JP2017082267A - 厚鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れたICCGHAZ靭性が実現できる厚鋼板を提供する。【解決手段】所定の化学成分組成を満足し、下記式(1)で求められるF値が400以下であり、且つ、板厚をtとしたとき、t/4位置での圧延方向および板厚方向に平行な断面の金属組織において、円相当径:1.5μm以上の酸化物の平均真円度が1.8以下であると共に、前記酸化物の個数密度が200個/mm2以下である。F値=550−1176×[C]−73×[Mn]−31×[Ni]・・・(1)但し、[C]、[Mn]および[Ni]は、夫々C、MnおよびNiの質量%での含有量を表す。【選択図】なし

Description

本発明は、厚鋼板に関する。詳細には、海洋構造物等に用いられ、溶接熱影響部の靭性に優れた厚鋼板に関する。
近年、石油などの資源の採掘は、沿岸近傍を離れて極地へ向かっている。こうした極地で構築される海洋構造物に用いられる鋼板、特に厚さが6mm以上となる厚鋼板には、母材部や溶接熱影響部における靭性、特に低温での靭性が優れていることが求められる。前記「溶接熱影響部」を、以下ではHAZ(Heat−Affect Zone)と呼ぶ。
海洋構造物等に使用される厚鋼板を溶接する方法としては、一般に入熱量が5.0kJ/mm程度の小入熱で多パスの多層盛溶接が適用される。こうした溶接法によれば、複数パスの溶接熱影響を受けたHAZの中でも、1パス目でAc3変態点以上の温度に加熱されて粗大な組織が形成された後に、2パス目でAc1変態点〜Ac3変態点のオーステナイトとフェライトの二相域の温度領域では、二相域の温度領域で生成した逆変態オーステナイトが、その後の冷却過程において、オーステナイトとマルテンサイトの混合組織である硬質な島状マルテンサイト(Martensite Austenite Constituent)が多数形成される。以下では島状マルテンサイトを、「MA」と略記することがある。
硬質なMAが多数形成される領域を、以下ではICCG領域(Inter−Critically Reheated Coarse Grain Zone)と呼び、このICCG領域のHAZを、「ICCGHAZ」と略記することがある。
例えば非特許文献1には、1パス目でAc3変態点以上の温度に加熱されて粗大な組織が形成された後に、再度同様の高温に再加熱されて粗粒組織が形成されるCG(Coarse Grain)領域の他に、上記のような硬質なMAが多数形成されるICCG領域が、溶接金属付近に存在することが示されている。そして、このようなICCG領域は、HAZ内での局所脆化域となって、CTOD(Crack−Tip Opening Displacement)試験において限界CTOD値が低くなり得ることが示されている。
ICCG領域で多数形成されるMAは、周囲のマトリクス金属組織に比べて硬質であるため、脆性破壊の起点となりやすい。即ち、粗大組織中にMAが多数形成したICCGHAZでの靭性は、著しく低くなることが知られている。
HAZ靭性の評価は、溶接金属とHAZとの境界であるFL(Fusion Line)領域、およびHAZと母材の境界であるIC(Inter−Critically HAZ)領域で行なわれるのが一般的である。またICCG領域やCG領域は、上記FL領域の一部に相当するが、FL領域のHAZ靭性はCG領域で評価されるのが一般的である。
しかしながら、多層盛溶接におけるHAZ靭性を評価するに当たっては、FL領域のうちのCG領域やIC領域の各領域で靭性を評価するだけでは不十分である。こうしたことから、溶接継手全体の低温靭性を向上させるためには、最脆化部であるICCGHAZでの低温靭性を更に改善することが重要となる。
HAZ靭性向上に関して、これまで様々な研究が行われてきた。現在、HAZ靭性を向上させる手段としては、TiN等の介在物のピン止め効果によるオーステナイト粗大化抑制や、酸化物を起点とした粒内核生成による組織微細化、合金元素低減によるHAZ硬さ低減が行われている。
更に、海洋構造物に使用される厚鋼板では、良好なHAZ靭性を確保すると共に、鋼板母材としての強度が高いことも必要である。こうした観点から厚鋼板に要求される高い強度と共に良好なHAZ靭性を確保するため、例えば特許文献1〜3に示す様々な技術が提案されている。
特許文献1では、化学成分組成を調整して非金属介在物を低減すると共に、HAZでの硬さを低減し、且つTi酸化物による粒内変態を活用して、HAZ組織を微細化することで、−60℃での良好な低温継手靭性を確保している。
特許文献2では、圧延終了後室温まで冷却した後、焼戻しを行い、微細なMo炭化物やTi−Nb炭窒化物がCuの析出を促進し、析出強化によって高い母材強度を確保すると共に、Al量を低減し、溶接部のMAを低減している。
特許文献3では、Ti/N比を制御してTiNを分散させ、オーステナイト粒を微細化すると共に、C、SiおよびAlの添加量を制限して、鋼板中のMAの生成量を低減することによって、−40℃以下でのCTOD試験で良好な靭性を確保している。
一方、特許文献4には、入熱量が25kJ/mmを超える大入熱溶接おいて形成されるHAZの靭性を向上させる技術が提案されている。この技術では、HAZのミクロ組織において、MAの面積率を1.0面積%未満とすると共に、鋼中にAlとCaを含む粒径5.0μm以下の介在物を存在させ、その介在物のアスペクト比を1.9以下としている。
日本造船学会誌 第723号:平成元年9月 第47〜54頁「材料研究・最近の動向」−(その4)海洋構造物用鋼の溶接熱影響部における局所脆化域−
特開2010−248590号公報 特開2000−45044号公報 特開2012−72421号公報 特開2013−87334号公報
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、優れたICCGHAZ靭性が実現できる厚鋼板を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、優れた母材靭性が実現できる厚鋼板を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、高強度の厚鋼板を提供することにある。
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述から明らかになるであろう。
上記課題を解決した本発明の厚鋼板は、
質量%で、
C :0.01〜0.08%、
Si:0%以上、0.5%以下、
Mn:1.0〜2.2%、
P :0%超、0.02%以下、
S :0%超、0.015%以下、
Al:0.001〜0.06%、
Ni:0.5〜3.0%、
Nb:0.001〜0.06%、
Ti:0.002〜0.05%、
N :0.001〜0.01%、
を夫々含有し、残部が鉄および不可避不純物であり、
下記式(1)で求められるF値が400以下であり、且つ、
板厚をtとしたとき、t/4位置での圧延方向および板厚方向に平行な断面の金属組織において、円相当径:1.5μm以上の酸化物の平均真円度が1.8以下であると共に、前記酸化物の個数密度が200個/mm2以下であることを特徴とする。
F値=550−1176×[C]−73×[Mn]−31×[Ni]・・・(1)
但し、[C]、[Mn]および[Ni]は、夫々C、MnおよびNiの質量%での含有量を表す。
本発明において、酸化物の「円相当径」とは、酸化物の大きさを同一面積の円に換算したときの直径を意味する。
本発明の厚鋼板においては、前記t/4位置における圧延方向および板厚方向に平行な断面での金属組織において、100μm×100μmの任意の視野を、走査型電子顕微鏡を用いてEBSP法(Electron Back Scatter Pattern:電子後方散乱解析像法)により0.2μmのステップ間隔で結晶方位を測定し、その方位差が15°以上となる粒界と、板厚方向に引いた4本の直線との交点の数から測定した交点間距離の測定値の平均値dが5.0μm以下であることが好ましい。
本発明の厚鋼板においては、前記t/4位置における圧延方向および板厚方向に平行な断面での金属組織において、(A)フェライトの分率が0〜20面積%であること、(B)島状マルテンサイトの分率が6.0面積%以下であること、(C)前記島状マルテンサイトの平均円相当径が2.0μm以下であること等が好ましい。
尚、島状マルテンサイトの「平均円相当径」とは、島状マルテンサイトの大きさを同一面積の円に換算したときの直径の平均値を意味する。
本発明の厚鋼板は、必要に応じて、更に(i)Cu:0%超、1.5%以下、Mo:0%超、1.5%以下、Cr:0%超、1.5%以下およびV:0%超、0.5%以下よりなる群から選択される1種以上を含有し、Cuを含むときはNi/Cu≧1の関係を満足する、(ii)REM:0%超、0.01%以下およびZr:0%超、0.007%以下よりなる群から選択される1種以上、(iii)Ca:0%超、0.003%以下を含有することも有用であり、含有される成分の種類に応じて厚鋼板の特性が更に改善される。
本明細書において開示される発明によって得られる効果を簡単に説明すれば、以下の通りである。即ち、本発明によれば、ICCGHAZ靭性に優れた厚鋼板を実現することができる。
図1は、本発明に係る厚鋼板を示す概略説明図である。
本発明者らは、優れたICCGHAZ靭性を得るための要件について、様々な角度から検討した。その結果、下記に詳述するF値を400以下とすると共に、所定大きさの酸化物の真円度や個数密度を適切に制御すれば、優れたICCGHAZ靭性が実現できることを見出し、本発明を完成した。以下、優れたICCGHAZ靭性を実現させるための上記要件、および母材の強度や靭性を確保するための要件について順次説明する。
本発明では、上記式(1)で表されるF値を400以下にすることが必要である。ICCGHAZ靭性を向上させるためには、MAの硬さを低減することが必要であり、MA中のオーステナイトの割合を増加させることでMAの硬さが低減される。オーステナイトを安定化させるには、Cをオーステナイト中に濃縮させる必要があるが、そのためにはマルテンサイト変態を遅らせること、即ち逆変態オーステナイトのマルテンサイト変態開始温度であるMs点を下げる必要がある。逆変態オーステナイトのMs点は、C、MnおよびNiの含有量を調整することによって制御することができる。所望とするICCGHAZ靭性を満たすには、上記式(1)で表されるF値を400以下にする必要がある。
上記F値は、好ましくは380以下であり、より好ましくは360以下である。上記F値の下限については、C、MnおよびNiの含有量によって必然的に決定されるが、好ましくは280以上であり、より好ましくは300以上、更に好ましくは320以上である。
本発明の厚鋼板においては、板厚をtとしたとき、t/4位置での圧延方向および板厚方向に平行な断面の金属組織において、(a)円相当径:1.5μm以上の酸化物の平均真円度が1.8以下、(b)円相当径:1.5μm以上の酸化物の個数密度が200個/mm2以下、等の要件を満足する必要がある。本発明で規定するこれらの要件について説明する。以下では、「溶接金属」や「溶接熱影響部」と区別して、鋼板自体を指すときには、「母材」と呼んでいる。
図1は、本発明に係る厚鋼板を示す概略説明図である。このうち図1(a)は、本発明に係る厚鋼板の概略斜視図であり、図1(b)は、本発明に係る厚鋼板の概略側面図である。図1中、Lは圧延方向、Wは幅方向、Dは板厚方向を示しており、S1は鋼板の表面を、S2は圧延方向Lおよび板厚方向Dに平行な断面を示している。
上記(a)および(b)の各要件は、上記断面S2において、板厚をtとしたときにt/4位置での金属組織の要件である。尚、金属組織の要件を規定する位置として、上記「t/4位置」を選択したのは、母材組織を評価する上で適切な位置だからである。また、板厚のt/4位置における断面は、基本的に線上の領域となるが、実際の組織観察をするときには、その位置を中心として一定の広がりのある領域を観察することになる(後記実施例を参照)。
上記t/4位置での圧延方向および板厚方向に平行な断面の金属組織において、MAの分率は、6.0面積%以下にすることが好ましい。MAは、周囲のマトリクスと比べて硬質なため応力集中が起こり易く、MAと母相マトリクスとの界面、若しくはMA自身が脆性破壊の起点となりやすい。MAの分率が6.0面積%を上回ると、所望とする母材靭性が得られ難くなる。MAの分率は、より好ましくは4.0面積%以下であり、更に好ましくは2.0面積%以下である。尚、MAの分率の下限は、特に限定されないが、本発明の厚鋼板においては、0面積%とすることは殆ど不可能であり、概ね0.1面積%以上存在することになる。
また、MAの平均円相当径は2.0μm以下であることが好ましい。上述の通り、MAは、母相マトリクスと比べて硬質なため脆性破壊の起点となりやすく、特にMAが粗大化した場合には、MAと母相マトリクスとの界面の面積が大きくなるため、初期亀裂が大きくなってしまい、破壊発生を助長する。こうした観点から、母材靭性の確保のため、MAの平均円相当径は2.0μm以下とすることが好ましい。MAの平均円相当径は、より好ましくは1.5μm以下であり、更に好ましくは1.0μm以下である。尚、MAの平均円相当径の測定限界は、0.1μm以上である。
本発明の鋼板において、主な金属組織はベイナイトである。具体的には、ベイナイトを、分率で80面積%以上含むものである。好ましくは85面積%以上、より好ましくは90面積%以上である。
更に、本発明の鋼板の組織として、上記t/4位置での圧延方向および板厚方向に平行な断面の金属組織において、フェライトの分率を0〜20面積%にすることが好ましい。特に、鋼板の強度確保のため、軟質な組織であるフェライトの分率の上限は20面積%とすることが好ましい。フェライトの分率の上限は、好ましくは18面積%以下であり、より好ましくは16面積%以下である。
また、ベイナイト、フェライトおよびMAを除いた残部組織は、マルテンサイトやセメンタイトである。
本発明の厚鋼板における金属組織における各相の形態は上記の通りであるが、上記金属組織中に分散している酸化物の形態も、適切に調整する必要がある。即ち、本発明の厚鋼板においては、円相当径が1.5μm以上となる粗大な酸化物の平均真円度を1.8以下にすることが必要である。
上記粗大な酸化物は、周囲のマトリクスと比べて硬質であるため、応力集中を起こしやすく、特に粗大な酸化物ほど破壊の発生を助長する原因となる。また歪な形状を有する酸化物では、より局所的に応力が高まってしまう。そのため、円相当径が1.5μm以上の酸化物の平均真円度が1.8を超えると、所望とする母材靭性およびICCGHAZ靭性が得られなくなる。
ここで酸化物の形態として、「平均真円度」で規定したのは、例えばアスペクト比のように長径と短径の比を規定すると、歪な形状の酸化物を含む可能性があり、上記特性を正確に評価できないからである。尚、酸化物の平均真円度は、下記式(2)から求められる真円度の平均値である。この平均真円度は、1に近ければ近いほどより真円に近いものとなるが、好ましくは1.4以下であり、より好ましくは1.2以下であり、最も好ましくは1である。
真円度=(酸化物の周囲長さ)2/[4×π×(酸化物の面積)]・・・(2)
円相当径が1.5μm以上の酸化物の個数密度は、200個/mm2以下とする必要がある。上述の通り、酸化物は応力集中の原因となるため、特に破壊の起点となりやすい粗大な酸化物の数を低減する必要がある。円相当径が1.5μm以上の酸化物の個数密度が200個/mm2を上回ると、所望とする母材靭性およびICCGHAZ靭性が得られなくなる。円相当径が1.5μm以上の酸化物の個数密度は、好ましくは150個/mm2以下であり、より好ましくは120個/mm2以下である。この酸化物の個数密度の下限については、特に限定するものではないが、概ね50個/mm2以上となる。個数密度の測定対象となる酸化物は、円相当径が1.5μm以上の酸化物の全てであり、必ずしも真円度が1.8以下のものに限らない。
尚、本発明において酸化物の種類は特に限定されず、例えばTi、Al、Ca、REM、Zr、Mn、Si等を含む酸化物が挙げられる。
上記の要件を満足することによって、母材の強度および靭性、並びにICCGHAZ靭性に優れた厚鋼板が得られる。母材靭性を更に改善する上で、下記の要件を満足することが好ましい。即ち、t/4位置における圧延方向および板厚方向に平行な断面での金属組織において、100μm×100μmの任意の視野を、走査型電子顕微鏡を用いてEBSP法により0.2μmのステップ間隔で結晶方位を測定し、その方位差が15°以上となる粒界と、板厚方向に引いた4本の直線との交点の数から交点間距離を測定したとき、その測定値の平均値dが5.0μm以下とすることによって、母材靭性を更に改善できる。
上記したとおり本発明の厚鋼板は、上記要件を満足するフェライトおよびMAと残部組織はベイナイトであり、一部マルテンサイトを含むことがある。上記交点間距離の測定値の平均値d(以下、「平均交点間距離d」と呼ぶことがある)は、こうした混合組織における各相の結晶粒の平均値を示している。上記の測定方法によれば、混合組織中に含まれる酸化物の形態に影響されることなく、混合組織における各相の結晶粒を測定できる。こうした要件を満足することによって、母材靭性を更に改善した厚鋼板が得られる。平均交点間距離dは、より好ましくは4.0μm以下であり、更に好ましくは3.0μm以下である。尚、平均交点間距離dの下限は概ね1.0μm以上である。
次に、本発明の高強度厚鋼板の化学成分組成について説明する。本発明では、その化学成分組成(C、Si、Mn、P、S、Al、Ni、Nb、TiおよびN)を適切に調整することも重要な要件である。これらの成分による作用および範囲設定理由は下記の通りである。
C:0.01〜0.08%
Cは、母材の強度を確保する上で重要な元素である。こうした効果を発揮させるためには、C含有量は0.01%以上とする必要がある。好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.03%以上である。しかしながら、C含有量が過剰になると、MAが増加し、母材靭性が劣化する。また、溶接時においてMAが生成しやすくなり、ICCGHAZ靭性が劣化するため、0.08%以下とする必要がある。好ましくは0.07%以下であり、より好ましくは0.06%以下である。
Si:0%以上、0.5%以下
Siは、母材の強度を確保する上で有効な元素であるが、含有量が過剰になるとMAが増加し、母材およびHAZ靭性が低下するため、その上限は0.5%以下とする必要がある。Si含有量の好ましい上限は0.40%以下、より好ましくは0.35%以下である。尚、Si含有量の下限は特に限定されず、0%であってもよいが、0.05%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.1%以上である。
Mn:1.0〜2.2%
Mnは、母材の強度を確保する上で必要な元素である。Mn含有量が1.0%未満であると、強度が不足することになる。Mn含有量の好ましい下限は1.1%以上であり、より好ましくは1.2%以上である。一方、Mn含有量が2.2%を超えて過剰になると、ICCGHAZの硬さが上昇し、ICCGHAZ靭性劣化の原因となる。Mn含有量の好ましい上限は2.0%以下であり、より好ましくは1.8%以下である。
P:0%超、0.02%以下
Pは、偏析しやすく粒界割れの原因となり母材靭性に悪影響を及ぼす不純物元素であるため、含有量はできるだけ少ないことが好ましい。こうした観点から、P含有量は0.02%以下に制御する必要がある。P含有量は、好ましくは0.018%以下であり、より好ましくは0.010%以下である。
S:0%超、0.015%以下
Sは、偏析しやすく粒界割れの原因となり母材靭性に悪影響を及ぼす不純物元素であるため、含有量はできるだけ少ないことが望ましい。こうした観点から、S含有量は0.015%以下に制御する必要がある。S含有量の好ましい上限は、0.012%以下であり、より好ましくは0.010%以下である。
Al:0.001〜0.06%
Alは脱酸元素として有用な元素である。そのためAl含有量は、0.001%以上とする必要がある。Al含有量の好ましい下限は0.002%以上、より好ましくは0.005%以上、更に好ましくは0.010%以上である。しかしながら、Al含有量が過剰になると、炭化物析出を抑制し、MAの増加の原因となるため、0.06%以下とする必要がある。Al含有量の好ましい上限は、0.050%以下であり、より好ましくは0.045%以下である。
Ni:0.5〜3.0%
Niは、ICCGHAZ靭性および母材強度の向上に有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Niは0.5%以上含有させる必要がある。即ち、Ni含有量が0.5%に満たないと、母材強度が低下すると共に、ICCGHAZ靭性が劣化する。Ni含有量の好ましい下限は0.65%以上であり、より好ましくは0.8%以上である。しかしながら、Niは高価な元素であり、コストの観点から上限は3.0%以下とする。好ましくは2.0%以下であり、より好ましくは1.5%以下である。
Nb:0.001〜0.06%
Nbは、母材の強度を向上する上で有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、Nbは0.001%以上含有させる必要がある。Nb含有量の好ましい下限は0.005%以上であり、より好ましくは0.010%以上である。しかしながら、Nb含有量が過剰になると、MAを形成しやすく、母材靭性およびICCGHAZ靭性が劣化するため、0.06%以下とする必要がある。好ましくは0.04%以下であり、より好ましくは0.03%以下である。
Ti:0.002〜0.05%
Tiは、TiNを形成して旧オーステナイト粒径の粗大化を抑制し、ICCGHAZの組織の微細化を図り、ICCGHAZ靭性の向上に有効な元素である。こうした効果を有効に発揮させるためには、Tiは0.002%以上含有させる必要がある。Ti含有量の好ましい下限は0.005%以上であり、より好ましくは0.010%以上である。しかしながら、Ti含有量が過剰になるとTiNが粗大化し、母材およびICCGHAZ靭性の劣化を招く。こうした観点から、Ti含有量は0.05%以下とする必要がある。好ましい上限は0.03%以下であり、より好ましくは0.02%以下である。
N:0.001〜0.01%
Nは、TiN等のTi窒化物を形成し、旧オーステナイト粒径の粗大化を抑制する効果がある。こうした効果を有効に発揮させるためには、Nは0.001%以上含有させる必要がある。N含有量の好ましい下限は0.002%以上であり、より好ましくは0.003%以上である。しかしながら、N含有量が過剰になると、TiN等のTi窒化物が粗大化し、靭性に悪影響がある。その結果、母材靭性およびICCGHAZ靭性の劣化を招く。こうした観点から、N含有量は0.01%以下とする必要がある。好ましくは0.0085%以下であり、より好ましくは0.007%以下である。
本発明で規定する含有元素は上記の通りであって、残部は鉄および不可避不純物である。不可避不純物として、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素の混入が許容され得る。また、本発明の厚鋼板は、必要に応じて以下の元素を含有していても良く、含有される元素の種類に応じて厚鋼板の特性が更に改善される。
Cu:0%超、1.5%以下、Mo:0%超、1.5%以下、Cr:0%超、1.5%以下およびV:0%超、0.5%以下よりなる群から選択される1種以上であり、Cuを含むときはNi/Cu≧1の関係を満足すること
Cu、Mo、CrおよびVは、いずれも母材の高強度化に有効な元素である。上記効果を発揮させるためには、CuおよびCrについては0.1%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.2%以上である。またMoについては0.05%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.1%以上であり、更に好ましくは0.2%以上である。Vについては、0.001%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.002%以上である。しかしながら、これらの元素を過剰に含有させると、ICCGHAZが硬くなり過ぎて、ICCGHAZ靭性の劣化を招く。こうした観点から、Cu、MoおよびCrについては、1.5%以下とすることが好ましい。より好ましくは、1.0%以下である。またVについては、0.5%以下とすることが好ましい。より好ましくは、0.4%以下である。
尚、Cuを含むときは、Cu起因による赤熱脆性と呼ばれる加工中の表面割れを抑制するという観点から、Cu含有量とNi含有量の比、即ちNi/Cuは1以上とすることが好ましい。Ni/Cuのより好ましい下限は、1.2以上であり、更に好ましくは1.5以上である。また、Ni/Cuの好ましい上限は、8.0以下であり、より好ましくは6.0以下であり、更に好ましくは4.0以下である。
REM:0%超、0.01%以下およびZr:0%超、0.007%以下よりなる群から選択される1種以上
REM(Rare Earth Metal)は、酸化物を形成し、粒内組織を微細化させるため、母材靭性およびICCGHAZ靭性の向上に有効な元素である。こうした効果を発揮させるためには、REMは0.0002%以上含有させることが好ましい。より好ましくは0.0005%以上である。しかしながら、REMを過剰に含有させると酸化物が粗大になり、母材靭性およびICCGHAZ靭性の劣化を招くので、0.01%以下にすることが好ましい。より好ましくは0.005%以下である。尚、本発明においてREMは、周期律表3族に属するスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、およびランタノイド系列希土類元素(原子番号57〜71)のいずれをも用いることができる。特に、La、Ceを用いることが好ましい。
一方、ZrはREMと同様に、酸化物を形成し、粒内組織を微細化させて、母材靭性およびICCGHAZ靭性の向上に有効である。こうした効果を発揮させるためには、0.0002%以上含有させることが好ましい。より好ましくは、0.0005%以上である。しかしながら、Zrを過剰に含有させると、酸化物が粗大になり靭性の劣化を招くので、0.007%以下にすることが好ましい。より好ましくは0.005%以下である。
Ca:0%超、0.003%以下
Caは、母材靭性およびICCGHAZ靭性に有害となる圧延方向に伸長するMnSの生成を抑制するために有効な元素である。また脱酸のためにも有効な元素である。これらの効果を有効に発揮させるため、Ca含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。より好ましくは0.0008%以上であり、更に好ましくは0.0010%以上である。しかしながら、Ca含有量が過剰になると、粗大な酸化物が増加するので、0.003%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.0028%以下であり、更に好ましくは0.0025%以下である。
本発明の厚鋼板を得るためには、化学成分組成を上記のように適切に調整した鋼を用い、下記のような適切な製造条件を実施することが好ましい。以下、本発明で規定する各要件、および本発明の好ましい要件を満足させるための製造条件について、製造手順に従って説明する。尚、下記に示す適切な製造条件以外は特に限定されず、従前の方法を利用することができる。また、本発明で規定する構成を逸脱しない範囲であれば、必要に応じて、例えば、焼鈍、焼準、時効、焼き入れ、焼き戻しなどを適宜施して、金属組織の調整がなされてもよい。
まず溶製時には、Al、Caなどの脱酸元素の添加から凝固完了までの時間を200分以内とする。この時間が200分を超えると、粗大な酸化物が増加し、最終的な酸化物の個数密度が所定の範囲を外れることになる。好ましくは175分以内、より好ましくは150分以内である。実際の操業を考慮すると、脱酸元素の添加から凝固完了までの時間の下限は、概ね30分程度である。尚、脱酸元素の添加順序は、何ら限定されず、例えばAlを添加してからCaを添加してもよいし、その逆であっても良い。要するに、脱酸元素を添加してから凝固完了までの時間が上記のように調整されていればよい。尚、脱酸元素を添加してから凝固完了までの時間は、鋳造を開始するまでの時間を制御することによって、調整できる。また、凝固完了の時期は、鋳型形状に基づき、計算によって算出することができる。
凝固完了後は、1500℃から1450℃までの冷却時間を300秒以下とする。この時間が300秒よりも長くなると、溶鋼中に生成した酸化物表面に酸化物や硫化物といった二次介在物が生成し、最終的な酸化物の平均真円度が所定の範囲を逸脱する。平均真円度が悪くなると、応力集中が起こり、母材靭性およびICCGHAZ靭性を損ねる。好ましくは280秒以下であり、より好ましくは250秒以下である。実際の操業を考慮すると冷却時間の下限は150秒程度である。
最終圧延温度は、Ar3変態点以上、860℃以下とすることが好ましい。最終圧延温度が860℃を超えると、組織の微細化が十分達成できなくなり、好ましい要件である所定のMAサイズが維持できなくなる。また最終圧延温度がAr3変態点を下回ると、フェライト変態が開始してしまい、組織の微細化が達成できない。最終圧延温度のより好ましい下限はAr3変態点+20℃以上であり、更に好ましくはAr3変態点+40℃以上である。また最終圧延温度のより好ましい上限は840℃以下であり、更に好ましくは820℃以下である。
上記Ar3変態点は、下記式(3)によって求められる値である。尚、本発明で規定する化学成分組成では、Ar3変態点は670〜740℃程度となる。
Ar3変態点=910−230×[C]+25×[Si]−74×[Mn]−56×[Cu]−16×[Ni]−9×[Cr]−5×[Mo]−1620×[Nb]・・・(3)
但し、[C],[Si],[Mn],[Cu],[Ni],[Cr],[Mo]および[Nb]は、夫々C,Si,Mn,Cu,Ni,Cr,MoおよびNbの質量%での含有量を示す。
仕上げ圧延時においては、1パスあたりの圧下率を4%以上とすることが好ましい。この圧下率は、仕上げ圧延時の各パスの圧下率の最小値を意味する。このときの圧下率が4%未満となると、結晶粒の微細化が不十分となり、最終的な組織サイズが所定の範囲を逸脱し、好ましい要件である5.0μm以下の平均交点間距離dが得られ難くなる。但し、このときの圧下率が15%を超えると、ミルへの負荷が大きくなる。圧延時の1パスあたりの圧下率は、より好ましくは5%以上であり、12%以下である。
尚、上記「圧下率」は、式(4)から計算される値である。
圧下率=(t0−t1)/t0×100 ・・・(4)
式(4)中、t0は、表面の温度が圧延温度範囲にあるときの鋼片の圧延開始厚み(単位:mm)、t1は、表面の温度が圧延温度範囲にあるときの鋼片の圧延終了厚み(単位:mm)を、夫々示す。
仕上げ圧延時のパス間時間は20秒以下とすることが好ましい。このパス間時間は、仕上げ圧延時の各パス間時間の最大値を意味する。パス間時間が20秒を超えると、再結晶が進行し過ぎるため、微細な組織が得られず、最終的な組織サイズが所定の範囲を逸脱し、好ましい要件である5.0μm以下の平均交点間距離dが得られ難くなる。実際の工程負荷を考えると下限は4秒程度となる。パス間時間は、より好ましくは15秒以下であり、5秒以上である。
仕上げ圧延後の平均冷却速度は、2℃/秒以上、15℃/秒以下とすることが好ましい。このときの平均冷却速度が2℃/秒未満となると、好ましい要件であるフェライトの分率が所定の範囲を超えることになる。またこの平均冷却速度を2℃/秒以上とすることによって、ベイナイトを主体とする組織とすることができる。一方、平均冷却速度が15℃/秒を超えると、鋼板が反ってしまうので15℃/秒以下とすることが好ましい。平均冷却速度は、より好ましくは5℃/秒以上であり、13℃/秒以下である。
上記平均冷却速度で冷却したときの冷却停止温度は、300〜500℃の温度範囲とすることが好ましい。この冷却停止温度が300℃よりも低くなると、MAの分率が所定の範囲を逸脱する。一方、冷却停止温度が500℃よりも高くなると、粗大な組織が生成し、MAサイズが所定の範囲を維持できなくなる。冷却停止温度は、より好ましくは350℃以上、450℃以下である。
本発明の厚鋼板の板厚は、少なくとも6mm以上、好ましくは15mm以上、より好ましくは20mm以上、100mm以下程度である。
本発明は、入熱量が1.5〜6.0kJ/mm程度の小中熱溶接によって多層盛溶接したときのICCGHAZ靭性の向上を図るものである。適用される溶接法については、上記のような条件で多層盛溶接が実施できるものであれば何ら限定されず、代表的な溶接法として、MIG溶接(inert−gas metal−arc welding法)、炭酸ガスアーク溶接、およびMAG溶接(metal active−gas shielded arc welding法)等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
表1に示す化学成分組成の鋼材を用いて、真空溶解炉により150kgの溶鋼を溶製し、鋳造してスラブとした後、加熱、熱間圧延、冷却の工程を経ることで、仕上げ板厚が50mmの厚鋼板を製造した。この製造において、Al、Caなどの脱酸元素の添加から凝固完了までの時間、鋳造時の1500℃から1450℃までの冷却時間、最終圧延温度、仕上げ圧延時の各パス圧下率の最小値、仕上げ圧延時の各パス間時間の最大値、平均冷却速度、冷却停止温度は、表2に示す条件とした。尚、表1において、「−」と表示された部分は未添加であることを意味する。
Figure 2017082267
Figure 2017082267
得られた各鋼板について、以下の要領に従って、MAの分率、MAの平均円相当径、円相当直径が1.5μm以上の酸化物の平均真円度、円相当直径1.5μm以上の酸化物の個数密度、および平均交点間距離dを測定すると共に、母材の強度、母材靭性およびICCGHAZ靭性を評価した。
(MAの分率の測定)
板厚をtとしたとき、各鋼板の表面から深さt/4の位置から試験片を切り出し、圧延方向および板厚方向に平行な断面をレペラ試薬で腐食し、1000倍にて光学顕微鏡で5600μm2の面積を有する視野を2視野撮影し、画像解析によりMAの分率(以下、「MA分率」と呼ぶ)を算出した。このときの観察領域は、鋼板の表面から深さt/4の位置を中心とし、5600μm2の面積を有する視野とした。
(MAの平均円相当径の測定)
板厚をtとしたとき、各鋼板の表面から深さt/4の位置から試験片を切り出し、圧延方向および板厚方向に平行な断面をレペラ試薬で腐食し、1000倍にて光学顕微鏡で5600μm2の面積を有する視野を2視野撮影し、画像解析によりMAの平均円相当径(以下、「MA平均円相当径」と呼ぶ)を算出した。このときの観察領域は、鋼板の表面から深さt/4の位置を中心とし、5600μm2の面積を有する視野とした。
(円相当径1.5μm以上の酸化物の平均真円度の測定)
各鋼板の表面から深さt/4の位置から試験片を切り出し、圧延方向および板厚方向に平行な断面を鏡面研磨し、400倍にて光学顕微鏡で35000μm2の面積を有する視野を5視野撮影し、Media Cybernetics社製「Image−Pro Plus」を用いて画像解析を行い、円相当径が1.5μm以上の酸化物の平均真円度を算出した。このときの観察領域は、鋼板の表面から深さt/4の位置を中心とし、35000μm2の面積を有する視野とした。
(円相当径が1.5μm以上の酸化物の個数密度の測定)
各鋼板の表面から深さt/4の位置から試験片を切り出し、圧延方向および板厚方向に平行な断面を鏡面研磨し、400倍にて光学顕微鏡で35000μm2の面積を有する視野を5視野撮影し、Media Cybernetics社製「Image−Pro Plus」を用いて画像解析を行い、円相当径1.5μm以上の酸化物におけるmm2当たりの個数、即ち個数密度を算出した。このときの観察領域は、鋼板の表面から深さt/4の位置を中心とし、35000μm2の面積を有する視野とした。
(平均交点間距離dの測定)
各鋼板の表面から深さt/4の位置から試験片を切り出し、圧延方向および板厚方向に平行な断面を、走査型電子顕微鏡を用いてEBSP法により100μm×100μmの視野を0.2μmのステップ間隔で結晶方位を測定した。方位差が15度以上の粒界と、板厚方向に引いた4本の直線との交点の数から交点間距離の平均値を平均交点間距離dとして算出した。このときの観察領域は、鋼板の表面から深さt/4の位置を中心とし、板厚方向両側に夫々50μmの広がりのある領域とした。
(フェライト分率の測定)
各鋼板の表面から深さt/4の位置から試験片を切り出し、圧延方向および板厚方向に平行な断面を鏡面研磨の後、ナイタール腐食した試料から、400倍にて光学顕微鏡で35000μm2の面積を有する視野を2視野撮影し、Media Cybernetics社製「Image−Pro Plus」を用いて画像解析を行い、フェライトの分率の平均値を算出した。このときの観察領域は、鋼板の表面から深さt/4の位置を中心とし、35000μm2の面積を有する視野とした。
(母材強度の評価)
各厚鋼板の表面から深さt/2の位置から、圧延方向に対して直角の方向に、JIS Z 2201の4号試験片を採取し、JIS Z 2241に従って各1回の引張試験を行い、降伏強度YS(Yield Strength)を測定した。
(母材靭性の評価)
各厚鋼板の表面から深さt/2の位置から、板幅方向に平行に、JIS Z2242のVノッチシャルピー衝撃試験片を3本ずつ採取した。このとき、試験片の軸心が前記t/2の位置を通るように採取した。採取した試験片に対し、−80℃でシャルピー衝撃試験を実施し、3本のシャルピー衝撃試験片の脆性破面率を測定し、その平均値が60%以下を基準として母材靭性を評価した。更に、その平均値が50%以下であるとき、即ち破面遷移温度が−80℃以下となるものを、母材靭性がより優れると評価した。
(ICCGHAZ靭性の評価)
各厚鋼板の表面から深さt/4の位置から、12.5mm×32mm×55mmの試験片を切り出し、ICCGHAZを模擬した熱サイクル試験を行った。このときの熱サイクル試験は1400℃で5秒間保持した後、室温までガス冷却し、更に750℃で5秒保持した後、ガス冷却を行った。これら試験片から、シャルピー衝撃試験片(JIS Z 2242のVノッチ試験片)を3本ずつ採取し、−40℃でシャルピー衝撃試験を行った。このとき、3本の試験片について吸収エネルギーvE-40を測定し、吸収エネルギーvE-40の平均が39J以上を基準としてICCGHAZ靭性を評価した。
上記の測定結果を、下記表3に示す。
Figure 2017082267
表3から、次のように考察できる。まず試験No.1〜21、30〜35は、本発明で規定する要件を満足する例であり、ICCGHAZ靭性の基準を満たすことを確認した。
上記のうち、試験No.1〜21は、本発明の好ましい要件を全て満たす例であり、ICCGHAZ靭性に加えて、母材の降伏強度YSの基準を満たし、更に優れた母材靭性を有することを確認した。
試験No.30は、ICCGHAZ靭性は基準を満たしたが、最終圧延温度が好ましい範囲よりも高くなって、MAの平均円相当径が大きくなり、また平均交点間距離dも大きくなった例であり、母材靭性が基準を満たさなかった。
試験No.31、32は、「平均交点間距離dが5.0μm以下」の要件を除いて、本発明の好ましい要件を満たす例であり、ICCGHAZ靭性、母材の降伏強度YSおよび母材靭性の基準を満たすことを確認した。
試験No.33は、ICCGHAZ靭性、母材靭性は基準を満たしたが、冷却停止温度が好ましい範囲よりも高いため、フェライト分率が高くなり、母材の降伏強度YSが基準を満たさなかった。
試験No.34は、ICCGHAZ靭性、母材の降伏強度YSは基準を満たしたが、冷却停止温度が好ましい範囲よりも低いため、MA分率が高くなり、母材靭性が基準を満たさなかった。
試験No.35は、ICCGHAZ靭性、母材靭性は基準を満たしたが、平均冷却速度が好ましい範囲よりも低いため、フェライト分率が高くなり、母材の降伏強度YSが基準を満たさなかった。
これに対し試験No.22〜29は、本発明で規定する要件のいずれかを満足しない例であり、ICCGHAZ靭性が基準を満たさなかった。
このうち試験No.22〜27は、元素の添加量が適正な範囲を逸脱した例である。その結果、母材の特性、HAZ靭性の少なくともいずれかの評価基準を満たしていない。具体的には、試験No.22は、C含有量が過剰な鋼材を用いた例であり、MA分率が大きくなって、母材靭性およびICCGHAZ靭性のいずれも劣化している。試験No.23は、Mn含有量が過剰な鋼材を用いた例であり、ICCGHAZ靭性が劣化している。
試験No.24は、Mn含有量が少なく且つF値が400よりも大きい鋼材を用いた例であり、母材の強度が低下すると共に、ICCGHAZ靭性が劣化している。試験No.25は、Nb含有量が過剰な鋼材を用いた例であり、母材靭性およびICCGHAZ靭性のいずれも劣化している。試験No.26は、F値が400よりも大きい鋼材を用いた例であり、ICCGHAZ靭性が劣化している。試験No.27は、Ni含有量が少ない鋼材を用いた例であり、母材の強度が低下すると共に、ICCGHAZ靭性が劣化している。
一方、試験No.28、29は、化学成分組成は本発明で規定する範囲内であるが、製造条件が適正な範囲を逸脱し、本発明で規定する要件のいずれかを満たさない例である。具体的には、試験No.28は、脱酸元素の添加から凝固完了までの時間が長くなって酸化物の個数密度が大きくなった例であり、母材靭性およびICCGHAZ靭性が基準を満たさなかった。
試験No.29は、鋳造時の1500℃から1450℃までの冷却時間が長くなって、酸化物の平均真円度が1.8を超えた例であり、母材靭性およびICCGHAZ靭性が基準を満たさなかった。

Claims (8)

  1. 質量%で、
    C :0.01〜0.08%、
    Si:0%以上、0.5%以下、
    Mn:1.0〜2.2%、
    P :0%超、0.02%以下、
    S :0%超、0.015%以下、
    Al:0.001〜0.06%、
    Ni:0.5〜3.0%、
    Nb:0.001〜0.06%、
    Ti:0.002〜0.05%、
    N :0.001〜0.01%、
    を夫々含有し、残部が鉄および不可避不純物であり、
    下記式(1)で求められるF値が400以下であり、且つ、
    板厚をtとしたとき、t/4位置での圧延方向および板厚方向に平行な断面の金属組織において、円相当径:1.5μm以上の酸化物の平均真円度が1.8以下であると共に、前記酸化物の個数密度が200個/mm2以下であることを特徴とする厚鋼板。
    F値=550−1176×[C]−73×[Mn]−31×[Ni]・・・(1)
    但し、[C]、[Mn]および[Ni]は、夫々C、MnおよびNiの質量%での含有量を表す。
  2. 前記t/4位置における圧延方向および板厚方向に平行な断面での金属組織において、100μm×100μmの任意の視野を、走査型電子顕微鏡を用いてEBSP法により0.2μmのステップ間隔で結晶方位を測定し、その方位差が15°以上となる粒界と、板厚方向に引いた4本の直線との交点の数から測定される交点間距離の平均値dが5.0μm以下である請求項1に記載の厚鋼板。
  3. 前記t/4位置における圧延方向および板厚方向に平行な断面での金属組織において、フェライトの分率が0〜20面積%である請求項1または2に記載の厚鋼板。
  4. 前記t/4位置における圧延方向および板厚方向に平行な断面での金属組織において、島状マルテンサイトの分率が6.0面積%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の厚鋼板。
  5. 前記島状マルテンサイトの平均円相当径が2.0μm以下である請求項4に記載の厚鋼板。
  6. 更に、Cu:0%超、1.5%以下、Mo:0%超、1.5%以下、Cr:0%超、1.5%以下およびV:0%超、0.5%以下よりなる群から選択される1種以上を含有するものであり、Cuを含むときはNi/Cu≧1の関係を満足する請求項1〜5のいずれかに記載の厚鋼板。
  7. 更に、REM:0%超、0.01%以下およびZr:0%超、0.007%以下よりなる群から選択される1種以上を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の厚鋼板。
  8. 更に、Ca:0%超、0.003%以下を含有する請求項1〜7のいずれかに記載の厚鋼板。
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