JP4348109B2 - タイヤコードのトッピング方法、及びトッピング装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機繊維のタイヤコードの配列体の少なくとも片面をゴムトッピングするタイヤコードのトッピング方法、及びトッピング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、タイヤのカーカス、ベルトといった補強部材に用いられる有機繊維のコードプライは、一般に、タイヤコードの配列体に横糸を打ち込んだ簾織物体を用い、この簾織物体の少なくとも片面(通常が両面)をゴムトッピングすることにより形成される。これは、横糸によりタイヤコードが拘束されるためコード間隔を安定化でき、コードプライにおけるコード配列の乱れを抑制しうるからである。しかし横糸の使用は、他方では、簾織りに伴う生産性の低下、及びタイヤ加硫成型時のストレッチに伴うコード配列の乱れなどの問題を招いている。
【0003】
そのため、近年、横糸のないタイヤコードの配列体をゴムトッピングすることが提案されている(例えば特許文献1、2参照。)。このものは、図6(A)に略示すように、カレンダロールaに近接させた溝付きローラbを用い、平行に引き揃えられたタイヤコードcを、前記溝付きローラbの外表面に設けた周方向の案内溝に通して位置決めしながらトッピングしている。
【0004】
【特許文献1】
特開平4−308738号公報(図1、3)
【特許文献2】
特開平5−200909号公報(図1)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このように溝付きローラbでタイヤコードcを位置決めしながらトッピングした場合にも、図6(B)に略示すように、タイヤコードcがゴムシートg中に埋入する際のゴムの横移動f、及びトッピング後のゴムの横移動fからの復帰などが原因して、タイヤコードcのコード間隔が充分に均一化することができないという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、溝付きローラでタイヤコードを位置決めしながらトッピングする際の、ガイド溝の溝深さ、溝付きローラとカレンダロールとの間隔、ゴムシートの厚さと前記間隔との差などを特定することを基本として、コード配列の乱れを抑制できコード間隔を均一化した高品質のコードプライを形成しうるタイヤコードのトッピング方法、及びトッピング装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本願請求項1の発明は、複数のリールから巻き戻されかつ平行に引き揃えられた直径dが0.5〜0.8mmの有機繊維のタイヤコードの配列体の少なくとも片面を、一対のカレンダロールを有するカレンダ手段を用いてゴムトッピングするタイヤコードのトッピング方法であって、
前記一対のカレンダロールの間で圧延されたゴムシートを外周面で運ぶ一方のカレンダロールの近傍に、各タイヤコードが案内される周方向のガイド溝を外周面に凹設した溝付きローラを設け、
前記リールから巻き戻されかつ前記溝付きローラの各ガイド溝に通されたタイヤコードを、前記溝付きローラとともに前記一方のカレンダロール上の前記ゴムシートに押し付けることにより、前記タイヤコードの配列体の片面にゴムシートをトッピングするとともに、
前記ガイド溝の溝深さhをタイヤコードの前記直径dの1.0〜1.2倍、かつ該溝付きローラの外周面と前記カレンダロールの外周面との間隔gを0.2〜1.0mmとし、しかも前記ゴムシートの厚さT1を0.6〜1.4mmかつ前記間隔gとの差T1−gを0.4mm以上としたことを特徴としている。
【0008】
又請求項2の発明では、前記ゴムシートの厚さT1は、0.8〜1.2mmとしたことを特徴としている。
【0009】
又請求項3の発明では、前記タイヤコードは、トッピング時、コード1本当たり7.8N〜11.8Nの張力が付加されることを特徴としている。さらに、請求項4記載の発明では、前記リールから巻き戻されタイヤコードは、タイヤコードが挿入されない空きガイド溝を前記溝付きローラの両側部に残して該溝付きローラの各ガイド溝に通されるとともに、前記タイヤコードを、前記溝付きローラとともに前記一方のカレンダロール上の前記ゴムシートに押し付けることにより、溝付きローラの両側の空きガイド溝内に前記ゴムシートのゴムを噛み込ませることを特徴としている。
【0010】
請求項5の発明は、トッピング装置であって、前記一対のカレンダロールの間で圧延されるゴムシートを外周面で運ぶ一方のカレンダロールの近傍に、各タイヤコードが案内される周方向のガイド溝を外周面に凹設した溝付きローラを具えるとともに、
前記ガイド溝の溝深さhをタイヤコードの前記直径dの1.0〜1.2倍、かつ該溝付きローラの外周面と前記カレンダロールの外周面との間隔gを0.2〜1.0mmとし、しかも前記ゴムシートの厚さT1を0.6〜1.4mmかつ前記間隔gとの差T1−gを0.4mm以上としたことを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。
図1は本発明のタイヤコードのトッピング方法を実施するトッピング装置を示す側面図、図2はその主要部を拡大して示す断面図である。
【0012】
図1において、トッピング装置1は、複数本のタイヤコードCが平行に引き揃えられた配列体Cpを供給する配列体供給手段2と、前記配列体Cpの少なくとも片面(本例では両面)をゴムトッピングしてコードプライPを形成するトッピング手段3と、コードプライPを下流側に送り出す送出し手段4とを具えて構成される。なおタイヤコードCとしては、直径dが0.5〜0.8mmの例えばナイロン、ポリエステル、レーヨン、芳香族ポリアミド等の有機繊維コードが使用される。
【0013】
前記配列体供給手段2は、タイヤコードCを巻取ってなる複数のリール6を回転自在に保持するリールスタンドであるリール保持部2Aと、各リール6から巻き戻されるタイヤコードCを平行に引き揃えて配列体Cpを形成する例えば筬などの引き揃え部2Bとから構成される。なお前記リール保持部2Aには、各リール6の回転トルクを制御可能な例えば摩擦板等を用いたブレーキ手段(図示しない)を設けている。
【0014】
次に、前記トッピング手段3は、図2に示すように、少なくとも一対のカレンダロール7A、7Bを有するカレンダ手段9と、このうちの一方のカレンダロール7Aの近傍に配される溝付きローラ10とを具える。
【0015】
本例では、前記カレンダ手段9として、前記カレンダロール7A、7Bからなる下のローラ対7と、カレンダロール8A、8Bからなる上のローラ対8とを有する所謂4本ロール式のZ型カレンダ機を用いた場合を例示している。なお前記下のローラ対7は、材料ゴムGを圧延してなる薄いゴムシートG1をその外周面で粘着して運ぶ例えば上のカレンダロール7Aと、このカレンダロール7Aとの間で前記材料ゴムGを圧延する下のカレンダロール7Bとから構成される。又前記上のローラ対8も同様、材料ゴムGを圧延してなるゴムシートG2をその外周面で粘着して運ぶ例えば下のカレンダロール8Aと、このカレンダロール8Aとの間で前記材料ゴムGを圧延する上のカレンダロール8Bとから構成される。
【0016】
各カレンダロール7A、7B、8A、8Bは互いに同速度で回転駆動される。又カレンダロール7A、7B間の間隔、カレンダロール8A、8B間の間隔、及びカレンダロール7A、7A間の間隔は、それぞれ作成するゴムシートG1、G2及びコードプライPの厚さに応じて、調整可能に構成される。なおゴムシートG1、G2は前記配列体Cpの全巾をトッピングしうるように、その巾Wgは、配列体Cpの巾Wpよりも大に設定される。
【0017】
又前記溝付きローラ10は、図3に示すように、その外周面に、各タイヤコードCが案内される周方向のガイド溝11を凹設している。なおこのガイド溝11が形成されるガイド溝領域Yの巾Wyは、前記配列体Cpの巾Wpよりも大であり、従って、ガイド溝領域Yの両側部には、タイヤコードCが挿入しない空きガイド溝11aからなる空き領域Yaが形成される。
【0018】
そして、溝付きローラ10は、各ガイド溝11に通されたタイヤコードCを、この溝付きローラ10とともに前記カレンダロール7A上のゴムシートG1に押し付けることにより、配列体Cpの片面にゴムシートG1をトッピングする。
【0019】
このとき、従来においては、前述したように、タイヤコードがゴムシート中に埋入する際、埋入するタイヤコードの体積に相当するゴムが巾方向に横移動したり、又トッピング後にその一部が横移動から復帰したりし、その影響でタイヤコードが巾方向に位置ズレを起こし、コード配列に乱れを起こすという問題がある。
【0020】
そこで本発明では、このコード配列の乱れを抑え、コード間隔を均一に保つために、図4、5に示すように、
▲1▼ 前記ガイド溝11の溝深さhを、タイヤコードCの前記直径dの1.0〜1.2倍、
▲2▼ 前記溝付きローラ10の外周面と前記カレンダロール7Aの外周面との間隔gを、0.2〜1.0mm、
▲3▼ 前記ゴムシートG1の厚さT1を、0.6〜1.4mm、
▲4▼ 前記厚さT1と間隔gとの差T1−gを、0.4mm以上、
にそれぞれ規制している。
【0021】
これは、タイヤコードCの溝付きローラ10の外周面からの突出量が大きいほど、ゴムの横移動につられてタイヤコードCが一方側/又は他方側に位置ズレし易くなるからである。又ゴムシートG1の厚さT1が薄いほど、及び埋入後のコード下のゴム厚さ(被覆厚さ)が薄いほど、ゴムの横移動量が相対的に多くなり、同様に位置ズレし易くなるからである。
【0022】
本発明では、▲1▼の如く、溝深さhを直径dの1.0〜1.2倍の範囲に規制し、タイヤコードCの溝付きローラ10外周面からの突出を防止している。又▲4▼の如く、厚さT1を間隔gよりも大とし、かつその差T1−gを0.4mm以上確保している。このように規制した場合、図5に示すように、溝付きローラ10両側の空きガイド溝11a内には、ゴムシートG1のゴムが0.4mm以上の厚さで噛み込まれることとなる。そして、この噛み込みによってゴムシートG1の両側端が拘束され、タイヤコードがゴムシート中に埋入する際のゴムの横移動自体を抑制することができる。
【0023】
このとき、前記間隔gが0.2mm未満、及び厚さT1が0.6mm未満では、前述の如くゴムシートG1の両側端が噛み込みによって拘束されるとはいえ、ゴムの横移動が相対的に多くなり、タイヤコードCの位置ズレ傾向を招く。逆に前記間隔gが1.0mmより大、及び厚さT1が1.4mmより大では、コードプライP自体の厚さが過大となって、重量や材料コストの不必要な増加を招くなど、タイヤにとって不利益を招く。なお前記間隔gは、0.41〜0.80mmの範囲がより好ましく、又厚さT1は、0.8〜1.2mmの範囲がより好ましい。又前記差T1−gが0.4mm未満では、噛み込み量が過小となって、ゴムの横移動を充分に抑えることができなくなる。この差T1−gの上限は、ゴムの圧縮変形の観点から1.21mm以下、さらには0.66mm以下とするのが好ましい。
【0024】
又前記間隔gの部分では、前記噛み込みによるゴムシートG1への拘束力は、当然ではあるが小となる。従って、前記溝深さhが直径dの1.0倍未満の場合には、タイヤコードCが溝付きローラ10外周面から突出する部分においては、ゴムの横移動が大となりタイヤコードCの位置ズレ傾向を招く。なお1.2倍を越えると、ゴムの被覆厚さが過大となってコードプライPの不必要な厚さ上昇を招く。
【0025】
又前記カレンダ手段9では、カレンダロール7A、8A間において、前記配列体Cpの他方の面(本例では上面)に、さらに前記ゴムシートG2が圧着され、両面ゴムトッピングされた前記コードプライPが形成される。なおゴムシートG2の厚さT2、及びコードプライPの厚さT0は、特に規制されないが、タイヤに使用する場合、厚さT2として0.39〜0.79mmの範囲が、又厚さT0として1.0〜2.2mmの範囲が一般的で好ましい。
【0026】
次に、前記送出し手段4(図1に示す)は、ゴムトッピングされたコードプライPをカレンダ手段9から引き出して下流側に送り出す所謂プルロールスタンドであって、モータ制御されかつコードプライPが例えば半周以上周回するプルロール4Aを有して形成される。
【0027】
ここで、コードプライPにおけるコード間距離をより均一化させるためには、トッピング時、タイヤコード1本当たりに7.8N〜11.8Nと従来に比して高い張力を付加しておくことが好ましい。これは有機繊維コードはスチールコードに比してコード剛性が極端に低いため、張力が7.8N/本未満と弱い場合には、撚り等に原因してゴムシート上でコードが蛇行や横に位置ズレする傾向となり、結果として、本願の作用効果を充分に達成できなくからである。なお前記張力が11.8N/本を越えると、張力によってタイヤコードがゴムシート内に深く沈み込み、コードプライP下面に凹凸模様を生じさせるなどコードプライPの品質低下を招く。
【0028】
なお張力を前記範囲に制御するため、本例では、前記配列体供給手段2と溝付きローラ10の間、及びカレンダロール8Aと送出し手段4との間に、張力測定器20A、20Bを配置せしめ、トッピングの前後におけるタイヤコードCの張力を測定している。そしてこの測定結果に基づき、各リール6に設ける前記ブレーキ手段を手動或いは自動で調整することにより、張力を前記範囲内に制御している。
【0029】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、例えばカレンダ手段9として、下のローラ対7を有するカレンダと、上のローラ対8を有するカレンダとの2台を直列に配置したダンデム式カレンダであっても良いなど、本発明は、図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【0030】
【実施例】
図1のトッピング装置を用い、かつ表1の仕様に基づきコードプライを形成するとともに、該コードプライのコード間隔のバラツキを測定した。なお表1の仕様以外は同一仕様とした。
【0031】
(1)コード間隔のバラツキ;
コードプライを調査し、隣り合うコード間の隙間を測定して、そのバラツキの範囲を記載した。バラツキは、0.1mm以下が好ましい。
【0032】
【表1】
Figure 0004348109
【0033】
【発明の効果】
叙上の如く本発明は、溝付きローラでタイヤコードを位置決めしながらトッピングする際の、ガイド溝の溝深さ、溝付きローラとカレンダロールとの間隔、ゴムシートの厚さと前記間隔との差などを特定している。そのため、コード配列の乱れを抑制できコード間隔を均一化した高品質のコードプライを形成しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタイヤコードのトッピング方法を実施するトッピング装置を示す側面図である。
【図2】その主要部を拡大して示す断面図である。
【図3】溝付きローラを示す平面図である。
【図4】カレンダロールと溝付きローラとの位置関係を示す側面図である。
【図5】溝付きローラのゴムシートへの押し付け状態を示す断面図である。
【図6】(A)、(B)は、従来技術及びその問題点を示す線図である。
【符号の説明】
6 リール
7A、7B カレンダロール
9 カレンダ手段
10 溝付きローラ
11 ガイド溝
C タイヤコード
Cp 配列体
G1 ゴムシート

Claims (5)

  1. 複数のリールから巻き戻されかつ平行に引き揃えられた直径dが0.5〜0.8mmの有機繊維のタイヤコードの配列体の少なくとも片面を、一対のカレンダロールを有するカレンダ手段を用いてゴムトッピングするタイヤコードのトッピング方法であって、
    前記一対のカレンダロールの間で圧延されたゴムシートを外周面で運ぶ一方のカレンダロールの近傍に、各タイヤコードが案内される周方向のガイド溝を外周面に凹設した溝付きローラを設け、
    前記リールから巻き戻されかつ前記溝付きローラの各ガイド溝に通されたタイヤコードを、前記溝付きローラとともに前記一方のカレンダロール上の前記ゴムシートに押し付けることにより、前記タイヤコードの配列体の片面にゴムシートをトッピングするとともに、
    前記ガイド溝の溝深さhをタイヤコードの前記直径dの1.0〜1.2倍、かつ該溝付きローラの外周面と前記カレンダロールの外周面との間隔gを0.2〜1.0mmとし、しかも前記ゴムシートの厚さT1を0.6〜1.4mmかつ前記間隔gとの差T1−gを0.4mm以上としたことを特徴とするタイヤコードのトッピング方法。
  2. 前記ゴムシートの厚さT1は、0.8〜1.2mmとしたことを特徴とする請求項1記載のタイヤコードのトッピング方法。
  3. 前記タイヤコードは、トッピング時、コード1本当たり7.8N〜11.8Nの張力が付加されることを特徴とする請求項1又は2記載のタイヤコードのトッピング方法。
  4. 前記リールから巻き戻されタイヤコードは、タイヤコードが挿入されない空きガイド溝を前記溝付きローラの両側部に残して該溝付きローラの各ガイド溝に通されるとともに、前記タイヤコードを、前記溝付きローラとともに前記一方のカレンダロール上の前記ゴムシートに押し付けることにより、溝付きローラの両側の空きガイド溝内に前記ゴムシートのゴムを噛み込ませることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のタイヤコードのトッピング方法。
  5. 複数のリールから巻き戻されかつ平行に引き揃えられた直径dが0.5〜0.8mmの有機繊維のタイヤコードの配列体の少なくとも片面を、一対のカレンダロールを有するカレンダ手段を用いてゴムトッピングするタイヤコードのトッピング装置であって、
    前記一対のカレンダロールの間で圧延されるゴムシートを外周面で運ぶ一方のカレンダロールの近傍に、各タイヤコードが案内される周方向のガイド溝を外周面に凹設した溝付きローラを具えるとともに、
    前記ガイド溝の溝深さhをタイヤコードの前記直径dの1.0〜1.2倍、かつ該溝付きローラの外周面と前記カレンダロールの外周面との間隔gを0.2〜1.0mmとし、しかも前記ゴムシートの厚さT1を0.6〜1.4mmかつ前記間隔gとの差T1−gを0.4mm以上としたことを特徴とするタイヤコードのトッピング装置。
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