JP6658792B2 - 炭酸バリウムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、炭酸バリウムの製造方法に関する。より詳しくは、電子材料分野をはじめとする各種分野に好適に用いることができる炭酸バリウムの製造方法に関する。
高純度炭酸バリウムは、光学ガラス、釉薬、フェライト、顔料、染料、蛍光体等の様々な分野において使用されている。中でも、電子材料分野においては、積層セラミックスコンデンサ(MLCC)の小型化・薄層化のため、微細化された高純度炭酸バリウム粒子が使用されている。
微細化した高純度炭酸バリウムとしては、例えば比表面積が30m/g〜40m/gである炭酸バリウムが知られており、このような炭酸バリウムの微細化は、結晶成長抑制剤であるクエン酸を反応系に添加し、粒子成長を抑制することで達成している。
近年は、MLCC小型化・大容量化における誘電体層の薄層化・多層化のため、炭酸バリウムのさらなる微細化が求められているが、クエン酸の添加による微細化には限界がある。このため、更なる微細化を達成することができる方法について検討されており、グルコン酸及び又はその誘導体とクエン酸とを併用することで、比表面積40m/gを越える炭酸バリウムを製造する方法が知られている(特許文献1参照)。その他の炭酸バリウム粒子の製造方法として、針状炭酸バリウム粒子粉末を含む水性スラリーを50℃以上で加熱処理する工程を有する棒状炭酸バリウム粒子粉末の製造方法(特許文献2参照)や、バリウムの水酸化物の水溶液又は懸濁液に二酸化炭素ガスを導入して炭酸化させ、得られた炭酸塩を水性媒体中でセラミック製ビーズで粉砕し、乾燥する方法(特許文献3参照)等が知られている。
特開2015−044744号公報 特開2009−114015号公報 国際公開第2008/111612号
上述のとおり、クエン酸の添加よりも更に微細な炭酸バリウムを得ることができる方法としてグルコン酸及び又はその誘導体とクエン酸とを併用する方法が知られているが、この方法では、グルコン酸及び/又はその誘導体をバリウムに対して50モル%大過剰に用いる必要があり、また、その殆どは水洗等の製造過程で流出するため、排水中のBODが高負荷となる。このため、経済的観点及びグリーンケミストリーの観点から、より効率的な製造方法の開発が求められている。
本発明は、上記現状に鑑み、比表面積が45m/gを超えるような微細な炭酸バリウムを経済的に、かつ環境への負荷も少なく製造することができる方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、微細な炭酸バリウムを経済的に、かつ環境への負荷も少なく製造する方法について検討したところ、水酸化バリウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、酢酸バリウム、及び、酸化バリウムからなる群より選択される少なくとも1種のバリウム化合物に対して、クエン酸及び/又はその塩を添加する工程、二酸化炭素及び/又は炭酸塩化合物を反応させる工程、及び、所定の構造の多塩基カルボン酸、その酸無水物又はその塩の少なくとも一種を添加する工程、の3つの工程を含み、かつ、クエン酸及び/又はその塩と、多塩基カルボン酸、その酸無水物又はその塩の少なくとも一種とを所定の割合で使用する製造方法により炭酸バリウムを製造すると、比表面積が45m/gを超えるような微細で、かつ、アスペクト比の小さい炭酸バリウムを、グルコン酸及び又はその誘導体とクエン酸とを併用する方法に比べて経済的に、かつ環境への負荷も少なく製造することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、炭酸バリウムを製造する方法であって、
該製造方法は、水酸化バリウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、酢酸バリウム、及び、酸化バリウムからなる群より選択される少なくとも1種のバリウム化合物に対して、(a)クエン酸及び/又はその塩を添加する工程、(b)二酸化炭素及び/又は炭酸塩化合物を反応させる工程、及び、
(c)下記式(1):
HOOC−X−(COOH) ・・・・(1)
(式中、Xは、2価又は3価の連結基を表し、該連結基は、置換基として水酸基を有していてもよい炭素数1又は2の飽和炭化水素基、炭素数2の不飽和炭化水素基、又は、ベンゼン環由来の基を表す。nは、1又は2を表す。)で表される多塩基カルボン酸、その酸無水物又はその塩の少なくとも一種を添加する工程を含み、
上記バリウム化合物中のバリウム原子100モル%に対する、(a)クエン酸及び/又はその塩の添加モル%Aと、(c)前記式(1)で表される多塩基カルボン酸、その酸無水物又はその塩の少なくとも一種の添加モル%Bとが、下記式(I)及び(II)を満たすことを特徴とする炭酸バリウムの製造方法である。
6.0≦A+B≦16・・・・(I)
0.01≦A/B≦7.0・・・(II)
上記(a)クエン酸及び/又はその塩の添加量は、前記バリウム化合物中のバリウム原子100モル%に対して0.1〜9.0モル%であることが好ましい。
上記バリウム化合物に対して、(a)クエン酸及び/又はその塩、及び、(c)前記式(1)で表される多塩基カルボン酸、その酸無水物又はその塩の少なくとも一種を添加した後に、(b)二酸化炭素及び/又は炭酸塩化合物を添加することが好ましい。
上記バリウム化合物は、水酸化バリウムであることが好ましい。
上記式(1)で表される多塩基カルボン酸は、酒石酸、コハク酸、りんご酸、マレイン酸、マロン酸、トリメリット酸のいずれかであることが好ましい。
本発明はまた、炭酸バリウムと、
クエン酸及び/又はその塩と、
下記式(1):
HOOC−X−(COOH) ・・・・(1)
(式中、Xは、2価又は3価の連結基を表し、該連結基は、置換基として水酸基を有していてもよい炭素数1又は2の飽和炭化水素基、炭素数2の不飽和炭化水素基、又は、ベンゼン環由来の基を表す。nは、1又は2を表す。)で表される多塩基カルボン酸、その酸無水物又はその塩の少なくとも一種とを含み、
該炭酸バリウムは、BET法による比表面積が45m/gより大きく、かつ、粒子のアスペクト比が1〜1.50であることを特徴とする炭酸バリウム組成物でもある。
上記炭酸バリウム組成物に含まれるバリウム原子のモル数に対する、クエン酸及び/又はその塩と前記式(1)で表される多塩基カルボン酸、その酸無水物又はその塩の少なくとも一種との合計モル数の割合が、6.0〜16.0モル%であることが好ましい。
本発明の炭酸バリウムの製造方法は、多量の結晶成長抑制剤を使用することなく微細で、アスペクト比の小さい炭酸バリウムを製造することができる、経済的かつ環境への負荷の少ない製造方法である。
また本発明の炭酸バリウム組成物は、微細かつアスペクト比の小さい炭酸バリウムを含むことから、各種用途、中でも、積層セラミックコンデンサ(MLCC)等の電子材料に好適に用いることができる。
実施例1等で炭酸バリウムの製造に用いた反応装置の概略図である。 実施例1で製造した炭酸バリウムの電子顕微鏡写真である。 実施例2で製造した炭酸バリウムの電子顕微鏡写真である。 実施例3で製造した炭酸バリウムの電子顕微鏡写真である。 実施例4で製造した炭酸バリウムの電子顕微鏡写真である。 実施例5で製造した炭酸バリウムの電子顕微鏡写真である。 実施例6で製造した炭酸バリウムの電子顕微鏡写真である。 実施例7で製造した炭酸バリウムの電子顕微鏡写真である。 実施例8で製造した炭酸バリウムの電子顕微鏡写真である。 実施例9で製造した炭酸バリウムの電子顕微鏡写真である。 実施例10で製造した炭酸バリウムの電子顕微鏡写真である。 実施例11で製造した炭酸バリウムの電子顕微鏡写真である。 実施例12で製造した炭酸バリウムの電子顕微鏡写真である。 実施例13で製造した炭酸バリウムの電子顕微鏡写真である。 実施例14で炭酸バリウムの製造に用いた反応装置の概略図である。 実施例14で製造した炭酸バリウムの電子顕微鏡写真である。 炭酸バリウムの市販品であるBW−KH30の電子顕微鏡写真である。 比較例1で製造した炭酸バリウムの電子顕微鏡写真である。 比較例2で製造した炭酸バリウムの電子顕微鏡写真である。 比較例3で製造した炭酸バリウムの電子顕微鏡写真である。 比較例4で製造した炭酸バリウムの電子顕微鏡写真である。 比較例5で製造した炭酸バリウムの電子顕微鏡写真である。 比較例6で製造した炭酸バリウムの電子顕微鏡写真である。
以下、本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
1.炭酸バリウムの製造方法
本発明の炭酸バリウムの製造方法は、水酸化バリウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、酢酸バリウム、及び、酸化バリウムからなる群より選択される少なくとも1種のバリウム化合物に対して、(a)クエン酸及び/又はその塩を添加する工程、(b)二酸化炭素及び/又は炭酸塩化合物を反応させる工程、及び、(c)下記式(1):
HOOC−X−(COOH) ・・・・(1)
(式中、Xは、2価又は3価の連結基を表し、該連結基は、置換基として水酸基を有していてもよい炭素数1又は2の飽和炭化水素基、炭素数2の不飽和炭化水素基、又は、ベンゼン環由来の基を表す。nは、1又は2を表す。)で表される多塩基カルボン酸、その酸無水物又はその塩の少なくとも一種(以下、式(1)で表される多塩基カルボン酸等と記載)を添加する工程を含み、上記バリウム化合物中のバリウム原子100モル%に対する、(a)クエン酸及び/又はその塩の添加モル%Aと、(c)前記式(1)で表される多塩基カルボン酸、その酸無水物又はその塩の少なくとも一種の添加モル%Bとが、下記式(I)及び(II)を満たすことを特徴とする。
6.0≦A+B≦16・・・・(I)
0.01≦A/B≦7.0・・・(II)
本発明の炭酸バリウムの製造方法では、微細でかつアスペクト比の小さい炭酸バリウムを得ることができ、また、上記特許文献1に記載のグルコン酸及び又はその誘導体とクエン酸とを併用する方法のような多量の結晶成長抑制剤の添加を必要としないため、経済的であり、また廃液の量も少ないため、環境への負荷も小さい。
本発明の炭酸バリウムの製造方法では、上記のバリウム化合物や、式(1)で表される多塩基カルボン酸等として、それぞれ1種の化合物を用いてもよく、2種以上の化合物を用いてもよい。
なお、式(1)で2価又は3価の連結基を表すXにおける「ベンゼン環由来の基」とは、ベンゼン環から水素原子を2個又は3個除いてできる2価又は3価の基を意味する。
本発明の炭酸バリウムの製造方法に用いられるバリウム化合物は、水溶性であれば特に制限されず、水酸化バリウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、酢酸バリウム、酸化バリウムの1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも水酸化バリウム又は酸化バリウムが好ましい。より好ましくは、水酸化バリウムである。
本発明の炭酸バリウムの製造方法において使用するクエン酸及び/又はその塩や式(1)で表される多塩基カルボン酸等の添加量は、上述のとおり、バリウム化合物中のバリウム原子100モル%に対する、(a)クエン酸及び/又はその塩の添加モル%Aと、(c)前記式(1)で表される多塩基カルボン酸、その酸無水物又はその塩の少なくとも一種の添加モル%Bとが、下記式(I)及び(II)を満たすものである。これらの式を満たすようにクエン酸及び/又はその塩と式(1)で表される多塩基カルボン酸等とを用いることで、微細でかつアスペクト比の小さい炭酸バリウムを、より少ないクエン酸及び/又はその塩や式(1)で表される多塩基カルボン酸等の添加量で効率的に製造することができる。
6.0≦A+B≦16・・・・(I)
0.01≦A/B≦7.0・・・(II)
バリウム化合物中のバリウム原子100モル%に対する、(a)クエン酸及び/又はその塩の添加モル%Aと、(c)式(1)で表される多塩基カルボン酸等の添加モル%Bとの合計(A+B)が6.0未満であると、粒子径や形状の制御ができず反応中に粒子が成長する傾向が見られる。一方、バリウム化合物中のバリウム原子100モル%に対する、(a)クエン酸及び/又はその塩の添加モル%Aと、(c)式(1)で表される多塩基カルボン酸等の添加モル%Bとの合計(A+B)が16を超えると、添加量に対する粒子形状制御効果が飽和する場合があり、それ以上加えても製造コストが高くなる点から好ましくない。バリウム化合物中のバリウム原子100モル%に対する、(a)クエン酸及び/又はその塩の添加モル%Aと、(c)式(1)で表される多塩基カルボン酸等の添加モル%Bとの合計(A+B)の下限値は、より好ましくは、7.0以上であり、更に好ましくは、8.0以上である。また上限値は、より好ましくは、14.0以下であり、更に好ましくは、13.0以下である。
また、バリウム化合物中のバリウム原子100モル%に対する、(a)クエン酸及び/又はその塩の添加モル%Aと、(c)式(1)で表される多塩基カルボン酸等の添加モル%Bとの比(A/B)が、0.01未満であると、粒子径や形状の制御ができず反応中に粒子が成長する傾向が見られる。一方、バリウム化合物中のバリウム原子100モル%に対する、(a)クエン酸及び/又はその塩の添加モル%Aと、(c)式(1)で表される多塩基カルボン酸等の添加モル%Bとの比(A/B)が、7.0を超えると、添加する多塩基カルボン酸等の相対比率が下がり粒子形状制御効果が低下する。
バリウム化合物中のバリウム原子100モル%に対する、(a)クエン酸及び/又はその塩の添加モル%Aと、(c)式(1)で表される多塩基カルボン酸等の添加モル%Bとの比(A/B)の下限値は、より好ましくは、0.2以上であり、更に好ましくは、0.5以上である。また上限値は、より好ましくは、6.0以下であり、更に好ましくは、5.0以下である。
本発明の炭酸バリウムの製造方法は、上記(a)〜(c)の3つの工程を含むものであればよいが、バリウム化合物に対して、クエン酸及び/又はその塩、及び、前記式(1)で表される多塩基カルボン酸等を添加した後に、二酸化炭素及び/又は炭酸塩化合物を添加することが好ましい。すなわち、上記(a)と(c)の工程を行った後に(b)の工程を行うことが好ましい。そのような順番で行うことで、より微細で、かつアスペクト比のより小さい炭酸バリウムを得ることができる。
(a)と(c)の工程を行った後に(b)の工程を行うことで、得られる炭酸バリウムがより微細で、かつアスペクト比の小さいものとなる原理は明らかではないが、クエン酸及び/又はその塩と共添加することになる多塩基カルボン酸のカルボキシル基間の炭素数(式(1)におけるXの炭素数)に起因すると考えられる。一般的に炭酸バリウムは共存イオン非存在下ではアラゴナイト型のC軸方向へ伸びた針状結晶となる。媒晶剤であるクエン酸の単独添加では、炭酸バリウムの核発生後の結晶成長を阻害し、過飽和度が増大されて微細な粒子が得られる一方で、C軸方向の成長は抑えきれない。この時、カルボキシル基間の連結部分の構造が小さく、カルボキシル基間の距離が近い多塩基カルボン酸が共存すると、C軸方向へ成長している結晶の特定面へ選択的に吸着・錯形成して表面エネルギーを変化させることで、クエン酸の核形成増大効果とC軸方向の成長抑制効果が得られ、これらの相乗効果によって炭酸バリウムがより微細化すると推定される。
本発明の炭酸バリウムの製造方法における、(a)クエン酸及び/又はその塩の添加量は、炭酸バリウム製造の原料として使用するバリウム化合物中のバリウム原子100モル%に対して0.1〜9.0モル%であることが好ましい。このような割合でクエン酸及び/又はその塩を使用することで、より微細で、かつアスペクト比の小さい炭酸バリウムを製造することができる。クエン酸及び/又はその塩の添加量が炭酸バリウム製造の原料として使用するバリウム化合物中のバリウム原子100モル%に対して0.1モル%未満であると、粒子径や形状の制御ができず反応中に粒子が成長する傾向が見られる。一方、クエン酸及び/又はその塩の添加量が炭酸バリウム製造の原料として使用するバリウム化合物中のバリウム原子100モル%に対して9.0モル%を超えると、添加量に対する粒子形状制御効果が飽和する傾向があり、それ以上加えても製造コストが高くなる点から好ましくない。クエン酸及び/又はその塩の添加量は、より好ましくは、バリウム化合物中のバリウム原子100モル%に対して3.0〜8.8モル%であり、更に好ましくは、4.0〜8.5モル%である。
本発明の炭酸バリウムの製造方法における、(c)式(1)で表される多塩基カルボン酸等の添加量は、本発明の炭酸バリウムの製造方法に原料として使用するバリウム化合物中のバリウム原子100モル%に対して1.10〜9.90モル%であることが好ましい。このような割合で式(1)で表される多塩基カルボン酸等を使用することで、より微細で、かつアスペクト比の小さい炭酸バリウムを製造することができる。式(1)で表される多塩基カルボン酸等の添加量がバリウム化合物中のバリウム原子100モル%に対して1.10モル%未満であると、粒子径や形状の制御ができず反応中に粒子が成長する傾向が見られる。一方、式(1)で表される多塩基カルボン酸等の添加量が、バリウム化合物中のバリウム原子100モル%に対して9.90モル%を超えると、添加量に対する粒子形状制御効果が飽和する傾向があり、それ以上加えても製造コストが高くなる点から好ましくない。式(1)で表される多塩基カルボン酸等の添加量は、より好ましくは、バリウム化合物中のバリウム原子100モル%に対して1.25〜8.00モル%であり、更に好ましくは、2.00〜6.5モル%である。
本発明の炭酸バリウムの製造方法においては、バリウム原料として、水溶性バリウム化合物である、水酸化バリウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、酢酸バリウム、及び、酸化バリウムからなる群より選択される少なくとも1種のバリウム化合物を用いるが、これらの中でも、水溶液が塩基性の水酸化バリウム又は酸化バリウムのいずれかが好ましい。より好ましくは、水酸化バリウムである。上記水酸化バリウムとしては通常、無水物、一水和物、八水和物等が知られているが、無水物、水和物のうちどの水酸化バリウムを使用してもよい。市販品としては一水和物、八水和物が一般的である。また、水酸化バリウム水溶液等の溶液状のものを用いても構わない。
本発明の炭酸バリウムの製造方法において、上記式(1)で表される多塩基カルボン酸としては、上記式(1)に含まれるいずれのものであってもよいが、酒石酸、コハク酸、りんご酸、マレイン酸、マロン酸、トリメリット酸のいずれかであることが好ましい。これらの中でも、より好ましくは、酒石酸、トリメリット酸、りんご酸、マレイン酸のいずれかであり、更に好ましくは、酒石酸又はトリメリット酸である。
本発明の炭酸バリウムの製造方法において、(b)二酸化炭素及び/又は炭酸塩化合物を反応させる工程は、バリウム化合物を含む反応原料に対して、二酸化炭素及び/又は炭酸塩化合物を接触させることにより行われる。炭酸塩化合物としては、特に限定されないが、例えば、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
二酸化炭素を反応させる場合、バリウム化合物を含む反応原料が二酸化炭素に接触するようにすればよいが、バリウム化合物を含む反応原料に溶媒を添加して原料溶液とし、該原料溶液と二酸化炭素とを混合することが好ましい。
その場合、溶媒としては水性媒体であれば特に限定されないが、水、及び水と水溶性有機溶媒(メタノール、エタノール、アセトン等)との混合物等を用いることができ、好ましくは、水である。すなわち、バリウム化合物を含む反応原料水溶液と二酸化炭素とを混合して反応させることは、本発明における(b)二酸化炭素及び/又は炭酸塩化合物を反応させる工程の好適な実施形態の1つである。
上記バリウム化合物を含む反応原料水溶液と二酸化炭素とを混合して反応させる場合、反応原料水溶液のpHが12以下となるように二酸化炭素を混合して反応させることが、微細な炭酸バリウム粒子を得るうえで好ましい。より好ましくは、反応原料水溶液のpHが8以下となるように混合することであり、更に好ましくは、pHが7以下となるように混合することである。また、二酸化炭素を混合して反応させた反応原料水溶液のpHは、通常、5以上である。
上記バリウム化合物を含む反応原料水溶液と二酸化炭素とを混合して反応させる場合、これらが反応することになる限り、反応させる方法は特に制限されないが、反応原料水溶液と二酸化炭素とをポンプに吸入させて反応させる方法を用いることができる。この方法では、ポンプ内で反応原料水溶液と二酸化炭素とが十分に撹拌されるため、反応を十分に進めることができる。また、ポンプを直列に複数結合して多段階で反応させることで、より十分に反応を進めることができるとともに、多量の炭酸バリウムを効率的に製造することができるため、工業的な生産にも適する。このように、本発明における(b)の工程を反応原料水溶液と二酸化炭素と、ポンプに吸入させてポンプ内で反応させるポンプ反応により行うことは、本発明の好適な実施形態の1つである。
上記(b)二酸化炭素及び/又は炭酸塩化合物を反応させる工程において、炭酸塩化合物を使用する場合についても、バリウム化合物を含む反応原料が炭酸塩化合物に接触するようにすればよいが、バリウム化合物を含む反応原料に溶媒を添加して原料溶液とし、該原料溶液と炭酸塩化合物とを混合することが好ましい。その際の溶媒としては上記と同様のものが好ましい。
また、二酸化炭素と炭酸塩化合物の両方を用いる場合についても、原料溶液と二酸化炭素と炭酸塩化合物とを混合することが好ましい。
上記(b)二酸化炭素及び/又は炭酸塩化合物を反応させる工程において炭酸塩化合物を使用する場合、使用する炭酸塩化合物の量は、反応させるバリウム化合物に含まれるバリウム原子1モルに対して、1モル以上であることが好ましい。このような割合で炭酸塩化合物を使用することで反応を十分に進めることができる。より好ましくは、1.2モル以上である。また、経済性の点から、1.6モル以下であることが好ましい。
また、二酸化炭素と炭酸塩化合物とを併用する場合も、反応させるバリウム化合物に含まれるバリウム原子1モルに対して、二酸化炭素と炭酸塩化合物との合計のモル数が上記と同様であることが好ましい。
上記(b)二酸化炭素及び/又は炭酸塩化合物を反応させる工程における反応温度は特に限定されないが、例えば、10〜70℃であることが好ましい。このような温度で反応させることでバリウム化合物を含む反応原料と二酸化炭素及び/又は炭酸塩化合物との反応を十分に進めることができる。より好ましくは、15〜50℃であり、更に好ましくは、20〜40℃である。
本発明の炭酸バリウムの製造方法は、上記(a)〜(c)の3つの工程を含むものである限り、その他の工程を含んでいてもよい。その他の工程としては、生成した炭酸バリウムの精製工程、乾燥工程、粉砕工程等が挙げられる。
炭酸バリウムの精製工程は、ろ過、水洗等により行うことができる。
炭酸バリウムの乾燥工程における乾燥温度は、60〜200℃であることが好ましい。より好ましくは、80〜130℃である。
2.炭酸バリウム組成物
本発明の炭酸バリウムの製造方法では、微細で、かつアスペクト比の小さい炭酸バリウムと、未反応のクエン酸及び/又はその塩と上記式(1)で表される多塩基カルボン酸等とを含む組成物が得られることとなる。
このような組成物、すなわち、炭酸バリウムと、クエン酸及び/又はその塩と、下記式(1):
HOOC−X−(COOH) ・・・・(1)
(式中、Xは、2価又は3価の連結基を表し、該連結基は、置換基として水酸基を有していてもよい炭素数1又は2の飽和炭化水素基、炭素数2の不飽和炭化水素基、又は、ベンゼン環由来の基を表す。nは、1又は2を表す。)で表される多塩基カルボン酸、その酸無水物又はその塩の少なくとも一種とを含み、該炭酸バリウムは、BET法による比表面積が45m/gより大きく、かつ、粒子のアスペクト比が1〜1.50である炭酸バリウム組成物もまた、本発明の1つである。
上記炭酸バリウムの、BET法による比表面積は、50m/g以上であることが好ましい。より好ましくは、60m/g以上であり、更に好ましくは、80m/g以上である。
また、炭酸バリウム粒子のアスペクト比は、1〜1.35であることが好ましい。より好ましくは、1〜1.30である。
炭酸バリウム粒子のBET法による比表面積、アスペクト比は、後述する実施例に記載の方法で確認することができる。
本発明の炭酸バリウム組成物は、炭酸バリウム組成物に含まれるバリウム原子のモル数に対する、クエン酸及び/又はその塩と前記式(1)で表される多塩基カルボン酸、その酸無水物又はその塩の少なくとも一種との合計モル数の割合が、6.0〜16.0モル%であることが好ましい。
本発明の炭酸バリウムの製造方法において、クエン酸及び/又はその塩と上記式(1)で表される多塩基カルボン酸、その酸無水物又はその塩の少なくとも一種とを、原料となるバリウム化合物に対して最適な範囲で使用すると得られる組成物は上記割合を満たすものとなる。したがって、このような割合を満たす組成物は、特に微細で、かつアスペクト比の小さい炭酸バリウムを有する組成物であるということができる。
上記割合は、7.0〜14.0であることが好ましい。より好ましくは、8.0〜13.0である。
本発明の炭酸バリウム組成物は、炭酸バリウム組成物に含まれる炭酸バリウムとクエン酸及び/又はその塩と上記式(1)で表される多塩基カルボン酸、その酸無水物又はその塩以外のその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、溶媒、付着防止処理剤等が挙げられる。
溶媒としては、上述した本発明の炭酸バリウムの製造方法に用いることができる溶媒と同様のものが挙げられる。
付着防止処理剤としては、プロピレングリコールなどの極性溶媒等が挙げられる。
本発明の炭酸バリウムの製造方法で製造される炭酸バリウムは、微細で、かつアスペクト比の小さい炭酸バリウムを含むことから、光学ガラス、釉薬、フェライト、顔料、染料、蛍光体等の材料を始めとする各種用途に使用することができる。中でも、本発明に係る炭酸バリウムは、微細かつアスペクト比が小さく解砕性に優れているため、電子機器の構成部材であるセラミックスコンデンサなどの電子材料、固体酸化物形燃料電池の空気極材料、酸化物超伝導体材料等に好適に使用することができる。
本発明を詳細に説明するために以下に具体例を挙げるが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。特に断りのない限り、「%」及び「wt%」とは「重量%(質量%)」を意味する。なお、各物性の測定方法は以下の通りである。
各種測定は以下のようにして行った。
<電子顕微鏡観察>
透過型電子顕微鏡写真(日本電子株式会社製、JEM−2100)にて粒子の観察を行った。
<BET比表面積測定>
比表面積(%)は、全自動BET比表面積測定装置Macsorb Model HM−1200(Mountech社製)により測定した。
<アスペクト比測定>
電子顕微鏡写真からランダムに1,000個の粒子を選び、その長軸と短軸の比の平均値から求めた。
(実施例1)
水酸化バリウム・八水和物を純水に溶かした後、水酸化バリウム中のバリウムイオンに対して2.5mol%クエン酸・一水塩水溶液(和光純薬工業社製)と5mol%酒石酸水溶液(和光純薬工業社製)を、それぞれ加えた。
次に、最終的に水酸化バリウム・八水和物として72.5g/Lの濃度になるように純水で希釈し、水酸化バリウム・クエン酸・酒石酸水溶液(原料A)を調製した。その時の液温は32℃に調整した。図1に示した反応装置において、原料Aを流量400ml/分の流量でポンプP1の吸入口に投入した。同時にpH6.0〜7.0になるようにポンプP1への原料Aの流路に炭酸ガスを4.2L/分で吹き込み反応を実施した。反応装置は図1に示した通りマグネットポンプP1、P2(株式会社イワキ製、MD−10K−N)及びP3(株式会社イワキ製、MD−15R−N)を3段に接続したものを用いた。
反応初期の初留を1分間廃棄し、反応スラリーを回収した。このスラリーを直ちにろ過・水洗し、含水ケーキを100℃にて乾燥した。乾燥後、粉砕機で乾燥物を粉砕して粉状の炭酸バリウムを得た。その炭酸バリウム粒子のBET値(BET比表面積)及びアスペクト比を表1に示す。また、電子顕微鏡写真を図2に示す。
(実施例2)
実施例1の酒石酸5.0mol%を7.5mol%に変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。また、電子顕微鏡写真を図3に示す。
(実施例3)
実施例1のクエン酸2.5mol%を5.0mol%に、酒石酸5.0mol%を2.5mol%に変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。また、電子顕微鏡写真を図4に示す。
(実施例4)
実施例1のクエン酸2.5mol%を5.0mol%に変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。また、電子顕微鏡写真を図5に示す。
(実施例5)
実施例1のクエン酸2.5mol%を7.5mol%に、酒石酸5.0mol%を2.5mol%に変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。また、電子顕微鏡写真を図6に示す。
(実施例6)
実施例1のクエン酸2.5mol%を2.4mol%に、酒石酸5.0mol%を3.9mol%に変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。また、電子顕微鏡写真を図7に示す。
(実施例7)
実施例1のクエン酸2.5mol%を8.75mol%に、酒石酸5.0mol%を1.25mol%に変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1に示す。また、電子顕微鏡写真を図8に示す。
(実施例8)
実施例1のクエン酸2.5mol%を0.10mol%に、酒石酸5.0mol%を9.90mol%に変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。また、電子顕微鏡写真を図9に示す。
(実施例9)
実施例4の酒石酸をトリメリット酸無水物に変えた以外は実施例4と同様に行った。結果を表2に示す。また、電子顕微鏡写真を図10に示す。
(実施例10)
実施例4の酒石酸をマレイン酸に変えた以外は実施例4と同様に行った。結果を表2に示す。また、電子顕微鏡写真を図11に示す。
(実施例11)
実施例4の酒石酸をりんご酸に変えた以外は実施例4と同様に行った。結果を表2に示す。また、電子顕微鏡写真を図12に示す。
(実施例12)
実施例1のクエン酸2.5mol%を4.7mol%に、酒石酸5.0mol%をこはく酸5.0mol%に変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。また、電子顕微鏡写真を図13に示す。
(実施例13)
実施例1のクエン酸2.5mol%を4.7mol%に、酒石酸5.0mol%をマロン酸5.7mol%に変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。また、電子顕微鏡写真を図14に示す。
(実施例14)
実施例1の結果を基にスケールアップを行った。反応装置は図15に示した通りポンプP1、P2及びP3を3段に接続したものを用いた。各ポンプの詳細は以下のとおりである。
(a)第1段のポンプP1:渦巻ポンプ(横田製作所社製)、吸入口径50mm、吐出口径40mm、吐出量300L/分、インペラ回転数3490rpm
(b)第2段のポンプP2:渦巻ポンプ(西垣ポンプ製造社製)、吸入口径25mm、吐出口径25mm、吐出量60L/分、インペラ回転数3600rpm
(c)第3段のポンプP3:渦巻ポンプ(西垣ポンプ製造社製)、吸入口径25mm、吐出口径25mm、吐出量60L/分、インペラ回転数3600rpm
水酸化バリウム・八水和物63kgを純水に溶かし、最終的に180Lになるように水酸化バリウム水溶液を調整した(原料C)。その時の温度は32℃に調整した。
図15に示した反応装置において、原料Cを18L/分の流量でポンプP1の吸入口に投入した。同時にpH6.4〜6.5になるようにポンプP1への水酸化バリウムの流路に炭酸ガスを吹き込み、濃度が水酸化バリウムに対し4.75mol%のクエン酸・一水塩と、7.82mol%の酒石酸の混酸水溶液を添加し、ポンプP1、P2及びP3にて連続的に反応を行わせてスラリーを得た。このスラリーを直ちにろ過、水洗し、ついで得られた含水ケーキを100℃にて乾燥し、乾燥物を粉砕して炭酸バリウム粒子を得た。
その炭酸バリウム粒子のBET値、アスペクト比のデータを表2及び4に、電子顕微鏡写真を図16に示す。また比較として、市販の炭酸バリウムである堺化学工業株式会社製BW−KH30のBET値、アスペクト比と電子顕微鏡写真を表4、図17に示す。
また、以下の方法により、製造された炭酸バリウム粒子、及び、市販品BW−KH30中の残留クエン酸濃度、残留酒石酸濃度を測定した。結果を表4に示す。
<残留クエン酸濃度の分析方法>
炭酸バリウムサンプル1gを濃塩酸(特級)1.5mlで溶解した後、全量が80mlになるように蒸留水で希釈し、10%水酸化ナトリウム水溶液をpHが8となるように加え、さらに全量が100mlになるよう蒸留水で希釈し、測定用試料を調整した。この測定用試料中のクエン酸含有量をF−キット クエン酸(株式会社J.K.インターナショナル)の添付文書に記載されている方法に準じて測定した。吸光度測定には、紫外可視分光光度計V−570型(日本分光株式会社製)を用い、波長334nmの吸光度を測定した。
<残留酒石酸濃度の分析方法>
炭酸バリウムサンプル1gを99%酢酸(特級)5mlで溶解した後、全量が1Lになるよう蒸留水で希釈し測定用試料を調製した。この測定用試料中の酒石酸含有量を東ソー株式会社製イオンクロマトグラフィー「ION CHROMATOGRAPH [IC−2001]」で測定した。 測定時に使用する溶離液には、炭酸ナトリウム−炭酸水素ナトリウム混合溶液を使用した。炭酸ナトリウム−炭酸水素ナトリウム混合溶液は、炭酸ナトリウム試薬(特級)0.0468gと炭酸水素ナトリウム試薬(特級)0.0636gを適量の蒸留水に溶解した後、さらに蒸留水を加えて、メスシリンダー内で全量が1Lになるよう調整した。分離カラムは、TSKgel SuperIC−AZを使用した。また、サプレッサーゲルは、TSKsuppress IC−Aを使用した。検量線は酒石酸酸試薬(特級)を蒸留水に溶解し、酒石酸酸濃度を10ppm、25ppm、50ppmに調整した検定用試料を用いて作成した。
(比較例1)
実施例1の酒石酸5.0mol%を2.5mol%に変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に示す。また、電子顕微鏡写真を図18に示す。
(比較例2)
実施例1のクエン酸2.5mol%を5.0mol%に、酒石酸を無添加に変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に示す。また、電子顕微鏡写真を図19に示す。
(比較例3)
実施例1のクエン酸を無添加に変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に示す。また、電子顕微鏡写真を図20に示す。
(比較例4)
実施例1のクエン酸2.5mol%を2.4mol%に、酒石酸5.0mol%をグルタミン酸4.5mol%に変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に示す。また、電子顕微鏡写真を図21に示す。
(比較例5)
実施例1のクエン酸2.5mol%を2.4mol%に、酒石酸5.0mol%をシュウ酸4.7mol%に変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に示す。また、電子顕微鏡写真を図22に示す。
(比較例6)
実施例1のクエン酸2.5mol%を2.4mol%に、酒石酸5.0mol%をグルコン酸4.7mol%に変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に示す。また、電子顕微鏡写真を図23に示す。
(比較例7)
実施例1のクエン酸2.5mol%を9.0mol%に、酒石酸5.0mol%を1.0mol%に変えた以外は実施例1と同様に行った。結果を表3に示す。
Figure 0006658792
Figure 0006658792
Figure 0006658792
Figure 0006658792
実施例1〜14では、いずれも比表面積が45m/gを超える微細な炭酸バリウムが得られている。実施例1〜14の製造方法は、従来のグルコン酸及び/又はその誘導体を用いる方法で使用するグルコン酸及び/又はその誘導体の量に比べて酒石酸等の共添加剤の量が少なく、廃液の量も少ない。したがって、本発明の炭酸バリウムの製造方法により炭酸バリウムを製造することで、比表面積が45m/gを超える微細な炭酸バリウムを経済的に、かつ環境への負荷も少なく製造することができることが確認された。また実施例14の結果から、本発明の炭酸バリウムの製造方法は、工業的スケールでの炭酸バリウムの製造にも適した方法であることが確認された。
比較例では、得られる炭酸バリウムの比表面積が実施例に比べて低く、また、得られる炭酸バリウムは電子顕微鏡写真からも分かるように、市販品である堺化学工業株式会社製のBE−KH30と同じようなアスペクト比の高い針状粒子となっている。
このように、実施例1〜14と比較例1〜7との比較から、クエン酸及び/又はその塩と上記式(1)で表される多塩基カルボン酸とを所定の割合で併用することで微細な炭酸バリウムの製造が可能となることが確認された。

Claims (7)

  1. 炭酸バリウムを製造する方法であって、
    該製造方法は、水酸化バリウム、塩化バリウム、硝酸バリウム、酢酸バリウム、及び、酸化バリウムからなる群より選択される少なくとも1種のバリウム化合物に対して、(a)クエン酸及び/又はその塩を添加する工程、(b)二酸化炭素及び/又は炭酸塩化合物を反応させる工程、及び、
    (c)下記式(1):
    HOOC−X−(COOH) ・・・・(1)
    (式中、Xは、2価又は3価の連結基を表し、該連結基は、置換基として水酸基を有していてもよい炭素数1又は2の飽和炭化水素基、炭素数2の不飽和炭化水素基、又は、ベンゼン環由来の基を表す。nは、1又は2を表す。)で表される多塩基カルボン酸、その酸無水物又はその塩の少なくとも一種を添加する工程を含み、
    該バリウム化合物中のバリウム原子100モル%に対する、(a)クエン酸及び/又はその塩の添加モル%Aと、(c)式(1)で表される多塩基カルボン酸、その酸無水物又はその塩の少なくとも一種の添加モル%Bとが、下記式(I)及び(II)を満たす
    ことを特徴とする炭酸バリウムの製造方法。
    6.0≦A+B≦16・・・・(I)
    0.01≦A/B≦7.0・・・(II)
  2. 前記(a)クエン酸及び/又はその塩の添加量は、前記バリウム化合物中のバリウム原子100モル%に対して0.1〜9.0モル%であることを特徴とする請求項1に記載の炭酸バリウムの製造方法。
  3. 前記バリウム化合物に対して、(a)クエン酸及び/又はその塩、及び、(c)前記式(1)で表される多塩基カルボン酸、その酸無水物又はその塩の少なくとも一種を添加した後に、(b)二酸化炭素及び/又は炭酸塩化合物を添加することを特徴とする請求項1又は2に記載の炭酸バリウムの製造方法。
  4. 前記バリウム化合物は、水酸化バリウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の炭酸バリウムの製造方法。
  5. 前記式(1)で表される多塩基カルボン酸は、酒石酸、コハク酸、りんご酸、マレイン酸、マロン酸、トリメリット酸のいずれかであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の炭酸バリウムの製造方法。
  6. 炭酸バリウムと、
    クエン酸及び/又はその塩と、
    下記式(1):
    HOOC−X−(COOH) ・・・・(1)
    (式中、Xは、2価又は3価の連結基を表し、該連結基は、置換基として水酸基を有していてもよい炭素数1又は2の飽和炭化水素基、炭素数2の不飽和炭化水素基、又は、ベンゼン環由来の基を表す。nは、1又は2を表す。)で表される多塩基カルボン酸、その酸無水物又はその塩の少なくとも一種とを含み、
    該炭酸バリウムは、BET法による比表面積が45m/gより大きく、かつ、粒子のアスペクト比が1〜1.50であることを特徴とする炭酸バリウム組成物。
  7. 前記炭酸バリウム組成物に含まれるバリウム原子のモル数に対する、クエン酸及び/又はその塩と前記式(1)で表される多塩基カルボン酸、その酸無水物又はその塩の少なくとも一種との合計モル数の割合が、6.0〜16.0モル%であることを特徴とする請求項6に記載の炭酸バリウム組成物。
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