以下に、実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態を通して共通の構成には同一の符号を付すものとし、重複する説明は省略する。また、各図は実施の形態の説明とその理解を促すための模式図であり、その形状や寸法、比などは実際の装置と異なる個所があるが、これらは以下の説明と公知の技術とを参酌して、適宜設計変更することができる。
(第1の実施形態)
第1の実施形態によると、複合電解質が提供される。この複合電解質は、無機固体粒子混合物と、Liを含む非水電解質とを含む。無機固体粒子混合物は、25℃における第1のLiイオン伝導率を有する第1の無機固体粒子と、25℃における第2のLiイオン伝導率を有する第2の無機固体粒子とを含む。25℃における第2のLiイオン伝導率は、25℃における第1のLiイオン伝導率よりも低い。非水電解質の重量の複合電解質の重量に対する比は、0.1%以上25%以下である。無機固体粒子混合物は、10≦d90/d10≦500を満たす。ここで、d10は、無機固体粒子混合物のレーザー回折散乱法により得られる累積粒度曲線において、小粒子径側からの累積頻度が10%となる粒子径[μm]である。d90は、無機固体粒子混合物の累積粒度曲線において、小粒子径側からの累積頻度が90%となる粒子径[μm]である。
第1の実施形態に係る複合電解質は、例えば、二次電池において使用することができる。
第1の実施形態に係る複合電解質は、以下に説明する理由により、優れた寿命性能及び低温環境下での優れた出力性能を示すことができる二次電池を提供できる。
第1の実施形態に係る複合電解質に含まれる無機固体粒子混合物では、第2の無機固体粒子が、Liイオン伝導性の第1の無機固体粒子よりもLiイオン伝導率(25℃における第2のLiイオン伝導率)が低いため、第1の無機固体粒子よりも高い誘電率を示すことができる。このような第1の無機固体粒子及び第2の無機固体粒子を含む無機固体粒子混合物は、外部からの電場がかかると、第2の無機固体粒子の表面上に誘電分極を生じさせることができる。第1の実施形態に係る複合電解質では、誘電分極が生じた第2の無機固体粒子と非水電解質との界面において、Liを含む非水電解質からLiイオンの解離(脱溶媒和)を促進することができ、その結果、Liイオン伝導に関与するLiイオン濃度を高めることができる。Liイオン濃度の増加は、第1の無機固体粒子と非水電解質との界面にも及び得る。Liイオン伝導性の第1の無機固体粒子は、表面にLiイオン伝導パスを形成することができるので、高い輸率で、Liイオンを伝導することができる。これらの結果、第1の実施形態に係る複合電解質では、高い輸率で電荷を移動させることができる。
また、第1の実施形態に係る複合電解質では、非水電解質の重量の複合電解質の重量に対する比が、0.1%以上25%以下である。第1の実施形態に係る複合電解質は、0.1%以上の量で含む非水電解質から、十分なLiイオンを解離することができる。そして、第1の実施形態に係る複合電解質において25%以下の量で含まれる非水電解質は、無機固体粒子混合物によって保持されやすい。そのため、第1の実施形態に係る複合電解質を含んだ二次電池、特にバイポーラ構造などに代表される積層型の電極群を具備した二次電池は、電極群からの非水電解質の分離、例えば浸出のおそれが少なく、優れた寿命性能を示すことができる。また、第1の実施形態に係る複合電解質を用いることにより、積層型の電極群などの複合体を構成しやすくなる。
加えて、比d90/d10が10以上である無機固体粒子混合物は、累積頻度曲線における粒子径d90と粒子径d10とが十分に離れており、その結果、標準偏差が十分に大きい、すなわち十分に広い粒度分布を示すことを意味する。
複合電解質に含まれる無機固体粒子は、一般に、より狭い粒度分布を示すものほど、すなわち比d90/d10が小さいものほど、機能性が高いとされる。しかしながら、本発明者らは、粒度分布と誘電率の分布との関連性に着目し、比d90/d10を10以上500以下とする、すなわち粒度分布を広くすることによって、先に説明したLiイオンの解離及びLiイオンの伝導を更に促進できることを見出した。その理由は、理論により縛られることを望まないが、以下の通りであると考えられる。電場がかかった際に各粒子の表面で起こり得る誘電分極の程度は、粒子の粒径にも依存すると考えられる。そのため、無機固体粒子混合物では、粒度分布が広いので、誘電分極の程度が不均一となる。誘電分極の程度の不均一性は、無機固体粒子混合物の粒子表面付近におけるLiイオンの濃淡、すなわち濃度勾配を生じさせる。このLiイオンの濃度勾配は、駆動力として、誘電分極により解離されたLiイオンの伝導をより促進できる。Liイオンがより円滑に伝導されると、より多くのLiイオンを誘電分極によって解離することができる。このように、第1の実施形態に係る複合電解質では、非水電解質からのLiの解離と解離したLiの伝導とが互いを促進し合う。その結果、第1の実施形態に係る複合電解質は、Liのより円滑な解離とLiのより円滑な伝導とを実現できる。
また、低温におけるLi伝導は、Liの移動に伴う見かけの活性化エネルギーの影響が大きく現れる。非水電解質からのLiの解離が促進されると見かけの活性化エネルギーが低くなるため、第1の実施形態に係る複合電解質が非水電解質からのLiのより円滑な解離と解離したLiのより円滑な伝導とを実現できるという効果は、低温環境下で用いた場合に特に顕著に現れる。
そして、第1の実施形態に係る複合電解質は、先に説明したように、広い粒度分布を示すことができる無機固体粒子混合物を含むので、二次電池において用いた際、電極間の電気的絶縁性を維持することができる。また、第1の実施形態に係る複合電解質は先に説明したようにLiのより優れた伝導を実現できるので、この複合電解質を含んだ二次電池は、充電及び放電を繰り返した際、二次電池の各部材、例えば正極及び負極にかかる負荷を小さくすることができる。これらの結果、第1の実施形態にかかる複合電解質は、優れた寿命性能を示すことができる二次電池を提供できる。
したがって、第1の実施形態に係る複合電解質は、優れた寿命性能及び低温環境下での優れた出力性能を示すことができる二次電池を提供できる。
無機固体粒子混合物が第1の無機固体粒子のみ又は第2の無機固体粒子のみからなる複合電解質は、非水電解質からのLiイオンの解離又はLiイオンの伝導の何れかを十分に行うことができず、Li伝導に伴う見かけの活性化エネルギーが高くなるため、低温環境下での優れた出力性能を実現することができない。
第1の無機固体粒子の重量の第2の無機固体粒子の重量に対する比は、1%以上99%未満であることが好ましく、10%以上90%以下であることがより好ましく、25%以上75%以下であることが更に好ましい。第1の無機固体粒子と第2の無機固体粒子との重量比が好ましい範囲内にある複合電解質は、Liイオンの解離と伝導とのより優れたバランスを達成でき、その結果、低温環境下でのより優れた出力性能を実現できる。
非水電解質を含んでいない又は非水電解質の重量の複合電解質の重量に対する比が0.1%未満である複合電解質は、非水電解質から十分なLiイオンを解離することができないので、低温環境下での優れた出力性能を実現することができない。一方、非水電解質の重量の複合電解質の重量に対する比が25%を上回っている複合電解質は、複合電解質中から非水電解質が浸出しやすく、電池内で液絡する可能性がある。非水電解質の重量の複合電解質の重量に対する比は、1%以上10%以下であることが好ましく、2%以上10%以下であることがより好ましく、3%以上5%以下であることが特に好ましい。非水電解質の量が好ましい範囲内にある複合電解質では、非水電解質無機固体粒子混合物中における非水電解質の保持性がより高い。そのため、この好ましい態様の複合電解質を用いることにより、セパレータを使わずとも、バイポーラ構造に代表される直列積層構造が構築しやすくなる。さらに、この好ましい態様の複合電解質では、非水電解質から解離したLiが、非水電解質の沖合側に泳動せず無機固体粒子表面近傍を移動しやすくなるため、Li伝導に伴う見かけの活性化エネルギーを低めやすくなる。
比d90/d10が10未満である無機固体粒子混合物を含む複合電解質は、誘電分極により生じるLiイオンの濃度勾配が小さ過ぎ、Liイオンの移動を十分に促進することができない。一方、比d90/d10が500を超える無機固体粒子混合物を含む複合電解質は、塗布性に劣る。そのため、このような複合電解質を含んだ二次電池では、正極と負極との間に位置した複合電解質層の厚さを均一にすることが困難である。このような二次電池では、正極と負極との電気的短絡が起こりやすく、優れた寿命性能を示すことができない。
比d90/d10は、10以上100以下であることが好ましく、15以上60以下であることがより好ましい。比d90/d10が好ましい範囲内にある複合電解質は、広い粒度分布によるLi伝導性の向上を実現しながらも、塗布性に優れ、且つ電極間でより優れた絶縁性を示すことができる。
第1の無機固体粒子の25℃における第1のLiイオン伝導率は、1×10-10S/cm以上であることが好ましく、1×10-6S/cm以上であることがより好ましく、1×10-4S/cm以上であることが更に好ましい。また、第1の無機固体粒子の25℃における第1のLiイオン伝導率は、例えば、1×10-2S/cm以下である。一方、第2の無機固体粒子の25℃における第2のLiイオン伝導率は、1×10-10S/cm未満であることが好ましく、1×10-12S/cm未満であることがより好ましい。また、第2の無機固体粒子の25℃における第2のLiイオン伝導率は、例えば、1×10-14S/cm以上である。
また、無機固体粒子混合物は、10≦σH/σLを満たすことが好ましい。ここで、σHは、第1の無機固体粒子の25℃における第1のLiイオン伝導率[S/cm]であり、σLは、第2の無機固体粒子の25℃における第2のLiイオン伝導率[S/cm]である。10以上である比σH/σLを満たす無機固体粒子混合物を含む複合電解質は、Liイオン濃度のより大きな勾配を生じさせることができ、その結果、Liイオンのより円滑な伝導を実現できる。比σH/σLは、400以上であることがより好ましく、1000以上であることが更に好ましい。比σH/σLは、例えば、1×1016以下であり得る。
第1の無機固体粒子の平均粒子径は、第2の無機固体粒子の平均粒子径と等しいことが好ましい。この好ましい態様では、粒径が等しいことで、それぞれの粒子間隙サイズが一定となり、そこに非水電解質が満たされ得る。これにより、第2の無機固体粒子表面にて誘電分極によって非水電解質から解離したLiイオンが、第1の無機固体粒子表面を移動する際に、均一な間隙を抜けてLiが移動できるようになる。これにより移動経路を最短化できるので好ましい。或いは、無機固体粒子混合物は、1<RH/RL≦100を満たすことが好ましい。ここで、RHは、第1の無機固体粒子及び第2の無機固体粒子のうち平均粒子径が大きい方の粒子の平均粒子径[μm]であり、RLは、第1の無機固体粒子及び第2の無機固体粒子のうち平均粒子径が小さい方の粒子の平均粒子径[μm]である。この好ましい態様では、非水電解質を保持しながらLiの伝導パスを形成できる粒子間隙サイズを確保しながら、複合電解質層の充填密度を向上できる。これにより、複合電解質層の厚さを薄くしても電極間の電気的な絶縁性を保つことができる。比RH/RLは、1より大きく20以下であることがより好ましい。
第1の無機固体粒子のBET比表面積は、第2の無機固体粒子のBET比表面積と等しいことが好ましい。この好ましい態様では、それぞれの粒子が非水電解質と接触する面積が等しくなる。第2の無機固体粒子表面にて誘電分極によって非水電解質から解離したLiイオンが過不足なく第1の無機固体粒子表面を移動できるため、より高いLi伝導性を示すことができる。或いは、無機固体粒子混合物は、1<SH/SL≦50を満たすことが好ましい。ここで、SHは、第1の無機固体粒子及び第2の無機固体粒子のうちBET比表面積が大きい方の粒子のBET比表面積[m2/g]であり、SLは、第1の無機固体粒子及び第2の無機固体粒子のうちBET比表面積が小さい方の粒子のBET比表面積[m2/g]である。この好ましい態様では、第2の無機固体粒子表面にて誘電分極によって非水電解質から解離したLiイオンが第1の無機固体粒子表面を移動しやすいうえ、複合固体電解質の塗布性均一性が向上するため好ましい。比SH/SLは、1より大きく6以下であることがより好ましい。
第1の実施形態に係る複合電解質は、不等式:ω1>ω2を満たしていることが好ましい。ここで、ω1は、複合電解質の複素モジュラススペクトルにおけるピーク周波数である。ω2は、複合電解質が含む非水電解質単独の複素モジュラススペクトルにおけるピーク周波数である。各複素モジュラススペクトルは、下記式で表される。
上記式のパラメータ等、詳細な説明については、非特許文献1に記載されている。
ここで、複素モジュラススペクトルについて説明する。モジュラススペクトルには、複合体の各成分における電荷移動が反映される。具体的には、周波数が高い領域でピークを持つ成分は、その中でのLiイオンの動きが速いことを意味する。また、ピーク周波数に分布が出る場合は、Liの移動度にばらつきがあることを意味する。すなわち、ピーク周波数に分布が出る成分は、Liが速く動ける部位と、Liの移動が遅い部位とが混在している。このような成分では、Liイオンの濃度が濃いか、Liイオンが動くための経路が複数あると判断することができる。よって、モジュラススペクトルによって、Liイオン濃度の分布を見積もることができる。
不等式:ω1>ω2を満たしている複合電解質は、複合電解質全体におけるLiイオンの移動度が、非水電解質中のLiイオン移動度よりも高いということができる。通常は非水電解質中のLiイオン濃度は一定であるはずにも関わらず、非水電解質単独のLiイオン移動度よりも高いことから、複合電解質中においては無機粒子との相互作用により見かけのLiイオン濃度が増えていると考えることができる。このような複合電解質は、低温環境下でより優れた出力性能を実現することができる。
第1の実施形態に係る複合電解質は、例えば、不等式:C2≧C1>C3を満たすことができる。ここで、C1は、第1の無機固体粒子と非水電解質との界面におけるLiイオン濃度[mol/L]である。C2は、第2の無機固体粒子と非水電解質との界面におけるLiイオン濃度[mol/L]である。C3は、非水電解質中のLiイオン濃度[mol/L]である。すなわち、上記不等式を満たす複合電解質では、非水電解質中のLiイオン濃度が、第1の無機固体粒子と非水電解質との界面におけるLiイオン濃度、及び第2の無機固体粒子と非水電解質との界面におけるLiイオン濃度よりも低い。また、第2の無機固体粒子と非水電解質との界面におけるLiイオン濃度が、第1の無機固体粒子と非水電解質との界面とにおけるLiイオン濃度以上である。このような複合電解質は、第2の無機化合物表面の誘電分極によりLiイオンの解離が促進されることで、第1の無機化合物表面を経由して導電するため、輸率が高くLi伝導により有利なパスが形成される。これらの結果、この好ましい態様の複合電解質は、低温環境下でのより優れた出力性能、具体的には、低温環境下での優れた充放電レート性能を実現することができる。
非水電解質は、固体状ポリマー電解質及び/又はゲル状ポリマー電解質を含むことが好ましい。固体状ポリマー電解質を含んだ好ましい態様の複合電解質を用いて二次電池を作製すると、二次電池の小型化が容易となる。ゲル状ポリマー電解質を含んだ好ましい態様の複合電解質を用いると、二次電池をより容易に作製することができると共に、二次電池の形状を変更するなどの操作が容易となる。或いは、非水電解質は、液状非水電解質を含んでもよい。
第1の実施形態に係る複合電解質は、バインダを更に含有していてもよい。非水電解質及びバインダのそれぞれの組成及び量、並びに重合開始剤の量を組み合わせて変更することによって、非水電解質の状態を調整することができる。
以下、第1の実施形態に係る複合電解質が含むことができる材料を、より詳細に説明する。
(1)無機固体粒子混合物
Liイオン伝導性の第1の無機固体粒子の第1のLiイオン伝導率は、例えば、25℃において1×10-10S/cm以上である。このような第1の無機固体粒子としては、Liイオン伝導性が高く、耐還元性の高さや、電気化学窓が広い利点があることから、ガーネット型構造の無機固体粒子を用いることが好ましい。ガーネット型構造の無機固体粒子としては、例えば、一般式La5+xAxLa3-xM2O12(Aは、Ca、Sr及びBaからなる群より選択される1種若しくは2種、又はCa、Sr及びBaの組み合わせであり、MはNb及び/又はTaである)、一般式Li3M2-xL2O12(MはTa及び/又はNbであり、LはZrである)、一般式Li7-3xAlxLa3Zr3O12、又は式Li7La3Zr2O12で表される組成を有する化合物の粒子が挙げられる。上記一般式において、xは0以上0.5以下であることが好ましい。中でもLi6.25Al0.25La3Zr3O12やLi7La3Zr2O12はイオン伝導性が高く、電気化学的に安定なために優れた放電性能と優れたサイクル寿命性能を実現でき、さらには、微粒子化しても有機溶媒に対して化学的に安定であるという利点がある。
また、ガーネット型構造の無機固体粒子以外にも、好ましい第1の無機固体粒子として、式La0.56Li0.33TiO3で表される組成を有するペロブスカイト型Liイオン伝導性材料の粒子やNASICON型構造であるLi1+x+yTi2-xAlxP3-ySiyO12(x=0.3、y=0.2)に代表される構造式で表されるガラスセラミック電解質の粒子などを用いてもよい。
第1の無機固体粒子の好ましい平均粒子径は、0.01μm〜10μmである。さらに、第1の無機固体粒子の平均粒子径は、0.1μm〜8μmであることがより好ましい。この範囲であると、複合電解質でのイオン伝導性が更に高められる。
第1の無機固体粒子は、比d90A/d10Aが10以上100以下であることが好ましく、15以上60以下であることがより好ましい。ここで、d10Aは、第1の無機固体粒子のレーザー回折散乱法により得られる累積粒度曲線において、小粒子径側からの累積頻度が10%となる粒子径[μm]である。d90Aは、第1の無機固体粒子の累積粒度曲線において、小粒子径側からの累積頻度が90%となる粒子径[μm]である。
第2の無機固体粒子は、特に限定されないが、耐還元性の高さと低コストの観点から、酸化アルミニウムの粒子、酸化ジルコニウムの粒子、酸化ケイ素の粒子及び酸化マグネシウムの粒子からなる群より選択される少なくとも1種の粒子であることが好ましい。第2の無機固体粒子の他の例としては、ルチル型酸化チタンの粒子、酸化ニオブの粒子、酸化タンタルの粒子、酸化ハフニウムの粒子、酸化イットリウムの粒子、酸化ガリウムの粒子、酸化ゲルマニウムの粒子などの金属酸化物粒子や、酸化ランタンの粒子などのランタノイド系酸化物粒子などが挙げられる。
第2の無機固体粒子の好ましい平均粒子径は、0.01μm〜10μmである。第2の無機固体粒子の平均粒子径は、0.1μm〜8μmであることがより好ましい。
第2の無機固体粒子は、比d90B/d10Bが10以上100以下であることが好ましく、15以上60以下であることがより好ましい。ここで、d10Bは、第2の無機固体粒子のレーザー回折散乱法により得られる累積粒度曲線において、小粒子径側からの累積頻度が10%となる粒子径[μm]である。d90Bは、第2の無機固体粒子の累積粒度曲線において、小粒子径側からの累積頻度が90%となる粒子径[μm]である。
なお、以上に説明した各無機固体粒子の「平均粒子径」は、粒子が一次粒子からなる場合は数平均一次粒子径であり、粒子が二次粒子からなる場合は数平均二次粒子径であり、粒子が一次粒子及び二次粒子の混合物である場合は、一次粒子及び二次粒子の区別のない、混合物についての数平均粒子径である。
(2)非水電解質
非水電解質は、Liイオンを含む。
非水電解質は、例えば先に説明したように、液状非水電解質、固体状ポリマー電解質及び/又はゲル状ポリマー電解質を含み得る。固体状ポリマー電解質及び/又はゲル状ポリマー電解質を含む非水電解質は、有機ポリマー含有電解質と呼ぶこともできる。
固体状ポリマー電解質及びゲル状ポリマー電解質は、例えば、液状非水電解質とバインダとの複合体であり得る。そのため、固体状ポリマー電解質及びゲル状ポリマー電解質は、複合体を構成する非水電解液成分とモノマー成分とを含むことができる。
液状非水電解質は、例えば、有機溶媒と、有機溶媒中に溶解したLiを含んだ電解質(Li支持塩)とを含むことができる。電解質の濃度は、0.5mol/L以上2.5mol/L以下であることが好ましい。
有機溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネートのような環状カーボネート;ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、メチルエチルカーボネート(MEC)のような鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、ジオキソラン(DOX)のような環状エーテル;ジメトキシエタン(DME)、ジエトキシエタン(DEE)のような鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(AN)、及びスルホラン(SL)が含まれる。これらの有機溶媒は、単独で、又は混合溶媒として用いることができる。有機溶媒は、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びメチルエチルカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
電解質(Li支持塩)の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及びビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)のようなリチウム塩、及び、これらの混合物が含まれる。電解質は、高電位でも酸化し難いものであることが好ましく、LiPF6が最も好ましい。
バインダの例としては、カーボネート類とゲル化する高分子材料が挙げられる。具体例としては、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリフッ化ビリニデン(PVdF)及びポリメチルメタクリレートが挙げられる。上記バインダは、1種類を単独で使用してもよく、複数種類を混合して使用してもよい。バインダの含有量は、例えばPVdFの場合、複合電解質の重量に対して20重量%未満とすることが好ましい。
固体状ポリマー電解質とゲル状ポリマー電解質とは、ポリマーの硬度または粘性の点で異なる。固体状ポリマーとは、重合度が高くポリマー硬度が高いため流動性を持たないものである。ゲルポリマー電解質は、固体状ポリマーに比して硬度が低く、流動性(粘性)を持つものも含む。
重合開始剤としては、ベンゼンスルホン酸エステルやアルキルスルホニウム塩等を用いることができる。重合開始剤の量は、液状非水電解質及びバインダの組成及び量に応じて適宜変更することができる。
次に、第1の実施形態に係る複合電解質におけるLiの伝導のメカニズムを、図1を参照しながら説明する。
図1は、第1の実施形態に係る一例の複合電解質におけるLi+の移動を概略的に示す図である。
図1に示す複合電解質9は、無機固体粒子混合物91と、非水電解質92とを含む。無機固体粒子混合物91は、第1の無機固体粒子91Aと、第2の無機固体粒子91Bとを含む。非水電解質92は、Li+、すなわちLiイオンを含む。
複合電解質9に外部から電場がかかると、第2の無機固体粒子91Bの表面で誘電分極が起こる。それにより、非水電解質92に含まれているLiイオンの一部が、解離して、第2の無機固体粒子91Bと非水電解質92の一部92Bとの間の界面9B付近に溜まる。それにより、複合電解質9において、界面9B付近におけるLiイオン濃度が上昇していく。しかしながら、複合電解質9全体においては、Liイオン濃度の平衡を保つように、界面9B付近におけるLiイオン濃度の上昇を抑える力が働く。具体的には、界面9B付近に溜まったLiイオンの一部が、第1の無機固体粒子91Aと非水電解質92の一部92Aとの界面9A付近に移動する。それにより、界面9A付近にLiイオンが溜まる。ここでも、界面9A付近でのLiイオン濃度の上昇を抑える力が働き、界面9A付近のLiイオンの一部が、非水電解質92へと移動する。非水電解質92が含んだLiの一部は、界面9Bにより非水電解質から解離され得る。他の一部は、非水電解質92及び又はLiイオン伝導性の第1の無機固体粒子91Aを通って伝導される。非水電解質92及び/又は第1の無機固体粒子91Aは、優れたLiイオン伝導パスを形成することができる。これら一連の作用が連関し、複合電解質9では、Liイオンが円滑に伝導される。
Liイオンの伝導は、各界面9A及び9BにおけるLiイオン濃度が高いほど、Liイオンの平衡を保つ力が強く作用するため、より促進される。先に説明したように、無機固体粒子混合物91のd90/d10が10以上である複合電解質では、誘電分極によって界面9B付近でのLiイオン濃度を十分に高くすることができる。そのため、第1の実施形態に係る複合電解質は、優れた寿命性能及び低温環境下での優れた出力性能を示すことができる二次電池を提供できる。
次に、第1の実施形態に係る複合電解質が含む無機固体粒子混合物の粒度分布を、例を挙げて説明する。
図2は、第1の実施形態に係る一例の複合電解質が含む無機固体粒子混合物の粒度分布である。
図2に示す実線は、一例の無機固体粒子混合物の粒度頻度分布である。一方、図2に示す点線は、実線で示した粒度頻度分布から得られた累積粒度曲線である。
図2に点線で示す累積粒度曲線において、小粒子径側からの累積頻度が10%となる粒子径d10は、0.109μmである。また、図2に点線で示す累積粒度曲線において、小粒子径側からの累積頻度が90%となる粒子径d90は、1.681μmである。すなわち、図2に点線で示す累積粒度曲線において、比d90/d10は、15.42である。
[製造方法]
第1の実施形態に係る複合電解質は、無機固体粒子混合物と、Liを含む非水電解質とを混合する。この際、非水電解質の重量が、複合電解質の重量に対して0.1%以上25%以下になるようにする。
無機固体粒子混合物は、第1の無機固体粒子と、第2の無機固体粒子とを混合して準備することができる。第1の無機固体粒子は、異なる粒度分布を有する複数の群の粒子を混合して調製することが好ましい。例えば、第1の無機固体粒子は、以下の手順により調整できる。まず、第1の無機固体粒子の原料たる被処理粒子を準備する。この被処理粒子を複数の群に分ける。この際、複数の群の重量を略均等にすることが好ましい。これらの群を、互いに異なる条件で粉砕する。例えば、1つの群の粒子にはボールミルを供し、他の1つの群の粒子にはローラーコンパクタによる乾式粉砕を供し、更に他の1つの群の粒子にはビーズミルによる湿式粉砕を供する。或いは、粉砕方法は同じにして、群毎に異なる条件で粉砕を行ってもよい。例えば、ボールミルやビーズミルによる粉砕では、用いるメディア径、粉砕時間及び回転数等を異ならせることができる。かくして異なる条件で粉砕して得られた複数の群の粒子を混合して、第1の無機固体粒子を得ることができる。第2の無機固体粒子も、同様に、異なる条件で粉砕して得られた複数の群の粒子を混合して得ることが好ましい。以上のようにして得られた第1の無機固体粒子と第2の無機固体粒子とを混合することによって、比d90/d10が10以上500以下である無機固体粒子混合物を得ることができる。
なお、機能性セラミックは、一般に、狭い(シャープな)粒度分布を示すことが好ましい。つまり、先にも説明したが、複合電解質に含まれる無機固体粒子は、比d90/d10が小さいものほど好ましいとされる。第1の実施形態に係る複合電解質では、これに反し、比d90/d10が10以上500以下である無機固体粒子混合物を用いる。
[各種測定方法]
[第1の前処理]
二次電池に含まれている複合電解質を測定対象とする場合、以下の手順で複合電解質を二次電池から取り出す。
まず、電池を完全に放電した状態にする。電池を25℃環境において0.1C電流で定格終止電圧まで放電させることで、電池を放電状態にすることができる。
次に、アルゴンを充填したグローブボックス中で電池を分解して電極複合体(或いは、電極群)を取り出す。取り出した電極複合体全体の重量Wを測定する。この際に電池の外装材に付着している電解液の重量は含めない。
次に、電極表面の複合電解質層だけを、SAICAS:サイカス(Surface and Inter- facial Cutting Analysis System) 法にて削り取る。かくして、複合電解質を電極複合体から分離することができる。
次に、電極複合体から分離した複合電解質の重量Wtotalを計測する。複合電解質中の非水電解質の溶媒種やLi塩濃度等は、この時点で熱分解GC−MSを用いて調べることができる。次に、この複合電解質を適切な溶媒で洗浄して60℃で12時間減圧乾燥する。洗浄溶媒としては例えば、エチルメチルカーボネートなどを用いることができる。かくして、複合電解質に含まれていた有機電解液を除去できる。乾燥後に得られた第1の混合物の重量Wdを計測する。複合電解質の重量Wtotalから第1の混合物の重量Wdを減ずることにより、有機電解液の重量Weを求めることができる。
次に、第1の混合物を、白金るつぼに入れ、大気中600℃で1時間加熱する。かくして、混合物に含まれていたモノマー成分(ゲル状ポリマー電解質及び/又は固体ポリマー電解質及び/又はバインダを構成する単量体成分)を除去することができる。加熱後に残った第2の混合物を無機固体粒子混合物として、その重量Wiを測定する。ポリマー分の重量Wpは、第1の混合物の粒状Wdから第2の混合物(無機固体粒子混合物)の重量Wiを減じることで求めることができる。
[無機固体粒子混合物の粒度分布測定]
以上のようにして得られた第2の混合物をレーザー回折散乱法による粒度分布測定に供することにより、無機固体粒子混合物の累積頻度曲線を得ることができる。
[第2の前処理]
以上のようにして得られた第2の混合物を、純水に分散して、遠心分離に供する。遠心分離されたそれぞれの部分を、フリーズドライ装置を用いて回収する。かくして、第2の混合物から、組成及び粒子径が異なる粒子を分離することができる。分離した粒子のそれぞれを、粉末X線回折測定、粒度分布測定、BET法に依る比表面積測定、イオン伝導率測定に供することにより、複合電解質に含まれていた粒子の各種特性を調べることができる。もちろん、各粒子をこれら方法以外の分析に供することもできる。
[粉末X線回折測定]
複合電解質から以上のようにして分離した各粒子をCu−Kα線源を用いた粉末X線回折法に供することにより、各粒子の結晶構造を調べることができる。
まず、対象試料である無機固体粒子を粉砕して、平均粒子径が約5μmの試料を調製する。平均粒子径はレーザー回折法によって求めることができる。得られた試料を、ガラス試料板上に形成された深さが0.2mmであるホルダー部分に充填する。この際、試料が十分にホルダー部分に充填されるように留意する。
次いで、充填した試料に対して外部から別のガラス板を押し付けて、充填された試料の表面を平滑化する。充填された試料にひび割れ、空隙、凹凸等が生じないように、過不足ない量の試料を充填するように注意する。また、ガラス板は十分な圧力で押し付けるように留意する。
次いで、試料が充填されたガラス板を粉末X線回折装置に設置する。この装置にて、試料を、Cu−Kα線源の平行ビーム法を用いたX線回折法による測定に供して、粉末X線回折パターンを得る。測定は、Kβフィルター又はモノクロメータを用いる。測定条件は、走査速度5deg/min、ステップ幅0.2deg、管電圧40kV、管電流300mAとする。
なお、試料の配向性が高い場合は、試料の充填の仕方によってピークの位置がずれたり、ピーク強度比が変化したりする可能性がある。このような配向性が著しく高い試料は、キャピラリを用いて測定する。具体的には、試料をキャピラリに挿入し、このキャピラリを回転式試料台に載置して測定する。このような測定方法により、配向性を緩和することができる。
一方、複合電解質中に含まれた無機固体粒子を電池から単離できない場合は、複合電解質層全体を粉末X線回折測定することで、無機固体粒子の結晶構造及び結晶性を調べることもできる。リートベルト法を用いた解析によると、2相以上の共存状態においても、各混合物の物質同定や混合比などの定量的な情報を得ることができる。複合電解質層をそのまま粉末X線回折測定する際には、測定対象とする複合電解質層の厚みと測定用ホルダーの深さを合わせて、X線を照射する測定面に凹凸が生じないようにする。X線回折法による測定は、40kV200mA以上の出力が得られるCu−Kα線源の平行ビーム法を用い、Kβフィルターまたはモノクロメータを用いて行う。測定は、ステップ角2θ=0.02°以下、より好ましくは2θ=0.01°以下とし、θ/2θ連動スキャンモードにおける走査速度を5deg/min以下、より好ましくは1deg/minとした状態で、最強度ピークのカウントが5000cps以上となる条件で行う。
[粒度分布測定]
各粒子の粒度分布は、レーザー回折散乱法による粒度分布測定により測定する。この測定により得られた粒度分布から、各粒子の平均粒子径を求めることもできる。
なお、二次電池が具備する複合電解質中に含まれる無機固体粒子については、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope: SEM)、エネルギー分散型X線分光法及び電子線回折を組み合わせて用いると、第1の無機固体粒子と第2の無機固体粒子とを識別しながら粒子を観察でき、それにより各粒子の平均粒子径を求めることができる。
観察対象の試料は、以下のように調製する。まず、先に説明した手順で、電池から電極複合体を取り出す。次いで、同じくアルゴン雰囲気下で、複合電解質を含んだ層を露出させる。次いで、取り出した電極複合体を、電極の積層方向に切断する。切断には、収束イオンビーム(Focused Ion Beam: FIB)を用いる。それにより、組織構造を破壊せずに、切断面を得ることができる。切断に際しては、取り出した電極複合体の平面形状が四角形状(又はその他の多角形状)であった場合は、電極複合体の表面の対角線と電極が積層された方向とに平行な断面が得られるように切断する。或いは、取り出した電極複合体の平面形状が円形(または楕円形を含む略円形状)であった場合は、電極複合体の円の直径線と電極が積層された方向とに平行な断面が得られるように切断する。
かくして得られた切断面を、SEMを用いて両端まで観察する。この観察により得られたSEM像において、第1の無機固体粒子及び第2の無機固体粒子をそれぞれ無作為に選択して、粒子径の測定を行う。この際、少なくとも100個の粒子を測定する。100点の測定結果の平均値を、平均粒子径とする。
ここで、粒子径は次のようにして決定することができる。まず、先のようにして得られたSEM像において選択した測定対象の粒子に対し、最小外接円を描く。具体的には、図3に示すように、粒子Pを包絡する円(すなわち外接円)のうち、直径が最小の円C、すなわち最小外接円を描く。この最小外接円の直径を、粒子径として定義する。
[BET比表面積]
BET比表面積の測定にあたっては、粉体粒子表面に吸着占有面積が既知である分子を液体窒素の温度で吸着させ、その量から試料の比表面積を求める方法を用いる。最も良く利用されるのが不活性気体の低温低湿物理吸着によるBET法であり、単分子層吸着理論であるLangmuir理論を多分子層吸着に拡張した、比表面積の計算方法として最も有名な理論である。これにより求められた比表面積のことを、BET比表面積と称する。
[無機固体粒子のイオン伝導率測定]
第1の無機固体粒子及び第2の無機固体粒子のイオン伝導率は、以下の手順で測定することができる。
まず、先に説明した手順で、二次電池から第1の無機固体粒子及び第2の無機固体粒子をそれぞれ取り出す。以下、測定対象を単に「無機固体粒子」と呼ぶが、第1の無機固体粒子及び第2の無機固体粒子についての測定は同様の手順で行う。
次に、無機固体粒子を、錠剤成形器を用いて、圧粉体に成形する。この圧粉体の両面に金(Au)電極を蒸着し、測定試料とする。
次いで、この測定試料に対して、ソーラトロン社製周波数応答アナライザ1260型を用いて測定を行う。測定周波数範囲は、5Hzから32MHzの範囲とする。測定は、測定試料を大気に暴露することなく乾燥アルゴン雰囲気下に入れ、25℃環境下にて行う。測定結果から、Liイオン伝導の交流インピーダンス成分ZLi[ohm]を求める。このZLiと測定試料の面積S[cm2]及び厚さd[cm]とから、以下の式によって、無機固体粒子のイオン伝導率σLi[S/cm]を算出できる。
(ここでd/Sはセル定数kとして定義する)
[複合電解質についてのイオン伝導率及びモジュラススペクトルの測定方法]
複合電解質についての交流インピーダンス測定を行うことでイオン伝導率を算出できるほか、複素モジュラススペクトルを用いた解析方法を実施することにより、複合電解質中におけるLiイオン濃度の分布を規定することができる。
測定は、以下の手順で行うことができる。まず、測定対象たる複合電解質を含んだ複合電解質層を準備する。この複合電解質層の両面に金(Au)電極を蒸着し、測定試料を調製する。この測定試料に対して、ソーラトロン社製周波数応答アナライザ1260型を用いて測定を行う。測定周波数範囲は、5Hzから32MHzの範囲とする。測定は、複合電解質を大気に暴露することなく乾燥アルゴン雰囲気下に入れ、25℃環境下にて行う。測定結果から、Liイオン伝導の交流インピーダンス成分ZLi[ohm]を求める。このZLiと複合電解質層の面積S[cm2]及び厚さd[cm]とから、以下の式によって、Liイオン伝導率σLi[S/cm]を算出できる。
(ここでd/Sはセル定数kとして定義する)
次に、次式に従って複素モジュラススペクトル解析を実施する。
[ω:角周波数、ε0:誘電率、Z(ω):複素インピーダンス、k:セル定数]で与えられる式から、横軸に周波数(Hz)の10を底とする常用対数、縦軸に複素モジュラスの虚数部(M”)とした複素モジュラスプロットグラフを作製する。かくして得られるグラフの頂点周波数をωmaxとする。ここで、非特許文献2から、ωmaxの値は、ωmax=(Nv*1/τ)/εfpで表されるため、Nvの大きさに比例して大きくなることが報告されている。Nvは電荷担体の濃度に相当するから、ωmaxを調べることにより、複合電解質におけるLiイオン濃度の分布を調べることができる。また、複合電解質で動きやすいLiイオンが増えると、統計的にイオンの動きの速さが多様化するため、モジュラスプロットに現れるピーク幅は広くなる(詳細は、非特許文献1並びに2を参照のこと)。
この方法を用いて、複合電解質全体におけるω1と、非水電解質単独のω2とを、それぞれ測定し、比較することができる。
[複合電解質中のLiイオン濃度分布の確認]
複合電解質中のLiイオン濃度分布は、ラザフォード後方散乱分光法(Rutherford Back-scattering Spectrometry:RBS)/核反応分析法(Nuclear Reaction Analysis :NRA)を併用したin-situ測定にて確認することができる。
具体的には、以下の手順で確認することができる。まず、測定対象たる複合電解質を含んだ複合電解質層を準備する。この複合電解質層の両面に金(Au)電極を蒸着し、両電極間に5Vの電圧を印加しながら、RBS/NRA測定を行う。かくして、複合電解質層における、第1の無機固体粒子と非水電解質との界面におけるLiイオン濃度C1[mol/L]と、第2の無機固体粒子と非水電解質との界面におけるLiイオン濃度C2[mol/L]と、非水電解質中のLiイオン濃度C3[mol/L]とを測定し、比較することができる。濃度C3は、第1の無機固体粒子及び/または第2の無機固体粒子で構成された粒子間隙の中心部分でのLiイオン濃度とする。
第1の実施形態によると、複合電解質が提供される。この複合電解質は、無機固体粒子混合物と、Liを含む非水電解質とを含む。無機固体粒子混合物は、Liイオン伝導性の第1の無機固体粒子と、第2の無機固体粒子とを含む。第1の無機固体粒子は、25℃における第1のLiイオン伝導率を有する。第2の無機固体粒子は、25℃における第2のLiイオン伝導率を有する。25℃における第2のLiイオン伝導率は、25℃における第1のLiイオン伝導率よりも低い。非水電解質の重量の複合電解質の重量に対する比は、0.1%以上25%以下である。無機固体粒子混合物は、10≦d90/d10≦500を満たす。この複合電解質は、非水電解質からのLiイオンの解離及びLiイオンの伝導を円滑に行うことができる。その結果、第1の実施形態に係る複合電解質は、優れた寿命性能及び低温環境下での優れた出力性能を示すことができる二次電池を提供できる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態によると、二次電池が提供される。この二次電池は、正極活物質含有層と、負極活物質含有層と、Li伝導層とを具備する。Li伝導層は、正極活物質含有層と負極活物質含有層との間に位置する。Li伝導層は、第1の実施形態に係る複合電解質を含む。
正極活物質含有層と、負極活物質含有層と、これらの間に位置したLi伝導層とは、例えば、電極組を構成することができる。
正極活物質含有層は、正極活物質を含むことができる。負極活物質含有層は、負極活物質を含むことができる。正極活物質及び負極活物質については後述する。
正極活物質含有層は、例えば、集電体上に配置されて正極を構成し得る。負極活物質含有層は、例えば、集電体上に配置されて負極を構成し得る。
或いは、正極活物質含有層を集電体の一方の表面に配置し、負極活物質含有層を集電体のその裏側の表面に配置して、電極複合体を構成してもよい。このような電極複合体は、バイポーラ型構造の電極と呼ぶこともできる。すなわち、バイポーラ構造の電極は、第1の表面とその裏面としての第2の表面とを含む集電体と、集電体の第1の表面上に配置された正極活物質含有層と、集電体の前記第2の表面上に配置された負極活物質含有層とを具備することができる。
正極活物質含有層と負極活物質含有層とのそれぞれは、電解質を含むことができる。また、正極活物質含有層及び/又は負極活物質含有層に含まれ得る電解質は、第1の実施形態に係る複合電解質を含んでいても(保持していても)よい。或いは、正極活物質含有層及び/又は負極活物質含有層に含まれ得る電解質は、第1の実施形態に係る複合電解質以外の電解質を含んでもよい。このような電解質としては、第1の実施形態に係る複合電解質が含む非水電解質とは別の、液状非水電解質及び/又はゲル状ポリマー電解質であり得る。これらは、第1の実施形態において説明したものであってもよい。
Li伝導層は、Liイオンを伝導することができる。例えば正極活物質含有層と負極活物質含有層との間に配置されるセパレータであり得る。または、Li伝導層は、正極活物質含有層と負極活物質含有層との間に位置する。Li伝導層は、第1の実施形態に係る複合電解質を含む。Li伝導層は、例えば、液状電解質を更に含むこともできる。液状電解質としては、例えば、液状非水電解質を用いることができる。液状非水電解質としては、例えば、先に説明した液状非水電解質を用いることができる。Li伝導層における第1の実施形態に係る複合電解質の重量割合は、Li伝導層の重量に対して、100%であることが好ましい。
正極活物質含有層、負極活物質含有層及びLi伝導層は、電極群を構成することができる。電極群は、例えば、捲回型構造を有することができる。捲回型構造の電極群は、電極積層体が渦巻状に捲回されたものである。この電極積層体は、正極と、Li伝導層と、負極とを、この順で積層された状態で含んでいる。ここで、正極は、先に説明したように、集電体と、集電体上に配置された正極活物質含有層とを含んでいる。負極も、先に説明したように、集電体と、集電体上に配置された負極活物質含有層とを含んでいる。捲回型電極群は、例えば、扁平形状であってもよい。
或いは、電極群は、例えば、スタック型構造を有することができる。スタック型構造の電極群は、例えば、複数の正極と、複数の負極と、複数のLi伝導層とを含む。Li伝導層は、1つの正極活物質含有層と、1つの負極活物質含有層との間に配置される。或いは、スタック型構造の電極群は、例えば、複数のバイポーラ構造の電極を含むことができる。すなわち、第2の実施形態に係る一態様の二次電池は、複数の電極複合体を具備し、電極複合体の各々は先に説明したバイポーラ構造を有する。この態様に係る二次電池は、例えば、第1の電極複合体と、第1の電極複合体の隣に位置する第2の電極複合体とを含むことができる。このような二次電池では、Li伝導層が、第1の電極複合体の正極活物質含有層と、第2の電極複合体の負極活物質含有層との間に位置している。この態様の二次電池は、一対の正極及び負極を更に具備することもできる。正極は、例えば、集電体と、集電体の一方の表面に形成された正極活物質含有層とを含むことができる。負極は、例えば、集電体と、集電体の一方の表面に形成された負極活物質含有層とを含むことができる。正極の正極活物質含有層は、1つの電極複合体の負極活物質含有層に、Li伝導層を介して向き合うことができる。負極の負極活物質含有層は、他の1つの電極複合体の正極活物質含有層に、Li伝導層を介して向き合うことができる。
第2の実施形態に係る電池は、外装部材を更に備えることができる。正極活物質含有層、負極活物質含有層及びLi伝導層は、外装部材内に収納され得る。また用途によって更なる非水電解質が併用される場合、該非水電解質も外装部材内に収容され得る。
負極及び正極を具備する電池は、負極に電気的に接続された負極端子及び正極に電気的に接続された正極端子を更に具備することができる。
第2の実施形態に係る電池は、直列又は並列に接続し、他種の電池と組み合わせ、及び/又はケーシング等と組み合わせて、電池パックとしてもよい。電池パックは従来知られた構成を適宜選択できる。また、電池パックの構成の具体的な例の詳細は、後述する。
次に、第2の実施形態に係る電池が具備することができる部材をより詳細に説明する。
(1)負極活物質含有層
負極活物質含有層は、例えば、負極活物質と、導電剤と、バインダとを含むことができる。
負極活物質は、Liを吸蔵及び放出することができる物質であり得る。このような負極活物質としては、例えば、炭素材料、Li合金材料、金属酸化物、又は金属硫化物が挙げられる。これらのうち、Ti元素を含有するものが好ましい。中でも、Liイオンを吸蔵及び放出する電位がリチウムの酸化還元電位を基準として1V(vs.Li/Li+)以上3V(vs.Li/Li+)以下であるLi−Ti含有酸化物、Ti含有酸化物、Nb−Ti含有酸化物、及びLi−Na−Nb−Ti含有酸化物からなる群より選択される少なくとも1種のTi含有酸化物の負極活物質粒子を選択することが特に好ましい。
Li−Ti含有酸化物の例としては、一般式Li4+xTi5O12(xは−1≦x≦3)で表されるスピネル型の結晶構造を有するリチウムチタン複合酸化物、一般式Li2+xTi3O7(xは0≦x≦4)で表されるラムスデライト型の結晶構造を有するリチウムチタン複合酸化物が挙げられる。
Ti含有酸化物の例としては、一般式Li1+xTi2O4、一般式Li1.1+xTi1.8O4、一般式Li1.07+xTi1.86O4、又は一般式LixTiO2(xは0≦x≦1)で表されるTi含有酸化物、一般式LixTiO2(xは0≦x≦1)で表される単斜晶構造(充電前構造としてTiO2(B))、及びルチル構造又はアナターゼ構造のTi酸化物(充電前構造としてTiO2)が挙げられる。
Nb−Ti含有酸化物の例としては、一般式LiaTiMbNb2±βO7±σ(0<a<5、0<b<0.3、0<β<0.3、0<σ<0.3、Mは、Fe、V、Mo、及びTaからなる群より選択される少なくとも1種の元素である(Mは、これらのうちの1種でもよいし、又は2種以上の組み合わせでもよい))で表されるニオブチタン複合酸化物が挙げられる。
金属酸化物の例としては、一般式Li2+aM(I)2-bTi6-cM(II)dO14+σ(M(I)は、Naであるか、又はNaと、Sr、Ba、Ca、Mg、Cs及びKからなる群より選択される少なくとも1種とを含む(M(I)は、これらのうちの1種でもよいし、又は2種以上の組み合わせでもよい);M(II)は、Zr、Sn、V、Nb、Ta、Mo、W、Fe、Co、Mn及びAlからなる群より選択される少なくとも1種の元素である(M(II)は、これらのうちの1種でもよいし、又は2種以上の組み合わせでもよい);0≦a≦6、0≦b<2、0<c<6、0<d≦6、−0.5≦σ≦0.5)で表される複合酸化物が挙げられる。上記一般式で表される化合物のうち、Na、Li、Nb及びTiを含む化合物は、Li−Na−Nb−Ti含有酸化物にも包含される。
負極活物質として、以上に挙げた化合物のうちの1種類を単独で用いてもよいし、又は2種以上の混合物を用いてもよい。体積変化の極めて少ない一般式Li4+xTi5O12(xは−1≦x≦3)で表せるスピネル型の結晶構造を有するリチウムチタン複合酸化物を用いることが特に好ましい。
以上に説明したTi含有酸化物を用いることで、負極活物質含有層を担持する集電体として、銅箔に代わって、銅箔よりも軽量であり且つ安価なアルミニウム箔を用いるこができる。その結果、電池の軽量化と低コスト化を実現できる。また、後述するバイポーラ電極構造を構成した電池の重量及び大きさ当たりの容量において有利となる。
負極活物質は、例えば、粒子の形状を有することができる。負極活物質粒子は、一次粒子でもよいし、又は一次粒子が凝集してなる二次粒子でもよい。或いは、負極活物質粒子は、一次粒子と二次粒子との混合物でもよい。より高密度化する観点から、負極活物質含有層において、一次粒子が5体積%以上50体積%以下の量で存在することが好ましい。
負極活物質の粒子は、平均一次粒子径が1μm以下であり、且つN2吸着によるBET法によって測定された比表面積が3m2/g以上200m2/g以下であることが望ましい。このような負極活物質粒子を用いることにより、電池において非水電解質を用いた場合に、負極活物質含有層と非水電解質との親和性を高くすることができる。また、平均一次粒子径を1μm以下とすることで、活物質内部でのLiイオンの拡散距離を短くすることができる。また、比表面積を大きくできる。なお、BET法による比表面積の測定方法は、先に説明した方法と同様である。なお、より好ましい平均一次粒子径は、0.1〜0.8μmである。
負極活物質粒子の平均一次粒径を上記範囲にするのは、平均粒子径が1μmを超える一次粒子を使用して負極活物質含有層の比表面積を3m2/g以上50m2/g以下と大きくすると、負極活物質含有層の多孔度の低下を避けられないからである。詳細は後段において説明する。但し、平均一次粒子径が小さいと、一次粒子の凝集が起こりやすくなる。一次粒子の凝集が起こると、例えば非水電解質を用いた電池においては、非水電解質の分布が負極活物質含有層に偏って正極活物質含有層での電解質の枯渇を招く恐れがある。下限値は0.1μmにすることが望ましい。
負極活物質粒子の二次粒子の平均粒子径(直径)は、2μmより大きいことが好ましい。負極活物質粒子の平均二次粒子径が5μmより大きいことがより好ましい。更に好ましい二次粒子径の範囲は、7μm以上20μm以下である。この範囲であると、負極プレスの圧力を低くしても、高密度の負極活物質含有層を作製できる。例えば、集電体としてのAl含有箔を用いた場合、このAl含有箔の伸びを抑制することができる。
二次粒子の平均粒子径が2μmより大きい負極活物質粒子は、例えば以下のようにして得ることができる。先ず、活物質原料を反応合成して一次粒子の平均粒子径が1μm以下である活物質プリカーサー(前駆体)を作製した後、焼成処理を行う。かくして得られた焼成物に対し、ボールミルやジェトミルなどの粉砕機を用いて粉砕処理を施す。かくして得られた粉砕物を、さらに焼成処理を施す。この作業により、活物質プリカーサー(前駆体)を凝集させて粒子径の大きい二次粒子に成長させることができる。
また、二次粒子表面に炭素材料を被覆することも負極活物質含有層における電気抵抗の低減のため好ましい。炭素材料で被覆した負極活物質の二次粒子は、例えば二次粒子製造過程で炭素材料の前駆体を添加し、不活性雰囲気下で500℃以上の温度条件で焼成することで作製することができる。
導電剤は、負極活物質含有層の導電性を高めるために加えられる。集電体を用いる場合は、導電剤により、負極活物質含有層と集電体との接触抵抗を抑えることができる。導電剤としては、例えば、炭素材料を用いることができる。炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、コークス、炭素繊維、黒鉛、Al粉末、またはTiO等を挙げることができる。より好ましくは、熱処理温度が800℃以上2000℃以下である、平均粒子径10μm以下のコークス、黒鉛、TiOの粉末、または平均繊維径1μm以下の炭素繊維である。これらの炭素材料について、N2吸着によるBET法によって測定された比表面積は10m2/g以上であることが好ましい。これらのうちの1種を導電剤として用いてもよいし、又は2種以上を組み合わせた混合物を導電剤として用いてもよい。
バインダは、例えば、負極活物質と導電剤とを結着させることができる。バインダとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素系ゴム、スチレンブタジェンゴム、またはコアシェルバインダーなどが挙げられる。これらの1種をバインダとして用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせてバインダとして用いてもよい。
負極活物質含有層における負極活物質、導電剤及びバインダの配合比は、負極活物質80〜95重量%、導電剤3〜18重量%、バインダ2〜7重量%にすることが好ましい。
バインダの添加量が多い方が粒子の分散性が高くなる傾向があるものの、粒子の表面がバインダで覆われやすく、負極活物質含有層の比表面積としては小さくなる。一方で、バインダの添加量が少ないと粒子が凝集しやすくなるため、攪拌条件(ボールミルの回転数、攪拌時間及び攪拌温度)を調整して粒子の凝集を抑えることが望ましい。こうすることによって、微粒子を均一分散させることができる。さらに、バインダ添加量と攪拌条件が適正範囲内でも、導電剤の添加量が多いと、負極活物質の表面が導電剤で被覆されやすく、また負極表面のポアも減少する傾向があることから、負極活物質含有層の比表面積としては小さくなる傾向がある。
一方で、導電剤の添加量が少ないと、負極活物質が粉砕されやすくなって負極活物質含有層の比表面積が大きくなったり、あるいは負極活物質粒子の分散性が低下して負極活物質含有層の比表面積が小さくなったりする傾向がある。さらには、導電剤の添加量だけでなく、導電剤の平均粒径と比表面積も負極活物質含有層の比表面積に影響を与え得る。導電剤は、平均粒子径が負極活物質の平均粒子径以下で、比表面積が負極活物質の比表面積よりも大きいことが望ましい。
負極活物質含有層は、例えば、以下の手順で製造できる。まず、前述した負極活物質、導電剤、及びバインダを適切な溶媒に懸濁させて、スラリーを得る。この際、バインダの添加量が少ない状態で負極活物質の粒子を均一分散させることが望ましい。次いで、このスラリーを、基板、例えば集電体に塗布する。集電体上に塗布した塗膜を乾燥し、加温プレスを施す。かくして、負極活物質含有層を得ることができる。
次に、負極活物質含有層の比表面積を3m2/g以上50m2/g以下にすることが好ましい理由を説明する。比表面積が3m2/g未満であるものは粒子の凝集が目立つため、例えば非水電解質を用いたときに負極活物質含有層と非水電解質との親和性が低くなり、負極活物質含有層の界面抵抗が増加するおそれがある。その結果、出力性能と充放電サイクル性能が低下するおそれがある。一方、比表面積が50m2/gを超えるものは、非水電解質の分布が負極活物質含有層に偏るおそれがある。そうなると、正極活物質含有層において非水電解質が枯渇してしまう。この場合、出力性能と充放電サイクル性能の改善を図れない。比表面積のより好ましい範囲は、5m2/g以上50m2/g以下である。ここで、負極活物質含有層の比表面積とは、負極活物質含有層1g当りの表面積を意味する。
負極活物質含有層は、例えば集電体上に担持された負極活物質、導電剤及びバインダを含む多孔質の層であり得る。負極活物質含有層が多孔質である場合は、その多孔度(集電体を除く)を、20%以上50%以下にすることが望ましい。これにより、例えば非水電解質を用いた電池の場合には、負極活物質含有層と非水電解質との優れた親和性を実現でき、かつ高密度な負極活物質含有層を得ることができる。多孔度のさらに好ましい範囲は、25%以上40%以下である。
(2)正極活物質含有層
正極活物質含有層は、例えば、正極活物質と、導電剤と、バインダとを含むことができる。
正極活物質は、Liを吸蔵及び放出することができる物質であり得る。このような正極活物質としては、例えば、Li−Ni−Al含有複合酸化物(例えば、LixNi1-yAlyO2;0<x≦1、0<y<1)、Li−Co含有複合酸化物(例えばLixCoO2;0<x≦1)、Li−Mn含有複合酸化物(例えばLixMn2O4又はLixMnO2;0<x≦1)、Li−Ni複合酸化物(例えばLixNiO2;0<x≦1)、Li−Co−Al含有複合酸化物、Li−Ni−Co−Mn含有複合酸化物(例えばLixNi1-yCoyO2;0<x≦1、0<y<1)、スピネル型の結晶構造を有するLi−Mn−Ni含有複合酸化物(例えばLixMn2-yNiyO4;0<x≦1、0<y<2)、Li−Mn−Co含有複合酸化物(例えばLixMnyCo1-yO2;0<x≦1、0<y<1)、オリビン型の結晶構造を有するリチウムリン酸化物(例えば、リチウムリン酸鉄(例えばLixFePO4;0<x≦1)、リチウムリン酸塩(例えば、LixFe1-yMnyPO4及びLixCoPO4;0<x≦1、0<y<1))、及びフッ素化硫酸鉄(例えば、LixFeSO4F;0<x≦1)などが挙げられる。
これらを用いると、高い正極電位を得られるので好ましい。中でも、Li−Ni−Al含有複合酸化物、Li−Ni−Co−Mn含有複合酸化物、又はLi−Mn−Co含有複合酸化物を用いた非水電解質電池では、高温環境下での非水電解質との反応を抑制することができ、電池寿命を大幅に向上することができる。特に、LixNi1-y-zCoyMnzO2(0<x<1.1、0<y<0.5、0<z<0.5)で表されるLi−Ni−Co−Mn含有複合酸化物を用いることが好ましい。Li−Ni−Co−Mn複合酸化物の使用により、より優れた高温耐久寿命を実現できる。
その他にも、二酸化マンガン(MnO2)、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル及びバナジウム酸化物(例えばV2O5)を正極活物質として用いることもできる。
正極活物質として、以上に挙げた化合物のうちの1種類を単独で用いてもよいし、又は2種以上の混合物を用いてもよい。
正極活物質は、例えば、粒子の形状を有することができる。正極活物質の平均一次粒子径は、100nm以上1μm以下であることが好ましい。平均一次粒子径が100nm以上の正極活物質粒子は、工業生産上の取り扱いが容易である。平均一次粒子径が1μm以下の正極活物質粒子は、リチウムイオンの固体内拡散をスムーズに進行させることが可能である。
正極活物質の比表面積は、0.1m2/g以上10m2/g以下であることが好ましい。0.1m2/g以上の比表面積を有する正極活物質は、Liイオンの吸蔵及び放出サイトを十分に確保できる。10m2/g以下の比表面積を有する正極活物質は、工業生産の上で取り扱い易く、かつ良好な充放電サイクル性能を確保できる。
導電剤は、正極活物質含有層における電子伝導性を高めるために加えられる。集電体を用いる場合は、導電剤により、正極活物質含有層と集電体との接触抵抗を抑えることができる。導電剤としては、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、又は黒鉛等を挙げることができる。これらのうちの1種を導電剤として用いてもよいし、又は2種以上を組み合わせた混合物を導電剤として用いてもよい。
バインダは、例えば、活物質と導電剤とを結着させることができる。バインダとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはフッ素系ゴムなどが挙げられる。これらの1種をバインダとして用いてもよく、或いは、2つ以上を組み合わせてバインダとして用いてもよい。
正極活物質含有層における正極活物質、導電剤及びバインダの配合比は、正極活物質80重量%以上95重量%以下、導電剤3重量%以上18重量%以下、バインダ2重量%以上7重量%以下にすることが好ましい。導電剤については、3重量%以上であることにより上述した効果を発揮することができ、18重量%以下であることにより、高温保存下での導電剤表面での非水電解質の分解を低減することができる。バインダについては、2重量%以上であることにより十分な電極強度が得られ、7重量%以下であることにより、電極の絶縁部を減少させることが出来る。
正極活物質含有層は、例えば、以下の手順で製造できる。まず、前述した正極活物質、導電剤及びバインダを適切な溶媒に懸濁させて、スラリーを得る。次いで、このスラリーを、基板、例えば、集電体に塗布する。集電体上に塗布した塗膜を乾燥し、プレスを施す。かくして、正極活物質含有層を得ることができる。正極プレス圧力は、0.15ton/mm以上0.3ton/mm以下であること好ましい。この範囲内の圧力でプレスをすると、正極活物質含有層と基板との密着性(剥離強度)が高まり、且つ基板の伸び率を20%以下に抑えることができるので、好ましい。
(3)集電体
負極で用いることができる集電体としては、Al(アルミニウム)を含有する箔を用いることが好ましい。このようなAl含有箔としては、Al箔又はAl合金箔が望ましい。特に、純Al(純度100%)のアルミニウム箔、又はAl純度が98%以上100%未満のAl合金箔を用いることが好ましい。Al箔の純度が99.99%以上であることがより好ましい。Al箔及びAl合金箔の厚さは、例えば20μm以下であり、より好ましくは15μm以下である。Al合金としては、Alの他に、Fe、Mg、Zn、Mn及びSiからなる群より選択される1種類以上の元素を含む合金が好ましい。例えば、Al−Fe合金、Al−Mn系合金及びAl−Mg系合金は、Alよりさらに高い強度を得ることが可能である。一方、AlおよびAl合金中のCu、Ni、Crなどの遷移金属の含有量は100ppm以下(0ppmを含む)にすることが好ましい。例えば、Al−Cu系合金では、強度は高まるが、耐食性は悪化するので、集電体としては不適である。
正極で用いることができる集電体としては、Al(アルミニウム)を含有する箔を用いることが好ましい。このようなAl含有箔としては、純Al(純度100%)のアルミニウム箔、又はAl純度が99%以上100%未満のAl合金箔を用いることが好ましい。Al合金としては、Alの他に、Fe、Mg、Zn、Mn及びSiからなる群より選択される1種類以上の元素を含む合金が好ましい。例えば、Al−Fe合金、Al−Mn系合金およびAl−Mg系合金は、Alよりさらに高い強度を得ることが可能である。一方、AlおよびAl合金中のCu、Ni、Crなどの遷移金属の含有量は100ppm以下(0ppmを含む)にすることが好ましい。例えば、Al−Cu系合金では、強度は高まるが、耐食性は悪化するので、集電体としては不適である。
正極の集電体として用いるAl含有箔のより好ましいAl純度は、99.0%以上99.99%以下である。この範囲内にあると不純物元素の溶解による高温サイクル寿命劣化を軽減することができる。
バイポーラ構造の電極が具備する集電体としては、正極用集電体及び負極用集電体と同様のAl含有箔を用いることが好ましい。
(4)Li伝導層
Li伝導層は、第1の実施形態に係る複合電解質を含む。Li伝導層と正極活物質含有層との界面は、正極活物質含有層の表面の凹凸を反映し得る。同様に、Li伝導層と負極活物質含有層との界面は、負極活物質含有層の表面の凹凸を反映し得る。例えば、活物質含有層の表面は、その構成素材による凹凸を有し得る。また、活物質含有層の表面は、活物質含有層の表面に活物質が位置していることにより、活物質粒子による凹凸も有し得る。
特に、負極活物質含有層の表面は、先に説明したように、負極活物質として5μmよりも大きな平均二次粒子径を有する粒子を使用することもできる。このような粒子を用いて作製した負極活物質含有層は、表面に大きな凹凸を有し得る。Li伝導層は、この凹凸に沿って負極活物質含有層に密着することができる。正極活物質含有層に対しても同様に、Li伝導層は、表面の凹凸に沿って正極活物質含有層に密着することができる。
このような構造により、Li伝導層と正極活物質含有層との界面、及びLi伝導層と負極活物質含有層と界面は、隙間がない状態であることができる。特に、無機固体粒子混合物の一部は、負極活物質含有層の表面の凹部の奥に入り込むこともできる。
Li伝導層は、8μm未満の最小厚さを有することができる。最小厚さは、5μm未満であることが更に好ましい。Li伝導層の最小厚さは、Li伝導層のうち最も厚さが小さい部分の厚さである。換言すれば、Li伝導層の最小厚さは、正極活物質含有層の表面と負極活物質含有層の表面と最も近くなっている部位の厚さである。活物質含有層の表面に凹凸がある場合、それぞれの表面の凸部が向き合っている部分が、例えば、最小厚さを有する部分であり得る。
第1の実施形態に係る複合電解質が含む無機固体粒子混合物は、先に説明したように、比d90/d10が10以上である。このように広い粒度分布を有する無機固体粒子混合物を含んだ第1の実施形態に係る複合電解質は、優れた電気絶縁性を示すことができる。また、第1の実施形態に係る複合電解質が含む無機固体粒子混合物は、先に説明したように、比d90/d10が500以下である。このような無機固体粒子混合物を含む複合電解質は、固形分の粒度分布が広過ぎることによる塗布性の低下を抑えることができる。従って、このような複合電解質を含んだLi伝導層は、高い面内均一性を示すことができる。これらの結果、第2の実施形態に係る電池では、Li伝導層の厚さを薄くしても、正極活物質含有層と負極活物質含有層との電気的絶縁を確保することができる。Li伝導層の厚さが小さいほど、二次電池が小型となり、体積あたりの容量が増加するので、有利である。
Li伝導層の最小厚さは、例えば、0.05μm以上とすることができ、0.5μm以上であることがより好ましい。Li伝導層の平均厚さは、0.1μm以上8μm未満であることが好ましい。より好ましくは、0.5μm以上5μm以下である。
Li伝導層の形成方法は、特に限定されない。Li伝導層は、例えば、正極活物質含有層上又は負極活物質含有層に材料を塗布することによって形成することができる。或いは、正極活物質含有層と負極活物質含有層との間に材料を注入するといった手段を用いてもよい。具体例は、後段に、図面を参照しながら説明する。
(5)外装部材
外装部材としては、金属製容器や、ラミネートフィルム製容器を使用することができる。
金属製容器としては、例えば、Al、Al合金、鉄、ステンレスなどからなる金属缶を用いることができる。金属製容器は、例えば、角形及び円筒形の形状を有することができるが、これらに限定されない。また、容器の板厚は、例えば1mm以下であり、0.5mm以下にすることが望ましく、さらに好ましい範囲は0.3mm以下である。
Al合金からなる金属缶は、Mn、Mg、Zn、及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含み、Al純度が99.8%以下である合金から構成されるものが好ましい。Al合金を用いることで、金属缶の強度が飛躍的に増大することにより缶の肉厚を薄くすることができる。その結果、薄型で軽量かつ高出力で放熱性に優れた電池を実現することができる。
ラミネートフィルムとしては、例えば、金属層と、金属層を間に挟みこんだ樹脂層とを含む多層フィルムなどを挙げることができる。金属層は、軽量化のためにアルミニウム箔又はアルミニウム合金箔からなることが好ましい。樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの高分子を用いることができる。また、ラミネートフィルムの厚さは0.2mm以下にすることが好ましい。金属層にAl含有箔を用いる場合、Alの純度は99.5%以上であることが好ましい。ラミネートフィルムは、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形され得る。
外装部材の形状は、特に限定されない。外装部材の形状は、例えば、扁平型(薄型)、角型、円筒型、コイン型、又はボタン型等であってもよい。外装部材は、電池寸法に応じて、例えば携帯用電子機器等に搭載される小型電池用外装部材、二輪乃至四輪の自動車等の車両に搭載される大型電池用外装部材であってもよい。
(6)負極端子
負極端子は、リチウムの酸化還元電位に対する電位が1.0V以上3.0V(vs.Li/Li+)以下において電気的に安定であり、かつ導電性を有する材料から形成される。具体的には、負極端子の材料としては、銅、ニッケル、ステンレス若しくはアルミニウム、又は、Mg,Ti,Zn,Mn,Fe,Cu,及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。負極端子の材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金を用いることが好ましい。負極端子は、負極集電体との接触抵抗を低減するために、負極集電体と同様の材料からなることが好ましい。
(7)正極端子
正極端子は、リチウムの酸化還元電位に対する電位が3.0V以上4.5V以下(vs.Li/Li+)において電気的に安定であり、且つ導電性を有する材料から形成される。正極端子の材料としては、アルミニウム、或いは、Mg、Ti、Zn、Mn、Fe、Cu及びSiからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むアルミニウム合金が挙げられる。正極端子は、正極集電体との接触抵抗を低減するために、正極集電体と同様の材料から形成されることが好ましい。
[Li伝導層の最小厚さ及び平均厚さの測定方法]
電池におけるLi伝導層の最小厚さは、以下のように測定する。まず、測定対象の電池から先に説明したようにして電極複合体を取り出す。次いで、取り出した電極複合体を、先に説明したようにして、FIBを用いて切断する。かくして、正極活物質含有層/Li伝導層/負極活物質含有層の積層断面を得ることができる。かくして得られた切断面に含まれる全ての層をSEMで測定する。このときの観測倍率は、20000倍が好ましい。積層断面に含まれる全ての層を観察し、Li伝導層が最も薄い部分の厚みを前記電解質層の厚さが最も小さい部位の厚さとして規定する。
Li伝導層の平均厚さは、以下のようにして測定する。まず、先に説明したようにして、電極複合体の切断面を得る。次に、SEMを用いてこの切断面に沿って両端まで断面を全て同一の倍率で観察する。このときの観測倍率は、20000倍が好ましい。得られたSEM像から、対角線断面中に含まれるLi伝導層の面積を求める。その面積の値を、電極の積層方向に垂直な向きに伸びたLi伝導層の幅、すなわち電極複合体の表面の切り口の長さで割って、その商を得る。この商を観察した倍率で換算することで平均厚さを求めることができる。
次に、第2の実施形態に係る二次電池の具体例を、図面を参照しながら説明する。
まず、第2の実施形態に係る二次電池が具備することができる第1の例の電極複合体を、図4を参照しながら説明する。
図4は、第2の実施形態に係る二次電池が具備することができる第1の例の電極複合体の概略断面図である。
図4に示す電極複合体10Aは、正極活物質含有層5bと、Li伝導層4と、負極活物質含有層3bと、2つの集電体8とを含む。図示するとおり、電極複合体10Aは、Li伝導層4が、正極活物質含有層5bと、負極活物質含有層3bとの間に位置している。Li伝導層4は、正極活物質含有層5bの一方の表面と、負極活物質含有層3bの一方の表面とに接している。正極活物質含有層5bのLi伝導層4に接していない方の表面は、1つの集電体8に接している。同様に、負極活物質含有層3bのLi伝導層4に接していない方の表面は、他方の集電体8に接している。かくして、電極複合体10Aは、1つの集電体8、負極活物質含有層3b、Li伝導層4、正極活物質含有層5b及びもう1つの集電体8がこの順で積層された構造を有している。換言すると、図4に示した例の電極複合体10Aは、正極活物質含有層5bと、負極活物質含有層3bと、その間に位置したLi伝導層4とを含んだ電極組12を1組含んだ、電極体である。
次に、第2の実施形態に係る二次電池が具備することができる第2の例の電極複合体を、図5を参照しながら説明する。
図5は、第2の実施形態に係る二次電池が具備することができる第2の例の電極複合体の概略断面図である。
図5に示した電極複合体10Bは、バイポーラ構造を有する電極11を複数、例えば4つ含んでいる。各電極11は、図5に示すように、集電体8と、集電体8の一方の表面に形成された正極活物質含有層5bと、集電体8の他方の表面に形成された負極活物質含有層3bとを含んでいる。これらの電極11は、図5に示すように、1つの電極11の正極活物質含有層5bが、他の1つの電極11の負極活物質含有層3bに、Li伝導層4を介して向き合うように配置されている。
電極複合体10Bは、他の2つのLi伝導層4と、他の2つの集電体8と、他の1つの正極活物質含有層5bと、他の1つの負極活物質含有層3bとを更に含んでいる。図5に示すように、1つの正極活物質含有層5bは、電極11の積層体の最上段に位置する電極11の負極活物質含有層3bに、1つのLi伝導層4を介して向き合っている。この正極活物質含有層5bのLi伝導層4に接していない表面は、1つの集電体8に接している。また、1つの負極活物質含有層3bは、電極11の積層体の最下段に位置する電極11の正極活物質含有層5bに、1つのLi伝導層4を介して向き合っている。この負極活物質含有層3bのLi伝導層4に接していない表面は、1つの集電体8に接している。
第2の実施形態に係る二次電池が含むことができる電極複合体は、正極活物質含有層、Li伝導層、負極活物質含有層をそれぞれ密着させて薄型にすることができる。そのため、第2の実施形態に係る二次電池では、正極活物質含有層と負極活物質含有層とこれらの間に位置したLi伝導層との電極組を多数積層することができる。かくして、薄型で要するスペースが少なく、かつ大容量でサイクル寿命性能、熱安定性及び電気化学的安定性に優れた二次電池を提供できる。なお、図5に図示した例の電極複合体10Bは、正極活物質含有層5bと負極活物質含有層3bとこれらの間に位置したLi伝導層4との電極組12を5組含んでいる。しかしながら、電極組12の数は、電池の形状及び大きさの設計に応じて適宜選択できる。
図6に、実施形態に係る一例のリチウム電池の概略断面図を示す。
図6に示すとおり、二次電池100は、外装部材2に収納されている電極複合体10Cを含む。図示する電極複合体10Cは、図5に示した電極複合体10Bと同様の構造を有する。電極複合体10Cの最上段に位置する集電体8の一方の端部には、正極集電タブ8Aが設けられている。一方、電極複合体10Cの最下段に位置する集電体8の一方の端部には、負極集電タブ8Bが設けられている。正極集電タブ8A及び負極集電タブ8Bには、図示しない負極端子及び正極端子がそれぞれ接続されており、これら負極端子と正極端子とは外装部材2の外部へ延出している。
図6では、図5の電極複合体10Bと同様に、正極活物質含有層5bと負極活物質含有層3bとこれらの間に位置したLi伝導層4との電極組を5組含んだ電極複合体10Cを含んだ二次電池100を例として示した。しかしながら、第2の実施形態に係る二次電池は、5組以外の数の電極組、例えば、図4に示す電極複合体10Aと同様に1組の電極組を含んだ電極複合体を具備してもよいし、又は2組以上の電極組を含んだ電極複合体を具備してもよい。
次に、正極活物質含有層と負極活物質含有層とこれらの間に位置したLi伝導層とを含んだ電極組を1組含んだ電極複合体の製造方法の例を、図面を参照しながら説明する。
図7は、第2の実施形態に係る二次電池が具備することができる第3の例の電極複合体の製造方法の一工程を示す概略図である。図8は、図7に示す製造方法の工程の次の一工程を示す概略図である。図9は、図7及び図8に示す製造方法により製造された電極複合体の概略断面図である。
なお、ここで説明する具体例では、正極活物質含有層5bの上にLi伝導層4を形成する方法を説明するが、第2の実施形態に係る二次電池が具備することができるLi伝導層4の形成方法は、ここに説明するものに限られない。
まず、無機固体粒子混合物91をバインダを含む溶液に分散させて、無機固体粒子混合物91のバインダ分散液を調製する。ここで、バインダには、上述した種類のうちのいずれかを使用可能である。無機固体粒子混合物91は、第1の実施形態に係る複合電解質が含む無機固体粒子混合物である。次に、このバインダ分散液を正極活物質含有層5b上に塗布する。次いで、塗膜から溶媒を蒸発させる。かくして、図7に示すように、正極活物質含有層5b上に無機固体粒子混合物91を配置する。
次いで、この正極活物質含有層5b上に非水電解質92又は非水電解質92の前駆体を含んだ塗料を供給する。例えば、この塗料に、非水電解質の塗料をゲル化させる成分、例えば液状非水電解質、バインダ及び重合開始剤を含ませ、この塗料を正極活物質含有層5b上に供給して塗膜を形成し、この塗膜を加熱することにより、図8に示すような、ゲル状又は固体状のポリマー非水電解質を含む非水電解質92と、無機固体粒子混合物91とを含む複合電解質9が得られる。
次いで、正極活物質含有層5bと負極活物質含有層3bとを対向配置させ、これらを押圧する。かくして、図9に示すように、正極活物質含有層5bと、負極活物質含有層3bと、これらの間に位置し且つ複合電解質9を含んだLi伝導層4とを含んだ電極組12が得られる。
以上では、正極活物質含有層5b上にLi伝導層4を形成することを含んだ方法を説明したが、負極活物質含有層3b上にLi伝導層4を形成してもよい。或いは、正極活物質含有層5b及び負極活物質含有層3bの両方の表面上にLi伝導層4を形成してもよい。
ここで、非水電解質92がゲル状ポリマー電解質を含む場合、負極活物質含有層3bを正極活物質含有層5b上のLi伝導層4に押し付けた際に、正極活物質含有層5b及び負極活物質含有層3bの表面における凹凸、特にこれらの電極活物質含有層の表面に存在し得る活物質の凹凸の微細な凹部に、複合電解質9(例えば、図9に示す無機固体粒子混合物91の一部91D及び非水電解質92の一部)が入り込む、又は浸透する。例えば図9に示すように、無機固体粒子混合物91の一部91Cは、正極活物質含有層5b又は負極活物質含有層3bの表面における凹凸の凸部上に存在していてもよい。かくして、正極活物質含有層5b及び負極活物質含有層3bと、Li伝導層4とが、それぞれの凹凸に沿って密着することができる。そのため、かくして得られた電極組12では、Li伝導層4は、正極活物質含有層5b及び負極活物質含有層3bのそれぞれとの界面において、これらとの接触面積を大きくすることができる。よって、Li伝導層4は、正極活物質含有層5b及び負極活物質含有層3bのそれぞれとのLiイオンのやり取りを円滑に行うことができる。また、Li伝導層4は正極活物質含有層5b及び負極活物質含有層3bのそれぞれと密着しているので、Li伝導層4の厚さを小さくすることもできる。
また、非水電解質92に固体状ポリマー電解質を含ませる場合には、例えば、以下の手順で電極複合体を得ることが好ましい。まず、活物質含有層上に、先に説明した無機固体粒子混合物91のバインダ分散液を塗布する。次いで、塗膜から溶媒を蒸発させる。かくして、一方の活物質含有層上に無機固体粒子混合物91を配置する。次いで、無機固体粒子混合物91を配置した方の活物質含有層上に、非水電解質の前駆体を含んだ塗料を塗布する。ここで用いる塗料は、流動性が高いものを用いることが好ましい。それにより、活物質含有層の表面の凹凸の微細な凹部に塗料を入り込ませることができ、その結果厚さがより均一な塗膜が得られる。塗料の流動性が高過ぎる場合は、スプレー等の方法を用いてもよい。次いで、塗膜を加熱する。この際の加熱の程度は、非水電解質の前駆体を完全に固体化させない程度とする。次いで、正極活物質含有層5bと負極活物質含有層3bとを対向配置させ、これらを押圧する。かくして、非水電解質の前駆体が両方の活物質含有層の表面の凹凸の凹部に入り込んだ状態を得ることができる。次いで、非水電解質の前駆体を含んだ塗膜を更に加熱する。かくして、正極活物質含有層5bと、負極活物質含有層3bと、これらの間に位置し且つ複合電解質9を含んだLi伝導層4とを含んだ電極組12が得られる。ここでの複合電解質9は、無機固体粒子混合物91と、固体状ポリマー電解質を含んだ非水電解質92を含むことができる。なお、無機固体粒子混合物91の配置、及びそれに続く非水電解質の前駆体を含む塗料の塗布は、正極活物質含有層5b及び負極活物質含有層3bの両方に行ってもよい。
以上に説明した方法では、例えば、無機固体粒子混合物91を含んだ分散液における固形分の量、及び非水電解質92又は非水電解質92の前駆体を含んだ塗料の塗布量などを調節することによって、Li伝導層4の厚さを調整することができる。
或いは、Li伝導層4は、正極活物質含有層5bと負極活物質含有層3bとの間に非水電解質を注入することを含んだ方法によっても形成できる。具体的には例えば以下のとおりである。まず、先に説明したのと同様の手順により、正極活物質含有層5bの表面又は負極活物質含有層3bの表面の何れか一方に、無機固体粒子混合物91を配置する。ついで、正極活物質含有層5bと負極活物質含有層3bとを間に一定の距離(Li伝導層4の厚みとして設定される値)をおいて配置する。次いで、正極活物質含有層5bと負極活物質含有層3bとの間に、非水電解質92又は非水電解質92の前駆体を含んだ塗料を注入する。かくして、塗料が、正極活物質含有層5b及び負極活物質含有層3bのそれぞれの表面の凹凸の微細な凹部にも入り込む。後は、先に説明した手順を踏襲することにより、正極活物質含有層5bと、負極活物質含有層3bと、これらの間に位置し且つ複合電解質9を含んだLi伝導層4とを含んだ電極組12が得られる。
以上では、バイポーラ構造の電極を含んだ二次電池を例としてあげたが、第2の実施形態に係る二次電池は、バイポーラ構造の電極を含んだ電池に限られない。第2の実施形態に係る二次電池は、例えば、図10及び図11に示す構造を有することもできる。
図10は、第2の実施形態に係る第2の例の二次電池の概略断面図である。図11は、図10に示す二次電池のB部を拡大した概略断面図である。
図10及び図11に示す二次電池100は、図10に示す袋状外装部材2と、図10及び図11に示す電極群1とを具備する。電極群1は、外装部材2内に収納されている。
袋状外装部材2は、2つの樹脂層とこれらの間に介在した金属層とを含むラミネートフィルムからなる。
図10に示すように、電極群1は、扁平状の捲回電極群である。扁平状の捲回電極群1は、図11に示すように、負極3と、Li伝導層4と、正極5とを含む。Li伝導層4は、負極3と正極5との間に介在している。
負極3は、負極集電体3aと負極活物質含有層3bとを含む。負極3のうち、捲回電極群1の最外殻に位置する部分は、図11に示すように負極集電体3aの内面側のみに負極活物質含有層3bが形成されている。負極3におけるその他の部分では、負極集電体3aの両面に負極活物質含有層3bが形成されている。
正極5は、正極集電体5aと、その両面に形成された正極活物質含有層5bとを含んでいる。
Li伝導層4は、先に説明したLi伝導層4と同様に、第1の実施形態に係る複合電解質を含んでいる。
図10に示すように、負極端子6及び正極端子7は、捲回電極群1の外周端近傍に位置している。この負極端子6は、最外殻に位置する負極3の負極集電体3aの一部に接続されている。また、正極端子7は、最外殻に位置する正極5の正極集電体5aに接続されている。これらの負極端子6及び正極端子7は、袋状外装部材2の開口部から外部に延出されている。袋状外装部材2は、その内面に配置された熱可塑性樹脂層により、熱融着されている。
第2の実施形態に係る二次電池は、複数の正極及び複数の負極を含んでもよい。これらは、正極活物質含有層と負極活物質含有層との間にLi伝導層を配置した状態で交互に積層され得る。すなわち、第2の実施形態に係る二次電池は、スタック型の電極群を含むこともできる。
第2の実施形態に係る二次電池は、第1の実施形態に係る複合電解質を含むので、優れた寿命性能及び低温環境下での優れた出力性能を示すことができる。
(第3の実施形態)
第3の実施形態によると、組電池が提供される。第3の実施形態に係る組電池は、第2の実施形態に係る二次電池を複数個具備している。
第3の実施形態に係る組電池において、各単電池は、電気的に直列若しくは並列に接続して配置してもよく、又は直列接続及び並列接続を組み合わせて配置してもよい。
次に、第3の実施形態に係る組電池の一例について、図面を参照しながら説明する。
図12は、第3の実施形態に係る組電池の一例を概略的に示す斜視図である。図12に示す組電池200は、5つの単電池100と、4つのバスバー21と、正極側リード22と、負極側リード23とを具備している。5つの単電池100のそれぞれは、第2の実施形態に係る二次電池である。
バスバー21は、1つの単電池100の負極端子6と、隣に位置する単電池100の正極端子7とを接続している。このようにして、5つの単電池100は、4つのバスバー21により直列に接続されている。すなわち、図12の組電池200は、5直列の組電池である。
図12に示すように、5つの単電池100の左端に位置する単電池100の正極端子7は、外部接続用の正極側リード22に接続されている。また、5つの単電池100の右端に位置する単電池100の負極端子6は、外部接続用の負極側リード23に接続されている。
第3の実施形態に係る組電池は、第2の実施形態に係る二次電池を具備する。従って、第3の実施形態に係る組電池は、優れた寿命性能及び低温環境下での優れた出力性能を示すことができる。
(第4の実施形態)
第4の実施形態によると、電池パックが提供される。この電池パックは、第3の実施形態に係る組電池を具備している。この電池パックは、第3の実施形態に係る組電池の代わりに、単一の第2の実施形態に係る二次電池を具備していてもよい。
第4の実施形態に係る電池パックは、保護回路を更に具備することができる。保護回路は、二次電池の充放電を制御する機能を有する。或いは、電池パックを電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を、電池パックの保護回路として使用してもよい。
また、第4の実施形態に係る電池パックは、通電用の外部端子を更に具備することもできる。通電用の外部端子は、外部に二次電池からの電流を出力するため、及び/又は二次電池に外部からの電流を入力するためのものである。言い換えれば、電池パックを電源として使用する際、電流が通電用の外部端子を通して外部に供給される。また、電池パックを充電する際、充電電流(自動車などの動力の回生エネルギーを含む)は通電用の外部端子を通して電池パックに供給される。
次に、第4の実施形態に係る電池パックの一例について、図面を参照しながら説明する。
図13は、第4の実施形態に係る電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。図14は、図13に示す電池パックの電気回路の一例を示すブロック図である。
図13及び図14に示す電池パック300は、収容容器31と、蓋32と、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35と、図示しない絶縁板とを備えている。
収容容器31は、保護シート33と、組電池200と、プリント配線基板34と、配線35とを収容可能に構成されている。蓋32は、収容容器31を覆うことにより、上記組電池200等を収容する。収容容器31及び蓋32には、図示していないが、外部機器等へと接続するための開口部又は接続端子等が設けられている。
保護シート33は、収容容器31の長辺方向の両方の内側面と、組電池200を介してプリント配線基板34と向き合う短辺方向の内側面とに配置されている。保護シート33は、例えば、樹脂又はゴムからなる。
組電池200は、複数の単電池100と、正極側リード22と、負極側リード23と、粘着テープ24とを備えている。組電池200は、1つの単電池100を備えていてもよい。
単電池100は、図10及び図11に示す構造を有している。複数の単電池100の少なくとも1つは、第2実施形態に係る二次電池である。複数の単電池100は、外部に延出した負極端子6及び正極端子7が同じ向きになるように揃えて積層されている。複数の単電池100の各々は、図14に示すように電気的に直列に接続されている。複数の単電池100は、電気的に並列に接続されていてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されていてもよい。複数の単電池100を並列接続すると、直列接続した場合と比較して、電池容量が増大する。
粘着テープ24は、複数の単電池100を締結している。粘着テープ24の代わりに、熱収縮テープを用いて複数の単電池100を固定してもよい。この場合、組電池200の両側面に保護シート33を配置し、熱収縮テープを周回させた後、熱収縮テープを熱収縮させて複数の単電池100を結束させる。
正極側リード22の一端は、単電池100の積層体において、最下層に位置する単電池100の正極端子7に接続されている。負極側リード23の一端は、単電池100の積層体において、最上層に位置する単電池100の負極端子6に接続されている。
プリント配線基板34は、正極側コネクタ341と、負極側コネクタ342と、サーミスタ343と、保護回路344と、配線345及び346と、通電用の外部端子347と、プラス側配線348aと、マイナス側配線348bとを備えている。プリント配線基板34の一方の主面は、組電池200において負極端子6及び正極端子7が延びる面と向き合っている。プリント配線基板34と組電池200との間には、図示しない絶縁板が介在している。
正極側コネクタ341には、貫通孔が設けられている。この貫通孔に、正極側リード22の他端が挿入されることにより、正極側コネクタ341と正極側リード22とは電気的に接続される。負極側コネクタ342には、貫通孔が設けられている。この貫通孔に、負極側リード23の他端が挿入されることにより、負極側コネクタ342と負極側リード23とは電気的に接続される。
サーミスタ343は、プリント配線基板34の一方の主面に固定されている。サーミスタ343は、単電池100の各々の温度を検出し、その検出信号を保護回路344に送信する。
通電用の外部端子347は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。通電用の外部端子347は、電池パック300の外部に存在する機器と電気的に接続されている。
保護回路344は、プリント配線基板34の他方の主面に固定されている。保護回路344は、プラス側配線348aを介して通電用の外部端子347と接続されている。保護回路344は、マイナス側配線348bを介して通電用の外部端子347と接続されている。また、保護回路344は、配線345を介して正極側コネクタ341に電気的に接続されている。保護回路344は、配線346を介して負極側コネクタ342に電気的に接続されている。更に、保護回路344は、複数の単電池100の各々と配線35を介して電気的に接続されている。
保護回路344は、複数の単電池100の充放電を制御する。また、保護回路344は、サーミスタ343から送信される検出信号、又は、個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号に基づいて、保護回路344と外部機器への通電用の外部端子347との電気的な接続を遮断する。
サーミスタ343から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の温度が所定の温度以上であることを検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100若しくは組電池200から送信される検出信号としては、例えば、単電池100の過充電、過放電及び過電流を検出した信号を挙げることができる。個々の単電池100について過充電等を検出する場合、電池電圧を検出してもよく、正極電位又は負極電位を検出してもよい。後者の場合、参照極として用いるリチウム電極を個々の単電池100に挿入する。
なお、保護回路344としては、電池パック300を電源として使用する装置(例えば、電子機器、自動車等)に含まれる回路を用いてもよい。
このような電池パック300は、例えば大電流を取り出したときにサイクル性能が優れていることが要求される用途に用いられる。この電池パック300は、具体的には、例えば、電子機器の電源、定置用電池、車両の車載用電池又は鉄道車両用電池として用いられる。電子機器としては、例えば、デジタルカメラを挙げることができる。この電池パック300は、車載用電池として特に好適に用いられる。
また、この電池パック300は、上述したように通電用の外部端子347を備えている。したがって、この電池パック300は、通電用の外部端子347を介して、組電池200からの電流を外部機器に出力するとともに、外部機器からの電流を、組電池200に入力することができる。言い換えると、電池パック300を電源として使用する際には、組電池200からの電流が、通電用の外部端子347を通して外部機器に供給される。また、電池パック300を充電する際には、外部機器からの充電電流が、通電用の外部端子347を通して電池パック300に供給される。この電池パック300を車載用電池として用いた場合、外部機器からの充電電流として、車両の動力の回生エネルギーを用いることができる。
なお、電池パック300は、複数の組電池200を備えていてもよい。この場合、複数の組電池200は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。また、プリント配線基板34及び配線35は省略してもよい。この場合、正極側リード22及び負極側リード23を通電用の外部端子として用いてもよい。
第4の実施形態に係る電池パックは、第2の実施形態に係る非水電解質電池又は第3の実施形態に係る組電池を備えている。従って、第4の実施形態に係る電池パックは、優れた寿命性能及び低温環境下での優れた出力性能を示すことができる。
(第5の実施形態)
第5の実施形態によると、車両が提供される。この車両は、第4の実施形態に係る電池パックを搭載している。
第5の実施形態に係る車両において、電池パックは、例えば、車両の動力の回生エネルギーを回収するものである。
第5の実施形態に係る車両の例としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、及び、アシスト自転車及び鉄道用車両が挙げられる。
第5の実施形態に係る車両における電池パックの搭載位置は、特には限定されない。例えば、電池パックを自動車に搭載する場合、電池パックは、車両のエンジンルーム、車体後方又は座席の下に搭載することができる。
次に、第5の実施形態に係る車両の一例について、図面を参照しながら説明する。
図15は、第5の実施形態に係る車両の一例を概略的に示す断面図である。
図15に示す車両400は、車両本体40と、第4実施形態に係る電池パック300とを含んでいる。
図15に示す車両400は、四輪の自動車である。車両400としては、例えば、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、及び、アシスト自転車及び鉄道用車両を用いることができる。
この車両400は、複数の電池パック300を搭載してもよい。この場合、電池パック300は、直列に接続されてもよく、並列に接続されてもよく、直列接続及び並列接続を組み合わせて接続されてもよい。
電池パック300は、車両本体40の前方に位置するエンジンルーム内に搭載されている。電池パック300の搭載位置は、特に限定されない。電池パック300は、車両本体40の後方又は座席の下に搭載してもよい。この電池パック300は、車両400の電源として用いることができる。また、この電池パック300は、車両400の動力の回生エネルギーを回収することができる。
次に、図16を参照しながら、第5の実施形態に係る車両の実施態様について説明する。
図16は、第5の実施形態に係る車両の他の例を概略的に示した図である。図16に示す車両400は、電気自動車である。
図16に示す車両400は、車両本体40と、車両用電源41と、車両用電源41の上位制御手段である車両ECU(ECU:Electric Control Unit;電気制御装置)42と、外部端子(外部電源に接続するための端子)43と、インバータ44と、駆動モータ45とを備えている。
車両400は、車両用電源41を、例えばエンジンルーム、自動車の車体後方又は座席の下に搭載している。なお、図16に示す車両400では、車両用電源41の搭載箇所については概略的に示している。
車両用電源41は、複数(例えば3つ)の電池パック300a、300b及び300cと、電池管理装置(BMU:Battery Management Unit)411と、通信バス412とを備えている。
3つの電池パック300a、300b及び300cは、電気的に直列に接続されている。電池パック300aは、組電池200aと組電池監視装置(VTM:Voltage Temperature Monitoring)301aとを備えている。電池パック300bは、組電池200bと組電池監視装置301bとを備えている。電池パック300cは、組電池200cと組電池監視装置301cとを備えている。電池パック300a、300b、及び300cは、それぞれ独立して取り外すことが可能であり、別の電池パック300と交換することができる。
組電池200a〜200cのそれぞれは、直列に接続された複数の単電池を備えている。複数の単電池の少なくとも1つは、第2の実施形態に係る二次電池である。組電池200a〜200cは、それぞれ、正極端子413及び負極端子414を通じて充放電を行う。
電池管理装置411は、車両用電源41の保全に関する情報を集めるために、組電池監視装置301a〜301cとの間で通信を行い、車両用電源41に含まれる組電池200a〜200cに含まれる単電池100の電圧、及び温度などに関する情報を収集する。
電池管理装置411と組電池監視装置301a〜301cとの間には、通信バス412が接続されている。通信バス412は、1組の通信線を複数のノード(電池管理装置と1つ以上の組電池監視装置と)で共有するように構成されている。通信バス412は、例えばCAN(Control Area Network)規格に基づいて構成された通信バスである。
組電池監視装置301a〜301cは、電池管理装置411からの通信による指令に基づいて、組電池200a〜200cを構成する個々の単電池の電圧及び温度を計測する。ただし、温度は1つの組電池につき数箇所だけで測定することができ、全ての単電池の温度を測定しなくてもよい。
車両用電源41は、正極端子413と負極端子414との接続を入り切りするための電磁接触器(例えば図16に示すスイッチ装置415)を有することもできる。スイッチ装置415は、組電池200a〜200cへの充電が行われるときにオンするプリチャージスイッチ(図示せず)、及び、電池出力が負荷へ供給されるときにオンするメインスイッチ(図示せず)を含んでいる。プリチャージスイッチおよびメインスイッチは、スイッチ素子の近傍に配置されたコイルに供給される信号によりオン又はオフされるリレー回路(図示せず)を備えている。
インバータ44は、入力された直流電圧を、モータ駆動用の3相の交流(AC)の高電圧に変換する。インバータ44の3相の出力端子は、駆動モータ45の各3相の入力端子に接続されている。インバータ44は、電池管理装置411、あるいは車両全体動作を制御するための車両ECU42からの制御信号に基づいて、出力電圧を制御する。
駆動モータ45は、インバータ44から供給される電力により回転する。この回転は、例えば差動ギアユニットを介して車軸および駆動輪Wに伝達される。
また、図示はしていないが、車両400は、回生ブレーキ機構を備えている。回生ブレーキ機構は、車両400を制動した際に駆動モータ45を回転させ、運動エネルギーを電気エネルギーとしての回生エネルギーに変換する。回生ブレーキ機構で回収した回生エネルギーは、インバータ44に入力され、直流電流に変換される。直流電流は、車両用電源41に入力される。
車両用電源41の負極端子414には、接続ラインL1の一方の端子が、電池管理装置411内の電流検出部(図示せず)を介して接続されている。接続ラインL1の他方の端子は、インバータ44の負極入力端子に接続されている。
車両用電源41の正極端子413には、接続ラインL2の一方の端子が、スイッチ装置415を介して接続されている。接続ラインL2の他方の端子は、インバータ44の正極入力端子に接続されている。
外部端子43は、電池管理装置411に接続されている。外部端子43は、例えば、外部電源に接続することができる。
車両ECU42は、運転者などの操作入力に応答して他の装置とともに電池管理装置411を協調制御して、車両全体の管理を行なう。電池管理装置411と車両ECU42との間では、通信線により、車両用電源41の残容量など、車両用電源41の保全に関するデータ転送が行われる。
第5の実施形態に係る車両は、第4の実施形態に係る電池パックを搭載している。従って、第5の実施形態に係る車両は、優れた寿命性能及び低温環境下での優れた出力性能を示すことができる。
[実施例]
以下、実施例に基づいて上記実施形態をさらに詳細に説明する。なお、以下実施例において、Li伝導層の厚み測定を行う際には、Li伝導層をFIBで切断し、複合電解質の断面をSEMにより観察した。観察の倍率は、20,000倍とした。
(実施例1)
実施例1では、以下の手順で実施例1の電極組を作製した。
(正極の製造)
正極活物質として、LiMn0.85Fe0.1Mg0.05PO4の組成式を有するオリビン型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物の粒子を準備した。準備した粒子は、平均粒子径が5nmである炭素微粒子が表面に付着していた。付着量は、0.1重量%であった。準備した粒子は、一次粒子であり、平均一次粒子径が50nmであった。
また、導電剤として、繊維径が0.1μmである気相成長の炭素繊維と、黒鉛粉末とを準備した。また、バインダとして、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を準備した。
正極活物質粒子、炭素繊維、黒鉛粉末及びPVdFを、それぞれ87重量%:3重量%:5重量%:5重量%の量で混合し、混合物を得た。この混合物を、N−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散し、正極スラリーを調製した。次いで、正極スラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム合金箔(純度99%)のに両面に塗布し、塗膜を乾燥させた。次いで、乾燥させた塗膜をプレスした。かくして、集電体と、集電体の両方の表面に形成された正極活物質含有層とを含んだ正極を得た。集電体の片方の表面上に形成された正極活物質含有層の厚さが67μmとなり、集電体の片方の表面上に形成された正極活物質含有層の密度が2.2g/cm3となるように、スラリーの塗布量及びプレス圧を調整した。
(負極の製造)
負極活物質として、Li4Ti5O12の組成式を有するチタン酸リチウムの粒子を準備した。チタン酸リチウムの粒子の一次平均粒子径は、0.6μmであった。チタン酸リチウムの粒子のBET比表面積は、10m2/gであった。また、導電剤として、平均粒子径が6μmである黒鉛粉末を準備した。また、バインダとして、PVdFを準備した。
次に、負極活物質粒子、黒鉛粉末及びPVdFを、重量比で95:3:2となるように混合して、混合物を得た。この混合物を、N−メチルピロリドン(NMP)溶媒に分散させた。かくして得られた分散液を、ボールミルを用いて回転数1000rpmで、かつ攪拌時間が2時間の条件で攪拌に供した。かくして、負極スラリーが得られた。
得られた負極スラリーを、厚さが15μmであるアルミニウム合金箔(純度99.3%)に塗布し、塗膜を乾燥させた。次いで、乾燥させた塗膜を加熱プレスに供した。かくして、集電体と、集電体の両面上に形成された負極活物質含有層とを含んだ負極が得られた。工程を経ることにより、負極を作成した。集電体の片方の表面上に形成された負極活物質含有層の厚さが59μmとなり、集電体の片方の表面上に形成された負極活物質含有層の密度が2.2g/cm3となるように、スラリーの塗布量及びプレス圧を調整した。負極活物質含有層の多孔度は、35%であった。
(無機固体粒子混合物の調製)
第1の無機固体粒子として、ガーネット型の結晶構造を有し、Li7La3Zr2O12(LLZ)の組成式を有する粒子を準備した。この粒子は、累積頻度分布におけるd50(平均一次粒子径)が0.35μmであり、d10が0.12μmであり、d90が1.61μmであった。この粒子は、以下の方法で調製した。まず、LLZの粒子を準備した。次いで、これらを3つの群に均等に分けた。第1の群の粒子は、10mmφのジルコニアボールを用いて140rpmで1時間での粉砕に供した。第2の群の粒子は、1mmφのジルコニアボールを用いて180rpmで3時間の条件での粉砕に供した。第3の群の粒子は、イソプロピルアルコールに分散し、0.3mmφのジルコニアビーズを用いて周速10m/sの条件で湿式ビーズミル粉砕に供した。粉砕したこれらの群の粒子を混合し、第1の無機固体粒子とした。第1の無機固体粒子の平均粒子径、BET比表面積及び25℃での第1のLiイオン伝導率を以下の表1に示す。
一方で、第2の無機固体粒子として、Al2O3の組成式を有するアルミナの粒子を準備した。この粒子は、累積頻度分布におけるd50(平均一次粒子径)が0.35μmであり、d10が0.10μmであり、d90が1.68μmであった。この粒子は、以下の方法で調製した。まず、アルミナの粒子を準備した。次いで、これらを3つの群に均等に分けた。第1の群の粒子は、10mmφのジルコニアボールを用いて140rpmで1時間での粉砕に供した。第2の群の粒子は、1mmφのジルコニアボールを用いて180rpmで3時間の条件での粉砕に供した。第3の群の粒子は、イソプロピルアルコールに分散し、0.3mmφのジルコニアビーズミルを用いて周速10m/sの条件で湿式ビーズミル粉砕に供した。粉砕したこれらの群の粒子を混合し、第2の無機固体粒子とした。第2の無機固体粒子の平均粒子径、BET比表面積及び25℃での第2のLiイオン伝導率を以下の表1に示す。
次に、準備した第1の無機固体粒子及び第2の無機固体粒子を重量比50:50で混合して、無機固体粒子混合物を得た。得られた無機固体粒子混合物の比d90/d10、無機粒子の混合比、Li伝導率比σH/σL、平均粒子径比RH/RL、及びBET比表面積比SH/SLを以下の表3に示す。
(非水電解質前駆体の塗料の調製)
プロピレンカーボネート(PC)とジエチルカーボネート(DEC)とを、体積比1:2で混合して、混合溶媒を調製した。この混合溶媒に、六フッ化リン酸リチウムLiPF6を、1.2Mの濃度で溶解した。かくして液状非水電解質を得た。
次に、ゲル化剤として、アクリロニトリル系モノマーを準備した。このモノマーを、液状非水電解質に、2重量%の濃度となるように添加した。かくして、非水電解質前駆体の塗料を調製した。
(電極組の作製)
PVdFと、先に準備した無機固体粒子混合物とを、N−メチルピロリドン(NMP)に投入し、スラリーを調製した。PVdFは、無機固体粒子混合物に対して、5重量%の量で投入した。
かくして得られたスラリーを、正極活物質含有層の一方の表面に塗布した。次いで、塗膜からNMPを蒸発させた。かくして、正極活物質含有層の表面上に無機固体粒子の混合物を配置した。
次に、正極活物質含有層の無機固体粒子が配置された表面に、先に調製した非水電解質前駆体の塗料を塗布した。次いで、塗膜を60℃で6時間加熱した。かくして、モノマーを重合させて、ポリアクリロニトリル(PAN)とした。かくして、無機固体粒子混合物と、ゲル状ポリマー(PAN)を含んだ非水電解質とを含んだLi伝導層を、正極活物質の表面上に形成した。非水電解質は、Liを含んだ非水電解液成分と、この成分と共にゲル状ポリマーを構成するモノマー成分とを含んでいた。
同様の手順で、負極活物質含有層の一方の表面上に、同様のLi伝導層を形成した。
次いで、正極活物質含有層上に形成したLi伝導層を、負極活物質含有層上に形成したLi伝導層に押し当てた。
実施例1では、Li伝導層の平均厚さが5μmとなり、最小厚さが0.5μmとなるように、無機固体粒子混合物を含んだスラリー及び非水電解質前駆体の塗料の塗布量、並びに押し当て圧を調整した。
かくして、正極活物質含有層と、負極活物質含有層と、これらの間に位置するLi伝導層と含んだ電極組が得られた。
実施例1の電極群が含む複合電解質は、無機固体粒子混合物、非水電解液成分及びポリアクリロニトリルモノマー成分を、99.9:0.08:0.02の重量比で含んでいた。すなわち、複合電解質における非水電解質(有機ポリマー含有電解質)の含有量は、重量比で0.10%であった。
(実施例2〜7)
実施例2〜7では、複合電解質中の非水電解質の量を変更したこと以外は実施例1と同様の手順で、実施例2〜7の電極組を作製した。具体的には、非水電解質の量を、2.0重量%(実施例2)、4.0重量%(実施例3)、10.0重量%(実施例4)、16.0重量%(実施例5)、20.0重量%(実施例6)、及び25.0重量%(実施例7)となるように変更した。
(実施例8〜13)
実施例8〜13では、以下の点以外は実施例3と同様の手順で、実施例8〜13の電極組をそれぞれ作製した。
実施例8〜13では、第1の無機固体粒子として、ガーネット型の結晶構造を有し、Li7La3Zr2O12(LLZ)の組成式を有する化合物の粒子を準備した。第1の無機固体粒子の平均粒子径、BET比表面積及び25℃でのイオン伝導率を以下の表1に示す。
一方で、第2の無機固体粒子として、Al2O3の組成式を有するアルミナの粒子を準備した。第2の無機固体粒子の平均粒子径、BET比表面積及び25℃でのイオン伝導率を以下の表1に示す。
実施例8〜13では、これらの第1の無機固体粒子(LLZ)と第2の無機固体粒子とを、1:99(実施例8)、10:90(実施例9)、25:75(実施例10)、75:25(実施例11)、90:10(実施例12)、99:1(実施例13)となるように混合した。
(実施例14〜20)
実施例14〜20では、第1の無機固体粒子と第2の無機固体粒子とを変更したこと以外は実施例3と同様の手順で、実施例14〜20の電極組を作製した。
具体的には、実施例14では、第1の無機固体粒子として、実施例8で用いたものと同様のものを用いた。また、実施例14では、第2の無機固体粒子として、Li1.5Ti1.7Al0.3P2.8Si0.2O12(LATP)の組成を有する化合物の粒子を用いた。
実施例15では、第1の無機固体粒子として、実施例8で用いたものと同様のものを用いた。また、実施例15では、リン酸リチウムオキシナイトライドガラス電解質(LIPON)の粒子を用いた。
実施例16では、第1の無機固体粒子として、ペロブスカイト型の結晶構造を有し、Li0.56Li0.33TiO3(LLT)の組成を有する化合物の粒子を用いた。また、実施例16では、第2の無機固体粒子として、実施例15で用いたものと同様のものを用いた。
実施例17では、第1の無機固体粒子として、実施例8で用いたものと同様のものを用いた。実施例17では、第2の無機固体粒子として、酸化ジルコニウム(ジルコニア)の粒子を用いた。
実施例18では、第1の無機固体粒子として、実施例8で用いたものと同様のものを用いた。実施例18では、第2の無機固体粒子として、酸化マグネシウム(マグネシア)の粒子を用いた。
実施例19では、第1の無機固体粒子として、実施例8で用いたものと同様のものを用いた。実施例19では、第2の無機固体粒子として、ルチル型の結晶構造を有する酸化チタン(チタニア)の粒子を用いた。
実施例20では、第1の無機固体粒子として、実施例8で用いたものと同様のものを用いた。実施例20では、第2の無機固体粒子として、酸化ケイ素(シリカ)の粒子を用いた。
各実施例で用いた第1及び第2の無機固体粒子の平均粒子径、BET比表面積及び25℃でのイオン伝導率を以下の表1に示す。
(実施例21〜27)
実施例21〜27では、以下の点以外は実施例3と同様の手順により、実施例21〜27の電極組を作製した。
実施例21〜27では、実施例8で用いたのと同様の第1の無機固体粒子及び第2の無機固体粒子を用いた。これらを50:50の重量比で混合し、無機固体粒子混合物を調製した。
また、実施例21〜27では、Li伝導層の厚さを実施例1のそれから変更した。具体的には、20.0μm(実施例21)、15.3μm(実施例22)、10.3μm(実施例23)、7.9μm(実施例24)、3.1μm(実施例25)、1.1μm(実施例26)、0.5μm(実施例27)とした。
(実施例28〜31)
実施例28〜31では、第1の無機固体粒子及び第2の無機固体粒子の粒度分布を実施例1のそれと異ならせたこと以外は実施例3と同様の手順により、実施例28〜31の電極組を作製した。
具体的には、以下の手順で、第1の無機固体粒子及び第2の無機固体粒子の粒度分布を異ならせた。
実施例28では、第1の無機固体粒子の粉砕条件のうち10mmφのジルコニアボールを用いたボールミル粉砕のみを実施し、第2の無機粒子の粉砕条件のうち、湿式ビーズミル粉砕の条件を周速15m/sとし、8時間粉砕した。
実施例29では、第1の無機固体粒子の粉砕条件のうち湿式ビーズミルを行わず、第2の無機固体粒子の粉砕条件のうち、湿式ビーズミル粉砕の条件を周速10m/sとし8時間粉砕した。
実施例30では、第1の無機固体粒子の粉砕条件のうち湿式ビーズミルの条件を周速10m/sとし8時間粉砕し、第2の無機固体粒子の粉砕条件のうち10mmφのジルコニアボールを用いたボールミル粉砕のみを2時間実施した。
実施例31では、第1の無機固体粒子の粉砕条件のうち湿式ビーズミルの条件を周速10m/sとし8時間粉砕し、第2の無機固体粒子の粉砕条件のうち湿式ビーズミルを行わなかった。
各実施例で用いた第1及び第2の無機固体粒子の平均粒子径、BET比表面積及び25℃でのイオン伝導率を以下の表1及び2に示す。
(実施例32〜34)
実施例32〜34では、以下の点以外は実施例3と同様の手順により、実施例32〜34の電極組を作製した。
実施例32〜34では、実施例8で用いたのと同様の第1の無機固体粒子及び第2の無機固体粒子を用いた。これらを50:50の重量比で混合し、無機固体粒子混合物を調製した。
また、実施例32〜34では、非水電解質前駆体塗料に含ませる液状非水電解質の混合溶媒の組成を以下のように実施例1のそれから変更した。実施例32:プロピレンカーボネート(PC)とジメチルカーボネート(DMC)との混合溶媒(体積比1:2);実施例33:エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)との混合溶媒(体積比1:2);及び実施例34:プロピレンカーボネート(PC)とメチルエチルカーボネート(MEC)との混合溶媒(体積比1:2)。
(実施例35〜41)
実施例35〜41では、以下の点以外は実施例3と同様の手順により、実施例35〜41の電極組を作製した。
実施例35〜41では、実施例8で用いたのと同様の第1の無機固体粒子及び第2の無機固体粒子を用いた。これらを50:50の重量比で混合し、無機固体粒子混合物を調製した。
また、実施例35〜41では、複合電解質における固体無機粒子混合物、非水電解液成分及びポリアクリロニトリルモノマー成分の含有量の重量比が以下のようになるようにした。実施例35:[96:3.5:0.5];実施例36:[96:3.0:1.0]、実施例37:[96:2.5:1.5];実施例38[96:2.0:2.0];実施例39[96:1.5:2.5];実施例40:[96:1.0:3.0];及び実施例41:[96:0.5:3.5]。
(実施例42)
実施例42では、以下の手順でバイポーラ構造を有する電極を含む電極組を作製した。
実施例1と同様の手順で、正極用のスラリー及び負極用のスラリーを調製した。次いで、厚さが15μmであるアルミニウム合金箔(純度99.3%)の一方の面に正極スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた。また、アルミニウム合金箔の他方の面に負極スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた。かくして得られた複合体を、プレスに供した。集電体の片方の表面上に形成された正極活物質含有層の厚さが67μmとなり、正極活物質含有層の密度が2.2g/cm3となり、集電体のもう片方の表面上に形成された負極活物質含有層の厚さが59μmとなり、負極活物質含有層の密度が2.2g/cm3となるように、スラリーの塗布量及びプレス圧を調整した。かくして、集電体と、集電体の一方の表面に形成された正極活物質含有層と、集電体の他方の表面に形成された負極活物質含有層とを含んだ、バイポーラ構造を有する第1の電極が得られた。
また、第1の電極と同様の構造を有する第2〜4の電極を作製した。更に、正極活物質含有層を含まないこと以外は第1の電極と同様の構造を有する第5の電極と、負極活物質含有層を含まないこと以外は第1の電極と同様の構造を有する第6の電極とを作製した。
次いで、第1の電極の正極活物質含有層と、第2の電極の負極活物質含有層との間に、Li伝導層を形成した。また、第2の電極の正極活物質含有層と、第3の電極の負極活物質含有層との間に、Li伝導層を形成した。また、第3の電極の正極活物質含有層と、第4の電極の負極活物質含有層との間に、Li伝導層を形成した。また、第1の電極の負極活物質含有層と、第6の電極の正極活物質含有層との間に、Li伝導層を形成した。そして、第4の電極の正極活物質含有層と、第5の電極の負極活物質含有層との間に、Li伝導層を形成した。
Li伝導層は、以下の点以外は実施例3と同様の手順で形成した。
まず、実施例8で用いたのと同様の第1の無機固体粒子及び第2の無機固体粒子を50:50の重量比で混合したものを、無機固体粒子混合物として用いた。また、液状非水電解質の調製の際に、LiPF6を1Mの濃度で混合溶媒に溶解した。
(比較例1)
比較例1では、以下の点以外は実施例1と同様の手順により、比較例1の電極組を作製した。
比較例1では、複合電解質を含んだLi伝導層を形成しなかった。代わりに、正極活物質含有層と負極活物質含有層と間に、厚さが20μmであるポリプロピレン(PP)セパレータを挟んだ。また、このセパレータに、実施例1で調製したのと同様の非水電解質前駆体塗料を含浸させ、この塗料を60℃で6時間加熱した。かくして、正極活物質含有層、負極活物質含有層及びセパレータに、PANを含んだ非水電解質を保持させた。
(比較例2)
比較例2では、厚さが20μmであるポリエチレン(PE)セパレータを用いた以外は比較例1と同様の手順により、比較例2の電極組を作製した。
(比較例3)
比較例3では、以下の点以外は実施例1と同様の手順により、比較例3の電極組を作製した。
比較例3では、複合電解質を含んだLi伝導層を形成しなかった。代わりに、厚さが20μmであるLi7La3Zr2O12粒子の焼結体を、正極活物質含有層と負極活物質含有層と間に挟んだ。Li7La3Zr2O12粒子は、平均一次粒子径が1μmであった。
(比較例4)
比較例4では、以下の点以外は実施例1と同様の手順により、比較例4の電極組を作製した。
比較例4では、複合電解質を含んだLi伝導層を形成しなかった。代わりに、厚さが40μmであるゲル状ポリアクリロニトリル高分子体のシートを、正極活物質含有層と負極活物質含有層と間に挟んだ。高分子体のシートには、ゲル状ポリアクリロニトリルの含有量が2重量%となるように、液状非水電解質を保持させた。液状非水電解質は、プロピレンカーボネートとジエチルカーボネートとを体積比1:2で混合して混合溶媒を調製し、この混合溶媒にLiPF6を1.2Mの量で溶解して調製した。
(比較例5)
比較例5では、LLZの粒子を用いなかったこと以外は実施例8と同様にして、比較例5の電極組を作製した。
(比較例6)
比較例6では、アルミナの粒子を用いなかったこと以外は実施例8と同様にして、比較例6の電極組を作製した。
(比較例7〜9)
比較例7〜9では、無機固体粒子混合物の比d90/d10を実施例1のそれと異ならせたこと以外は実施例1と同様の手順により、比較例7〜9の電極組を作製した。
具体的には、以下の手順で、比d90/d10を異ならせた。
比較例7では、第1の無機固体粒子及び第2の無機固体粒子の粒度分布において、d90/d10が8前後となるように適宜粉砕条件の調整を実施した。
比較例8では、d90/d10粒度分布測定と粉砕処理とを短時間に交互に実施して、第1の無機固体粒子及び第2の無機固体粒子の粒度分布ができるだけ等しくなるようにした。
比較例9では、第2の無機固体粒子の粉砕をローラーコンパクタで1パスしたのみとした。
(比較例10及び11)
比較例10及び11では、以下の点以外は実施例3と同様の手順により、比較例10及び11の電極組を作製した。
比較例10及び11では、実施例8で用いたのと同様の第1の無機固体粒子及び第2の無機固体粒子を用いた。これらを50:50の重量比で混合し、無機固体粒子混合物を調製した。
また、比較例10及び11では、複合電解質における固体無機粒子混合物、非水電解液成分及びアクリロニトリルモノマー成分の含有量の重量比が以下のようになるようにした。比較例10:[99.95:0.04:0.01];及び比較例11:[70:20:10]。
各実施例及び比較例の電極組が含む材料についてのパラメータを、以下の表1〜表6に示す。各パラメータは、先に説明した手順で測定した。
[二次電池の作製]
各実施例及び比較例の電極組を、ラミネートフィルム製外装材に収納し、外装材の外周部を熱封止した。かくして、各実施例及び比較例の二次電池を作製した。
<評価>
以下の手順で、各実施例及び比較例の二次電池を評価した。
まず、設定温度を25℃とした恒温槽中に二次電池を入れ、1時間待機した。次いで、二次電池を、時間放電率0.2Cで2.8Vまで定電流充電した。次いで、二次電池を、2.8Vでの定電圧充電に供し、電流値を1/20Cまで収束させた。次に、二次電池を、1Cの定電流で、1.5Vを終止電圧として放電した。この放電により得られた放電容量を、1C放電容量とした。次に、同様の条件で充電をした後、二次電池を、20Cの定電流で、1.5Vを終止電圧として放電した。この放電により得られた放電容量を、20C放電容量とした。20C放電容量を1C放電容量で除したものに100を乗じることで、レート容量維持率[%]を算出した。
次に、二次電池を25℃で先と同様の手順で充電した。次いで、二次電池を入れた恒温槽の設定温度を−30℃として、2時間待機した。次いで、二次電池を、−30℃にて、1Cの定電流で、1.5Vを終止電圧として放電した。この放電により得られた放電容量を、−30℃放電容量とした。−30℃放電容量を、先に測定した1C放電容量(すなわち25℃放電容量)で除したものに100を乗じることで、低温性能(出力性能比)を算出した。
次に、恒温槽の設定温度を60℃に設定し、2時間待機した。次いで、二次電池を1Cの定電流で2.8Vまで充電した。次いで、二次電池を、2.8Vの定電圧で3時間に亘って充電した。10分間の待機時間を経てから、二次電池を、1Cの定電流で、1.5Vを終止電圧として放電した。この充電−待機−放電を1回の充放電サイクルとした。この充放電サイクルを繰り返すことで、60℃におけるサイクル寿命性能を調べた。500サイクル後の60℃放電容量を、60℃で最初に放電した容量で除したものに100を乗じて、60℃サイクル容量維持率[%]を算出した。
以上の試験の評価結果を、以下の表7及び表8に示す。
表7及び表8に示した結果から明らかなように、各実施例の二次電池は、比較例1〜11の二次電池よりも、優れた寿命性能と、低温環境下での優れた出力性能とを示すことができたことが分かる。
また、実施例21の二次電池は、比較例1〜3の二次電池のセパレータ、焼結体及びシート状電解質層と同等の厚さのLi伝導層を含んでいたが、全ての性能が比較例1〜3よりも優れていた。
なお、比較例8の二次電池は、過電圧が高く、充電することができなかった。また、比較例10の二次電池は、複合固体電解質層が電極から剥離しやすく、組立中に短絡したため充電することができなかった。
(実施例43)
実施例43では、以下の点以外は実施例3と同様の手順で、実施例43の電極組を作製した。
実施例43では、第1の無機固体粒子として、NASICON型の菱面体結晶構造を有し、Li1.2Zr1.9Ca0.1(PO4)3(LZCP)の組成を有する化合物の粒子を準備した。第1の無機固体粒子の平均粒子径、BET比表面積及び25℃での第1のLiイオン伝導率を以下の表9に示す。
一方で、第2の無機固体粒子として、Al2O3の組成式を有するアルミナの粒子を準備した。第2の無機固体粒子の平均粒子径、BET比表面積及び25℃での第2のLiイオン伝導率を以下の表9に示す。
実施例43では、これらの第1の無機固体粒子(LZCP)と第2の無機固体粒子とを、50:50となるように混合した。
(実施例44)
実施例44では、以下の点以外は実施例3と同様の手順で、実施例44の電極組を作製した。
実施例44では、第1の無機固体粒子として、歪んだ三斜晶系の構造を有し、LiZr2(PO4)3(LZP)の組成を有する化合物の粒子を準備した。第1の無機固体粒子の平均粒子径、BET比表面積及び25℃での第1のLiイオン伝導率を以下の表9に示す。
一方で、第2の無機固体粒子として、Al2O3の組成式を有するアルミナの粒子を準備した。第2の無機固体粒子の平均粒子径、BET比表面積及び25℃での第2のLiイオン伝導率を以下の表9に示す。
実施例44では、これらの第1の無機固体粒子(LZP)と第2の無機固体粒子とを、50:50となるように混合した。
実施例43及び44の電極組が含む材料についてのパラメータを、以下の表10及び表11に示す。各パラメータは、先に説明した手順で測定した。
[二次電池の作製]
実施例43及び44の電極組を、ラミネートフィルム製外装材に収納し、外装材の外周部を熱封止した。かくして、実施例43及び44の二次電池を作製した。
<評価>
先に説明したのと同様の手順で、実施例43及び44の二次電池を評価した。その結果を以下の表12に示す。
表7、表8及び表12に示した結果から、実施例43及び実施例44の二次電池の各々は、実施例1〜42の各二次電池と同様に、比較例1〜11の二次電池よりも、優れた寿命性能と、低温環境下での優れた出力性能とを示すことができたことが分かる。また、例えば、実施例3、実施例16、実施例43及び実施例44の結果から、これらの実施例の二次電池は、第1の無機固体粒子が互いに異なるが、同様に、優れた寿命性能と、低温環境下での優れた出力性能とを示すことができたことが分かる。
以上に説明した少なくとも1つの実施形態及び実施例によると、複合電解質が提供される。この複合電解質は、無機固体粒子混合物と、Liを含む非水電解質とを含む。無機固体粒子混合物は、Liイオン伝導性の第1の無機固体粒子と、第1の無機固体粒子よりもLiイオン伝導率が低い第2の無機固体粒子とを含む。非水電解質の重量の複合電解質の重量に対する比は、0.1%以上25%以下である。無機固体粒子混合物は、10≦d90/d10≦500を満たす。この複合電解質は、非水電解質からのLiイオンの解離及びLiイオンの伝導を円滑に行うことができる。その結果、この複合電解質は、優れた寿命性能及び低温環境下での優れた出力性能を示すことができる二次電池を提供できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。