(第1実施形態)
図1〜図14により、本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態では、本発明に係る統合弁20を備えるエジェクタ式冷凍サイクル10を、車両走行用の駆動力を走行用電動モータから得る電気自動車に搭載される車両用空調装置1に適用している。エジェクタ式冷凍サイクル10は、車両用空調装置1において、空調対象空間である車室内へ送風される送風空気を加熱あるいは冷却する機能を果たす。従って、エジェクタ式冷凍サイクル10の熱交換対象流体は、送風空気である。
エジェクタ式冷凍サイクル10は、図1〜図5の全体構成図に示すように、冷媒減圧装置として加熱側エジェクタ16、冷却側エジェクタ22等を備える蒸気圧縮式の冷凍サイクル装置である。
エジェクタ式冷凍サイクル10は、冷房モードの冷媒回路(図1参照)、第1除湿暖房モードの冷媒回路(図1参照)、第2除湿暖房モードの冷媒回路(図2参照)、第3除湿暖房モードの冷媒回路(図3参照)、暖房モードの冷媒回路(図4参照)、除霜モードの冷媒回路(図5参照)を切替可能に構成されている。なお、図1〜図5では、それぞれの運転モードにおける冷媒の流れ方向を実線矢印で示している。
冷房モードは、送風空気を冷却して車室内を冷房する運転モードである。第1除湿暖房モードは、冷却して除湿された送風空気を再加熱して車室内の除湿暖房を行う運転モードである。第2除湿暖房モードは、冷却して除湿された送風空気を第1除湿暖房モードよりも高い加熱能力で送風空気を再加熱して車室内の除湿暖房を行う運転モードである。第3除湿暖房モードは、冷却して除湿された送風空気を第2除湿暖房モードよりも高い加熱能力で送風空気を再加熱して車室内の除湿暖房を行う運転モードである。暖房モードは、送風空気を加熱して車室内を暖房する運転モードである。除霜モードは、後述する室外熱交換器17に着霜が生じた際にこれを取り除くための運転モードである。
また、エジェクタ式冷凍サイクル10では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない蒸気圧縮式の亜臨界冷凍サイクルを構成している。さらに、冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
エジェクタ式冷凍サイクル10の構成機器のうち、圧縮機11は、車両ボンネット内に配置され、エジェクタ式冷凍サイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。本実施形態では、圧縮機11として、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機を採用している。圧縮機11は、後述する空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御される。
圧縮機11の吐出口には、室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、後述する室内空調ユニット30において送風空気の空気通路を形成するケーシング31内に配置されている。室内凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と後述する室内蒸発器23通過後の送風空気とを熱交換させて、高圧冷媒を熱源として送風空気を加熱する加熱用熱交換器である。室内空調ユニット30の詳細については後述する。
室内凝縮器12の冷媒出口には、第1三方継手13aの1つ流入出口側が接続されている。さらに、エジェクタ式冷凍サイクル10では、後述するように、第2〜第6三方継手13b〜13fを備えている。第2〜第6三方継手13b〜13fの基本的構成は、第1三方継手13aと同様である。
これらの三方継手のうち、例えば、第3除湿暖房モード時の第1三方継手13aでは、3つの流入出口のうち1つが流入口として用いられ、残りの2つが流出口として用いられている。従って、第3除湿暖房モード時の第1三方継手13aは、流入口から流入した冷媒の流れを分岐して流出口から流出させる分岐部としての機能を果たす。
また、例えば、第3除湿暖房モード時の第5三方継手13eでは、3つの流入出口のうち2つが流入口として用いられ、残りの1つが流出口として用いられている。従って、第3除湿暖房モード時の第5三方継手13eは、2つの流入口から流入した冷媒を合流させて流出口から流出させる合流部としての機能を果たす。
第1三方継手13aの一方の流出口には、第1開閉弁14aを介して、第2三方継手13bの1つの流入出口側が接続されている。第1三方継手13aの他方の流出口には、第1流量調整弁15aを介して、後述する加熱側エジェクタ16の加熱側ノズル部16aの入口側が接続されている。
第1開閉弁14aは、第1三方継手13aの一方の流出口から第2三方継手13bの1つの流入出口へ至る冷媒通路を開閉する電磁弁である。さらに、エジェクタ式冷凍サイクル10では、後述するように、第2、第3開閉弁14b、14cを備えている。第2、第3開閉弁14b、14cの基本的構成は、第1開閉弁14aと同様である。
これらの第1〜第3開閉弁14a〜14cは、冷媒通路を開閉することで、上述した各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、第1〜第3開閉弁14a〜14cは、冷媒回路切替装置としての機能を果たす。第1〜第3開閉弁14a〜14cは、空調制御装置40から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
第1流量調整弁15aは、冷媒通路の開度を変化させる弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータ(具体的には、ステッピングモータ)とを有して構成される電気式の可変絞り機構である。第1流量調整弁15aは、少なくとも暖房モード時に、加熱側エジェクタ16の加熱側ノズル部16aへ流入する冷媒流量を調整する加熱側流量調整弁としての機能を果たす。
さらに、エジェクタ式冷凍サイクル10では、後述するように、第2〜第4流量調整弁15b〜15dを備えている。第2〜第4流量調整弁15b〜15dの基本的構成は、第1流量調整弁15aと同様である。
これらの第1〜第4流量調整弁15a〜15dは、弁開度を全開にすることで流量調整作用および冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能、および弁開度を全閉にすることで冷媒流路を閉塞する全閉機能を有している。
そして、この全開機能および全閉機能により、第1〜第4流量調整弁15a〜15dは、各運転モードの冷媒回路を切り替えることができる。従って、第1〜第4流量調整弁15a〜15dは、第1〜第3開閉弁14a〜14cとともに、冷媒回路切替装置としての機能も兼ね備えている。第1〜第4流量調整弁15a〜15dは、空調制御装置40から出力される制御信号(制御パルス)によって、その作動が制御される。
第2三方継手13bの別の流入出口には、第2流量調整弁15bを介して、第3三方継手13cの1つの流入出口側が接続されている。第2三方継手13bのさらに別の流入出口には、統合弁20の第1副冷媒通路212の一方の出入口212a側が接続されている。
第3三方継手13cの別の流入出口には、統合弁20の第2副冷媒通路213の出入口213a側が接続されている。第3三方継手13cのさらに別の流入出口には、室外熱交換器17の一方の冷媒出入口側が接続されている。
室外熱交換器17は、車両ボンネット内に配置されて、内部を流通する冷媒と図示しない送風ファンから送風された外気とを熱交換させる熱交換器である。室外熱交換器17は、冷房モードおよび第1除湿暖房モードでは、高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能する。第2除湿暖房モード、第3除湿暖房モード、および暖房モードでは、冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。
室外熱交換器17の他方の冷媒出入口には、統合弁20の主冷媒通路211の一方の出入口211a側が接続されている。統合弁20は、1つの電動式の駆動装置230によって、内部に形成された主冷媒通路211の絞り開度を調整すると同時に、内部に形成された複数の副冷媒通路(本実施形態では、第1副冷媒通路212および第2副冷媒通路213)を開閉する機能を有している。
統合弁20の詳細構成については、図6、図7を用いて説明する。なお、図6は、主冷媒通路211が冷媒減圧作用を殆ど発揮しない全開状態となっている際の統合弁20の模式的な断面図である。図7は、主冷媒通路211が冷媒減圧作用を発揮する絞り状態となっている際の統合弁20の模式的な断面図である。
統合弁20は、図6、図7に示すように、金属製あるいは樹脂製の複数の構成部材を組み合わせることによって、角柱状あるいは円柱状に形成されたボデー200を備えている。ボデー200は、統合弁20の外殻を形成するとともに、内部に絞り弁221、第1差圧弁222、第2差圧弁223、シャッター弁224等を収容するハウジングとしての機能を果たす。
さらに、ボデー200の内部には、主冷媒通路211、第1副冷媒通路212、第2副冷媒通路213、低圧側導入通路214といった冷媒通路、および圧力空間215、第1作動空間216、第2作動空間217といった内部空間が形成されている。
主冷媒通路211は、室外熱交換器17の他方の冷媒出入口と後述する加熱側アキュムレータ19の一方の液相冷媒流入出口とを接続して冷媒を流通させる冷媒通路である。このため、ボデー200には、室外熱交換器17の他方の冷媒出入口側が接続される主冷媒通路211の一方の出入口211a、および加熱側アキュムレータ19の一方の液相冷媒流入出口が接続される主冷媒通路211の他方の出入口211bが形成されている。
第1副冷媒通路212は、第2三方継手13bの1つの流入出口(すなわち、室内凝縮器12の冷媒出口)側と第4三方継手13dの1つの流入出口(すなわち、後述する電気式三方弁21の入口)側とを接続して冷媒を流通させる冷媒通路である。このため、ボデー200には、第2三方継手13bの1つの流入出口側が接続される第1副冷媒通路212の一方の出入口212a、および第4三方継手13dの1つの流入出口側が接続される第1副冷媒通路212の他方の出入口212bが形成されている。
第2副冷媒通路213は、第3三方継手13cの1つの流入出口(すなわち、室外熱交換器17の一方の冷媒出入口)側と加熱側エジェクタ16の加熱側冷媒吸引口16c側とを接続して冷媒を流通させる冷媒通路である。このため、ボデー200には、第2三方継手13cの1つの流入出口側が接続される第2副冷媒通路213の一方の出入口213a、および加熱側エジェクタ16の加熱側冷媒吸引口16c側が接続される第2副冷媒通路213の他方の出入口213bが形成されている。
低圧側導入通路214は、ボデー200の内部に形成された圧力空間215へエジェクタ式冷凍サイクル10の低圧側冷媒を導く冷媒通路である。従って、圧力空間215は、低圧側導入通路214を介して、エジェクタ式冷凍サイクル10の低圧側冷媒を導入させる空間である。
ここで、低圧側冷媒とは、冷凍サイクル装置において冷媒減圧作用を発揮する減圧装置の出口側から圧縮機11の吸入口側へ至る冷媒流路を流通する冷媒と定義することができる。
従って、冷凍サイクル装置においては、蒸発器として機能する熱交換器における冷媒蒸発圧力と同等の圧力となっている冷媒、あるいは圧縮機11へ吸入される吸入冷媒と同等の圧力となっている冷媒を低圧側冷媒と定義してもよい。さらに、エジェクタ式冷凍サイクルにおいては、吸入冷媒と同等の圧力あるいは吸入冷媒よりも低い圧力になっている冷媒を低圧側冷媒と定義してもよい。
そこで、本実施形態の統合弁20では、図1〜図5の破線で模式的に示すように、低圧側導入通路214を圧縮機11の吸入口側に接続している。そして、圧力空間215に吸入冷媒を導入させるようにしている。すなわち、本実施形態における冷凍サイクル装置の低圧側冷媒は、圧縮機11の吸入冷媒である。
次に、主冷媒通路211の内部には、絞り弁221の弁体部221aが配置されている。絞り弁221は、金属で形成されており、主冷媒通路211の通路断面積(すなわち、絞り開度)を変化させる弁体である。より具体的には、絞り弁221は、弁体部221a、連結部221bを有している。
絞り弁221の弁体部221aは、円錐台状に形成されており、中心軸方向に変位することによって、主冷媒通路211の絞り開度を変化させる部位である。絞り弁221の連結部221bは、円柱状に形成されており、弁体部221aと駆動装置230とを連結させる部位である。
駆動装置230は、ボデー200の外部に配置されており、絞り弁221を弁体部221aの中心軸方向へ変位させる電動アクチュエータ(具体的には、ステッピングモータ)である。駆動装置230は、空調制御装置40から出力される制御信号(制御パルス)によって、その作動が制御される。
また、主冷媒通路211の内部には、シャッター弁224の筒状部224bの一端側が配置されている。シャッター弁224は、金属で形成されており、低圧側導入通路214を開閉する弁体である。より具体的には、シャッター弁224は、弁体部224a、筒状部224bを有している。
シャッター弁224の弁体部224aは、筒状部224bの他端側に形成されて、圧力空間215の内部に配置されている。弁体部224aは、円板状に形成されており、中心軸方向に変位することによって、低圧側導入通路214を開閉する部位である。より詳細には、シャッター弁224の弁体部224aは、中心軸方向に変位して、ボデー200の圧力空間215を形成する部位に形成されたシート部215aに当接することによって、低圧側導入通路214を閉塞する。
シート部215aは、低圧側導入通路214の圧力空間215側の開口部の周囲に形成された円環状の突出部である。弁体部224aのシート部215aに当接する部位には、円環状に形成されたゴム製のシール部材が配置されている。これにより、弁体部224aがシート部215aに当接すると、低圧側導入通路214が閉塞される。
また、圧力空間215の内部には、シャッター弁224(具体的には、弁体部224a)に対して、低圧側導入通路214を閉じる側の荷重をかけるコイルバネ215bが配置されている。
シャッター弁224の筒状部224bは、ボデー200に形成されて圧力空間215と主冷媒通路211とを連通させる断面円形状の連通穴の内部に配置されている。筒状部224bは、円筒状に形成されている。弁体部224aの中心軸、筒状部224bの中心軸、および連通穴の中心軸は、互いに同軸上に配置されている。
この連通穴の内径と筒状部224bの外径は、隙間バメの関係になっており、筒状部224bは、中心軸方向へ摺動可能に配置されている。なお、この連通穴の内周面と筒状部224bの外周面との隙間には、シール部材としてのOリングが配置されており、これらの隙間から冷媒が漏れることはない。
筒状部224bの内部には、圧力空間215と主冷媒通路211とを連通させる連通路224cが形成されている。さらに、筒状部224bの中心軸と絞り弁221の中心軸は同軸上に配置されている。このため、駆動装置230が、絞り弁221をシャッター弁224側へ変位させると、絞り弁221の弁体部221aの端面が筒状部224bの一端側の先端部に当接する。
弁体部221aの端面のうち、筒状部224bの先端部に当接する部位には、円環状に形成されたゴム製のシール部材が配置されている。これにより、弁体部221aの端面が筒状部224bの一端側の先端部に当接すると、連通路224cが閉塞される。
さらに、絞り弁221の弁体部221aの端面が筒状部224bの先端部に当接した状態で、駆動装置230が絞り弁221をシャッター弁224側へ変位させると、シャッター弁224と絞り弁221が一体となって変位する。従って、駆動装置230は、絞り弁221およびシャッター弁224の双方を変位させる機能を有している。
そして、絞り弁221の弁体部221aが主冷媒通路211の内壁面に近づいて、主冷媒通路211の絞り開度が縮小する。同時に、シャッター弁224の弁体部224aがボデー200のシート部215aから離れて、低圧側導入通路214が開く。つまり、統合弁20において、絞り弁221が主冷媒通路211の絞り開度を縮小させる側の変位方向は、シャッター弁224が低圧側導入通路214を開く側の変位方向と一致している。
第1作動空間216は、圧力空間215に連通するように形成された円柱状の空間である。第1作動空間216は、第1差圧弁222のシリンダ部222bを収容する空間である。第1差圧弁222は、金属で形成されており、第1副冷媒通路212を開閉する弁体である。より具体的には、弁体部222a、シリンダ部222b、連結部222cを有している。
第1差圧弁222の弁体部222aは、円錐台状に形成されており、中心軸方向に変位することによって、第1副冷媒通路212を開閉する部位である。具体的には、第1差圧弁222の弁体部222aは、第1副冷媒通路212の内壁面に当接することによって、第1副冷媒通路212を閉塞する。
シリンダ部222bは、円柱状に形成されており、第1作動空間216内の冷媒圧力を受ける受圧部である。第1作動空間216の内径とシリンダ部222bの外径は、隙間バメの関係になっている。シリンダ部222bは、第1作動空間216内に中心軸方向へ摺動可能に配置されている。
第1作動空間216の内周面とシリンダ部222bの外周面との隙間には、シール部材としてのOリングが配置されており、これらの隙間から冷媒が漏れることはない。従って、シリンダ部222bは、第1作動空間216内を2つの空間に仕切っている。
第1作動空間216内に仕切られた空間のうち、圧力空間215側に配置された一方の空間は、圧力空間215に連通している。また、圧力空間215の反対側であって弁体部222a側の他方の空間は、ボデー200の内部あるいは外部で、低圧側導入通路214に連通している。従って、シリンダ部222bは、圧力空間215内の冷媒圧力と低圧側冷媒の圧力とを受圧して変位する。
第1差圧弁222の連結部222cは、円柱状に形成されており、弁体部222aとシリンダ部222bとを連結させる部位である。連結部222cは、ボデー200に形成されて第1作動空間216の他方の空間と第1副冷媒通路212とを連通させる断面円形状の連通穴の内部に配置されている。
従って、弁体部222aは、シリンダ部222bの変位に連動して変位する。換言すると、第1差圧弁222は、圧力空間215内の冷媒圧力と低圧側冷媒の圧力との圧力差に応じて、第1副冷媒通路212を開閉するものである。なお、この連通穴の内周面と連結部222cの外周面との隙間には、シール部材としてのOリングが配置されており、これらの隙間から冷媒が漏れることはない。
さらに、第1作動空間216の他方の空間の内部には、第1差圧弁222に対して、第1副冷媒通路212を開く側の荷重をかけるコイルバネ216bが配置されている。また、圧力空間215と第1作動空間216の一方の空間とを連通させる供給通路には、この供給通路の通路断面積を縮小させる第1縮小部216aが配置されている。
第2作動空間217は、第1作動空間216と同様に、圧力空間215に連通するように形成された円柱状の空間である。第2作動空間217は、第2差圧弁223のシリンダ部223bを収容する空間である。第2差圧弁223の基本的構成は、第1差圧弁222と同様である。従って、第2差圧弁223も、第1差圧弁222と同様に、弁体部223a、シリンダ部223b、連結部223cを有している。
第2差圧弁223のシリンダ部223bは、第2作動空間217内を2つの空間に仕切っている。第2作動空間217内に仕切られた空間のうち、圧力空間215側に配置された一方の空間は、圧力空間215に連通している。他方の空間は、ボデー200の内部あるいは外部で、低圧側導入通路214に連通している。
さらに、第2作動空間217の他方の空間の内部には、第2差圧弁223に対して、第2副冷媒通路213を開く側の荷重をかけるコイルバネ217bが配置されている。また、圧力空間215と第2作動空間217の一方の空間とを連通させる供給通路には、この供給通路の通路断面積を縮小させる第2縮小部217aが配置されている。
次に、加熱側エジェクタ16は、少なくとも第3除湿暖房モードおよび暖房モード時に、室内凝縮器12から流出した冷媒を減圧させる減圧装置としての機能を果たす。さらに、加熱側エジェクタ16は、高速度で噴射される噴射冷媒の吸引作用によって、室外熱交換器17から流出した冷媒を吸引して輸送する冷媒輸送装置としての機能を果たす。
より具体的には、加熱側エジェクタ16は、加熱側ノズル部16aおよび加熱側ボデー部16bを有している。加熱側ノズル部16aは、冷媒の流れ方向に向かって徐々に先細る形状の金属製(本実施形態では、ステンレス製)の略円筒状部材で形成されている。そして、内部に形成された冷媒通路にて冷媒を等エントロピ的に減圧させるものである。
加熱側ノズル部16aの内部に形成された冷媒通路には、通路断面積が最も縮小した喉部(最小通路面積部)が形成され、さらに、この喉部から冷媒を噴射する冷媒噴射口へ向かうに伴って冷媒通路面積が拡大する末広部が形成されている。つまり、加熱側ノズル部16aは、ラバールノズルとして構成されている。
さらに、本実施形態では、加熱側ノズル部16aとして、エジェクタ式冷凍サイクル10の通常作動時に、冷媒噴射口から噴射される噴射冷媒の流速が音速以上となるように設定されたものが採用されている。もちろん、加熱側ノズル部16aを先細ノズルで構成してもよい。
加熱側ボデー部16bは、金属製(本実施形態では、アルミニウム合金製)の円筒状部材で形成されており、内部に加熱側ノズル部16aを支持固定する固定部材として機能するとともに、加熱側エジェクタ16の外殻を形成するものである。より具体的には、加熱側ノズル部16aは、加熱側ボデー部16bの長手方向一端側の内部に収容されるように圧入にて固定されている。従って、加熱側ノズル部16aと加熱側ボデー部16bとの固定部(圧入部)から冷媒が漏れることはない。
また、加熱側ボデー部16bの外周面のうち、加熱側ノズル部16aの外周側に対応する部位には、その内外を貫通して加熱側ノズル部16aの冷媒噴射口と連通するように設けられた加熱側冷媒吸引口16cが形成されている。
加熱側冷媒吸引口16cは、加熱側ノズル部16aから噴射される噴射冷媒の吸引作用によって、室外熱交換器17から流出した冷媒を、統合弁20の第2副冷媒通路213および逆止弁18を介して、加熱側エジェクタ16の内部へ吸引する貫通穴である。
逆止弁18は、統合弁20の第2副冷媒通路213の出入口213bと加熱側冷媒吸引口16cとを接続する冷媒通路に配置されている。この逆止弁18は、統合弁20の第2副冷媒通路213の出入口213b側から加熱側エジェクタ16の加熱側冷媒吸引口16c側へ冷媒が流れることのみを許容するものである。
加熱側ボデー部16bの内部には、加熱側冷媒吸引口16cから吸引された吸引冷媒を加熱側ノズル部16aの冷媒噴射口側へ導く吸引通路、および吸引通路を介して加熱側エジェクタ16の内部へ流入した吸引冷媒と噴射冷媒とを混合させて昇圧させる加熱側昇圧部である加熱側ディフューザ部16dが形成されている。
加熱側ディフューザ部16dは、吸引通路の出口に連続するように配置されて、冷媒通路面積が徐々に拡大するように形成されている。これにより、噴射冷媒と吸引冷媒とを混合させながら、その流速を減速させて噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒の圧力を上昇させる機能、すなわち、混合冷媒の速度エネルギを圧力エネルギに変換する機能を果たす。
加熱側ディフューザ部16dの冷媒出口には、加熱側アキュムレータ19の流入口側が接続されている。加熱側アキュムレータ19は、加熱側エジェクタ16の加熱側ディフューザ部16dから流出した冷媒の気液を分離する気液分離器である。加熱側アキュムレータ19には、分離された気相冷媒を流出させるための気相冷媒流出口と、分離された液相冷媒を流入出させるための2つの液相冷媒流入出口が設けられている。
加熱側アキュムレータ19の気相冷媒流出口には、第5三方継手13eの一方の冷媒流入口が接続されている。加熱側アキュムレータ19の気相冷媒流出口と第5三方継手13eの一方の冷媒流入口とを接続する冷媒通路には、第2開閉弁14bが配置されている。加熱側アキュムレータ19の一方の液相冷媒流入出口には、統合弁20の主冷媒通路211の出入口211bが接続されている。
加熱側アキュムレータ19の他方の液相冷媒流入出口には、前述した統合弁20の第1副冷媒通路212の出入口212b側が接続された第4三方継手13dの別の1つの流入出口側が接続されている。加熱側アキュムレータ19の他方の液相冷媒流入出口と第4三方継手13dとを接続する冷媒通路には、第3開閉弁14cが配置されている。
第4三方継手13dのさらに別の1つの流入出口には、第3流量調整弁15cを介して、電気式三方弁21の入口側が接続されている。電気式三方弁21は、統合弁20の第1副冷媒通路212の出入口212b側と冷却側エジェクタ22の冷却側ノズル部22a側とを接続する冷媒回路、および第1副冷媒通路212の出入口212b側と室内蒸発器23の冷媒入口側とを接続する冷媒回路を切り替える冷媒回路切替装置である。電気式三方弁21は、空調制御装置40から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
冷却側エジェクタ22の基本的構成は、加熱側エジェクタ16と同様である。従って、冷却側エジェクタ22は、冷却側ノズル部22a、冷却側ボデー22bを有している。そして、冷却側ボデー22bには、冷却側冷媒吸引口22c、冷却側昇圧部である冷却側ディフューザ部22dが形成されている。
冷却側ディフューザ部22dの冷媒出口には、冷却側アキュムレータ24の入口側が接続されている。冷却側アキュムレータ24は、冷却側エジェクタ22の冷却側ディフューザ部22dから流出した冷媒の気液を分離する気液分離器である。冷却側アキュムレータ24には、分離された気相冷媒を流出させるための気相冷媒流出口と、分離された液相冷媒を流出させるための液相冷媒流出口が設けられている。
冷却側アキュムレータ24の気相冷媒流出口には、前述した第5三方継手13eの他方の冷媒流入口が接続されている。また、冷却側アキュムレータ24の液相冷媒流出口には、第4流量調整弁15dおよび第6三方継手13fを介して、室内蒸発器23の冷媒入口側が接続されている。
室内蒸発器23は、室内空調ユニット30のケーシング31内であって、前述した室内凝縮器12よりも空気流れ上流側に配置されている。室内蒸発器23は、第4流量調整弁15dにて減圧された低圧冷媒を送風空気と熱交換させて蒸発させ、吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
室内蒸発器23の冷媒出口側には、冷却側エジェクタ22の冷却側冷媒吸引口22c側が接続されている。第6三方継手13fの他方の冷媒流入口には、前述した電気式三方弁21の一方の冷媒流出口側が接続されている。第5三方継手13eの冷媒流出口には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、エジェクタ式冷凍サイクル10によって温度調整された送風空気を車室内へ吹き出すためのもので、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側(車室内)に配置されている。室内空調ユニット30は、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、室内蒸発器23、室内凝縮器12、およびエアミックスドア34等を収容して構成されている。
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成するもので、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。このケーシング31内の送風空気流れ最上流側には、ケーシング31内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替手段としての内外気切替装置33が配置されている。
内外気切替装置33は、ケーシング31内へ内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を連続的に変化させるものである。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替装置33の送風空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風手段としての送風機(ブロワ)32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置40から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
送風機32の送風空気流れ下流側には、室内蒸発器23および室内凝縮器12が、この順に配置されている。つまり、室内蒸発器23は、室内凝縮器12よりも送風空気流れ上流側に配置されている。さらに、室内蒸発器23の空気流れ下流側であって、かつ、室内凝縮器12の送風空気流れ上流側には、室内蒸発器23通過後の送風空気のうち、室内凝縮器12を通過させる風量割合を調整するエアミックスドア34が配置されている。
また、室内凝縮器12の空気流れ下流側には、室内凝縮器12にて冷媒と熱交換して加熱された送風空気と室内凝縮器12を迂回して加熱されていない送風空気とを混合させる混合空間35が設けられている。さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間35にて混合された送風空気(空調風)を、空調対象空間である車室内へ吹き出す開口穴が設けられている。
具体的には、この開口穴としては、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。フェイス開口穴は、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴は、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴は、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
これらのフェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
従って、エアミックスドア34が、室内凝縮器12を通過させる風量と室内凝縮器12を迂回させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間にて混合される空調風の温度が調整される。これにより、各吹出口から車室内へ吹き出される送風空気(空調風)の温度が調整されることになる。
つまり、エアミックスドア34は、車室内へ送風される空調風の温度を調整する温度調整部としての機能を果たす。なお、エアミックスドア34は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴の送風空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス開口穴の開口面積を調整するフェイスドア、フット開口穴の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ開口穴の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、開口穴モードを切り替える開口穴モード切替装置を構成するものであって、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。なお、この電動アクチュエータも、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
吹出口モード切替装置によって切り替えられる吹出口モードとしては、具体的に、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード等がある。
フェイスモードは、フェイス吹出口を全開してフェイス吹出口から車室内乗員の上半身に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。バイレベルモードは、フェイス吹出口とフット吹出口の両方を開口して車室内乗員の上半身と足元に向けて空気を吹き出す吹出口モードである。フットモードは、フット吹出口を全開するとともにデフロスタ吹出口を小開度だけ開口して、フット吹出口から主に空気を吹き出す吹出口モードである。
さらに、乗員が操作パネル50に設けられた吹出モード切替スイッチをマニュアル操作することによって、デフロスタ吹出口を全開してデフロスタ吹出口から車両フロント窓ガラス内面に空気を吹き出すデフロスタモードとすることもできる。
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置40は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種制御対象機器11、14a〜14c、15a〜15d、20、21、32等の作動を制御する。
また、空調制御装置40の入力側には、図8のブロック図に示すように、内気温センサ41、外気温センサ42、日射センサ43、室外熱交換器温度センサ44、吐出温度センサ45、室内蒸発器温度センサ46、空調風温度センサ47等が接続されている。そして、空調制御装置40には、これらのセンサ群の検出信号が入力される。
内気温センサ41は、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ42は、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ43は、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。室外熱交換器温度センサ44は、室外熱交換器における冷媒の温度(室外熱交換器温度)Toutを検出する室外熱交換器温度検出部である。吐出温度センサ45は、圧縮機11の吐出冷媒温度Tdを検出する吐出温度検出部である。室内蒸発器温度センサ46は、室内蒸発器23における冷媒蒸発温度(室内蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。空調風温度センサ47は、混合空間から車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する空調風温度検出部である。
さらに、空調制御装置40の入力側には、図8に示すように、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル50が接続され、この操作パネル50に設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネル50に設けられた各種操作スイッチとしては、オートスイッチ、冷房スイッチ(A/Cスイッチ)、風量設定スイッチ、温度設定スイッチ、吹出モード切替スイッチ等がある。
オートスイッチは、車両用空調装置1の自動制御運転を設定あるいは解除する入力部である。冷房スイッチ(A/Cスイッチ)は、車室内の冷房を行うことを要求する入力部である。風量設定スイッチは、送風機32の風量をマニュアル設定する入力部である。温度設定スイッチは、車室内の目標温度Tsetをマニュアル設定する入力部である。吹出モード切替スイッチは吹出モードをマニュアル設定する入力部である。
なお、本実施形態の空調制御装置40は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。
例えば、空調制御装置40のうち、圧縮機11の冷媒吐出能力(圧縮機11の回転数)を制御する構成は、吐出能力制御部を構成している。また、第1〜第3開閉弁14a〜14c等の冷媒回路切替装置の作動を制御する構成は、冷媒回路制御部を構成している。
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。前述の如く、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、冷房モード、第1除湿暖房モード、第2除湿暖房モード、第3除湿暖房モード、暖房モード、除霜モードの運転を切り替えることができる。
これらの運転モードの切り替えは、空調制御装置40の記憶回路に予め記憶された空調制御プログラムが実行されることによって行われる。空調制御プログラムは、操作パネル50のオートスイッチが投入(ON)された際に実行される。
より具体的には、空調制御プログラムのメインルーチンでは、上述の空調制御用のセンサ群の検出信号および各種空調操作スイッチからの操作信号を読み込む。そして、読み込んだ検出信号および操作信号の値に基づいて、車室内へ吹き出す吹出空気の目標温度である目標吹出温度TAOを、以下数式F1に基づいて算出する。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×As+C…(F1)
なお、Tsetは温度設定スイッチによって設定された車室内設定温度、Trは内気センサによって検出された車室内温度(内気温)、Tamは外気センサによって検出された外気温、Asは日射センサによって検出された日射量である。Kset、Kr、Kam、Ksは制御ゲインであり、Cは補正用の定数である。
さらに、操作パネル50の冷房スイッチが投入されており、かつ、目標吹出温度TAOが予め定めた冷房基準温度αよりも低くなっている場合には、冷房モードでの運転を実行する。
また、冷房スイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上になっており、外気温Tamが予め定めた除湿暖房基準温度βよりも高くなっており、さらに、室外熱交換器温度センサ44によって検出された室外熱交換器温度Toutが外気温Tamよりも高くなっている場合には、第1除湿暖房モードでの運転を実行する。
また、冷房スイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上になっており、外気温Tamが除湿暖房基準温度βよりも高くなっており、さらに、室外熱交換器温度Toutが外気温Tamよりも低くなっている場合には、第2除湿暖房モードでの運転を実行する。
また、冷房スイッチが投入された状態で、目標吹出温度TAOが冷房基準温度α以上になっており、かつ、外気温Tamが除湿暖房基準温度β以下になっている場合には、第3除湿暖房モードでの運転を実行する。
また、冷房スイッチが投入されていない場合には、暖房モードでの運転を実行する。さらに、暖房モードの実行中等に室外熱交換器17に着霜が生じた際には、これを取り除くための除霜運転を行う。
これにより、本実施形態の車両用空調装置1では、主に夏季のように比較的外気温が高い場合に、冷房モードでの運転を実行している。また、主に早春季あるいは初冬季等に、第1〜第3除湿暖房モードでの運転を実行している。また、主に冬季のように比較的外気温が低い場合に、暖房モードでの運転を実行している。以下に各運転モードにおける作動を説明する。
(a)冷房モード
冷房モードでは、空調制御装置40が、第1開閉弁14aを開き、第2開閉弁14bを閉じ、第3開閉弁14cを開く。また、第1流量調整弁15aを全閉とし、第2流量調整弁15bを全開とし、第3流量調整弁15cを全開とし、第4流量調整弁15dを減圧作用を発揮する絞り状態とする。また、第3流量調整弁15cの出口側と冷却側エジェクタ22の冷却側ノズル部22aとを接続するように電気式三方弁21の作動を制御する。
さらに、空調制御装置40は、統合弁20の主冷媒通路211が全開となるように駆動装置230の作動を制御する。
ここで、主冷媒通路211が全開となっている際には、前述の図6に示すように、絞り弁221の弁体部221aの端面が、シャッター弁224の筒状部224bから離れる。従って、筒状部224bの内部に形成された連通路224cを介して、主冷媒通路211と圧力空間215が連通する。
これにより、圧力空間215内の冷媒圧力、および第1、第2作動空間216、217内の冷媒圧力が、圧縮機11から吐出された吐出冷媒と同等となり、低圧側冷媒の圧力よりも高くなる。従って、第1、第2作動空間216、217内に配置されたシリンダ部222b、223bが圧力空間215から離れる側(すなわち、コイルバネ216b、217bを圧縮する側)へ変位する。その結果、弁体部222a、223aによって、第1、第2副冷媒通路212、213が閉じる。
従って、冷房モードでは、図1の実線矢印に示すように、圧縮機11(→室内凝縮器12→第2流量調整弁15b)→室外熱交換器17(→統合弁20の主冷媒通路211)→加熱側アキュムレータ19(→第3流量調整弁15c)→冷却側エジェクタ22→冷却側アキュムレータ24→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、冷却側アキュムレータ24→室内蒸発器23→冷却側エジェクタ22の順に冷媒が循環するエジェクタ式冷凍サイクルが構成される。
空調制御装置40は、この冷媒回路の構成で、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号等に基づいて、各種制御対象機器の作動状態(各種制御対象機器へ出力する制御信号)を決定する。
例えば、圧縮機11の冷媒吐出能力、すなわち圧縮機11の電動モータに出力される制御信号については、次のように決定される。まず、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、室内蒸発器23の目標蒸発器吹出温度TEOを決定する。この目標蒸発器吹出温度TEOは、室内蒸発器23の着霜を抑制可能に決定された基準着霜防止温度(例えば、1℃)以上となるように決定される。
そして、この目標蒸発器吹出温度TEOと室内蒸発器温度センサ46によって検出された室内蒸発器温度Tefinとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いて室内蒸発器温度Tefinが目標蒸発器吹出温度TEOに近づくように、圧縮機11の電動モータに出力される制御信号が決定される。
また、第4流量調整弁15dの絞り開度、すなわち第4流量調整弁15dへ出力される制御信号(制御パルス)については、予め空調制御装置40に記憶された基準開度となるように決定される。
また、エアミックスドア34を駆動する電動アクチュエータへ出力される制御信号については、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の空気通路を閉塞し、室内蒸発器23通過後の送風空気の全流量が室内凝縮器12を迂回して流れるように決定される。
そして、上記の如く決定された制御信号等を各種制御対象機器へ出力する。その後、車両用空調装置1の作動停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、上述の検出信号および操作信号の読み込み→目標吹出温度TAOの算出→各種制御対象機器の作動状態決定→制御電圧および制御信号の出力といった制御ルーチンが繰り返される。なお、このような制御ルーチンの繰り返しは、他の運転モード時にも同様に行われる。
従って、冷房モード時のエジェクタ式冷凍サイクル10では、図9のモリエル線図に示すように冷媒の状態が変化する。
具体的には、圧縮機11から吐出された高圧冷媒(図9のa9点)が、室内凝縮器12へ流入する。この際、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の空気通路を閉塞しているので、室内凝縮器12へ流入した冷媒は、殆ど送風空気と熱交換することなく室内凝縮器12から流出する。
室内凝縮器12から流出した冷媒は、第1三方継手13a、第1開閉弁14a、第2三方継手13b、全開となっている第2流量調整弁15b、および第3三方継手13cを介して、室外熱交換器17の一方の冷媒出入口へ流入する。室外熱交換器17へ流入した冷媒は、室外熱交換器17にて送風ファンから送風された外気へ放熱して凝縮する(図9のa9点→e9点)。
室外熱交換器17の他方の冷媒出入口から流出した冷媒は、全開となっている統合弁20の主冷媒通路211を介して、加熱側アキュムレータ19へ流入して気液分離される。加熱側アキュムレータ19にて分離された液相冷媒は、第4三方継手13d、全開となっている第3流量調整弁15c、および電気式三方弁21を介して、冷却側エジェクタ22の冷却側ノズル部22aへ流入する。
冷却側ノズル部22aへ流入した冷媒は、等エントロピ的に減圧されて噴射される(図9のe9点→i9点)。そして、冷却側ノズル部22aから噴射された噴射冷媒の吸引作用によって、室内蒸発器23の冷媒出口から流出した冷媒が、冷却側エジェクタ22の冷却側冷媒吸引口22cから吸引される。
冷却側ノズル部22aから噴射された噴射冷媒および冷却側エジェクタ22の冷却側冷媒吸引口22cから吸引された吸引冷媒は、冷却側ディフューザ部22dへ流入する(図9のi9→k9点、q9点→k9点)。
冷却側ディフューザ部22dでは、冷媒通路面積の拡大により、冷媒の速度エネルギが圧力エネルギに変換される。これにより、噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒の圧力が上昇する(図9のk9点→m9点)。冷却側ディフューザ部22dから流出した冷媒は冷却側アキュムレータ24へ流入して気液分離される。
冷却側アキュムレータ24にて分離された液相冷媒(図9のo9点)は、絞り状態となっている第4流量調整弁15dへ流入して減圧される(図9のo9点→p9点)。第4流量調整弁15dにて減圧された冷媒は、第6三方継手13fを介して、室内蒸発器23の冷媒入口から流入し、送風機32から送風された送風空気から吸熱して蒸発する(図9のp9点→q9点)。これにより、送風空気が冷却される。
一方、冷却側アキュムレータ24にて分離された気相冷媒(図9のn9点)は、第5三方継手13eを介して圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される(図9のn9点→a9点)。
従って、冷房モードでは、室内蒸発器23にて冷却された送風空気を、室内凝縮器12にて再加熱することなく車室内へ吹き出すことによって、車室内の冷房を行うことができる。
さらに、冷房モードでは、冷却側エジェクタ22の冷却側ディフューザ部22dにて昇圧された冷媒を圧縮機11へ吸入させている。従って、蒸発器として機能する熱交換器(冷房モードでは、室内蒸発器23)における冷媒蒸発圧力と圧縮機11の吸入冷媒の圧力が同等となる通常の冷凍サイクル装置よりも圧縮機11の消費動力を低減させて、サイクルの成績係数COPを向上させることができる。
(b)第1除湿暖房モード
第1除湿暖房モードでは、空調制御装置40が、第1開閉弁14aを開き、第2開閉弁14bを閉じ、第3開閉弁14cを開く。また、第1流量調整弁15aを全閉とし、第2流量調整弁15bを絞り状態とし、第3流量調整弁15cを全開とし、第4流量調整弁15dを絞り状態とする。また、第3流量調整弁15cの出口側と冷却側エジェクタ22の冷却側ノズル部22aとを接続するように電気式三方弁21の作動を制御する。
さらに、空調制御装置40は、統合弁20の主冷媒通路211が全開となるように駆動装置230の作動を制御する。従って、冷房モードと同様に、統合弁20の第1、第2副冷媒通路212、213が閉じる。
従って、第1除湿暖房モードでは、図1の実線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→第2流量調整弁15b→室外熱交換器17(→統合弁20の主冷媒通路211)→加熱側アキュムレータ19(→第3流量調整弁15c)→冷却側エジェクタ22→冷却側アキュムレータ24→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、冷却側アキュムレータ24→室内蒸発器23→冷却側エジェクタ22の順に冷媒が循環するエジェクタ式冷凍サイクルが構成される。
空調制御装置40は、この冷媒回路の構成で、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号等に基づいて、各種制御対象機器の作動状態(各種制御対象機器へ出力する制御信号)を決定する。
例えば、第2流量調整弁15bの絞り開度、すなわち第2流量調整弁15bへ出力される制御信号(制御パルス)については、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。具体的には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、絞り開度が減少するように決定される。換言すると、サイクルに要求される加熱能力の上昇に伴って、絞り開度が減少するように決定される。
また、エアミックスドア34の開度、すなわちエアミックスドア34を駆動する電動アクチュエータへ出力される制御信号については、空調風温度センサ47によって検出された送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように決定される。その他の制御対象機器の作動状態は、冷房モードと同様に決定される。
従って、第1除湿暖房モード時のエジェクタ式冷凍サイクル10では、図10のモリエル線図に示すように冷媒の状態が変化する。図9のモリエル線図では、冷房モードで説明した図9のモリエル線図とサイクル構成上同等の箇所の冷媒の状態を、図9と同一の符号(アルファベット)で示し、添字(数字)のみを変更している。このことは、以下で説明する他のモリエル線図においても同様である。
具体的には、第1除湿暖房モードでは、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の送風空気通路を開くので、圧縮機11から吐出された高圧冷媒(図10のa10点)が、室内凝縮器12へ流入し、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された送風空気の一部と熱交換して放熱する(図10のa10点→b10点)。これにより、送風空気の一部が加熱される。
室内凝縮器12から流出した冷媒は、第1三方継手13a、第1開閉弁14a、第2三方継手13bを介して、第2流量調整弁15bへ流入して減圧される(図10のb10点→c10点)。第2流量調整弁15bにて減圧された冷媒は、第3三方継手13cを介して、室外熱交換器17の一方の冷媒出入口へ流入する。
第1除湿暖房モードでは、室外熱交換器温度Toutが外気温Tamよりも高くなっているので、室外熱交換器17へ流入した冷媒は、室外熱交換器17にて送風ファンから送風された外気へ放熱して凝縮する(図10のc10点→e10点)。室外熱交換器17の他方の冷媒出入口から流出した冷媒は、全開となっている統合弁20の主冷媒通路211を介して、加熱側アキュムレータ19へ流入して気液分離される。以降の作動は、冷房モードと同様である。
従って、第1除湿暖房モードでは、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された送風空気を室内凝縮器12にて再加熱して車室内へ吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。
また、第1除湿暖房モードでは、第2流量調整弁15bを絞り状態とすることによって、冷房モードよりも室外熱交換器17へ流入する冷媒の温度を低下させている。従って、冷房モードよりも室外熱交換器17における冷媒の温度と外気温との温度差を縮小して、室外熱交換器17における冷媒の放熱量を低減させることができる。
これにより、単に冷房モード時に送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくようにエアミックスドア34の作動を制御する場合に対して、サイクルを循環する循環冷媒流量を増加させることなく、室内凝縮器12における冷媒圧力を上昇させて、室内凝縮器12における送風空気の加熱能力を向上させることができる。
(c)第2除湿暖房モード
第2除湿暖房モードでは、空調制御装置40が、第1開閉弁14aを閉じ、第2開閉弁14bを閉じ、第3開閉弁14cを閉じる。また、第1流量調整弁15aを全開とし、第2流量調整弁15bを全開とし、第3流量調整弁15cを絞り状態とし、第4流量調整弁15dを全閉とする。また、第3流量調整弁15cの出口側と第6三方継手13fの他方の冷媒流入口とを接続するように電気式三方弁21の作動を制御する。
さらに、空調制御装置40は、統合弁20の主冷媒通路211が絞り状態となるように駆動装置230の作動を制御する。
ここで、主冷媒通路211が絞り状態となっている際には、前述の図7に示すように、絞り弁221の弁体部221aの端面が、シャッター弁224の筒状部224bに当接し、シャッター弁224の弁体部224aがシート部215aから離れる。従って、低圧側導入通路214が開く。
これにより、圧力空間215内の冷媒圧力、および第1、第2作動空間216、217内の冷媒圧力は、圧縮機11へ吸入される吸入冷媒と同等となる。従って、コイルバネ216b、217bの荷重によって、シリンダ部222b、223bが圧力空間215側へ変位する。その結果、弁体部222a、223aが、第1、第2副冷媒通路212、213から離れて、第1、第2副冷媒通路212、213が開く。
従って、第2除湿暖房モードでは、図2の実線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12(→第1流量調整弁15a→加熱側エジェクタ16)→加熱側アキュムレータ19→絞り状態となっている統合弁20の主冷媒通路211→室外熱交換器17(→第2流量調整弁15b→統合弁20の第1副冷媒通路212)→第3流量調整弁15c→室内蒸発器23(→冷却側エジェクタ22)→冷却側アキュムレータ24→圧縮機11の順に冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。
空調制御装置40は、この冷媒回路の構成で、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号等に基づいて、各種制御対象機器の作動状態(各種制御対象機器へ出力する制御信号)を決定する。
例えば、統合弁20の主冷媒通路211の絞り開度については、すなわち駆動装置230へ出力される制御信号(制御パルス)については、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。具体的には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、絞り開度が減少するように決定される。換言すると、サイクルに要求される加熱能力の上昇に伴って、絞り開度が減少するように決定される。
また、第3流量調整弁15cの絞り開度については、主冷媒通路211における減圧量と第3流量調整弁15cにおける減圧量の合計値が、サイクルの成績係数COPが極大値に近づくように決定される。このため、第3流量調整弁15cの絞り開度は、主冷媒通路211の絞り開度が減少するに伴って増加することになる。換言すると、サイクルに要求される加熱能力の上昇に伴って、絞り開度が増加するように決定される。
また、エアミックスドア34の開度、すなわちエアミックスドア34を駆動する電動アクチュエータへ出力される制御信号については、第1除湿暖房モードと同様に、空調風温度センサ47によって検出された送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように決定される。その他の制御対象機器の作動状態は、冷房モードと同様に決定される。
従って、第2除湿暖房モード時のエジェクタ式冷凍サイクル10では、図11のモリエル線図に示すように冷媒の状態が変化する。
具体的には、第2除湿暖房モードでは、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の送風空気通路を開くので、圧縮機11から吐出された高圧冷媒(図11のa11点)が、室内凝縮器12へ流入し、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された送風空気の一部と熱交換して放熱する(図11のa11点→e11点)。これにより、送風空気の一部が加熱される。
室内凝縮器12から流出した冷媒は、第1三方継手13a、全開となっている第1流量調整弁15a、加熱側エジェクタ16を介して、加熱側アキュムレータ19へ流入して気液分離される。
この際、第2除湿暖房モードでは、統合弁20の主冷媒通路211および第3流量調整弁15cが直列的に接続されて、双方が絞り状態となっているので、加熱側エジェクタ16の加熱側ノズル部16aを流通する冷媒の流速は比較的遅くなる。このため、加熱側ノズル部16aでは、冷媒は殆ど減圧されない。
加熱側アキュムレータ19にて分離された液相冷媒は、統合弁20の主冷媒通路211へ流入して減圧される(図11のe11点→d11点)。統合弁20の主冷媒通路211にて減圧された冷媒は、室外熱交換器17の他方の冷媒出入口へ流入する。従って、第2除湿暖房モード時の室外熱交換器17における冷媒流れ方向と、前述した冷房モード時および第1除湿暖房モード時における冷媒流れ方向は異なっている。
第2除湿暖房モードでは、室外熱交換器温度Toutが外気温Tamよりも低くなっているので、室外熱交換器17へ流入した冷媒は、室外熱交換器17にて送風ファンから送風された外気から吸熱して蒸発する(図11のd11点→r11点)。
室外熱交換器17の一方の冷媒出入口から流出した冷媒は、第3三方継手13c、全開となっている第2流量調整弁15b、第2三方継手13b、統合弁20の第1副冷媒通路212、および第4三方継手13dを介して、第3流量調整弁15cへ流入して減圧される(図11のr11点→g11点)。
ここで、第2除湿暖房モードでは、統合弁20の第2副冷媒通路213が開いているものの、上記の如く、加熱側エジェクタ16内の冷媒圧力が低下しない。このため、逆止弁18の作用によって、室外熱交換器17の一方の冷媒出入口から流出した冷媒が、第3三方継手13cおよび統合弁20の第2副冷媒通路213を介して、加熱側エジェクタ16の加熱側冷媒吸引口16c側へ流出してしまうことはない。
第3流量調整弁15cにて減圧された冷媒は、電気式三方弁21および第6三方継手13fを介して室内蒸発器23へ流入し、送風機32から送風された送風空気と熱交換して蒸発する(図11のg11点→n11点)。これにより、送風空気が冷却される。室内蒸発器23から流出した冷媒は、冷却側エジェクタ22を介して冷却側アキュムレータ24へ流入する。
この際、冷却側エジェクタ22では、冷却側冷媒吸引口22cから冷却側ディフューザ部22dへ冷媒を流通させ、冷却側ノズル部22aに冷媒を流入させない。このため、冷却側エジェクタ22を通過する冷媒は殆ど減圧されない。冷却側アキュムレータ24にて分離された気相冷媒は、第5三方継手13eを介して、圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される(図11のn11点→a11点)。
従って、第2除湿暖房モードでは、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された送風空気を室内凝縮器12にて再加熱して車室内へ吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。
また、第2除湿暖房モードでは、室外熱交換器17を蒸発器として機能させているので、第1除湿暖房モードよりも室内凝縮器12における冷媒の放熱量を増加させることができる。これにより、第1除湿暖房モードに対して、サイクルを循環する循環冷媒流量を増加させることなく、室内凝縮器12における冷媒圧力を上昇させることができる。
その結果、室内凝縮器12における送風空気の加熱能力を向上させて、送風空気を第1除湿暖房モードよりも高い温度帯まで昇温させることができる。
さらに、エジェクタは、ノズル部へ流入する冷媒圧力が低下してしまうと噴射冷媒の流速が低下して吸引作用を発揮できなくなってしまうことがある。これに対して、第2除湿暖房モードでは、冷却側エジェクタ22の冷却側ノズル部22aに冷媒を流入させることなく、圧縮機11の吸入吐出作用によって、室内蒸発器23へ冷媒を流入させる冷媒回路に切り替えている。
従って、第2除湿暖房モードでは、室外熱交換器17における冷媒蒸発圧力を室内蒸発器23における冷媒蒸発圧力と同等となるまで低下させたとしても、エジェクタ式冷凍サイクル10を確実に作動させることができる。
(d)第3除湿暖房モード
第3除湿暖房モードでは、空調制御装置40が、第1開閉弁14aを開き、第2開閉弁14bを開き、第3開閉弁14cを閉じる。また、第1流量調整弁15aを絞り状態とし、第2流量調整弁15bを全閉とし、第3流量調整弁15cを絞り状態とし、第4流量調整弁15dを全閉とする。また、第3流量調整弁15cの出口側と第6三方継手13fの他方の冷媒流入口とを接続するように電気式三方弁21の作動を制御する。
さらに、空調制御装置40は、統合弁20の主冷媒通路211が絞り状態となるように駆動装置230の作動を制御する。従って、第2除湿暖房モードと同様に、統合弁20の第1、第2副冷媒通路212、213が開く。
従って、第3除湿暖房モードでは、図3の実線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→第1流量調整弁15a→加熱側エジェクタ16→加熱側アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、加熱側アキュムレータ19→絞り状態となっている統合弁20の主冷媒通路211→室外熱交換器17(→統合弁20の第2副冷媒通路213)→加熱側エジェクタ16の加熱側冷媒吸引口16cの順に冷媒が循環するエジェクタ式冷凍サイクルが構成される。
同時に、圧縮機11→室内凝縮器12(→統合弁20の第1副冷媒通路212)→第3流量調整弁15c→室内蒸発器23(→冷却側エジェクタ22)→冷却側アキュムレータ24→圧縮機11の順に冷媒が循環する冷凍サイクルが構成される。
空調制御装置40は、この冷媒回路の構成で、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号等に基づいて、各種制御対象機器の作動状態(各種制御対象機器へ出力する制御信号)を決定する。
例えば、第1流量調整弁15aの絞り開度については、すなわち第1流量調整弁15aへ出力される制御信号(制御パルス)については、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、第1三方継手13aから第1流量調整弁15a側へ流入する冷媒の流量と第1三方継手13aから第2三方継手13b側へ流入する冷媒の流量との流量比が予め定めた基準流量比に近づくように決定される。
また、統合弁20の主冷媒通路211の絞り開度については、すなわち駆動装置230へ出力される制御信号(制御パルス)については、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。具体的には、目標吹出温度TAOの上昇に伴って、絞り開度が減少するように決定される。換言すると、サイクルに要求される加熱能力の上昇に伴って、絞り開度が減少するように決定される。
また、第3流量調整弁15cの絞り開度については、すなわち第3流量調整弁15cへ出力される制御信号(制御パルス)については、予め空調制御装置40に記憶された第3除湿暖房モード用の基準開度となるように決定される。さらに、第3除湿暖房モードでは、室外熱交換器17における冷媒蒸発温度が室内蒸発器23における冷媒蒸発温度以下となるように、第3流量調整弁15cの絞り開度が決定される。
また、エアミックスドア34の開度、すなわちエアミックスドア34を駆動する電動アクチュエータへ出力される制御信号については、第1除湿暖房モードと同様に、空調風温度センサ47によって検出された送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように決定される。その他の制御対象機器の作動状態は、冷房モードと同様に決定される。
従って、第3除湿暖房モード時のエジェクタ式冷凍サイクル10では、図12のモリエル線図に示すように冷媒の状態が変化する。
具体的には、第3除湿暖房モードでは、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の送風空気通路を開くので、圧縮機11から吐出された高圧冷媒(図12のa12点)が、室内凝縮器12へ流入し、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された送風空気の一部と熱交換して放熱する(図12のa12点→b12点)。これにより、送風空気の一部が加熱される。室内凝縮器12から流出した冷媒の流れは、第1三方継手13aにて分岐される。
第1三方継手13aにて分岐された一方の冷媒は、第1流量調整弁15aへ流入して減圧される(図12のb12点→s12点)。第1流量調整弁15aにて減圧された冷媒は、加熱側エジェクタ16の加熱側ノズル部16aへ流入する。加熱側ノズル部16aへ流入した冷媒は、等エントロピ的に減圧されて噴射される(図12のs12点→t12点)。
そして、噴射冷媒の吸引作用によって、室外熱交換器17の一方の冷媒出入口から流出した冷媒が、加熱側エジェクタ16の加熱側冷媒吸引口16cから吸引される。加熱側ノズル部16aから噴射された噴射冷媒および加熱側冷媒吸引口16cから吸引された吸引冷媒は、加熱側ディフューザ部16dへ流入する(図12のt12→u12点、c12点→u12点)。
加熱側ディフューザ部16dでは、冷媒通路面積の拡大により、冷媒の速度エネルギが圧力エネルギに変換される。これにより、噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒の圧力が上昇する(図12のu12点→v12点)。加熱側ディフューザ部16dから流出した冷媒は加熱側アキュムレータ19へ流入して気液分離される。
加熱側アキュムレータ19にて分離された液相冷媒(図12のe12点)は、絞り状態となっている統合弁20の主冷媒通路211へ流入して減圧される(図12のe12点→d12点)。統合弁20の主冷媒通路211を流通する際に減圧された冷媒は、室外熱交換器17の他方の冷媒出入口から流入し、送風ファンから送風された外気から吸熱して蒸発する(図12のd12点→c12点)。
室外熱交換器17の一方の冷媒出入口から流出した冷媒は、第3三方継手13cおよび統合弁20の第2副冷媒通路213を介して、加熱側エジェクタ16の加熱側冷媒吸引口16cから吸引される。従って、第3除湿暖房モード時の室外熱交換器17における冷媒流れ方向と、前述した冷房モード時および第1除湿暖房モード時における冷媒流れ方向は異なっている。
また、第1三方継手13aにて分岐された他方の冷媒は、第1開閉弁14a、第2三方継手13b、統合弁20の第1副冷媒通路212、および第4三方継手13dを介して、第3流量調整弁15cへ流入して減圧される(図12のb12点→g12点)。
第3流量調整弁15cにて減圧された冷媒は、室内蒸発器23へ流入し、室内蒸発器23へ流入し、送風機32から送風された送風空気と熱交換して蒸発する(図12のg12点→n12点)。これにより、送風空気が冷却される。室内蒸発器23から流出した冷媒は、第5三方継手13eにて、加熱側アキュムレータ19にて分離された気相冷媒と合流して圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される(図12のn12点→a12点)。
従って、第3除湿暖房モードでは、室内蒸発器23にて冷却されて除湿された送風空気を室内凝縮器12にて再加熱して車室内へ吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を行うことができる。
また、第3除湿暖房モードでは、室外熱交換器17および室内蒸発器23をサイクル全体としての冷媒流れに対して並列的に接続し、室外熱交換器17を蒸発器として機能させている。さらに、室外熱交換器17における冷媒蒸発温度を室内蒸発器23における冷媒蒸発温度よりも低下させている。
従って、第2除湿暖房モードよりも外気からの冷媒の吸熱量を増加させることができる。これにより、室内凝縮器12における冷媒圧力を上昇させることができる。その結果、室内凝縮器12における送風空気の加熱能力を向上させて、送風空気を第2除湿暖房モードよりも高い温度帯まで昇温させることができる。
また、第3除湿暖房モードでは、加熱側エジェクタ16の加熱側ディフューザ部16dにて昇圧された冷媒を室内蒸発器23から流出した冷媒に合流させて、圧縮機11へ吸入させている。従って、加熱側エジェクタ16を備えていない通常の冷凍サイクル装置に対して、圧縮機11の消費動力を低減させてサイクルの成績係数COPを向上させることができる。
(e)暖房モード
暖房モードでは、空調制御装置40が、第1開閉弁14aを閉じ、第2開閉弁14bを開き、第3開閉弁14cを閉じる。また、第1流量調整弁15aを絞り状態とし、第2流量調整弁15bを全閉とする。さらに、空調制御装置40は、統合弁20の主冷媒通路211が絞り状態となるように駆動装置230の作動を制御する。従って、第2、第3除湿暖房モードと同様に、統合弁20の第1、第2副冷媒通路212、213が開く。
従って、暖房モードでは、図4の実線矢印に示すように、圧縮機11→室内凝縮器12→第1流量調整弁15a→加熱側エジェクタ16→加熱側アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環するとともに、加熱側アキュムレータ19→絞り状態となっている統合弁20の主冷媒通路211→室外熱交換器17(→統合弁20の第2副冷媒通路213)→加熱側エジェクタ16の加熱側冷媒吸引口16cの順に冷媒が循環するエジェクタ式冷凍サイクルが構成される。
空調制御装置40は、この冷媒回路の構成で、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号等に基づいて、各種制御対象機器の作動状態(各種制御対象機器へ出力する制御信号)を決定する。
例えば、圧縮機11の冷媒吐出能力については、すなわち圧縮機11の電動モータに出力される制御信号については、次のように決定される。まず、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、室内凝縮器12の目標凝縮器温度TCOを決定する。
そして、この目標凝縮器温度TCOと吐出温度センサ45によって検出された吐出冷媒温度Tdとの偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いて吐出冷媒温度Tdが目標凝縮器温度TCOに近づくように、圧縮機11の電動モータに出力される制御信号が決定される。
また、第1流量調整弁15aの絞り開度については、すなわち第1流量調整弁15aへ出力される制御信号(制御パルス)については、圧縮機11の冷媒吐出能力(例えば、圧縮機11の電動モータに出力される制御信号)に基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して決定される。
この制御マップでは、加熱側ノズル部16aへ流入する冷媒の乾き度xが0.5以上かつ0.8以下となるように、第1流量調整弁15aの絞り開度を決定している。この乾き度xの範囲は、室内凝縮器12における送風空気の加熱能力を極大値に近づけることができる値として、予め実験的に得られた値である。
また、エアミックスドア34を駆動する電動アクチュエータへ出力される制御信号については、室内蒸発器23通過後の送風空気の全流量が室内凝縮器12側の空気通路を流れるように決定される。その他の制御対象機器の作動状態は、第3除湿暖房モードと同様に決定される。
従って、暖房モード時のエジェクタ式冷凍サイクル10では、図13のモリエル線図に示すように冷媒の状態が変化する。
具体的には、暖房モードでは、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の送風空気通路を全開とするので、圧縮機11から吐出された高圧冷媒(図13のa13点)が、室内凝縮器12へ流入して送風空気と熱交換して放熱する(図13のa13点→b13点)。これにより、送風空気が加熱される。
室内凝縮器12から流出した冷媒は、第1三方継手13aを介して、第1流量調整弁15aへ流入して減圧される(図13のb13点→s13点)。これにより、加熱側ノズル部16aへ流入する冷媒の乾き度xが0.5以上かつ0.8以下に調整される。
第1流量調整弁15aにて減圧された冷媒は、加熱側エジェクタ16の加熱側ノズル部16aへ流入する。加熱側ノズル部16aへ流入した冷媒は、等エントロピ的に減圧されて噴射される(図13のs13点→t13点)。
そして、この噴射冷媒の吸引作用によって、室外熱交換器17の一方の冷媒出入口から流出した冷媒が、加熱側エジェクタ16の加熱側冷媒吸引口16cから吸引される。加熱側ノズル部16aから噴射された噴射冷媒および加熱側冷媒吸引口16cから吸引された吸引冷媒は、加熱側ディフューザ部16dへ流入する(図13のt13→u13点、c13点→u13点)。
加熱側ディフューザ部16dでは、冷媒通路面積の拡大により、冷媒の速度エネルギが圧力エネルギに変換される。これにより、噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒の圧力が上昇する(図13のu13点→v13点)。加熱側ディフューザ部16dから流出した冷媒は加熱側アキュムレータ19へ流入して気液分離される。
加熱側アキュムレータ19にて分離された液相冷媒(図13のe13点)は、絞り状態となっている統合弁20の主冷媒通路211へ流入して減圧される(図13のe13点→d13点)。第3流量調整弁15cにて減圧された冷媒は、室外熱交換器17の他方の冷媒出入口から流入し、送風ファンから送風された外気から吸熱して蒸発する(図13のd13点→c13点)。
室外熱交換器17の一方の冷媒出入口から流出した冷媒は、第3三方継手13cおよび統合弁20の第2副冷媒通路213を介して、加熱側エジェクタ16の加熱側冷媒吸引口16cから吸引される。従って、暖房モード時の室外熱交換器17における冷媒流れ方向と、前述した冷房モード時および第1除湿暖房モード時における冷媒流れ方向は異なっている。
加熱側アキュムレータ19にて分離された気相冷媒(図13のf13点)は、第5三方継手13eを介して圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される(図13のf13点→a13点)。
従って、暖房モードでは、室内凝縮器12にて加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を行うことができる。
さらに、暖房モードでは、加熱側エジェクタ16の加熱側ディフューザ部16dにて昇圧された冷媒を圧縮機11へ吸入させている。従って、蒸発器として機能する熱交換器(暖房モードでは、室外熱交換器17)における冷媒蒸発圧力と圧縮機11の吸入冷媒の圧力が同等となる通常の冷凍サイクル装置よりも圧縮機11の消費動力を低減させて、サイクルの成績係数COPを向上させることができる。
ここで、エジェクタ式冷凍サイクル10の第3除湿暖房モードや暖房モードのように、エジェクタ式冷凍サイクル10の室外熱交換器17を蒸発器として機能させる冷媒回路では、室外熱交換器17の冷媒蒸発温度が氷点下(0℃以下)になってしまうと、室外熱交換器17に着霜が生じてしまうことがある。
このような着霜が生じると室外熱交換器17の外気通路が霜によって閉塞されてしまうので、室外熱交換器17の熱交換性能が低下してしまう。従って、室外熱交換器17にて冷媒が外気から吸熱する吸熱量が低下して、エジェクタ式冷凍サイクル10が、送風空気を充分に加熱できなくなってしまう。
これに対して、本実施形態の車両用空調装置1では、エジェクタ式冷凍サイクル10の室外熱交換器17に着霜が生じた際に、これを取り除くための除霜モードの運転を実行することができる。
具体的には、本実施形態では、外気温Tamが0℃以下となっており、さらに、外気温Tamから室外熱交換器温度Toutを減算した値(Tam−Tout)が予め定めた基準温度差以上となっている際に、室外熱交換器17に着霜が生じたと判定する。そして、予め定めた基準時間が経過するまで、除霜モードの運転を実行する。以下に除霜モードにおける作動を説明する。
(f)除霜モード
除霜モードでは、空調制御装置40が、第1開閉弁14aを開き、第2開閉弁14bを開き、第3開閉弁14cを閉じる。また、第1流量調整弁15aを全閉とし、第2流量調整弁15bを絞り状態とする。さらに、空調制御装置40は、統合弁20の主冷媒通路211が全開となるように駆動装置230の作動を制御する。従って、冷房モード等と同様に、統合弁20の第1、第2副冷媒通路212、213が閉じる。
従って、除霜モードでは、図5の実線矢印に示すように、圧縮機11(→室内凝縮器12)→第2流量調整弁15b→室外熱交換器17(→統合弁20の主冷媒通路211)→加熱側アキュムレータ19→圧縮機11の順に冷媒が循環する。空調制御装置40は、この冷媒回路の構成で、目標吹出温度TAO、センサ群の検出信号等に基づいて、各種制御対象機器の作動状態(各種制御対象機器へ出力する制御信号)を決定する。
例えば、圧縮機11の冷媒吐出能力、すなわち圧縮機11の電動モータに出力される制御信号については、予め空調制御装置40に記憶された除霜用の冷媒吐出能力が発揮されるように決定される。また、第2流量調整弁15bの絞り開度、すなわち第2流量調整弁15bへ出力される制御信号(制御パルス)については、予め空調制御装置40に記憶された除霜用の基準開度となるように決定される。
また、エアミックスドア34を駆動する電動アクチュエータへ出力される制御信号については、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の空気通路を閉塞し、室内蒸発器23通過後の送風空気の全流量が室内凝縮器12を迂回して流れるように決定される。
従って、除霜モード時のエジェクタ式冷凍サイクル10では、図14のモリエル線図に示すように冷媒の状態が変化する。
具体的には、圧縮機11から吐出された高圧冷媒(図14のa14点)が、室内凝縮器12へ流入する。この際、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の空気通路を閉塞しているので、室内凝縮器12へ流入した冷媒は、殆ど送風空気と熱交換することなく室内凝縮器12から流出する。
室内凝縮器12から流出した冷媒は、第1三方継手13a、第1開閉弁14a、第2三方継手13bを介して、第2流量調整弁15bへ流入して減圧される(図14のa14点→c14点)。第2流量調整弁15bにて減圧された冷媒は、室外熱交換器17の一方の冷媒出入口へ流入して、室外熱交換器17へ放熱する(図14のc14点→f14点)。これにより、室外熱交換器17の除霜がなされる。
室外熱交換器17から流出した冷媒は、全開となっている統合弁20の主冷媒通路211を介して、加熱側アキュムレータ19へ流入して気液分離される。加熱側アキュムレータ19にて分離された気相冷媒は、第5三方継手13eを介して圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される(図14のf14点→a14点)。
以上の如く、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、車両用空調装置1において、冷房モード、第1除湿暖房モード、第2除湿暖房モード、第3除湿暖房モード、および暖房モードでの運転に切り替えることで、車室内の適切な空調を実現することができる。
この際、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、車室内の除湿暖房時に、第1〜第3除湿暖房モードの冷媒回路に切り替えることができるので、室外熱交換器17における冷媒の吸放熱量を幅広い範囲で連続的に調整することができる。その結果、除湿暖房時に車室内へ吹き出される送風空気の温度調整範囲を拡大させることができる。
さらに、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、除霜モードの冷媒回路に切り替えることができるので、室外熱交換器17に着霜が生じた際にこれを取り除くことができる。
ここで、冷媒減圧装置としてエジェクタを備えるエジェクタ式冷凍サイクルでは、冷媒減圧装置として膨張弁等を備える通常の冷凍サイクル装置に比べて、サイクル構成が複雑化しやすい。その理由は、エジェクタには、冷媒流入口(すなわち、ノズル部の入口)および冷媒流出口(すなわち、ディフューザ部の出口)に加えて、冷媒を吸引する冷媒吸引口が設けられているからである。
さらに、冷媒回路を切替可能なエジェクタ式冷凍サイクルでは、切替可能な冷媒回路の数の増加に伴って、必要となる電気式の制御弁の数量も増加しやすい。そのため、冷媒回路を切替可能に構成されたエジェクタ式冷凍サイクルでは、冷媒回路を切り替えるための制御も複雑化しやすい。
これに対して、本実施形態の統合弁20では、1つの電動式の駆動装置230の作動を制御することで、主冷媒通路211の開閉のみならず、第1、第2副冷媒通路212、213の開閉を行うことができる。従って、冷媒回路を切り替え可能に構成されたエジェクタ式冷凍サイクル10に適用することで、冷媒回路切替装置として採用される電気式の制御弁の個数を減らすことができる。
従って、エジェクタ式冷凍サイクル10の制御の複雑化を招くことなく、冷媒回路の切り替えを実現することができる。さらに、エジェクタ式冷凍サイクル10のサイクル構成の簡素化を図ることができるとともに、車両用空調装置1として車両へ搭載する際に搭載性を向上させることもできる。
また、本実施形態の統合弁20では、ボデー200に複数の副冷媒通路(具体的には、第1、第2副冷媒通路212、213)を形成するとともに、それぞれの副冷媒通路を開閉するように複数個の開閉弁(具体的には、第1、第2差圧弁222、223)を配置している。
従って、1つの駆動装置230の作動を制御することで、複数の副冷媒通路を開閉することができ、より一層、エジェクタ式冷凍サイクル10の制御の複雑化を抑制しやすい。
また、本実施形態の統合弁20では、シャッター弁224の筒状部224bの内部に連通路224cが形成されている。これによれば、1つの駆動装置230が、絞り弁221を変位させる同時に、圧力空間215内の圧力を変化させる構成を、容易に実現することができる。
また、本実施形態の統合弁20では、圧力空間215と第1、第2作動空間216、217とを連通させる供給通路に、第1、第2縮小部216a、217aが配置されている。これによれば、圧力空間215内の圧力変化に対して、第1、第2作動空間216、217の圧力空間215側の冷媒の圧力変化を遅延させることができる。
従って、第1、第2差圧弁222、223の変位速度を低減させることができ、第1、第2差圧弁222、223がボデー200に衝突する際の騒音を低下させることができる。さらに、第1、第2差圧弁222、223の耐久性を向上させることができる。
(第2実施形態)
本実施形態の統合弁20は、第1実施形態に対して、図15、図16に示すように、主冷媒通路211が全開状態となった際に、第1副冷媒通路212が開くとともに第2副冷媒通路213が閉じ、主冷媒通路211が絞り状態となった際に、第1副冷媒通路212が閉じるとともに第2副冷媒通路213が開くように構成されている。
なお、図15、図16は、それぞれ第1実施形態で説明した図6、図7に対応する図面である。図15、図16では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面でも同様である。
すなわち、本実施形態の統合弁20では、第1副冷媒通路212の開閉状態と第2副冷媒通路213の開閉状態とを異なる状態とすることができる。従って、本発明に係る統合弁20は、第1実施形態で説明したエジェクタ式冷凍サイクル10に限定されることなく、幅広いサイクル構成の冷凍サイクル装置に適用することができる。
(第3実施形態)
本実施形態の統合弁20は、第1実施形態に対して、図17に示すように、ボデー200に第3副冷媒通路231が形成されているとともに、ボデー200の内部に第3副冷媒通路231を開閉する第3差圧弁241が配置されている。
第3副冷媒通路231の基本的構成は、第1実施形態で説明した第1、第2副冷媒通路212、213と同様であり、第3差圧弁241の基本的構成は、第1実施形態で説明した第1、第2差圧弁222、223と同様である。さらに、第3差圧弁241は、第1、第2差圧弁222、223と同様に、圧力空間215内の冷媒圧力と低圧側冷媒の圧力との圧力差に応じて変位する。
すなわち、本実施形態の統合弁20では、主冷媒通路211を全開状態とすることで、第1〜第3副冷媒通路212、213、241を閉じることができ、主冷媒通路211を絞り状態とすることで、第1〜第3副冷媒通路212、213、241を閉じることができる。
従って、本発明に係る統合弁20は、第1実施形態で説明したエジェクタ式冷凍サイクル10に限定されることなく、幅広いサイクル構成の冷凍サイクル装置に適用することができる。
(第4実施形態)
本実施形態の統合弁20では、第1実施形態に対して、図18に示すように、第1縮小部216aの通路断面積と第2縮小部271aの通路断面積が異なる値に形成されている。より具体的には、第1縮小部216aにおける供給通路の通路断面積が第2縮小部271aにおける供給通路の通路断面積よりも小さく形成されている。
これによれば、圧力空間215内の圧力が変化した際に、第1作動空間216内の圧力変化の速さを、第2作動空間217内の圧力変化の速さよりも遅らせることができる。従って、第1差圧弁222が第1副冷媒通路212を開閉するタイミングを、第2差圧弁223が第2副冷媒通路213を開閉するタイミングよりも遅らせることができる。
すなわち、本実施形態の統合弁20によれば、適用された冷凍サイクル装置のサイクル構成に応じて、第1、第2差圧弁222、223 の作動タイミングをずらすことをできる。従って、本発明に係る統合弁20は、第1実施形態で説明したエジェクタ式冷凍サイクル10に限定されることなく、幅広いサイクル構成の冷凍サイクル装置に適用することができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の実施形態では、統合弁20を備えるエジェクタ式冷凍サイクル10を電気自動車用の空調装置に適用した例を説明したが、エジェクタ式冷凍サイクル10の適用はこれに限定されない。例えば、内燃機関(エンジン)から車両走行用の駆動力を得る通常の車両や、内燃機関と走行用電動モータとの双方から車両走行用の駆動力を得るハイブリッド車両の空調装置に適用してもよい。
内燃機関を有する車両に適用する場合は、車両用空調装置1に送風空気の補助加熱手段として内燃機関の冷却水を熱源として送風空気を加熱するヒータコアを設けてもよい。さらに、車両用に限定されることなく定置型空調装置に適用してもよい。
また、上述の実施形態では、室内凝縮器12にて、圧縮機11吐出冷媒と送風空気とを熱交換させて、圧縮機11吐出冷媒を熱源として直接的に送風空気を加熱するエジェクタ式冷凍サイクル10のについて説明したが、室内凝縮器12における送風空気の加熱態様はこれに限定されない。
例えば、熱媒体を循環させる熱媒体循環回路を設け、室内放熱器を圧縮機吐出冷媒と熱媒体とを熱交換させる水−冷媒熱交換器として構成し、さらに、熱媒体循環回路に室内放熱器にて加熱された熱媒体と送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する加熱用の熱交換器を配置してもよい。つまり、室内放熱器は、圧縮機吐出冷媒(サイクルの高圧側冷媒)を熱源として、熱媒体を介して間接的に送風空気を加熱するものであってもよい。
さらに、内燃機関を有する車両に適用する場合は、内燃機関の冷却水を熱媒体として、熱媒体循環回路を流通させるようにしてもよい。また、電気自動車においては、バッテリや電気機器を冷却する冷却水を熱媒体として、熱媒体循環回路を流通させるようにしてもよい。
(2)上述の第3実施形態では、副冷媒通路を3つ設けた例を説明したが、副冷媒通路の数量は限定されない。
また、複数の副冷媒通路のうち、一部の副冷媒通路については、主冷媒通路211が全開状態となった際に閉じるようにし、主冷媒通路211が絞り状態となった際に開くようにし、さらに、残余の副冷媒通路については、第2実施形態で説明した第1副冷媒通路212と同様に、主冷媒通路211が全開状態となった際に開くようにし、主冷媒通路211が絞り状態となった際に閉じるようにしてもよい。
(3)エジェクタ式冷凍サイクル10の各構成機器は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。
例えば、上述の実施形態では、圧縮機11として、電動圧縮機を採用した例を説明したが、圧縮機11はこれに限定されない。例えば、圧縮機11として、エンジン駆動式の可変容量型圧縮機等を採用してもよい。
また、上述の実施形態では、室内凝縮器12にて高圧冷媒と送風空気とを熱交換させることによって送風空気を加熱する例を説明したが、室内凝縮器12に代えて、例えば、熱媒体を循環させる熱媒体循環回路を設け、この熱媒体循環回路に高圧冷媒と熱媒体とを熱交換させる水−冷媒熱交換器、および水−冷媒熱交換器にて加熱された熱媒体と送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する加熱用熱交換器等を配置してもよい。
また、上述の実施形態では、冷媒回路切替装置として、複数の流量調整弁および開閉弁を採用した例を説明したが、冷媒回路切替装置はこれに限定されない。少なくとも上述した暖房モードの冷媒回路と直列除湿暖房モードの冷媒回路を切替可能であれば、例えば、全閉機能を有しない流量調整弁と開閉弁とを組み合わせたものや、四方弁等を採用してもよい。
また、上述の実施形態で説明した各構成機器を一体化したものを採用してもよい。例えば、第2流量調整弁15b、加熱側エジェクタ16、加熱側アキュムレータ19等を一体化(モジュール化)してもよい。この場合は、加熱側エジェクタ16の加熱側ノズル部16aの通路内にニードル状、あるいは円錐状の弁体を配置し、この弁体を変位させることで、第2流量調整弁15bと同様の機能を発揮させるようにしてもよい。同様に、冷却側エジェクタ22と冷却側アキュムレータ24とを一体化(モジュール化)させてもよい。
また、上述の各実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10、10aの室内蒸発器23の冷媒出口側に、室内蒸発器23の冷媒蒸発圧力を予め定めた所定値以上とする蒸発圧力調整弁を配置してもよい。これによれば、室内蒸発器23の着霜を機械的機構によって、より一層確実に防止することができる。
また、上述の実施形態では、冷媒としてR134aを採用した例を説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R1234yf、R600a、R410A、R404A、R32、R407C、等を採用してもよい。または、これらの冷媒のうち複数種を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。
(4)上述の実施形態の暖房モード時には、圧縮機11の冷媒吐出能力に基づいて第1流量調整弁15aの弁開度を調整した例を説明したが、第1流量調整弁15aの弁開度の調整はこれに限定されない。
例えば、室内凝縮器12出口側冷媒の乾き度を検出する乾き度センサを設け、この乾き度センサの検出値が0.5以上かつ0.8以下となるように第1流量調整弁15aの弁開度の弁開度を調整してもよい。また、エジェクタ式冷凍サイクル10の成績係数COPが極大値に近づくように第1流量調整弁15aの弁開度を調整してもよい。
(5)上述の実施形態では、空調制御プログラムを実行することによって、各運転モードを切り替えた例を説明したが、各運転モードの切り替えはこれに限定されない。例えば、操作パネル50に各運転モードを設定する運転モード設定スイッチを設け、当該運転モード設定スイッチの操作信号に応じて、各暖房モードを切り替えるようにしてもよい。