JP6664215B2 - 防水通気多孔質膜および防水通気複合材料 - Google Patents
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(式1)E=EM÷(1−P×0.01)
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例における性能の評価は、以下の(1)〜(9)の方法に従った。
JIS L−1092 B法(高水圧法)に準じ、耐水圧を測定した。測定に際して、多孔質膜の変形による破断を防ぐため、多孔質膜の耐水圧に影響を与え難い平織物を重ねて測定した。平織物は、経糸に80dtex/24フィラメントの6ナイロンマルチフィラメント糸、緯糸に80dtex/34フィラメントの6ナイロンマルチフィラメント糸を用いて製織されており、経糸密度120本/2.54cm、緯糸密度90本/2.54cmであった。なお、複合材料の耐水圧を測定する際には、上記平織物を用いなかった。
JIS L1096 A法に準じ、フラジール法による通気度の測定を行った。
多孔質膜から幅50mm×長さ80mmの試験片を切り出し、引張試験機(商品名「オートグラフAG−IS型」、株式会社島津製作所製)に取り付けた後(つかみ間隔50mm)、引張速度150mm/分で引張試験を行った。測定温度は22℃、測定湿度は65%であった。得られた応力−ひずみ曲線の初期の直線の傾きを多孔質膜の断面積(mm2)で除し、多孔質膜の見かけの引張弾性率EM(MPa)を算出した。上記測定を10回行い、平均値を求めた。なお、多孔質膜が基材に積層されている場合であって、多孔質膜単体での引張試験が困難な場合、みかけの引張弾性率EMを算出せずに、後述する(5)の方法により、直接、引張弾性率Eを求めた。
多孔質膜から幅100mm×長さ100mmの試験片を切り取り、試験片の厚みおよび質量を測定した。厚みは、試験片の任意の10点の厚みの平均値とした。
別途、多孔質膜をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させて溶液を得た。得られた溶液を、隙間100μmのアプリケーターを用いて、離型フィルム(材質:ポリエチレンテレフタレート、商品名:フィルムバイナ75−NT−2AS、藤森工業株式会社製)の上にコーティングし、120℃で1分間乾燥させた後、離型フィルムを剥離して、対照フィルムを作製した。対照フィルムを幅100mm×長さ100mmに裁断し、厚みおよび質量を測定した。厚みは、対照フィルムの任意の10点の厚みの平均値とした。
試験片および対照フィルムの厚みと質量から、下記式2により空隙率P(%)を算出した。
(式2)P=(1−(WM÷TM)÷(WF÷TF))×100
式中、WFは対照フィルムの質量(g)、TFは対照フィルムの厚み(mm)、WMは試験片の質量(g)、TMは試験片の厚み(mm)である。
(3)で得られた多孔質膜の引張弾性率EMと(4)で得られた空隙率とから、上記式1により多孔質膜の膜成分の引張弾性率Eを算出した。多孔質膜単体での引張試験が困難な場合、(4)と同様の方法により無孔質フィルムを作製し、(3)の方法により引張弾性率Eを求めた。
多孔質膜を、一方の主面の法線方向から、走査型電子顕微鏡(商品名「S−3000N」、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて倍率1000倍で撮影し、得られたSEM画像をコンピュータに取り込んだ。取り込んだSEM画像を50μm×50μmの範囲に切り取り、画像処理ソフトにて画像解析を行った。二値化処理によって、多孔質膜部分を明輝度に、それ以外の部分(孔)が暗輝度となるように閾値を決め、明輝度部分を白、暗輝度部分を黒とした画像を得た。暗輝度部分のピクセル数を計測し、暗輝度部分の解析画像の総ピクセル数に対する割合を算出して、開孔率とした。他の9箇所の50μm×50μmの範囲における画像から、同様にして開孔率を算出し、これら10箇所の平均値を求めた。多孔質膜の他方の主面についても同様に、SEM画像から開孔率を算出した。開孔率が小さい方の主面を第2主面とした。なお、白および黒の配色は逆であってもよい。
(6)で得られた二値化処理後の画像を用いた。孔1つ当たりの暗輝度部分のピクセル数に、1ピクセル当たりの面積を乗じて、孔1つ当たりの面積を求めた。なお、孔の一部が計測範囲から外れる場合は、その孔を除外した。孔面積のデータが50個以上になるまで、他の50μm×50μmの範囲において計測を繰り返した。計測した全てのデータの平均値を平均孔面積とした。
(6)によって第2主面が決定された後、接触角測定器(商品名「M−2040Aエルマ接触角測定器」、エルマ光学株式会社製)を用いて、第2主面の水に対する接触角を測定した。具体的には、第2主面に一滴のイオン交換水を滴下し、第2主面と水の接触部分の角度を計測した。
製膜原液100gを溶液温度30〜30.5℃に保ち、撹拌しながら水を滴下し、凝固点までの滴下量を測定した。凝固点の判定は目視により行った。凝固点までの水の滴下量と、製膜原液に含有する水分量を足して凝固価とした。この操作を3回繰り返し、平均値を求めた。
下記処方1に示す組成の製膜原液A(凝固価:10g)を、上記離型フィルムにナイフオーバーロールコータを用いて、塗布量が湿潤状態で80g/m2となるようにコーティングした。次いで、製膜原液Aがコーティングされた離型フィルムを、水噴霧式加湿器(商品名「FT−161DH」、ユーキャン株式会社製)を設置した暴露用の装置(容積:約5.0m3、温度20℃、相対湿度100%、露点20℃)中に、水噴霧量8.0kg/時間の条件で30秒間走行させた。続いて、上記離型フィルムを30℃の水浴に1.5分間入れて製膜原液Aを凝固させた。その後、上記離型フィルムを50℃の水浴に5分間浸漬して水洗し、130℃で1分間熱風乾燥した。最後に離型フィルムを剥離除去して多孔質膜A(厚み49μm)を得た。
1)ポリエステルポリウレタン樹脂溶液;100質量部
商品名「レザミンCU−4555」
大日精化工業株式会社製
ポリエステルポリウレタン樹脂(100%伸長応力:5.5MPa、分子量:約100,000)を27質量%含むN,N−ジメチルホルムアミド溶液
2)疎水性シリカ;16質量部
商品名「ニップシールSS50F」
東ソー・シリカ株式会社製
平均粒径1.2μm
3)酪酸酢酸セルロース;8質量部
商品名「レザミンCUT−725」
大日精化株式会社製
酢酸酪酸セルロースを25質量%含むN,N−ジメチルホルムアミド溶液
4)N,N−ジメチルホルムアミド;76質量部
熱風乾燥後、離型フィルムを剥離除去する前に、製膜原液Aがコーティングされた離型フィルムを、撥水剤(商品名:NKガードS0671、日華化学株式会社製)6質量%、イソプロパノール20質量%および水74質量%を含む水溶液に浸漬し、マングルでピックアップ率50%に絞った後、100℃で2分間乾燥させ、その後、170℃で30秒間熱処理して、撥水加工1を施した。これ以外は、実施例1と同様にして多孔質膜B(厚み49μm)を得た。
下記処方2に示す組成の製膜原液B(凝固価:10g)を用いたこと以外、実施例1と同様にして多孔質膜C(厚み51μm)を得た。
1)処方1で使用したポリエステルポリウレタン樹脂溶液;100質量部
2)上記疎水性シリカ;16質量部
3)上記酪酸酢酸セルロース;9質量部
4)N,N−ジメチルホルムアミド;76質量部
5)撥水剤;8質量部
商品名「アサヒガード AG−E500D」
旭硝子株式会社製
下記処方3に示す組成の製膜原液C(凝固価:10g)を用いたこと以外、実施例1と同様にして多孔質膜a(厚み50μm)を製造し、評価した。(9)を除く評価結果を表1に示す。離型フィルムとは反対側の露出面には、SEMによって孔は確認できなかった(第2主面の開孔率0%)。よって、通気性が非常に低かった。
1)処方1で使用したポリエステルポリウレタン樹脂溶液;100質量部
2)上記疎水性シリカ;5質量部
3)N,N−ジメチルホルムアミド;68質量部
4)上記撥水剤;8質量部
下記処方4に示す組成の製膜原液D(凝固価:71g)を準備した。なお、製膜原液Dは、1)〜4)の順に、撹拌混合して、目視で均一な溶液が得られていることを確認しながら順次添加して、調製した。また、混合時の温度は30℃以下とした。
1)W/Oエマルジョン型ポリエーテル/ポリエステルポリウレタン樹脂溶液;100質量部
商品名「ゾルテックスPX−550」
DIC株式会社製
メチルエチルケトン66質量%、水3質量%およびポリエーテル/ポリエステルポリウレタン樹脂31質量%を含む水系の樹脂溶液
2)メチルエチルケトン/トルエン(質量比1/2)の混合溶媒;50質量部
3)製膜助剤;1質量部
商品名「ゾルテックス アシスターSD−27M」
DIC株式会社製
4)水/メチルエチルケトン(質量比9/1)の混合溶媒;50質量部
製膜原液Dに、撥水剤(商品名「アサヒガード AG−E500D」)を1.5質量部添加したこと以外は、比較例2と同様にして多孔質膜c(厚み31μm)を得た。得られた多孔質膜cについて、上記評価(1)〜(9)を行った。(9)を除く評価結果を表1に示す。離型フィルムとは反対側の露出面の開孔率がより小さかった。表1では、この主面を第2主面として示した。製膜原液Dに撥水剤を添加したものの、所望の耐水圧を得ることはできなかった。
製膜原液Bがコーティングされた離型フィルムを、水噴霧式加湿器を作動させない状態で暴露用の装置内(温度20度、相対湿度60%、露点12℃)を5秒間走行させたこと以外は、実施例3と同様にして、多孔質膜d(厚み52μm)を製造し、評価した。(9)を除く評価結果を表1に示す。離型フィルムとは反対側の露出面には、SEMによって孔は確認できなかった(第2主面の開孔率0%)。よって、通気性が非常に低かった。
耐水圧の測定に使用する平織物と同じ平織物を準備した。この平織物に対し、常法により精練、染色を行った。次いで、平織物をフッ素系撥水剤(商品名:アサヒガードAG7000、旭硝子株式会社製)を5質量%含む水分散液に浸漬し、マングルにてピックアップ率40%に絞った後、100℃で3分間乾燥させ、その後、160℃で1分間熱処理して、平織物に撥水加工2を施した。撥水加工2後の平織物(厚み約0.13mm)を基材Aとして用いた。基材Aの評価法(2)により測定される通気度は、13.39cm3/cm2/secであった。
平織物に撥水加工2を施した後、カレンダー加工機を用いて、温度170℃、圧力35kg/cm2、速度25m/分の条件にてカレンダー加工を施したこと以外、実施例4と同様にして、基材Bを得た。基材B(厚み約0.12mm)の評価法(2)により測定される通気度は、1.99cm3/cm2/secであった。
1)処方1で使用したポリエステルポリウレタン樹脂溶液;100質量部
2)上記疎水性シリカ;7質量部
3)炭酸カルシウム;20質量部
#400
日東粉化工株式会社製
4)上記酪酸酢酸セルロース;10質量部
5)N,N−ジメチルホルムアミド;110質量部
下記処方6に示す組成の製膜原液F(凝固価:10g)を用いたこと以外、実施例5と同様にして多孔質膜E(厚み50μm)を備える複合材料Cを製造し、評価した。(9)を除く評価結果を表2に示す。多孔質膜Eの基材Bとは反対側の露出面の開孔率がより小さかった。表2では、この主面を第2主面として示した。得られた複合材料Cは、高い耐水圧および通気度を備えていた。また、複合材料Cはソフトな風合いを有していた。
1)処方1で使用したポリエステルポリウレタン樹脂溶液;100質量部
2)上記疎水性シリカ;16質量部
3)酢酸セルロース;20質量部
商品名「クリスボン アシスターSD−17B」
DIC株式会社製
酪酸セルロースを30質量%含むN,N−ジメチルホルムアミド溶液
4)N,N−ジメチルホルムアミド;76質量部
下記処方7に示す組成の製膜原液G(凝固価:10g)を用いたこと、および、製膜原液Gがコーティングされた基材Bを、水噴霧式加湿器を作動させない状態で暴露用の装置内(温度20度、相対湿度60%、露点12℃)を5秒間走行させたこと以外は、実施例5と同様にして、多孔質膜e(厚み52μm)を備える複合材料aを製造し、評価した。(9)を除く評価結果を表2に示す。多孔質膜eの基材Bとは反対側の露出面には、SEMによって孔は確認できなかった(第2主面の開孔率0%)。よって、通気性が非常に低かった。
1)処方1で使用したポリエステルポリウレタン樹脂溶液;100質量部
2)上記疎水性シリカ;7質量部
3)上記酢酸セルロース;8質量部
4)N,N−ジメチルホルムアミド;68質量部
Claims (13)
- 第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、を備える多孔質膜であって、
前記第2主面の開孔率が、前記第1主面の開孔率以下であり、
前記第2主面の前記開孔率が0.5%〜30%であり、水に対する接触角が70°以上であり、
前記第2主面に形成された孔の平均孔面積が0.5μm2〜50μm2であり、
前記多孔質膜を構成する成分の引張弾性率が0.5MPa〜200MPaである、多孔質膜。 - 前記多孔質膜の引張弾性率が、0.1MPa〜30MPaである、請求項1に記載の多孔質膜。
- 前記多孔質膜全体の空隙率が、前記第2主面の前記開孔率の1.1倍以上である、請求項1または2に記載の多孔質膜。
- 前記多孔質膜の厚みが5μm〜1000μmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の多孔質膜。
- 前記多孔質膜の耐水圧が21kPa〜300kPaであり、フラジール法で測定された通気度が0.06cm3/cm2/sec〜1.0cm3/cm2/secである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の多孔質膜。
- 前記成分がエラストマーを含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の多孔質膜。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の多孔質膜と基材とを備える、複合材料。
- 前記基材が、織物、編物および不織布よりなる群から選択される少なくとも一つである、請求項7に記載の複合材料。
- 前記基材のフラジール法で測定された通気度が、1.1cm3/cm2/sec〜1000cm3/cm2/secである、請求項7または8に記載の複合材料。
- 前記複合材料の耐水圧が21kPa〜300kPaであり、フラジール法で測定された通気度が0.06cm3/cm2/sec〜1.0cm3/cm2/secである、請求項7〜9のいずれか一項に記載の複合材料。
- 第1主面と、前記第1主面とは反対側の第2主面と、を備える多孔質膜を製造する方法であって、
前記多孔質膜の成分と、前記成分に対する良溶媒を含む溶媒と、を含む製膜原液を用いて膜状物を形成する工程と、
形成された前記膜状物を、前記成分に対する第1貧溶媒を含む雰囲気下に置く曝露工程と、
前記曝露工程の後、前記膜状物を、前記成分に対する第2貧溶媒を含む凝固液に浸漬させて凝固させる凝固工程と、
凝固された前記膜状物を乾燥する工程と、を備え、
前記第2主面の開孔率が、前記第1主面の開孔率以下であり、
前記第2主面の前記開孔率が、0.5%〜30%であり、水に対する接触角が、70°以上であり、
前記第2主面に形成された孔の平均孔面積が、0.5μm 2 〜50μm 2 であり、
前記成分の引張弾性率が、0.5MPa〜200MPaである、多孔質膜の製造方法。 - 前記第1貧溶媒は、水であり、
前記曝露工程における前記雰囲気の露点は、0℃以上、50℃以下である、請求項11に記載の多孔質膜の製造方法。 - 前記曝露工程において、前記膜状物は、前記第1貧溶媒を含む雰囲気下に10秒以上、300秒以下置かれる、請求項11または12に記載の多孔質膜の製造方法。
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