JP6664653B2 - ゴムシート材料の製造装置および製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、スチールコードをトッピングゴムで被覆することによりゴムシート材料を製造するゴムシート材料の製造装置および製造方法に関する。
空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ともいう)の製造工程においては、配列された複数のスチールコードにトッピングゴムを被覆することにより製造された種々のゴムシート材料が使用されている。
一般に、このスチールコードには、残留トーションと呼ばれる癖が付いており、このような癖を有するスチールコードを用いてゴムシート材料を製造した場合、次工程であるバイアス工程においてゴムシート材料に反り(シートカール)が慢性的に発生して、タイヤの生産性を阻害する一因ともなっていた。
そこで、従来より、シートカールを解消させる技術が種々提案されている(例えば、特許文献1、2)。
特許第5587758号公報 特開2014−176991号公報
しかしながら、これらの技術によっても、シートカールの発生は未だ十分に抑制されているとは言えず、さらなる改善が求められている。
そこで、本発明は、シートカールの発生を十分に抑制すると共に、また、シートカールが発生したとしてもそのバラツキの程度を小さくすることにより、空気入りタイヤの生産性を向上させることができるゴムシート材料の製造装置および製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、鋭意検討を行い、以下に記載する発明により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
請求項1に記載の発明は、
スチールコードが巻き取られた複数のリールがセットされており、前記複数のリールの
それぞれから前記スチールコードを引き出すクリールスタンドと、
引き出された複数の前記スチールコードを整列させるコムロールと、
整列された前記スチールコードにゴムを被覆してゴムシート材料を形成するカレンダー
ロールとを備えたゴムシート材料の製造装置であって、
さらに、前記クリールスタンドと前記コムロールとの間に設けられており、引き出され
た前記スチールコードに掛かる荷重を測定する荷重測定手段と、
測定された荷重に基づいて、スチールコードの伸びの増加に伴い増加した前記スチールコードに掛かる荷重を制御する荷重制御手段とが備えられていることを特徴とするゴムシート材料の製造装置。
請求項2に記載の発明は、
前記荷重測定手段が、前記クリールスタンドと前記コムロールとの間に設けられたロードセルであることを特徴とする請求項1に記載のゴムシート材料の製造装置である。
請求項3に記載の発明は、
前記クリールスタンドに前記リールの回転を制動するブレーキが設けられており、
前記荷重制御手段が、
前記ロードセルで測定された荷重が予め設定された荷重以上の場合には前記ブレーキの圧力を弱くし、予め設定された荷重未満の場合には前記ブレーキの圧力を強くして、前記スチールコードに掛かる荷重を制御する荷重制御手段であることを特徴とする請求項2に記載のゴムシート材料の製造装置である。
請求項4に記載の発明は、
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のゴムシート材料の製造装置を用いて、前記スチールコードにゴムが被覆されたゴムシート材料を形成するゴムシート材料の製造方法であって、
前記クリールスタンドと前記コムロールとの間を搬送される前記スチールコードに掛かる荷重を測定し、
測定された荷重に基づいて搬送中の前記スチールコードに掛かる荷重を制御することを特徴とするゴムシート材料の製造方法である。
本発明によれば、シートカールの発生を十分に抑制すると共に、また、シートカールが発生したとしてもそのバラツキの程度を小さくすることにより、空気入りタイヤの生産性を向上させることができるゴムシート材料の製造装置および製造方法を提供することができる。
本発明の一実施の形態に係るゴムシート材料の製造装置を模式的に示す図である。
以下、本発明を実施の形態に基づき、図面を参照して説明する。
1.本発明に至る経緯
本発明者は、シートカールの発生について種々の検討を行った。
その結果、スチールコードの引き出し開始から終了までの間でシートカールの程度に変化があることから、スチールコードの性質である力と伸びの関係に着目した。即ち、元々、スチールコードを引き出す際、クリールスタンドに掛かるブレーキ圧が一定であり、スチールコードが引き出されるに従ってシートカールの程度が増加していることから、スチールコードが少なくなるにつれて引き出されたスチールコードの伸びが増加し、この伸びを元に戻そうと大きなテンションが作用して、これがシートカールの程度を増加させていると考えた。
そして、この考えに基づいてクリールスタンドから引き出されたスチールコードに掛かる荷重を測定したところ、従来のクリールスタンドに掛かるブレーキ圧が一定の場合、スチールコードの引き出し開始から終了に進むに従ってスチールコードに掛かる荷重が増加していることが確認され、上記の考えが正しいことが確認できた。
本発明者は、この知見に基づいて、スチールコードに掛かる荷重を一定に維持する制御を行うことにより、スチールコードのテンションを適切な状態に保ってゴムシート材料を製造すれば、シートカールの発生が十分に抑制されて、残留トーションも解消されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明に係るゴムシート材料の製造装置は、クリールスタンドから引き出されたスチールコードに掛かる荷重を測定し、その測定結果に基づいてスチールコードに掛かる荷重を制御することを特徴とするゴムシート材料の製造装置である。
このように、スチールコードの荷重を測定することによりスチールコードのテンションを知ることができる。具体的には、スチールコードのテンションが高い場合には荷重が大きく測定され、テンションが低い場合には荷重が小さく測定される。このため、測定結果をフィードバックさせてスチールコードの荷重を制御することによりスチールコードのテンションを適切に制御することができる。その結果、シートカールの発生を十分に抑制することができる。
2.本実施の形態に係るゴムシート材料の製造装置
図1は本実施の形態に係るゴムシート材料の製造装置を模式的に示す図である。
本実施の形態に係るゴムシート材料の製造装置1は、従来の装置と同様に、複数のリール3のそれぞれからスチールコード2を引き出すクリールスタンド4と、クリールスタンド4から引き出されたスチールコード2を整列させるコムロール5と、整列されたスチールコード2にトッピングゴムGを被覆してゴムシート材料12を形成するカレンダーロール6とを備えている。なお、図1中の符号7はワイヤ整列部、8はプルロール部、9はクーリング部、10は搬送ロール、11は巻取り部である。
スチールコード2は、前記したように、複数のスチールフィラメントが撚り合わされることにより構成されており、リール3に巻き取られた状態でクリールスタンド4にセットされている。なお、本実施の形態において、クリールスタンド4には、リール3の回転を制動するブレーキ(図示省略)が設けられている。
そして、本実施の形態に係るゴムシート材料の製造装置1では、さらに、クリールスタンド4とコムロール5との間に、スチールコード2の荷重を測定する荷重測定手段としてロードセル13が設けられており、このロードセル13により測定された荷重に基づいてスチールコード2に掛かる荷重を制御する荷重制御手段(図示省略)を備えている。
具体的には、ロードセル13は、クリールスタンド4から引き出されてカレンダーロール6に向けて搬送されるスチールコード2が、表面を押えるように配置されている。これにより、スチールコード2に掛かるテンションを荷重データとして測定することができる。
そして、ロードセル13は図外の荷重制御手段に接続されており、測定された荷重データが荷重制御手段に送信される。
荷重制御手段には、スチールコード2の種類に応じた好ましい荷重が設定荷重として予め設定されており、ロードセル13から送信された荷重データと設定荷重とを比較し、その結果に基づいてクリールスタンド4においてリール3の回転を制動するブレーキの圧力を調整することにより、スチールコード2に掛かる荷重をフィードバック制御することができる。
具体的には、荷重制御手段は、ロードセル13で測定された荷重が設定荷重以上の場合、リール3へのブレーキの圧力を弱くする制御を行う。即ち、測定された荷重が大きいことはスチールコード2のテンションが強いことを示しているため、リール3へのブレーキの圧力を弱めてスチールコード2のテンションを緩めることにより荷重を小さくさせて、スチールコード2のテンションを適切なテンションに調整する。
一方、ロードセル13で測定された荷重が設定荷重未満の場合、リール3へのブレーキの圧力を強くする制御を行う。即ち、測定された荷重が小さいことはスチールコード2のテンションが弱いことを示しているため、リール3へのブレーキの圧力を強めてスチールコード2のテンションを高めることにより荷重を大きくさせて、スチールコード2のテンションを適切なテンションに調整する。
以上のように、本実施の形態によれば、スチールコードに掛かる荷重を測定し、その測定結果に基づいてスチールコードに掛かる荷重をフィードバック制御することにより、スチールコードのテンションを適切な状態に維持することができるため、次工程であるバイアス工程においてゴムシート材料にシートカールが生じることを十分に抑制することができる。この結果、タイヤの製造工程における生産性を従来よりも向上させることができる。
また、スチールコードの荷重が設定荷重周辺に制御されるため、シートカールが発生したとしても、発生したシートカールのばらつきを従来から20%程度低減させることができるため、生産性を従来よりも向上させることができると共に、製造後のタイヤの製品精度を向上させることができる。
また、本実施の形態においては、ゴムシート材料の製造に際してスチールコードのテンションを適切な状態に維持することができるため、残留トーションにバラツキが生じ易い比較的に安価なスチールコードを使用しても、シートカールの発生を十分抑制することができ、製造工程におけるコスト低減に大きく貢献することもできる。
次に、実施例により、本発明をより具体的に説明する。
1.実験1
実験1においては、直径φが1.02mm相当の市販のスチールコードAを用いてゴムシート材料を製造し、発生したシートカールの程度とそのバラツキについて測定した。
(1)実施例および比較例
(a)実施例1〜3
上記した実施の形態に係るゴムシート材料の製造装置を用い、ロードセル13の測定結果に基づいてスチールコードに掛かる荷重をフィードバック制御しながら、10000m分のゴムシート材料を製造した。なお、実施例1〜3では、表1に示す設定荷重とし、実荷重が表1に示す範囲に収まるように制御した。
(b)比較例
スチールコードに掛かる荷重をフィードバック制御しない従来のゴムシート材料の製造装置を用いたことを除いて、実施例1〜3と同じ条件でゴムシート材料を製造した。このとき、実荷重は表1に示す範囲となっていた。
(2)評価
次工程であるバイアス工程において生じたシートカールの程度(mm)を1000mごとに測定した。結果を表1に示す。なお、表1中の「+」は時計周りの方向に生じたシートカールを示しており、「−」は反時計回りの方向に生じたシートカールを示している。
また、測定されたシートカールの絶対値の最大値と最小値の差(R)をバラツキとして算出した。算出結果を合わせて表1に示す。
Figure 0006664653
表1より、スチールコードに掛かる荷重のフィードバック制御を行った実施例1〜3においては、スチールコードに掛かる実荷重が設定荷重を中心値とした狭い範囲に収まっており(実施例1、2では−200〜+200N、実施例3では−250〜+200N)、発生したシートカールが1.0mmを下回る小さな幅に管理されていることが分かる。
これに対して、比較例においては、スチールコードに掛かる実荷重が1000Nの幅で大きく変化しており、発生したシートカールも3.3mmと大きな幅となっていることが分かる。
以上の結果より、実施例3のように、設定荷重を適切に設定して、スチールコードに掛かる荷重をフィードバック制御することにより、シートカールの発生を十分に抑制でき、生産性の向上を図ることができることが確認できた。
また、実施例1、2のように、シートカールが発生したとしても、スチールコードに掛かる荷重をフィードバック制御することにより、そのバラツキを小さくでき、生産性の向上を図ることができることが確認できた。
2.実験2
実験2においては、種類が異なる複数のスチールコードを用い、各々のスチールコードの種類に応じて設定荷重を変化させてゴムシート材料を製造した。
(1)実施例4
上記した実施例3と同様に、上記した実施の形態に係るゴムシート材料の製造装置において、スチールコードAを用いてゴムシート材料を製造した。なお、フィードバック制御における設定荷重は5000Nに設定した。
(2)実施例5
直径φが0.59mm相当の市販のスチールコードBを用い、設定荷重を3000Nに設定したことを除いて、実施例4と同じ条件でゴムシート材料を製造した。
(3)実施例6
スチールコードBとは構成が異なるが、直径φが0.59mm相当の市販のスチールコードCを用い、設定荷重を3900Nに設定したことを除いて、実施例4と同じ条件でゴムシート材料を製造した。
(4)実施例7
スチールコードB、Cとは構成が異なるが、直径φが0.59mm相当の市販のスチールコードDを用い、設定荷重を4900Nに設定したことを除いて、実施例4と同じ条件でゴムシート材料を製造した。
Figure 0006664653
表2より、実施例4〜7では何れにおいても、シートカールの程度が1.0mm以下に抑制されており、シートカールの最小値と最大値の差Rも1.0mm以下に抑制されており、シートカールが小さく、均質なゴムシート材料が製造されていることが確認できた。
このことから、荷重制御手段に設定する設定荷重をスチールコードの種類に応じて適切な値に設定して、測定された荷重に基づいてスチールコードに掛かる荷重をフィードバック制御することにより、シートカールの発生を適切に抑制して、生産性の向上を図ることができることが確認できた。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
1 ゴムシート材料の製造装置
2 スチールコード
3 リール
4 クリールスタンド
5 コムロール
6 カレンダーロール
7 ワイヤ整列部
8 プルロール部
9 クーリング部
10 搬送ロール
11 巻取り部
12 ゴムシート材料
13 ロードセル
G トッピングゴム

Claims (4)

  1. スチールコードが巻き取られた複数のリールがセットされており、前記複数のリールの
    それぞれから前記スチールコードを引き出すクリールスタンドと、
    引き出された複数の前記スチールコードを整列させるコムロールと、
    整列された前記スチールコードにゴムを被覆してゴムシート材料を形成するカレンダー
    ロールとを備えたゴムシート材料の製造装置であって、
    さらに、前記クリールスタンドと前記コムロールとの間に設けられており、引き出され
    た前記スチールコードに掛かる荷重を測定する荷重測定手段と、
    測定された荷重に基づいて、スチールコードの伸びの増加に伴い増加した前記スチールコードに掛かる荷重を制御する荷重制御手段とが備えられていることを特徴とするゴムシート材料の製造装置。
  2. 前記荷重測定手段が、前記クリールスタンドと前記コムロールとの間に設けられたロー
    ドセルであることを特徴とする請求項1に記載のゴムシート材料の製造装置。
  3. 前記クリールスタンドに前記リールの回転を制動するブレーキが設けられており、
    前記荷重制御手段が、
    前記ロードセルで測定された荷重が予め設定された荷重以上の場合には前記ブレーキの
    圧力を弱くし、予め設定された荷重未満の場合には前記ブレーキの圧力を強くして、前記
    スチールコードに掛かる荷重を制御する荷重制御手段であることを特徴とする請求項2に
    記載のゴムシート材料の製造装置。
  4. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のゴムシート材料の製造装置を用いて、
    前記スチールコードにゴムが被覆されたゴムシート材料を形成するゴムシート材料の製造
    方法であって、
    前記クリールスタンドと前記コムロールとの間を搬送される前記スチールコードに掛か
    る荷重を測定し、
    測定された荷重に基づいて搬送中の前記スチールコードに掛かる荷重を制御することを
    特徴とするゴムシート材料の製造方法。
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