JP6665659B2 - 厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、厚鋼板およびその製造方法に関する。特に、脆性亀裂伝播停止特性(以下、アレスト性ともいう。)および溶接熱影響部(Heat Affected Zone:以下、「HAZ」という。)のCTOD特性に優れた厚鋼板およびその製造方法に関する。
船舶、海洋構造物、低温貯蔵タンク、ならびに、建築および土木構造物に代表される大型構造物に対しては、破壊に対する安全性を担保する必要がある。特に、脆性破壊がひとたび発生すると高速かつ長範囲にわたって破壊が進むため、環境および経済に甚大な影響を与えうる。
近年、コンテナ船では、海上輸送の高効率化を目的に、10000TEUを超えるような大型コンテナ船の需要が増加している。そのため、コンテナ船の重要部材である船体上部のアッパーデッキまたはハッチサイドコーミングに使用される鋼材は、高強度化および厚肉化が要求されている。一般的に、強度が高くなり、かつ、板厚が増加すると、脆性破壊の発生、および、伝播に対する抵抗は小さくなる。そのため、万が一、鋼材に亀裂が入った際にも、亀裂が停まる脆性亀裂伝播停止特性(BCA:Brittle Crack Arrest;以下、アレスト性ともいう。)、および、鋼材そのものに亀裂が入らないようにする脆性亀裂発生特性(CTOD:Crack Tip Opening Displacement)の両方の特性を併せ持つ鋼材を開発する必要がある。
例えば、特許文献1には、各組織の面積率および結晶粒径に相当する結晶粒界密度を規定し、さらに1/4t部の{100}面を有する組織分率、1/2t部の{110}面を有する組織分率を規定することで、良好なアレスト特性を担保した高強度厚鋼板が開示されている。
特許文献2では、ミクロ組織および表層で形成される組織の粒径および硬さ、ならびに、中心部の粒径を規定し、さらに各板厚位置での(100)面の面積率を規定することで、良好なアレスト特性を担保した高強度厚鋼板が開示されている。
特許文献3では、ミクロ組織および表層で形成される粗大粒の存在率、ならびに、中心部の粒径を規定し、さらに各板厚位置での(100)面の面積率を規定することで、良好なアレスト特性を担保した高強度厚鋼板が開示されている。
特許文献4では、ミクロ組織および板厚中心部の粒径を規定し、良好なアレスト特性を担保した厚鋼板が開示されている。厚鋼板の製造時には、板厚中心部の温度を制御しながら最適な圧下を与えることを特徴としている。
特許文献5では、表層および板厚中心部の結晶粒径、ならびに、集合組織を規定し、良好なアレスト特性を担保した厚手高強度鋼板が開示されている。
特許文献6では、ミクロ組織および表層の粗大なフェライトを抑制し、さらにセメンタイトのサイズを制御し、また、アレスト特性を満足するため必要な有効結晶粒径の最大値をNi量と板厚とから計算することにより、良好なアレスト特性を担保した厚手高強度鋼板が開示されている。厚鋼板の製造時にも同様に、Ni量と板厚とから必要な圧延温度を規定することを特徴としている。
特許文献7では、焼き戻し時の昇温速度、表面および内部の温度状態、ならびに、焼き戻し温度を規定することで、良好なアレスト特性を担保した厚手高強度鋼板の製造方法が開示されている。
特許文献8では、工業的に安定的かつ効率的な製造が可能な厚手高強度鋼板の製造方法であって、加速冷却後から焼き戻しまでの時間を規定することで、良好なアレスト特性を担保した厚手高強度鋼板の製造方法が開示されている。
特許文献9では、1次仕上圧延および2次仕上圧延において、最適な温度で最適な圧下を行うことで、良好なアレスト特性を担保した厚手高強度鋼板の製造方法が開示されている。
特許文献10では、比較的低温で圧延し、さらに仕上圧延後の鋼板の表面温度を制御して表層の結晶粒を微細化させることで、良好なアレスト特性を担保した厚手高強度鋼板の製造方法が開示されている。
特許文献11では、Mg、MnおよびAlからなる酸化物と、MnSとからなる、粒径0.6μm未満の複合介在物を鋼材中に1×10個/mm以上存在させることにより、旧オーステナイト粒の粗大化を抑制し、その結果、300kJ/cm以上の大入熱溶接をした場合であっても、優れた靱性を確保することができる鋼材が開示されている。
特許文献12では、鋼中に、MnS粒子の析出核となりやすいMn酸化物およびAl酸化物からなる、粒径0.1〜10μmの微小粒子を、鋼材断面積の1mmあたり30〜2000個分散させることにより、大入熱(200kJ/cm)で溶接を行った場合であっても、HAZ靱性の良好な厚鋼板が開示されている。
国際公開第13/150687号 特開2013−221190号公報 特開2013−221189号公報 特開2012−172258号公報 特開2011−214116号公報 特開2008−248382号公報 特開2011−52244号公報 特開2011−52243号公報 特開2008−261030号公報 特開2015−25205号公報 特開2014−5527号公報 特開平5−271864号公報
一般的に、板厚が増加すると板厚中央部の焼入れ性が低下するため、必要な強度が得られない。板厚が70mm以下の領域では、冷却速度を増加させることで焼入れ性不足を補うことができる。しかしながら、板厚が70mmを超えると、板厚中央部の冷却速度は板厚に依存して決まる。そのため、成分を最適化することで強度を担保しつつ、さらに良好なアレスト特性を付与させるためのミクロ組織、ならびに、加熱および圧延条件を見出す必要があった。
アレスト特性の確保に関しては、一般的に、結晶粒の微細化を推進することが望ましいとされている。しかしながら、板厚が70mmを超えると、従来知見されている結晶粒径を実現させるためには、成分および製造条件を調整するだけでアレスト性を確保することは難しく、表層から板厚内部に至るまでのミクロ組織を精緻に制御する必要があった。
近年、海洋構造物などの溶接構造物に用いられる厚鋼板は、厚肉で、かつ、強度が高いことが求められている。しかしながら、特に、板厚が50mm以上の厚鋼板では、溶接時の入熱が増加するため、HAZの低温における靱性を確保することが困難であるという問題があった。したがって、HAZの靱性を確保するためには、破壊起点となりやすい組織形成の抑制を図る必要があった。
本発明は、このような現状に鑑み、HAZの低温靱性に優れ、かつ、アレスト性に優れた、板厚が70mmを超える厚鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、下記の知見を得るに至った。
まず、鋼板の高強度厚肉化にあたり、成分の見直しを行った。
海洋構造物に用いられる鋼材をベースに、強度を上げる成分および靭性の影響について、板厚が100mmの鋼材を用いて検討した。Ni、MoおよびVについて、添加量および靭性の関係を調査したところ、Niは添加量によらず靭性の低下がみられなかったが、MoおよびVは添加量が多くなると著しく靭性が低下した。このことから、極厚の鋼材に関しては、Niが強度および靭性の向上に最も適した元素であることが分かった。ただし、MoおよびVも、添加量を制限すれば、強度を上昇させるだけでなく、一定の靭性を確保できることが分かった。なお、vTrsが−80℃までを許容値とした場合、Mo含有量の上限値は0.35%、V含有量の上限値は0.15%となる。
次に、板厚が70〜100mmの各種成分が添加された鋼材を用いて、EH47の強度規格を満足するために必要な炭素当量(Ceq.)および各板厚の中心部の強度の関係について、圧延条件およびテンパー条件を変えて調査した。その結果、板厚が70mmの場合にはCeq.を0.40以上とすること、板厚が100mmの場合にはCeq.を0.47以上とすることで、EH47の強度規格を満足できることが分かった。また、Ceq.を0.52以上とすると、必要以上に強度が高くなり、靭性が低下することが分かった。
さらに、本発明者らは、板厚が70mmを超える厚鋼板において、アレスト特性を確保するために、組織およびその粒径に着目した。一般的に、結晶粒径を小さくすれば、アレスト特性は向上すると言われている。また、板厚が70mmを超える厚鋼板では、鋼板内部を急速に冷却することが困難であるため、鋼板内部にフェライト組織が必ず発現する。そこで、フェライト−ベイナイト組織からなる板厚が70mmを超える厚鋼板について、結晶粒径およびフェライト分率の関係について調査した。
図1は、フェライト分率と平均有効結晶粒径との関係を示すグラフである。フェライト分率の増加により有効結晶粒径が微細化されることがわかる。良好なアレスト特性を得るためには、フェライト分率を増加させることが有効である。しかしながら、フェライト分率の過度の増加は、強度の低下をもたらす。そのため、厚肉高強度材においては、フェライト分率の増加による有効結晶粒径の微細化は有効でない。そこで、ベイナイト粒径と有効結晶粒径との関係について着目した。図2は、ベイナイト粒径と平均有効結晶粒径との関係を示すグラフである。有効結晶粒径は、ベイナイト粒径の微細化により微細化する。よって、鋼板強度を満たすフェライト分率を一定量確保し、かつ、ベイナイト粒径を微細化できれば、著しくアレスト特性を向上できると考えた。そこで、ベイナイト組織の微細化について、同一組成のスラブ厚305mmの材料を用いて、CR率について検討した。その結果、CR率の増加では、顕著にベイナイト粒径が微細化しなかった。これは、CR率を確保するためには、再結晶域で行われる1次圧延の圧下量を確保する必要があるが、前記圧下量が確保できなかったため、オーステナイト粒が微細化せず、CR率上昇の効果が得られなかったためだと考えられる。そのため、先ほどと同一のスラブを用いて、加熱温度の影響について検討した。図3は、加熱温度と、板厚中央部のベイナイトおよびフェライトの平均粒径との関係を示すグラフである。図3から分かるように、加熱温度を変えて80mmの厚鋼板を作製したところ、フェライト粒径はほぼ一定であるが、平均のベイナイト粒径は、加熱温度の低下とともに著しく微細化された。
そして、同一組成のスラブを用い、製造条件を変えて板厚が80mmの厚鋼板を作製したところ、フェライト分率、フェライト粒径、および、有効結晶粒径が変わらないにもかかわらず、アレスト特性が大きく異なる場合があった。例えば、1050℃でスラブ加熱を行い、仕上圧延を730℃または780℃で行った厚鋼板については、フェライト分率およびフェライト粒径はほぼ変わらなかった。また、有効結晶粒径についても、780℃仕上圧延の厚鋼板で、19.0μm(板厚をtとするときの1/4t部、以下、単に「1/4t」とする。)、24.0μm(板厚をtとするときの1/2t部、以下、単に「1/2t」とする。)、730℃仕上圧延の厚鋼板で17.6μm(1/4t)、22.8μm(1/2t)とさほど変わらなかった。しかしながら、アレスト特性については、−10℃におけるがKca値がそれぞれ596N/mm1.5、7007N/mm1.5であり、一桁異なる結果となった。そこで、これらの厚鋼板について詳細に調べたところ、厚鋼板の表層部の組織が大きく異なることが判明した。高アレスト特性が得られた730℃仕上圧延の厚鋼板では、組織が圧延方向に沿って扁平な組織となっており、この組織が初期段階で厚鋼板に亀裂が入るのを防止しているものと考えられる。
厚鋼板を1400℃近傍まで加熱すると、HAZでは、結晶粒成長により粗大なγ粒が成長する。こうした粗大なγ粒の成長は、HAZの靱性低下の一因となる。HAZ靱性を確保する手段としては、結晶粒を微細化させることにより、破壊単位を減少させることが有効である。結晶粒を微細化させる手法として、従来、(i)旧γ粒界成長をTiNなどで抑制するピン留め効果を活用する手法、および、(ii)旧γ粒内に存在する介在物を起点に微細な粒内フェライトを成長させ、結晶粒微細化を図る手法が提案されている。
前記(i)の手法については、製鋼過程においてTi、Al、OおよびNのバランスを制御する事により、微細なTiN粒子を鋼中に分散させることにより、TiN粒子がHAZにおいてγ粒成長を抑制し(ピン留め効果)、粗大なγ粒成長を抑制する事が可能となることを見出した。
一方、TiNは、1400℃近傍で溶解しやすくなるため、ピン留め効果が低下し、その結果、粗大なγ粒が成長しやすくなる。そこで、本発明では前記(ii)の手法も併せて活用する。溶接時に旧γ粒内にて粒内フェライトを効果的に成長させるためには、粒内フェライト生成核となる介在物の制御が必須である。特に、板厚が50mm以上の厚鋼板では、表面および内部での冷却速度の差異により、板厚方向での介在物組成および個数制御が困難であるため、これらを制御する必要がある。そこで、粒内フェライト成長のメカニズムについて解明したところ、以下のことが分かった。
[1]溶接冷却時に、介在物周囲にMnSが複合析出する際に形成されるMn濃度傾斜により、マトリックスから介在物内部へとMnが拡散する駆動力が生じる。
[2]Ti系酸化物内部に存在する原子空孔へ、Mnが吸収される。
[3]介在物周囲にMn濃度が少なくなるMn欠乏層が形成され、この部分のフェライト成長開始温度が上昇する。
[4]冷却時に、介在物からフェライトが優先成長する。
これらを前提として、本発明者らは、粒内フェライト核となる介在物のMnS複合量が、粒内フェライト成長に影響を及ぼすという知見を得た。すなわち、複合したMnSが多いと、介在物周囲に、より大きなMn濃度勾配を形成することにより、Mn拡散駆動力を増加させ、その結果、Mn欠乏層を形成しやすくなる。一方、複合したMnSが少ないと、介在物周囲にMn濃度勾配が形成されにくくなり、その結果、Mn欠乏層が形成されにくくなる。以上のメカニズムに基づき、本発明では、介在物に複合するMnS量および個数密度を制御することにより、効果的に粒内フェライトを析出させるに至った。
本発明は、上記の知見を基礎としてなされたものであり、その要旨は、下記に示す厚鋼板およびその製造方法にある。
(1)板厚が70mmを超える厚鋼板であって、
化学組成が、質量%で、
C:0.04〜0.12%、
Si:0.05〜0.50%、
Mn:1.30〜2.20%、
P:0.020%以下、
S:0.0010〜0.0100%、
Cu:0.05〜1.00%、
Ni:0.05〜1.50%、
Nb:0.005〜0.050%、
Ti:0.005〜0.050%、
sol.Al:0.005%以下、
O:0.0010〜0.0050%、
N:0.0010〜0.0100%以下、
Cr:0〜0.50%、
Mo:0〜0.35%、
V:0〜0.15%、
B:0〜0.0030%、
Ca:0〜0.010%、
Mg:0〜0.0050%、
REM:0〜0.0050%、ならびに、
残部:Feおよび不純物であり、
下記式(i)で示されるCeq.が0.40〜0.52であり、かつ、
下記(a)〜(f)を満足する、厚鋼板。
(a)表層5mm以内の組織は圧延方向に伸長した組織を形成し、この組織の平均アスペクト比は1.5以上である。
(b)鋼板内部のミクロ組織はフェライトおよびベイナイトの複合組織を有し、板厚の1/4t部のフェライト分率が15.0〜40.0%、板厚の1/2t部のフェライト分率が10.0〜40.0%であり、かつ、各板厚位置において、フェライトおよびベイナイト以外の組織を面積%で合計5%未満(0%を含む)有する。
(c)板厚の1/4t部の平均ベイナイト粒径が25.0μm以下、かつ、板厚の1/2t部の平均ベイナイト粒径が35.0μm以下である。
(d)板厚の1/4t部の平均有効結晶粒径が22.0μm以下、かつ、板厚の1/2t部の平均有効結晶粒径が32.0μm以下である。
(e)鋼中に、Ti酸化物の周囲にMnSが存在する複合介在物を含み、前記複合介在物の断面における前記MnSの面積率が、10%以上90%未満であり、前記複合介在物の界面における前記MnSの割合が、10%以上である。
(f)粒径0.5〜5.0μmの前記複合介在物の面分散密度が、10〜100個/mmである。
Ceq.=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5・・・(i)
(2)前記化学組成が、質量%で、
Cr:0.05〜0.50%、
Mo:0.05〜0.35%、および、
V:0.005〜0.15%、
から選択される1種以上を含有する、前記(1)に記載の厚鋼板。
(3)前記化学組成が、質量%で、
B:0.0003〜0.0030%、
を含有する、前記(1)または(2)に記載の厚鋼板。
(4)前記化学組成が、質量%で、
Ca:0.0005〜0.010%、
Mg:0.0005〜0.0050%、および、
REM:0.0005〜0.0050%、
から選択される1種以上を含有する、前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の厚鋼板。
(5)前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の厚鋼板を製造する方法であって、
RHでのTi添加前の酸素ポテンシャルが10〜60ppmに制御され鋳造された前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の組成を有する鋼片を用いて、板厚中心部をAc〜1000℃に加熱し、
板厚中心部がAc〜1000℃の温度域において、累積圧下率を15.0〜60.0%、各パスの平均圧下率を3.5%以上で粗圧延を行った後、
板厚中心部の温度がAr〜950℃で累積圧下率を40%以上、各パスの平均圧下率を5.0%以上で仕上圧延を行い、
さらに、この仕上圧延の最終パス開始温度を板厚表面でAr−20℃〜Ar+30℃として圧延を完了し、
次いで、加速冷却を開始し、表面温度が550℃以下まで加速冷却を行う、厚鋼板の製造方法。
(6)前記加速冷却終了後、350〜650℃の温度で焼戻し処理を行う、前記(5)に記載の厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、HAZの低温靱性に優れ、かつ、アレスト性に優れた、板厚が70mmを超える厚鋼板およびその製造方法を提供することができる。
図1は、フェライト分率と平均有効結晶粒径との関係を示すグラフである。 図2は、ベイナイト粒径と平均有効結晶粒径との関係を示すグラフである。 図3は、加熱温度と、板厚中央部のベイナイトおよびフェライトの平均粒径との関係を示すグラフである。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。
(A)化学組成について
各元素の作用効果と、含有量の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.04〜0.12%
Cは、鋼材の強度を高める元素である。C含有量が0.04%未満では、この効果が得られない。一方、C含有量が0.12%を超えると、強度の上昇により靭性の低下、溶接性の劣化、および、溶接熱影響部(HAZ:Heat Affected Zone)靭性および継手CTOD特性が劣化する。また、アレスト特性が低下する。したがって、C含有量は0.04〜0.12%とする。C含有量は、0.05%以上であることが好ましく、0.09%以下であることが好ましい。
Si:0.05〜0.50%
Siは、脱酸元素および強度に有効な元素である。Si含有量が0.05%未満では、これらの効果が得られない。一方、Si含有量が0.50%を超えると、HAZが硬化することにより、HAZ靭性および継手CTOD特性が低下する。したがって、Si含有量は0.05〜0.50%とする。Si含有量は、0.10%以上であることが好ましく、0.30%以下であることが好ましい。
Mn:1.30〜2.20%
Mnは、鋼の焼入れ性を高め、鋼材の強度および靭性を高める元素である。Mn含有量が1.30%未満では、これらの効果が得られない。一方、Mn含有量が2.20%を超えると、中心偏析が顕著となり板厚中心部の靭性が顕著に低下する。また、アレスト特性が低下する。したがって、Mn含有量は1.30〜2.20%とする。Mn含有量は、1.60%以上であることが好ましく、2.00%以下であることが好ましい。
P:0.020%以下
Pは不純物元素であり、鋼材の機械的特性を低下させ、特に、低温靭性を低下させる。したがって、P含有量は0.020%以下とする。P含有量は0.015%以下であることが好ましく、なるべく低い方がより好ましい。
S:0.0010〜0.0100%
Sは、Mnと結合してMnSを形成する。MnSを複合析出させるため、S含有量は0.0010%以上とする。一方、Sが過剰に含まれると、粗大な単体MnSの析出につながり、靱性低下の要因となる。そのため、S含有量は0.0100%以下とする。MnS複合析出およびHAZ靱性および継手CTOD特性確保の観点から、S含有量は0.0020%以上であることが好ましく、0.0050%以下であることが好ましい。
Cu:0.05〜1.00%
Cuは、鋼に固溶して靭性を損なわずに強度を高めることができ、アレスト特性を改善する元素である。Cu含有量が0.05%未満では、これらの効果が得られない。一方、Cu含有量が1.00%を超えると、靭性の低下、および、析出物増加によりアレスト特性の劣化をきたし、さらに、熱間での加工の際、表面に微小な割れを発生させる。したがって、Cu含有量は0.05〜1.00%とする。Cu含有量は0.20%以上であることが好ましく、0.50%以下であることが好ましい。
Ni:0.05〜1.50%
Niは、鋼に固溶して靭性を損なわずに強度を高めることができ、アレスト特性を改善する元素である。Ni含有量が0.05%未満では、これらの効果が得られない。一方、Niは高価な元素であり、過剰添加はコストの上昇を招く。したがって、Ni含有量は0.05〜1.50%とする。Ni含有量は、0.30%以上であることが好ましく、1.10%以下であることが好ましい。
Nb:0.005〜0.050%
Nbは、本発明の鋼板において重要な元素である。Nbは、微量の添加により、未再結晶オーステナイト域を拡大し、組織微細化による強度およびアレスト特性の改善に寄与する。さらに、変態強化および析出強化に寄与する。Nb含有量が0.005%未満では、上記効果が得られない。一方、Nb含有量が0.050%を超えると、粗大なNb析出物が生成し、アレスト特性が劣化するだけでなく、HAZ靭性および継手CTOD特性を著しく劣化させる。したがって、Nb含有量は0.005〜0.050%とする。Nb含有量は、0.007%以上であることが好ましく、0.020%以下であることが好ましい。
Ti:0.005〜0.050%
Tiは、本発明の鋼板において重要な元素である。Tiは、Ti系酸化物を形成し、粒内フェライトの生成核として作用する。さらに、Ti系酸化物の形成後に残ったTiは、TiNを形成し、鋼片の加熱時にオーステナイト粒径が大きくなることを抑制する。オーステナイト粒径が大きくなると、変態後のベイナイトの粒径も大きくなる。Ti含有量が0.005%未満の場合、粒内フェライトの生成核としてのTi系酸化物の面分散密度が減少し、HAZ靭性および継手CTOD特性が低下するとともに、所望のベイナイト粒径が得られない。そのため、Ti含有量を0.005%以上とする。一方、Ti含有量が0.050%を超えると、Ti系酸化物の面分散密度の増加および粗大なTi系酸化物が増加し、HAZ靭性および継手CTOD特性が低下するとともに、粗大なTiCが生成して靭性およびアレスト特性が低下する。そのため、Ti含有量は、0.050%以下とする。Ti含有量は0.007%以上であることが好ましく、0.020%以下であることが好ましい。
sol.Al: 0.005%以下
sol.Alは、不純物元素であり、Al含有量の増加により、Ti系酸化物の生成が抑制される。その結果、HAZ靭性および継手CTOD特性が低下する。そのため、sol.Al含有量は0.005%以下とする。
O:0.0010〜0.0050%
Oは、Ti系酸化物生成に必須の元素である。充分な介在物の面分散密度を得るため、O含有量は0.0010%以上とする。Oが過剰に含有されると、破壊起点となり得る粗大な酸化物が形成されやすくなる。そのため、O含有量は0.0050%以下とする。粗大な介在物形成を抑制する観点から、O含有量は、0.0030%以下であることが好ましい。
N:0.0010〜0.0100%
Nは、Tiと結合してTiNを形成し、オーステナイト粒の粗大化を抑制する作用を有する元素である。N含有量が0.0010%未満では、この効果が得られない。一方、N含有量が0.0100%を超えると、不純物として存在するため、靭性の低下を招く。その結果、アレスト特性を劣化させる。したがって、N含有量は0.0010〜0.0100%とする。N含有量は、0.0020%以上であることが好ましく、0.0060%以下であることが好ましい。
Cr:0〜0.50%
Crは、鋼材の強度を高める元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。Cr含有量が0.50%を超えると、鋼材の強度増加に伴う靭性の低下が顕著となる。したがって、Cr含有量は0.50%以下とする。一方、Cr含有量が0.05%未満では、鋼材の強度を充分に高めることができない場合がある。したがって、Cr含有量は0.05%以上であることが好ましい。
Mo:0〜0.35%
Moは、鋼材の強度を高める元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。Mo含有量が0.35%を超えると、鋼材の強度増加に伴う靭性の低下が顕著となる。また、アレスト特性が低下する。したがって、Mo含有量は0.35%以下とする。一方、Mo含有量が0.05%未満では、鋼材の強度を充分に高めることができない場合がある。したがって、Mo含有量は0.05%以上であることが好ましい。
V:0〜0.15%
Vは、炭窒化物を形成し、鋼材を析出強化する作用を有するため、必要に応じて含有させてもよい。V含有量が0.15%を超えると、析出強化に伴う靭性の低下が顕著となる。したがって、V含有量は0.15%以下とする。一方、V含有量が0.005%未満では、鋼材を充分に析出強化できない場合がある。したがって、V含有量は0.005%以上であることが好ましい。
B:0〜0.0030%
Bは、微量の添加で焼入れ性を高める元素であり、必要に応じて含有させてもよい。B含有量が0.0030%を超えると、効果が飽和するとともに、HAZの靭性を低下させる。したがって、B含有量は0.0030%以下とする。一方、B含有量が0.0003%未満では、焼入れ性を安定して高めることができない場合がある。したがって、B含有量は0.0003%以上であることが好ましい。
Ca:0〜0.010%
Caは、HAZ靭性を向上させる元素であり、必要に応じて含有させてもよい。Ca含有量が0.010%を超えると、HAZ靭性および溶接性が悪化する。そのため、Ca含有量は0.010%以下とする。一方、Ca含有量が0.0005%未満では、HAZ靭性を安定して向上させることができない場合がある。したがって、Ca含有量は0.0005%以上であることが好ましい。
Mg:0〜0.0050%
Mgは、HAZ靭性を向上させる元素であり、必要に応じて含有させてもよい。Mgが0.0050%を超えると、HAZ靭性および溶接性が悪化する。そのため、Mg含有量は0.0050%以下とする。一方、Mg含有量が0.0005%未満では、HAZ靭性を安定して向上させることができない場合がある。したがって、Mg含有量は0.0005%以上であることが好ましい。
REM:0〜0.0050%
REMは、HAZ靭性を向上させる元素であり、必要に応じて含有させてもよい。REMが0.0050%を超えると、HAZ靭性および溶接性が悪化する。そのため、REM含有量は0.0050%以下とする。一方、REM含有量が0.0005%未満では、HAZ靭性を安定して向上させることができない場合がある。したがって、REM含有量は0.0005%以上であることが好ましい。
本発明の厚鋼板は、上記の元素を含有し、残部はFeおよび不純物である化学組成を有する。「不純物」とは、鋼を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料、製造工程の種々の要因によって混入する成分であって、本発明に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
Ceq.:0.40〜0.52
鋼板の炭素当量Ceq.は、下記式(i)で示される。Ceq.が0.40未満では、板厚中心部まで焼きが入らず、降伏強度460MPa以上の高強度が得られない。また、靭性が低下することもある。一方、Ceq.が0.52を超えると、必要な強度を容易に得ることができるが、靭性の低下および溶接性の低下が起こるとともに、コストも増加する。また、アレスト特性が低下する。したがって、Ceq.は0.40〜0.52とする。
Ceq.=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5・・・(i)
(B)ミクロ組織
以下に示す(a)〜(d)の組織規定のいずれか一つでも満足しない場合、良好な強度およびアレスト特性が得られない。
(a)表層5mm以内の組織は圧延方向に伸長した組織を形成し、この組織の平均アスペクト比は1.5以上である。
鋼板表層5mm以内のL断面に形成される組織の短軸と長軸の比であるアスペクト比の平均を1.5以上としなければならない。鋼板表層5mm以内のL断面に形成される組織のアスペクト比を1.5以上にすることは、本発明で良好なアレスト特性を得るのに最も重要な因子の一つである。前記アスペクト比が1.5未満の場合、アレスト特性が著しく低下する。前記アスペクト比が1.5以上であると、シアリップの形成が良好となり、アレスト特性が顕著に改善される。本発明の鋼板は、板厚が70mmを超えるため、表層組織は内部組織と異なる傾向がある。特に規定はしないが、表層組織は、フェライト、ベイナイト、マルテンサイト、焼戻しベイナイトおよび焼戻しマルテンサイトのいずれか1種またはこれらの混合組織で形成されることが好ましい。
(b)鋼板内部のミクロ組織はフェライトおよびベイナイトの複合組織を有し、板厚の1/4t部のフェライト分率が15.0〜40.0%、板厚の1/2t部のフェライト分率が10.0〜40.0%であり、かつ、各板厚位置において、フェライトおよびベイナイト以外の組織を面積%で合計5%未満(0%を含む)有する。
鋼板に良好な強度を付与するために、本発明ではフェライトおよびベイナイトの組織分率を調整する必要がある。本発明の鋼板は、基本的にフェライトおよびベイナイトの複合組織からなる。本発明の鋼板の製造にあたっては、焼戻しを行う場合があるが、ベイナイトおよび焼戻しベイナイト、マルテンサイトおよび焼戻しマルテンサイトを区別せずに扱ってよい。
また、前記組織分率は、アレスト特性にも影響する。EBSDを用いてImage Quality像と15°以上の方位差を有する境界を粒界と定義したGrain Boundary像を重ね合わせてベイナイト組織を評価したところ、ベイナイトに該当する組織はフェライト組織に比べて粗大な結晶粒を呈することが分かった。このことから、フェライトおよびベイナイトの組織分率は、鋼板の後述する有効結晶粒径に影響を与える一つの要素となる。強度を付与するとともに、適切に有効結晶粒径を制御してアレスト特性を向上させるためには、板厚の1/4t部のフェライト分率を15.0〜40.0%、板厚の1/2t部のフェライト分率を10.0〜40.0%とする必要がある。板厚の1/4t部および板厚の1/2t部でそれぞれフェライト組織分率を規定したのは、板厚が70mmを超えると、圧延時のオーステナイト粒径および蓄積される歪み量が、板厚の1/4t部と板厚の1/2t部とで大きく異なるためである。
なお、鋼板内部のミクロ組織は、各板厚位置において、フェライトおよびベイナイト以外の組織を面積%で合計5%未満(0%を含む)有する。フェライトおよびベイナイト以外の組織としては、パーライト、マルテンサイト、島状マルテンサイト(MA)などが挙げられる。
以上、組織分率について示したが、強度およびアレスト特性は各組織の状態にも依存するため、さらに組織について以下の要件を満足する必要がある。
(c)板厚の1/4t部の平均ベイナイト粒径が25.0μm以下、かつ、板厚の1/2t部の平均ベイナイト粒径が35.0μm以下である。
板厚の1/4t部および1/2t部の平均ベイナイト粒径は、それぞれ25.0μm以下、35.0μm以下としなければならない。ベイナイト粒径が前記値を超える場合、有効結晶粒径が顕著に微細化されず、良好なアレスト特性が得られない。ベイナイト粒径は微細化するほどアレスト特性が良好となる。しかしながら、70mmを超える板厚の場合、ベイナイト粒径の微細化を達成するには、低温で圧下率を高くした圧延を行わなければならず、圧延装置に負担がかかり、製造が困難になるため工業的でない。ベイナイト粒径の下限値は規定しないが、本発明の製造方法により製造する場合には、1/4t部および1/2t部の平均ベイナイト粒径は、それぞれ、実質的に7.5μm以上、15.0μm以上となる。なお、板厚の1/4t部と板厚の1/2t部でそれぞれ平均ベイナイト粒径を規定した理由は、板厚が70mmを超えると、圧延時のオーステナイト粒径および蓄積される歪み量が、板厚の1/4t部と板厚の1/2t部とで大きく異なるためである。
(d)板厚の1/4t部の平均有効結晶粒径が22.0μm以下、かつ、板厚の1/2t部の平均有効結晶粒径が32.0μm以下である。
板厚の1/4t部および1/2t部の有効結晶粒径の平均値は、それぞれ22.0μm以下、32.0μm以下としなければならない。有効結晶粒径は、良好なアレスト特性を得るのに最も重要な因子であり、微細化するほどアレスト特性が良好となる。そのため、各板厚位置における平均有効結晶粒径が前記値を超える場合、良好なアレスト特性が得られない。
70mmを超える板厚の場合、有効結晶粒径を微細化するには、低温で圧下率を高くした圧延を行わなければならず、圧延装置に負担がかかり製造が困難になるため工業的でない。平均有効結晶粒径の下限値は規定しないが、本発明の製造方法により製造する場合には、1/4t部および1/2t部の平均有効結晶粒径はそれぞれ、実質的に5.0μm以上、10.0μm以上となる。なお、板厚の1/4t部と板厚の1/2t部でそれぞれ平均有効結晶粒径を規定した理由は、板厚が70mmを超えると、圧延時のオーステナイト粒径および蓄積される歪み量が、板厚の1/4t部と板厚の1/2t部とで大きく異なるためである。
(C)複合介在物
本発明の厚鋼板は、鋼中に、Ti酸化物の周囲にMnSが存在する複合介在物を含む。
複合介在物の断面におけるMnSの面積率:10%以上90%未満
本発明では、任意の切断面に現出した複合介在物を分析し、その複合介在物の断面積におけるMnSの面積率を測定することにより、複合介在物中のMnS量を規定している。複合介在物の断面におけるMnSの面積率が10%未満であると、複合介在物中のMnS量が少なく、充分なMn欠乏層を形成できない。その結果、粒内フェライトの生成が困難となる。一方、複合介在物の断面におけるMnSの割合が90%以上であると、複合介在物がMnS主体となり、Ti系酸化物の占める割合が低下する。その結果、Mn吸収能が低下し、充分なMn欠乏層を形成できないため、粒内フェライトの生成が困難となる。
複合介在物の界面におけるMnSの割合:10%以上
MnSは、複合介在物の周囲からMnを吸収する必要があるため、複合介在物の界面に存在する必要がある。複合介在物の界面におけるMnSの割合が10%未満であると、複合介在物の周囲から充分にMnを吸収できないため、Mn欠乏層を形成できない。その結果、粒内フェライトの生成が困難となる。
複合介在物の粒径:0.5〜5.0μm
複合介在物の粒径が0.5μm未満では、複合介在物の周囲から吸収できるMn量が少なく、その結果、粒内フェライトの生成に必要なMn欠乏層の形成が困難となる。一方、複合介在物の粒径が5.0μmより大きいと、複合介在物が破壊の起点となる。
粒径0.5〜5.0μmの複合介在物の面分散密度:10〜100個/mm
安定した粒内フェライトを生成させるためには、各複合介在物が旧γ内に少なくとも1つ程度含まれる必要がある。そのため、複合介在物の面分散密度は、10個/mm以上とする。一方、複合介在物が過剰に多い場合は、破壊起点となりやすい。そのため、複合介在物の面分散密度は、100個/mm以下とする。
(D)製造方法
鋳造工程:RHでのTi添加前のOxpが10〜60ppm
組織微細化に有効な介在物は、製鋼工程のRH→CCにかけての凝固過程にて、鋼中に微細分散する。効果的に介在物を分散させるためには、RH前にArガスを上部より溶鋼内に吹き込むバブリング処理を行い、溶鋼表面のスラグと溶鋼とを反応させることにより、スラグ内のトータルFe量を調整し、溶鋼内の酸素ポテンシャルOxpを10ppm以上、60ppm以下の範囲に制御する必要がある。バブリング処理後、RHでの成分調整時にAlを添加せずTiを添加する。これにより、Ti酸化物が鋼中に微細分散する。
加熱温度:Ac〜1000℃
加熱温度は、板厚中心部の温度を基準としてAc〜1000℃とする。板厚が70mmを超える厚肉材の場合、鋼板の表面と板厚中心部とでは温度差が発生するため、管理温度を表面にしてしまうと、板厚中心部の温度が低下していないにも関わらず次工程に進んでしまう。その結果、必要な強度、靭性およびアレスト特性を満足できない恐れがある。そのため、加熱温度は、板厚中心部の温度を基準とする。加熱温度が1000℃を超えると、加熱γ粒が粗大化するため、アレスト特性を得るための微細な組織を得ることが困難になる。一方、加熱温度がAc℃未満であると、完全に溶体化されないため、最終的なアレスト特性が劣化する場合がある。また、圧延における荷重が高くなりすぎるため、最適な圧延荷重での圧延が困難となる。加熱温度は、900℃以上であることが好ましく、980℃以下であることが好ましい。
粗圧延:板厚中心部がAc〜1000℃の温度域において、累積圧下率が15.0〜60.0%、各パスの平均圧下率が3.5%以上
粗圧延(一次圧延)の温度域は、板厚中心部の温度を基準としてAc〜1000℃の範囲とする。板厚中心部の温度を基準とするのは、前記加熱温度において板厚中心部の温度を基準とした理由と同じである。粗圧延の温度域が1000℃を超えると、オーステナイト粒が大きくなる場合がある。一方、粗圧延の温度域がAc℃未満であると、完全に溶体化されないため最終的なアレスト特性が劣化する場合がある。また、圧延における荷重が高くなりすぎるため、最適な圧延荷重での圧延が困難となり、鋳造時に生成したポロシティなどの内部欠陥の影響を低減できない恐れがある。また、累積圧下率は15.0%以上とする。累積圧下率が15.0%未満であると、鋳造時に生成したポロシティなどの内部欠陥の影響を低減できないだけでなく、製品に必要な鋼材の幅が得られない。粗圧延における累積圧下率が60.0%を超えると、再結晶オーステナイトの微細化、および、一部オーステナイトへの圧延ひずみの導入が進行するが、次いで行う仕上圧延での累積圧下量を確保できなくなる。そのため、粗圧延における累積圧下率は60.0%以下とする。また、各パスの平均圧下率は、3.5%以上とする。各パスの平均圧下率が3.5%未満であると、鋳造時に生成したポロシティなどの内部欠陥の影響を低減できないだけでなく、パス数が増加することにより、生産性が低下する。各パスの平均圧下率の上限は特に設けないが、各パスでの平均圧下率が10.0%を超えると、再結晶オーステナイトが粗大化する場合がある。そのため、各パスの平均圧下率は、10.0%以下であることが好ましい。また、各パスの平均圧下率は、4.0%以上であることが好ましい。
仕上圧延:板厚中心部の温度がAr〜950℃、累積圧下率が40%以上、各パスの平均圧下率が5.0%以上
仕上圧延(二次圧延)の温度域は、板厚中心部の温度を基準としてAr〜950℃とする。板厚中心部の温度を基準とするのは、前記加熱温度において板厚中心部の温度を基準とした理由と同じである。仕上圧延の温度域が950℃を超えると、オーステナイトの扁平が得られず、冷却後に微細な組織が得られない。一方、仕上圧延の温度域がAr点未満であると、フェライトおよびオーステナイトの二相域圧延となり、表層および1/4t部で粗大なフェライトが多数生成し、アレスト特性が得られなくなる。また、累積圧下率が40%未満であると、CR(制御圧延)の効果が不充分となり、微細な組織が得られなくなる。そのため、累積圧下率は40%以上とする。累積圧下率の上限値は特に設けないが、板厚が70mmを超えると、仕上圧延で65%を超える累積圧下率を確保しようとすると、粗圧延での累積圧下率を確保できなくなる。そのため、累積圧下率は65%以下であることが好ましい。また、各パスの平均圧下率は5.0%以上とする。各パスの平均圧下率が5.0%未満であると、鋼板内部まで圧延歪みが導入されず、微細な組織が得られないだけでなく、パス回数が増加し生産性が低下する。
仕上圧延の最終パス開始温度:板厚表面でAr−20℃〜Ar+30℃
仕上圧延の最終パス開始温度は、板厚表面の温度でAr−20℃〜Ar+30℃とする。仕上圧延の最終パス開始温度がAr+30℃を超えると、板厚表面5mm以内にアスペクト比が1.5以上の組織が形成されない。一方、仕上圧延の最終パス開始温度がAr−20℃未満であると、板厚表面5mmを超える領域にもアスペクト比が1.5以上の組織が形成され、アレスト特性が低下する。
加速冷却:仕上圧延完了後に加速冷却を開始し、表面温度が550℃以下まで加速冷却
加速冷却は、仕上圧延の完了後、加速冷却を開始する。強度および靭性向上の観点から、加速冷却は、圧延完了後から20℃以上温度が低下する前に開始することが好ましい。板厚が70mmを超える厚鋼板では、熱伝達が遅延することから、板厚中心部の冷却速度は1〜10℃/s程度にしかならない。しかし、本発明では、鋼板表面の組織状態を制御するため、表面温度の冷却速度を50℃/s以上にすることが好ましい。加速冷却の停止温度は、表面温度が550℃以下とする。加速冷却の停止温度が550℃を超えると、板厚中心部の冷却が不充分となり、強度および靭性が低下する。そのため、室温まで冷却することが望ましい。しかしながら、実際の製造においては、鋼板の脱水素を考慮する必要がある。そのため、加速冷却の停止温度は300℃以上であることが好ましく、400℃以下であることが好ましい。
焼戻し温度:350〜650℃
加速冷却終了後、焼戻し処理を行う場合には、焼戻し温度は350〜650℃とする。焼戻し温度が350℃未満であると、焼戻しの効果が不充分となる。また、焼戻し温度が350℃未満であると、焼戻し温度が350℃以上である場合に得られる効果と同等の効果を得るには、長時間の熱処理が必要なるため、工業的でない。一方、焼戻し温度が650℃を超えると、強度の低下が著しくなり、充分な強度が得られない。また、微細な析出部の生成により組織が硬化し、靭性が低下する恐れがある。焼戻し温度は、400℃以上であることが好ましく、550℃以下であることが好ましい。
以上の工程により得られた本発明の厚鋼板は、板厚が70mmを超える。本発明の厚鋼板は、板厚が70mmを超えても、良好なアレスト特性を有する。板厚の上限は特に設けないが、本発明の厚鋼板は、板厚が100mmであっても、良好なアレスト特性が担保できる。
本発明の厚鋼板は、降伏強度(YS)が460MPa以上、引張強度(TS)が570〜720MPa、および、シャルピー衝撃試験において脆性破面が50%になる温度(vTrs)が−40℃以下を満たす。また、本発明の厚鋼板は、アレスト特性の評価指標である−10℃におけるKca値が6000N/mm1.5以上を満たす。さらに、本発明の厚鋼板の継手CTODでの限界亀裂進展長さδcは、試験温度−10℃にて0.4mm以上を満たす。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<厚鋼板の製造>
表1に示す化学組成を有する鋼種a〜tを、表2に示す条件で製造することにより、試験No.1〜31の厚鋼板を得た。各厚鋼板の板厚を表3に示す。
<組織の測定方法>
熱処理を実施する前の各厚鋼板の各板厚位置からL断面のサンプルを切り出し、鏡面研磨後、コロイダルシリカによる試料調整を実施し、フェライト分率、ベイナイト粒径および有効結晶粒径を、EBSDを用いて測定した。有効結晶粒径の測定方法は、倍率を90倍に設定し、1mm×2mmの範囲を2μmピッチで測定し、15°傾角を粒界と判定し、算出した。また、フェライト分率およびベイナイト粒径の算出は、倍率を400倍に設定し、200μm×300μmの範囲を0.25μmピッチで測定し、その後、GAMの閾値を0.5に設定し、0.5以下をフェライト組織、0.5超をベイナイト組織と判定して分離することにより、フェライト分率およびベイナイト粒径を求めた。表層5mm以内のアスペクト比は、L断面のナイタール腐食した組織を光学顕微鏡の500倍で撮影することにより、求めた。結果を表3に示す。
<複合介在物の断面におけるMnS面積率の算出>
<複合介在物の界面におけるMnS割合の算出>
複合介在物分析用の試験片は、前記厚鋼板の板厚1/4t部より採取したものを用いた。複合介在物は、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用い、複合介在物を面分析したマッピング画像から、MnS面積率および複合介在物の界面におけるMnSの割合を測定した。より具体的には、MnS面積率は、複合介在物全体の断面積と複合介在物全体に占めるMnS部分の断面積とを画像から測定することにより算出した。複合介在物の界面におけるMnS割合は、複合介在物中のTi酸化物の周長とそのTi酸化物に接するMnS界面の長さとを画像から測定することにより算出した。なお、測定のばらつきを少なくするため、MnS面積率および複合介在物の界面におけるMnSの割合は、各供試材につき20個ずつEPMAによる分析を行い、平均値を算出することにより求めた。結果を表3に示す。
<複合介在物の面分散密度の算出>
複合介在物の個数は、SEM−EDXを組み合わせた自動介在物分析装置により行い、検出された複合介在物の形状測定データから、粒径が0.5〜5.0μmの範囲である複合介在物の個数を算出することにより、面分散密度を算出した。結果を表3に示す。
<降伏強度および引張強度試験>
各厚鋼板の1/4t部および1/2t部からそれぞれ、JIS Z 2241(2011)で規定される4号試験片を、圧延方向と平行な方向に採取し、降伏強度(YS)および引張強度(TS)を測定した。結果を表3に示す。なお、降伏強度の目標値は460MPa以上、引張強度の目標値は570〜720MPaとした。
<シャルピー衝撃試験>
各厚鋼板の表面、1/4t部および1/2t部からそれぞれ、JIS Z 2242:2005で規定されるVノッチ試験片を、圧延方向と平行な方向に採取してシャルピー衝撃試験を行い、脆性破面が50%になる温度(vTrs)を測定した。結果を表3に示す。なお、vTrsの目標値は−40℃以下とした。
<アレスト特性評価>
アレスト特性は、−10℃におけるKca値を算出することにより、行った。Kca値は、温度勾配型のESSO試験を実施することにより算出した。具体的には、負荷応力を少なくとも3条件以上として温度勾配型のESSO試験を実施し、負荷応力および脆性亀裂長さから求まるKca値を、脆性亀裂が停止した位置の温度でグラフを描画し、対数近似から−10℃におけるKca値を算出した。結果を表3に示す。なお、−10℃におけるKca値の目標値は、6000N/mm1.5以上とした。
<CTOD試験>
作成した供試材からCTOD試験用の試験片をn=3で採取した。各試験片に開先加工を施し、サブマージアーク溶接(SAW)にて入熱5.0kJ/mmにて多層溶接を行った。作成した溶接継手のHAZにノッチ加工を施し、試験温度−10℃でBS7448規格準拠にて、CTOD試験を行った。試験結果の良否は、下記の基準に基づいて判定した。下記の基準のうち、判定が◎または○であった試験片を合格とした。結果を表3に示す。
◎:3本の試験片がすべてゲージオーバー
○:3本の試験片うち、0〜2本がゲージオーバー、かつ、ゲージオーバーでない試験片すべてのCTOD値が0.4mm以上
×:3本の試験片のうち、1本以上の試験片のCTOD値が0.4mm未満
なお、ゲージオーバーとは、取り付けたクリップゲージが限界まで開ききることをいう。また、通常要求される−10℃における継手のCTOD特性は、CTOD値が0.4mm以上であるため、CTOD値の基準を0.4mmとした。
試験No.1〜7の厚鋼板は、本発明で規定される要件をすべて満たすため、良好な特性が得られた。
試験No.8および20の厚鋼板は、それぞれ、CおよびMo成分が最適な範囲から外れるため、アレスト性能および継手CTOD特性が低下した。
試験No.9の厚鋼板は、Mnが最適な成分範囲内にないため、中心偏析および中心部に生成するMnSの影響で、アレスト性能および継手CTOD特性が低下した。
試験No.10の厚鋼板は、Sが最適な成分範囲内にないため、介在物に占める断面のMnS面積率および界面のMnS割合が低下し、その結果、継手CTOD特性が低下した。
試験No.11の厚鋼板は、Sが最適な成分範囲内にないため、介在物に占める断面のMnS面積率および界面のMnS割合が過剰となり、その結果、継手CTOD特性が低下した。
試験No.12の厚鋼板は、Cuが最適な成分範囲内にないため、Cuチェッキングにより表面の靭性が低下し、また、内部はCu析出により靭性が低下した。その結果、アレスト性能が低下した。
試験No.13の厚鋼板は、Nbが最適な成分範囲内にないため、Nb析出物が増加することにより靭性が低下し、その結果、アレスト性能が低下した。
試験No.14の厚鋼板は、Alが最適な成分範囲内にないため、粒内変態に有効な介在物の面分散密度が不足し、その結果、継手CTOD特性が低下した。
試験No.15の厚鋼板は、RH時のOxpを最適な範囲に制御できなかったため、O含有量が少なくなり、粒内変態に有効な介在物の面分散密度が不足した。その結果、継手CTOD特性が低下した。
試験No.16の厚鋼板は、RH時のOxpが最適な範囲に制御できなかったため、O含有量が多くなり、鋼中に粗大な介在物が増加した。その結果、継手CTOD特性が低下した。
試験No.17の厚鋼板は、Tiが最適な成分範囲内にないため、粒内変態に有効な介在物の面分散密度が不足した。その結果、継手CTOD特性が低下した。
試験No.18の厚鋼板は、Tiが最適な成分範囲内にないため、Ti析出物および介在物が増加することにより、靭性が低下した。その結果、アレスト性能および継手CTOD特性が低下した。
試験No.19の厚鋼板は、Ceqが最適な範囲から外れるため、強度が著しく上昇し、さらに、アレスト性能および継手CTOD特性が低下した。
試験No.21の厚鋼板は、加熱温度が最適範囲から外れるため、ベイナイト粒径が粗大となった。その結果、有効結晶粒径が顕著に微細化せず、アレスト性能が低下した。
試験No.22の厚鋼板は、加熱温度が低すぎて、すべて溶体化しなかった。そのため、フェライト分率、強度、靭性、および、アレスト性能が低下した。
試験No.23の厚鋼板は、1次圧延における累積圧下率が大きすぎたことにより、2次圧延での累積圧下率を充分に確保できなかった。そのため、未再結晶オーステナイトへのひずみの蓄積が不充分となった結果、フェライト生成量不足し、かつ、有効結晶粒径の微細化が達成されなかった。その結果、アレスト性能が低下した。
試験No.24の厚鋼板は、1次圧延における平均圧下率が低いため、内部欠陥を低減することができなかった。その結果、アレスト性能が低下した。
試験No.25の厚鋼板は、2次圧延における圧延開始温度が高いため、圧延初期に実質未再結晶域での圧下が行われておらず、オーステナイト内部へのひずみの蓄積が進まなかった。そのため、有効結晶粒径の微細化が達成されず、その結果、アレスト性能が低下した。
試験No.26の厚鋼板は、圧延終了温度が内部に渡って低下しているため、粗大なフェライトが多数生成した。その結果、強度が低下するだけでなく、アレスト性能も低下した。
試験No.27の厚鋼板は、平均圧下率が低いため、オーステナイト内部へのひずみの蓄積が進まなかった。そのため、有効結晶粒径の微細化が達成されず、その結果、アレスト性能が低下した。
試験No.28の厚鋼板は、仕上時の最終パス温度が高いため、表面の伸長組織が未発達となり、その結果、アレスト性能が低下した。
試験No.29の厚鋼板は、冷却停止温度が高いため、内部組織に焼きが入らず、板厚1/2t部のフェライト分率が高くなり、その結果、強度が低下した。
試験No.30の厚鋼板は、焼き戻し温度が最適な範囲から外れるため、MA生成によりYSが低下し、さらに、アレスト性能が低下した。
本発明によれば、HAZの低温靱性に優れ、かつ、アレスト性に優れた、板厚が70mmを超える厚鋼板およびその製造方法を提供することができる。したがって、本発明の厚鋼板は、海洋構造物などの溶接構造物、特に、板厚が70mmを超える厚鋼板に好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. 板厚が70mmを超える厚鋼板であって、
    化学組成が、質量%で、
    C:0.04〜0.12%、
    Si:0.05〜0.50%、
    Mn:1.30〜2.20%、
    P:0.020%以下、
    S:0.0010〜0.0100%、
    Cu:0.05〜1.00%、
    Ni:0.05〜1.50%、
    Nb:0.005〜0.050%、
    Ti:0.005〜0.050%、
    sol.Al:0.005%以下、
    O:0.0010〜0.0050%、
    N:0.0010〜0.0100%、
    Cr:0〜0.50%、
    Mo:0〜0.35%、
    V:0〜0.15%、
    B:0〜0.0030%、
    Ca:0〜0.010%、
    Mg:0〜0.0050%、
    REM:0〜0.0050%、ならびに、
    残部:Feおよび不純物であり、
    下記式(i)で示されるCeq.が0.40〜0.52であり、かつ、
    下記(a)〜(f)を満足し、アレスト特性の評価指標である−10℃におけるKca値が6000N/mm 1.5 以上を満たす、厚鋼板。
    (a)表層5mm以内の組織は圧延方向に伸長した組織を形成し、この組織の平均アスペクト比は1.5以上である。
    (b)鋼板内部のミクロ組織はフェライトおよびベイナイトの複合組織を有し、板厚の1/4t部のフェライト分率が15.0〜40.0%、板厚の1/2t部のフェライト分率が10.0〜40.0%であり、かつ、各板厚位置において、フェライトおよびベイナイト以外の組織を面積%で合計5%未満(0%を含む)有する。
    (c)板厚の1/4t部の平均ベイナイト粒径が25.0μm以下、かつ、板厚の1/2t部の平均ベイナイト粒径が35.0μm以下である。
    (d)板厚の1/4t部の平均有効結晶粒径が22.0μm以下、かつ、板厚の1/2t部の平均有効結晶粒径が32.0μm以下である。
    (e)鋼中に、Ti酸化物の周囲にMnSが存在する複合介在物を含み、前記複合介在物の断面における前記MnSの面積率が、10%以上90%未満であり、前記複合介在物の界面における前記MnSの割合が、10%以上である。
    (f)粒径0.5〜5.0μmの前記複合介在物の面分散密度が、10〜100個/mm2である。
    Ceq.=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5・・・(i)
  2. 前記化学組成が、質量%で、
    Cr:0.05〜0.50%、
    Mo:0.05〜0.35%、および、
    V:0.005〜0.15%、
    から選択される1種以上を含有する、請求項1に記載の厚鋼板。
  3. 前記化学組成が、質量%で、
    B:0.0003〜0.0030%、
    を含有する、請求項1または2に記載の厚鋼板。
  4. 前記化学組成が、質量%で、
    Ca:0.0005〜0.010%、
    Mg:0.0005〜0.0050%、および、
    REM:0.0005〜0.0050%、
    から選択される1種以上を含有する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の厚鋼板。
  5. 請求項1〜4のいずれか一つに記載の厚鋼板を製造する方法であって、
    RHでのTi添加前の酸素ポテンシャルが10〜60ppmに制御され鋳造された請求項1〜4のいずれか一つに記載の組成を有する鋼片を用いて、板厚中心部をAc〜1000℃に加熱し、
    板厚中心部がAc〜1000℃の温度域において、累積圧下率を15.0〜60.0%、各パスの平均圧下率を3.5%以上で粗圧延を行った後、
    板厚中心部の温度がAr〜950℃で累積圧下率を40%以上、各パスの平均圧下率を5.0%以上で仕上圧延を行い、
    さらに、この仕上圧延の最終パス開始温度を板厚表面でAr−20℃〜Ar+30℃として圧延を完了し、
    次いで、加速冷却を開始し、表面温度が550℃以下まで加速冷却を行う、厚鋼板の製造方法。
  6. 前記加速冷却終了後、350〜650℃の温度で焼戻し処理を行う、請求項5に記載の厚鋼板の製造方法。
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