JP6668379B2 - 褐色脂肪組織を活性化する際に神経を阻害するための方法及び装置 - Google Patents

褐色脂肪組織を活性化する際に神経を阻害するための方法及び装置 Download PDF

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Description

本発明は、褐色脂肪組織を活性化する際に神経を阻害するための方法及び装置に関する。
肥満人口は増加の一途を辿っており、健康に対する肥満の負の影響についての理解が進むにつれて、特に米国内において肥満に対する関心が高まりつつある。理想体重を45キログラム(100ポンド)以上上回る、重度の肥満は特に重大な健康問題の大きなリスクとなっている。したがって、肥満患者の治療に多大な関心が寄せられている。
重度の肥満を治療するための外科的処置としては、様々な形態の胃及び腸バイパス術(胃のステープリング)、胆膵バイパス術、調節性胃バンディング術、垂直遮断胃形成術、胃縫縮術、及び袖状胃切除術(胃の全体又は部分切除)が挙げられる。このような外科的処置は、腹腔鏡下で行われるようになってきている。術後の回復時間が短く、術後の痛み及び創傷の感染が著しく低減され、外観上も改善される点は、腹腔鏡手術の充分に確立された長所であり、こうした長所は、腹腔鏡外科医が体腔壁のより小さな切開部を利用して腹腔鏡手術を行うことができることに主として起因するものである。しかしながら、このような外科的処置は、術中に様々な合併症のリスクを伴い、痛みや外見的な瘢痕のような望ましくない術後結果が生じ、患者回復に長期間を必要とすることが多い。したがって、肥満患者が外科的介入を求めるか又は受け入れることは希であり、肥満患者のわずかに約1%のみが、この障害に対して外科的治療を受けている。更に、肥満を治療するための外科的介入は、支障なく行われて初期の減量が生じた場合でも、持続的な減量につながらない場合があり、したがって追加の異なる肥満治療に対する患者ニーズが示される。
肥満治療用の非外科的処置もまた開発されている。しかしながら、エネルギー消費を増加させ、かつ/又は患者の新陳代謝、例えば、基礎代謝率を変化させ、代謝結果、例えば減量の改善をもたらす効果的な治療は、様々な技術的及び生理学的制約を有する薬理的アプローチに主眼を置いたものであった。
例えば、2000年12月20日に「Slimming Device」の表題で出願された米国特許第6,645,229号において、褐色脂肪組織(BAT)が、エネルギー消費の調節に一定の役割を果たし、BATの刺激が患者の痩身をもたらしうることが認識されている。BAT活性化は、交感神経系及び他の生理学的な、例えば、ホルモン及び代謝の影響により調節される。BATは活性化されると、熱を発生させるために血液供給から遊離脂肪酸(FFA)及び酸素を除去する。活性化されたBATのミトコンドリアで生じる酸化的リン酸化サイクルを、図1及び図2に示す。
したがって、肥満を治療するための、特にBATを活性化するための改善された方法及び装置が求められている。
本発明は、一般的に、褐色脂肪組織を活性化する場合に神経を阻害する方法及び装置を提供する。1つの実施形態において、BATの蓄積部位(depot)に第1の神経調節因子を適用することを含む医療方法が提供される。第1の神経調節因子の適用は、BATの第1の神経タイプの活性化を引き起こすことができ、BATのエネルギー消費を増加させる。方法は、また、第1の神経調節因子の適用と同時に、BATの蓄積部位に第2の神経調節因子を適用することを含む。第2の神経調節因子の適用は、第1の神経タイプとは異なるBATの第2の神経タイプを阻害することができる。
この方法は、様々な方法で変えることができる。例えば、第1の神経タイプは交感神経を含むことができ、第2の神経タイプは副交感神経を含むことができる。別の例を挙げると、第1の神経タイプは交感神経を含むことができ、第2の神経タイプは知覚神経を含むことができる。更に別の例を挙げると、第2の神経調節因子の適用は、第1の神経調節因子の適用が開始されるよりも前に開始されることで第1の神経タイプが活性化されるよりも前に第2の神経タイプの阻害が開始される。更に別の例では、第1の神経調節因子は、BATの蓄積部位に第1の電気信号を印加することを含み、第2の神経調節因子を適用することは、BATの蓄積部位に第1の電気信号とは異なる第2の電気信号を印加することを含みうる。別の例を挙げると、第1の神経調節因子及び第2の神経調節因子の一方を適用することは、BATの蓄積部位に電気信号を印加することを含むことができ、第2の神経調節因子の他方を適用することは、BATの蓄積部位に化学物質を送達することを含むことができる。更に別の例では、第1の神経調節因子を適用することは、BATの蓄積部位に第1の化学物質を送達することを含むことができ、第2の神経調節因子を適用することは、BATの蓄積部位に第1の化学物質とは異なる第2の化学物質を送達することを含むことができる。別の例では、第1の神経調節因子を適用することは、BATの蓄積部位に電気信号を印加すること、BATの蓄積部位に化学物質を送達すること、BATの蓄積部位を冷却すること、BATの蓄積部位に光を照射することのうちの少なくとも1つを含んでよく、また第2の神経調節因子を適用することは、BATの蓄積部位に異なる電気信号を印加すること、及びBATの蓄積部位に異なる化学物質を送達することのうちの少なくとも一方を含んでよい。
別の実施形態では、医療方法は、患者のBATの蓄積部位に近接する患者の交感神経系を神経調節することでBATを活性化してBATのエネルギー消費を増加させることと、交感神経系の神経調節と同時に、褐色脂肪組織の蓄積部位に近接する患者の副交感神経系を抑制することと、を含むことができる。
この方法は任意の数の変形例を有しうる。例えば、交感神経系を神経調節することで、BATを神経支配する交感神経を活性化でき、副交感神経系を抑制することで、BATを神経支配する副交感神経を抑制できる。副交感神経の各々は、交感神経の各々よりも大きな径を有し得る。別の例では、副交感神経系の抑制が交感神経系の神経調節よりも前に開始されることで交感神経系が神経調節されるよりも前に副交感神経系の抑制が開始される。更に別の例では、交感神経系を神経調節することは、患者に第1の化学物質を投与することを含みうる。副交感神経系を抑制することは、患者に第1の化学物質とは異なる第2の化学物質を投与すること、及び患者に電気信号を印加することとのうちの一方を含みうる。なおも別の例では、交感神経系を神経調節することは、患者に電気信号を印加すること、患者に化学物質を投与することと、患者を冷却すること、及び患者に光を照射することとのうちの少なくとも1つを含みうる。
別の例では、交感神経系を神経調節することは、患者に第1の電気信号を印加することを含みうる。幾つかの実施形態では、副交感神経系を抑制することは、患者に第1の電気信号とは異なる第2の電気信号を印加することを含みうる。第2の電気信号は、様々な構成を有することができる。例えば、第1の電気信号の電流は、第2の電気信号の電流よりも10〜100倍大きい範囲にあってよい。別の例では、第2の電気信号は、第1の電気信号と比較してより低エネルギーの過分極パルス、及び第1の電気信号と比較してより低エネルギーの脱分極パルスのうちの一方を含むことができる。幾つかの実施形態では、副交感神経系を抑制することは、患者に化学物質を適用することを含みうる。
別の態様では、BATの蓄積部位に近接する患者の組織に直接接触するように、かつ患者に第1及び第2の電気信号を同時に供給するように構成された少なくとも1つの電極を含む医療器具が提供される。第1の電気信号は、BAT内の第1の神経タイプの活性化を引き起こすことでBATのエネルギー消費を増加させるように構成することができる。第2の電気信号は、第1の神経タイプとは異なるBATの第2の神経タイプを阻害するように構成することができる。器具は、前記少なくとも1つの電極と電子通信しており、かつ前記少なくとも1つの電極により供給される前記第1及び第2の電気信号を発生するように構成された少なくとも1つの信号生成器も含むことができる。器具は、任意の数の変形を有しうる。
本発明は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて検討することで、より完全に理解されるであろう。
BAT細胞内のミトコンドリアで生じる酸化的リン酸化サイクルの概略図である。 ミトコンドリア内で生じる酸化的リン酸化サイクルを示す、BATのミトコンドリアの概略図である。 ヒトの頸部、胸部、及び鎖骨上領域を陰影で示した肩部の一部分の透視図である。 BATを活性化するためのインプラント可能装置の1つの実施形態の概略図である。
以下に、本明細書で開示する装置及び方法の構造、機能、製造及び使用の原理の全体的な理解が得られるように、特定の例示的な実施形態を説明する。これらの実施形態の1つ以上の実施例が、添付の図面に示されている。当業者であれば、本明細書で具体的に説明され、かつ添付の図面に例示される装置及び方法が、非限定的な例示的実施形態であること、並びに本発明の範囲が、特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。1つの例示的な実施形態に関連して例示又は説明される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わせることができる。このような修正及び変形は、本発明の範囲内に含まれるものとする。
褐色脂肪組織(BAT)を活性化する際に神経を阻害するための様々な例示的方法及び装置が提供される。一般に、方法及び装置は、BATの活性化を促進して熱産生を増加させ(例えば、患者における熱生成及びエネルギー消費を増加させる)、これにより、時間の経過と共に減量、患者の代謝の変化、例えば患者の基礎代謝率の変化、及び肥満に関連する合併症、例えばII型糖尿病、高血圧等の改善のうちの1つ又は2つ以上をもたらすことができる。このように、減量、代謝率の増加、及び/又は合併症の改善を、大きな外科的処置を行うことなく、1つ又は2つ以上の医薬品の投与に頼ることなく、患者の冷却に頼ることなく、そして患者の胃及び/又は他の消化器官を外科的に改変することなく誘発することができる。BATを神経支配する第1の神経タイプ(例えば、交感神経)を、BATを神経支配する少なくとも1つの他の神経タイプ(例えば、副交感神経及び/又は知覚神経)が抑制されている間に、活性化することができる。一般に、第1の神経調節因子(例えば、電気信号、化学物質、光、冷却、機械的操作又は振動、磁場等)を、第1の神経タイプを活性化するために適用することができ、第2の神経調節因子を、前記少なくとも1つの他の神経タイプを阻害するために適用することができる。このように、BATを神経支配する交感神経を活性化する際に、BATを神経支配する副交感神経及び/又は知覚神経を阻害することができる。第2の神経調節因子を、第1の神経調節因子よりも前に適用することにより、第1の神経タイプが第1の神経調節因子により活性化され始める前に前記少なくとも1つの他の神経タイプの阻害を開始することができる。第1の神経タイプが活性化され始める前に、前記少なくとも1つの他の神経タイプの阻害を開始することは、例えば第1の神経タイプ及び前記少なくとも1つの他の神経タイプ(少なくとも1つの他の神経タイプの前の阻害がない場合)を活性化するのに充分な強さを有する第1の神経伝達因子により印加される電気又は光信号のために、少なくとも1つの他の神経タイプを第1の神経伝達因子が活性化することを防ぐのに役立ちうる。第1及び第2の神経調節因子を同時に適用してもよく、これにより第1の神経タイプの活性化の間、前記少なくとも1つの他の神経タイプの阻害を促進することができる。
以下に更に説明するように、BATを神経支配する交感神経を少なくとも1つの神経調節因子(例えば、電気エネルギー、光、冷却、化学物質、機械的操作又は振動、磁場等)を用いて活性化することによってエネルギー消費を増大させることができる。げっ歯類では、副交感神経は脊椎傍BAT蓄積部位に見られるが、肩甲間BAT蓄積部位には見られない。ヒトでは、副交感神経は脊椎傍BAT蓄積部位及び鎖骨上BAT蓄積部位に見られる。ヒトの副交感神経系の副交感神経(頭蓋仙骨神経及びコリン作動性神経とも呼ばれる)もBATを神経支配することができ、副交感神経は交感神経を活性化している神経調節因子によって活性化されうる。当業者に理解されるように、交感神経系及び副交感神経系は、一般的に互いに相補的に反対に機能する。交感神経系は通常、迅速な反応を必要とする活動において機能し、一方、副交感神経は通常、即時の反応を必要としない活動において機能する。交感神経系及び副交感神経系の両方が活性化される場合、副交感神経系は交感神経系の活動と概ね拮抗する。したがって、交感神経及び副交感神経の両方が、BATを活性化しようとする際に活性化されると、副交感神経の活動が交感神経刺激の効果を減ずる場合がある。これにより、BATの活性化によって、例えば交感神経の活性化によって生じうる有用な効果が低減される場合があり、場合によっては、副交感神経の活性化のために完全に消失する場合がある。したがって、BATを活性化することで交感神経を活性化し、副交感神経を阻害することは、BAT活性化が、副交感神経の活性化によって部分的に又は完全に抑制されることなく、BATの有用な効果を与えることを可能とする。
知覚神経(例えば、圧受容性神経及び温度受容性神経)は、BATを神経支配できる。知覚神経は、BATを活性化しようとする際に活性化されうる(例えば、神経調節因子によって引き起こされる温度変化は温度感受性神経を活動化しうる)。知覚神経の活性化は、通常、身体がその起源を知らない予期しない活性化によって、身体が傷付くのを防止しようとする自然防御機構として、交感神経の刺激の効果を減じることができるフィードバックループにおいて機能することができる。したがって、副交感神経に関連して上記に述べたのと同様、BATを活性化しようとする際に知覚神経を活性化することは、BAT活性化に悪影響を及ぼしうる。したがって、知覚神経を阻害する一方で交感神経を神経調節してBATを活性化することは、BAT活性化が、知覚神経の活性化によって部分的又は完全に抑制されることなくBAT活性化の有用な効果を与えることを可能とする。
副交感神経及び交感神経は、節前ニューロン及び節後ニューロンを含む遠心性路を形成する。二次節後ニューロンは、平滑筋及び心筋にシナプスを形成し、また腺分泌を制御する。節前ニューロン及び節後ニューロンに加えて、交感神経系及び副交感神経系を含む自律神経系(ANS)の制御系には、脊髄上位の制御及び統合ニューロン中心;脊髄上位、脊髄性、神経節性、及び末梢性の介在ニューロン、並びに求心性ニューロンも関与している。求心性ニューロンは、後根神経節又は脳神経体性知覚神経節内に細胞体を有する。求心性軸索は、体性末梢神経に、又は自律遠心性神経に沿って延びる。
ANSの副交感神経節前成分は、脊髄上位及び脊髄部分を有する。副交感神経節前ニューロンは、4つの副交感神経脳幹核である、エディンガー・ウェストファル核、上唾液核、下唾液核、及び骨髄の迷走神経背側複合体に見られる。それら末梢神経は、脳神経3(動眼神経)、7(顔面神経)、9(舌咽神経)、及び10(迷走神経)をそれぞれ介して出る。副交感神経節前ニューロンは、分節S2〜S4の仙骨脊髄の中間外側(IML)細胞柱にも見られ、仙骨腹側根及び脊髄神経を介して中枢神経系(CNS)を出て、更に骨盤神経として骨盤内蔵へと続く。骨盤神経の仙骨神経節前副交感神経遠心性軸索は、骨盤叢の神経節の神経節後副交感神経ニューロンとシナプス形成する。神経節後軸索は、下行結腸、直腸、膀胱、及び性器を神経支配する。
ANSの交感神経節後の構成要素は、脊髄のみである。交感神経節前ニューロン(SPN)は、分節T1〜L2の胸部及び腰部脊髄のIML細胞柱に見られ、胸腰椎前根を介してCNSを出る。交感神経分節からの延出にはばらつきがあり、延出は、高い場合にはC8又は低い場合にはT2から始まり、L1又はL3で終わりうる。薄い有髄神経節前線維は、白交通枝として前根を介して出る。多くの交感神経節前線維は、対をなして頸椎から仙骨分節まで脊柱の隣に位置する脊椎傍神経節でシナプスを形成する。頸脊椎傍神経節には、上頸神経節、中頸神経節、星状神経節の3つがある。通常、11の胸神経節、4つの腰神経節、及び4又は5つの仙骨神経節がある。交感神経節前軸索は、それらの出口の分節で脊椎傍神経節にシナプス形成するか、又はシナプス形成前に交感神経鎖の幾つかの分節を上方又は下方に通過しうる。1本の交感神経節前軸索は、複数の節後ニューロンとシナプス形成する。神経節後軸索は、無髄の小さな径の線維であり、灰白交通枝を介して脊椎傍神経節から出て、分節脊髄神経を介して出る。
特定の交感神経節前軸索は、シナプスを形成することなく脊椎傍神経節を通過し、3つの脊椎前神経節である腹腔神経節、上腸間膜神経節、及び下腸間膜神経節(IMG)、並びに副腎髄質を神経支配する内臓神経を構成する。脊椎前神経節からのシナプス後の軸索は、下腹、内臓、及び腸間膜神経叢として腹部及び骨盤臓器へと走行している。
汗腺、立毛筋、及び大部分の小血管は、交感神経の神経支配のみを受けている。びまん性の交感神経系放電は、瞳孔拡張、心拍数及び収縮性の増加、気管支拡張、腸間膜循環の血管収縮、及び骨格筋細動脈の拡張を生じる。これは、「闘争か逃走か」の防御反応である。
ANSの制御システムに関与する脊髄上位ニューロンは、弧束核(NTS)、疑核、迷走神経背側運動核、背側縫線核、延髄網様体核、青斑核、視床下部、大脳辺縁系、及び一次感覚運動皮質に位置している。視床下部は、中脳、側方橋、及び延髄網様体への交差しない交感神経下行性経路を有する。橋及び延髄から脊髄の介在ニューロンへの下行性網様体脊髄経路は、IML細胞に影響を与える。NTSは、内臓から求心路を受け、反射活動と視床下部及び大脳辺縁系への中継所の統合中心として機能する。
効果器において、交感神経節ニューロンは、アデノシン三リン酸(ATP)のような他の補助伝達物質と共にノルアドレナリン(ノルエピネフリン)を放出し、汗腺及び副腎髄質を除いてアドレナリン受容体に作用する。アセチルコリンは、副交感神経ニューロンの神経節後神経伝達物質であるだけでなく、ANSの両神経系の神経節前神経伝達物質である。アセチルコリンを放出する神経は、コリン作動性と言われる。副交感神経系において、神経節ニューロンは、ムスカリン受容体を刺激するため神経伝達物質としてアセチルコリンを用いる。副腎皮質には、シナプス後ニューロンが存在しない。代わりに、シナプス前ニューロンがアセチルコリンを放出することでニコチン受容体に作用する。副腎皮質の刺激は、アドレナリン(エピネフリン)を血流に放出し、これがアドレナリン受容体に作用して、交感神経活動の広範な増加を生じる。これらの神経からのアセチルコリン放出を遮断するか、又は抗コリン作用剤によってBATの受容体へのこの神経伝達物質の結合を遮断することによって、副交感神経の活動の抑制を助け、これによりBAT神経調節の有効性を向上させることができる。この遮断は、局所的又は全体的に行うことができる。
例えばStylopoulos et al.,「Roux−en−Y Gastric Bypass Enhances Energy Expenditure And Extends Lifespan In Diet−Induced Obese Rats」、Obesity 17(1 October 2009),1839−47のげっ歯類モデルにおいて実証されるように、ルーワイ胃バイパス術(RYGB)のような肥満を治療するための外科的処置後、患者はエネルギー消費の増加により減量できる。Stylopoulos et al.による追加データ(本出願の出願日現在、先行文献又は他の文献に公開されていない)は、RYGBが、BATのミトコンドリア内の脱共役タンパク質である脱共役タンパク質1(UCP1)のレベルの増大、並びにBAT内の脂肪蓄積の大きさの顕著な減少及びBATの体積の増大とも関連していることを示している。したがって、RYGBはBATの活性化を引き起こすものの、上記に述べたように、胃バイパスなどの肥満を治療するための外科的処置は、少なくとも一部の患者において様々な望ましくない結果を必ずしも引き起こすとは限らないまでも、リスクを伴うと考えられる。したがって、RYGBのような大きな外科的処置なしに、BATを活性化することによりエネルギー消費を増すための装置及び方法を提供する。
白色脂肪組織(WAT)の蓄積からBATを区別するBATの1つの特徴は、1個のBAT細胞内に多数のミトコンドリアがあることである。この特徴により、BATはエネルギーを燃焼する優れた供給源となる。BATを区別する別の特徴は、活性化される際に、熱産生をもたらすアデノシン三リン酸(ATP)生成の過程に非効率性を導入するのにUCP1が利用されることである。したがって、UCP1のアップレギュレーションは、BAT活性化のマーカーである。
褐色脂肪細胞の活性化は、これら細胞自体の内部の脂肪蓄積の動員につながる。また、特にBATに関連する局所的な貯蔵が枯渇する場合に、細胞外空間及び血流からこれらの細胞へのFFAの輸送が増加する。血中のFFAは、主にWATの脂肪細胞から代謝され放出された脂肪、及び摂取された脂肪に由来する。交感神経系の刺激は、BATを生理的に活性化する主な手段である。交感神経刺激は、また、WATの脂肪分解とWATから血流へのFFAの放出を誘発し、FFAレベルを維持する。このように、交感神経刺激は、最終的にWATからBATへの脂質の移動に続き、BATの熱産生能力の一部としてこれら脂質の酸化につながる。褐色脂肪細胞のこの活性化は、また、糖尿病関連マーカーの改善につながりうる。
BATの制御された活性化は、WAT中のトリグリセリンの蓄積を減少させることにより最適化され、減量、代謝率の増加、及び/又は合併症の改善につながりうる。BATは、様々な方法で活性化することができる。非限定的な例として、医薬品を患者に投与すること、患者を冷却すること、患者を加温すること、磁場を患者の特定の領域に向けること、BAT蓄積部位及び/又はBATを神経支配する神経に向けたBAT神経調節処置を患者に行うこと、患者が減量治療に取り組むこと、及び/又は、減量を誘発し及び/又は例えばグルコースホメオスタシス、脂質代謝、免疫機能、炎症/抗炎症バランス等の代謝機能を改善する処置のような外科的処置を患者に行うことができる。BATを神経支配する神経を活性化するように構成される神経調節技術の非限定的な例としては、例えば、電気、光、機械的操作又は振動、磁場、化学物質等、神経に活動電位を誘発する媒体を神経に送達することが挙げられる。BAT神経調節処置の非限定的な例としては、筋肉、WAT、前脂肪細胞、又は他の細胞のBATへの分化の誘導、及び/又は患者へのBAT細胞のインプラント又は移植を含む。BAT細胞のインプラント又は移植の非限定的な例としては、患者から細胞を取り出し、取り出した細胞を培養し、培養した細胞を再びインプラントすること、別の患者から細胞を移植すること、胚性幹細胞、成人幹細胞、又は他の供給源から増殖させた細胞をインプラントし、細胞機能を改善するために細胞を遺伝的、薬理的又は物理的に改変すること、が挙げられる。そのような減量治療の非限定的な例としては、処方された食事及び処方された運動が挙げられる。そのような外科的処置の非限定的な例としては、胃バイパス、胆膵路転換手術、胃切除術(例えば、垂直袖状胃切除術等)、調整可能な胃バンディング術、垂直遮断胃形成術、胃内バルーン治療、胃縫縮術、マゲンストラッセ・アンド・ミル術、小腸転位、胆汁迂回、迷走神経刺激、胃腸バリア(例えば、十二指腸腔内バリア等)、及び胃腸管から食物を除去するのを可能にする処置を含む。1つ又は2つ以上の治療、特にBATを活性化しない減量治療又は減量外科的処置、例えば、RYGB、十二指腸転位を伴うか伴わない胆膵路転換手術(BPD)、又は幾つかの十二指腸又は他の腸管バリア以外の処置(例えば、処方された食事及び/又は運動プログラム、調整可能な胃バンディング術、垂直遮断胃形成術、袖状胃切除術、胃縫縮術、マゲンストラッセ・アンド・ミル術、胃内バルーン治療、幾つかの十二指腸又は他の腸管バリア、及び小腸転位)を、本明細書で説明された神経調節のようなBATの急性又は慢性活性化用手段と組み合わせることで、組み合わせたアプローチを通して所望する患者成果をもたらすことができる。
幾つかの実施形態では、低温に曝すことによって、BATの活性化につながることで体温の調節を助けることができる。BATを活性化するために冷却を用いる例示的な実施形態は、「Methods And Devices For Activating Brown Adipose Tissue With Cooling」と題して2013年6月28日に出願された米国特許出願第13/977,555号に説明され、その全体は参照として本明細書に組み込まれる。幾つかの実施形態では、電気刺激することによってBATを活性化することができる。BATを活性化するため電気刺激を用いる例示的な実施形態は、「Methods And Devices For Activating Brown Adipose Tissue Using Electrical Energy」と題して2010年12月29日に出願された米国特許出願公開第2011/0270360号により詳細に記載され、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。幾つかの実施形態では、光を用いてBATを活性化することができる。BATを活性化するために光を用いる例示的な実施形態は、「Methods And Devices For Activating Brown Adipose Tissue Using Light」と題して2013年6月28日に出願された米国特許出願公開第2014/0088487号により詳細に記載され、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。幾つかの実施形態では、BATは化学的に活性化することができる。BATを活性化するために1つ又は2つ以上の化学物質を用いる例示的な実施形態は、「Methods And Devices For Activating Brown Adipose Tissue With Targeted Substance Delivery」と題して2013年6月28日に出願された米国特許出願公開第2014/0018767号に詳細に記載され、その全体は参照として本明細書に組み込まれる。幾つかの実施形態では、褐色脂肪細胞は、例えば、BAT脂肪細胞の数を増加させること、又はUCP1のような褐色脂肪細胞を活性化する遺伝子を発現するように褐色脂肪細胞を改変することでBATの活性化を増大する等、BATの活性化を増大するために改変することができる。BATの活性化を増大するように褐色脂肪細胞を改変することを用いる例示的な実施形態は、「Brown Adipocyte Modification」と題して2013年6月28日に出願された米国特許出願公開第2014/0199278号により詳細に記載され、その全体は参照として本明細書に組み込まれる。BATを活性化する1つ又は2つ以上の技術を一度に用いることができ、例えば、患者を冷却して電気的に刺激することができる。
例えば、J.M.Heaton,「The Distribution Of Brown Adipose Tissue In The Human」,J Anat.,1972 May,112(Pt 1):35〜39、及びW.D.van Marken Lichtenbelt et al,「Cold−Activated Brown Adipose Tissue in Healthy Men」,N.Engl.J.Med.,2009 April,360,1500〜1508に示されるように、成人は相当量のBAT蓄積部位を有することを当業者は理解するであろう。また、例えば、Lever et al.,「Demonstration Of A Catecholaminergic Innervation In Human Perirenal Brown Adipose Tissue At Various Ages In The Adult」,Anat Rec.,1986 July,215(3):251−5,227〜9.に示されるように、BATが交感神経系によって高度に神経支配されていることを当業者は理解するであろう。更に「ノルエピネフリン(及びNPYではない)を含有する細かい無髄線維は、褐色脂肪細胞自体を実際に神経支配するものである。それらは、各々の褐色脂肪細胞と接触しつつ(数珠玉状)組織内に緻密なネットワークを形成し、それらのノルエピネフリンの放出は、熱産生を急激に刺激し、慢性的に褐色脂肪組織の動員をもたらす。」B.Cannon,及びJ.Nedergaard,「Brown Adipose Tissue:Function And Physiological Significance,」Physiol Rev.,2004:84:277〜359。
BATを神経支配する神経を神経調節することによってUCP1を活性化することができ、これにより、BATを神経支配する神経の経皮的及び/又は直接的神経調節による放熱を介してエネルギー消費を増加させることができる。経皮的及び直接的神経調節を、各々、より詳細に以下に説明する。
BAT活性化は局所的、領域的、又は全身的に体温の上昇につながることがあるため、BATを神経支配している神経の経皮的及び/又は直接的神経調節は、BATの経皮的及び/又は直接的神経調節の前及び/又は後に、1つ又は2つ以上の放熱治療と組み合わせることができる。そのような放熱治療の非限定的な例は、例えば、α拮抗薬又は遮断薬の局所又は全身投与、直接熱冷却等、皮膚/末梢血管拡張の誘発を含む。
BATが直接的及び/又は経皮的に活性化されるか否かにかかわらず、BAT神経を神経調節及び/褐色脂肪細胞を直接神経調節するための標的エリアは、BAT蓄積部位に近接するエリア、例えば、鎖骨上蓄積部位、首筋、肩甲骨上、脊髄沿い、BAT蓄積部位に終端する交感神経系の近位分枝近傍、及び腎臓の少なくとも一方の周りを含みうる。任意のBAT蓄積部位を活性化のために選択することができる。非限定的な例では、図3に示される1つの実施形態において、例えば、電気を用いてBATを神経調節するように構成される装置(図示なし)は、鎖骨上領域Sの肩甲骨上のエリアに近接して配置することができる。
神経を活性化するために電気信号又は他の神経調節手段を適用するように構成される経皮的装置の様々な例示的な実施形態は、「Methods And Devices For Activating Brown Adipose Tissue Using Electrical Energy」と題して2010年12月29日に出願された米国特許出願公開第2011/0270360号、「Nerve Stimulation Patches And Methods For Stimulating Selected Nerves」と題して2007年11月16日に出願された米国特許出願公開第2009/0132018号、「Electrode Patch And Method For Neurostimulation」と題して2006年12月19日に出願された米国特許出願公開第2008/0147146号、「System And Method For Nerve Stimulation」と題して2005年6月7日に出願された米国特許出願公開第2005/0277998号、「System And Method For Selectively Stimulating Different Body Parts」と題して2006年1月31日に出願された米国特許出願公開第2006/0195153号、「Conductive Mesh For Neurostimulation」と題して2006年8月2日に出願された米国特許出願公開第2007/0185541号、「System And Method For Selectively Stimulating Different Body Parts」と題して2006年1月31日に出願された米国特許出願公開第2006/0195146号、「System And Method For Affecting Gastric Functions」と題して2006年12月1日に出願された米国特許出願公開第2008/0132962号、「Electrode Patch And Method For Neurostimulation」と題して2006年12月19日に出願された米国特許出願公開第2008/0147146号、「Dermatome Stimulation Devices And Methods」と題して2007年12月14日に出願された米国特許出願公開第2009/0157149号、「Implantable Antenna」と題して2007年12月6日に出願された米国特許出願公開第2009/0149918号、「Nerve Stimulation Patches And Methods For Stimulating Selected Nerves」と題して2007年11月16日に出願された米国特許出願公開第2009/0132018号、「Optimizing The Stimulus Current In A Surface Based Stimulation Device」と題して2008年12月19日に出願された米国特許出願公開第2010/0161001号、「Optimizing Stimulation Therapy Of An External Stimulating Device Based On Firing Of Action Potential In Target Nerve」と題して2008年12月19日に出願された米国特許出願公開第2010/0161005号、「Self−Locating,Multiple Application,And Multiple Location Medical Patch Systems And Methods Therefor」と題して2009年3月20日に出願された米国特許出願公開第2010/0239648号、「Offset Electrode」と題して2009年10月26日に出願された米国特許出願公開第2011/0094773号、及び「A Device And Method For Self−Positioning Of A Stimulation Device To Activate Brown Adipose Tissue Depot In Supraclavicular Fossa Region」と題して2012年5月10日に出願された米国特許第8,812,100号に詳細に記載される。
神経を神経調節するために直接信号を適用するように構成される装置の様々な実施形態は、「Methods And Devices For Activating Brown Adipose Tissue Using Electrical Energy」と題して2010年12月29日に出願された米国特許出願公開第2011/02700360号、「System And Method For Urodynamic Evaluation Utilizing Micro−Electronic Mechanical System」と題して2005年1月26日に出願された米国特許出願公開第2005/0177067号、「System And Method For Urodynamic Evaluation Utilizing Micro Electro−Mechanical System Technology」と題して2006年12月7日に出願された米国特許出願公開第2008/0139875号、「Implantable Pulse Generators And Methods For Selective Nerve Stimulation」と題して2007年10月3日に出願された米国特許出願公開第2009/0093858号、「Piezoelectric Stimulation Device」と題して2010年3月26日に出願された米国特許出願公開第2010/0249677号、「Low Frequency Transcutaneous Telemetry To Implanted Medical Device」と題して2004年6月24日に出願された米国特許出願公開第2005/0288740号、「Low Frequency Transcutaneous Energy Transfer To Implanted Medical Device」と題して2004年6月24日に出願された米国特許第7,599,743号、「Transcutaneous Energy Transfer Primary Coil With A High Aspect Ferrite Core」と題して2004年6月24日に出願された米国特許第7,599,744号、「Spatially Decoupled Twin Secondary Coils For Optimizing Transcutaneous Energy Transfer(TET)Power Transfer Characteristics」と題して2004年6月24日に出願された米国特許第7,191,007号、及び国際特許公開第WO1989011701号で「Interrogation And Remote Control Device」と題して2004年11月30日に公開された、欧州特許公開第377695号により詳細に記載される。
活性化のための1つ又は2つ以上のBAT蓄積部位の識別は、PET−CT撮像、断層撮像、サーモグラフィ、MRI、又は他の技術を用いて患者を撮像又は走査することにより患者のBAT蓄積部位の位置を特定することで、患者個人に合わせて決定されうることが、当業者に理解されよう。非放射性ベースの撮像技術を用いて、蓄積部位内のBATの活性化に関連する血流の変化を測定することができる。1つの実施形態では、微生物を含有する造影剤を、BATの位置を特定するために用いることができる。造影剤は、BATが活性化されている患者に注入することができる。低周波超音波のようなエネルギー源を、対象領域に適用して、造影剤による気泡の破壊を引き起こすことができる。この空間の再充填速度を定量可能である。再充填の速度の増加は、活性BAT蓄積部位と関連しうる。他の実施形態において、蛍光培地を含む造影剤を、BATの位置を特定するために使用可能である。造影剤は、BATが活性化されている患者に注入することができる。プローブを通過する蛍光造影剤の量を計数可能なニードルに基づくプローブを、対象の領域に配置可能である。単位時間あたりのカウントの増加は、血流の増加に対応し、活性化BAT蓄積部位に関連付けることができる。ヒトは比較的少量のBATを有しうるため、また、首筋のような典型的なBAT蓄積部位の近くであっても、BATが最も豊富である場所を推測することは困難であるため、より正確にBAT蓄積部位を狙って患者をイメージングすることで、BATを神経支配しているより多くの神経を、より高い精密さで活性化することが可能である。患者イメージングを通して同定された任意の数のBAT蓄積部位を、永久又は一時的マーカーを用いて、後の参照のためにマーク可能である。当業者によって理解されるように、例えば、表皮上及び/又は下に適用したインク、色素注入などの任意の種類のマーカーを、BAT蓄積部位をマークするために使用可能である。マーカーは、紫外線光、例えばブラックライトのような、特定の照明条件下においてのみ可視であるように構成可能である。
BATが直接的に活性化されるか、かつ/又は経皮的に活性化されるかにかかわらず、BAT神経活性化及び/又は褐色脂肪細胞の直接的活性化のための標的細胞エリアは、細胞表面受容体(例えば、TGR5、βAR、βAR、βAR等)、核内受容体(例えば、PPARγ、FXR、RXR等)、転写補助活性化因子及び抑制補体(例えば、PGC1α等)、細胞内分子(例えば、2−脱ヨード酵素、MAPキナーゼ等)、UCP1活性化因子、個々の細胞及び関連する成分(例えば、細胞表面、ミトコンドリア、及び細胞小器官)、輸送タンパク質、PKA活性、ペリリピン及びHSL(リン酸化PKA基質)、CREBP(cAMP応答要素結合タンパク質)、アデノシン一リン酸活性化プロテインキナーゼ(AMPK)、胆汁酸受容体(例えば、TGR5、FGF15、FXR、RXRα等)、ムスカリン受容体を含むことができる。
患者の治療過程において、BAT神経及び/又は褐色脂肪細胞は、任意の1つ又は2つ以上のBAT蓄積部位で直接的又は間接的に神経調節することができ、また例えば、2つ以上のBAT蓄積部位が同時に活性化されるように同時に神経調節することができ、又は例えば、異なるBAT蓄積部位が異なる時に活性化されるように連続的に活性化することができる。BATの同時神経調節は、より多くの、かつ/又はより迅速なエネルギー消費を促進することができる。BATの連続神経調節は、標的神経の「消耗」を防ぐことができ、新たなBAT細胞の生成を刺激することができる。連続的な神経の神経調節は、同じBAT蓄積部位を2回以上活性化することを含むことができ、少なくとも1つの他のBAT蓄積部位が、以前に活性化されたBAT蓄積部位を活性化するよりも前に活性化される。同時及び/又は連続神経調節は、タキフィラキシーを防止するのに役立ちうる。
BAT及びBATを神経支配している神経は、各々経皮的に(例えば、患者の身体の外側から)又は直接的に(例えば、そこに直接、接触することで)神経調節されうる。皮下の例では、神経調節因子は、BAT蓄積部位と直接接するように患者の体内に完全にインプラントすることができ、BAT蓄積部位の活性化を可能にする。別の皮下の例では、神経調節因子は、BATを神経支配している神経と直接接するように患者内に完全にインプラントすることで神経の活性化を可能とすることができる。経皮的な例では、神経調節因子は、BAT蓄積部位と直接接するように患者内に部分的にインプラントされることでBAT蓄積部位の活性化を可能にし、例えば、少なくとも1つの電極からBAT蓄積部位へ皮膚表面を介して延びる少なくとも1つの導体を備えて、患者の皮膚表面に配置される少なくとも1つの電極を含む外部皮膚パッチ、少なくとも1つの電極からBAT蓄積部位へ皮膚表面を介して延びる少なくとも1つの発光の光ファイバワイヤを備える患者の皮膚表面に配置される少なくとも1つの電極を含む外部皮膚パッチ等である。別の経皮的な例では、神経調節因子は、BATを神経支配している神経と直接接するように患者内に部分的にインプラントされることで神経の活性化を可能にし、例えば、少なくとも1つの電極から皮膚表面を介して神経へ延びる少なくとも1つの導電性ニードルを備える、患者の皮膚表面に配置された少なくとも1つの電極を有する外部皮膚パッチ、少なくとも1つの電極から皮膚表面を介して神経へ延びる少なくとも1つの発光の光ファイバワイヤを備える、患者の皮膚表面に配置された少なくとも1つの電極を有する外部皮膚パッチ等である。経皮的な例として、神経調節因子は、BAT蓄積部位の近位で患者の外部に配置され得て、その活性化を可能にし、例えば、少なくとも1つの電極に結合される導電性ジェルを備えて、患者の皮膚表面に配置される少なくとも1つの電極を含む外部皮膚パッチである。
BAT又はBATを神経支配している神経が、1つ又は2つ以上の神経調節手段(例えば、電気、光、機械的操作又は振動、磁場、化学物質等)を用いて経皮的又は直接的に神経調節されているかにかかわらず、BATを神経支配している交感神経は活性化し、BATを神経支配している少なくとも1つの他の神経タイプは、上述のように阻害されうる。
1つの例示的な実施形態では、第1の電気信号及び第2の電気信号を用いてBATを活性化することができる。第1の電気信号は交感神経を刺激するように構成し、第2の電気信号は別の神経タイプを阻害するように、例えば、副交感神経及び/又は知覚神経を阻害するように構成することができる。第1及び第2の電気信号の両方を経皮的に供給することができ、これにより、患者に経皮的に適用された同じ装置を用いて第1及び第2の電気信号を供給することが可能となることにより第1及び第2の電気信号の印加を促進することができる。別の実施形態では、第1及び第2の電気信号の両方を直接供給することができ、これにより、非影響的なBAT刺激を可能にできる。例示的な実施形態では、第2の電気信号は、第1の電気信号がBATに印加される前に、BATに印加を開始することができ、これにより、例えば、第1の電気信号が交感神経及び別の神経タイプ(少なくとも1つの別の神経タイプの前の阻害がない場合)を活性化するのに充分な強度を有するために、BATに印加される場合に第1の電気信号が別の神経タイプを活性化することを阻害できる。
図4は、BATのような組織へ電気信号を生成して供給するように構成されたインプラント可能な装置100の1つの例示的な実施形態である。インプラント可能な装置100は、患者体内に完全にインプラントするか、又は装置100は、患者体外に少なくとも部分的に置かれるように患者体内に部分的にのみインプラントすることができる(例えば経皮的に)。インプラント可能な装置100は、適切な電源又はリチウム電池のような電池104に結合される筐体102、第1の波形発生器106、及び第2の波形発生器110を含むことができる。例示的な実施形態のように、電池104、並びに第1及び第2の波形発生器106、110は筐体102の内部に置かれてもよい。別の実施形態では、電池は、筐体の外部に配置してもよく、筐体と有線又は無線結合することができる。筐体102は、好ましくは生体適合性材料で作製される。第1及び第2の波形発生器106、110は、電池104に電気的に結合して電力を供給することができる。波形発生器106、110は、テキサス州ダラスのTexas Instruments社より型番NE555で販売されるような任意の適切なタイプのものでよい。第1の波形発生器106は、第1の波形又は低周波数変調信号108を発生するように構成することができ、第2の波形発生器110は、第2の波形又は第1の波形108よりも高い周波数を有するキャリア信号112を発生するように構成することができる。キャリア信号112は、BAT及び/又はBATを神経支配している神経を少ないエネルギーを用いて刺激することを容易にすることができ、かつ/又は電気信号を患者にとってより一層快適にすることができる。第1の波形108は、それ自体で、標的神経を効果的に刺激するために身体組織を容易に通過することができない。しかしながら、第2の波形112は、電気信号が身体組織を通過することを補助できる。第2の波形112は、Texas Instruments社により販売される名称On−Semi MC 1496を有するモジュレーターのような振幅モジュレーター114に第1の波形108と共に適用することができる。
モジュレーター114は、リード線118を通して1つ又は2つ以上の電極120に伝送される第1の変調波形116を発生するように構成することができる。4つの電極が示されているが、装置100は、任意のサイズ及び形状を有する任意の数の電極を含むことができる。リード線118は、例示された実施形態のように、可撓性であってもよい。電極120は、標的神経122を刺激するため、順に第1の標的神経122に第1の変調波形116を印加するように構成することができる。第1の波形108は方形波であってよく、第2の波形112は正弦波信号であってよい。第1の変調波形116、例えば、第1及び第2の波形108、112は、第1の電気信号、例えば、交感神経を刺激するように構成された信号を定義することができる。
モジュレーター114は、第2の変調波形124を第1の標的神経122の近傍の第2の標的神経(図示なし)に印加するため、リード線118を介して電極120の1つ又は2つ以上に伝送される第2の変調波形124を発生するように構成することができる。第2の変調波形124は、第2の電気信号、例えば、副交感神経及び/又は知覚神経を刺激するように構成された信号を定義できる。
モジュレーター114は、第1の変調波形116を発生するための第1のアルゴリズムを実行するように構成することができ、また、第2の変調波形124を発生するための第2のアルゴリズムを実行するように構成することができる。第1及び第2のアルゴリズムは、モジュレーター114のメモリー、例えば、マイクロコントローラ又は中央処理ユニット(CPU)のような他のタイプのプロセッサとしてモジュレーターのメモリーに格納することができる。
第1及び第2の変調波形116、124は、この例示的な実施形態では変調信号及びキャリア信号をそれぞれ含むが、装置100に類似した装置を、第1及び第2の電気信号をそれぞれ定義する単一の第1の信号及び単一の第2の信号を同様に発生するように構成することもできる。つまり、第1及び第2の電気信号は、各々単一信号を含むことができ、例えば、キャリア信号を欠く。
第1の電気信号は、経皮的又は直接送達にかかわらず、様々な方法で構成することができる。例示的な実施形態では、BATに直接供給される第1の電気信号は、約1〜20Vの範囲、例えば約10V、例えば約4V、例えば約7V等の振幅を有する電圧、約2〜6mAの範囲、例えば約3mAの振幅を有する電流、約10μs〜1msの範囲、例えば約0.1ms、約1ms、約0.4ms等のパルス幅、約0.1〜40Hzの範囲、例えば約10Hz、又は約1〜20Hzの範囲の活性化信号パルス周波数、及び約1秒から例えば約30秒等に継続する信号列の持続時間を有してもよい。第1の電気信号の特定のパラメータは、第1の電気信号が供給される場所に基づき、例えば、第1の電気信号を供給する電極が経皮的に置かれるか、又はインプラントされるかに基づき異なってもよい。有髄線維の直接及び/又は皮下刺激の例示的な実施形態では、第1の電気信号は、約0.1〜10mAの範囲にある電気振幅及び約50〜300μ秒の範囲にあるパルス幅を有することができる。一般に、有髄線維を刺激するために必要とされる電荷は、無髄線維を刺激するために必要とされる電荷よりも少ない。無髄線維の直接的及び/又は皮下刺激の例示的な実施形態では、第1の電気信号は、有髄線維に印加される場合よりも大きな電流振幅及び少なくとも同じ高さのパルス幅を有することができ、例えば、第1の電気信号は10mAよりも大きい電流振幅及び少なくとも300μ秒のパルス幅(例えば、約300〜1000μ秒の範囲のパルス幅)を有する。有髄線維の経皮的刺激の例示的な実施形態では、第1の電気信号は、少なくとも約10mA(例えば、約10〜100mAの範囲)の電流振幅及び約400μ秒未満のパルス幅を有することができる。一般に、100mAを超える電流振幅は、患者に不快となる場合がある。無髄線維の経皮的な刺激の例示的な実施形態では、第1の電気信号は、少なくとも約50mA(例えば、約50〜100mAの範囲)の電流振幅及び約400〜1000μ秒の範囲にあるパルス幅を有することができる。線維を刺激するのに用いられる電荷は、所望の電荷を達成するために電流振幅及びパルス幅を調整することにより調整することができる点は当業者には理解されるであろう。一般に、電荷の調整において、非常に長いパルス幅は患者に損傷及び/又は不快感を引き起こす場合があるため、第1の電気信号のパルス幅を減じることは、パルス幅を増加することよりも有用となりうる。特定パラメータは、正確な数値を有していなくてもよいが、特定パラメータを有する信号を発生する装置の製造公差のような1つ又は2つ以上の要因のために、特定数値を「約」とみなすことを、当業者は理解するであろう。
BATに供給される非連続な電気信号のための信号列の開始間の時間は、任意の規則的で予測可能な持続時間、例えば、毎時、毎日、調整された概日周期、超概日周期、又は約10分又は約90分のような他の対象とする周期等であってもよく、又は任意の不規則で予測不可能な持続時間、例えば、1つ又は2つ以上の所定のトリガーイベントに応答するものであってもよい。一般に、所定のトリガーイベントは、装置により感知されるか、又は装置に信号が送られるイベントを含む。トリガーイベントの非限定的な例は、患者の摂食、患者の休息(例えば、睡眠)、患者の閾値体温(例えば、神経調節されたBAT蓄積部位の温度又は深部温度)、患者の向き(例えば、通常の睡眠時の横になった状態)、患者の体重の変化、患者の組織インピーダンスの変化、患者又は他のヒトによる手動活性化(例えば、内蔵コントローラを介して、有線又は無線接続コントローラを介して、又は皮膚接触による)、患者の血中化学物質変化(例えば、ホルモン変化)、低エネルギー消費、女性の月経周期、薬剤摂取(例えば、トピラマート、フェンフルラミンのような食欲抑制薬)、患者の超概日又は他の概日周囲、及び装置と有線及び/又は無線で電子通信にあるコントローラからの手動又は自動で発生される信号を含む。1つの実施形態では、患者の摂食は、それらの全体が参照として本明細書に組み込まれる、「Obesity Therapy And Heart Rate Variability」と題して2010年12月29日に出願された米国特許第8,696,616号、及び「Obesity Therapy And Heart Rate Variability」と題して2010年12月29日に出願された米国特許出願公開第2012/0172783号により詳細に記載されるように、心拍数の変動性を検出することで判断することができる。
連続的に供給されるBAT信号の時間の長さは変化しうる。長期間にわたって患者に連続的又は慢性的な影響を及ぼす減量外科術をより正確にシミュレートするため、第1の電気信号は、長期の、好ましくは所定の時間にわたって連続的又は慢性的に供給することができる。例示的な実施形態では、所定の時間は、少なくとも1日、例えば、1日から少なくとも4週間、少なくとも1週間、少なくとも4週間等の範囲であってよい。BATを刺激するために供給することができる第1の電気信号の様々な例示的な実施形態は、例えば先述した、「Methods And Devices For Activating Brown Adipose Tissue Using Electrical Energy」と題して2010年12月29日に出願された米国特許出願公開第2011/0270360号に更に詳述される。
第2の電気信号は、経皮的又は直接的に供給されるかにかかわらず、様々な方法で構成することができる。例示的な実施形態では、第2の電気信号は、1つ又は2つ以上の方法で第1の電気信号と異なってよく、例えば、異なる電圧、異なる電流、異なる振幅、異なるパルス幅、異なる極性等を有する。これより、第1の電気信号は、第1の構成を有することで、第1の神経タイプ、例えば、交感神経を標的とすることができ、第2の電気信号は、第1の構成とは異なる第2の構成を有することで、第2の異なる神経タイプ、例えば、副交感神経及び/又は知覚神経を標的とすることができる。
第1の電気信号とは異なっている第2の電気信号は、第2の電気信号が線維径選択性を用いて副交感神経を標的とすることを可能にする。言い換えると、第2の電気信号は、第1の径とは異なる径を有する神経線維を活性化することなく、第1の径を有する神経線維を活性化するように構成することができる。上述のように、交感神経は、節後無髄の小径線維を含み、一方副交感神経は、節前有髄の大径線維を含む。第2の電気信号は、したがって、節後無髄の小径線維を活性化することなく、節前有髄の大径線維を標的として活性化するように構成することができる。節後無髄の小径線維(例えば、交感神経)を活性化するのに要するエネルギーは、節前有髄の大径線維(例えば、副交感神経)を活性化するのに要するエネルギーよりも大きい。第1と第2の電気信号の相対的エネルギーは、低エネルギーの第2の電気信号が交感神経を活性化することなく副交感神経線維を抑制することを可能とする。副交感神経線維の抑制の後、高エネルギーの第1の電気信号は、抑制された副交感神経を活性化することなく、交感神経線維を活性化できる。
第1及び第2の電気信号の信号特性は、線維径選択性を用いて神経の標的化を容易にするように制御することを可能にする。第1と第2の電気信号の閾値差は、二相性波形の第1と第2のパルス間のパルス幅及び遅延のような、第1と第2の電気信号の信号特性を変えることで制御することができる。
例示的な実施形態では、第2の電気信号は、第1の電気信号よりも少ないエネルギーを有することで、第1の電気信号とは異なることができる。例えば、第1の電気信号の電流は、第2の電気信号の電流よりも大きくなりうる。交感神経は節後であり、節後線維は無髄であって、一般的に小径である。反対に、副交感神経及び知覚神経は節前であり、有髄であって、一般的に交感神経よりも大きな径を有する。第1の電気信号の電流よりも小さい電流を有する第2の電気信号は、第1の電気信号が印加され始める前に第2の電気信号の有髄神経の抑制を促進することができ、また第2の電気信号の有髄神経の抑制を促進するのと同時に第1の電気信号もまた無髄神経に印加されて刺激することができる。第2の電気信号は、第1の電気信号が印加される前に印加することができ、したがって、副交感神経での新たな活動電位形成を防止し、その結果、続いて印加される第1の電気信号は副交感神経を活性化できない。例示的な実施形態では、第1の電気信号の電流は、第2の電気信号の電流よりも10〜100倍の範囲であってよく、第1の電気信号が第1の神経タイプを標的とし、第2の電気信号が第2の神経タイプを標的とすることを確実にするのに役立つことができる。例えば、第2の電気信号は約0.1〜5mAの範囲にある電流を有し、第1の電気信号は、第2の電気信号よりも10〜100倍大きい範囲にある電流を有することができる。別の例では、第2の電気信号が約10μs〜400μsの範囲にあるパルス幅を有し、第1の電気信号が約400μs〜1000μsの範囲にあるパルス幅を有することによって、第2の電気信号は、第1の電気信号のパルス幅と等しいか、又は小さいパルス幅を有することができる。例示的な実施形態では、第2の電気信号は、第1の電気信号のパルス幅よりも小さいパルス幅を有する。
第1の電気信号よりも少ないエネルギーを有している第2の電気信号の別の例では、第2の電気信号は、第1の電気信号に比較して過分極低エネルギーパルス(例えば、アノード信号)を含むことができる。第2の電気信号の過分極低エネルギーパルスは、第1の電気信号が第1の神経タイプを刺激する間、第2の神経タイプの阻害を促進できる。第2の電気信号の過分極低エネルギーパルスは、ナトリウムチャネルを不活性化するように構成することができ、それによって新たな活動電位形成を防止する。過分極低エネルギーパルスを含む第2の電気信号は、第1の電気信号がBATに印加される前にBATに印加することができ、それによって副交感神経での新たな活動電位形成を防止し、その結果、BATに引き続き印加される第1の電気信号は、副交感神経を活性化できない。第1及び第2の電気信号は交互に印加することができ、これにより過分極低エネルギーパルスが印加された副交感神経が第1の電気信号の印加に応答して活性化されないようにする助けとなる。
第1の電気信号よりも小さいエネルギーを有している第2の電気信号の別の例では、第2の電気信号は、第1の電気信号に比較して脱分極低エネルギーパルス(例えば、カソード刺激)を含むことができる。第2の電気信号の脱分極低エネルギーパルスは、第1の電気信号が第1の神経タイプを刺激する間、第2の神経タイプの阻害を促進できる。第2の電気信号の脱分極低エネルギーパルスは、副交感神経を活性化することなく副交感神経を脱分極するように構成することができ(例えば、副交感神経系の活性化を引き起こすのに必要とされるよりも低くなり得る)、その結果、新たな活動電位が副交感神経から誘発されることはない。脱分極低エネルギーパルスを含む第2の電気信号は、第1の電気信号がBATに印加される前にBATに印加することができ、したがって副交感神経を脱分極し、その結果、続いてBATに印加された第1の電気信号は副交感神経を活性化できない。第1及び第2の電気信号は交互に印加することができ、脱分極低エネルギーパルスが印加された副交感神経が第1の電気信号の印加に応答して活性化されないようにする助けとなる。
BATを神経支配する第1の神経タイプを活性化し、BATを神経支配する第2の神経タイプを阻害する別の例示的な実施形態では、電気信号と化学物質を用いてBATを神経調節することができる。例えば、電気信号は第1の神経タイプを標的にでき、化学物質は第2の神経タイプを標的にできる。別の例では、化学物質は第1の神経タイプを標的にでき、電気信号は第2の神経タイプを標的にできる。
1つの例示的な実施形態では、電気信号は第1の神経タイプを標的にでき、抗コリン薬の形態の(例えば、アトロピン等)化学物質は第2の神経タイプを標的にできる。抗コリン薬は、一般に中枢神経系及び末梢神経系において神経伝達物質であるアセチルコリンを遮断する物質であり、上述のように、副交感神経活動を抑制し、それによってBAT神経調節の有効性を改善するのに役立ちうる。抗コリン薬は、神経伝達物質であるアセチルコリンが神経細胞のその受容体に結合するのを選択的に遮断することによって、副交感神経のインパルスを阻害する薬物クラスである。抗コリン薬は、中枢神経系及び/又は末梢神経系のそれらの特定標的により抗ムスカリン薬、神経節遮断薬、及び神経筋遮断薬の3つのカテゴリーに分類される。
別の例示的な実施形態では、電気信号は第1の神経タイプを標的にでき、脱分極剤の形態にある化学物質は第2の神経タイプを標的にできる。これより、脱分極低エネルギーパルスを含む第2の電気信号に関して上述したものと同様に、脱分極剤は、電気信号が第1の神経タイプを刺激する間、第2の神経タイプの阻害を促進できる。
更に別の例示的な実施形態では、電気信号は第1の神経タイプを標的にでき、過分極剤の形態にある化学物質は第2の神経タイプを標的にできる。過分極低エネルギーパルスを含む第2の電気信号に関して上述したものと同様に、過分極剤は、電気信号が第1の神経タイプを刺激する間、第2の神経タイプの阻害を促進できる。
なおも別の例示的な実施形態では、電気信号は第1の神経タイプを標的にでき、化学物質は、第2の神経タイプの温度感受性を標的にすることによって第2の神経タイプを標的とするように構成することができる。つまり、第2の神経タイプは、温度に感受性である知覚神経を含むことができ、化学物質は、知覚神経の温度に影響を及ぼすことにより知覚神経を抑制するように構成することができる。
BATを神経支配している第1の神経タイプを活性化し、BATを神経支配している第2の神経タイプを阻害する別の例示的な実施形態では、第1の化学物質及び第2の化学物質を用いてBATを神経調節することができる。第1の化学物質は交感神経を刺激するように構成することができ、第2の化学物質は、別の神経タイプを阻害する、例えば、副交感神経及び/又は知覚神経を阻害するように構成することができる。例示的な実施形態では、第2の化学物質は第1の化学物質と異なるものであってよく、したがって第1及び第2の化学物質により異なる神経タイプを標的とすることを促進する。
BATを神経支配している第1の神経タイプを活性化し、BATを神経支配している第2の神経タイプを阻害する別の例示的な実施形態では、電気信号、化学物質、冷却及び光のうちの少なくとも1つを用いて第1の神経タイプを刺激することができ、異なる電気信号及び異なる化学物質のうちの少なくとも1つを用いて第2の神経タイプを刺激することができる。
本明細書に記載する装置は、1回使用後に廃棄されるように設計することができ、又は複数回用いられるように設計することもできる。しかしながら、いずれの場合も、本装置は、少なくとも1回の使用後に再使用のために再調整することができる。再調整には、装置の分解工程、それに続く特定の部品の洗浄工程又は交換工程、及びその後の再組立工程の任意の組み合わせを含むことができる。特に、装置は分解可能であり、装置の任意の数の特定の部品又は部分を、任意の組み合わせで選択的に交換するか又は取り外すことができる。特定の部分を洗浄及び/又は交換した後、装置を後の使用のために、再調整施設で、又は外科処置の直前に外科チームによって再組み立てすることができる。当業者であれば、装置の再調整が、分解、洗浄/交換、及び再組立のための様々な技術を利用できることを理解するであろう。かかる技術の使用、及び結果として得られる再調整された装置は、すべて本発明の範囲内にある。
好ましくは、本明細書に記載される発明は、使用の前に処理される。最初に、新しい又は使用済みの器具を入手し、必要であれば洗浄する。次いで器具を滅菌することができる。1つの滅菌技術では、器具は、プラスチックバッグ又はTYVEKバッグなど、閉鎖、密封された容器に入れられる。次に、容器及び器具を、γ線、X線、及び高エネルギー電子など、容器を透過することができる放射線照射野に置く。放射線は、器具上又は容器内の細菌を死滅させる。この後、滅菌された器具を滅菌容器内で保管することができる。密封された容器は、医療設備において開封されるまで器具を滅菌状態に保つ。
装置は滅菌されることが好ましい。これは、ベータ線又はガンマ線放射、酸化エチレン、蒸気、及び液浴(例えば、低温浸漬)などの当業者には周知の様々な方法によって行うことができる。内部回路を含む装置を滅菌する例示的な実施形態は、「System And Method Of Sterilizing An Implantable Medical Device」と題して2008年2月8日に出願された米国特許出願公開第2009/0202387に詳述される。装置は、インプラントされる場合、完全に密封されることが好ましい。これは、当業者に既知の様々な方法によって行うことができる。
当業者には、上述の実施形態に基づいた本発明の更なる特徴及び利点が認識されよう。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によって示される場合を除き、具体的に示され説明される内容により限定されるものではない。本明細書に引用されるすべての刊行物及び参照文献はそれらの全容を参照によって本明細書に明示的に援用するものである。
〔実施の態様〕
(1) 第1の神経調節因子を褐色脂肪組織(BAT)の蓄積部位(depot)に適用することであって、前記第1の神経調節因子の前記適用が前記BAT内の第1の神経タイプの活性化を引き起こすことで前記BATのエネルギー消費を増加させる、ことと、
前記第1の神経調節因子の前記適用と同時に前記BATの蓄積部位に第2の神経調節因子を適用することであって、前記第2の神経調節因子の前記適用が前記第1の神経タイプと異なる前記BAT内の第2の神経タイプを阻害する、ことと、を含む、医療方法。
(2) 前記第1の神経タイプが交感神経を含み、前記第2の神経タイプが副交感神経を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記第1の神経タイプが交感神経を含み、前記第2の神経タイプが知覚神経を含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記第2の神経調節因子の前記適用が、前記第1の神経調節因子の前記適用が開始されるよりも前に開始されることで前記第1の神経タイプが活性化されるよりも前に前記第2の神経タイプの阻害が開始される、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記第1の神経調節因子を適用することが、前記BATの蓄積部位に第1の電気信号を印加することを含み、前記第2の神経調節因子を適用することが、前記BATの蓄積部位に前記第1の電気信号とは異なる第2の電気信号を印加することを含む、実施態様1に記載の方法。
(6) 前記第1及び第2の神経調節因子の一方を適用することが、前記BATの蓄積部位に電気信号を印加することを含み、前記第1及び第2の神経調節因子の他方を適用することが、前記BATの蓄積部位に化学物質を送達することを含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記第1の神経調節因子を適用することが、前記BATの蓄積部位に第1の化学物質を送達することを含み、前記第2の神経調節因子を適用することが、前記BATの蓄積部位に前記第1の化学物質とは異なる第2の化学物質を送達することを含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記第1の神経調節因子を適用することが、前記BATの蓄積部位に電気信号を印加すること、前記BATの蓄積部位に化学物質を送達すること、前記BATの蓄積部位を冷却すること、及び前記BATの蓄積部位に光を照射することのうちの少なくとも1つを含み、前記第2の神経調節因子を適用することが、前記BATの蓄積部位に異なる電気信号を印加すること、及び前記BATの蓄積部位に異なる化学物質を送達することのうちの少なくとも一方を含む、実施態様1に記載の方法。
(9) 患者の褐色脂肪組織(BAT)の蓄積部位に近接する患者の交感神経系を神経調節することで前記BATを活性化して前記BATのエネルギー消費を増加させることと、
前記交感神経系を前記神経調節することと同時に、前記褐色脂肪組織の蓄積部位に近接する前記患者の副交感神経系を抑制することと、を含む、医療方法。
(10) 前記交感神経系を神経調節することが、前記BATを神経支配している交感神経を活性化し、前記副交感神経系を抑制することが、前記BATを神経支配している副交感神経を抑制し、前記副交感神経の各々が前記交感神経の各々よりも大きい径を有する、実施態様9に記載の方法。
(11) 前記副交感神経系の前記抑制が前記交感神経系の前記神経調節よりも前に開始されることで、前記交感神経系が神経調節されるよりも前に前記副交感神経系の抑制が開始される、実施態様9に記載の方法。
(12) 前記交感神経系を神経調節することが、前記患者に第1の電気信号を印加することを含む、実施態様9に記載の方法。
(13) 前記副交感神経系を抑制することが、前記患者に前記第1の電気信号とは異なる第2の電気信号を印加することを含む、実施態様11に記載の方法。
(14) 前記第1の電気信号の電流が、前記第2の電気信号の電流よりも10〜100倍大きい範囲にある、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記第2の電気信号が、前記第1の電気信号と比較してより低エネルギーの過分極パルス、及び前記第1の電気信号と比較してより低エネルギーの脱分極パルスのうちの一方を含む、実施態様13に記載の方法。
(16) 前記副交感神経系を抑制することが、前記患者に化学物質を適用することを含む、実施態様11に記載の方法。
(17) 前記交感神経系を神経調節することが、前記患者に第1の化学物質を投与することを含む、実施態様9に記載の方法。
(18) 前記副交感神経系を抑制することが、前記患者に前記第1の化学物質とは異なる第2の化学物質を投与すること、及び前記患者に電気信号を印加することのうちの一方を含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記交感神経系を神経調節することが、前記患者に電気信号を印加すること、前記患者に化学物質を投与すること、前記患者を冷却すること、及び前記患者に光を照射することのうちの少なくとも1つを含む、実施態様9に記載の方法。
(20) 褐色脂肪組織(BAT)の蓄積部位に近接する患者の組織に直接接触するように、かつ前記患者に第1及び第2の電気信号を同時に供給するように構成された少なくとも1つの電極であって、前記第1の電気信号が前記BAT内の第1の神経タイプの活性化を引き起こすことで前記BATのエネルギー消費を増加させるように構成され、前記第2の電気信号が前記第1の神経タイプとは異なる前記BAT内の第2の神経タイプを阻害するように構成されている、少なくとも1つの電極と、
前記少なくとも1つの電極と電子通信しており、かつ前記少なくとも1つの電極により供給される前記第1及び第2の電気信号を発生するように構成された少なくとも1つの信号生成器と、を備える、医療器具。

Claims (1)

  1. 褐色脂肪組織(BAT)の蓄積部位に近接する患者の組織に直接接触するように、かつ前記患者に第1及び第2の電気信号を同時に供給するように構成された少なくとも1つの電極であって、前記第1の電気信号が前記BAT内の第1の神経タイプの活性化を引き起こすことで前記BATのエネルギー消費を増加させるように構成され、前記第2の電気信号が前記第1の神経タイプとは異なる前記BAT内の第2の神経タイプを阻害するように構成されている、少なくとも1つの電極と、
    前記少なくとも1つの電極と電子通信しており、かつ前記少なくとも1つの電極により供給される前記第1及び第2の電気信号を発生するように構成された少なくとも1つの信号生成器と、を備え、
    前記第1の神経タイプが交感神経であり、
    前記第2の神経タイプが副交感神経又は知覚神経であり、
    前記第1の電気信号が前記BATに印加される前に、前記第2の電気信号が前記BATに印加されることで、前記第2の神経タイプでの新たな活動電位形成を防止するように構成されている、医療器具。
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