JP7493138B2 - 超低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法 - Google Patents

超低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、超低降伏比高張力厚鋼板に関し、特に、超低降伏比と、高強度、高靱性、および優れた溶接性を兼ね備えた超低降伏比高張力厚鋼板に関する。また、本発明は、前記超低降伏比高張力厚鋼板の製造方法に関する。
近年、建築構造物の高層化、大スパン化に伴い、使用される鋼材の厚肉化、高強度化が要望され、鋼構造物の安全性の観点からは、高い許容応力を有するとともに、降伏比(=引張強さに対する降伏強さの比)を低減することが要求されている。
降伏比を低減すると、降伏点以上の応力が付加されても破壊までに許容される応力が大きくなり、また、一様伸びが大きくなるため、塑性変形能に優れた鋼材となる。そのため、従来よりも降伏比を低減できれば、より変形能に優れた鋼材が得られる。
従来、低降伏比高張力厚鋼板の製造プロセスとしては、フェライト+オーステナイト2相域への再加熱焼入れ後、焼き戻しを行う多段熱処理が一般的である。しかし、前記多段熱処理によって得られる厚鋼板のミクロ組織は、主相としてのフェライト相に硬質第2相としてのベイナイトまたはマルテンサイトが分散したものである。そのため、フェライト相の体積分率によっては、690MPa以上の引張強さを安定して達成することが困難である。また、690MPa以上の引張強さを達成するために、合金元素を過剰に添加する必要がある。このため溶接熱影響部の硬さが上昇し、溶接性との両立が困難である。さらには、焼き戻し工程によって降伏点が上昇してしまい、高強度鋼ほど低降伏比を安定的に得ることが困難である。
特許文献1には、熱間圧延後の鋼板を焼入れした後、再度フェライト+オーステナイトの2相域まで加熱して焼入れを行うことにより、高強度化と降伏比(YR):85%以下の低降伏比化を達成することが記載されている。
特許文献2には、圧延後、直ちに焼入れする直接焼入れ法により、焼入れ後のミクロ組織をベイナイト相あるいはマルテンサイト相とした後、再度フェライト+オーステナイトの2相域まで加熱して焼ならしを行うことにより、高強度化と低降伏比化を達成することが記載されている。
特許文献3には、圧延後、一定時間経過し、フェライトを析出させた後、焼入れを行う直接焼入れ法により、フェライト相+マルテンサイト相の2相組織とし、高強度化と低降伏比化を達成することが記載されている。
特許文献4には、圧延後、2相域まで再加熱して、焼入れを途中で止めることで、フェライト+ベイナイトまたはマルテンサイト+島状マルテンサイト相とし、高強度化と低降伏比化を達成することが記載されている。
特開平06-248337号公報 特開平05-230530号公報 特開平07-097626号公報 特開2019-119934号公報
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、降伏比の低減に有効な硬質相が焼き戻しで分解されてしまい、超低降伏比と高い引張強度を安定して得ることが難しい。特許文献2、3に記載された技術では鋼板の急速加熱が必要であり、熱処理操業の負荷が大きく、特に厚肉材の製造が難しい。
一方、特許文献4に記載された技術では、低降伏比と高強度とを得ることができるものの、溶接性に劣るという問題があった。
すなわち、鋼材を建築構造物などに用いる際には、溶接が施されることが一般的であるため、建築物の安全性を確保するという観点から、鋼材には溶接性に優れることが求められる。この溶接性の指標の一つとして、溶接熱影響部の硬さが挙げられる。溶接熱影響部の硬さが高いと、溶接部靱性の低下や、割れの発生の原因となるため、溶接熱影響部の硬さは低いことが望ましい。しかし、上記特許文献4に記載の鋼材では溶接熱影響部の硬さを低減することが困難であった。
このように、従来の技術では、超低降伏比と、高強度、高靱性、および優れた溶接性を兼ね備えた厚鋼板を得ることができないという実状があった。
本発明は、かかる事情に鑑み、板厚を問わず、超低降伏比(降伏比80%以下)と、高強度、高靭性、および優れた溶接性を兼ね備えた低降伏比高張力厚鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を達成するために、鋭意研究を行い、以下の知見を得た。
(1)従来プロセスでは、2相域加熱焼入れ後、終工程として靱性改善を目的とした焼き戻し処理が行われる。その結果、低降伏比化に有効な島状マルテンサイト(MA)が分解してしまい、降伏強さ(YP)の上昇を抑制できる可動転位が減少し、超低降伏比化を達成することができない。
(2)2相域加熱後、200℃以上、ベイナイト変態開始温度(Bs点)未満で焼入れを停止し、次いで空冷することにより、島状マルテンサイトを含む自己焼戻しベイナイトおよび自己焼戻しマルテンサイトを母相とする組織が得られる。その結果、高強度と超低降伏比を兼ね備えた厚鋼板を製造することができる。
(3)高強度鋼の場合、溶接熱影響部組織が下部ベイナイト/マルテンサイトとなりうる溶接法では、鋼中のC量が大きく影響する。そのため鋼中のC量を低減することで、溶接熱影響部の最高硬さを低減することができ、溶接性の改善につながる。
(4)一方、低C化に伴い鋼板の強度は減少するため、他の合金元素の添加量を調整する必要がある。
本発明は、上記知見を元に、さらに検討を加えて完成されたものである。本発明の要旨は次のとおりである。
1.質量%で、
C :0.01%以上、0.03%未満、
Si:0.01~0.50%、
Mn:0.4~5.0%、
P :0.015%以下、
S :0.0050%以下、
Al:0.005~0.1%、および
N :0.0015~0.0065%を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
島状マルテンサイトを含むベイナイト、マルテンサイト、およびセメンタイトを含み、
セメンタイトは、ベイナイトおよびマルテンサイトの一方または両方の組織中に含まれており、
ベイナイトとマルテンサイトの合計面積分率が50.0%以上、95.0%未満であり、
島状マルテンサイトの面積分率が2~20%であり、
島状マルテンサイトの平均円相当径が5.0μm未満であり、
セメンタイトの面積分率が0%超、5%以下であり、かつ
セメンタイトの平均円相当径が0.5μm未満であるミクロ組織を有し、
降伏比が80%以下である、超低降伏比高張力厚鋼板。
2.前記成分組成が、質量%で、
Ti:0.004~0.03%、
Cu:1.0%以下、
Ni:3.0%以下、
Cr:3.0%以下、
Mo:1.0%以下、
B :0.005%以下、
Nb:0.1%以下、および
V :0.2%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、上記1に記載の超低降伏比高張力厚鋼板。
3.前記成分組成が、質量%で、
Ca:0.005%以下、
REM:0.02%以下、および
Mg:0.005%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、上記1または2に記載の超低降伏比高張力厚鋼板。
4.質量%で、
C :0.01%以上、0.03%未満、
Si:0.01~0.50%、
Mn:0.4~5.0%、
P :0.015%以下、
S :0.0050%以下、
Al:0.005~0.1%、および
N :0.0015~0.0065%を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼素材を熱間圧延して厚鋼板とする熱間圧延工程と、
前記厚鋼板をAc1点+30℃以上、Ac3点未満の再加熱温度まで再加熱し、前記再加熱温度に10分以上の保持時間の間保持する再加熱工程と、
前記再加熱工程後の厚鋼板を、板厚1/4位置における平均冷却速度:1~90℃/sで、200℃以上、ベイナイト変態開始温度未満である加速冷却停止温度まで加速冷却し、次いで空冷する冷却工程とを有する、超低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
5.前記成分組成が、質量%で、
Ti:0.004~0.03%、
Cu:1.0%以下、
Ni:3.0%以下、
Cr:3.0%以下、
Mo:1.0%以下、
B :0.005%以下、
Nb:0.1%以下、および
V :0.2%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、上記4に記載の超低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
6.前記成分組成が、質量%で、
Ca:0.005%以下、
REM:0.02%以下、および
Mg:0.005%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、上記4または5に記載の超低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
本発明によれば、板厚によらず、超低降伏比(降伏比80%以下)と、高強度、高靱性、および優れた溶接性を兼ね備えた低降伏比高張力厚鋼板を得ることができる。本発明の厚鋼板は、建築構造物を始めとする各種鋼構造物に極めて好適に用いることができる。そのため、本発明は、鋼構造物の大型化、耐震性の向上に大きく寄与し、産業上格段の効果を奏する。
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明は、本発明の好適な一実施態様を示すものであり、本発明は、以下の説明によって何ら限定されるものではない。
[成分組成]
本発明の超低降伏比高張力厚鋼板、および超低降伏比高張力厚鋼板の製造に用いる鋼素材は、上述した成分組成を有する必要がある。以下、前記成分組成に含まれる各成分について説明する。なお、特に断らない限り、各成分の含有量を表す「%」は、「質量%」を意味する。
C:0.01%以上、0.03%未満
Cは、鋼の強度を増加させ、構造用鋼材として必要な強度を確保する効果を有する元素である。前記効果を得るために、C含有量を0.01%以上とする。一方、C含有量が0.03%以上になると、ベイナイトやマルテンサイト等を有する溶接熱影響部の硬度が上昇する。そのため、C含有量を0.03%未満とする。
Si:0.01~0.50%
Siは、脱酸剤として機能するとともに、母材強度を高める効果を有する元素である。前記効果を得るために、Si含有量を0.01%以上とする。一方、Si含有量が0.50%を超えると、島状マルテンサイトの生成が促進され、靭性や溶接性の低下が顕在化する。そのため、Si含有量を0.50%以下とする。Si含有量は0.35%以下とすることが好ましい。
Mn:0.4~5.0%
Mnは、鋼の強度を増加させる効果を有する元素である。母材の引張強さを確保するためには、Mn含有量を0.4%以上とする必要がある。Mn含有量は0.8%以上とすることが好ましい。一方、Mn含有量が5.0%を超えると、島状マルテンサイトが過剰に生成し、母材の靭性や溶接性が劣化する。そのため、Mn含有量は5.0%以下とする。Mn含有量は2.5%以下とすることが好ましい。
P:0.015%以下
Pは、母材の低温靭性を劣化させる元素であり、できるだけ低減することが望ましい。そのため、P含有量は0.015%以下とする。P含有量は低ければ低いほどよいため、その下限は特に限定されず、0%であってよい。
S:0.0050%以下
Sは、母材の低温靭性を劣化させる元素であり、できるだけ低減することが望ましい。S含有量が0.0050%を超えると、前記低温靭性の劣化が顕著となるため、S含有量は0.0050%以下とする。S含有量は低ければ低いほどよいため、その下限は特に限定されず、0%であってよい。
Al:0.005~0.1%
Alは、脱酸剤として作用する元素であり、高張力鋼の溶鋼脱酸プロセスにおいて、もっとも汎用的に使われる。また、Alは、鋼中のNをAlNとして固定し、母材の靭性向上に寄与する。前記効果を得るために、Al含有量を0.005%以上とする。Al含有量は、0.010%以上とすることが好ましい。一方、Al含有量が0.1%を超えると、母材の靭性が低下する。そのため、Al含有量は0.1%以下とする。Al含有量は0.07%以下とすることが好ましい。
N:0.0015~0.0065%
Nは、AlやTiと結合して炭窒化物を析出形成し、オーステナイト粒の粗大化を抑制して母材靱性を向上させる。その効果を得るために、N含有量は0.0015%以上とする。N含有量は、0.0030%以上とすることが好ましい。一方、N含有量が0.0065%を超えると、固溶N量の増加により、母材および溶接部靭性が著しく低下する。そのため、N含有量は0.0065%以下とする。N含有量は0.0060%以下とすることが好ましい。
本発明の一実施形態において、超低降伏比高張力厚鋼板は、上記の元素と、残部のFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有することができる。
また、本発明の他の実施形態においては、上記成分組成が、任意に、Ti、Cu、Ni、Cr、Mo、B、Nb、およびVからなる群より選択される1または2以上をさらに含有することができる。
Ti:0.03%以下
Tiは、Nとの親和力が強く、凝固時にTiNとして析出する。高温でも安定なTiNのピンニング効果により、溶接熱影響部でのオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制することで、溶接熱影響部の靭性を向上させることができる。しかし、Ti含有量が0.03%を超えると、TiN粒子が粗大化し、オーステナイト粒の粗大化抑制効果が飽和する。そのため、Ti含有量は0.03%以下とする。Ti含有量は0.025%以下とすることが好ましい。一方、Ti含有量の下限は特に限定されないが、前記効果を十分に得るためには、Tiを添加する場合、Ti含有量を0.004%以上とすることが好ましく、0.006%以上とすることがより好ましい。
Cu:1.0%以下
Cuは、高靭性を保ちつつ強度を増加させることが可能な元素であり、所望する強度に応じて任意に含有できる。しかし、Cu含有量が1.0%を超えると熱間脆性を生じて鋼板の表面性状が劣化する。そのため、Cuを含有する場合、Cu含有量は1.0%以下とする。Cu含有量は0.7%以下とすることが好ましい。一方、Cu含有量の下限は特に限定されないが、前記効果を十分に得るためには、Cu含有量を0.01%以上とすることが好ましく、0.10%以上とすることがより好ましく、0.20%以上とすることがさらに好ましい。
Ni:3.0%以下
Niは、Cuと同様、高靭性を保ちつつ強度を増加させることが可能な元素であり、所望する強度に応じて任意に含有できる。しかし、Ni含有量が3.0%を超えると、添加効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利になる。そのため、Niを含有する場合、Ni含有量を3.0%以下とする。Ni含有量は1.7%以下とすることが好ましい。一方、Ni含有量の下限は特に限定されないが、前記効果を十分に得るためには、Ni含有量を0.01%以上とすることが好ましく、0.10%以上とすることがより好ましく、0.20%以上とすることがさらに好ましい。
Cr:3.0%以下
Crは、鋼の強度向上に寄与する元素であり、所望する強度に応じて任意に含有できる。しかし、Cr含有量が3.0%を超えると靭性が劣化するため、Crを含有する場合、Cr含有量を3.0%以下とする。一方、Cr含有量の下限は特に限定されないが、Crによる強度向上効果を十分に得るという観点からは、Cr含有量を0.05%以上とすることが好ましい。
Mo:1.0%以下
Moは、Crと同様、鋼の強度向上に寄与する元素であり、所望する強度に応じて任意に含有できる。しかし、Mo含有量が1.0%を超えると靭性が劣化するため、Moを含有する場合、Mo含有量を1.0%以下とする。一方、Mo含有量の下限は特に限定されないが、Moによる強度向上効果を十分に得るという観点からは、Mo含有量を0.05%以上とすることが好ましい。
B:0.005%以下
Bは、焼入れ性を向上させることにより、鋼の強度を向上させる作用を有する元素である。しかしB含有量が0.005%を超えると、焼入れ性が過度に高くなり、母材の靭性および延性が低下する。そのため、Bを含有する場合、B含有量を0.005%以下とする。B含有量は0.0020%以下とすることが好ましい。一方、B含有量の下限は特に限定されないが、Bの添加効果を十分に得るという観点からは、B含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。
Nb:0.1%以下
Nbは、Cr、Moと同様、鋼の強度向上に寄与する元素であり、所望する強度に応じて任意に含有できる。しかし、Nb含有量が0.1%を超えると母材靭性が劣化するため、Nbを含有する場合、Nb含有量を0.1%以下とする。一方、Nb含有量の下限は特に限定されないが、Nbによる強度向上効果を十分に得るという観点からは、Nb含有量を0.005%以上とすることが好ましい。
V:0.2%以下
Vは、Cr、Mo、Nbと同様、鋼の強度向上に寄与する元素であり、所望する強度に応じて任意に含有できる。しかし、V含有量が0.2%を超えると靭性が劣化するため、Vを含有する場合、V含有量を0.2%以下とする。一方、V含有量の下限は特に限定されないが、Vによる強度向上効果を十分に得るという観点からは、V含有量を0.01%以上とすることが好ましい。
また、本発明の他の実施形態においては、上記成分組成が、任意に、Ca、REM、およびMgからなる群より選択される1または2以上をさらに含有することができる。
Ca:0.005%以下
Caは、結晶粒を微細化することによって靭性を向上させる効果を有する元素であり、所望する特性に応じて任意に含有できる。しかし、Ca含有量が0.005%を超えると、添加効果が飽和するため、Caを含有する場合、Ca含有量を0.005%以下とする。一方、Ca含有量の下限は特に限定されないが、Caによる靭性向上効果を十分に得るという観点からは、Ca含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
REM:0.02%以下
REM(希土類金属)は、Caと同様に靭性向上効果を有しており、所望する特性に応じて任意に含有できる。しかし、REM含有量が0.02%を超えると、添加効果が飽和するため、REMを含有する場合、REM含有量を0.02%以下とする。一方、REM含有量の下限は特に限定されないが、REMによる靭性向上効果を十分に得るという観点からは、REM含有量を0.002%以上とすることが好ましい。
Mg:0.005%以下
Mgは、Caと同様に結晶粒を微細化することによって靭性を向上させる効果を有する元素であり、所望する特性に応じて任意に含有できる。しかし、Mg含有量が0.005%を超えると、添加効果が飽和するため、Mgを含有する場合、Mg含有量を0.005%以下とする。一方、Mg含有量の下限は特に限定されないが、Mgによる靭性向上効果を十分に得るという観点からは、Mg含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
[ミクロ組織]
本発明の超低降伏比高張力厚鋼板は、下記(1)~(7)の条件をすべて満たすミクロ組織を有する。
(1)島状マルテンサイトを含むベイナイト、マルテンサイト、およびセメンタイトを含む。
(2)セメンタイトは、ベイナイトおよびマルテンサイトの一方または両方の組織中に含まれている。
(3)ベイナイトとマルテンサイトの合計面積分率が50.0%以上、95.0%未満である。
(4)島状マルテンサイトの面積分率が2~20%である。
(5)島状マルテンサイトの平均円相当径が5.0μm未満である。
(6)セメンタイトの面積分率が0%超、5%以下である。
(7)セメンタイトの平均円相当径が0.5μm未満である。
以下、ミクロ組織を上記の範囲に限定する理由について説明する。なお、以下の説明における「面積分率」とは、特に断らない限り、ミクロ組織全体に対する面積分率を指すものとする。また、上記ミクロ組織は、鋼板の板厚1/4位置におけるミクロ組織を指すものとする。
B+Mの合計面積分率:50.0%以上、95.0%未満
ベイナイト(B)とマルテンサイト(M)の合計面積分率が50.0%に満たないと、十分な強度を得ることができない。そのため、強度確保の観点から、ベイナイトとマルテンサイトの合計面積分率を50.0%以上とする。一方、前記合計面積分率が95.0%以上ではフェライトなどの軟質相の割合が少なくなり、かつ島状マルテンサイトの面積分率も低下するため、低降伏比の達成が困難となる。そのため、前記合計面積分率を95.0%未満とする。なお、本明細書においては、ミクロ組織の50.0%以上を占めるベイナイトおよびマルテンサイトを合わせて「母相」という場合がある。
なお、本発明のミクロ組織においては、ベイナイトに島状マルテンサイトが内包されている。しかし、前記合計面積分率には前記島状マルテンサイトの面積分率は含めないものとする。同様に、本発明ではベイナイトおよびマルテンサイトの一方または両方の組織中にはセメンタイトが内包されているが、前記合計面積分率には前記セメンタイトの面積分率は含めないものとする。ベイナイトとマルテンサイトの合計面積分率は、実施例に記載の方法で測定することができる。
(島状マルテンサイト)
MAの面積分率:2~20%
島状マルテンサイト(MA)の面積分率が2%未満では、前記のような高強度と低降伏比を両立することができない。そのため、MAの面積分率を2%以上とする。MAの面積分率は4%以上とすることが好ましい。一方、MAの面積分率が20%を超えると、母材の延性および靭性が劣化する。そのため、MAの面積分率は20%以下とする。MAの面積分率は16%以下とすることが好ましい。
MAの平均円相当径:5.0μm未満
MAの平均円相当径が5.0μm以上であると溶接部の靭性が劣化する。そのため、MAの平均円相当径を5.0μm未満とする。一方、MAの平均円相当径の下限は特に限定されないが、0.5μm以上とすることが好ましい。
なお、MAの面積分率および平均円相当径は、試料としての鋼板にレペラ腐食(Journal of Metals, March, 1980, p.38-39)を施した後、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて倍率1000倍で観察を行い、撮影した画像を、画像解析装置を用いて解析することにより求めることができる。
(セメンタイト)
セメンタイトの面積分率:0%超、5%以下
本発明では、靭性を確保するために、後述する自己焼戻し処理により母相としてのベイナイトおよびマルテンサイトの少なくとも一方の組織中にセメンタイトを析出させる。セメンタイトの面積分率が0%である場合、組織が自己焼戻しを受けていないことを意味し、靭性を確保できない。そのため、セメンタイトの面積分率を0%超とする。一方、セメンタイトの面積分率が5%超である場合、組織が過度の焼戻しを受けたことを意味する。そのような場合、過度の焼戻しによってMAが分解し、稼働転位が減少しているため、所望の低降伏比が得られない。そのため、セメンタイトの面積分率を5%以下とする。セメンタイトの面積分率は、3%以下とすることが好ましい。
セメンタイトの平均円相当径:0.5μm未満
セメンタイトの平均円相当径が0.5μm以上であると、脆性破壊の起点となりやすく、母材靭性が低下する。そのため、セメンタイトの平均円相当径は0.5μm未満とする。
なお、セメンタイトの面積分率および平均円相当径は、試料としての鋼板にナイタール(硝酸のエタノール溶液)による腐食を施した後、走査電子顕微鏡(SEM)を用いて倍率5000倍で観察を行い、撮影した画像を、画像解析装置を用いて解析することにより求めることができる。
本発明においては、上述したようにベイナイト、マルテンサイト、島状マルテンサイト、およびセメンタイトの面積分率と、島状マルテンサイトの平均円相当径、およびセメンタイトの平均円相当径を特定の範囲に制御することによって所望の特性を実現することができる。そのため、ベイナイト、マルテンサイト、島状マルテンサイト、およびセメンタイト以外の組織については特に限定されないが、ミクロ組織が軟質相であるフェライトを含むことが好ましい。ミクロ組織がフェライトを含む場合、該フェライトの面積分率は特に限定されないが、3%以上とすることが好ましい。また、フェライトの面積分率の上限についても特に限定されないが、48%未満とすることが好ましく、35%以下とすることがより好ましく、30%以下とすることがさらに好ましい。
[板厚]
本発明の超低降伏比高張力厚鋼板の板厚は特に限定されず、任意の厚さとすることができるが、6mm以上とすることが好ましく、12mm以上とすることが好ましい。一方、上限については、100mm以下とすることが好ましい。
[機械的特性]
(降伏強さ)
本発明の超低降伏比高張力厚鋼板の降伏強さ(YP)は、特に限定されず任意の値とすることができるが、500MPa以上とすることが好ましい。降伏強さの上限についても特に限定されないが、例えば、降伏強さは682MPa以下であってよく、620MPa以下であってもよい。
(引張強さ)
本発明の超低降伏比高張力厚鋼板の引張強さ(TS)は、特に限定されず任意の値とすることができるが、690MPa以上とすることが好ましい。引張強さの上限についても特に限定されないが、例えば、引張強さは840MPa以下であってもよい。
(降伏比)
本発明の超低降伏比高張力厚鋼板は、80%以下という極めて低い降伏比(YR)を有している。一方、降伏比の下限については特に限定されないが、例えば、降伏比は60%以上であってよい。なお、ここで降伏比とは、引張強さ(TS)に対する降伏強さ(YP)の比をパーセンテージで表した値、すなわち、YP/TS×100(%)を指すものとする。
(溶接熱影響部の最高硬さ)
本発明の超低降伏比高張力厚鋼板は、上述した成分組成とミクロ組織を有する結果、溶接性に優れている。本発明の超低降伏比高張力厚鋼板の溶接性は特に限定されないが、溶接性に優れることの指標として、溶接熱影響部の最高硬さが、ビッカース硬さで350以下であることが好ましい。なお、ここで前記溶接熱影響部の最高硬さは、JIS Z 3101に準拠した方法で測定することができる。
[製造方法]
次に、本発明の一実施形態における低降伏比高張力厚鋼板の製造方法について説明する。なお、以下の説明においては、特に断らない限り、温度は板厚中央の温度を指すものとする。板厚中央の温度は、放射温度計で測定した鋼板表面温度から、伝熱計算により求めることができる。また、熱間圧延後の冷却条件における温度条件は、板厚1/4位置における温度とし、冷却速度も板厚1/4位置における温度に基づいて算出された平均冷却速度を意味する。
本発明の低降伏比高張力厚鋼板は、以下の各工程を順次行うことによって製造することができる。
(1)上述した成分組成を有する鋼素材を、熱間圧延して厚鋼板とする(熱間圧延工程)。
(2)前記厚鋼板をAc1点+30℃以上、Ac3点未満の再加熱温度まで再加熱し、前記再加熱温度に10分以上の保持時間の間保持する(再加熱工程)。
(3)前記再加熱工程後の厚鋼板を、板厚1/4位置における平均冷却速度:1~200℃/sで、200℃以上、ベイナイト変態開始温度未満である加速冷却停止温度まで加速冷却し、次いで空冷する(冷却工程)。
以下、各工程について具体的に説明する。
(熱間圧延工程)
上述した成分組成を有する鋼素材を熱間圧延して厚鋼板とする。前記鋼素材の製造方法は、とくに限定されないが、例えば、上記した組成を有する溶鋼を常法により溶製し、鋳造して製造することができる。前記溶製は、転炉、電気炉、誘導炉等、任意の方法により行うことができる。また、前記鋳造は、生産性の観点から連続鋳造法で行うことが好ましいが、造塊-分解圧延法により行うこともできる。前記鋼素材としては、例えば、鋼スラブを用いることができる。
前記鋼素材は、圧延に先立って加熱される。前記加熱は、鋳造などの方法によって得た鋼素材を一旦冷却した後に行ってもよく、また、得られた鋼素材を冷却することなく直接、前記加熱に供することもできる。なお、本発明においては熱間圧延後の再加熱工程および冷却工程において厚鋼板のミクロ組織や特性を制御するため、前記加熱温度は特に限定されず、任意の温度とすることができる。しかし、前記加熱温度が900℃未満であると、鋼素材の変形抵抗が高いため、熱間圧延における圧延機への負荷が増大し、熱間圧延を行うことが困難となる場合がある。そのため、前記加熱温度は900℃以上とすることが好ましい。一方、前記加熱温度が1250℃より高いと、鋼の酸化が顕著となり、酸化によるロスが増大する結果、歩留まりが低下する。そのため、前記加熱温度は1250℃以下とすることが好ましい。
上記加熱の後、加熱された鋼素材を熱間圧延して厚鋼板とする。厚鋼板の最終板厚は特に限定されないが、6mm以上とすることが好ましく、12mm以上とすることがより好ましく、また、100mm以下とすることが好ましい。
熱間圧延が終了した後、後述するように再加熱が行われるが、熱間圧延と再加熱工程との間において、厚鋼板を冷却することもできる。該冷却を行う場合の条件は特に限定されないが、空冷、水冷など、任意の方法で冷却を行うことができる。前記水冷としては、水を用いた任意の冷却方法(例えば、スプレー冷却、ミスト冷却、ラミナー冷却など)を用いることができる。冷却温度は、特に限定されないが、例えば、常温(20℃など)以上、300℃以下とすることができる。
前記熱間圧延工程後の厚鋼板を、再加熱、保持し、加速冷却する。再加熱処理により、熱延鋼板のベイナイトおよびマルテンサイト組織が部分的にオーステナイトへ逆変態するとともに、未変態のベイナイトおよびマルテンサイト組織が焼き戻される。引き続く加速冷却により逆変態したオーステナイトの一部がマルテンサイトとベイナイトに変態する。次いで該加速冷却を200℃以上、ベイナイト変態開始温度(Bs点)未満の温度で停止し、空冷することにより、未変態のオーステナイトを島状マルテンサイトにするとともに加速冷却で新しく生成したベイナイトとマルテンサイトを焼戻すことができる。
再加熱温度:Ac1点+30℃以上、Ac3点未満
Ac1点+30℃以上、Ac3点未満に加熱することで、熱延鋼板の組織の大部分をベイナイト、およびマルテンサイトから逆変態したオーステナイトの混合組織とする。再加熱温度がAc1点+30℃未満では、逆変態オーステナイトの量が少なくなり、最終的に得られる厚鋼板において所望のマルテンサイトとベイナイト量が得られない。また、再加熱温度がAc3点以上では、ベイナイトおよびマルテンサイトがすべて逆変態してオーステナイトになるため、フェライトが生成しないとともに所望の島状マルテンサイトを得られない。
なお、Ac1点およびAc3点は、それぞれ下記(1)式および(2)式により求めることができる。
Ac1(℃)=750.8-26.6C+17.6Si-11.6Mn-22.9Cu-23Ni+24.1Cr+22.5Mo-39.7V-5.7Ti+232.4Nb-169.4Al-894.7B・・・(1)
Ac3(℃)=937.2-436.5C+56Si-19.7Mn-16.3Cu-26.6Ni -4.9Cr+38.1Mo+124.8V+136.3Ti-19.1Nb+198.4Al+3315B・・・(2)
ただし、上記(1)、(2)式中の元素記号は各元素の含有量(質量%)を表し、当該元素が含有されていない場合は0とする。
保持時間:10分以上
前記再加熱温度に保持する保持時間は10分以上とする。保持時間が10分未満では、オーステナイト粒径のバラツキが大きくなるからである。一方、前記保持時間の上限は特に限定されないが、過度に長い時間保持を行うと生産性が低下するため、180分以下とすることが好ましい。
前記再加熱には、再加熱温度と保持時間を上記の通り制御することできるものであれば、任意の加熱方法を用いることができる。加熱方法の一例としては、炉加熱が挙げられる。前記炉加熱には、特に限定されることなく、一般的な熱処理炉を用いることができる。
(冷却工程)
平均冷却速度:1~90℃/s
前記再加熱工程の後、板厚1/4位置における平均冷却速度:1~90℃/sにて加速冷却する。上記加速冷却工程における平均冷却速度が1℃/s未満であると、所望の焼入組織、すなわちベイナイトおよびマルテンサイトが得られず強度が低下する。そのため、前記平均冷却速度は1℃/s以上とする。 一方、前記平均冷却速度が90℃/sより高いと、最終的に得られる厚鋼板の降伏比を80%以下とすることができない。その理由は次のように考えられる。すなわち、冷却速度が速くなるほど、冷却過程における温度制御が困難となり、鋼板の板幅方向および板厚方向において温度のばらつきが生じる。そしてその結果、鋼板内部での材質のばらつきが大きくなり、機械的特性、特に降伏比が劣位となる。また、前記ばらつきの影響は板厚が薄いほど大きくなる。そのため、前記平均冷却速度が90℃/sより高いと、板厚が薄い場合には、島状マルテンサイトの面積分率を2%以上とすることも困難となる。以上の理由から、本願発明では前記平均冷却速度を90℃/s以下とする。
前記加速冷却の方法は特に限定されないが、空冷、水冷など、任意の方法で冷却を行うことができる。前記水冷としては、水を用いた任意の冷却方法(例えば、スプレー冷却、ミスト冷却、ラミナー冷却など)を用いることができる。
加速冷却停止温度:200℃以上、Bs点未満
200℃以上、Bs点未満の温度で加速冷却を停止して空冷することで、未変態のオーステナイトを島状マルテンサイトに変態させ、ベイナイトおよびマルテンサイトを自己焼き戻しさせる。加速冷却停止温度がBs点以上では、島状マルテンサイトが生成しても大部分が分解したりしてしまうため、所望の低降伏比が得られない。一方、加速冷却停止温度が200℃未満では、所望の島状マルテンサイトが得られず所望の降伏比が得られない。なお、Bs点は下記(3)式により求めることができる。
Bs(℃)=830-270C-90Mn-37Ni-70Cr-83Mo・・・(3)
ただし、上記(3)式中の元素記号は、各元素の含有量(質量%)を表し、当該元素が含有されていない場合は0とする。
加速冷却停止後の温度域における冷却条件は厚鋼板の組織等に実質的な影響を与えない。そのため、上記加速冷却停止後の空冷は、特に限定されることなく任意の条件で行うことができるが、一般的には、冷却速度:1℃/s未満で空冷を行うことが好ましい。
表1に示す組成の溶鋼を転炉で溶製し、連続鋳造法によって鋼素材としての鋼スラブ(厚さ:250mm)とした。なお、上述した(1)式よって求めたAc1変態点(℃)および(2)式によって求めたAc変態点(℃)、(3)式によって求めたBs点を表1に併記する。
前記鋼スラブを1150℃に加熱した後、熱間圧延して厚鋼板とした。前記熱間圧延における圧延終了温度と最終板厚を表2に示す。
次いで、熱間圧延後の厚鋼板を、表2に示した方法で200℃まで冷却した。
次いで、前記厚鋼板に対して、表2に示した条件で再加熱と加速冷却を施し、加速冷却停止後は空冷した。前記再加熱には熱処理炉を用いた。また、前記空冷における冷却速度は、板厚や加速冷却停止温度にもよるが、0.5~0.01℃/sであった。
上記のようにして得た厚鋼板のそれぞれについて、ミクロ組織、機械的特性、および溶接熱影響部の最高硬さを評価した。前記評価は、以下に述べる方法で行った。
(ミクロ組織)
前記厚鋼板から、板厚1/4位置が観察位置となるように、組織観察用の試験片を採取した。前記試験片を、圧延方向と垂直な断面が観察面となるよう樹脂に埋め、鏡面研磨した。次いで、レペラ腐食を実施した後、倍率1000倍の走査電子顕微鏡で観察して組織の画像を撮影し、島状マルテンサイト組織を同定した。撮影された5視野分の画像を画像解析装置によって解析し、島状マルテンサイト組織の面積分率、平均円相当径を求めた。
次いで、島状マルテンサイト組織観察後の樹脂埋め込み試料を再度鏡面研磨し、ナイタール腐食を実施した後、倍率5000倍の走査型電子顕微鏡で観察して組織の画像を撮影した。撮影された10視野分の画像を画像解析装置によって解析し、セメンタイト組織の面積分率、平均円相当径を求めた。なお、本発明の条件を満たす冷却工程を行った実施例の厚鋼板においては、自己焼戻しによりベイナイトおよびマルテンサイトの少なくとも一方の組織中にセメンタイトが析出していることを確認した。
次いで、走査型電子顕微鏡の倍率を200倍に変更して組織の画像を撮影した。撮影された5視野分の画像を画像解析装置によって解析し、ベイナイトおよびマルテンサイト、フェライト組織の面積分率を求めた。
(機械的特性)
前記厚鋼板の板厚中央から、JIS4号引張試験片を採取した。前記引張試験片を用い、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を実施して、厚鋼板の降伏強さ(YP)、引張強さ(TS)、降伏比(YR)を評価した。
また、前記厚鋼板の板厚中央から、JIS Z 2202の規定に準拠してVノッチ試験片を採取した。前記Vノッチ試験片を用い、JIS Z 2242の規定に準拠して0℃におけるシャルピー衝撃試験を実施し、シャルピー吸収エネルギー(vE)を求め、靭性を評価した。
(溶接熱影響部の最高硬さ)
さらに、前記厚鋼板の溶接熱影響部の最高硬さを、JIS Z 3101に準拠した方法で測定した。具体的には、前記厚鋼板からJIS Z 3101の規定に準拠して最高硬さ試験片を採取した。溶接ビード長は125mmとし、溶接金属の底部に接し、厚鋼板の表面に対して平行な直線上における溶接熱影響部のビッカース硬さ(HV10)を測定し、その最大値を溶接熱影響部の最高硬さとした。溶接熱影響部の最高硬さが低いほど、溶接性に優れている。
得られた評価結果を、表3に示す。なお、引張り強さ(TS)が690MPa以上、降伏強さ(YP)が500MPa以上、降伏比(YR)が80%以下、0℃における吸収エネルギー(vE)が70J以上、溶接熱影響部の最高硬さが350以下を合格値とした。
以上の結果から分かるように、本発明の条件を満たす厚鋼板は、いずれも、引張強さ:690MPa以上、降伏強さ:500MPa以上、降伏比:80%以下、0℃での吸収エネルギーvE:70J以上、最高硬さが350以下であり、高強度、低降伏比、高靭性であるとともに、溶接性にも優れていた。一方、本発明の条件を満たさない厚鋼板は、強度、降伏比、靭性および最高硬さのうち、少なくとも1つの特性が劣っていた。
Figure 0007493138000001
Figure 0007493138000002
Figure 0007493138000003

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C :0.01%以上、0.03%未満、
    Si:0.01~0.50%、
    Mn:0.4~5.0%、
    P :0.015%以下、
    S :0.0050%以下、
    Al:0.005~0.1%、および
    N :0.0015~0.0065%を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    島状マルテンサイトを含むベイナイト、マルテンサイト、およびセメンタイトを含み、
    セメンタイトは、ベイナイトおよびマルテンサイトの一方または両方の組織中に含まれており、
    ベイナイトとマルテンサイトの合計面積分率が50.0%以上、95.0%未満であり、
    島状マルテンサイトの面積分率が2~20%であり、
    島状マルテンサイトの平均円相当径が5.0μm未満であり、
    セメンタイトの面積分率が0%超、5%以下であり、かつ
    セメンタイトの平均円相当径が0.5μm未満であるミクロ組織を有し、
    降伏比が80%以下、引張強さが690MPa以上、板厚が6mm以上である、超低降伏比高張力厚鋼板。
  2. 前記成分組成が、質量%で、
    Ti:0.03%以下、
    Cu:1.0%以下、
    Ni:3.0%以下、
    Cr:3.0%以下、
    Mo:1.0%以下、
    B :0.005%以下、
    Nb:0.1%以下、および
    V :0.2%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、請求項1に記載の超低降伏比高張力厚鋼板。
  3. 前記成分組成が、質量%で、
    Ca:0.005%以下、
    REM:0.02%以下、および
    Mg:0.005%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、請求項1または2に記載の超低降伏比高張力厚鋼板。
  4. 超低降伏比高張力厚鋼板の製造方法であって、
    質量%で、
    C :0.01%以上、0.03%未満、
    Si:0.01~0.50%、
    Mn:0.4~5.0%、
    P :0.015%以下、
    S :0.0050%以下、
    Al:0.005~0.1%、および
    N :0.0015~0.0065%を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼素材を熱間圧延して厚鋼板とする熱間圧延工程と、
    前記厚鋼板をAc1点+30℃以上、Ac3点未満の再加熱温度まで再加熱し、前記再加熱温度に10分以上の保持時間の間保持する再加熱工程と、
    前記再加熱工程後の厚鋼板を、板厚1/4位置における平均冷却速度:1~90℃/sで、200℃以上、ベイナイト変態開始温度未満である加速冷却停止温度まで加速冷却し、次いで空冷する冷却工程とを有し、
    前記超低降伏比高張力厚鋼板が、
    島状マルテンサイトを含むベイナイト、マルテンサイト、およびセメンタイトを含み、
    セメンタイトは、ベイナイトおよびマルテンサイトの一方または両方の組織中に含まれており、
    ベイナイトとマルテンサイトの合計面積分率が50.0%以上、95.0%未満であり、
    島状マルテンサイトの面積分率が2~20%であり、
    島状マルテンサイトの平均円相当径が5.0μm未満であり、
    セメンタイトの面積分率が0%超、5%以下であり、かつ
    セメンタイトの平均円相当径が0.5μm未満であるミクロ組織を有し、
    降伏比が80%以下、引張強さが690MPa以上、板厚が6mm以上である、超低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
  5. 前記成分組成が、質量%で、
    Ti:0.03%以下、
    Cu:1.0%以下、
    Ni:3.0%以下、
    Cr:3.0%以下、
    Mo:1.0%以下、
    B :0.005%以下、
    Nb:0.1%以下、および
    V :0.2%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、請求項4に記載の超低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
  6. 前記成分組成が、質量%で、
    Ca:0.005%以下、
    REM:0.02%以下、および
    Mg:0.005%以下からなる群より選択される1または2以上をさらに含有する、請求項4または5に記載の超低降伏比高張力厚鋼板の製造方法。
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