JP6665659B2 - 厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents
厚鋼板およびその製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP6665659B2 JP6665659B2 JP2016085150A JP2016085150A JP6665659B2 JP 6665659 B2 JP6665659 B2 JP 6665659B2 JP 2016085150 A JP2016085150 A JP 2016085150A JP 2016085150 A JP2016085150 A JP 2016085150A JP 6665659 B2 JP6665659 B2 JP 6665659B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- less
- steel plate
- thickness
- rolling
- grain size
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Active
Links
Description
化学組成が、質量%で、
C:0.04〜0.12%、
Si:0.05〜0.50%、
Mn:1.30〜2.20%、
P:0.020%以下、
S:0.0010〜0.0100%、
Cu:0.05〜1.00%、
Ni:0.05〜1.50%、
Nb:0.005〜0.050%、
Ti:0.005〜0.050%、
sol.Al:0.005%以下、
O:0.0010〜0.0050%、
N:0.0010〜0.0100%以下、
Cr:0〜0.50%、
Mo:0〜0.35%、
V:0〜0.15%、
B:0〜0.0030%、
Ca:0〜0.010%、
Mg:0〜0.0050%、
REM:0〜0.0050%、ならびに、
残部:Feおよび不純物であり、
下記式(i)で示されるCeq.が0.40〜0.52であり、かつ、
下記(a)〜(f)を満足する、厚鋼板。
(a)表層5mm以内の組織は圧延方向に伸長した組織を形成し、この組織の平均アスペクト比は1.5以上である。
(b)鋼板内部のミクロ組織はフェライトおよびベイナイトの複合組織を有し、板厚の1/4t部のフェライト分率が15.0〜40.0%、板厚の1/2t部のフェライト分率が10.0〜40.0%であり、かつ、各板厚位置において、フェライトおよびベイナイト以外の組織を面積%で合計5%未満(0%を含む)有する。
(c)板厚の1/4t部の平均ベイナイト粒径が25.0μm以下、かつ、板厚の1/2t部の平均ベイナイト粒径が35.0μm以下である。
(d)板厚の1/4t部の平均有効結晶粒径が22.0μm以下、かつ、板厚の1/2t部の平均有効結晶粒径が32.0μm以下である。
(e)鋼中に、Ti酸化物の周囲にMnSが存在する複合介在物を含み、前記複合介在物の断面における前記MnSの面積率が、10%以上90%未満であり、前記複合介在物の界面における前記MnSの割合が、10%以上である。
(f)粒径0.5〜5.0μmの前記複合介在物の面分散密度が、10〜100個/mm2である。
Ceq.=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5・・・(i)
Cr:0.05〜0.50%、
Mo:0.05〜0.35%、および、
V:0.005〜0.15%、
から選択される1種以上を含有する、前記(1)に記載の厚鋼板。
B:0.0003〜0.0030%、
を含有する、前記(1)または(2)に記載の厚鋼板。
Ca:0.0005〜0.010%、
Mg:0.0005〜0.0050%、および、
REM:0.0005〜0.0050%、
から選択される1種以上を含有する、前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の厚鋼板。
RHでのTi添加前の酸素ポテンシャルが10〜60ppmに制御され鋳造された前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の組成を有する鋼片を用いて、板厚中心部をAc3〜1000℃に加熱し、
板厚中心部がAc3〜1000℃の温度域において、累積圧下率を15.0〜60.0%、各パスの平均圧下率を3.5%以上で粗圧延を行った後、
板厚中心部の温度がAr3〜950℃で累積圧下率を40%以上、各パスの平均圧下率を5.0%以上で仕上圧延を行い、
さらに、この仕上圧延の最終パス開始温度を板厚表面でAr3−20℃〜Ar3+30℃として圧延を完了し、
次いで、加速冷却を開始し、表面温度が550℃以下まで加速冷却を行う、厚鋼板の製造方法。
各元素の作用効果と、含有量の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
Cは、鋼材の強度を高める元素である。C含有量が0.04%未満では、この効果が得られない。一方、C含有量が0.12%を超えると、強度の上昇により靭性の低下、溶接性の劣化、および、溶接熱影響部(HAZ:Heat Affected Zone)靭性および継手CTOD特性が劣化する。また、アレスト特性が低下する。したがって、C含有量は0.04〜0.12%とする。C含有量は、0.05%以上であることが好ましく、0.09%以下であることが好ましい。
Siは、脱酸元素および強度に有効な元素である。Si含有量が0.05%未満では、これらの効果が得られない。一方、Si含有量が0.50%を超えると、HAZが硬化することにより、HAZ靭性および継手CTOD特性が低下する。したがって、Si含有量は0.05〜0.50%とする。Si含有量は、0.10%以上であることが好ましく、0.30%以下であることが好ましい。
Mnは、鋼の焼入れ性を高め、鋼材の強度および靭性を高める元素である。Mn含有量が1.30%未満では、これらの効果が得られない。一方、Mn含有量が2.20%を超えると、中心偏析が顕著となり板厚中心部の靭性が顕著に低下する。また、アレスト特性が低下する。したがって、Mn含有量は1.30〜2.20%とする。Mn含有量は、1.60%以上であることが好ましく、2.00%以下であることが好ましい。
Pは不純物元素であり、鋼材の機械的特性を低下させ、特に、低温靭性を低下させる。したがって、P含有量は0.020%以下とする。P含有量は0.015%以下であることが好ましく、なるべく低い方がより好ましい。
Sは、Mnと結合してMnSを形成する。MnSを複合析出させるため、S含有量は0.0010%以上とする。一方、Sが過剰に含まれると、粗大な単体MnSの析出につながり、靱性低下の要因となる。そのため、S含有量は0.0100%以下とする。MnS複合析出およびHAZ靱性および継手CTOD特性確保の観点から、S含有量は0.0020%以上であることが好ましく、0.0050%以下であることが好ましい。
Cuは、鋼に固溶して靭性を損なわずに強度を高めることができ、アレスト特性を改善する元素である。Cu含有量が0.05%未満では、これらの効果が得られない。一方、Cu含有量が1.00%を超えると、靭性の低下、および、析出物増加によりアレスト特性の劣化をきたし、さらに、熱間での加工の際、表面に微小な割れを発生させる。したがって、Cu含有量は0.05〜1.00%とする。Cu含有量は0.20%以上であることが好ましく、0.50%以下であることが好ましい。
Niは、鋼に固溶して靭性を損なわずに強度を高めることができ、アレスト特性を改善する元素である。Ni含有量が0.05%未満では、これらの効果が得られない。一方、Niは高価な元素であり、過剰添加はコストの上昇を招く。したがって、Ni含有量は0.05〜1.50%とする。Ni含有量は、0.30%以上であることが好ましく、1.10%以下であることが好ましい。
Nbは、本発明の鋼板において重要な元素である。Nbは、微量の添加により、未再結晶オーステナイト域を拡大し、組織微細化による強度およびアレスト特性の改善に寄与する。さらに、変態強化および析出強化に寄与する。Nb含有量が0.005%未満では、上記効果が得られない。一方、Nb含有量が0.050%を超えると、粗大なNb析出物が生成し、アレスト特性が劣化するだけでなく、HAZ靭性および継手CTOD特性を著しく劣化させる。したがって、Nb含有量は0.005〜0.050%とする。Nb含有量は、0.007%以上であることが好ましく、0.020%以下であることが好ましい。
Tiは、本発明の鋼板において重要な元素である。Tiは、Ti系酸化物を形成し、粒内フェライトの生成核として作用する。さらに、Ti系酸化物の形成後に残ったTiは、TiNを形成し、鋼片の加熱時にオーステナイト粒径が大きくなることを抑制する。オーステナイト粒径が大きくなると、変態後のベイナイトの粒径も大きくなる。Ti含有量が0.005%未満の場合、粒内フェライトの生成核としてのTi系酸化物の面分散密度が減少し、HAZ靭性および継手CTOD特性が低下するとともに、所望のベイナイト粒径が得られない。そのため、Ti含有量を0.005%以上とする。一方、Ti含有量が0.050%を超えると、Ti系酸化物の面分散密度の増加および粗大なTi系酸化物が増加し、HAZ靭性および継手CTOD特性が低下するとともに、粗大なTiCが生成して靭性およびアレスト特性が低下する。そのため、Ti含有量は、0.050%以下とする。Ti含有量は0.007%以上であることが好ましく、0.020%以下であることが好ましい。
sol.Alは、不純物元素であり、Al含有量の増加により、Ti系酸化物の生成が抑制される。その結果、HAZ靭性および継手CTOD特性が低下する。そのため、sol.Al含有量は0.005%以下とする。
Oは、Ti系酸化物生成に必須の元素である。充分な介在物の面分散密度を得るため、O含有量は0.0010%以上とする。Oが過剰に含有されると、破壊起点となり得る粗大な酸化物が形成されやすくなる。そのため、O含有量は0.0050%以下とする。粗大な介在物形成を抑制する観点から、O含有量は、0.0030%以下であることが好ましい。
Nは、Tiと結合してTiNを形成し、オーステナイト粒の粗大化を抑制する作用を有する元素である。N含有量が0.0010%未満では、この効果が得られない。一方、N含有量が0.0100%を超えると、不純物として存在するため、靭性の低下を招く。その結果、アレスト特性を劣化させる。したがって、N含有量は0.0010〜0.0100%とする。N含有量は、0.0020%以上であることが好ましく、0.0060%以下であることが好ましい。
Crは、鋼材の強度を高める元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。Cr含有量が0.50%を超えると、鋼材の強度増加に伴う靭性の低下が顕著となる。したがって、Cr含有量は0.50%以下とする。一方、Cr含有量が0.05%未満では、鋼材の強度を充分に高めることができない場合がある。したがって、Cr含有量は0.05%以上であることが好ましい。
Moは、鋼材の強度を高める元素であるため、必要に応じて含有させてもよい。Mo含有量が0.35%を超えると、鋼材の強度増加に伴う靭性の低下が顕著となる。また、アレスト特性が低下する。したがって、Mo含有量は0.35%以下とする。一方、Mo含有量が0.05%未満では、鋼材の強度を充分に高めることができない場合がある。したがって、Mo含有量は0.05%以上であることが好ましい。
Vは、炭窒化物を形成し、鋼材を析出強化する作用を有するため、必要に応じて含有させてもよい。V含有量が0.15%を超えると、析出強化に伴う靭性の低下が顕著となる。したがって、V含有量は0.15%以下とする。一方、V含有量が0.005%未満では、鋼材を充分に析出強化できない場合がある。したがって、V含有量は0.005%以上であることが好ましい。
Bは、微量の添加で焼入れ性を高める元素であり、必要に応じて含有させてもよい。B含有量が0.0030%を超えると、効果が飽和するとともに、HAZの靭性を低下させる。したがって、B含有量は0.0030%以下とする。一方、B含有量が0.0003%未満では、焼入れ性を安定して高めることができない場合がある。したがって、B含有量は0.0003%以上であることが好ましい。
Caは、HAZ靭性を向上させる元素であり、必要に応じて含有させてもよい。Ca含有量が0.010%を超えると、HAZ靭性および溶接性が悪化する。そのため、Ca含有量は0.010%以下とする。一方、Ca含有量が0.0005%未満では、HAZ靭性を安定して向上させることができない場合がある。したがって、Ca含有量は0.0005%以上であることが好ましい。
Mgは、HAZ靭性を向上させる元素であり、必要に応じて含有させてもよい。Mgが0.0050%を超えると、HAZ靭性および溶接性が悪化する。そのため、Mg含有量は0.0050%以下とする。一方、Mg含有量が0.0005%未満では、HAZ靭性を安定して向上させることができない場合がある。したがって、Mg含有量は0.0005%以上であることが好ましい。
REMは、HAZ靭性を向上させる元素であり、必要に応じて含有させてもよい。REMが0.0050%を超えると、HAZ靭性および溶接性が悪化する。そのため、REM含有量は0.0050%以下とする。一方、REM含有量が0.0005%未満では、HAZ靭性を安定して向上させることができない場合がある。したがって、REM含有量は0.0005%以上であることが好ましい。
鋼板の炭素当量Ceq.は、下記式(i)で示される。Ceq.が0.40未満では、板厚中心部まで焼きが入らず、降伏強度460MPa以上の高強度が得られない。また、靭性が低下することもある。一方、Ceq.が0.52を超えると、必要な強度を容易に得ることができるが、靭性の低下および溶接性の低下が起こるとともに、コストも増加する。また、アレスト特性が低下する。したがって、Ceq.は0.40〜0.52とする。
Ceq.=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5・・・(i)
以下に示す(a)〜(d)の組織規定のいずれか一つでも満足しない場合、良好な強度およびアレスト特性が得られない。
本発明の厚鋼板は、鋼中に、Ti酸化物の周囲にMnSが存在する複合介在物を含む。
本発明では、任意の切断面に現出した複合介在物を分析し、その複合介在物の断面積におけるMnSの面積率を測定することにより、複合介在物中のMnS量を規定している。複合介在物の断面におけるMnSの面積率が10%未満であると、複合介在物中のMnS量が少なく、充分なMn欠乏層を形成できない。その結果、粒内フェライトの生成が困難となる。一方、複合介在物の断面におけるMnSの割合が90%以上であると、複合介在物がMnS主体となり、Ti系酸化物の占める割合が低下する。その結果、Mn吸収能が低下し、充分なMn欠乏層を形成できないため、粒内フェライトの生成が困難となる。
MnSは、複合介在物の周囲からMnを吸収する必要があるため、複合介在物の界面に存在する必要がある。複合介在物の界面におけるMnSの割合が10%未満であると、複合介在物の周囲から充分にMnを吸収できないため、Mn欠乏層を形成できない。その結果、粒内フェライトの生成が困難となる。
複合介在物の粒径が0.5μm未満では、複合介在物の周囲から吸収できるMn量が少なく、その結果、粒内フェライトの生成に必要なMn欠乏層の形成が困難となる。一方、複合介在物の粒径が5.0μmより大きいと、複合介在物が破壊の起点となる。
安定した粒内フェライトを生成させるためには、各複合介在物が旧γ内に少なくとも1つ程度含まれる必要がある。そのため、複合介在物の面分散密度は、10個/mm2以上とする。一方、複合介在物が過剰に多い場合は、破壊起点となりやすい。そのため、複合介在物の面分散密度は、100個/mm2以下とする。
鋳造工程:RHでのTi添加前のOxpが10〜60ppm
組織微細化に有効な介在物は、製鋼工程のRH→CCにかけての凝固過程にて、鋼中に微細分散する。効果的に介在物を分散させるためには、RH前にArガスを上部より溶鋼内に吹き込むバブリング処理を行い、溶鋼表面のスラグと溶鋼とを反応させることにより、スラグ内のトータルFe量を調整し、溶鋼内の酸素ポテンシャルOxpを10ppm以上、60ppm以下の範囲に制御する必要がある。バブリング処理後、RHでの成分調整時にAlを添加せずTiを添加する。これにより、Ti酸化物が鋼中に微細分散する。
加熱温度は、板厚中心部の温度を基準としてAc3〜1000℃とする。板厚が70mmを超える厚肉材の場合、鋼板の表面と板厚中心部とでは温度差が発生するため、管理温度を表面にしてしまうと、板厚中心部の温度が低下していないにも関わらず次工程に進んでしまう。その結果、必要な強度、靭性およびアレスト特性を満足できない恐れがある。そのため、加熱温度は、板厚中心部の温度を基準とする。加熱温度が1000℃を超えると、加熱γ粒が粗大化するため、アレスト特性を得るための微細な組織を得ることが困難になる。一方、加熱温度がAc3℃未満であると、完全に溶体化されないため、最終的なアレスト特性が劣化する場合がある。また、圧延における荷重が高くなりすぎるため、最適な圧延荷重での圧延が困難となる。加熱温度は、900℃以上であることが好ましく、980℃以下であることが好ましい。
粗圧延(一次圧延)の温度域は、板厚中心部の温度を基準としてAc3〜1000℃の範囲とする。板厚中心部の温度を基準とするのは、前記加熱温度において板厚中心部の温度を基準とした理由と同じである。粗圧延の温度域が1000℃を超えると、オーステナイト粒が大きくなる場合がある。一方、粗圧延の温度域がAc3℃未満であると、完全に溶体化されないため最終的なアレスト特性が劣化する場合がある。また、圧延における荷重が高くなりすぎるため、最適な圧延荷重での圧延が困難となり、鋳造時に生成したポロシティなどの内部欠陥の影響を低減できない恐れがある。また、累積圧下率は15.0%以上とする。累積圧下率が15.0%未満であると、鋳造時に生成したポロシティなどの内部欠陥の影響を低減できないだけでなく、製品に必要な鋼材の幅が得られない。粗圧延における累積圧下率が60.0%を超えると、再結晶オーステナイトの微細化、および、一部オーステナイトへの圧延ひずみの導入が進行するが、次いで行う仕上圧延での累積圧下量を確保できなくなる。そのため、粗圧延における累積圧下率は60.0%以下とする。また、各パスの平均圧下率は、3.5%以上とする。各パスの平均圧下率が3.5%未満であると、鋳造時に生成したポロシティなどの内部欠陥の影響を低減できないだけでなく、パス数が増加することにより、生産性が低下する。各パスの平均圧下率の上限は特に設けないが、各パスでの平均圧下率が10.0%を超えると、再結晶オーステナイトが粗大化する場合がある。そのため、各パスの平均圧下率は、10.0%以下であることが好ましい。また、各パスの平均圧下率は、4.0%以上であることが好ましい。
仕上圧延(二次圧延)の温度域は、板厚中心部の温度を基準としてAr3〜950℃とする。板厚中心部の温度を基準とするのは、前記加熱温度において板厚中心部の温度を基準とした理由と同じである。仕上圧延の温度域が950℃を超えると、オーステナイトの扁平が得られず、冷却後に微細な組織が得られない。一方、仕上圧延の温度域がAr3点未満であると、フェライトおよびオーステナイトの二相域圧延となり、表層および1/4t部で粗大なフェライトが多数生成し、アレスト特性が得られなくなる。また、累積圧下率が40%未満であると、CR(制御圧延)の効果が不充分となり、微細な組織が得られなくなる。そのため、累積圧下率は40%以上とする。累積圧下率の上限値は特に設けないが、板厚が70mmを超えると、仕上圧延で65%を超える累積圧下率を確保しようとすると、粗圧延での累積圧下率を確保できなくなる。そのため、累積圧下率は65%以下であることが好ましい。また、各パスの平均圧下率は5.0%以上とする。各パスの平均圧下率が5.0%未満であると、鋼板内部まで圧延歪みが導入されず、微細な組織が得られないだけでなく、パス回数が増加し生産性が低下する。
仕上圧延の最終パス開始温度は、板厚表面の温度でAr3−20℃〜Ar3+30℃とする。仕上圧延の最終パス開始温度がAr3+30℃を超えると、板厚表面5mm以内にアスペクト比が1.5以上の組織が形成されない。一方、仕上圧延の最終パス開始温度がAr3−20℃未満であると、板厚表面5mmを超える領域にもアスペクト比が1.5以上の組織が形成され、アレスト特性が低下する。
加速冷却は、仕上圧延の完了後、加速冷却を開始する。強度および靭性向上の観点から、加速冷却は、圧延完了後から20℃以上温度が低下する前に開始することが好ましい。板厚が70mmを超える厚鋼板では、熱伝達が遅延することから、板厚中心部の冷却速度は1〜10℃/s程度にしかならない。しかし、本発明では、鋼板表面の組織状態を制御するため、表面温度の冷却速度を50℃/s以上にすることが好ましい。加速冷却の停止温度は、表面温度が550℃以下とする。加速冷却の停止温度が550℃を超えると、板厚中心部の冷却が不充分となり、強度および靭性が低下する。そのため、室温まで冷却することが望ましい。しかしながら、実際の製造においては、鋼板の脱水素を考慮する必要がある。そのため、加速冷却の停止温度は300℃以上であることが好ましく、400℃以下であることが好ましい。
加速冷却終了後、焼戻し処理を行う場合には、焼戻し温度は350〜650℃とする。焼戻し温度が350℃未満であると、焼戻しの効果が不充分となる。また、焼戻し温度が350℃未満であると、焼戻し温度が350℃以上である場合に得られる効果と同等の効果を得るには、長時間の熱処理が必要なるため、工業的でない。一方、焼戻し温度が650℃を超えると、強度の低下が著しくなり、充分な強度が得られない。また、微細な析出部の生成により組織が硬化し、靭性が低下する恐れがある。焼戻し温度は、400℃以上であることが好ましく、550℃以下であることが好ましい。
表1に示す化学組成を有する鋼種a〜tを、表2に示す条件で製造することにより、試験No.1〜31の厚鋼板を得た。各厚鋼板の板厚を表3に示す。
熱処理を実施する前の各厚鋼板の各板厚位置からL断面のサンプルを切り出し、鏡面研磨後、コロイダルシリカによる試料調整を実施し、フェライト分率、ベイナイト粒径および有効結晶粒径を、EBSDを用いて測定した。有効結晶粒径の測定方法は、倍率を90倍に設定し、1mm×2mmの範囲を2μmピッチで測定し、15°傾角を粒界と判定し、算出した。また、フェライト分率およびベイナイト粒径の算出は、倍率を400倍に設定し、200μm×300μmの範囲を0.25μmピッチで測定し、その後、GAMの閾値を0.5に設定し、0.5以下をフェライト組織、0.5超をベイナイト組織と判定して分離することにより、フェライト分率およびベイナイト粒径を求めた。表層5mm以内のアスペクト比は、L断面のナイタール腐食した組織を光学顕微鏡の500倍で撮影することにより、求めた。結果を表3に示す。
<複合介在物の界面におけるMnS割合の算出>
複合介在物分析用の試験片は、前記厚鋼板の板厚1/4t部より採取したものを用いた。複合介在物は、電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用い、複合介在物を面分析したマッピング画像から、MnS面積率および複合介在物の界面におけるMnSの割合を測定した。より具体的には、MnS面積率は、複合介在物全体の断面積と複合介在物全体に占めるMnS部分の断面積とを画像から測定することにより算出した。複合介在物の界面におけるMnS割合は、複合介在物中のTi酸化物の周長とそのTi酸化物に接するMnS界面の長さとを画像から測定することにより算出した。なお、測定のばらつきを少なくするため、MnS面積率および複合介在物の界面におけるMnSの割合は、各供試材につき20個ずつEPMAによる分析を行い、平均値を算出することにより求めた。結果を表3に示す。
複合介在物の個数は、SEM−EDXを組み合わせた自動介在物分析装置により行い、検出された複合介在物の形状測定データから、粒径が0.5〜5.0μmの範囲である複合介在物の個数を算出することにより、面分散密度を算出した。結果を表3に示す。
各厚鋼板の1/4t部および1/2t部からそれぞれ、JIS Z 2241(2011)で規定される4号試験片を、圧延方向と平行な方向に採取し、降伏強度(YS)および引張強度(TS)を測定した。結果を表3に示す。なお、降伏強度の目標値は460MPa以上、引張強度の目標値は570〜720MPaとした。
各厚鋼板の表面、1/4t部および1/2t部からそれぞれ、JIS Z 2242:2005で規定されるVノッチ試験片を、圧延方向と平行な方向に採取してシャルピー衝撃試験を行い、脆性破面が50%になる温度(vTrs)を測定した。結果を表3に示す。なお、vTrsの目標値は−40℃以下とした。
アレスト特性は、−10℃におけるKca値を算出することにより、行った。Kca値は、温度勾配型のESSO試験を実施することにより算出した。具体的には、負荷応力を少なくとも3条件以上として温度勾配型のESSO試験を実施し、負荷応力および脆性亀裂長さから求まるKca値を、脆性亀裂が停止した位置の温度でグラフを描画し、対数近似から−10℃におけるKca値を算出した。結果を表3に示す。なお、−10℃におけるKca値の目標値は、6000N/mm1.5以上とした。
作成した供試材からCTOD試験用の試験片をn=3で採取した。各試験片に開先加工を施し、サブマージアーク溶接(SAW)にて入熱5.0kJ/mmにて多層溶接を行った。作成した溶接継手のHAZにノッチ加工を施し、試験温度−10℃でBS7448規格準拠にて、CTOD試験を行った。試験結果の良否は、下記の基準に基づいて判定した。下記の基準のうち、判定が◎または○であった試験片を合格とした。結果を表3に示す。
◎:3本の試験片がすべてゲージオーバー
○:3本の試験片うち、0〜2本がゲージオーバー、かつ、ゲージオーバーでない試験片すべてのCTOD値が0.4mm以上
×:3本の試験片のうち、1本以上の試験片のCTOD値が0.4mm未満
Claims (6)
- 板厚が70mmを超える厚鋼板であって、
化学組成が、質量%で、
C:0.04〜0.12%、
Si:0.05〜0.50%、
Mn:1.30〜2.20%、
P:0.020%以下、
S:0.0010〜0.0100%、
Cu:0.05〜1.00%、
Ni:0.05〜1.50%、
Nb:0.005〜0.050%、
Ti:0.005〜0.050%、
sol.Al:0.005%以下、
O:0.0010〜0.0050%、
N:0.0010〜0.0100%、
Cr:0〜0.50%、
Mo:0〜0.35%、
V:0〜0.15%、
B:0〜0.0030%、
Ca:0〜0.010%、
Mg:0〜0.0050%、
REM:0〜0.0050%、ならびに、
残部:Feおよび不純物であり、
下記式(i)で示されるCeq.が0.40超〜0.52であり、かつ、
下記(a)〜(f)を満足し、アレスト特性の評価指標である−10℃におけるKca値が6000N/mm 1.5 以上を満たす、厚鋼板。
(a)表層5mm以内の組織は圧延方向に伸長した組織を形成し、この組織の平均アスペクト比は1.5以上である。
(b)鋼板内部のミクロ組織はフェライトおよびベイナイトの複合組織を有し、板厚の1/4t部のフェライト分率が15.0〜40.0%、板厚の1/2t部のフェライト分率が10.0〜40.0%であり、かつ、各板厚位置において、フェライトおよびベイナイト以外の組織を面積%で合計5%未満(0%を含む)有する。
(c)板厚の1/4t部の平均ベイナイト粒径が25.0μm以下、かつ、板厚の1/2t部の平均ベイナイト粒径が35.0μm以下である。
(d)板厚の1/4t部の平均有効結晶粒径が22.0μm以下、かつ、板厚の1/2t部の平均有効結晶粒径が32.0μm以下である。
(e)鋼中に、Ti酸化物の周囲にMnSが存在する複合介在物を含み、前記複合介在物の断面における前記MnSの面積率が、10%以上90%未満であり、前記複合介在物の界面における前記MnSの割合が、10%以上である。
(f)粒径0.5〜5.0μmの前記複合介在物の面分散密度が、10〜100個/mm2である。
Ceq.=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5・・・(i) - 前記化学組成が、質量%で、
Cr:0.05〜0.50%、
Mo:0.05〜0.35%、および、
V:0.005〜0.15%、
から選択される1種以上を含有する、請求項1に記載の厚鋼板。 - 前記化学組成が、質量%で、
B:0.0003〜0.0030%、
を含有する、請求項1または2に記載の厚鋼板。 - 前記化学組成が、質量%で、
Ca:0.0005〜0.010%、
Mg:0.0005〜0.0050%、および、
REM:0.0005〜0.0050%、
から選択される1種以上を含有する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の厚鋼板。 - 請求項1〜4のいずれか一つに記載の厚鋼板を製造する方法であって、
RHでのTi添加前の酸素ポテンシャルが10〜60ppmに制御され鋳造された請求項1〜4のいずれか一つに記載の組成を有する鋼片を用いて、板厚中心部をAc3〜1000℃に加熱し、
板厚中心部がAc3〜1000℃の温度域において、累積圧下率を15.0〜60.0%、各パスの平均圧下率を3.5%以上で粗圧延を行った後、
板厚中心部の温度がAr3〜950℃で累積圧下率を40%以上、各パスの平均圧下率を5.0%以上で仕上圧延を行い、
さらに、この仕上圧延の最終パス開始温度を板厚表面でAr3−20℃〜Ar3+30℃として圧延を完了し、
次いで、加速冷却を開始し、表面温度が550℃以下まで加速冷却を行う、厚鋼板の製造方法。 - 前記加速冷却終了後、350〜650℃の温度で焼戻し処理を行う、請求項5に記載の厚鋼板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016085150A JP6665659B2 (ja) | 2016-04-21 | 2016-04-21 | 厚鋼板およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016085150A JP6665659B2 (ja) | 2016-04-21 | 2016-04-21 | 厚鋼板およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2017193759A JP2017193759A (ja) | 2017-10-26 |
JP6665659B2 true JP6665659B2 (ja) | 2020-03-13 |
Family
ID=60154610
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2016085150A Active JP6665659B2 (ja) | 2016-04-21 | 2016-04-21 | 厚鋼板およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP6665659B2 (ja) |
Families Citing this family (6)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP7104370B2 (ja) * | 2018-04-10 | 2022-07-21 | 日本製鉄株式会社 | 厚鋼板およびその製造方法 |
CN108977732B (zh) * | 2018-08-10 | 2020-05-05 | 武汉钢铁集团鄂城钢铁有限责任公司 | 高表面质量且具有良好焊接性能的热扎钢板及其生产方法 |
WO2020039979A1 (ja) * | 2018-08-23 | 2020-02-27 | Jfeスチール株式会社 | 熱延鋼板およびその製造方法 |
KR102237486B1 (ko) | 2019-10-01 | 2021-04-08 | 주식회사 포스코 | 중심부 극저온 변형시효충격인성이 우수한 고강도 극후물 강재 및 그 제조방법 |
CN114150229B (zh) * | 2021-12-08 | 2022-07-26 | 东北大学 | 一种焊接性能优良的海洋结构用钢及其生产方法 |
CN114480809B (zh) * | 2022-04-18 | 2022-08-19 | 江苏省沙钢钢铁研究院有限公司 | 500MPa级止裂钢板及其生产方法 |
Family Cites Families (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH01191765A (ja) * | 1988-01-26 | 1989-08-01 | Nippon Steel Corp | 微細粒チタン酸化物、硫化物を分散した溶接部靭性の優れた低温用高張力鋼 |
JPH04337027A (ja) * | 1991-05-15 | 1992-11-25 | Nippon Steel Corp | 溶接熱影響部靱性の優れた鋼板の製造法 |
JP3256118B2 (ja) * | 1995-12-06 | 2002-02-12 | 新日本製鐵株式会社 | 超大入熱溶接熱影響部の靱性に優れた溶接用高張力鋼 |
JPH11293383A (ja) * | 1998-04-09 | 1999-10-26 | Nippon Steel Corp | 水素性欠陥の少ない厚鋼板およびその製造方法 |
JP3502822B2 (ja) * | 2000-02-10 | 2004-03-02 | 新日本製鐵株式会社 | 溶接熱影響部靭性の優れた鋼材およびその製造方法 |
JP2011246805A (ja) * | 2010-04-30 | 2011-12-08 | Nippon Steel Corp | 電子ビーム溶接継手及び電子ビーム溶接用鋼材とその製造方法 |
TWI463018B (zh) * | 2012-04-06 | 2014-12-01 | Nippon Steel & Sumitomo Metal Corp | 具優異裂縫阻滯性之高強度厚鋼板 |
-
2016
- 2016-04-21 JP JP2016085150A patent/JP6665659B2/ja active Active
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2017193759A (ja) | 2017-10-26 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP6665659B2 (ja) | 厚鋼板およびその製造方法 | |
EP3042976B1 (en) | Steel sheet for thick-walled high-strength line pipe having exceptional corrosion resistance, crush resistance properties, and low-temperature ductility, and line pipe | |
JP5846311B2 (ja) | 溶接熱影響部ctod特性に優れた厚肉高張力鋼およびその製造方法 | |
JPWO2019069771A1 (ja) | 鋼板および鋼板の製造方法 | |
JP6682967B2 (ja) | 厚鋼板およびその製造方法 | |
JP6763141B2 (ja) | Lpgタンク用鋼板の製造方法 | |
EP3395986B1 (en) | Thick steel plate for high heat input welding and having great heat-affected area toughness and manufacturing method therefor | |
WO2020262638A1 (ja) | 鋼材及びその製造方法 | |
JP6409598B2 (ja) | 靭性に優れた高強度極厚h形鋼及びその製造方法 | |
JP6645373B2 (ja) | 厚鋼板とその製造方法 | |
WO2017183719A1 (ja) | 高張力鋼および海洋構造物 | |
JP6620575B2 (ja) | 厚鋼板およびその製造方法 | |
JP5082667B2 (ja) | アレスト特性に優れた高強度厚肉鋼板およびその製造方法 | |
JP7127753B2 (ja) | 鋼板およびその製造方法 | |
JP5435837B2 (ja) | 高張力厚鋼板の溶接継手 | |
JP6665658B2 (ja) | 高強度厚鋼板 | |
WO2017183720A1 (ja) | 厚鋼板 | |
JP5515954B2 (ja) | 耐溶接割れ性と溶接熱影響部靭性に優れた低降伏比高張力厚鋼板 | |
JP7104370B2 (ja) | 厚鋼板およびその製造方法 | |
JP2011068952A (ja) | アレスト特性に優れた高強度厚肉鋼板 | |
JP2009179844A (ja) | 溶接熱影響部の靭性に優れた高張力厚鋼板 | |
JP6308148B2 (ja) | 超大入熱溶接熱影響部靭性に優れた建築構造物用低降伏比高強度厚鋼板およびその製造方法 | |
JP5343486B2 (ja) | 大入熱溶接用鋼材 | |
JP6662174B2 (ja) | 厚鋼板 | |
JP2017082267A (ja) | 厚鋼板 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20181206 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20190918 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20191029 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20191205 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20200121 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20200203 |
|
R151 | Written notification of patent or utility model registration |
Ref document number: 6665659 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151 |