JPH0633985U - ダブルラッセル機におけるパイル糸のテンション安定装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ダブルラッセル機により主にカットパイル編
地を編成する際、パイル糸のテンションを安定させてテ
ンションむらを生じさせずに編成できるようにした、パ
イル糸のテンション安定装置を提供する。 【構成】 クリール１から引き出されてパイル糸用送り
ローラ５，６により送り出されるパイル糸Ｐを、テンシ
ョンバー７によりテンションを与えて編成部Ａに供給す
る場合に、パイル糸Ｐが上面側に添う送りローラ５の上
に、該送りローラ５に載接する補助ローラ８を配し、該
送りローラ５と補助ローラ８の間にパイル糸Ｐを挟み込
んで送るようにする。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、ダブルラッセル機におけるパイル糸のテンション安定装置に関する ものである。

【０００２】

【従来の技術】

例えば、パイル面を起毛して毛布等に用いられるカットパイル生地を、前後一 対（ダブル）の針床を備えるダブルラッセル機を使用して編成する場合、次のよ うに行なわれる。

【０００３】 図３は、ダブルラッセル機の概略を示し、同図において（Ａ）は前後一対の針 床（ａ1 ）（ａ2 ）を備える編成部、（１０）は挿入糸用ビーム、（２０）は鎖 糸用ビームであり、図面では前後一方側（バック側）のビームの図示を省略して いる。前後の挿入糸（Ｙ1 ）および鎖糸（Ｙ2 ）は、それぞれ鎖糸用送りローラ （１１）および鎖糸用送りローラ（２１）により送り出され、テンションバー（ １２）（２２）を経て所定のテンションに調整されて、編成部（Ａ）に供給され る。

【０００４】 また、パイル糸（Ｐ）は、一般にはクリール（図示省略）に配された多数のボ ビンから、糸パイプ（３）および目板等のガイド（４）を経て柄に応じた配列で 引き出され、さらに例えば２本のパイル糸用送りローラ（５）（６）により送り 出されテンションバー（７）を経て編成部（Ａ）に供給される。

【０００５】 編成部（Ａ）には前後にステッチコーム（１３）やシンカー等が配され、さら に上方部には、図４に示すように、パイル糸筬（Ｌ3 ）を中間にしてその前後に 、フロント側の挿入糸筬と鎖糸筬（Ｌ1 ）（Ｌ2 ）およびバック側の鎖糸筬と挿 入糸筬（Ｌ4 ）（Ｌ5 ）とが配されている。そしてこれら前後の各筬により鎖糸 （Ｙ1 ）と挿入糸（Ｙ2 ）をそれぞれ前後の針床（ａ１）（ａ2 ）に導いて前後 つまり表裏両面の素地を編成するとともに、中央のパイル糸筬（Ｌ3 ）によりパ イル糸（Ｐ）を前後の針床（ａ1 ）（ａ2 ）に導いて編針（ｎ）にラッピングさ せて編成する。通常、こうして編成される表裏両素地間の中央で前記パイル糸（ Ｐ）をカットして、カットパイル生地にして巻上げる。

【０００６】 図３の（１４）は打込み送りローラ、（１５）は巻上げテンションローラ、（ Ｂ）は巻上げられた反物を示している。

【０００７】 しかして、前記のダブルラッセル機の編成において、パイル糸（Ｐ）は、２本 の送りローラ（５）（６）に対し一方は下面側に、他方は上面側に添接して、該 送りローラ（５）（６）の回転により、編成部（Ａ）での引き込み量に応じた一 定の送り量で送り出されるとともに、このパイル糸（Ｐ）のテンションが、バネ 手段等により付勢されているテンションバー（７）で調整、保持されるようにな っている。

【０００８】 すなわち、前記編成の際、編針（ｎ）の上下運動等の編成動作によって編成部 （Ａ）でのパイル糸（Ｐ）の引き込み量が変化することにより、パイル糸（Ｐ） のテンションに強弱変動を生じるが、このテンション変動を、バネ手段等により 付勢されているテンションバー（７）で吸収して、パイル糸（Ｐ）のテンション をできるだけ一定に保つようにしている。

【０００９】

【考案が解決しようとする課題】

ところが、上記従来の装置では、パイル糸（Ｐ）はパイル糸用送りローラ（５ ）（６）およびテンションバー（７）に添接しているだけで把持されていない。 そのため送りローラ（５）（６）の回転により送り出されるパイル糸（Ｐ）が、 編成動作に伴う急激なテンション変動等によって部分的に過度に引き出されてし まったりして、編地にテンションむらが発生することがある。

【００１０】 すなわち、パイル糸（Ｐ）は編成動作による引き込み量が大きく、そのため編 成動作によるテンション変動をテンションバー（７）で吸収しきれずに、そのテ ンション変動が送りローラ（５）（６）の部分にまで及び、そのため、送りロー ラの周面に添接しているだけのパイル糸（Ｐ）がローラ周面を滑って過剰（テン ションに応じた量以上）に引き出されて、パイル糸のテンションに不均一が生じ 易くなる。

【００１１】 特に、パイル糸は数１００本から１０００本あるいはそれ以上になり、これら の糸の全てが１本のテンションバー（７）によって、所定のテンションが与えら れるようになっているため、一部のパイル糸のテンションが他と変っても、その テンションが調整されないままで編成部に供給されて、そのまま編成されてしま い、その結果、パイル編地にテンションむらが生じ、経方向の条状に現出するこ とになる。このような欠点は高速化するほど顕著になる。

【００１２】 本考案は、上記に鑑みてなしたものであり、ダブルラッセル機により主にカッ トパイル編地を編成する際、パイル糸のテンションを安定させてテンションむら を生じさせずに編成できるようにした、パイル糸のテンション安定装置を提供し ようとするものである。

【００１３】

【課題を解決するための手段】

本考案は、パイル糸用送りローラにより送り出されるパイル糸を、テンション バーにより所定のテンションを与えて編成部に供給するようにしたダブルラッセ ル機において、上記の課題を解決するための手段として、特にパイル糸が上面側 に添う送りローラの上に、該送りローラに載接する補助ローラを配し、パイル糸 を該送りローラと補助ローラの間に挟み込んで送るようにしたことを特徴とする ものである。

【００１４】

【作用】

上記した本考案によれば、クリール等から引き出されたパイル糸は、パイル糸 用送りローラの回転により送り出され、テンションバーを経て編成部に供給され るが、このパイル糸が上面側に添う送りローラの部分では、パイル糸が該送りロ ーラとこれに載接された補助ローラとの間に挟み込まれて送り出される。

【００１５】 そのため、回転する送りローラ周面に対するパイル糸の滑り現象が適度に規制 され、編成動作に伴うパイル糸の引き込み量の変化によるテンションの強弱変動 がテンションバーで吸収されずに送りローラの部分に及んでも、パイル糸が必要 以上に過剰に引き出されてしまうということがなく、各パイル糸のテンションに 不均一を生じさせずに編成部に供給できることになる。

【００１６】

【実施例】

次に本考案の実施例を図１および図２に基いて説明する。

【００１７】 前後一対の針床（ａ1 ）（ａ2 ）のダブルラッセル機の基本構成は、図３に示 す従来の装置の場合と同様であるので、その詳しい説明は省略する。

【００１８】 並列した２本のパイル糸用送りローラ（５）（６）は、適宜動力伝達手段によ り駆動手段と接続されて回転駆動されるように設けられており、クリールに掛架 されたボビンから糸パイプ（３）や目板等のガイド（４）を経て柄に応じた配列 で引き出されるパイル糸（Ｐ）が、該送りローラ（５）（６）の外周面に添接し て、その回転により編成部（Ａ）での引き込み量に対応した一定の送り量で送り 出せるようになっている。

【００１９】 そして前記の送りローラ（５）（６）のうち、パイル糸（Ｐ）が上面側に添接 する送りローラ（５）の上に、これに載接するゴム材等よりなる補助ローラ（８ ）を配して、パイル糸（Ｐ）をこの送りローラ（５）と補助ローラ（８）の間に 挾着して送り出すようにしている。

【００２０】 前記の補助ローラ（８）は、図２にその略例を示すうに回転自在でかつ上下動 可能に支持され、例えばその自重によって送りローラ（５）に対し適度の圧力で 載接して、パイル糸（Ｐ）をその送り出しに支障ない挾着状態に保持でき、パイ ル糸（Ｐ）の滑りに対し適度の抵抗を与えるようになっている。

【００２１】 もちろん、バネ手段等の他の手段により適度の圧力を与えるように設定して実 施することもできる。

【００２２】 いずれにしても、前記の負荷圧力は、パイル糸にある程度のテンションがかか ると、送りローラ（５）の周面を滑って引き出されるが、不必要に過剰に引き出 されることがないように設定される。

【００２３】 図の（９）は送りローラ（５）からテンションバー（７）に至るまでの間に配 したドロッパーで、さらにテンションを安定させるためのものである。

【００２４】 上記のテンション安定装置を備えていると、クリールに配されたボビンから糸 パイプ（３）および目板等のガイド（４）を経て柄に応じた配列で引き出される パイル糸（Ｐ）は、２本の送りローラ（５）（６）の回転により所定の送り量で 送り出され、テンションバー（７）により適当なテンションに調整されて編成部 （Ａ）に供給されるが、特に前記送りローラ（５）（６）の部分において、パイ ル糸（Ｐ）が送りローラ（５）とその上に載接された補助ローラ（８）との間に 挾着されて送り出される。

【００２５】 したがって、回転する送りローラ（５）周面に対するパイル糸（Ｐ）の滑り現 象が適度に規制され、編成動作に伴うパイル糸（Ｐ）の引き込み量の変化による テンションの強弱変動がテンションバー（７）で吸収されずに送りローラ（５） の部分に及んだ場合、パイル糸（Ｐ）がそのテンションに応じた分だけはローラ 周面を滑って引き出されるにしても、必要以上に過剰に引き出されてしまうとい うことがない。

【００２６】 それゆえ、各パイル糸（Ｐ）のテンションに不均一を生じさせずに編成部（Ａ ）に供給でき、パイル編地のテンションむらの発生を防止できることになる。

【００２７】

【考案の効果】

上記したように本考案によれば、パイル糸のテンションを均一に保持して編成 でき、テンションむらに起因する編地のムラ、および縦条の筋の発生を防止でき 、不良発生を減少できるものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の１実施例を示すダブルラッセル機全体
の略示側面図である。

【図２】パイル糸用送りローラ部分の一部の斜視図であ
る。

【図３】従来のダブルラッセル機全体の略示側面図であ
る。

【図４】ダブルラッセル機の編成部の拡大断面図であ
る。

【符号の説明】

（Ａ） 編成部 （Ｐ） パイル糸 （Ｙ1 ） 挿入糸 （Ｙ2 ） 鎖糸 （１） クリール （５）（６） パイル糸用送りローラ （７） テンションバー （８） 補助ローラ

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 パイル糸用送りローラにより送り出され
   るパイル糸を、テンションバーによりテンションを与え
   て編成部に供給するようにしたダブルラッセル機におい
   て、 パイル糸が上面側に添う送りローラの上に、該送りロー
   ラに載接する補助ローラを配し、該送りローラと補助ロ
   ーラの間にパイル糸を挟み込んで送り出すようにしたこ
   とを特徴とするダブルラッセル機におけるパイル糸のテ
   ンション安定装置。