(第1実施形態)
図1〜図3を用いて、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10は、車両走行用の駆動力を電動モータから得る電気自動車に搭載される車両用空調装置に適用されている。エジェクタ式冷凍サイクル10は、車両用空調装置において、空調対象空間である車室内に送風される送風空気の温度を調整する機能を果たす。従って、エジェクタ式冷凍サイクル10の温度調整対象流体は、送風空気である。
本実施形態の車両用空調装置では、冷房モードの運転と除湿暖房モードの運転とを切り替えることができる。冷房モードは、送風空気を冷却して車室内を冷房する運転モードである。除湿暖房モードは、冷却して除湿された送風空気を再加熱して車室内の除湿暖房を行う運転モードである。
さらに、エジェクタ式冷凍サイクル10は、車両用空調装置の運転モードに応じて、冷房モードの冷媒回路と除湿暖房モードの冷媒回路とを切り替えることができる。
また、エジェクタ式冷凍サイクル10では、冷媒として、HFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。この冷媒には、圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
まず、図1の全体構成図を用いて、エジェクタ式冷凍サイクル10を構成する各構成機器について説明する。
圧縮機11は、エジェクタ式冷凍サイクル10において、冷媒を吸入し、圧縮して吐出するものである。圧縮機11は、車両ボンネット内に配置されている。本実施形態では、圧縮機11として、吐出容量が固定された固定容量型の圧縮機構を電動モータにて回転駆動する電動圧縮機を採用している。圧縮機11は、後述する空調制御装置40から出力される制御信号によって、回転数(すなわち、冷媒吐出能力)が制御される。
圧縮機11の吐出口には、室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、圧縮機11から吐出された高圧冷媒と後述する蒸発器ユニット20を通過後の送風空気とを熱交換させて、高圧冷媒を熱源として送風空気を加熱する室内放熱器である。室内凝縮器12は、後述する室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されている。
室内凝縮器12の冷媒出口には、暖房用膨張弁13aの入口側が接続されている。暖房用膨張弁13aは、車室内の除湿暖房を行う際に、室内凝縮器12から流出した冷媒を減圧させる暖房用減圧部である。暖房用膨張弁13aは、圧縮機11等とともに車両ボンネット内に配置されている。
暖房用膨張弁13aは、絞り開度を変更可能に構成された弁体と、この弁体の開度を変化させる電動アクチュエータとを有して構成される電気式の可変絞り機構である。暖房用膨張弁13aは、空調制御装置40から出力される制御信号(制御パルス)によって、その作動が制御される。暖房用膨張弁13aは、弁開度を全開にすることによって冷媒減圧作用を殆ど発揮することなく単なる冷媒通路として機能する全開機能を有している。
暖房用膨張弁13aの出口には、室外熱交換器14の冷媒入口側が接続されている。室外熱交換器14は、暖房用膨張弁13aから流出した冷媒と外気ファン14aから送風された外気とを熱交換させる熱交換器である。室外熱交換器14は、車両ボンネット内の前方側に配置されている。
室外熱交換器14は、冷房モード時には、暖房用膨張弁13aから流出した冷媒を放熱させる放熱器として機能し、除湿暖房モード時には、暖房用膨張弁13aから流出した冷媒を放熱させる放熱器あるいは蒸発させる蒸発器として機能する熱交換器である。外気ファン14aは、空調制御装置40から出力される制御電圧によって回転数(すなわち、送風能力)が制御される電動送風機である。
室外熱交換器14の冷媒出口には、冷房用膨張弁13bの入口側が接続されている。冷房用膨張弁13bは、車室内の冷房を行う際に、室外熱交換器14から流出した冷媒を減圧させる冷房用減圧部である。冷房用膨張弁13bの基本的構成は、暖房用膨張弁13aと同様である。
冷房用膨張弁13bの出口には、分岐部15の流入口が接続されている。分岐部15は、冷房用膨張弁13bから流出した冷媒の流れを分岐するものである。分岐部15は、3つの流入出口を有する三方継手構造のもので、3つの流入出口のうち1つを冷媒流入口とし、残りの2つを冷媒流出口としたものである。
分岐部15の一方の流出口には、エジェクタ16のノズル部16aの入口側が接続されている。また、分岐部15の他方の流出口には、固定絞り17の入口側が接続されている。
エジェクタ16は、分岐部15にて分岐された一方の冷媒を減圧させて噴射するノズル部16aを有し、冷媒減圧装置としての機能を果たす。さらに、エジェクタ16は、ノズル部16aから噴射された噴射冷媒の吸引作用によって、冷媒を吸引して循環させる冷媒循環装置としての機能を果たす。これに加えて、エジェクタ16は、噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒の運動エネルギを圧力エネルギに変換し、混合冷媒を昇圧させるエネルギ変換装置としての機能を果たす。
より具体的には、エジェクタ16は、ノズル部16aおよびボデー部16bを有している。ノズル部16aは、冷媒の流れ方向に向かって徐々に先細る略円筒状の金属(本実施形態では、ステンレス合金)で形成されている。ノズル部16aは、内部に形成された冷媒通路にて冷媒を等エントロピ的に減圧膨張させるものである。
ノズル部16aの内部に形成された冷媒通路には、通路断面積を最も縮小させる喉部、および喉部から冷媒を噴射する冷媒噴射口へ向かうに伴って通路断面積が徐々に拡大する末広部が形成されている。つまり、本実施形態のノズル部16aは、ラバールノズルとして構成されている。
さらに、本実施形態では、ノズル部16aとして、サイクルの通常運転時に冷媒噴射口から噴射される噴射冷媒の流速が音速以上となるように設定されたものが採用されている。もちろん、ノズル部16aを先細ノズルで構成してもよい。
ボデー部16bは、略円筒状の金属(本実施形態では、アルミニウム)で形成されている。ボデー部16bは、内部にノズル部16aを支持固定する固定部材として機能するとともに、エジェクタ16の外殻を形成するものである。より具体的には、ノズル部16aは、ボデー部16bの長手方向一端側の内部に収容されるように圧入にて固定されている。ボデー部16bは、樹脂にて形成されていてもよい。
ボデー部16bの外周面のうち、ノズル部16aの外周側に対応する部位には、その内外を貫通してノズル部16aの冷媒噴射口と連通するように設けられた冷媒吸引口16cが形成されている。冷媒吸引口16cは、ノズル部16aから噴射される噴射冷媒の吸引作用によって、後述する吸引側蒸発器17から流出した冷媒をエジェクタ16の内部へ吸引するための貫通穴である。
ボデー部16bの内部には、冷媒吸引口16cから吸引された吸引冷媒をノズル部16aの冷媒噴射口側へ導く吸引通路16e、および吸引冷媒と噴射冷媒とを混合させて昇圧させる昇圧部であるディフューザ部16dが形成されている。
吸引通路16eは、ノズル部16aの先細り形状の先端部周辺の外周側とボデー部16bの内周側との間の空間に形成されており、吸引通路16eの冷媒通路面積は、冷媒流れ方向に向かって徐々に縮小している。これにより、吸引通路16eを流通する吸引冷媒の流速を徐々に増加させて、ディフューザ部16dにて吸引冷媒と噴射冷媒が混合する際のエネルギ損失(すなわち、混合損失)を減少させている。
ディフューザ部16dは、吸引通路16eの出口に連続するように配置された略円錐台状の冷媒通路である。ディフューザ部16dでは、通路断面積が冷媒流れ下流側に向かって徐々に拡大する。ディフューザ部16dは、このような通路形状によって、混合冷媒の運動エネルギを圧力エネルギに変換する。
ディフューザ部16dの出口には、後述する蒸発器ユニット20を構成する流出側蒸発器18の冷媒入口側が接続されている。流出側蒸発器18は、送風機20aから車室内へ向けて送風された送風空気とディフューザ部16dから流出した冷媒とを熱交換させ、この冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
送風機20aは、空調制御装置40から出力される制御電圧によって回転数(すなわち、送風能力)が制御される電動送風機である。送風機20aは、室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されている。流出側蒸発器18の冷媒出口側には、圧縮機11の吸入口側が接続されている。
次に、固定絞り17は、分岐部15にて分岐された他方の冷媒を減圧させる吸引側減圧部である。固定絞り17としては、絞り開度が固定されたノズル、オリフィス、キャピラリチューブ等を採用することができる。
固定絞り17の出口側には、蒸発器ユニット20を構成する吸引側蒸発器19の冷媒入口側が接続されている。吸引側蒸発器19は、流出側蒸発器18を通過した送風空気と固定絞り17から流出した冷媒とを熱交換させ、この冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによって送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。
流出側蒸発器18および吸引側蒸発器19は、蒸発器ユニット20として、一体的に構成されている。具体的には、流出側蒸発器18および吸引側蒸発器19は、いずれも冷媒を流通させる複数本のチューブと、この複数のチューブの両端側に配置されてチューブを流通する冷媒の集合あるいは分配を行う一対の集合分配用タンクとを有する、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器で構成されている。
そして、流出側蒸発器18および吸引側蒸発器19の集合分配用タンクが同一部材にて形成されていることによって、流出側蒸発器18および吸引側蒸発器19が一体化されている。この際、流出側蒸発器18が吸引側蒸発器19よりも送風空気流れ上流側に配置されるように一体化されている。蒸発器ユニット20は、室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されている。
さらに、エジェクタ式冷凍サイクル10には、室外熱交換器14の下流側の冷媒を、エジェクタ16のノズル部16aおよび固定絞り17の少なくとも一方を迂回させて、流出側蒸発器18および吸引側蒸発器19のいずれか一方の冷媒入口側へ導くバイパス通路21が設けられている。
より具体的には、バイパス通路21は、冷房用膨張弁13bの下流側であって、かつ、分岐部15の上流側の冷媒を、固定絞り17を迂回させて、吸引側蒸発器19の冷媒入口側へ導くように接続されている。
バイパス通路21には、開閉弁22が配置されている。開閉弁22は、バイパス通路21を開閉する開閉機構である。開閉弁22は、空調制御装置40から出力される制御電圧によって、その作動が制御される電磁弁である。
ここで、冷媒がバイパス通路21を流通する際に生じる圧力損失は、冷媒が分岐部15を介してエジェクタ16のノズル部16aおよび固定絞り17を流通する際に生じる圧力損失に比べて極めて小さい。それゆえ、開閉弁22がバイパス通路21を開いた際には、冷房用膨張弁13bから流出した冷媒の殆どの流量がバイパス通路21側へ流入する。
もちろん、開閉弁22がバイパス通路21を開いた際であっても、バイパス通路21側の通路抵抗およびエジェクタ16のノズル部16aおよび固定絞り17側の通路抵抗によって、バイパス通路21へ流入する流量が決定される。このため、開閉弁22がバイパス通路21を開いた際にも、僅かな流量の冷媒は、分岐部15へ流入することになる。
次に、図2を用いて、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(すなわち、インストルメントパネル)の内側に配置されている。室内空調ユニット30は、エジェクタ式冷凍サイクル10によって温度調整された送風空気を車室内の適切な箇所へ吹き出すための空気通路を形成するものである。
室内空調ユニット30は、図2に示すように、その外殻を形成するケーシング31の内部に形成される空気通路に、送風機20a、蒸発器ユニット20、室内凝縮器12等を収容したものである。
ケーシング31は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成するもので、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(具体的には、ポリプロピレン)にて形成されている。ケーシング31の送風空気流れ最上流側には、ケーシング31内へ内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替装置33が配置されている。
内外気切替装置33は、ケーシング31内へ内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口の開口面積を、内外気切替ドアによって連続的に調整して、内気の導入風量と外気の導入風量との導入割合を変化させることができる。内外気切替ドアは、内外気切替ドア用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、空調制御装置から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
内外気切替装置33の送風空気流れ下流側には、送風機20aが配置されている。送風機20aの送風空気流れ下流側には、蒸発器ユニット20および室内凝縮器12が、送風空気の流れに対して、この順に配置されている。つまり、蒸発器ユニット20は、室内凝縮器12に対して、送風空気流れ上流側に配置されている。
また、ケーシング31内には、蒸発器ユニット20を通過した送風空気を、室内凝縮器12を迂回させて下流側へ流す冷風バイパス通路35が形成されている。
蒸発器ユニット20の送風空気流れ下流側であって、かつ、室内凝縮器12の送風空気流れ上流側には、蒸発器ユニット20通過後の送風空気のうち、室内凝縮器12を通過させる風量と冷風バイパス通路35を通過させる風量との風量割合を調整するエアミックスドア34が配置されている。
室内凝縮器12の送風空気流れ下流側には、室内凝縮器12にて加熱された送風空気と冷風バイパス通路35を通過して室内凝縮器12にて加熱されていない送風空気とを混合させる混合空間36が設けられている。さらに、ケーシング31の送風空気流れ最下流部には、混合空間36にて混合された送風空気(空調風)を、車室内へ吹き出す開口穴37a〜37cが配置されている。
この開口穴としては、フェイス開口穴37a、フット開口穴37b、およびデフロスタ開口穴37cが設けられている。フェイス開口穴37aは、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。フット開口穴37bは、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。デフロスタ開口穴37cは、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すための開口穴である。
これらのフェイス開口穴37a、フット開口穴37b、およびデフロスタ開口穴37cは、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
従って、エアミックスドア34が、室内凝縮器12を通過させる風量と冷風バイパス通路35を通過させる風量との風量割合を調整することによって、混合空間36にて混合される空調風の温度が調整される。これにより、各吹出口から車室内へ吹き出される送風空気(空調風)の温度も調整される。
エアミックスドア34は、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、空調制御装置から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
また、フェイス開口穴37a、フット開口穴37b、およびデフロスタ開口穴37cの送風空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス開口穴37aの開口面積を調整するフェイスドア、フット開口穴37bの開口面積を調整するフットドア、デフロスタ開口穴37cの開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、空調風が吹き出される吹出口を切り替える吹出モード切替装置を構成するものである。フェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、リンク機構等を介して、吹出口モードドア駆動用の電動アクチュエータに連結されて連動して回転操作される。この電動アクチュエータは、空調制御装置40から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
次に、本実施形態の電気制御部の概要について説明する。空調制御装置40は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。そして、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、その出力側に接続された各種制御対象機器11、13a、13b、14a、20a、22等の作動を制御する。
また、空調制御装置40の入力側には、図3のブロック図に示すように、内気温センサ41、外気温センサ42、日射センサ43、高圧センサ44、蒸発器温度センサ45、過熱度センサ46、空調風温度センサ47等の空調制御用のセンサ群が接続されている。空調制御装置40には、これらの空調制御用のセンサ群の検出信号が入力される。
内気温センサ41は、車室内温度(内気温)Trを検出する内気温検出部である。外気温センサ42は、車室外温度(外気温)Tamを検出する外気温検出部である。日射センサ43は、車室内へ照射される日射量Asを検出する日射量検出部である。高圧センサ44は、圧縮機11の吐出口側から暖房用膨張弁13aの入口側へ至る冷媒流路の高圧冷媒圧力Pdを検出する冷媒圧力検出部である。
蒸発器温度センサ45は、吸引側蒸発器19における冷媒蒸発温度(蒸発器温度)Tefinを検出する蒸発器温度検出部である。過熱度センサ46は、蒸発器ユニット20の出口側(具体的には、流出側蒸発器18の出口側)の冷媒の過熱度SHを検出する過熱度検出部である。空調風温度センサ47は、混合空間36から車室内へ送風される送風空気温度TAVを検出する空調風温度検出部である。
さらに、空調制御装置40の入力側には、図3に示すように、車室内前部の計器盤付近に配置された操作パネル50が接続され、この操作パネル50に設けられた各種操作スイッチからの操作信号が入力される。
操作パネル50に設けられた各種操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置の自動制御運転を設定あるいは解除するオートスイッチ、車室内の冷房を行うことを要求する冷房スイッチ、送風機18aの風量をマニュアル設定する風量設定スイッチ、車室内の目標温度Tsetを設定する温度設定スイッチ等がある。
なお、本実施形態の空調制御装置40は、その出力側に接続された各種制御対象機器を制御する制御部が一体に構成されたものであるが、それぞれの制御対象機器の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が、それぞれの制御対象機器の作動を制御する制御部を構成している。例えば、空調制御装置40のうち、圧縮機11の作動を制御する構成は、吐出能力制御部40aである。開閉弁22の作動を制御する構成は、開閉機構制御部40bである。
次に、上記構成における本実施形態の作動について説明する。本実施形態の車両用空調装置1では、車室内の冷房、および除湿暖房を行うことができる。これに応じて、エジェクタ式冷凍サイクル10では、冷房モードの運転、および除湿暖房モードの運転を切り替えることができる。各運転モードの切り替えは、空調制御プログラムが実行されることによって行われる。
この空調制御プログラムは、操作パネル50のオートスイッチが投入(ON)された際に実行される。そして、オートスイッチが投入(ON)された状態で、冷房スイッチが投入(ON)されると冷房モードが実行され、冷房スイッチが解除(OFF)されている際には除湿暖房モードが実行される。以下に各運転モードについて説明する。
(a)冷房モード
冷房モードでは、空調制御装置40が、暖房用膨張弁13aを全開状態とし、冷房用膨張弁13bを冷媒減圧作用を発揮する絞り状態とし、開閉弁22を閉じる。
これにより、冷房モードでは、冷媒が、圧縮機11の吐出口(→室内凝縮器12→暖房用膨張弁13a)→室外熱交換器14→冷房用膨張弁13b→分岐部15→エジェクタ16→流出側蒸発器18→圧縮機11の吸入口の順に循環するとともに、分岐部15→固定絞り17→吸引側蒸発器19→エジェクタ16の冷媒吸引口の順に循環するエジェクタ式冷凍サイクルが構成される。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置40に記憶されている制御マップを参照して、蒸発器ユニット20から吹き出される送風空気の目標蒸発器温度TEOを決定する。そして、蒸発器温度センサ45によって検出された蒸発器温度Tefinが目標蒸発器温度TEOに近づくように圧縮機11の電動モータへ出力される制御信号を決定する。
ここで、目標吹出温度TAOは、車室内に吹き出される送風空気(空調風)の目標温度である。目標吹出温度TAOは、内気温センサ41によって検出された内気温Tr、外気温センサ42によって検出された外気温Tam、日射センサ43によって検出された日射量As、および操作パネル50の温度設定スイッチによって設定された設定温度Tsetを用いて算定される。
この制御マップでは、目標吹出温度TAOの低下に伴って、目標蒸発器温度TEOを低下させるように決定する。さらに、目標蒸発器温度TEOは、流出側蒸発器18および吸引側蒸発器19の着霜を抑制可能な範囲(具体的には、1℃以上)の値に決定される。
また、空調制御装置40は、過熱度センサ46によって検出された蒸発器ユニット20の出口側の冷媒の過熱度SHが、予め定めた基準加熱度KSH(本実施形態では、3℃)に近づくように、冷房用膨張弁13bへ出力する制御パルスを決定する。
また、空調制御装置40は、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の通風路を全閉とし、冷風バイパス通路35側の通風路を全開とするように、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータに出力する制御信号を決定する。
そして、上記の如く決定された制御信号等を各種制御対象機器へ出力する。その後、車両用空調装置の作動停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、検出信号および操作信号の読み込み→各種制御対象機器の作動状態の決定→制御電圧および制御信号の出力といった制御ルーチンが繰り返される。なお、このような制御ルーチンの繰り返しは、他の運転モード時にも同様に行われる。
従って、冷房モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、室内凝縮器12へ流入する。冷房モードでは、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の通風路を全閉としているので、室内凝縮器12へ流入した高圧冷媒は、送風空気に放熱することなく、室内凝縮器12から流出する。
室内凝縮器12から流出した高圧冷媒は、暖房用膨張弁13aへ流入する。冷房モードでは、暖房用膨張弁13aが全開となっているので、暖房用膨張弁13aへ流入した高圧冷媒は、減圧されることなく暖房用膨張弁13aから流出する。
暖房用膨張弁13aから流出した高圧冷媒は、室外熱交換器14へ流入する。室外熱交換器14へ流入した高圧冷媒は、外気ファン14aによって送風された外気と熱交換し、放熱して凝縮する。室外熱交換器14にて凝縮した冷媒は、冷房用膨張弁13bへ流入して減圧される。この際、冷房用膨張弁13bの絞り開度は、流出側蒸発器18の出口側の冷媒の過熱度SHが基準過熱度KSHに近づくように調整される。
冷房用膨張弁13bにて減圧された低圧冷媒は、開閉弁22が閉じているので、バイパス通路21側へ流入することなく、分岐部15へ流入する。分岐部15にて分岐された一方の冷媒は、エジェクタ16のノズル部16aへ流入して等エントロピ的に減圧されて噴射される。そして、この噴射冷媒の吸引作用によって、吸引側蒸発器19から流出した冷媒が、エジェクタ16の冷媒吸引口16cから吸引される。
ノズル部16aから噴射された噴射冷媒、および冷媒吸引口16cから吸引された吸引冷媒は、エジェクタ16のディフューザ部16dへ流入する。ディフューザ部16dでは、冷媒通路面積の拡大により、冷媒の速度エネルギが圧力エネルギに変換される。これにより、噴射冷媒と吸引冷媒との混合冷媒の圧力が上昇する。ディフューザ部16dにて昇圧された冷媒は、蒸発器ユニット20の流出側蒸発器18へ流入する。
流出側蒸発器18へ流入した冷媒は、送風機20aによって送風された送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、送風機20aによって送風された送風空気が冷却される。流出側蒸発器18から流出した冷媒は、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
一方、分岐部15にて分岐された他方の冷媒は、固定絞り17にて等エンタルピ的に減圧される。固定絞り17にて減圧された冷媒は、蒸発器ユニット20の吸引側蒸発器19へ流入する。吸引側蒸発器19へ流入した冷媒は、流出側蒸発器18を通過した送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、流出側蒸発器18通過後の送風空気が、さらに冷却される。吸引側蒸発器19から流出した冷媒は、冷媒吸引口16cから吸引される。
以上の如く、冷房モードでは、蒸発器ユニット20(具体的には、流出側蒸発器18および吸引側蒸発器19)にて送風空気を冷却することができる。そして、冷却された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の冷房を実現することができる。
この際、エジェクタ式冷凍サイクル10では、流出側蒸発器18下流側の冷媒、すなわちエジェクタ16のディフューザ部16dにて昇圧された冷媒を圧縮機11へ吸入させることができる。従って、エジェクタ式冷凍サイクル10では、蒸発器における冷媒蒸発圧力と圧縮機吸入冷媒の圧力が同等となる通常の冷凍サイクル装置よりも、圧縮機11の消費動力を低減させて、サイクルの成績係数(COP)を向上させることができる。
また、エジェクタ式冷凍サイクル10では、流出側蒸発器18における冷媒蒸発圧力をディフューザ部16dにて昇圧された冷媒圧力とし、吸引側蒸発器19における冷媒蒸発圧力をノズル部16aにて減圧された直後の低い冷媒圧力とすることができる。従って、各蒸発器における冷媒蒸発温度と送風空気との温度差を確保して、送風空気を効率的に冷却することができる。
(b)除湿暖房モード
除湿暖房モードでは、空調制御装置40が、暖房用膨張弁13aを絞り状態とし、冷房用膨張弁13bを絞り状態とし、開閉弁22を開く。
これにより、除湿暖房モードでは、殆どの冷媒が圧縮機11の吐出口→室内凝縮器12→暖房用膨張弁13a→室外熱交換器14→冷房用膨張弁13b→バイパス通路21→吸引側蒸発器19→エジェクタ16→流出側蒸発器18→圧縮機11の吸入口の順に循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
つまり、除湿暖房モードでは、室内凝縮器12、室外熱交換器14、蒸発器ユニット20(すなわち、吸引側蒸発器19、および流出側蒸発器18)が、冷媒流れに対して、この順に直列的に接続された冷媒回路に切り替えられる。
このサイクル構成で、空調制御装置40は、冷房モードと同様に、圧縮機11の電動モータへ出力される制御信号を決定する。
また、空調制御装置40は、目標吹出温度TAOおよび外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置に記憶されている制御マップを参照して、暖房用膨張弁13aおよび冷房用膨張弁13bへ出力する制御パルスを決定する。
この制御マップでは、空調風温度センサ47によって検出された送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように、目標吹出温度TAOの上昇および外気温Tamの低下に伴って、暖房用膨張弁13aの絞り開度を縮小させ、冷房用膨張弁13bの絞り開度を増加させるように制御パルスを決定する。
また、空調制御装置40は、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の通風路を全開とし、冷風バイパス通路35側の通風路を全閉とするように、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータに出力する制御信号を決定する。
従って、除湿暖房モードでは、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が、室内凝縮器12へ流入する。除湿暖房モードでは、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の通風路を全開としているので、室内凝縮器12へ流入した高圧冷媒は、蒸発器ユニット20通過後の送風空気と熱交換して放熱する。これにより、蒸発器ユニット20通過後の送風空気が目標吹出温度TAOに近づくように加熱される。
室内凝縮器12から流出した高圧冷媒は、暖房用膨張弁13aへ流入して等エンタルピ的に減圧される。暖房用膨張弁13aにて減圧された冷媒は、室外熱交換器14へ流入する。
この際、室外熱交換器14における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高い場合には、室外熱交換器14は、冷媒の有する熱を外気に放熱させる放熱器として機能する。一方、室外熱交換器14における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低い場合には、室外熱交換器14は、外気の有する熱を吸熱させて冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する。
さらに、室外熱交換器14における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高い場合には、空調制御装置40が目標吹出温度TAOの上昇および外気温Tamの低下に伴って、室外熱交換器14の冷媒の飽和温度を低下させることによって、室外熱交換器14における冷媒の放熱量を減少させることができる。これにより、室内凝縮器12における冷媒の放熱量を増加させて送風空気の加熱能力を向上させることができる。
一方、室外熱交換器14における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも低い場合には、空調制御装置40が目標吹出温度TAOの上昇および外気温Tamの低下に伴って、室外熱交換器14の冷媒の飽和温度を低下させることによって、室外熱交換器14における冷媒の吸熱量を増加させることができる。これにより、室内凝縮器12における冷媒の放熱量を増加させて送風空気の加熱能力を向上させることができる。
室外熱交換器14から流出した冷媒は、冷房用膨張弁13bへ流入して等エンタルピ的に減圧される。冷房用膨張弁13bにて減圧された低圧冷媒は、開閉弁22が開いているので、殆ど全ての流量がバイパス通路21を介して、蒸発器ユニット20の吸引側蒸発器19へ流入する。
吸引側蒸発器19へ流入した冷媒は、吸引側蒸発器19→エジェクタ16の冷媒吸引口21b→吸引通路16e→ディフューザ部16d→流出側蒸発器18の順に流れる。この際、冷媒は吸引側蒸発器19および流出側蒸発器18にて送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、室内凝縮器12通過前の送風空気が冷却されて除湿される。
蒸発器ユニット20の流出側蒸発器18から流出した冷媒は、圧縮機11へ吸入されて再び圧縮される。
以上の如く、除湿暖房モードでは、蒸発器ユニット20(具体的には、流出側蒸発器18および吸引側蒸発器19)にて送風空気を冷却して除湿し、除湿された送風空気を室内凝縮器12にて再加熱することができる。そして、再加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の除湿暖房を実現することができる。
ところで、除湿暖房モードのエジェクタ式冷凍サイクル10では、目標吹出温度TAOの上昇および外気温Tamの低下に伴って、暖房用膨張弁13aの絞り開度を縮小させ、冷房用膨張弁13bの絞り開度を増加させている。つまり、除湿暖房モードのエジェクタ式冷凍サイクル10では、要求される送風空気の加熱能力(すなわち、暖房能力)の増加に伴って、室外熱交換器14における冷媒の飽和温度を低下させている。
さらに、除湿暖房モードのエジェクタ式冷凍サイクル10では、室外熱交換器14、吸引側蒸発器19、流出側蒸発器18が、冷媒流れに対して、この順に直列的に接続される冷媒回路に切り替えられる。このため、除湿暖房モード時に、室外熱交換器14における冷媒蒸発温度を、吸引側蒸発器19あるいは流出側蒸発器18における冷媒蒸発温度よりも低下させることができない。
従って、エジェクタ式冷凍サイクル10において、除湿暖房モード時の送風空気の加熱能力を最大とするためには、冷房用膨張弁13bを全開として、室外熱交換器14における冷媒蒸発温度を、吸引側蒸発器19および流出側蒸発器18の冷媒蒸発温度に近づけることが有効である。
これに対して、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、除湿暖房モード時に、開閉弁22がバイパス通路21を開く。これによれば、冷房用膨張弁13bから流出した冷媒を、エジェクタ16のノズル部16aおよび固定絞り17を迂回させて、吸引側蒸発器19および流出側蒸発器18へ流入させることができる。
従って、室外熱交換器14から流出した冷媒が、エジェクタ16のノズル部16aおよび固定絞り17を流通する際の圧力損失によって、室外熱交換器14における冷媒蒸発温度が吸引側蒸発器19および流出側蒸発器18の冷媒蒸発温度よりも上昇してしまうことを抑制することができる。つまり、室外熱交換器14における冷媒蒸発温度を、吸引側蒸発器19および流出側蒸発器18の冷媒蒸発温度における冷媒蒸発温度に効果的に近づけることができる。
その結果、除湿暖房モードのエジェクタ式冷凍サイクル10では、冷媒がエジェクタ16のノズル部16aおよび固定絞り17を流通する際に生じる圧力損失によって、室外熱交換器14における冷媒の吸熱量が減少してしまうことを抑制して、空調能力(具体的には、送風空気の加熱能力)が低下してしまうことを抑制することができる。
すなわち、エジェクタ式冷凍サイクル10によれば、除湿暖房モード時に、冷媒がエジェクタ16のノズル部16aおよび固定絞り17を流通する際に生じる圧力損失によって、空調能力が低下してしまうことを抑制することができる。
また、本実施形態のバイパス通路21は、冷房用膨張弁13bの下流側の冷媒を流入させるように接続されている。従って、分岐部15、エジェクタ16、固定絞り17、バイパス通路21、および開閉弁22を近接配置して容易に一体化(モジュール化)させることができる。
また、本実施形態のバイパス通路21は、流入させた室外熱交換器14の下流側の冷媒を、吸引側蒸発器19の冷媒入口側へ導くように接続されている。従って、吸引側蒸発器19および流出側蒸発器18の双方に冷媒を流通させることができ、双方の蒸発器18、19にて、冷媒を充分に蒸発させることができる。これにより、より一層、吸熱量の低下を抑制することができる。
また、本実施形態では、除湿暖房モード時に、開閉弁22を開く例を説明したが、除湿暖房モード時あっても、要求される送風空気の加熱能力が少ない運転条件、すなわち、室外熱交換器14における冷媒の飽和温度が外気温Tamよりも高くなっている運転条件時には、開閉弁22を閉じてもよい。
換言すると、除湿暖房モード時のうち、暖房用膨張弁13aが絞り状態となっており、かつ、室外熱交換器14にて冷媒を蒸発させる運転条件となっている際に、開閉弁22を開くようにしてもよい。これによれば、除湿暖房モード時のうち、要求される送風空気の加熱能力が少ない運転条件では、エジェクタ16の昇圧作用によるCOP向上効果を得ることができる。
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、バイパス通路21の接続態様を変更している。具体的には、本実施形態のバイパス通路21は、図4の全体構成図に示すように、室外熱交換器14の下流側であって、かつ、冷房用膨張弁13bの上流側の冷媒を、固定絞り17を迂回させて、吸引側蒸発器19の冷媒入口側へ導くように接続されている。
また、本実施形態の冷房用膨張弁13bは、弁開度を全閉にすることで冷媒通路を閉塞する全閉機能を有している。その他のエジェクタ式冷凍サイクル10の構成は、第1実施形態と同様である。なお、図3では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面でも同様である。
さらに、本実施形態の除湿暖房モードでは、空調制御装置40が、暖房用膨張弁13aを絞り状態とし、冷房用膨張弁13bを全閉状態とし、開閉弁22を開く。
これにより、本実施形態の除湿暖房モードでは、冷媒が圧縮機11の吐出口→室内凝縮器12→暖房用膨張弁13a→室外熱交換器14→バイパス通路21→吸引側蒸発器19→エジェクタ16→流出側蒸発器18→圧縮機11の吸入口の順に循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。このため、本実施形態の除湿暖房モードでは、室外熱交換器14は蒸発器として機能する。
さらに、本実施形態の除湿暖房モードでは、空調制御装置40が、目標吹出温度TAOおよび外気温Tamに基づいて、予め空調制御装置に記憶されている制御マップを参照して、暖房用膨張弁13aへ出力する制御パルスを決定する。この制御マップでは、送風空気温度TAVが目標吹出温度TAOに近づくように、目標吹出温度TAOの上昇および外気温Tamの低下に伴って、暖房用膨張弁13aの絞り開度を縮小させる。
その他のエジェクタ式冷凍サイクル10の構成および作動は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、第1実施形態と同様に車室内の冷房および除湿暖房を実現することができる。
さらに、除湿暖房モード時に、冷房用膨張弁13bが全閉となる。従って、開閉弁22がバイパス通路21を開いた際には、僅かな流量の冷媒がエジェクタ16のノズル部16aあるいは固定絞り17へ流入してしまうことがなく、室外熱交換器14から流出した冷媒の全流量をバイパス通路21へ流入させることができる。
その結果、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、除湿暖房モード時に、空調能力が低下してしまうことをより一層効果的に抑制することができる。
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、バイパス通路21の接続態様を変更している。具体的には、本実施形態のバイパス通路21は、図5の全体構成図に示すように、分岐部15の下流側であって、かつ、固定絞り17の上流側の冷媒を、固定絞り17を迂回させて、吸引側蒸発器19の冷媒入口側へ導くように接続されている。
これにより、本実施形態の冷房モードでは、第1実施形態と同様のサイクルが構成される。また、本実施形態の除湿暖房モードでは、殆どの冷媒が圧縮機11の吐出口→室内凝縮器12→暖房用膨張弁13a→室外熱交換器14→冷房用膨張弁13b→分岐部15→バイパス通路21→吸引側蒸発器19→エジェクタ16→流出側蒸発器18→圧縮機11の吸入口の順に循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
その他のエジェクタ式冷凍サイクル10の構成および作動は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、第1実施形態と同様に車室内の冷房および除湿暖房を実現することができる。
さらに、本実施形態のバイパス通路21は、固定絞り17の入口部と出口部とを冷媒配管等で接続することが実現できる。従って、分岐部15、エジェクタ16、固定絞り17、バイパス通路21、および開閉弁22を近接配置して、容易に一体化(モジュール化)させることができる。
(第4実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、バイパス通路21の接続態様を変更している。具体的には、本実施形態のバイパス通路21は、図6の全体構成図に示すように、冷房用膨張弁13bの下流側であって、かつ、分岐部15の上流側の冷媒を、エジェクタ16を迂回させて、流出側蒸発器18の冷媒入口側へ導くように接続されている。
本実施形態の除湿暖房モードでは、殆どの冷媒が圧縮機11の吐出口→室内凝縮器12→暖房用膨張弁13a→室外熱交換器14→冷房用膨張弁13b→バイパス通路21→流出側蒸発器18→圧縮機11の吸入口の順に循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
その他のエジェクタ式冷凍サイクル10の構成および作動は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、第1実施形態と同様に車室内の冷房および除湿暖房を実現することができ、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
また、本実施形態のバイパス通路21は、流入させた室外熱交換器14の下流側の冷媒を、流出側蒸発器18の冷媒入口側へ導くように接続されている。これによれば、吸引側蒸発器19から流出した冷媒がエジェクタ16の冷媒吸引口16cおよび吸引通路16eを流通する際に生じる圧力損失によって、空調能力が低下してしまうことを抑制することができる。
(第5実施形態)
本実施形態では、第4実施形態に対して、バイパス通路21の接続態様を変更している。具体的には、本実施形態のバイパス通路21は、図7の全体構成図に示すように、室外熱交換器14の下流側であって、かつ、冷房用膨張弁13bの上流側の冷媒を、エジェクタ16を迂回させて、流出側蒸発器18の冷媒入口側へ導くように接続されている。また、本実施形態の冷房用膨張弁13bは、第2実施形態と同様に全閉機能を有している。
本実施形態の除湿暖房モードでは、空調制御装置40が、暖房用膨張弁13aを絞り状態とし、冷房用膨張弁13bを全閉状態とし、開閉弁22を開く。
これにより、本実施形態の除湿暖房モードでは、冷媒が圧縮機11の吐出口→室内凝縮器12→暖房用膨張弁13a→室外熱交換器14→バイパス通路21→流出側蒸発器18→圧縮機11の吸入口の順に循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。このため、本実施形態の除湿暖房モードでは、室外熱交換器14は蒸発器として機能する。
その他のエジェクタ式冷凍サイクル10の構成および作動は、第4実施形態と同様である。従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、第4実施形態と同様に車室内の冷房および除湿暖房を実現することができる。
さらに、除湿暖房モード時に、冷房用膨張弁13bが全閉となる。従って、第2実施形態と同様に、開閉弁22がバイパス通路21を開いた際には、室外熱交換器14から流出した冷媒の全流量をバイパス通路へ流入させることができる。
(第6実施形態)
本実施形態では、第4実施形態に対して、バイパス通路21の接続態様を変更している。具体的には、本実施形態のバイパス通路21は、図8の全体構成図に示すように、分岐部15の下流側であって、かつ、固定絞り17の上流側の冷媒を、エジェクタ16を迂回させて、流出側蒸発器18の冷媒入口側へ導くように接続されている。
これにより、本実施形態の冷房モードでは、第4実施形態と同様のサイクルが構成される。また、本実施形態の除湿暖房モードでは、殆どの冷媒が圧縮機11の吐出口→室内凝縮器12→暖房用膨張弁13a→室外熱交換器14→冷房用膨張弁13b→分岐部15→バイパス通路21→流出側蒸発器18→圧縮機11の吸入口の順に循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルが構成される。
その他のエジェクタ式冷凍サイクル10の構成および作動は、第4実施形態と同様である。従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、第4実施形態と同様に車室内の冷房および除湿暖房を実現することができる。
さらに、本実施形態のバイパス通路21は、固定絞り17の入口部とエジェクタ16のディフューザ部16dの出口部とを冷媒配管等で接続することが実現できる。従って、第3実施形態と同様に、分岐部15、エジェクタ16、固定絞り17、バイパス通路21、開閉弁22等を一体化(モジュール化)させる際に、モジュールの小型化を狙うこともできる。
(第7実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図9の全体構成図に示すように、開閉弁22を廃止して、開閉機構としてバイパス通路21の入口部に電気式の三方弁23を配置した例を説明する。
三方弁23は、冷房用膨張弁13bから流出した冷媒を分岐部15へ流入させる冷媒回路と、冷房用膨張弁13bから流出した冷媒をバイパス通路21へ流入させる冷媒回路とを切り替えるものである。三方弁23は、空調制御装置40から出力される制御電圧によって、その作動が制御される。
空調制御装置40は、冷房モード時に、冷房用膨張弁13bから流出した冷媒を分岐部15へ流入させるように三方弁23の作動を制御する。これにより、バイパス通路21を閉じる。一方、除湿暖房モード時には、冷房用膨張弁13bから流出した冷媒をバイパス通路21へ流入させるように三方弁23の作動を制御する。これにより、バイパス通路21を開く。
その他のエジェクタ式冷凍サイクル10の構成および作動は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、第1実施形態と同様に車室内の冷房および除湿暖房を実現することができる。
さらに、本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10では、除湿暖房モード時に、冷房用膨張弁13bから流出した冷媒の全流量をバイパス通路21へ流入させるように冷媒回路が切り替えることができる。従って、第2、第5実施形態と同様に、除湿暖房モード時に、空調能力が低下してしまうことをより一層効果的に抑制することができる。
(第8実施形態)
第1実施形態では、除湿暖房モード時に、開閉弁22を開く例を説明したが、本実施形態では、さらに、第1実施形態で説明したエジェクタ式冷凍サイクル10において、図10の制御フローを実行することによって、除湿暖房モード時に以外にも開閉弁22を開くようにした例を説明する。図10は、空調制御装置40が実行する空調制御プログラムのサブルーチンとして実行される制御フローを示したフローチャートである。
図10のステップS1では、操作パネル50のオートスイッチが投入(ON)されてからの経過時間、すなわち圧縮機11の起動開始からの経過時間Tmが、予め定めた基準時間KTm以下である場合は、ステップS3へ進み、開閉弁22を開く。ステップS2では、圧縮機11の回転数Ncが、予め定めた基準回転数Nc以下である場合は、ステップS3へ進み、開閉弁22を開く。
本実施形態のエジェクタ式冷凍サイクル10によれば、圧縮機11の起動開始から基準時間KTmを経過するまで開閉弁22を開くので、圧縮機11の起動直後にエジェクタ16のノズル部16aへ流入する冷媒流量を低下させることができる。従って、ノズル部16aへ多量の冷媒が流れ込むことによって生じる騒音や振動を低減することができる。
また、圧縮機11が低回転となる運転条件、すなわち圧縮機11の冷媒吐出能力が低くなる運転条件では、このため、低負荷運転時には、エジェクタ16の冷媒吸引能力も低下して、吸引側蒸発器19へ流入する冷媒流量が不足してしまうこともある。ここで、圧縮機の冷媒吐出能力とは、圧縮機から吐出される冷媒流量Qと圧縮機の昇圧量ΔPとの積算値によって定義することができる。
これに対して、エジェクタ式冷凍サイクル10によれば、圧縮機11の回転数Ncが基準回転数KNc以下となっている際に、開閉弁22を開くので、圧縮機11の冷媒吐出能力が予め定めた基準能力以下となっている際に、開閉弁22を開くことができる。
従って、エジェクタ16の冷媒吸引能力によらず、吸引側蒸発器19へ冷媒を流入させることができる。従って、吸引側蒸発器19における送風空気の温度分布を抑制することができる。さらに、吸引側蒸発器19における冷凍機油の滞留を抑制することができる。その結果、空調能力が低下してしまうことを抑制することができる。
本実施形態で説明した制御フローは、第2、第3、第7実施形態でエジェクタ式冷凍サイクル10のみならず、第4〜第6実施形態で説明したエジェクタ式冷凍サイクル10に適用しても有効である。
つまり、第4〜第6実施形態で説明したエジェクタ式冷凍サイクル10では、開閉弁22を開くことで、吸引側蒸発器19に冷媒が流通しなくなるので、吸引側蒸発器19における送風空気の温度分布を抑制する効果、および冷凍機油の滞留を抑制する効果を得ることができる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の各実施形態では、本発明に係るエジェクタ式冷凍サイクル10を車両用空調装置に適用した例を説明したが、エジェクタ式冷凍サイクル10の適用はこれに限定されない。例えば、定置型の空調装置に適用してもよい。
(2)上述の各実施形態では、冷房モードの冷媒回路と除湿暖房モードの冷媒回路とを切替可能に構成されたエジェクタ式冷凍サイクルについて説明したが、エジェクタ式冷凍サイクルの構成はこれに限定されない。さらに、暖房モードに切替可能になっていてもよい。
例えば、第1実施形態で説明したエジェクタ式冷凍サイクル10において、暖房用バイパス通路、および暖房用開閉弁を追加してもよい。暖房用バイパス通路は、室外熱交換器14の冷媒流れ下流側であって、かつ、冷房用膨張弁13bの冷媒流れ上流側の部位から圧縮機11の吸入側へ冷媒を導く冷媒通路である。暖房用開閉弁は、空調制御装置40から出力される制御電圧に応じて、暖房用バイパス通路を開閉する電磁弁である。
そして、暖房モード時に、空調制御装置40が、暖房用バイパス通路を開き、暖房用膨張弁13aを絞り状態とする。これにより、媒が圧縮機11の吐出口→室内凝縮器12→暖房用膨張弁13a→室外熱交換器14→圧縮機11の吸入口の順に循環する蒸気圧縮式の冷凍サイクルを構成する。
さらに、空調制御装置40は、エアミックスドア34が室内凝縮器12側の通風路を全開とし、冷風バイパス通路35側の通風路を全閉とするように、エアミックスドア駆動用の電動アクチュエータに出力する制御信号を決定する。
これによれば、暖房モード時に、室内凝縮器12を放熱器として機能させ、室外熱交換器14を蒸発器として機能させて、室内凝縮器12にて加熱された送風空気を車室内へ吹き出すことによって、車室内の暖房を実現することができる。
(3)エジェクタ式冷凍サイクル10を構成する各構成機器は、上述の実施形態に開示されたものに限定されない。
例えば、上述の実施形態では、圧縮機11として、電動圧縮機を採用した例を説明したが、圧縮機11として、プーリ、ベルト等を介して車両走行用エンジンから伝達される回転駆動力によって駆動されるエンジン駆動式の圧縮機を採用してもよい。さらに、エンジン駆動式の圧縮機としては、吐出容量の変化により冷媒吐出能力を調整可能な可変容量型圧縮機、あるいは電磁クラッチの断続により圧縮機の稼働率を変化させて冷媒吐出能力を調整可能な固定容量型圧縮機を採用することができる。
また、上述の実施形態では、エジェクタのノズル部として冷媒通路断面積が一定の固定ノズル部を採用した例を説明したが、ノズル部として冷媒通路断面積を変更可能に構成された可変ノズル部を採用してもよい。このような可変ノズル部としては、ノズル部の内部に配置されてノズル部の冷媒通路面積を調整するニードル弁、このニードル弁をノズル部の軸方向に変位させる電動式の駆動部を有するものを採用すればよい。
さらに、可変ノズル部として、冷媒通路を閉塞する全閉機能を有するものを採用することが望ましい。そして、開閉弁22がバイパス通路21を開いた際に、可変ノズル部を全閉状態とすることで、室外熱交換器14から流出した冷媒の全流量をバイパス通路へ流入させやすい。
また、上述の実施形態では、吸引側減圧部として固定絞り17を採用したが、吸引側減圧部として絞り通路の断面積を変更可能に構成された可変絞り機構を採用してもよい。このような可変絞り機構としては、暖房用膨張弁13a、冷房用膨張弁13bと同様の構成のものを採用すればよい。
さらに、全閉機能を有する可変絞り機構を採用することが望ましい。そして、開閉弁22がバイパス通路21を開いた際に、可変絞り機構を全閉状態とすることで、室外熱交換器14から流出した冷媒の全流量をバイパス通路へ流入させやすい。
また、上述の実施形態では、過熱度センサ46を採用した例を説明したが、過熱度センサ46に代えて、流出側蒸発器18から流出した低圧冷媒温度Tsを検出する低圧冷媒温度検出部、流出側蒸発器18から流出した低圧冷媒圧力Psを検出する低圧冷媒圧量検出部を採用し、低圧冷媒温度Tsおよび低圧冷媒圧力Psから蒸発器ユニット20の出口側冷媒の過熱度を算定してもよい。
また、上述の実施形態では、冷媒としてR134aを採用した例を説明したが、冷媒はこれに限定されない。例えば、R1234yf、R600a、R410A、R404A、R32、R407C、等を採用してもよい。または、これらの冷媒のうち複数種を混合させた混合冷媒等を採用してもよい。さらに、冷媒として二酸化炭素を採用して、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルを構成してもよい。