以下、図1〜図14を参照して、本発明の電子部品搬送装置および電子部品検査装置の実施形態について説明する。なお、以下では、説明の便宜上、図1に示すように、互いに直交する3軸をX軸、Y軸およびZ軸とする。また、X軸とY軸を含むXY平面が水平となっており、Z軸が鉛直となっている。また、X軸に平行な方向を「X方向」とも言い、Y軸に平行な方向を「Y方向」とも言い、Z軸に平行な方向を「Z方向」とも言う。また、各方向の矢印が向いた方向を「正」、その反対方向を「負」と言う。また、本願明細書で言う「水平」とは、完全な水平に限定されず、電子部品の搬送が阻害されない限り、水平に対して若干(例えば5°未満程度)傾いた状態も含む。また、図1、図3〜図5、図7、図9および図10中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言うことがある。また、図4、図7では、ICデバイスは省略されている。
図1、図2に示す電子部品検査装置1は、電子部品搬送装置10を内蔵するものであり、例えばBGA(Ball Grid Array)パッケージであるICデバイス等の電子部品を搬送し、その搬送過程で電子部品の電気的特性を検査・試験(以下単に「検査」と言う)する装置である。なお、以下では、説明の便宜上、前記電子部品としてICデバイスを用いる場合について代表して説明し、これを「ICデバイス90」とする。ICデバイス90は、本実施形態では平面視で矩形(正方形)をなすものとなっている。
また、電子部品検査装置1(電子部品搬送装置10)は、ICデバイス90の種類ごとに交換される「チェンジ・キット」と呼ばれるものを予め搭載して用いられる。このチェンジ・キットには、ICデバイス90が載置される載置部があり、その載置部としては、例えば、後述する温度調整部12、デバイス供給部14等がある。
また、ICデバイス90が載置される載置部としては、前記のようなチェンジ・キットとは別に、ユーザーが用意する板状のトレイ200もある。このトレイ200も電子部品検査装置1(電子部品搬送装置10)に搭載される。この載置部としてのトレイ200は、例えば、電子部品検査装置1(電子部品搬送装置10)に電子部品であるICデバイス90を装填する際に用いられるものである。これにより、後述するトレイ供給領域A1に、未検査状態の複数のICデバイス90をトレイ200ごと装填することができ、よって、オペレーター(ユーザー)はその装填作業を容易に行なうことができる。
電子部品検査装置1は、トレイ供給領域A1と、デバイス供給領域(以下単に「供給領域」と言う)A2と、検査領域A3と、デバイス回収領域(以下単に「回収領域」と言う)A4と、トレイ除去領域A5とを備え、これらの領域は、後述するように各壁部で分けられている。そして、ICデバイス90は、トレイ供給領域A1からトレイ除去領域A5まで前記各領域を矢印α90方向に順に経由し、途中の検査領域A3で検査が行われる。このように電子部品検査装置1は、各領域でICデバイス90を搬送する電子部品搬送装置(ハンドラー)10と、検査領域A3内で検査を行なう検査部16と、制御部800とを備えたものとなっている。また、その他、電子部品検査装置1は、モニター300と、シグナルランプ400と、操作パネル700とを備えている。
なお、電子部品検査装置1は、トレイ供給領域A1、トレイ除去領域A5が配された方、すなわち、図2中の下側が正面側となり、検査領域A3が配された方、すなわち、図2中の上側が背面側として使用される。
トレイ供給領域A1は、未検査状態の複数のICデバイス90が配列されたトレイ200が供給される給材部である。トレイ供給領域A1では、多数のトレイ200を積み重ねることができる。
供給領域A2は、トレイ供給領域A1から搬送されたトレイ200上の複数のICデバイス90がそれぞれ検査領域A3まで供給される領域である。なお、トレイ供給領域A1と供給領域A2とを跨ぐように、トレイ200を1枚ずつ水平方向に搬送するトレイ搬送機構11A、11Bが設けられている。トレイ搬送機構11Aは、トレイ200を、当該トレイ200に載置されたICデバイス90ごとY方向の正側、すなわち、図2中の矢印α11A方向に移動させることができる移動部である。これにより、ICデバイス90を安定して供給領域A2に送り込むことができる。また、トレイ搬送機構11Bは、空のトレイ200をY方向の負側、すなわち、図2中の矢印α11B方向に移動させることができる移動部である。これにより、空のトレイ200を供給領域A2からトレイ供給領域A1に移動させることができる。
供給領域A2には、温度調整部(ソークプレート(英語表記:soak plate、中国語表記(一例):均温板))12と、デバイス搬送ヘッド13と、トレイ搬送機構15とが設けられている。
温度調整部12は、複数のICデバイス90が載置される載置部として構成され、当該載置されたICデバイス90を一括して加熱することができる「ソークプレート」と呼ばれる。このソークプレートにより、検査部16で検査される前のICデバイス90を予め加熱して、当該検査(高温検査)に適した温度に調整することができる。図2に示す構成では、温度調整部12は、Y方向に2つ配置、固定されている。そして、トレイ搬送機構11Aによってトレイ供給領域A1から搬入されたトレイ200上のICデバイス90は、いずれかの温度調整部12まで搬送される。
なお、この載置部としての温度調整部12は、固定されていることにより、当該温度調整部12上でのICデバイス90に対して安定して温度調整することができる。
デバイス搬送ヘッド13は、供給領域A2内でX方向およびY方向、さらにZ方向にも移動可能に支持されている。これにより、デバイス搬送ヘッド13は、トレイ供給領域A1から搬入されたトレイ200と温度調整部12との間のICデバイス90の搬送と、温度調整部12と後述するデバイス供給部14との間のICデバイス90の搬送とを担うことができる。なお、図2中では、デバイス搬送ヘッド13のX方向の移動を矢印α13Xで示し、デバイス搬送ヘッド13のY方向の移動を矢印α13Yで示している。
トレイ搬送機構15は、全てのICデバイス90が除去された状態の空のトレイ200を供給領域A2内でX方向の正側、すなわち、矢印α15方向に搬送する機構である。そして、この搬送後、空のトレイ200は、トレイ搬送機構11Bによって供給領域A2からトレイ供給領域A1に戻される。
検査領域A3は、ICデバイス90を検査する領域である。この検査領域A3には、検査部16と、デバイス搬送ヘッド17とが設けられている。また、供給領域A2と検査領域A3とを跨ぐように移動するデバイス供給部14と、検査領域A3と回収領域A4とを跨ぐように移動するデバイス回収部18も設けられている。
デバイス供給部14は、温度調整部12で温度調整されたICデバイス90が載置される載置部として構成され、当該ICデバイス90を検査部16近傍まで搬送することができる「供給用シャトルプレート」または単に「供給シャトル」と呼ばれるものである。
また、この載置部としてのデバイス供給部14は、供給領域A2と検査領域A3との間をX方向、すなわち、矢印α14方向に沿って往復移動可能に支持されている。これにより、デバイス供給部14は、ICデバイス90を供給領域A2から検査領域A3の検査部16近傍まで安定して搬送することができ、また、検査領域A3でICデバイス90がデバイス搬送ヘッド17によって取り去られた後は再度供給領域A2に戻ることができる。
図2に示す構成では、デバイス供給部14は、Y方向に2つ配置されており、温度調整部12上のICデバイス90は、いずれかのデバイス供給部14まで搬送される。また、デバイス供給部14は、温度調整部12と同様に、当該デバイス供給部14に載置されたICデバイス90を加熱可能に構成されている。これにより、温度調整部12で温度調整されたICデバイス90に対して、その温度調整状態を維持して、検査領域A3の検査部16近傍まで搬送することができる。
デバイス搬送ヘッド17は、前記温度調整状態が維持されたICデバイス90が把持され、当該ICデバイス90を検査領域A3内で搬送する動作部である。このデバイス搬送ヘッド17は、検査領域A3内でY方向およびZ方向に往復移動可能に支持され、「インデックスアーム」と呼ばれる機構の一部となっている。これにより、デバイス搬送ヘッド17は、供給領域A2から搬入されたデバイス供給部14上のICデバイス90を検査部16上に搬送し、載置することができる。なお、図2中では、デバイス搬送ヘッド17のY方向の往復移動を矢印α17Yで示している。また、デバイス搬送ヘッド17は、Y方向に往復移動可能に支持されているが、これに限定されず、X方向にも往復移動可能に支持されていてもよい。
また、デバイス搬送ヘッド17は、温度調整部12と同様に、把持したICデバイス90を加熱可能に構成されている。これにより、ICデバイス90における温度調整状態を、デバイス供給部14から検査部16まで継続して維持することができる。
検査部16は、電子部品であるICデバイス90を載置して、当該ICデバイス90の電気的特性を検査する載置部として構成されている。この検査部16には、ICデバイス90の端子部と電気的に接続される複数のプローブピンが設けられている。そして、ICデバイス90の端子部とプローブピンとが電気的に接続される、すなわち、接触することにより、ICデバイス90の検査を行なうことができる。ICデバイス90の検査は、検査部16に接続されるテスターが備える検査制御部に記憶されているプログラムに基づいて行われる。なお、検査部16でも、温度調整部12と同様に、ICデバイス90を加熱して、当該ICデバイス90を検査に適した温度に調整することができる。
なお、検査部16、温度調整部12、デバイス供給部14、デバイス搬送ヘッド17は、それぞれ、ICデバイス90を加熱することができることの他に、ICデバイス90を冷却することができるよう構成されていてもよい。
デバイス回収部18は、検査部16での検査が終了したICデバイス90が載置され、当該ICデバイス90を回収領域A4まで搬送することができる載置部として構成され、「回収用シャトルプレート」または単に「回収シャトル」と呼ばれる。
また、デバイス回収部18は、検査領域A3と回収領域A4との間をX方向、すなわち、矢印α18方向に沿って往復移動可能に支持されている。また、図2に示す構成では、デバイス回収部18は、デバイス供給部14と同様に、Y方向に2つ配置されており、検査部16上のICデバイス90は、いずれかのデバイス回収部18に搬送され、載置される。この搬送は、デバイス搬送ヘッド17によって行なわれる。
回収領域A4は、検査が終了した複数のICデバイス90が回収される領域である。この回収領域A4には、回収用トレイ19と、デバイス搬送ヘッド20と、トレイ搬送機構21とが設けられている。また、回収領域A4には、空のトレイ200も用意されている。
回収用トレイ19は、検査部16で検査されたICデバイス90が載置される載置部であり、回収領域A4内で移動しないよう固定されている。これにより、デバイス搬送ヘッド20等の各種可動部が比較的多く配置された回収領域A4であっても、回収用トレイ19上では、検査済みのICデバイス90が安定して載置されることとなる。なお、図2に示す構成では、回収用トレイ19は、X方向に沿って3つ配置されている。
また、空のトレイ200も、X方向に沿って3つ配置されている。この空のトレイ200も、検査部16で検査されたICデバイス90が載置される載置部となる。そして、回収領域A4に移動してきたデバイス回収部18上のICデバイス90は、回収用トレイ19および空のトレイ200のうちのいずれかに搬送され、載置される。これにより、ICデバイス90は、検査結果ごとに分類されて、回収されることとなる。
デバイス搬送ヘッド20は、回収領域A4内でX方向およびY方向、さらにZ方向にも移動可能に支持されている。これにより、デバイス搬送ヘッド20は、ICデバイス90をデバイス回収部18から回収用トレイ19や空のトレイ200に搬送することができる。なお、図2中では、デバイス搬送ヘッド20のX方向の移動を矢印α20Xで示し、デバイス搬送ヘッド20のY方向の移動を矢印α20Yで示している。
トレイ搬送機構21は、トレイ除去領域A5から搬入された空のトレイ200を回収領域A4内でX方向、すなわち、矢印α21方向に搬送する機構である。そして、この搬送後、空のトレイ200は、ICデバイス90が回収される位置に配されることとなる、すなわち、前記3つの空のトレイ200のうちのいずれかとなり得る。
トレイ除去領域A5は、検査済み状態の複数のICデバイス90が配列されたトレイ200が回収され、除去される除材部である。トレイ除去領域A5では、多数のトレイ200を積み重ねることができる。
また、回収領域A4とトレイ除去領域A5とを跨ぐように、トレイ200を1枚ずつY方向に搬送するトレイ搬送機構22A、22Bが設けられている。トレイ搬送機構22Aは、トレイ200をY方向、すなわち、矢印α22A方向に往復移動させることができる移動部である。これにより、検査済みのICデバイス90を回収領域A4からトレイ除去領域A5に搬送することができる。また、トレイ搬送機構22Bは、ICデバイス90を回収するための空のトレイ200をY方向の正側、すなわち、矢印α22B方向に移動させることができる。これにより、空のトレイ200をトレイ除去領域A5から回収領域A4に移動させることができる。
制御部800は、例えば、トレイ搬送機構11Aと、トレイ搬送機構11Bと、温度調整部12と、デバイス搬送ヘッド13と、デバイス供給部14と、トレイ搬送機構15と、検査部16と、デバイス搬送ヘッド17と、デバイス回収部18と、デバイス搬送ヘッド20と、トレイ搬送機構21と、トレイ搬送機構22Aと、トレイ搬送機構22Bの各部の作動を制御することができる。
オペレーターは、モニター300を介して、電子部品検査装置1の動作条件等を設定したり、確認したりすることができる。このモニター300は、例えば液晶画面で構成された表示画面301を有し、電子部品検査装置1の正面側上部に配置されている。図1に示すように、トレイ除去領域A5の図中の右側には、マウスを載置するマウス台600が設けられている。このマウスは、モニター300に表示された画面を操作する際に用いられる。
また、モニター300に対して図1の右下方には、操作パネル700が配置されている。操作パネル700は、モニター300とは別に、電子部品検査装置1に所望の動作を命令するものである。
また、シグナルランプ400は、発光する色の組み合わせにより、電子部品検査装置1の作動状態等を報知することができる。シグナルランプ400は、電子部品検査装置1の上部に配置されている。なお、電子部品検査装置1には、スピーカー500が内蔵されており、このスピーカー500によっても電子部品検査装置1の作動状態等を報知することもできる。
電子部品検査装置1は、トレイ供給領域A1と供給領域A2との間が第1隔壁231によって区切られており、供給領域A2と検査領域A3との間が第2隔壁232によって区切られており、検査領域A3と回収領域A4との間が第3隔壁233によって区切られており、回収領域A4とトレイ除去領域A5との間が第4隔壁234によって区切られている。また、供給領域A2と回収領域A4との間も、第5隔壁235によって区切られている。
電子部品検査装置1は、最外装がカバーで覆われており、当該カバーには、例えばフロントカバー241、サイドカバー242、サイドカバー243、リアカバー244、トップカバー245がある。
前述したように、電子部品検査装置1(電子部品搬送装置10)は、ICデバイス90が載置される載置部を搭載可能である。そして、載置部には、トレイ200、その他、チェンジ・キットと呼ばれる温度調整部12やデバイス供給部14等がある。このような載置部は、電子部品であるICデバイス90を1つずつ収納可能な複数のポケット(凹部)を有する。以下、載置部については、トレイ200を代表して説明する。
図4に示すように、載置部としてのトレイ200には、凹部で構成されたポケットPKが24個形成されており、これらのポケットPKは、X方向に6つ、Y方向に4つの行列状に配置されている。なお、ポケットPKの個数や配置については、図4に示す構成に限定されないのは言うまでもない。このことは、温度調整部12やデバイス供給部14等についても同様である。以降では、これらのポケットPKを、XY平面上の位置(配置箇所)に応じて「ポケットPKmn」と言うことがある。ここで、mは、X方向の負側から数えてm番目を意味し、1〜6の整数であり、nは、Y方向の負側から数えてn番目を意味し、1〜4の整数である。例えば、X方向の最も負側に位置し、Y方向にも最も負側に位置するポケットPKは、ポケットPK11となる。また、X方向の最も正側に位置し、Y方向にも最も正側に位置するポケットPKは、ポケットPK64となる。
さて、供給領域A2では、前述したように温度調整部12やデバイス供給部14でICデバイス90が加熱されるため、その熱によって雰囲気も加熱状態となる。そのため、トレイ200には、熱膨張等により多少なりとも変形(反り)が生じて、ポケットPKの高さも変化することとなる。また、供給領域A2内の雰囲気が加熱状態となる以前にティーチングされたデバイス搬送ヘッド13のX方向、Y方向の位置調整も、加熱状態後には、ズレが生じることとなる。このような場合、ポケットPK内のICデバイス90をデバイス搬送ヘッド13で把持しようとしたとしても、把持し損なう現象、すなわち、ジャム(jam)が生じることがある。
そこで、電子部品検査装置1では、このような現象を防止するよう構成されている。以下、この構成について説明する。
図3に示すように、デバイス搬送ヘッド13は、X方向、Y方向に移動可能に連結、支持されている基部131と、基部131に支持された1つの把持ユニット3を備えている。なお、把持ユニット3の設置数は、図3に示す構成では1つであるが、これに限定されず、2つ以上であってもよい。
基部131には、把持ユニット3を上下方向に駆動させる駆動源が内蔵されている。
把持ユニット3は、トレイ200のポケットPK内のICデバイス90を把持して持ち上げたり、その把持状態を解除してICデバイス90を開放したりするものである。
把持ユニット3は、基部131の下方に延出される支持部30と、支持部30に対して受動的に上下動する受動部31と、ICデバイス90を吸着把持する把持部32とを備えている。また、支持部30の内部には、吸着用の空気圧を供給するエアー配管341が設けられている。
受動部31は、その上部側が支持部30の下部に進退可能に嵌め込まれており、支持部30との間には下方への弾性力を付与する図示しないばねが設けられており、そのバネの弾性力により通常、支持部30の下方へ最進出されるようになっている。その一方、受動部31は、その先の把持部32等にバネの弾性力より大きい、上方向のへの力を受けたとき、上部が支持部30により入り込んで後退し、支持部30の方向へ移動するようにもなっている。受動部31の内部には、支持部30のエアー配管341に連結されるエアー配管342が設けられている。
把持部32は、その下端部に当接されたICデバイス90をその下端部に発生させる負圧により吸着把持するものであり、把持ユニット3の受動部31に連結されている。図5に示すように、把持部32は、その内部に貫通形成されたエアー通路321を受動部31のエアー配管342に連通させている。把持部32には、その外周部に当該外周部を下方に延出させた筒状の外筒部322が形成されており、外筒部322に囲われたその内部上側に形成されているエアー通路321の周囲には、下方に突出する凸部323が形成されている。この凸部323には、ゴム等の弾性または可撓性等を有する吸着ノズル35が装着されており、その吸着ノズル35の吸着口351がエアー通路321に連通されている。これにより、吸着ノズル35の吸着口351が、把持部32のエアー通路321、受動部31のエアー配管342、支持部30のエアー配管341を介して近接検出装置4に連結されている。
近接検出装置4は、吸着口351に、吸着用、離脱用、高さ測定用(高さ検出)および中心位置検出用の各流量の気体を付与するための装置である。図3に示すように、近接検出装置4には、正圧である所定の供給圧の気体を供給する正圧回路39が接続されているとともに、第1のバルブ41、第1の流量調整弁42、第2の流量調整弁43、第2のバルブ44、流量計45(流量検出部)、第3のバルブ46、負圧発生器47およびフィルター48が設けられている。
これにより、近接検出装置4は、吸着ノズル35に吸着したICデバイス90を離脱させるとき、第1のバルブ41が駆動されて配管494が配管493に接続され、配管493に供給圧の気体が供給される。また、第2のバルブ44が、第1の流量調整弁42を有する配管493を配管492に接続させるとともに、流量計45を介して配管491に接続させ、第1の流量調整弁42により供給圧から離脱用流量に調整された気体を吸着ノズル35に供給させる。これにより、吸着ノズル35から離脱用流量の気体が噴出されるようになり、当該吸着ノズル35に把持されていたICデバイス90が当該吸着ノズル35から離脱されるようになる。
また、近接検出装置4は、吸着ノズル35にてトレイ200等の高さを測定するとき、第1のバルブ41が駆動されて配管494が配管493に接続され、配管493に供給圧の空気が供給される。また、第2のバルブ44が、第2の流量調整弁43を有する配管493を配管492に接続させるとともに流量計45を介して配管491に接続させ、第2の流量調整弁43により供給圧から高さ測定用流量に調整された気体を吸着ノズル35に供給させる。これにより、吸着ノズル35から高さ測定用流量の気体が噴出されるようになり、当該吸着ノズル35(噴出部)から噴出される高さ測定用流量の気体の流量を、流量検出部としての流量計45で高精度に測定する(検出する)ことができるようになる。なお、近年の小型化されたICデバイス90は、吸着ノズル35から気体を噴出しながら下降すると、トレイ200に載置されている場合であれ、噴出される気体により吹き飛ばされる等の不都合が生じるおそれがある。そこで、そのような不都合を生じさせない適切な流量(例えば、0.6[L/min]以下)が高さ測定用流量として評価実験やシミュレーション、計算等により予め求められており、その高さ測定用流量が吸着ノズル35に供給されるように第2の流量調整弁43が調整されている。なお、トレイ200のポケットPKの中心位置OPKを検出するときにも、高さ測定用流量と同様の流量の気体が吸着ノズル35から噴出される。このように吸着ノズル35は、気体を噴出可能な噴出部として機能することができる。このポケットPKの中心位置OPKを検出するときの気体の流量を「中心位置検出用流量」と言う。
さらに、近接検出装置4は、吸着口351にICデバイス90を吸着するとき、第3のバルブ46が駆動されて配管494が配管495に接続され、配管495に供給圧の空気が供給される。配管495には負圧発生器47が接続されており、配管495に供給された供給圧の空気が通過することに伴って負圧を発生し、その負圧がフィルター48を介して接続されている配管492に供給される。配管492に供給された負圧は、流量計45を介して接続される配管491に供給されることで吸着ノズル35にも供給される。これにより、吸着ノズル35に吸引力が生じ、当該吸着ノズル35にICデバイス90を吸着把持することができるようになる。
このように吸着ノズル35は、前述したように気体を噴出可能な噴出部として機能するが、ICデバイス90を吸着可能な吸着部としても機能する。これにより、噴出部として機能する吸着ノズル35は、吸着部としても機能した場合、電子部品であるICデバイスを吸着して、その吸着状態でICデバイス90を搬送可能となっている。このように吸着ノズル35が噴出部と吸引部とに切り替えられることにより、噴出部と吸引部とをそれぞれ別途設けるのを省略することができる。これにより、デバイス搬送ヘッド13の構成を簡単なものとすることができ、よって、例えばデバイス搬送ヘッド13の軽量化が図れる。
図6に示すように、制御部800は、中央演算処理装置(CPU)801、記憶装置としての不揮発性メモリー(ROM)802および揮発性メモリー(RAM)803等を有するマイクロコンピューターを中心に構成されており、メモリーに格納されている各種データーおよびプログラムに基づいて、ICデバイス90を搬送する処理等の各種制御を実行する。本実施形態では、制御部800にてトレイ200の上下方向の位置(高さ)を測定して、測定された高さに基づいて当該トレイ200の歪みを算出するトレイ歪み算出処理および当該算出されたトレイ200の歪みに基づいてトレイ200に載置された各ICデバイス90の高さ、すなわち、把持ユニット3の下降する高さを算出する高さ算出処理が実行される。また不揮発性メモリー802には、トレイ歪み算出処理や高さ算出処理に必要な各種のパラメータ等が予め保存されている。また、本実施形態では、トレイ歪み算出処理や高さ算出処理の他に、後述するように平面視でのトレイ200のポケットPKの中心位置OPKを検出する中心位置検出処理も実行可能となっている。
制御部800は、供給X軸モーター駆動回路MXD1、供給Y軸モーター駆動回路MYD1および供給Z軸モーター駆動回路MZD1に電気的に接続されている。
供給X軸モーター駆動回路MXD1は、制御部800から受けた駆動信号に応答して、当該駆動信号に基づく駆動量を演算し、演算された駆動量に基づいて供給X軸モーターMX1を駆動制御するようになっている。また、制御部800には、供給X軸モーター駆動回路MXD1を介して供給X軸モーターエンコーダーEMX1によって検出された供給X軸モーターMX1の回転速度が入力される。これにより、制御部800は、デバイス搬送ヘッド13の把持ユニット3のX方向の位置を把握する。そして、その把握した位置と、トレイ200の上方の位置等の目標位置とのX方向のズレを求めて、供給X軸モーターMX1を駆動制御して、デバイス搬送ヘッド13の把持ユニット3を目標位置に移動させるようになっている。
供給Y軸モーター駆動回路MYD1は、制御部800から受けた駆動信号に応答して、当該駆動信号に基づく駆動量を演算し、演算された駆動量に基づいて供給Y軸モーターMY1を駆動制御するようになっている。また、制御部800には、供給Y軸モーター駆動回路MYD1を介して供給Y軸モーターエンコーダーEMY1によって検出された供給Y軸モーターMY1の回転速度が入力される。これにより、制御部800は、デバイス搬送ヘッド13の把持ユニット3のY方向の位置を把握する。そして、その把握した位置と、トレイ200の上方の位置等の目標位置とのY方向のズレを求めて、供給Y軸モーターMY1を駆動制御して、デバイス搬送ヘッド13の把持ユニット3を目標位置に移動させるようになっている。
供給Z軸モーター駆動回路MZD1は、制御部800から受けた駆動信号に応答して、当該駆動信号に基づく駆動量を演算し、演算された駆動量に基づいて供給Z軸モーターMZ1を駆動制御するようになっている。また、供給Z軸モーター駆動回路MZD1は、供給Z軸モーターMZ1の駆動制御に同期して、供給Z軸モーターブレーキBMZ1の開放・締結を行なうようになっている。さらに、制御部800には、供給Z軸モーター駆動回路MZD1を介して供給Z軸モーターエンコーダーEMZ1によって検出された供給Z軸モーターMZ1の回転速度が入力される。これにより、制御部800は、デバイス搬送ヘッド13の把持ユニット3のZ方向の位置(高さ)を把握するとともに、その高さ位置と、トレイ200の上方の位置等の目標位置とのZ方向のズレを求めて、供給Z軸モーターMZ1を駆動制御して、デバイス搬送ヘッド13の把持ユニット3を目標の高さ位置に移動させるようになっている。
制御部800は、バルブ駆動回路41Dと電気的に接続されている。バルブ駆動回路41Dは、制御部800から受けた制御信号に応答して第1のバルブ41を駆動制御するようになっている。また、制御部800により駆動制御される第1のバルブ41は、把持部32の吸着ノズル35に正圧の気体を供給するか否かを切換える。吸着ノズル35に正圧の気体が供給されたとき吸着ノズル35から圧縮空気が噴出される。
制御部800は、バルブ駆動回路44Dと電気的に接続されている。バルブ駆動回路44Dは、制御部800から受けた制御信号に応答して第2のバルブ44を駆動制御するようになっている。また、制御部800により駆動制御される第2のバルブ44は、把持部32の吸着ノズル35に供給する正圧の気体の流量を離脱用流量と高さ測定用流量との間で切換える。なお、高さ測定用流量は、トレイ200のポケットPK等の位置を検出するときの中央位置検出用流量と同じ流量である。
制御部800は、バルブ駆動回路46Dと電気的に接続されている。バルブ駆動回路46Dは、制御部800から受けた制御信号に応答して第3のバルブ46を駆動制御するようになっている。また、制御部800により駆動制御される第3のバルブ46は、把持部32の吸着口351に負圧を供給するか否かを切換える。吸着口351が負圧にされたとき把持部32にICデバイス90が吸着される。
制御部800は、流量計45と電気的に接続されている。制御部800には、流量計45により測定された気体の流量に基づいた信号が伝達される。これにより、制御部800は、流量計45により測定された気体の流量を算出して、当該流量を予め定められた近接検出用流量閾値TH1(図11参照)と比較して、当該流量が同近接検出用流量閾値TH1よりも少ないとき、吸着ノズル35が塞がれたものと判断して、吸着ノズル35のトレイ200等への近接を検出するようになっている。
次に、電子部品検査装置1(電子部品搬送装置10)でトレイ200の高さを自動的に測定してその歪みを算出する原理について、図4、図7および図11を参照して説明する。
図4、図7に示すように、トレイ200には、その高さを測定するための複数の測定ポイントCP11、測定ポイントCP12、測定ポイントCP13が予め設定されている。そして、例えば熱膨張によりトレイ200に不規則な変形が生じている場合等、それら各測定ポイントCP11〜測定ポイントCP13の高さがそれぞれ異なるっていることがある。すなわち、図7において左側の測定ポイントCP11の高さは高さL11であり、図7において中央付近の測定ポイントCP12の高さは高さL12であり、当該高さL12は、測定ポイントCP11の高さL11よりも差d12だけ低い。また、図7において右側の測定ポイントCP13の高さは高さL13であり、当該高さL13は、測定ポイントCP11の高さL11よりも差d13だけ高い。なお、本実施形態では、測定ポイントCP11〜測定ポイントCP13をポケットPKと異なる位置に設定しており、例えばトレイ200のできる限りX方向の負側に設定するのが好ましい。また、測定ポイントCP11〜測定ポイントCP13の他にも、測定ポイントCP21、測定ポイントCP22、測定ポイントCP23、測定ポイントCP31、測定ポイントCP32、測定ポイントCP33がある。測定ポイントCP21〜測定ポイントCP23は、例えばトレイ200のX方向の中央部に設定するのが好ましい。測定ポイントCP31〜測定ポイントCP33は、例えばトレイ200のできる限りX方向の正側に設定するのが好ましい。
このとき、本実施形態では、トレイ200の歪みの算出に先立ち、制御部800が把持ユニット3により、トレイ200の測定ポイントCP11〜測定ポイントCP13の高さを自動的に測定する。詳述すると、制御部800は、トレイ200の測定ポイントCP11の上方に把持ユニット3の把持部32を配置させるとともに、当該把持部32の吸着ノズル35に高さ測定用圧力の気体を供給して吸着ノズル35から気体を噴出させながら把持ユニット3を下降させる。吸着ノズル35がトレイ200と離れているとき、例えばトレイ200の上面の高さを高さH0としたとき、吸着ノズル35の高さが高さH0から高さH2以上である場合、すなわち吸着ノズル35とトレイ200との間の距離が所定の距離以上である場合、吸着ノズル35に供給される気体はそのほとんどが吸着ノズル35から噴出される(図11参照)。また、吸着ノズル35とトレイ200との間の距離が所定の距離以下になるとき、例えば吸着ノズル35の高さが高さH2より低い場合、吸着ノズル35からの気体の噴出量が減少して流量計45により測定される気体の流量が減少するようになる。さらに、吸着ノズル35がトレイ200に当接してその吸着口351が塞がれるとき、例えば吸着ノズル35の高さが高さH0の場合、吸着ノズル35から気体が噴出されなくなり流量計45により測定される気体の流量が「0」になる。すなわち、近接検出用の閾値として近接検出用流量閾値TH1を設定すると、吸着ノズル35の高さがH1になったとき、すなわち、吸着ノズル35とトレイ200との間の距離が「高さH0−高さH1」となったとき、当該近接検出用流量閾値TH1よりも流量が少なくなり、吸着ノズル35のトレイ200への近接が検出されるようになる(図11参照)。なお、同様にして測定ポイントCP21〜測定ポイントCP33の高さも測定される。
このように、接触圧力等ではなく、高さ測定用流量の気体の流量の変化に基づいて測定ポイントCP11〜測定ポイントCP33を検出するようにすることで、高さ測定の際にトレイ200に余計な負荷を与えるおそれが軽減される。また、把持ユニット3は、受動部31がバネの弾性力よりも強い力を受けると、把持部32を上方に移動させて高さ方向の誤差を吸収する機能(バッファー機能)が発揮されるようになっている。このためバッファー機能が発揮されると、把持部32により測定される高さに当該バッファー機能により吸収された高さに基づく誤差が含まれるようになるおそれがあるが、気体流量の変化により高さを測定することにより、受動部31が強い力を受ける前に高さを測定することができるので測定された高さの精度を高く維持することができる。さらに、測定位置がポケットPKであればICデバイス90の有無により高さが変化するが、測定ポイントCP11〜測定ポイントCP13をポケットPKと異なる位置に設定することにより、ICデバイス90の高さの影響を受けることなくトレイ200の高さ(歪み)を測定することができるようになる。
次に上述した測定の結果に基づいて、トレイ200の歪みを算出する。詳述すると、測定ポイントCP11と測定ポイントCP12との間には、ポケットPK11、ポケットPK12が隣り合って配置されている。このとき、測定ポイントCP11の高さL11および測定ポイントCP12の高さL12と、その他、測定ポイントCP11とポケットPK11との間の距離、測定ポイントCP12とポケットPK12との間の距離、ポケットPK11やポケットPK12の深さ寸法等に基づいて、ポケットPK11、ポケットPK12の高さがそれぞれ算出される。同様に、測定ポイントCP12と測定ポイントCP13との間には、ポケットPK13、ポケットPK14が隣り合って配置されている。そして、ポケットPK11、ポケットPK12の高さを算出するのと同様にして、ポケットPK13、ポケットPK14の高さがそれぞれ算出される。また、同様に、測定ポイントCP21〜測定ポイントCP33の高さを用いて、ポケットPK21〜ポケットPK64の高さを算出することができる。
以上のように、電子部品検査装置1(電子部品搬送装置10)では、トレイ200が熱膨張によって変形したとしても、吸着ノズル35から噴出される気体の流量の変化により、凹部で構成された各ポケットPKの高さを検出可能となっている。これにより、各ポケットPKの高さを高精度に検出して(算出して)、当該ポケットPKに収納されているICデバイス90に対する高精度な吸着が可能となる。
また、前述したように、供給領域A2内の雰囲気が加熱状態となる以前にティーチングされたデバイス搬送ヘッド13のX方向、Y方向の位置調整も、加熱状態後には、ズレが生じることとなる。この場合、平面視でのトレイ200の各ポケットPKの中心位置OPKを検出する中心位置検出処理を実行する。次に、中心位置検出処理について説明する。なお、中心位置検出処理を行なうに際し、各ポケットPKの高さが算出されているため、当該各ポケットPKのおおよその位置は記憶されているが、中心位置OPKまでは検出されていない状態にある。
図5に示すように、例えばポケットPK11の中心位置OPKを検出するには、まず、ポケットPK11を介して、X方向の両側に位置する2つの点を第1の位置PS1、第2の位置PS2と設定する。なお、各ポケットPKにおける第1の位置PS1、第2の位置PS2としては、第1の位置PS1、第2の位置PS2を設定する対象となるポケットPKと、当該ポケットPKのX方向に隣り合うポケットPKとの間の任意の点とすることができる。例えば、ポケットPK11の場合、第2の位置PS2としては、ポケットPK21との中間点とするのが好ましい。また、第1の位置PS1、第2の位置PS2を設定する対象となるポケットPKのX方向に隣り合うポケットPKが存在しない場合、当該設定対象となるポケットPKと、トレイ200のX方向に位置する縁部との間の任意の点とすることができる。例えば、ポケットPK11の場合、第1の位置PS1としては、トレイ200の縁部との中間点とするのが好ましい。
次に、把持ユニット3の吸着ノズル35を第1の位置PS1上に配置して、当該吸着ノズル35の高さを例えば前記高さH1とする。そして、前記中心位置検出用流量に調整された気体(以下この気体を「気体GS」と言う)を、吸着ノズル35から噴出させる。これにより、吸着ノズル35は、気体GSを噴出可能な噴出部として機能する。
この噴出部として機能する吸着ノズル35(把持ユニット3)は、気体GSを噴出して、前記高さH1を維持したまま、第1の位置PS1と第2の位置PS2との間をX方向に沿って、すなわち、第1の位置PS1と第2の位置PS2とを結ぶ線分に沿って往復移動可能となっている。
そして、第1の位置PS1から第2の位置PS2に向かって移動しているときの、すなわち、往路PR1において、流量計45で検出される(測定される)気体GSの流量の変化は、図12中の実線で示すグラフGR1となる。このグラフGR1からは、吸着ノズル35が第1の位置PS1から第2の位置PS2に移動する過程で、ポケットPK11のX方向の負側に位置する側壁WL1(壁部)を超えたときに、流量が増加に転じているのが分かる。また、グラフGR1からは、吸着ノズル35がポケットPK11のX方向の正側に位置する側壁WL2(壁部)を超えたときに、流量が減少に転じているのが分かる。
一方、第2の位置PS2から第1の位置PS1に向かって移動しているときの、すなわち、復路PR2において、流量計45で検出される気体GSの流量の変化は、図12中の破線で示すグラフGR2となる。このグラフGR2からは、吸着ノズル35が第2の位置PS2から第1の位置PS1に移動する過程で、ポケットPK11の側壁WL2を超えたときに、流量が増加に転じているのが分かる。また、グラフGR2からは、吸着ノズル35がポケットPK11の側壁WL1を超えたときに、流量が減少に転じているのが分かる。
このように、トレイ200では、凹部で構成されたポケットPK11の側壁WL1および側壁WL2は、当該ポケットPK11が第1の位置PS1と第2の位置PS2との間に位置した場合に、次の機能を有する。その機能とは、吸着ノズル35が噴出部として第1の位置PS1と第2の位置PS2との間を移動しているときに、凹部で構成されたポケットPK11において気体GSの流量が変化する流量変化部となることである。そして、制御部800では、検出された流量変化部となる側壁WL1の位置として、例えば、往路PR1で気体GSの流量が増加に転じるときの、供給X軸モーターエンコーダーEMX1におけるエンコーダー値を記憶する。また、流量変化部となる側壁WL2の位置として、復路PR2で気体GSの流量が増加に転じるときの、供給X軸モーターエンコーダーEMX1におけるエンコーダー値を記憶する。
また、噴出部として機能する吸着ノズル35(把持ユニット3)は、第1の位置PS1と第2の位置PS2とを結ぶ線分と交差する、すなわち、本実施形態では直交する線分の方向(Y方向)にも往復移動可能(移動可能)である。なお、この往復移動における始点、終点となる位置、すなわち、第1の位置PS1に相当する位置を「第3の位置PS3」と言い、折り返し点、すなわち、第2の位置PS2に相当する位置を「第4の位置PS4」と言う。
そして、第3の位置PS3から第4の位置PS4に向かって移動しているときの、すなわち、往路において、流量計45で検出される気体GSの流量の変化は、図13中の実線で示すグラフGR3となる。このグラフGR3からは、吸着ノズル35が第3の位置PS3から第4の位置PS4に移動する過程で、ポケットPK11のY方向の負側に位置する側壁WL3を超えたときに、流量が増加に転じているのが分かる。また、グラフGR3からは、吸着ノズル35がポケットPK11のY方向の正側に位置する側壁WL4を超えたときに、流量が減少に転じているのが分かる。
一方、第4の位置PS4から第3の位置PS3に向かって移動しているときの、すなわち、復路において、流量計45で検出される気体GSの流量の変化は、図13中の破線で示すグラフGR4となる。このグラフGR4からは、吸着ノズル35が第4の位置PS4から第3の位置PS3に移動する過程で、ポケットPK11の側壁WL4を超えたときに、流量が増加に転じているのが分かる。また、グラフGR4からは、吸着ノズル35がポケットPK11の側壁WL3を超えたときに、流量が減少に転じているのが分かる。
このように、トレイ200では、凹部で構成されたポケットPK11の側壁WL3および側壁WL4も、気体GSの流量が変化する流量変化部となる。そして、制御部800では、流量変化部となる側壁WL3の位置として、例えば、往路で気体GSの流量が増加に転じるときの、供給Y軸モーターエンコーダーEMY1におけるエンコーダー値を記憶する。また、流量変化部となる側壁WL4の位置として、復路で気体GSの流量が増加に転じるときの、供給Y軸モーターエンコーダーEMY1におけるエンコーダー値を記憶する。
そして、制御部800では、前記側壁WL1の位置と前記側壁WL2の位置との間を2等分し、かつ、前記側壁WL3の位置と前記側壁WL4の位置との間を2等分する位置を算出し(演算し)、その算出された位置をポケットPK11の中心位置OPKとして記憶する。また、制御部800では、ポケットPK11以外の残りのポケットPK(PK12〜PK64)の中心位置OPKについても同様に検出して記憶することができる。
以上のように、制御部800は、流量変化部を検出し、当該検出された流量変化部に基づいて、凹部で構成されたポケットPK11の中心位置OPKを検出する中心位置検出部としての機能も有している。そして、電子部品検査装置1(電子部品搬送装置10)では、ポケットPK11の中心位置OPKが検出されることにより、ポケットPK11の高さが検出されているのと相まって、当該ポケットPK11に収納されているICデバイス90を吸着により把持する際に、ICデバイス90の中心位置OPKに対応する部分に向けて吸着ノズル35を押し付けることができる。この押し付け状態のまま、吸着ノズル35における吸引力を生じさせることにより、ICデバイス90に対する把持動作を高精度に行なうことができる。
また、前述したように、噴出部として機能する吸着ノズル35は、第1の位置PS1と第2の位置PS2とを結ぶ線分(X方向)に沿って往復移動可能(移動可能)であり、当該線分と交差する線分の方向(Y方向)にも往復移動可能(移動可能)である。これにより、X方向またはY方向のみに移動して中心位置OPKの検出を行なう場合や、往路のみで中心位置OPKの検出を行なう場合に比べて、中心位置OPKの検出を高精度に行なうことができる。
なお、中心位置OPKの検出は、図5に示す構成ではICデバイス90がポケットPK11に収納された状態で行なわれているが、これに限定されず、ICデバイス90がポケットPK11に収納されていない状態で行なってもよい。
以上のような中心位置検出処理は、電子部品であるICデバイス90が、平面視で1辺が5mm以下の矩形をなす場合に特に有効である。このような小型のICデバイス90の把持には、供給領域A2中の雰囲気の加熱状態による影響(ICデバイス90の把持し損ない)が顕著に現れるからである。
図9に示すように、電子部品検査装置1(電子部品搬送装置10)では、モニター300の表示画面301に、ICデバイス90の大きさを選択するメニュー302が表示される。メニュー302には、ICデバイス90を示すアイコン303と、このICデバイス90の1辺が5mmを超えるものである旨のメッセージ304と、メッセージ304のとおりであることを指示するボタン305と、ICデバイス90を示すアイコン306と、このICデバイス90の1辺が5mm以下のものである旨のメッセージ307と、メッセージ307のとおりであることを指示するボタン308とが含まれている。そして、ボタン308を操作した場合に、中心位置検出処理が実行される。
また、図10に示すように、中心位置検出処理が実行中は、モニター300の表示画面301に、「中心位置検出処理が実行中」である旨のメッセージ309が表示される。
また、電子部品検査装置1(電子部品搬送装置10)では、トレイ200の全ポケットPKについて中心位置検出処理(以下この処理を「第1の中心位置検出処理」と言う)を実行して当該全ポケットPKの中心位置OPKの検出を行なってもよいが、次に述べる処理(以下この処理を「第2の中心位置検出処理」と言う)によっても全ポケットPKの中心位置OPKの検出を行なうことができる。第2の中心位置検出処理について図8を参照して説明する。なお、トレイ200では、X方向に隣り合うポケットPK同士の間隔(ピッチ間距離)PCXと、Y方向に隣り合うポケットPK同士の間隔(ピッチ間距離)PCYとは、予め決められており(例えばトレイ200についての説明書で明示されている)、既知となっていることとする。
ICデバイス90が載置される載置部としてのトレイ200には、凹部で構成されたポケットPKがX方向(一方向)に少なくとも3つ、すなわち、本実施形態では6つ(ポケットPK11、ポケットPK21、ポケットPK31、ポケットPK41、ポケットPK51、ポケットPK61)配置されている。そして、第2の中心位置検出処理を行なうに際し、中心位置検出部である制御部800は、まず第1の中心位置検出処理を行なって、最も離間した両側の2つの凹部で構成されたポケットPK、すなわち、ポケットPK11とポケットPK61の各中心位置OPKを検出する。次に、ポケットPK11の中心位置OPKとポケットPK61の中心位置OPKとを結ぶ線分と、X方向とのなす角度θXを算出する。そして、ポケットPK11とポケットPK61との間に位置する凹部で構成されたポケットPK(ポケットPK21、ポケットPK31、ポケットPK41、ポケットPK51)の中心位置OPKを検出可能である。例えばポケットPK21の中心位置OPKは、ポケットPK11の中心位置OPKからX方向の正側に「間隔PCX」分だけ移行し、Y方向の正側に「(間隔PCX)×(tanθX)」分だけ移行した位置として検出される。
また、ICデバイス90が載置される載置部としてのトレイ200には、ポケットPKがY方向(一方向)に少なくとも3つ、すなわち、本実施形態では4つ(ポケットPK11、ポケットPK12、ポケットPK13、ポケットPK14)配置されている。そして、第2の中心位置検出処理を行なうに際し、制御部800は、まず第1の中心位置検出処理を行なって、最も離間した両側の2つのポケットPK、すなわち、ポケットPK11とポケットPK14の各中心位置OPKを検出する。次に、ポケットPK11の中心位置OPKとポケットPK14の中心位置OPKとを結ぶ線分と、Y方向とのなす角度θYを算出する。そして、ポケットPK11とポケットPK14との間に位置するポケットPK(ポケットPK12、ポケットPK13)の中心位置OPKを検出可能である。例えばポケットPK12の中心位置OPKは、ポケットPK11の中心位置OPKからY方向の正側に「間隔PCY」分だけ移行し、X方向の正側に「(間隔PCY)×(tanθY)」分だけ移行した位置として検出される。
また、その他の残りのポケットPKの中心位置OPKについても第2の中心位置検出処理によって検出することができる。
このように第2の中心位置検出処理では、トレイ200が有する全てのポケットPKの中心位置を検出する際、例えば各ポケットPKの中心位置OPKを1つずつ検出するのに比べて、その検出処理を迅速に行なう、すなわち、その検出処理にかかる時間を短縮することができる。
また、ICデバイス90が載置される載置部として構成された温度調整部12やデバイス供給部14も、ICデバイス90が1つずつ収納可能なポケットが形成されている。そして、これらのポケットの中心位置についても、トレイ200のポケットPKの中心位置OPKと同様に、第1の中心位置検出処理や第2の中心位置検出処理によって検出可能である。
次に、電子部品検査装置1(電子部品搬送装置10)でモニター300の表示画面301に表示されたメニュー302のボタン308を操作した後の、ICデバイス90の搬送が開始されるまでのフローチャートについて、図14を参照して説明する。また、図8も参照するのが好ましい。
まず、トレイ200のポケットPK11、ポケットPK61、ポケットPK14に対して高さ算出処理を施して、ポケットPK11、ポケットPK61、ポケットPK14の各高さを検出する(算出する)(ステップS101)。この検出された高さの情報は、制御部800に記憶される。
次いで、トレイ200のポケットPK11、ポケットPK61、ポケットPK14に対して第1の中心位置検出処理を施して、ポケットPK11、ポケットPK61、ポケットPK14の各中心位置OPKを検出する(ステップS102)。この検出された中心位置OPKの情報は、制御部800に記憶される。
次いで、第2の中心位置検出処理により、ポケットPK11の中心位置OPKとポケットPK61の中心位置OPKとを結ぶ線分とX方向とのなす角度θXを算出するとともに、ポケットPK11の中心位置OPKとポケットPK14の中心位置OPKとを結ぶ線分とY方向とのなす角度θYを算出する(ステップS103)。
次いで、前述したように、トレイ200のポケットPK11、ポケットPK61、ポケットPK14以外の、残りのポケットPKの中心位置OPKを検出する(ステップS104)。この検出された中心位置OPKの情報は、制御部800に記憶される。
次いで、各温度調整部12についても、トレイ200のときと同様にして、すなわち、ステップS101〜ステップS104と同様にして、当該温度調整部12の各ポケットの中心位置等を検出する、すなわち、ステップS105、ステップS106、ステップS107、ステップS108を順に行なう。ステップS105〜ステップS108を実行することによって検出された中心位置等の情報は、制御部800に記憶される。
次いで、各デバイス供給部14についても、トレイ200のときと同様にして、すなわち、ステップS101〜ステップS104と同様にして、当該デバイス供給部14の各ポケットの中心位置等を検出する、すなわち、ステップS109、ステップS110、ステップS111、ステップS112を順に行なう。ステップS109〜ステップS112を実行することによって検出された中心位置等の情報は、制御部800に記憶される。
以上のようなステップS101〜ステップS112を経ることにより、トレイ200の全ポケットPKの中心位置OPK、各温度調整部12の全ポケットの中心位置、各デバイス供給部14の全ポケットの中心位置を検出することができる。そして、ICデバイス90の搬送を開始すると、デバイス搬送ヘッド13の吸着ノズル35は、例えばトレイ200上の各ICデバイス90を把持しようとする際に、当該把持対象となるICデバイス90の中心位置OPKに対応する部分に向けて、その都度高精度に押し付けられる。これにより、ICデバイス90に対する把持動作を高精度に行なうことができる。このことは、温度調整部12上の各ICデバイス90を把持しようとするときも同様であり、デバイス供給部14上の各ICデバイス90を把持しようとするときも同様である。これにより、ICデバイス90の搬送が途中で途切れずに、継続して行われる。すなわち、ICデバイス90の搬送中におけるICデバイス90を把持し損なう現象(ジャム)が防止される。
なお、第1の中心位置検出処理や第2の中心位置検出処理を行なわない従来の場合、ジャムの発生率は、1/500〜1/50である(分母はICデバイス90の搬送個数)。しかし、第1の中心位置検出処理や第2の中心位置検出処理を行なうと、ジャムの発生率は、1/200000〜1/10000にまで抑えられる(分母はICデバイス90の搬送個数)。また、ジャムの発生率は、モニター300の表示画面301に表示されるのが好ましい。
また、ステップS101〜ステップS112は、トレイ200、1枚ごとに行なってもよいし、トレイ200が複数枚重ねられた1つのロットごとに行なってもよい。また、ステップS101〜ステップS112は、所定時間経過するごとに、または、ICデバイス90が所定個数搬送されるごとに行なってもよい。
以上、本発明の電子部品搬送装置および電子部品検査装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、電子部品搬送装置および電子部品検査装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
また、ICデバイスは、前記実施形態では平面視で矩形のものであったが、これに限定されず、例えば、円形や楕円形のものであってもよい。