図1は、本発明の実施形態に係る計測センサ用パッケージ1を示す平面図であり、図2は、図1の切断面線A−Aで切断した断面図であり、図3は、図1の切断面線B−Bで切断した断面図である。なお、図1の平面図では、蓋体3、接地導体層4、および信号配線導体23を省略して図示している。
計測センサ用パッケージ1は、発光素子および受光素子を収容する基体2を含む。
本実施形態の基体2は、矩形板状であって、複数の誘電体層が積層されて形成されている。また、この基体2には、少なくとも2つの凹部が設けられており、2つの凹部のうちの一方は、発光素子を収容する第1収容凹部20aであり、2つの凹部のうちの他方は、受光素子を収容する第2収容凹部20bである。第1収容凹部20aおよび第2収容凹部20bは、基体2の一方主面20cに開口するように設けられている。
本実施形態の計測センサ用パッケージ1は、光のドップラー効果を利用して、血流等の流体の流れを計測する計測センサに好適に用いられる。光のドップラー効果を利用するために、計測センサは、被計測物に光を照射する発光素子と、被計測物によって散乱された光を受光する受光素子とを備える。特に、血流を計測する場合には、例えば手指等の身体の一部に外部から光を照射し、皮膚下の血管を流れる血液に含まれる血球細胞によって散乱された光を受光して、周波数の変化から血流を測定する。そのため、計測センサ用パッケージ1においては、照射光と散乱光の位置関係に基づいて、発光素子と受光素子とを所定の間隔で配置する。第1収容凹部20aおよび第2収容凹部20bは、素子の位置関係に応じて設けられる。
本実施形態では、第1収容凹部20aは、発光素子を実装する第1底面20dを含み、第2収容凹部20bは、受光素子を実装する第2底面20eを含む。第1収容凹部20aの深さd1は、第2収容凹部20bの深さd2よりも浅くされている。例えば、d1は0.3mm〜1.0mmであり、d2は0.4mm〜1.5mmである。
このような第1収容凹部20aおよび第2収容凹部20bを設けることによって、第1底面20dに実装される発光素子と、第2底面20eに実装される受光素子とは、基体2の一方主面20cの面方向において離間されるだけでなく、基体2の厚み方向においても離間される。
本実施形態の計測センサ用パッケージ1を備える計測センサでは、基体2の一方主面20cの面方向および基体2の厚み方向の両方向において、発光素子と受光素子との間に充分な距離を確保することができ、それによって、発光素子側と受光素子側との間のクロストークを低減し、高精度の計測が可能となる。
本実施形態の計測センサ用パッケージ1は、蓋体3および接地導体層4をさらに有する。
蓋体3は、基体2の一方主面20cに接合されて、第1収容凹部20aおよび第2収容凹部20bを覆う。蓋体3は、絶縁材料からなる板状部材であり、第1収容凹部20aに収容される発光素子から出射される光が透過し、第2収容凹部20bに収容される受光素子によって受光される光が透過するように構成される。
本実施形態の計測センサ用パッケージ1を備える計測センサでは、蓋体3の表面に、例えば被計測物である手指を当てた状態で発光素子から出射した光を照射する。蓋体3が導電性を有する材料で構成されていると、蓋体3に手指を接触させたときに、指先に溜まっていた不要な電荷が手指から放出され、蓋体3を通して基体2に電荷が流れ込みノイズが発生する。蓋体3を絶縁材料で構成することにより、蓋体3を通して不要な電荷が流れ込むことを抑制することができる。
また、蓋体3は、被計測物への照射光および散乱光を透過する必要がある。照射光および散乱光の特性は、搭載する発光素子によって決まるので、少なくとも搭載する発光素子が出射する光が透過するように構成されていればよい。発光素子から出射される光の波長に対して、当該波長の光の透過率が70%以上、好ましくは90%以上の透過率を有する絶縁材料で蓋体3を構成すればよい。
蓋体3を構成する絶縁材料としては、例えばサファイア等の透明セラミック材料、ガラス材料または樹脂材料等を用いることができる。ガラス材料としては、ホウケイ酸ガラス、結晶化ガラス、石英、ソーダガラス等を用いることができる。樹脂材料としては、ポリカーボネート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。
蓋体3は、手指等の被計測物が直接接触するため、所定の強度を要する。蓋体3の強度は、構成する材料の強度、板厚みによる。上記のように透明セラミック材料やガラス材料であれば、所定の厚み以上とすることで十分な強度が得られる。蓋体3の構成材料としてガラス材料を用いる場合は、例えば厚みを0.05mm〜5mmとすればよい。
接地導体層4は、蓋体3の、第1収容凹部20aおよび第2収容凹部20bに対向する側の主面、すなわち手指が接触する側の主面とは反対側の主面に配設され、接地電位に接続される。接地導体層4には、発光素子から出射される光が通過する第1開口4aおよび受光素子が受光する光が通過する第2開口4bが設けられている。
接地導体層4は、不要な光が第1収容凹部20aから外部に出射しないよう、また不要な光が外部から第2収容凹部20bに進入しないように、第1開口4aおよび第2開口4bが設けられたマスク部材として機能する。
さらに、接地導体層4は、外部から到来する電磁波が第1収容凹部20aおよび第2収容凹部20bに進入することを抑制するための電磁シールドとしても機能する。電磁波が第1収容凹部20aおよび第2収容凹部20bに進入すると、例えば計測センサ用パッケージ1と発光素子および受光素子とを電気的に接続するボンディングワイヤがアンテナとなって進入した電磁波を受信してしまいノイズ発生の原因となる。蓋体3の主面に、光を通過させるための第1開口4aおよび第2開口4bを除いて接地導体層4を設けることで、電磁波の進入を抑制し、ノイズの発生を低減することができる。
このように、蓋体3に接地導体層4を設けることで、ノイズによる影響を抑制し、計測精度を向上させることができる。
接地導体層4は、透明セラミック材料またはガラス材料からなる蓋体3の表面に、例えば、Cr、Ti、Al、Cu、Co、Ag、Au、Pd、Pt、Ru、Sn、Ta、Fe、In、Ni、Wなどの金属及びこれらの合金等の金属材料を蒸着、スパッタ、焼付け等による金属薄膜として形成することができる。接地導体層4の層厚みは、例えば、500Å〜4000Åである。
本実施形態の計測センサ用パッケージ1を備える計測センサによれば、発光素子を第1開口4aに近接して配置することができ、かつ受光素子と第2開口4bとの間に充分な距離を確保することができる。それによって、発光素子から出射した光が接地導体層4によって過度に遮光されることを抑制することができるとともに、受光素子を所定の角度範囲で入射する散乱光だけを受光するように配置することができる。したがって、本実施形態の計測センサ用パッケージ1を備える計測センサによれば、高効率かつ高精度の計測が可能になる。
第1収容凹部20aおよび第2収容凹部20bは、開口形状が、例えば、円形状、正方形状、矩形状等であってもよく、その他の形状であってもよい。第1収容凹部20aおよび第2収容凹部20bは、基体2の主面に平行な断面の断面形状が深さ方向に一様な形状であってもよいが、所定の深さまでは、断面形状が開口形状と同じで一様であり、所定の深さ以降は、断面形状が小さくなって底部まで一様であるような、段差付きの凹部であってもよい。
第1収容凹部20aの大きさ、第2収容凹部20bの大きさは、収容しようとする発光素子および受光素子の大きさに応じて適宜設定すればよく、例えば、発光素子として、垂直共振器面発光レーザ素子(VCSEL)を用いる場合、第1収容凹部20aの開口は、その形状が、例えば矩形であっても正方形であってもよい。第1収容凹部20aの開口は、例えば、縦方向長さが0.3mm〜1.5mmであり、横方向長さが0.3mm〜2.0mmである。また、受光素子として、面入射フォトダイオードを用いる場合、第2収容凹部20bの開口は、その形状が、例えば矩形であっても正方形であってもよい。第2収容凹部20bの大きさは、例えば、縦方向長さが0.5mm〜2.0mmであり、横方向長さが0.5mm〜2.5mmである。
本実施形態では、図3の断面図に示すように、第1収容凹部20aの内側面に、一方主面20cの面方向に延びる第1段差面20fを有する第1段差部20hが設けられ、第2収容凹部20bの内側面に、一方主面20cの面方向に延びる第2段差面20gを有する第2段差部20iが設けられる。第1段差面20f上に、発光素子と電気的に接続される第1接続パッド23aが配設され、第2段差面20g上に、受光素子と電気的に接続される第2接続パッド23bが配設される。第1接続パッド23aは、第1段差面20fの全面に配設されても一部分のみに配設されてもよく、第2接続パッド23bは、第2段差面20gの全面に配設されても一部分のみに配設されてもよい。本実施形態では、第1接続パッド23aは、第1段差面20fの略全面に配設され、第2接続パッド23bは、第2段差面20gの略全面に配設される。
このような第1接続パッド23aおよび第2接続パッド23bを設けることによって、計測センサ用パッケージ1と発光素子および受光素子とを、例えばボンディングワイヤによって、容易に、電気的に接続することができる。
計測センサ用パッケージ1を小型化するためには、第1段差面20fおよび第2段差面20gの面積を小さくすることが望ましいが、発光素子と第1接続パッド23aとを電気的に接続する接続加工を容易に行うためには、第1収容凹部23aの深さが深くなるほど、基体2の厚み方向における第1段差面20fの深さを深くするとともに、第1段差面20fの面積を大きくするのが望ましい。同様に、受光素子と第2接続パッド23bとを電気的に接続する接続加工を容易に行うためには、第2収容凹部23bの深さが深くなるほど、基体2の厚み方向における第2段差面20gの深さを深くするとともに、第2段差面20gの面積を大きくするのが望ましい。前述のように、高精度の計測を行うためには、第1収容凹部20aの深さを第2収容凹部20bの深さよりも浅くすることが望ましいため、本実施形態では、第1段差面20fの面積を第2段差面20gの面積よりも小さくしている。
第1段差面20fおよび第2段差面20gの形状は、例えば正方形状、矩形形状等であってもよく、その他の形状であってもよい。第1段差面20fの大きさは、例えば縦方向長さが0.3mm〜1.5mmであり、横方向長さは0.1mm〜1.0mmである。第2段差面20gの大きさは、例えば縦方向長さが0.5mm〜2.0mmであり、横方向長さは0.2mm〜1.5mmである。第1接続パッド23aおよび第2接続パッド23bの形状は、例えば正方形状、矩形形状等であってもよく、その他の形状であってよい。第1接続パッド23aの大きさは、例えば縦方向長さが0.1mm〜1.5mmであり、横方向長さは0.1mm〜1.0mmである。第2接続パッド23bは、例えば縦方向長さが0.2mm〜2.0mmであり、横方向長さは0.1mm〜1.5mmである。
血流の計測等に用いられる計測センサでは、信号導体を伝送される電気信号が比較的弱く、計測センサの内部に生じる寄生容量によって受ける影響が大きい。例えば、発光素子側で生じる寄生容量と、受光素子側で生じる寄生容量との差が、計測精度を悪化させる原因となる。本実施形態では、平面視における、第1接続パッド23aの表面積、および第2接続パッド23bの表面積に応じて、基体2の厚み方向における、第1接続パッド23aと接地導体層4との間の距離h1、および第2接続パッド23bと接地導体層4との間の距離h2を設定することによって、接地導体層4と第1接続パッド23aとの間に形成される寄生容量と、接地導体層4と第2接続パッド23bとの間に形成される寄生容量との差を低減し、計測精度の悪化を抑制している。例えば、h1は0.05mm〜0.7mmであり、h2は0.1mm〜1.2mmである。
血流の計測等に用いられる計測センサでは、受光素子による受光量が比較的小さく、受光素子から出力される受光信号は弱いので、発光素子の駆動信号から発生する電磁波が受光素子の受光信号に混入する電気的なクロストークが、ノイズを発生させる原因となる。特に、計測センサ用パッケージと受光素子とを電気的に接続するための接続パッドは、通常、大きな表面積を有するので、発光素子の駆動信号から発生する電磁波が進入し易い。本実施形態では、図1に示すように、平面視で、第1底面20dの中心と第2底面20eの中心とを結ぶ方向において、第1接続パッド23aが配設される第1段差面20fおよび第2接続パッド23bが配設される第2段差面20gが外方に配置されるので、本実施形態の計測センサ用パッケージ1を備える計測センサは、発光素子の駆動信号から発生する電磁波が受光素子の受光信号に混入する電気的なクロストークを抑制することが可能になる。
また、本実施形態では、図1に示すように、平面視で、第1底面20dの中心と第2底面20eの中心とを結ぶ方向において、発光素子が実装される第1底面20dが、第1段差面20fよりも内方に配置され、受光素子が実装される第2底面20eが、第2段差面20gよりも内方に配置されるので、本実施形態の計測センサ用パッケージ1を備える計測センサによれば、発光素子と第1開口4aとの間の距離の自由度、および受光素子と第2開口4bとの間の距離の自由度を向上させることができ、それによって、計測の効率、および精度を一層向上させることができる。
また、自発光型の計測センサでは、発光素子から出射される光が、被計測物によって散乱されて、受光素子に至るまでの光路長が短くなるほど、受光素子が受光する被計測物からの散乱光の光量が増加する。本実施形態の計測センサ用パッケージ1を備える計測センサでは、発光素子と受光素子とが内方に配置されるので、発光素子と受光素子との間の光路長を短くして、計測センサの感度を向上させることが可能になる。
さらに、本実施形態の計測センサ用パッケージ1を備える計測センサでは、平面視したときに、発光素子と受光素子との間に光を遮断する十分な厚みの遮光壁が設けられ、かつ発光素子と受光素子とが遮光壁に近接して配置された構造とすることが可能になるので、発光素子の光を受光素子が直接受光することによる光学的クロストークを抑制することが可能になる。
本実施形態では、基体2が、接地ビア導体21をさらに有する。接地ビア導体21は、平面視で、基体2の、第1収容凹部20aおよび第2収容凹部20bよりも外方に配設され、接地電位に接続される。接地ビア導体21は、基体2を構成する各誘電体層を厚み方向に貫通する貫通導体が、基体2の厚み方向に複数連なって構成される。接地ビア導体21は、本実施形態では、例えば図2に示すように、基体2全体を厚み方向に貫通しており、平面視では、各誘電体層に設けられる貫通導体の位置が同一である。すなわち、接地ビア導体21は、基体2の一方主面20cから他方主面にまで一直線状に貫通しており、接地ビア導体21の一方端面21aが、基体2の一方主面20cに露出し、他方端面21bが、基体2の他方主面に露出している。
接地ビア導体21の一方端面21aは、後述の環状接地導体層22を介して蓋体3に配設された接地導体層4に接続される。接地ビア導体21の他方端面21bは、基体2の他方主面に配設される外部接続端子24に接続される。このような接地ビア導体21によって、蓋体3に配設された接地導体層4、環状接地導体層22および接地ビア導体21には、電気的に接続され、同じ接地電位が与えられる。
このような接地ビア導体21を設けることによって、計測センサ用パッケージ1を備える計測センサで血流を計測する場合に、被計測物の一つである人の手指が計測センサに接触したときに放出される電荷は、基体2の一方主面20cから接地ビア導体21を流れ、基体2の下方主面に到達し、外部へと放出される。
接地ビア導体21が設けられていない従来の構成では、人から放出された電荷は、発光素子または受光素子と計測センサ用パッケージ1とを電気的に接続する接続体、例えばボンディングワイヤ等から信号配線導体に進入しノイズを引き起こす。
本実施形態では、接地ビア導体21によって、人から放出された電荷が流れ易い経路を計測センサ用パッケージ1内に形成することで、この経路に電荷を誘導して外部へと電荷を逃がし、信号配線導体に進入することを防止している。
本実施形態において、接地ビア導体21は、基体2の外形に沿って、配設される。基体2は、矩形状の外形を有するので、接地ビア導体21も、矩形状に沿って配設される。すなわち、基体2の外形線を構成する各辺から接地ビア導体21までの距離が同様の距離となるように、各接地ビア導体21が配設されている。図1の平面図においては、接地ビア導体21の配設位置を破線の円で示している。例えば、図2の断面図において示される3つの接地ビア導体21は、図1において、図面向かって上側に横方向に等間隔で並ぶ3つの接地ビア導体21であり、各接地ビア導体21の中心を結ぶ仮想直線が基体2の長辺に平行となるように配設されている。他の接地ビア導体21についても同様であり、例えば、図1において、図面向かって左側に上下方向に並ぶ2つの接地ビア導体21は、中心を結ぶ仮想直線が基体2の短辺に平行となるように配設されており、図面向かって下側に横方向に並ぶ2つの接地ビア導体21は、中心を結ぶ仮想直線が基体2の長辺に平行となるように配設されている。
本実施形態では、合計5つの接地ビア導体21が、第1収容凹部20aおよび第2収容凹部20bよりも外方で、第1収容凹部20aおよび第2収容凹部20bを取り囲むように、かつ基体2の外形である矩形に沿って配設されている。矩形の4つの隅部のうち3つの隅部には、接地ビア導体21がそれぞれ配設されており、残り1つの隅部には、配設されていない。
接地ビア導体21の配設位置は、第1収容凹部20aとの距離および第2収容凹部20bとの距離に基づいて決定されるのが好ましい。前述のように、接地ビア導体21には、信号配線導体に進入してしまうとノイズの原因となる不要な電荷が流れるので、接地ビア導体21と、計測センサ用パッケージ1に形成される信号配線導体23(基体2内およびボンディングワイヤを含む)との距離を予め定める距離以上に大きくして、接地ビア導体21から信号配線導体23に不要な電荷が進入してしまうことを低減している。
本実施形態で矩形の4つの隅部のうち、第1収容凹部20aまたは第2収容凹部20bとの距離、言い換えれば信号配線導体23との距離が予め定める距離よりも小さくなる位置には接地ビア導体21を設けないほうが好ましい。本実施形態において、1つの隅部に、接地ビア導体21を設けていないのは、当該隅部と信号配線導体23との距離が予め定める距離よりも小さいからである。
接地ビア導体21は、上記のように不要な電荷を誘導してパッケージ外部に放出させるために、電気抵抗を低くすることが好ましく、電気抵抗を低くするためには、直径をより大きくすることが好ましい。しかしながら、直径を大きくし過ぎると、信号配線導体との距離が小さくなり、接地ビア導体21から信号配線導体に不要な電荷が進入するおそれがある。したがって、これらを考慮して、例えば、接地ビア導体21の大きさは、直径Dが、10μm〜500μmとすればよい。
環状接地導体層22は、基体2の一方主面20cに、第1収容凹部20aの開口および第2収容凹部20bの開口を取り囲むように環状に設けられる導体層である。この環状の導体層は、基体2の一方主面20cに露出した接地ビア導体21の各一方端面21aを電気的に接続する。環状接地導体層22は、蓋体3を基体2に接合するために、接地導体層4とはんだ、Au-Sn、ろう材等の金属溶湯物系接合材、またはエポキシ系、シリコン系、熱可塑性樹脂、異方性導電樹脂、導電性エポキシ樹脂、導電性シリコン樹脂等の樹脂系接合材によって接合される。
複数の接地ビア導体21は、基体2の外形である矩形に沿って配設されており、各一方端面21aも基体2の外形である矩形に沿って、基体2の一方主面20cに露出している。本実施形態では、図1に示すように、各一方端面21aを電気的に接続するための環状接地導体層22も、これらの配置位置に応じて、矩形状に設けている。環状接地導体層22は、接地ビア導体21の一方端面21aと接続するランド部分22aと、各ランド部分を接続する接続線部分22bとからなる。ランド部分22aは、接地ビア導体21の一方端面21aと確実に、かつ低抵抗で接続するために、一方端面21aよりも大きく形成されている。例えば、接地ビア導体21の一方端面21aの直径Dに対して、ランド部分22aは、1×D〜3×D(直径の1〜3倍)の幅または直径を有する。接続線部分22bは、ランド部分22aよりも細く、一定の線幅に形成されている。
信号配線導体23は、発光素子または受光素子と電気的に接続され、発光素子に入力される電気信号が伝送され、受光素子から出力される電気信号が伝送される。本実施形態における信号配線導体23は、発光素子または受光素子と接続する接続部材であるボンディングワイヤと、ボンディングワイヤが接続される第1接続パッド23aおよび第2接続パッド23bと、第1接続パッド23aおよび第2接続パッド23bに電気的に接続して接続パッドの直下から基体2の他方主面にまで一直線状に延びる信号ビア導体23cと、外部接続端子24とから成る。外部接続端子24は、計測センサ用パッケージ1を備える計測センサが実装される外部実装基板の接続端子とはんだ等の接合材料によって電気的に接続される。
環状接地導体層22および外部接続端子24は、はんだ等の接合材との濡れ性を向上させ、耐食性を向上させるために、例えば、厚さが0.5〜10μmのニッケル層と厚さが0.5〜5μmの金層とをめっき法によって順次被着させてもよい。
基体2は、発光素子および受光素子を収容可能であり、接地ビア導体21および信号配線導体23等を備えるものであれば、基体2の誘電体層がセラミック絶縁材料からなり、接地ビア導体21および信号配線導体23等が導体材料からなるセラミック配線基板であってもよく、誘電体層が樹脂絶縁材料からなる有機配線基板であってもよい。
基体2が、セラミック配線基板の場合、セラミック材料から成る誘電体層に各導体が形成される。セラミック配線基板は、複数のセラミック誘電体層から形成される。
セラミック配線基板で用いられるセラミック材料としては、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、窒化珪素質焼結体またはガラスセラミックス焼結体等が挙げられる。
また、基体2が、有機配線基板の場合、有機材料から成る絶縁層に配線導体が形成される。有機配線基板は、複数の有機誘電体層から形成される。
有機配線基板は、例えば、プリント配線基板、ビルドアップ配線基板またはフレキシブル配線基板等の誘電体層が有機材料から成るものであればよい。有機配線基板で用いられる有機材料としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂またはフッ素系樹脂等が挙げられる。
次に、本発明の他の実施形態について説明する。図4は、図2に示した断面図に対応する計測センサ用パッケージ1Aの断面図であり、図5は、図3に示した断面図に対応する計測センサ用パッケージ1Aの断面図である。
本実施形態の計測センサ用パッケージ1Aは、上記の実施形態の計測センサ用パッケージ1に対して、基体2が、さらに内部接地導体層25を有する点で異なっており、その他については、同様の構成であるので、同様の構成には計測センサ用パッケージ1と同じ参照符号を付して詳細な説明は省略する。
内部接地導体層25は、接地電位に接続され、基体2の、第2収容凹部20bの底部と他方主面との間に配設される。内部接地導体層25は、接地ビア導体21と、基体2の内部において電気的に接続されており、接地電位が付与される。
血流の計測等に用いられる計測センサでは、受光素子による受光量が比較的小さいので、受光素子から出力される電気信号は弱く、発光素子に入力される発光制御用の電気信号に比べてノイズによって受ける影響が大きい。
計測センサは、外部実装基板上に実装されて使用されるが、この外部実装基板の配線を流れる信号等に起因する電磁波が、基体2の他方主面側から計測センサ用パッケージ1内に進入して、信号配線導体23を流れる信号にノイズが混入するおそれがある。
上記のように、特に受光素子側は、ノイズの影響を大きく受けるので、外部実装基板からのノイズの影響を抑制するために、受光素子が収容される第2収容凹部20bの底部と他方主面との間に内部接地導体層25を設けることで、第2収容凹部20bと外部実装基板との間に内部接地導体層25が位置し、電磁シールドとして機能する。
本実施形態の計測センサ用パッケージ1Aは、内部接地導体層25を有することで、ノイズによる影響を抑制し、計測精度をさらに向上させることができる。
計測センサ用パッケージ1の製造方法について説明する。まず、基体2を公知の多層配線基板の製造方法と同様にして作製する。基体2が、セラミック配線基板であり、セラミック材料がアルミナである場合は、まずアルミナ(Al2O3)やシリカ(SiO2)、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)等の原料粉末に適当な有機溶剤、溶媒を添加混合して泥漿状とし、これを周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等によってシート状に成形してセラミックグリーンシート(以下、グリーンシートともいう)を得る。その後、グリーンシートを所定形状に打ち抜き加工するとともに、タングステン(W)とガラス材料等の原料粉末に有機溶剤、溶媒を添加混合して金属ペーストとし、これをグリーンシート表面にスクリーン印刷等の印刷法でパターン印刷する。また、ビア導体は、グリーンシートに貫通孔を設け、スクリーン印刷等によって金属ペーストを貫通孔に充填させる。こうして得られたグリーンシートを複数枚積層し、これを約1600℃の温度で同時焼成することによって基体2が作製される。
一方、ガラス材料を、切削、切断等により所定の形状に切り出した蓋体3を準備し、主面上に、蒸着、スパッタ、焼付け等によって金属薄膜からなる接地導体層4を形成する。このとき、フォトリソ(ウェットエッチング)法、ドライエッチング法等によって金属薄膜にパターン加工することにより、第1開口4aおよび第2開口4bを形成することができる。
次に、本発明の他の実施形態である計測センサ100について説明する。図6は、計測センサ100の構成を示す断面図である。計測センサ100は、上記の計測センサ用パッケージ1,1Aと、第1収容凹部20aに収容される発光素子30と、第2収容凹部20bに収容される受光素子31と、を含む。発光素子30は、第1収容凹部20aの第1底面20dに実装され、受光素子31は、第2収容凹部20bの第2底面20eに実装される。計測センサ100は、ボンディングワイヤ32で、発光素子30と第1接続パッド23aとを接続し、受光素子31と第2接続パッド23bとを接続した後、蓋体3を基体2に接合して得られる。
発光素子30は、VCSEL等の半導体レーザ素子を用いることができ、受光素子31は、シリコンフォトダイオード、GaAsフォトダイオード、InGaAsフォトダイオード、ゲルマニウムフォトダイオード等の各種フォトダイオードを用いることができる。発光素子30および受光素子31は、被計測物の種類、計測するパラメータの種類等により適宜選択すればよい。
血流を測定する場合は、例えば、光のドップラー効果を利用して測定するために、発光素子30であるVCSELとして波長が780nmのレーザ光を出射可能なものであればよい。その他の測定を行う場合は、測定目的に応じた波長のレーザ光を出射する発光素子30を選択すればよい。受光素子31は、受光する光が発光素子30から出射されるレーザ光から波長の変化が無い場合、発光素子30の出射光を受光できるものであればよく、波長の変化が有る場合、変化後の波長の光を受光できるものであればよい。
本実施形態では、例えば、ボンディングワイヤ32によって、発光素子30と第1接続パッド23aとが電気的に接続され、受光素子31と第2接続パッド23bとが電気的に接続されるが、フリップチップ接続、バンプ接続、異方性導電フィルムを用いた接続等他の接続方法であってもよい。
計測センサ100は、外部実装基板に実装されて使用される。外部実装基板には、例えば、発光素子30の発光を制御する制御素子、受光素子31の出力信号から血流速度等を算出する演算素子等も実装される。
測定する場合には、被計測物として手指の指先を蓋体3の表面に接触させた状態で、外部実装基板から外部接続端子24を介して発光素子制御電流が計測センサ100に入力され、信号ビア導体23c、第2接続パッド23bを通って発光素子30に入力されて発光素子30から計測用の光が出射される。出射された光が、第1開口4aを通過し、蓋体3を透過して指先に照射されると、血液中の血球細胞で散乱される。蓋体3を透過し、第2開口4bを通過した散乱光が、受光素子31で受光されると、受光量に応じた電気信号が受光素子31から出力される。出力された信号は、第1接続パッド23a、信号ビア導体23cを通り、外部接続端子24を介して計測センサ100から外部実装基板へと出力される。
外部実装基板では、計測センサ100から出力された信号が、演算素子に入力され、例えば、発光素子30から出射された光である照射光の周波数と、受光素子31が受光した光である散乱光の周波数とに基づいて血流速度を算出することができる。
なお、上記では、接地ビア導体21は、基体2内で上下方向に一直線状に形成される構成としているが、基体2の一方主面20cから他方主面の外部接続端子24まで電気的に接続されていれば、一直線状でなく、基体2内で、内層配線や内部接地導体層25等によってずれて形成されていてもよい。
また、本実施形態において、環状接地導体層22は、必須構成ではなく、蓋体3に形成された接地導体層4と接地ビア導体21とを直接接合して電気的に接続するように構成してもよい。
また、内部接地導体層25は、基体2の、第2収容凹部20bの底部と他方主面との間からさらに面方向に延びて、第1収容凹部20aの底部と他方主面との間に配設されてもよい。
実施例として、図1〜図3に示した計測センサ用パッケージ1において、第1接続パッド23aと第2接続パッド23bとの間のクロストーク量をシミュレーションによって算出した。本シミュレーションにおいては、基体2、第1接続パッド23a、および第2接続パッド23b以外の構成を省略するとともに、基体2は完全導体であるとした。第1接続パッド23aの形状は、縦方向長さを1.0mmとし、横方向長さを0.5mmとした。第2接続パッド23bの形状は、縦方向長さを1.0mmとし、横方向長さを0.5mmとした。また、平面視で、第1接続パッド23aの中心と第2接続パッド23bの中心との間の距離を3.0mmとした。さらに、第1収容凹部20aの深さを1.0mmに設定し、第2収容凹部20bの深さを2.0mmに設定するとともに、基体2の厚み方向において、第1段差面20fと基体2の一方主面20cとの間の距離を0.25mmに設定し、第2段差面20gと基体2の一方主面20cとの間の距離を0.75mmに設定した。
上記の条件で、第1接続パッド23aと第2接続パッド23bとの間のクロストーク量の周波数依存性を算出した。具体的な算出方法は次のとおりである。第1接続パッド23aに電圧信号を入力したときに第2接続パッド23bから出力される電圧信号を算出し、入力した電圧信号の強度に対する出力された電圧信号の強度の比の対数に所定の係数を乗算してクロストーク量とした。また、入力電圧の周波数を1kHz〜20kHzの範囲で変化させることにより、クロストーク量の周波数依存性を算出した。本シミュレーションでは、クロストーク量の絶対値が大きいほど、第1接続パッド23aと第2接続パッド23bとの電気的遮蔽が向上されており、第1接続パッド23aと第2接続パッド23bとの間の電気的なクロストークが抑制されていると判断することができる。
比較例として、第1収容凹部20aの深さと、第2収容凹部20bの深さとが等しく、かつ基体2の厚み方向において、第1段差面20fと基体2の一方主面20cとの間の距離と、第2段差面20gと基体2の一方主面20cとの間の距離とが等しいこと以外は、実施例の計測センサ用パッケージと同様の計測センサ用パッケージにおいて、実施例のシミュレーションと同様に、第1接続パッド23aと第2接続パッド23bとの間のクロストーク量の周波数依存性を算出した。比較例では、第1収容凹部20aの深さ、および第2収容凹部20bの深さを0.5mmに設定するとともに、基体2の厚み方向において、第1段差面20fと基体2の一方主面20cとの間の距離、および第1段差面20gと基体2の一方主面20cとの間の距離を0.25mmに設定した。
図7は、実施例および比較例の結果を示す。図7(a)は、比較例の結果を示し、図7(b)は、実施例の結果を示す。図7(a)、図7(b)に示すように、実施例および比較例のいずれにおいても、クロストーク量は入力電圧の周波数に依存しないという結果が得られた。この結果は、本シミュレーションにおけるクロストーク量は、実質的に、基体2の内部に形成される、第1接続パッド23aと第2接続パッド23bとの間の電気的経路の長さだけに依存し、この電気的経路の長さが、1kHz〜20kHzの周波数帯域の電気信号に関しては、実質的に同一であることによるものと考えられる。また、図7(a)および図7(b)から、1kHz〜20kHzの周波数帯域の全域において、実施例におけるクロストーク量が、比較例におけるクロストーク量に比べて小さくなっていることがわかる。
図8は、実施例および比較例の評価結果を示す図である。評価結果として、平均クロストーク量を用いた。平均クロストーク量は、1kHz〜20kHzの周波数帯域にわたるクロストーク量の平均値とする。平均クロストーク量の絶対値が小さいほど電気的なクロストークが顕著であり、平均クロストーク量の絶対値が大きいほど電気的なクロストークが抑制されていると評価できる。図8に示すように、実施例では、比較例に比べて、電気的なクロストークが抑制されていると評価できる。
上記のように、実施例では、第1収容凹部20aの深さを第2収容凹部20bの深さよりも浅くすることにより、第1接続パッド23aと第2接続パッド23bとの間の電気的なクロストークが抑制されることがわかった。