以下、本発明のフォトマスク、フォトマスクブランクス、およびフォトマスクの製造方法について詳細に説明する。
A.フォトマスク
本発明のフォトマスクは、透明基板および上記透明基板上に形成され、所望の光学濃度(OD値)を有する遮光膜からなる遮光膜パターンを有し、上記遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下であることを特徴とするものである。
ここで、本発明において、算術平均粗さ(Ra)とは、原子間力顕微鏡(AFM)<株式会社日立ハイテクサイエンス社製 L−trace>を用いて測定し、1μm角範囲の高さデータをもとに求められるRa(中心線表面粗さ)を指す。
図1は、本発明のフォトマスクの一例を示す概略断面図である。図1に示されるフォトマスク100は、バイナリマスクである。図1に示されるフォトマスク100は、透明基板101および透明基板101上に形成された遮光膜パターン102を有する。遮光膜パターン102は、単独で光学濃度(OD値)が3.0以上となるよう調整されたものである。また、遮光膜パターン102は、透明基板101上において、ウェハに転写されるパターンが形成されるパターン形成領域に形成された遮光膜パターンである。ここで、本発明において、「バイナリマスク」とは、上記透明基板および上記透明基板上に形成された上記遮光膜パターンを有し、光を透過する部分と遮光する部分でパターンを構成するバイナリ型のフォトマスクを意味する。
そして、透明基板101の上面101aならびに遮光膜パターン102の上面102aおよび側面102bの全ての算術平均粗さ(Ra)は0.4nm以下である。
ここで、本発明において、上記遮光膜パターンの表面は、図1および図5に示される遮光膜パターン102の上面102aのような上記遮光膜パターンの上面を意味する。そして、上記遮光膜パターンの上面は、上記遮光膜パターンにおける上記透明基板または後述する光半透過膜パターンに接する下面とは反対側の面である。また、上記透明基板の表面は、図1および図5に示される透明基板101の上面101aのような上記透明基板の上面を意味する。そして、上記透明基板の上面は、上記透明基板における上記遮光膜パターンまたは後述する光半透過膜パターンが形成される面である。
本発明によれば、上記遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下であることによって、上記遮光膜パターンの表面積が小さくなる。このため、上記遮光膜パターンの表面に吸着する硫酸イオンの吸着量を少なくすることができる。これにより、上記遮光膜パターンの表面に成長性異物が発生することを抑制することができる。この結果、上記遮光膜パターンの表面に発生する成長性異物が、フォトマスクの光を透過する部分を覆うようになるまで成長することを抑制することができる。これにより、ウェハへの良好なパターン転写像が得られなくなることを抑制することができる。
また、本発明のフォトマスクは、上記遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下であり、上記遮光膜パターンの表面が滑らかである。このため、ウェハに転写されるパターンの微細化に伴い、上記フォトマスクを洗浄する時に、ダメージが上記ウェハに転写されるパターンに発生することを回避するために、メガソニックなどの物理洗浄ツール等の出力を弱めたとしても、上記遮光膜パターンの表面は滑らかであるから、上記遮光膜パターンの表面から異物を容易に除去することができる。以下、本発明のフォトマスクの構成について説明する。
1.遮光膜パターン
本発明における遮光膜パターンは、上記透明基板上に形成され、所望の光学濃度(OD値)を有する遮光膜からなるものである。そして、本発明における遮光膜パターンは、上記遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下であるものである。
(1)遮光膜パターンの表面
a.遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)
図2は、遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)および遮光膜パターンの表面の硫酸イオンの吸着量の関係を表すグラフである。そして、図2に示されるグラフに表される硫酸イオンの吸着量(SO4吸着量)は、算術平均粗さ(Ra)に依存して変化するものであり、図2に示されるグラフに表される算術平均粗さ(Ra)および硫酸イオンの吸着量の関係は、遮光膜パターンの表面および側面、透明基板の表面、ならびに光半透過膜パターンの表面および側面において成立するものである。なお、図2に示されるグラフに表される関係は、下記評価条件によって、評価されたものである。
<洗浄条件>
・硫酸洗浄
<イオンクロマト条件>
・DIW 100ml 90℃ 2h抽出
そして、表1は、図2に示されるグラフに表された遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)に対する遮光膜パターンの表面の硫酸イオンの吸着量を示すものである。
また、図3は、遮光膜パターンの表面の硫酸イオンの吸着量および遮光膜パターンの表面に発生する成長性異物の個数の関係を表すグラフである。図3に示されるグラフは、フォトマスクへのArFエキシマレーザ露光光の積算露光量を800J/cm2〜3000J/cm2まで変えた場合において、遮光膜パターンの表面の硫酸イオンの吸着量と遮光膜パターンの表面に発生する成長性異物の個数との関係を示すものである。図3に示されるように、遮光膜パターンの表面の硫酸イオンの吸着量が0.9ng/cm2以下の場合には、積算露光量が、800J/cm2、1500J/cm2、および3000J/cm2のいずれの場合においても、成長性異物は発生しない。そして、図3に示されるグラフに表される発生する成長性異物の個数は、硫酸イオンの吸着量に依存して変化するものであり、図3に示されるグラフに表される硫酸イオンの吸着量および発生する成長性異物の個数の関係は、遮光膜パターンの表面および側面、透明基板の表面、ならびに光半透過膜パターンの表面および側面において成立するものである。
一方、図2および表1に示される通り、上記遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.4nm以下である場合には、上記遮光膜パターンの表面の硫酸イオンの吸着量が4.5ppb(0.9ng/cm2)以下となる。したがって、図2および表1に示される通り、上記遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.4nm以下である場合には、上記遮光膜パターンの表面の硫酸イオンの吸着量が4.5ppb(0.9ng/cm2)以下となるので、上記遮光膜パターンの表面に成長性異物が発生することを防止することができる。
上記遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)は0.4nm以下であれば、特に限定されるものではないが、中でも、0.3nm以下が好ましく、特に、0.2nm以下が好ましい。より硫酸イオンの吸着量が少ないからである。
より具体的には、上記遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)は、例えば、上記遮光膜パターンを構成する遮光膜の材料がモリブデンシリサイド系材料である場合には、0.2nm以下であることが好ましく、なかでも0.1nm以下であることが好ましい。より硫酸イオンの吸着量が少ないからである。
また、上記遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)は、例えば、上記遮光膜パターンを構成する遮光膜の材料がクロム系材料である場合には、0.3nm以下であることが好ましい。より硫酸イオンの吸着量が少ないからである。
b.遮光膜パターンの表面積
上記遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.4nm以下である場合には、上記遮光膜パターンの表面積は、99800nm2以下となる。なお、本発明において、上記遮光膜パターンの表面積は、上記遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)から、画像解析等の方法によって求められるものを意味し、例えば、以下の評価条件によって評価されたものを指す。具体的には、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)<株式会社日立ハイテクサイエンス社製 L−trace>を用いて測定し、1μm角範囲の高さデータをもとに求められるRa(中心線表面粗さ)から、画像解析によって求められるものを意味する。
図4は、遮光膜パターンの表面積および遮光膜パターンの表面の硫酸イオンの吸着量の関係を表すグラフである。そして、図4に示されるグラフに表される硫酸イオンの吸着量(SO4吸着量)は、表面積に依存して変化するものであり、図4に示されるグラフに表される表面積および硫酸イオンの吸着量の関係は、遮光膜パターンの表面および側面、透明基板の表面、ならびに光半透過膜パターンの表面および側面において成立するものである。なお、図4に示されるグラフに表される関係は、図2に示されるグラフに表される関係と同様に、上述した評価条件によって、評価されたものである。
図4に示される通り、上記遮光膜パターンの表面積が、99800nm2以下である場合には、上記遮光膜パターンの表面の硫酸イオンの吸着量が4.5ppb(0.9ng/cm2)以下となるので、上記遮光膜パターンの表面に成長性異物が発生することを抑制することができる。このことは、上述したように、図2に示される通り、上記遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.4nm以下である場合には、上記遮光膜パターンの表面に成長性異物が発生することを抑制することができることに対応している。
また、上記遮光膜パターンの表面積は、特に限定されるものではないが、中でも、99700nm2以下、特に、99600nm2以下が好ましい。より硫酸イオンの吸着量が少ないからである。
c.遮光膜パターンの表面の成分組成
上記遮光膜パターンの表面の成分組成については、成長性異物の発生を抑制できるものであればよく、遮光膜パターンを構成する遮光膜の材料により異なるものである。
このような遮光膜パターンの表面の窒素の含有割合としては、成長性異物の発生原因となる有機物の付着を低減するとの観点からは、13atm%以下であることが好ましく、なかでも6atm%以下であることが好ましく、特に、5atm%以下であることが好ましい。
ここで、窒素の含有割合を低減することで、例えば、ペリクルの粘着材等に起因すると考えられる有機物や、露光環境中、保管環境中に存在する有機物の付着を低減できる理由については明確ではないが、表面に窒素原子が存在すると、窒素原子が核となり、有機物が凝集し易くなるためであると推察される。このため、有機物の凝集の原因となる窒素の含有割合を低減することで、遮光膜パターンの表面へのペリクルの粘着材等に起因すると考えられる有機物等の付着により生じる成長性異物の発生を抑制できると推察される。
また、遮光膜パターンの表面の酸素の含有割合としては、成長性異物の発生原因となる有機物の付着を低減するとの観点からは、50atm%以上であることが好ましく、なかでも55atm%以上であることが好ましく、特に、60atm%以上であることが好ましい。
ここで、酸素の含有割合を増加することで、例えば、ペリクルの粘着材等に起因すると考えられる有機物や、露光環境中、保管環境中に存在する有機物の付着を低減できる理由については明確ではないが、表面の酸素の含有割合が多いほど、表面の化学特性が安定し、有機物が吸着しにくくなるためと推察される。このため、酸素の含有割合を増加することで、遮光膜パターンの表面へのペリクルの粘着材等に起因すると考えられる有機物等の付着を抑制でき、結果として成長性異物の発生を抑制できると推察される。
さらに、遮光膜パターンを構成する遮光膜の材料がモリブデンシリサイド系材料である場合には、遮光膜パターンの表面のモリブデンの含有割合としては、成長性異物の発生原因となる有機物の付着を低減するとの観点からは、1.2atm%以下であることが好ましく、なかでも1.0atm%以下であることが好ましく、特に、0.5atm%以下であることが好ましい。
ここで、モリブデンの含有割合を低減することで、例えば、ペリクルの粘着材等に起因すると考えられる有機物や、露光環境中、保管環境中に存在する有機物の付着を低減できる理由については明確ではないが、モリブデンは有機物を起因とする成長性異物生成の触媒として作用するためであると推察される。このため、表面のモリブデンの含有割合を低減することで、表面に成長性異物の原因となる有機物が付着した場合でも、それが成長性異物として認識されるまで大きくなることを抑制でき、結果として成長性異物の発生を抑制できると推察される。
なお、atm%は、遮光膜パターンの表面から検出された元素の合計を100%とした場合の各元素の割合をいうものである。
また、上述の遮光膜パターン表面の成分組成の測定方法については、表面成分組成を精度良く測定できる方法であればよく、例えば、遮光膜パターンの最表面から厚み方向に5nmの範囲内における平均の成分組成を測定する方法を用いることができる。
このような測定条件としては、例えば、以下のX線条件、X線取込角度および中和条件を用いることができる。
なお、このような表面組成の測定装置としては、例えば、ULVAC−PHI社製Quantum2000を用いることができる。
(測定条件)
X線条件:Al mono 200μmφ×30W 15kV
X線取込角度:45°
中和条件:ION/Electron 20μA
(2)遮光膜パターンの側面
上記遮光膜パターンは、特に限定されるものではないが、図1に示される遮光膜パターン102のように、上記遮光膜パターンの側面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下であるものが好ましい。上記遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下である場合と同様の効果が得られるからである。具体的には、上記遮光膜パターンの側面に成長性異物が発生することを抑制することができるからである。また、上記フォトマスクを洗浄する時に、物理洗浄ツール等の出力を弱めたとしても、上記遮光膜パターンの側面から異物を容易に除去することができるからである。さらに、上記遮光膜パターンの側面に成長性異物が発生した場合には、上記遮光膜パターンの表面に成長性異物が発生した場合とは異なり、上記成長性異物がそれほど大きく成長しなくても光を透過する部分を覆うようになる。このため、上記遮光膜パターンの側面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下であることによって、上記遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下である場合よりも、ウェハへの良好なパターン転写像が得られなくなることを顕著に抑制することができるからである。
ここで、本発明において、上記遮光膜パターンの側面は、上記遮光膜パターンの表面および上記透明基板の表面または後述する光半透過膜パターンの表面の間の面を意味する。より具体的には、上記遮光膜パターンの側面は、図1および図5に示される遮光膜パターン102の側面102bのような上記遮光膜パターンの上面および上記透明基板の上面または後述する光半透過膜パターンの上面の間の面を意味する。
上記遮光膜パターンの側面の算術平均粗さ(Ra)は、特に限定されるものではないが、中でも、0.3nm以下が好ましく、特に、0.2nm以下が好ましい。より硫酸イオンの吸着量が少ないからである。
また、上記遮光膜パターンの側面の算術平均粗さ(Ra)が、0.4nm以下である場合には、上記遮光膜パターンの側面積は、99800nm2以下となる。なお、本発明において、上記遮光膜パターンの側面積は、上記遮光膜パターンの表面積と同様の方法および評価条件によって、上記遮光膜パターンの側面の算術平均粗さ(Ra)から求められるものを意味する。
上記遮光膜パターンの側面の算術平均粗さ(Ra)および側面の成分組成については、より具体的には、上記「(1)遮光膜パターンの表面」の項に記載の内容と同様とすることができる。
また、上記遮光膜パターンの側面積は、特に限定されるものではないが、中でも、99700nm2以下、特に、99600nm2以下が好ましい。より硫酸イオンの吸着量が少ないからである。
(3)遮光膜パターン
本発明において、上記遮光膜パターンは、図1に示される遮光膜パターン102のように、上記透明基板上において、ウェハに転写されるパターンが形成されるパターン形成領域(以下、「パターン形成領域」と略す。)に形成された遮光膜パターンを意味する。
また、上記遮光膜パターンは、図1に示される遮光膜パターン102のようなバイナリマスクにおける遮光膜パターンに限定されるものではなく、例えば、後述する光半透過膜パターン上に形成された遮光膜パターンでもよい。
2.外枠遮光膜
本発明のフォトマスクは、特に限定されるものではないが、上記透明基板上において、上記パターン形成領域の外側である外枠領域(以下、「外枠領域」と略す。)に形成され、上記遮光膜からなる外枠遮光膜をさらに有していてもよい。この場合、上記外枠遮光膜の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下であるものが好ましい。これは、以下の理由からである。
フォトマスクを使用し続けるとペリクルが劣化するために、フォトマスクから一度ペリクルを剥がし、フォトマスクを洗浄し、再度ペリクルをフォトマスクに装着する作業を行わなければならない。そして、ペリクルは、フォトマスクにおいて、上記外枠領域に粘着剤を介して接着されることによって、装着される。このため、フォトマスクが、上記外枠領域に形成され、遮光膜からなる外枠遮光膜をさらに有する場合には、ペリクルは、上記外枠領域に形成された外枠遮光膜の表面上に粘着剤を介して接着される。この結果、フォトマスクからペリクルを剥がす際には、ペリクルの粘着材が多量に外枠遮光膜の表面上に残存してしまう。また、外枠遮光膜の表面上に残存するペリクルの粘着材を除去することは困難である。このようなことから、ペリクルの粘着材を除去するためにフォトマスクを多数回洗浄しなければならなくなる。また、多量に外枠遮光膜の表面上に残存するペリクルの粘着材は、フォトマスクの洗浄等により、フォトマスクの上記パターン形成領域内に散らばり不良となってしまう。さらに、ペリクルの粘着材は有機物であるため、多量に外枠遮光膜の表面上に残存するペリクルの粘着材は、ガス等が発生し、成長性異物の発生原因になり得る。
これに対して、本発明によれば、上記外枠遮光膜の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下であり、上記外枠遮光膜の表面が滑らかであるために、ペリクルの粘着材を外枠遮光膜の表面から除去することが容易になる。これにより、ペリクルの粘着材を外枠遮光膜の表面から除去するためにフォトマスクを洗浄する回数を削減することができる。また、多量に外枠遮光膜の表面上に残存するペリクルの粘着材が、フォトマスクの洗浄等により、フォトマスクの上記パターン形成領域内に散らばり不良となることを抑制することができる。さらに、多量に外枠遮光膜の表面上に残存するペリクルの粘着材が、成長性異物の発生原因になることを抑制することができる。これにより、成長性異物が成長し、ウェハへの良好なパターン転写像が得られなくなることを抑制することができる。したがって、上記フォトマスクは、上記外枠遮光膜を有することが好ましい。
3.遮光膜
上記遮光膜は、特に限定されるものではないが、本発明のフォトマスクが、図1に示されるフォトマスク100のようなバイナリマスクである場合には、単独で光学濃度(OD値)が、3.0以上となるように調整されたものが好ましい。露光時に所望の部分において必要な遮光性を得ることができるからである。また、上記遮光膜は、本発明のフォトマスクが、後述する位相シフトマスクである場合には、後述する光半透過膜パターンと合わせて光学濃度(OD値)が、3.0以上となるように調整されたものが好ましい。露光時に所望の部分において必要な遮光性を得ることができるからである。
また、上記遮光膜の材料は、特に限定されるものではないが、上記遮光膜の材料としては、例えば、モリブデンシリサイド(MoSi)系材料、クロム(Cr)系材料等を挙げることができる。そして、モリブデンシリサイド(MoSi)系材料としては、MoSiO、MoSiN、MoSiON等を挙げることができる。クロム(Cr)系材料としては、Cr、CrO、CrN、CrON等を挙げることができる。
さらに、上記遮光膜の厚さは、その材料の種類により異なるものであり、特に限定されるものではないが、10nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、中でも、10nm〜300nmの範囲内であることが好ましく、特に、10nm〜200nmの範囲内であることが好ましい。上記厚さがあれば、単独で、または後述する光半透過膜パターンと合わせて、3.0以上の光学濃度(OD値)を確保できるからである。
本発明においては、上記遮光膜パターンの表面積を小さくできるとの観点からは、上記遮光膜の厚さが、65nm以下であることが好ましい。
4.透明基板
本発明における透明基板は、特に限定されるものではないが、本発明における透明基板としては、例えば、露光光を高透過率で透過する光学研磨された合成石英ガラス、蛍石、フッ化カルシウム等を挙げることができる。中でも、合成石英ガラスが好ましい。多用されており品質が安定し、短波長の露光光の透過率の高いからである。
上記透明基板は、特に限定されるものではないが、図1に示される透明基板101のように、上記透明基板の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下であるものが好ましい。上記遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下である場合と同様の効果が得られるからである。具体的には、上記透明基板の表面積が小さくなるため、上記透明基板の表面に成長性異物が発生することを抑制することができるからである。また、上記フォトマスクを洗浄する時に、物理洗浄ツール等の出力を弱めたとしても、上記透明基板から異物を容易に除去することができるからである。さらに、上記透明基板の表面に成長性異物が発生した場合には、上記遮光膜パターンの表面に成長性異物が発生した場合とは異なり、上記成長性異物がそれほど大きく成長しなくても光を透過する部分を覆うようになる。このため、上記透明基板の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下であることによって、上記遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下である場合よりも、ウェハへの良好なパターン転写像が得られなくなることを顕著に抑制することができるからである。
さらに、上記外枠領域に上記遮光膜パターンおよび後述する光半透過膜パターンが形成されておらず、上記外枠領域において上記透明基板が露出している場合には、上記外枠領域において上記透明基板の表面が滑らかであるために、ペリクルの粘着材を上記外枠領域において上記透明基板の表面から除去することが容易になる。これにより、ペリクルの粘着材を上記透明基板の表面から除去するためにフォトマスクを洗浄する回数を削減することができるからである。また、この場合には、多量に上記透明基板の表面上に残存するペリクルの粘着材が、フォトマスクの上記パターン形成領域内に散らばり不良となることを抑制することができるからである。さらに、この場合には、多量に上記透明基板の表面上に残存するペリクルの粘着材が、成長性異物の発生原因になることを抑制することができるからである。これにより、成長性異物が成長し、ウェハへの良好なパターン転写像が得られなくなることを抑制することができるからである。
上記透明基板の表面の算術平均粗さ(Ra)は、特に限定されるものではないが、中でも、0.3nm以下が好ましく、特に、0.2nm以下が好ましく、中でも特に、0.13nm以下が好ましい。より硫酸イオンの吸着量が少ないからである。
上記透明基板の表面の窒素の含有割合としては、成長性異物の発生原因となる有機物の付着を低減するとの観点からは、低いほど好ましく、例えば、5.0atm%以下であることが好ましい。
また、透明基板の表面の酸素の含有割合としては、成長性異物の発生原因となる有機物の付着を低減するとの観点からは、60.0atm%以上であることが好ましい。
5.位相シフトマスク
本発明のフォトマスクは、図1に示されるフォトマスク100のようなバイナリマスクに限定されるものではなく、例えば、トライトーン構造を有する位相シフトマスクでもよい。
本発明のトライトーン構造を有する位相シフトマスクは、上記フォトマスクであって、上記透明基板上に形成された光半透過膜パターンをさらに有し、上記遮光膜パターンが上記光半透過膜パターン上に形成されたものである。ここで、本発明において、「トライトーン構造」とは、上記パターン形成領域に上記光半透過膜パターンが形成され、上記遮光膜パターンが上記光半透過膜パターン上に形成された構造を意味する。
図5は、本発明のフォトマスクの他の例を示す概略断面図である。図5に示されるフォトマスク100は、トライトーン構造を有する位相シフトマスクである。図5に示されるフォトマスク100は、透明基板101と、透明基板101上に形成された光半透過膜パターン103と、光半透過膜パターン103上に形成された遮光膜パターン102と、を有する。遮光膜パターン102は光半透過膜パターン103の上面103a上に部分的に形成されている。遮光膜パターン102は、光半透過膜パターン103と合わせて光学濃度(OD値)が3.0以上となるよう調整されたものである。また、光半透過膜パターン103は、上記パターン形成領域に形成された光半透過膜パターンである。そして、上記パターン形成領域に光半透過膜パターン103が形成され、遮光膜パターン102が光半透過膜パターン103上に形成された構造が、トライトーン構造である。
そして、透明基板101の上面101a、光半透過膜パターン103の上面103aおよび側面103b、ならびに遮光膜パターン102の上面102aおよび側面102bの全ての算術平均粗さ(Ra)は0.4nm以下である。
ここで、本発明において、上記光半透過膜パターンは、図5に示される光半透過膜パターン103のように、上記パターン形成領域に形成された光半透過膜パターンを意味する。また、本発明において、上記光半透過膜パターンの表面は、図5に示される光半透過膜パターン103の上面103aのような上記光半透過膜パターンの上面を意味する。なお、上記光半透過膜パターンの上面は、上記光半透過膜パターンにおける上記透明基板に接する下面とは反対側の面である。
上記トライトーン構造を有する位相シフトマスクは、上記遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下であれば特に限定されるものではないが、上記光半透過膜パターンは、図5に示される光半透過膜パターン103のように、上記光半透過膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下であるものが好ましい。上記遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下である場合と同様の効果が得られるからである。具体的には、上記光半透過膜パターンの表面に成長性異物が発生することを抑制することができるからである。また、上記フォトマスクを洗浄する時に、物理洗浄ツール等の出力を弱めたとしても、上記光半透過膜パターンの表面から異物を容易に除去することができるからである。
上記光半透過膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)は、特に限定されるものではないが、中でも、0.3nm以下が好ましく、特に、0.2nm以下が好ましい。より硫酸イオンの吸着量が少ないからである。
また、上記光半透過膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.4nm以下である場合には、上記光半透過膜パターンの表面積は、99800nm2以下となる。なお、本発明において、上記光半透過膜パターンの表面積は、上記遮光膜パターンの表面積と同様の方法および評価条件によって、上記光半透過膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)から求められるものを意味する。
また、上記光半透過膜パターンの表面積は、特に限定されるものではないが、中でも、99700nm2以下、特に、99600nm2以下が好ましい。より硫酸イオンの吸着量が少ないからである。
さらに、上記光半透過膜パターンは、特に限定されるものではないが、図5に示される光半透過膜パターン103のように、上記光半透過膜パターンの側面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下であるものが好ましい。上記遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下である場合と同様の効果が得られるからである。具体的には、上記光半透過膜パターンの側面に成長性異物が発生することを抑制することができるからである。また、上記フォトマスクを洗浄する時に、物理洗浄ツール等の出力を弱めたとしても、上記光半透過膜パターンの側面から異物を容易に除去することができるからである。また、上記光半透過膜パターンの側面に成長性異物が発生した場合には、上記光半透過膜パターンの表面に成長性異物が発生した場合とは異なり、上記成長性異物がそれほど大きく成長しなくても光を透過する部分を覆うようになる。このため、上記光半透過膜パターンの側面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下であることによって、上記光半透過膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下である場合よりも、ウェハへの良好なパターン転写像が得られなくなることを顕著に抑制することができる。
ここで、本発明において、上記光半透過膜パターンの側面は、上記光半透過膜パターンの表面および上記透明基板の表面の間の面を意味する。より具体的には、上記光半透過膜パターンの側面は、図5に示される光半透過膜パターン103の側面103bのような上記光半透過膜パターンの上面および上記透明基板の上面の間の面を意味する。
上記光半透過膜パターンの側面の算術平均粗さ(Ra)は、特に限定されるものではないが、中でも、0.3nm以下が好ましく、特に、0.2nm以下が好ましい。より硫酸イオンの吸着量が少ないからである。
また、上記光半透過膜パターンの側面の算術平均粗さ(Ra)が、0.4nm以下である場合には、上記光半透過膜パターンの側面積は、99800nm2以下となる。なお、本発明において、上記光半透過膜パターンの側面積は、上記遮光膜パターンの表面積と同様の方法および評価条件によって、上記光半透過膜パターンの側面の算術平均粗さ(Ra)から求められるものを意味する。
また、上記光半透過膜パターンの側面積は、特に限定されるものではないが、中でも、99700nm2以下、特に、99600nm2以下が好ましい。より硫酸イオンの吸着量が少ないからである。
また、上記光半透過膜パターンの材料は、特に限定されるものではないが、上記光半透過膜パターンの材料としては、例えば、モリブデンシリサイド(MoSi)系材料および窒化珪素(SiN)系材料等が挙げられる。そして、モリブデンシリサイド(MoSi)系材料としては、例えば、MoSiO、MoSiN、およびMoSiON等を挙げることができる。窒化珪素(SiN)系材料としては、SiNおよびSiON等を挙げることができる。
さらに、上記光半透過膜パターンの厚さは、その材料の種類により異なるものであり、特に限定されるものではないが、10nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、中でも、10nm〜300nmの範囲内であることが好ましく、特に、10nm〜200nmの範囲内であることが好ましい。半導体の微細パターンを形成するために用いられる上記光半透過膜の微細パターンをフォトマスクに形成するのに必要となる厚さ、上記光半透過膜パターンを所望の透過率とするのに必要となる厚さが、このような範囲であるからであり、さらには上記光半透過膜パターンの厚さがより薄い方が、上記光半透過膜の微細パターンをフォトマスクに形成する上で有利だからである。
B.フォトマスクブランクス
本発明のフォトマスクブランクスは、透明基板、および上記透明基板上に形成され、所望の光学濃度(OD値)を有する遮光膜を有し、上記遮光膜の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下であることを特徴とするものである。
図6は、本発明のフォトマスクブランクスの一例を示す概略断面図である。図6に示されるフォトマスクブランクス200は、バイナリマスクの製造に用いられるフォトマスクブランクスである。図6に示されるフォトマスクブランクス200は、透明基板101と、透明基板101上に形成された遮光膜202と、遮光膜202上に形成されたハードマスク層204と、を有する。遮光膜202は、単独で光学濃度(OD値)が3.0以上となるよう調整されたものである。また、遮光膜202は、モリブデンシリサイド(MoSi)系材料から構成される。ハードマスク層204は、クロム(Cr)系材料から構成される。なお、本発明のフォトマスクブランクスは、透明基板、および上記透明基板上に形成され、所望の光学濃度(OD値)を有する遮光膜を有し、上記遮光膜の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下であれば、図6に示されるハードマスク層204のようなハードマスク層を有していなくてもよい。
そして、遮光膜202の上面202aの算術平均粗さ(Ra)は0.4nm以下である。
ここで、本発明において、上記遮光膜の表面は、図6および図7に示される遮光膜202の上面202aのような上記遮光膜の上面を意味する。そして、上記遮光膜の上面は、上記遮光膜における上記透明基板または後述する光半透過膜に接する下面とは反対側の面である。また、上記透明基板の表面は、図6および図7に示される透明基板101の上面101aのような上記透明基板の上面を意味する。そして、上記透明基板の上面は、上記透明基板における上記遮光膜または後述する光半透過膜が形成される面である。
本発明によれば、上記遮光膜の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下であり、上記遮光膜の表面が滑らかであることによって、本発明のフォトマスクと同様の効果が得られる。
本発明のフォトマスクブランクスは、図6に示されるフォトマスクブランクス200のようなバイナリマスクの製造に用いられるフォトマスクブランクスに限定されるものではなく、例えば、ハードマスク層がない構造としてもよく、また、トライトーン構造を有する位相シフトマスクの製造に用いられるフォトマスクブランクスでもよい。
本発明のトライトーン構造を有する位相シフトマスクの製造に用いられるフォトマスクブランクスは、上記フォトマスクブランクスであって、上記透明基板上に形成された光半透過膜をさらに有し、上記遮光膜が上記光半透過膜上に形成されたものである。
図7は、本発明のフォトマスクブランクスの他の例を示す概略断面図である。図7に示されるフォトマスクブランクス200は、トライトーン構造を有する位相シフトマスクの製造に用いられるフォトマスクブランクスである。図7に示されるフォトマスクブランクス200は、透明基板101と、透明基板101上に形成された光半透過膜203と、光半透過膜203上に形成された遮光膜202と、を有する。遮光膜202は、光半透過膜203と合わせて光学濃度(OD値)が3.0以上となるよう調整されたものである。
そして、遮光膜202の上面202aの算術平均粗さ(Ra)は0.4nm以下である。
ここで、本発明において、上記光半透過膜の表面は、図7に示される光半透過膜203の上面203aのような上記光半透過膜の上面を意味する。なお、上記光半透過膜の上面は、上記光半透過膜における上記透明基板に接する下面とは反対側の面である。
上記遮光膜の表面の算術平均粗さ(Ra)を0.4nm以下にする方法は、特に限定されるものではないが、後述する「C.フォトマスクの製造方法 3.平滑化処理工程」の項目に記載の遮光膜パターンの表面を平滑化する方法の他、上記遮光膜を質量の小さい元素から構成する方法等が挙げられる。また、上記遮光膜を質量の小さい元素から構成する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、Si、SiON、SiN等から構成する方法が挙げられる。
本発明のフォトマスクブランクスの構成は、以上に挙げた点、ならびに上記遮光膜パターン、上記外枠遮光膜、および上記光半透過膜パターンの代わりに、それらを形成するために用いられる上記遮光膜および上記光半透過膜を有する点を除いて、「A.フォトマスク」の項目に記載の本発明のフォトマスクの構成と同様である。このため、ここでの説明は省略する。
また、上記フォトマスクブランクスを用いてフォトマスクを製造する場合、フォトマスクブランクスにおける遮光膜の表面の算術平均粗さ(Ra)を維持する方法としては、例えば、上記フォトマスクブランクスの遮光膜のうち、フォトマスクの遮光膜として用いる部分の表面をレジストで覆う方法を用いることができる。なお、遮光膜を覆うレジストおよびレジストの形成方法については、フォトマスクブランクスからフォトマスクを形成する際に一般的に用いられるレジストおよびレジストの形成方法を用いることができる。
C.フォトマスクの製造方法
本発明のフォトマスクの製造方法は、透明基板および上記透明基板上に形成され、所望の光学濃度(OD値)を有する遮光膜を有するフォトマスクブランクスを準備するフォトマスクブランクス準備工程と、上記遮光膜をエッチングすることにより上記遮光膜パターンを形成する遮光膜パターン形成工程と、上記遮光膜パターンの表面を平滑化する平滑化処理工程と、を有することを特徴とするものである。
図8および図9は、本発明のフォトマスクの製造方法の一例を示す概略工程断面図である。図8および図9に示されるフォトマスクの製造方法は、バイナリマスクの製造方法である。以下、図8および図9に示されるフォトマスクの製造方法を説明する。
まず、図8(a)に示すように、透明基板101と、透明基板101上に形成された遮光膜202と、遮光膜202上に形成されたハードマスク層204と、を有するフォトマスクブランクス200を準備する。遮光膜202は、単独で光学濃度(OD値)が3.0以上となるよう調整されたものである。また、遮光膜202は、モリブデンシリサイド(MoSi)系材料から構成される。ハードマスク層204は、クロム(Cr)系材料から構成される。
次に、図8(b)に示すように、ハードマスク層204上に電子線レジストを塗布し、レジスト層205を形成する。次に、図8(c)に示すように、電子線描画装置によってレジスト層205をパターン露光し、レジスト専用の現像液により現像し、所望形状のレジストパターン105を形成する。
次に、図8(d)に示すように、所望形状のレジストパターン105をエッチングマスクとして、ドライエッチング装置によって、反応性エッチングガスを用い、ハードマスク層204をドライエッチングして、ハードマスク層204を後述する遮光膜パターン102の形状にエッチング加工する。これにより、ハードマスク層パターン104を形成する。
次に、図8(e)に示すように、所望形状のレジストパターン105を除去する。次に、図9(a)に示すように、ハードマスク層パターン104をエッチングマスクとして、ドライエッチング装置によって、反応性エッチングガスを用い、遮光膜202をドライエッチングする。これにより、上記パターン形成領域に遮光膜パターン102を形成する。次に、図9(b)に示すように、ドライエッチング装置によって、反応性エッチングガスを用い、ハードマスク層パターン104をドライエッチングして、エッチング除去する。
次に、図9(c)に示すように、透明基板101の上面101aおよび遮光膜パターン102の上面102aの算術平均粗さ(Ra)を0.4nm以下にする平滑化処理を行う。これにより、透明基板101の上面101aおよび遮光膜パターン102の上面102aの算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下であるフォトマスク100が得られる。フォトマスク100はバイナリマスクである。ここで、本発明において、上記遮光膜パターンの表面および上記透明基板の表面は、「A.フォトマスク」の項目に記載した内容と同一の内容を意味する。
本発明によれば、上記遮光膜パターンの表面が平滑化されたフォトマスクが得られる。これにより、上記遮光膜パターンの表面に吸着する硫酸イオンの吸着量を少なくすることができるので、上記遮光膜パターンの表面に成長性異物が発生しにくいフォトマスクを得ることができる。また、上記遮光膜パターンの表面を滑らかにすることができるので、上記フォトマスクを洗浄する時に、物理洗浄ツール等の出力を弱めたとしても、上記遮光膜パターンの表面から異物を容易に除去することができるフォトマスクを得ることができる。これらの結果、ウェハへの良好なパターン転写像が得られなくなることを抑制することができる。以下、本発明のフォトマスクの製造方法の構成について説明する。
1.フォトマスクブランクス準備工程
本発明におけるフォトマスクブランクス準備工程は、透明基板および上記透明基板上に形成され、所望の光学濃度(OD値)を有する遮光膜を有するフォトマスクブランクスを準備する工程である。
上記透明基板の構成は、「A.フォトマスク 4.透明基板」の項目に記載の透明基板の構成と同様である。このため、ここでの説明は省略する。
上記遮光膜の構成は、「A.フォトマスク 3.遮光膜」の項目に記載の遮光膜の構成と同様である。このため、ここでの説明は省略する。
上記フォトマスクブランクス準備工程は、特に限定されるものではないが、上記フォトマスクブランクスとして、上記透明基板と、上記透明基板および上記遮光膜の間に形成された光半透過膜と、上記光半透過膜上に形成された上記遮光膜と、を有するフォトマスクブランクスを準備する工程が好ましい。上記平滑化処理工程において、上記遮光膜パターンおよび後述する光半透過膜パターンの両方の表面を平滑化することができるからである。
上記光半透過膜の材料および厚さは、「A.フォトマスク 5.位相シフトマスク」の項目に記載の光半透過膜パターンの材料および厚さと同様である。このため、ここでの説明は省略する。
2.遮光膜パターン形成工程
本発明における遮光膜パターン形成工程は、上記遮光膜をエッチングすることにより上記遮光膜パターンを形成する工程である。本発明において、上記遮光膜パターンは、図9に示されるように、上記パターン形成領域に形成される。
上記遮光膜パターン形成工程は、特に限定されるものではないが、上記遮光膜をエッチングする方法としては、上記遮光膜がモリブデンシリサイド(MoSi)系材料から構成されている場合は、例えば、フッ素系ガス、例えば、SF6、CF4、CHF3、C2F6や、これらの混合ガス、あるいはこれらのガスに酸素を混合したガス等をエッチングガスとして用いてドライエッチングする方法等が挙げられる。また、上記遮光膜がクロム(Cr)系材料から構成されている場合は、例えば、塩素系ガスと酸素ガスの混合ガス等をエッチングガスとして用いてドライエッチングする方法等が挙げられる。
3.平滑化処理工程
本発明における平滑化処理工程は、上記遮光膜パターンの表面を平滑化する工程である。
上記平滑化処理工程は、特に限定されるものではないが、上記遮光膜パターンの表面および側面の両方を平滑化する工程が好ましい。上記遮光膜パターンの表面および側面の両方に成長性異物が発生しにくいフォトマスクを得ることができるからである。また、上記フォトマスクを洗浄する時に、物理洗浄ツール等の出力を弱めたとしても、上記遮光膜パターンの表面および側面の両方から異物を容易に除去することができるフォトマスクを得ることができるからである。さらに、上記遮光膜パターンの側面に成長性異物が発生した場合には、上記遮光膜パターンの表面に成長性異物が発生した場合とは異なり、上記成長性異物がそれほど大きく成長しなくても光を透過する部分を覆うようになる。このため、上記遮光膜パターンの表面および側面の両方を平滑化することによって、上記遮光膜パターンの表面のみを平滑化する場合よりも、ウェハへの良好なパターン転写像が得られなくなることを顕著に抑制することができるからである。
上記平滑化処理工程は、特に限定されるものではないが、上記遮光膜パターンの表面とともに、上記透明基板の表面を平滑化する工程が好ましい。上記透明基板の表面に成長性異物が発生しにくいフォトマスクを得ることができるからである。また、上記フォトマスクを洗浄する時に、物理洗浄ツール等の出力を弱めたとしても、上記透明基板の表面から異物を容易に除去することができるフォトマスクを得ることができるからである。さらに、上記透明基板の表面に成長性異物が発生した場合には、上記遮光膜パターンの表面に成長性異物が発生した場合とは異なり、上記成長性異物がそれほど大きく成長しなくても光を透過する部分を覆うようになる。このため、上記透明基板の表面を平滑化することによって、上記遮光膜パターンの表面のみを平滑化する場合よりも、ウェハへの良好なパターン転写像が得られなくなることを顕著に抑制することができるからである。さらに、上記外枠領域において上記透明基板の表面が滑らかであるために、ペリクルの粘着材を上記外枠領域において上記透明基板の表面から除去することが容易になるフォトマスクを得ることができる。これにより、ペリクルの粘着材を上記外枠領域において上記透明基板の表面から除去するためにフォトマスクを洗浄する回数を削減し易いフォトマスクを得ることができる。また、多量に上記外枠領域において上記透明基板の表面上に残存するペリクルの粘着材が、フォトマスクの洗浄等により、フォトマスクの上記パターン形成領域内に散らばり不良となりにくいフォトマスクを得ることができる。さらに、多量に上記外枠領域において上記透明基板の表面上に残存するペリクルの粘着材が、成長性異物の発生原因になりにくいフォトマスクを得ることができる。
上記平滑化処理工程は、特に限定されるものではないが、上記遮光膜パターンの表面もしくは側面、または上記透明基板の表面の算術平均粗さ(Ra)を0.4nm以下にする工程が好ましい。上記遮光膜パターンの表面もしくは側面、または上記透明基板の表面に成長性異物が発生しないフォトマスクを得ることができるからである。上記平滑化処理工程としては、中でも、上記遮光膜パターンの表面もしくは側面、または上記透明基板の表面の算術平均粗さ(Ra)を0.3nm以下にする工程が好ましく、特に、上記遮光膜パターンの表面もしくは側面、または上記透明基板の表面の算術平均粗さ(Ra)を0.2nm以下にする工程が好ましい。より硫酸イオンの吸着量が少ないからである。
上記遮光膜パターンの表面を平滑化する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ドライエッチングによって平滑化する方法、ウエットエッチングによって平滑化する方法、UVなどの光を照射することによって平滑化する方法、加熱することによって平滑化する方法等が挙げられる。
上記ドライエッチングによって平滑化する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、塩素系のガス、フッ素系のガス、酸素系のガス等を用いてプラズマ処理を行う方法等が挙げられる。中でも、上記遮光膜パターンがクロム(Cr)系材料から構成される場合には、フッ素系のガスまたは酸素系のガスを用いてプラズマ処理を行う方法等が好ましく、上記遮光膜パターンがモリブデンシリサイド(MoSi)系材料から構成される場合には、塩素系のガスまたは酸素系ガスを用いてプラズマ処理を行う方法等が好ましい。
そして、上記ドライエッチングによって平滑化する方法では、等方的なプラズマ処理を行うことによって、上記遮光膜パターンの表面および側面の両方を同等に平滑化することができる。
また、上記ウエットエッチングによって平滑化する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルカリ洗浄液や酸性洗浄液等の濃度を調整した溶液を用いたウエットエッチングを行う方法等が挙げられる。中でも、モリブデンシリサイド(MoSi)系材料のようなSi系材料から構成される遮光膜パターンに対しては、アルカリ洗浄液や、フッ酸水溶液(HF、NH4F等)、リン酸溶液(H3PO4:HNO3)等のような酸性洗浄液等を用いたウエットエッチングを行う方法等が好ましく、クロム(Cr)系材料から構成される遮光膜パターンに対しては、アルカリ洗浄液や、硝酸第二セリウムアンモニウム、過塩素酸等のような酸性洗浄液等を用いたウエットエッチングを行う方法等が好ましい。
そして、上記ウエットエッチングによって平滑化する方法では、ウエットエッチングは一般に等法的な処理であるために、上記遮光膜パターンの表面および側面の両方を同等に平滑化することができる。
以上に挙げた表面を平滑化する方法によれば、上記遮光膜パターンの表面および側面だけではなく、上記平滑化処理工程において、上記透明基板の表面を平滑化することもできる。また、以上に挙げた表面を平滑化する方法によれば、「A.フォトマスク 2.外枠遮光膜」の項目に記載の外枠遮光膜の表面を、算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下となるように平滑化することもできる。
本工程においては、表面を平滑化する方法が、表面を平滑するとともに、遮光膜パターンの表面の成分組成を調整する方法であることが好ましい。
本工程においては、上記平滑化方法が、例えば、遮光膜パターン表面の窒素の含有割合を減少させる方法とすることができ、なかでも窒素の含有割合を5atm%以上減少させる方法であることが好ましく、特に7atm%以上減少させる方法であることが好ましく、なかでも特に15atm%以上減少させる方法であることが好ましい。上記平滑化方法であることで、本工程により形成される遮光膜パターンは、成長性異物の発生原因となる有機物の付着を低減可能となるからである。
本工程においては、上記平滑化方法が、遮光膜パターン表面の酸素の含有割合を増加させる方法とすることができ、なかでも酸素の含有割合を5atm%以上増加させる方法であることが好ましく、特に13atm%以上増加させる方法であることが好ましく、なかでも特に14atm%以上増加させる方法であることが好ましい。上記平滑化方法であることで、本工程により形成される遮光膜パターンは、成長性異物の発生原因となる有機物の付着を低減可能となるからである。
本工程においては、遮光膜パターンを構成する遮光膜の材料がモリブデンシリサイド系材料である場合には、遮光膜パターンの表面のモリブデンの含有割合を減少させる方法とすることができ、なかでもモリブデンの含有割合を0.4atm%以上減少させる方法であることが好ましく、特に1atm%以上減少させる方法であることが好ましい。上記平滑化方法であることで、本工程により形成される遮光膜パターンは、成長性異物の発生原因となる有機物の付着を低減可能となるからである。
このような表面を平滑化するとともに、遮光膜パターンの表面の成分組成を調整することもできる平滑化方法としては、具体的には、ドライエッチングによって平滑化する方法であることが好ましい。上記平滑化方法は、プラズマ処理に用いるガスの種類、プラズマ処理の回数を調整することで、表面成分組成の調整を容易に行うことができるからである。
ガスの種類およびプラズマ処理の回数の組み合わせとしては、例えば、遮光膜パターンを構成する遮光膜の材料がモリブデンシリサイド系材料であり、窒素の含有割合を低減し、酸素の含有割合を増加し、モリブデンシリサイドの含有割合を低減する観点からは、塩素系のガスを用いた塩素プラズマ処理を行った後に、酸素系のガスを用いた酸素プラズマ処理を行う組み合わせ等を挙げることができる。
4.位相シフトマスクの製造方法
本発明のフォトマスクの製造方法は、図8および図9に示されるようなバイナリマスクの製造方法に限定されるものではなく、例えば、トライトーン構造を有する位相シフトマスクの製造方法でもよい。
本発明のトライトーン構造を有する位相シフトマスクの製造方法は、上記フォトマスクの製造方法であって、上記フォトマスクブランクス準備工程において、上記フォトマスクブランクスとして、上記透明基板と、上記透明基板および上記遮光膜の間に形成された光半透過膜と、上記光半透過膜上に形成された上記遮光膜と、を有するフォトマスクブランクスを準備し、上記光半透過膜をエッチングすることにより上記光半透過膜パターンを形成する光半透過膜パターン形成工程を、さらに有するものである。
図10および図11は、本発明のフォトマスクの製造方法の他の例を示す概略工程断面図である。図10および図11に示されるフォトマスクの製造方法は、トライトーン構造を有する位相シフトマスクの製造方法である。以下、図10および図11に示されるトライトーン構造を有する位相シフトマスクの製造方法を説明する。
まず、図10(a)に示すように、透明基板101と、透明基板101および遮光膜202の間に形成された光半透過膜203と、光半透過膜203上に形成された遮光膜202と、を有するフォトマスクブランクス200を準備する。遮光膜202は、光半透過膜203と合わせて光学濃度(OD値)が3.0以上となるよう調整されたものである。また、遮光膜202は、クロム(Cr)系材料から構成される。また、光半透過膜203は、モリブデンシリサイド(MoSi)系材料から構成される。
次に、図10(b)に示すように、遮光膜202上に電子線レジストを塗布し、レジスト層205を形成する。次に、図10(c)に示すように、電子線描画装置によってレジスト層205をパターン露光し、レジスト専用の現像液により現像し、所望形状のレジストパターン105を形成する。
次に、図10(d)に示すように、所望形状のレジストパターン105をエッチングマスクとして、ドライエッチング装置によって、反応性エッチングガスを用い、遮光膜202をドライエッチングして、遮光膜202を後述する光半透過膜パターン103の形状にエッチング加工する。
次に、図10(e)に示すように、所望形状のレジストパターン105を除去する。次に、図10(f)に示すように、光半透過膜パターン103の形状にエッチング加工された遮光膜202をエッチングマスクとして、ドライエッチング装置によって、反応性エッチングガスを用い、光半透過膜203をドライエッチングする。これにより、上記パターン形成領域に光半透過膜パターン103を形成する。
次に、図11(a)に示すように、遮光膜202上に電子線レジストを塗布し、レジスト層205を形成する。次に、図11(b)に示すように、電子線描画装置によってレジスト層205をパターン露光し、レジスト専用の現像液により現像し、所望形状のレジストパターン105を形成する。
次に、図11(c)に示すように、所望形状のレジストパターン105をエッチングマスクとして、ドライエッチング装置によって、反応性エッチングガスを用い、遮光膜202をドライエッチングする。これにより、上記パターン形成領域に遮光膜パターン102を形成する。
次に、図11(d)に示すように、所望形状のレジストパターン105を除去する。次に、図11(e)に示すように、透明基板101の上面101a、光半透過膜パターン103の上面103a、および遮光膜パターン102の上面102aの全ての算術平均粗さ(Ra)を0.4nm以下にする平滑化処理を行う。これにより、透明基板101の上面101a、光半透過膜パターン103の上面103a、および遮光膜パターン102の上面102aの全ての算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下であるフォトマスク100が得られる。フォトマスク100はトライトーン構造を有する位相シフトマスクである。ここで、本発明において、上記光半透過膜パターンの表面は、「A.フォトマスク 5.位相シフトマスク」の項目に記載した内容と同一の内容を意味する。
本発明における光半透過膜パターン形成工程は、上記光半透過膜をエッチングすることにより上記光半透過膜パターンを形成する工程である。本発明において、上記光半透過膜パターンは、図10に示されるように、上記パターン形成領域に形成される。
上記光半透過膜パターン形成工程は、特に限定されるものではないが、上記光半透過膜をエッチングする方法としては、上記光半透過膜がモリブデンシリサイド(MoSi)系材料から構成されている場合は、例えば、フッ素系ガス、例えば、SF6、CF4、CHF3、C2F6や、これらの混合ガス、あるいはこれらのガスに酸素を混合したガス等をエッチングガスとして用いてドライエッチングする方法等が挙げられる。また、上記光半透過膜が窒化珪素(SiN)系材料から構成されている場合は、例えば、フッ素系ガス、例えば、SF6、CF4、CHF3、C2F6や、これらの混合ガス、あるいはこれらのガスに酸素を混合したガス等をエッチングガスとして用いてドライエッチングする方法等が挙げられる。
上記位相シフトマスクの製造方法は、特に限定されるものではないが、上記平滑化処理工程が、上記遮光膜パターンおよび上記光半透過膜パターンの両方の表面を平滑化する工程であるものが好ましい。上記遮光膜パターンおよび上記光半透過膜パターンの両方の表面に吸着する硫酸イオンの吸着量を少なくすることができるので、上記遮光膜パターンおよび上記光半透過膜パターンの両方の表面に成長性異物が発生しにくい位相シフトマスクを得ることができるからである。また、上記遮光膜パターンおよび上記光半透過膜パターンの両方の表面を滑らかにすることができるので、上記位相シフトマスクを洗浄する時に、物理洗浄ツール等の出力を弱めたとしても、上記遮光膜パターンおよび上記光半透過膜パターンの両方の表面から異物を容易に除去することができる位相シフトマスクを得ることができるからである。これらの結果、ウェハへの良好なパターン転写像が得られなくなることを抑制することができるからである。
上記位相シフトマスクの製造方法は、特に限定されるものではないが、上記平滑化処理工程が、上記光半透過膜パターンの表面および側面の両方を平滑化する工程が好ましい。上記光半透過膜パターンの表面および側面の両方に成長性異物が発生しにくいフォトマスクを得ることができるからである。また、上記フォトマスクを洗浄する時に、物理洗浄ツール等の出力を弱めたとしても、上記光半透過膜パターンの表面および側面の両方から異物を容易に除去することができるフォトマスクを得ることができるからである。さらに、上記光半透過膜パターンの側面に成長性異物が発生した場合には、上記光半透過膜パターンの表面に成長性異物が発生した場合とは異なり、上記成長性異物がそれほど大きく成長しなくても光を透過する部分を覆うようになる。このため、上記光半透過膜パターンの表面および側面の両方を平滑化することによって、上記光半透過膜パターンの表面のみを平滑化する場合よりも、ウェハへの良好なパターン転写像が得られなくなることを顕著に抑制することができるからである。
上記平滑化処理工程は、特に限定されるものではないが、上記光半透過膜パターンの表面または側面の算術平均粗さ(Ra)を0.4nm以下にする工程が好ましい。上記光半透過膜パターンの表面または側面に成長性異物が発生しないフォトマスクを得ることができるからである。上記平滑化処理工程としては、中でも、上記光半透過膜パターンの表面または側面の算術平均粗さ(Ra)を0.3nm以下にする工程が好ましく、特に、上記光半透過膜パターンの表面または側面の算術平均粗さ(Ra)を0.2nm以下にする工程が好ましい。より硫酸イオンの吸着量が少ないからである。
上記光半透過膜パターンの表面を平滑化する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、「3.平滑化処理工程」の項目に記載の上記遮光膜パターンの表面を平滑化する方法と同様の方法が挙げられる。そして、上記ドライエッチングによって平滑化する方法としては、中でも、上記光半透過膜パターンがモリブデンシリサイド(MoSi)系材料および窒化珪素(SiN)系材料から構成される場合には、塩素系のガスまたは酸素系のガスを用いてプラズマ処理を行う方法等が好ましい。また、上記ウエットエッチングによって平滑化する方法としては、中でも、モリブデンシリサイド(MoSi)系材料および窒化珪素(SiN)系材料のようなSi系材料から構成される光半透過膜パターンに対しては、アルカリ洗浄液や、フッ酸水溶液(HF、NH4F等)、リン酸溶液(H3PO4:HNO3)等のような酸性洗浄液等を用いたウエットエッチングを行う方法等が好ましい。
さらに、上記光半透過膜パターンの側面を平滑化する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、「3.平滑化処理工程」の項目に記載の上記遮光膜パターンの側面をドライエッチングによって平滑化する方法、上記遮光膜パターンの側面をウエットエッチングによって平滑化する方法と同様の方法が挙げられる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例および比較例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1]
まず、光学研磨した6インチ角、0.25インチ厚の合成石英基板(透明基板)と、合成石英基板上に形成されたモリブデンシリサイド(MoSi)系材料から構成される光半透過膜と、光半透過膜上に形成されたハードマスク層(遮光膜)とを有するフォトマスクブランクス(HOYA社製A61A−TFC)を準備した。
次に、ハードマスク層上に所望形状のレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、ハードマスク層を後述する光半透過膜パターンの形状にエッチング加工した。これにより、ハードマスク層パターンを形成した。
次に、ハードマスク層パターンをエッチングマスクとして、光半透過膜をエッチングし、光半透過膜パターンを形成した。次に、ハードマスク層パターン上に所望形状のレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、ドライエッチングにより、ハードマスク層パターンをさらにエッチング加工した。これにより、遮光膜パターンを形成して、平滑化処理前のフォトマスク(位相シフトマスク)を作製した。
次に、光半透過膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)を0.4nm以下にする平滑化処理を行った。具体的には、等方的なプラズマ処理を行うドライエッチングによって、平滑化処理を行った。これにより、フォトマスク(位相シフトマスク)を作製した。
[実施例2]
まず、光学研磨した6インチ角、0.25インチ厚の合成石英基板(透明基板)と、合成石英基板上に形成された窒化珪素(SiN)系材料から構成される光半透過膜と、光半透過膜上に形成されたハードマスク層(遮光膜)とを有するフォトマスクブランクス(SiN)を準備した。
次に、ハードマスク層上に所望形状のレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、ハードマスク層を後述する光半透過膜パターンの形状にエッチング加工した。これにより、ハードマスク層パターンを形成した。
次に、ハードマスク層パターンをエッチングマスクとして、光半透過膜をエッチングし、光半透過膜パターンを形成した。次に、ハードマスク層パターン上に所望形状のレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、ドライエッチングにより、ハードマスク層パターンをエッチング加工した。これにより、遮光膜パターンを形成して、平滑化処理前のフォトマスク(位相シフトマスク)を作製した。次に、光半透過膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)を0.4nm以下にする平滑化処理を行った。具体的には、等方的なプラズマ処理を行うドライエッチングによって、平滑化処理を行った。これにより、フォトマスク(位相シフトマスク)を作製した。
[実施例3]
まず、光学研磨した6インチ角、0.25インチ厚の合成石英基板(透明基板)と、合成石英基板上に形成されたモリブデンシリサイド(MoSi)系材料から構成される遮光膜と、遮光膜上に形成されたハードマスク層とを有するフォトマスクブランクス(信越化学社製W0G)を準備した。
次に、ハードマスク層上に所望形状のレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、ハードマスク層を後述する遮光膜パターンの形状にエッチング加工した。これにより、ハードマスク層パターンを形成した。
次に、ハードマスク層パターンをエッチングマスクとして、遮光膜をエッチングし、遮光膜パターンを形成した。次に、ドライエッチングにより、ハードマスク層パターンを除去した。これにより、平滑化処理前のフォトマスク(バイナリマスク)を作製した。次に、遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)を0.4nm以下にする平滑化処理を行った。具体的には、等方的なプラズマ処理を行うドライエッチングによって、平滑化処理を行った。これにより、フォトマスク(バイナリマスク)を作製した。
[実施例4]
まず、光学研磨した6インチ角、0.25インチ厚の合成石英基板(透明基板)と、合成石英基板上に形成されたモリブデンシリサイド(MoSi)系材料から構成される遮光膜と、遮光膜上に形成されたハードマスク層とを有するフォトマスクブランクス(信越化学社製W0G)を準備した。
次に、ハードマスク層上に所望形状のレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、ハードマスク層を後述する遮光膜パターンの形状にエッチング加工した。これにより、ハードマスク層パターンを形成した。
次に、ハードマスク層パターンをエッチングマスクとして、遮光膜をエッチングし、遮光膜パターンを形成した。次に、ドライエッチングにより、ハードマスク層パターンを除去した。これにより、平滑化処理前のフォトマスク(バイナリマスク)を作製した。次に、遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)を0.4nm以下にする平滑化処理を行った。具体的には、等方的なプラズマ処理を行うドライエッチングによって、平滑化処理を行った。これにより、フォトマスク(バイナリマスク)を作製した。
[実施例5]
まず、光学研磨した6インチ角、0.25インチ厚の合成石英基板(透明基板)と、合成石英基板上に形成されたCr膜から構成される遮光膜と、遮光膜上に形成されたハードマスク層とを有するフォトマスクブランクス(HOYA社製AR8)を準備した。
次に、ハードマスク層上に所望形状のレジストパターンを形成し、レジストパターンをエッチングマスクとして、ハードマスク層を後述する遮光膜パターンの形状にエッチング加工した。これにより、ハードマスク層パターンを形成した。
次に、ハードマスク層パターンをエッチングマスクとして、遮光膜をエッチングし、遮光膜パターンを形成した。次に、ドライエッチングにより、ハードマスク層パターンを除去した。これにより、平滑化処理前のフォトマスク(バイナリマスク)を作製した。
次に、遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)を0.4nm以下にする平滑化処理を行った。具体的には、等方的なプラズマ処理を行うドライエッチングによって、平滑化処理を行った。これにより、フォトマスク(バイナリマスク)を作製した。
[比較例1]
実施例1と同様に、平滑化処理前のフォトマスク(位相シフトマスク)を作製した。
[比較例2]
まず、光学研磨した6インチ角、0.25インチ厚の合成石英基板(透明基板)と、合成石英基板上に形成されたCr膜から構成される遮光膜と、遮光膜上に形成されたハードマスク層とを有するフォトマスクブランクス(HOYA社製AR8)を準備した。比較例2については、後述する評価において、フォトマスクではなく、このフォトマスクブランクスを評価対象とした。
[評価1]
実施例1〜5(全実施例)のフォトマスクが共通して有する合成石英基板、実施例1および2のフォトマスク(位相シフトマスク)における光半透過膜パターン、実施例3〜5のフォトマスク(バイナリマスク)における遮光膜パターン、比較例1のフォトマスク(位相シフトマスク)における光半透過膜パターン、ならびに比較例2のフォトマスクブランクスにおける遮光膜ついて、表面の算術平均粗さ(Ra)[nm]、表面積[nm2]、表面の二乗平均粗さ(RMS)[nm]、最大高低差(Rmax)[nm]、ならびに硫酸洗浄した後の表面への硫酸イオンの吸着量[ppb]およびアンモニアイオンの吸着量[ppb]を評価した。算術平均粗さ(Ra)としては、原子間力顕微鏡(AFM)<株式会社日立ハイテクサイエンス社製 L−trace>を用いて測定し、1μm角範囲の高さデータをもとに求められるRa(中心線表面粗さ)を求めた。具体的には、下記評価条件によって、評価した。
<表面積評価条件>
・AFMで1μm角をスキャン。
<洗浄条件>
・硫酸洗浄
<イオンクロマト条件>
・DIW 100ml 90℃ 2h抽出
<硫酸イオンの吸着量評価条件>
・上記で抽出した水をイオンクロマトグラフで定量分析。
<アンモニアイオンの吸着量評価条件>
・上記で抽出した水をイオンクロマトグラフで定量分析。
その評価結果を下記の表2に示した。
また、図2は、表2に示した実施例1〜5ならびに比較例1および2に係る表面の算術平均粗さ(Ra)[nm]および硫酸イオンの吸着量[ppb]の関係を表すグラフを示したものである。そして、図2に示されるグラフに表される硫酸イオンの吸着量は、算術平均粗さ(Ra)に依存して変化するものであり、図2に示されるグラフに表される算術平均粗さ(Ra)および硫酸イオンの吸着量の関係は、遮光膜パターンの表面および側面、透明基板の表面、ならびに光半透過膜パターンの表面および側面において成立するものである。さらに、図4は、表2に示した実施例1〜5ならびに比較例1および2に係る表面積[nm2]および硫酸イオンの吸着量[ppb]の関係を表すグラフを示したものである。そして、図4に示されるグラフに表される硫酸イオンの吸着量は、表面積に依存して変化するものであり、図4に示されるグラフに表される表面積および硫酸イオンの吸着量の関係は、遮光膜パターンの表面および側面、透明基板の表面、ならびに光半透過膜パターンの表面および側面において成立するものである。
また、図12は、光半透過膜パターンの表面のAFM画像である。図12(a)および図12(b)には、それぞれ、実施例1のフォトマスク(位相シフトマスク)における光半透過膜パターンの表面(Ra=0.3875nm)および比較例1のフォトマスク(位相シフトマスク)における光半透過膜パターンの表面(Ra=0.5276nm)のAFM画像が示されている。また、図13は、遮光膜パターンおよび遮光膜の表面のAFM画像である。図13(a)および図13(b)には、それぞれ、実施例5のフォトマスク(バイナリマスク)における遮光膜パターンの表面(Ra=0.2887nm)および比較例2のフォトマスクブランクスにおける遮光膜の表面(Ra=0.8566nm)のAFM画像が示されている。
図12(a)および図12(b)に示されるように、実施例1のフォトマスクにおける光半透過膜パターンの表面の方が、比較例1のフォトマスクにおける光半透過膜パターンの表面よりも高低差が小さく、滑らかな面である。また、図13(a)および図13(b)に示されるように、実施例5のフォトマスクにおける遮光膜パターンの表面の方が、比較例2のフォトマスクブランクスにおける遮光膜の表面よりも高低差が小さく、滑らかな面である。
[評価2]
同一条件で硫酸洗浄した後の実施例1のフォトマスク(位相シフトマスク)における光半透過膜パターンの表面(Ra=0.3875)および比較例1のフォトマスク(位相シフトマスク)における光半透過膜パターンの表面(Ra=0.5276)について、ArFエキシマレーザ照射後の変化を評価した。具体的には、下記評価条件によって、評価した。
<洗浄条件>
・硫酸洗浄
<照射条件>
・湿度:40%
・温度:25℃
・積算照射量:1500J
図14は、硫酸洗浄した後に光半透過膜パターンの表面に対してArFエキシマレーザを照射した結果を示す図である。図14の右側には、実施例1の硫酸洗浄した後の光半透過膜パターンの表面について、ArFエキシマレーザ照射後の変化をSEM画像で確認した結果を示す。図14の左側には、比較例1の硫酸洗浄した後の光半透過膜パターンの表面について、ArFエキシマレーザ照射後の変化をSEM画像で確認した結果を示す。なお、実施例1および比較例1のそれぞれについて、図14の上側には、硫酸洗浄後ArFエキシマレーザ照射前の光半透過膜パターンの表面を表し、図14の下側には、ArFエキシマレーザ照射後の光半透過膜パターンの表面を表した。また、比較のため、ArFエキシマレーザを照射する表面とともに、ArFエキシマレーザを照射しない表面をあわせて表した。
図14に示されるように、比較例1の光半透過膜パターンの表面は、ArFエキシマレーザ照射後に成長性異物(Haze)が発生したのに対して、実施例1の光半透過膜パターンの表面は、ArFエキシマレーザ照射後にも成長性異物が発生しなかった。これは、実施例1の光半透過膜パターンの表面は、滑らかであるため、硫酸洗浄を実施しても硫酸イオンが吸着しにくいためであると考えられる。以上より、光半透過膜パターンの表面を滑らかにすることにより、光半透過膜パターンの表面に成長性異物が発生することを抑制することができることがわかった。
[評価3]
実施例1のフォトマスク(位相シフトマスク)および比較例1のフォトマスク(位相シフトマスク)において、同一条件で硫酸洗浄した後の光半透過膜パターンの表面および側面の両方について、ArFエキシマレーザ照射後の成長性異物(Haze)の発生をSEM画像で評価した。具体的には、下記評価条件によって、評価した。
<洗浄条件>
・硫酸洗浄
<照射条件>
・湿度:40%
・温度:25℃
・積算照射量:1500J
その評価結果を光半透過膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)[nm]とともに下記の表3に示した。表3においては、実施例1および比較例1における光半透過膜パターンの表面および側面において、ArFエキシマレーザ照射後に成長性異物(Haze)が発生した場合を○、成長性異物(Haze)の発生しない場合を×で示した。
図15は、ArFエキシマレーザ照射後の成長性異物(Haze)の発生を評価したSEM画像である。図15(a)および図15(b)には、それぞれ、比較例1のフォトマスク(位相シフトマスク)におけるArFエキシマレーザ照射後の光半透過膜パターンの表面および側面に発生した成長性異物(Haze)のSEM画像を示した。
表3に示されるように、実施例1のフォトマスク(位相シフトマスク)では、光半透過膜パターンの表面および側面の両方において、ArFエキシマレーザ照射後に成長性異物(Haze)が発生しなかった。また、比較例1のフォトマスク(位相シフトマスク)では、光半透過膜パターンの表面および側面の両方において、ArFエキシマレーザ照射後に成長性異物(Haze)が発生した。このことから、実施例1のフォトマスク(位相シフトマスク)を作製した時に、等方的なプラズマ処理を行うドライエッチングにより、光半透過膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)を0.4nm以下にする平滑化処理を行ったことによって、光半透過膜パターンの表面と同様に、その側面も算術平均粗さ(Ra)が0.4nm以下になったものと考えられる。そして、比較例1のフォトマスク(位相シフトマスク)を作製した時には、光半透過膜パターンの側面の算術平均粗さ(Ra)は、光半透過膜パターンの表面と同様に、0.4nmより大きくになったものと考えられる。
また、図15(a)および図15(b)から、比較例1のフォトマスク(位相シフトマスク)において、光半透過膜パターンの表面(光半透過膜パターン103の上面103a)に発生した成長性異物(Haze)301が、透明基板101が露出した領域(光を透過する部分)を覆わないのに対して、光半透過膜パターン103の側面103bに発生した成長性異物(Haze)301は、透明基板101が露出した領域(光を透過する部分)を覆うことが分かった。
[評価4]
実施例2のフォトマスク(位相シフトマスク)における光半透過膜パターンの表面(Ra=0.2075)および比較例1の平滑化処理前のフォトマスク(位相シフトマスク)における光半透過膜パターンの表面(Ra=0.5276)の異物除去力を評価した。具体的には、下記評価条件によって、評価した。
<洗浄条件>
・硫酸フリー洗浄
図16は、光半透過膜パターンの表面の異物除去力を評価した結果を示す図である。図16の右側には、実施例2の洗浄前後の光半透過膜パターンの表面の異物の分布を示す。図16の左側には、比較例1の洗浄前後の光半透過膜パターンの表面の異物の分布を示す。
図16に示されるように、同一の洗浄条件で洗浄したにもかかわらず、実施例2の光半透過膜パターンの表面の方が、比較例1の光半透過膜パターンの表面よりも異物除去力が大きかった。具体的には、実施例2の光半透過膜パターンの表面は、99.5%の異物が除去され、ほとんどの異物が除去されたのに対して、比較例1の光半透過膜パターンの表面は、83.8%しか、異物が除去されなかった。これは、実施例2の光半透過膜パターンの表面の方が、比較例1よりも平滑であるため、異物が除去され易いからであると考えられる。
[評価5]
実施例1〜5(全実施例)のフォトマスクが共通して有する合成石英基板の表面(Ra=0.1285)および比較例2のフォトマスクブランクスにおける遮光膜の表面(Ra=0.8566)について、ペリクルの粘着材の残存量を評価した。具体的には、同一の剥離条件で、合成石英基板および遮光膜の表面からペリクルを剥離した時に、ペリクルの粘着材が合成石英基板および遮光膜の表面にどれくらい残存するかを評価した。
図17は、フォトマスクにおける合成石英基板および遮光膜の表面に残存するペリクルの粘着材を示す図である。図17(a)には、実施例1〜5(全実施例)のフォトマスクが共通して有する合成石英基板の表面に残存するペリクルの粘着材を示した。図17(b)には、比較例2の遮光膜の表面に残存するペリクルの粘着材を示した。
図17に示されるように、実施例1〜5(全実施例)のフォトマスクが共通して有する合成石英基板の表面の方は、ペリクルの粘着材がほとんど残存していないのに対して、比較例2の遮光膜の表面の方は、ペリクルの多くの粘着材が残存している。これは、合成石英基板の表面の方が、比較例2の遮光膜の表面よりも平滑であるため、ペリクルの粘着材が剥離され易いからであると考えられる。
[実施例6]
実施例4により得られた平滑化処理後のフォトマスクに対して、さらに平滑化処理として等方的なプラズマ処理を行うドライエッチングを行った。
得られたフォトマスクについて上記「評価1」に記載の方法と同一の方法により、遮光膜パターンの表面の算術平均粗さ(Ra)を求めたところ、0.10nmであった。
[評価6]
実施例3〜実施例6および比較例2のフォトマスクの遮光膜について、ペリクル付きとした状態で、ペリクルにより覆われた遮光膜に対してArFエキシマレーザを照射し、積算照射量に対する、成長性異物(Haze)の発生の有無を外観検査装置(KLA社製)を用いて検査し、検出した箇所をSEM観察することにより確認した。結果を下記表4に示す。
なお、評価に用いたぺリクル付きフォトマスクは、ぺリクルのサイズが149×115mmであり、粘着材の材質はスチレン系ポリマーで厚さが0.65mmのものを使用し、粘着材であるスチレン系ポリマーを介してぺリクルを加圧することで貼り合わせる方法を用いて形成した。
また、レーザー照射は、ペリクル付きマスク中心部である1cm四方の領域に照射した。
さらに、下記表4中、成長性異物(Haze)の発生が観察された場合には「○」を記入し、観察されなかった場合には「×」を記入した。
また、照射条件は、下記表4に示すように積算照射量を100kJ/cm2〜400kJ/cm2の範囲内で変化させた以外は、上記「評価3」と同様の条件とした。
[評価7]
実施例3〜実施例6および比較例2のフォトマスクの遮光膜パターン表面の成分組成を測定した。
また、実施例5および比較例1の合成石英基板表面の成分組成を測定した。
測定方法は、ULVAC-PHI社製Quantum2000を用いて、下記測定条件で測定した。結果を下記表4に示す。
なお、表面の成分組成は、表面から厚み方向に5nmの範囲内における平均の成分組成を測定した。
(測定条件)
X線条件:Al mono 200μmφ×30W 15kV
X線取込角度:45°
中和条件:ION/Electron 20μA
表4より、遮光膜パターンの表面の窒素の含有割合を低減することで、成長性異物(Haze)の発生を抑制できることが確認できた。
具体的には、実施例3〜実施例6のモリブデンシリサイド系材料を用いた遮光膜については、窒素の含有割合が、13atm%以下、5atm%以下となることで、積算照射量が多くなった場合でも成長性異物の発生を抑制できることが確認できた。
また、実施例5および比較例2のクロム系材料を用いた遮光膜については、窒素の含有割合が、11atm%以下、6atm%以下となることで、積算照射量が多くなった場合でも成長性異物の発生を抑制できることが確認できた。
また、評価6において実施例3のフォトマスクをペリクル付フォトマスクとし、積算照射量が200kJ/cm2なるようにArFエキシマレーザ照射を行った際に発生した成長性異物(Haze)を飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)により分析したところ、有機アミンが検出された。このことから、ペリクル付フォトマスクに対してエキシマレーザ照射を行うことで発生した成長性異物は、ペリクルを遮光膜パターンに貼付するために用いた粘着材に由来するものであると推察された。
さらに、実施例3を基準にして、実施例4および実施例6と比較すると、平滑化処理を行うことにより、窒素の含有割合を7.8atm%、15.3atm%減少させることができた。また、酸素の含有割合を5.3atm%、14.6atm%増加させることができた。さらに、モリブデンの含有割合を0.4atm%、1.1atm%減少させることができた。
一方、比較例2を基準にして、実施例5と比較すると、平滑化処理を行うことにより、窒素の含有割合を5.8atm%減少させることができた。また、酸素の含有割合を13.4atm%増加させることができた。