JP6651419B2 - 内燃機関のバルブタイミング制御装置及び該バルブタイミング制御装置の組立方法 - Google Patents

内燃機関のバルブタイミング制御装置及び該バルブタイミング制御装置の組立方法 Download PDF

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Description

本発明は、例えば吸気弁や排気弁の開閉タイミングを制御する内燃機関のバルブタイミング制御装置及び該バルブタイミング制御装置の組立方法に関する。
従来の内燃機関のバルブタイミング制御装置としては、以下の特許文献1に記載されているものが知られている。
このバルブタイミング制御装置は、タイミングスプロケットに対するカムシャフトの相対回転位相を変更する位相変更機構と、前記両者の遅角側と進角側の相対回転位置を規制するストッパ機構と、を備えている。このストッパ機構は、タイミングスプロケットに固定された保持プレートに形成されたストッパ凸部が、カムシャフトと従動部材との間に固定されたアダプタに形成されたストッパ溝の円周方向の両端縁に当接することによってタイミングスプロケットとカムシャフトの最大遅角側あるいは最大進角側の相対回転位置を規制するようになっている。
特開2013−227919号公報
しかしながら、前記従来の装置にあっては、前記カムシャフトとアダプタとの位置決めと、アダプタと従動部材との位置決めを行う位置決めピンや位置決め孔をそれぞれ別個に設けて行っていることから、その製造作業や位置決め作業が煩雑になって、製造や位置決めコストの高騰が余儀なくされている。
本発明は、前記従来の技術的課題に鑑みて案出されたもので、カムシャフトとアダプタ及び従動部材の三者の位置決め精度を確保しつつ位置決め作業と製造作業能率の向上を図り得る内燃機関のバルブタイミング制御装置及びバルブタイミング制御装置の組立方法を提供することを目的としている。
本願請求項1に記載の発明は、とりわけ、カムシャフトと従動回転体との間に介装されたアダプタと、前記駆動回転体とアダプタとの間に設けられ、前記駆動回転体に対する最大相対回転角度を規制するストッパ機構と、前記アダプタに貫通形成され、前記カムシャフトに設けられた位置決めピンが挿通する第1位置決め孔と、前記従動回転体に前記第1位置決め孔に軸方向から対向して設けられ、第1位置決め孔の内径よりも大きな開口部を有すると共に、前記位置決めピンの先端部が挿入される第2位置決め孔と、を備えたことを特徴としている。
この発明によれば、カムシャフトとアダプタなどの位置決め精度の向上を図りつつ製造作業と位置決めの作業の作業能率の向上が図れる。
本発明に係るバルブタイミング制御装置の第1実施形態を示す縦断面図である。 本実施形態における主要な構成部材を示す分解斜視図である。 図1のA−A線断面図である。 図1のB矢視図である。 図1のC部拡大図である。 本実施形態に供される従動部材と保持器を示し、Aは正面図、BはAのD−D線断面図、CはBのE部拡大図、DはBのF部拡大図である。 本実施形態における従動部材に対するアダプタの組立手順を示し、Aはピン治具を介してアダプタを従動部材側に移動させる状態を示す縦断面図、Bは従動部材にアダプタを位置決めしつつ圧入すると共に、ピン治具を抜き取る状態を示す縦断面図である。 引き続き組立手順を示し、Aはカムシャフトの位置決めピンを第1位置決め孔に挿入しようする状態を示す縦断面図、Bはカムシャフトの位置決めピンを第1、第2位置決め孔に挿入した状態を示す縦断面図である。 本発明の第2実施形態を示し、従動部材とアダプタの第1、第2位置決め孔にピン治具を挿入した状態を示す縦断面図である。 同実施形態におけるカムシャフトの位置決めピンを第1、第2位置決め孔に挿入させてカムボルトで従動部材とカムシャフト及びアダプタを共締め固定した状態を示す縦断面図である。
以下、本発明に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置と組立方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態では、吸気弁側に適用したバルブタイミング制御装置を示しているが、排気弁側にも適用可能である。
前記バルブタイミング制御装置は、図1及び図2に示すように、内燃機関のクランクシャフトによって回転駆動する駆動回転体であるタイミングスプロケット1と、シリンダヘッド01上に軸受02を介して回転自在に支持されていると共に、前記タイミングスプロケット1に相対回転自在に設けられたカムシャフト2と、前記タイミングスプロケット1とカムシャフト2との間に配置されて、機関運転状態に応じて両者1,2の相対回転位相を変更する位相変更機構3と、該位相変更機構3の前端に配置されたカバー部材4と、を備えている。
前記タイミングスプロケット1は、全体が鉄系金属によって環状一体に形成されており、円環状のスプロケット本体1aと、該スプロケット本体1aの外周に一体に設けられて、図外のタイミングチェーンが巻回される歯車部1bと、を備えている。
また、前記スプロケット本体1aの前端側には、後述する減速機構13の一部を構成する内歯構成部5が一体に設けられている。この内歯構成部5は、前記スプロケット本体1aの前端部に一体に設けられ、位相変更機構3の前方へ延出した円筒状に形成されていると共に、内周には波形状の複数の内歯5aが形成されている。
前記タイミングスプロケット1は、スプロケット本体1aと後述する従動回転体である従動部材9との間に、1つの大径ボールベアリング6が介装され、この大径ボールベアリング6によって前記従動部材9(カムシャフト2)に相対回転自在に軸受けされている。
さらに、前記スプロケット本体1aの内歯構成部5と反対側の後端面には、保持プレート8が固定されている。この保持プレート8は、図1、図2及び図4に示すように、金属板材によって円環状に形成され、外径が前記スプロケット本体1aの外径とほぼ同一に設定されていると共に、中央に中央孔8aが貫通形成されている。
また、前記保持プレート8の中央孔8aの内周縁所定位置には、中心軸方向に向かって突出した逆台形状のストッパ凸部8bが一体に設けられている。このストッパ凸部8bは、先端面8cが後述するアダプタ11のストッパ凹溝11cの円弧状内周面に沿った円弧状に形成されている。
また、前記内歯構成部5を含むスプロケット本体1a及び保持プレート8の各外周部には、6本のボルト7が挿通する6つのボルト挿通孔1c、8dが周方向のほぼ等間隔位置に貫通形成されている。
前記カムシャフト2は、外周に図外の吸気弁を開作動させる一気筒当たり2つの駆動カムを有していると共に、軸方向の一端部2aにアダプタ11を介して従動部材9がカムボルト10によって軸方向から共締め固定されている。
また、このカムシャフト2は、前記一端部2aの先端面にアダプタ11や従動部材9との円周方向の位置決めを行う位置決めピン60が軸方向から圧入固定されている。
すなわち、この位置決めピン60は、基端部60aが前記カムシャフト2の一端部2aの前端面から軸方向に沿って穿設されたピン孔2bに圧入固定されていると共に、カムシャフト2の一端部2aから突出した先端部60bの軸方向長さLがアダプタ11の厚さ幅よりも大きく形成されている。また、位置決めピン60の外径は、後述するアダプタ11の第1位置決め孔61の内径よりも僅かに小さく形成されて、該第1位置決め孔61に先端部60bが緊密に挿通可能になっている。
前記従動部材9は、鉄系金属によって一体に形成され、図1及び図2に示すように、後端側(カムシャフト2側)に形成された円板状の固定端部9aと、該固定端部9aの内周前端面から軸方向へ突出した円筒部9bと、から主として構成されている。
前記固定端部9aは、外側面がカムシャフト2の一端部2aの前端面側に軸方向から対向配置されて、この中央位置に前記アダプタ11の後述する凸状の内周部11bが嵌合する嵌合溝9dが形成されている。
前記円筒部9bは、図1に示すように、前記固定端部9aを含む内部軸心方向に前記カムボルト10の軸部10bが挿通されるボルト挿通孔9cを有している。
前記カムボルト10は、頭部10aの軸方向端面が小径ボールベアリング35の内輪を軸方向から支持していると共に、軸部10bの外周にカムシャフト2の端部から内部軸方向に形成された雌ねじ孔2cに螺着する雄ねじ10cが形成されている。
前記アダプタ11は、比較的薄肉な肉厚を有する円盤状の金属板をプレス成形によって縦断面ほぼクランク状に折曲形成され、フランジ状の外周部11aと、電動モータ12方向へ突出した有底円筒状の内周部11bと、から構成されている。
前記外周部11aは、電動モータ12側の内側面の外周側が前記大径ボールベアリング6の内輪6bの軸方向他端面に当接して軸方向外側への移動を規制するようになっている。この外周部11aの外周面には、図4に示すように、前記保持プレート8のストッパ凸部8bが係入するストッパ凹溝11cが円周方向に沿って扇状に形成されている。
このストッパ凹溝11cは、円周方向へ所定長さの円弧状に形成されて、この長さ範囲で回動したストッパ凸部8bの両側面8e、8fが周方向の対向面にそれぞれ当接することによって、タイミングスプロケット1に対するカムシャフト2の最大進角側、あるいは最大遅角側の相対回転位置を機械的に規制するようになっている。前記ストッパ凸部8bとストッパ凹溝11cによってストッパ機構が構成されている。
前記アダプタ11の内周部11bは、電動モータ12側に突出した有底円筒の凸状に形成され、反対側の凹溝11dにカムシャフト2の一端部2aが軸方向から嵌合している共に、中央位置には前記カムボルト10の軸部10bが挿通する挿通孔11eが貫通形成されている。
前記内周部11bは、前記従動部材9の固定端部9aの嵌合溝9d内に軸方向から圧入によって嵌合した状態で、前記内周部11bの先端壁を、カムボルト10によってカムシャフト2の一端部2aと従動部材9の固定端部9aとの間に挟持状態に結合されている。
また、前記アダプタ11は、図1及び図5に示すように、内周部11bの底壁の所定位置に、前記カムシャフト2の位置決めピン60が軸方向から挿入可能な第1位置決め孔61が貫通形成されている。この第1位置決め孔61は、内径dが前記位置決めピン60の先端部60bの外径より僅かに大きいかあるいはほぼ同一に形成されて、位置決めピン60の先端部60bが挿入された際における精度の高い位置決めが確保されるようになっている。
一方、前記従動部材9の固定端部9aは、図1、図5及び図6に示すように、前記アダプタ11の第1位置決め孔61と軸方向で対応した位置に、有底状の第2位置決め孔62が穿設されている。
この第2位置決め孔62は、前記第1位置決め孔61に面した位置に有する開口部62aと、該開口部62aから内方に穿設された小径孔部62bと、から構成されている。
前記開口部62aは、その内径d1が第1位置決め孔61の内径dよりも大きく形成されていると共に、軸方向の深さが、挿入された前記位置決めピン60の先端部60bよりも僅かに深く形成されている。
前記小径孔部62bは、前記開口部62aと同軸上に形成され、その内径が前記第1位置決め孔61の内径dとほぼ同一に形成されていると共に、開口部62aの端縁からの深さは、開口部62aの深さとほぼ同一に形成されているが、挿入された前記位置決めピン60の先端部60bはこの小径孔部62bには到達しないようになっている。
前記位相変更機構3は、前記従動部材9の円筒部9bの前端側に配置された電動モータ12と、該電動モータ12の回転速度を減速してカムシャフト2に伝達する減速機構13と、から主として構成されている。
前記電動モータ12は、図1に示すように、ブラシ付きのDCモータであって、前記タイミングスプロケット1と一体に回転するモータハウジング14と、該モータハウジング14の内部に回転自在に設けられたモータ出力軸15と、モータハウジング14の内周面に固着された円弧状の4つの永久磁石16と、モータハウジング14の前端部に固定された給電プレート17と、を備えている。
前記モータハウジング14は、図1に示すように、有底円筒状に形成されて、外径が前記スプロケット本体1aの外径と同じに形成されていると共に、後端側に円板状の底壁としての隔壁14aが一体に形成されている。
前記隔壁14aは、ほぼ中央に有する円筒状の延出部の内周に、前記モータ出力軸15及び後述の偏心軸部37が挿通される大径な軸挿通孔14bが形成されている。また、前記隔壁14aの外周部には、各ボルト挿通孔1c、8dと対応した位置に、6本のボルト7の先端部が螺着する6つの雌ねじ孔14cが周方向の等間隔位置に形成されている。これらに挿通、螺着した前記各ボルト7によって前記タイミングスプロケット1(内歯構成部5)と保持プレート8及びモータハウジング14が軸方向から共締め固定されている。
前記モータ出力軸15は、段差円筒状に形成されて、軸方向のほぼ中央位置に形成された段差部を介してカムシャフト2側の大径部15aとカバー部材4側の小径部15bと、から構成されている。大径部15aは、外周に鉄心ロータ18が固定されていると共に、軸方向の後端面に減速機構13の一部を構成する偏心軸部37が一体に結合されている。一方、前記小径部15bは、外周に整流子であるコミュテータ20が固定されている。
このコミュテータ20は、導電材によって円環状に形成されて、小径部15bの外周面に圧入された非導電性の円環部材20aの外周に設けられ、前記鉄心ロータ18の極数と同数に分割された各セグメントに後述のコイル19の引き出されたコイル線の端末が電気的に接続されている。
前記鉄心ロータ18は、複数の磁極を持つ磁性材によって形成され、外周側にコイル19が巻回されていると共に、内周部がモータ出力軸15の段差部外周に軸方向へ位置決めされつつ固定されている。
前記各永久磁石16は、円周方向に所定隙間をもって配設されて全体が円筒状に形成され、円周方向に複数の磁極を有している。
前記給電プレート17は、図1及び図2に示すように、鉄系金属材からなる円盤状の金属プレート部17aと、該金属プレート部17aの前後両側面にモールドされた円板状の樹脂部17bと、から構成されている。
前記金属プレート部17aは、前記樹脂部17bで覆われていない外周部が前記モータハウジング14の前端部内周に形成された環状凹溝にカシメによって位置決め固定されていると共に、中央部にはモータ出力軸15の小径部15bなどが挿通される軸挿通孔17cが貫通形成されている。
また、前記給電プレート17には、前記樹脂部17bの前端部に複数のリベットにより固定された銅製筒状の4つのブラシホルダ23a〜23dと、該各ブラシホルダ23a〜23dの内部に径方向に沿って摺動自在に収容配置されて、コイルスプリング24a〜24dのばね力で円弧状の各先端面が前記コミュテータ20の外周面に径方向から弾接する4つの切換用ブラシ25a〜25dと、樹脂部17bの前端部にモールド固定され、径方向において内外二重の円環状の給電用スリップリング26a,26bと、前記各切換用ブラシ25a、25bと各スリップリング26a,26bを電気的に接続する図外のハーネスが設けられている。
前記各給電用スリップリング26a、26bは、導電材によってそれぞれ円環状に形成され、互いに径方向の所定の隙間をもって内外に離間して配置されていると共に、それぞれの内外周縁の円周方向のほぼ等間隔位置に複数形成された図外の突片が前記樹脂部17bに埋設されることによって固定されている。
前記モータ出力軸15と偏心軸部37は、前記カムボルト10の軸部10bの外周面に設けられた前記小径ボールベアリング35と、前記従動部材9の円筒部9bの外周面に設けられて、小径ボールベアリング35の軸方向側部に配置されたニードルベアリング36とによって回転自在に支持されている。
また、前記モータ出力軸15の大径部15aの外周面とモータハウジング14の延出部の内周面との間には、減速機構13の内部から電動モータ12内への潤滑油のリークを阻止する小径なオイルシール38が設けられている。
前記カバー部材4は、図1及び図2に示すように、前記給電プレート17の前端側に軸方向から対向して配置されており、円板状のカバー本体28と、該カバー本体28の前端部を覆う合成樹脂製のキャップ部29と、から構成されている。
前記カバー本体28は、図1及び図2に示すように、合成樹脂材によって所定の肉厚に形成された外層部28aと、該外層部28aの内部にモールド固定された芯材である補強プレート28bと、から構成されている。
前記外層部28aは、後述する射出成形によって前記補強プレート28bと一体に設けられていると共に、外側面に前記キャップ部29の外周部に形成された係止爪29aが係合する環状の係合溝28cが形成されている。
前記補強プレート28bは、導電材であるアルミニウム合金材によってほぼ異形円盤状に形成され、外周部の4箇所には、円弧状のボス部28dが一体に設けられている。この各ボス部28dは、前記外層部28aから露出した状態になっていると共に、中央に貫通形成された固定孔内には鉄系金属からなる図外のスリーブを介してカバー部材4をチェーンケース22に固定する図外のボルトが挿通されるボルト挿通孔28eが形成されている。
前記カバー本体28の図2中、下側の左右には、外層部28aと補強プレート28bを貫通した2つの位置決め用孔28f、28gが形成されている。
前記チェーンケース22は、例えばアルミニウム合金材によって一体に形成され、前記タイミングスプロケット1や電動モータ12などの位相変更機構3やシリンダブロックから突出したクランクシャフトの先端部などの外周全体を覆うように配置されている。また、このチェーンケース22は、図外のボルトなどの締結手段によって前記シリンダヘッド01に結合されている。
また、このチェーンケース22とモータハウジング14との間には、該両者22、14間をシールするオイルシール42が介装されている。
前記カバー本体28は、前記各スリップリング26a、26bと軸方向から対向する位置に、銅材からなる一対の四角筒状のブラシホルダ30a、30bが軸方向に沿って固定されている。また、各ブラシホルダ30a、30bの内部には、先端面が前記各スリップリング26a、26bに当接する一対の給電用ブラシ31a、31bが軸方向へ摺動自在に保持されている。
前記一対の給電用ブラシ31a、31bは、一般的なカーボンブラシであって、角柱状に形成されていると共に、前記各ブラシホルダ30a、30bを介して互いに周方向へ離間した位置に配置されている。
すなわち、前記一対のブラシホルダ30a、30b(一対の給電用ブラシ31a、31b)は、図2に示すように、カバー本体28の上部側でかつ軸心を通る垂線Qを中心とした左右位置に所定の距離をもって円周方向及び径方向へ互いに離間して配置されている。
したがって、前記第1、第2給電用ブラシ31a、31bは、互いにカバー本体28の周方向で離間して配置されていると共に、重力方向で重ならない位置に配置されている。
また、カバー本体28は、図1及び図2に示すように、ほぼ中央位置に円形状の窓孔44が貫通形成されている。この窓孔44は、内径が後述する被検出部51の先端部51bの外径よりも大きく形成されて、前記先端部51bが挿入可能に形成されている。
また、この窓孔44の前記モータ出力軸15側の孔縁には、前記窓孔44の内径よりも大きな大径溝44aが形成されている。この大径溝44aは、前記カバー部材4を電動モータ12の前端側に組み付けた際に、後述する被検出部51のフランジ部51cが嵌入する逃げ部として機能するようになっている。
さらに、前記カバー本体28は、キャップ部29側の外端面のほぼ中央位置にプリント基板55を収容する図外の矩形状の凹溝が形成されていると共に、該凹溝の左側方位置と右上方位置に離間して形成された矩形状の2つの収容溝の内部には、前記各給電用ブラシ31a、31bを前記スリップリング26a、26b方向へ付勢する図外の一対の捩りコイルばね32が収容されている。
また、前記カバー本体28の下端部には、図2に示すように、前記各給電用ブラシ31a、31bに図外のコントロールユニットを介して電源バッテリーから電流を供給する給電用コネクタ33が一体に設けられていると共に、回転角度信号を前記コントロールユニットに出力する信号用コネクタ34が前記給電用コネクタ33と並行かつ径方向に沿って突設されている。
前記カバー本体28aの内部には、前記第1、第2給電用ブラシ31a、31bと給電用コネクタ33とを電気的に接続する図外の一対のバスバーが埋設されている。このバスバーは、各一端部が各ピグテールハーネスを介して前記第1、第2給電用ブラシ31a、31bの後端部に接続されている一方、給電用コネクタ33の内部に突出した各他端部がコントロールユニット側の各図外の雌コネクタ端子に接続されるようになっている。
また、この各バスバーの途中には、通電されることによって周囲に磁場を発生させる2つのインダクタンスと、容量性素子である2つのコンデンサとを備えた図外の電磁ノイズ抑制機構が設けられている。
一方、前記信号用コネクタ34は、図1に示すように、カバー本体28内に埋設された各一端部34aの露出した各端子片が後述する角度センサ50のプリント基板55の各集積回路に電気的に接続されていると共に、外部に露出した他端部34bがコントロールユニット側の図外の雌コネクタ端子に接続されている。
前記キャップ部29は、異形状の円盤プレート状に形成されて、外周縁に一体に形成されたフック状の係止凸部29aが前記カバー本体28の外周部側に一体に形成された前記係合溝28cに軸方向から係止固定されている。
そして、前記モータ出力軸15の小径部15bと前記カバー本体28との間には、モータ出力軸15の回転角度位置を検出する回転角検出機構である角度センサ50が設けられている。
この角度センサ50は、電磁誘導型であって、図1及び図2に示すように、前記モータ出力軸15の小径部15b内に固定された被検出部51と、前記カバー本体28のほぼ中央位置に固定されて、前記被検出部51からの検出信号を受信する検出部52と、から構成されている。
前記被検出部51は、合成樹脂材からなるほぼ有底円筒状の支持部51aと、該支持部51aの軸方向の先端部51bの先端面に固定された3つの被検出ロータ53と、支持部51aの後端部外周に前記モータ出力軸15の小径部15bの内部に圧入される円環状のフランジ部51cと、を有している。
また、前記支持部51aは、図2にも示すように、前記フランジ部51cよりも後端側の軸方向のほぼ中央位置の外周に形成された環状シール溝に、小径部15bの内周面と先端部51b側との間をシールするオイルシール54が嵌着固定されている。
前記被検出ロータ53は、励起導体によって形成されて、前記先端部51bの前端面にオーム形状の3つの磁性材を円周方向の120°位置に配置されてなり、先端部51bの前端面から露出した状態でモールド固定されている。
前記フランジ部51cは、支持部51aと同じく合成樹脂材によって一体に形成され、支持部51aの後端部が小径部15bの内部に最大に挿入された際に、内側面が前記小径部15bの先端縁に軸方向から当接してそれ以上の挿入を規制するようになっている。
また、支持部51aは、前記円環状のフランジ部51cを介してモータ出力軸15の小径部15bの先端から突出した先端部51bの一部が、前記カバー本体28の前記窓孔44内に挿入配置されている。
これによって、各被検出ロータ53が窓孔44を介して検出部52の後述するプリント基板55の受信コイルと励磁回路に軸方向から微少クリアランスを介して十分に近接した状態で対向配置されるようになっている。
前記検出部52は、図1に示すように、前記カバー本体28の凹溝の内部に収容固定されて、該凹溝の内部形状に倣ったほぼ長方形状の回路基板であるプリント基板55と、該プリント基板55の長手方向の一端部外面に設けられた図外の3つの集積回路(ASIC)と、該集積回路と同じ外面の他端部側に設けられた受信コイル及び励磁コイルと、を備えている。
前記プリント基板55は、内部に複数のバスバーが埋設された樹脂材によって薄肉板状に形成されて、図外の3つの位置決め孔に凹溝底面に立設された位置決めピンが挿入することによって全体が位置決めされながら凹溝の底面上に塗布された接着剤によって固定されている。
また、前記プリント基板55の受信、励磁コイルは、前記窓孔44を介して前記被検出ロータ53と軸方向から微小クリアランスを介して直接的に対峙している。
そして、前記検出部51は、前記受信、励磁コイルと、前記受信コイルと被検出ロータ53との間のインダクタンスの変化を検出してモータ出力軸15の回転角度を集積回路がモータ出力軸15の回転角度位置を検出して、この情報信号をコントロールユニットに出力するようになっている。
前記コントロールユニットは、図外のクランク角センサやエアーフローメータ、水温センサ、アクセル開度センサ、さらに前記角度センサ50など各種のセンサ類からの情報信号に基づいて現在の機関運転状態を検出している。また、これらの情報信号に基づいて機関制御を行うと共に、前記給電用ブラシ31a、31bや各スリップリング26a,26bなどを介してコイル19に通電してモータ出力軸15の回転制御を行い、減速機構13によってカムシャフト2のタイミングスプロケット1に対する相対回転位相を制御するようになっている。
前記減速機構13は、図1〜図3に示すように、偏心回転運動を行う前記偏心軸部37と、該偏心軸部37の外周に設けられた中径ボールベアリング39と、該中径ボールベアリング39の外周に設けられ、前記内歯構成部5の各内歯5a内に転動自在に保持されたローラ40と、該ローラ40を転動方向に保持しつつ径方向の移動を許容する保持器41と、該保持器41と一体の前記従動部材9と、から主として構成されている。
前記偏心軸部37は、モータ出力軸15の大径部15aに軸方向から一体に設けられた円筒状に形成されて、外周面に形成されたカム面37aの回転軸心Yがモータ出力軸15の回転軸心Xから径方向へ僅かに偏心している。
前記中径ボールベアリング39は、ニードルベアリング36の径方向位置で全体がほぼオーバーラップする状態に配置され、内輪39aが偏心軸部37の外周面に圧入固定されているのに対して、外輪39bは軸方向で固定されることなくフリーな状態になっている。つまり、この外輪39bは、軸方向の電動モータ12側の一端面がどの部位にも接触せず、また軸方向の他端面がこれに対向する保持器41の背面との間に形成された微小なクリアランスを介してフリーな状態になっている。
外輪39bは、その外周面に前記各ローラ40の外周面が転動自在に当接していると共に、この外周面と前記保持器41のローラ保持部41bの内面との間に形成されたクリアランスを介して中径ボールベアリング39全体が前記偏心軸部37の偏心回転に伴って径方向へ偏心動可能になっている。
前記保持器41は、固定端部9aの外周部前端から前方へ断面ほぼL字形状に折曲形成されて、固定端部9aの外周部前端側に径方向に沿って延出した円環状の基部41aと、該基部41aの外端からほぼ軸直角方向へ延出して内側に形成された複数のローラ保持孔41c内で各ローラ40を支持する円筒状のローラ保持部41bと、から主として構成されている。
前記ローラ保持孔41cは、その全体の数(ローラ40の数)が前記内歯構成部5の内歯5aの全体の歯数よりも少なくなっており、これによって、所定の減速比を得るようになっている。
前記各ローラ40は、鉄系金属によって形成され、中径ボールベアリング39の偏心動に伴って径方向へ移動しつつ内歯構成部5の内歯5aに嵌入すると共に、保持器41のローラ保持孔41cの両側縁によって周方向にガイドされつつ径方向へ揺動運動するようになっている。
また、前記減速機構13は、オイル供給通路によって内部に機関の潤滑油が供給されるようになっている。
前記オイル供給通路は、図1に示すように、前記カムシャフト2の一端部2aの内部軸方向に沿って形成された油通路56と、前記アダプタ11の内周部11bを貫通して形成されて、前記油通路56の下流端に連通する連通孔57と、前記従動部材9の固定端部9aを貫通形成されて、前記連通孔57に連通する油孔58と、から主として構成されている。
前記油通路56は、下流側が前記軸受02及びシリンダヘッド01の内部に形成された図外の油通路孔を介してメインオイルギャラリーに連通していると共に、上流側の一端開口部56aが大径状に形成されている。
前記連通孔57は、図7、図8にも示すように、一端開口が油通路56の一端開口部56aに臨んでいる一方、他端開口が前記油孔58の大径な一端開口58aに臨んでいる。
前記油孔58は、前記一端開口58aから他端開口58bまで内径が三段階に小さくなるように形成され、一端開口58aの内径が前記連通孔57の内径よりも大きく形成されていると共に、最小径の他端開口58bが前記ニードルベアリング36の一側部に臨んでいる。
したがって、オイルポンプから供給された潤滑油は、これらオイル供給通路などを通って前記減速機構13内に供給されて各摺動部や回転部に供給されるようになっている。なお、減速機構13内に供給されて内部を循環した潤滑油は、例えば、前記大径ボールベアリング6の内部隙間を介して前記アダプタ11に貫通形成れたドレン孔59を介して外部にドレンされるようになっている。
〔カムシャフトに対する位相変更機構の位置決め及び組立方法〕
前記カムシャフト2に対する位相変更機構3の組立方法とアダプタ11及び従動部材9の位置決め方法を、図7A、B及び図8A、Bに基づいて以下に説明する
まず、図7Aに示すように、スプロケット本体1aと保持プレート8及び電動モータ12と減速機構13を、6本のボルト7によって共締め固定して、タイミングスプロケット1を含めた位相変更機構3全体をユニット化しておく。
この状態で、先に、前記カムシャフト2の位置決めピン60とほぼ同一径のピン治具63を、開口部62aから第2位置決め孔62内に挿入して先端部63aが小径孔部62bの底面に突き当たるまで押し込む。
続いて、この状態でアダプタ11を持ってピン治具63を他端部63b側から第1位置決め孔61に挿入させる。このとき、アダプタ11は、従動部材9の固定端部9aとは分離されてフリーな状態になっていることから、前記ピン治具63の他端部63bに第1位置決め孔61を挿入する際に、抵抗なく挿入することができる。
次に、図7Bに示すように、前記ピン治具63を各位置決め孔61,62に挿入された状態で、前記アダプタ11を固定端部9方向へ移動させて、該アダプタ11の内周部11bを固定端部9の嵌合溝9dに軸方向から圧入固定する。この状態で、前記アダプタ11と固定端部9a(従動部材9)の円周方向の位置決めが完了する。
また、この時点では、前記アダプタ11の連通孔57と固定端部9の油孔58の一端開口58aが位置決めされて、互いに軸方向で連通状態になっている。なお、前記油孔58の一端開口58aは、連通孔57の内径よりも大きく形成されていることから、前記アダプタ11の組付時に連通孔57との相対位置が僅かに径方向へずれたとしても連通が確保される。
その後、図7Bの矢印で示すように、前記各位置決め孔61,62からピン治具63を引き抜いて、アダプタ11を固定端部9に仮止め状態にしておく。
次に、前記カムシャフト2を予めクランプ機構によって固定しておくと共に、この状態でカムシャフト2の一端部2aのピン孔2bに、位置決めピン60の基端部60aを圧入固定しておく。
その後、図8Aに示すように、前記位相変更機構3のユニットを前記カムシャフト2方向へ移動させて、該カムシャフト2の一端部2aをアダプタ11の内周部11bの凹溝11d内に嵌挿させると同時に、前記位置決めピン60の先端部60bにアダプタ11の第1位置決め孔61を軸方向から合わせて、そのまま固定端部9aの第2位置決め孔62の開口部62a内へまで挿入する。これによって、カムシャフト2とアダプタ11の円周方向の位置決めが完了する。
この状態では、前記カムシャフト2の位置決めピン60の先端部60bは、第2位置決め孔62の大径な開口部62aに臨んでいる状態になっているが、アダプタ11と従動部材9は、前述のようにピン治具63によって円周方向の位置決めが精度良く行われているので、カムシャフト2と従動部材9との位置決めを改めて行う必要がない。
換言すれば、カムシャフト2と従動部材9とは、円周方向にたとえ僅かな位置ずれが発生したとしても、カムシャフト2とアダプタ11の円周方向の位置決め精度が高くなっていることから、前記ストッパ凸部8bとストッパ溝11c(ストッパ機構)による最大相対回転位相の高い位置精度を確保できるので問題はない。
その後、図8Bに示すように、前記カムボルト10をモータ出力軸15の小径部15b先端開口から内部に挿入しつつカムシャフト2の雌ねじ孔2cに締結することによって、カムシャフト2に対するタイミングスプロケット1や位相変更機構3の組立作業が完了する。
〔バルブタイミング制御装置の作動〕
以下、本実施形態におけるバルブタイミング制御装置の作動について簡単に説明すると、まず、機関のクランクシャフトの回転駆動に伴ってタイミングチェーンを介してタイミングスプロケット1が回転し、その回転力が内歯構成部5を介してモータハウジング14に伝達されて、該モータハウジング14が同期回転する。一方、前記内歯構成部5の回転力が、各ローラ40から保持器41及び従動部材9を経由してカムシャフト2に伝達される。これによって、カムシャフト2のカムが吸気弁を開閉作動させる。
機関始動後の所定の機関運転時には、前記コントロールユニットからの制御電流が給電用ブラシ31a、31bや各スリップリング26a,26bなどを介して電動モータ12のコイル19に通電されてモータ出力軸15が回転駆動され、この回転力が減速機構13を介してカムシャフト2に対し減速された回転力が伝達される。
これにより、カムシャフト2がタイミングスプロケット1に対して正逆相対回転して相対回転位相が変換されて、吸気弁の開閉タイミングを進角側あるいは遅角側に変換制御するのである。このように、吸気弁の開閉タイミングが進角側あるいは遅角側へ最大に変換されて、機関の燃費や出力の向上が図れる。
そして、本実施形態では、前述したように、カムシャフト2の位置決めピン60を、第1、第2位置決め孔61,62の両方に一緒に挿入することによって、カムシャフト2に対するアダプタ11と従動部材9の円周方向の位置決めを同時に行うことができる。
これによって、カムシャフト2とアダプタ11、並びにアダプタ11と従動部材9の位置決めを別個に行う場合に比較して、位置決め作業が容易になると共に、複数の位置決めピンや位置決め孔を形成する必要がないので、製造作業も容易になる。この結果、これらの位置決め作業能率と製造作業能率の向上が図れる。
しかも、アダプタ11と従動部材9との位置決めは、予め組立作業中において、前記ピン治具63を、同じ内径の第1位置決め孔61と第2位置決め孔62の小径孔部62bに挿入することによって行うことから、該両者11,9の位置決め精度が高くなる。また、その後に、カムシャフト2の位置決めピン60を、第1位置決め孔61と第2位置決め孔62の開口部62aに挿入することによって位置決めを行うため、全体の位置決め精度が高くなる。
この結果、前記ストッパ凸部8bとストッパ溝11cによるカムシャフト2の最大遅角側、最大進角側の相対回転位置の精度が高くなり、バルブタイミング制御精度の向上が図れる。
また、前記第2位置決め孔62は、開口部62aの内径d1が第1位置決め孔61と小径孔部62bの内径dよりも大きく形成されていることから、前記ピン治具63を挿入する際に、該ピン治具63の先端部63aが開口部62aの孔縁に突き当たることなく、スムーズに挿入させることができる。
また、前記開口部62aの内径d1が第1位置決め孔61の内径dよりも大きく形成されていることで、カムシャフト2とアダプタ11の位置決め精度をアダプタ11と従動部材9との位置決め精度よりも高く設定できる。これは、位置決めピン60と開口部62aとの間の比較的大きなクリアランスによって、ピン治具63によるアダプタ11と従動部材9の間の位置決め精度の影響がアダプタ11とカムシャフト2の位置決めピン60の間の位置決め精度に影響を与えないためである。この構成によっても、前記ストッパ凸部8bとストッパ溝11cによるカムシャフト2の最大遅角側、最大進角側の相対回転位置の精度が高くなり、バルブタイミング制御精度の向上が図れる。
また、第1位置決め孔61をアダプタ11に貫通形成し、従動部材9に第2位置決め孔62を設けることで、アダプタ11の軸方向厚さを薄くすることができる。また、カムシャフト2の位置決めピン60の前記カムシャフト2から露出している部分の長さを長くすることができ、組み付け性が容易となる。
さらに、本実施形態では、バルブタイミング制御装置の駆動時における電動モータ12の回転駆動や給電用ブラシ31a、31bの各スリップリング26a、26bに対する摺動時などに発生する電磁ノイズを、前記電磁ノイズ抑制機構によって効果的に抑制することができる。
また、本実施形態では、角度センサ50の被検出部51の先端部51bが、前記カバー部材4のカバー本体28に形成された窓孔44内に挿入配置されていることから、前記先端部51bの各被検出ロータ53が樹脂材などの介在物を介さずに微小クリアランスを介して直接的かつ近接して受信コイルと励磁コイルに対向させることが可能になる。このため、角度センサ50の出力を高めることができ、もって、モータ出力軸15の回転検出精度の向上が図れる。
さらに、前記2つの給電用ブラシ31a、31bは、それぞれが保持されるブラシホルダ30a、30bを介してカバー本体28に対して、互いに円周方向へ大きく離間した位置に設けられていることから、発生したカーボンや金属の摩耗粉が各給電用ブラシ31a、31bの先端部の一側面の周囲にそれぞれ付着して漸次拡大したとしても、これら両方の摩耗粉の接触を十分に回避することができる。これによって、両給電用ブラシ31a、31b間の電気的な短絡の発生を抑制することができる。
特に、前記各給電用ブラシ31a、31bは、左右側にそれぞれ配置されて、重力方向には重なることなく互いに十分に周方向へ離れた位置に配置されていることから、例えば機関停止時において上側の給電用ブラシ31bに付着して溜まった摩耗粉が仮に落下したとしても、この摩耗粉が下側にある給電用ブラシ31aに掛かることがない。したがって、各摩耗粉の接触をこの点でも抑制することができる。
しかも、前述のように、両給電用ブラシ31a、31bは、左右側の位置でかつ前記大径溝44aを含む窓孔44から左右へ離れた位置に配置されていることから、該各給電用ブラシ31a、31bにそれぞれ付着した摩耗粉が落下したとしても、前記窓孔44に臨む被検出部51の各被検出ロータ53への付着を回避することができる。
また、前記窓孔44の内側孔縁に形成された大径溝44aに被検出部51のフランジ部51cを嵌入させることによって、この嵌入分だけ被検出部51の先端部51bを窓孔44の奥深くまで挿入できるので、装置の軸方向の長さを短くすることができる。
この結果、バルブタイミング制御装置全体の軸方向の長さを十分に短くすることができる。このため、装置の小型化が図れてエンジンルーム内への装置の搭載性がさらに向上する。
〔第2実施形態〕
図9及び図10は第2実施形態を示し、アダプタ11の第1位置決め孔61は第1実施形態と同じ構成であるが、従動部材9の第2位置決め孔62の構成を変更したものである。
すなわち、第2位置決め孔62は、前記小径孔部62bを廃止して開口部62aの奥に形成された内底面62cが円錐テーパ状に形成されている。この内底面62cは、開口部62aの奥部開口縁から円錐状に形成されて、その中心Pが開口部62aの中心軸と同軸上に形成されている。一方、ピン治具63は、先端部63aの先端に前記内底面62cに嵌合する円錐状の凸部63cが一体に設けられている。この凸部63cは、断面形状が前記内底面62cの断面形状とほぼ同一になっている。
そして、前記従動部材9とアダプタ11を位置決めするには、図9に示すように、まず、ピン治具63の先端部63aを、固定端部9aの第2位置決め孔62の開口部62aに挿通して、前記凸部63cを内底面62cに押し当てながら嵌合させる。これによって、凸部63cの軸心が、内底面62cの中心Pと合致して、第2位置決め孔62とピン治具63の位置合わせが行われる。
その後、前記ピン治具63を固定した状態から、前記アダプタ11を持って、第2位置決め孔61をピン治具63の後端部63bに挿入しながら従動部材9方向へ移動させ、そのままアダプタ11の内周部11bを固定端部9aの嵌合溝9d内に圧入する。これによって、アダプタ11は、前記ピン治具63によって従動部材9との円周方向の位置決めを行う。
続いて、前記ピン治具63を各位置決め孔61、62から引き抜けば、前記従動部材9に対するアダプタ11の位置決め作業が完了する。
次に、図10に示すように、カムシャフト2に対して前記位相変更機構3のユニットを軸方向から移動させて、位置決めピン60を、アダプタ11の第1位置決め孔61と従動部材9の第2位置決め孔62(開口部62a内)に挿入する。これによって、カムシャフト2とアダプタ11の円周方向の位置決め作業が終了する。
その後、前記カムボルト10を、モータ出力軸15の内部に挿入させつつカムシャフト2の雌ねじ部2cに締結させれば、カムシャフト2と従動部材9及ぶアダプタ11との組立作業が終了する。
このように、第2実施形態では、第2位置決め孔62の円錐状の内底面62cに対してピン治具63の先端部63aの円錐状の凸部63cを軸方向から押し当てながら嵌合することから、第2位置決め孔62の中心Pに対するピン治具63の軸心を容易に位置合わせすることが可能になる。
特に、円錐状の内底面62cは、開口部62aを例えばドリリングによって孔開けした際に、ドリル工具の先端で同時に形成することができるので、第2位置決め孔62の成形作業が第1実施形態の場合に比較して簡単になる。これによって、製造作業性が向上する。
他の構成は第1実施形態と同じであるから同一の作用効果が得られる。
本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、前記駆動回転体としては、前記タイミングスプロケットの他に、タイミングプーリなどであっても良い。
また、前記従動部材9の第2位置決め孔62の内径を、第1位置決め孔61の内径とほぼ同一に形成することも可能であり、このようにすれば、カムシャフト2に対してアダプタ11を精度良く位置決めできることは勿論のこと、従動部材9もさらに精度良く位置決めすることが可能になる。
以上説明した実施形態に基づく内燃機関のバルブタイミング制御装置としては、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
すなわち、本発明に係る内燃機関のバルブタイミング制御装置は、その一つの態様において、クランクシャフトから回転力が伝達される駆動回転体と、カムシャフトと一体に回転する従動回転体と、前記駆動回転体に対するカムシャフトの相対回転位相を変更する位相変更機構と、を備えた内燃機関のバルブタイミング制御装置であって、
カムシャフトと従動回転体との間に介装されたアダプタと、前記駆動回転体とアダプタとの間に設けられ、前記駆動回転体に対するカムシャフトの最大相対回転位置を規制するストッパ機構と、前記アダプタに貫通形成され、前記カムシャフトに設けられた位置決めピンが挿通する第1位置決め孔と、前記従動回転体に前記第1位置決め孔に軸方向から対向して設けられ、第1位置決め孔の内径よりも大きな開口部を有すると共に、前記位置決めピンの先端部が挿入される第2位置決め孔と、を備えている。
別の好ましい態様として、前記第2位置決め孔は、前記開口部よりも奥側に形成されて、内径が前記開口部の内径よりも小さな小径孔部を有している。
さらに別の好ましい態様として、前記小径孔部の内径は、前記第1位置決め孔の内径とほぼ同径に形成されている。
別の好ましい態様として、前記小径孔部は、前記開口部と段差を介して連続して形成されている。
別の好ましい態様として、前記第2位置決め孔は、内底面に前記開口部側から漸次縮径する円錐状のテーパ面が形成されている。
さらに好ましい態様としては、クランクシャフトから回転力が伝達される駆動回転体と、カムシャフトと一体に回転する従動回転体と、前記駆動回転体に対する前記カムシャフトの相対回転位相を変更する位相変更機構と、カムシャフトと従動回転体との間に介装されたアダプタと、前記駆動回転体とアダプタとの間に設けられ、前記駆動回転体に対するカムシャフトの最大相対回転位置を規制するストッパ機構と、前記アダプタに貫通形成され、前記カムシャフトに設けられた位置決めピンが挿通する第1位置決め孔と、前記従動回転体に前記第1位置決め孔に軸方向から対向して設けられ、第1位置決め孔の内径よりも大きな開口部を有すると共に、前記位置決めピンの先端部が挿入される有底状の第2位置決め孔と、を備えた内燃機関のバルブタイミング制御装置の組立方法であって、
棒状のピン治具を前記第1位置決め孔と第2位置決め孔に挿入して、前記アダプタと従動回転体との円周方向の位置決めを行う工程と、
続いて、前記両位置決め孔からピン治具を抜き取った後に、前記カムシャフトの先端部に設けられた位置決めピンを、前記第1位置決め孔に挿入してカムシャフトとアダプタとの円周方向の位置決めを行う工程と、
を備えている。
さらに好ましい態様としては、前記第2位置決め孔は、内底面に内径が前記第1位置決め孔の内径とほぼ同一の小径孔部を有し、
棒状のピン治具を、前記第1位置決め孔と第2位置決め孔の前記開口部を通って小径孔部まで挿入して、前記アダプタと従動回転体との円周方向の位置決めを行う工程と、
を有している。
さらに好ましい態様としては、前記第2位置決め孔は、内底面に前記開口部側から漸次縮径する円錐状のテーパ面が形成され、
先端部が円錐状に形成された棒状のピン治具を、前記第1位置決め孔と第2位置決め孔の前記開口部を通って円錐状の内底面まで挿入して、前記アダプタと従動回転体との円周方向の位置決めを行う工程と、
を有している。
1…タイミングスプロケット(駆動回転体)
2…カムシャフト
3…位相変更機構
4…カバー部材
5…内歯構成部
8…保持プレート
8b…ストッパ凸部(ストッパ機構)
9…従動部材(従動回転体)
9a…固定端部
11…アダプタ
11a…外周部
11b…内周部
11c…ストッパ溝(ストッパ機構)
12…電動モータ
13…減速機構
14…モータハウジング
15…モータ出力軸
26a、26b…スリップリング
28…カバー本体
30a、30b…ブラシホルダ
31a、31b…給電用ブラシ
50…角度センサ(回転検出機構)
60…カムシャフトの位置決めピン
61…アダプタの第1位置決め孔
62…従動部材の第2位置決め孔
62a…開口部
62b…小径孔部
62c…内底面
63…ピン治具
63a…一端部
63b…他端部
63c…円錐状凸部

Claims (8)

  1. クランクシャフトからの回転力が伝達される駆動回転体と、カムシャフトと一体に回転する従動回転体と、前記駆動回転体に対するカムシャフトの相対回転位相を変更する位相変更機構と、を備えた内燃機関のバルブタイミング制御装置であって、
    カムシャフトと従動回転体との間に介装されるアダプタと、
    前記駆動回転体とアダプタとの間に設けられ、前記駆動回転体に対するカムシャフトの最大相対回転位置を規制するストッパ機構と、
    前記アダプタに貫通形成され、前記カムシャフトに設けられた位置決めピンが挿通する第1位置決め孔と、
    前記従動回転体に前記第1位置決め孔に軸方向から対向して設けられ、第1位置決め孔の内径よりも大きな開口部を有すると共に、前記位置決めピンの先端部が挿入される第2位置決め孔と、
    を備えたことを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
  2. 請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
    前記第2位置決め孔は、前記開口部よりも奥側に形成されて、内径が前記開口部の内径よりも小さな小径孔部を有することを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
  3. 請求項2に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
    前記小径孔部の内径は、前記第1位置決め孔の内径とほぼ同径に形成されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
  4. 請求項2に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
    前記小径孔部は、前記開口部と段差を介して連続して形成されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
  5. 請求項1に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置において、
    前記第2位置決め孔は、内底面に前記開口部側から漸次縮径する円錐状のテーパ面が形成されていることを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置。
  6. クランクシャフトからの回転力が伝達される駆動回転体と、
    カムシャフトと一体に回転する従動回転体と、
    前記駆動回転体に対する前記カムシャフトの相対回転位相を変更する位相変更機構と、
    カムシャフトと従動回転体との間に介装されたアダプタと、
    前記駆動回転体とアダプタとの間に設けられ、前記駆動回転体に対するカムシャフトの最大相対回転位置を規制するストッパ機構と、
    前記アダプタに貫通形成され、前記カムシャフトに設けられた位置決めピンが挿通する第1位置決め孔と、
    前記従動回転体に前記第1位置決め孔に軸方向から対向して設けられ、第1位置決め孔の内径よりも大きな開口部を有すると共に、前記位置決めピンの先端部が挿入される有底状の第2位置決め孔と、
    を備えた内燃機関のバルブタイミング制御装置の組立方法であって、
    棒状のピン治具を前記第1位置決め孔と第2位置決め孔に挿入して、前記アダプタと従動回転体との円周方向の位置決めを行う工程と、
    前記両位置決め孔からピン治具を抜き取った後に、前記カムシャフトの先端部に設けられた位置決めピンを、前記第1位置決め孔に挿入してカムシャフトとアダプタとの円周方向の位置決めを行う工程と、
    を備えたことを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置の組立方法。
  7. 請求項6に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置の組立方法において、
    前記第2位置決め孔は、内底面に内径が前記第1位置決め孔の内径とほぼ同一の小径孔部を有し、
    棒状のピン治具を、前記第1位置決め孔と第2位置決め孔の前記開口部を通って小径孔部まで挿入して、前記アダプタと従動回転体との円周方向の位置決めを行う工程と、
    を有することを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置の組立方法。
  8. 請求項6に記載の内燃機関のバルブタイミング制御装置の組立方法において、
    前記第2位置決め孔は、内底面に前記開口部側から漸次縮径する円錐状のテーパ面が形成され、
    先端部が円錐状に形成された棒状のピン治具を、前記第1位置決め孔と第2位置決め孔の前記開口部を通って円錐状の内底面まで挿入して、前記アダプタと従動回転体との円周方向の位置決めを行う工程と、
    を有することを特徴とする内燃機関のバルブタイミング制御装置の組立方法。
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