以下に説明する第1〜第7実施形態のうち、第4、第5実施形態が特許請求の範囲に記載した発明の実施形態であり、第1実施形態は、発明の前提となる形態であり、第2、第3、第6、第7実施形態は、参考例として示す形態である。
(第1実施形態)
図1〜図4を用いて、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態では、本発明に係る冷凍サイクル装置10を、内燃機関(エンジンEG)および走行用電動モータから走行用の駆動力を得る、いわゆるハイブリッド車両の車両用空調装置1に適用している。冷凍サイクル装置10は、車両用空調装置1において、空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を加熱あるいは冷却する機能を果たす。
冷凍サイクル装置10は、冷房モードの冷媒回路、除湿暖房モードの冷媒回路、および暖房モードの冷媒回路を切り替え可能に構成されている。
車両用空調装置1において、冷房モードは、送風空気を冷却して車室内へ吹き出すことによって車室内の冷房を行う運転モードである。除湿暖房モードは、冷却されて除湿された送風空気を再加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の除湿暖房を行う運転モードである。暖房モードは、送風空気を加熱して車室内へ吹き出すことによって車室内の暖房を行う運転モードである。
図1では、冷房モードの冷媒回路における冷媒の流れを白抜き矢印で示し、除湿暖房モードの冷媒回路における冷媒の流れを斜線ハッチング付き矢印で示し、さらに、暖房モードの冷媒回路における冷媒の流れを黒塗り矢印で示している。
また、冷凍サイクル装置10では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、圧縮機11吐出冷媒の圧力が、冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。この冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
冷凍サイクル装置10の構成機器のうち、圧縮機11は、冷凍サイクル装置10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。圧縮機11は、車両ボンネット内に配置されている。圧縮機11は、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機である。圧縮機11は、後述する空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
圧縮機11の吐出口には、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路の入口側が接続されている。水−冷媒熱交換器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と水循環回路20を循環する熱媒体である冷却水とを熱交換させて、冷却水を加熱する加熱用熱交換器である。従って、本実施形態の冷凍サイクル装置10の加熱用熱交換器における加熱対象流体は、冷却水となる。
水−冷媒熱交換器12の冷媒通路の出口には、第1膨張弁13aの入口側が接続されている。第1膨張弁13aは、少なくとも暖房モード時に、水−冷媒熱交換器12から流出した高圧冷媒を減圧させる減圧装置である。
より具体的には、第1膨張弁13aは、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータ(具体的には、ステッピングモータ)とを有して構成される電気式の可変絞り機構である。
さらに、冷凍サイクル装置10では、後述するように、第2膨張弁13bを備えている。第2膨張弁13bの基本的構成は、第1膨張弁13aと同様である。これらの第1、第2膨張弁13a、13bは、弁開度を全開にすることで流量調整作用および冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能、および弁開度を全閉にすることで冷媒通路を閉塞する全閉機能を有している。
そして、この全開機能および全閉機能によって、第1、第2膨張弁13a、13bは、上述した各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、第1、第2膨張弁13a、13bは、冷媒回路切替装置としての機能を兼ね備えている。第1、第2膨張弁13a、13bは、空調制御装置40から出力される制御信号(制御パルス)によって、その作動が制御される。
第1膨張弁13aの出口には、室外熱交換器14の冷媒入口側が接続されている。室外熱交換器14は、第1膨張弁13aから流出した冷媒と送風ファン14aから送風された外気とを熱交換させる熱交換器である。室外熱交換器14は、車両ボンネット内の前方側に配置されている。
より詳細には、室外熱交換器14は、少なくとも冷房モード時に、高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能し、少なくとも暖房モード時には、第1膨張弁13aにて減圧された低圧冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。送風ファン14aは、空調制御装置40から出力される制御電圧によって回転数(すなわち、送風能力)が制御される電動送風機である。
室外熱交換器14の冷媒出口には、互いに連通する3つの流入出口を有する第1三方継手15aの流入口側が接続されている。このような三方継手としては、複数の配管を接合して形成されたものや、金属ブロックや樹脂ブロックに複数の冷媒通路を設けることによって形成されたものを採用することができる。さらに、冷凍サイクル装置10では、後述するように、第2三方継手15bを備えている。第2三方継手15bの基本的構成は、第1三方継手15aと同様である。
第1三方継手15aの一方の流出口には、第2膨張弁13bの入口側が接続されている。また、第1三方継手15aの他方の流出口には、第2三方継手15bの一方の流入口側が接続されている。第1三方継手15aの他方の流出口側と第2三方継手15bの一方の流入口側とを接続する迂回通路16には、開閉弁18aが配置されている。
迂回通路16は、第1三方継手15aから流出した冷媒を、第2膨張弁13bおよび室内蒸発器17を迂回させて、後述するアキュムレータ19の入口側へ導く冷媒通路である。開閉弁18aは、迂回通路16を開閉する電磁弁である。
開閉弁18aは、迂回通路16を開閉することで、上述した各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、開閉弁18aは、第1、第2膨張弁13a、13bとともに、冷媒回路切替装置としての機能を果たす。開閉弁18aは、空調制御装置40から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
第2膨張弁13bは、少なくとも冷房モード時に、室外熱交換器14から流出した冷媒を減圧させる電気式の可変絞り機構である。第2膨張弁13bの出口には、室内蒸発器17の冷媒入口側が接続されている。
室内蒸発器17は、後述する室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されている。室内蒸発器17は、冷房モード時および除湿暖房モード時に、第2膨張弁13bにて減圧された低圧冷媒と送風機32から送風された送風空気とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させ、低圧冷媒に吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
室内蒸発器17の冷媒出口側には、第2三方継手15bの他方の流入口側が接続されている。第2三方継手15bの流出口には、アキュムレータ19の入口側が接続されている。アキュムレータ19は、内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰液相冷媒を蓄える気液分離器である。アキュムレータ19の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
次に、水循環回路20について説明する。本実施形態の水循環回路20は、水−冷媒熱交換器12の水通路とヒータコア22との間で冷却水を循環させる冷却水回路である。ヒータコア22は、室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されて、水−冷媒熱交換器12にて加熱された冷却水と室内蒸発器17通過後の送風空気とを熱交換させて、送風空気を加熱する熱交換器である。
また、水循環回路20には、冷却水を循環させるための水ポンプ21が配置されている。水ポンプ21は、ヒータコア22の冷却水出口側から吸入した冷媒水を水−冷媒熱交換器12の水通路へ圧送するものである。水ポンプ21は、空調制御装置40から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、水圧送能力)が制御される。従って、水ポンプ21は、水−冷媒熱交換器12にて加熱される冷却水の流量を調整する流量調整装置である。
水−冷媒熱交換器12の水通路の出口には、ヒータコア22の冷却水入口側が接続されている。このため、空調制御装置40が水ポンプ21を作動させると、水循環回路20では、図1の実線矢印に示すように、水ポンプ21の吐出口→水−冷媒熱交換器12の水通路→ヒータコア22→水ポンプ21の吸入口の順で冷却水が循環する。
これにより、本実施形態の車両用空調装置1では、除湿暖房モード時および暖房モード時に、水−冷媒熱交換器12にて加熱された冷却水をヒータコア22へ流入させて、送風空気を加熱することができる。換言すると、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒を熱源とし、熱媒体(すなわち、冷却水)を介して、間接的に送風空気を加熱することができる。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されている。室内空調ユニット30は、冷凍サイクル装置10によって温度調整された送風空気を車室内へ吹き出すために、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、室内蒸発器17、ヒータコア22等を収容したものである。
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成するもので、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31の送風空気流れ最上流側には、ケーシング31内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替装置33が配置されている。
内外気切替装置33は、ケーシング31内へ内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させるものである。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替装置33の送風空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。送風機32は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機である。送風機32は、空調制御装置40から出力される制御電圧によって、回転数(すなわち、送風能力)が制御される。従って、送風機32は、車室内へ送風される送風空気の風量を調整する風量調整装置である。
送風機32の送風空気流れ下流側には、室内蒸発器17およびヒータコア22が、送風空気の流れに対して、この順に配置されている。つまり、室内蒸発器17は、ヒータコア22に対して、送風空気流れ上流側に配置されている。また、ケーシング31内には、室内蒸発器17を通過した送風空気を、ヒータコア22を迂回させて下流側へ流す冷風バイパス通路35が形成されている。
室内蒸発器17の送風空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア22の送風空気流れ上流側には、室内蒸発器17通過後の送風空気のうち、ヒータコア22を通過させる風量と冷風バイパス通路35を通過させる風量との風量割合を調整するエアミックスドア34が配置されている。
また、ヒータコア22の送風空気流れ下流側には、ヒータコア22にて加熱された送風空気と冷風バイパス通路35を通過してヒータコア22にて加熱されていない送風空気とを混合させる混合空間が設けられている。さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間にて混合された送風空気(空調風)を、車室内へ吹き出す開口穴が配置されている。
この開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
これらのフェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
従って、エアミックスドア34が、ヒータコア22を通過させる風量と冷風バイパス通路35を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間にて混合される空調風の温度が調整される。これにより、各吹出口から車室内へ吹き出される送風空気(空調風)の温度が調整されることになる。
つまり、エアミックスドア34は、車室内へ送風される空調風の温度を調整する温度調整部としての機能を果たす。エアミックスドア34は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴の送風空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス開口穴の開口面積を調整するフェイスドア、フット開口穴の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ開口穴の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出モードを切り替える吹出モード切替装置を構成するものである。フェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
吹出口モード切替装置によって切り替えられる吹出口モードとしては、具体的に、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード等がある。
フェイスモードは、フェイス吹出口を全開してフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。バイレベルモードは、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。フットモードは、フット吹出口を全開するとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出す吹出口モードである。
さらに、乗員が操作パネル50に設けられた吹出モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置40は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された各種制御対象機器11、13a、13b、14a、18、21、32等の作動を制御する。
また、空調制御装置40の入力側には、図2のブロック図に示すように、内気温センサ41、外気温センサ42、日射センサ43、水温センサ44、第1〜第3冷媒温度センサ45a〜45c、冷媒圧力センサ46、蒸発器温度センサ47、空調風温度センサ48等が接続されている。そして、空調制御装置40には、これらの空調制御用のセンサ群の検出信号が入力される。
内気温センサ41は、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ42は、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ43は、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。水温センサ44は、水−冷媒熱交換器12の水通路から流出した熱媒体温度TWを検出する水温検出部である。
第1冷媒温度センサ45aは、圧縮機11から吐出されて水−冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入する冷媒の入口側冷媒温度TD1を検出する第1冷媒温度検出部である。第2冷媒温度センサ45bは、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出した冷媒の出口側冷媒温度TD2を検出する第2冷媒温度検出部である。第3冷媒温度センサ45cは、室外熱交換器から流出した冷媒の温度(室外熱交換器温度)TD3を検出する第3冷媒温度検出部である。
冷媒圧力センサ46は、圧縮機11の吐出口側から第1膨張弁13aの入口側へ至る冷媒通路の高圧側冷媒圧力PDを検出する冷媒圧力検出部である。蒸発器温度センサ47は、室内蒸発器17における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。空調風温度センサ48は、混合空間から車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する空調風温度検出部である。
さらに、空調制御装置40の入力側には、図2に示すように、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル50が接続され、この操作パネル50に設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
操作パネル50に設けられた各種操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置の自動制御運転を設定あるいは解除するオートスイッチ、車室内の冷房を行うことを要求する冷房スイッチ、送風機32の風量をマニュアル設定する風量設定スイッチ、車室内の目標温度Tsetを設定する温度設定スイッチ、吹出モードをマニュアル設定する吹出モード切替スイッチ等がある。
なお、本実施形態の空調制御装置40は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
例えば、空調制御装置40のうち、圧縮機11の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)は、圧縮機制御部40aである。第1膨張弁13aの絞り開度を制御する構成は、絞り開度制御部40bである。開閉弁18a等の冷媒回路切替装置の作動を制御する構成は、冷媒回路制御部40cである。水ポンプ21の水圧送能力を制御する構成は、流量制御部としての水ポンプ制御部40dである。送風機32の送風能力を制御する構成は、送風機制御部40eである。
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。本実施形態の車両用空調装置1では、車室内の冷房、除湿暖房、および暖房を行うことができる。これに応じて、冷凍サイクル装置10では、冷房モードの運転、除湿暖房モードの運転、および暖房モードの運転を切り替えることができる。
これらの各運転の切り替えは、空調制御プログラムが実行されることによって行われる。この空調制御プログラムは、操作パネル50のオートスイッチが投入(ON)された際に実行される。
より具体的には、空調制御プログラムのメインルーチンでは、上述の空調制御用のセンサ群の検出信号および各種空調操作スイッチからの操作信号を読み込む。そして、読み込んだ検出信号および操作信号の値に基づいて、車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である目標吹出温度TAOを、以下数式F1に基づいて算出する。TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×As+C…(F1)
なお、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内の目標温度(設定温度)、Trは内気温センサ41によって検出された内気温、Tamは外気温センサ42によって検出された外気温、Asは日射センサ43によって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
さらに、操作パネル50の冷房スイッチが投入されており、かつ、目標吹出温度TAOが予め定めた冷房基準温度KTよりも低くなっている場合には、冷房モードの運転を実行する。また、冷房スイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度KT以上になっている場合には、除湿暖房モードの運転を実行する。また、冷房スイッチが投入されていない場合には、暖房モードの運転を実行する。
これにより、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、主に夏季のように比較的外気温が高い場合に冷房モードの運転を実行し、主に早春季あるいは晩秋季等に除湿暖房モードの運転を実行し、主に冬季のように比較的外気温が低い場合に暖房モードの運転を実行する。さらに、冷凍サイクル装置10では、暖房モード時に冷凍サイクル装置10の低騒音化が要求されると、低騒音暖房モードを実行する。
また、空調制御プログラムでは、各運転モード時に応じて、各種制御対象機器の作動状態を決定し、決定した作動状態に応じた制御信号および制御電圧等を各種制御対象機器へ出力する。
その後、空調制御プログラムでは、車両用空調装置1の作動停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、検出信号および操作信号の読み込み→運転モードの決定→各種制御対象機器の作動状態の決定→制御電圧および制御信号の出力といった制御ルーチンが繰り返される。以下に、各運転モードについて説明する。
(a)冷房モード
冷房モードでは、空調制御装置40が、水ポンプ21を予め定めた圧送能力を発揮するように作動させる。また、空調制御装置40は、第1膨張弁13aを全開状態とし、第2膨張弁13bを冷媒減圧作用を発揮する絞り状態とし、開閉弁18aを閉じる。
これにより、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、図1の白抜き矢印に示すように、圧縮機11(→水−冷媒熱交換器12の冷媒通路→第1膨張弁13a)→室外熱交換器14→第2膨張弁13b→室内蒸発器17→アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、室内蒸発器から吹き出される送風空気が目標蒸発器温度TEOとなるように、圧縮機11の作動を制御する。目標蒸発器温度TEOは、目標吹出温度TAOの低下に伴って低下するように決定される。目標蒸発器温度TEOは、室内蒸発器の着霜を抑制可能な範囲で決定される。
また、空調制御装置40は、第2膨張弁13bへ流入する冷媒の圧力に基づいて、サイクルのCOPが極大値に近づくように第2膨張弁13bの作動を制御する。また、空調制御装置40は、ヒータコア22側の通風路を全閉とし、冷風バイパス通路35側が全開となるようにエアミックスドア34を変位させる。
従って、冷房モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が水−冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入する。この際、水−冷媒熱交換器12の水通路を流通する冷却水の温度が、水−冷媒熱交換器12へ流通する高圧冷媒の温度よりも低くなっていると、高圧冷媒の有する熱が冷却水へ放熱されて、水循環回路20を循環する冷却水が加熱される。
さらに、冷房モードでは、エアミックスドア34がヒータコア22側の通風路を全閉としている。このため、水循環回路20を循環する冷却水は、ヒータコア22へ流入しても、殆ど送風空気に放熱することなく、ヒータコア22から流出する。従って、水循環回路20を循環する冷却水の温度は、冷房モードの運転開始後、高圧冷媒の温度と同様となるまで上昇する。
そして、水循環回路20を循環する冷却水の温度が、高圧冷媒の温度と同等となるまで上昇すると、高圧冷媒は、水−冷媒熱交換器12へ流入しても、殆ど冷却水と熱交換することなく、水−冷媒熱交換器12から流出する。水−冷媒熱交換器12から流出した冷媒は、全開状態となっている第1膨張弁13aを介して、室外熱交換器14へ流入する。
従って、冷房モードの冷凍サイクル装置10では、実質的に室外熱交換器14を放熱器として機能させ、室内蒸発器17を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。そして、室内蒸発器17にて冷媒が蒸発する際に送風空気から吸熱した熱を室外熱交換器14にて外気に放熱する。これにより、送風空気を冷却することができる。
その結果、冷房モードでは、室内蒸発器17にて冷却された送風空気を車室内に吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
(b)除湿暖房モード
除湿暖房モードでは、空調制御装置40が、水ポンプ21を予め定めた圧送能力を発揮するように作動させる。また、空調制御装置40は、第1膨張弁13aを絞り状態とし、第2膨張弁13bを絞り状態とし、開閉弁18aを閉じる。
これにより、除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10では、図1の斜線ハッチング付き矢印に示すように、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12の冷媒通路→第1膨張弁13a→室外熱交換器14→第2膨張弁13b→室内蒸発器17→アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、冷房モードと同様に圧縮機11の作動を制御する。また、空調制御装置40は、第1膨張弁13aへ流入する冷媒の圧力に基づいて、サイクルのCOPが極大値に近づくように第1膨張弁13aおよび第2膨張弁13bの作動を制御する。この際、空調制御装置40は、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、第1膨張弁13aの絞り開度を縮小させ、第1膨張弁13aの絞り開度を拡大させる。
また、空調制御装置40は、ヒータコア22側の通風路を全開とし、冷風バイパス通路35側が全閉となるようにエアミックスドア34を変位させる。
従って、除湿暖房モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入する。水−冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入した冷媒は、水−冷媒熱交換器12の水通路を流通する冷却水と熱交換する。これにより、水循環回路20を循環する冷却水が加熱される。
さらに、除湿暖房モードでは、エアミックスドア34がヒータコア22側の空気通路を全開としている。このため、ヒータコア22を流通する冷却水は、室内蒸発器17通過後の送風空気に放熱する。これにより、送風空気が加熱される。水−冷媒熱交換器12から流出した冷媒は、絞り状態となっている第1膨張弁13aへ流入して減圧される。
従って、除湿暖房モードでは、水−冷媒熱交換器12を放熱器として機能させ、室内蒸発器17を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。さらに、室外熱交換器14における冷媒の飽和温度が外気よりも高い場合には、室外熱交換器14を放熱器として機能させ、室外熱交換器14における冷媒の飽和温度が外気よりも低い場合には、室外熱交換器14を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。
このため、室外熱交換器14における冷媒の飽和温度が外気よりも高い場合には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って室外熱交換器14の冷媒の飽和温度を低下させることができ、室外熱交換器14における冷媒の放熱量を減少させることができる。これにより、水−冷媒熱交換器12における冷媒の放熱量を増加させて冷却水の加熱能力を向上させることができる。
また、室外熱交換器14における冷媒の飽和温度が外気よりも低い場合には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って室外熱交換器14の冷媒の飽和温度を低下させて、室外熱交換器14における冷媒の吸熱量を増加させることができる。これにより、水−冷媒熱交換器12における冷媒の放熱量を増加させて冷却水の加熱能力を向上させることができる。
その結果、除湿暖房モードでは、室内蒸発器17にて冷却されて除湿された送風空気を、ヒータコア22にて再加熱して車室内に吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。さらに、第1膨張弁13aおよび第2膨張弁13bの絞り開度を調整することによって、ヒータコア22における送風空気の加熱能力を調整することができる。
(c)暖房モード
暖房モードでは、空調制御装置40が、水ポンプ21を予め定めた圧送能力を発揮するように作動させる。また、空調制御装置40は、第1膨張弁13aを絞り状態とし、第2膨張弁13bを全閉状態とし、開閉弁18aを開く。
これにより、暖房モード時の冷凍サイクル装置10では、図1の黒塗り矢印に示すように、圧縮機11→水−冷媒熱交換器12→第1膨張弁13a→室外熱交換器14(→迂回通路16)→アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、水−冷媒熱交換器12へ流入する冷媒が目標凝縮器温度TCOとなるように、圧縮機11の作動を制御する。目標凝縮器温度TCOは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って上昇するように決定される。
また、空調制御装置40は、第1膨張弁13aへ流入する冷媒の圧力に基づいて、サイクルのCOPが極大値に近づくように第1膨張弁13aの作動を制御する。また、空調制御装置40は、ヒータコア22側の通風路を全開とし、冷風バイパス通路35側が全閉となるようにエアミックスドア34を変位させる。
従って、暖房モードの冷凍サイクル装置10では、図3のモリエル線図に太破線で示すように、圧縮機11から吐出された高圧冷媒(図3のa3点)が、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入する。水−冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入した冷媒は、水−冷媒熱交換器12の水通路を流通する冷却水と熱交換する(図3のa3点→b3点)。これにより、水循環回路20を循環する冷却水が加熱される。
さらに、暖房モードでは、エアミックスドア34がヒータコア22側の空気通路を全開としている。このため、ヒータコア22を流通する冷却水は、室内蒸発器17通過後の送風空気に放熱する。これにより、送風空気が加熱される。水−冷媒熱交換器12から流出した冷媒は、絞り状態となっている第1膨張弁13aへ流入して減圧される(図3のb3点→c3点)。
第1膨張弁13aにて減圧された低圧冷媒は、室外熱交換器14へ流入する。室外熱交換器14へ流入した冷媒は、送風ファン14aから送風された外気と熱交換し、外気から吸熱して蒸発する(図3のc3点→d3点)。室外熱交換器14から流出した冷媒は、アキュムレータ19へ流入する。アキュムレータ19にて分離された気相冷媒は、圧縮機11へ吸入され再び圧縮される(図3のd3点→a3点)。
従って、暖房モードでは、水−冷媒熱交換器12を放熱器として機能させ、室外熱交換器14を蒸発器として機能させる冷凍サイクルが構成される。そして、室外熱交換器14にて冷媒が蒸発する際に外気から吸熱した熱を水−冷媒熱交換器12にて冷却水に放熱する。これにより、冷却水を加熱することができる。
その結果、暖房モードでは、ヒータコア22にて加熱された送風空気を車室内に吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。
以上の如く、本実施形態の車両用空調装置1では、車室内の冷房、除湿暖房、および暖房を行うことができる。
ところで、上述した暖房モードの運転は、外気温Tamが−10℃となる低外気温時に実行されることがある。このときの車室内の設定温度が25℃とすると、水−冷媒熱交換器12における冷媒の飽和温度と室外熱交換器14における冷媒の飽和温度との温度差は35K程度となる。
一方、冷房モードの運転は、外気温Tamが40℃となる高外気温時に実行されることがある。このときの車室内の設定温度が25℃とすると、室外熱交換器14における冷媒の飽和温度と室内蒸発器17の冷媒の飽和温度との温度差は15K程度となる。
従って、暖房モード時のサイクルの高圧側冷媒圧力から低圧側冷媒圧力を減算した高低圧差は、冷房モード時の高低圧差よりも大きくなりやすい。つまり、暖房モード時に圧縮機11に要求される冷媒吐出能力は、冷房モード時に圧縮機11に要求される冷媒吐出能力よりも大きくなりやすい。このため、暖房モード時の冷凍サイクル装置10の作動音は、冷房モード時の作動音よりも大きくなりやすい。
ここで、サイクルの高圧側冷媒とは、圧縮機11の吐出口側から減圧装置として機能している構成の冷媒入口側へ至る冷媒流路を流通する冷媒である。従って、冷房モード時には、圧縮機11の吐出口側から第2膨張弁13bの冷媒入口側へ至る冷媒流路を流通する冷媒となる。暖房モード時には、圧縮機11の吐出口側から第1膨張弁13aの冷媒入口側へ至る冷媒流路を流通する冷媒となる。
また、サイクルの低圧側冷媒とは、減圧装置として機能している構成の冷媒出口側から圧縮機11の吸入口側へ至る冷媒流路を流通する冷媒である。従って、冷房モード時には、第2膨張弁13bの冷媒出口側から圧縮機11の吸入口側へ至る冷媒流路を流通する冷媒となる。一方、暖房モード時には、第1膨張弁13aの冷媒出口側から圧縮機11の吸入口側へ至る冷媒流路を流通する冷媒となる。
そこで、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、空調制御プログラムのサブルーチンとして、図4に示す制御フローを実行する。これにより、冷凍サイクル装置10では、作動音を低騒音化させた低騒音暖房モードを実行することができる。なお、図4中に示す各制御ステップは、空調制御装置40が有する各種の機能実現部を示している。
図4に示すサブルーチンのステップS1では、低騒音化が要求されたか否かが判定される。より具体的には、ステップS1では、予め定めた低騒音要求条件が成立した際に冷凍サイクル装置10の低騒音化が要求されたと判定する。
本実施形態のステップS1では、車両の車速が基準車速(本実施形態で、20km/h)以下となっている際に低騒音要求条件が成立したものとしている。車両の車速が基準車速以下となっている際には、ロードノイズや風切り音が小さくなり、冷凍サイクル装置10の作動音が乗員にとって耳障りとなりやすいからである。
そして、ステップS1にて低騒音化が要求されたと判定された際には、ステップS2へ進み、低騒音暖房モードが実行されて、メインルーチンへ戻る。また、ステップS1にて低騒音化が要求された判定されてなかった際には、メインルーチンへ戻る。従って、ステップS1は、予め定めた条件が成立した際に冷凍サイクル装置10の低騒音化が要求されたと判定する低騒音化判定部である。以下に、低騒音暖房モードについて説明する。
(d)低騒音暖房モード
本実施形態の低騒音暖房モードでは、空調制御装置40が、暖房モードよりも、圧縮機11の冷媒吐出能力(本実施形態では、回転数)を予め定めた基準吐出能力分低下させる。また、空調制御装置40は、水ポンプ21の圧送能力(本実施形態では、回転数)を予め定めた基準圧送能力分低下させる。また、空調制御装置40は、送風機32の送風能力(本実施形態では、回転数)を予め定めた基準送風能力分低下させる。
さらに、空調制御装置40は、第1膨張弁13aの絞り開度を予め定めた基準開度分減少させる。従って、低騒音暖房モードでは、図3のモリエル線図の太実線に示すように、冷媒の状態が変化する。
低騒音暖房モードでは、暖房モードと同様に、圧縮機11から吐出された高圧冷媒(図3のa31点)が、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入する。低騒音暖房モードでは、暖房モードよりも、圧縮機11の回転数が低下しているので、冷凍サイクル装置10の低騒音化を図ることができる。その一方で、暖房モードよりも、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入する冷媒流量Gが減少する。
また、低騒音暖房モードでは、暖房モードよりも第1膨張弁13aの絞り開度が縮小している。このため、暖房モードのようにサイクルのCOPを極大値に近づけることはできないものの、暖房モードよりも圧縮機11から吐出され高圧冷媒(図3のa31点)の圧力が上昇する。これにより、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路を流通する冷媒の温度を上昇させることができる。
また、低騒音暖房モードでは、暖房モードよりも水ポンプ21の圧送能力を低下させるとともに、送風機32の送風能力を低下させる。このため、水−冷媒熱交換器12における冷媒の放熱量が低下し、暖房モードよりも水−冷媒熱交換器12の冷媒通路を流通する冷媒の温度が上昇した状態でサイクルがバランスする。
その結果、低騒音暖房モードでは、図3に示すように、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路の入口側の冷媒のエンタルピ(図3のa31)から出口側の冷媒のエンタルピ(図3のb31点)を減算したエンタルピ差ΔH1を、暖房モードのエンタルピ差ΔHよりも拡大させることができる。その他の作動は暖房モードと同様である。
従って、本実施形態の低騒音暖房モードでは、低騒音化のために圧縮機11の回転数を低下させても、上述したエンタルピ差の拡大によって、冷却水および送風空気の加熱能力の低下を抑制することができる。
すなわち、本実施形態の冷凍サイクル装置10によれば、低騒音化が要求された際に、冷却水および送風空気の加熱能力(すなわち、車室内を暖房する暖房能力)の大幅な低下を招くことなく騒音を低減させることができる。
また、本実施形態では、低騒音暖房モード時に、暖房モードよりも水ポンプ21の圧送能力を低下させるとともに、送風機32の送風能力を低下させる例を説明したが、水ポンプ21の圧送能力および送風機32の送風能力のいずれか一方を低下さて、他方を暖房モードと同等に維持してもよい。このような制御であっても、エンタルピ差を拡大させて、加熱能力の低下を抑制することができる。
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図5に示すように、冷凍サイクル装置10の構成を変更した例を説明する。なお、図5では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面でも同様である。
具体的には、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、第1実施形態で説明した水−冷媒熱交換器12に代えて、室内凝縮器121を備えている。つまり、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、圧縮機11の吐出口に、室内凝縮器121の冷媒入口側が接続されている。
室内凝縮器121は、除湿暖房モード時および暖房モード時に、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と送風空気とを熱交換させて、送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。従って、本実施形態の加熱用熱交換器における加熱対象流体は、送風空気となる。さらに、本実施形態では、送風機32が、室内凝縮器121にて加熱される送風空気の流量を調整する流量調整装置となり、空調制御装置40の送風機制御部40eが流量制御部となる。
室内凝縮器121は、室内空調ユニット30のケーシング31内であって、ヒータコア22の送風空気流れ下流側に配置されている。室内凝縮器121の冷媒出口には、第1膨張弁13aの入口側が接続されている。
また、本実施形態の水循環回路20では、エンジンEGとヒータコア22との間でエンジン用の冷却水を循環させる。このため、本実施形態のヒータコア22は、エンジン廃熱を送風空気へ放熱することによって、送風空気を補助的に加熱する補助加熱装置としての機能を果たす。
さらに、本実施形態の水循環回路20には、エンジンEGを介して、冷却水と外気とを熱交換させて、冷却水の有する熱を外気に放熱させる放熱用熱交換器(ラジエータ23)が接続されている。本実施形態では、ラジエータ23における冷却水の放熱量を調整することで、ヒータコア22へ流入する冷却水の温度を予め定めた基準温度範囲内に維持することができる。その他の冷凍サイクル装置10の構成は、第1実施形態と同様である。
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。本実施形態の冷凍サイクル装置10の基本的作動は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷房モード時には白抜き矢印で示すように冷媒が流れ、除湿暖房モード時には斜線ハッチング付き矢印で示すように冷媒が流れ、さらに、暖房モード時には黒塗り矢印で示すように冷媒が流れる。
本実施形態の除湿暖房モードおよび暖房モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が室内凝縮器121へ流入し、ヒータコア22にて加熱された送風空気と熱交換する。これにより、送風空気が目標吹出温度TAOに近づくように加熱される。換言すると、本実施形態の冷凍サイクル装置10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒を熱源として、直接的に送風空気を加熱している。
また、低騒音暖房モードでは、空調制御装置40が、暖房モードよりも、圧縮機11の冷媒吐出能力を予め定めた基準吐出能力分低下させる。また、空調制御装置40は、第1膨張弁13aの絞り開度を予め定めた基準開度分縮小させる。また、空調制御装置40は、送風機32の送風能力を予め定めた基準送風能力分低下させる。その他の冷凍サイクル装置10の作動は、第1実施形態と同様である。
従って、本実施形態の車両用空調装置1では、第1実施形態と同様に、車室内の冷房、除湿暖房、および暖房を行うことができる。さらに、本実施形態の冷凍サイクル装置10においても、暖房モード時に低騒音化が要求された際に低騒音暖房モードを実行する。
そして、第1実施形態と同様に、室内凝縮器121の入口側の冷媒のエンタルピから出口側の冷媒のエンタルピを減算したエンタルピ差の拡大によって、送風空気の加熱能力の低下を抑制することができる。従って、低騒音暖房モードでは、第1実施形態と同様に、送風空気の加熱能力の大幅な低下を招くことなく騒音を低減させることができる。
また、本実施形態では、ヒータコア22を補助加熱装置として機能させるので、車室内の除湿暖房あるいは暖房を行う際に、エンジンEGの廃熱を利用して送風空気を予備的に加熱することができる。従って、送風空気を加熱するために、冷凍サイクル装置10に要求される加熱能力を低減させることができ、より一層、冷凍サイクル装置10の低騒音化を図ることができる。
ここで、本実施形態では、ヒータコア22を補助加熱装置として利用しているので、低騒音暖房モード時にも水ポンプ21の圧送能力を低下させていないが、もちろん、低騒音暖房モード時に水ポンプ21の圧送能力を低減させてもよい。これにより、水ポンプ21の作動音を低減させることができる。
さらに、補助加熱装置は、ヒータコア22に限定されない。例えば、電力を供給されることによって発熱する電気ヒータ(例えば、PTCヒータ)等を採用してもよい。この場合は、車室内の除湿暖房あるいは暖房を行う際に、空調制御装置40が、送風空気を加熱するための所定の加熱能力を発揮するように電気ヒータの作動を制御すればよい。
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図6に示すように、水循環回路20の構成を変更した例を説明する。具体的には、本実施形態の水循環回路20では、エンジンEGの冷却水を循環させている。
より詳細には、本実施形態の水循環回路20では、空調制御装置40が水ポンプ21を作動させると、図6の実線矢印に示すように、水ポンプ21→水−冷媒熱交換器12の水通路→ヒータコア22→エンジンEG→水ポンプ21の順で冷却水が循環する。さらに、本実施形態の水循環回路20には、第2実施形態と同様に、エンジンEGを介して、ラジエータ23が接続されている。
その他の冷凍サイクル装置10の構成および作動は、第1実施形態と同様である。本実施形態の冷凍サイクル装置10では、冷房モード時には白抜き矢印で示すように冷媒が流れ、除湿暖房モード時には斜線ハッチング付き矢印で示すように冷媒が流れる。さらに、暖房モード時には黒塗り矢印で示すように冷媒が流れる。
従って、本実施形態の車両用空調装置1では、第1実施形態と同様に、車室内の冷房、除湿暖房、および暖房を行うことができる。さらに、本実施形態の冷凍サイクル装置10においても、暖房モード時に低騒音化が要求された際に低騒音暖房モードを実行する。そして、低騒音暖房モードでは、第1実施形態と同様に、冷却水および送風空気の加熱能力の大幅な低下を招くことなく騒音を低減させることができる。
また、本実施形態では、水循環回路20にエンジンEGの冷却水を循環させるので、車室内の除湿暖房あるいは暖房を行う際に、エンジンEGの廃熱を利用することができる。従って、送風空気を加熱するために、冷凍サイクル装置10に要求される加熱能力を低減させることができ、より一層、冷凍サイクル装置10の低騒音化を図ることができる。
(第4実施形態)
図7〜図9を用いて、本発明の第4実施形態を説明する。本実施形態では、本発明に係る冷凍サイクル装置10aを、第1実施形態と同様に、ハイブリッド車両の車両用空調装置1aに適用している。この冷凍サイクル装置10aは、第1実施形態と同様に、冷房モードの冷媒回路、除湿暖房モードの冷媒回路、および暖房モードの冷媒回路を切り替え可能に構成されている。
さらに、冷凍サイクル装置10aは、暖房モードの冷媒回路に切り替えた際に、ガスインジェクションサイクルを構成する。このため、本実施形態では、圧縮機111として、二段昇圧式の電動圧縮機を採用している。より具体的には、圧縮機111は、その外殻を形成するハウジングの内部に、低段側圧縮機構と高段側圧縮機構との2つの圧縮機構、および双方の圧縮機構を回転駆動する電動モータを収容したものである。
この圧縮機111のハウジングには、吸入ポート11a、中間圧ポート11b、吐出ポート11cが設けられている。吸入ポート11aは、ハウジングの外部から低段側圧縮機構へ低圧冷媒を吸入させるための吸入口である。吐出ポート11cは、高段側圧縮機構から吐出された高圧冷媒をハウジングの外部へ吐出させる吐出口である。
中間圧ポート11bは、ハウジングの外部からハウジングの内部へ中間圧冷媒を流入させて低圧から高圧への圧縮過程の冷媒に合流させるための中間圧吸入口である。つまり、中間圧ポート11bは、ハウジングの内部で低段側圧縮機構の吐出口側および高段側圧縮機構の吸入口側に接続されている。
本実施形態では、2つの圧縮機構を1つのハウジング内に収容した圧縮機111を採用しているが、二段昇圧式の圧縮機の形式はこれに限定されない。つまり、中間圧ポート11bから中間圧冷媒を流入させて低圧から高圧への圧縮過程の冷媒に合流させることが可能であれば、ハウジングの内部に、1つの固定容量型の圧縮機構およびこの圧縮機構を回転駆動する電動モータを収容して構成された電動圧縮機であってもよい。
さらに、2つの圧縮機を直列に接続して、低段側に配置される低段側圧縮機の吸入口を吸入ポート11aとし、高段側に配置される高段側圧縮機の吐出口を吐出ポート11cとする。さらに、低段側圧縮機の吐出口と高段側圧縮機との吸入口とを接続する接続部に中間圧ポート11bを設け、低段側圧縮機と高段側圧縮機との双方によって、1つの二段昇圧式の圧縮機111を構成してもよい。
圧縮機111の吐出ポート11cには、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路の入口側が接続されている。水−冷媒熱交換器12の冷媒通路の出口には、第1膨張弁13aの入口側が接続されている。本実施形態の第1膨張弁13aは、水−冷媒熱交換器12から流出した冷媒を中間圧冷媒となるまで減圧させる高段側減圧装置である。
第1膨張弁13aの出口には、第1膨張弁13aから流出した冷媒の気液を分離する気液分離部である気液分離器24の冷媒流入口が接続されている。本実施形態では、気液分離器24として、円筒状の本体部の内部空間へ流入した冷媒を旋回させることで生じる遠心力の作用によって冷媒の気液を分離する遠心分離方式(サイクロンセパレータ方式)のものを採用している。
さらに、本実施形態の気液分離器24の内容積は、サイクルに負荷変動が生じてサイクルを循環する冷媒循環流量が変動しても、実質的に余剰冷媒を溜めることができない程度の容積になっている。
気液分離器24の気相冷媒出口には、圧縮機111の中間圧ポート11bが接続されている。気液分離器24の気相冷媒出口と圧縮機111の中間圧ポート11bとを接続する冷媒通路には、この冷媒通路を開閉する第2開閉弁18bが配置されている。第2開閉弁18bの基本的構成は、迂回通路16を開閉する開閉弁18aと同様である。本実施形態では、説明の明確化のために開閉弁18aを第1開閉弁18aと記載する。
第2開閉弁18bは、気液分離器24の気相冷媒出口と圧縮機111の中間圧ポート11bとを接続する冷媒通路を開閉することで、上述した各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、第2開閉弁18bは、第1開閉弁18a等とともに、冷媒回路切替装置としての機能を果たす。
気液分離器24の液相冷媒出口には、気液分離器24にて分離された液相冷媒を減圧させる減圧装置としての固定絞り25の入口側が接続されている。この固定絞り25としては、絞り開度が固定されたノズル、オリフィス、キャピラリチューブ等を採用することができる。固定絞り25は、水−冷媒熱交換器12から流出した冷媒を低圧冷媒となるまで減圧させる低段側減圧装置である。固定絞り25の出口側には、室外熱交換器14の冷媒入口側が接続されている。
さらに、気液分離器24の液相冷媒出口には、気液分離器24にて分離された液相冷媒を固定絞り25を迂回させて室外熱交換器14の冷媒入口側へ導く固定絞り迂回通路16aが接続されている。この固定絞り迂回通路16aには、固定絞り迂回通路16aを開閉する第3開閉弁18cが配置されている。第3開閉弁18cの基本的構成は、第1開閉弁18aと同等である。
ここで、冷媒が第3開閉弁18cを通過する際に生じる圧力損失は、冷媒が固定絞り25を通過する際に生じる圧力損失に対して極めて小さい。従って、第3開閉弁18cが開いた際には、気液分離器24から流出した液相冷媒は、殆ど固定絞り25を通過することなく、固定絞り迂回通路16aを介して室外熱交換器14へ流入する。
また、本実施形態の空調制御装置40の出力側には、第1実施形態に対して、図8のブロック図に示すように、第2開閉弁18bおよび第3開閉弁18cも接続されている。その他の車両用空調装置1aおよび冷凍サイクル装置10aの構成は、第1実施形態で説明した車両用空調装置1および冷凍サイクル装置10の構成と同様である。
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。本実施形態の車両用空調装置1aの基本的作動は、第1実施形態で説明した車両用空調装置1と同様である。従って、本実施形態の冷凍サイクル装置10aも、第1実施形態と同様に、冷房モード、除湿暖房モード、暖房モード、および低騒音暖房モードの運転を実行することができる。以下に、各運転モードについて説明する。
(a)冷房モード
冷房モードでは、空調制御装置40が、水ポンプ21を予め定めた圧送能力を発揮するように作動させる。また、空調制御装置40は、第1膨張弁13aを全開状態とし、第2膨張弁13bを絞り状態とし、第1開閉弁18aを閉じ、第2開閉弁18bを閉じ、第3開閉弁18cを開く。
これにより、冷房モードの冷凍サイクル装置10aでは、図7の白抜き矢印に示すように、圧縮機111の吐出ポート11c(→水−冷媒熱交換器12の冷媒通路→第1膨張弁13a→気液分離器24)→室外熱交換器14→第2膨張弁13b→室内蒸発器17→アキュムレータ19→圧縮機111の吸入ポート11aの順に冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。
冷房モードでは、第2開閉弁18bが閉じるので、圧縮機111は、単段昇圧式の圧縮機として機能する。このため、冷凍サイクル装置10aの冷房モードの冷媒回路は、第1実施形態の冷房モードの冷媒回路と実質的に同等となる。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、第1実施形態の冷房モードと同様に、各種制御対象機器の作動を制御する。従って、冷房モードでは、第1実施形態と同様に、室内蒸発器17にて冷却された送風空気を車室内に吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
(b)除湿暖房モード
除湿暖房モードでは、空調制御装置40が、水ポンプ21を予め定めた圧送能力を発揮するように作動させる。また、空調制御装置40は、第1膨張弁13aを絞り状態とし、第2膨張弁13bを絞り状態とし、第1開閉弁18aを閉じ、第2開閉弁18bを閉じ、第3開閉弁18cを開く。
これにより、除湿暖房モードの冷凍サイクル装置10aでは、図7の斜線ハッチング付き矢印に示すように、圧縮機111の吐出ポート11c→水−冷媒熱交換器12の冷媒通路→第1膨張弁13a(→気液分離器24)→室外熱交換器14→第2膨張弁13b→室内蒸発器17→アキュムレータ19→圧縮機111の吸入ポート11aの順に冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。
除湿暖房モードでは、第2開閉弁18bが閉じるので、圧縮機111は、単段昇圧式の圧縮機として機能する。このため、冷凍サイクル装置10aの除湿暖房モードの冷媒回路は、第1実施形態の除湿暖房モードの冷媒回路と実質的に同等となる。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、第1実施形態の除湿暖房モードと同様に、各種制御対象機器の作動を制御する。従って、除湿暖房モードでは、第1実施形態と同様に、室内蒸発器17にて冷却されて除湿された送風空気を、ヒータコア22にて再加熱して車室内に吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。
(c)暖房モード
暖房モードでは、空調制御装置40が、水ポンプ21を予め定めた圧送能力を発揮するように作動させる。また、空調制御装置40は、第1膨張弁13aを絞り状態とし、第2膨張弁13bを全閉状態とし、第1開閉弁18aを開き、第2開閉弁18bを開き、第3開閉弁18cを閉じる。
これにより、暖房モードの冷凍サイクル装置10aでは、図7の黒塗り矢印に示すように、圧縮機111→水−冷媒熱交換器12→第1膨張弁13a→気液分離器24→固定絞り25→室外熱交換器14(→迂回通路16)→アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、気液分離器24の気相冷媒出口から圧縮機111の中間圧ポート11bへ中間圧の気相冷媒を流入させる、ガスインジェクションサイクルが構成される。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、第1実施形態の暖房モードと同様に、各種制御対象機器の作動を制御する。
従って、暖房モードの冷凍サイクル装置10aでは、図9のモリエル線図に太破線で示すように冷媒の状態が変化する。なお、図9では、第1実施形態で説明した図3のモリエル線図とサイクル構成上同等の箇所の冷媒の状態を、図3と同一の符号(アルファベット)で示し、添字(数字)のみを変更している。このことは、以下で説明する他のモリエル線図においても同様である。
暖房モードでは、圧縮機111の吐出ポート11cから吐出された高圧冷媒(図9のa9点)が、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入する。水−冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入した冷媒は、水−冷媒熱交換器12の水通路を流通する冷却水と熱交換する(図9のa9点→b9点)。これにより、水循環回路20を循環する冷却水が加熱される。
さらに、暖房モードでは、エアミックスドア34がヒータコア22側の空気通路を全開としている。このため、ヒータコア22を流通する冷却水は、室内蒸発器17通過後の送風空気に放熱する。これにより、送風空気が加熱される。水−冷媒熱交換器12から流出した冷媒は、絞り状態となっている第1膨張弁13aへ流入して減圧される(図9のb9点→e9点)。
第1膨張弁13aにて減圧された中間圧冷媒は、気液分離器24へ流入して気液分離される(図9のe9点→f9点、e9点→g9点)。
気液分離器24にて分離された気相冷媒(図9のf9点)は、第2開閉弁18bが開いているので、圧縮機111の中間圧ポート11bから吸入される。圧縮機111の中間圧ポート11bから吸入された冷媒は、低段側圧縮機構から吐出された中間圧冷媒(図9のh9点)と合流して高段側圧縮機構へ吸入される。
気液分離器24にて分離された液相冷媒は(図9のg9点)は、第3開閉弁18cが閉じているので、固定絞り25へ流入して、低圧冷媒となるまで減圧される(図9のg9点→c9点)。固定絞り25から流出した冷媒は、室外熱交換器14へ流入する。室外熱交換器14へ流入した冷媒は、送風ファン14aから送風された外気と熱交換し、外気から吸熱して蒸発する(図9のc9点→d9点)。
室外熱交換器14から流出した冷媒は、アキュムレータ19へ流入する。アキュムレータ19にて分離された気相冷媒は、圧縮機111の吸入ポート11aへ吸入されて再び圧縮される。
従って、暖房モードでは、水−冷媒熱交換器12を放熱器として機能させ、室外熱交換器14を蒸発器として機能させるガスインジェクションサイクルが構成される。そして、室外熱交換器14にて冷媒が蒸発する際に外気から吸熱した熱を水−冷媒熱交換器12にて冷却水に放熱する。これにより、冷却水を加熱することができる。
この際、ガスインジェクションサイクルでは、サイクル内で生成された中間圧冷媒を圧縮機111にて昇圧過程の中間圧冷媒に合流させ、冷媒を多段階に昇圧させることで、圧縮機の圧縮効率を向上させることができる。これにより、ガスインジェクションサイクルでは、サイクルの高低圧差が冷房モードよりも大きくなる暖房モードであっても、COPの低下を抑制することができる。
その結果、暖房モードでは、ヒータコア22にて加熱された送風空気を車室内に吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。
(d)低騒音暖房モード
本実施形態の低騒音暖房モードでは、空調制御装置40が、暖房モードよりも、圧縮機11の冷媒吐出能力を予め定めた基準吐出能力分低下させる。また、空調制御装置40は、水ポンプ21の圧送能力を予め定めた基準圧送能力分低下させる。また、空調制御装置40は、送風機32の送風能力を予め定めた基準送風能力分低下させる。
さらに、空調制御装置40は、第1膨張弁13aの絞り開度を予め定めた基準開度分縮小させる。この際、空調制御装置40は、中間圧冷媒の圧力を上昇させることなく高圧冷媒の圧力を上昇させるように、第1膨張弁13aの絞り開度を縮小させる。従って、低騒音暖房モードでは、図9のモリエル線図の太実線に示すように、冷媒の状態が変化する。
低騒音暖房モードでは、暖房モードと同様に、圧縮機111の吐出ポート11cから吐出された高圧冷媒(図9のa91点)が、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入する。この際、暖房モードよりも圧縮機111の回転数が低下しているので、冷凍サイクル装置10aの低騒音化を図ることができる。その一方で、暖房モードよりも、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入する冷媒流量Gが減少する。
また、低騒音暖房モードでは、暖房モードよりも第1膨張弁13aの絞り開度が縮小している。このため、暖房モードのようにサイクルのCOPを極大値に近づけることはできないものの、暖房モードよりも圧縮機11から吐出された高圧冷媒(図9のa91点)の圧力が上昇する。これにより、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路を流通する冷媒の温度を上昇させることができる。
また、低騒音暖房モードでは、暖房モードよりも水ポンプ21の圧送能力を低下させるとともに、送風機32の送風能力を低下させる。このため、第1実施形態と同様に、低騒音暖房モードのエンタルピ差ΔH1を暖房モードのエンタルピ差ΔHよりも拡大させることができる。その他の作動は暖房モードと同様である。
従って、本実施形態の低騒音暖房モードでは、低騒音化のために圧縮機111の回転数を低下させても、上述したエンタルピ差の拡大によって、冷却水および送風空気の加熱能力の低下を抑制することができる。
すなわち、本実施形態の冷凍サイクル装置10aによれば、低騒音化が要求された際に、冷却水および送風空気の加熱能力の大幅な低下を招くことなく騒音を低減させることができる。
ここで、本実施形態では、低段側減圧装置として固定絞り25を採用した例を説明したが、低段側減圧装置として、第1膨張弁13a等と同様の構成の電気式の膨張弁を採用してもよい。
そして、空調制御装置40が、低騒音暖房モード時に高段側減圧装置である第1膨張弁13aの絞り開度を縮小させると同時に、低段側減圧装置としての電気式の膨張弁の絞り開度を拡大させてもよい。これにより、より一層確実に、中間圧冷媒の圧力を上昇させることなく高圧冷媒の圧力を上昇させて、エンタルピ差を拡大させることができる。
(第5実施形態)
本実施形態では、第4実施形態に対して、低騒音暖房モード時の制御態様を変更した例を説明する。従って、本実施形態の車両用空調装置1aおよび冷凍サイクル装置10aの構成は、第5実施形態と同様である。また、本実施形態の冷凍サイクル装置10aの冷房モード、除湿暖房モード、および暖房モードの作動は、第4実施形態と同様である。
本実施形態の低騒音暖房モードでは、空調制御装置40が、暖房モードよりも、圧縮機11の回転数を予め定めた基準回転数分低下させる。さらに、空調制御装置40は、第1膨張弁13aの絞り開度を予め定めた基準開度分拡大させる。
従って、低騒音暖房モードでは、図10のモリエル線図の太実線に示すように、冷媒の状態が変化する。なお、図10では、第4実施形態で説明した暖房モードの冷媒の状態の変化を太破線で示している。
本実施形態の低騒音暖房モードでは、暖房モードと同様に、圧縮機111の吐出ポート11cから吐出された高圧冷媒(図10のa101点)が、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入する。この際、暖房モードよりも圧縮機111の回転数が低下しているので、暖房モードよりも冷凍サイクル装置10の低騒音化を図ることができる。
ここで、本実施形態の低騒音暖房モードでは、暖房モードよりも第1膨張弁13aの絞り開度を拡大させるので、暖房モードのようにサイクルのCOPを極大値に近づけることができない。これに加えて、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路から流出する冷媒のエンタルピが暖房モードよりも上昇する。
このため、図10のモリエル線図に示すように、低騒音暖房モードのエンタルピ差ΔH1が、暖房モードのエンタルピ差ΔHよりも縮小してしまう。
これに対して、本実施形態の低騒音暖房モードでは、暖房モードよりも第1膨張弁13aの絞り開度が拡大しているので、暖房モードよりも中間圧冷媒(図10のf101点等)の圧力を上昇させることができる。そして、高段側圧縮機構に吸入される冷媒の密度を上昇させて、圧縮機111の吐出ポート11cから吐出される冷媒流量を増加させることができる。
これにより、圧縮機111の回転数を低下させても、水−冷媒熱交換器12の冷媒通路へ流入する冷媒流量Gを、暖房モードよりも増加させることができる。従って、本実施形態の低騒音暖房モードでは、低騒音化のために圧縮機111の回転数を低下させても、上述した中間圧冷媒の圧力上昇によって、冷却水および送風空気の加熱能力の低下を抑制することができる。
すなわち、本実施形態の冷凍サイクル装置10aによれば、低騒音化が要求された際に、冷却水および送風空気の加熱能力の大幅な低下を招くことなく騒音を低減させることができる。
ここで、本実施形態の低騒音暖房モード時のように、高段側減圧装置の絞り開度を拡大させることで、サイクルの高低圧差が縮小して水−冷媒熱交換器12を流通する冷媒の温度が低下してしまうおそれもある。これに対して、本発明者の検討によれば、所定の範囲内の絞り開度の拡大であれば、水−冷媒熱交換器12を流通する冷媒の流量増加によって、高低圧差が縮小し難いことが判っている。
さらに、本実施形態では、低段側減圧装置として固定絞り25を採用した例を説明したが、低段側減圧装置として、第1膨張弁13a等と同様の構成の電気式の膨張弁を採用してもよい。
そして、空調制御装置40が、低騒音暖房モード時に高段側減圧装置である第1膨張弁13aの絞り開度を拡大させると同時に、低段側減圧装置としての電気式の膨張弁の絞り開度を縮小させてもよい。これにより、より一層確実に、中間圧冷媒の圧力を上昇させて冷媒流量Gを増加させることができる。
(第6実施形態)
図11〜図16を用いて、本発明の第6実施形態と説明する。本実施形態では、本発明に係る冷凍サイクル装置10bを、第1実施形態と同様に、ハイブリッド車両の車両用空調装置1bに適用している。
この冷凍サイクル装置10bは、図11〜図14に示すように、冷房モードの冷媒回路(図11参照)、第1除湿暖房モードの冷媒回路(図12参照)、第2除湿暖房モードの冷媒回路(図13参照)、および暖房モード(図14参照)の冷媒回路を切り替え可能に構成されている。なお、図11〜図14では、各運転モードにおける冷媒の流れ方向を太実線矢印で記載している。
さらに、冷凍サイクル装置10bは、冷房モード時および暖房モード時に、冷媒減圧装置であるエジェクタに冷媒吸引作用および冷媒昇圧作用を発揮させるエジェクタ式冷凍サイクルを構成する。このため、冷凍サイクル装置10bは、冷却側エジェクタ63および加熱側エジェクタ62を備えている。
本実施形態の圧縮機11の吐出口には、第2実施形態と同様に、室内凝縮器121の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器121の冷媒出口には、第1四方弁61aの1つの出入口側が接続されている。第1四方弁61aは、後述する第2四方弁61b等とともに、冷凍サイクル装置10bの冷媒回路を切り替える冷媒回路切替装置としての機能を果たす。
第1四方弁61aは、室内凝縮器121の冷媒出口側と第3三方継手15cの1つ出入口側(具体的には、後述する加熱側エジェクタ62あるいは室外熱交換器14の一方の出入口側)とを接続すると同時に第2四方弁61bの1つの出入口側と第5三方継手15eの1つ出入口側(具体的には、後述する冷却側エジェクタ63あるいは室内蒸発器17の一方の出入口側)とを接続する冷媒回路に切り替えることができる。
さらに、第1四方弁61aは、室内凝縮器121の冷媒出口側と第5三方継手15eの1つ出入口側とを接続すると同時に第2四方弁61bの1つの出入口側と第3三方継手15cの1つ出入口側とを接続する冷媒回路に切り替えることができる。第1、第2四方弁61a、61bは、空調制御装置40から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
冷凍サイクル装置10bは、第3三方継手15cおよび第5三方継手15eに加えて、後述するように、第4三方継手15dおよび第6三方継手15fを備えている。これらの第3〜第6三方継手15c〜15fの基本的構成は、第1実施形態で説明した第1三方継手15aと同様である。
第3三方継手15cの別の出入口には、第3膨張弁13cを介して、加熱側エジェクタ62の加熱側ノズル部62aの入口側が接続されている。第3三方継手15cのさらに別の出入口には、第4膨張弁13dを介して、第4三方継手15dの1つ出入口側が接続されている。
冷凍サイクル装置10bは、第3膨張弁13cおよび第4膨張弁13dに加えて、後述するように、第5膨張弁13eおよび第6膨張弁13fを備えている。これらの第3〜第6膨張弁13c〜13fの基本的構成は、第1膨張弁13aと同様である。
第3〜第6膨張弁13c〜13fは、冷凍サイクル装置10bにおいて、冷媒減圧作用および冷媒流量調整作用を発揮する。さらに、第3〜第6膨張弁13c〜13fは、第1、第2膨張弁13a、13b、第1、第2四方弁61a、61bとともに、冷媒回路切替装置としての機能も兼ね備えている。
さらに、第3膨張弁13cは、加熱側エジェクタ62の加熱側ノズル部62aの上流側に配置されている。このため、第3膨張弁13cは、加熱側ノズル部62aへ流入する冷媒流量のみならず、冷媒のエンタルピ(換言すると、過冷却度あるいは乾き度)を変化させることができる。従って、第3膨張弁13cは、エンタルピ調整装置としての機能を果たす。
第4三方継手15dの別の出入口には、室外熱交換器14の一方の冷媒出入口側が接続されている。第4三方継手15dのさらに別の出入口には、第4開閉弁18dを介して、加熱側エジェクタ62の加熱側冷媒吸引口62c側が接続されている。
冷凍サイクル装置10bは、第4開閉弁18dに加えて、後述するように、第5開閉弁18eを備えている。第4、第5開閉弁18d、18eの基本的構成は、第1実施形態で説明した開閉弁18aと同様である。第4、第5開閉弁18d、18eは、第1〜第6膨張弁13a〜13f、第1、第2四方弁61a、61bとともに、冷媒回路切替装置としての機能を果たす。
室外熱交換器14の他方の冷媒出入口には、第1膨張弁13aを介して、後述する加熱側アキュムレータ19aの液相冷媒出入口側が接続されている。
次に、加熱側エジェクタ62は、少なくとも暖房モード時に、室内凝縮器121から流出した冷媒を減圧させる冷媒減圧装置としての機能を果たす。さらに、加熱側エジェクタ62は、高速度で噴射される噴射冷媒の吸引作用によって、室外熱交換器14の一方の冷媒出入口から流出した冷媒を吸引して輸送する冷媒輸送装置としての機能を果たす。
より具体的には、加熱側エジェクタ62は、加熱側ノズル部62aおよび加熱側ボデー部62bを有している。加熱側ノズル部62aは、冷媒の流れ方向に向かって徐々に先細る形状の金属製(本実施形態では、ステンレス製)の略円筒状部材で形成されている。そして、内部に形成された冷媒通路にて冷媒を等エントロピ的に減圧させるものである。
加熱側ノズル部62aの内部に形成された冷媒通路には、通路断面積が最も縮小した喉部(最小通路面積部)が形成され、さらに、この喉部から冷媒を噴射する冷媒噴射口へ向かうに伴って冷媒通路面積が拡大する末広部が形成されている。つまり、加熱側ノズル部62aは、ラバールノズルとして構成されている。
さらに、本実施形態では、加熱側ノズル部62aとして、冷凍サイクル装置10bの通常作動時に、冷媒噴射口から噴射される加熱側噴射冷媒の流速が音速以上となるように設定されたものが採用されている。もちろん、加熱側ノズル部62aを先細ノズルで構成してもよい。
加熱側ボデー部62bは、金属製(本実施形態では、アルミニウム合金製)の円筒状部材で形成されており、内部に加熱側ノズル部62aを支持固定する固定部材として機能するとともに、加熱側エジェクタ62の外殻を形成するものである。
より具体的には、加熱側ノズル部62aは、加熱側ボデー部62bの長手方向一端側の内部に収容されるように圧入にて固定されている。従って、加熱側ノズル部62aと加熱側ボデー部62bとの固定部(圧入部)から冷媒が漏れることはない。
また、加熱側ボデー部62bの外周面のうち、加熱側ノズル部62aの外周側に対応する部位には、その内外を貫通して加熱側ノズル部62aの冷媒噴射口と連通するように設けられた加熱側冷媒吸引口62cが形成されている。この加熱側冷媒吸引口62cは、加熱側ノズル部62aから噴射される加熱側噴射冷媒の吸引作用によって、室外熱交換器14から流出した冷媒を加熱側エジェクタ62の内部へ吸引する貫通穴である。
さらに、加熱側ボデー部62bの内部には、加熱側冷媒吸引口62cから吸引された吸引冷媒を加熱側ノズル部62aの冷媒噴射口側へ導く吸引通路、および吸引通路を介して加熱側エジェクタ62の内部へ流入した加熱側吸引冷媒と加熱側噴射冷媒とを混合させて昇圧させる加熱側昇圧部である加熱側ディフューザ部62dが形成されている。
加熱側ディフューザ部62dは、吸引通路の出口に連続するように配置されて、冷媒通路面積が徐々に拡大するように形成されている。これにより、加熱側噴射冷媒と加熱側吸引冷媒とを混合させながら、その流速を減速させて加熱側噴射冷媒と加熱側吸引冷媒との混合冷媒の圧力を上昇させる機能、すなわち、混合冷媒の速度エネルギを圧力エネルギに変換する機能を果たす。
加熱側ディフューザ部62dの冷媒出口には、加熱側アキュムレータ19aの入口側が接続されている。加熱側アキュムレータ19aは、加熱側エジェクタ62の加熱側ディフューザ部62dから流出した冷媒の気液を分離する気液分離部である。加熱側アキュムレータ19aには、分離された気相冷媒を流出させるための気相冷媒出入口と、分離された液相冷媒を流出させるための液相冷媒出入口が設けられている。
本実施形態では、加熱側アキュムレータ19aとして、比較的内容積の小さいものを採用している。このため、加熱側アキュムレータ19aでは、分離された液相冷媒を殆ど蓄えることなく液相冷媒出入口から流出させる。また、分離された液相冷媒のうち、液相冷媒出入口から流出させることのできない冷媒が、気相冷媒流出口から流出することもある。
加熱側アキュムレータ19aの気相冷媒出入口には、第2四方弁61bの別の出入口側が接続されている。
第2四方弁61bは、加熱側アキュムレータ19aの気相冷媒出入口側と第1四方弁61aの1つの出入口側とを接続すると同時に後述する冷却側アキュムレータ19bの気相冷媒出入口側と圧縮機11の吸入側に接続されたアキュムレータ19の入口側とを接続する冷媒回路に切り替えることができる。
さらに、第2四方弁61bは、加熱側アキュムレータ19aの気相冷媒出入口側と圧縮機11の吸入側に接続されたアキュムレータ19の入口側とを接続すると同時に冷却側アキュムレータ19bの気相冷媒出入口と第1四方弁61aの1つの出入口側とを接続する冷媒回路に切り替えることができる。
また、第1四方弁61aが接続された第5三方継手15eの別の出入口には、第5膨張弁13eを介して、冷却側エジェクタ63の冷却側ノズル部63aの入口側が接続されている。第5三方継手15eのさらに別の出入口には、第6膨張弁13fを介して、第6三方継手15fの1つ出入口側が接続されている。
第6三方継手15fの別の出入口には、室内蒸発器17の一方の冷媒出入口側が接続されている。第6三方継手15fのさらに別の出入口には、第5開閉弁18eを介して、冷却側エジェクタ63の冷却側冷媒吸引口63c側が接続されている。室内蒸発器17他方の冷媒出入口には、第2膨張弁13bを介して、冷却側アキュムレータ19bの液相冷媒出入口側が接続されている。
冷却側エジェクタ63の基本的構成は、加熱側エジェクタ62と同様である。従って、冷却側エジェクタ63は、冷却側ノズル部63a、冷却側ボデー63bを有している。そして、冷却側ボデー63bには、冷却側冷媒吸引口63c、冷却側昇圧部である冷却側ディフューザ部63dが形成されている。
冷却側ディフューザ部63dの冷媒出口には、冷却側アキュムレータ19bの入口側が接続されている。冷却側アキュムレータ19bは、冷却側エジェクタ63の冷却側ディフューザ部63dから流出した冷媒の気液を分離する機能を果たす。冷却側アキュムレータ19bには、分離された気相冷媒を流出させるための気相冷媒流出口と、分離された液相冷媒を流出させるための液相冷媒流出口が設けられている。
本実施形態では、冷却側アキュムレータ19bとして、加熱側アキュムレータ19aと同様に、比較的内容積の小さいものを採用している。このため、冷却側アキュムレータ19bでは、分離された液相冷媒を殆ど蓄えることなく液相冷媒出入口から流出させる。また、分離された液相冷媒のうち、液相冷媒出入口から流出させることのできない冷媒が、気相冷媒流出口から流出することもある。
冷却側アキュムレータ19bの気相冷媒出入口には、第2四方弁61bのさらに別の出入口側が接続されている。
また、本実施形態の空調制御装置40の出力側には、第1実施形態に対して、図15のブロック図に示すように、第3〜第6膨張弁13c〜13f、第4、第5開閉弁18d、18e、第1、第2四方弁61a、61bが接続され、水ポンプ21の接続は廃止されている。
ここで、第1膨張弁13aは、暖房モード時に室外熱交換器14へ流入する冷媒の流量を変化させて加熱側エジェクタ62の加熱側ディフューザ部62dにおける冷媒昇圧量を調整することができる。また、第3膨張弁13cは、暖房モード時に加熱側エジェクタ62の加熱側ノズル部62aへ流入する冷媒のエンタルピを変化させて加熱側ディフューザ部62dにおける冷媒昇圧量を調整することができる。
従って、本実施形態では、空調制御装置40のうち、第1〜第6膨張弁13a〜13fの作動を制御する構成が昇圧能力制御部40fとなる。その他の車両用空調装置1bおよび冷凍サイクル装置10bの構成は、第1実施形態で説明した車両用空調装置1および冷凍サイクル装置10の構成と同様である。
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。前述の如く、本実施形態の冷凍サイクル装置10bでは、冷房モード、第1除湿暖房モード、第2除湿暖房モード、暖房モード、除霜モードの運転を切り替えることができる。本実施形態の車両用空調装置1bの基本的作動は、第1実施形態で説明した車両用空調装置1と同様である。
さらに、本実施形態では、冷房スイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度KT以上になっており、かつ、外気温Tamが予め定めた除湿暖房基準温度KT2よりも高くなっている場合には、第1除湿暖房モードでの運転を実行する。また、冷房スイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度KT以上になっており、かつ、外気温Tamが除湿暖房基準温度KT2以下になっている場合には、第2除湿暖房モードでの運転を実行する。以下に、各運転モードについて説明する。
(a)冷房モード
冷房モードでは、空調制御装置40が、室内凝縮器121の冷媒出口側と第3三方継手15c側とを接続すると同時に第2四方弁61b側と第5三方継手15e側とを接続する冷媒回路に切り替えるように第1四方弁61aの作動を制御する。さらに、加熱側アキュムレータ19aの気相冷媒出入口側と第1四方弁61a側とを接続すると同時に冷却側アキュムレータ19bの気相冷媒出入口側とアキュムレータ19の入口側とを接続する冷媒回路に切り替えるように第2四方弁61bの作動を制御する。
また、空調制御装置40は、第1膨張弁13aを全開状態とし、第2膨張弁13bを絞り状態とし、第3膨張弁13cを全閉状態とし、第4膨張弁13dを全開状態とし、第5膨張弁13eを絞り状態とし、第6膨張弁13fを全閉状態とする。さらに、空調制御装置40は、第4開閉弁18dを閉じ、第5開閉弁18eを開く。
これにより、冷房モードでは、図11の太実線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器121(→第4膨張弁13d)→室外熱交換器14(→第1膨張弁13a)→加熱側アキュムレータ19a→第5膨張弁13e→冷却側エジェクタ63→冷却側アキュムレータ19b→アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、冷却側アキュムレータ19b→第2膨張弁13b→室内蒸発器17→冷却側エジェクタ63の冷却側冷媒吸引口63cの順に冷媒が循環するエジェクタ式冷凍サイクルが構成される。
空調制御装置40は、この冷媒回路の構成で、各種制御対象機器の作動を制御する。例えば、圧縮機11については、第1実施形態の冷房モードと同様に制御する。
また、空調制御装置40は、冷却側エジェクタ63の冷却側ノズル部63aへ流入する冷媒の圧力に基づいて、サイクルのCOPが極大値に近づくように第5膨張弁13eの作動を制御する。また、空調制御装置40は、予め空調制御装置40に記憶された冷房用の基準開度となるように、第2膨張弁13bの作動を制御する。また、空調制御装置40は、第1実施形態の冷房モードと同様にエアミックスドア34を変位させる。
従って、冷房モードの冷凍サイクル装置10bでは、室外熱交換器14を放熱器として機能させ、室内蒸発器17を蒸発器として機能させるエジェクタ式冷凍サイクルが構成される。そして室内蒸発器17にて冷媒が蒸発する際に送風空気から吸熱した熱を室外熱交換器14にて外気に放熱する。これにより、送風空気を冷却することができる。
その結果、冷房モードでは、室内蒸発器17にて冷却された送風空気を車室内に吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
さらに、冷房モードでは、冷却側エジェクタ63の冷却側ディフューザ部63dにて昇圧された冷媒を圧縮機11へ吸入させることができる。従って、蒸発器として機能する熱交換器(冷房モードでは、室内蒸発器17)における冷媒蒸発圧力と圧縮機11の吸入冷媒の圧力が同等となる通常の冷凍サイクル装置よりも圧縮機11の消費動力を低減させて、サイクルの成績係数COPを向上させることができる。
(b)第1除湿暖房モード
第1除湿暖房モードでは、空調制御装置40が、冷房モードと同様に第1、第2四方弁61a、61bの作動を制御する。
また、空調制御装置40は、第1膨張弁13aを全開状態とし、第2膨張弁13bを全開状態とし、第3膨張弁13cを全閉状態とし、第4膨張弁13dを絞り状態とし、第5膨張弁13eを全閉状態とし、第6膨張弁13f絞り状態とする。さらに、空調制御装置40は、第4開閉弁18dを閉じ、第5開閉弁18eを閉じる。
これにより、第1除湿暖房モードでは、図12の太実線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器121→第4膨張弁13d→室外熱交換器14(→第1膨張弁13a)→加熱側アキュムレータ19a→第6膨張弁13f→室内蒸発器17(→第2膨張弁13b)→冷却側アキュムレータ19b→アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。
従って、第1除湿暖房モードでは、室内凝縮器121、室外熱交換器14、および室内蒸発器17が冷媒流れに対してこの順で直列に接続される。
空調制御装置40は、この冷媒回路の構成で、各種制御対象機器の作動を制御する。例えば、圧縮機11については、冷房モードと同様に制御する。
また、空調制御装置40は、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、第4膨張弁13dの作動を制御する。この制御マップでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、絞り開度が縮小するように第4膨張弁13dの作動を制御する。
また、空調制御装置40は、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、第6膨張弁13fの作動を制御する。この制御マップでは、目標吹出温度TAOに基づいて、冷凍サイクル装置10bのCOPが極大値に近づくように、第6膨張弁13fの作動を制御する。このため、第6膨張弁13fの絞り開度は、第4膨張弁13dの絞り開度が縮小するに伴って拡大する。
また、空調制御装置40は、空調風温度センサ48によって検出された送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように、エアミックスドア34を駆動する電動アクチュエータの作動を制御する。
従って、第1除湿暖房モード時の冷凍サイクル装置10bでは、室内凝縮器121が放熱器として機能し、室内蒸発器17が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。さらに、室外熱交換器14における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高い場合には、室外熱交換器14は放熱器として機能し、室外熱交換器14における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低い場合には、室外熱交換器14は蒸発器として機能する。
そして、室外熱交換器14における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高い場合には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って室外熱交換器14の冷媒の飽和温度を低下させて、室外熱交換器14における冷媒の放熱量を減少させることができる。これにより、室内凝縮器121における冷媒の放熱量を増加させて加熱能力を向上させることができる。
また、室外熱交換器14における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低い場合には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って室外熱交換器14の冷媒の飽和温度を低下させて、室外熱交換器14における冷媒の吸熱量を増加させることができる。これにより、室内凝縮器121における冷媒の放熱量を増加させて加熱能力を向上させることができる。
その結果、第1除湿暖房モードでは、室内蒸発器17にて冷却されて除湿された送風空気を、室内凝縮器121にて再加熱して車室内に吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。
さらに、第1除湿暖房モードでは、第4膨張弁13dを絞り状態とすることによって、冷房モードよりも室外熱交換器14へ流入する冷媒の温度を低下させている。従って、冷房モードよりも室外熱交換器14における冷媒の温度と外気温との温度差を縮小することができ、第1除湿暖房モードよりも、室外熱交換器14における冷媒の放熱量を低減させることができる。
これにより、単に冷房モード時に送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくようにエアミックスドア34の作動を制御する場合に対して、サイクルを循環する循環冷媒流量を増加させることなく、室内凝縮器121における冷媒圧力を上昇させて、室内凝縮器121における送風空気の加熱能力を向上させることができる。
(c)第2除湿暖房モード
第2除湿暖房モードでは、空調制御装置40が、室内凝縮器121の冷媒出口側と第5三方継手15e側とを接続すると同時に第2四方弁61b側と第3三方継手15c側とを接続する冷媒回路に切り替えるように第1四方弁61aの作動を制御する。さらに、加熱側アキュムレータ19aの気相冷媒出入口側とアキュムレータ19の入口側とを接続すると同時に冷却側アキュムレータ19bの気相冷媒出入口側と第1四方弁61a側とを接続する冷媒回路に切り替えるように第2四方弁61bの作動を制御する。
また、空調制御装置40は、第1膨張弁13aを全開状態とし、第2膨張弁13bを全開状態とし、第3膨張弁13cを全閉状態とし、第4膨張弁13dを絞り状態とし、第5膨張弁13eを全閉状態とし、第6膨張弁13f絞り状態とする。さらに、空調制御装置40は、第4開閉弁18dを閉じ、第5開閉弁18eを閉じる。
これにより、第2除湿暖房モードでは、図13の太実線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器121→第6膨張弁13f→室内蒸発器17(→第2膨張弁13b)→冷却側アキュムレータ19b→第4膨張弁13d→室外熱交換器14(→第1膨張弁13a)→加熱側アキュムレータ19a→圧縮機11の吸入側に接続されたアキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。
従って、第2除湿暖房モードでは、室内凝縮器121、室内蒸発器17、および室外熱交換器14が冷媒流れに対してこの順で直列に接続される。
空調制御装置40は、この冷媒回路の構成で、各種制御対象機器の作動を制御する。例えば、圧縮機11については、冷房モードと同様に制御する。
また、空調制御装置40は、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、第6膨張弁13fの作動を制御する。この制御マップでは、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、絞り開度が縮小するように第6膨張弁13fの作動を制御する。
また、空調制御装置40は、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、第4膨張弁13dの作動を制御する。この制御マップでは、目標吹出温度TAOに基づいて、冷凍サイクル装置10bのCOPが極大値に近づくように、第4膨張弁13dの作動を制御する。このため、第4膨張弁13dの絞り開度は、第6膨張弁13fの絞り開度が縮小するに伴って増加する。
また、空調制御装置40は、空調風温度センサ48によって検出された送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように、エアミックスドア34を駆動する電動アクチュエータの作動を制御する。
従って、第2除湿暖房モード時の冷凍サイクル装置10bでは、室内凝縮器121が放熱器として機能し、室内蒸発器17および室外熱交換器14が蒸発器として機能する冷凍サイクルが構成される。
その結果、第2除湿暖房モードでは、室内蒸発器17にて冷却されて除湿された送風空気を室内凝縮器121にて再加熱して車室内へ吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。
さらに、第2除湿暖房モードでは、室外熱交換器14を蒸発器として機能させるとともに、室外熱交換器14における冷媒蒸発圧力を室内蒸発器17における冷媒蒸発圧力よりも低くしている。従って、第1除湿暖房モードよりも室外熱交換器14における冷媒の吸熱量を増加させ、室内凝縮器121における冷媒の放熱量を増加させることができる。
これにより、第1除湿暖房モードに対して、サイクルを循環する循環冷媒流量を増加させることなく、室内凝縮器121における冷媒圧力を上昇させることができる。従って、室内凝縮器121における送風空気の加熱能力を向上させて、送風空気を第1除湿暖房モードよりも高い温度帯まで昇温させることができる。
(d)暖房モード
暖房モードでは、空調制御装置40が、冷房モードと同様に、第1四方弁61aの作動を制御し、第2除湿暖房モードと同様に、第2四方弁61bの作動を制御する。また、空調制御装置40は、第1膨張弁13aを絞り状態とし、第3膨張弁13cを絞り状態とし、第4膨張弁13dを全閉状態とし、さらに、第4開閉弁18dを開く。
これにより、暖房モードでは、図14の太実線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器121→第3膨張弁13c→加熱側エジェクタ62→加熱側アキュムレータ19a→アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、加熱側アキュムレータ19a→第1膨張弁13a→室外熱交換器14→加熱側エジェクタ62の加熱側冷媒吸引口62cの順に冷媒が循環するエジェクタ式冷凍サイクルが構成される。
空調制御装置40は、この冷媒回路の構成で、各種制御対象機器の作動を制御する。例えば、圧縮機11については、第1実施形態と同様に制御する。
また、空調制御装置40は、第3膨張弁13cへ流入する冷媒の過冷却度が目標過冷却度となるように、第3膨張弁13cの作動を制御する。この目標過冷却度は、第3膨張弁13cへ流入する冷媒の圧力に基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、サイクルのCOPが極大値に近づくように決定される。
また、空調制御装置40は、予め空調制御装置40に記憶された暖房用の基準開度となるように、第1膨張弁13aの作動を制御する。また、空調制御装置40は、第1実施形態と同様にエアミックスドア34を変位させる。
従って、暖房モードの冷凍サイクル装置10bでは、図16のモリエル線図に太破線で示すように冷媒の状態が変化する。
暖房モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒(図16のa16点)が、室内凝縮器121へ流入する。暖房モードでは、エアミックスドア34が室内凝縮器121側の空気通路を全開としている。このため、高圧冷媒が送風空気に放熱する(図16のa16点→b16点)。これにより、送風空気が加熱される。
室内凝縮器121から流出した冷媒は、第3膨張弁13cへ流入して減圧される(図16のb16点→p16点)。この際、第3膨張弁13cの弁開度は、第1膨張弁13aへ流入する冷媒の過冷却度が目標過冷却度に近づくように調整される。
第3膨張弁13cにて減圧された冷媒は、加熱側エジェクタ62の加熱側ノズル部62aへ流入して、等エントロピ的に減圧されて噴射される(図16のp16点→q16点)。そして、この噴射冷媒の吸引作用によって、室外熱交換器14から流出した冷媒が、第4三方継手15dおよび第4開閉弁18dを介して加熱側エジェクタ62の加熱側冷媒吸引口62cから吸引される。
加熱側ノズル部62aから噴射された噴射冷媒および加熱側冷媒吸引口62cから吸引された吸引冷媒は、加熱側ディフューザ部62dへ流入する(図16のq16点→r16点、d16点→r16点)。
加熱側ディフューザ部62dでは、冷媒通路面積の拡大により、冷媒の速度エネルギが圧力エネルギに変換される。これにより、噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒の圧力が上昇する(図16のr16点→s16点)。加熱側ディフューザ部62dから流出した冷媒は加熱側アキュムレータ19aへ流入して気液分離される(図16のs16点→t16点、s16点→u16点)。
さらに、加熱側アキュムレータ19aにて分離された液相冷媒は、絞り状態となっている第1膨張弁13aにて等エンタルピ的に減圧される(図16のu16点→c16点)。第1膨張弁13aにて減圧された冷媒は、室外熱交換器14の他方の冷媒出入口から流入し、送風ファンから送風された外気から吸熱して蒸発する(図16のc16点→d16点)。
室外熱交換器14の一方の冷媒流入出口から流出した冷媒は、加熱側エジェクタ62の加熱側冷媒吸引口62cから吸引される。
加熱側アキュムレータ19aにて分離された気相冷媒(図16のs16点)は、第2四方弁61bを介して、アキュムレータ19へ流入する。アキュムレータ19から流出した気相冷媒は、圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
従って、暖房モードでは、室内凝縮器121を放熱器として機能させ、室外熱交換器14を蒸発器として機能させるエジェクタ式冷凍サイクルが構成される。そして、室外熱交換器14にて冷媒が蒸発する際に外気から吸熱した熱を室内凝縮器121にて送風空気に放熱して、送風空気を加熱することができる。
その結果、暖房モードでは、室内凝縮器121にて加熱された送風空気を車室内に吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。
さらに、暖房モードでは、加熱側エジェクタ62の加熱側ディフューザ部62dにて昇圧された冷媒を圧縮機11へ吸入させることができる。従って、蒸発器として機能する熱交換機(暖房モードでは、室外熱交換器14)における冷媒蒸発圧力と圧縮機11の吸入冷媒の圧力が同等となる通常の冷凍サイクル装置よりも圧縮機11の消費動力を低減させて、サイクルの成績係数COPを向上させることができる。
(e)低騒音暖房モード
本実施形態の低騒音暖房モードでは、空調制御装置40が、暖房モードよりも、圧縮機11の回転数を予め定めた基準回転数分低下させる。また、空調制御装置40は、送風機32の送風能力を予め定めた基準送風能力分低下させる。
さらに、空調制御装置40は、減圧装置である第1膨張弁13aの絞り開度を予め定めた基準開度分縮小させる。従って、低騒音暖房モードでは、図16のモリエル線図の太実線に示すように、冷媒の状態が変化する。
低騒音暖房モードでは、暖房モードと同様に、圧縮機11から吐出された高圧冷媒(図16のa161点)が、室内凝縮器121へ流入する。低騒音暖房モードでは、暖房モードよりも、圧縮機11の回転数が低下しているので、冷凍サイクル装置10bの低騒音化を図ることができる。その一方で、暖房モードよりも、室内凝縮器121へ流入する冷媒流量Gが減少する。
また、低騒音暖房モードでは、暖房モードよりも第1膨張弁13aの絞り開度が縮小している。このため、暖房モードのようにサイクルのCOPを極大値に近づけることはできないものの、暖房モードよりも加熱側エジェクタ62の加熱側ディフューザ部62dにおける昇圧量(図16のr161点とs161点との圧力差)を増加させることができる。
ここで、冷凍サイクル装置に適用されるエジェクタでは、ノズル部にて冷媒が減圧される際の運動エネルギの損失を、冷媒吸引口から冷媒を吸引し、ディフューザ部にて冷媒を昇圧させることによって回収している。このため、吸引冷媒の流量を減少させることで、回収したエネルギをディフューザ部における昇圧量を増加に用いることができる。
従って、低騒音暖房モードでは、第1膨張弁13aの絞り開度を縮小させることで、暖房モード時よりも加熱側ディフューザ部62dにおける昇圧量を増加させることができる。そして、圧縮機11に吸入される冷媒の密度を上昇させて、圧縮機11から吐出される冷媒流量を増加させることができる。これにより、圧縮機11の回転数を低下させても、室内凝縮器121の冷媒通路へ流入する冷媒流量Gを増加させることができる。
また、低騒音暖房モードでは、暖房モードよりも送風機32の送風能力を低下させる。このため、室内凝縮器121における冷媒の放熱量が低下し、暖房モードよりも室内凝縮器121を流通する冷媒の温度が上昇した状態でサイクルがバランスする。
その結果、低騒音暖房モードでは、室内凝縮器121の入口側の冷媒のエンタルピ(図16のa161点)から出口側の冷媒のエンタルピ(図16のb161点)を減算したエンタルピ差ΔH1を暖房モードのエンタルピ差ΔHよりも拡大させることができる。その他の作動は暖房モードと同様である。
従って、本実施形態の低騒音暖房モードでは、低騒音化のために圧縮機11の回転数を低下させても、上述した冷媒流量Gを増加およびエンタルピ差の拡大によって、送風空気の加熱能力の低下を抑制することができる。
すなわち、本実施形態の冷凍サイクル装置10bによれば、低騒音化が要求された際に、冷却水および送風空気の加熱能力(すなわち、車室内を暖房する暖房能力)の大幅な低下を招くことなく騒音を低減させることができる。
(第7実施形態)
本実施形態では、第6実施形態に対して、低騒音暖房モード時の制御態様を変更した例を説明する。従って、本実施形態の車両用空調装置1bおよび冷凍サイクル装置10bの構成は、第5実施形態と同様である。また、本実施形態の冷凍サイクル装置10bの冷房モード、第1除湿暖房モード、第2除湿暖房モード、および暖房モードの作動は、第6実施形態と同様である。
本実施形態の低騒音暖房モードでは、空調制御装置40が、暖房モードよりも、圧縮機11の回転数を予め定めた基準回転数分低下させる。また、空調制御装置40は、送風機32の送風能力を予め定めた基準送風能力分低下させる。
さらに、空調制御装置40は、圧縮機11の回転数(具体的には、圧縮機11の電動モータに出力される制御信号)に基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、エンタルピ調整装置である第3膨張弁13cの作動を制御する。
この制御マップでは、加熱側ノズル部62aへ流入する冷媒の乾き度xが0.5以上かつ0.8以下となるように、第3膨張弁13cの絞り開度を決定する。この乾き度xの範囲は、室内凝縮器121における送風空気の加熱能力を極大値に近づけることができるように決定された値である。
ここで、第6実施形態で説明したように、暖房モード時には、第3膨張弁13cへ流入する冷媒の過冷却度が目標過冷却度となるように、第3膨張弁13cの作動を制御している。これに対して、低騒音暖房モードでは、加熱側ノズル部62aへ流入する冷媒のエンタルピを増加させるため、暖房モードよりも第3膨張弁13cの絞り開度を拡大させる。
従って、本実施形態の低騒音暖房モードでは、図17のモリエル線図の太実線に示すように、冷媒の状態が変化する。なお、図17では、第6実施形態で説明した暖房モードの冷媒の状態の変化を太破線で示している。
本実施形態の低騒音暖房モードでは、暖房モードと同様に、圧縮機11から吐出された高圧冷媒(図17のa171点)が、室内凝縮器121へ流入する。低騒音暖房モードでは、暖房モードよりも、圧縮機11の回転数が低下しているので、冷凍サイクル装置10bの低騒音化を図ることができる。
また、低騒音暖房モードでは、加熱側ノズル部62aへ流入する冷媒のエンタルピを増加させるために、第3膨張弁13cの絞り開度を拡大させるので、暖房モードのようにサイクルのCOPを極大値に近づけることができない。これに加えて、室内凝縮器121から流出する冷媒のエンタルピが暖房モードよりも増加する。
このため、暖房モードよりも送風機32の送風能力を低下させても、図17のモリエル線図に示すように、低騒音暖房モードのエンタルピ差ΔH1が、暖房モードのエンタルピ差ΔHよりも縮小してしまう。
これに対して、本実施形態の低騒音暖房モードでは、加熱側ノズル部62aへ流入する冷媒のエンタルピを増加させるので、暖房モードよりも、加熱側エジェクタ62の加熱側ディフューザ部62dにおける昇圧量(図17のr171点とs171点との圧力差)を増加させることができる。
ここで、冷凍サイクル装置に適用されるエジェクタの回収エネルギ量は、ノズル部にて冷媒を等エントロピ的に減圧させた際の冷媒のエンタルピの低下量(すなわち、ノズル部へ流入する流入冷媒のエンタルピからノズル部から噴射された直後の噴射冷媒のエンタルピを減算したエンタルピ差)によって表すことができる。
さらに、回収エネルギ量は、ノズル部へ流入する乾き度xが高くなるに伴って、増加することが判っている。その理由は、ノズル部へ流入する乾き度xが高くなるに伴って、モリエル線図上の等エントロピ線の傾きが小さくなるからである。このため、ノズル部へ流入する冷媒の乾き度xを高くするに伴って、回収エネルギ量を増加させて、ディフューザ部における昇圧量を増加に用いることができる。
従って、低騒音暖房モードでは、第3膨張弁13cの絞り開度を拡大させることで、暖房モード時よりも加熱側ディフューザ部62dにおける昇圧量を増加させることができる。そして、圧縮機11に吸入される冷媒の密度を上昇させて、圧縮機11から吐出される冷媒流量を増加させることができる。これにより、圧縮機11の回転数を低下させても、室内凝縮器121の冷媒通路へ流入する冷媒流量Gを増加させることができる。
また、低騒音暖房モードでは、暖房モードよりも送風機32の送風能力を低下させる。このため、室内凝縮器121における冷媒の放熱量が低下し、暖房モードよりも室内凝縮器121を流通する冷媒の温度が上昇した状態でサイクルがバランスする。
従って、本実施形態の低騒音暖房モードでは、低騒音化のために圧縮機11の回転数を低下させても、上述した冷媒流量Gを増加によって、送風空気の加熱能力の低下を抑制することができる。
すなわち、本実施形態の冷凍サイクル装置10bによれば、低騒音化が要求された際に、冷却水および送風空気の加熱能力(すなわち、車室内を暖房する暖房能力)の大幅な低下を招くことなく騒音を低減させることができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の各実施形態では、本発明に係る冷凍サイクル装置10、10a、10bをハイブリッド車両の車両用空調装置1、1a、1bに適用した例を説明したが、冷凍サイクル装置10〜10bの適用はこれに限定されない。例えば、内燃機関(エンジン)から車両走行用の駆動力を得る通常の車両や、走行用電動モータから車両走行用の駆動力を得る電気自動車(燃料電池車両を含む)に搭載される車両用空調装置に適用してもよい。
(2)冷凍サイクル装置10〜10bの各構成機器は、上述の各実施形態に開示されたものに限定されない。
例えば、上述の実施形態では、圧縮機11として、電動圧縮機を採用した例を説明したが、圧縮機11はこれに限定されない。例えば、圧縮機11として、エンジン駆動式の可変容量型圧縮機等を採用してもよい。
また、第2、第6、第7実施形態では、加熱対象流体である送風空気の流量を調整する流量調整装置として、送風機32を採用した例を説明したが、流量調整装置は、これに限定されない。例えば、室内凝縮器121の送風空気流れ上流側に配置されたエアミックスドアを流量調整装置として利用してもよい。
さらに、第1〜第5実施形態では、ヒータコアへ流入する送風空気の風量を調整する風量調整装置として、送風機32を採用した例を説明したが、同様に、エアミックスドアを風量調整装置として利用してもよい。また、第1〜第5実施形態では、低騒音暖房モード時に、送風空気の風量を減少させた例を説明したが、風量を増加させず維持してもよい。
また、第4、第5実施形態では、高段側減圧装置である第1膨張弁13aにて中間圧冷媒となるまで減圧させた冷媒を気液分離器24へ流入させる冷凍サイクル装置10aについて説明したが、冷凍サイクル装置10aのサイクル構成はこれに限定されない。
例えば、水−冷媒熱交換器12から流出した冷媒の流れを分岐する分岐部(具体的には、三方継手)を設ける。そして、分岐された一方の冷媒を高段側減圧装置で中間圧冷媒となるまで減圧する。
さらに、第1膨張弁13aにて減圧された中間圧冷媒と分岐部にて分岐された他方の冷媒とを熱交換させる内部熱交換器を設ける。そして、内部熱交換器にて蒸発した中間圧冷媒を圧縮機111の中間圧ポート11bへ吸入させ、内部熱交換器にて冷却された高圧冷媒を低段側減圧装置にて低圧冷媒となるまで減圧させるサイクル構成であってもよい。
また、上述の実施形態で説明した各構成機器を一体化したものを採用してもよい。例えば、第4実施形態で説明した第2開閉弁18b、第3開閉弁18c、気液分離器24、固定絞り25、および固定絞り迂回通路16a等を一つのハウジングに収容することによって統合弁として構成してもよい。
さらに、第6実施形態で説明した第3膨張弁13c、加熱側エジェクタ62、加熱側アキュムレータ19a等を一体化(モジュール化)してもよい。この場合は、加熱側エジェクタ62の加熱側ノズル部62aの通路内にニードル状、あるいは円錐状の弁体を配置し、この弁体を変位させることで、第3膨張弁13cと同様の機能を発揮させるようにしてもよい。同様に、第5膨張弁13e、冷却側エジェクタ63、冷却側アキュムレータ19b等を一体化(モジュール化)してもよい。
また、上述の実施形態では、冷媒回路を切替可能に構成された冷凍サイクル装置10〜10bについて説明したが、冷媒回路の切り替えは必須ではない。少なくとも暖房モードおよび低騒音暖房モードでの運転が実行可能であれば、低騒音化が要求された際に、加熱能力の低下を招くことなく、低騒音化を実現する効果を得ることができる。
また、上述の実施形態では、冷凍サイクル装置10〜10bの冷媒としてR134aを採用した例を説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R1234yf、R600a、R410A、R404A、R32、R407C等を採用してもよい。または、これらの冷媒のうち複数種を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。
さらに、冷媒としてR744(二酸化炭素)を採用して、サイクルの高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルを構成してもよい。超臨界冷凍サイクルでは、水−冷媒熱交換器12あるいは室内凝縮器121の入口側冷媒の温度と出口側冷媒との温度差や、水−冷媒熱交換器12あるいは室内凝縮器121における加熱対象流体の温度上昇量等に基づいてエンタルピ差ΔHを調整してもよい。
なお、超臨界冷凍サイクルでは、水−冷媒熱交換器12あるいは室内凝縮器121にて、冷媒は凝縮することなく超臨界状態のまま放熱する。従って、室内凝縮器121は、冷媒放熱器として機能する。
(3)上述の各実施形態の低騒音化判定部では、車両の車速が基準車速以下となっている際に低騒音要求条件が成立したと判定するものを採用しているが、低騒音化判定部はこれに限定されない。
例えば、操作パネル50に乗員の操作によって低騒音化を要求する低騒音化スイッチ(低騒音化要求部)を配置し、低騒音化スイッチが投入(ON)された際に、低騒音要求条件が成立したと判定するようにしてもよい。
また、例えば、空調装置に適用される冷凍サイクル装置においては、空調の開始後、空調対象空間の温度が予め定めた基準温度範囲内となった際に、低騒音要求条件が成立したと判定するようにしてもよい。基準温度範囲としては、利用者が快適に感じる温度範囲等を採用することができる。このような温度範囲内では、空調対象空間の温度や湿度よりも、冷凍サイクル装置の騒音が耳障りとなりやすい。従って、低騒音暖房モードでの運転は有効である。
また、例えば、冷凍サイクル装置を作動させる時間が基準時間帯となった際に、低騒音要求条件が成立したと判定するようにしてもよい。基準時間帯としては、深夜時間帯(22時〜6時)等を採用することができる。深夜時間帯では、外部からの騒音が少なくなり、冷凍サイクル装置の騒音が利用者にとって耳障りとなりやすい。従って、低騒音暖房モードでの運転は有効である。
(4)上述の各実施形態で開示された技術手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
例えば、第4、第5実施形態では、ガスインジェクションサイクルに切替可能な冷凍サイクル装置10aにおいて、加熱用熱交換器として水−冷媒熱交換器12を採用した例を説明したが、もちろん、第2実施形態等と同様に、加熱用熱交換器として室内凝縮器121を採用し、高圧冷媒を熱源として直接的に送風空気を加熱するようになっていてもよい。
また、第6、第7実施形態では、エジェクタ式冷凍サイクルに切替可能な冷凍サイクル装置10bにおいて、加熱用熱交換器として室内凝縮器121を採用した例を説明したが、もちろん、第1実施形態等と同様に、加熱用熱交換器として室内凝縮器121を採用し、高圧冷媒を熱源として、熱媒体(すなわち、冷却水)を介して、間接的に送風空気を加熱するようになっていてもよい。
この場合は、低騒音暖房モード時に、送風機32の送風能力を低下させるだけでなく、水ポンプ21の圧送能力を低下させてもよい。さらに、第5実施形態においても、低騒音暖房モード時に、水ポンプ21の圧送能力および送風機32の送風能力に少なくとも一方を低下させてもよい。