
第1膨張弁13の冷媒出口側には、室外熱交換器14が接続されている。室外熱交換器14は、エンジンルーム内に配置されて、第1膨張弁13を通過した冷媒と車室外空気(すなわち、外気)とを熱交換させる熱交換器である。
室外熱交換器14は、暖房モード時に低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用熱交換器として機能する。また、室外熱交換器14は、少なくとも冷房モード時に、高圧冷媒を放熱させる放熱用熱交換器として機能する。
室外熱交換器14の冷媒出口側には、室外熱交換器14から流出した冷媒の流れを分岐する低圧側分岐部15が接続されている。低圧側分岐部15は、3つの出入口のうち、1つを冷媒流入口とし、残りの2つを冷媒流出口とする三方継手で構成されている。
低圧側分岐部15には、一方の冷媒流出口に低圧冷媒通路16が接続され、他方の冷媒流出口に低圧バイパス通路17が接続されている。低圧冷媒通路16は、第2膨張弁18、および室内蒸発器19を介して後述するアキュムレータ22へ冷媒を導く冷媒通路である。
第2膨張弁18は、室外熱交換器14から流出した冷媒を減圧する減圧機構である。本実施形態の第2膨張弁18は、減圧作用を発揮する絞り状態と、冷媒の流れを遮断する全閉状態とに設定可能な可変絞り機構で構成されている。また、第2膨張弁18は、第1膨張弁13と同様に、空調制御装置50から出力される制御信号によって制御される電気式の可変絞り機構で構成されている。
室内蒸発器19は、後述する室内空調ユニット30の空調ケース31内のうち、室内凝縮器12の空気流れ上流側に配置されている。室内蒸発器19は、第2膨張弁18を通過した低圧冷媒を、室内凝縮器12を通過する前の送風空気と熱交換させ、低圧冷媒を蒸発させることにより、送風空気を冷却する蒸発器である。
一方、低圧バイパス通路17は、第2膨張弁18、および室内蒸発器19を迂回して後述するアキュムレータ22へ冷媒を導く冷媒通路である。低圧バイパス通路17には、低圧バイパス通路17を開閉する低圧側開閉弁20が設けられている。
ここで、室外熱交換器14から流出した冷媒は、低圧側開閉弁20が開き、第2膨張弁18が全閉状態となっている場合に、低圧バイパス通路17へ流れる。また、室外熱交換器14から流出した冷媒は、低圧側開閉弁20が閉じ、第2膨張弁18が絞り状態となっている場合に、低圧冷媒通路16へ流れる。従って、本実施形態では、低圧側開閉弁20および第2膨張弁18が、室外熱交換器14から流出した冷媒の冷媒通路を、低圧冷媒通路16および低圧バイパス通路17のいずれかに切り替える通路切替部として機能する。なお、低圧側開閉弁20は、流路切替弁で構成してもよい。低圧側開閉弁20を流路切替弁で構成する場合、当該流路切替弁を低圧側分岐部15や低圧側合流部21に配置すればよい。
室内蒸発器19および低圧側開閉弁20の冷媒流れ下流側には、低圧冷媒通路16と低圧バイパス通路17との低圧側合流部21が接続されている。低圧側合流部21は、3つの出入口のうち、1つを冷媒流出口とし、残りの2つを冷媒流入口とする三方継手で構成されている。
低圧側合流部21の冷媒流出口側には、アキュムレータ22が接続されている。アキュムレータ22は、その内部に流入した冷媒の気液を分離して、分離された気相冷媒、および冷媒中に含まれる潤滑油を圧縮機11の冷媒吸入口側に流出させるものである。
また、アキュムレータ22は、その内部で分離された液相冷媒を、サイクル内の余剰冷媒を一時的に貯留する貯留部としても機能する。従って、アキュムレータ22は、圧縮機11に液相冷媒が吸入されることを抑制して、圧縮機11における液圧縮を防止する機能を果たす。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(すなわち、インストルメントパネル)の内側に配置されている。室内空調ユニット30は、その外殻を形成するとともに、車室内への送風空気の空気通路を形成する空調ケース31を有する。
空調ケース31の空気流れ最上流側には、車室内空気(すなわち、内気)と外気とを切替導入する内外気切替装置32が配置されている。内外気切替装置32は、内気の導入口および外気の導入口の開口面積を、内外気切替ドアで調整することで、空調ケース31内への内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる装置である。
内外気切替装置32の空気流れ下流側には、内外気切替装置32から導入される空気を車室内へ向けて送風する送風機33が配置されている。送風機33は、シロッコファン等の遠心ファン33aを電動モータ33bにて駆動する電動送風機である。送風機33は、空調制御装置50から出力される制御電圧によって送風能力(例えば、回転数)が制御される。
送風機33の空気流れ下流側には、室内蒸発器19、ヒータコア41、および室内凝縮器12が、送風空気の流れに対して、室内蒸発器19、ヒータコア41、および室内凝縮器12の順に配置されている。換言すると、室内蒸発器19は、ヒータコア41および室内凝縮器12に対して空気流れ上流側に配置されている。また、ヒータコア41は、室内凝縮器12に対して空気流れ上流側に配置されている。
ここで、ヒータコア41は、車両走行用の駆動力を出力する内燃機関42の冷却水が循環する温水回路40に配置されている。なお、ヒータコア41には、内燃機関42を通過した後の温水が流入するように、温水回路40における内燃機関42の冷却水流れ下流側に配置されている。
ヒータコア41は、内燃機関42から流出した冷却水を送風空気と熱交換させて、送風空気を加熱する熱交換器である。本実施形態では、ヒータコア41が、ヒートポンプサイクル10とは別の熱源を利用して、室内凝縮器12を通過する前の送風空気を加熱する加熱用熱交換器を構成している。
空調ケース31内には、室内蒸発器19通過後の送風空気を、ヒータコア41、および室内凝縮器12を迂回して流す冷風バイパス通路34が設けられている。また、空調ケース31内には、室内蒸発器19の空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア41および室内凝縮器12の空気流れ上流側にエアミックスドア35が配置されている。
エアミックスドア35は、室内蒸発器19通過後の送風空気のうち、ヒータコア41および室内凝縮器12を通過させる風量と冷風バイパス通路34を通過させる風量との風量割合を調整して、車室内へ吹き出す空気の温度を調整する温度調整部として機能する。エアミックスドア35は、空調制御装置50から出力される制御信号によって作動が制御される。
また、室内凝縮器12および冷風バイパス通路34の空気流れ下流側には、ヒータコア41および室内凝縮器12を通過した温風、並びに、冷風バイパス通路34を通過した冷風を合流させる図示しない合流空間が形成されている。
空調ケース31の空気流れ最下流部には、合流空間にて合流した送風空気を、車室内へ吹き出す複数の開口穴が形成されている。図示しないが、空調ケース31には、開口穴として、車両前面の窓ガラスの内面に向けて空気を吹き出すデフロスタ開口穴、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス開口穴、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット開口穴が形成されている。
また、図示しないが、各開口穴の空気流れ上流側には、各開口穴の開口面積を調整する吹出モードドアとして、デフロスタドア、フェイスドア、フットドアが配置されている。これら吹出モードドアは、図示しないリンク機構等を介して、空調制御装置50から出力される制御信号によってその作動が制御されるアクチュエータにより駆動される。
さらに、図示しないが、各開口穴の空気流れ下流側は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口、およびデフロスタ吹出口に接続されている。
次に、本実施形態の電気制御部について、図2を参照して説明する。空調制御装置50は、CPU、ROM、およびRAM等の記憶部を含むマイクロコンピュータとその周辺回路から構成される。空調制御装置50は、記憶部に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種空調用の制御機器の作動を制御する。なお、空調制御装置50の記憶部は、非遷移的実体的記憶媒体で構成される。
空調制御装置50の入力側には、空調制御用のセンサ群が接続されている。具体的には、空調制御装置50には、車両内外における環境の状態を検出するセンサとして、内気温を検出する内気センサ、外気温を検出する外気センサ、車室内への日射量を検出する日射センサ等が接続されている。
また、空調制御装置50には、ヒートポンプサイクル10の作動状態を検出するセンサが接続されている。具体的には、空調制御装置50には、室内蒸発器19通過後の空気温度を検出する第1温度センサ51、室内凝縮器12に流入する高圧冷媒の温度を検出する第2温度センサ52、室内凝縮器12通過後の冷媒圧力を検出する冷媒圧力センサ53等が接続されている。
説明の便宜上、本実施形態では、室内蒸発器19を通過した後の空気温度を蒸発器温度Teと呼ぶことがある。また、本実施形態では、圧縮機11から吐出されて室内凝縮器12に流入する高圧冷媒の温度を吐出冷媒温度Thと呼ぶことがある。さらに、本実施形態では、室内凝縮器12通過後の冷媒圧力を高圧冷媒圧力Phと呼ぶことがある。なお、吐出冷媒温度Thは、室内凝縮器12の冷媒温度として解釈することができる。
第1温度センサ51としては、室内蒸発器19の熱交換フィンの温度を蒸発器温度Teとして直接的に検出するセンサや、室内蒸発器19を流れる冷媒の温度を蒸発器温度Teとして間接的に検出するセンサ等が考えられるが、いずれのセンサを用いてもよい。
また、第2温度センサ52としては、圧縮機11の吐出冷媒温度Thを直接的に検出するセンサや、室内凝縮器12の熱交換フィンの温度を吐出冷媒温度Thとして間接的に検出するセンサ等が考えられるが、いずれのセンサを用いてもよい。
さらに、空調制御装置50には、ヒータコア41に流入する冷却水の温度を検出する第3温度センサ54が接続されている。第3温度センサ54は、ヒータコア41に流入する冷却水の温度からヒータコア41で加熱されて室内凝縮器12を通過する前の送風空気の温度を算出するためのセンサである。説明の便宜上、本実施形態では、ヒータコア41に流入する冷却水の温度をヒータコア水温度Twhと呼ぶことがある。また、本実施形態では、ヒータコア41で加熱されて室内凝縮器12を通過する前の送風空気の温度をヒータコア吹出温度Tcaと呼ぶことがある。
ここで、ヒータコア吹出温度Tcaは、室内凝縮器12の熱交換効率に従って、ヒータコア41に流入するヒータコア水温度Twhよりも若干低い温度となる。このため、本実施形態の空調制御装置50は、ヒータコア水温度Twhから所定の補正温度を減算した温度をヒータコア吹出温度Tcaとして算出する。
空調制御装置50には、各種空調操作スイッチが配置された操作パネル60が接続されている。空調制御装置50には、操作パネル60の各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル60には、各種空調操作スイッチとして、車両用空調装置1の作動スイッチ、車室内の目標温度を設定する温度設定スイッチ、室内蒸発器19で送風空気を冷却するか否かを設定するA/Cスイッチ等が設けられている。
また、空調制御装置50には、車両全体の制御を司る車両制御装置70に対して双方向通信可能に接続されている。空調制御装置50には、車両制御装置70から内燃機関42の作動状態や、車両の走行状態等の各種車両情報が入力される。
本実施形態の空調制御装置50は、出力側に接続された各種制御機器の作動を制御する制御部(例えば、ハードウェアやソフトウェア)を集約した装置である。空調制御装置50に集約される制御部としては、例えば、各種制御機器の作動を制御してヒートポンプサイクル10の運転モードを切り替える運転モード切替部50a、インバータ80の作動を制御する圧縮機制御部50b等がある。
本実施形態では、運転モード切替部50aが、圧縮機11を停止してヒータコア41により送風空気を加熱する温水暖房、および圧縮機11を稼働して少なくとも室内凝縮器12により送風空気を加熱するHP暖房を切り替える暖房切替部を構成している。また、本実施形態では、圧縮機制御部50bが、熱交換調整部として機能するインバータ80を制御する熱交換制御部を構成している。
次に、上記構成における車両用空調装置1の作動について説明する。本実施形態の車両用空調装置1は、冷房モード、暖房モード、および除湿暖房モードに切り替え可能となっている。これら運転モードは、空調制御装置50が実行する空調制御処理により切り替え可能となっている。
空調制御装置50が実行する空調制御処理については、図3に示すフローチャートを参照して説明する。空調制御処理は、操作パネルの車両用空調装置1の作動スイッチが投入されることで開始される。なお、図3に示すフローチャートの各ステップは、空調制御装置50により実現されるものであり、各ステップで実現される機能それぞれを機能実現部として解釈することができる。
まず、空調制御処理では、図3に示すように、空調制御装置50が、車両用空調装置1の作動スイッチが投入(すなわち、空調ON)されたか否かを判定する(S1)。この結果、車両用空調装置1の作動スイッチが投入されたと判定されると、空調制御装置50は、記憶部に記憶されたフラグ、タイマ等の初期化や、各種制御機器の初期位置を合わせる初期化処理を行う(S2)。この初期化処理では、前回の車両用空調装置1の運転停止時に記憶部に記憶された値に合わせることもある。
続いて、空調制御装置50は、操作パネル60の操作信号を読み込む(S3)。また、空調制御装置50は、空調制御用のセンサ群の各センサ信号を読み込む(S4)。そして、空調制御装置50は、ステップS3、S4の処理で読み込んだ各種信号に基づいて、車室内へ吹き出す送風空気の目標吹出温度TAOを算出する(S5)。
具体的には、ステップS5の処理では、以下の数式F1を用いて目標吹出温度TAOを算出する。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×As+C…(F1)ここで、Tsetは温度設定スイッチで設定された車室内の目標温度、Trは内気センサで検出された検出信号、Tamは外気センサで検出された検出信号、Asは日射センサで検出された検出信号を示している。なお、Kset、Kr、Kam、およびKsは、制御ゲインであり、Cは、補正用の定数である。
続いて、空調制御装置50は、送風機33の送風能力を決定する(S6)。ステップS6の処理では、ステップS5で算出した目標吹出温度TAOに基づいて、予め記憶部に記憶された制御マップを参照して、送風機33の送風能力を決定する。
本実施形態の空調制御装置50は、目標吹出温度TAOが極低温域、および極高温域となる場合に、送風機33の送風量が多くなるように、送風能力を最大能力付近に決定する。また、本実施形態の空調制御装置50は、目標吹出温度TAOが極低温域から中間温度域へ上昇したり、極高温域から中間温度域へ低下したりする場合に、送風機33の送風量が減少するように、送風能力を最大付近よりも低い能力に決定する。
続いて、空調制御装置50は、内外気切替装置32の切替状態を示す吸込口モードを決定する(S7)。ステップS7の処理では、目標吹出温度TAOに基づいて、予め記憶部に記憶された制御マップを参照して吸込口モードを決定する。本実施形態の空調制御装置50は、基本的には、外気を導入する外気モードに吸込口モードを決定する。本実施形態の空調制御装置50は、目標吹出温度TAOが極低温域となって高い冷房性能が要求される状況や、目標吹出温度TAOが極高温域となって高い暖房性能が要求される状況等に内気を導入する内気モードに吸込口モードを決定する。
続いて、空調制御装置50は、吹出口モードを決定する(S8)。ステップS8の処理では、目標吹出温度TAOに基づいて、予め記憶部に記憶された制御マップを参照して吹出口モードを決定する。本実施形態の空調制御装置50は、目標吹出温度TAOが高温域から低温域へと低下するに伴って、フットモード→バイレベルモード→フェイスモードへと移行するように吹出口モードを決定する。
続いて、空調制御装置50は、ステップS3、S4で読み込んだ各種信号、およびステップS5で算出した目標吹出温度TAOに基づいて、車両用空調装置1の運転モードを決定する(S9)。
例えば、ステップS9の処理では、A/Cスイッチがオンされ、且つ、目標吹出温度TAOが予め定めた冷房基準値よりも低くなっている場合に、室内冷房を行う冷房モードに決定する。また、ステップS9の処理では、A/Cスイッチがオンされ、且つ、目標吹出温度TAOが冷房基準値以上となっている場合に、室内の除湿暖房を行う除湿暖房モードに決定する。さらに、ステップS9の処理では、A/Cスイッチがオフされ、且つ、目標吹出温度TAOが暖房基準値以上となっている場合に、室内暖房を行う暖房モードに決定する。
続いて、空調制御装置50は、ステップS9で決定した運転モードに基づいて、低圧側開閉弁20の開閉状態を決定する(S10)。ステップS10の処理では、図4に示すように、ステップS9の処理で冷房モードおよび除湿暖房モードに決定された場合に、低圧側開閉弁20を閉状態に決定する。また、ステップS10の処理では、ステップS9の処理で暖房モードに決定された場合に、低圧側開閉弁20を開状態に決定する。
続いて、空調制御装置50は、ステップS3、S4で読み込んだ各種信号、ステップS5で算出した目標吹出温度TAO、およびステップS9で決定した運転モードに基づいて、圧縮機11の回転数を決定する(S11)。
ステップS11の処理では、ステップS9の処理で冷房モードおよび除湿暖房モードに決定された場合、圧縮機11の回転数を以下のように決定する。ステップS11の処理では、まず、目標吹出温度TAOに基づいて、予め記憶部に記憶された制御マップを参照して、室内蒸発器19の目標蒸発器温度TEOを決定する。目標蒸発器温度TEOは、室内蒸発器19の着霜(すなわち、フロスト)を防止するため、着霜温度(例えば、0℃)よりも高い温度(例えば、1℃)以上となるように決定される。
そして、ステップS11の処理では、目標蒸発器温度TEOと第1温度センサ51で検出した蒸発器温度Teとの偏差に基づいて、蒸発器温度Teが目標蒸発器温度TEOに近づくように、圧縮機11の回転数を決定する。
また、ステップS11の処理では、ステップS9の処理で暖房モードに決定された場合、ヒータコア吹出温度Tca、高圧冷媒圧力Pd、目標吹出温度TAO、吐出冷媒温度Thに基づいて、圧縮機11の回転数を決定する。
以下、ステップS9の処理で暖房モードに決定された場合におけるステップS11の処理の詳細について、図5のフローチャートを用いて説明する。なお、図5に示す制御ルーチンは、ステップS9の処理で暖房モードに決定された場合に、ステップS11にて空調制御装置50が処理する処理内容を示している。
図5に示すように、空調制御装置50は、まず、第3温度センサ54で検出したヒータコア水温度Twhからヒータ吹出温度Tcaを算出し、算出したヒータ吹出温度Tcaが目標吹出温度TAO以上であるか否かを判定する(S110)。
この結果、ヒータコア吹出温度Tcaが目標吹出温度TAO以上であると判定された場合、内燃機関42を利用した温水暖房により車室内の暖房を実施することが可能である。このため、ヒータコア吹出温度Tcaが目標吹出温度TAO以上であると判定された場合には、空調制御装置50が圧縮機11の回転数をゼロに決定する。すなわち、ヒータコア吹出温度Tcaが目標吹出温度TAOよりも高い温度となる条件が成立した場合、空調制御装置50は、圧縮機11を停止して、内燃機関42を熱源として送風空気を加熱する温水暖房に決定する(S111)。
一方、ヒータコア吹出温度Tcaが目標吹出温度TAOよりも低い温度であると判定された場合、内燃機関42を利用した温水暖房では、車室内の暖房を充分に実施することができない。このため、ヒータコア吹出温度Tcaが目標吹出温度TAOよりも低い温度であると判定された場合、空調制御装置50は、圧縮機11を稼働して、室内凝縮器12により送風空気を加熱するHP暖房に切り替える。
ここで、温水暖房からHP暖房に切り替える際には、室内空調ユニット30から車室内へ吹き出す空気の温度である吹出空気温度TAVが低下することがある。この点について、図6を参照して説明する。図6は、温水暖房からHP暖房に切り替えた際の吹出空気温度TAV、目標吹出温度TAO、ヒータコア吹出温度Tca、吐出冷媒温度Thの変化の一例を示している。
図6に示すように、温水暖房からHP暖房に切り替えると、ヒートポンプサイクル10の圧縮機11が稼働することで、吐出冷媒温度Thが目標吹出温度TAOに近づくように、徐々に上昇する。
本実施形態の暖房モードでは、冷媒を放熱させる放熱器として機能する熱交換器が室内凝縮器12だけである。このため、ヒートポンプサイクル10では、圧縮機11の回転数が安定した定常状態において、吐出冷媒温度Thが、ヒータコア吹出温度Tcaよりも高くなるようにバランスする。
しかしながら、ヒートポンプサイクル10の起動時には、サイクル内の冷媒が、その周囲の雰囲気温度相当の温度や圧力となっている。このため、吐出冷媒温度Thが、ヒータコア吹出温度Tcaよりも低い温度になることがある。
サイクル内の冷媒の温度がヒータコア吹出温度Tcaよりも低い状態で圧縮機11が稼働すると、ヒータコア吹出温度Tcaよりも低温の冷媒がサイクル内を循環する。この際、室内凝縮器12には、ヒータコア吹出温度Tcaよりも低温の冷媒が流入し続けることになる。このため、室内凝縮器12では、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tcaよりも高くなるまでの期間、室内凝縮器12を流れる冷媒がヒータコア41通過後の空気から吸熱する状態が継続される。これにより、吹出空気温度TAVが目標吹出温度TAOよりも低い温度に低下してしまう。
ここで、図7は、室内凝縮器12における冷媒流量Grの変化に対する吹出空気温度TAVの温度低下量を試算した試算結果である。なお、図7は、ヒータコア吹出温度Tcaと吐出冷媒温度Thとの温度差ΔT(ΔT=Tca−Th)を30℃、ヒータコア41および室内凝縮器12を通過する送風空気の風量を200m3/hにした条件での試算結果を示している。
図7に示すように、室内凝縮器12を流れる冷媒の冷媒流量Grが多くなる程、室内凝縮器12における送風空気からの吸熱量が増えるで、吹出空気温度TAVの温度低下量が増加する傾向となる。
そこで、本実施形態の空調制御装置50は、温水暖房からHP暖房に切り替える際に、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下となる条件が成立すると、室内凝縮器12における高圧冷媒と送風空気との熱交換量を減少させる処理を実施する。
具体的には、図5に示すように、空調制御装置50は、第2温度センサ52で検出した吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下であるか否かを判定する(S112)。この結果、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Ta以下と判定された場合、空調制御装置50は、圧縮機11の回転数を最小回転数に決定する(S113)。
このように、圧縮機11の回転数を最小回転数に決定すれば、室内凝縮器12へ流入する冷媒の流量が減少する。これにより、室内凝縮器12における送風空気からの吸熱量が減少するので、吹出空気温度TAVの温度低下を抑えることが可能となる。
一方、ステップS112の判定処理にて、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Taを上回っていると判定された場合、室内凝縮器12にて冷媒が送風空気から吸熱することがない。このため、ステップS112の判定処理にて、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Taを上回っていると判定された場合、空調制御装置50は、圧縮機11の回転数を通常回転数に決定する(S114)。
具体的には、ステップS114の処理では、冷媒圧力センサ53で検出した高圧冷媒圧力Phおよび目標吹出温度TAOに基づいて、予め記憶部に記憶された制御マップを参照して、高圧冷媒圧力Phの目標圧力Phdを決定する。そして、ステップS114の処理では、目標圧力Phdと高圧冷媒圧力Phとの偏差に基づいて、高圧冷媒圧力Phが目標圧力Phdに近づくように、圧縮機11の回転数を決定する。
図3に戻り、ステップS11にて圧縮機11の回転数を決定した後、各膨張弁13の開度を決定する(S12)。ステップS12の処理では、ステップS9の処理で冷房モードおよび除湿暖房モードに決定された場合、図8に示すように、第1膨張弁13を全開状態とし、第2膨張弁18を絞り状態に決定する。第2膨張弁18の絞り開度は、第2膨張弁18へ流入する冷媒の過冷却度が、目標過冷却温度に近づくように決定される。目標過冷却度は、外気センサで検出した外気温等に基づいて、予め記憶部に記憶された制御マップを参照して決定される。
また、ステップS12の処理では、ステップS9の処理で暖房モードに決定された場合、第1膨張弁13を絞り状態とし、第2膨張弁18を全閉状態に決定する。第1膨張弁13の絞り開度は、第1膨張弁13へ流入する冷媒の過冷却度が、目標過冷却温度に近づくように決定される。目標過冷却度は、冷房モード等と同様に、外気温センサの検出値等に基づいて、予め記憶部に記憶された制御マップを参照して決定される。
続いて、空調制御装置50は、エアミックスドア35の開度を決定する(S13)。ステップS13の処理では、冷房モード時に、エアミックスドア35がヒータコア41および室内凝縮器12の空気通路を閉塞し、室内蒸発器19を通過後の送風空気の全流量が冷風バイパス通路34を通過するように決定する。
また、ステップS13の処理では、除湿暖房モード時や暖房モード時に、エアミックスドア35が冷風バイパス通路34を閉塞し、室内蒸発器19を通過後の送風空気の全流量がヒータコア41および室内凝縮器12を通過するように決定する。
ここで、暖房モードとして温水暖房を実施する際には、目標吹出温度TAO、蒸発器温度Te、ヒータコア水温度Twhに応じて、エアミックスドア35のドア開度SWを決定してもよい。具体的には、ドア開度SWは、以下の数式F2を用いて算出すればよい。SW={(TAO−Te)/(Twh−Te)}×100[%]・・・(F2)
なお、SW≦0[%]は、冷風バイパス通路34を全開状態にするエアミックスドア35の最大冷房位置である。これに対して、SW≧100[%]は、ヒータコア41および室内凝縮器12の空気通路を全開状態にするエアミックスドア35の最大暖房位置である。
続いて、空調制御装置50は、ステップS6〜S13にて決定された制御信号等を各種制御機器へ出力する(S14)。その後、空調制御装置50は、操作パネル60により車両用空調装置1の作動停止が要求されるまで、所定の周期でステップS3〜S13の制御処理を繰り返す。
ここで、圧縮機11の回転数に関する制御信号については、空調制御装置50がインバータ80へ出力する。インバータ80は、空調制御装置50から出力された制御信号に応じて、圧縮機11の回転数を制御する。
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く制御される。このため、車両用空調装置1は、ステップS9で選択された運転モードに応じて、以下のように作動する。
(A)冷房モード
冷房モードでは、空調制御装置50が、低圧側開閉弁20を閉状態、第1膨張弁13を全開状態、および第2膨張弁18を絞り状態とした状態で、圧縮機11を稼働させる。このため、冷房モード時には、図9の矢印で示すように、圧縮機11からの吐出冷媒が、室内凝縮器12→第1膨張弁13→室外熱交換器14→第2膨張弁18→室内蒸発器19→アキュムレータ22の順に流れ、再び圧縮機11に吸入される。
具体的には、冷房モード時には、圧縮機11からの吐出冷媒が室内凝縮器12へ流入する。この際、エアミックスドア35がヒータコア41および室内凝縮器12の空気通路を閉塞しているので、室内凝縮器12へ流入した冷媒は殆ど送風空気へ放熱することなく、室内凝縮器12から流出する。
室内凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13が全開状態となっているので、第1膨張弁13にて殆ど減圧されることなく、室外熱交換器14へ流入する。室外熱交換器14へ流入した冷媒は、外気と熱交換して放熱し、目標過冷却度となるまで冷却される。
室外熱交換器14から流出した冷媒は、低圧側開閉弁20が閉じ、かつ、第2膨張弁18が絞り状態となっているので、第2膨張弁18に流入して低圧冷媒となるまで減圧される。そして、第2膨張弁18から流出した低圧冷媒は、室内蒸発器19へ流入し、送風機33から送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、送風空気が冷却および除湿される。
室内蒸発器19から流出した冷媒は、アキュムレータ22へ流入して気液分離される。そして、アキュムレータ22にて分離された気相冷媒が圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
ここで、アキュムレータ22で分離された液相冷媒は、ヒートポンプサイクル10が要求される冷凍能力を発揮するために不要な余剰冷媒として、アキュムレータ22の内部に貯留される。このことは、除湿暖房モードや暖房モードにおいても同様である。
以上の如く、冷房モードでは、室外熱交換器14にて冷媒を放熱させ、室内蒸発器19にて冷媒を蒸発させることで、車室内へ送風する送風空気が冷却される。これにより、車室内の冷房を実現することができる。
(B)除湿暖房モード
除湿暖房モードでは、空調制御装置50が、低圧側開閉弁20を閉状態、第1膨張弁13を全開状態、および第2膨張弁18を絞り状態とした状態で、圧縮機11を稼働させる。このため、除湿暖房モード時には、冷房モード時と同様に、図9の矢印で示すように冷媒が流れる。
具体的には、除湿暖房モード時には、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が室内凝縮器12へ流入する。この際、エアミックスドア35がヒータコア41および室内凝縮器12の空気通路を全開しているので、室内凝縮器12に流入した冷媒が、ヒータコア41を通過した送風空気と熱交換して放熱する。これにより、送風空気が目標吹出温度TAOに近づくように加熱される。
室内凝縮器12から流出した冷媒は、冷房モードと同様に、第1膨張弁13を介して室外熱交換器14へ流入する。そして、室外熱交換器14に流入した冷媒は、外気と熱交換して放熱し、目標過冷却度となるまで冷却される。さらに、室外熱交換器14を流出した冷媒は、冷房モードと同様に、第2膨張弁18→室内蒸発器19→アキュムレータ22→圧縮機11の順に流れる。
以上の如く、除湿暖房モードでは、室内凝縮器12および室外熱交換器14にて冷媒を放熱させ、室内蒸発器19にて冷媒を蒸発させることで、室内蒸発器19にて冷却および除湿された送風空気が、室内凝縮器12にて加熱される。これにより、車室内の除湿暖房を実現することができる。
(C)暖房モード
暖房モードでは、空調制御装置50が、低圧側開閉弁20を開状態、第1膨張弁13を絞り状態、および第2膨張弁18を全閉状態とする。この状態で、空調制御装置50は、ヒータコア吹出温度Tcaおよび目標吹出温度TAOに応じて、内燃機関42を熱源として送風空気を加熱する温水暖房と、室内凝縮器12により送風空気を加熱するHP暖房とを切り替える。
(温水暖房)
ヒータコア吹出温度Tcaが目標吹出温度TAO以上となる条件が成立すると、空調制御装置50が、圧縮機11を停止して、内燃機関42を熱源とする温水暖房を実施する。この温水暖房では、ヒータコア41にて内燃機関42の冷却水を送風空気と熱交換させて、送風空気が加熱される。これにより、車室内の暖房を実現することができる。
(HP暖房)
ヒータコア吹出温度Tcaが目標吹出温度TAOを下回る条件が成立すると、空調制御装置50が、圧縮機11を稼働して温水暖房からHP暖房に切り替える。HP暖房時には、図10の矢印で示すように、圧縮機11からの吐出冷媒が、室内凝縮器12→第1膨張弁13→室外熱交換器14→アキュムレータ22の順に流れ、再び圧縮機11に吸入される。
具体的には、HP暖房時には、圧縮機11からの吐出冷媒が室内凝縮器12へ流入して、送風空気と熱交換する。この際、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下であると、空調制御装置50が、室内凝縮器12における冷媒と送風空気との熱交換量が減少するように、圧縮機11を最小回転数に設定する。この場合、室内凝縮器12へ流入した冷媒は殆ど送風空気から吸熱することなく、室内凝縮器12から流出する。
一方、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tcaを上回っていると、空調制御装置50が、圧縮機11の回転数を通常回転数に設定する。この場合、室内凝縮器12へ流入した高圧冷媒が送風空気へ放熱する。これにより、室内凝縮器12において送風空気が目標吹出温度TAOに近づくように加熱される。
室内凝縮器12から流出した冷媒は、第1膨張弁13が絞り状態となっているので、第1膨張弁13に流入して低圧冷媒となるまで減圧される。第1膨張弁13から流出した低圧冷媒は、室外熱交換器14へ流入する。室外熱交換器14へ流入した冷媒は、外気と熱交換して吸熱して蒸発する。
室外熱交換器14から流出した冷媒は、低圧側開閉弁20が開き、かつ、第2膨張弁18が全閉状態となっているので、アキュムレータ22へ流入して気液分離される。そして、アキュムレータ22にて分離された気相冷媒が圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
以上の如く、本実施形態の暖房モードでは、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下でなければ、ヒータコア41および室内凝縮器12の少なくとも一方により、送風空気が加熱される。これにより、車室内の暖房を実現することができる。
一方、本実施形態の暖房モードでは、HP暖房時において、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tco以下となる条件が成立すると、圧縮機11の回転数を低下させて、室内凝縮器12へ流入する冷媒流量を減少させる。これによれば、室内凝縮器12における送風空気からの吸熱量を抑えて、室内空調ユニット30からの吹出空気温度TAVの低下を抑制可能となる。
以上説明した本実施形態の車両用空調装置1は、HP暖房を実施する際、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下となる条件が成立する場合に、室内凝縮器12における冷媒と送風空気との熱交換量を減少させる構成としている。
これによれば、室内凝縮器12を流れる高圧冷媒が送風空気から吸熱することを抑えることができる。これにより、ヒートポンプサイクル10とは別の熱源を利用した温水暖房からヒートポンプサイクル10の高圧冷媒を利用したHP暖房に切り替える際の車室内への吹出空気温度TAVの低下を抑えることができる。この結果、車両用空調装置1を利用するユーザの快適性を確保することができる。
また、本実施形態では、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下となる場合に、圧縮機11の回転数を低下させることにより、室内凝縮器12における高圧冷媒と送風空気との熱交換量を減少させる構成としている。これによれば、室内凝縮器12における高圧冷媒と送風空気との不必要な熱交換を抑えつつ、圧縮機11における電力消費を低減することができる。
さらに、本実施形態では、HP暖房を実施する際、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tcaを上回ると、室内凝縮器12における冷媒と送風空気との熱交換量を増加させる構成としている。これによれば、HP暖房時における車室内への吹出空気温度TAVを目標吹出温度TAOに近づけることができる。
ここで、本実施形態では、第3温度センサ54で検出したヒータコア水温度Twhからヒータコア吹出温度Tcaを算出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、ヒータコア41の熱交換フィンの温度を検出する温度センサを設け、当該温度センサにより、ヒータコア吹出温度Tcaを直接的に検出してもよい。また、第3温度センサ54で検出したヒータコア水温度Twhを、ヒータコア吹出温度Tcaとして検出してもよい。このことは、以下の実施形態においても同様である。
また、本実施形態では、第2温度センサ52により吐出冷媒温度Thを検出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、冷媒圧力センサ53で検出した高圧冷媒圧力Phに基づいて、室内凝縮器12における飽和冷媒温度を算出し、当該飽和冷媒温度を吐出冷媒温度Thとして用いてもよい。このことは、以下の実施形態においても同様である。
本実施形態の如く、HP暖房時に、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下となる条件が成立した際、圧縮機11の回転数を最小回転数にすることが望ましいが、これに限定されない。
HP暖房時に、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下となる条件が成立した際、圧縮機11の回転数を、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tcaを上回る場合の圧縮機11の通常回転数に比べて、低い回転数にしてもよい。例えば、HP暖房時に、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下である場合、圧縮機11の回転数を、圧縮機11の通常回転数に対して所定値を減算した回転数にしてもよい。
また、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下となる否かを、実際の吐出冷媒温度Thとヒータコア吹出温度Tcaとを比較して判定する例について説明したが、これに限定されない。ヒートポンプサイクル10の起動時における吐出冷媒温度Thは、周囲の雰囲気温度(例えば、外気)に近い温度となる。このため、例えば、空調制御装置50が外気温とヒータコア吹出温度Tcaとを比較して、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下となる条件が成立したか否かを判定してもよい。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、図11〜図13を参照して説明する。本実施形態では、車両用空調装置1のヒートポンプサイクル10における凝縮器を水冷媒熱交換器23で構成している点が第1実施形態と相違している。
図11に示すように、本実施形態のヒートポンプサイクル10は、圧縮機11の冷媒吐出口側に、水冷媒熱交換器23が接続されている。水冷媒熱交換器23は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒を内燃機関42の冷却水と熱交換させる熱交換器である。
本実施形態では、内燃機関42の冷却水が、空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を加熱する加熱媒体に相当する。従って、本実施形態では、水冷媒熱交換器23が、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と冷却水とを熱交換させる凝縮器として機能する。
本実施形態の水冷媒熱交換器23は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が流通する冷媒側通路23aと、加熱源を構成する内燃機関42を通過した後の冷却水が流通する冷却水側通路23bとを有する。
冷媒側通路23aは、ヒートポンプサイクル10における圧縮機11と第1膨張弁13との間に設けられている。具体的には、冷媒側通路23aは、冷媒入口側が圧縮機11の冷媒吐出口側に接続され、冷媒出口側が第1膨張弁13の冷媒入口側に接続されている。
冷却水側通路23bは、温水回路40における内燃機関42とヒータコア41との間に設けられている。具体的には、冷却水側通路23bは、冷却水入口側が内燃機関42の冷却水出口側に接続され、冷却水出口側がヒータコア41の冷却水入口側に接続されている。
また、本実施形態の温水回路40には、水冷媒熱交換器23に流入する冷却水の温度(すなわち、加熱媒体の温度)を検出する第4温度センサ55が設けられている。説明の便宜上、水冷媒熱交換器23に流入する冷却水の温度を冷却水温度Tweと呼ぶことがある。
第4温度センサ55は、図12に示すように、空調制御装置50に接続されている。空調制御装置50は、第4温度センサ55の検出値を読み込むことが可能に構成されている。
また、本実施形態の室内空調ユニット30は、空調ケース31内に室内蒸発器19およびヒータコア41が配置され、空調ケース31の外部に水冷媒熱交換器23が配置されている。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。以下、本実施形態の暖房モード時の制御処理について、図13を参照して説明する。図13に示す制御ルーチンは、空調制御装置50が運転モードを暖房モードに決定した場合の処理内容を示している。
図13に示すように、空調制御装置50は、まず、第4温度センサ55で検出した冷却水温度Tweが目標吹出温度TAO以上であるか否かを判定する(S110A)。この結果、冷却水温度Tweが目標吹出温度TAO以上であると判定された場合、内燃機関42を利用した温水暖房により車室内の暖房を実施することが可能である。このため、冷却水温度Tweが目標吹出温度TAO以上であると判定された場合、空調制御装置50は、圧縮機11の回転数をゼロに決定する。すなわち、冷却水温度Tweが目標吹出温度TAO以上となる条件が成立した場合、空調制御装置50は、圧縮機11を停止して、内燃機関42を熱源として送風空気を加熱する温水暖房に決定する(S111A)。
一方、冷却水温度Tweが目標吹出温度TAOよりも低い温度であると判定された場合、内燃機関42を利用した温水暖房により車室内の暖房を充分に実施することができない。このため、冷却水温度Tweが目標吹出温度TAOよりも低い温度であると判定された場合、空調制御装置50は、圧縮機11を稼働して、水冷媒熱交換器23を流通する冷媒により冷却水を加熱するHP暖房に切り替える。
ここで、ヒートポンプサイクル10の起動時には、サイクル内の冷媒の温度が冷却水温度Tweよりも低くなることがある。サイクル内の冷媒の温度が冷却水温度Tweよりも低い状態で圧縮機11が稼働すると、冷却水温度Tweよりも低温の冷媒がサイクル内を循環する。この際、水冷媒熱交換器23には、冷却水温度Tweよりも低温の冷媒が流入し続けることになる。このため、水冷媒熱交換器23では、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Tweよりも高くなるまでの期間、水冷媒熱交換器23を流れる冷媒が冷却水から吸熱する状態が継続される。この場合、ヒータコア41に流入する冷却水の温度が下がることで、吹出空気温度TAVが低下してしまう。
そこで、本実施形態では、温水暖房からHP暖房に切り替える際に、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Twe以下となる条件が成立すると、水冷媒熱交換器23における高圧冷媒と冷却水との熱交換量を減少させる処理を実施する。
具体的には、図13に示すように、空調制御装置50は、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Twe以下であるか否かを判定する(S112A)。この結果、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Twe以下と判定された場合、空調制御装置50は、圧縮機11の回転数を最小回転数に決定する(S113A)。
このように、圧縮機11の回転数を最小回転数に決定すれば、水冷媒熱交換器23へ流入する冷媒の流量が減少する。これによれば、水冷媒熱交換器23における冷却水からの吸熱量が減少するので、ヒータコア41に流入する冷却水の温度低下を抑えることができる。この結果、吹出空気温度TAVの温度低下を抑制することが可能となる。
一方、ステップS112Aの判定処理にて、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Tweを上回っていると判定された場合、水冷媒熱交換器23にて高圧冷媒が冷却水から吸熱することがない。このため、ステップS112Aの判定処理にて、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Tweを上回っていると判定された場合、空調制御装置50は、圧縮機11の回転数を通常回転数に決定する(S114A)。
具体的には、ステップS114Aの処理では、冷媒圧力センサ53で検出した高圧冷媒圧力Ph、および目標吹出温度TAOに基づいて、予め記憶部に記憶された制御マップを参照して、高圧冷媒圧力Phの目標圧力Phdを決定する。そして、ステップS114Aの処理では、目標圧力Phdと高圧冷媒圧力Phとの偏差に基づいて、高圧冷媒圧力Phが目標圧力Phdに近づくように、圧縮機11の回転数を決定する。
その他の制御処理は、第1実施形態と同様である。本実施形態の車両用空調装置1では、HP暖房を実施する際、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Twe以下となる条件が成立すると、水冷媒熱交換器23における冷媒と冷却水との熱交換量を減少させる構成としている。
これによれば、水冷媒熱交換器23を流れる高圧冷媒が冷却水から吸熱することを抑えることができる。これにより、ヒートポンプサイクル10とは別の熱源を利用した温水暖房からヒートポンプサイクル10の高圧冷媒を利用したHP暖房に切り替える際の車室内への吹出空気温度TAVの低下を抑えることができる。この結果、車両用空調装置1を利用するユーザの快適性を確保することができる。
また、本実施形態では、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Twe以下となる場合に、圧縮機11の回転数を低下させることにより、水冷媒熱交換器23における高圧冷媒と冷却水との熱交換量を減少させる構成としている。これによれば、水冷媒熱交換器23における高圧冷媒と冷却水との不必要な熱交換を抑えつつ、圧縮機11における電力消費を低減することができる。
さらに、本実施形態では、HP暖房を実施する際、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Tweを上回ると、水冷媒熱交換器23における冷媒と冷却水との熱交換量を増加させる構成としている。これによれば、HP暖房時における車室内への吹出空気温度TAVを目標吹出温度TAOに近づけることができる。
本実施形態の如く、HP暖房時に、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Twe以下となる条件が成立した際、圧縮機11の回転数を最小回転数にすることが望ましいが、これに限定されない。
HP暖房時に、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Twe以下となる条件が成立した際、圧縮機11の回転数を、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Tweを上回る場合の圧縮機11の通常回転数に比べて、低い回転数にしてもよい。例えば、HP暖房時に、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Twe以下である場合、圧縮機11の回転数を、圧縮機11の通常回転数に対して所定値を減算した回転数にしてもよい。
また、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Twe以下となる否かを、実際の吐出冷媒温度Thと冷却水温度Tweとを比較して判定する例について説明したが、これに限定されない。ヒートポンプサイクル10の起動時における吐出冷媒温度Thは、周囲の雰囲気温度(例えば、外気)に近い温度となる。このため、例えば、空調制御装置50が外気温と冷却水温度Tweとを比較して、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Twe以下となる条件が成立したか否かを判定してもよい。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、図14〜図19を参照して説明する。本実施形態では、室内凝縮器12へ冷媒を流す冷媒通路と室内凝縮器12を迂回して冷媒を流す冷媒通路を切替可能である点が第1実施形態と相違している。
図14に示すように、本実施形態のヒートポンプサイクル10には、圧縮機11の冷媒吐出口側に高圧側分岐部24が設けられている。高圧側分岐部24は、圧縮機11から吐出された冷媒の流れを分岐する分岐部である。高圧側分岐部24は、低圧側分岐部15と同様の三方継手で構成されている。
高圧側分岐部24には、一方の冷媒流出口に高圧冷媒通路25が接続され、他方の冷媒流出口に高圧バイパス通路26が接続されている。高圧冷媒通路25は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒を、室内凝縮器12を介して第1膨張弁13に導く冷媒通路である。高圧バイパス通路26は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒を、室内凝縮器12を迂回して第1膨張弁13に導く冷媒通路である。
室内凝縮器12の冷媒出口側には、高圧冷媒通路25と高圧バイパス通路26との合流部として機能する高圧側切替弁27が設けられている。高圧側切替弁27は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の冷媒通路を、高圧冷媒通路25および高圧バイパス通路26のいずれかに切り替える通路切替部である。
本実施形態の高圧側切替弁27は、図15に示すように、空調制御装置50に接続されている。本実施形態の高圧側切替弁27は、空調制御装置50から出力される制御信号によって制御される電気式の流路切替弁で構成されている。
本実施形態の高圧側切替弁27は、空調制御装置50からの制御信号により室内凝縮器12へ流入する高圧冷媒の流量を調整可能に構成されている。そして、高圧側切替弁27は、室内凝縮器12へ流入する高圧冷媒の流量を変化させることで、室内凝縮器12における高圧冷媒と送風空気との熱交換量を調整することが可能となっている。すなわち、本実施形態の高圧側切替弁27は、室内凝縮器12に流す高圧冷媒と高圧バイパス通路26に流す高圧冷媒との流量割合を調整可能に構成されている。従って、本実施形態では、高圧バイパス通路26および高圧側切替弁27が室内凝縮器12へ流入する高圧冷媒の流量を調整する冷媒流量調整部、および熱交換調整部を構成している。
空調制御装置50は、室内凝縮器12にて高圧冷媒と送風空気とを熱交換させない冷房モード時等に、圧縮機11から吐出された冷媒が、高圧バイパス通路26に流れるように、高圧側切替弁27を制御する。
また、空調制御装置50は、室内凝縮器12にて高圧冷媒と送風空気とを熱交換させる運転モード時に、圧縮機11から吐出された冷媒が、高圧冷媒通路25を介して室内凝縮器12に流れるように、高圧側切替弁27を制御する。
本実施形態の空調制御装置50に集約される制御部としては、運転モード切替部50a、圧縮機制御部50bに加えて、高圧側切替弁27を制御する切替制御部50cがある。本実施形態では、切替制御部50cが、熱交換調整部として機能する高圧側切替弁27を制御する熱交換制御部を構成している。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。以下、本実施形態の暖房モード時の制御処理について、図16を参照して説明する。図16に示す制御ルーチンは、空調制御装置50が運転モードを暖房モードに決定した場合の処理内容を示している。
図16に示すように、空調制御装置50は、第3温度センサ54で検出したヒータコア水温度Twhからヒータ吹出温度Tcaを算出し、算出したヒータ吹出温度Tcaが目標吹出温度TAO以上であるか否かを判定する(S110B)。この結果、ヒータコア吹出温度Tcaが目標吹出温度TAO以上であると判定された場合、空調制御装置50は、圧縮機11の回転数をゼロに決定する。すなわち、ヒータコア吹出温度Tcaが目標吹出温度TAO以上となる条件が成立した場合、空調制御装置50は、圧縮機11を停止して、内燃機関42を熱源として送風空気を加熱する温水暖房に決定する(S111B)。
一方、ヒータコア吹出温度Tcaが目標吹出温度TAOよりも低い温度であると判定された場合、空調制御装置50は、圧縮機11を稼働して、室内凝縮器12を流通する冷媒により送風空気を加熱するHP暖房に切り替える。
本実施形態では、温水暖房からHP暖房に切り替える際、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下となる条件が成立すると、空調制御装置50は、室内凝縮器12における高圧冷媒と送風空気との熱交換量を減少させる処理を実施する。
具体的には、空調制御装置50は、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下であるか否かを判定する(S112B)。この結果、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下と判定された場合、空調制御装置50は、圧縮機11からの吐出冷媒が高圧バイパス通路26に流れるように、高圧側切替弁27を制御する(S113B)。この際、圧縮機11については、高圧冷媒圧力Phが目標圧力Phdに近づくように、圧縮機11の回転数を通常回転数に決定される。
このように、圧縮機11からの吐出冷媒の冷媒通路を高圧バイパス通路26に設定すれば、室内凝縮器12へ冷媒が流入しなくなる。これによれば、室内凝縮器12にて高圧冷媒と送風空気とが熱交換しないので、吹出空気温度TAVの温度低下を抑制することが可能となる。
一方、ステップS112Bの判定処理にて、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tcaを上回っていると判定された場合、室内凝縮器12にて高圧冷媒が送風空気から吸熱することがない。このため、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tcaを上回っていると判定された場合、空調制御装置50は、圧縮機11からの吐出冷媒が高圧冷媒通路25に流れるように、高圧側切替弁27を制御する(S114B)。この際、圧縮機11については、高圧冷媒圧力Phが目標圧力Phdに近づくように、圧縮機11の回転数を通常回転数に決定される。
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く制御される。このため、車両用空調装置1は、HP暖房時に以下のように作動する。
HP暖房時において、ヒータコア吹出温度Tcaが目標吹出温度TAOよりも低い温度となる条件が成立すると、空調制御装置50が、圧縮機11を稼働して温水暖房からHP暖房に切り替える。
この際、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下であると、空調制御装置50が、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の冷媒通路を高圧バイパス通路26に設定する。これにより、圧縮機11からの吐出冷媒は、図17の矢印で示すように、第1膨張弁13→室外熱交換器14→アキュムレータ22の順に流れ、再び圧縮機11に吸入される。そして、ヒートポンプサイクル10は、図18のモリエル線図に示すように、圧縮機11の仕事量を室外熱交換器14で放熱するホットガス運転となる。このように、本実施形態では、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下となる場合、室内凝縮器12にて冷媒と送風空気とが熱交換しないサイクル構成となる。
一方、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tcaを上回っていると、空調制御装置50が、圧縮機11から吐出された高圧冷媒の冷媒通路を高圧冷媒通路25に設定する。これにより、圧縮機11からの吐出冷媒は、図19の矢印で示すように、室内凝縮器12→第1膨張弁13→室外熱交換器14→アキュムレータ22の順に流れ、再び圧縮機11に吸入される。この場合、室内凝縮器12へ流入した冷媒が送風空気へ放熱する。この結果、室内凝縮器12によって送風空気が目標吹出温度TAOに近づくように加熱される。
以上説明した本実施形態の車両用空調装置1では、HP暖房を実施する際に、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下となる条件が成立する場合に、室内凝縮器12における冷媒と送風空気との熱交換量を減少させる構成としている。
これによれば、室内凝縮器12における送風空気からの吸熱量を抑えて、室内空調ユニット30からの吹出空気温度TAVの低下を抑制可能となる。この結果、車両用空調装置1を利用するユーザの快適性を確保することができる。
特に、本実施形態では、HP暖房を実施する際に、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下となる条件が成立する場合に、室内凝縮器12を迂回して冷媒を流すことにより、室内凝縮器12にて高圧冷媒と冷却水とを熱交換させない構成としている。これによれば、室内凝縮器12における高圧冷媒と送風空気との不必要な熱交換を防止して、吹出空気温度TAVの低下を効果的に抑制することが可能となる。
さらに、本実施形態では、HP暖房を実施する際、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tcaを上回ると、室内凝縮器12に高圧冷媒を流す構成としている。これによれば、HP暖房時における車室内への吹出空気温度TAVを目標吹出温度TAOに近づけることができる。
ここで、本実施形態では、室内凝縮器12を備えるヒートポンプサイクル10を例示したが、これに限定されない。例えば、第2実施形態で説明した水冷媒熱交換器23を備えるヒートポンプサイクル10において、水冷媒熱交換器23へ冷媒を流す冷媒通路と水冷媒熱交換器23を迂回して冷媒を流す冷媒通路を切替可能に構成してもよい。この場合、HP暖房を実施する際に、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Twe以下となる条件が成立している場合に、水冷媒熱交換器23を迂回して冷媒を流すことで、水冷媒熱交換器23にて高圧冷媒と冷却水とを熱交換させない構成とすればよい。
また、本実施形態では、高圧側切替弁27を高圧冷媒通路25と高圧バイパス通路26との合流部に設ける例について説明したが、これに限定されない。例えば、高圧側切替弁27を高圧冷媒通路25と高圧バイパス通路26との分岐部に設ける構成としてもよい。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について、図20〜図24を参照して説明する。本実施形態では、ヒータコア41および室内凝縮器12それぞれに対応してエアミックスドア35A、35Bを設けている点が第1実施形態と相違している。
図20に示すように、本実施形態の室内空調ユニット30には、空調ケース31内において、室内蒸発器19の空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア41の空気流れ上流側に第1エアミックスドア35Aが配置されている。
第1エアミックスドア35Aは、室内蒸発器19通過後の送風空気のうち、ヒータコア41を通過させる風量と冷風バイパス通路34を通過させる風量とを調整して、ヒータコア41下流側の空気の温度を調整する温度調整部として機能する。
また、本実施形態の室内空調ユニット30には、空調ケース31内において、ヒータコア41の空気流れ下流側であって、かつ、室内凝縮器12の空気流れ上流側に第2エアミックスドア35Bが配置されている。
第2エアミックスドア35Bは、ヒータコア41下流側の送風空気のうち、室内凝縮器12を通過させる風量と冷風バイパス通路34を通過させる風量とを調整して、室内凝縮器12下流側の空気の温度を調整する温度調整部として機能する。
本実施形態の第2エアミックスドア35Bは、室内凝縮器12へ流入する送風空気の流量を調整可能に構成されている。そして、第2エアミックスドア35Bは、室内凝縮器12へ流入する送風空気の流量を変化させることで、室内凝縮器12における高圧冷媒と送風空気との熱交換量を調整することが可能となっている。従って、本実施形態では、第2エアミックスドア35Bが室内凝縮器12へ流入する送風空気の流量を調整する空気流量調整部、および熱交換調整部を構成している。
本実施形態の各エアミックスドア35A、35Bは、図21に示すように、空調制御装置50に接続されている。各エアミックスドア35A、35Bそれぞれは、空調制御装置50からの制御信号により個別に作動が制御される。
空調制御装置50は、ヒータコア41や室内凝縮器12で送風空気を加熱しない冷房モード時等に、室内蒸発器19を通過した送風空気が、冷風バイパス通路34に流れるように、各エアミックスドア35A、35Bを制御する。
また、空調制御装置50は、ヒータコア41や室内凝縮器12で送風空気を加熱する運転モード時に、室内蒸発器19を通過した送風空気が、ヒータコア41および室内凝縮器12の少なくとも一方に流れるように、各エアミックスドア35A、35Bを制御する。
本実施形態の空調制御装置50に集約される制御部としては、運転モード切替部50a、圧縮機制御部50bに加えて、各エアミックスドア35A、35Bを制御するドア制御部50dがある。本実施形態では、ドア制御部50dが、熱交換調整部として機能する第2エアミックスドア35Bを制御する熱交換制御部を構成している。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。以下、本実施形態の暖房モード時の制御処理について、図22を参照して説明する。図22に示す制御ルーチンは、空調制御装置50が運転モードを暖房モードに決定した場合の処理内容を示している。
図22に示すように、空調制御装置50は、第3温度センサ54で検出したヒータコア水温度Twhからヒータ吹出温度Tcaを算出し、算出したヒータ吹出温度Tcaが目標吹出温度TAOよりも高い温度であるか否かを判定する(S110C)。この結果、ヒータコア吹出温度Tcaが目標吹出温度TAO以上であると判定された場合、空調制御装置50は、圧縮機11の回転数をゼロに決定する。すなわち、ヒータコア吹出温度Tcaが目標吹出温度TAOよりも高い温度となる条件が成立した場合には、空調制御装置50は、圧縮機11を停止して、内燃機関42を熱源として送風空気を加熱する温水暖房に決定する(S111C)。
一方、ヒータコア吹出温度Tcaが目標吹出温度TAOよりも低い温度であると判定された場合、空調制御装置50は、圧縮機11を稼働して、室内凝縮器12を流通する冷媒により送風空気を加熱するHP暖房に切り替える。
本実施形態では、温水暖房からHP暖房に切り替える際に、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下となる条件が成立すると、空調制御装置50が、室内凝縮器12における高圧冷媒と送風空気との熱交換量を減少させる処理を実施する。
具体的には、空調制御装置50は、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下であるか否かを判定する(S112C)。この結果、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下と判定された場合、空調制御装置50は、ヒータコア41を通過した空気が、冷風バイパス通路34に流れるように、第2エアミックスドア35Bを制御する(S113C)。
この際、第1エアミックスドア35Aについては、室内蒸発器19を通過した空気が、ヒータコア41に流れるように、ドア開度を制御される。また、圧縮機11については、高圧冷媒圧力Phが目標圧力Phdに近づくように、圧縮機11の回転数を通常回転数に決定される。
このように、第2エアミックスドア35Bを冷風バイパス通路34に送風空気が流れる設定にすれば、室内凝縮器12へ送風空気が流入しなくなる。これによれば、室内凝縮器12にて高圧冷媒と送風空気とが熱交換しないので、吹出空気温度TAVの温度低下を抑制することが可能となる。
一方、ステップS112Cの判定処理にて、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tcaを上回っていると判定された場合、室内凝縮器12にて高圧冷媒が送風空気から吸熱することがない。このため、空調制御装置50は、室内蒸発器19通過後の空気が、ヒータコア41および室内凝縮器12の双方に流れるように、各エアミックスドア35A、35Bを制御する(S114C)。この際、圧縮機11については、高圧冷媒圧力Phが目標圧力Phdに近づくように、圧縮機11の回転数を通常回転数に決定される。
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く制御される。このため、車両用空調装置1は、HP暖房時に以下のように作動する。
HP暖房時において、ヒータコア吹出温度Tcaが目標吹出温度TAOを下回る条件が成立すると、空調制御装置50が、圧縮機11を稼働して温水暖房からHP暖房に切り替える。
この際、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下であると、第2エアミックスドア35Bが冷風バイパス通路34を全開する位置に設定される。これにより、送風機33から送風された送風空気は、図23の矢印で示すように、室内蒸発器19→ヒータコア41→冷風バイパス通路34の順に流れ、車室内へ吹き出される。この際、送風空気は、ヒータコア41により目標吹出温度TAOに近づくように加熱される。
一方、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tcaを上回っていると、第2エアミックスドア35Bが冷風バイパス通路34を全閉する位置に設定される。これにより、送風機33から送風された送風空気は、図24の矢印で示すように、室内蒸発器19→ヒータコア41→室内凝縮器12の順に流れ、車室内へ吹き出される。この際、送風空気は、ヒータコア41および室内凝縮器12の双方により目標吹出温度TAOに近づくように加熱される。
以上説明した本実施形態の車両用空調装置1では、HP暖房を実施する際に、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下となる条件が成立する場合に、室内凝縮器12における冷媒と送風空気との熱交換量を減少させる構成としている。
これによれば、室内凝縮器12における送風空気からの吸熱量を抑えて、室内空調ユニット30からの吹出空気温度TAVの低下を抑制可能となる。この結果、車両用空調装置1を利用するユーザの快適性を確保することができる。
特に、本実施形態では、HP暖房を実施する際、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下となる条件が成立する場合に、室内凝縮器12を迂回して送風空気を流す構成としている。これによれば、室内凝縮器12における高圧冷媒と送風空気との不必要な熱交換を防止して、吹出空気温度TAVの低下を効果的に抑制することが可能となる。
さらに、本実施形態では、HP暖房を実施する際、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tcaを上回ると、室内凝縮器12に送風空気を流す構成としている。これによれば、HP暖房時における車室内への吹出空気温度TAVを目標吹出温度TAOに近づけることができる。
ここで、本実施形態では、HP暖房を実施する際、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tcaを上回ると、ヒータコア41および室内凝縮器12の双方に送風空気を流す例について説明したが、これに限定されない。例えば、HP暖房を実施する際、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tcaを上回った場合に、ヒータコア41を迂回して室内凝縮器12に送風空気を流すようにしてもよい。
また、本実施形態では、HP暖房を実施する際に、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下となる条件が成立する場合に、室内凝縮器12を迂回して送風空気を流す例について説明した。
これに対して、HP暖房を実施する際に、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下となる条件が成立する場合に、送風機33の送風能力(例えば、回転数)を低下させることで、室内凝縮器12に流入する送風空気の流量を減少させることが考えられる。
ところが、送風機33の送風能力を低下させることで、室内凝縮器12に流入する送風空気の流量を減少させると、室内凝縮器12における送風空気の温度変化量が大きくなってしまう。このため、HP暖房を実施する際に、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下となる条件が成立する場合に、送風機33の送風能力を低下させると、却って車室内への吹出空気温度TAVが低下してしまうことが懸念される。
このため、本実施形態の如く、HP暖房を実施する際に、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下となる条件が成立する場合に、室内凝縮器12を迂回して送風空気を流す構成とすることが望ましい。
但し、送風機33の送風能力を低下させると、車室内へ吹き出す空気の流量が減少する。このため、HP暖房を実施する際に、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下となる条件が成立する場合に、送風機33の送風能力を低下させたとしても、車室内への吹出空気温度TAVの低下に伴うユーザの快適性への影響は小さい。
従って、ユーザの快適性の悪化を抑える観点では、HP暖房を実施する際に、吐出冷媒温度Thがヒータコア吹出温度Tca以下となる条件が成立する場合に、送風機33の送風能力を低下させるようにしてもよい。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について、図25〜図29を参照して説明する。本実施形態では、温水回路40に対して、水冷媒熱交換器23を迂回して冷却水を流す温水バイパス通路45を設けている点が第2実施形態と相違している。
図25に示すように、本実施形態の温水回路40には、内燃機関42の冷却水出口側に、温水側熱交換通路44と温水バイパス通路45との分岐部として機能する温水側切替弁43が設けられている。温水側切替弁43は、内燃機関42から流出した冷却水の流通路を、温水側熱交換通路44および温水バイパス通路45のいずれかに切り替える通路切替部である。
温水側熱交換通路44は、内燃機関42側から流出した冷却水を、水冷媒熱交換器23を介してヒータコア41に導く温水通路である。温水バイパス通路45は、内燃機関42側から流出した冷却水を、水冷媒熱交換器23を迂回してヒータコア41に導く温水通路である。
また、水冷媒熱交換器23の冷却水出口側には、温水側熱交換通路44と温水バイパス通路45とを合流させる温水側合流部46が設けられている。温水側合流部46は、低圧側合流部21と同様の三方継手で構成されている。
本実施形態の温水側切替弁43は、図26に示すように、空調制御装置50に接続されている。本実施形態の温水側切替弁43は、空調制御装置50から出力される制御信号によって制御される電気式の流路切替弁で構成されている。
本実施形態の温水側切替弁43は、空調制御装置50からの制御信号により水冷媒熱交換器23へ流入する冷却水の流量を調整可能に構成されている。そして、温水側切替弁43は、水冷媒熱交換器23へ流入する冷却水の流量を変化させることで、水冷媒熱交換器23における高圧冷媒と冷却水との熱交換量を調整することが可能となっている。従って、本実施形態では、温水側切替弁43が水冷媒熱交換器23へ流入する冷却水の流量を調整する媒体流量調整部、および熱交換調整部を構成している。
空調制御装置50は、水冷媒熱交換器23にて高圧冷媒と冷却水とを熱交換させない冷房モード時等に、内燃機関42から流出した冷却水が、温水バイパス通路45に流れるように、温水側切替弁43を制御する。
また、空調制御装置50は、水冷媒熱交換器23にて高圧冷媒と冷却水とを熱交換させる運転モード時に、内燃機関42から流出した冷却水が、温水側熱交換通路44を介して水冷媒熱交換器23に流れるように、温水側切替弁43を制御する。
本実施形態の空調制御装置50に集約される制御部としては、運転モード切替部50a、圧縮機制御部50bに加えて、温水側切替弁43を制御する切替制御部50eがある。本実施形態では、切替制御部50eが、熱交換調整部として機能する温水側切替弁43を制御する熱交換制御部を構成している。
その他の構成は、第2実施形態と同様である。以下、本実施形態の暖房モード時の制御処理について、図27を参照して説明する。図27に示す制御ルーチンは、空調制御装置50が運転モードを暖房モードに決定した場合の処理内容を示している。
図27に示すように、空調制御装置50は、まず、第4温度センサ55で検出した冷却水温度Tweが目標吹出温度TAO以上であるか否かを判定する(S110D)。この結果、冷却水温度Tweが目標吹出温度TAO以上であると判定された場合、空調制御装置50は、圧縮機11の回転数をゼロに決定する。すなわち、冷却水温度Tweが目標吹出温度TAOよりも高い温度となる条件が成立した場合には、空調制御装置50は、圧縮機11を停止して、内燃機関42を熱源として送風空気を加熱する温水暖房に決定する(S111D)。
一方、冷却水温度Tweが目標吹出温度TAOよりも低い温度であると判定された場合、内燃機関42を利用した温水暖房により車室内の暖房を充分に実施することができない。このため、冷却水温度Tweが目標吹出温度TAOよりも低い温度であると判定された場合、空調制御装置50は、圧縮機11を稼働して、水冷媒熱交換器23を流通する冷媒により冷却水を加熱するHP暖房に切り替える。
本実施形態では、温水暖房からHP暖房に切り替える際に、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Twe以下となる条件が成立すると、水冷媒熱交換器23における高圧冷媒と冷却水との熱交換量を減少させる処理を実施する。
具体的には、図27に示すように、空調制御装置50は、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Twe以下であるか否かを判定する(S112D)。この結果、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Twe以下と判定された場合、空調制御装置50は、内燃機関42から流出した冷却水が水冷媒熱交換器23を迂回して流れるように、温水側切替弁43を制御する(S113D)。この際、圧縮機11については、高圧冷媒圧力Phが目標圧力Phdに近づくように、圧縮機11の回転数を通常回転数に決定される。
このように、内燃機関42から流出した冷却水の流通路を温水バイパス通路45に設定すれば、水冷媒熱交換器23へ冷却水が流入しなくなる。これによれば、水冷媒熱交換器23における送風空気からの吸熱量が減少するので、ヒータコア41に流入する冷却水の温度低下を抑えることができる。この結果、吹出空気温度TAVの温度低下を抑制することが可能となる。
一方、ステップS112Dの判定処理にて、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Tweを上回っていると判定された場合、水冷媒熱交換器23にて高圧冷媒が冷却水から吸熱することがない。このため、ステップS112Dの判定処理にて、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Tweを上回っていると判定された場合、空調制御装置50は、内燃機関42から流出した冷却水が水冷媒熱交換器23に流れるように、温水側切替弁43を制御する(S114D)。この際、圧縮機11については、高圧冷媒圧力Phが目標圧力Phdに近づくように、圧縮機11の回転数を通常回転数に決定される。
本実施形態の車両用空調装置1は、以上の如く制御される。このため、車両用空調装置1は、HP暖房時に以下のように作動する。
HP暖房時において、ヒータコア吹出温度Tcaが目標吹出温度TAOを下回る条件が成立すると、空調制御装置50が、圧縮機11を稼働して温水暖房からHP暖房に切り替える。
この際、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Twe以下であると、空調制御装置50が、内燃機関42から流出した冷却水の流通路を温水バイパス通路45に設定する。これにより、内燃機関42から流出した冷却水は、図28の矢印で示すように、温水バイパス通路45→ヒータコア41の順に流れ、再び内燃機関42側へ流れる。
一方、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Tweを上回っていると、空調制御装置50が、内燃機関42から流出した冷却水の流通路を温水側熱交換通路44に設定する。これにより、内燃機関42から流出した冷却水は、図29の矢印で示すように、水冷媒熱交換器23→ヒータコア41の順に流れ、再び内燃機関42側へ流れる。この場合、水冷媒熱交換器23へ流入した冷媒が冷却水へ放熱することで、ヒータコア41に流入する冷却水の温度が上昇する。この結果、ヒータコア41により送風空気が目標吹出温度TAOに近づくように加熱される。
以上説明した本実施形態の車両用空調装置1では、HP暖房を実施する際に、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Twe以下となる条件が成立する場合に、水冷媒熱交換器23における冷媒と冷却水との熱交換量を減少させる構成としている。
これによれば、水冷媒熱交換器23を流れる高圧冷媒が冷却水から吸熱することを抑えることができる。これにより、ヒートポンプサイクル10とは別の熱源を利用した温水暖房からヒートポンプサイクル10の高圧冷媒を利用したHP暖房に切り替える際の車室内への吹出空気温度TAVの低下を抑えることができる。この結果、車両用空調装置1を利用するユーザの快適性を確保することができる。
特に、本実施形態では、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Twe以下となる条件が成立する場合に、水冷媒熱交換器23を迂回して冷却水を流すことにより、水冷媒熱交換器23にて高圧冷媒と冷却水とを熱交換させない構成としている。これによれば、水冷媒熱交換器23における高圧冷媒と冷却水との不必要な熱交換を防止して、吹出空気温度TAVの低下を効果的に抑制することが可能となる。
さらに、本実施形態では、HP暖房を実施する際、吐出冷媒温度Thが冷却水温度Tweを上回ると、室内凝縮器12に高圧冷媒を流す構成としている。これによれば、HP暖房時における車室内への吹出空気温度TAVを目標吹出温度TAOに近づけることができる。
また、本実施形態では、温水側切替弁43を温水側熱交換通路44と温水バイパス通路45との分岐部に設ける例について説明したが、これに限定されない。例えば、温水側切替弁43を温水側熱交換通路44と温水バイパス通路45との合流部に設ける構成としてもよい。
(他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。例えば、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の各実施形態では、加熱媒体である冷却水の加熱源を内燃機関42とする例について説明したが、これに限定されない。例えば、電気ヒータや高圧バッテリ等の発熱体を冷却水の加熱源としてもよい。
(2)上述の各実施形態では、車両用空調装置1として暖房モード、冷房モード、除湿暖房モードを切替可能な例について説明したが、これに限定されない。車両用空調装置1は、車室内を暖房可能なものであればよく、例えば、車室内の暖房専用の装置として構成されていてもよい。
(3)上述の各実施形態では、ヒータコア吹出温度Tcaや冷却水温度Tweと目標吹出温度TAOとを比較して、温水暖房とHP暖房とを切り替える例について説明したがこれに限定されない。例えば、ユーザからの要求や、エンジンの作動状態に応じて、温水暖房とHP暖房とを切り替えるようにしてもよい。
(4)上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
(5)上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
(6)上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。