JP6664936B2 - 制振性を有する鋼管及び鋼管の固有振動数の変更方法 - Google Patents
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Description
振動が発生すると、振動が発生した鋼管の内部や、連結されている他の鋼管や他部材に振動が伝達する。そして、所定の条件が重なると、連結されている他の鋼管や他部材との間で共振する。
振動が伝達されて共振が発生すると、振動が増幅され、騒音が発生し、また、鋼管の連結部や鋼管自体、他部材が破損する可能性がある。
振動による騒音や破損等を防止する方法としては、振動の発生の抑制、共振の回避、振動の伝達抑制等が考えられる。
本発明は、振動の伝達抑制の観点から、振動による騒音や破損等を防止可能な、制振性を有する鋼管及び鋼管の固有振動数の変更方法を提供することを目的とする。
素管に凹部を分布させた場合、凸部が設けられている部分の外径は素管の外径と変わらないが、凹部が設けられている部分の外径は素管の外径よりも小さくなっている。
このため、素管に凹部を分布させた鋼管の固有振動数は素管の固有振動数に対して大きくなることが予想される。
(1)L2が小さい場合、鋼管の固有振動数が上昇する。これは、鋼管表面に外径縮小の要素(凹部)が付加されたことを意味する。この場合は、上述のように予想された変化である。
(2)L2が、あるL2よりも大きい条件では、固有振動数が低下に転じる。この変化は、新規に発見した知見である。
(3)さらにL2が増加すると、固有振動数の増加に転じる。これは、上述のように予想された変化である。
このように、本発明者らは、素管に複数の凹部を分布させたとき、複数の凹部の単位面積当たりの境界長さが所定の範囲の場合に、固有振動数を素管よりも小さくすることができることを見出した。固有振動数が小さいと、振動伝達率が小さくなる傾向にある。振動伝達率が小さくなれば、振動の伝達が抑制される。
実施形態の鋼管1は、図示するように、鋼管1の外面に、溝5を形成することによって厚さt2の凸部2と、厚さt1の凹部3とが形成されている。
実施形態の溝5は、鋼管1の軸線Aに対して螺旋状に形成された互いに平行な複数の第1溝5aと、軸線Aに対して第1溝5aと逆方向の螺旋状に形成された互いに平行な複数の第2溝5bとを含む。
この第1溝5aと第2溝5bとによって、鋼管1の表面に菱形形状の凸部2(厚肉部)が形成される。ただし、凸部2と凹部3(薄肉部)との形状は、この形状に限定されず、他の形状であってもよい。
また、鋼管の材質は、ステンレス鋼が好ましく、特に、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト系ステンレス鋼からなる鋼管が好ましい。
鋼管1の製造装置100は、払い出しリール21と、2段圧延機22と、巻き取りリール23と、造管機24とを備える。
図3は、払い出しリール21と、2段圧延機22と、巻き取りリール23とを示す図である。図4は造管機24を示す図である。
曲げ部13は、鋼帯61を上下方向から挟むように配置された複数対の曲げロール15を備える。造管部14は、造管ロール16及び造管ロール17を備える。造管ロール16は、鋼管1の原料である鋼帯61を左右方向から挟むように配置された複数対のロールである。造管ロール17は、鋼帯61を上下方向から挟むように配置された複数対のロールである。
まず、原板となる凹凸の形成されていない鋼帯11を巻回したコイル10を払い出しリール21にセットする。
次いで、払い出しリール21から鋼帯11を払い出し、2段圧延機22に送り込む。
2段圧延機22では、一対の圧延ロール12、12‘によって、鋼帯11に圧下を加える。
これにより、上側の圧延ロール12に形成されていた凹凸形状が鋼帯11の表面に転写され、凹凸が付与された鋼帯61が製造される。
これを巻き取りリール23に巻き取ることで、凹凸が付与された鋼帯61のコイル60が得られる。
なお、鋼帯61のコイルの製造には、2段圧延機22以外の圧延機を用いることもできる。
そして、鋼帯61を払い出しリール25より払い出し、曲げ部13と造管部14を経て徐々に管状に成形する。
最後に鋼帯61の両端である突合せ部を溶接することにより、凹凸が付与された鋼管1を製造する。
L2=L/(W×2πr)
以下、これを、単位面積当たりの凹部境界長さL2という。
凹部境界長さL2を選んだ理由は、外表面において凹凸が混在する割合(程度)に着目したからであり、その割合を評価する指標として、凹部と凸部とを区分する境界の長さとして凹部境界長さL2を選んだ。
なお、凹部境界は凸部境界でもあるので、凹部境界長さL2は凸部境界長さと同じ長さである。
なお、L2を求める範囲Sは、選択された範囲Sによって、そこに含まれる凹凸の数にバラつきが生じないように、広めに選択する。鋼管1の表面に形成された凹凸の配置が均一でない場合、複数の範囲Sにおける単位面積当たりの凹部境界長さL2を測定し、その平均を求めてもよい。
また、この凹部境界長さL2は、2段圧延機22の上側の圧延ロール12に形成されている凹凸形状を変更することで調整できる。
実施形態では、材質がフェライト系ステンレス鋼であるSUS409で、単位面積当たりの凹部境界長さL2が以下の表1に示すA、B,C,Dの4種類、板厚比t1/t2が以下の表2に示すa,b,c,dの4種類の合計16種類である鋼管1を製造した。
なおこれらの単位面積当たりの凹部境界長さL2はノギスで対角線を測定して算出し、凹部3の厚さt1、凸部2の厚さt2はマイクロメータにより測定した。
なお、本発明の鋼管1の材質、サイズ等は、これに限定されるものではない。
そして、下端から89mmの位置(加振位置34)をインパルスハンマー37で加振させ、振動センサー33で振動を測定した。
また、以下の表3は、使用した測定使用機器である。
なお、振動センサー33の位置33Aa,33Ab,33Ba,33Bbの間の測定値のバラつき、及び振動センサーの取り付け方による測定値のばらつきは、固有振動数で±2の範囲であった。
固有振動数が近い部材同士(鋼管1と他の鋼管、鋼管1と他の部材等)を連結すると共振が発生する。したがって、共振を防止するには、固有振動数が異なる部材同士を連結すればよい。
しかし、固有振動数は、鋼管の長さ、材質、径、厚み等で異なるが、それぞれ、他の要因で長さや材質が決まる場合が多いので、固有振動数を自由に変化させるのは困難である。
本実施形態の鋼管1は、表面に凹凸が付与され、固有振動数が素管に対して変更されている。この固有振動数を、他部材との関係において適宜、共振が発生しない固有振動数とすることで、鋼管1に制振性を付与することができる。
一般に、鋼管に一定の振動が加わり、板厚が同じ場合、鋼管の外径が小さいほうが固有振動数は大きくなる。本実施形態では、素管に溝5を形成することで凹凸を形成している。したがって、凸部2が設けられている部分の外径は素管の外径と変わらないが、凹部3が設けられている部分の外径は素管の外径よりも小さくなっている。そのため、鋼管1の固有振動数は素管の固有振動数に対して大きくなることが予想された。
この理由は明らかでない。凸部2と凹部3では異なる振動が発生しており、単位面積当たりの凹部境界長さL2が0.4から0.8mmの範囲において、振動が発生したときに、凸部2での振動と凹部3での振動が互いに打ち消し合うことで、固有振動数の減少に至ったと推測される。
したがって、0.4≦単位面積当たりの凹部境界長さL2≦0.8で、且つ0.5≦板厚比t1/t2≦0.8の範囲になる鋼管1を製造すれば、固有振動数の低減及び振動伝達率の低減効果をより高くすることができる。
1 鋼管
2 凸部
2a 境界
3 凹部
5 溝
10 コイル
11 鋼帯
12 圧延ロール
13 曲げ部
14 造管部
15 ロール
16 造管ロール
17 造管ロール
21 払い出しリール
22 段圧延機
23 巻き取りリール
24 造管機
25 払い出しリール
31 三脚
32 ワイヤー
33 振動センサー
34a 位置
35A 振動アンプ
35B 振動アンプ
36 インパルスハンマー
36 周波数分析器
60 コイル
61 鋼帯
Claims (4)
- 外周面全体に溝を形成することによって凸部と凹部とが形成され、
前記外周面における長さWの範囲Sに存在する、凸部と凹部との境界の長Lさの総計を、範囲Sの面積であるW×2πr(r:鋼管1の外面の半径)(mm 2 )で割った値である、単位面積当たりの前記凸部と前記凹部との境界長さが0.4mm/mm 2 〜0.85mm/mm 2 である、
制振性を有する鋼管。 - 前記単位面積当たりの前記凸部と前記凹部との境界長さが0.4mm/mm 2 〜0.8mm/mm 2 である、
請求項1に記載の制振性を有する鋼管。 - 前記鋼管の、前記凹部における厚さt1の、前記凹部以外における厚さt2に対する割合t1/t2が、0.5〜0.8である、
請求項1または2に記載の制振性を有する鋼管。
- 鋼管の外周面における長さWの範囲Sに存在する、凸部と凹部との境界の長Lさの総計を、範囲Sの面積であるW×2πr(r:鋼管1の外面の半径)(mm 2 )で割った値である、単位面積当たりの前記凸部と前記凹部との境界長さが0.4mm/mm 2 〜0.85mm/mm 2 となるように、前記外周面の全体に溝を形成することによって前記凸部と前記凹部とを形成する、
鋼管の固有振動数の変更方法。
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